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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/22 20060101AFI20250401BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20250401BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H01Q1/22 B
B60R11/02 A
H01Q1/32 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021141517
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034968
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 達也
(72)【発明者】
【氏名】中川 陽平
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/131670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/22
B60R 11/02
H01Q 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に搭載され、ルーフを有するキャビンと、を備える作業車両であって、
前記キャビンの上方に位置し、測位衛星から送信される信号に基づいて、前記車体の位置を検出する測位装置を備え、
前記ルーフは、
前後方向の最前部に位置するルーフ前端と、
前記ルーフ前端よりも後方に位置し、前記ルーフ前端よりも位置が高いルーフ最上端と、を有し、
前記測位装置の位置は、前記ルーフ最上端よりも低い、作業車両。
【請求項2】
前記測位装置の位置は、前記ルーフ前端よりも高い、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記測位装置は、前記ルーフ最上端よりも前方に位置する、請求項1または2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記測位装置を支持する支持機構をさらに備え、
前記キャビンは、
前記車体と連結され、前記ルーフの右前部を支持する右前ピラーと、
前記車体と連結され、前記ルーフの左前部を支持する左前ピラーと、を有し、

前記支持機構は、
前記右前ピラーおよび前記左前ピラーにそれぞれ取り付けられる右ステーおよび左ステーと、
前記ルーフの上方を左右方向に延び、前記右ステーおよび前記左ステーに両端が固定される支持部材と、
前記ルーフの上方で前記支持部材に固定される台座と、を有し、
前記測位装置は、前記台座に固定される、請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項5】
前記測位装置で検出された前記車体の位置情報が、ハーネスを介して入力される制御部をさらに備え、
前記ハーネスは、前記右前ピラーまたは前記左前ピラーに沿って配置される、請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記ルーフの上面に固定され、前記測位装置を支持する支持ステーをさらに備える、請求項1から3のいずれかに記載の作業車両。
【請求項7】
前記ルーフは、
インナールーフと、
前記インナールーフが固定される固定フレームと、
前記インナールーフの上方に配置されるアウタールーフと、を有し、
前記アウタールーフは、締結ユニットによって前記固定フレームと連結され、
前記締結ユニットは、前記支持ステーを前記アウタールーフに対して所定の高さ位置で保持するスペーサ部材を含む、請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記支持ステーは、前記ルーフの上方を左右方向に延びるステー本体を有し、
前記ステー本体の左右方向の各端部が、前記スペーサ部材を含む前記締結ユニットによって前記アウタールーフに固定される、請求項7に記載の作業車両。
【請求項9】
前記測位装置で検出された前記車体の位置情報が、ハーネスを介して入力される制御部をさらに備え、
前記ステー本体は、
左右方向に延び、前記測位装置を下方から支持する平板部と、
左右方向に延び、前記平板部の前側端部または後側端部から垂れ下がる垂下部と、を有し、
