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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20250401BHJP
【FI】
H01L23/04 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022522178
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2021018059
(87)【国際公開番号】W WO2021230289
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020085445
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】中島 郁夫
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-051209(JP,A)
【文献】特開平05-235612(JP,A)
【文献】特開平11-003904(JP,A)
【文献】特開2013-235913(JP,A)
【文献】特開2019-176150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースの上に設けられ、絶縁体を含む矩形の基板と、
前記基板に設けられたグランド層と、
前記基板の第1面に設けられ、前記グランド層から離間する信号線路と、を具備し、
前記基板の第1端側における前記信号線路の幅は、前記基板の幅より小さく、前記基板の第2端側における前記信号線路の幅より大きく、
前記第1端側における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記第2端側における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きい整合回路と、
前記ベースの上に設けられ、複数の第1のボンディングワイヤによって前記整合回路の前記第1端側の前記信号線路に電気的に接続された半導体素子と、
前記ベースの上に設けられ、前記半導体素子および前記整合回路を囲む枠体と、
前記枠体に設けられ、リードを有するフィードスルーと、
前記フィードスルーの前記リードと前記整合回路の前記第2端側の信号線路に電気的に接続する複数の第2のボンディングワイヤと、
を具備し、
前記複数の第1のボンディングワイヤは互いに平行に配置され、
前記複数の第2のボンディングワイヤは互いに平行に配置されてなる、半導体装置。
【請求項2】
前記グランド層は、前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に設けられている請求項1に記載の半導体装置
【請求項3】
前記基板の前記第2面は前記基板の前記第1端側から前記基板の前記第2端側に向けて、前記第1面に近づくように傾斜している請求項2に記載の半導体装置
【請求項4】
前記基板の前記第2面は前記基板の前記第1端側から前記基板の前記第2端側に向けて、前記第1面に近づくような段差を有する請求項2に記載の半導体装置
【請求項5】
前記基板は積層された複数の絶縁体層を含み、
前記グランド層は、前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に設けられた第1金属層、および前記複数の絶縁体層の間に設けられた第2金属層を含み、
前記第2金属層の前記基板の前記第1端側の端部は、前記第1金属層の前記基板の前記第1端側の端部よりも前記基板の前記第2端側に位置する請求項1に記載の半導体装置
【請求項6】
前記グランド層は積層された複数の前記第2金属層を含み、
前記複数の第2金属層のうち前記複数の絶縁体層の積層方向において前記信号線路に近いものの前記基板の前記第1端側の端部は、前記複数の第2金属層のうち前記積層方向において前記信号線路から遠いものの前記基板の前記第1端側の端部よりも前記基板の前記第2端側に位置する請求項5に記載の半導体装置
【請求項7】
前記複数の第1のボンディングワイヤの間隔は、前記複数の第2のボンディングワイヤの間隔より狭い、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記複数の第1のボンディングワイヤの長さは、互いに同じ長さであり、
前記複数の第2のボンディングワイヤの長さは、互いに同じ長さである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
ベースの上に設けられ、
半導体素子と、
枠体に設けられ、信号線路およびグランド層が設けられ、前記信号線路に接続されたリードを有するフィードスルーと、を具備し、
前記半導体素子は前記リードに複数の第1のボンディングワイヤによって電気的に接続され、
