(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】凝集体の決定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20250401BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250401BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20250401BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G01N33/543 581A
G01N33/543 595
G01N33/53 D
G01N21/41 101
G01N21/17 N
(21)【出願番号】P 2022529909
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2020084366
(87)【国際公開番号】W WO2021110792
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-11-06
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】トマス・ダルモ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/102763(WO,A9)
【文献】国際公開第90/005305(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01243327(EP,A1)
【文献】仏国特許出願公開第02937976(FR,A1)
【文献】米国特許第08957091(US,B2)
【文献】国際公開第2015/024120(WO,A1)
【文献】特開2003-294610(JP,A)
【文献】特表2013-518280(JP,A)
【文献】特開2018-019697(JP,A)
【文献】特開2005-220028(JP,A)
【文献】特開2010-019594(JP,A)
【文献】特開2012-191874(JP,A)
【文献】特開2008-111713(JP,A)
【文献】吉田貴充,スラブ光導波路分光法を用いたタンパク質の吸着現象の研究,博士論文,筑波大学工学研究科,2003年,https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/8691
【文献】Laurent Nault,Human insulin adsorption kinetics, conformational changes and amyloidal aggregate formation on hydrophobic surfaces,Acta Biomaterialia,2012年09月25日,Vol.9 No.2,Page.5070-5079
【文献】GE Healthcare Biacore Sensor Surface Handbook,2002年02月01日,https://timothyspringer.org/files/tas/files/biacore3000-sensorsurface.pdf
【文献】BiacoreSensor Surface Handbook,2019年11月26日,http://web.archive.org/web/20191126201245/http://www.biophysics.bioc.cam.ac.uk/wp-content/uploads/2011/02/SensorSurface_Handbook.pdf
【文献】IOMEMBRANES 2018 ED - Fiskum Gary,JOURNAL OF BIOENERGETICS AND BIOMEMBRANES, PLENUM PUBLISHING, NEW YORK, NY, US,,2018年12月13日,vol. 50, no. 6,pages 467-603,DOI: 10.1007/S10863-018-9775-7
【文献】Hiroki Hamada,Nucleation-fibrillation dynamics of Aβ1-40 peptides on liquid-solid surface studied by total-internal-reflection fluorescence microscopy coupled with quartz-crystal microbalance biosensor,Japanese Journal of Applied Physics,2015年07月,Vol.54 No.7S1,Page.07HE01-1-07HE01-4
【文献】Torsten John,Adsorption of Amyloidogenic Peptides to Functionalized Surfaces Is Biased by Charge and Hydrophilicity,Langmuir,2019年09月19日,Vol.35 No.45,Page.14522-14531
【文献】村井亮太,グラフェンSPRバイオセンサーにおける測定条件の評価,日本セラミックス協会年会講演予稿集,2015年03月06日,Vol.2015,Page.ROMBUNNO.1P103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/53
G01N 21/41
G01N 21/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子の凝集体を含む可能性のある第1の試料中の1つ又は複数の
生体高分子を含む凝集体の決定方法であって、
a)第1の試料と、非凝集
生体高分子と比較して
生体高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンドをその上に固定化した、相互作用分析センサーの感知面とを接触させる工程
であって、前記疎水性基が、1つ又は複数の疎水性側鎖を有するアミノ酸により構成されている工程と、
b)第1の試料と感知面との相互作用に対する少なくとも1つのパラメータを決定する工程と、
c)工程(i)及び工程(ii):
i)工程(b)で決定された少なくとも1つのパラメータと、
生体高分子の凝集体を含む可能性のある少なくとも1つの更なる試料について決定された対応するパラメータとを比較する工程;
ii)
生体高分子の凝集体に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する工程
の少なくとも一方を実施する工程と、
d)第1の試料中の
生体凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量を決定する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
疎水性基が0を超えるlog P値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
疎水性基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖、又は前記側鎖の疎水性誘導
体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸、又は
その疎水性誘導
体である、請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アミノ酸が天然に存在しないアミノ酸である、請求項
1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)(i)における少なくとも1つの更なる試料が、
生体高分子の凝集体の存在、分率、濃度及び/又は量が既知の対照試料である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(c)(i)における少なくとも1つの更なる試料が、
