(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20250401BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20250401BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 D
B60R16/02 622
(21)【出願番号】P 2023062327
(22)【出願日】2023-04-06
【審査請求日】2024-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】清田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】小野田 健
(72)【発明者】
【氏名】山田 利宜
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-109969(JP,A)
【文献】実開昭59-25115(JP,U)
【文献】特開2000-40433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/307816(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の合成樹脂材料から成り、一方の空間から他方の空間へと挿通対象物の貫通孔を通して渡す導電性の配索材を内方で挿通させる筒状のベース部材と、
前記ベース部材に同軸上で組み付けて、前記挿通対象物の前記貫通孔の周縁部への取付完了位置で前記一方の空間に配置される環状のグロメット本体と、
を備え、
前記ベース部材は、前記取付完了位置で前記一方の空間に配置され、環状の前記周縁部に対して外周縁部を同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状のフランジと、前記フランジから同軸上で前記他方の空間に向けて突出させ且つ前記取付完了位置で前記貫通孔に挿通させる筒状体と、を有し、
前記グロメット本体は、前記ベース部材よりも軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料から成り、前記ベース部材との組付け完了位置で前記フランジの前記外周縁部に対して同軸上で密着させ且つ前記取付完了位置で前記周縁部に対して同軸上で密着させる環状の止水部材と、前記止水部材よりも硬質の合成樹脂材料から成る環状の支持部材と、が一体になって成形された成形品であり、
前記ベース部材と前記支持部材との間には、前記ベース部材に設けた第1係合部と前記支持部材に設けた第2係合部を係合させ、前記ベース部材と前記グロメット本体を前記組付け完了位置で保持する係合機構が前記ベース部材の筒軸の軸周りに複数設けられ、
前記第1係合部と前記第2係合部は、その内の一方が前記筒軸に対する直交方向に開口させた空洞形状として形成され、その内の他方が前記直交方向で前記空洞形状内に開口から挿入させる突起形状として形成されることを特徴としたグロメット。
【請求項2】
前記止水部材は、前記組付け完了位置で前記フランジの前記外周縁部に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させ且つ前記取付完了位置で前記周縁部に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状の本体と、前記本体から同軸上で突出させ、前記組付け完了位置で弾性変形して一周に亘って前記フランジの前記外周縁部に密着させる環状の第1リップと、前記本体から同軸上で突出させ、前記取付完了位置で弾性変形して一周に亘って前記周縁部に密着させる環状の第2リップと、を有することを特徴とした請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記支持部材は、前記組付け完了位置で前記フランジの前記外周縁部に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状部を有し、
前記本体は、その内周面側を溝底とし且つ前記フランジ側及び前記周縁部側を各々溝側壁とする環状の溝内に嵌め込ませた形で前記環状部を同軸上で一体化させ、
前記筒状体には、前記本体の前記内周面に対向配置された前記開口を有する前記第1係合部が形成され、
前記第2係合部は、前記環状部の内周面から突出させ、かつ、前記本体の前記内周面から突き抜けさせた突起形状として形成されることを特徴とした請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記支持部材は、前記組付け完了位置で前記フランジの前記外周縁部に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる第1環状部と、前記第1環状部の外周縁部から前記フランジの前記外周縁部に向けて同軸上で突出させた第2環状部と、を有し、
前記フランジの前記外周縁部は、前記第2環状部が同軸上で嵌め込まれる環状の嵌合部を有し、
前記嵌合部は、前記第2環状部の内周面に対向配置させる第1壁面と、前記第2環状部における突出方向側の環状の端面に対向配置させる第2壁面と、を有し、
前記本体は、その内周面側を溝底とし且つ前記フランジ側及び前記周縁部側を各々溝側壁とする環状の溝内に嵌め込ませた形で前記第1環状部を同軸上で一体化させ、
前記筒状体には、前記本体の前記内周面に対向配置された前記開口を有する前記第1係合部が形成され、
前記第2係合部は、前記第1環状部の内周面から突出させ、かつ、前記本体の前記内周面から突き抜けさせた突起形状として形成されることを特徴とした請求項2に記載のグロメット。
【請求項5】
前記フランジの前記外周縁部には、前記開口を有する前記第1係合部が形成され、
前記支持部材は、前記本体の外周縁部における環状の接合部に一体化させ、かつ、前記接合部から前記フランジの前記外周縁部に向けて同軸上で突出させた環状部を有し、
前記環状部の内周面は、前記開口に対向配置させ、
前記第2係合部は、前記環状部の前記内周面から突出させた突起形状として形成されることを特徴とした請求項2に記載のグロメット。
【請求項6】
前記支持部材は、前記本体の外周縁部における環状の接合部に一体化させ、かつ、前記接合部から前記フランジの前記外周縁部に向けて同軸上で突出させた環状部を有し、
前記環状部は、その内周面に前記開口が設けられた空洞形状の前記第2係合部を有し、
