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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】触媒の再生
(51)【国際特許分類】
   B01J 38/12 20060101AFI20250401BHJP
   C10G 2/00 20060101ALI20250401BHJP
   B01J 23/75 20060101ALI20250401BHJP
   B01J 38/10 20060101ALI20250401BHJP
   B01J 23/94 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
B01J38/12 B
C10G2/00
B01J23/75 M
B01J38/10 B
B01J23/94 M
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021573289
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020065883
(87)【国際公開番号】W WO2020249529
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】62861089
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】1914896.4
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521538103
【氏名又は名称】ベロシス テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VELOCYS TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】デシュムク スミトラ アール.
(72)【発明者】
【氏名】グレーガー イバン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス ロジャー アレン
(72)【発明者】
【氏名】ロボタ ハインツ ジェイ.
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109201074(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107952495(CN,A)
【文献】国際公開第2016/201218(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C10G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換チャネルを具備したマイクロチャネル反応器において、インサイチュで触媒を再生するための方法であって、
a)前記触媒を、上昇した温度にて、前記マイクロチャネル反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる水素含有脱蝋ガス流で処理することにより脱蝋するステップ;
b)得られた脱蝋した前記触媒を、上昇した温度にて、前記マイクロチャネル反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる酸化ガス流で処理することにより酸化させるステップ、及び
c)得られた酸化した前記触媒を、上昇した温度にて、前記マイクロチャネル反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる還元ガス流で処理することにより還元するステップを含み、
ステップa)からステップb)への移行において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、脱蝋するのに十分な温度から、140℃~180℃の第1の下限値に低下させ;
ステップb)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を酸化するのに十分な温度に上昇させ;
ステップb)からステップc)への移行において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、酸化するのに十分な温度から、140℃~180℃の第1の下限値に低下させ;
次いでステップc)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を還元するのに十分な値に上昇させ;
前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度が、前記マイクロチャネル反応器の前記熱交換チャネルを通して流れる熱交換流体により制御され、前記熱交換流体の全体が相変化を受けることはない、前記方法。
【請求項2】
ステップa)が、水素含有脱蝋ガスの導入のために、マイクロチャネル反応器を合成モードからおよそ170℃の移行温度にクールダウンした際に開始される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップa)において、マイクロチャネル反応器の触媒床及び/又は脱蝋ガス流の温度を、250℃~400℃の温度に上昇させ、その保持温度で、又はその15℃以内で1時間~24時間の期間保つ、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
熱交換流体が水蒸気である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
触媒が、金属系触媒である、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
触媒が、フィッシャー-トロプシュ触媒である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、コバルト又は鉄含有触媒である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
触媒が、多孔質担体上に配置される、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
各ガス流の温度が、マイクロチャネル反応器の熱交換チャネルを通して流れる熱交換流体により制御される、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップb)において、マイクロチャネル反応器の触媒床及び/又は酸化ガス流の温度を、触媒が完全に酸化される250℃~325℃の温度に上昇させる、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ステップc)において、還元ガス流の温度を、300℃~400℃の保持温度に上昇させ、その保持温度で、又はその15℃以内で1時間~24時間の期間保つ、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
フィッシャー-トロプシュ反応器において、一酸化炭素及び水素を含むガス混合物を反応させるステップ、並びに前記フィッシャー-トロプシュ反応器において、請求項1~11のいずれかに記載の方法により、触媒を定期的に再生させるステップを含む、フィッシャー-トロプシュ法。
【請求項13】
熱交換流体の全体が、方法において相変化を受けない、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、例えばフィッシャー-トロプシュ(FT,Fischer-Tropsch)触媒を再生するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー-トロプシュ法は、一酸化炭素及び水素からの燃料を生成するために幅広く使用されており、式:
(2n+1)H+nCO→C2n+2+nH
により表すことができる。
【0003】
この反応は高度に発熱性であり、上昇した温度(典型的には少なくとも180℃、例えば200℃又はそれ以上)及び圧力(例えば少なくとも10bar)条件下で、フィッシャー-トロプシュ触媒、典型的にはコバルト系触媒により触媒される。生成物混合物が得られ、nは、典型的には10~120の範囲を包含する。生成物混合物における軽ガス(例えばメタン)の選択性、すなわちメタン(n=1)の割合を最小限にすること、並びにC5及びより高級な(n≧5)パラフィンに対する選択性を最大限に、典型的には85%又はそれ超のレベルにすることが望ましい。一酸化炭素の変換を最大化することも望ましい。