前記ハーネスは、前記測位装置から前記垂下部の後方を左右方向に引き出されて位置する、請求項8に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタなどの作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタのキャビンの上方に、車体の位置を検出する測位装置を設ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-041745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のトラクタでは、キャビンのルーフが水平である。このため、キャビンの上方に測位装置を設置すると、測位装置がキャビンのルーフよりも上方に突出する。したがって、測位装置を設置した状態でトラクタを走行させると、状況によっては、測位装置が障害物と接触して損傷する虞がある。例えば、トラクタを納屋に格納する際に、キャビン上方の測位装置が納屋の出入口上部に接触して損傷する虞がある。
【0005】
測位装置の障害物との接触による損傷を回避するためには、例えば、測位装置を回動させて低い位置に変更したり、測位装置を取り外す作業を行えばよいとも考えられる。しかし、これらの場合には、測位装置の位置変更または取り外しの煩わしい作業が必要であり、ユーザの作業負担が増大する。したがって、測位装置の設置に関して、何らかの改善が必要である。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、キャビンの上方に位置する測位装置が障害物と接触して損傷する虞を低減することができるとともに、ユーザの作業負担を軽減することができる作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る作業車両は、車体と、前記車体に搭載され、ルーフを有するキャビンと、を備える作業車両であって、前記キャビンの上方に位置し、測位衛星から送信される信号に基づいて、前記車体の位置を検出する測位装置を備え、前記ルーフは、前後方向の最前部に位置するルーフ前端と、前記ルーフ前端よりも後方に位置し、前記ルーフ前端よりも位置が高いルーフ最上端と、を有し、前記測位装置の位置は、前記ルーフ最上端よりも低い。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成によれば、キャビンの上方に位置する測位装置が障害物と接触して損傷する虞を低減することができるとともに、ユーザの作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の一形態に係る作業車両の一例であるトラクタの概略の構成を示す側面図である。
図2】上記トラクタを含む車両走行システムのブロック図である。
図3】上記トラクタのキャビンの上部の側面図である。
図4】上記キャビンを上方から見たときの斜視図である。
図5】支持ステーを用いてアンテナユニットをルーフに設置したトラクタのキャビンの上部の側面図である。
図6図5のトラクタのキャビンを上方から見たときの斜視図である。
図7図6で示されたアンテナユニットの図示を省略した状態でのキャビンの斜視図である。
図8】上記ルーフにおける支持ステーの固定部付近を模式的に示す斜視図である。
図9図8のルーフ固定用ボルトを通る面で支持ステーおよびルーフを切断したときの断面図である。
図10】アウタールーフのみを固定フレームに固定する際に用いる締結ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施形態では、作業車両としてトラクタを例に挙げて説明するが、作業車両としては、トラクタの他、田植機、コンバイン、土木・建築作業装置、除雪車等の乗用型作業車両を考えることもできる。
【0011】
また、本明細書では、方向を以下のように定義する。まず、作業車両としてのトラクタが作業時に進行する方向を「前」とし、その逆方向を「後」とする。また、トラクタの進行方向に向かって右側を右とし、左側を左とする。そして、トラクタの前後方向および左右方向に垂直な方向を上下方向とする。このとき、重力方向を下とし、その反対側を上とする。
【0012】
〔1.車両走行システムの概要〕
図1は、本実施形態の作業車両の一例であるトラクタ1の概略の構成を示す側面図である。図2は、トラクタ1を含む車両走行システムのブロック図である。
【0013】
図2に示すように、本実施形態の車両走行システムは、トラクタ1と、無線通信端末30と、基準局40と、を有して構成される。トラクタ1は、運転者の操縦に従って走行することもできるし、無線通信端末30からの指示等に基づいて、自律走行することもできる。無線通信端末30は、トラクタ1に対して各種の指示等を行うための端末である。基準局40は、トラクタ1の位置情報を取得するために設けられる。
【0014】