前記フランジの前記外周縁部は、突起形状に形成された前記第1係合部を有することを特徴とした請求項2に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスにおいては、挿通対象物(例えば、車両における車体のパネル等)に設けた貫通孔に電線等の配索材を挿通させることによって、この挿通対象物によって隔てられた一方の空間から他方の空間へと配索材を引き込ませる。このため、その挿通対象物には、貫通孔の周縁から配索材を保護すると共に、貫通孔と配索材との間の隙間への液体の浸入を防ぐため、その隙間を塞ぐグロメットが取り付けられる。例えば、グロメットは、硬質の合成樹脂材料から成り、一方の空間と他方の空間との間で配索材を内方に通すベース部材と、ゴム等の柔軟性を持たせた合成樹脂材料から成る環状のグロメット本体と、で構成される。このグロメットは、貫通孔に差し込んで、挿通対象物における貫通孔の周縁にグロメット本体を密着させる。このグロメットにおいては、ベース部材とグロメット本体とが例えば二色成形等の一体成形手法で一体になって成形される。この種のグロメットについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この従来のグロメットにおいては、ベース部材とグロメット本体を一体成形するための金型を抜き取る際に、その金型からグロメット本体に加えられる荷重を軽減させることによって、柔軟性のあるグロメット本体の品質低下を抑える必要がある。しかしながら、このグロメットにおいては、一方の空間と他方の空間との間で配索材を内方に通すために、グロメット本体と比してベース部材の体格が大きくなり、かつ、このベース部材の形状が複雑になり易いので、ベース部材とグロメット本体の形状如何で金型からグロメット本体への過荷重を避けることができない場合もある。このため、この場合には、ベース部材とグロメット本体をそれぞれに別の部品として用意し、これらを組み付けることによって、グロメット本体を成形する際の金型からの荷重を軽減させればよい。但し、このグロメットにおいては、ベース部材とグロメット本体との間でその相互間を組付け完了位置に保つ必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、二部品間の保持力を確保し得るグロメットを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硬質の合成樹脂材料から成り、一方の空間から他方の空間へと挿通対象物の貫通孔を通して渡す導電性の配索材を内方で挿通させる筒状のベース部材と、前記ベース部材に同軸上で組み付けて、前記挿通対象物の前記貫通孔の周縁部への取付完了位置で前記一方の空間に配置される環状のグロメット本体と、を備え、前記ベース部材は、前記取付完了位置で前記一方の空間に配置され、環状の前記周縁部に対して外周縁部を同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状のフランジと、前記フランジから同軸上で前記他方の空間に向けて突出させ且つ前記取付完了位置で前記貫通孔に挿通させる筒状体と、を有し、前記グロメット本体は、前記ベース部材よりも軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料から成り、前記ベース部材との組付け完了位置で前記フランジの前記外周縁部に対して同軸上で密着させ且つ前記取付完了位置で前記周縁部に対して同軸上で密着させる環状の止水部材と、前記止水部材よりも硬質の合成樹脂材料から成る環状の支持部材と、が一体になって成形された成形品であり、前記ベース部材と前記支持部材との間には、前記ベース部材に設けた第1係合部と前記支持部材に設けた第2係合部を係合させ、前記ベース部材と前記グロメット本体を前記組付け完了位置で保持する係合機構が前記ベース部材の筒軸の軸周りに複数設けられ、前記第1係合部と前記第2係合部は、その内の一方が前記筒軸に対する直交方向に開口させた空洞形状として形成され、その内の他方が前記直交方向で前記空洞形状内に開口から挿入させる突起形状として形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るグロメットは、互いに硬質樹脂から成るベース部材と支持部材との間に係合機構を設けており、ベース部材とグロメット本体との間の保持力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、挿通対象物に取り付ける前の実施形態のグロメットを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態のグロメットを別角度から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のグロメットを筒状体側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、
図3のX2-X2線断面を取付前の挿通対象物と共に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態のグロメットを示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態のグロメットを別角度から見た分解斜視図である。
【
図8】
図8は、実施形態のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態のベース部材と防水部材の分解斜視図である。
【
図10】
図10は、実施形態のグロメット本体の分解斜視図である。
【
図11】
図11は、実施形態のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在しない場所を表している。
【
図12】
図12は、実施形態のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在する場所を表している。
【
図13】
図13は、変形例1のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて示す分解斜視図である。
【
図14】
図14は、変形例1のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて別角度から見た分解斜視図である。
【
図15】
図15は、
図3のX2-X2線断面に相当する変形例1のグロメットの断面図である。
【
図16】
図16は、変形例1のベース部材を示す平面図である。
【
図18】
図18は、変形例1のグロメット本体の分解斜視図である。
【
図19】
図19は、変形例1のグロメット本体の第1金型と第2金型を示す斜視図である。
【
図20】
図20は、変形例1のグロメット本体の第1金型と第2金型を別角度から見た斜視図である。