前記半導体素子側における前記信号線路の幅は、前記半導体素子とは反対側における前記信号線路の幅より大きく、
前記半導体素子の側における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記半導体素子とは反対側における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きく、
前記複数の第1のボンディングワイヤの長さは、互いに同じ長さである、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波信号を増幅する装置は、トランジスタなどの半導体素子と、高周波信号を伝送する伝送部品を備える(特許文献1)。伝送部品はマイクロストリップラインなどの伝送線路を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】昭63-86904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
伝送部品の一端側の特性インピーダンスと、他端側の特性インピーダンスとが異なることがある。インピーダンスが変化すると、高周波信号の損失が増大してしまう。そこで、特性インピーダンスの変化を抑制することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る伝送部品は、絶縁体を含む基板と、前記基板に設けられたグランド層と、前記基板の第1面に設けられ、前記グランド層から離間する信号線路と、を具備し、前記基板の一端側における前記信号線路の幅は、前記基板の他端側における前記信号線路の幅より大きく、前記一端側における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記他端側における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きいものである。
【0006】
本開示に係る半導体装置は、ベースと、前記ベースの上に設けられ、上記の伝送部品と、前記ベースの上に設けられ、ボンディングワイヤによって前記伝送部品の前記信号線路に電気的に接続された半導体素子と、を具備する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば特性インピーダンスの変化を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A図1Aは第1実施形態に係る半導体装置を例示する平面図である。
図1B図1B図1の線A-Aに沿った断面図である。
図2A図2Aは整合回路部品を拡大した平面図である。
図2B図2B図2Aの線B-Bに沿った断面図である。
図3図3は比較例1に係る半導体装置を例示する断面図である。
図4A図4Aは変形例1に係る整合回路部品を例示する断面図である。
図4B図4Bは整合回路部品を例示する斜視図である。
図4C図4Cは変形例2に係る整合回路部品を例示する断面図である。
図5A図5Aは第2実施形態に係る半導体装置を例示する平面図である。
図5B図5B図5Aの線C-Cに沿った断面図である。
図6図6は比較例2に係る半導体装置を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0010】
本開示の一形態は、(1)絶縁体を含む基板と、前記基板に設けられたグランド層と、前記基板の第1面に設けられ、前記グランド層から離間する信号線路と、を具備し、前記基板の一端側における前記信号線路の幅は、前記基板の他端側における前記信号線路の幅より大きく、前記一端側における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記他端側における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きい伝送部品である。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(2)前記グランド層は、前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に設けられてもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(3)前記基板の前記第2面は前記基板の一端側から前記基板の他端側に向けて、前記第1面に近づくように傾斜してもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(4)前記基板の前記第2面は前記基板の一端側から前記基板の他端側に向けて、前記第1面に近づくような段差を有してもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(5)前記基板は積層された複数の絶縁体層を含み、前記グランド層は、前記基