(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】有機分子、有機分子の使用、組成物、光電子素子及び光電子素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20250401BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20250401BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20250401BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20250401BHJP
H10K 59/125 20230101ALI20250401BHJP
H10K 65/00 20230101ALI20250401BHJP
H10K 71/12 20230101ALI20250401BHJP
H10K 71/16 20230101ALI20250401BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20250401BHJP
【FI】
C07F5/02 F CSP
C09K11/06 660
H10K50/12
H10K59/10
H10K59/125
H10K65/00
H10K71/12
H10K71/16
H10K85/60
(21)【出願番号】P 2022563424
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2021060074
(87)【国際公開番号】W WO2021213972
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-02-26
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】ジンク,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】レセトニク,アナスタシア
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/076108(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/132040(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/102118(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
C09K 11/06
H10K 50/12
H10K 59/10
H10K 59/125
H10K 65/00
H10K 71/12
H10K 71/16
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Iの構造を含む、有機分子:
【化1】
化学式Iで、
R
I、R
II、R
III、R
IV、R
V、R
VI、R
VII、R
VIII、R
IX、R
X及びR
XIは、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、ハロゲン、
C
1-C
12アルキル、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR
5によって置換され、
C
6-C
18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR
5によって置換され、及び
C
3-C
15ヘテロアリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR
5によって置換され、
R
5は、それぞれ、下記からなる群から独立して選択され、
水素、重水素、
C
1-C
12アルキル、及び
C
6-C
18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC
1-C
5アルキル置換基によって置換され、
T、V、W、Xは、それぞれ独立して、下記からなる群から選択され、
C
1-C
12アルキル、及び
C
6-C
18アリール、
Tは、C
1
-C
12
アルキル、またはC
6
-C
18
アリールであり、
Vは、TがC
1
-C
12
アルキルである場合、C
6
-C
18
アリールであり、TがC
6
-C
18
アリールである場合、C
1
-C
12
アルキルであり、
Wは、C
1
-C
12
アルキル、またはC
6
-C
18
アリールであり、
Xは、WがC
1
-C
12
アルキルである場合、C
6
-C
18
アリールであり、WがC
6
-C
18
アリールである場合、C
1
-C
12
アルキルであり、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC
1-C
5アルキル置換基によって置換される。
【請求項2】
Tは、Me、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基、またはPhであり、
Vは、TがMe、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基である場合、Phであり、TがPhである場合、Me、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基であり、
Wは、Me、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基、またはPhであり、
Xは、WがMe、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基である場合、Phであり、WがPhである場合、Me、
i
Pr及び
t
Buからなる群から独立して選択された1以上の置換基である、請求項1に記載の有機分子。
【請求項3】
化学式I-1または化学式I-2の構造を含む、請求項1または2に記載の有機分子:
【化2】
【化3】
。
【請求項4】
R
I、R
II、R
III、R
IV、R
V、R
VI、R
VII、R
VIII、R
IX、R
X及びR
XIは、独立して、下記からなる群から選択される、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の有機分子:
水素、重水素、ハロゲン、
C
1-C
12アルキル、
C
6-C
18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC
1-C
6アルキル置換基またはC
6-C
18アリール置換基によって置換され、及び
C
3-C
15ヘテロアリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC
1-C
6アルキル置換基またはC
6-C
18アリール置換基によって置換される。
【請求項5】
R
I、R
II、R
III、R
IV、R
V、R
VI、R
VII、R
VIII、R
IX、R
X及びR
XIは、独立して、下記からなる群から選択される、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の有機分子:
水素、重水素、ハロゲン、Me、
iPr、
tBu、
Me、
iPr、
tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたPh、及び
Me、
iPr、
tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾール。
【請求項6】
化学式Ia~化学式Inからなる群から選択された構造を含む、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の有機分子:
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
。
【請求項7】
化学式IIa~化学式IInからなる群から選択された構造を含む、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の有機分子:
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
。
【請求項8】
R
XIは、下記からなる群から選択される、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の有機分子:
水素、重水素、ハロゲン、Me、
iPr、
tBu、
Me、
iPr、
tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたPh、及び
Me、
iPr、
tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾール。
【請求項9】
R
XIは、下記からなる群から選択される、請求項1~8のうちいずれか1項に記載の有機分子:
水素、重水素、Me、
iPr、
tBu、シクロへキシル、Ph、並びに
tBu及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾール。
【請求項10】
R
XIが水素またはMeである、請求項1~9のうちいずれか1項に記載の有機分子。
【請求項11】
光学素子において、発光エミッタとしての、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の有機分子の
