(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】制御装置、表示装置、車両、および携帯端末
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20250401BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250401BHJP
B60K 35/21 20240101ALI20250401BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20250401BHJP
B60K 35/28 20240101ALI20250401BHJP
【FI】
B60W50/14
G08G1/00 X
B60K35/21
B60W40/04
B60K35/28
(21)【出願番号】P 2021183693
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗橋 翠
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祐希
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0082705(KR,A)
【文献】特開2007-283837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0216069(US,A1)
【文献】特開2017-007399(JP,A)
【文献】再公表特許第2019/069430(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
B60K 35/00 - 37/20
B60R 16/00 - 17/02
G01C 21/00 - 21/36
G02B 27/00 - 30/60
G09F 9/00
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隊列走行時の先行車に対する所定の車両の走行位置を表示する表示装置の制御装置であって、
前記所定の車両の周囲を走行する車両のなかから追従先としての先行車候補車両を検出する検出部と、
検出された前記先行車候補車両に対して、前記先行車候補車両に追従走行した際に前記所定の車両で得られるエネルギ消費の低減効果を算出する算出部と、
前記所定の車両での走行が推奨されるエリアとして、前記エネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリアを前記表示装置に表示させる表示制御を実行する制御部と、
を備え、
前記推奨走行エリアは、前記先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアであ
り、
前記制御部は、
前記表示制御を実行する際、前記所定の車両の走行位置と、前記推奨走行エリアと、前記先行車候補車両の走行位置とを前記表示装置に表示させ、かつ前記推奨走行エリアに対する前記所定の車両の位置が分かる画像を前記表示装置に表示させ、
前記所定の車両が前記推奨走行エリアで走行している場合には、前記推奨走行エリアの内部に前記所定の車両が収まっていることが分かる画像を前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記推奨走行エリアのうち、前記低減効果が大きい位置を前記低減効果が小さい位置に比べて強調して表示させる強調制御を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
隊列走行時の先行車に対する所定の車両の走行位置を表示する表示装置であって、
前記所定の車両の周囲を走行する車両のなかから追従先として検出された先行車候補車両に対して、当該先行車候補車両に追従走行した際に前記所定の車両で得られるエネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリアを表示し、
前記推奨走行エリアは、前記所定の車両での走行が推奨されるエリアであり、かつ前記先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアであ
り、
前記推奨走行エリアを表示する際、前記推奨走行エリアに併せて、前記所定の車両の走行位置と、前記先行車候補車両の走行位置とを表示し、かつ前記推奨走行エリアに対する前記所定の車両の位置が分かる画像を表示し、
前記所定の車両が前記推奨走行エリアで走行している場合には、前記推奨走行エリアの内部に前記所定の車両が収まっていることが分かる画像を表示する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