【0004】
水素及び一酸化炭素供給原料は、通常は合成ガスである。
【0005】
合成ガスは、上昇した温度、例えば、約700℃又はそれ以上にて炭素質材料をガス化することにより生成され得る。炭素質材料は、ガス化して合成ガスを生成できるいかなる炭素含有材料も含み得る。炭素質材料は、バイオマス(例えば、植物又は動物性物質、生分解性廃棄物など)、食料資源(例えば、トウモロコシ、ダイズなどといった)、及び/又は石炭(例えば、低品位石炭、高品位石炭、精炭など)などの非食料資源、油(例えば、原油、重油、タールサンドオイル、シェールオイルなど)、固形廃棄物(例えば、都市固形廃棄物、有害廃棄物)、ごみ固形燃料(RDF,refuse derived fuel)、タイヤ、石油コークス、ごみ、生ごみ、バイオガス、下水汚泥、動物の排泄物、農業廃棄物(例えば、コーンストーバー、スイッチグラス、刈草)、建築廃材、プラスチック材料(例えば、プラスチック廃棄物)、綿繰り機廃棄物、それらの2つ又は3つ以上の混合物などを含み得る。
【0006】
別法として、合成ガスは、天然若しくは埋立地ガス、又は嫌気性消化プロセスにより生成されるガスの改質によるような他の手段により生成され得る。合成ガスは、水素供給源として電気分解を使用したCO改質(例えばいわゆる「電燃」プロセス("electricity-to-fuels" process))によっても生成され得る。
【0007】
上記に記載されている、生成された合成ガスは、フィッシャー-トロプシュ触媒(以下、新たな合成ガスと記載する)を供給するための調製において、水蒸気改質(例えば、メタンを、水蒸気メタン改質(SMR,steam methane reforming)触媒の存在下で水蒸気と反応させる、水蒸気メタン改質(SMR)反応);部分的酸化;オートサーマル改質;二酸化炭素改質;又はそれらの2つ又は3つ以上の組合せにより、H対COのモル比を調整するように処理できる。
【0008】
新たな合成ガスにおけるH対COのモル比は、望ましくは約1.6:1~約2.2:1、又は約1.8:1~約2.10:1、又は約1.95:1~約2.05:1の範囲である。
【0009】
新たな合成ガスは、H及びCOを同様に含有するリサイクルしたテールガス(例えばリサイクルしたFTテールガス)と任意に組み合わせて、反応物混合物を形成することができる。テールガスは、H及びCOを含み、H対COのモル比は、任意に約0.5:1~約2:1、又は約0.6:1~約1.8:1、又は約0.7:1~約1.2:1の範囲である。
【0010】
組み合わせたFT合成ガス供給物(リサイクルしたテールガスと組み合わせた、新たな合成ガスからなる)は、望ましくはH及びCOを、約1.4:1~約2.1:1、又は約1.7:1~約2.0:1、又は約1.7:1~約1.9:1の範囲のモル比で含む。
【0011】
リサイクルしたテールガスが使用される場合、反応物混合物を形成するために使用される新たな合成ガス対リサイクルしたテールガスの体積比は、例えば約1:1~約20:1、又は約1:1~約10:1、又は約1:1~約6:1、又は約1:1~約4:1、又は約3:2~約7:3、又は約2:1の範囲であり得る。
【0012】
フィッシャー-トロプシュ反応中、触媒は漸次に劣化し、その有効性は低下し、許容できる一酸化炭素変換率を維持するために漸次の温度上昇を必要とする。これは、Steynberg et al. "Fischer-Tropsch catalyst deactivation in commercial microchannel reactor operation" Catalysis Today 299 (2018) pp10-13に記載されている。
【0013】
最終的には、触媒を再生させることは、その有効性を回復するために必須になる。触媒をインサイチュで再生させることは公知である。
【0014】
固定床反応器、スラリーバブリング-カラム反応器(SBCR,slurry bubble-column reactors)及びマイクロチャネル反応器を含む、いくつかの異なる反応器タイプが、フィッシャー-トロプシュ合成を実行に関して公知である(Rytter et al, "Deactivation and Regeneration of Commercial Type Fischer-Tropsch Co-Catalysts - A Mini-Review" Catalysts 2015, 5, pp 478-499 at pp 482-483)。
【0015】
マイクロチャネル反応器は、本出願人の名で国際公開WO2016/201218(A)号パンフレットにおいて開示されており、これは参照として組み込まれ、LeViness et al "Velocys Fischer-Tropsch Synthesis Technology - New Advances on State-of-the-Art" Top Catal 2014 57 pp518-525においても同様に開示されている。そのような反応器は、熱交換表面積のマイクロチャネル(したがって触媒)体積に対する比が高いために、きわめて有効な熱除去が実行可能という具体的な利点を有する。
【0016】
しかし、Rytter et al (前出), 490頁 パラグラフ 2 6 及び 7行で記載されているように、
「マイクロチャネル反応器は、触媒の配置に応じて特別な課題を呈する。インサイチュでの再生は任意であり、又は、外部処理のために、触媒の粒子を排出すること、若しくは触媒が付着したマルチチャネルトレイを除去することのいずれかにより、触媒を除去することができる。」
【0017】
本発明は、マイクロチャネル反応器におけるインサイチュでの触媒再生に関係する。
【0018】
例えば国際公開WO2016/201218(A)号パンフレットの実施例6から、350℃~375℃にて水素を用いた脱蝋、70℃に冷却することにより、空気導入で始める酸化、次いで約350℃にて水素を用いた還元を伴う3段階プロセスにより、マイクロチャネル反応器においてフィッシャー-トロプシュ触媒を再生することは公知である。
【0019】
加熱及び冷却は、循環冷却水並びに過熱水蒸気の使用を通して温度範囲の全体にわたって行われる。冷却水循環から過熱水蒸気への移行は、逆の場合も同じく、典型的には150℃~200℃の範囲で行われ、正しい手順を辿らなければ、反応器/水蒸気ドラムの水撃作用(water hammering)の可能性について潜在的に問題があり得、これは、動作不能時間及び修理コストを発生させる装備の損傷を引き起こす。
【0020】
上記プロセスでは、反応器を約70℃に冷却して、触媒と酸素の反応からの大規模な発熱を避けること、及び水素と酸素との間における反応の潜在性(ステップの間における不適切なパージでの)を取り除くことが必須と考えられている。しかし、これは、冷却及び加熱速度を制限するので、再生プロセスの継続期間を増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】国際公開WO2016/201218(A)号パンフレット
【非特許文献】
【0022】
【文献】Steynberg et al. “Fischer-Tropsch catalyst deactivation in commercial microchannel reactor operation” Catalysis Today 299 (2018) pp10-13
【文献】Rytter et al, “Deactivation and Regeneration of Commercial Type Fischer-Tropsch Co-Catalysts - A Mini-Review” Catalysts 2015, 5, pp 478-499 at pp 482-483
【文献】LeViness et al “Velocys Fischer-Tropsch Synthesis Technology - New Advances on State-of-the-Art” Top Catal 2014 57 pp518-525
【文献】Rytter et al (ibid), page 490 para 2 lines 6 and 7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、従来技術の上記欠点を克服又は緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