使用。
【請求項12】
前記
光学素子は、下記からなる群から選択される、請求項11に記載の有機分子の
使用:
・有機発光ダイオード(OLED)
・発光電気化学電池
・OLEDセンサ
・有機ダイオード
・有機太陽電池
・有機トランジスタ
・有機電界効果トランジスタ
・有機レーザ
・下向き変換素子。
【請求項13】
以下を含む、組成物:
(a)エミッタ形態及び/またはホスト形態の、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の有機分子、
(b)前記有機分子と異なるエミッタ物質及び/またはホスト物質、及び
(c)選択的に、染料及び/または溶媒。
【請求項14】
有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学電池、OLEDセンサ、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機レーザ及び下向き変換素子で構成された群から選択された形態の、請求項1~10のうちいずれか1項に記載の有機分子、または請求項13に記載の組成物を含む、光電子素子。
【請求項15】
-基板、
-アノード、
-カソード、及び
-発光層を含み、
前記アノードまたは前記カソードは、前記基板上に配され、
前記発光層は、前記アノードと前記カソードとの間に配置され、前記有機分子または前記組成物を含む、請求項14に記載の光電子素子。
【請求項16】
請求項1~10のうちいずれか1項に記載の有機分子、または請求項13に記載の組成物が使用され、真空蒸発方法によるか、あるいは溶液から前記有機分子を処理するステップを含む、光電子素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光分子及び有機発光ダイオード(OLED)、並びにその他光電子素子における使用に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明が解決しようとする課題は、光電子素子に使用するのに適する分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
そのような課題は、新規の有機分子を提供する本発明によって達成される。
本発明によれば、前記有機分子は、純粋な有機分子であり、すなわち、光電子素子に使用されると知られた金属錯体と対照的に、いかなる金属イオンも含まない。しかしながら、本発明の有機分子は、半金属、特に、B、Si、Sn、Se及び/またはGeを含むものでもある。
【発明の効果】
【0004】
本発明によれば、前記有機分子は、青色、スカイブルーまたは緑色のスペクトル範囲において、最大発光を示す。前記有機分子は、特に、420nm~520nm、好ましくは、440nm~495nm、さらに好ましくは、450nm~470nmにおいて、最大発光を示す。本発明による有機分子のフォトルミネセンス量子収率は、特に、50%以上である。本発明による分子を、光電子素子、例えば、有機発光ダイオード(OLED)に使用すれば、素子の効率または色純度が高くなるが、それは、素子の発光半値幅(FWHM)で表される。相応するOLEDは、公知のエミッタ物質、及び類似した色相を有するOLEDよりさらに高い安全性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明による有機分子は、下記化学式Iの構造を含むか、あるいはそれからなる。
【0006】
【0007】
化学式Iで、
RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、RX及びRXIは、独立して、下記からなる群から選択され、
水素、重水素、ハロゲン、
C1-C12アルキル、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR5によって置換され、
C6-C18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR5によって置換され、及び
C3-C15ヘテロアリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR5によって置換され、
R5は、それぞれ、下記からなる群から独立して選択され、
水素、重水素、
C1-C12アルキル、及び
C6-C18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC1-C5アルキル置換基によって置換され、
T、V、W、Xは、それぞれ独立して、下記からなる群から選択され、
C1-C12アルキル、及び
C6-C18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC1-C5アルキル置換基によって置換される。
【0008】
本発明の一部実施形態において、T、V、W、Xは、それぞれ独立して、下記からなる群から選択される:
tBu、及び
Me、iPr及びtBuからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたPh(フェニル)。
【0009】
一実施形態において、前記有機分子は、下記構造を含むか、あるいはそれからなる:
【化2】
【0010】
ここで、置換基Ph′は、Me、iPr、tBu及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたフェニル置換基を示す。
【0011】
他の実施形態において、前記有機分子は、下記化学式I-1または化学式I-2の構造を含むか、あるいはそれからなる:
【0012】
【0013】
【0014】
ここで、前述した定義が適用される。
一実施形態において、RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、RX及びRXIは、独立して、下記からなる群から選択される:
水素、重水素、ハロゲン、
C1-C12アルキル、
C6-C18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC1-C6アルキル置換基またはC6-C18アリール置換基によって置換され、及び
C3-C15ヘテロアリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してC1-C6アルキル置換基またはC6-C18アリール置換基によって置換される。
一実施形態において、RI、RII、RIII、RIV、RV、RVI、RVII、RVIII、RIX、RX及びRXIは、独立して、下記からなる群から選択される:
水素、重水素、ハロゲン、Me、iPr、tBu、
Me、iPr、tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基によって選択的に置換されたPh、及び
Me、iPr、tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基によって選択的に置換されたカルバゾール。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記有機分子は、下記化学式Ia~化学式Inからなる群から選択された構造を含むか、あるいはそれからなる:
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
ここで、前述した定義が適用される。
本発明の一実施形態において、前記有機分子は、下記化学式IIa~化学式IInからなる群から選択された構造を含むか、あるいはそれからなる:
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
一実施形態において、RXIは、下記からなる群から選択される:
水素、重水素、ハロゲン、Me、iPr、tBu、
Me、iPr、tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたPh、及び
Me、iPr、tBu、シクロへキシル及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾール。
【0046】
一実施形態において、RXIは、下記からなる群から選択される:
水素、重水素、Me、iPr、tBu、シクロへキシル、Ph、並びにtBu及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾール。
【0047】
一部実施形態において、RXIは、水素またはMeである。
好ましい一実施形態において、RXIは水素である。
好ましい一実施形態において、RXIはMeである。
好ましい一実施形態において、RXIはフェニルである。
【0048】
一部実施形態において、RXIは、tBu及びPhからなる群から独立して選択された1以上の置換基に選択的に置換されたカルバゾールである。
好ましい一実施形態において、RXIは、カルバゾール、特に、非置換のカルバゾールである。
【0049】
一実施形態において、RI、RII、RIII、RIV、RVのうち少なくとも1つ、及びRVI、RVII、RVIII、RIXまたはRXのうち少なくとも1つは、下記からなる群から選択される:
C1-C12アルキル、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR5によって置換され、及び
C6-C18アリール、
ここで、選択的に、1以上の水素原子は、独立してR5によって置換される。
【0050】
