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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 13/00 20060101AFI20250401BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20250401BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20250401BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20250401BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B05C13/00
B05C5/02
B05D1/26 Z
B05D3/00 C
B05D3/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021206603
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023091811
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2024-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱川 健史
(72)【発明者】
【氏名】堀内 展雄
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148761(JP,A)
【文献】特開2014-236016(JP,A)
【文献】特開平10-073796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 13/00
B05C 5/02
B05D 1/26
B05D 3/00
B05D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、
前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、
を備える塗布装置であって、
前記ステージは、製品精度が要求される塗布膜が形成される塗布領域を吸引して保持する塗布領域保持部と、形成された塗布膜に対して製品精度が要求されない除外領域を吸引して保持する除外領域保持部と、を有しており、
前記除外領域保持部は、前記塗布領域を囲うように設けられ、前記塗布領域保持部を解除した状態で前記基板をステージ上に保持可能に形成されており、
前記除外領域保持部および前記塗布領域保持部は、吸引力を発生する吸引孔と、この吸引孔に連通しステージの表面に開口する吸引溝とで形成されており、前記除外領域保持部の前記吸引溝と、前記塗布領域保持部の前記吸引溝は、非連続で形成され、
前記除外領域保持部には、前記吸引孔及び前記吸引溝とは別に前記ステージ内に埋設される吸引パッドを有しており、前記吸引パッドは、前記ステージの表面より突出する待機姿勢と、ステージ内に収容される吸着姿勢とに変位可能に形成されており、
前記塗布領域保持部と除外領域保持部により基板全体が吸着保持された後、除外領域保持部の吸引を維持した状態で塗布領域保持部を解除する場合には、空気を強制的に供給することによって塗布領域保持部の吸着が解除されることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
基板を載置するステージと、
前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、
前記ステージは、製品精度が要求される塗布膜が形成される塗布領域を吸引して保持する塗布領域保持部と、形成された塗布膜に対して製品精度が要求されない除外領域を吸引して保持する除外領域保持部と、
を備える塗布装置における塗布方法であって、
製品精度が要求される塗布膜が形成される基板の塗布領域を吸引して保持する塗布領域保持工程と、
形成された塗布膜に対して製品精度が要求されない除外領域を吸引して保持する除外領域保持工程と、
前記塗布領域が保持された状態を解除する塗布領域解除工程と、
を有しており、
前記除外領域保持部および前記塗布領域保持部は、吸引力を発生する吸引孔と、この吸引孔に連通しステージの表面に開口する吸引溝とで形成されており、前記除外領域保持部の前記吸引溝と、前記塗布領域保持部の前記吸引溝は、非連続で形成され、
前記除外領域保持部には、前記吸引孔及び前記吸引溝とは別に前記ステージ内に埋設される吸引パッドを有しており、前記吸引パッドは、前記ステージの表面より突出する待機姿勢と、ステージ内に収容される吸着姿勢とに変位可能に形成されており、
前記塗布領域保持工程と前記除外領域保持工程が行われることにより、前記ステージの表面上に基板が保持された後、前記塗布領域解除工程が行われることにより、前記塗布領域の保持状態が解除された状態で基板上に塗布膜が形成され
前記塗布領域保持工程と除外領域保持工程により基板全体が吸着保持された後、除外領域保持部の吸引を維持した状態で塗布領域保持を解除する場合には、空気を強制的に供給することによって塗布領域保持部の吸着が解除されることを特徴とする塗布方法。
【請求項3】
前記塗布領域保持工程と前記除外領域保持工程により、