かくして、第1の態様では、本発明は、熱交換チャネルを具備した反応器、好ましくはマイクロチャネル反応器において、インサイチュで触媒を再生するための方法であって、
a)前記触媒を、上昇した温度にて、前記反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる水素含有脱蝋ガス流で処理することにより脱蝋するステップ;
b)得られた脱蝋した前記触媒を、上昇した温度にて、前記反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる酸化ガス流で処理することにより酸化させるステップ、及び
c)得られた酸化した前記触媒を、上昇した温度にて、前記反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる還元ガス流で処理することにより還元するステップを含み、
ステップa)からステップb)への移行において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、脱蝋するのに十分な温度から、90℃以上の第1の下限値、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃~180℃、最も好ましくは145℃~155℃に低下させ;
ステップb)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を酸化するのに十分な温度に上昇させ;
ステップb)からステップc)への移行において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、酸化するのに十分な温度から、90℃以上の第1の下限値、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃~180℃、最も好ましくは145℃~155℃に低下させ;
次いでステップc)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を還元するのに十分な値に上昇させ;
前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度が、前記マイクロチャネル反応器の前記熱交換チャネルを通して流れる熱交換流体により制御され、前記熱交換流体の全体が相変化を受けることはない、前記方法を提供する。
【0025】
好ましい態様では、熱交換流体の全体が、本発明の方法において相変化を受けない。しかし、本発明の方法は、熱交換流体が複数の相を含み、そのうち1つのみが、本発明の方法の作業において相変化を受けない場合にも実現できる。例えば、熱交換流体は、過熱水蒸気のみを含み得、このケースでは、本発明の方法中に、熱交換流体において相変化は発生しない。本発明のこの態様は、以下で実施例5において例示される。別の態様として、熱交換流体は、飽和水蒸気(水蒸気及び水の混合物)を含み得、このケースでは、熱交換流体の一部(水蒸気)のみが、本発明の方法中に相変化を受けない。この後者の態様は、以下で実施例6において例示される。
【0026】
本発明による方法は、脱蝋、酸化及び還元による触媒の再生を必要とする多数の化学的プロセスにおいても、好適にはインサイチュで触媒を再生するために使用され得る。フィッシャー-トロプシュは、そのような化学的プロセスの1つである。
【0027】
第2の態様では、本発明は、熱交換チャネルを具備した反応器、好ましくはマイクロチャネル反応器において、インサイチュで触媒を再生するための方法であって、
x)前記触媒を、上昇した温度にて、前記反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる酸化ガス流で処理することにより酸化させるステップ、及び
y)得られた酸化した前記触媒を、上昇した温度にて、前記反応器のプロセスマイクロチャネルを通して流れる還元ガス流で処理することにより還元するステップを含み、
ステップx)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を酸化するのに十分な温度に上昇させ;
ステップx)からステップy)への移行において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、酸化するのに十分な温度から、90℃以上の第1の下限値、好ましくは100℃以上、より好ましくは140℃~180℃、最も好ましくは145℃~155℃に低下させ;
次いでステップy)において、前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度を、前記触媒を還元するのに十分な値に上昇させ;
前記プロセスマイクロチャネル及び/又は前記熱交換チャネルの内側の温度が、前記マイクロチャネル反応器の前記熱交換チャネルを通して流れる熱交換流体により制御され、熱交換流体の全体が相変化を受けることはない、前記方法を提供する。
【0028】
本発明による方法は、酸化及び還元による触媒の再生を必要とする多数の化学的プロセスにおいても、インサイチュで触媒を再生するために好適に使用され得る。メタノールの合成は、そのような化学的プロセスの1つである。他のものは、水素処理触媒の酸化再生、合成天然ガスを生成するための一酸化炭素のメタン化、脱蝋するステップが、溶媒抽出などの物理的手段により行われるフィッシャー-トロプシュ触媒のレドックス再生を含み得る。
【0029】
好ましくは、熱交換流体は水蒸気である。
【0030】
好ましくは、触媒は、金属系触媒、例えば、コバルト又は鉄含有触媒などのフィッシャー-トロプシュ触媒である。以下の説明では、脱蝋、酸化及び還元の好ましい温度は、コバルト系フィッシャー-トロプシュ触媒について示されているが、異なるタイプの触媒は、使用されるべき代替温度を必要とすることがあり、その選択は、十分に当業者の権限内であることが認識されるであろう。
【0031】
好ましくは、触媒は、多孔質担体上に配置される。
【0032】
好ましくは、酸化ガス流は、酸素及び非酸化希釈ガスを含む。好ましくは酸化ガス流の酸素含有量は、21体積%以下、好ましくは15体積%以下、より好ましくは10%以下、より一層好ましくは5%以下、最も好ましくは1%~4%である。この特徴は、酸化ステップ中における制御不能な発熱反応の危険性を最小限にする。
【0033】
ガス流の温度は、マイクロチャネル反応器の熱交換チャネルを通して流れる熱交換流体により制御される。好ましくは、熱交換流体は水蒸気である。
【0034】
好ましい実施形態では、ステップa)は、任意選択の窒素パージ及び水素含有ガスの導入のために、反応器を合成(例えばFT合成)モードからおよそ170℃の移行温度にクールダウンした際に開始する。水素化分解は、触媒床における残留炭化水素から軽質炭化水素の形成を引き起こすこのステップ中に発生する。ガス環境は、還元ガスにおいて75%以上の水素、好ましくは80%~90%の水素の濃度で維持される。
【0035】
好ましくは、脱蝋ガス流は、水素を含み、任意に希釈ガスを含んでもよい。希釈ガスは、例えば窒素、メタン又は軽質炭化水素を含み得る(又はそれであり得る)。
【0036】
(フィッシャー-トロプシュ合成モード中の場合)冷却材回路における液体水の流れで開始される、最大温度までの水素含有ガス下でのヒートアップは、中圧水蒸気ヘッダーにより可能になることが推奨される。この時、クールダウンは、典型的には、冷却材回路における、液体水から水蒸気(蒸気)の流れへの移行のために、過熱水蒸気が利用できる最低温度、一般的に140℃~180℃、より好ましくは145℃~155℃の範囲に向けて開始する。
【0037】
水蒸気の流れが確保されると、好ましい実施形態では、触媒床/反応器/水素含有ガス流の温度を、300℃~400℃、好ましくは330℃~380℃、最も好ましくは340℃~360℃の保持温度に上昇させ、その保持温度で、又はその近く(好ましくはその15℃以内)で1時間~24時間、好ましくは10~20時間、より好ましくは10~15時間の期間保つ。
【0038】
ステップa)が完了したら、触媒床/反応器/ガス流の温度を、不活性ガス(例えば窒素)パージ及び後続する酸化ガスの導入のために、好ましくは脱蝋温度から、過熱水蒸気が利用できる最低温度に、一般的に140℃~180℃、より好ましくは145℃~155℃の範囲に低下させる。この特徴は、再生に必要な時間、及び反応器、又は関連する水蒸気ドラム及び配管のいずれかの水撃作用の危険性を最小限にする。