前記有機分子の一実施形態において、RI=RX、RII=RIX、RIII=RVIII、RIV=RVII、RV=RVI、T=X、及びV=Wである。
【0051】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アリール」及び「芳香族」は、最も広い意味において、任意の単環式芳香族部分、二環式芳香族部分または多環式芳香族部分としても理解される。従って、アリール基は、6~60個の芳香族環原子を含む。ヘテロアリール基は、5~60個の芳香族環原子を含み、そのうち少なくとも1つはヘテロ原子である。それにもかかわらず、本明細書の全体にわたり、芳香族環原子数は、特定置換基の定義において、下付き文字数字で与えられうる。特に、ヘテロ芳香族環は、1~3個のヘテロ原子を含む。さらに、用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族」は、最も広い意味において、少なくとも1つのヘテロ原子を含む任意の単環式ヘテロ芳香族部分、二環式ヘテロ芳香族部分または多環式ヘテロ芳香族部分としても理解される。該ヘテロ原子は、それぞれ、同一でもあり、あるいは異なってもおり、N、O及びSからなる群から個別的に選択されうる。従って、用語「アリーレン」は、他の分子構造に対し、2個の結合部位を保有し、リンカ構造の役割を行う二価置換基を意味する。例示的な実施形態において、基が、ここで与えられた定義と異なるように定義される場合、例えば、芳香族環原子数またはヘテロ原子数が与えられた定義と異なる場合、例示的な実施形態における定義が適用される。本発明によれば、縮合(環状)された、芳香族多環またはヘテロ芳香族多環は、縮合反応を介して多環を形成する、2個以上の単一芳香族環またはヘテロ芳香族環から構成される。
【0052】
特に、本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アリール基」または「ヘテロアリール基」は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ベンズアントラセン、ベンズフェナントレン、テトラセン、ペンタセン、ベンズピレン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン;ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ-5,6-キノリン、ベンゾ-6,7-キノリン、ベンゾ-7,8-キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリドイミダゾール、ピラジノイミダゾール、キノキサリノイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、1,3,5-トリアジン、キノキサリン、ピラジン、フェナジン、ナフチリジン、カルボリン、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,2,3,4-テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン及びベンゾチアジアゾール、あるいは前述の基の組み合わせから誘導された芳香族基またはヘテロ芳香族基の任意の位置を介して結合可能な基を含む。
【0053】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「環状基」は、最も広い意味において、任意の単環式部分、二環式部分または多環式部分としても理解される。
【0054】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「ビフェニル」は、置換基として最も広い意味において、オルトビフェニル、メタビフェニルまたはパラビフェニルとしても理解され、ここで、オルト、メタ及びパラは、他の化学的部分に対する結合部位と係わって定義される。
【0055】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルキル基」は、最も広い意味において、任意の線状、分枝状または環状のアルキル置換基としても理解される。特に、用語「アルキル」は、置換基である、メチル(Me)、エチル(Et)、n-プロピル(nPr)、i-プロピル(iPr)、シクロプロピル、n-ブチル(nBu)、i-ブチル(iBu)、s-ブチル(sBu)、t-ブチル(tBu)、シクロブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、t-ペンチル、2-ペンチル、ネオ-ペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、s-ヘキシル、t-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、ネオ-ヘキシル、シクロヘキシル、1-メチルシクロペンチル、2-メチルペンチル、n-へプチル、2-へプチル、3-へプチル、4-へプチル、シクロへプチル、1-メチルシクロヘキシル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、シクロオクチル、1-ビシクロ[2,2,2]オクチル、2-ビシクロ[2,2,2]オクチル、2-(2,6-ジメチル)オクチル、3-(3,7-ジメチル)オクチル、アダマンチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,1-ジメチル-n-ヘク-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘプト-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジメチル-n-デス-1-イル、1,1-ジメチル-n-ドデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-テトラデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-ヘキサデス-1-イル、1,1-ジメチル-n-オクタデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘク-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘプト-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクト-1-イル、1,1-ジエチル-n-デス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ドデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-テトラデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-ヘキサデス-1-イル、1,1-ジエチル-n-オクタデス-1-イル、1-(n-プロピル)-シクロヘク-1-イル、1-(n-ブチル)-シクロヘク-1-イル、1-(n-ヘキシル)-シクロヘク-1-イル、1-(n-オクチル)-シクロヘク-1-イル及び1-(n-デシル)-シクロヘク-1-イルを含む。
【0056】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルケニル」は、線状、分枝状及び環状のアルケニル置換基を含む。用語「アルケニル基」は、例えば、置換基である、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニルまたはシクロオクタジエニルを含む。
【0057】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルキニル」は、線状、分枝状及び環状のアルキニル置換基を含む。用語「アルキニル基」は、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルまたはオクチニルを含む。
【0058】
本明細書の全体にわたって使用されているように、用語「アルコキシ」は、線状、分枝状及び環状のアルコキシ置換基を含む。用語「アルコキシ基」は、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ及び2-メチルブトキシを含む。
【0059】
本明細書の全体にわたって使用されている用語「チオアルコキシ」は、線状、分枝状及び環状のチオアルコキシ置換基を含み、ここで例示的なアルコキシ基のOはSに置換される。
【0060】
本明細書の全体にわたって使用されている用語「ハロゲン」及び「ハロ」は、最も広い意味において、好ましくは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であるとも理解される。
【0061】
水素(H)は、本明細書で言及される度に、それぞれ、重水素にも置換される。
【0062】
分子フラグメントが、置換基や、他の部分に付着していると記述されるとき、その名称は、まさしくそれがフラグメント(例えば、ナフチル、ジベンゾフリル)であるように、あるいは全体分子(例えば、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるようにも記述される。本明細書に使用されているように、置換基、または付着されたフラグメントを記述する前記方式は、同等であると見なされる。
【0063】