【
図21】
図21は、変形例1のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在しない場所を表している。
【
図22】
図22は、変形例1のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在する場所を表している。
【
図23】
図23は、変形例2のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて示す分解斜視図である。
【
図24】
図24は、変形例2のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて別角度から見た分解斜視図である。
【
図25】
図25は、
図3のX2-X2線断面に相当する変形例2のグロメットの断面図である。
【
図26】
図26は、変形例2のベース部材を示す平面図である。
【
図27】
図27は、変形例2のグロメット本体の分解斜視図である。
【
図28】
図28は、変形例2のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在しない場所を表している。
【
図29】
図29は、変形例2のグロメット本体の成形型の一部を示す部分断面図であり、第2係合部の存在する場所を表している。
【
図30】
図30は、変形例3のグロメットを組付け後の2つのベース部材とグロメット本体に分けて示す分解斜視図である。
【
図31】
図31は、
図3のX2-X2線断面に相当する変形例3のグロメットの断面図である。
【
図32】
図32は、変形例3のベース部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係るグロメットの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
[実施形態]
本発明に係るグロメットの実施形態の1つを
図1から
図12に基づいて説明する。
【0011】
図1から
図8の符号1は、本実施形態のグロメットを示す。このグロメット1は、一方の空間S1から他方の空間S2へと挿通対象物501の貫通孔502を通して渡す導電性の配索材Weを当該挿通対象物501における貫通孔502の周縁部503から保護すると共に、その環状の周縁部503と配索材Weとの間の隙間への液体(水等)の浸入を防ぐものである(
図1及び
図5)。よって、このグロメット1は、配索材Weを挿通させた上で、挿通対象物501の貫通孔502の周縁部503に取り付ける。
【0012】
ここで、配索材Weとは、例えば、電線(通信線としての電線、電源線としての電線等)のことである。また、挿通対象物501とは、配索材Weを挿通させるための部材であり、例えば、車両の場合、車体のパネル等の壁体のことを示している。配索材Weは、その挿通対象物501の貫通孔502に挿通させることによって、挿通対象物501が隔てる一方の空間S1と他方の空間S2との間で引き回される。例えば、配索材Weは、一方の空間S1と他方の空間S2のそれぞれの装置間の通信を担ったり、一方の空間S1の電気機器に他方の空間S2の電源から給電等を担ったりする。
【0013】
挿通対象物501の貫通孔502の周縁部503は、環状の平板部(以下、「環状平板部」という。)504と、この環状平板部504の内周縁の端部(内周縁部504a)から他方の空間S2に向けて突出させた環状の突起部(以下、「環状突起部」という。)505と、を有している(
図1及び
図5)。グロメット1は、この周縁部503にて、その環状平板部504と環状突起部505に取り付ける。例えば、挿通対象物501は、プレス成形によって形作られたものであり、その際に環状平板部504と貫通孔502が形成される。そして、この挿通対象物501においては、その貫通孔502の周縁に対するバーリング加工によって、環状突起部505が形成される。ここでは、貫通孔502が円形に形成されているので、環状平板部504と環状突起部505が各々円環状に形成されている。
【0014】
グロメット1は、配索材Weを内方で挿通させる筒状のベース部材10Xを備える(
図1から
図9)。このベース部材10Xは、1つの部材から成るものであってもよく、複数の部材が組み付けられて成るものであってもよい。ここで示すベース部材10Xは、互いに組み付けられる2つのベース部材(第1ベース部材、第2ベース部材)を備える。この2つのベース部材は、それぞれに形状の異なる部材であってもよく、それぞれが形状の同じ同一部材であってもよい。ここで示すグロメット1においては、この2つのベース部材に形状の同じ同一部材(ベース部材10,10)を用いている(
図1から
図9)。
【0015】
このベース部材10Xは、少なくとも環状のフランジ20と筒状体30とを同軸上に有するものであり、これらの内方に配索材Weを挿通させる(
図1及び
図2)。ここで示すベース部材10Xは、そのフランジ20と筒状体30に加えて、これらと同軸上に管状体40を有しており、これらの内方に配索材Weを挿通させる(
図1及び
図2)。ここでは、その同軸上で、フランジ20から一方に向けて筒状体30を突出させ、かつ、フランジ20から他方に向けて管状体40を突出させている。
【0016】
ここで示すベース部材10Xにおいては、後述するように、互いに組み付けられたベース部材10,10によって、環状のフランジ20と筒状体30と管状体40とが同軸上に形成される。このため、その2つのベース部材10,10の間には、互いを組付け状態のまま保持させる保持機構(以下、「ベース保持機構」という。)50が設けられている(
図1、
図2及び
図6から
図8)。
【0017】
また、このグロメット1は、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)に対して同軸上で組み付ける環状のグロメット本体60を備える(
図1から
図8及び
図10)。このグロメット本体60は、一方の空間S1から貫通孔502を介した他方の空間S2への液体(水等)の浸入を防ぐべく、周縁部503へのグロメット1の取付完了位置で一方の空間S1に配置される(
図1及び
図5)。尚、以下において、単に「取付完了位置」と記した場合、それは、周縁部503に対してのグロメット1の取付完了位置のことを示している。
【0018】
ベース部材10X(ベース部材10,10)は、絶縁性の硬質の合成樹脂材料(以下、「硬質樹脂」という。)を用いて成形される。ここでは、例えば、プラスチック等の硬質樹脂を用いてベース部材10X(ベース部材10,10)が成形される。
【0019】
2つのベース部材10,10は、互いの接合面10aを合わせて組み付けられる(
