(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】筋ジストロフィー治療薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/616 20060101AFI20250401BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20250401BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20250401BHJP
A61K 31/4184 20060101ALI20250401BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20250401BHJP
A61K 31/403 20060101ALI20250401BHJP
A61K 31/437 20060101ALI20250401BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20250401BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
A61K31/616
A61K31/5377
A61K31/454
A61K31/4184
A61K31/405
A61K31/403
A61K31/437
A61P21/04
A61P43/00 111
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021551476
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(86)【国際出願番号】 JP2020037520
(87)【国際公開番号】W WO2021066136
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2019182859
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523433941
【氏名又は名称】裏出 良博
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】裏出 良博
【審査官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-119984(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104728(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0088400(US,A1)
【文献】MOHRI, Ikuko et al.,Inhibition of prostaglandin D synthase suppresses muscular necrosis,The American Journal of Pathology,2009年05月,Vol. 174, No. 5,p. 1735-1744
【文献】BULIEN, Ditta et al.,The effect of indomethacin on serum and skeletal muscle enzyme activities of dystrophic hamsters,Biochemical Pharmacology,1976年04月15日,Vol. 25, Issue 8,p.981-983
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 45/00-45/08
A61P 43/00
A61P 21/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TFC007、HQL79、TAS204、TAS205、インドメタシン及びアスピリンから選ばれるプロスタグランジン合成阻害剤
と、CAY10471、OC000459、BAYu3405及びQAW039から選ばれるCRTH2受容体拮抗剤とを組み合わせてなるMD治療薬。
【化1】
【請求項2】
前記プロスタグランジン合成阻害剤を含有する医薬組成物と
前記CRTH2受容体拮抗剤を含有する医薬組成物を併用するものである請求項
1記載のMD治療薬。
【請求項3】
前記プロスタグランジン合成阻害剤及び
前記CRTH2受容体拮抗剤を含有するMD治療薬組成物
である請求項1記載のMD治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たな筋ジストロフィー治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
筋ジストロフィー(Muscular Dystrophy:MD)は、筋線維の破壊・変性(筋壊死)と再生を繰り返しながら、次第に筋萎縮と筋力低下が進行していく筋疾患の総称である。このうち、デュシュンヌ型筋ジストロフィー(Duchene MD:DMD)は、X性染色体短腕(Xp21)にあるジストロフィン遺伝子の変異により、ジストロフィン蛋白質が欠損して発症する。筋ジストロフィーのなかで最も頻度が高く、人種を問わず男子3,500人に1人が発症する。しかも、筋萎縮の進行が最も早く4歳頃から急激に筋萎縮が進行して10歳頃に車椅子が必要になり、20歳頃に人工呼吸器を装着し、40歳頃に心不全等で亡くなる。
【0003】
DMDの診断法は確立しているが治療法がない。筋萎縮を遅らせるリハビリテーション、運動機能を補完する車椅子の使用、人工呼吸器の装着、運動機能喪失後のパソコン使用による意志疎通の確保等、対処療法のみが行われている。患者の生涯ケアのために多額の医療費が使われている。
【0004】
現在、DMD変異エクソンを読み飛ばすエクソン・スキップ用医薬品が、3箇所のエクソンに対して開発され臨床治験が行われている(非特許文献1)。これらの薬剤は変異エクソン特異的で、それぞれ1割程度の患者を対象とし、変異エクソンの異なる患者は治療できない。さらに、患者の体内で新規に発現するジストロフィンに対する自己抗体ができる危険性を持つ。
【0005】
PGD2の生合成反応を触媒する酵素のうち、造血器型PGD2合成酵素(hematopoietic PDG2 synthase、HPGDS)は、DMDや多発性筋炎疾患の筋肉において誘導されることが知られており(非特許文献2)、DMD患者の病状の進行に伴って、PGD2の尿中代謝濃度が高まることも知られている(非特許文献3)。HPGDS阻害剤HQL79の投与によりmdxマウスの集団的壊死変性領域が減少すること(非特許文献4)、HPGDS阻害剤TFC007、TAS204、TAS205がDMDモデル動物の筋壊死抑制効果を示すことも報告されている(非特許文献5、6)。また、TAS205については、DMD患者を対象とした臨床治験も行なわれている(非特許文献7)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】臨床神経2014;54:1071-1073
【文献】Acta Neuropathol 2002;104:377-384
【文献】Clin Chim Acta 2013;423:10-14
【文献】Am J Pathol 2009;174:1735-1744
【文献】Proceeding of 67th International Astronautical Congress,Guadalajara,Mexico,26-30 September 2016.