一実施形態において、室温で5重量%の有機分子を含むポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムにおいて、本発明による有機分子は、150μs以下、100μs以下、特に、50μs以下、さらに好ましくは、10μs以下、または7μs以下の励起状態寿命を有する。
【0064】
本発明の更なる実施形態において、室温で5重量%の有機分子を含むPMMAフィルムにおいて、本発明による有機分子は、可視光線または近紫外線の範囲、すなわち、380nm~800nmの波長範囲において発光ピークを有し、このとき、0.23eV未満、好ましくは、0.20eV未満、さらに好ましくは、0.19eV未満、より一層好ましくは、0.18eV未満、または0.17eV未満の半値幅(full width at half maximum)値を有する。
【0065】
軌道エネルギー及び励起状態エネルギーは、実験方法を介して決定することができる。最高被占軌道のエネルギーEHOMOは、当業者に公知の方法によって、循環電圧電流法測定から0.1eVの精度で決定される。最低空軌道のエネルギーELUMOは、EHOMO+Egapによって計算され、ここで、Egapは、下記のように決定される:ホスト化合物の場合、他に明示されない限り、10重量%のホストを含むPMMAフィルムの発光スペクトルの開始(onset)が、Egapとして使用される。エミッタ分子の場合、Egapは、10重量%のエミッタを含むPMMAフィルムの励起スペクトル及び発光スペクトルが交差するエネルギーとして決定される。本発明による有機分子の場合、Egapは、1重量%のエミッタを含むPMMAフィルムの励起スペクトル及び発光スペクトルが交差するエネルギーとして決定される。
【0066】
第一励起三重項状態T1のエネルギーは、低温、一般的に、77Kにおいて、発光スペクトルの開始から決定される。第一励起一重項状態と、最低三重項状態とが0.4eV以上エネルギー的に分離されたホスト化合物に対し、燐光は、一般的に、2-Me-THF内の定常状態(steady-state)スペクトルにおいて見ることができる。従って、三重項エネルギーは、燐光スペクトルの開始としても決定される。TADFエミッタ分子に対し、第一励起三重項状態T1のエネルギーは、他に明示されない限り、10重量%のエミッタを含む、本発明による有機分子の場合には1重量%の本発明による有機分子を含む、PMMAフィルムにおいて測定された77Kでの遅延発光スペクトルの開始から決定される。ホスト及びエミッタ化合物のいずれについても、第一励起一重項状態S1のエネルギーは、他に明示されない限り、10重量%のホストまたはエミッタ化合物を含む、本発明による有機分子の場合には1重量%の本発明による有機分子を含む、PMMAフィルムにおいて測定された発光スペクトルの開始から決定される。
【0067】
発光スペクトルの開始は、発光スペクトルに対する接線と、x軸との交差点とを計算して決定される。該発光スペクトルに対する接線は、発光バンドの高エネルギー側と、発光スペクトルの最大強度の最大半分地点とにおいて設定される。
【0068】
一実施形態において、本発明による有機分子は、室温で1重量%の有機分子を含むPMMAフィルムにおいて、エネルギー的に最大発光に近い発光スペクトルの開始を有し、すなわち、発光スペクトルの開始と最大発光のエネルギーとのエネルギー差は、0.14eV未満、好ましくは、0.13eV未満、またはさらに好ましくは、0.12eV未満であり、かつ前記有機分子の半値幅(FWHM)は、0.23eV未満、好ましくは、0.20eV未満、より好ましくは、0.19eV未満、より一層好ましくは、0.18eV未満、またはさらに好ましくは、0.17eV未満であるので、結果として、CIEy座標は、0.20未満、好ましくは、0.18未満、より好ましくは、0.16未満、またはさらに好ましくは、0.14未満である。
【0069】
本発明の更なる側面は、光電子素子において、発光エミッタまたは吸収体及び/またはホスト物質及び/または電子輸送物質及び/または正孔注入物質及び/または正孔阻止材料としての本発明による有機分子の用途に係わるものである。
【0070】
好ましい一実施形態は、光電子素子において、発光エミッタとしての本発明による有機分子の用途に係わるものである。
【0071】
光電子素子は、最も広い意味において、可視光線または近紫外線(UV)の範囲、すなわち、380~800nmの波長範囲において、光を発光するのに適している有機材料を基盤とする任意の素子としても理解される。さらに好ましくは、該光電子素子は、可視光線範囲、すなわち、400nm~800nmの光を発光することができる。
【0072】
そのような用途と係わり、光電子素子は、さらに具体的には、下記からなる群から選択される:
・有機発光ダイオード(OLED)
・発光電気化学電池
・OLEDセンサ、特に、外部と完全に遮断されていないガスセンサ及び蒸気センサ
・有機ダイオード
・有機太陽電池
・有機トランジスタ
・有機電界効果トランジスタ
・有機レーザ
・下向き変換素子
そのような用途と係わり、好ましい実施形態において、該光電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学電池(LEC)及び発光トランジスタからなる群から選択された素子である。
【0073】
前記用途の場合、光電子素子、さらに特にOLED内の発光層において、本発明による有機分子の分率は、0.1重量%~99重量%、さらに特に1重量%~80重量%である。他の実施形態において、発光層内の前記有機分子の割合は、100重量%である。
【0074】
一実施形態において、発光層は、本発明による有機分子だけではなく、三重項(T1)エネルギー準位及び一重項(S1)エネルギー準位が、前記有機分子の三重項(T1)エネルギー準位及び一重項(S1)エネルギー準位より高いホスト物質をさらに含む。
【0075】
本発明の更なる側面は、下記のものを含むか、あるいはそれからなる組成物に係わるものである:
(a)エミッタ形態及び/またはホスト形態の本発明による1以上の有機分子
(b)本発明による有機分子と異なる1以上のエミッタ物質及び/またはホスト物質
(c)選択的に、1以上の染料及び/または1以上の溶媒。
【0076】
一実施形態において、発光層は、下記のものを含むか、あるいは下記からなる組成物を含むか、あるいは本質的にそれからなる。
(a)特に、エミッタ形態及び/またはホスト形態の本発明による1以上の有機分子
(b)本発明による有機分子と異なる1以上のエミッタ物質及び/またはホスト物質
(c)選択的に、1以上の染料及び/または1以上の溶媒。
【0077】
特定実施形態において、発光層EMLは、下記のものを含むか、あるいは下記からなる組成物を含むか、あるいは本質的にそれからなる。
(i)0.1~10重量%、好ましくは、0.5~5重量%、特に、1~3重量%の本発明による1以上の有機分子
(ii)5~99重量%、好ましくは、15~85重量%、特に、20~75重量%の1以上のホスト化合物H
(iii)本発明による分子の構造と異なる構造を有する、0.9~94.9重量%、好ましくは、14.5~80重量%、特に、24~77重量%の1以上の追加ホスト化合物D
(iv)選択的に、0~94重量%、好ましくは、0~65重量%、特に、0~50重量%の溶媒
(v)選択的に、本発明による分子の構造と異なる構造を有する、0~30重量%、特に、0~20重量%、好ましくは、0~5重量%の少なくとも1つの追加エミッタ分子F。
【0078】
好ましくは、エネルギーが、ホスト化合物Hから、本発明による1以上の有機分子に伝達され、特に、ホスト化合物Hの第一励起三重項状態T1(H)から、本発明による1以上の有機分子Eの第一励起三重項状態T1(E)に伝達され、及び/または、ホスト化合物Hの第一励起一重項状態S1(H)から、本発明による1以上の有機分子Eの第一励起一重項状態S1(E)に伝達される。
【0079】
一実施形態において、ホスト化合物Hは、-5~-6.5eV範囲のエネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)を有し、少なくとも1つの追加ホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)を有する最高被占軌道HOMO(D)を有し、ここで、EHOMO(H)>EHOMO(D)である。
【0080】
更なる実施形態において、ホスト化合物Hは、エネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、少なくとも1つの追加ホスト化合物Dは、エネルギーELUMO(D)を有する最低空軌道LUMO(D)を有し、ここで、ELUMO(H)>ELUMO(D)である。
【0081】
一実施形態において、ホスト化合物Hは、エネルギーEHOMO(H)を有する最高被占軌道HOMO(H)、及びエネルギーELUMO(H)を有する最低空軌道LUMO(H)を有し、
少なくとも1つの追加ホスト化合物Dは、エネルギーEHOMO(D)を有する最高被占軌道HOMO(D)、及びエネルギーELUMO(D)を有する最低空軌道LUMO(D)を有し、
本発明による有機分子Eは、エネルギーEHOMO(E)を有する最高被占軌道HOMO(E)、及びエネルギーELUMO(E)を有する最低空軌道LUMO(E)を有し、
ここで、
EHOMO(H)>EHOMO(D)であり、本発明による有機分子Eの最高被占軌道HOMO(E)のエネルギー準位(EHOMO(E))と、ホスト化合物Hの最高被占軌道HOMO(H)のエネルギー準位(EHOMO(H))との差は、-0.5eV~0.5eV、より好ましくは、-0.3eV~0.3eV、より一層好ましくは、-0.2eV~0.2eV、さらに好ましくは、-0.1eV~0.1eVであり、