ステージの表面上の基板のうち、少なくとも前記塗布ユニットが進入する側の基板の所定エリアが吸着保持されると、前記塗布ユニットが基板上に進入し、塗布膜が形成されることを特徴とする請求項に記載の塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布液を吐出する塗布ユニットと基板とを相対的に移動させて、基板上に塗布膜を形成する塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラスからなる基板上にレジスト液等の塗布液が塗布されたもの(塗布基板という)が使用されている。この塗布基板は、塗布液を均一に塗布する塗布装置によって形成されている。この塗布装置は、基板を載置するステージと、塗布液を吐出する塗布ユニットとを有しており、塗布ユニットのスリットノズルから塗布液を吐出させながら、基板と塗布ユニットとを相対的に一方向に移動させることにより、均一厚さの塗布膜が形成された基板が形成されるようになっている。
【0003】
この塗布装置のステージには、基板が載置される載置面に基板を吸着することによって保持できるように構成されている。具体的には、図8に示すように、ステージ100の載置面101全体には吸引溝102が格子状に形成されており、吸引溝102内に形成された吸引孔103と真空ポンプ104とが接続されている。そして、基板Wが載置面101に載置された状態で真空ポンプ104を作動させると、吸引孔103を通じて吸引溝102全体に吸引力が発生し、基板Wを載置面101に吸着保持することができる。すなわち、基板W全体がステージ100の載置面101に沿って水平な姿勢を維持した状態に保持される。この状態で塗布液が塗布されることにより、基板W上に均一厚さの塗布膜が形成されるようになっている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-250206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、基板Wとしてガラスだけでなく、ガラスよりも薄く柔軟性を有するフィルムが使用されており、このフィルムで形成された基板W上に均一厚さの塗布膜を形成することが要求されている。ところが、ステージ100の載置面101上に何らかの要因で異物Pが存在している場合、均一厚さの塗布膜を形成するのが困難になるという問題があった。すなわち、ステージ100の載置面101上に異物Pが存在している場合、そのまま載置面101上に基板Wを載置し(図9(a))、真空ポンプ104を作動させて吸着させると、図9(b)に示すように、基板Wが強い吸引力に吸引されるため、異物Pが存在している部分の基板Wが異物Pに密着して異物Pの形状に沿って変形する。この状態で塗布膜を形成すると、異物Pが存在している部分が平坦ではなく急峻に変形していることにより、その部分に塗布ムラが形成され、基板W上に形成される塗布膜の均一性が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ステージと基板との間に異物が存在している場合であっても、塗布ムラが形成されるのを抑え、均一厚さの塗布膜を形成することができる塗布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の塗布装置は、基板を載置するステージと、前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、を備える塗布装置であって、前記ステージは、製品精度が要求される塗布膜が形成される塗布領域を吸引して保持する塗布領域保持部と、形成された塗布膜に対して製品精度が要求されない除外領域を吸引して保持する除外領域保持部と、を有しており、前記除外領域保持部は、前記塗布領域を囲うように設けられ、前記塗布領域保持部を解除した状態で前記基板をステージ上に保持可能に形成されており、前記除外領域保持部および前記塗布領域保持部は、吸引力を発生する吸引孔と、この吸引孔に連通しステージの表面に開口する吸引溝とで形成されており、前記除外領域保持部の前記吸引溝と、前記塗布領域保持部の前記吸引溝は、非連続で形成され、前記除外領域保持部には、前記吸引孔及び前記吸引溝とは別に前記ステージ内に埋設される吸引パッドを有しており、前記吸引パッドは、前記ステージの表面より突出する待機姿勢と、ステージ内に収容される吸着姿勢とに変位可能に形成されており、前記塗布領域保持部と除外領域保持部により基板全体が吸着保持された後、除外領域保持部の吸引を維持した状態で塗布領域保持部を解除する場合には、空気を強制的に供給することによって塗布領域保持部の吸着が解除されることを特徴としている。
【0008】
上記塗布装置によれば、除外領域保持部が塗布領域を囲うように設けられ、塗布領域保持部を解除した状態で基板を保持できることにより、ステージと基板との間に異物が存在している場合であっても塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。すなわち、塗布領域保持部と除外領域保持部により基板全体を吸引して吸着保持すると、ステージ上に異物が存在している場合、その異物が存在している部分が異物に密着し異物に沿うように急峻に変形する。そして、除外領域保持部の吸引を維持した状態で塗布領域保持部を解除して基板の塗布領域への吸着状態が解除されると、基板の塗布領域は、異物の密着が解除されて基板の急峻な変形が緩和され、除外領域の吸着保持状態を維持しつつ、異物が存在している部分が平坦に近い形状になる。この状態で塗布膜を形成すると、異物が存在している状態であっても、その部分の基板の変形が穏やかになっているため塗布ムラが目立つことなく、全体として均一な塗布膜を形成することができる。また、塗布領域保持部と除外領域保持部の吸引溝が非連続で形成されているため、これらを独立して作動させることができる。したがって、塗布領域保持部と除外領域保持部とで基板を吸引保持した後、塗布領域保持部のみを解除し、除外領域保持部のみで基板を吸引保持することができる。