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特許7658992複合材料、半導体パッケージ及び複合材料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】複合材料、半導体パッケージ及び複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20250401BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20250401BHJP
   B32B 15/01 20060101ALI20250401BHJP
   C22C 9/00 20060101ALI20250401BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20250401BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20250401BHJP
   B22F 3/26 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H01L23/36 C
B32B15/01 H
C22C9/00
C22C27/04 102
B22F7/04 G
B22F3/26 C
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022571545
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047541
(87)【国際公開番号】W WO2022138711
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2024-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2020214612
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 徹
(72)【発明者】
【氏名】宮永 美紀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】平井 慧
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正幸
(72)【発明者】
【氏名】山形 伸一
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-142126(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182385(WO,A1)
【文献】特開平6-268117(JP,A)
【文献】特許第6732395(JP,B1)
【文献】特開2019-96654(JP,A)
【文献】特開2006-60247(JP,A)
【文献】特開2007-115731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
H01L 23/36
B32B 15/01
C22C 9/00
C22C 27/04
B22F 7/04
B22F 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面と、前記第1表面の反対面である第2表面とを有する板状の複合材料であって、
複数の第1層と、
少なくとも1つの第2層とを備え、
前記第1層及び前記第2層は、前記第1層が前記第1表面及び前記第2表面に位置するように、前記複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されており、
前記第1層は、銅を含む層であり、
前記第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層であり、
前記第1表面に位置する前記第1層及び前記第2表面に位置する前記第1層には、50MPa以下の圧縮残留応力が作用している、複合材料。
【請求項2】
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記第1層の数及び前記第2層の数の合計は、5以上であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上である、請求項1又は請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
800℃で15分間保持する前において、前記複合材料の温度を室温から800℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記第1表面に位置する前記第1層及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの25パーセント以下であり、
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの10パーセント超であり、
前記第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であり、
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比は13パーセント超43パーセント未満である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記第1表面に位置する前記第1層中及び前記第2表面に位置する前記第1層中における銅の体積比は、90パーセント以上であり、
前記第1表面に位置する前記第1層の厚さ及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの15パーセント以上である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの18パーセント以上であり、
800℃で15分間の保持を行う前後での前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
第1表面と、前記第1表面の反対面である第2表面とを有する板状の複合材料であって、
複数の第1層と、
少なくとも1つの第2層とを備え、
前記第1層及び前記第2層は、前記第1層が前記第1表面及び前記第2表面に位置するように、前記複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されており、
前記第1層は、銅を含む層であり、
前記第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上である、複合材料。
【請求項9】
800℃で15分間保持する前において、前記複合材料の温度を室温から800℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下である、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
前記第1層の数及び前記第2層の数の合計は、5以上であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上である、請求項8又は請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
前記第1表面に位置する前記第1層及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの25パーセント以下であり、
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの10パーセント超であり、