図3、
図6及び
図7)。この2つのベース部材10,10は、その組付け状態で配索材Weを挟み込み、この配索材Weを挿通させた状態にする。ここでは、その2つのベース部材10,10を組み付けることによって、円環状のフランジ20と円筒状の筒状体30と円管状の管状体40とが形成される。尚、ここでは、直管の管状体40を例に挙げている。但し、管状体40は、フランジ20から突出させた後で屈曲させるものであってもよい。
【0020】
フランジ20は、取付完了位置で一方の空間S1に配置され、周縁部503に対して外周縁部20aを同軸上で隙間を空けて対向配置させる(
図5)。具体的に、このフランジ20は、周縁部503における一方の空間S1側の環状平面503aに対して外周縁部20aを同軸上で隙間を空けて対向配置させる。この環状平面503aは、環状平板部504に設けられている。ここで示す環状平面503aは、環状平板部504における一方の空間S1側の環状平面そのものである。このフランジ20は、円環の板状に形成される。例えば、このフランジ20は、円環状の環状平面503aと相似形状に形成される。ここで示すフランジ20は、その円環状の外周縁部20aを環状平面503aに対向配置させ、円環状の内周縁部20bよりも内側に配索材Weを挿通させる(
図5)。その外周縁部20aは、環状平面503aにおける環状平板部504の内周縁部504a側に対して、一方の空間S1で貫通孔502の孔軸方向に隙間を空けて同軸上で対向配置させる(
図5)。
【0021】
2つのベース部材10,10は、それぞれに、互いの接合面10aを合わせてフランジ20を形成する分割フランジ11を有している(
図1から
図8)。ここで示す分割フランジ11は、フランジ20を中心軸に沿って半分に分割したものであり、半円弧状に形成されている。
【0022】
筒状体30は、フランジ20から同軸上で他方の空間S2に向けて突出させ、かつ、取付完了位置で貫通孔502に挿通させる(
図1及び
図5)。つまり、この筒状体30においては、フランジ20から突出させたその先の先端が他方の空間S2に配置される。この筒状体30は、円筒状に形成される。例えば、この筒状体30は、貫通孔502の孔軸に対する直交断面が環状突起部505における孔軸に対する直交断面と相似形状に形成されている。ここで示す筒状体30は、フランジ20における外周縁部20aよりも内周縁部20b側から突出させ、その内方に配索材Weを挿通させる(
図5)。
【0023】
2つのベース部材10,10は、それぞれに、互いの接合面10aを合わせて筒状体30を形成する分割筒12を有している(
図1、
図3及び
図4から
図8)。ここで示す分割筒12は、筒状体30を中心軸に沿って半分に分割したものであり、半円弧状に形成されている。
【0024】
管状体40は、フランジ20から同軸上で筒状体30とは逆向きに突出させる(
図4及び
図5)。この管状体40は、円管状に形成される。例えば、この管状体40は、貫通孔502の孔軸に対する直交断面が環状突起部505における孔軸に対する直交断面と相似形状に形成されている。ここで示す管状体40は、フランジ20の内周縁部20bから突出させ、その内方に配索材Weを挿通させる(
図5)。
【0025】
2つのベース部材10,10は、それぞれに、互いの接合面10aを合わせて管状体40を形成する分割管13を有している(
図1、
図2及び
図4から
図8)。ここで示す分割管13は、管状体40を中心軸に沿って半分に分割したものであり、半円弧状に形成されている。
【0026】
先に示したように、2つのベース部材10,10は、その主体部分(分割フランジ11、分割筒12、分割管13)が弾性変形し難い硬度の高いものとなっている。このため、この2つのベース部材10,10は、例えば、その接合面10aの表面粗さ等に伴う微細な隙間を互いの接合面10aの間に形成してしまう可能性がある。そこで、本実施形態のグロメット1は、2つのベース部材10,10のそれぞれの接合面10aの内の少なくとも一方に、そのベース部材10の硬質樹脂よりも軟質で且つ弾性変形可能な合成樹脂材料(以下、「軟質樹脂」という。)から成り、それぞれの接合面10aの間の隙間を無くす防水部材71を備える(
図6、
図7及び
図9)。
【0027】
この防水部材71は、例えば、エラストマー等の合成樹脂材料を用いて成形される。そして、この防水部材71は、例えば、分割フランジ11と分割筒12と分割管13のそれぞれの接合面10aに亘って設けられる。ここで示すベース部材10は、分割フランジ11から分割管13に至るまでの2箇所の接合面10aの内の一方に溝部10bが形成されており、その溝部10bに防水部材71を嵌め込んでいる(
図9)。この防水部材71は、その溝部10bから突出させている。例えば、この防水部材71は、ベース部材10との二色成形によって作り出されたり、金型内に収めたベース部材10に対してインサート成形されたりして、ベース部材10に対して一体成形される。また、この防水部材71は、ベース部材10とは別の部品として成形し、このベース部材10の溝部10bに接着剤等で貼り付けてもよい。このベース部材10Xにおいては、2つのベース部材10,10を組み付けることによって、一方のベース部材10における一方の接合面10aの溝部10bから飛び出させた防水部材71を他方のベース部材10における他方の接合面10aに密着させる。
【0028】
ベース保持機構50は、2つのベース部材10,10をそれぞれの接合面10aを合わせたままの状態に保持させるための保持機構である。このベース保持機構50は、2つのベース部材10,10の間で複数箇所に設ける。例えば、ここで示すベース保持機構50は、2つのベース部材10,10の内の一方の接合面10aから突出させた片部51と、この片部51の壁面から突出させた爪状の第1係止部52と、を備える(
図6及び
図7)。そして、ここで示すベース保持機構50は、2つのベース部材10,10の内の他方の接合面10aに設け、その内の一方の片部51及び第1係止部52を挿入させる挿入口53と、2つのベース部材10,10の内の他方に設け、その挿入口53から差し込まれた第1係止部52に押動されて撓み、互いの接合面10aが合わさったときに第1係止部52が離れて撓みを解消させる可撓部54と、2つのベース部材10,10の内の他方に設け、互いの接合面10aが合わさったときに第1係止部52に対向配置させ、2つのベース部材10,10をそれぞれの接合面10aを合わせたままの状態に保持させる第2係止部55と、を備える(
図6及び
図7)。
【0029】