図1に示すように、トラクタ1は、車体2を備える。車体2の後方側には、対地作業機(図示せず)を装着することが可能である。対地作業機としては、例えば耕耘装置、プラウ、施肥装置を用いることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0015】
車体2の前部は、左右一対の前輪3で支持される。車体2の後部は、左右一対の後輪4で支持される。車体2の前部には、ボンネット5が配置される。ボンネット5の下方には、駆動源としてのエンジン6が配置される。エンジン6は、例えばディーゼルエンジンで構成されるが、これに限定されるわけではなく、例えばガソリンエンジンで構成されてもよい。また、エンジン6に加えて、あるいはエンジン6に代えて、電動モータが駆動源として用いられてもよい。
【0016】
ボンネット5の後方の車体2の上部には、操縦者(運転者)が搭乗するためのキャビン7が設けられる。キャビン7の左側には、前開きで回動するドア7aが設けられている。ドア7aを開閉することにより、運転者はキャビン7に対して乗降することができる。なお、ドア7aは、キャビン7の右側に設けられてもよい。
【0017】
キャビン7は、ルーフ70を有する。すなわち、作業車両としてのトラクタ1は、車体2と、車体2に搭載され、ルーフ70を有するキャビン7と、を備える。キャビン7内には、運転者が操向操作するためのステアリングハンドル8と、運転者の運転座席9と、が設けられている。
【0018】
車体2の後方側には、3点リンク機構が設けられる。3点リンク機構は、左右一対のロアリンク10と、アッパリンク11と、を含んで構成される。上記の対地作業機は、3点リンク機構に装着可能に構成されている。また、車体2の後方側には、昇降シリンダ等の油圧装置を有する昇降装置(図示せず)が設けられる。昇降装置が3点リンク機構を昇降させることにより、対地作業機を昇降させることができる。
【0019】
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン6の回転速度を調整可能なガバナ装置21と、エンジン6からの回転駆動力を変速して駆動輪に伝達する変速装置22と、が設けられる。ガバナ装置21および変速装置22は、制御部23によって制御される。
【0020】
トラクタ1は、操舵装置24を備える。操舵装置24は、例えば、ステアリングハンドル8の回転軸の途中部に設けられ、ステアリングハンドル8の回転角度(操舵角)を調整可能に構成されている。制御部23が操舵装置24を制御することにより、トラクタ1は、直進走行だけでなく、ステアリングハンドル8の回転角度を所望の角度に調整して、所望の旋回半径で旋回走行を行うことができる。
【0021】
トラクタ1は、アンテナユニット50をさらに備える。アンテナユニット50は、キャビン7(特にルーフ70)の上方に位置し、図1に示す測位衛星(航法衛星)45から送信される信号に基づいて、車体2の位置を検出する測位装置である。
【0022】
アンテナユニット50と制御部23とは、ハーネスWHによって電気的に接続される。これにより、アンテナユニット50と制御部23との間で、ハーネスWHを介して各種の情報または指示の伝達が可能となる。例えば、アンテナユニット50で検出された車体2の位置情報は、ハーネスWHを介して制御部23に入力される。このことから、トラクタ1は、アンテナユニット50で検出された車体2の位置情報がハーネスWHを介して入力される制御部23を備えると言える。
【0023】
次に、上記したアンテナユニット50の詳細について説明する。アンテナユニット50は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)25と、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ26と、無線通信ユニット27と、無線通信用アンテナ28と、基地局アンテナ29と、を有する。
【0024】
慣性計測装置25は、3軸のジャイロセンサおよび3方向の加速度計を備え、これにより、3次元の角速度および加速度を検出する。慣性計測装置25の検出値は、制御部23に入力される。制御部23は、上記検出値に基づいて、トラクタ1の姿勢情報を求めることができる。上記姿勢情報には、例えば、機体の方位角(ヨー角)、機体の左右の傾き角(ロール角)、機体の進行方向での前後の傾き角(ピッチ角)の各情報が含まれる。
【0025】
GNSSアンテナ26は、衛星測位システム(GNSS)を構成する測位衛星45から送信される電波信号を受信する。衛星測位システムでは、測位衛星として、GPS(Global Positioning System;米国)に加えて、準天頂衛星(日本)、グロナス衛星(ロシア)等を利用することができる。
【0026】