前記第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であり、
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比は、13パーセント超43パーセント未満である、請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項12】
前記第1表面に位置する前記第1層中及び前記第2表面に位置する前記第1層中における銅の体積比は、90パーセント以上であり、
前記第1表面に位置する前記第1層の厚さ及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの15パーセント以上である、請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項13】
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの18パーセント以上であり、
800℃で15分間の保持を行う前後での前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下である、請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項14】
第1表面と、前記第1表面の反対面である第2表面とを有する板状の複合材料と、
前記第1表面上及び前記第2表面上のいずれかにろう付けされているケース部材とを備え、
前記複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層と有し、
前記第1層及び前記第2層は、前記第1層が前記第1表面及び前記第2表面に位置するように、前記複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されており、
前記第1層は、銅を含む層であり、
前記第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層であり、
前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下であり、
前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上であ
前記第1層の数及び前記第2層の数の合計は、5以上であり、
800℃で15分間保持した後において、前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上である、半導体パッケージ。
【請求項15】
前記第1表面に位置する前記第1層及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの25パーセント以下であり、
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの10パーセント超であり、
前記第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であり、
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比は、13パーセント超43パーセント未満である、請求項14に記載の半導体パッケージ。
【請求項16】
前記第1表面に位置する前記第1層中及び前記第2表面に位置する前記第1層中における銅の体積比は、90パーセント以上であり、
前記第1表面に位置する前記第1層の厚さ及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの15パーセント以上である、請求項14又は請求項15に記載の半導体パッケージ。
【請求項17】
第1表面と、前記第1表面の反対面である第2表面とを有する板状の複合材料と、
前記第1表面上及び前記第2表面上のいずれかにろう付けされているケース部材とを備え、
前記複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層と有し、
前記第1層及び前記第2層は、前記第1層が前記第1表面及び前記第2表面に位置するように、前記複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されており、
前記第1層は、銅を含む層であり、
前記第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層であり、
前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下であり、
前記複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上であり、
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの18パーセント以上であり、
800℃で15分間の保持を行う前後での前記複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の前記第1表面及び前記第2表面に平行な方向での前記複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下である半導体パッケージ。
【請求項18】
前記第1表面に位置する前記第1層及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの25パーセント以下であり、
前記第2層の厚さは、前記複合材料の厚さの10パーセント超であり、
前記第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であり、
前記複合材料中におけるモリブデンの体積比は、13パーセント超43パーセント未満である、請求項17に記載の半導体パッケージ。
【請求項19】
前記第1表面に位置する前記第1層中及び前記第2表面に位置する前記第1層中における銅の体積比は、90パーセント以上であり、
前記第1表面に位置する前記第1層の厚さ及び前記第2表面に位置する前記第1層の厚さは、前記複合材料の厚さの15パーセント以上である、請求項17又は請求項18に記載の半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料、半導体パッケージ及び複合材料の製造方法に関する。本出願は、2020年12月24日に出願した日本特許出願である特願2020-214612号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-96654号公報)には、放熱板が記載されている。特許文献1に記載の放熱板は、第1表面と、第2表面とを有している。第2表面は、第1表面の反対面である。特許文献1に記載の放熱板は、複数の銅層と、複数の銅-モリブデン層とを有している。銅層及び銅-モリブデン層は、銅層が放熱板の第1表面及び第2表面に位置するように、放熱板の厚さ方向に沿って交互に積層されている。特許文献1に記載の放熱板は、パッケージ部材に、ろう付けにより接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-96654号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の複合材料は、板状であり、第1表面と、第2表面とを有する。第2表面は、第1表面の反対面である。複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備えている。第1層及び第2層は、第1層が第1表面及び第2表面に位置するように、複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されている。第1層は、銅を含む層である。第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層である。第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層には、50MPa以下の圧縮残留応力が作用している。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、複合材料10の斜視図である。