ここで示す2つのベース部材10,10は、それぞれに、分割筒12における周方向の一端に1組の片部51と第1係止部52を備え、かつ、この分割筒12における周方向の他端に1組の挿入口53と可撓部54と第2係止部55を備えている。この2つのベース部材10,10においては、それぞれの接合面10aを合わせたままの状態で、一方の分割筒12における一端の第1係止部52と他方の分割筒12における他端の第2係止部55とを係止させ、かつ、一方の分割筒12における他端の第2係止部55と他方の分割筒12における一端の第1係止部52とを係止させる。つまり、この2つのベース部材10,10においては、それぞれの分割筒12を連結させ且つ連結状態のまま保持させるベース保持機構50が2箇所に設けられている。更に、この2つのベース部材10,10は、それぞれに、分割管13における周方向の一端に1組の片部51と第1係止部52を備え、かつ、この分割管13における周方向の他端に1組の挿入口53と可撓部54と第2係止部55を備えている。この2つのベース部材10,10においては、それぞれの接合面10aを合わせたままの状態で、一方の分割管13における一端の第1係止部52と他方の分割管13における他端の第2係止部55とを係止させ、かつ、一方の分割管13における他端の第2係止部55と他方の分割管13における一端の第1係止部52とを係止させる。つまり、この2つのベース部材10,10においては、それぞれの分割管13を連結させ且つ連結状態のまま保持させるベース保持機構50が2箇所に設けられている。
【0030】
グロメット本体60は、軟質樹脂(つまり、ベース部材10X(ベース部材10)の硬質樹脂よりも軟質の弾性変形可能な合成樹脂材料)から成る環状の止水部材60Aと、この止水部材60Aの軟質樹脂よりも硬質の合成樹脂材料から成り、その止水部材60Aと一体になった環状の支持部材60Bと、を備える(
図1から
図8及び
図10)。止水部材60Aは、例えば、ベース部材10X(ベース部材10)や支持部材60Bの硬質樹脂よりも軟質の弾性変形可能なエラストマー等の合成樹脂材料を用いて成形される。また、支持部材60Bは、例えば、ベース部材10X(ベース部材10)と同じ硬質樹脂又はベース部材10X(ベース部材10)の硬質樹脂と同等の硬度を有する当該硬質樹脂とは別の硬質樹脂から成るものであり、プラスチック等の合成樹脂材料を用いて成形される。
【0031】
このグロメット本体60は、この止水部材60Aと支持部材60Bとが一体になって成形された成形品として構成する。このグロメット本体60においては、支持部材60Bに対して止水部材60Aを一体化させる。例えば、止水部材60Aは、金型内で支持部材60Bとの二色成形によって作り出されたり、金型内に収めた支持部材60Bに対してインサート成形されたりして、支持部材60Bに対して一体成形される。
【0032】
止水部材60Aは、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)との組付け完了位置でフランジ20の外周縁部20aに対して同軸上で隙間を空けて対向配置させ、かつ、取付完了位置で周縁部503に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状の本体61を有する(
図1、
図2、
図4から
図8及び
図10)。この本体61は、円環の板状に形成される。尚、以下において、単に「組付け完了位置」と記した場合、それは、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60の組付け完了位置のことを示している。
【0033】
この止水部材60Aは、組付け完了位置でフランジ20の外周縁部20aに対して同軸上で密着させ、かつ、取付完了位置で周縁部503に対して同軸上で密着させる。この止水部材60Aは、本体61から同軸上で突出させ、組付け完了位置で弾性変形して一周に亘ってフランジ20の外周縁部20aに密着させる環状の第1リップ62と、本体61から同軸上で突出させ、取付完了位置で弾性変形して一周に亘って周縁部503に密着させる環状の第2リップ63と、を有している(
図1から
図8及び
図10)。
【0034】
本体61は、組付け完了位置でフランジ20における周縁部503側の環状の壁面20cに同軸上で隙間を空けて対向配置させる(
図4及び
図5)。そして、第1リップ62は、その壁面20cに対して、組付け完了位置で弾性変形して同軸上で一周に亘って密着させる。
【0035】
また、本体61は、取付完了位置で周縁部503の環状平面503aに対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる。そして、第2リップ63は、その環状平面503aに対して、取付完了位置で弾性変形して同軸上で一周に亘って密着させる。止水部材60Aは、この第2リップ63として、本体61の外周縁部61a側に設けた当該本体61と同軸の外周リップ63Aと、本体61の内周縁部61b側に設けた当該本体61と同軸の内周リップ63Bと、を有している(
図1、
図3から
図6及び
図8)。
【0036】
この止水部材60Aにおいては、第1金型601で本体61と第1リップ62が形成され、第2金型602で第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)が形成される(
図11)。第1金型601は、止水部材60Aの成形後に、本体61の軸方向における一方に向けた抜取り方向M1へと抜き取られる。また、第2金型602は、止水部材60Aの成形後に、本体61の軸方向における他方に向けた抜取り方向M2へと抜き取られる。
【0037】
第1リップ62は、第1金型601の抜取り方向M1に向けて本体61から膨出させ且つ周方向に対する直交断面が円弧状の外壁面となる円環状に形成される。これにより、この止水部材60Aにおいては、第1金型601を抜取り方向M1へと抜き取る際に、この第1金型601から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0038】
外周リップ63Aは、第2金型602の抜取り方向M2で本体61から離れるほど当該本体61の軸(貫通孔502の孔軸)から引き離すように突出させる。そして、この外周リップ63Aは、径方向で内側の壁面63aに、この壁面63aから同軸上で第2金型602の抜取り方向M2に突出させた2つの環状の副リップ部63bを有している(
図11)。この外周リップ63Aは、取付完了位置で本体61側の根元から撓み変形させ、その2つの副リップ部63bを周縁部503の環状平面503aに密着させる。尚、この外周リップ63Aにおける径方向で外側の壁面63cは、その径方向で外側に向けた抜取り方向M3へと抜き取られる少なくとも2つの第3金型603によって形成される。これにより、この止水部材60Aにおいては、第3金型603を抜取り方向M3へと抜き取る際に、この第3金型603から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0039】