また、基板の反りにより、基板の除外領域がステージから浮き上がっている場合でも、ステージの表面より突出する待機姿勢の吸引パッドにより吸着し、吸着した結果、吸引パッドが収縮してステージ内に収容される姿勢の吸着姿勢に変位することにより、反りのある基板であっても基板をステージ上に保持することができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために本発明の塗布方法は、基板を載置するステージと、前記ステージの表面に載置された前記基板に対し相対的に一方向に移動しつつ塗布液を吐出することにより前記基板上に塗布膜を形成する塗布ユニットと、を備える塗布装置における塗布方法であって、製品精度が要求される塗布膜が形成される基板の塗布領域を吸引して保持する塗布領域保持工程と、形成された塗布膜に対して製品精度が要求されない除外領域を吸引して保持する除外領域保持工程と、前記塗布領域が保持された状態を解除する塗布領域解除工程と、を有しており、前記除外領域保持部および前記塗布領域保持部は、吸引力を発生する吸引孔と、この吸引孔に連通しステージの表面に開口する吸引溝とで形成されており、前記除外領域保持部の前記吸引溝と、前記塗布領域保持部の前記吸引溝は、非連続で形成され、前記除外領域保持部には、前記吸引孔及び前記吸引溝とは別に前記ステージ内に埋設される吸引パッドを有しており、前記吸引パッドは、前記ステージの表面より突出する待機姿勢と、ステージ内に収容される吸着姿勢とに変位可能に形成されており、前記塗布領域保持工程と前記除外領域保持工程が行われることにより、前記ステージの表面上に基板が保持された後、前記塗布領域解除工程が行われることにより、前記塗布領域の保持状態が解除された状態で基板上に塗布膜が形成され、前記塗布領域保持工程と除外領域保持工程により基板全体が吸着保持された後、除外領域保持部の吸引を維持した状態で塗布領域保持を解除する場合には、空気を強制的に供給することによって塗布領域保持部の吸着が解除されることを特徴としている。
【0014】
上記塗布方法によれば、塗布領域保持工程と除外領域保持工程が行われることにより、ステージの表面上に基板が保持された後、塗布領域解除工程が行われることにより、ステージと基板との間に異物が存在している場合であっても塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。すなわち、塗布領域保持工程と除外領域保持工程により基板全体を吸引して吸着保持すると、ステージ上に異物が存在している場合、その異物が存在している部分が異物に密着し異物に沿うように急峻に変形する。その後、塗布領域解除工程が行われることにより、異物への密着が解除されて基板の急峻な変形が緩和され、異物が存在している部分が平坦に近い形状になる。この状態で塗布膜を形成すると、異物が存在している状態であっても、その部分の基板の変形が穏やかになっているため塗布ムラが目立つことなく、全体として均一な塗布膜を形成することができる。
【0015】
また、前記塗布領域保持工程と前記除外領域保持工程により、ステージの表面上の基板のうち、少なくとも前記塗布ユニットが進入する側の基板の所定エリアが吸着保持されると、前記塗布ユニットが基板上に進入し、塗布膜が形成される構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、塗布ユニットが進入する側の基板の所定エリアが吸着保持されると、塗布ユニットが基板上に進入して塗布を開始することにより、塗布膜を形成するタクトタイムを短縮させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の塗布装置によれば、ステージと基板との間に異物が存在している場合であっても、塗布ムラが形成されるのを抑え、均一厚さの塗布膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における塗布装置の外観を概略的に示す斜視図である。
図2】上記塗布装置におけるステージを示す図である。
図3】上記塗布装置における吸着パッドを示す図であり、(a)は吸着パッドが待機姿勢の状態を示す図、(b)は吸着パッドが吸着姿勢の状態を示す図である。
図4】上記塗布装置の基板保持動作を示すフローチャートである。
図5】上記塗布装置の塗布処理動作を示すフローチャートである。
図6】ステージに搬入された基板の状態を示す概略図であり、(a)は搬入された基板をリフトピンで受け取った状態を示す図、(b)は塗布開始側から順に基板を載置している状態を示す図、(c)はエリア1の吸着保持が完了し、塗布準備動作が行われている状態を示す図である。
図7】ステージに搬入された基板の状態を示す概略図であり、(a)は基板全体が除外領域保持部、塗布領域保持部により吸着保持された状態を示す図であり、(b)は塗布領域保持部が解除され、除外領域のみで吸着保持された状態を示す図であり、(c)は(b)において塗布膜の形成が完了した状態を示す図である。
図8】従来の塗布装置におけるステージを示す図である。
図9】従来のステージ上にフィルム基板を保持させた状態を示す図であり、(a)は、吸引力を発生させる前の状態を示す図であり、(b)は、吸引力を発生させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における塗布装置の外観を概略的に示す斜視図である。
【0020】
塗布装置1は、基板W上に薬液やレジスト液等の液状物(以下、塗布液と称す)の塗布膜Mを形成するものであり、基台2と、基板Wを載置するためのステージ21と、このステージ21に対し特定方向に移動可能に構成される塗布ユニット30とを備えている。そして、ステージ21に基板Wが供給されると、基板W上を塗布ユニット30が移動し、塗布ユニット30から塗布液が吐出され基板W上に均一厚さの塗布膜Mが形成される。
【0021】