【0039】
脱蝋するステップの完了後、不活性ガス(例えば窒素)を用いたパージは、ステップb)において酸化ガスを導入する前に完了する。
【0040】
好ましくは、酸化ガス流は、酸素及び希釈ガスを含む。好ましくは酸化ガス流の酸素含有量は、21体積%以下、好ましくは15体積%以下、より好ましくは10%以下、より一層好ましくは5%以下、最も好ましくは1%~4%である。この特徴は、冷却材チャネルにおける過熱水蒸気の流れで上昇した温度での、酸化ステップ中における制御不能な発熱反応の危険性を最小限にする。
【0041】
希釈ガスは、例えば空気、窒素、アルゴン、ヘリウム又は二酸化炭素を含み得る(又はそれであり得る)。
【0042】
好ましくはステップb)において、触媒床/反応器/酸化ガス流の温度を、触媒が完全に酸化される250℃~325℃、より好ましくは280℃~300℃の温度に上昇させる。最終保持の温度を、好ましくはその保持温度で、又はその近く(好ましくはその15℃以内)で1時間~24時間、好ましくは10~20時間、より好ましくは10~15時間の期間保つ。保持が完了したら、温度を次いで好ましくは、過熱水蒸気が利用できる最低温度に、一般的に140℃~180℃、より好ましくは145℃~155℃の範囲に低下させる。この特徴は、再生に必要な時間を最小限にする。
【0043】
好ましくは、酸化ステップの完了後、不活性ガス(例えば窒素)を用いたパージは、ステップc)において還元ガスを導入する前に完了する。
【0044】
好ましくは、ステップc)において、還元ガス流の温度を、300℃~400℃、好ましくは330℃~380℃、最も好ましくは340℃~360℃の保持温度に上昇させ、その保持温度で、又はその近く(好ましくはその15℃以内)で1時間~24時間、好ましくは10~20時間、より好ましくは10~15時間の期間保つ。
【0045】
好ましくは、還元ガス流は、水素を含み、任意に希釈ガスを含んでいてもよい。希釈ガスは、例えば窒素、メタン、軽質炭化水素、二酸化炭素又は一酸化炭素を含み得る(又はそれであり得る)。
【0046】
好ましくは、ステップb)若しくはステップx)における酸化ガス流の温度、又はステップa)若しくはステップc)若しくはステップy)における還元ガス流の温度は、1時間当たり5℃~30℃、好ましくは1時間当たり10℃~20℃、最も好ましくは1時間当たり12℃~18℃の速度で変化する(上昇又は低下する)。
【0047】
好ましくは、プロセスマイクロチャネル内の温度は、隣接した熱伝達チャネル内の温度の、10℃、好ましくは5℃、より好ましくは2℃、最も好ましくは1℃以内である。この特徴は、触媒の制御不能な反応の危険性を最小限にする。
【0048】
好ましくは、プロセスマイクロチャネルの内部の最大横断寸法は、12mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下である。これらの範囲は、熱伝達を最大限にし、それにより、触媒の制御不能な反応の危険性を最小限にする。
【0049】
本発明は、第2の態様では、フィッシャー-トロプシュ反応器において、一酸化炭素及び水素を含むガス混合物を反応させるステップ、並びにそのフィッシャー-トロプシュ反応器において、上記で定義されている方法により、触媒を定期的に再生させるステップを含む、フィッシャー-トロプシュ法も提供する。
【0050】
好ましくは、前記ガス混合物は、複数のフィッシャー-トロプシュ反応器を通して、又は1若しくは2以上のフィッシャー-トロプシュ反応器の複数のフィッシャー-トロプシュ反応器コアを通して、並行流路を流れ、前記流路は、循環的に(in cyclical fashion)隔離され、ステップa)、b)及びc)の前記脱蝋、酸化及び還元ガス流は、隔離された前記流路を通して連続して供給されて、その流路のフィッシャー-トロプシュ触媒を再生させ、それと同時にフィッシャー-トロプシュ反応が残りの流路で発生する。この特徴により、連続した生成ができるようになり、プラントの動作停止時間が避けられる。
【0051】
好ましい実施形態では、前記合成ガス混合物は、バイオマス及び/又は都市若しくは固体廃棄物生成物をガス化することにより生成され、後続して改質してもよい。埋立地ガス又は天然ガスなどの他の供給原料は、前もってガス化せずに直接改質できる。
【0052】
本発明は、第3の態様では、熱交換チャネルを具備したマイクロチャネル反応器において、コバルトを含有する、又は鉄を含有する、又はルテニウムを含有するフィッシャー-トロプシュ触媒をインサイチュで再生する上記による方法も提供する。
【0053】
本発明は、第4の態様では、熱交換チャネルを具備したマイクロチャネル反応器において、炭化水素処理触媒をインサイチュで再生する上記による方法も提供する。
【0054】
本発明は、第5の態様では、水素含有プロセス流中での少なくとも1つの処理、及び酸素を含有するプロセス流中での1つの処理を用いた、いずれかの触媒の再生方法も提供する。例えばある化学的プロセスは、脱蝋する段階を必要としないことがあり;他のものは、溶媒抽出などの物理的手段を通して脱蝋を達成することがあり、このケースでは、再生は、引き続いて本発明による酸化及び還元ステップで完了できる。例えばメタノール合成触媒は、本発明による酸化及び還元ステップx)及びy)で再生できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本発明の好ましい実施形態は、添付図の図1~7に関して、以下で単なる例として記載される。
図1】熱交換流体における、液相から蒸気相又はその逆への移行を伴う熱伝達の条件下で熱交換流体を使用した、触媒再生法中の温度プロットである(すなわち従来の方法)。
図2】本発明による、及び図1の方法による、触媒再生法を例示する比較の温度プロットの概略図である。
図3】好ましい実施形態に使用されるマイクロチャネル反応器の概略図である。
図4図3の反応器に利用される反応器コアの概略図である。
図5図4の反応器コアに利用される熱交換ユニットの概略図である。
図6】プロセスマイクロチャネルを含む触媒ユニットの概略図であり、触媒ユニットは、図4の反応器コアに利用される。
図7】5つの異なる反応器列(それぞれ1又は2以上のマイクロチャネル反応器を含む)を有するフィッシャー-トロプシュアイランド(Fischer-Tropsch island)(設備)の概略図であり、反応器列の作業において、A)及びB)の2段階を示し、この作業で異なる反応器列200C及び200Dが、触媒再生のためのフィッシャー-トロプシュ合成法から隔離される。
【発明を実施するための形態】
【0056】
2つのプロセス層(図6に示されているように、それぞれ1つの層当たりおよそ500のプロセスチャネルを含む)及び3つの冷却材層(図5に示されているように、1つの層当たりおよそ175のチャネルを含む)を含むマイクロチャネル反応器を用いた。反応器に、コバルト系FT触媒を入れ、FT合成モードにて、天然ガスに由来する合成ガスで(水蒸気改質プロセスを使用して)815時間の期間作業させ、メンブレンを使用しておよそ1.75のH:CO比に調整した。次いでこれに、図1で要約されているように蝋の除去、酸化及び還元ステップからなる再生(WROR)法を施した。
【0057】
図1は、上に記載されているマイクロチャネル反応器における、熱交換流体として水及び水蒸気での冷却を伴う(すなわち相変化及び潜熱としての結果的な熱除去を伴う)上記コバルト系フィッシャー-トロプシュ触媒の再生法の温度プロットを示す。
【0058】
示されているように、3ステッププロセスが関わり、これは、蝋の除去、相の酸化及び還元(WROR,wax removal, oxidation and reduction)を含み、各相における触媒床(反応器中)のヒートアップ及びクールダウンを必要とする。
【0059】