図2図2は、図1のII-IIにおける断面図である。
図3A図3Aは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第1説明図である。
図3B図3Bは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第2説明図である。
図3C図3Cは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第3説明図である。
図4図4は、複合材料10の放熱性能の評価方法の説明図である。
図5図5は、複合材料10の製造工程図である。
図6図6は、一例としての積層体20の断面図である。
図7図7は、半導体パッケージ100の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
本発明者らが見出した知見によると、特許文献1に記載の放熱板は、ろう付けが行われる際の熱で銅層と銅-モリブデン層との間にクラックが生じることにより、線膨張係数が増大する。
【0007】
本開示は、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数を維持することが可能な複合材料、それを用いた半導体パッケージ及び複合材料の製造方法を提供する。
【0008】
[本開示の効果]
本開示の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数及び高い熱伝導率を維持することができる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一実施形態に係る複合材料は、板状であり、第1表面と、第2表面とを有する。第2表面は、第1表面の反対面である。複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備えている。第1層及び第2層は、第1層が第1表面及び第2表面に位置するように、複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されている。第1層は、銅を含む層である。第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層である。第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層には、50MPa以下の圧縮残留応力が作用している。
【0011】
上記(1)の複合材料では、第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層に作用している圧縮残留応力が小さいため、ろう付けを行うための熱が加わる際に当該圧縮残留応力が開放されても、第1層が大きく変形せず、第1層と第2層との界面にクラックが発生しにくい。そのため、上記(1)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数を維持することができる。
【0012】
(2)上記(1)の複合材料では、800℃で15分間保持した後において、複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数が、6ppm/K以上10ppm/K以下であってもよい。800℃で15分間保持した後において、複合材料の厚さ方向での熱伝導率が、230W/m・K以上であってもよい。
【0013】
上記(2)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数及び高い熱伝導率を維持することができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)の複合材料では、第1層の数及び第2層の数の合計が、5以上であってもよい。800℃で15分間保持した後において、複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上であってもよい。
【0015】
上記(3)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後において、さらに高い熱伝導率を維持することができる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)の複合材料では、800℃で15分間保持する前において、複合材料の温度を室温から800℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数が、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下であってもよい。
【0017】
上記(4)の複合材料によると、複合材料にケース部材のろう付けを行う際、複合材料の線膨張係数とケース部材の線膨張係数との違いに起因してろう材にクラックが発生することを抑制できる。
【0018】
(5)上記(1)から(4)の複合材料では、第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層の厚さが、複合材料の厚さの25パーセント以下であってもよい。第2層の厚さは、複合材料の厚さの10パーセントを超えていてもよい。第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であってもよい。複合材料中におけるモリブデンの体積比が、13パーセント超43パーセント未満であってもよい。
【0019】
(6)上記(1)から(5)の複合材料では、第1表面に位置する第1層中における銅の体積及び第2表面に位置する第1層中における銅の体積比が90パーセント以上であってもよい。第1表面に位置する第1層の厚さ及び第2表面に位置する第1層の厚さが、複合材料の厚さの15パーセント以上であってもよい。
【0020】
上記(6)の複合材料では、第1表面(第2表面)の中央部と第1表面(第2表面)の端部との間の温度差を低減することができる。
【0021】
(7)上記(1)から(6)の複合材料では、第2層の厚さが、複合材料の厚さの18パーセント以上であってもよい。800℃で15分間の保持を行う前後での複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下であってもよい。
【0022】
上記(7)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わることによる線膨張係数の劣化をさらに抑制することができる。
【0023】
(8)本開示の他の実施形態に係る複合材料は、板状であり、第1表面と、第2表面とを有する。第2表面は、第1表面の反対面である。複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層とを備えている。第1層及び第2層は、第1層が第1表面及び第2表面に位置するように、複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されている。第1層は、銅を含む層である。第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層である。複合材料では、800℃で15分間保持した後において、複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数が、6ppm/K以上10ppm/K以下である。800℃で15分間保持した後において、複合材料の厚さ方向での熱伝導率が、230W/m・K以上である。