生体凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量が決定される第2の試料である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
生体高分子
がタンパク質又はポリペプチドである、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リガンドが感知面に結合することが可能であるアミノ基又はカルボキシル基を含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
相互作用分析センサーがバイオセンサーである、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
バイオセンサーが質量感知バイオセンサ
ーである、請求項1
0に記載の方法。
【請求項12】
バイオセンサーがエバネセント波感知に基づくバイオセンサーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
バイオセンサーが表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくバイオセンサーである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
経過時間の関数としての時間を通じて連続的又は断続的に、試料と感知面との相互作用についての少なくとも1つのパラメータを決定する工程を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのパラメータが動態パラメータであ
る、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記動態パラメータが、会合速度、解離速度、会合速度定数(k
a
)、解離速度定数(k
d
)、親和性定数(K
A
)及び解離定数(K
D
)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記時間を通じて感知面での温度を変化させる工程を更に含む、請求項14
から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
生体高分子の安定性を決定するための、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項19】
試料中のタンパク質の分解を決定するための、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項20】
タンパク質薬物又はポリペプチド薬物の生物活性を決定するための、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項21】
試料中の凝集
生体高分子の分率、濃度及び/又は量を定量的に決定するための、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項22】
試料中の凝集
生体高分子の存在、分率、濃度及び/又は量を定性的に決定するための、請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項23】
請求項1から1
7のいずれか一項に記載の方法における使用のための相互作用分析センサーであって、感知面を含み、その感知面には、非凝集高分子と比較して
生体高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンドが固定化されて
おり、前記疎水性基が、1つ又は複数の疎水性側鎖を有するアミノ酸により構成されている、相互作用分析センサー。
【請求項24】
感知面(2)を含み、その感知面(2)には、非凝集高分子と比較して高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンド(3)が固定化されて
おり、前記疎水性基が、1つ又は複数の疎水性側鎖を有するアミノ酸により構成されている、相互作用分析センサー(1)。
【請求項25】
前記疎水性基が、0を超えるlog P値を有する、請求項2
3又は
24に記載の相互作用センサー。
【請求項26】
前記疎水性基が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖、又は前記側鎖の疎水性誘導
体を含む、請求項2
3から2
5のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項27】
アミノ酸が、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸、又はその疎水性誘導
体である、請求項2
3から26のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項28】
アミノ酸が天然に存在しないアミノ酸である、請求項2
3から27のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項29】
生体高分子
がタンパク質又はポリペプチドである、請求項2
3から
28のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項30】
前記リガンドが感知面に結合することが可能であるアミノ基又はカルボキシル基を含む、請求項2
3から
29のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項31】
相互作用分析センサーがバイオセンサーである、請求項2
3から
30のいずれか一項に記載の相互作用分析センサー。
【請求項32】
バイオセンサーが質量感知バイオセンサ
ーである、請求項3
1に記載の相互作用分析センサー。
【請求項33】
バイオセンサーがエバネセント波感知に基づくバイオセンサーである、請求項32に記載の相互作用分析センサー。
【請求項34】
バイオセンサーが表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくバイオセンサーである、請求項33に記載の相互作用分析センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試料中の1つ又は複数の高分子を含む凝集体の決定方法、前記方法の使用、及び前記方法における使用のための相互作用分析センサーを対象とする。本開示は、高分子の安定性を決定するための相互作用分析センサー及び方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、核酸及び糖類等の生体高分子は、しばしば凝集体又は多量体、例えば二量体、三量体若しくはより高度なオリゴマーの形態で部分的に存在しうる。所望のポリペプチド又はタンパク質を自然環境とは全く異なる条件及び濃度にて宿主生物で生成させ、細胞又は細胞抽出物から単離する組み換えタンパク質の生物学的製造の分野では、それらの条件が、分子間ジスルフィド結合若しくは他の共有結合、又は非共有相互作用による当該凝集体の形成を助長する恐れがある。標的高分子の当該凝集体は、多くの場合望ましくない。このように、タンパク質の凝集は、バイオプロセスの開発及びバイオ治療薬の製造に際して遭遇する一般的な問題である。高分子の凝集形態は、高分子の非凝集形態より生物活性が低いと考えられ、所望の生物活性が完全に欠如している、又は望ましくない副作用を引き起こす場合もある。そのため、治療用タンパク質が非凝集状態であること、及び分子の凝集体が存在しないことが、治療上の安全性にとって不可欠である。それ故に、細胞培養時、及び/又はその後の精製処理時に生成される凝集体の量を制御できることが重要である。
【0003】