前記推奨走行エリアのうち、前記低減効果が大きい位置を前記低減効果が小さい位置に比べて強調して表示する
ことを特徴とする請求項
3に記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の制御装置を備えた車両であって、
前記制御装置が前記表示制御を実行する際、前記先行車候補車両に追従走行した際に自車両で得られるエネルギ消費の低減効果に基づいた前記推奨走行エリアを前記表示装置に表示させる
ことを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項
5に記載の車両と通信可能に接続された携帯端末であって、
前記車両から送信された前記推奨走行エリアの画像データを受信する通信部と、
前記通信部で受信した前記推奨走行エリアの画像データを表示する表示部と
を備えることを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、表示装置、車両、および携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の車両が隊列走行を行う場合、隊列の先頭から後尾に向かって、制動距離が長い順に車両を配置する第1車両順序、または空気抵抗が最も大きい車両を隊列の先頭に配置する第2車両順序に隊列を編成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、隊列全体でのエネルギ消費の低減を図れるものの、エネルギ消費の低減効果は、隊列の順序と併せて、先行車との距離が重要である。隊列走行時に先行車との距離が適切でない場合には、燃費向上や電費向上の効果が小さくなり、さらには先行車との距離が近すぎてしまう可能性が考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、隊列走行時に所定の車両でのエネルギ消費の低減を図ることが可能な走行位置を視覚的な情報として運転者に報知することができる制御装置、表示装置、車両、および携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、隊列走行時の先行車に対する所定の車両の走行位置を表示する表示装置の制御装置であって、前記所定の車両の周囲を走行する車両のなかから追従先としての先行車候補車両を検出する検出部と、検出された前記先行車候補車両に対して、前記先行車候補車両に追従走行した際に前記所定の車両で得られるエネルギ消費の低減効果を算出する算出部と、前記所定の車両での走行が推奨されるエリアとして、前記エネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリアを前記表示装置に表示させる表示制御を実行する制御部と、を備え、前記推奨走行エリアは、前記先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアであることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、隊列走行時の所定の車両についてエネルギ消費を低減できる推奨走行エリアを視覚的な情報としてその車両の運転者に報知することができる。そのため、運転者に推奨走行エリア内での走行を促すことができ、燃費向上や電費向上に貢献することができる。また、推奨走行エリアは先行車候補車両から所定車間距離のエリアであるため、必要以上に先行車候補車両に近づくことを抑制することができる。
【0008】
また、前記制御部は、前記推奨走行エリアのうち、前記低減効果が大きい位置を前記低減効果が小さい位置に比べて強調して表示させる強調制御を実行してもよい。
【0009】
この構成によれば、エネルギ消費の低減効果がより大きい位置での走行を促すことができ、燃費向上や電費向上にさらに貢献することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記表示制御を実行する際、前記所定の車両の走行位置と、前記推奨走行エリアと、前記先行車候補車両の走行位置とを前記表示装置に表示させてもよい。
【0011】
この構成によれば、推奨走行エリアと所定の車両と先行車候補車両との位置関係が可視化されるため、運転者にとって相対的な位置関係が分かりやすくなる。
【0012】
本発明に係る表示装置は、隊列走行時の先行車に対する所定の車両の走行位置を表示する表示装置であって、前記所定の車両の周囲を走行する車両のなかから追従先として検出された先行車候補車両に対して、当該先行車候補車両に追従走行した際に前記所定の車両で得られるエネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリアを表示し、前記推奨走行エリアは、前記所定の車両での走行が推奨されるエリアであり、かつ前記先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアであることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、隊列走行時の所定の車両についてエネルギ消費を低減できる推奨走行エリアを視覚的な情報としてその車両の運転者に報知することができる。そのため、運転者に推奨走行エリア内での走行を促すことができ、燃費向上や電費向上に貢献することができる。また、推奨走行エリアは先行車候補車両から所定車間距離のエリアであるため、必要以上に先行車候補車両に近づくことを抑制することができる。