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に設けられた第1金属層、および前記複数の絶縁体層の間に設けられた第2金属層を含み、前記第2金属層の前記基板の一端側の端部は、前記第1金属層の前記基板の一端側の端部よりも前記基板の他端側に位置してもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(6)前記グランド層は積層された複数の前記第2金属層を含み、前記複数の第2金属層のうち前記複数の絶縁体層の積層方向において前記信号線路に近いものの前記基板の一端側の端部は、前記複数の第2金属層のうち前記積層方向において前記信号線路から遠いものの前記基板の一端側の端部よりも前記基板の他端側に位置してもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(7)ベースと、前記ベースの上に設けられ、上記の伝送部品と、前記ベースの上に設けられ、ボンディングワイヤによって前記伝送部品の前記信号線路に電気的に接続された半導体素子と、を具備する半導体装置である。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(8)前記ベース上に設けられ、前記半導体素子および前記伝送部品を囲む枠体と、前記枠体に設けられ、リードを有するフィードスルーと、を具備し、前記伝送部品は前記半導体素子と前記フィードスルーとの間に位置し、前記伝送部品の前記信号線路は前記リードに電気的に接続され、前記半導体素子側および前記フィードスルー側のうち一方における前記信号線路の幅は、前記半導体素子側および前記フィードスルー側のうち他方における前記信号線路の幅より大きく、前記一方における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記他方における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きくてもよい。一端側における伝送部品の特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このため伝送部品を伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(9)前記ベース上に設けられ、前記半導体素子を囲む枠体を具備し、前記伝送部品は、前記枠体に設けられたフィードスルーであり、前記半導体素子側および前記半導体素子側とは反対側のうち一方における前記信号線路の幅は、前記半導体素子側および前記半導体素子側とは反対側のうち他方における前記信号線路の幅より大きく、前記一方における前記グランド層と前記信号線路との距離は、前記他方における前記グランド層と前記信号線路との距離より大きくてもよい。一端側におけるフィードスルーの特性インピーダンスが、他端側における特性インピーダンスと等しくなる。このためフィードスルーを伝搬する高周波信号の損失が抑制される。
(10)複数の前記ボンディングワイヤは、前記伝送部品の前記基板の一端側と前記他端側とを結ぶ方向に沿って延伸してもよい。複数のボンディングワイヤの長さが同程度になり、ボンディングワイヤを伝搬する信号の位相のずれが抑制される。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る伝送部品および半導体装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
<第1実施形態>
(半導体装置)
図1Aは第1実施形態に係る半導体装置100を例示する平面図であり、後述のリッド11は透視している。図1B図1Aの線A-Aに沿った断面図である。
【0013】
半導体装置100は、ベース10、リッド11、枠体12、トランジスタ14(半導体素子)、整合回路部品16、フィードスルー18を有する。ベース10は例えばモリブデン/銅/モリブデン(Mo/Cu/Mo)の積層体、および積層体の表面に設けられた金(Au)メッキ層などの金属で形成され、基準電位(グランド電位)を有する。ベース10の辺はX軸方向およびY軸方向に延伸する。Z軸方向はベース10の上面に対して垂直である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに直交する。
【0014】
枠体12はリング状の部材であり、セラミックなどの絶縁体で形成されている。ベース10の上面であって、枠体12に囲まれた位置に、トランジスタ14および整合回路部品16が配置されている。枠体12のY軸方向の両側に開口部が設けられ、当該2つの開口部それぞれにフィードスルー18が取り付けられている。2つのフィードスルー18のうち、トランジスタ14側のものをフィードスルー18aとし、整合回路部品16側のものをフィードスルー18bとする。図1Aの上側から順に、Y軸方向に沿って、フィードスルー18a、トランジスタ14、整合回路部品16およびフィードスルー18bが並ぶ。