製剤開発及びタンパク質の安定性は、長期の保存寿命を獲得し、薬物候補の効力を維持することが必要とされる薬物開発過程の土台の1つである。タンパク質の安定性を評価するために、その溶融過程及び/又は凝集レベルの測定が行われる。現在利用されている溶融過程及び/又は凝集レベルの測定技術は、蛍光法、熱量法及び光散乱法である。蛍光法は、簡単であるために広く利用されており、タンパク質凝集体に対する特定の蛍光プローブの親和性に基づくものである。当該プローブは、例えばシプロオレンジ及びチオフラビンTである。チオフラビンTに対するコンピュータシミュレーションにより、染料による検出を可能にするのは、主にアミノ酸の疎水性側鎖との相互作用であることが示された(M. Biancalana、S. Koide、Molecular mechanism of Thioflavin-T binding to amyloid fibrils、Biochimica et Biophysica Acta 1804(7): 1405~1412頁、2010)。
【0004】
生体分子等の分子間の相互作用をリアルタイムで監視できる分析センサーシステムは、光学バイオセンサーに基づくことが多く、通常、相互作用分析センサー又は生体特異性相互作用分析センサーと称する。代表的な当該バイオセンサーシステムは、試料中の分子間、及び感知面に固定化された分子構造体間の相互作用を検出するために表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するBIACORE(登録商標)装置(GE Healthcare Bio-Science社 AB、Uppsala、スウェーデン)である。
【0005】
BIACORE(登録商標)装置の技術的側面及びSPRの現象についての詳細な説明は、米国特許第5,313,264号に見いだすことができる。バイオセンサー感知面に対するマトリックスコーティングについてのより詳細な説明は、例えば、米国特許第5,242,828号及び同第5,436,161号に記載されている。また、BIACORE(登録商標)装置と共に使用されるバイオセンサーチップの技術的側面の詳細な説明は、米国特許5,492,840号に見いだすことができる。上記特許は、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0006】
その全体が参照により本明細書に組み込まれている国際公開第2011/093782号には、対象の被検物質、即ち高分子に対する特異的結合を有するリガンドの使用による高分子モノマーの凝集体の決定方法に関連して、BIACORE(登録商標)システムが記載されている。より具体的には、タンパク質Aは、抗体のFc部に対する特異的結合のためにリガンドとして使用される。該方法は、高分子の精製に使用されてもよい。
【0007】
しかし、当該技術分野において、試料中の高分子の凝集体の決定のための代替的且つ改良型方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5,313,264号
【文献】米国特許第5,242,828号
【文献】米国特許第5,436,161号
【文献】米国特許第5,492,840号
【文献】国際公開第2011/093782号
【非特許文献】
【0009】
【文献】M. Biancalana、S. Koide、Molecular mechanism of Thioflavin-T binding to amyloid fibrils、Biochimica et Biophysica Acta 1804(7): 1405~1412頁、2010
【文献】Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、2003、Oxford University Press、ISBN 0-19-850673-2、https://archive.org/details/isbn_9780198506737
【文献】Pol Eら、Evaluation of calibration-free concentration analysis provided by BiacoreTM systems、Analytical Biochemistry、510: 88-97頁、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
試料中の高分子の凝集体の決定のための代替的且つ改良型方法を提供する上記目的は、新規の種類のリガンドが高分子の凝集体の検出に使用できるという結論に至った、分解高分子の特定の特性に対する発明人の認識に基づく方法を対象とする本開示によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より具体的には、高分子の凝集体を含む可能性のある第1の試料中の1つ又は複数の高分子を含む凝集体を決定するための本開示の方法は、
a)第1の試料と、非凝集高分子と比較して高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンドをその上に固定化した、相互作用分析センサーの感知面とを接触させる工程と、
b)第1の試料と感知面との相互作用に対する少なくとも1つのパラメータを決定する工程と、
c)工程(i)及び工程(ii):
i)工程(b)で決定された少なくとも1つのパラメータと、高分子の凝集体を含む可能性のある少なくとも1つの更なる試料について決定された対応するパラメータとを比較する工程;
ii)高分子の凝集体に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する工程
の少なくとも一方を実施する工程と、
d)第1の試料中の凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量を決定する工程と
を含む。
【0012】
本開示は、更に、高分子の安定性の決定方法であって、工程(c)(i)を含む上記方法を実施する工程を含み、更なる試料が、凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量が決定される第2の試料である、方法を提供する。
【0013】
更に、本明細書に開示される方法の様々な使用、より具体的には、
- 高分子の安定性の決定方法の使用、
- 試料中のタンパク質の分解の決定方法の使用、
- タンパク質薬物又はポリペプチド薬物の生物活性の決定方法の使用、
- 試料中の凝集高分子の分率、濃度及び/又は量の定量的決定方法の使用、及び
- 試料中の凝集高分子の存在、分率、濃度及び/又は量の定性的決定方法の使用を提供する。
【0014】
本開示は、本明細書に開示される方法における使用のための相互作用分析センサーをも提供する。
【0015】
非凝集高分子と比較して高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンドをその上に固定化した感知面を含む相互作用分析センサーをも提供する。
【0016】
本開示の好ましい態様は、以下の詳細な説明及び付随の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示による試料中の高分子の凝集体の決定方法のフローチャートである。
【
図2】本開示による方法を実施するのに使用できる相互作用分析センサーの非限定的な例を模式的に示す図である。
【
図3】BIACORE(登録商標)システムを使用することによって得られる実施例1の結果を示すセンサーグラムを示す図である。
【
図4】BIACORE(登録商標)システムを使用することによって実施例1で得られた結果が、従来技術の蛍光法を使用することによって得られた結果と関連性を有することを示す図である。
【
図5】BIACORE(登録商標)システムを使用することによって得られた実施例2の結果を示すセンサーグラムを示す図である。
【