最初に、合成は、反応器の温度をおよそ170℃に低下させることにより止め、次いで合成ガスを遮断する(ストップSYNGAS)。これを続いて窒素を用い、次いで水素を用いて、蝋の除去ステップのための環境を確保する。蝋の除去に対する温度ランプ(ramps)は、WRスタート、2と、WR完了、3との間において開始する。最初のヒートアップは、作動中の液体冷却材の流れで約210℃の温度まで行われる。反応器は、次いでおよそ170℃に冷却し、冷却媒体は過熱水蒸気に切り替えられ、ヒートアップ、保持及びクールダウンが、図1で示されているプロファイルのように続く。およそ150℃にクールダウンさせたら、液体冷却材媒体(水)を再導入し、反応器をおよそ70℃に冷却する。これを、続いて窒素を用いてパージし、OXスタート、4で漸次の酸化ガス制御導入を始め、次いで系における酸素濃度を1%ずつ上昇させる。最終環境に達したら、酸化温度ランプが始まり、OX完了、5で終了する。もう一度、ヒートアップ段階中に、液体水冷却材から過熱水蒸気冷却材への移行がおよそ150℃の温度にてなされ、過熱水蒸気から液体冷却材への逆移行がほぼ同一の温度にてなされる。酸化温度ランプが完了したら、反応器は、酸素を含有するガス下およそ70℃である。これを、続いて窒素、次いで水素を用いてパージして、還元ステップのための環境を確保する。第3に、還元相温度ランプがRスタート、6で始まり、水素供給が遮断されたときにR完了、7で終了する。もう一度、ヒートアップ段階中に、液体水冷却材から過熱水蒸気冷却材へと移行がおよそ150℃の温度にてなされ、過熱水蒸気から液体冷却材への逆移行が、ほぼ170℃の合成スタート温度でなされる。再生を次いで完了させ、合成ガスがリスタートされる(スタートSYNGAS)。
【0060】
この比較のプロトコール後における触媒活性の回復は、以下の表1で例示される:
【0061】
【表1】
【0062】
これらの相のそれぞれには、反応の発熱性、蝋除去ステップにおける水素化分解(軽度)及び酸化ステップにおけるコバルト酸化(高度)、並びに水素と酸素との間における反応(ステップ間における不適切なパージに伴い)に対する潜在性から起こる発熱反応の危険性がある。これらの危険性を和らげるために、これらのステップのそれぞれの間における移行は、およそ70~80℃にて行われるが、これらのステップにおける最終的な保持温度は、300~375℃の範囲であることが多い。加熱及び冷却を温度の全体の範囲にわたって行うことは、循環冷却水並びに過熱水蒸気の使用を伴う。冷却水循環から過熱水蒸気、またその逆への移行は、典型的には150~200℃の範囲で行われ、反応器/水蒸気ドラムが潜在的な水撃作用を受けるおそれがある。
【0063】
図2は、プロット1として図1と同一の温度プロファイルの理想化バージョンを示すが、同一のマイクロチャネル反応器において、コバルト系フィッシャー-トロプシュ触媒で、本発明に従って達成可能な温度プロット10も示す。このケースでは、使用され得る熱交換媒体は、過熱水蒸気である。過熱水蒸気を利用できる最低温度は150℃であり、結果として、ステップの間における移行は、70℃ではなく150℃にて起こる。プロット1及び10での加熱及び冷却速度は、15℃/hrにて本質的に同一であった。本発明の方法は、プロット10に例示されるように、WROR(蝋除去、酸化、還元)にかかる時間を、7日間かかるオリジナルプロセスよりもおよそ24hr(1日)減少させることがわかった。60日ごとすなわち1年当たり約6回の再生と仮定すると、本発明の方法は、再生にかかる時間を約6日間減少させる、又はフィッシャー-トロプシュ反応器の可用性をおよそ2%まで上昇させる。
【0064】
本発明の方法の個々の成分をテストした結果は、以下に記載されている:
温度プロット1及び10の蝋除去パートは、本質的に同一である。したがって、蝋除去プロトコールの実践に変更は必須ではない。
[実施例1-2]
【0065】
(酸化について)
再生における酸化ステップは、酸素の導入速度に対して最も注意を要するものである。約70~80℃から150℃のO導入温度の上昇は、反応性を上昇させると予想され(コバルト再酸化反応で)、最初のO導入における熱放出が検討される。
【0066】
シングルチャネルキロポケット反応器(single channel kilopocket reactor)を使用して、変更したO導入プロトコールをテストした。最初のO導入において、熱応答(プロセスチャネルと冷却材チャネルとの間における壁の中央に位置した、反応器壁の熱電対における温度スパイクとして測定した)及び触媒床の圧力降下が、良好な空気導入を評価する指標として使用された。
【0067】
新たなコバルト系フィッシャー-トロプシュ触媒を、まず水素中で還元することにより活性化し、150℃の温度にて保持し、次いでOを導入した。
【0068】
表2は、150℃にて本発明のプロトコールでテストするO導入の結果を要約しており、観察された最大温度上昇(上に記載されているサーモウェルにより測定された)及び圧力降下の変化の観点から、比較のプロトコールと良好な一致を示す。実際の実装では、利用できるOの量は、整える必要があり、必要なOの正確な量を送達するために、プロセスチャネルの大きさに応じて、濃度(例示されている)又は流れ(示されていない)の変化を通して制御される。反復ユニット(単一プロセス及び単一冷却材層)の移動式前面放熱モデル(moving front heat release model)を使用して、ASME Section VIII Division 2に従って行われる詳細な機械的分析を使用し、酸素導入ステップの熱的影響を評価して、反応器で許容できる疲労寿命(1000回を超える熱サイクル)を検証した。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例で呈示されている最大温度上昇及び圧力降下は、比較値の5%以内、及び機器の測定不確定性の範囲内である。性能は、したがって同等であるが、再生時間は著しく減少し、水撃作用の危険性は著しく低下した。
[実施例3-4]
【0071】
(還元について)
触媒の還元は、150℃の開始温度で検討した。シングルチャネルキロポケット反応器を使用して、変更した還元プロトコールを蝋除去及び酸化ステップ後にテストして、許容できる性能を確認した。
【0072】
テストを早めるために、合成及びWROR作業に以前使用した触媒をこのテストに用いた。触媒を目標プロトコール、比較プロトコール及び本発明による活性化のために変更されたプロトコールにより活性化させ、次いでFT合成を、H:CO=1.82、41%不活性物質、2.41MPa(350psig)注入口圧力及び356ms接触時間に対応する作用条件でスタートアップした。反応器温度は、最初に201℃にセットし、続いて75±1%CO変換率を目標とするために上昇させた。各プロトコールを3回テストし、比較及び変更したプロトコールにより活性化された触媒の性能は、統計的に区別ができないことが見出された。
【0073】
以前に合成作業に使用し、続いて蝋除去及び酸化処理を受けたコバルト系FT触媒は、導入される水素及び合成ガス中での還元により活性化した。反応器温度を201℃にセットし、CO変換率を比較した@24時間運転中。次いで、反応器温度を上昇させて触媒失活を生じさせ、およそ75±0.5%CO変換率@48~72時間運転中を維持した。
【0074】
表3は、FT合成性能の結果を要約する。比較のプロトコール及び本発明のプロトコールは、統計的に区別ができない。
【0075】
【表3】
【0076】
性能は、したがって同等であるが、再生時間は著しく減少し、水撃作用の危険性は著しく低下した。
[実施例5]
【0077】
(全体のプロセスについて)
蝋除去、酸化及び還元相のマルチステッププロセスとして実践される、コバルト系FT触媒での詳細な再生プロトコールの例は、以下の通りである:
【0078】
蝋の除去
還元ガスの流れを、目標の流れにセットし、FTR注入口でのH純度は、85mol%を超える目標とする。反応器を目標圧力に加圧し、170℃~350℃に≦15℃/hrの速度でヒートアップさせた。およそ220℃の温度までヒートアップを完了させたら、液体水の流れから過熱水蒸気への冷却材媒体としての移行がなされ、保持温度までのヒートアップが再開される。目標保持温度に達したら、還元環境が一定温度にて12hrの期間維持され、次いで目標の150℃の移行温度に≦15℃/hrの速度でクールダウンされる。
【0079】
酸化
酸化プロセスをスタートする前に、反応器は、窒素を用いてパージすることにより、可燃ガス(例えば蝋除去中に使用されるH)を排除しなければならない。これは、加圧-減圧サイクル又はNでのパージにより達成され得る。酸化プロセスに使用される空気が、-40°Fの露点温度、<0.1ppmw未満の微粒子を有すべきこと、並びにS及びN混入物を本質的に含むべきではないことに留意されたい。
【0080】