また、内周リップ63Bは、第2金型602の抜取り方向M2で本体61から離れるほど当該本体61の軸(貫通孔502の孔軸)から引き離すように傾斜させた内周面63dと、第2金型602の抜取り方向M2に対して平行な外周面63eと、を有している(
図11)。
【0040】
この止水部材60Aにおいては、その第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)の形状によって、第2金型602を抜取り方向M2へと抜き取る際に、この第2金型602から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0041】
支持部材60Bは、組付け完了位置でフランジ20の外周縁部20aに対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状部(以下、「第1環状部」という。)65aを有する(
図4、
図5及び
図110)。この第1環状部65aは、更に、取付完了位置で周縁部503に対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる。ここで示す第1環状部65aは、組付け完了位置でフランジ20の壁面20cに同軸上で隙間を空けて対向配置させ、かつ、取付完了位置で周縁部503の環状平面503aに対して同軸上で隙間を空けて対向配置させる。この第1環状部65aは、外径がフランジ20の外径と同径の円環の板状に形成されている。
【0042】
このグロメット本体60においては、その支持部材60Bの第1環状部65aを止水部材60Aの本体61に一体化させる。ここで示す本体61は、その内周面61c側を溝底とし且つフランジ20側及び周縁部503側を各々溝側壁とする環状の溝内に嵌め込ませた形で第1環状部65aを同軸上で一体化させている(
図5)。
【0043】
また、支持部材60Bは、第1環状部65aの外周縁部からフランジ20の外周縁部20aに向けて同軸上で突出させた環状部(以下、「第2環状部」という。)65bを有する(
図1、
図2、
図4から
図8及び
図10)。そして、フランジ20の外周縁部20aは、この第2環状部65bが同軸上で嵌め込まれる環状の嵌合部20dを有している(
図4から
図6及び
図8)。この嵌合部20dは、第2環状部65bの内周面に対向配置させる第1壁面20d
1と、第2環状部65bにおける突出方向側の環状の端面に対向配置させる第2壁面20d
2と、を有している(
図4及び
図5)。
【0044】
ここで、支持部材60Bにおいては、第1環状部65aと第2環状部65bで囲われた円板状の空間内に第1リップ62が配置される。よって、フランジ20は、その支持部材60Bの円板状の空間を組付け完了位置で塞ぐ蓋としての機能を持つことになる。そして、このグロメット本体60においては、先に示したようにフランジ20の外径と第1環状部65aの外径が同径になっており、フランジ20の第2壁面20d2と第2環状部65bの端面との間の隙間に水が掛かり難くなっている。このため、このグロメット本体60においては、その隙間から支持部材60Bの円板状の空間内への水の浸入を抑止することができ、この隙間から支持部材60Bの円板状の空間内に水が入り込んだとしても、その水を第1リップ62で止めることができる。
【0045】
ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)と支持部材60Bとの間には、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)に設けた第1係合部81と支持部材60Bに設けた第2係合部82を係合させ、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60を組付け完了位置で保持する係合機構80がベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)の筒軸の軸周りに複数設けられる(
図1、
図3、
図4、
図6から
図8及び
図10)。第1係合部81と第2係合部は、その内の一方がベース部材10Xの筒軸に対する直交方向に開口させた空洞形状として形成され、その内の他方がベース部材10Xの筒軸に対する直交方向で空洞形状内に開口から挿入させる突起形状として形成される。ここでは、係合機構80がベース部材10Xの筒軸の軸周りに等間隔で2つ設けられており、一方の係合機構80が一方のベース部材10の分割筒12に設けられ、他方の係合機構80が他方のベース部材10の分割筒12に設けられている。
【0046】
本実施形態の係合機構80は、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)の第1係合部81を空洞形状に形成し、支持部材60Bの第2係合部82を突起形状に形成する。具体的に、グロメット本体60においては、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)の筒状体30と止水部材60Aの本体61と支持部材60Bの第1環状部65aとが同心上に配置され、その筒状体30の外周面30aに対して、本体61の内周面61cと第1環状部65aの内周面とが隙間を空けて対向配置されている(
図5)。そこで、その筒状体30には、本体61の内周面61cに対向配置された開口を有する第1係合部81が形成される(
図4、
図6及び
図8)。そして、第2係合部82は、第1環状部65aの内周面から突出させ、かつ、本体61の内周面61cから突き抜けさせた突起形状として形成される(
図4、
図6から
図8及び
図10)。ここでは、第1係合部81が矩形の開口を有する貫通孔状の空洞形状に形成され、第2係合部82が爪状の突起形状として形成されている。
【0047】
この係合機構80においては、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60とを組み付けていくことで、第2係合部82が筒状体30の外周面30aを摺動し、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60が組付け完了位置となったときに、第2係合部82が開口から第1係合部81に挿入される。これにより、グロメット1においては、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60が組付け完了位置に保たれる。
【0048】