【文献】15th International Congress on Neuromuscular Diseases,July 6-10 2018,Vienna Austria
【文献】IAC-16-B.3.3.6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、HPGDS阻害剤によるMDの治療効果は未だ明らかでない。
従って、本発明の課題は、エクソンスキップ用医薬でなく、広範囲の患者に対して優れた効果を奏する新たなMD治療薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者は、より強力なMD治療効果を有するMD治療薬を開発すべく検討したところ、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用することにより、それらの薬剤が相乗的に作用し、それらの薬剤の10倍を超える強力なDMDにおける筋壊死抑制効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の次の〔1〕~〔6〕を提供するものである。
【0010】
〔1〕プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを組み合わせてなるMD治療薬。
〔2〕プロスタグランジン合成阻害剤を含有する医薬組成物とCRTH2受容体拮抗剤を含有する医薬組成物を併用するものである〔1〕記載のMD治療薬。
〔3〕プロスタグランジン合成阻害剤及びCRTH2受容体拮抗剤を含有するMD治療薬組成物。
〔4〕MD治療薬製造のための、プロスタグランジン阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤との組み合わせの使用。
〔5〕MDを治療するための、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤との組み合わせ。
〔6〕プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用することを特徴とするMD治療法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のMD治療薬を用いれば、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤の両者の10倍を超える強力な筋壊死抑制効果が得られ、MD患者の筋力低下の進行が大幅に軽減される。従って、本発明のMD治療薬を用いれば、MD患者の筋委縮の速度を大きく低減し、車椅子使用及び人工呼吸器装着の時期を大きく延長して、患者の自活期間を大幅に延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HPGDS阻害剤(TFC007)とCRTH2受容体拮抗剤(CAY10471)の併用による筋壊死抑制作用を示す。
【
図2】HPGDS阻害剤(HQL79)とCRTH2受容体拮抗剤(OC000459)の併用による筋壊死抑制作用を示す。
【
図3】HPGDS阻害剤(HQL79)とCRTH2受容体拮抗剤(OC000459)の併用による筋壊死抑制作用を示す。
【
図4】非ステロイド系抗炎症剤(インドメタシン)とCRTH2受容体拮抗剤(OC000459又はCay10471)の併用による筋壊死抑制作用を示す。
【
図5】非ステロイド系抗炎症剤(アスピリン)とCRTH2受容体拮抗剤(OC000459、Cay10471又はBAYu3405)の併用による筋壊死抑制作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の筋ジストロフィー治療薬は、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤との組み合わせを有効成分とする。
【0014】
プロスタグランジン合成阻害剤としては、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、プロスタグランジンD2(PGD2)合成酵素阻害剤が挙げられる。
シクロオキシゲナーゼ阻害剤としては、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)が好ましい。非ステロイド系抗炎症剤としては、アスピリン、メフェナム酸、ジクロフェナク、フェルビナク、ブロムフェナク、インドメタシン、プログルメタシン、アセメタシン、ベンダザック、スリンダク、エトドラク、ネバフェナク、ピロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェン、プラノプラフェン、ザルトプロフェン、セレコキシブ、これらの塩、これらのエステルなどが挙げられる。このうち、アスピリン、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、これらの塩、これらのエステルがより好ましい。
【0015】