【0015】
枠体12の上面にリッド11が取り付けられる。リッド11、枠体12およびフィードスルー18により、トランジスタ14および整合回路部品16が気密封止される。リッド11は例えばコバールなどの金属またはセラミックで形成される。トランジスタ14の耐湿性が高い場合、気密封止をしなくてもよい。この場合、リッド11は例えばセラミックまたはプラスチックなどの絶縁体で形成される。
【0016】
トランジスタ14は、例えば窒化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor:FET)などを含む半導体素子である。図1Bに示すように、トランジスタ14はパッド14a、14bおよび14cを有する。パッド14aは、例えばソースパッドであり、トランジスタ14のベース10側の面に設けられている。パッド14bおよび14cはトランジスタ14のリッド11側の面に設けられている。パッド14bは例えばゲートパッドである。パッド14cは例えばドレインパッドである。高出力化のためトランジスタ14の長手方向の幅は大きいことが好ましく、例えばフィードスルー18の信号線路32の幅より大きい。
【0017】
整合回路部品16(伝送部品)は、基板20、信号線路22および金属層24を有し、キャパシタとして機能し、トランジスタ14とフィードスルー18bとの間でインピーダンスを整合させる。基板20は例えば酸化アルミニウム(Al)およびチタン酸バリウム(BaTiO)などのセラミックで形成された絶縁基板などであり、絶縁体を含む基板である。信号線路22および金属層24は例えば銅(Cu)、モリブデン(Mo)およびタングステン(W)などの金属、ならびにこれら金属を含む合金などで形成されている。信号線路22は基板20の上面に設けられている。金属層24は基板20の下面に設けられ、信号線路22から離間し、ベース10の上面に電気的に接続されるグランド層である。基板20、信号線路22および金属層24は、高周波信号を伝搬するマイクロストリップラインを形成する。基板20のトランジスタ14側の端面を面20aとし、フィードスルー18b側の端面を面20bとする。
【0018】
図2Aは整合回路部品16を拡大した平面図である。図2Aに示すように、信号線路22の平面形状は台形である。信号線路22の面20a側の幅W1は、面20b側の幅W2より大きい。幅W1は例えば4mmであり、幅W2は例えば2mmである。信号線路22の幅は面20a側から面20b側に向けて連続的に小さくなる。幅W1は例えば幅W2の1.1倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上などである。
【0019】
図2B図2Aの線B-Bに沿った断面図である。図2Bに示すように、信号線路22および金属層24は、基板20の面20aから面20bまでY軸方向に延伸する。基板20の上側の面20c(第1面)および金属層24の下面は、ベース10の上面に対して平行であり、XY平面に広がる。基板20の下側の面20d(第2面)は、基板20の面20cに対して傾斜し、面20a側から面20b側に向けて面20cに近づく。すなわち基板20は、面20a側から面20b側に向けて連続的に薄くなる。基板20の面20a側の厚さT1は、面20b側の厚さT2より大きい。厚さT1は例えば0.5mmであり、厚さT2は例えば0.25mmである。厚さT1は例えば厚さT2の1.1倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上などである。
【0020】
金属層24の上面は金属層24の下面に対して傾斜している。金属層24の面20a側の厚さT3は、面20b側の厚さT4より大きい。厚さT3は例えば0.1mmであり、厚さT4は例えば0.35mmである。基板20の厚さと金属層24の厚さとの合計は、面20a側から面20b側まで一定である。
【0021】
図1Bに示すように、フィードスルー18は基板30、信号線路32、金属層34、リード36を有し、高周波信号を伝搬する伝送部品である。基板30は例えばセラミックで形成された絶縁基板である。基板30の形状は矩形である。基板30の上面および下面は、ベース10の上面に平行であり、XY平面に延伸する。金属層34は基板30の下面に設けられ、ベース10の上面に電気的に接続されるグランド層である。信号線路32および金属層34は例えばCu、Au、ニッケル(Ni)およびチタン(Ti)などの金属、ならびにこれら金属を含む合金などで形成されている。信号線路32は例えばスパッタリングおよび蒸着などを用いて基板30の上面に形成される。基板30、信号線路32、および金属層34はマイクロストリップラインを形成する。リード36は例えば金属で形成され、信号線路32の上面に設けられ、Y軸方向に延伸し、ベース10の外側に突出する。
【0022】