窒素ガスの流れを、目標の流れにセットし、反応器を、目標圧力に加圧する。合計流量(GHSV)を維持しつつ、少量の空気を導入して、酸素濃度を約0.1mol%に上昇させ、予め定義された時間保持する。例えば0.1%(保持の有無を問わず)ずつ酸素濃度を上昇させるために、最終目標酸素濃度(例えばおよそ3mol%)まで空気の導入を続けた。最終O濃度に達した後で、反応器の150℃~300℃の温度へのヒートアップを≦15℃/hrの速度で開始する。12hrの期間の保持を完了した後で、反応器の300℃~150℃へのクールダウンを≦15℃/hrの速度で開始する。反応器を、最終還元ステップのための調製において窒素を用いてパージする。
【0081】
還元
を用いた長い最初のパージは、最初に150℃の移行温度にて4時間の期間行った。還元ガスの流れを、目標の流れにセットし、FTR注入口でのH純度は、99.6mol%を超える目標とした。反応器を目標圧力に加圧し、150℃~350℃に≦15℃/hrでヒートアップし、続いて350℃にて12hr保持し、最終的に約170℃のsyngas導入温度に≦15℃/hrの速度でクールダウンした。この状態で、FT合成のための調製における冷却媒体として、過熱水蒸気から液体水への切り替えがなされた。
[実施例6]
【0082】
(全体のプロセスについて)
比較のプロセスにおける反応器/触媒/熱交換の70℃へのクールダウンは、商業的実務では、過熱水蒸気の熱交換媒体を用いたステップのそれぞれに対する最終的な保持温度から、飽和水蒸気温度まで(水蒸気ドラム圧力が、飽和水蒸気曲線に基づいて、水蒸気ドラムにおける温度を制御する場合)、2つのステップを伴う。この温度を下回って、比較のプロセスにおける目標温度の70℃に冷却するために、真水の補給及びその放出(blowdown)で、又は自然対流により温度のクールダウンを可能にするための延長時間を待つことで、水蒸気ドラムの追加のフラッシュを必要とする。上記図1により記載されているプロセスでは、クールダウンの目標速度は、上に記載されている水蒸気ドラムの補給-放出の組合せ、及び取り外し可能な断熱材の使用を通して達成された。商業的実務では、比較的規模は小さいが本発明の方法を利用するプロセスは、本発明の方法の目標利益を達成できると見出され、移行温度の例は約99~105℃(周囲圧力を約2psi上回る水蒸気ドラムの作動に基づく水蒸気飽和温度)である。
【0083】
コバルト系FT触媒での詳細な再生プロトコールの例は、実施例5に記載されている蝋除去、酸化及び還元相のマルチステッププロセスとして実践されるが、移行温度が達成可能な最低温度(その場の気候条件を考慮して、飽和水蒸気圧力に基づき、周囲圧力を約2psi上回って水蒸気ドラムを作動させる)は、99~105℃を示す。
【0084】
適切なマイクロチャネル反応器の詳細は、図3~6に関連して以下に示されている。
【0085】
図3を参照すると、マイクロチャネル反応器200は、3個のマイクロチャネル反応器コア220を含有する、又は収容する格納容器210を含む。他の実施形態では、格納容器210は、1~約12個のマイクロチャネル反応器コア、又は1~約8個のマイクロチャネル反応器コア、又は1~約4個のマイクロチャネル反応器コアを含有する、又は収容するために使用され得る。格納容器210は、加圧可能な容器であり得る。格納容器210は、反応物がマイクロチャネル反応器コア220に流れること、生成物がマイクロチャネル反応器コア220から流れること、熱交換流体がマイクロチャネル反応器コア220に、及びそこから流れることを可能にする注入口及び流出口230を含む。
【0086】
注入口245の1つは、マイクロチャネル反応器コア220のそれぞれにおいて、反応物をプロセスマイクロチャネルに流れさせるために設けられているヘッダー又はマニホールド(示されていない)に接続し得る。注入口230の1つは、マイクロチャネル反応器コア220のそれぞれにおいて、熱交換流体、例えば過熱水蒸気を熱交換チャネルに流れさせるために設けられているヘッダー又はマニホールド(示されていない)に接続する。流出口245の1つは、マイクロチャネル反応器コア220のそれぞれにおいて、生成物をプロセスマイクロチャネルから流れさせるために設けられているマニホールド又はフッター(示されていない)に接続する。流出口230の1つは、マイクロチャネル反応器コア220のそれぞれにおいて、熱交換流体を熱交換チャネルから流れさせるために設けられているマニホールド又はフッター(示されていない)に接続する。
【0087】
格納容器210は、マイクロチャネル反応器コア220内で発達し得る操作圧に対抗するのに十分な、いかなる適切な材料を使用して構築してもよい。例えば、格納容器210のシェル240及び補強リブ242は、鋳鋼で構成され得る。フランジ245、カップリング及びパイプは、例えば316ステンレス鋼で構成され得る。
【0088】
図4、5及び6を参照すると、マイクロチャネル反応器コア220は、プロセスマイクロチャネル310の層状ユニット300、及び熱交換チャネル355の層状ユニット350の交互の積層体を含有する。
【0089】
マイクロチャネル反応器コア220は、複数のプロセス層及び複数の熱交換層を画定する積層体内に複数のプレートを含んでいてもよく、各プレートは周縁を有し、各プレート又はシムの周縁は、積層体に周辺シールを設けるように、次に隣接したプレートの周縁に溶接されている。これは、米国特許第2012/0095268 A1号明細書で示されており、これは参照により本明細書に組み込む。
【0090】
マイクロチャネル反応器コア220は、方形又は矩形の六面を有する立体ブロックの形態を有していてもよい。マイクロチャネル反応器コア220は、長さに沿って同一の断面を有していてもよい。マイクロチャネル反応器コア220は、平行な形態、又は立方ブロック、又はプリズムであってもよい。
【0091】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、プロセスマイクロチャネル310中に位置しており、粒子状固体の固定床又は様々な構造化された触媒形態を含むいかなる形態であってもよい。
【0092】
図4は、プレート316と317との間に挟まれた波形シート315を示し、シート315のいずれの面でもプロセスマイクロチャネル310を画定する。明瞭さのために、フィッシャー-トロプシュ触媒500は、これらのマイクロチャネルの3個のみで示されているが、実際には各マイクロチャネル310には、触媒500が充填されている。構築物のさらなる詳細は、国際公開第2008/030467(A)号パンフレットで開示されており、これは参照により本明細書に組み込む。
【0093】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、コバルト及び担体を含んでいてもよい。触媒は、約10~約60重量%、又は約15~約60重量%、又は約20~約60重量%、又は約25~約60重量%、又は約30~約60重量%、又は約32~約60重量%、又は約35~約60重量%、又は約38~約60重量%、又は約40~約60重量%、又は約40~約55重量%、又は約40~約50%のコバルトの範囲でCo担持を有していてもよい。
【0094】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、貴金属をさらに含んでいてもよい。貴金属担体は、Pd、Pt、Rh、Ru、Re、Ir、Au、Ag及びOsの1又は2以上であり得る。貴金属は、Pd、Pt、Rh、Ru、Ir、Au、Ag及びOsの1又は2以上であり得る。貴金属は、Pt、Ru及びReの1又は2以上であり得る。貴金属はRuであり得る。代替として、又はそれに加えて、貴金属はPtであり得る。フィッシャー-トロプシュ触媒は、合計で約0.01~約30%(触媒前駆体又は活性化触媒の合計重量パーセントとして存在するすべての貴金属の合計重量に対して)の貴金属、又は合計で約0.05~約20%の貴金属、又は合計で約0.1~約5%の貴金属、又は合計で約0.2%の貴金属を含んでいてもよい。
【0095】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、1又は2以上の他の金属系成分を促進剤又は改質剤として含んでいてもよい。これらの金属系成分は、触媒前駆体及び/又は活性化触媒に、炭化物、酸化物又は元素金属として存在していてもよい。1又は2以上の他の金属系成分に適切な金属は、例えばZr、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Tc、Cd、Hf、Ta、W、Re、Hg、Tl及び4f-ブロックランタニドの1又は2以上であり得る。適切な4f-ブロックランタニドは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及び/又はLuであり得る。1又は2以上の他の金属系成分の金属は、例えばZn、Cu、Mn、Mo及びWの1又は2以上であり得る。1又は2以上の他の金属系成分に対する金属は、例えばRe及びPtの1又は2以上であり得る。触媒は、合計で約0.01~約10%(触媒前駆体又は活性化触媒の合計重量パーセントとして、すべての他の金属の合計重量に対して)の他の金属を含んでいてもよく、又は合計で約0.1~約5%の他の金属を含んでいてもよく、又は合計で約3%の他の金属を含んでいてもよい。