PGD2の合成酵素のうち、HPGDSがDMDに関与しているので(非特許文献2)、本発明に用いるPGD2合成酵素阻害剤としては、HPGDS阻害剤がより好ましい。HPGDS阻害剤としては、次の化合物が挙げられる。
【0016】
(1)次の一般式(1)で表されるベンゾイミダゾール化合物又はその塩(特許第4986853号公報)
【0017】
【0018】
〔式中X10は酸素原子又はカルボニル基を示し、R1は置換基を1~3個有するフラン環又は置換基を1~3個有していてもよいピロール環を示す。
但し、該置換基がリン酸基又はリン酸エステル基である一般式(1)で表される化合物を除く。〕
【0019】
この一般式(1)の化合物のうち、次の化合物がより好ましい。
【0020】
【0021】
(2)次の一般式(2)で表されるピペラジン化合物又はその塩(特許第5111657号公報)
【0022】
【0023】
〔式中、R11は炭素数1~6アルキル基を示し、R12は水酸基、置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基、-(C=O)-N(R13)(R14)基、又は-(C=O)-OR15基のいずれかを示し、R13、R14は同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基を示すか、R13とR14はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和複素環基を形成してもよく、R15は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基を示し、nは1又は2を示す。〕
【0024】
この一般式(2)の化合物のうち、R12がモルホリノカルボニル基である化合物がより好ましく、次の化合物がさらに好ましい(国際公開第2017/047791号)。
【0025】
【0026】
(3)次の一般式(3)で表されるピペラジン化合物又はその塩(特許第5677325号)
【0027】
【0028】
〔式中、XはCH、又はN原子を示し、R21は炭素数1~6アルキル基を示し、R22は置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6アルケニル基、-(C=O)-N(R23)(R24)基、又は-(C=O)-OR25基のいずれかを示し、R23、R24は同一又は相異なって、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基を示すか、R23とR24はそれらが結合する窒素原子と一緒になって飽和複素環基を形成してもよく、R25は水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6アルキル基もしくはアラルキル基を示す。〕
【0029】
(4)次の一般式(4)で表されるピペリジン化合物又はその塩(特許第5693591号公報)
【0030】
【0031】
〔式中、X1、X2、X3は同一又は相異なって、N又はC-R31を示し、mは0又は1を示し、Aはフェニレン基、2価の飽和ヘテロ環基、又は2価の不飽和ヘテロ環基を示し、
Bは水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいヘテロアラルキル基、置換基を有していてもよい飽和ヘテロ環基、置換基を有していてもよい不飽和ヘテロ環基、NR32R33基、(C=O)R34基、O-R35基のいずれかを示し、
R31は水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を示し、
R32、R33は同一又は相異なって、水素原子、フェニル基、アルキルカルボニル基、(飽和または不飽和ヘテロ環)カルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、アルコキシカルボニル基を示し、
R34は置換アルキル基、シクロアルキル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、不飽和ヘテロ環基、ヘテロアラルキル基、飽和ヘテロ環基、NR36R37基を示し、
R35はフェニル基、アラルキル基、不飽和ヘテロ環基を示し、
R36、R37は同一又は相異なって、水素原子、アルキル基、シクロへキシル基、置換基を有していてもよいフェニル基、不飽和ヘテロ環基、アラルキル基、ヘテロアラルキル基を表すか、あるいはR36とR37はそれらが結合している窒素原子と一緒になってピロリジル基又はピペリジル基を示す。〕
【0032】
(5)次の一般式(5)で表されるピリミジン化合物又はその塩(特開2007-51121号公報)
【0033】
【0034】
〔式中、
R41は、置換基を有していてもよい5員もしくは6員の含窒素不飽和複素環基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、
R42は、環構造中に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1~3個の複素原子を含む不飽和複素環基又はフェニル基を示し、