トランジスタ14のパッド14aはベース10の面上に配置され、ベース10に電気的に接続される。複数のボンディングワイヤ40により、フィードスルー18aのリード36とトランジスタ14のパッド14bとが電気的に接続される。複数のボンディングワイヤ42により、トランジスタ14のパッド14cと整合回路部品16の信号線路22とが電気的に接続される。複数のボンディングワイヤ44により、信号線路22とフィードスルー18bのリード36とが電気的に接続される。複数のボンディングワイヤ42および44はY軸方向に延伸する。複数のボンディングワイヤ42の長さは互いに等しい。複数のボンディングワイヤ44の長さは互いに等しい。ボンディングワイヤ40、42および44は例えばAu、AlおよびCuなどの金属で形成される。
【0023】
周波数が例えば2GHzなどの高周波信号が、フィードスルー18aのリード36から入力され、トランジスタ14で増幅され、整合回路部品16を通じてフィードスルー18bに入力し、フィードスルー18bのリード36を通じて半導体装置100の外部に出力される。フィードスルー18bを入力側とし、フィードスルー18aを出力側としてもよい。
【0024】
高周波信号の損失を抑制するために、フィードスルー18aとトランジスタ14との間でインピーダンス整合を取り、トランジスタ14とフィードスルー18bとの間でインピーダンス整合を取る。整合回路部品16は、トランジスタ14とフィードスルー18bとの間のインピーダンス整合のための部品である。例えば、整合回路部品16はキャパシタとして機能し、ボンディングワイヤ44はインダクタとして機能する。
【0025】
整合回路部品16およびフィードスルー18にはマイクロストリップラインが形成されている。マイクロストリップラインの特性インピーダンスは、信号線路の幅および基板の厚さ(信号線路とグランド層との距離)によって決まる。信号線路の幅が広いほど特性インピーダンスは低くなり、幅が狭いほど特性インピーダンスは高くなる。基板の厚さが大きいほど特性インピーダンスは高くなり、厚さが小さいほど特性インピーダンスは低くなる。
【0026】
Y軸方向の一端側から他端側にかけて、フィードスルー18の信号線路32の幅は一定である。フィードスルー18の信号線路32と金属層34とのZ軸方向における距離は一定である。したがってフィードスルー18のトランジスタ14側の特性インピーダンスは、反対側(リード36の先端側)の特性インピーダンスに等しい。
【0027】
整合回路部品16の信号線路22の幅は、面20a側から面20b側に向けて小さくなる。信号線路22と金属層24との距離は面20a側から面20b側に向けて小さくなる。したがって整合回路部品16の面20a側の特性インピーダンスは、面20b側の特性インピーダンスと同程度である。
【0028】
図3は比較例1に係る半導体装置100Cを例示する断面図である。半導体装置100と同じ構成については説明を省略する。図3に示すように、整合回路部品16の基板20の下面は傾斜しておらず、金属層24も傾斜していない。基板20の厚さは面20a側から面20b側にかけて一定である。一方、信号線路22の幅は、図2Aの例と同様に面20a側と面20b側との間で変化する。信号線路22の幅の変化によって、整合回路部品16の特性インピーダンスが変化する。面20a側における特性インピーダンスZaが、面20b側における特性インピーダンスZbより低くなり、面20a側と面20b側との間でインピーダンス変換されてしまう。これにより、整合回路部品16を伝搬する高周波信号の損失が増大する。例えば整合回路部品16とフィードスルー18bとの間でインピーダンスの不整合が発生し、高周波信号が損失する。
【0029】
第1実施形態によれば、整合回路部品16の基板20、信号線路22および金属層24はマイクロストリップラインを形成する。図2Aに示すように、面20a側における信号線路22の幅W1は面20b側における幅W2より大きい。図2Bに示すように、面20a側における信号線路22と金属層24との距離(基板20の厚さ)T1は、面20b側における距離T2より大きい。これにより、面20a側におけるマイクロストリップラインの特性インピーダンスZaが面20b側における特性インピーダンスZbと同程度になる。面20a側と面20b側との間でインピーダンス変換が抑制されることにより、高周波信号の損失が抑制される。
【0030】
特性インピーダンスZaと特性インピーダンスZbとは厳密に一致してもよいし、ごく近い値になってもよい。例えば基板20を、比誘電率が9.8のAlで形成し、幅W1を4mm、幅W2を2mm、厚さT1を0.5mm、厚さT2を0.25mmとする。特性インピーダンスZaは12.11Ω、特性インピーダンスZbは12.10Ωである。特性インピーダンスZaと特性インピーダンスZbとの差は、例えば特性インピーダンスZaの10%以下、5%以下、1%以下、0.5%以下などである。
【0031】