なお、以下の説明では、この塗布ユニット30が移動する方向(塗布方向)をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸およびY軸方向の双方に直交する方向をZ軸方向として説明を進めることとする。
【0022】
本実施形態における基板Wは、厚みが0.01~0.5mm程度の矩形状の基板である。この基板Wは、例えば、ガラス、フィルム等で形成されており、可撓性を有している。
【0023】
塗布ユニット30は、基板W上に塗布液を吐出して塗布膜Mを形成するものである。この塗布ユニット30は、図1に示すように、基台2と連結される脚部31とY軸方向に延びる口金部34とを有しており、基台2上をY軸方向に跨いだ状態でX軸方向に移動可能に取り付けられている。具体的には、基台2のY軸方向両端部分にはそれぞれX軸方向に延びるレール22が設けられており、脚部31がこのレール22にスライド自在に取り付けられている。そして、脚部31にはリニアモータ33が取り付けられており、このリニアモータ33を駆動制御することにより、塗布ユニット30がX軸方向に移動し、任意の位置で停止することができる。
【0024】
また、塗布ユニット30の脚部31には、塗布液を塗布する口金部34が取り付けられている。具体的には、この脚部31にはZ軸方向に延びるレール37と、このレール37に沿ってスライドするスライダ35が設けられており、これらのスライダ35と口金部34とが連結されている。そして、スライダ35にはサーボモータにより駆動されるボールねじ機構が取り付けられており、このサーボモータを駆動制御することにより、スライダ35がZ軸方向に移動するとともに、任意の位置で停止できるようになっている。すなわち、口金部34が、ステージ21に保持された基板Wに対して接離可能に支持されている。
【0025】
口金部34は、塗布液を吐出して基板W上に塗布膜Mを形成するものである。この口金部34は、一方向に延びる形状を有する柱状部材であり、塗布ユニット30の走行方向(X軸方向)とほぼ直交するY軸方向に延びるように設けられている。この口金部34には、ステージ21と対向する面に長手方向に延びるスリットノズルが形成されており、口金部34に供給された塗布液がスリットノズルから長手方向に亘って一様に吐出されるようになっている。したがって、このスリットノズルから塗布液を吐出させた状態で塗布ユニット30をX軸方向に走行させることにより、スリットノズルの長手方向に亘って基板W上に一定厚さの塗布膜Mが形成されるようになっている。
【0026】
また、基台2には、その中央部分にステージ21が配置されている。このステージ21は、搬入された基板Wを載置するものである。ステージ21は、石材製の直方体形状に形成されており、基板Wを載置させる載置面21a(ステージ21の表面)がほぼ平坦状に形成されている。
【0027】
ステージ21には、供給された基板Wを昇降動作させる基板昇降機構が設けられている。具体的には、ステージ21の載置面21aには複数のピン孔41が形成されており、このピン孔41にはZ軸方向に昇降動作可能なリフトピン25が埋設されている。すなわち、ステージ21の表面からリフトピン25を突出させた状態(図6(a)参照)で基板Wが搬入されるとリフトピン25の先端部分が基板Wに当接して基板Wを保持することができる。そして、その状態からリフトピン25を下降させてピン孔41に収容させることにより、基板Wをステージ21の載置面21aに載置することができるようになっている。本実施形態では、リフトピン25は、塗布開始側(図2において左側)から順に塗布方向に向かって収容されるように設定されている。すなわち、リフトピン25で支持された基板Wは、リフトピン25が収容されることにより、基板W全体が一度に載置されるのではなく、塗布開始側から順に載置面21aに載置されるようになっている(図6(b)参照)。
【0028】
また、このステージ21には、基板保持手段5(図2参照)が設けられており、この基板保持手段5により基板Wが保持されるようになっている。この基板保持手段5には、塗布領域保持部50と除外領域保持部60とを有している。ここで、基板Wには、精度的に製品として有効な塗布膜Mが形成される塗布領域Cと、精度的に塗布膜Mの製品としての精度が要求されない除外領域Eが設定されており、除外領域Eは、塗布領域Cを囲うように設けられている。本実施形態では、基板Wの中央部分に矩形状に塗布領域Cが設定されており、遮断平坦部24を介して塗布領域Cの全周を覆うように除外領域Eが設定されている。すなわち、塗布領域保持部50は、この塗布領域Cを保持するためのものであり、除外領域保持部60は、除外領域Eを保持するためのものである。そして、ステージ21は、塗布方向にエリアが分かれており、図2の例では、塗布開始側から順にエリア1、エリア2、エリア3に設定されている。すなわち、エリア1~エリア3には、除外領域保持部60の一部と塗布領域保持部50の一部がそれぞれ含まれるように設定されており、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生させて基板Wを保持できるようになっている。
【0029】
塗布領域保持部50は、ステージ21の中央部分、すなわち、ステージ21上に基板Wが載置された場合に、塗布膜Mが形成される領域に対応した領域に設けられている。図2の例では、ステージ21の中央部分に矩形状に形成されている。これにより、基板Wがステージ21に対して、基板Wの塗布領域Cが塗布領域保持部50に位置するように載置されると、塗布領域保持部50に吸引力が発生することにより基板Wの塗布領域Cが吸着されて保持されるようになっている。
【0030】