R42で表される上記不飽和複素環基は、0~2個のR43-(CH2)m-基を有しており、
R42で表される上記フェニル基は、その3位又は4位のいずれか一方又は両方に、R43-(CH2)m-基を有しており、
R42で表される上記不飽和複素環基又はフェニル基が、2個のR43-(CH2)m-基を有している場合、2個のR43-(CH2)m-基は同一であっても相異なっていてもよく、
該R43-(CH2)m-基において、
mは、0~4を示し、
R43は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和複素環、-NR44R45基、-(C=O)-R46基、-O-R47基、又は-S-R48基を示し、
R44及びR45は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和複素環基、置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基又は置換基を有するカルボニル基を示すか、或いは、
R44及びR45は、それぞれ隣接する窒素原子と一緒になって、環構造中に、該隣接する窒素原子に加えて、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1個又は2個の複素原子を有していてもよい飽和又は不飽和環状アミノ基を形成していてもよく、該環状アミノ基は置換基を有していてもよく、
R46は、水素原子、ヒドロキシル基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルコキシ基又は-NR49R50基を示し、
R47は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~6のアルケニル基、又は置換基を有するカルボニル基を示し、
R48は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、
R49及びR50は、同一又は相異なって、それぞれ、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよいアミノ基を示すか、或いは、
R49及びR50は、それぞれ隣接する窒素原子と一緒になって、環構造中に、該隣接する窒素原子に加えて、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1個又は2個の複素原子を有していてもよい飽和又は不飽和環状アミノ基を形成していてもよく、該環状アミノ基は置換基を有していてもよい。〕
【0035】
この一般式(5)で表される化合物のうち、次の式で表される化合物がより好ましい。
【0036】
【0037】
(6)次の一般式(6)で表されるピリミジン化合物又はその塩(国際公開第2007/041634号)
【0038】
【0039】
〔式中、
R51は、アリール、ヘテロアリール又はC5-C6シクロアルキル基(これらの基は置換基を有していてもよい)を示し;
R52は、水素原子又はC1-C4アルキル基を示し;
R53は、-P(=O)(アルコキシ)2、-SO2NY1Y2、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、飽和ヘテロ環、又は縮環式基(これらの基は、置換基を有していてもよい)を示し;
L1は、直接結合又はC1-C6アルキレン基を示す〕
【0040】
(7)次式で表される化合物又はその塩
【0041】
【0042】
前記化合物又はその塩には、水和物等の溶媒和物が含まれる。また、前記化合物の塩としては、製薬上許容される塩、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム、有機塩基およびアミノ酸との塩、または無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等)、および有機酸(酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等)との塩が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0043】
CRTH2受容体拮抗剤は、PGD2の受容体であるchemoattractant receptor-homologous molecule on Th2 cells(CRTH2)拮抗剤であり、気管支喘息治療薬等の抗アレルギー薬として注目されている。このCRTH2受容体拮抗剤の筋ジストロフィーに対する作用は報告されていない。CRTH2受容体拮抗剤としては、次の化合物が好ましい。
【0044】
(1)次の一般式(7)で表される化合物又はその塩(欧州特許出願公開242518号)
【0045】
【0046】
(式中、R61は水素原子又はハロゲン原子を示す)
【0047】
(2)次の一般式(8)で表される化合物又はその塩(特表2008-500991号公報)
【0048】
【0049】
〔式中、R71は、水素、ハロゲン、フェニル、ハロゲノフェノニル、ニトロ基を示し;
R72は、水素原子又はC1-C4アルキル基を示し;