無線通信ユニット27は、無線通信端末30等との間で構築される無線通信ネットワークを介して各種の信号を送受信する。本実施形態では、無線通信ユニット27は、周波数帯域が2.4GHzのワイファイ(Wifi(登録商標))ユニットで構成されている。無線通信端末30から送信された信号は、無線通信用アンテナ28で受信され、無線通信ユニット27を介して制御部23に入力される。また、制御部23からの信号は、無線通信ユニット27および無線通信用アンテナ28を介して、無線通信端末30の無線通信装置31等に送信される。
【0027】
ここで、衛星測位システムを用いた測位方法として、本実施形態では、例えばRTK(Real Time Kinematic)測位を用いる。RTK測位では、基準点に設置された基準局40の基準局測位用アンテナ42と、位置情報を求める対象の移動局側となるトラクタ1のGNSSアンテナ26との両方で、測位衛星45からの搬送波位相(衛星測位情報)を測定する。基準局40では、測位衛星45から衛星測位情報を測定するごとに、または設定周期が経過するごとに、補正情報を生成する。上記補正情報は、基準局無線通信装置41からトラクタ1の基地局アンテナ29に送信される。トラクタ1の制御部23は、GNSSアンテナ26にて測定した衛星測位情報を、基準局40から送信された補正情報を用いて補正して、トラクタ1の現在位置情報を求める。制御部23は、トラクタ1の現在位置情報として、例えば、緯度情報・経度情報を求める。
【0028】
なお、用いる測位方法は、上記のRTK測位には限定されず、DGPS(ディファレンシャルGPS測位)などの他の測位方法を用いてもよい。また、基準局40は、トラクタ1との間のみならず、無線通信端末30との間でも、各種の情報を送受信することが可能である。
【0029】
無線通信端末30は、例えば、タッチパネルを有するタブレット型のパーソナルコンピュータ等で構成される。無線通信端末30には、無線通信装置31と、目標走行経路を生成する経路生成部32と、が設けられる。経路生成部32は、タッチパネルにて入力される各種の情報に基づいて、トラクタ1を自律走行させる目標走行経路を生成することができる。経路生成部32は、例えばパーソナルコンピュータが有するCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)で構成される。
【0030】
無線通信端末30は、目標走行経路等、トラクタ1を自律走行させるための各種の情報をトラクタ1に送信する。トラクタ1の制御部23は、GNSSアンテナ26の受信信号からトラクタ1の現在位置情報を求めるとともに、慣性計測装置25での検出値から車体2の変位情報および方位情報を求め、これらの情報に基づいて、変速装置22および操舵装置24等を制御することにより、経路生成部32にて生成された目標走行経路に沿ってトラクタ1を自律走行させることができる。
【0031】
〔2.アンテナユニットの設置方法について(その1)〕
次に、上記したアンテナユニット50の設置方法について説明する。図3は、トラクタ1のキャビン7の上部の側面図である。図4は、トラクタ1のキャビン7を上方から見たときの斜視図である。まず、キャビン7のルーフ70の形状について説明する。
【0032】
キャビン7のルーフ70は、ルーフ前端70Fを有する。ルーフ前端70Fは、前後方向において、ルーフ70の最も前方側に位置する。すなわち、ルーフ70は、前後方向の最前部に位置するルーフ前端70Fを有する。
【0033】
より詳しくは、キャビン7は、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lを有する。右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lは、車体2と連結されて、ルーフ70の右前部および左前部をそれぞれ支持する。すなわち、キャビン7は、車体2と連結され、ルーフ70の右前部を支持する右前ピラー71Rと、車体2と連結され、ルーフ70の左前部を支持する左前ピラー71Lと、を有する。上記したルーフ前端70Fは、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lの各上端を結ぶルーフ70の周縁部において、最も前側に位置する。
【0034】
本実施形態では、キャビン7は、運転座席9(図1参照)の前方に、フロントガラスFGを有する。この構成では、ルーフ前端70Fは、ルーフ70において、フロントガラスFGの上辺と接する最も前側の位置と一致する。
【0035】
なお、キャビン7は、フロントガラスFGを必ずしも有する必要はない。キャビン7がフロントガラスを有しない構成であっても、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lの各上端を結ぶルーフ70の周縁部において、最も前側に位置する部分が、ルーフ前端70Fとなる。
【0036】