図2Aに示すように、信号線路22の幅は面20a側から面20b側にかけて連続的に小さくなる。図2Bに示すように、基板20の下側の面20dは、面20a側から面20bに向けて、上側の面20cに徐々に近づくように傾斜している。つまり、信号線路22と金属層24との距離(基板20の厚さ)は面20a側から面20bに向けて連続的に小さくなる。信号線路22の幅および基板20の厚さが連続的に変化することで、特性インピーダンスは面20a側から面20b側まで略一定である。特性インピーダンスを変化させないような伝送線路を形成することができ、高周波信号の損失が抑制される。
【0032】
高出力化のためトランジスタ14の幅を大きくすることが好ましい。幅の増大に伴い、整合回路部品16の信号線路22の幅W1も大きくする。一方、フィードスルー18の信号線路32の幅に合わせて、信号線路22の幅W2は幅W1より小さい。すなわち、信号線路22は矩形ではなく台形とし、幅W1と幅W2とは異ならせる。ボンディングワイヤ42により信号線路22とトランジスタ14とを接続する。ボンディングワイヤ44により信号線路22とフィードスルー18とを接続する。
【0033】
複数のボンディングワイヤ42および44はY軸方向に延伸する。複数のボンディングワイヤ42の長さは互いに等しく、複数のボンディングワイヤ42のインピーダンスが互いに等しい。複数のボンディングワイヤ44の長さは互いに等しく、複数のボンディングワイヤ44のインピーダンスが互いに等しい。このため高周波信号の位相のずれが抑制される。
【0034】
整合回路部品16は、マイクロストリップライン以外の伝送線路を有してもよい。例えばストリップラインが設けられてもよい。整合回路部品16が、信号線路22の上に基板および金属層(グランド層)を有する。上下の基板の少なくとも一方の厚さを面20a側と面20b側とで変化させることで、特性インピーダンスを等しくする。
【0035】
(変形例1)
図4Aは変形例1に係る整合回路部品16aを例示する断面図である。整合回路部品16aの信号線路22は図2Aと同様に台形状である。整合回路部品16aの基板20は、複数の絶縁体層50~53、および金属層54a~54cを有する多層基板である。絶縁体層50~53が下から順に積層され、隣り合う絶縁体層は互いに接合されている。絶縁体層50の下側の面20dに金属層24が設けられている。絶縁体層50と絶縁体層51との間に金属層54aが設けられている。絶縁体層51と絶縁体層52との間に金属層54bが設けられている。絶縁体層52と絶縁体層53との間に金属層54cが設けられている。絶縁体層53の上側の面20cに信号線路22が設けられている。
【0036】
信号線路22から金属層24までの距離T5(基板20の厚さ)は例えば1mmである。信号線路22から金属層54aまでの距離T6(絶縁体層51~53を合わせた厚さ)は距離T5より小さく、例えば0.75mmである。信号線路22から金属層54bまでの距離T7(絶縁体層52~53を合わせた厚さ)は距離T6より小さく、例えば0.5mmである。信号線路22から金属層54cまでの距離T8(絶縁体層53の厚さ)は距離T7より小さく、例えば0.25mmである。
【0037】
図4Bは整合回路部品16aを例示する斜視図である。基板20をZ軸方向に貫通するビアホール21が設けられている。ビアホール21の内壁に金属層23が設けられている。金属層24、54a~54cは、金属層23によって、互いに電気的に接続され、基準電位(グランド電位)を有する。信号線路22は金属層24、54a~54cから離間している。
【0038】
図4Aに示すように、信号線路22、金属層24、および金属層54a~54cはY軸方向に延伸する。信号線路22、金属層24、および金属層54a~54cそれぞれの一端(図4Aにおける右側端部)は基板20の面20bに位置する。信号線路22および金属層24の他端(図4Aにおける左側端部)は面20aに位置する。金属層54aの他端は、面20aと面20bとの間に位置する。金属層54bの他端は、金属層54aの他端と面20bとの間に位置する。金属層54cの他端は、金属層54bの他端と面20bとの間に位置する。金属層24、54a、54b、および54cそれぞれの面20a側の端部は、この順に面20bに近づく。
【0039】
変形例1によれば、第1実施形態と同様に、面20a側におけるマイクロストリップラインの特性インピーダンスZaが面20b側における特性インピーダンスZbと同程度になる。高周波信号の位相の変化が抑制され、損失が抑制される。基板20が有する絶縁体層の個数は4つ以上でもよいし、4つ以下でもよい。金属層の個数は3つ以上でもよいし、3つ以下でもよい。絶縁体および金属層に斜面および段差を形成しなくてよいため、整合回路部品16aを容易に製造することができる。
【0040】
(変形例2)
図4Cは変形例2に係る整合回路部品16bを例示する断面図である。整合回路部品16bの基板20の面20dがステップ形状であり、面20a側から面20b側にかけて、面20cに段階的に近づく。金属層24は面20dに対応したステップ形状を有する。