R73は、水素原子又はC1-C4アルキル基を示し;
R74は、水素原子又はC1-C4アルキル基を示し;
R75は、水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、フェノキシ基を示し;
R76、R77、R78、R79は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル、ハロゲノアルキル基を示し;
X、Yは、C又はNを示し;
Aはカルボキシ基又はテトラゾリル基を示す〕
【0050】
(3)次の一般式(9)で表される化合物又はその塩(US2009/0105218)
【0051】
【0052】
〔式中、L1は又はC1-C3アルキレン又はC2-C3アルケニレン基を示し;
L3は直接結合、C1-C3アルキレン又はC2-C3アルケニレン基を示し;
Ra及びRbは、水素原子、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシハロゲノアルコキシ、アルキルSO2-、NH2SO2-、アルキルNHSO2-、ジ(アルキル)NSO2-、アリール、アリールオキシ、アリールアルコキシ基を示す〕
【0053】
(4)次の一般式(10)で表される化合物又はその塩(特許第5291265号公報)
【0054】
【0055】
〔式中、
R81は、水素、(C1-C4)アルキル、(C1-C4)アルコキシ、ハロゲン、トリフルオロメトキシ又はトリフルオロメチルを表し;
R82は、水素、(C1-C4)アルキル、(C1-C2)アルコキシ-(C2-C3)アルキル、(C1-C4)フルオロアルキル又は(C3-C6)シクロアルキル-(C1-C2)アルキル基を表し;
R83は、未置換であるか又は1、2若しくは3個の置換基により置換されたヘテロアリール基を表し、当該置換基は、ハロゲン、(C1-C4)アルキル、(C3-C6)シクロアルキル、(C1-C4)アルコキシ、(C1-C4)フルオロアルキル及びフェニルから成る群より独立に選択される。〕
【0056】
(5)次の一般式(11)で表される化合物又はその塩(特許第6484644号公報)
【0057】
【化15】
〔式中、
R
91及びR
92の一方は水素を示し、他方はハロゲンを示す。〕
【0058】
(6)次の一般式(12)で表される化合物又はその塩(特許第4313819号公報)
【0059】
【0060】
〔式中、Rc、Re、およびRfは水素であり、
Rdはハロであり、
RgとRhはそれぞれ独立して水素、或いは1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のC3-C7シクロアルキル基で置換されてもよいC1-C6アルキル又はそれらが結合する炭素原子と共にC3-C7シクロアルキル基を形成し、
Riは水素或いは1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のC3-C7シクロアルキル基で置換されてもよいC1-C6アルキルであり、
Rjはフェニル、ナフタレニル、チアゾール、ビフェニル、キノリニルまたはキノキサリニル基であり、1つ以上のハロ、1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のC3-C7シクロアルキル基で置換されてもよいC1-C6アルキル、1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のC3-C7シクロアルキル基で置換されてもよい-O(C1-C6)アルキル、-SO2RlまたはOH基で置換されてもよく、
各Rlは独立して水素又は1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のシクロアルキル基で置換されてもよいC1-C6アルキルであり、
但し、Rjは非置換のフェニルでなく、
Rkは水素或いは1つ以上のハロ置換基もしくは1つ以上のC3-C7シクロアルキル基で置換されてもよいC1-C6アルキルである。〕
【0061】
(7)次の一般式(A)~(K)で表される化合物又はその塩(特開2010-132680号公報)
【0062】
【0063】
〔式中、Z3は=N-または=C(-R7)-;R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、ハロアルキル、カルボキシ、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアルケニル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいアラルキル、式:-S(O)pR8(式中、pは0~2の整数;およびR8はアルキルまたは置換されていてもよいアリール)で示される基、式:-NR9R10(式中、R9およびR10はそれぞれ独立して水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキルまたはアシル)で示される基、式:-OR11(式中、R11は水素、アルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアラルキル、アルカンスルホニル、置換されていてもよいアリールスルホニル、置換されていてもよいアラルキルスルホニル、ハロアルキル)で示される基)で示される基;