【0014】
また、前記推奨走行エリアのうち、前記低減効果が大きい位置を前記低減効果が小さい位置に比べて強調して表示してもよい。
【0015】
この構成によれば、エネルギ消費の低減効果がより大きい位置での走行を促すことができ、燃費向上や電費向上にさらに貢献することができる。
【0016】
また、前記推奨走行エリアを表示する際、前記推奨走行エリアに併せて、前記所定の車両の走行位置と、前記先行車候補車両の走行位置とを表示してもよい。
【0017】
この構成によれば、推奨走行エリアと所定の車両と先行車候補車両との位置関係が可視化されるため、運転者にとって相対的な位置関係が分かりやすくなる。
【0018】
本発明に係る車両は、上記発明における制御装置を備えた車両であって、前記制御装置が前記表示制御を実行する際、前記先行車候補車両に追従走行した際に自車両で得られるエネルギ消費の低減効果に基づいた前記推奨走行エリアを前記表示装置に表示させることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、推奨走行エリアを表示装置に表示させることによって、隊列走行時にエネルギ消費の低減が可能なエリアを運転者に報知することができる。
【0020】
本発明に係る携帯端末は、上記発明における車両と通信可能に接続された携帯端末であって、前記車両から送信された前記推奨走行エリアの画像データを受信する通信部と、前記通信部で受信した前記推奨走行エリアの画像データを表示する表示部とを備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、携帯端末の表示部が推奨走行エリアを表示することによって、隊列走行時にエネルギ消費の低減が可能なエリアを運転者に報知することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、隊列走行時の所定の車両についてエネルギ消費を低減できる推奨走行エリアを視覚的な情報として車両の運転者に報知することができる。そのため、運転者に推奨走行エリア内での走行を促すことができ、燃費向上や電費向上に貢献することができる。また、推奨走行エリアは先行車候補車両から所定車間距離のエリアであるため、必要以上に先行車候補車両に近づくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、隊列走行時の推奨走行エリアを説明するための図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における車両を模式的に示すブロック図である。
【
図3】
図3は、表示制御フローを示すフローチャート図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態における車両側での制御フローを示すフローチャート図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態における携帯端末側での制御フローを示すフローチャート図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態における制御装置、表示装置、車両、および携帯端末について具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、隊列走行時の推奨走行エリアを説明するための図である。
図2は、第1実施形態における車両を模式的に示すブロック図である。
【0026】
第1実施形態では、
図1に示すように、隊列走行時に車両1が先行車2の後方位置を走行する際、車両1での走行が推奨されるエリア(以下、推奨走行エリアという)3を可視化することができるように構成されている。車両1には、例えばレーダークルーズコントロールやオートクルーズコントロールやアダプティブクルーズコントロール等、自車両の前方を走行する先行車2に追従走行するシステム(自動追従システム)が搭載されている。
【0027】
また、車両1は、走行用の動力源としてモータを搭載した電気自動車である。この車両1では、バッテリに蓄えられた電力をモータに供給することによりモータが駆動し、モータから出力された動力が動力伝達装置を介して駆動輪に伝達される。車両1は電力を消費して得られた動力により走行するため、エネルギ効率の良い走行状態となれば電費が向上し、航続距離を延ばすことができる。なお、ここの説明では、車両1のことを「自車両」と記載する場合がある。