【0024】
上記(8)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数及び高い熱伝導率を維持することができる。
【0025】
(9)上記(8)の複合材料では、800℃で15分間保持する前において、複合材料の温度を室温から800℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数が、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下であってもよい。
【0026】
上記(9)の複合材料によると、複合材料にケース部材のろう付けを行う際、複合材料の線膨張係数とケース部材の線膨張係数との違いに起因してろう材にクラックが発生することを抑制できる。
【0027】
(10)上記(8)又は(9)の複合材料では、第1層の数及び第2層の数の合計が、5以上であってもよい。800℃で15分間保持した後において、複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上であってもよい。
【0028】
上記(10)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わった後において、さらに高い熱伝導率を維持することができる。
【0029】
(11)上記(8)から(10)の複合材料では、第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層の厚さが、複合材料の厚さの25パーセント以下であってもよい。第2層の厚さは、複合材料の厚さの10パーセントを超えていてもよい。第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であってもよい。複合材料中におけるモリブデンの体積比が、13パーセント超43パーセント未満であってもよい。
【0030】
(12)上記(8)から(11)の複合材料では、第1表面に位置する第1層中における銅の体積及び第2表面に位置する第1層中における銅の体積比が90パーセント以上であってもよい。第1表面に位置する第1層の厚さ及び第2表面に位置する第1層の厚さが、複合材料の厚さの15パーセント以上であってもよい。
【0031】
上記(12)の複合材料では、第1表面(第2表面)の中央部と第1表面(第2表面)の端部との間の温度差を低減することができる。
【0032】
(13)上記(8)から(12)の複合材料では、第2層の厚さが、複合材料の厚さの18パーセント以上であってもよい。800℃で15分間の保持を行う前後での複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下であってもよい。
【0033】
上記(13)の複合材料によると、ろう付けを行うための熱が加わることによる線膨張係数の劣化をさらに抑制することができる。
【0034】
(14)本開示の一実施形態に係る半導体パッケージは、第1表面と、第1表面の反対面である第2表面とを有する板状の複合材料と、第1表面上及び第2表面上のいずれかにろう付けされているケース部材とを備えている。複合材料は、複数の第1層と、少なくとも1つの第2層と有する。第1層及び第2層は、第1層が第1表面及び第2表面に位置するように、複合材料の厚さ方向に沿って交互に積層されている。第1層は、銅を含む層である。第2層は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体の層である。複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下である。複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上である。
【0035】
上記(14)の半導体パッケージによると、ろう付けの際に熱が加わった後においても複合材料の低い線膨張係数及び高い熱伝導率を維持することができる。
【0036】
(15)上記(14)の半導体パッケージでは、第1層の数及び第2層の数の合計が、5以上であってもよい。800℃で15分間保持した後において、複合材料の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上であってもよい。
【0037】
上記(15)の半導体パッケージによると、ろう付けを行うための熱が加わった後において、さらに高い複合材料の熱伝導率を維持することができる。
【0038】
(16)上記(14)又は(15)の半導体パッケージでは、第1表面に位置する第1層及び第2表面に位置する第1層の厚さは、複合材料の厚さの25パーセント以下であってもよい。第2層の厚さは、複合材料の厚さの10パーセントを超えていてもよい。第2層中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上であってもよい。複合材料中におけるモリブデンの体積比は、13パーセント超43パーセント未満であってもよい。
【0039】
(17)上記(14)から(16)の半導体パッケージでは、第1表面に位置する第1層中における銅の体積及び第2表面に位置する第1層中における銅の体積比が、90パーセント以上であってもよい。第1表面に位置する第1層の厚さ及び第2表面に位置する第1層の厚さが、複合材料の厚さの15パーセント以上であってもよい。
【0040】
上記(17)の半導体パッケージによると、第1表面(第2表面)の中央部と第1表面(第2表面)の端部との間の温度差を低減することができる。
【0041】
(18)上記(14)から(17)の複合材料では、第2層の厚さが、複合材料の厚さの18パーセント以上であってもよい。800℃で15分間の保持を行う前後での複合材料の温度を室温から200℃まで変化させた際の第1表面及び第2表面に平行な方向での複合材料の線膨張係数の変化は、0.3ppm/K以下であってもよい。
【0042】
上記(18)の半導体パッケージによると、ろう付けを行うための熱が加わることによる複合材料の線膨張係数の劣化をさらに抑制することができる。
【0043】
(19)本開示の一実施形態に係る複合材料の製造方法は、積層体を準備する工程と、積層体を加熱する工程と、加熱された状態の積層体を圧延する工程とを備えている。積層体は、第1表面と、第1表面の反対面である第2表面とを有する。積層体は、複数の第1板材と、少なくとも1つの第2板材とを有する。第1板材及び第2板材は、第1板材が第1表面及び第2表面に位置するように積層体の厚さ方向に沿って交互に配置されている。第1板材は、銅を含む。第2板材は、銅が含浸されているモリブデン圧粉体である。
【0044】
上記(19)の複合材料の製造方法によると、ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数を維持することが可能な複合材料が得られる。
【0045】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0046】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る複合材料(以下「複合材料10」とする)を説明する。
【0047】
<複合材料10の構成>
図1は、複合材料10の斜視図である。図2は、図1のII-IIにおける断面図である。図1及び図2に示されるように、複合材料10は、板状である。複合材料10は、第1表面10aと、第2表面10bとを有している。第2表面10bは、複合材料10の厚さ方向における第1表面10aの反対面である。
【0048】
複合材料10の厚さを、厚さT1とする。厚さT1は、第1表面10aと第2表面10bとの間の距離である。以下においては、複合材料10の厚さ方向に直交する方向(第1表面10a及び第2表面10bに平行な方向)を、層内方向ということがある。