R1はカルボキシ、アルキルオキシカルボニル、置換されていてもよいアミノカルボニルまたはテトラゾリル;
Z4は-N=または-C(-R2)=;
R2は水素、アルキルまたはハロゲン;
R15は水素またはアルキル;
rは0~2の整数;xは0~3の整数;mは1~3の整数;破線は結合の存在または不存在を表わし;Eは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルキル、置換されていてもよいアラルキルまたは置換されていてもよいアリールアルケニル)で示される基、
xは0~3の整数;mは1~3の整数;破線は結合の存在または不存在を表わし;Eは置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、アルキル、置換されていてもよいアラルキルまたは置換されていてもよいアリールアルケニル)で示される基、
yは0または1;R23およびR24の一方はアルキル、他方は水素、アルキルまたはアリール;またはR23およびR24は一緒になって式:-(CH2)t-(式中、tは2~5の整数)で示される基;R25およびR26はそれぞれ独立して水素またはアルキルオキシアルキル)で示される基、
R20は水素またはアルキル;R21は水素またはハロゲンで示される基である。(但し、3-(4-クロロフェニルスルホニルアミノ)-9-(2-カルボキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロカルバゾール、そのエチルエステル、3-(4-クロロフェニルスルホニルアミノエチル)インドール-1-アセティックアシッド、および3-(4-クロロフェニルスルホニルアミノプロピル)インドール-1-アセティックアシッドを除く);
またはR13が水素、アルキル、アラルキル、アシルまたは式:-OR16(式中、R16は水素またはアルキル)で示される基であり、R14が水素またはアルキルである。
qは0~3の整数;R17は水素またはアルキル;Z1は-CH2-、-C(=O)-、-C(=NOH)-又は-C(=NOMe)-;Z2は式:-S(=O)s-(式中、sは0~2の整数)で示される基、式:-N(-R22)-(式中、R22は水素、アルキル、アルキルオキシカルボニルまたはアシル)で示される基または式:-CR18R19-(式中、R18およびR19はそれぞれ独立して水素、アルキルまたはアリール;またはR18およびR19は一緒になって式:-(CH2)t-(式中、tは2~5の整数)で示される基である)で示される基である〕
【0064】
(8)次の一般式(13)で表される化合物又はその塩
【0065】
【0066】
〔式中、Xは-SO2-又は-SO2NR3-を示し;
R1は水素、F、Cl、CN又はCF3を示し;
R2は水素、F、Clを示し;
R3は水素、C1-6アルキル又はC3-7シクロアルキルを示し;
Ar1はフェニル、又は5員若しくは6員のヘテロアリール基を示し(水素、ハロゲン、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシが置換してもよい);
A2は5員又は6員のヘテロアリール基を示し(水素、ハロゲン、CN、アルキル、シクロアルキル、アルコキシが置換してもよい)を示す〕
【0067】
一般式(15)中で、Ar1はフェニル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルが好ましく、Ar2はピロリル、フラニル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルが好ましい。
【0068】
CRTH2受容体拮抗剤の好ましい具体例としては、次の化合物が挙げられる。
【0069】
【0070】
【0071】
前記化合物又はその塩には、水和物等の溶媒和物が含まれる。また、前記化合物の塩としては、製薬上許容される塩、例えば、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等)、アンモニウム、有機塩基およびアミノ酸との塩、または無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸等)、および有機酸(酢酸、クエン酸、マレイン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等)との塩が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
【0072】
後記実施例に示すように、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用すれば、特にHPGDS阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用すれば、これらの薬物を単独で使用した場合に比べて筋ジストロフィーにおける筋壊死を飛躍的に抑制する。すなわち、これらの薬物は、その組み合わせにより、相乗的に筋ジストロフィーにおける筋壊死を抑制し、筋ジストロフィー治療剤、特にDMD治療剤として有用である。