塗布領域保持部50は、基板Wを吸着して保持する吸引部51を有している。具体的には、吸引部51は、ステージ21の載置面21aに形成される吸引溝52と吸引孔53とを有しており、この吸引溝52及び吸引孔53により吸引力を発生させて基板Wを載置面21aに保持できるようになっている。すなわち、ステージ21の載置面21aには、所定の深さで形成される吸引溝52がX軸方向及びY軸方向にほぼ等間隔で並んで配置されており、それぞれが互いに交差するように格子状に配置されている。
【0031】
また、吸引溝52が交差する部分には、吸引溝52の幅よりも大きな径を有する吸引孔53が設けられており、この吸引孔53と真空ポンプ54及びコンプレッサ55等の吸排気ユニットとが配管56を通じて連結されている。そして、その配管56に設けられた吸気弁57を開くと、吸引孔53に吸引力が発生し、吸引溝52全体に亘って吸引力が発生するようになっている。また、配管56に設けられた圧空弁58を開くと吸引孔53に空気が供給され、吸引溝52の吸引力が解除される(吸着破壊)。これにより、ステージ21の載置面21aに基板Wが載置された状態で圧空弁58を閉じ吸気弁57を開くと、吸引溝52全体に吸引力が発生し基板Wの塗布領域Cが載置面21aに吸着保持される。そして、この状態から吸気弁57を閉じて圧空弁58を開くと載置面21aと基板Wとの間に空気が供給されることにより吸引溝52の吸引力が解除され、保持状態であった基板Wが載置面21aから解放される。すなわち、塗布領域保持部50では、載置された基板Wの塗布領域Cを吸着することにより固定的に保持し、空気を供給することにより吸引力を解除して塗布領域Cの吸着状態を解除できるようになっている。
【0032】
また、本実施形態では、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生させることができるようになっている。すなわち、吸引孔53は、エリア1~エリア3毎に吸引孔53が配置されており、図2の例では、エリア1、エリア3にそれぞれ2つ配置され、エリア2に4つ配置されている。そして、配管56には、バルブ59a、バルブ59b、バルブ59cが設けられており、これらのバルブ59a~バルブ59cを切り替えることにより、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生、解除が行えるようになっている。すなわち、バルブ59aは、エリア1の吸引孔53と連通状態を切り替えることでき、バルブ59bは、エリア2の吸引孔53と連通状態を切り替えることができ、バルブ59cは、エリア3の吸引孔53と連通状態を切り替えることができる。そのため、例えば、バルブ59aを開状態、バルブ59b、バルブ59cを閉状態で真空ポンプ54を作動させると、エリア1の塗布領域保持部50のみに吸引力を発生させることができ、コンプレッサ55を作動させると、エリア1の塗布領域保持部50のみ、吸引力が解除されるようになっている。
【0033】
除外領域保持部60は、ステージ21において、塗布領域保持部50を除いた部分に設けられている。図2の例では、除外領域保持部60は、塗布領域保持部50を囲うように塗布領域保持部50の外側に設けられている。すなわち、基板Wがステージ21に載置されると、基板Wの除外領域Eが除外領域保持部60に位置し、除外領域保持部60により基板Wの除外領域Eが保持されるようになっている。
【0034】
この除外領域保持部60は、塗布領域保持部50と同様に、基板Wを吸着して保持する吸引部61を有している。具体的には、吸引部61は、ステージ21の載置面21aに形成される吸引溝62と吸引孔63とを有しており、本実施形態では、塗布領域保持部50を囲うように一様に配置されている。
【0035】
この吸引部61は、吸引溝62及び吸引孔63に吸引力を発生させて基板Wを載置面21aに保持できるようになっている。すなわち、ステージ21の載置面21aには、所定の深さで形成される吸引溝62がX軸方向及びY軸方向にほぼ等間隔で並んで配置されており、それぞれが互いに交差するように格子状に配置されている。
【0036】
また、吸引溝62が交差する部分には、吸引溝62の幅よりも大きな径を有する吸引孔63が設けられており、この吸引孔63と真空ポンプ64及びコンプレッサ65等の吸排気ユニットとが配管66を通じて連結されている。そして、その配管66に設けられた吸気弁67を開くと、吸引孔63に吸引力が発生し、吸引溝62全体に亘って吸引力が発生するようになっている。また、配管66に設けられた圧空弁68を開くと吸引孔63に空気が供給され、吸引溝62の吸引力が解除される(吸着破壊)。これにより、ステージ21の載置面21aに基板Wが載置された状態で圧空弁68を閉じ吸気弁67を開くと、吸引溝62全体に吸引力が発生し基板Wの除外領域Eが載置面21aに吸着保持される。そして、この状態から吸気弁67を閉じて圧空弁68を開くと載置面21aと基板Wとの間に空気が供給されることにより吸引溝62の吸引力が解除され、保持状態であった基板Wが載置面21aから解放される。すなわち、除外領域保持部60では、載置された基板Wの塗布領域Cを吸着することにより固定的に保持し、空気を供給することにより吸引力を解除して除外領域Eの吸着状態を解除できるようになっている。
【0037】