図6】BIACORE(登録商標)システムを使用することによって得られた実施例5の結果を示すセンサーグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、本開示は、試料、典型的には流体試料中の高分子、典型的にはタンパク質、例えば抗体の多量体形態又は凝集体の検出及び分析に関する。手短に述べると、該方法は、生体分子相互作用分析センサーの感知面に固定化されたリガンドのそれぞれ非凝集高分子と高分子の凝集体に対する親和性の差を利用することに基づくものである。前記親和性の差により、非凝集高分子の結合相互作用とリガンドとの結合相互作用の動態は、高分子の凝集体とリガンドとの結合相互作用の動態と異なる。本明細書の他の箇所でより詳細に記載するが、試料中の高分子の凝集体の存在(又は分率、濃度若しくは量)は、高分子(凝集及び/又は非凝集)と固定化されたリガンドとの結合相互作用のパラメータ(例えば動態パラメータ)の決定に従って決定されてもよい。
【0019】
本開示は、
図1に示されるように、高分子を含有する第1の試料中の1つ又は複数の高分子を含む凝集体の決定方法であって、
a)第1の試料と、非凝集高分子と比較して高分子の凝集体との結合相互作用を増強させることが可能である、疎水性基を含むリガンドをその上に固定化した、相互作用分析センサーの感知面とを接触させる工程と、
b)第1の試料と感知面との相互作用に対する少なくとも1つのパラメータを決定する工程と、
c)工程(i)及び工程(ii):
i)工程(b)で決定された少なくとも1つのパラメータと、高分子の凝集体を含む可能性のある少なくとも1つの更なる試料について決定された対応するパラメータとを比較する工程;
ii)高分子の凝集体に関連する少なくとも1つのパラメータを決定する工程
の少なくとも一方を実施する工程と、
d)第1の試料中の凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量を決定する工程と
を含む方法を提供することによって、試料中の高分子の凝集体を決定するための既存の方法に伴う問題を解決、又は少なくとも軽減する。
【0020】
「高分子」という用語は、高分子を細胞培養で細胞により(しばしば組み換え技術で)生成させ、任意の分離及び精製手段により細胞培養物から精製させるバイオプロセスの分野における従来の意味を有する。或いは、該高分子は、必ずしも細胞培養物を起源としない生体液に存在する。高分子の非限定的な例は、結合したモノマーから構成される大きな生体ポリマーである生体高分子、例えば、酵素、抗体及び抗体断片を含むがそれらに限定されない(天然又は組み換え型であってもよい)ペプチド及びタンパク質、並びに炭水化物、並びにDNA及びRNA等の核酸配列である。高分子の調製物中の凝集体の存在が本開示の方法により決定されうる高分子は、典型的には、タンパク質又はポリペプチド、特に抗体等の治療用タンパク質又はポリペプチドであるが、例えば核酸であってもよい。高分子又は生体高分子は、例えば、医薬化合物としての使用を目的とする、生物学的高分子を含むがそれに限定されない生物薬剤、例えば生物学的分子であってもよい。「1つの高分子」は、1種類の高分子を意味することを意図し、該用語の単数形は、多くの数の同じ種類の個々の高分子又は検体を包含することが理解されるべきである。
【0021】
本明細書において、「非凝集高分子」という用語は、非分解高分子を意味するものである。本明細書において、非凝集高分子は、代替的に、「非分解高分子」又は「完全高分子」と呼ばれる場合もある。高分子がタンパク質又はポリペプチドである本明細書における典型的な実施形態において、非凝集高分子は、通常、高分子の表面が本質的に親水性で疎水性の部分が高分子の内部に位置する本質的に完全な三次構造を有するものと記載されてもよい。よって、非凝集高分子は、本質的に、疎水性の部分又は疎水性基が表面に露出していない。
【0022】
対照的に、分解し始めたタンパク質又はポリペプチドでは、三次構造が徐々に破壊され、疎水性の部分が、タンパク質又はポリペプチドを取り囲む環境に露出される。分解している、又は分解したタンパク質又はポリペプチド高分子は、凝集体を形成しうる。高分子の非凝集形態は単量体の状態である。高分子の凝集体は、高分子の二量体及び三量体等の高分子の多量体の形態を含有しうる。分解している個々の高分子は、同じ種類の高分子の分解している他の個々の検体と凝集体を形成してもよく、且つ/又は分解している他の種類の高分子の分解している個々の検体と凝集体を形成してもよく、それらの組み合せであってもよい。高分子の凝集体は、分解している高分子を含有するため、その後に高分子の凝集体は、疎水性の部分がそれらの表面に露出する。
【0023】
本明細書において、「疎水性の部分」という用語は、高分子の疎水性部分、又は高分子に存在する疎水性基を意味するものである。
【0024】
これに関連して、「結合相互作用の増強」とは、疎水性基を含むリガンドが、非凝集高分子より高分子の凝集体に対して少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%強く結合することが可能であることを意味する。換言すれば、疎水性基を含むリガンドは、リガンドの疎水性基の特性により、非凝集高分子より高分子の凝集体に対して少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%高い親和性を有する。
【0025】
本明細書に用いられている「試料」という用語は、細胞培養物、若しくは任意の分離及び精製手段により少なくとも部分的に精製される、細胞培養物を起源とする流体から入手可能な試料、又は生体液から入手可能な任意の種類の試料を包含することが理解されるべきである。
【0026】
本明細書において、「細胞培養物」という用語は、培養されている細胞又は細胞群の培養物を指し、該細胞は、細菌細胞、ウイルス細胞、真菌細胞、昆虫細胞又は哺乳類細胞等の任意の種類の細胞であってもよい。細胞培養物は、不透明な培養物、即ち細胞を含む培養物であってもよく、細胞が欠失した培養物、即ち細胞を全く又はほとんど含まず、細胞を除去する前に細胞から放出された生体分子を含む培養物であってもよい。更に、本開示の方法に使用される不透明な細胞培養物、完全細胞、破壊細胞、細胞ホモジネート、及び/又は細胞溶解物を含んでいてもよい。
【0027】
「生体液」という用語は、生体分子又はいくつかの種類の生体分子の混合物を含む生体起源の溶液を意味するものである。生体液の例は、血漿、血液、痰、尿及び乳等のヒト又は動物を起源とする任意の種類の体液である。
【0028】
本明細書に用いられている「抗体」という用語は、天然、又は一部若しくは全てが合成されたものであってもよい免疫グロブリン(IgG)を意味する。該用語は、Fab抗原結合断片、1価断片及び2価断片を含む活性断片を含むが、それらに限定されない。該用語は、免疫グロブリン結合ドメインと相同性を有する結合ドメインを有する任意のタンパク質をも包含する。当該タンパク質は、天然源から誘導される、又は一部若しくは全てが合成されうる。例示的な抗体は、免疫グロブリンアイソタイプ、並びにFab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dAb及びFd断片である。例えば治療用抗体調製物における凝集体の存在、分率、濃度又は量の決定のための本発明の方法は、高品質の最終製品を得るための手順を最適化するために、プロセス開発時の凝集体の形成を監視するのに使用されてもよい。治療用抗体調製物における凝集体の存在は、一般に、患者の安全性に悪影響を及ぼすため、プロセス製造時に効果的に制御されなければならない。
【0029】
本開示の方法に使用される相互作用分析センサーは、典型的にはバイオセンサーである。周知のように、バイオセンサーは、典型的には無標識技術に基づいており、質量、屈折率及び固定化層の厚さ等のセンサー表面の特性の変化を検出する。本発明の目的に応じた典型的なバイオセンサーは、センサー表面の質量検出に基づくものであり、特に光学的方法及び圧電法又は音波法を含む。光学的検出法に基づく代表的なセンサーとしては、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)センサー等のエバネセント波に基づくセンサーを含む反射光学法に基づくセンサー、漏れ全反射(FTR)センサー、及び例えば、反射干渉分光(RIfS)センサーを含む導波路センサー等の、質量表面濃度を検出するセンサーが挙げられる。圧電及び音波センサーとしては、表面音波(SAW)及び水晶振動子マイクロバランス(QCM)センサーが挙げられる。