より具体的には、筋ジストロフィーモデルマウス(mdxマウス)では、生後3週間ごろから筋肉の壊死がはじまり、筋壊死のマーカーである血清クレアチンキナーゼやピルビン酸キナーゼの上昇というDMD患者に共通の現象が起き、病理学的所見もDMD患者と類似する。このmdxマウスにプロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用して投与すると、特に、HPGDS阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを併用して投与すると、これらの薬剤をそれぞれ単独で投与した場合に比べて格別顕著に血清クレアチンキナーゼの上昇を抑制した。
また、mdxマウスに甲状腺ホルモン(T3、トリヨードサイロニン)を投与するとDMD患者に類似の心筋障害を起こすことが知られている。このmdxモデルマウスにおけるT3誘発心筋障害に対しても、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤の併用により相乗的に抑制できる。
従って、本発明のMD治療薬を用いれば、MD患者の筋委縮の速度を大きく低減し、車椅子使用及び人工呼吸器装着の時期を大きく延長して、患者の自活期間を大幅に延長することができる。
【0073】
本発明の医薬は、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを組み合わせていればよく、それぞれの薬剤を含む組成物2種を併用してもよく(併用医薬)、2種類の薬剤を含む医薬組成物であってもよい。
本発明の併用医薬又は医薬組成物は、任意の投与形態で投与することができ、投与形態に合わせて製剤を選択することができる。経口投与製剤としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等が挙げられる。非経口投与製剤としては、注射剤、坐剤、吸入薬、経皮吸収剤、皮膚外用剤、点眼剤、点鼻剤等が挙げられる。注射剤を選択する場合は、投与経路は皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、経皮注射及び静脈内注射が挙げられる。
【0074】
経口用固形製剤を調製する場合は、賦形剤、必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、嬌味剤等を加えた後、常法により錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。
【0075】
経口用液体製剤を調製する場合は、嬌味剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤等を加えて常法により、内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。
【0076】
注射剤を調製する場合は、pH調整剤、安定化剤、等張化剤を添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤等を製造することができる。
【0077】
本発明の医薬のうち、併用医薬の場合、プロスタグランジン合成阻害剤を含有する製剤(組成物)と、CRTH2受容体拮抗剤を含有する製剤(組成物)とが併用される。このように別々に製剤化される場合、別々に製剤化された医薬を、それぞれの投与方法が記載された指示書と組み合わせたキット医薬であってもよい。これらの別々に製剤化された医薬の場合、それぞれの製剤の剤形は同一であっても異なっていてもよく、投与間隔は同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
本発明の医薬のうち、プロスタグランジン合成阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤とを含む医薬組成物とする場合には、一の剤形、例えば錠剤中にこれら2種の薬剤を含有させるのが好ましい。
【0079】
本発明の医薬におけるプロスタグランジン合成阻害剤(A)とCRTH2受容体拮抗剤(B)の使用比(質量比)は、使用される化合物の種類により相違するが、(A):(B)=200:1~1:10が好ましく、100:1~1:5がより好ましく、50:1~1:1がさらに好ましい。
【0080】
本発明の医薬の投与量は、使用する化合物、患者の年齢、体重、症状等によって相違するが、プロスタグランジン合成阻害剤は1日投与量として0.01~10mg/kgが好ましく、0.05~10mg/kgがより好ましい。CRTH2受容体拮抗剤は1日投与量として0.01~10mg/kgが好ましく、0.05~5mg/kgがより好ましい。
【実施例】
【0081】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0082】