【0028】
車両1は、
図2に示すように、制御装置11と、表示装置12とを備えている。
【0029】
制御装置11は、車両1を制御する電子制御装置により構成されている。この電子制御装置は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。制御装置11は、ROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。また、制御装置11には、車両1に搭載された各種センサからの信号が入力される。車両1は、車載センサとして、車両検出センサ13と、車速センサ14とを備えている。
【0030】
車両検出センサ13は、先行車2を検出するセンサである。この車両検出センサ13は、例えば前方カメラやミリ波レーダーなどにより構成されている。第1実施形態では、車両検出センサ13が前方カメラとミリ波レーダーとを含んで構成されている。そのため、車両検出センサ13は前方カメラの画像とミリ波レーダーの測定結果とを含む先行車情報を制御装置11に出力する。また、ここで説明する先行車2とは、車両1の前方を走行中の車両や、車両1の周囲を走行中の車両や、追従先としての先行車候補車両を含むものである。つまり、車両検出センサ13は、自車両の周囲を走行する車両を検出するセンサであり、自車両の追従先となる車両を検出するためのセンサである。
【0031】
車速センサ14は、車軸の回転数に応じたパルス信号から車両1の車速を検出する。
【0032】
そして、車両検出センサ13と車速センサ14とから出力された信号は制御装置11に入力される。制御装置11では、車両検出センサ13と車速センサ14とから入力された信号に基づいて、隊列走行時の推奨走行エリア3を表示する表示制御が実行される。つまり、制御装置11は、推奨走行エリア3の表示制御を実行する制御部を含んで構成されている。この制御装置11は表示制御を実行する際、隊列走行によるエネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリア3を設定し、その推奨走行エリア3を表示装置12に表示させる。
【0033】
より詳細には、制御装置11は、候補車両検出部11aと、低減効果算出部11bと、走行エリア算出部11cと、映像生成部11dとを備えている。
【0034】
候補車両検出部11aは、車両1の周囲を走行する車両のなかから追従先としての先行車候補車両を検出する。この候補車両検出部11aは、車両検出センサ13から入力される先行車情報を用いて、隊列走行時に自車両の追従先の候補となる車両を検出する。先行車情報は自車両前方の画像とレーダーによる測定結果とを含むため、候補車両検出部11aでは自車両前方の画像とミリ波レーダーの測定結果とに基づいて追従対象となる先行車2を検出することができる。
【0035】
低減効果算出部11bは、先行車候補車両に追従走行した場合に車両1で得られるエネルギ消費の低減効果を算出する。この低減効果算出部11bは候補車両検出部11aで検出された候補車両に対してエネルギ消費の低減効果を算出する。また、第1実施形態の車両1は電気自動車であるため、低減効果算出部11bは追従走行時に消費される電力を低減する効果を算出することになる。つまり、低減効果算出部11bは電費低減効果を算出する。
【0036】
また、低減効果算出部11bは、エネルギ消費の低減効果として、例えば追従走行による空気抵抗の低減効果を算出する。車両1が走行中に受ける空気抵抗は、車両1の前面投影面積と、空気抵抗係数と、圧力とを掛け合わせることにより求まる。また、追従走行により得られる空気抵抗の低減効果は、先行車候補車両の体格と、自車両と先行車候補車両との間の距離(車間距離)と、車速とに基づいて算出することができる。この場合、先行車候補車両の体格と先行車候補車両との車間距離とは、車両検出センサ13で取得した先行車情報に基づいて算出することができる。例えば低減効果算出部11bは、車両検出センサ13に含まれる前方カメラにより取得した自車両前方の画像を解析して、先行車候補車両の体格を算出するとともに、自車両と先行車候補車両との車間距離を算出する。あるいは低減効果算出部11bは、車両検出センサ13に含まれるミリ波レーダーにより取得したレーダーの測定結果に基づいて、先行車候補車両と自車両との車間距離を算出する。車速は車速センサ14により検出可能である。そして、低減効果算出部11bは先行車候補車両の体格と車間距離と車速とに基づいて空気抵抗の低減効果を算出する。一例として、先行車候補車両と自車両との車間距離が短い場合には空気抵抗の低減効果が大きくなり、先行車候補車両と自車両との車間距離が長い場合には空気抵抗の低減効果は小さくなる。
【0037】