【0030】
今日では、SPR及び他の検出技術に基づくバイオセンサーシステムが市販されている。例示的な当該SPRバイオセンサーとしては、試料中の分子と感知面に固定化された分子構造体との相互作用を検出するために表面プラズモン共鳴を利用する上記の流入細胞に基づくBIACORE(登録商標)システム及びProteOn(商標)XPRシステム(Bio-Rad Laboratories、Hercules、米国カリフォルニア州)が挙げられる。
【0031】
本明細書において、感知面に固定化された当該分子構造体は、「リガンド」と表記される。「リガンド」という用語は、「特異的結合分子」、「特異的結合パートナー」、「捕捉分子」及び「捕捉剤」という用語と区別なく用いられてもよい。以下において、感知面のリガンドと相互作用する試料中の分子は、「被検物質」と称する。試料が感知面上を通過すると、試料中の被検物質が感知面のリガンドに結合することで、濃度が変化して、その結果感知面の屈折率が変化する。被検物質とリガンドとの結合の進行は、結合時の信号強度の変化に対応する感知面での屈折率の変化にそのまま反映される。試料の注入に続いて、緩衝液が流され、その間に検出器の応答が被検物質と表面のリガンドとの複合体の解離速度を反映する。BIACORE(登録商標)システムからの典型的な出力は、感知面での屈折率の変化を示すことにより、会合相部分及び解離相部分を含めた経時的な分子相互作用の進行を示すグラフ又は曲線である。通常、コンピュータ画面に表示されるこのグラフ又は曲線は、しばしば結合曲線又は「センサーグラム」と称し、そこでは縦軸(y軸)が応答を示し、横軸(x軸)が時間を示す。BIACORE(登録商標)システムにおいて、SPR応答値は、共鳴単位(RU)で表される。1つのRU単位は、多くのタンパク質及び他の生体分子では感知面での約1pg/mm2の濃度の変化に対応する、0.0001°の最小反射光強度の角度の変化を表す。
【0032】
これに関連して、「リガンド」は、特定の被検物質に対する既知又は未知の親和性を有し、表面に固定化された任意の捕捉剤を含む分子であるのに対して、「被検物質」は、リガンドに対する任意の特異的結合パートナーを含む。
【0033】
本開示による対象となる被検物質は、高分子、より具体的には高分子の凝集体である。そのため、本明細書において、「被検物質」及び「高分子の凝集体」という用語は、区別なく用いられてもよい。
【0034】
SPRの現象は周知であり、特定の条件下で異なる屈折率の2つの媒体の界面に光が反射し、界面が金属膜、典型的には銀又は金で被覆されているとSPRが上昇することは言うまでもない。BIACORE(登録商標)装置では、媒体は、試料、及び微小流体流動システムによって試料と接触するセンサーチップのガラスである。金属膜は、チップ表面の金の薄層である。SPRは、特定の反射角度での反射光の強度を低下させる。この最小反射光強度の角度は、反射光から反対側、BIACORE(登録商標)システムでは試料側の表面に近い屈折率により変化する。
【0035】
BIACORE(登録商標)システム(及び類似のセンサーシステム)を使用すると、リアルタイムで、標識を使用することなく、且つしばしば使用する物質を精製することなく、試料中の特定の分子又は被検物質の存在及び濃度のみならず、分子相互作用における会合(結合)及び解離に対する運動速度定数、並びに被検物質とリガンドとの感知面での相互作用に対する親和性を含む様々な動態パラメータ等の更なる相互作用パラメータを決定することが可能である。会合速度定数(ka)及び解離速度定数(kd)は、異なる試料被検物質濃度についての得られた動態データを微分方程式の形の相互作用モデルの数式に当てはめることによって得ることが可能である。(親和性定数KA又は解離定数KDで表される)親和性は、会合速度定数及び解離速度定数から算出できる。
【0036】
本開示による方法において、特に決定の対象となる動態パラメータは、会合速度(或いは「結合速度」又は「オンレート」と呼ばれる)、解離速度(或いは「オフレート」と呼ばれる)、会合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、親和性定数(KA)及び解離定数(KD)からなる群から選択されてもよい。決定の対象となる別のパラメータは、被検物質の結合レベル、より具体的には、例えば解離開始直前並びに解離終了時における感知面のリガンドに結合した被検物質の量、分率又は濃度である。
【0037】
会合相に関して、オンレートは、結合曲線の初期勾配で表される初期結合速度として決定されてもよい。勾配は、典型的には、会合開始後まもなく(典型的には数秒後)、短時間で決定され、通常、1秒あたりの共鳴単位又は応答単位(RU/s)で表される。高分子の凝集体を非凝集高分子と比較すると、高分子の凝集体及び非凝集高分子は、それぞれ、リガンドの上記結合相互作用の増強により(リガンドの疎水性基の特性により)、センサー表面のリガンドに対して全く異なるオンレートを示す。以上に定義したように、これに関して、「結合相互作用の増強」は、リガンドが(リガンドの疎水性基の特性により)、非凝集高分子より高分子の凝集体に対して少なくとも50%、例えば60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%高い親和性を有することを意味する。更に、リガンドは、理想的には、非凝集高分子との結合相互作用が非常に低く、結合曲線における初期勾配、即ちオンレートが非常に低くなる。換言すれば、リガンドは、理想的には、非凝集高分子に対する親和性が非常に低く、それは、本明細書において、非凝集高分子に対するリガンドの親和性が(リガンドの疎水性基の特性により)、高分子の凝集体に対するリガンドの親和性の最大で50%、例えば40%、30%、20%、10%、5%、4%、3%、2%、1%又は0%であることを意味するものとして定義される。本明細書の他の箇所に記載されている実験において、非凝集高分子に対するリガンドの親和性は、高分子の凝集体に対する親和性の約0~1.2%に過ぎなかった。
【0038】
感知面での(即ち質量移動制限の不在下での)反応制御相互作用の場合は、凝集体は、質量感知面において、非凝集高分子より大きな応答、即ち速いオンレートを示す。非凝集高分子及び凝集高分子の両方を含む試料中での凝集体の分率が大きいほど、初期勾配が大きいため、非凝集高分子しか含有しない試料について決定された初期勾配との差が大きくなる。このようにして、凝集体の分率が異なるいくつかの試料についてオンレートを決定しておくと、未知の試料中の凝集体の分率を決定できる。
【0039】
解離相において(即ち、表面が試料に露出しなくなり、表面からの解離が起こりうる場合)、凝集体に対するリガンドのより高い親和性により、非凝集高分子と比較した場合における表面に対する凝集体の上記より強い結合が、凝集体に対する「オフレート」を遅くする。したがって、非凝集高分子及び凝集高分子の両方を含む試料中での凝集体の分率が大きいほど、オフレートが遅くなるため、非凝集高分子しか含有しない試料について決定されたオフレートとの差が大きくなる。オフレートは、例えば、解離が開始された後の所定の時間における残留結合レベル(応答)によって表されてもよい。凝集体の分率が異なるいくつかの試料についてオフレートを決定しておくと、未知の試料中の凝集体の分率を決定できる。
【0040】
試料中の凝集体の存在の定性的決定では、決定したパラメータ(例えば動態パラメータ)と、非凝集高分子を100%含む試料のパラメータとを比較すれば十分である。
【0041】