ELUMO(H)>ELUMO(D)であり、本発明による有機分子Eの最低空軌道LUMO(E)のエネルギー準位(ELUMO(E))と、少なくとも1つの追加ホスト化合物Dの最低空軌道LUMO(D)のエネルギー準位(ELUMO(D))との差は、-0.5eV~0.5eV、より好ましくは、-0.3eV~0.3eV、より一層好ましくは、-0.2eV~0.2eV、さらに好ましくは、-0.1eV~0.1eVである。
【0082】
本発明の一実施形態において、ホスト化合物D及び/またはホスト化合物Hは、熱活性化遅延蛍光(TADF)物質である。TADF物質は、2500cm-1未満の、第一励起一重項状態(S1)と第一励起三重項状態(T1)との間のエネルギー差に該当するΔEST値を示す。好ましくは、TADF物質は、3000cm-1未満、さらに好ましくは、1500cm-1未満、より一層好ましくは、1000cm-1未満、さらに好ましくは、500cm-1未満のΔEST値を示す。
【0083】
一実施形態において、ホスト化合物Dは、TADF物質であり、ホスト化合物Hは、2500cm-1より大きいΔEST値を示す。特定実施形態において、ホスト化合物Dは、TADF物質であり、ホスト化合物Hは、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールからなる群から選択される。
【0084】
一実施形態において、ホスト化合物Hは、TADF物質であり、ホスト化合物Dは、2500cm-1より大きいΔEST値を示す。特定実施形態において、ホスト化合物Hは、TADF物質であり、ホスト化合物Dは、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)及び/または2,4,6-トリス(9,9′-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)からなる群から選択される。
【0085】
更なる側面において、本発明は、本明細書に記載された類型の有機分子または組成物を含む光電子素子、より具体的には、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学電池、OLEDセンサ、特に、外部と完全に遮断されていないガスセンサ及び蒸気センサ、有機ダイオード、有機太陽電池、有機トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、有機レーザ及び下向き変換素子からなる群から選択された素子に係わるものである。
【0086】
好ましい実施形態において、光電子素子は、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学電池(LEC)及び発光トランジスタからなる群から選択される素子である。
【0087】
本発明の光電子素子の一実施形態において、本発明による有機分子Eは、発光層EMLにおいて発光物質として使用される。
【0088】
本発明の光電子素子の一実施形態において、発光層EMLは、本明細書で記載された本発明による組成物からなる。
【0089】
光電子素子がOLEDである場合、例えば、次のような層構造を有することができる。
1.基板
2.アノード層A
3.正孔注入層(HIL)
4.正孔輸送層(HTL)
5.電子阻止層(EBL)
6.発光層(EML)
7.正孔阻止層(HBL)
8.電子輸送層(ETL)
9.電子注入層(EIL)
10.カソード層
ここで、該OLEDは、HIL、HTL、EBL、HBL、ETL及びEILの群から選択された各層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0090】
さらに、前記光電子素子は、一実施形態において、例えば、水分、蒸気及び/またはガスを含む環境内の有害物質に対する損傷露出から素子を保護する、少なくとも1層の保護層を含むものでもある。
【0091】
本発明の一実施形態において、光電子素子は、下記の反転層(inverted layer)構造を有するOLEDである。
1.基板
2.カソード層
3.電子注入層(EIL)
4.電子輸送層(ETL)
5.正孔阻止層(HBL)
6.発光層B
7.電子阻止層(EBL)
8.正孔輸送層(HTL)
9.正孔注入層(HIL)
10.アノード層A
ここで、該OLEDは、HIL、HTL、EBL、HBL、ETL及びEILの群から選択された各層を選択的に含み、異なる層が併合され、該OLEDは、前述のところで定義された各層類型のうち1層以上の層を含むものでもある。
【0092】
本発明の一実施形態において、光電子素子は、積層構造を有することができるOLEDである。前記構造においては、OLEDが並んで配される一般的な配置とは異なり、個別ユニットが互いの上に積層される。混合光は、積層構造を示すOLEDによって生成され、特に、白色光は、青色OLED、緑色OLED及び赤色OLEDを積層して生成される。また、積層構造を示すOLEDは、電荷生成層(CGL)を含んでもよく、それは、一般的に、2個のOLEDサブユニット間に位置し、一般的に、n-ドーピングされた層及びp-ドーピングされた層として構成される。一般的に、1つのCGLのn-ドーピングされた層がアノード層にさらに近く位置する。
【0093】
本発明の一実施形態において、光電子素子は、アノードとカソードとの間に、2層以上の発光層を含むOLEDである。特に、いわゆるタンデムOLEDは、3層の発光層を含み、ここで、1層の発光層は、赤色光を発光し、1層の発光層は、緑色光を発光し、1層の発光層は、青色光を発光し、選択的に、個々の発光層間に、電荷生成層、電荷阻止層または電荷輸送層のような追加層を含んでもよい。更なる実施形態において、該発光層は、隣接するように積層される。更なる実施形態において、該タンデムOLEDは、それぞれの2層の発光層間に電荷生成層を含む。また、隣接した発光層、または電荷生成層によって分離した発光層が併合されうる。
【0094】
前記基板は、任意の材料、または該材料の組成物によっても形成される。ほとんど、ガラススライドが基板として使用される。代案としては、薄い金属層(例えば、銅、金、銀またはアルミニウムフィルム)、またはプラスチックフィルムやプラスチックスライドが使用されうる。それは、さらに高レベルの柔軟性を許容することができる。アノード層Aは、ほとんど(本質的に)透明なフィルムを得ることができる材料によって構成される。OLEDからの発光を許容するために、二電極のうち少なくとも一つは、(本質的に)透明ではなければならないので、アノード層Aまたはカソード層Cのうち一層は透明である。好ましくは、アノード層Aは、透明伝導性酸化物(TCOs)を多量含むか、あるいはそれからなる。そのようなアノード層Aは、例えば、インジウムスズ酸化物、アルミニウム亜鉛酸化物、フッ素ドーピングされたスズ酸化物、インジウム亜鉛酸化物、PbO、SnO、ジルコニウム酸化物、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、タングステン酸化物、黒鉛、ドーピングされたSi、ドーピングされたGe、ドーピングされたGaAs、ドーピングされたポリアニリン、ドーピングされたポリピロール及び/またはドーピングされたポリチオフェンを含むものでもある。
【0095】
アノード層Aは、(本質的に)インジウムスズ酸化物(ITO)(例えば、(InO3)0.9(SnO2)0.1)で構成される。透明伝導性酸化物(TCO)によるアノード層Aの粗さは、正孔注入層(HIL)を使用することによっても緩和される。また、該HILは、TCOから正孔輸送層(HTL)への類似電荷キャリア(すなわち、正孔)の輸送が促進されるという点において、類似電荷キャリアの注入が容易となる。 正孔注入層(HIL)は、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、MoO2、V2O5、CuPCまたはCuI、特に、PEDOT及びPSSの混合物を含むものでもある。正孔注入層(HIL)は、また、アノード層Aから正孔輸送層(HTL)に金属が拡散することを防止することができる。例えば、該HILは、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)、ポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、4,4′,4"-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)、2,2′,7,7′-テトラキス(n,n-ジフェニルアミノ)-9,9′-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、N1,N1′-(ビフェニル-4,4′-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン(DNTPD)、N,N′-ニス-(1-ナフタレニル)-N,N′-ビス-フェニル-(1,1′-ビフェニル)-4,4′-ジアミン(NPB)、N,N′-ジフェニル-N,N′-ジ-[4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル]ベンジジン(NPNPB)、N,N,N′,N′-テトラキス(4-メトキシフェニル)ベンジジン(MeO-TPD)、1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレン-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)及び/またはN,N′-ジフェニル-N,N′-ビス-(1-ナフチル)-9,9′-スピロビフルオレン-2,7-ジアミン(Spiro-NPD)によっても構成される。