【0049】
複合材料10は、複数の第1層11と、少なくとも1つの第2層12とを有している。第1層11の数及び第2層12の数の合計は、3以上である。第1層11及び第2層12は、複合材料10の厚さ方向に沿って、交互に積層されている。このことを別の観点から言えば、第2層12は、2つの第1層11に挟み込まれている。
【0050】
第1表面10a及び第2表面10bには、第1層11が位置している。第1表面10aに位置している第1層11を第1層11aとすることがあり、第2表面10bに位置している第1層11を第1層11bとすることがある。
【0051】
第1層11の厚さを、厚さT2とする。第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2は、厚さT1の15パーセント以上であることが好ましい。第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2は、例えば、厚さT1の25パーセント以下である。
【0052】
第1層11は、銅を含む層である。第1層11は、銅の他に、モリブデンを含んでいてもよい。第1層11中における銅の体積比は、例えば、80パーセント以上である。第1層11中における銅の体積比は、90パーセント以上であることが好ましい。第1層11は、純銅であってもよい(第1層11中における銅の体積比が100パーセントであってもよい)。
【0053】
第1層11aに作用している圧縮残留応力及び第1層11bに作用している圧縮残留応力は、50MPa以下である。第1層11aに作用している圧縮残留応力及び第1層11bに作用している圧縮残留応力は、好ましくは、40MPa以下である。第1層11aに作用している圧縮残留応力及び第1層11bに作用している圧縮残留応力は、X線回折法(より具体的には、sinφ法)により測定される。
【0054】
第1層11a(第1層11b)に作用している圧縮残留応力を測定するサンプルの準備では、第1に、複合材料10から、幅1mm及び長さ5mmの測定用サンプルが、切り出される。測定用サンプルの幅方向及び長さ方向は、複合材料10の厚さ方向と直交している。
【0055】
第2に、20個の測定サンプルが互いに接触するように平面上に並べられる。この際、測定サンプルは、複合材料10の厚さ方向に平行な断面が上方を向くように並べられる。また、この際、測定サンプルは、測定サンプルの長さ方向において2列をなすように並べられる。
【0056】
第3に、並べられた測定サンプルの上面が研磨される。この研磨は、各々の測定サンプルの上面の間の段差が0.1mm以下になるように行われる。このようにして準備された測定サンプルの上面に対してX線(CuKα線)を照射することにより、sinφ法を用いた残留応力の測定が行われる。
【0057】
第2層12は、銅-モリブデン溶浸材の層である。銅-モリブデン溶浸材は、モリブデン圧粉体(モリブデンの粉末を圧縮成形したもの)の空隙に銅を含浸した上で圧延されている材料である。好ましくは、第2層12中におけるモリブデンの体積比は、55パーセント以上である。第2層12中におけるモリブデンの体積比は、例えば、85パーセント以下である。
【0058】
第2層12の厚さを、厚さT3とする。厚さT3は、厚さT1の10パーセントを超えていることが好ましい。厚さT3は、例えば、厚さT1の35パーセント以下である。厚さT3及び第2層12中におけるモリブデンの体積比は、複合材料10中におけるモリブデンの体積比が13パーセント超43パーセント未満になるように設定されることが好ましい。厚さT3は、厚さT1の18パーセント以上35パーセント以下であることが好ましい。
【0059】
800℃で15分間保持した後において、複合材料10の温度を27℃(以下「室温」とする)から200℃まで変化させた際の層内方向での複合材料10の線膨張係数は、6ppm/K以上10ppm/K以下であることが好ましい。
【0060】
複合材料10の層内方向での線膨張係数を室温から200℃まで温度が変化した際の複合材料10の層内方向での膨張変位に基づいて測定するのは、複合材料10が用いられる半導体パッケージの動作温度を考慮したものである。また、複合材料10の層内方向での線膨張係数を800℃で15分間保持した後に測定するのは、複合材料10に対するろう付けの際の加熱を考慮したものである。
【0061】
800℃で15分間保持する前において、複合材料10の温度を室温から800℃まで変化させた際の層内方向での複合材料10の線膨張係数は、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下であることが好ましい。これは、複合材料10にろう付けされるケース部材がアルミナで形成されることが多く、温度を室温から800℃まで変化させた際のアルミナの線膨張係数が8ppm/K程度であることを考慮したものである。
【0062】
800℃で15分間の保持を行う前後で、複合材料10の温度を室温から200℃まで変化させた際の層内方向での複合材料10の線膨張係数の変化量(増加量)は、0.3ppm/K以下であることが好ましい。
【0063】
室温から200℃(800℃)まで温度が変化した際の複合材料10の層内方向での線膨張係数は、TD5000SA(ブルカーAXS社製)を用いて室温から200℃(800℃)まで温度が変化した際の複合材料10の層内方向での膨張変位を測定することにより算出される。室温から200℃まで温度が変化した際の複合材料10の層内方向での線膨張係数を算出する際、複合材料10の平面形状は、3mm×15mmの矩形形状とされる。測定値は、3つの試料についての平均値とされる。
【0064】
評価対象とする複合材料10の大きさが3mm×15mmよりも小さい場合には、X線回折法を用いて線膨張係数を算出してもよい。複合材料10のの複数の断片を放熱面が同一平面に並ぶように寄せ集めることで、放熱面の面積が100mm以上になるようにする。寄せ集めた放熱面は、一辺が概ね10mm以上の矩形になるとよい。室温及び800℃において放熱面にX線を照射し、Cu(331)に対応する回折ピークから回折角(2θ)を導出する。この回折角から下記の式を用いることで、格子面間隔の変化率を線膨張係数として利用することができる。材料の面内に異方性が存在する場合は、線膨張係数の測定目的とする方向がX線の入射面に平行になるように試料を整列させる。室温を25℃とした場合の線膨張係数の算出式を示す。
【0065】
(線膨張係数)=(1/sin(θat800℃)-1/sin(θat25℃))×sin(θat25℃)/(800-25)
ここで、θat25℃は25℃測定時の回折角2θの1/2倍であり、θat800℃は800℃測定時の回折角2θの1/2倍である。
【0066】
800℃で15分間保持した後において、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率は、230W/m・K以上であることが好ましい。800℃で15分間保持した後において、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率は、261W/m・K以上であることがさらに好ましい。この熱伝導率の測定は、室温で行われる。なお、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率を800℃で15分間保持した後に測定するのは、複合材料10に対するろう付けの際の加熱を考慮したものである。
【0067】
複合材料10の厚さ方向の熱伝導率は、レーザフラッシュ法で測定される。より具体的には、LFA457MicroFlash(NETZSCH社製)を用いて複合材料10の熱拡散係数が測定されるとともに、当該熱拡散係数並びに複合材料10の各構成材料の体積比及び比熱に基づいて複合材料10の厚さ方向の熱伝導率が算出される。