本明細書で考慮される測定の種類については、一般に、感知面での飽和レベルが低いと、高い試料処理能力が可能になるのに対して、飽和レベルが高くなるほど試料中の低分率の凝集体の検出が容易になる。
【0042】
本明細書に用いられている「疎水性基」という用語は、0を超えるlog P値を有する分子群として定義される。Pと略記される分配係数は、2つの溶媒(液相の二相)間の溶質、具体的には非イオン化溶質の濃度の特定の比として定義され、その比の対数はlog Pである。それらの溶媒の一方が水であり、他方が非極性溶媒である場合は、log P値は、親油性又は疎水性の測度となる。定義された前記係数は、親油性相種及び親水性相種が、それぞれ常に、例えばn-オクタノール(以下単に「オクタノール」)及び水の二相系における分子及び分母になる。
【0043】
【0044】
0未満のlog P値は、より高い割合の溶質が親水性相に存在することを示す。逆に、0を超えるlog P値は、親水性相、即ち疎水性相における溶質の割合がより高いことを示す。
【0045】
本開示によれば、前記疎水性基は、0を超えるlog P値、例えば0.05、例えば0.1、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0及び6.5を含むlog P値を有する。上記のように、変性高分子、並びに高分子の凝集体は、完全な非変性非凝集高分子より疎水性が高い。したがって、凝集体は、リガンドの疎水性基に対して、非凝集高分子より強く結合する。
【0046】
リガンドの疎水性基は、非極性の芳香族及び/又は脂肪族であってもよい。
【0047】
本開示の方法における使用に好適な疎水性基の非限定的な例としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖、又は前記側鎖の疎水性誘導体、好ましくはフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択されるアミノ酸の側鎖が挙げられる。
【0048】
前記アミノ酸の側鎖(即ち疎水性基)の化学構造を以下のTable 1(表1)に示す。
【0049】
【0050】
「誘導体」という用語は、化学反応により類似化合物から誘導される化合物、又は前駆体化合物から少なくとも理論的に形成できる化合物を意味するものである(Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、2003年、Oxford University Press、ISBN 0-19-850673-2、https://archive.org/details/isbn_9780198506737)。本明細書において、「疎水性誘導体」は、0を超えるlog P値を有する疎水性基をもたらす誘導体と理解されるべきである。
【0051】
別の非限定的な例によれば、疎水性基は、疎水性の側鎖を有するアミノ酸により構成されていてもよい。
【0052】
アミノ酸は、各アミノ酸に特異的な側鎖(R基)と共に、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)官能基を含む有機化合物である。アミノ酸の化学特性は、その可変R基の性質に大きく左右される。
【0053】
「非極性アミノ酸」は、可変R基が主に炭化水素で構成されているアミノ酸類に属し、アミノ酸のシステイン及びメチオニンも硫黄原子を特徴とするが、(カーボンに対する同様の陰性により)、これは、これらのアミノ酸のいずれにも極性を与えるものではない。非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンを含む。いくつかの分類によれば、グリシン、プロリン、システイン及びメチオニンも非極性アミノ酸群に属する。
【0054】
「芳香族アミノ酸」という用語は、本明細書において、芳香族側鎖を有するアミノ酸として定義される。側鎖は、芳香族環系を含む場合に芳香族である。厳密な定義は、環内に含まれる電子の数に関係がある。一般に、芳香族環系は平面的であり、環構造全体にわたって電子が共有される。トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンは、芳香族アミノ酸である。
【0055】
「脂肪族アミノ酸」は、脂肪族の側鎖官能基を含むアミノ酸である。脂肪族アミノ酸は非極性であり疎水性である。炭化水素鎖における炭素数の数が増加するほど疎水性が高まる。多くの脂肪族アミノ酸は、タンパク質分子が完全、即ち非分解及び非凝集であれば、タンパク質分子内、即ちタンパク質分子の内部に見いだされる。20種の必須アミノ酸のうち、真性脂肪族アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシンである。いくつかの分類によれば、プロリンも脂肪族アミノ酸に属する。厳密に言えば、脂肪族は、タンパク質側鎖が炭素又は水素原子のみを含むことを示唆する。しかし、メチオニンもこの範疇に含めるのが便利である。その側鎖が硫黄原子を含んでいても、概ね非反応性であり、メチオニンが効果的に真性脂肪族アミノ酸に十分代用されることを意味する。
【0056】
本明細書において、「疎水性アミノ酸」という用語は、疎水性側鎖、即ち水をはじく側鎖を有するアミノ酸を意味するものである。この理由により、一般に、これらのアミノ酸がタンパク質の疎水性コア、又は膜の脂質部分の中に埋め込まれているのがわかる。以上に定義されている非極性アミノ酸、芳香族アミノ酸及び脂肪族アミノ酸は、いずれも疎水性側鎖を有するため、代替的に疎水性アミノ酸と呼ばれてもよい。それ故、本開示の目的では、以下のアミノ酸、即ちアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンが疎水性アミノ酸と見なされる。
【0057】
前記アミノ酸の化学構造を以下のTable 2(表2)に示す。
【0058】
【0059】
よって、本開示の方法に使用できる疎水性基の更なる非限定的な例は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸、又はその疎水性誘導体、好ましくはフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸により構成される疎水性基である。
【0060】
或いは、疎水性基は、1つ又は複数の疎水性側鎖を有する天然に存在しないアミノ酸により構成される。その非限定的な例は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンの天然に存在しない疎水性誘導体である。「疎水性誘導体」という用語は、本明細書の他の箇所で定義されている。
【0061】
上記のように、本開示の方法は、工程(c)(i)及び工程(c)(ii)の少なくとも一方を実施する工程を含み、工程(c)(i)は、工程(b)で決定された少なくとも1つのパラメータと少なくとも1つの更なる試料について決定された対応するパラメータとを比較する工程を含み、工程(c)(ii)は、高分子の凝集体に関する少なくとも1つのパラメータを決定する工程を含む。
【0062】
本開示によれば、工程(c)(i)における少なくとも1つの更なる試料は、凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量が決定される第2の試料であってもよい。第1の試料及びいくつかの更なる試料、例えば合計で2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種又は10種以上の試料を含むいくつかの試料を分析し、互いに比較することによって、前記試料中の凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量を定性的に決定することができる。換言すれば、それによって、試料中の凝集体の相対的な分率、濃度及び/又は量を決定できる。
【0063】