【0041】
変形例2によれば、第1実施形態と同様に、面20a側におけるマイクロストリップラインの特性インピーダンスZaが面20b側における特性インピーダンスZbと同程度になる。高周波信号の位相の変化が抑制され、損失が抑制される。基板20および金属層24のいずれか一方は斜面を有し、他方はステップ形状を有してもよい。基板20と金属層24との間に導電性接着剤を充填することで、基板20と金属層24とを接着する。
【0042】
<第2実施形態>
(半導体装置)
図5Aは第2実施形態に係る半導体装置200を例示する平面図である。第1実施形態と同じ構成については説明を省略する。図5Aに示すように、整合回路部品16の信号線路22の平面形状は例えば長方形であり、面20a側から面20b側まで信号線路22の幅は一定である。フィードスルー18の信号線路32の平面形状は台形である。トランジスタ14側における信号線路32の幅は、反対側(リード36の先端側)における幅よりも大きい。リード36のうち信号線路32の上面に接触する部分は、信号線路32と同様に台形である。
【0043】
ボンディングワイヤ40、42および44はそれぞれY軸方向に延伸する。複数のボンディングワイヤ40の長さは互いに等しい。複数のボンディングワイヤ42の長さは互いに等しい。複数のボンディングワイヤ44の長さは互いに等しい。
【0044】
図5B図5Aの線C-Cに沿った断面図である。図5Bに示すように、整合回路部品16の基板20の上面および下面はベース10の上面に対して平行であり、基板20の厚さは一定である。金属層24の厚さも一定である。フィードスルー18の基板30の下面は傾斜しており、トランジスタ14側からリード36の先端側にかけて、上面に近づく。金属層34は基板30に対応して傾斜している。
【0045】
図6は比較例2に係る半導体装置200Cを例示する平面図である。フィードスルー18の信号線路32およびリード36は矩形であり、これらの幅は一定である。半導体装置200Cの断面は図3に示した半導体装置100Cと同じであり、フィードスルー18の信号線路32と金属層34との距離は一定である。フィードスルー18のトランジスタ14側の特性インピーダンスは、反対側の特性インピーダンスに等しい。
【0046】
図6に示すように、ボンディングワイヤ40および44のうちX軸方向において外側のものは、Y軸方向に対して斜めに延伸する。ボンディングワイヤ40および44のうちX軸方向において中央のものは、Y軸方向に延伸する。複数のボンディングワイヤ40のうち外側のものは中央側のものよりも長い。複数のボンディングワイヤ44のうち外側のものは中央側のものよりも長い。ボンディングワイヤの長さの違いに起因して、X軸方向において高周波信号の位相にずれが生じ、損失が増大してしまう。
【0047】
比較例2において、図5Aのように信号線路32の一部の幅を大きくすることで、複数のボンディングワイヤ40の長さを一定にし、複数のボンディングワイヤ44の長さを一定にすることができる。しかし、信号線路32の幅の変化によって、フィードスルー18のトランジスタ14側の特性インピーダンスが、反対側の特性インピーダンスより低くなってしまう。
【0048】
第2実施形態によれば、図5Aのようにトランジスタ14側における信号線路32の幅が、反対側における幅よりも大きい。このため、複数のボンディングワイヤ40の長さを一定にし、複数のボンディングワイヤ44の長さを一定にすることができる。高周波信号の損失を抑制することができる。図5Bに示すように、フィードスルー18の基板30の下面は傾斜している。トランジスタ14側におけるフィードスルー18の信号線路32と金属層34との距離が、反対側における距離より大きい。このためフィードスルー18のトランジスタ14側における特性インピーダンスが、フィードスルー18の反対側における特性インピーダンスと同程度になる。高周波信号の損失が抑制される。
【0049】
フィードスルー18の基板30を図4Aおよび図4Bに示したような多層基板にしてもよい。基板30および金属層34に図4Cに示したような段差を設けてもよい。
【0050】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 ベース
11 リッド
12 枠体
14 トランジスタ
14a、14b、14c パッド
16、16a、16b 整合回路部品
18、18a、18b フィードスルー
20、30 基板
20a、20b、20c、20d 面
21 ビアホール
22、32 信号線路
23、24、34、54a~54c 金属層
36 リード
40、42、44 ボンディングワイヤ
50、51、52、53 絶縁体層
100、100C、200、200C 半導体装置
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6