【0068】
複合材料10の厚さ方向の熱伝導率を算出する際、複合材料10は、平面形状が直径10mmの円形となるように切り出される。上記の熱伝導率の算出に際して、各構成材料の比熱は、日本金属学会編「金属データブック第4版」(2004年、丸善出版)に基づいて決定される。また、複合材料10の熱伝導率の測定に先立って同一形状の純銅試料の熱伝導率を同一条件下で測定し、その結果をリファレンスとして用いて測定結果の補正を行う。
【0069】
図3Aは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第1説明図である。図3Aに示されるように、測定対象となる複合材料10から、薄片15が切り出される。薄片15の厚さ、長さ及び幅は、それぞれ、t(mm)、B(mm)及びC(mm)である。
【0070】
2をtで除した値の小数点以下を切り上げた数を、Xとする。10をBで除した値の小数点以下を切り上げた数を、Y1する。10をCで除した値の小数点以下を切り上げた数を、Y2とする。測定対象となる複合材料10からは、X、Y1及びY2の積に等しい数の薄片15が切り出される。
【0071】
図3Bは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第2説明図である。図3Bに示されるように、X枚の薄片15から、ブロック16が作製される。ブロック16の厚さ、長さ及び幅は、それぞれ、約2(mm)、B(mm)及びC(mm)である。ブロック16の作製においては、第1に、X枚の薄片15が積み重ねられる。この際には、隣接している薄片15の間に、平均粒径が4μmの純銀により形成されている不定形粉末が配置される。隣接している薄片15の間に配置される不定形粉末の量は、100mmあたり0.2g±30パーセントである。
【0072】
ブロック16の作製においては、第2に、内寸がB(mm)×C(mm)の開口が形成されている矩形状の型(図示せず)が準備され、当該開口内に積み重ねられた薄片15が配置される。上記の型は、黒鉛製である。ブロック16の作製においては、第3に、積み重ねられた薄片15は、荷重Pが加えられた状態で熱処理される。荷重Pは、4.9N以上9.8N以下である。熱処理は、不活性ガス雰囲気で行われる。熱処理は、900℃の保持温度、10分の保持時間で行われる。熱処理により、不定形粉末が軟化変形して隣接する薄片15が接着されることにより、ブロック16が作製される。
【0073】
図3Cは、複合材料10の厚さ方向の熱伝導率の測定試料の作成手順の第3説明図である。図3Cに示されるように、ブロック16を、縦にY1個、横にY2個並べることにより、高さ約10mm、幅約10mm、厚さ約2mmの測定試料17が作製される。ブロック16を縦にY1個、横にY2個並べる際、隣り合うブロック16は、接着部材により互いに接着される。接着部材には、銀ろう箔、セラミックス接着剤等の800℃程度までの温度に耐えることができるものが用いられる。縦にY1個、横にY2個並べられたブロック16は、その外周にステンレスワイヤ等を巻くことにより固定されてもよい。
【0074】
複合材料10の端部温度差は、50℃以下であることが好ましい。図4は、複合材料10の放熱性能の評価方法の説明図である。図4には、複合材料10の1つの側面から見た状態が模式的に示されている。複合材料10は、第1表面10aに垂直な方向から見て、縦横が10mmの矩形状に切断される。切断された複合材料10の第1表面10aの中央には、発熱体90が接触される。発熱体90は、第1表面10aに垂直な方向から見て、縦横が10mmの矩形状である。発熱体90の発熱量は、50Wである。
【0075】
切断された複合材料10の第2表面10bには、アルミニウムフィン80が、シリコーンオイル(信越化学社製G-751)を用いて接着される。この接着は、切断された複合材料10の第2表面10bとアルミニウムフィン80との間にシリコーンオイルを配置した状態で9.8Nの荷重を加えることにより行われる。
【0076】
切断された複合材料10の第1表面10aと発熱体90との界面における温度を、第1温度とする。切断された複合材料10の第1表面10aの端部(角部)における温度を、第2温度とする。切断された複合材料10の第2表面10bとアルミニウムフィン80との界面における温度を、第3温度とする。第1温度、第2温度及び第3温度は、図示しない熱電対により測定される。アルミニウムフィン80に対する空冷は、第3温度が25℃±3℃になるように制御される。測定環境としての周囲温度は、25℃±5℃とされる。
【0077】
発熱体90を切断された複合材料10の第1表面10aに接触させた後に30秒以上経過し、温度が定常状態になった際の第1温度と第2温度との差(第1温度-第2温度)が複合材料10の端部温度差である。この端部温度差は、10回の測定を行い、その平均値が採用される。すなわち、複合材料10の端部温度差は、第1表面10aに発熱体90が接触され、第2表面10bにアルミニウムフィン80が接着されている状態での発熱体90が接触している第1表面10aの部分における温度と第1表面10aの端部(角部)における温度との差である。端部温度差が小さいほど、複合材料10の層内方向の熱伝導が良好であることになる。
【0078】
<複合材料10の製造方法>
図5は、複合材料10の製造工程図である。図5に示されるように、複合材料10の製造方法は、準備工程S1と、加熱工程S2と、圧延工程S3とを有している。
【0079】
準備工程S1では、積層体20が準備される。図6は、一例としての積層体20の断面図である。図6に示されるように、積層体20は、複数の第1板材21と、少なくとも1つの第2板材22とを有している。第1板材21は第1層11と同一材料で形成されており、第2板材22は第2層12と同一材料で形成される。第1板材21及び第2板材22は、積層体20の厚さ方向に沿って交互に配置されている。
【0080】
積層体20は、第1板材21と同一の材料によって側面をも覆うことにより、各層が厚さ方向に垂直な面の方向に動かないように固定されている。固定の方法はこの方法に限定されるものではなく、貫通穴を設けてリベットで固定するなどの方法を用いて固定してもよい。また、さらに他の板材の上に各層が相互に動かないように固定されてもよい。
【0081】
加熱工程S2では、各が固定されている積層体20に対する加熱が行われる。この熱処理では、積層体20が、水素雰囲気中において所定の温度に加熱される。この所定の温度は、銅の融点未満の温度である。この所定の温度は、例えば、900℃である。
【0082】
圧延工程S3は、加熱工程S2の後に行われる。圧延工程S3では、積層体20が、圧延ローラに通される。これにより、第1板材21及び第2板材22が圧延されながら相互に接合され、図1及び図2に示される構造の複合材料10が製造される。すなわち、複合材料10では、第1層11及び第2層12が、熱間圧延接合法を用いて接合されている。
【0083】
<複合材料10の効果>
銅を含む層(以下「銅層」とする)とモリブデン及び銅とを含む層(以下「銅モリブデン層」とする)とが交互に積層されている板状の複合材料が半導体パッケージのヒートスプレッダとして用いられる際、当該複合材料の表面には、ケース部材がろう付けにより取り付けられる。このろう付けの際には、通常、800℃程度で15分間程度の加熱が行われる。
【0084】
上記の複合材料では、銅層及び銅モリブデン層が、通常、拡散接合法を用いて互いに接合されている。その結果、銅層には、大きな圧縮残留応力が作用している。上記のろう付けの際の加熱により、銅層が軟化する。銅層の軟化に伴って銅層に作用している圧縮残留応力が開放される結果、銅層が大きく変形し、銅モリブデン層との間の接合界面にクラックが発生する。このクラックは、上記の複合材料の層内方向での線膨張係数を増大させる。
【0085】