凝集体の相対的濃度は、例えば高分子の安定性試験を実施する際に十分な測度となりうる。よって、本開示は、上記方法を実施する工程であって、少なくとも1つの更なる試料が、凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量が決定される第2の試料である工程を含み、第1の試料に第1の外的条件を施し、第2の試料に第2の外的条件を施す工程であって、第1の条件と第2の条件が互いに異なる工程を更に含む、高分子の安定性の決定方法を更に提供する。例えば、第1の条件及び第2の条件は、異なる保存条件、例えば、異なる保存期間、異なる保存緩衝液、異なる温度及び/又は異なる湿度レベルを含んでいてもよい。それにより、高分子の凝集体の分率、濃度及び/又は量の定量的決定を必要とすることなく、どの保存条件が他より良好であるかを決定することが可能である。
【0064】
しかしながら、本開示の方法の他の用途では、試料中の高分子の凝集体の分率、濃度及び/又は量の定量的測度を得ることが重要である。それ故に、凝集体の形態の高分子の存在、分率、濃度及び/又は量が決定される工程(c)(i)における少なくとも1つの更なる試料が第2の試料である上記実施形態の代替として、又は該実施形態に加えて、工程(c)(i)における少なくとも1つの更なる試料は、高分子の凝集体の所定(即ち既知)の存在、分率、濃度及び/又は量を有する対照試料であってもよい。いくつかの対照試料、例えば2つ、3つ、4つ又は5つ以上の試料が、分析対象試料と比較する標準(標準曲線とも呼ばれる)を形成できる。対照試料又は標準における高分子の凝集体の分率、濃度及び/又は量が定量的に決定されると、結果として、分析対象試料中の高分子の凝集体の分率、濃度及び/又は量も定量的に決定できる。換言すれば、試料中の凝集体の絶対分率、濃度及び/又は量を決定できる。
【0065】
特定の条件下で、標準を使用することなく試料中の高分子の濃度を定量的に決定するために、観測された高分子とリガンドの結合速度をそのまま用いることができる。この種の検定は、キャリブレーションフリー濃度分析(CFCA)と称する。試料中の高分子の分散係数を含むが、それに限定されない、CFCA分析に必要なパラメータの算出又は決定についての詳細な説明は、その全体が参照により本明細書に組み込まれているPol Eら、Evaluation of calibration-free concentration analysis provided by BiacoreTM systems、Analytical Biochemistry、510: 88-97頁、2016に見いだされる。高分子濃度の絶対及び相対測定値の両方を得るためにCFCAを使用できる。
【0066】
よって、上記工程(c)(i)の代替として、本開示の方法は、高分子の凝集体に関連する少なくとも1つのパラメータを決定することを含む工程(c)(ii)を実施する工程を含んでいてもよい。より具体的には、本開示の方法の工程(c)(ii)は、CFCA分析に必要とされている凝集体の拡散係数及び凝集体の分子量を決定する工程を含んでいてもよい。
【0067】
本開示の方法は、経過時間の関数としての時間を通じて連続的又は断続的に、試料と感知面との相互作用についての少なくとも1つのパラメータ(例えば動態パラメータ)を決定する工程を更に含んでいてもよい。
【0068】
代替的又は追加的に、該方法は、試料と感知面との相互作用についての少なくとも1つのパラメータ(例えば動態パラメータ)が決定される期間を通じて感知面の温度を変化させる工程を更に含んでいてもよい。
【0069】
本開示の方法において、リガンドは、感知面に結合することが可能である(即ち固定化される)ように、アミノ基、アミン又はカルボキシル基を含む。
【0070】
本開示の別の態様は、高分子の安定性を決定するためのその実施形態のいずれかによる上記方法の使用を含む。
【0071】
試料中の凝集高分子の分率、濃度及び/又は量の定量的又は絶対的決定のためのその実施形態のいずれか1つによる上記方法の使用、並びに試料中の凝集高分子の分率、濃度及び/又は量の定量的又は相対的決定のためのその実施形態のいずれか1つによる上記方法の使用が本明細書において更に提供される。
【0072】
更に別の態様によれば、本開示は、本明細書に記載の方法の少なくとも1つの工程を実施するように構成された相互分析センサーを提供する。特に、前記相互作用分析センサーは感知面を含み、その感知面には、高分子の凝集体との特異的結合相互作用が可能であり、非凝集高分子より凝集高分子に対して高い親和性を有する、疎水性基を含むリガンドが固定化されている。相互作用分析センサーは、好ましくは、表面プラズモン共鳴を実施するためのセンサーである。
【0073】
更に別の態様によれば、本開示は、感知面2を含み、その感知面2には、高分子の凝集体との特異的結合相互作用が可能であり、非凝集高分子より凝集高分子に対して高い親和性を有する、疎水性基を含むリガンド3が固定化されている相互作用分析センサー1を提供する。
【0074】
図2は、本開示の方法を実施するために使用できる相互作用分析センサー1の非限定的な例を模式的に示す。より具体的には、
図2は、BIACORE(登録商標)システムの模式図である。ガラス製のセンサー1(代替的にセンサーチップと呼ばれる)は、金属の膜によって被覆され、疎水性基を含むリガンド3がその上に固定化された感知面2を含む。リガンド3は、被検物質4が流路5を流れる試料流体に暴露される。光源7(LED)からの単色p-偏光6が、プリズム8により、光が全反射するガラス/金属界面9に結合されている。反射光ビーム10の強度は、光学検出部11(光検出器アレイ)によって検出される。
【0075】
相互作用分析センサー1の感知面2に固定化されたリガンド3の疎水性基は、0を超えるlog P値を有する。
【0076】
相互作用分析センサー1の感知面2に固定化されたリガンド3の前記疎水性基は、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、トレオニン、セリン及びプロリンからなる群から選択されるアミノ酸の疎水性側鎖、又は前記疎水性側鎖の1つの誘導体を含んでいてもよい。
【0077】
更に、前記疎水性基は、1つ又は複数の疎水性側鎖を有するアミノ酸により構成されていてもよい。該アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、システイン、グリシン、アラニン、チロシン、ヒスチジン、トレオニン、セリン及びプロリンからなる群から選択される天然に存在するアミノ酸、又はその誘導体であってもよい。或いは、該アミノ酸は、本明細書の他の箇所で例示される天然に存在しないアミノ酸であってもよい。
【0078】
相互作用分析センサー1の感知面2に固定化されたリガンド3は、リガンド3が感知面2に結合することが可能であるようにアミン、アミノ基又はカルボキシル基を含んでいてもよい。
【0079】
本開示による相互作用分析センサー1は、抗体等のタンパク質又はポリペプチドを含むが、それに限定されない様々な種類の高分子を検討するために使用されてもよい。
【0080】
本開示による相互作用分析センサー1は、質量感知バイオセンサー、好ましくはエバネセント波感知、特に表面プラズモン共鳴(SPR)に基づくバイオセンサー等のバイオセンサーであってもよい。
【0081】
他に指定がなければ、本明細書に用いられている全ての科学技術用語は、本発明に関連する技術分野の当業者によって広く理解されるものと同様の意味を有する。また、単数形「a」、「an」及び「the」は、他に指定がなければ、複数形を含むことが意図されている。
【0082】
本明細書に記載の全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれている。
【0083】
SPR分光、より具体的にはBIACORE(登録商標)システムに関して本開示を説明したが、本開示は、前記検出方法に限定されないことが理解されるべきである。むしろ、その上の固定化リガンドに対する被検物質の結合を定量的に示す感知面での変化を測定できれば、被検物質が、感知面に固定化されたリガンドに結合する親和性に基づく任意の検出方法を採用してもよい。