キャビン7のルーフ70は、ルーフ最上端70Hをさらに有する。ルーフ最上端70Hは、ルーフ70において最も位置の高い部分である。このルーフ最上端70は、ルーフ前端70Fよりも後方に位置する。本実施形態では、ルーフ最上端70Hは、ルーフ70の前後方向の中央部よりもやや後方寄りに位置している。なお、ルーフ最上端70Hの位置は、上記の位置に限定されるわけではない。例えば、ルーフ最上端70Hは、前後方向において、ルーフ70の最も後方側に位置するルーフ後端70Rの位置と一致していてもよい。いずれにしても、ルーフ70は、ルーフ最上端70Hから前方に向かってルーフ上面が下がり勾配で傾斜した形状(流線形)を有する。このように、ルーフ70は、ルーフ前端70Fよりも後方に位置し、ルーフ前端70Fよりも位置が高いルーフ最上端70Hを有する。
【0037】
図3に示すように、測位装置としてのアンテナユニット50の位置は、キャビン7(特にルーフ70)の上方において、ルーフ最上端70Hよりも低い。なお、このようなアンテナユニット50の位置は、支持機構100または支持ステー200(図5参照)等を用いることによって実現することができるが、支持機構100等の詳細については後述する。
【0038】
本実施形態のトラクタ1では、キャビン7のルーフ70が、水平ではなく、ルーフ前端70よりも位置の高いルーフ最上端70Hを有する。このため、アンテナユニット50を、キャビン7の上方で、かつ、ルーフ最上端70Hよりも低い位置に設置することができる。このようなアンテナユニット50の位置では、アンテナユニット50がルーフ最上端70Hよりも上方に突出しないため、アンテナユニット50をキャビン7の上方に設置した状態でトラクタ1を走行させても、アンテナユニット50が周囲の障害物と衝突する虞がない。これにより、アンテナユニット50の障害物との接触による損傷を低減することができる。また、アンテナユニット50と障害物との接触を回避すべく、ユーザ(例えばトラクタ1の運転者)がアンテナユニット50をキャビン7から取り外したり、アンテナユニット50を低い位置に回動等によって変更する煩わしい作業も不要となる。したがって、ユーザの作業負担を軽減することもできる。
【0039】
なお、上記の障害物としては、例えば、(1)トラクタ1を納屋に格納するときにおける納屋の出入口上部、(2)トラクタ1の運搬のため、トラクタ1をトラックの荷台(屋根あり)に載せるときの荷台の屋根、(3)トラクタ1が鉄道等の高架の下を走行する際における高架の下部、などが考えられる。
【0040】
また、本実施形態では、図3に示すように、アンテナユニット50は、ルーフ前端70Fとルーフ最上端70Hとの間に位置する。つまり、アンテナユニット50の位置は、ルーフ前端70Fよりも高い。
【0041】
このようなアンテナユニット50の位置では、キャビン7内に搭乗した運転者から見た、前方から上方にかけての視界が、アンテナユニット50によって遮られる虞を低減することができる。その結果、運転者の良好な視界を確保することができる。つまり、アンテナユニット50の設置に起因して、運転者の作業時(操縦時)の視認性が低下する事態を低減することができる。
【0042】
また、本実施形態では、図3に示すように、アンテナユニット50は、ルーフ最上端70Hよりも前方に位置する。上述したように、ルーフ最上端70Hの位置がルーフ前端70Fよりも高く、ルーフ最上端70Hから前方に向かって下がり勾配となるルーフ形状では、アンテナユニット50をルーフ最上端70Hよりも前方に位置させることにより、ルーフ最上端70Hよりも低い位置にアンテナユニット50を位置させることが容易となる。
【0043】
なお、ルーフ最上端70Hよりもルーフ後端70Rが低い形状では、ルーフ最上端70Hとルーフ後端70Rとの高さの差を適切に設定することにより、ルーフ最上端70Hよりも後方で、ルーフ最上端70Hよりも低い位置にアンテナユニット50を設置することも可能である。
【0044】
次に、上記した支持機構100の詳細について説明する。トラクタ1は、アンテナユニット50を支持する支持機構100を備える。この支持機構100は、右ステー101Rおよび左ステー101Lと、支持部材である支持パイプ102と、台座103と、を有する。
【0045】
右ステー101Rは、右前ピラー71Rに取り付けられる。右ステー101Rは、ミラー支持棒101aを介してミラー(図示せず)を支持する。左ステー101Lは、ワークランプWLを支持するとともに、ミラー支持棒101aを介してミラーMを支持する。なお、右ステー101Rは、左ステー101Lと同様にワークランプを支持してもよい。このように、支持機構100は、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lにそれぞれ取り付けられる右ステー101Rおよび左ステー101Lを有する。