複合材料10では、第1層11及び第2層12の接合が熱間圧延接合法を用いて行われている。熱間圧延接合法を用いた接合時には、銅の熱伝導率がモリブデンの熱伝導率よりも大きいことに起因して、第1層11の温度が第2層12の温度よりも高い状態を保ちながら冷却されるため、第2層12との界面付近に歪みが残留しにくい。
【0086】
そのため、複合材料10では、ケース部材のろう付けが行われた後において、第1層11と第2層12との間の接合界面にクラックが発生することが抑制されている。すなわち、複合材料10によると、ケース部材のろう付けが行われた後においても、層内方向での線膨張係数が低く維持されている。
【0087】
800℃で15分間保持した後において、複合材料10の温度を室温から200℃まで変化させた際の複合材料10の層内方向での線膨張係数が6ppm/K以上10ppm/K以下になっているとともに、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率が230W/m・K以上(好ましくは、261W/m・K以上)である場合、ケース部材のろう付けが行われた後においても、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率を維持しつつ、複合材料10の層内方向での線膨張係数が低減することできる。
【0088】
第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の15パーセント以上であるとともに、第1層11a中における銅の体積比及び第1層11b中における銅の体積比が90パーセント以上である場合、第1表面10a側及び第2表面10b側において、熱が層内方向に沿って拡散しやすい。そのため、この場合には、端部温度差を低減することができる。
【0089】
モリブデンは、線膨張係数が銅よりも小さく、熱伝導率が銅よりも小さい。そのため、複合材料10中におけるモリブデンの体積比が大きくなるほど、複合材料10の層内方向での線膨張係数が小さくなり、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率が小さくなる。厚さT3が大きくなるほど、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率が小さくなり、複合材料10の層内方向での線膨張係数が小さくなる。第2層12中におけるモリブデンの体積比が大きくなるほど、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率が小さくなり、複合材料10の層内方向での線膨張係数が小さくなる。
【0090】
また、銅は、線膨張係数がモリブデンよりも大きく、熱伝導率がモリブデンよりも大きい。そのため、第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が大きくなるほど、複合材料10の層内方向での線膨張係数が大きくなり、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率が大きくなる。
【0091】
本発明者らが鋭意検討したところ、モリブデンの体積比が13パーセント超43パーセント未満であり、厚さT3が厚さT1の10パーセントを超え、第2層12中におけるモリブデンの体積比が55パーセント以上であり、かつ第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の25パーセント以下である場合には、ケース部材のろう付けが行われた後においても、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率を維持しつつ、複合材料10の層内方向での線膨張係数が低減することできる。
【0092】
<実施例>
複合材料のサンプルとして、サンプル1からサンプル37が準備された。サンプル1からサンプル37は、図2に示される構造を有する複合材料である。サンプル1からサンプル30では、第1層11及び第2層12が、熱間圧延接合法を用いて接合されている。サンプル31からサンプル37では、第1層11及び第2層12が、SPS(Spark Plasma Sintering)法を用いて接合されている。SPS法は、通電によるジュール加熱とプレス機構による加圧を同時に加えて金属等の被成形材の界面を原子レベルで結着させる方法であり、粉末材料の焼結緻密化や異種材料の金属接合(拡散接合)をさせることができる。本実施例では後者の効果を利用している。なお、SPS法を用いる場合、積層体20が筒状のグラファイト型内に配置されるとともに、積層体20がパルス通電されながら所定の温度に加熱・加圧される。この所定の温度は、銅の融点未満の温度である。この所定の温度は、例えば、900℃である。加圧力はグラファイト型の耐久性が保たれる範囲内で複合材の相対密度が99体積パーセント以上になる条件が採用され、所定温度で達成できない場合は適宜温度を上昇することで調整できる。
【0093】
表1には、サンプル1からサンプル37における第1層11a及び第1層11bの厚さT2、第1層11a及び第1層11b中における銅の体積比、第2層12の厚さT3、第2層12中におけるモリブデンの体積比、層の数並びに第1層11a及び第1層11bに作用している圧縮残留応力が示されている。
【0094】
表1には示されていないが、サンプル1からサンプル37において、厚さT1は、全て1mmである。また、サンプル1からサンプル37において、第1層11a及び第1層11b以外の第1層11中における銅の体積比は、全て100パーセントである。また、第1層11a及び第1層11b以外の第1層11の厚さT2は、第1層11a及び第1層11bの厚さT2、第2層12の厚さT3、層の数並びに厚さT1から自ずと定まるため、表1には示されていない。
【0095】
【表1】
【0096】
第1層11a及び第1層11bに作用している圧縮残留応力が50MPa以下であることを、条件Aとする。サンプル1からサンプル30は条件Aを満たしていたが、サンプル31からサンプル37は条件Aを満たしていなかった。
【0097】
第1層11a及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の25パーセント以下であることを、条件Bとする。複合材料中におけるモリブデンの体積比が13パーセント超43パーセント未満であることを、条件Cとする。
【0098】
第2層12の厚さT3が厚さT1の10パーセントを超えていることを、条件Dとする。第2層12中におけるモリブデンの体積比が55パーセント以上であることを、条件Eとする。
【0099】
サンプル3からサンプル14、サンプル18からサンプル24及びサンプル26からサンプル29は、さらに、条件B、条件C、条件D及び条件Eを満たしていた。他方で、サンプル1からサンプル2、サンプル15からサンプル17、サンプル25及びサンプル30は、条件B、条件C、条件D及び条件Eのうちの少なくとも1つを満たしていなかった。
【0100】
第1層11a及び第1層11b中における銅の体積比が90パーセント以上であることを、条件Fとする。第1層11a及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の15パーセント以上であることを、条件Gとする。
【0101】
サンプル3からサンプル12、サンプル18からサンプル23及びサンプル26からサンプル28は、さらに条件F及び条件Gを満たしていた。他方で、サンプル13からサンプル14、サンプル24及びサンプル29は、条件F及び条件Gのうちの少なくともいずれかを満たしていなかった。
【0102】
第1層11の数及び第2層12の数の合計が5以上であり、かつ厚さT3が厚さT1の18パーセント以上であることを、条件Hとする。サンプル3からサンプル11及びサンプル18からサンプル19は、さらに、条件Hを満たしていた。他方で、サンプル12、サンプル20からサンプル23及びサンプル26からサンプル28は、条件Hを満たしていなかった。