走行エリア算出部11cは、エネルギ消費の低減効果に応じて推奨走行エリア3を算出する。推奨走行エリア3は、先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアである。所定車間距離は、レーダークルーズコントロールなどの自動追従システムにおいて設定される短車間距離から中車間距離の範囲に設定される。また、所定車間距離は車速に応じて変化する。つまり、推奨走行エリア3は車速に応じて変化する。
【0038】
例えば、車速と所定車間距離との関係を示すマップ(車速に応じた所定車間距離のデータ)が制御装置11の記憶部に格納されている。このマップは、車速が大きくなると車間距離が長くなり、車速が小さくなると車間距離が短くなる関係に設定されている。走行エリア算出部11cはこのマップを用いて車速に応じた推奨走行エリア3を算出することができる。これにより、走行エリア算出部11cは車両1の車速に応じて推奨走行エリア3を変化させることが可能である。そのため、走行エリア算出部11cは、エネルギ消費の低減効果に応じて低減効果が大きい位置、かつ先行車2の車間距離が必要以上に短くなることを抑制できる位置に推奨走行エリア3を設定することができる。つまり、走行エリア算出部11cは推奨走行エリア3の表示サイズと表示位置を設定する。
【0039】
映像生成部11dは、推奨走行エリア3を表示するための画像を生成する。この映像生成部11dは、走行エリア算出部11cにより算出された推奨走行エリア3に応じて走行エリアの画像を生成する。そして、映像生成部11dにより生成された推奨走行エリア3の画像データが表示装置12に出力される。
【0040】
表示装置12は、隊列走行時の先行車2に対する車両1の走行位置を表示する。この表示装置12は、車両1の車室内に配置され、車両1の運転者が視認可能な位置で画像を表示するディスプレイである。例えば、表示装置12はカーナビゲーション装置やマルチインフォメーションディスプレイやヘッドアップディスプレイなどにより構成されている。つまり、表示装置12は車両1に搭載されたHMI(Human Machine Interface)により構成されている。また、表示装置12は制御装置11により制御され、制御装置11から入力された信号に応じて画像を表示する。
【0041】
表示装置12には、
図1に示すように、先行車候補車両となる先行車2の走行位置と、推奨走行エリア3と、車両1の走行位置とが表示される。推奨走行エリア3は、先行車2から所定距離だけ後方に離れた位置に表示される。これは、車両1が先行車2に近づきすぎることを抑制するためである。さらに、車両1と先行車2と推奨走行エリア3との位置関係をリアルタイムで表示する。そして、車両1が推奨走行エリア3で走行している場合には、推奨走行エリア3の内部に自車両が収まっていることが分かる画像を表示する。このように、先行車2に対するエネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリア3を表示するとともに、その推奨走行エリア3に対する自車両の位置が分かる画像を表示することにより、運転者にとってはどの位置を走行すればよいのかを容易に判断することができる。なお、
図1には、車両1が複数車線の道路を走行中、自車両の前方を走行する先行車2が存在する場合に、表示装置12に表示される画像が例示されている。
【0042】
図3は、表示制御フローを示すフローチャート図である。なお、
図3に示す制御は、車両1が走行中に制御装置11により繰り返し実施される。
【0043】
制御装置11は、先行車候補車両が存在するか否かを判定する(ステップS101)。ステップS101では、自車両の追従先としての先行車候補車両が存在するか否かが判定される。この場合、車両検出センサ13から制御装置11に入力された先行車情報に基づいて、前方カメラの画像とレーダーの測定結果とが取得される。そして、候補車両検出部11aが前方カメラの画像を解析することによって、先行車候補車両を検出したか否かが判定される。
【0044】
先行車候補車両が存在しない場合(ステップS101:No)、この制御ルーチンは終了する。
【0045】
先行車候補車両が存在する場合(ステップS101:Yes)、制御装置11は、先行車候補車両の後方の走行位置におけるエネルギ消費の低減効果を算出する(ステップS102)。ステップS102では、先行車候補車両に追従走行した際に車両1で得られるエネルギ消費の低減効果が算出される。ステップS102の処理は低減効果算出部11bにおいて実施される。
【0046】