実施例1
(方法)
溶媒(5%DMSO in 5%メチルセルロース含有生理食塩水)、HPGDS阻害剤TFC007(30mg/kg)、CRTH2受容体拮抗剤CAY10471(1.0mg/kg)、又は2剤併用(TFC007、3mg/kg+CAY10471、0.1mg/kg)を、筋ジストロフィーモデルマウス(mdx mice(C57BL/6))に生後4週から4週間、毎日、皮下投与した後の血清クレアチンキナーゼ活性(骨格筋壊死作用のマーカー)を測定した。
(結果)
結果を
図1に示す。
図1から、HPGDS阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤を併用すると、これらの投与量がそれぞれ単独で投与した場合の1/10であったにもかかわらず、それぞれ単独で投与した場合に比べて極めて強いクレアチンキナーゼ活性低下作用を示した。
【0083】
実施例2
(方法)
溶媒(5%DMSO in 5%メチルセルロース含有生理食塩水)、HPGDS阻害剤HQL79(30mg/kg)、CRTH2受容体拮抗剤OC000459(1.0mg/kg)、又は2剤併用(HQL79、3mg/kg+OC000459、0.1mg/kg)を、筋ジストロフィーモデルマウス(mdx mice(C57BL/10))に生後4週から2週間、2-3日おき(毎週、月、水、金曜日)に皮下投与した後の血清クレアチンキナーゼ活性(骨格筋壊死作用のマーカー)を測定した。
(結果)
結果を
図2に示す。
図2から、HPGDS阻害剤とCRTH2受容体拮抗剤を併用すると、これらの投与量がそれぞれ単独で投与した場合の1/10であったにもかかわらず、それぞれ単独で投与した場合に比べて強いクレアチンキナーゼ活性低下作用を示した。
【0084】
実施例3
(方法)
溶媒(5%DMSO in 5%メチルセルロース含有生理食塩水)、HPGDS阻害剤HQL79(30mg/kg)、CRTH2受容体拮抗薬OC000459(0.5mg/kg)、又は2剤の合剤(HQL79、3mg/kg+OC000459、0.1mg/kg)を、筋ジストロフィーモデルマウス(C57BL/10-mdx mice)に、生後4週から4週間、2-3日おき(毎週、月、水、金曜日)に皮下投与した後の血清クレアチニンキナーゼ活性(骨格筋壊死作用のマーカー)を測定した。
(結果)
結果を
図3に示す。
図3から、HPGDS阻害剤HQL79とCRTH2受容体拮抗薬OC000459を併用すると、それぞれ単独で投与した場合は統計学的に有意な変化を示さなかったのに対して、これらの投与量がそれぞれ単独で投与した場合の1/10と1/5であったにもかかわらず、統計学的に有意(溶媒投与に比べたt検定:p<0.05)に、強いクレアチニンキナーゼ活性低下作用を示した。
【0085】
実施例4
(方法)
溶媒(5%DMSO in 5%メチルセルロース含有生理食塩水)、プロスタグランジン合成阻害剤インドメタシン(1mg/kg)、又はプロスタグランジン合成阻害剤インドメタシンとCRTH2受容体拮抗薬の合剤(インドメタシン、0.1mg/kg+OC000459、0.1mg/kg又はインドメタシン、0.1mg/kg+Cay10471、0.1mg/kg)を、筋ジストロフィーモデルマウス(C57BL/10-mdx mice)に、生後16週から10日間毎日、皮下投与した後の血清クレアチニンキナーゼ活性(骨格筋壊死作用のマーカー)を測定した。
(結果)
結果を
図4に示す。
図4から、プロスタグランジン合成阻害剤インドメタシンを、CRTH2受容体拮抗薬(OC000459又はCay10471)と併用すると、単独で投与した場合は統計学的に有意な変化を示さなかったのに対して、単独投与の1/10であったにもかかわらず、統計学的に有意(溶媒投与に比べたt検定:p<0.01)に、強いクレアチニンキナーゼ活性低下作用を示した。
【0086】
実施例5
(方法)
溶媒(5%DMSO in 5%メチルセルロース含有生理食塩水)、プロスタグランジン合成阻害剤アスピリン(150mg/kg)、又はプロスタグランジン合成阻害剤アスピリンとCRTH2受容体拮抗薬の合剤(アスピリン、150mg/kg+Cay10471、0.1mg/kg;アスピリン、150mg/kg+OC000459、0.1mg/kg;又は、アスピリン、150mg/kg+BAYu3405、10mg/kg)を、筋ジストロフィーモデルマウス(C57BL/6-mdx mice)に、生後4週から4週間毎日、皮下投与した後の血清クレアチニンキナーゼ活性(骨格筋壊死作用のマーカー)を測定した。
(結果)
結果を
図5に示す。
図5から、プロスタグランジン合成阻害剤アスピリンを、CRTH2受容体拮抗薬(Cay10471、OC000459、又はBAYu3405)と併用すると、単独で投与した場合は統計学的に有意な変化を示さなかったのに対して、統計学的に有意(Cay10471、又はOC000459との合剤、溶媒投与及びアスピリン単独投与に比べたt検定:p<0.05; BAYu3405との合剤、溶媒投与及びアスピリン単独投与に比べたt検定:p<0.01)に、強いクレアチニンキナーゼ活性低下作用を示した。