【0046】
右ステー101Rの右前ピラー71Rへの取り付け、および左ステー101Lの左前ピラー71Lへの取り付けは、例えば溶接によって行われるが、ボルトによる固定など、他の方法によって行われてもよい。また、右ステー101Rまたは左ステー101Lには、ラジオアンテナ(図示せず)が取り外し可能に設けられてもよい。
【0047】
支持パイプ102は、ルーフ70の上方を左右方向に延び、左右方向の両端付近で下方に屈曲している。支持パイプ102の右端は、右ステー101Rに取り付けられる。支持パイプ102の左端は、左ステー101Lに取り付けられる。支持パイプ102の右ステー101Rおよび左ステー101Lへの取り付けは、ボルトなどの締結具を用いて行われてもよいし、専用の取付金具(例えばクランプ金具)を用いて行われてもよい。本実施形態では、支持パイプ102は、ルーフ70の上方で、左右方向の中央部が後方に少し屈曲しているが、屈曲せずに左右方向に直線状であってもよい。
【0048】
台座103は、ルーフの上方で、かつ、左右方向の中央部に位置し、支持パイプ102に固定される。支持パイプ102と台座103とは、例えば溶接によって固定されるが、ボルトなどの締結具を用いて取り外し可能に固定されてもよい。台座103は、アンテナユニット50を下方から支持する。アンテナユニット50は、例えばボルトの締め付けにより、台座103に固定される。
【0049】
このように、支持機構100は、ルーフ70の上方を左右方向に延び、右ステー101Rおよび左ステー101Lに両端が固定される支持パイプ102と、ルーフ70の上方で支持パイプ102に固定される台座103と、を有する。そして、アンテナユニット50は、台座103に固定される。
【0050】
上記した支持機構100の構成では、アンテナユニット50が固定される台座103は、ルーフ70の上方で支持パイプ102に固定される。支持パイプ102の両端は、右ステー101Rおよび左ステー101Lにそれぞれ固定される。右ステー101Rおよび左ステー101Lは、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lにそれぞれ取り付けられる。したがって、アンテナユニット50を台座103に固定することにより、アンテナユニット50をルーフ70の上方で安定して支持することができる。また、支持機構100を用いることにより、アンテナユニット50のトラクタ1への後付けを容易に行うことができる。
【0051】
また、本実施形態では、図4に示すように、アンテナユニット50と制御部23(図2参照)とを電気的に接続するハーネスWHが、右前ピラー71Rに沿って配置される。なお、上記のハーネスWHは、左前ピラー71Lに沿って配置されてもよい。つまり、ハーネスWHは、右前ピラー71Rまたは左前ピラー71Lに沿って配置される。これにより、露出するハーネスWHを目立たせることなく引き回す(配索する)ことが容易となる。
【0052】
また、本実施形態のように、キャビン7の左側にドア7a(図1参照)が設けられる場合、ハーネスWHが左前ピラー71Lに沿って配置されると、ドア7aの開閉時にハーネスWHがドアと接触したり、ハーネスWHをドア7aで挟んでしまう虞がある。このような不都合を回避する観点では、ハーネスWHは、右前ピラー71Rに沿って配置されること望ましい。つまり、ハーネスWHは、右前ピラー71Rおよび左前ピラー71Lのうち、左右方向においてキャビン7の乗降口(ドア7a)とは反対側に位置するピラーに沿って配置されることが望ましい。
【0053】
〔3.アンテナユニットの設置方法について(その2)〕
本実施形態のアンテナユニット50は、上述した支持機構100の代わりに、図5に示す支持ステー200を用いてキャビン7のルーフ70に固定することもできる。以下、アンテナユニット50の他の設置方法について説明する。なお、支持ステー200を用いた場合でも、キャビン7の上方で、かつ、ルーフ最上端70Hよりも低い位置にアンテナユニット50を位置させることができる点は、支持機構100を用いた場合と同様である。
【0054】
図5は、支持ステー200を用いてアンテナユニット50をルーフ70に設置したトラクタ1のキャビン7の上部の側面図である。図6は、図5のトラクタ1のキャビン7を上方から見たときの斜視図である。また、図7は、図6のアンテナユニット50の図示を省略した状態でのキャビン7の斜視図である。
【0055】
支持ステー200は、ルーフ70の上面(特に後述するアウタールーフ703(図9参照))に固定される。ルーフ70に対する支持ステー200の固定は、締結具80を用いて行われるが、固定方法の詳細については後述する。アンテナユニット50は、支持ステー200(特に後述する平板部201aおよび補助ステー202)に対してボルト等によって固定され、支持される。これにより、アンテナユニット50は、ルーフ70の上方に位置する。すなわち、トラクタ1は、ルーフ70の上面に固定され、アンテナユニット50を支持する支持ステー200を備える。