そして、制御装置11は、エネルギ消費の低減効果が得られる推奨走行エリア3を表示装置12に表示させる(ステップS103)。この際、制御装置11はエネルギ消費の低減効果に応じた推奨走行エリア3を算出し、推奨走行エリア3の表示位置と表示サイズとを設定する。表示位置は表示装置12における表示領域のうち、先行車候補車両の後方位置に設定される。表示サイズは所定値に設定される。そして、設定された表示位置と表示サイズとに基づいて、映像生成部11dが推奨走行エリア3の画像を生成する。その画像データが制御装置11から表示装置12に出力され、表示装置12に表示される。ステップS103の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
【0047】
このように構成された車両1は、自車両と先行車2との相対位置に関する情報をミリ波レーダー等の自律センサで取得可能である。また、自車両の周囲を走行する車両のうち、追従先としての先行車候補車両を対象にしてエネルギ消費の低減効果を算出し、追従走行時に自車両で得られるエネルギ消費の低減効果に応じた推奨走行エリア3を表示装置12に表示させる。その際、制御装置11は推奨走行エリア3の表示位置を先行車2後方の所定車間距離となる位置に設定し、エネルギ消費の低減効果に応じて推奨走行エリア3の表示サイズを設定する。そして、制御装置11は推奨走行エリア3を自車両と先行車2との位置関係とともに表示装置12に表示させる。
【0048】
以上説明した通り、第1実施形態によれば、隊列走行時の追従先としての先行車候補車両を検出し、その車両に追従した際に得られるエネルギ消費の低減効果に基づいた推奨走行エリア3を視覚的な情報として表示装置12に表示させることができる。これにより、運転者に推奨走行エリア3内での走行を促すことができ、燃費向上と電費向上とに貢献することができる。
【0049】
また、推奨走行エリア3は、先行車2の後方の所定車間距離のエリアに設定されるため、先行車2との車間距離が必要以上に短くなることを抑制することができる。さらに、推奨走行エリア3と自車両と先行車2との位置関係が表示装置12に表示されるため、車両1の運転者にとってはその位置関係が視覚的に分かりやすくなる。
【0050】
なお、車両1は、電気自動車に限定されず、動力源としてエンジンのみを搭載した車両や、動力源としてエンジンとモータとを搭載したハイブリッド車両であってもよい。つまり、低減効果算出部11bは車両1の電費低減効果に限らず、車両1の燃費低減効果を算出することができる。すなわち、ここで説明するエネルギ消費とは、電力消費と燃料消費とのうちの少なくとも一方を含むものである。
【0051】
また、車両1は、運転者による手動操作で走行する手動運転モードと、自動運転モードとを切り替え可能である。そのため、車両1の走行を制御する電子制御装置は、自動運転モード時に推奨走行エリア3の内側に車両1が位置するように車両1を加減速して車間距離を自動調整する駆動制御を実行してもよい。
【0052】
また、車両検出センサ13が前方カメラとミリ波レーダーとを両方とも含む構成について説明したが、これに限定されない。車両検出センサ13は、前方カメラとミリ波レーダーとのうち、いずれか一方のみにより構成されてもよい。例えば、車両検出センサ13が前方カメラのみにより構成される場合、制御装置11は先行車情報に含まれる前方画像を解析することにより、自車両と先行車候補車両との車間距離を算出することができる。あるいは、車両検出センサ13がミリ波レーダーのみにより構成される場合、制御装置11は先行車情報に含まれるレーダーの測定結果に基づいて先行車候補車両の体格を算出することができる。
【0053】
また、先行車候補車両は一台に限らず、複数台であってもよい。つまり、候補車両検出部11aにより検出された先行車候補車両が複数台の場合であっても、低減効果算出部11bは各先行車候補車両に対するエネルギ消費の低減効果を算出し、走行エリア算出部11cはその低減効果に応じて各先行車候補車両に対する推奨走行エリア3を算出することが可能である。
【0054】
また、制御装置11は、推奨走行エリア3のうちエネルギ消費の低減効果が大きい位置をエネルギ消費の低減効果が小さい位置に比べて強調して表示させる強調制御を実行することができる。強調表示として、例えばエネルギ消費の低減効果が大きい位置を他の位置よりも色を濃くして表示する。これにより、エネルギ消費の低減効果が大きい位置での走行を促すことができ、燃費向上と電費向上とにさらに貢献することができる。
【0055】
また、車速と所定車間距離との関係を示すマップは、自車両の車速に限らず、自車両と先行車2との相対車速に応じたマップであってもよい。このマップでは、相対車速として自車両の車速が先行車2の車速よりも大きい場合には車間距離が長くなり、相対車速として自車両の車速が先行車2の車速よりも小さい場合には車間距離が短くなる関係に設定されている。これにより、追従走行時の先行車2との車間距離を適切に設定することができる。
【0056】