また、除外領域保持部60は、塗布領域保持部50と同様に、吸引部61は、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生させることができるようになっている。すなわち、吸引孔63は、エリア1~エリア3毎に配置されており、図2の例では、エリア1、エリア3にそれぞれ4つ配置され、エリア2に2つ配置されている。そして、配管66には、バルブ69a、バルブ69b、バルブ69cが設けられており、これらのバルブ69a~バルブ69cを切り替えることにより、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生、解除が行えるようになっている。すなわち、バルブ69aは、エリア1の吸引孔63と連通状態を切り替えることでき、バルブ69bは、エリア2の吸引孔63と連通状態を切り替えることができ、バルブ69cは、エリア3の吸引孔63と連通状態を切り替えることができる。そのため、例えば、バルブ69aを開状態、バルブ69b、バルブ69cを閉状態で真空ポンプ64を作動させると、エリア1の吸引部61のみに吸引力を発生させることができる。そして、バルブ69b、バルブ69cを順に開状態にすることにより、基板Wのうち、エリア2、エリア3の領域を順次、吸引部61で吸着され、基板Wの除外領域Eを載置面21aに吸着保持させることができる。なお、バルブ69a~バルブ69cを開状態で、コンプレッサ65を作動させると、吸引部61の吸引力が解除される。
【0038】
また、除外領域保持部60には、吸引パッド74が設けられている。この吸引パッド74は、吸引部61である吸引溝62及び吸引孔63とは別に基板Wを吸着保持するためのものであり、吸引部61よりも外側に設けられている。すなわち、この吸引パッド74により、反りにより変形した基板Wであっても、安定して吸着保持させることができる。
【0039】
吸引パッド74は、図3に示すように、吸引部61の外側に開口部75が形成されており、この開口部75に埋設されて設けられている。すなわち、吸引パッド74は、弾性変形可能な蛇腹形状に形成されており、その先端が開口部75から突出した状態で設けられている。具体的には、基板Wがステージ21の載置面21aに載置された状態で、基板Wに反りが生じて浮いていた場合でも、浮いた基板Wに先端が当接できる程度に突出量が調節されている。また、吸引パッド74は、真空ポンプ64及びコンプレッサ65等の吸排気ユニットが配管70を通じて連結されている。そして、その配管70に設けられた吸気弁71を開くと、吸引パッド74に吸引力が発生し、吸引力が発生するようになっている。また、配管70に設けられた圧空弁72を開くと吸引パッド74に空気が供給され、吸引パッド74の吸引力が解除される(吸着破壊)。すなわち、反りにより載置面21aから浮いた基板Wに当接した状態で真空ポンプ64を作動させると、基板Wを吸着しつつ、その吸着状態を保ったまま、吸引パッド74が収縮して開口部75内に収容され、反りにより浮いた基板Wが載置面21aに載置された状態で保持される。このように、吸引パッド74は、ステージ21の載置面21aから突出した待機姿勢から、真空ポンプ64を作動させて基板Wを吸着保持しつつ、開口部75内に収容される吸着姿勢に変位することができるようになっている。
【0040】
また、吸引パッド74は、エリア1~エリア3毎に吸引力を発生させることができるようになっている。すなわち、配管70には、バルブ73a、バルブ73b、バルブ73cが設けられており、これらを切り替えることにより、エリア1~エリア3毎にそれぞれ独立して吸引パッド74に吸引力を発生、解除が行えるようになっている。すなわち、バルブ73aを開状態、バルブ73b、バルブ73cを閉状態で真空ポンプ64を作動させると、エリア1の吸引パッド74のみに吸引力を発生させることができ、基板Wのうち、エリア1の領域を載置面21a上に吸着保持させることができる。そして、バルブ73b、バルブ73cを順に開状態にすることにより、基板Wのうち、エリア2、エリア3の領域を順次、吸引パッド74で吸着され、基板Wの除外領域Eを載置面21aに吸着保持させることができる。
【0041】
なお、配管56、配管66、配管70には、配管56、66、70内の流量を計測する吸着センサ(不図示)が設けられている。具体的には、バルブ59a、59b、59cとステージ21との間の配管56、バルブ69a、69b、69cとステージ21との間の配管66、バルブ73a、73b、73cとステージ21との間の配管70、にそれぞれ設けられている。すなわち、基板Wが載置面21aに吸着保持されると、配管56、66、70の流量が変化するため、その変化を計測することにより、エリア1~エリア3において、各エリア毎に基板Wが吸着されたか否かを判断できるようになっている。
【0042】
次に、塗布装置1の動作について説明する。ここで、図4は、基板保持動作を示すフローチャート、図5は、塗布処理動作を示すフローチャートであり、図6図7は、搬入された基板Wの状態を示す概略図である。
【0043】
まず、ステップS1において、基板Wの搬入が行われる。具体的には、ロボットハンド等に保持された基板Wがステージ21の上方に搬送されると、ピン孔41からリフトピン25が突出し、この状態でロボットハンド等が下降することにより、基板Wの受け渡しが行われる。すなわち、リフトピン25の先端部分に基板Wが載置される(図6(a))。そして、ロボットハンド等が退出し、リフトピン25が下降することにより基板Wがステージ21の載置面21a上に配置され、基板Wの搬入が完了する。
【0044】
次に、基板Wをステージ21に吸着保持させる基板保持工程が行われる。本実施形態では、基板Wに対してエリア1~エリア3毎に段階的に保持され、塗布開始側のエリア1から順に吸着保持される。
【0045】