【0103】
表2には、サンプル1からサンプル37の層内方向での線膨張係数、厚さ方向での熱伝導率及び端部温度差の測定結果が示されている。線膨張係数としては、800℃で15分間の保持を行った後において温度を室温から200℃まで変化させた際の層内方向での線膨張係数(表2中の「第1線膨張係数」)、800℃で15分間の保持を行う前において温度を室温から200℃まで変化させた際の層内方向での線膨張係数(表2中の「第2線膨張係数」)及び800℃で15分間の保持を行う前において温度を室温から800℃まで変化させた際の層内方向での線膨張係数(表2中の「第3線膨張係数」)が測定された。熱伝導率は、800℃で15分間の保持を行った後に測定された。
【0104】
【表2】
【0105】
サンプル31からサンプル37の第1線膨張係数は、サンプル1からサンプル30の第1線膨張係数よりも大きくなっていた。上記のとおり、サンプル1からサンプル30は条件Aを満たしている一方、サンプル31からサンプル37は条件Aを満たしていなかった。
【0106】
この比較から、第1層11a及び第1層11bに作用している圧縮残留応力が50MPa以下となることにより、ろう付けを行うための熱が加わった際に、第1層11と第2層12との接合界面にクラックが発生することが抑制されること(ろう付けを行うための熱が加わった後においても低い線膨張係数が維持されること)が明らかになった。
【0107】
サンプル3からサンプル14、サンプル18からサンプル24及びサンプル26からサンプル29は、第1線膨張係数が6ppm/K以上10ppm/K以下であること及び厚さ方向での熱伝導率が261W/m・K以上であることをさらに満たしていた。上記のとおり、サンプル3からサンプル14、サンプル18からサンプル24及びサンプル26からサンプル29は、条件B、条件C、条件D及び条件Eをさらに満たしていた。
【0108】
この比較から、モリブデンの体積比が13パーセント超43パーセント未満であり、厚さT3が厚さT1の10パーセント超であり、第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の25パーセント以下であり、かつ第2層12中におけるモリブデンの体積比が55パーセント以上であることにより、ろう付けを行うための熱が加わった後においても、複合材料10の厚さ方向での熱伝導率を維持しつつ、複合材料10の層内方向での線膨張係数が低減できることが明らかになった。
【0109】
サンプル3からサンプル14、サンプル18からサンプル24及びサンプル26からサンプル29の第3線膨張係数は、7.5ppm/K以上8.5ppm/K以下であった。上記のとおり、サンプル3からサンプル14、サンプル18からサンプル24及びサンプル26からサンプル29は、条件B、条件C、条件D及び条件Eをさらに満たしていた。
【0110】
この比較から、モリブデンの体積比が13パーセント超43パーセント未満であり、厚さT3が厚さT1の10パーセント超であり、第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の25パーセント以下であり、かつ第2層12中におけるモリブデンの体積比が55パーセント以上であることにより、複合材料10の線膨張係数とケース部材の線膨張係数との違いに起因してろう材にクラックが発生することを抑制できることが明らかにされた。
【0111】
サンプル3からサンプル12、サンプル18からサンプル23及びサンプル26からサンプル28の端部温度差は、50℃未満であった。上記のとおり、サンプル3からサンプル12、サンプル18からサンプル23及びサンプル26からサンプル28は、条件F及び条件Gをさらに満たしていた。
【0112】
この比較から、第1層11aの厚さT2及び第1層11bの厚さT2が厚さT1の15パーセント以上であるとともに、第1層11a中における銅の体積比及び第1層11b中における銅の体積比が90パーセント以上であることにより、端部温度差を小さくできることが明らかになった。
【0113】
サンプル3からサンプル11及びサンプル18からサンプル19における第1線膨張係数と第2線膨張係数との差は、0.3ppm/K以下であった。また、サンプル3からサンプル11及びサンプル18からサンプル19では、第1層11a及び第1層11bに作用している圧縮残留応力が40MPa以下であった。この比較から、第1層11の数及び第2層12の数の合計が5以上であり、かつ厚さT3が厚さT1の18パーセント以上であることにより、第1層11a及び第1層11bに作用している圧縮残留応力がさらに小さくなり、ろう付けを行うための熱が加わることによる層内方向での線膨張係数の増加が抑制されることが明らかになった。
【0114】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る半導体パッケージ(以下「半導体パッケージ100」とする)を説明する。
【0115】
図7は、半導体パッケージ100の分解斜視図である。半導体パッケージ100は、図7に示されているように、複合材料10と、半導体素子30と、ケース部材40と、蓋50と、端子60a及び端子60bとを有している。
【0116】
複合材料10は、半導体パッケージ100において、ヒートスプレッダとして機能している。半導体素子30は、第1表面10a上に配置されている。半導体素子30と第1表面10aとの間には、伝熱部材が介在されていてもよい。半導体素子30は、動作時に、発熱源となる。
【0117】
ケース部材40は、例えばセラミックス材料で形成されている。セラミックス材料は、例えば、アルミナである。ケース部材40は、半導体素子30を取り囲むように第1表面10a上に配置されている。ケース部材40の下端(第1表面10a側の端)と第1表面10aとの間は、例えばろう付けにより接合されている。蓋50は、例えば、セラミックス材料又は金属材料で形成されている。蓋50は、ケース部材40の上端側を閉塞している。
【0118】
端子60a及び端子60bは、ケース部材40に挿入されている。その結果、端子60a及び端子60bの一方端は第1表面10a、ケース部材40及び蓋50により画される空間内に位置しており、端子60a及び端子60bの他方端は当該空間の外部に位置している。端子60a及び端子60は、例えば、金属材料で形成されている。金属材料は、例えば、コバールである。
【0119】
図示されていないが、端子60a及び端子60bの一方端側は、半導体素子30に電気的に接続されている。半導体パッケージ100は、端子60a及び端子60bの他方端側において、半導体パッケージ100とは別の装置又は回路と電気的に接続される。
【0120】
第2表面10bには、放熱部材70が取り付けられる。放熱部材70は、例えば、内部に冷媒が流れる流路が形成されている金属板である。但し、放熱部材70は、これに限られるものではない。放熱部材70は、例えば、冷却フィンであってもよい。放熱部材70と第2表面10bとの間には、伝熱部材が介在されていてもよい。
【0121】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0122】
10 複合材料、10a 第1表面、10b 第2表面、11,11a,11b 第1層、12 第2層、15 薄片、16 ブロック、20 積層体、21 第1板材、22 第2板材、30 半導体素子、40 ケース部材、50 蓋、60a 端子、60b 端子、70 放熱部材、80 アルミニウムフィン、90 発熱体、100 半導体パッケージ、P 荷重、S1 準備工程、S2 加熱工程、S3 圧延工程、T1,T2,T3 厚さ。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7