【0096】
アノード層Aまたは正孔注入層(HIL)に隣接し、一般的に、正孔輸送層(HTL)が位置する。ここで、任意の正孔輸送化合物が使用されうる。例えば、トリアリールアミン及び/またはカルバゾールのような、電子が豊富なヘテロ芳香族化合物が、正孔輸送化合物としても使用される。該HTLは、アノード層Aと発光層(EML)との間のエネルギー障壁を低減させることができる。該正孔輸送層(HTL)は、また、電子阻止層(EBL)でもある。好ましくは、該正孔輸送化合物は、比較的高いエネルギー準位の三重項状態T1を有する。例えば、正孔輸送層(HTL)は、トリス(4-カルバゾリル-9-イルフェニル)アミン(TCTA)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(poly-TPD)、ポリ(4-ブチルフェニル-ジフェニルアミン)(α-NPD)、4,4′-シクロヘキシリデン-ビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン](TAPC)、4,4′,4"-トリス[2-ナフチル(フェニル)-アミノ]トリフェニルアミン(2-TNATA)、Spiro-TAD、DNTPD、NPB、NPNPB、MeO-TPD、HAT-CN及び/または9,9′-ジフェニル-6-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H,9′H-3,3′-ビカルバゾール(TrisPcz)のような星状のヘテロ環を含むものでもある。また、該HTLは、有機正孔輸送マトリックス内の無機または有機ドーパントによっても構成されるp-ドーピングされた層を含むものでもある。該無機ドーパントとしては、例えば、バナジウム酸化物、モリブデン酸化物またはタングステン酸化物のような遷移金属酸化物が使用されうる。該有機ドーパントとしては、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)、銅-ペンタフルオロ安息香酸(Cu(I)pFBz)または遷移金属錯体が使用されうる。
【0097】
EBLは、例えば、1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン(mCP)、TCTA、2-TNATA、3,3-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(mCBP)、tris-Pcz、9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-カルバゾール(CzSi)及び/または N,N′-ジカルバゾリル-1,4-ジメチルベンゼン(DCB)を含むものでもある。
【0098】
正孔輸送層(HTL)に隣接し、発光層(EML)が一般的に位置する。発光層(EML)は、少なくとも1つの発光分子を含む。特に、該EMLは、本発明による1以上の発光分子Eを含む。一実施形態において、発光層は、本発明による有機分子のみを含む。一般的に、EMLは、1以上のホスト物質Hをさらに含む。例えば、ホスト物質Hは、4,4′-ビス-(N-カルバゾリル)-ビフェニル(CBP)、mCP、mCBP、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、CzSi、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキサイド(DPEPO)、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾール、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)及び/または2,4,6-トリス(9,9′-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)のうち選択される。ホスト物質Hは、一般的に、有機分子の第1三重項(T1)エネルギー準位及び第1一重項(S1)エネルギー準位よりエネルギー的にさらに高い第1三重項(T1)エネルギー準位及び第1一重項(S1)エネルギー準位を示すように選択されなければならない。
【0099】
本発明の一実施形態において、EMLは、少なくとも1つの正孔支配ホスト、及び1つの電子支配ホストを有する、いわゆる、混合ホストシステムを含む。特定実施形態において、該EMLは、正確に1つの本発明による発光有機分子、電子支配ホストとしてT2T、及び正孔支配ホストとして、CBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールのうち選択された1つを含む。更なる実施形態において、該EMLは、50~80重量%、好ましくは、60~75重量%のCBP、mCP、mCBP、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾフラン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3-(ジベンゾチオフェン-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール、9-[3,5-ビス(2-ジベンゾフラニル)フェニル]-9H-カルバゾール及び9-[3,5-ビス(2-ジベンゾチオフェニル)フェニル]-9H-カルバゾールから選択されたホスト、10~45重量%、好ましくは、15~30重量%のT2T、及び5~40重量%、好ましくは、10~30重量%の本発明による発光分子を含む。
【0100】
発光層(EML)に隣接し、電子輸送層(ETL)が位置しうる。ここで、任意の電子輸送体が使用されうる。例示的には、ベンズイミダゾール、ピリジン、トリアゾール、オキサジアゾール(例えば、1,3,4-オキサジアゾール)、ホスフィンオキシド及びスルホンのような電子不足化合物が使用されうる。該電子輸送体は、また、1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)フェニル(TPBi)のような星状のヘテロ環でもある。該ETLは、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq3)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,7-ジ(2,2′-ビピリジン-5-イル)トリフェニル(BPyTP2)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イルトリフェニルシラン(Sif87)、ジベンゾ[b,d]チオフェン-2-イル)ジフェニルシラン(Sif88)、1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン(BmPyPhB)及び/または4,4′-ビス-[2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジニル)]-1,1′-ビフェニル(BTB)を含むものでもある。選択的に、該ETLは、Liqのような物質によってもドーピングされる。該電子輸送層(ETL)は、また、正孔を阻止することができる。または、正孔阻止層(HBL)が導入される。
【0101】
HBLは、例えば、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン=バソクプロイン(BCP)、ビス(8-ヒドロキシ-2-メチルキノリン)-(4-フェニルフェノキシ)アルミニウム(BAlq)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(NBphen)、アルミニウム-トリス(8-ヒドロキシキノリン)(Alq3)、ジフェニル-4-トリフェニルシリルフェニル-ホスフィンオキサイド(TSPO1)、2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T2T)、2,4,6-トリス(トリフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン(T3T)、2,4,6-トリス(9,9′-スピロビフルオレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(TST)及び/または1,3,5-トリス(N-カルバゾリル)ベンゾール/1,3,5-トリス(カルバゾール)-9-イル)ベンゼン(TCB/TCP)を含むものでもある。
【0102】
電子輸送層(ETL)に隣接し、カソード層Cが位置しうる。該カソード層Cは、例えば、金属(例えば、Al、Au、Ag、Pt、Cu、Zn、NiFe、Pb、LiF、Ca、Ba、Mg、In、WまたはPd)または金属合金を含むか、あるいはそれからなる。実用的な理由により、該カソード層Cは、Mg、CaまたはAlのような(本質的に)不透明な金属によっても構成される。代案として、あるいはさらには、該カソード層Cは、また、黒鉛及び/または炭素ナノチューブ(CNT)を含むものでもある。代案としては、カソード層Cは、また、ナノスケール銀ワイヤによっても構成される。
【0103】