【0096】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、触媒前駆体に由来していてもよく、これは、活性化されて、例えば、水素及び/若しくは炭化水素ガス(例えばメタン)中で、又は、窒素及び/若しくはメタンなどの別のガスで希釈した水素若しくは炭化水素ガス中で、触媒前駆体を加熱して、炭化物若しくは酸化物の少なくとも一部を元素金属に変換することによりフィッシャー-トロプシュ触媒を生成し得る。活性触媒では、コバルトは、少なくとも部分的にその炭化物又は酸化物の形態であってもよい。
【0097】
フィッシャー-トロプシュ触媒前駆体は、カルボン酸を還元剤として使用して活性化されていてもよい。カルボン酸は、触媒前駆体の破砕を最小限にするが、それでも最終的に有効な触媒を生成するように選択され得る。2つ又は3つ以上のカルボン酸の混合物が使用され得る。カルボン酸は、クエン酸、グリコール酸、乳酸、マンデル酸又はそれらの2つ又は3つ以上の混合物などのアルファ-ヒドロキシカルボン酸であり得る。
【0098】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、触媒担体を含んでいてもよい。担体は、耐熱性金属酸化物、炭化物、炭素、窒化物又はそれらの2つ又は3つ以上の混合物を含んでいてもよい。担体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア又はそれらの2つ又は3つ以上の混合物を含んでいてもよい。担体の表面は、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、クロミア、アルミナ又はそれらの2つ又は3つ以上の混合物で処理することにより改質されていてもよい。担体に使用される材料、及び担体の改質に使用される材料は、異なり得る。担体は、シリカを含んでいてもよく、シリカの表面は、チタニアなどの、酸化物である耐熱性固体酸化物で処理され得る。担体を改質するために使用される材料は、担体触媒の安定性を上昇させる(例えば失活を低下させることにより)ために使用され得る。触媒担体は、担体の表面を改質するために使用される酸化物(例えば、シリカ、チタニア、マグネシア、クロミア、アルミナ又はそれらの2つ又は3つ以上の混合物)を約30重量%まで、又は例えば約1%~約30重量%、又は約5%~約30重量%、又は約5%~約25重量%、又は約10%~約20重量%、又は約12%~約18重量%含んでいてもよい。触媒担体は、構造化された形状、ペレット又は粉末の形態であってもよい。触媒担体は、粒子状固体の形態であってもよい。理論に束縛されることを望まないが、本明細書で示される表面処理は、フィッシャー-トロプシュ法の作業中に、焼結からCoを守るのを助けると考えられる。
【0099】
フィッシャー-トロプシュ触媒500の失活速度は、すべて触媒の回復又は再生が必要とされる前に、フィッシャー-トロプシュ合成に約300時間超、又は約3,000時間超、又は約12,000時間超、又は約15,000時間超使用できるようにしていてもよい。
【0100】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、1日につき約1.4%未満、又は1日につき約1.2%未満、又は1日につき約0.1%~約1%の間、又は1日につき約0.03~約0.15%の間の失活速度で、長期間(例えば300時間を超える)に使用されていてもよい。
【0101】
フィッシャー-トロプシュ触媒500は、プロセスマイクロチャネル310内に適合するいかなる大きさ、及び幾何学的構成を有していてもよい。触媒は、約1~約1000μm(ミクロン)、又は約10~約750μm、又は約25~約500μmの中央値粒径を有する粒子状固体(例えば、ペレット、粉末、ファイバーなど)の形態であってもよい。中央値粒径は、50~約500μm、又は約100~約500μm、又は約125~約400μm、又は約170~約300μmの範囲であってもよい。一実施形態では、触媒は、粒子状固体の固定床の形態であり得る。
【0102】
マイクロチャネル反応器コア220は、例えば熱交換チャネル355の6層350を含有し得る。
【0103】
図6を参照すると、プロセスマイクロチャネル310の各ユニット300は、例えば6.35mmの高さ(h)及び165mmの幅(w)を有し得る。各プロセスマイクロチャネルの長さは、例えば600mmであり得る。
【0104】
図5を参照すると、熱交換チャネル355の各ユニット350は、例えば6.35mmの高さ(h)、6,35mmの幅(w)及び600mmの長さ(l)を有し得る。
【0105】
プロセスマイクロチャネル310の各ユニット300は、例えば165個のプロセスマイクロチャネル310を有し得る。プロセスマイクロチャネル310は、いかなる形状、例えば、方形、矩形、円形、半円形なども有する断面を有し得る。各プロセスマイクロチャネル310の内のり高さは、プロセスマイクロチャネルを通した反応物及び生成物の流れる方向に垂直の内のり寸法の小さい方と考えられる。プロセスマイクロチャネル310のそれぞれは、例えば6.35mmの内のり高さ及び1mmの幅を有し得る。
【0106】
熱交換チャネル355の各ユニット350は、例えば168個の熱交換チャネルを有し得る。熱交換チャネル355は、マイクロチャネルであり得、又はこれらは、マイクロチャネルではないと分類され得るより大きい寸法を有し得る。熱交換チャネル355のそれぞれは、例えば6.35mmの内のり高さ又は幅を有し得る。
【0107】
マイクロチャネル反応器コア220は、十分な強度、寸法安定性及び熱伝達特性を与えて、望ましいプロセスの作業を可能にするいかなる材料でできていてもよい。これらの材料は、例えばアルミニウム;チタン;ニッケル;白金;ロジウム;銅;クロム;前記金属のいずれかの合金;真鍮;鋼(例えば、ステンレス鋼);石英;ケイ素;又はそれらの2つ又は3つ以上の組合せを含み得る。各マイクロチャネル反応器は、ステンレス鋼と、チャネルを形成するのに使用される1又は2以上の銅又はアルミニウム波板で構成され得る。
【0108】
マイクロチャネル反応器コア220は、例えばワイヤ放電加工、従来の機械加工、レーザーカット、光化学機械加工、電気化学機械加工、成型、ウォータージェット、スタンピング、エッチング(例えば化学、光化学又はプラズマエッチング)及びそれらの組合せを含む公知の技術を使用して製造され得る。
【0109】
マイクロチャネル反応器コア220は、一部が除去されて流れの通過を可能にするプレートを形成することにより構築されていてもよい。プレートの積層体は、例えば、拡散ボンディング、レーザー溶接、拡散蝋付け、及び同様の方法を経由して組み立てて、一体化デバイスを形成できる。マイクロチャネル反応器は、例えばプレート及び部分的プレート又はストリップの組合せを使用して組み立てられ得る。この方法では、チャネル又は空隙域は、ストリップ又は部分的プレートを組み立てることにより形成されて、必要とされる材料の量を減少できる。
【0110】
マイクロチャネル反応器コア220は、複数のプロセス層及び複数の熱交換層を画定する積層体において複数のプレートを含んでいてもよく、各プレートは周縁を有し、各プレート又はシムの周縁は、次の隣接したプレートの周縁に溶接されて、積層体に対する周辺シールが設けられる。これは、米国特許第2012/0095268 A1号明細書で示されており、これは、参照により本明細書に組み込む。
【0111】