また、表示装置12に、推奨走行エリア3と、車両1の走行位置と、先行車2の走行位置とを表示する例について説明したが、これに限定されない。推奨走行エリア3は、先行車候補車両の後方の所定車間距離のエリアであるため、既に先行車2との車間距離が確保されていることを意味する。そのため、表示装置12には、推奨走行エリア3と自車両との位置関係が可視化されていればよくなり、先行車2の走行位置は必ずしも表示しなくてもよい。つまり、制御装置11は車両1の走行位置と推奨走行エリア3とを表示装置12に表示させる表示制御を実行することが可能である。なお、車両1が推奨走行エリア3内で走行しているか否かを運転者に容易に判断してもらうためには自車両の走行位置と推奨走行エリア3との位置関係を表示することが必須となる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、車両の乗員が所有する携帯端末のディスプレイに推奨走行エリア3を表示させるように構成されている。なお、第2実施形態の説明では、第1実施形態と同様の構成については説明を省略し、その参照符号を引用する。
【0058】
図4は、第2実施形態の構成を説明するためのブロック図である。第2実施形態では、車両1の制御装置11で生成された推奨走行エリア3の画像が携帯端末20の表示部21に表示される。つまり、携帯端末側の表示部21は表示装置として機能する。車両1と携帯端末20とは通信可能に接続されている。
【0059】
車両1は、制御装置11と、車両検出センサ13と、車速センサ14とを備えている。制御装置11は、携帯端末20との間で情報を送受信する通信部を含んで構成されている。この通信部は、映像生成部11dにより生成された推奨走行エリア3の画像データを携帯端末20に送信する。
【0060】
携帯端末20は、車両1の乗員が所持するスマートホンなどの携帯端末により構成されている。この携帯端末20は、表示部21と、通信部22と、制御部23とを備えている。
【0061】
表示部21は、携帯端末20のディスプレイである。表示部21には、車両1から入力された推奨走行エリア3の画像データが表示される。
【0062】
通信部22は、車両1との間で通信を行い、車両1から送信された推奨走行エリア3の画像データを受信する。携帯端末20は、車両1と有線接続された状態で情報を送受信してもよく、あるいは無線接続された状態で無線通信により情報を送受信してもよい。また、無線通信の方法も、近距離通信であるか、遠距離通信であるかは特に限定されない。
【0063】
制御部23は、表示部21を制御する制御部であり、通信部22により取得した推奨走行エリア3の画像データを表示部21に表示させる。制御部23は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェースを備えたマイクロコンピュータを含んで構成されている。なお、第2実施形態では、表示装置の制御装置に制御部23が含まれる。
【0064】
このように構成された第2実施形態の車両1および携帯端末20では、車両1が走行中、車両1の運転者が視認可能な位置に携帯端末20の表示部21が配置された状態において表示制御が実行される。この制御の流れを
図5および
図6に例示する。
【0065】
図5は、第2実施形態の車両側での制御フローを示すフローチャート図である。なお、
図5に示すステップS201~S203は、
図3に示すステップS101~S103と同様であるため説明を省略する。また、
図5に示す制御は、車両1が走行中に制御装置11により繰り返し実施される。
【0066】
ステップS203の処理を実施すると、制御装置11は、推奨走行エリア3の画像データを携帯端末20に表示させる表示指示を出力する(ステップS204)。ステップS204では、車両1の車室内に持ち込まれている携帯端末20に向けて推奨走行エリア3の画像データが送信される。制御装置11は、例えば携帯端末20のカメラにより車両1の前方を撮像している状態にある携帯端末20に向けて推奨走行エリア3の画像データを送信する。ステップS204の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
【0067】
図6は、第2実施形態の携帯端末側での制御フローを示すフローチャート図である。
図6に示す制御は、制御部23により繰り返し実施される。
【0068】
携帯端末20は、車両1からの表示指示を受信したか否かを判定する(ステップS301)。ステップS301では、車両1から送信された推奨走行エリア3の画像データを受信したか否かが判定される。
【0069】
車両1からの表示指示を受信しない場合(ステップS301:No)、この制御ルーチンは終了する。
【0070】
車両1からの表示指示を受信した場合(ステップS301:Yes)、制御部23は、エネルギ消費の低減効果が得られる推奨走行エリア3を表示部21に表示させる(ステップS302)。ステップS302では、車両1から受信した推奨走行エリア3の画像データが表示部21に表示される。ステップS302の処理を実施すると、この制御ルーチンは終了する。