すなわち、ステップS2によりエリア1吸着工程が行われる。このエリア1吸着工程は、基板Wに設定されたエリア1の領域をステージ21に吸着保持する工程である。具体的には、塗布領域保持部50に吸引力を発生させる塗布領域保持工程と、除外領域保持部60に吸引力を発生させる除外領域保持工程が行われ、塗布領域C及び除外領域Eのうち、エリア1に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。すなわち、バルブ73a、69a、59aを開状態、バルブ73b、73c、69b、69c、59b、59cを閉状態にして、真空ポンプ64、54を作動させ、エリア1に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。そして、リフトピン25を下降させることにより基板Wをステージ21の載置面21aに載置させる。具体的には、図6(b)に示すように、リフトピン25は、塗布開始側から順に下降し、基板Wの塗布開始側から吸着保持される。すなわち、リフトピン25の下降により基板Wの塗布開始側端部が下降すると、待機姿勢の吸引パッド74に当接することにより基板Wの塗布開始側端部が吸引される。そして、吸引パッド74が基板Wを吸引しつつ収縮し、吸着姿勢に変位して開口部75内に収容されることにより、基板Wの塗布側端部が載置面21a上に吸着保持される。また、吸引パッド74により基板Wが吸着されるのと同時に除外領域保持部60の吸引部61(吸引溝62及び吸引孔63)により、エリア1における基板Wの除外領域Eが吸着保持される。そして、エリア1における基板Wの除外領域Eが吸着されると、エリア1における塗布領域保持部50の吸引部51(吸引溝52及び吸引孔53)により、エリア1における基板Wの塗布領域Cが吸着保持される。このように基板Wの塗布開始側から順に載置することにより、基板Wと載置面21aとの間に空気が滞留するのを抑えつつ、基板Wをステージ21に吸着保持させることができる。
【0046】
次に、ステップS3により、エリア1における基板Wの吸着保持が完了したか否かが確認される。具体的には、吸着センサにより配管56、66、70の流量変化が監視され、吸着保持が完了していない場合は、ステップS3においてNOの方向に進み、エリア1吸着工程が継続される。そして、エリア1の吸着保持が完了した場合には、ステップS3においてYESの方向に進み、エリア2吸着工程(ステップS4)が開始される。
【0047】
また、エリア1吸着工程が完了すると、平行して塗布処理が開始される。すなわち、図5のステップS21でYESの方向に進み、ステップS22の塗布準備工程が行われる。具体的には、塗布ユニット30が基板W上に進入し、除外領域Eにおいて塗布液を吐出して塗布ユニット30と基板Wとが塗布液で連結されるビード膜Sの形成が行われる(図6(c))。そして、ステップS23において、後述の塗布領域解除工程が完了したか否かが判断され、塗布領域解除工程完了していない場合は、NOの方向に進み、塗布ユニット30が除外領域Eで待機する。
【0048】
次に、ステップS4により、エリア2吸着工程が行われる。このエリア2吸着工程は、基板Wに設定されたエリア2の領域をステージ21に吸着保持する工程である。すなわち、エリア1吸着工程と同様に、塗布領域保持工程と、除外領域保持工程が行われ、塗布領域C及び除外領域Eのうち、エリア2に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。すなわち、バルブ73b、69b、59bを開状態、バルブ73c、69c、59cを閉状態にして、エリア2に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。なお、エリア2吸着工程であっても、エリア1に対して吸着保持状態は継続され、バルブ73a、69a、59aは開状態のままである。そして、リフトピン25を順次下降させることにより、エリア2における除外領域E及び塗布領域Cがステージ21の載置面21aに吸着保持される。
【0049】
次に、ステップS5により、エリア2における基板Wの吸着保持が完了したか否かが確認される。具体的には、吸着センサの信号を基に判断され、吸着保持が完了していない場合は、ステップS5においてNOの方向に進み、エリア2吸着工程が継続される。そして、エリア2の吸着保持が完了した場合には、ステップS5においてYESの方向に進み、エリア3吸着工程(ステップS6)が開始される。
【0050】
次に、ステップS6により、エリア3吸着工程が行われる。このエリア3吸着工程は、基板Wに設定されたエリア3の領域をステージ21に吸着保持する工程である。すなわち、エリア1、エリア2吸着工程と同様に、塗布領域保持工程と、除外領域保持工程が行われ、塗布領域C及び除外領域Eのうち、エリア3に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。すなわち、バルブ73c、69c、59cを開状態にして、エリア3に属する塗布領域保持部50と除外領域保持部60に吸引力を発生させる。なお、エリア3吸着工程であっても、エリア1、エリア2に対して吸着保持状態は継続され、バルブ73a、69a、59a、73b、69b、59bは開状態のままである。そして、リフトピン25を順次下降させることにより、エリア3における除外領域E及び塗布領域Cがステージ21の載置面21aに吸着保持される。
【0051】
次に、ステップS7により、エリア3における基板Wの吸着保持が完了したか否かが確認される。そして、吸着保持が完了していない場合は、ステップS7においてNOの方向に進み、エリア3吸着工程が継続される。このようにして、基板W全体がステージ21に吸着保持される。
【0052】
ここで、図7(a)に示すように、仮に基板Wとステージ21の載置面21aとの間に異物Pが存在している場合、基板Wの全面を吸着させることによって平坦性が保てず、基板Wにおける異物Pが存在する部分が急峻な凸状に変形する。この状態で塗布膜Mを形成すると、異物Pが存在する部分に塗布ムラが発生する。
【0053】