【0056】
アンテナユニット50を支持する支持ステー200は、ルーフ70の上面に固定される。これにより、アンテナユニット50をルーフ70の上方に安定して位置させることができる。
【0057】
支持ステー200は、ステー本体201と、補助ステー202と、を有する。ステー本体201は、左右方向に長尺状に形成され、ルーフ70の上方に位置する。すなわち、支持ステー200は、ルーフ70の上方を左右方向に延びるステー本体201を有する。
【0058】
ステー本体201は、平板部201aと、垂下部201bと、を有する。平板部201aは、左右方向に長尺状に形成され、左右方向の中央部にてアンテナユニット50を下方から支持する。垂下部201bは、左右方向に長尺状に形成され、平板部201aの前側端部201a1(図8参照)から下方に垂れ下がって形成される。この結果、ステー本体201は、側面視で逆L字状となっている。なお、垂下部201bは、平板部201aの後側端部201a2(図8参照)から下方に垂れ下がって形成されてもよい。平板部201aおよび垂下部201bを有するステー本体201は、1枚の金属板を90°に折り曲げることによって形成可能であるが、平板部201aおよび垂下部201bを溶接等によって連結することにより形成されてもよい。
【0059】
このように、ステー本体201は、左右方向に延び、アンテナユニット50を下方から支持する平板部201aと、左右方向に延び、平板部201aの前側端部201a1または後側端部201a2から垂れ下がる垂下部201bと、を有する。
【0060】
補助ステー202は、ステー本体201によるアンテナユニット50の支持を補助するために、垂下部201bの前側に溶接等によって固定されている。補助ステー202は、断面が逆L字形であり、アンテナユニット50を支持する支持面202aを有する。上下方向において、支持面202aの位置は、平板部201aの上面の位置とほぼ一致する。
【0061】
本実施形態では、補助ステー202は、垂下部201bの左右方向の中央部に、左右方向に2つ離間して設けられているが、補助ステー202の数は1つであってもよいし、必要に応じて3つ以上であってもよい。また、補助ステー202は必須の構成ではなく、補助ステー202の設置を省略することも可能である。
【0062】
次に、支持ステー200のルーフ70への固定方法の詳細について説明する。図8は、ルーフ70における支持ステー200の固定部付近を模式的に示す斜視図である。また、図9は、図8のルーフ固定用ボルト81を通る面で支持ステー200およびルーフ70を切断したときの断面図である。なお、図8では、便宜的に、図9で示すインナールーフ701およびアウタールーフ703の図示を省略している。
【0063】
ルーフ70は、インナールーフ701と、固定フレーム702と、アウタールーフ703と、を有する。インナールーフ701は、ルーフ70においてキャビン7の室内側に位置する。インナールーフ701は、図示しない固定部材(ステー、ボルト、ナットなど)により、固定フレーム702に固定される。アウタールーフ703は、インナールーフ701の上方に配置され、固定フレーム702に固定される。すなわち、ルーフ70は、インナールーフ701と、インナールーフ701が固定される固定フレーム702と、インナールーフ701の上方に配置されるアウタールーフ703と、を有する。
【0064】
ここで、アウタールーフ703のみを固定フレーム702(図8参照)に固定する際に用いる締結ユニット80について先に説明する。図10は、締結ユニット80の断面図である。上記締結ユニット80は、ルーフ固定用ボルト81と、ゴムワッシャ82と、連結ステー83と、ナット84と、を有して構成される。
【0065】
ゴムワッシャ82は、ルーフ70の上方からキャビン7内への雨水の侵入を防止するために設けられる。ゴムワッシャ82の中央には、ルーフ固定用ボルト81が挿通される開口部82aが設けられている。
【0066】
連結ステー83は、アウタールーフ703と固定フレーム702とを連結するための金属板であり、所定の位置で折り曲げられた形状を有する。連結ステー83には、貫通口83aが設けられる。貫通口83aには、ルーフ固定用ボルト81が挿通される。連結ステー83は、貫通口83aから離間した部位で、固定フレーム702に溶接等により固定される(図8参照)。アウタールーフ703には、ルーフ固定用ボルト81が挿通される貫通穴703aが設けられる。
【0067】