【0071】
第2実施形態によれば、車両1の車室内に持ち込まれた携帯端末20の表示部21に推奨走行エリア3を表示させることが可能になる。また、表示装置が車載装置に限定されないため、表示装置の適用範囲が広がる。
【0072】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第1実施形態において車両1が備えていた推奨走行エリア3を表示するための機能の全てを、車両1の車室内に持ち込まれた携帯端末に持たせている。なお、第3実施形態の説明では、第1実施形態および第2実施形態と同様の構成については説明を省略し、その参照符号を引用する。
【0073】
図7は、第3実施形態の構成を説明するためのブロック図である。第3実施形態では、車両1の車室内に持ち込まれた携帯端末30により、先行車2を検出するとともに、推奨走行エリア3の表示を行う。携帯端末30は、制御装置31と、表示部32と、カメラ33と、GPS受信機34とを備えている。
【0074】
制御装置31は、電子制御装置により構成されており、ハード構成として、第1実施形態の制御装置11と同様に構成されている。この制御装置31は、携帯端末30が持ち込まれている車両1を所定の車両とし、この所定の車両の前方を走行する先行車2に関する情報を表示部32に表示する表示制御を実行する。
【0075】
また、制御装置31には、携帯端末30に設けられた各種センサからの信号が入力される。例えば、カメラ33やGPS受信機34からの信号が制御装置31に入力される。
【0076】
カメラ33は、携帯端末30に搭載されているカメラであり、携帯端末30が車両1に持ち込まれた状態において、車両1の前方を走行する先行車2を検出するためのセンサとして機能する。携帯端末30は、カメラ33が車両1の車室内から車両1の前方を撮像するような位置および向きに配置されている。また、カメラ33は前方カメラとしての画像を含む先行車情報を制御装置31に出力する。
【0077】
GPS受信機34は、GPS衛星からの信号を受信するものであり、携帯端末30が車両1に持ち込まれた状態において、車両1の車速を検出する車速センサとして機能する。GPS受信機34により取得された位置情報は制御装置31に出力される。携帯端末30はGPS受信機34により自身の位置情報を取得可能であるため、制御装置31はその位置情報に基づいて、自身の移動速度、すなわち車両1の車速を算出することができる。
【0078】
そして、制御装置31は、携帯端末30が持ち込まれた所定の車両について、カメラ33とGPS受信機34とから入力された信号に基づいて、車両1の前方を走行する先行車2に対する推奨走行エリア3を表示する表示制御を実行する。その際、制御装置31から表示部32に推奨走行エリア3の画像データが出力される。
【0079】
より詳細には、制御装置31は、候補車両検出部31aと、低減効果算出部31bと、走行エリア算出部31cと、映像生成部31dとを備えている。なお、この候補車両検出部31a、低減効果算出部31b、走行エリア算出部31c、映像生成部31dは、機能的には第1実施形態における候補車両検出部11a、低減効果算出部11b、走行エリア算出部11c、映像生成部11dと同様である。
【0080】
候補車両検出部31aは、カメラ33から入力された所定の車両前方の画像を解析することにより、所定の車両の前方を走行する先行車2を検出する。
【0081】
低減効果算出部31bは、カメラ33から取得した先行車情報に基づいて先行車候補車両の体格および車間距離を算出するとともに、GPS受信機34から取得した位置情報に基づいて車速を算出する。そして、低減効果算出部31bはエネルギ消費の低減効果を算出する。
【0082】
走行エリア算出部31cは、低減効果算出部31bにより算出されたエネルギ消費の低減効果に基づいて推奨走行エリア3を算出する。
【0083】
映像生成部31dは、走行エリア算出部31cにより算出された推奨走行エリア3に関する画像データを生成する。映像生成部31dにより生成された推奨走行エリア3の画像データが表示部32に出力される。
【0084】
表示部32は、携帯端末20のディスプレイである。この表示部32には、映像生成部31dにより生成された推奨走行エリア3の画像が表示される。
【0085】
第3実施形態によれば、車両1の車室内に持ち込まれた携帯端末30を用いて、車両1の前方を走行する先行車後方の走行位置に関する推奨走行エリア3の表示を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0086】
1 車両
2 先行車
3 推奨走行エリア
11 制御装置
11a 候補車両検出部
11b 低減効果算出部
11c 走行エリア算出部
11d 映像生成部
12 表示装置
13 車両検出センサ
14 車速センサ
20,30 携帯端末
21,32 表示部
31 制御装置