【実施例1】
【0084】
序
本実施例では、異なる分率の非凝集高分子及び高分子の凝集体を含有する試料の動態挙動を実証する実験について記載する。
【0085】
装置及び材料
BIACORE(登録商標)8K装置(GE Healthcare Bio-Science社 AB、Uppsala、スウェーデン)を使用した。この装置では、微小流体システムが、(同時又は順次に)個々の8つの検出流動セルに試料及び流動緩衝液を通過させる。使用したセンサーチップは、共有結合によりカルボキシメチル変性されたデキストランポリマーヒドロゲルによる金コーティング表面を有するSeries S sensor Chip CM5 (GE Healthcare Bio-Science社 AB)であった。疎水性アミノ酸のフェニルアラニンとトリプトファンの混合物を、被検物質の凝集体に対する特異的結合パートナー(リガンド)としてセンサー表面に固定化した。計算には、BIACORE(登録商標)装置専用のBiacore Insight制御ソフトウェア及びBiacore Insight評価ソフトウェア(GE Healthcare Bio-Science社 AB、Uppsala、スウェーデン)を使用した。
【0086】
検討した被検物質は、モノクローナルIgG抗体であった。
【0087】
BIACORE(登録商標)装置からの出力は、時間の関数としての検出器応答(「共鳴単位」又は「応答単位」(RU)で測定される)検出器応答のプロットであるセンサーグラムである。一般に、1000RUの増加は、センサー表面での約1ng/mm2の質量の増加に対応する。
【0088】
試料の調製
非凝集(単量体)モノクローナルIgG抗体を50μg/mlの濃度で含有する試料を2つの部分に分割した。試料の第1の部分を1時間15分かけて65℃に加熱して、試料中に分解抗体及び/又は抗体の凝集体を生成させた。試料の第2の部分は非加熱とし、抗体を非分解且つ非凝集の状態に維持するのに好適な温度に維持した。試料の第1の部分(加熱部分)の一定分量と試料の第2の部分の一定分量(非加熱部分)とを、非凝集抗体と凝集抗体との比を変えて混合することにより、以下のシリーズの試料を生成した。
a. 凝集100%
b. 凝集75%及び非凝集25%
c. 凝集50%及び非凝集50%
d. 凝集25%及び非凝集75%
e. 非凝集100%
【0089】
蛍光プローブのシプロオレンジを使用する蛍光法により、同シリーズの試料a~eに対する対照実験を実施した。
【0090】
結果及び結論
図3の会合及び解離曲線a~eに示されるように、凝集体をBIACORE(登録商標)装置の感知面に結合させた。
図3の曲線a~eは、以上の試料の調製に記載されているシリーズの試料a~eを表す。試料中の凝集抗体の量が多いほど、結合応答が大きい。曲線a~eの応答値は、基準を差し引いたものである。
【0091】
図4に示すように、BIACORE(登録商標)での実験結果は、蛍光法により実施した対照実験の結果との相関性が良好であった。
【実施例2】
【0092】
図5は、以下のように、様々な濃度及び比の固定化リガンド(即ち疎水性アミノ酸)を含む凝集試料を感知面上に注入した場合の応答曲線a~hを示す。
a. 50mMトリプトファン
b. 50mMフェニルアラニン:25mMトリプトファン
c. 25mMフェニルアラニン:12.5mMトリプトファン
d. 12.5mMフェニルアラニン:6.25mMトリプトファン
e. 6.25mMフェニルアラニン:3.13mMトリプトファン
f. 100mMフェニルアラニン
g. 3.13mMフェニルアラニン:1.56mMトリプトファン
h. 1.56mMフェニルアラニン:0.78mMトリプトファン
【0093】
それらの異なる曲線は、Biacore装置における異なる流路である。それらの曲線のうちの6つは、1.56:0.78mMから50:25mMまでの2:1の注入濃度モル比のフェニルアラニンとトリプトファンを構成する固定化リガンドである。それらの曲線のうちの2つは、注入濃度が100mM(Phe)又は50mM(Trp)の濃度のフェニルアラニン又はトリプトファンを構成する固定化リガンドである。
【0094】
図5から、固定化リガンド(即ち疎水性アミノ酸)の量が増加すると、凝集体の応答/結合も増大することが明白である。ここでは、トリプトファンの濃度が高いと、凝集体に対する最大結合能力が導かれ、フェニルアラニンはより低い能力を示す。リガンド混合物の注入濃度を増加させると、結合能力が高められる。
【0095】
比較のために、上記a~hに規定される様々な濃度及び比の固定化リガンドを含む感知面上に非加熱試料を注入した。非加熱試料と「凝集」試料との唯一の違いは、非加熱試料が、凝集を誘導するために熱処理されなかったことである。およその結合が、既に示した凝集資料の約1~1.2%の結合レベルに相当する2~2.5R.U.であった50mMトリプトファンの流路を除いて結合が検出されなかった。これは、この表面が非凝集試料を結合することを暗示するものでなく、非加熱試料のごく一部が、分解の結果として凝集体又は疎水性表面の特性を構成することを示唆しうる。
【実施例3】
【0096】
実施例1及び2と同様であるが、以下の変更点を有する抗体を使用して、実験の設計を行う。
(a)相互作用分析センサーの感知面に固定化された異なるリガンド、即ち異なる疎水性基、例えば、異なる疎水性アミノ酸又は疎水性アミノ酸の異なる側鎖の試験を行う。
(b)抗体の異なる多量体形態に対する異なるリガンドの親和性を決定する。
【実施例4】
【0097】
実施例1及び2と異なる高分子、例えば抗体でないタンパク質、例えば50~100kDaのタンパク質を使用して実施例1及び2と同様に実験の設計を行う。
(a)試料に様々な長さの時間、例えば、15分、30分、60分、75分及び200分の加熱を施すことによって凝集試料を調製する。選択する加熱時間は、高分子の安定性に依存する。
(b)本発明による疎水性基を含むリガンドで被覆された表面を使用することによって、(a)で調製された試料を分析する。
比較のために、同一の試料に対してDSC(示差走査熱分析)及び/又は蛍光分析のようなリアルタム分析を行うことによって上記手順を補完してもよい。この実験は、単量体状態から完全凝集状態の様々な凝集レベルにおける影響を調べるために実施される。
【実施例5】
【0098】
非凝集(単量体)モノクローナルIgG抗体を50μg/mlの濃度で含有する試料を2つの部分に分割した。試料の各部分を65℃でTable 3(表3)に記載の設定時間加熱した。
【0099】
【0100】
アミノ酸が固定化された感知面のBiacoreで試料を分析した。
図6は、各インキュベーション時間による応答を示し、水平状態になるまでのインキュベーション時間が長いほど応答が大きくなることがわかる。これは、試料の分解が大きいほど、表面に対するその親和性が高いことを示す。
【0101】
この手順を使用することにより、例えば培養による「真性」試料の注入によって試料における分解のレベルを測定し、分解及び凝集のレベルを把握するためにその応答を測定することも可能である。
【実施例6】
【0102】
ある態様における凝集は自己親和性によって引き起こされるため、
図7に示されるように分解した凝集試料をセンサー表面上に固定化することが可能でありうる。凝集レベルが未知の試料は、センサー表面に注入され、表面の分解タンパク質に対して選択的に結合して、信号応答を増大させる可能性がある。このようにして、手近で最も興味深い試料に基づく凝集検出方法を得ることが可能である。この方法は、アミノ酸をセンサー表面に固定化する他の方法と比較すると包括的でなく、恐らくは同様の種類のタンパク質凝集体のみを検出することが可能である。その手法をどのようにして実施することが可能であるかの例については
図7を参照されたい。
【符号の説明】
【0103】
1 相互作用分析センサー
2 感知面
3 リガンド
4 被検物質
5 流路
6 単色p-偏光
7 光源
8 プリズム
9 ガラス/金属界面
10 反射光ビーム
11 光学検出部