したがって、図10に示すように、ルーフ固定用ボルト81を、ゴムワッシャ82の開口部82a、アウタールーフ703の貫通穴703a、連結ステー83の貫通口83aに上方から順に差し込み、ナット84と螺合させることにより、アウタールーフ703を固定フレーム702に固定することができる。アウタールーフ703は、固定フレーム702に対して複数箇所で締結ユニット80により固定される。なお、上記の螺合とは、ボルトを回転させてナットと結合させることを言う。
【0068】
支持ステー200のルーフ70への固定は、上記の締結ユニット80に、図8および図9で示す、スペーサ部材であるスペーサボルト85を組み合わせて用いることにより、容易に行うことができる。
【0069】
スペーサボルト85は、回転軸方向の下端部に凸部85aを有する。凸部85aは、ゴムワッシャ82の開口部82a、アウタールーフ703の貫通穴703a、連結ステー83の貫通口83aを通り、ナット84と螺合する。また、スペーサボルト85は、回転軸方向の上端部に凹部85bを有する。凹部85bの内面にはねじ溝が切られており、ルーフ固定用ボルト81が挿通されて螺合する。
【0070】
一方、支持ステー200のステー本体201の平板部201aには、貫通孔201pが設けられる。ルーフ固定用ボルト81を貫通孔201pに挿通し、さらにスペーサボルト85の凹部85bに螺合させることにより、支持ステー200をスペーサボルト85に固定することができる。
【0071】
したがって、スペーサボルト85を用いることにより、支持ステー200を、アウタールーフ703からスペーサボルト85の高さ分だけ上方に離間した所定の高さ位置で保持することができる。なお、スペーサボルト85の高さは、アンテナユニット50のルーフ70の上方での目標とする高さ位置に応じて、適宜設定されればよい。また、スペーサボルト85の凸部85aを、ゴムワッシャ82の開口部82a、アウタールーフ703の貫通穴703a、連結ステー83の貫通口83aに上方から順に差し込み、ナット84と螺合させることにより、スペーサボルト85に固定した支持ステー200を、アウタールーフ703とともに固定フレーム702に固定することができる。
【0072】
このように、アウタールーフ703は、締結ユニット80によって固定フレーム702と連結される。締結ユニット80は、支持ステー200をアウタールーフ703に対して所定の高さ位置で保持するスペーサボルト85を含む。
【0073】
このように、締結ユニット80がスペーサボルト85を含むことにより、アウタールーフ703を固定フレーム702に固定する通常の締結ユニット80を有効利用しながら、スペーサボルト85によって支持ステー200をルーフ70の上面に簡単に固定することができる。したがって、例えば支持ステー200をルーフ70に固定するにあたり、支持ステー200の固定専用の穴をルーフ70の上面に別途設ける作業を不要とすることができる。
【0074】
また、本実施形態では、図7等に示すように、ステー本体201は、その右端および左端において、締結ユニット80によってルーフ70(特にアウタールーフ703)に固定される。すなわち、ステー本体201の左右方向の各端部が、スペーサボルト85を含む締結ユニット80によってアウタールーフ703に固定される。これにより、左右方向に延びる支持ステー200を、アウタールーフ703に安定して固定することができる。
【0075】
また、図6に示すように、支持ステー200の平板部201aでアンテナユニット50を支持する構成では、アンテナユニット50と制御部23(図2参照)とを電気的に接続するハーネスWHは、アンテナユニット50から垂下部201bの後方を左右方向に引き出されて位置することが望ましい。
【0076】
支持ステー200の垂下部201bの後方にハーネスWHを位置させることにより、前方から見て、垂下部201bがハーネスWHの配索の際の目隠しとなる。このため、ハーネスWHの露出によって外観品質が損なわれる事態を低減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えばトラクタなどの作業車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 トラクタ(作業車両)
2 車体
23 制御部
7 キャビン
45 測位衛星
50 アンテナユニット(測位装置)
70 ルーフ
70F ルーフ前端
70H ルーフ最上端
71R 右前ピラー
71L 左前ピラー
80 締結ユニット
85 スペーサボルト(スペーサ部材)
100 支持機構
101R 右ステー
101L 左ステー
102 支持パイプ(支持部材)
103 台座
200 支持ステー
201 ステー本体
201a 平板部
201b 垂下部
701 インナールーフ
702 固定フレーム
703 アウタールーフ
WH ハーネス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10