そこで、エリア3の吸着保持が完了した場合には、ステップS7においてYESの方向に進み、ステップS8により、塗布領域解除工程が行われる。塗布領域解除工程は、塗布領域Cの吸着力を解除する工程である。具体的には、バルブ57を閉状態、バルブ58を開状態にすることにより、エリア1~エリア3における塗布領域保持部50の吸引力を解除する。すなわち、塗布領域保持部50の吸引部51(吸引溝52及び吸引孔53)とコンプレッサ55を連通させて塗布領域保持部50の吸引力を解除し、基板Wを除外領域保持部60のみで吸着保持させる。これにより、図7(b)に示すように、基板Wの除外領域Eはステージ21の載置面21aに吸着保持されたまま、塗布領域Cはステージ21から解放され、基板Wにおける異物Pが存在する部分が急峻な凸形状から緩やかな形状に変化する。すなわち、基板W全体が完全に平坦には至らないものの、局所的に変化する箇所をなくすことができる。
【0054】
この塗布領域解除工程が完了すると、それをトリガとして塗布処理が進められる。すなわち、ステップS23において、YESと判断され、ステップS24において塗布工程が行われる。すなわち、除外領域Eでビード膜Sが形成された塗布ユニット30が塗布液を吐出しつつ走行することにより塗布領域Cに均一厚さの塗布膜Mが形成される(図7(c)参照)。
【0055】
そして、基板Wに塗布膜Mが形成されると、ステップS25により基板Wの搬出工程が行われる。すなわち、除外領域保持部60が解除された後、リフトピン25が上昇することにより、リフトピン25の先端で基板Wが保持される。そして、図示しないロボットハンド等により基板Wの受け渡しが行われ、基板Wが搬出される。
【0056】
このように、本実施形態における塗布装置によれば、塗布領域保持部50を解除した状態で基板Wを保持できることにより、ステージ21と基板Wとの間に異物Pが存在している場合であっても塗布ムラが形成されるのを抑えることができる。すなわち、塗布領域保持部50と除外領域保持部60により基板W全体を吸引して吸着保持すると、ステージ21上に異物Pが存在している場合、その異物Pが存在している部分が異物Pに密着し異物Pに沿うように急峻に変形する。しかし、除外領域保持部60の吸引を維持した状態で塗布領域保持部50を解除して基板の塗布領域Cへの吸着状態が解除されると、異物Pへの密着が解除されて基板Wの急峻な変形が緩和され、異物Pが存在している部分が平坦に近い形状になる。この状態で塗布膜Mを形成することにより、異物Pが存在している状態であっても、その部分の基板Wの変形が穏やかになっているため塗布ムラが目立つことなく、全体として均一な塗布膜Mを形成することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、塗布処理において、塗布領域解除工程が完了するまで塗布ユニット30が除外領域Eで待機する例について説明したが、除外領域E内であれば、塗布ユニット30から塗布液を吐出しつつ走行させて塗布膜Mを形成するようにしてもよい。このように構成することで塗布領域Cの吸着が解除されるとすぐに塗布領域Cに塗布膜Mが形成されるため、基板Wに塗布膜Mを形成するタクトタイムを向上させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、エリア1吸着工程が完了すると塗布処理が平行して実行される例について説明したが、塗布領域解除工程が完了した後、塗布処理が開始される構成であってもよい。この構成であれば、基板Wが確実に吸着(除外領域E)された後、塗布処理が独立して行われるため、外乱に影響されることなく安定して塗布膜Mの形成を行うことができる。
【0059】
また、上記実施形態では、基板Wの吸着を吸引溝52、62、吸引孔53、63により行われる例について説明したが、吸引孔のみ、あるいは、他の吸着手段で吸着保持する構成であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、除外領域保持部60が吸引パッド74を有する例について説明したが、基板Wの反りが少ない場合は、吸引パッド74を用いず、吸引孔62、吸引孔63のみで構成されるものであってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、塗布領域保持部50及び除外領域保持部60をエリア1~エリア3に分割し、塗布開始側から順に吸着させる例について説明したが、エリアの分割を2つにしてもよいし、3つ以上にしてもよく、基板Wの大きさによって変更してもよい。また、エリアに分割する方が、基板Wと載置面21aとの間にエアが残留するのを抑える点で好ましいが、エリアを分割せず、基板Wを一度に吸着保持する形態であってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、基板Wの吸着破壊について、コンプレッサ55、65を用いて空気を強制的に供給する例について説明したが、コンプレッサ55、65を用いずに、単に大気開放することにより基板Wの吸着破壊を行ってもよい。大気開放により吸着破壊を行う方が、空気を強制的に供給する場合に比べて、空気により基板Wがずれてしまう問題を抑えることができる点で好ましい。
【0063】
また、上記実施形態では、塗布動作の際、固定された基板Wに対して塗布ユニット30が移動する例について説明したが、固定された塗布ユニット30に対してステージ21が移動することにより塗布動作が行われるものであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、基板Wが矩形状のものについて説明したが、円形の基板を用いてもよく、その場合、基板保持手段5については、対象となる基板Wの形状に応じて円形に設けられる。
【符号の説明】
【0065】
1 塗布装置
21 ステージ
30 塗布ユニット
50 塗布領域保持部
51 吸引部
52 吸引溝
53 吸引孔
60 除外領域保持部
61 吸引部
62 吸引溝
63 吸引孔
74 吸引パッド
C 塗布領域
E 除外領域
M 塗布膜
P 異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9