OLEDは、選択的に、電子輸送層(ETL)とカソード層Cとの間に、保護層(電子注入層(EIL)とも指称される)をさらに含む。該層は、フッ化リチウム、フッ化セシウム、銀、8-ヒドロキシキノリンラトリチウム(Liq)、Li2O、BaF2、MgO及び/またはNaFを含むものでもある。
【0104】
選択的に、電子輸送層(ETL)及び/または正孔阻止層(HBL)は、また、1以上のホスト化合物Hを含むものでもある。
【0105】
発光層EMLの発光スペクトル及び/または吸収スペクトルを追加して修正するために、発光層EMLは、1以上の追加エミッタ分子Fをさらに含んでもよい。そのようなエミッタ分子Fは、当業界に公知された任意のエミッタ分子であってもよい。好ましくは、そのようなエミッタ分子Fは、本発明による分子Eの構造と異なる構造を有する分子である。エミッタ分子Fは、選択的に、TADFエミッタでもある。代案としては、エミッタ分子Fは、選択的に、発光層EMLの発光スペクトル及び/または吸収スペクトルをシフトさせることができる蛍光性及び/またはリン光性のエミッタ分子でもある。例えば、三重項及び/または一重項励起子が、基底状態S0に緩和される前に、本発明によるエミッタ分子からエミッタ分子Fにも伝達され、有機分子によって発光される光と比較し、典型的に、赤色偏移された光を発光することができる。選択的に、エミッタ分子Fは、また二光子効果(すなわち、最大吸収エネルギーの半分である2個の光子の吸収)を誘発することができる。
【0106】
随意に、光電子素子(例えば、OLED)は、例えば、本質的に、白色光電子素子でもある。例えば、そのような白色光電子素子は、少なくとも1つの(深い)青色エミッタ分子、及び緑色光及び/または赤色光を発光する1以上のエミッタ分子を含むものでもある。その後、選択的に、前述のように、2以上の分子間にエネルギー伝達がありうる。
【0107】
本明細書に使用されているように、特定文脈において、さらに具体的に定義されない場合、発光及び/または吸収された光の色相指定は、下記の通りである:
紫色:>380~420nmの波長範囲
濃青色 :>420~480nmの波長範囲
スカイブルー色:>480~500nmの波長範囲
緑色:>500~560nmの波長範囲
黄色:>560~580nmの波長範囲
オレンジ色 :>580~620nmの波長範囲
赤色:>620~800nmの波長範囲
エミッタ分子と係わり、そのような色相は最大発光を示す。従って、例えば、濃青色エミッタは、>420~480nm範囲で最大発光を有し、スカイブルー色エミッタは、>480~500nm範囲で最大発光を有し、緑色エミッタは、>500~560nm範囲で最大発光を有し、赤色エミッタは、>620~800nm範囲で最大発光を有する。
【0108】
濃青色エミッタは、好ましくは、480nm未満、より好ましくは、470nm未満、より一層好ましくは、465nm未満、さらに好ましくは、460nm未満の最大発光を有することができる。最大発光は、典型的に、420nm超、好ましくは、430nm超、より好ましくは、440nm超、さらに好ましくは、450nm超である。
【0109】
従って、本発明の更なる側面は、1000cd/m2において、8%超、好ましくは、10%超、より好ましくは、13%超、より一層好ましくは、15%超、さらに好ましくは、20%超の外部量子効率を示すOLED、420nm~500nm、好ましくは、430nm~490nm、より好ましくは、440nm~480nm、より一層好ましくは、450nm~470nmにおいて最大発光を示すOLED、及び/または、500cd/m2において、100h超、好ましくは、200h超、より好ましくは、400h超、より一層好ましくは、750h超、さらに好ましくは、1000h超のLT80値を示すOLEDに係わるものである。従って、本発明の更なる側面は、発光が0.45未満、好ましくは、0.30未満、より好ましくは、0.20未満、より一層好ましくは、0.15未満、さらに好ましくは、0.10未満のCIEy色座標を示すOLEDに係わるものである。
【0110】
本発明のさらに他の側面は、明確な色点で光を発光するOLEDに係わるものである。本発明によれば、OLEDは、狭い発光帯域(小さい半値幅(FWHM))を有する光を発光する。一側面において、本発明によるOLEDは、0.30eV未満、好ましくは、0.25eV未満、より好ましくは、0.20eV未満、より一層好ましくは、0.19eV未満、さらに好ましくは、0.17eV未満の、主発光ピークのFWHMを有する光を発光する。
【0111】
本発明のさらに他の側面は、ITU-R Recommendation BT.2020(Rec.2020)によって定義されているような原色青色(CIEx=0.131及びCIEy=0.046)のCIEx(=0.131)及びCIEy(=0.046)の色座標に近いCIEx及びCIEyの色座標を有する光を発光し、UHD(Ultra High Definition)ディスプレイ、例えば、UHD-TVに使用するのに適しているOLEDに係わるものである。従って、本発明の更なる側面は、発光が、0.02~0.30、好ましくは、0.03~0.25、より好ましくは、0.05~0.20、より一層好ましくは、0.08~0.18、さらに好ましくは、0.10~0.15のCIEx色座標、及び/または0.00~0.45、好ましくは、0.01~0.30、より好ましくは、0.02~0.20、より一層好ましくは、0.03~0.15、さらに好ましくは、0.04~0.10のCIEy色座標を示すOLEDに係わるものである。
【0112】
更なる側面において、本発明は、光電子部品の製造方法に係わるものである。この場合、本発明の有機分子が使用される。
【0113】
光電子素子、特に、本発明によるOLEDは、任意の手段の気相蒸着及び/または状工程によっても製造される。従って、少なくとも1層は、
-昇華工程によって製造されるか、
-有機気相蒸着工程によって製造されるか、
-キャリアガス昇華工程によって製造されるか、
-溶液処理またはプリントされる。
【0114】
光電子素子、特に、本発明によるOLEDを製造するのに使用される方法は、当業界に公知されている。異なる層は、後続の蒸着工程により、適切な基板上に、個々に連続して蒸着される。個々の層は、同一であるか、あるいは異なる蒸着方法を使用して蒸着することができる。
【0115】
例えば、該気相蒸着工程は、熱(共)蒸着、化学的気相蒸着及び物理的気相蒸着を含む。アクティブマトリックスOLEDディスプレイの場合、AMOLEDバックプレーンが基板として使用される。個々の層は、適切な溶媒を使用する溶液または分散液からも処理される。例えば、溶液蒸着工程には、スピンコーティング、ディップコーティング及びジェットプリンティングが含まれる。溶液処理は、選択的に、不活性雰囲気(例えば、窒素雰囲気)において遂行され、該溶媒は、当業界に公知の手段により、完全にまたは部分的に除去される。
【0116】
実施例
一般的な合成スキームI
一般的な合成スキームIは、RI=RX、RII=RIX、RIII=RVIII、RIV=RVII、RV=RVI、T=X及びV=Wである有機分子に対する合成スキームを提供する。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
E1(1.00当量)、アニリン(E2 2.20当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムPd2(dba)3(0.01当量、CAS:51364-51-3)、トリ-tert-ブチルホスフィンP(tBu)3(0.04当量、CAS:13716-12-6)及びナトリウムtert-ブトキシドNaOtBu(4.20当量、CAS:865-48-5)を窒素雰囲気下、トルエン中において90℃で撹拌する。室温(rt)に冷却した後、反応混合物をトルエン及び塩水で抽出し、相を分離する。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させた後、溶媒を減圧下で取り除く。得られた未精製生成物(crude product)を再結晶化またはカラムクロマトグラフィによって精製し、生成物I1を固体として得る。
【0123】
【0124】
I1(1.00当量)、E3(2.10当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムPd2(dba)3(0.01当量、CAS:51364-51-3)、トリ-tert-ブチルホスフィンP(tBu)3(0.04当量、CAS:13716-12-6)及びナトリウムtert-ブトキシドNaOtBu(4.00当量、CAS:865-48-5)を窒素雰囲気下、トルエン中において110℃で撹拌する。室温(rt)に冷却した後、反応混合物をトルエン及び塩水で抽出し、相を分離する。合わせた有機相をMgSO4上で乾燥させた後、溶媒を減圧下で取り除く。得られた未精製生成物を再結晶化またはカラムクロマトグラフィによって精製し、生成物I2を固体として得る。
【0125】
合成AAV3のための一般的な手順:
【化39】
I2(1.00当量)を窒素雰囲気下、tBu-ベンゼン中において40℃で撹拌する。tert-ブチルリチウム(
tBuLi、2.20当量、CAS594-19-4)を滴加し、反応物を50℃に加熱する。室温でホウ酸トリメチル(6当量、CAS121-43-7)を徐々に添加し、リチウム化を止める(quenching)。反応混合物を60℃で2時間加熱した後、反応混合物を室温に冷却する。水を添加し、混合物をさらに2時間撹拌する。エチルアセテートで抽出した後、有機相をMgSO
4上で乾燥させた後、溶媒を減圧下で取り除く。得られた未精製生成物を再結晶化またはカラムクロマトグラフィによって精製し、生成物I3を固体として得る。