格納容器210は、格納容器内の圧力を、マイクロチャネル反応器コア220内の内圧と少なくとも同じ高さのレベルで維持する制御機構を含んでいてもよい。格納容器210内の内圧は、合成ガス変換法(例えば、フィッシャー-トロプシュ法)の作業中に約10~約60気圧、又は約15~約30気圧の範囲であってもよい。格納容器内の圧力維持のための制御機構は、逆止弁及び/又は圧力調節器を含んでいてもよい。逆止弁又は調節器は、格納容器に望ましいいかなる内圧も有効にするようにプログラムされていてもよい。これらのいずれか又は両方は、パイプ、バルブ、コントローラーなどの系と組み合わせて使用して、格納容器210における圧力が、マイクロチャネル反応器コア220内の内圧と少なくとも同じ高さのレベルで維持されるのを確実にすることができる。これは、マイクロチャネルコア220を形成するために使用される溶接を保護するためもあってなされる。格納容器210内の圧力が著しく低下すると、マイクロチャネル反応器コア220内の内圧の対応する低下を伴わずに、マイクロチャネル反応器コア220内の溶接の、損害の大きい破断が生じるおそれがある。制御機構は、格納容器のガスによりかけられる圧力が減少する場合には、1又は2以上のプロセスガスの格納容器への迂回を可能にするように設計されていてもよい。
【0112】
フィッシャー-トロプシュ法マイクロチャネルは、バルク流路を有することを特徴とする。「バルク流路」という用語は、プロセスマイクロチャネル内の開放経路(連続するバルク流れ領域)を指す。連続するバルク流れ領域により、大きい圧力降下なしでチャネルを通した迅速な流体の流れを可能にする。一実施形態では、バルク流れ領域における流体の流れは、層流である。各プロセスマイクロチャネル内のバルク流れ領域は、約0.05~約10,000mm、又は約0.05~約5000mm、又は約0.1~約2500mmの断面積を有していてもよい。バルク流れ領域は、プロセスマイクロチャネルの断面の約5%~約95%、又は約30%~約80%を含んでいてもよい。
【0113】
反応物の触媒との接触時間は、約3600ミリ秒(ms)まで、若しくは約2000msまでの範囲、又は約10~約2600ms、若しくは約10ms~約2000ms、若しくは約20ms~約500ms、若しくは約200~約450ms、若しくは約240~約350msの範囲であってもよい。
【0114】
プロセスマイクロチャネルにおける流体の流れに関する空間速度(又はガス毎時空間速度(GHSV,gas hourly space velocity))は、少なくとも約1000hr-1(供給物の通常リットル/時間/プロセスマイクロチャネル内の体積のリットル)、又は少なくとも約1800hr-1、又は約1000~約1,000,000hr-1、又は約5000~約20,000hr-1であってもよい。
【0115】
プロセスマイクロチャネル内の圧力は、約100気圧までであってもよく、又は約1~約100気圧、若しくは約1~約75気圧、若しくは約2~約40気圧、若しくは約2~約10気圧、若しくは約10~約50気圧、若しくは約20~約30気圧の範囲であってもよい。
【0116】
流体がプロセスマイクロチャネルにおいて流れるときの、その圧力降下は、チャネルの長さ1メートル当たり約30気圧(atm/m)まで、又は約25atm/mまで、又は約20atm/mまでの範囲であってもよい。圧力降下は、約10~約20atm/mの範囲であってもよい。
【0117】
好ましい実施形態では、反応器は、反応器(又はプロセスマイクロチャネル層)から反応の熱を除去するための熱伝達表面(又は熱伝達壁)を有し、熱伝達表面の表面積と、反応器における触媒の体積の比は、少なくとも触媒立方メートル当たり熱伝達表面約300平方メートル、例えば約300~約5000、又は好ましくは約1000~3000m/m触媒である。
【0118】
マイクロチャネル反応器コア220における熱交換のための熱流束は、マイクロチャネル反応器におけるプロセスマイクロチャネルの1若しくは2以上の熱伝達壁の表面積平方センチメートル当たり約0.01~約500ワット(W/cm)の範囲、又は約0.1~約250W/cm、若しくは約1~約125W/cm、若しくは約1~約100W/cm、若しくは約1~約50W/cm、若しくは約1~約25W/cm、若しくは約1~約10W/cmの範囲であってもよい。範囲は、約0.2~約5W/cm、又は約0.5~約3W/cm、又は約1~約2W/cmであってもよい。
【0119】
図7を参照すると、マイクロチャネル反応器200Aから200Eの連鎖は、2つの状態A)及びB)で示されている。マイクロチャネル反応器は、それぞれ並行して共通のサプライラインから合成ガス(SYNGAS,synthesis gas)が供給され、生成物(FT生成物)は、示されているように並行して組み合わせられる。
【0120】
状態A)では、反応器200Cは隔離され、その触媒は、図2のプロット10のプロトコールに従って再生される。この再生が完了したとき、触媒は、SYNGASの流れをリスタートさせることによりフィッシャー-トロプシュ作業へ戻され、FT生成物ラインへとつながり、状態B)に示されているように、反応器200Dの触媒で同様の再生が行われる。再生は、反応器200Aから200Dのそれぞれを通してサイクル処理され、その結果、反応器のうち4つが常にフィッシャー-トロプシュ法に利用され、残りの反応器がその触媒を再生させている。
【0121】
プロセスマイクロチャネル内を流れる流体の表面速度(superficial velocity)は、少なくとも1秒当たり約0.01メートル(m/s)、又は少なくとも約0.1m/s、又は約0.01~約100m/sの範囲、又は約0.01~約10m/sの範囲、又は約0.1~約10m/sの範囲、又は約1~約100m/sの範囲、又は約1~約10m/sの範囲であってもよい。
【0122】
プロセスマイクロチャネル内を流れる流体の自由流速度は、少なくとも約0.001m/s、又は少なくとも約0.01m/s、又は約0.001~約200m/sの範囲、又は約0.01~約100m/sの範囲、又は好ましくは約0.01~約200m/sの範囲であってもよい。
【0123】
新たな合成ガスからのCOの変換は、約70%以上、又は約75%以上、又は約80%以上、又は約90%以上、又は約91%以上、又は約92%以上、又は約88%~約95%、又は約90%~約94%、又は約91%~約93%であってもよい。テールガスリサイクルが使用される場合、反応物混合物(すなわち、新たな合成ガスとリサイクルされたテールガス)中のCOに対するCOの単通変換率(one-pass conversion)は、約50%~約90%又は約60%~約85%の範囲であってもよい。
【0124】
フィッシャー-トロプシュ(FT)生成物におけるメタンに対する選択性は、約0.01~約10%、又は約1%~約5%、又は約1%~約10%、又は約3%~約9%、又は約4%~約8%の範囲であってもよい。
【0125】
フィッシャー-トロプシュ生成物は、気体生成物画分及び液体生成物画分を含んでいてもよい。気体生成物画分は、大気圧にて約350℃未満で沸騰する炭化水素(例えばテールガスから中間留分まで)を含んでいてもよい。液体生成物画分(凝縮物画分)は、約350℃を超えて沸騰する炭化水素(例えば真空ガス油から重質パラフィンまで)を含んでいてもよい。
【0126】
約350℃未満で沸騰するフィッシャー-トロプシュ生成物画分は、例えば、高圧及び/若しくは低温蒸気-液体分離器、又は低圧分離器、又は分離器の組合せを使用して、テールガス画分及び凝縮物画分、例えば、約5~約20個の炭素原子のノルマルパラフィン及び高沸点炭化水素に分離されていてもよい。約350℃を超えて沸騰する画分(凝縮物画分)は、約650℃を超えて沸騰する1又は2以上の画分の除去後に、約350℃~約650℃の範囲で沸騰する蝋画分に分離されていてもよい。蝋画分は、約20~約50個の炭素原子の直鎖状パラフィンを、比較的少量の高沸点分岐状パラフィンと共に含有していてもよい。分離は、分別蒸留を使用して遂行され得る。
【0127】
フィッシャー-トロプシュ生成物は、メタン、蝋及び他の重質な高分子量生成物を含んでいてもよい。生成物は、エチレン、ノルマル及びイソ-パラフィン、並びにそれらの組合せなどのオレフィンを含んでいてもよい。これらは、ジェット又はディーゼル燃料範囲を含む留出物燃料範囲の炭化水素を含んでいてもよい。
【0128】
分岐は、いくつかの最終用途で、特に高オクタン価及び/又は低流動点が望ましい場合に有利になり得る。異性化の程度は、n-パラフィンのモル当たりのイソパラフィン約1モル超、又はn-パラフィンのモル当たりのイソパラフィン約3モルであってもよい。ディーゼル燃料組成物に使用される場合、生成物は、少なくとも約60のセタン価を有する炭化水素混合物を含んでいてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7