【0126】
【0127】
I3(1.00当量)を窒素雰囲気下、クロロベンゼン中において撹拌する。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(10.0当量、CAS7087-68-5)及び塩化アルミニウム(AlCl3、10.0当量、CAS7446-70-0)を添加し、反応混合物を120℃に加熱する。60分後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.00当量、CAS7087-68-5)及び塩化アルミニウム(AlCl3、5.00当量、CAS7446-70-0)を添加し、反応混合物を1.5時間撹拌する。室温に冷却させた後、反応混合物をDCMと水との間で抽出する。有機相をMgSO4上で乾燥させた後、溶媒を減圧下で取り除く。未精製生成物P1は、再結晶化またはカラムクロマトグラフィによってさらに精製される。
【0128】
【0129】
E4(1.00当量)、E5(1.50当量)、トリス(ジベンジリデンアセトン)-ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3、0.005当量、CAS51364-51-3)、2-ジシクロへキシルホスフィノ-2′,4′,6′-トリ-イソプロピル-1,1′-ビフェニル(0.02当量、X-Phos、CAS564483-18-7)及びリン酸三カリウム(K3PO4、2.00当量、CAS7778-53-2)を窒素雰囲気でトルエン/水(4:1、体積)内において懸濁させる。反応が完了するまで、混合物を110℃に加熱する。室温に冷却させた後、相を分離し、水相をエチルアセテートで抽出する。合わせた有機層を活性炭/celite(R)/MgSO4の1:1:1混合物と共に室温で15分間撹拌し、濾過し、濃縮させる。未精製物質を再結晶化によって精製し、E2を得る。
【0130】
循環電圧電流法
循環電圧電流度は、ジクロロメタン、または好適な溶媒、及び好適な支持電解質(例:0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート)において、有機分子の濃度が10-3mol/Lである溶液で測定される。該測定は、3電極アセンブリ(作用電極及び相対電極:Ptワイヤ、基準電極:Ptワイヤ)を使用し、窒素雰囲気において、室温で行い、内部標準として、FeCp2/FeCp2
+を使用して補正する。HOMOデータは、飽和カロメル電極(SCE)に係わる内部標準として、ペロセンを使用して修正された。
【0131】
密度関数理論計算
分子構造は、BP86関数及びRI(Resolution of Identity)アプローチを使用して最適化された。励起エネルギーは、(BP86)最適化された構造を使用して、TD-DFT(Time-Dependent DFT)方法でもって計算される。軌道エネルギー及び励起状態エネルギーは、B3LYP関数により計算される。数値積分のために、Def2-SVP基本セット及びm4-gridが使用される。Turbomoleプログラムパッケージは、全ての計算に使用される。
【0132】
光物理的測定
試料前処理:スピンコーティング
装置:Spin150、SPSeuro
試料濃度は、適切な溶媒に溶解された10mg/mlである。
【0133】
プログラム:1)400U/分で3秒、1,000U/分で20秒(1,000Upm/s)。3)4,000U/分で10秒(1,000Upm/s)。コーティングを行った後、フィルムを70℃で1分間乾燥させた。
【0134】
フォトルミネセンス分光法及び時間相関単一光子係数(TCSPC)
定常状態発光分光法は、150Wのキセノン-Arcランプ、励起及び発光単色器、Hamamatsu R928光電子増配管及び時間相関単一光子計数オプションが装着されたModel FluoroMax-4(Horiba Scientific)を使用して記録される。標準補正フィット(standard correction fits)を使用し、発光スペクトル及び励起スペクトルを補正する。
【0135】
励起状態寿命は、FM-2013装備及びHoriba Yvon TCSPCハブと共に、TCSPC方法を使用する同一システムを使用して決定される。
【0136】
励起光源:
NanoLED 370(波長:371nm、パルス持続時間:1.1ns)
NanoLED 290(波長:294nm、パルス持続時間:<1ns)
SpectraLED 310(波長:314nm)
SpectraLED 355(波長:355nm)
データ分析(指数フィット)は、ソフトウェア製品群DataStation及びDAS6分析ソフトウェアを使用して行われる。フィット(fit)は、カイ二乗検定(chi-squared-test)を使用して特定される。
【0137】
フォトルミネセンス量子収率測定
フォトルミネセンス量子収率(PLQY)測定のために、Absolute PL量子収率測定C9920-03Gシステム(浜松ホトニクス)が使用されている。量子収率及びCIE座標は、ソフトウェアU6039-05バージョン3.6.0を使用して決定された。
【0138】
最大発光はnmで示され、量子収率Φは%で示され、CIE座標はx,y値で示される。
【0139】
PLQYは、次のプロトコルを使用して決定される:
1)品質保証:エタノール中におけるアントラセン(知られた濃度)を基準に使用する。
2)励起波長:有機分子の最大吸収が決定され、該波長を使用し、分子が励起される。
3)測定
量子収率は、窒素雰囲気において、溶液またはフィルム試料について測定される。収率は、次の方程式を使用して計算される。
【0140】
【数1】
ここで、n
光子は、光子数を示し、Intは、強度を示す。
【0141】
光電子素子の製造及び特性化
本発明による有機分子を含む光電子素子、特にOLED素子は、真空蒸着方法によっても製造される。層が1以上の化合物を含む場合、1以上の化合物の重量百分率は%で示される。総重量百分率値は100%であるので、値が指定されていない場合、該化合物の割合は、指定された値と100%との差に等しくなる。
【0142】
完全に最適化されていないOLEDは、標準方法を使用してエレクトロルミネセンススペクトルを測定し、光ダイオードによって検出された光及び電流を使用して計算された、強度及び電流に依存する外部量子効率(%)を測定して特性化される。OLED素子の寿命は、一定電流密度で動作する間、輝度の変化から抽出される。LT50値は、測定輝度が、初期輝度の50%に低減した時間に該当し、同様に、LT80は、測定輝度が、初期輝度の80%に低減した時点に該当し、LT95は、測定輝度が、初期輝度の95%に低減した時点に該当する。
【0143】
加速寿命測定が行われる(例:増大した電流密度適用)。例えば、500cd/m2において、LT80値は、次の式を使用して決定される。
【0144】
【0145】
ここで、L0は、印加された電流密度における初期輝度を示す。
値は、複数のピクセル(一般的に、2~8個)の平均に該当し、当該ピクセル間の標準偏差が提供される。
【0146】
HPLC-MS
HPLC-MS分析は、MS-検出器(Thermo LTQ XL)があるAgilentのHPLC(1100シリーズ)で行われる。
【0147】
一般的なHPLC方法は、次の通りである。Agilent(ZORBAX Eclipse Plus 95Å C18、4.6×150mm、3.5μm HPLCカラム)から、逆相カラム4.6mm×150mm、及び粒子サイズ3.5μmがHPLCに使用される。HPLC-MS測定は、勾配により、室温(rt)で行われる。
【0148】
【0149】
【0150】
0.5mg/mL濃度の分析物溶液から、注入体積5μLを測定のために取った。
プローブのイオン化は、陽(APCI+)イオン化モードまたは陰(APCI-)イオン化モードにおいて、APCI(大気圧化学イオン化)ソースを使用して行われる。
【0151】
【0152】
実施例1を下記によって合成した。
AAV5(44%収率)E4として4-tert-ブチル-3-クロロアニリン(CAS 52756-36-2)、及びE5としてフェニルボロン酸(CAS 98-80-6)を使用;
AAV1(52%)E1として4-クロロ-3,5-ジブロモトルエン(CAS 202925-05-1)を使用;
AAV2(69%収率)E3として1-ブロモ-3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン(CAS 22385-77-9)を使用;
AAV3(26%収率)及び
AAV4(15%収率)。
【0153】
MS(HPLC-MS)、m/z(滞留時間):924.4(8.75分)
実施例1(PMMA内の2重量%)の最大発光は461nmであり、半値幅(FWHM)は0.16eVであり、CIEy座標は0.11である。フォトルミネセンス量子収率(PLQY)は77%である。
【0154】
実施例D1
実施例1を以下の層構造で製作されたOLED D1で試した:
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
OLED D1は、1000cd/m2において、外部量子効率(EQE)が11.1%である。3.7Vにおいて、最大発光は465nmであり、FWHMは28nmである。当該CIEx値は0.13であり、CIEy値は0.10である。LT95値は、1200cd/m2において、12時間と決定された。
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】