このように構成されたグロメット1は、互いに組み付けられたベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60を挿通対象物501における貫通孔502の周縁部503に保持させる保持機構90を備える(
図1、
図3及び
図5から
図8)。ここで示す保持機構90は、止水部材60Aの第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)の弾性変形に伴う弾発力を利用するものであり、この第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)とベース部材10X(ベース部材10)に設けた下記の係止部91とで周縁部503を挟み込んで、この周縁部503にグロメット1を保持させる。
【0049】
ベース部材10Xは、取付完了位置での他方の空間S2で筒状体30の外周面30aよりも突出させ、かつ、取付完了位置での他方の空間S2で周縁部503に他方の空間S2側から接触させる係止部91を有する(
図1及び
図5から
図8)。この係止部91は、周縁部503における周方向の一部分を係止するものである。よって、ベース部材10Xは、この係止部91を筒状体30の周方向に複数有している。但し、筒状体30においては、この係止部91が第1係合部81に対して周方向にずらして配置される。
【0050】
また、ベース部材10Xは、取付完了位置での他方の空間S2で自由端に係止部91を設けた片持ちの係止片部92を係止部91毎に有する(
図1、
図3及び
図5から
図8)。この係止片部92は、取付完了位置での他方の空間S2で筒状体30の外周面30a側の固定端から一方の空間S1側に突出させたその先を自由端にして、この自由端側を筒状体30の外周面30aから飛び出させる(初期形状)。そして、この係止片部92は、その自由端側の外周面30aからの飛び出し量を変化させる撓み変形が可能な可撓性を持たせたものとして形成される。この係止片部92は、その撓み変形によって、筒状体30の一部を切り欠いた切欠き部30bの中を行き来する(
図1、
図3及び
図5から
図8)。係止部91と係止片部92と切欠き部30bの組み合わせは、筒状体30に対して周方向に等間隔で複数組設ける。ここで示す筒状体30には、この係止部91と係止片部92と切欠き部30bの組み合わせを周方向に等間隔で4組設けている。ここでは、それぞれのベース部材10の分割筒12に係止部91と係止片部92と切欠き部30bの組み合わせを2組ずつ設けている。
【0051】
この係止片部92は、筒状体30を一方の空間S1から貫通孔502に差し込んでいるときに、周縁部503の環状突起部505から力を受けて初期形状から切欠き部30b側に撓み変形し、その環状突起部505の位置を抜けて当該環状突起部505の先端(以下、「係止端部」という。)505a(
図1及び
図5)の先まで進み、環状突起部505から受ける力が無くなることで初期形状に戻り始める。このため、この係止片部92は、係止部91と一緒に環状突起部505の係止端部505aの先に配置される。一方、止水部材60Aの第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)は、この係止部91と係止片部92の一連の動きが生じているときに、周縁部503の環状平面503a側に当接して撓み変形している。よって、グロメット1は、貫通孔502に差し込むための力(所謂挿入力)を抜くと、第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)の弾性変形に伴う弾発力によって一方の空間S1側に戻る動きをする。これに伴い、係止部91は、環状突起部505の係止端部505aに接触し、この係止端部505aによって係止される(
図5)。つまり、環状突起部505は、環状平板部504から突出させた先の先端(係止端部505a)で係止部91を係止する。その環状の係止端部505aにおいては、周方向におけるそれぞれの場所毎に係止部91を係止する。従って、周縁部503は、止水部材60Aの第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)とベース部材10X(ベース部材10,10)のそれぞれの係止部91によって挟持される。
【0052】
以上示した本実施形態のグロメット1は、互いに硬質樹脂から成るベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)と支持部材60Bとの間に係合機構80を設けており、ベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)とグロメット本体60との間の保持力を確保することができる。そして、本実施形態のグロメット本体60においては、内周面61c側を溝底とした本体61の環状の溝内に嵌め込ませた形で第1環状部65aを同軸上で一体化させると共に、その第1環状部65aの内周面から突出させ、かつ、本体61の内周面61cから突き抜けさせた突起形状として第2係合部82を設けている。このため、ここでは、その第2係合部82を避けた形で第1金型601と第2金型602を形成することで、第1金型601から止水部材60Aに加えられる荷重を軽減させたまま第1金型601を抜取り方向M1へと抜き取ることができ、かつ、第2金型602から止水部材60Aに加えられる荷重を軽減させたまま第2金型602を抜取り方向M2へと抜き取ることができる(
図12)。従って、本実施形態のグロメット1においては、止水部材60Aの品質低下が抑えられたグロメット本体60を備えることができる。
【0053】
[変形例1]
本変形例のグロメット2は、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160を備える(
図13から
図15)。そして、このグロメット2は、そのベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160との間に、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)に設けた第1係合部181とグロメット本体160に設けた第2係合部182を係合させ、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160を組付け完了位置で保持する係合機構180を備える(
図13から
図15)。
【0054】
ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とは、前述した実施形態のベース部材10X(互いに組み付けられたベース部材10,10)において下記の変更を加えたものである。また、グロメット本体160とは、前述した実施形態のグロメット本体60において下記の変更を加えたものである。このため、実施形態と同じ符号で付したものは、本変形例の説明においても実施形態と同じ部品や部位等を示すものとする。
【0055】
本変形例のベース部材110Xは、実施形態のベース部材10Xにおいて、フランジ20をフランジ120へと変更したものに相当する(
図13から
図17)。このフランジ120は、実施形態のフランジ20と同じように、周縁部503に対して外周縁部120aを同軸上で隙間を空けて対向配置させ、かつ、内周縁部120bよりも内側に配索材Weを挿通させる。但し、このフランジ120は、実施形態のフランジ20に相当する部位であり、周縁部503に対して外周縁部121aを同軸上で隙間を空けて対向配置させる環状の第1フランジ部121を有する(
図13から
図17)。そして、このフランジ120は、第1フランジ部121の外周縁部121aと周縁部503との間で外周縁部121aに対して同軸上で隙間を空けて対向配置させ、かつ、内周縁部を筒状体30の外周面30aに繋いだ環状の第2フランジ部122を有する(
図13から
図16)。
【0056】
このフランジ120においては、第1フランジ部121の外周縁部121aと第2フランジ部122によって外周縁部120aが形成され、第1フランジ部121の内周縁部そのものが内周縁部120bになる。そして、このフランジ120においては、その第1フランジ部121と第2フランジ部122との間に空洞形状の環状の隙間が形成され、この環状の隙間がベース部材110Xの筒軸に対する直交方向で外側に向けて口を開けている。本変形例では、そのような開口が設けられた環状の隙間を係合機構180の第1係合部181として利用する。つまり、フランジ120の外周縁部120aには、そのような開口を有する第1係合部181が形成されている。
【0057】
ここで、フランジ120は、その第1フランジ部121と第2フランジ部122との間の環状の隙間に、これらを連結させる連結部123を複数有している(
図13、
図14、
図16及び
図17)。この連結部123は、ベース部材110Xの筒軸に対する直交方向で筒状体30の外周面30aから第1フランジ部121の外周縁部121aの外周面の位置まで延在させたリブ状に形成され、かつ、その筒軸の軸周りに互いに間隔を空けて複数配置される。よって、フランジ120の外周縁部120aには、それぞれの連結部123で仕切られた複数の第1係合部181が形成されている。
【0058】
ここで示す第1フランジ部121は、実施形態のフランジ20と同様の円環の板状に形成される。ここで示す第2フランジ部122は、その外径を第1フランジ部121の外周縁部121aの外径よりも小径にした円環の板状に形成される。このフランジ120においては、ベース部材110Xの筒軸の軸周りに等間隔で4つのリブ状の連結部123が設けられている。よって、このフランジ120の外周縁部120aには、その筒軸の軸周りに等間隔で4つの第1係合部181が形成されている。
【0059】
2つのベース部材110,110は、それぞれに、互いの接合面10aを合わせて第1フランジ部121を形成する第1分割フランジ111Aと、互いの接合面10aを合わせて第2フランジ部122を形成する第2分割フランジ111Bと、を有している(
図13から
図15)。ここで示す第1分割フランジ111Aと第2分割フランジ111Bは、それぞれに、第1フランジ部121と第2フランジ部122を中心軸に沿って半分に分割したものであり、半円弧状に形成されている。
【0060】
グロメット本体160は、軟質樹脂から成る環状の止水部材160Aと、この止水部材160Aの軟質樹脂よりも硬質の合成樹脂材料から成り、その止水部材160Aと一体になった環状の支持部材160Bと、を備える(
図13から
図15及び
図18)。ここでは、止水部材160Aと支持部材160Bが実施形態と同じように円環状に形成されている。
【0061】
止水部材160Aとは、実施形態の止水部材60Aにおいて、本体61を本体161へと変更したものに相当する(
図13から
図15及び
図18)。その本体161とは、本体61において、支持部材60Bと一体になって成形された際に形成される第1環状部65a用の環状の溝と第2係合部82用の貫通孔を埋めたものに相当する。
【0062】
支持部材160Bは、本体161の外周縁部161aにおける環状の接合部161a
1に一体化させ、かつ、その接合部161a
1からフランジ120の外周縁部120aに向けて同軸上で突出させた環状部165を有する(
図13から
図15及び
図18)。この環状部165は、第2フランジ部122を越えて第1フランジ部121の外周縁部121aに到達する位置まで突出させ、第1フランジ部121と第2フランジ部122との間の環状の隙間(つまり、係合機構180の第1係合部181)を塞ぐ。よって、この環状部165の内周面は、組付け完了位置で第1係合部181の開口に対向配置される。そこで、係合機構180の第2係合部182は、その環状部165の内周面から突出させた爪状の突起形状として形成される。環状部165の内周面には、その軸周りに互いに間隔を空けた第1係合部181毎の第2係合部182が形成されている。ここでは、その軸周りに等間隔で4つの第2係合部182が形成されている。
【0063】
本変形例の係合機構180においては、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160とを組み付けて、これらが組付け完了位置となったときに、第2係合部182が開口から第1係合部181に挿入される。その第2係合部182は、第1係合部181にて第2フランジ部122に係止させる。これにより、グロメット2においては、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160が組付け完了位置に保たれる。
【0064】
ここで、支持部材160Bにおいては、環状部165で囲われた円板状の空間内に第1リップ62が配置される。よって、フランジ120は、その支持部材160Bの円板状の空間を組付け完了位置で塞ぐ蓋としての機能を持つことになる。そして、このグロメット本体160においては、フランジ120における第1フランジ部121の外周縁部121aの外径と環状部165の外径が同径になっており、第1フランジ部121の外周縁部121aと環状部165との間の隙間に水が掛かり難くなっている。このため、このグロメット本体160においては、その隙間から支持部材160Bの円板状の空間内への水の浸入を抑止することができ、この隙間から支持部材160Bの円板状の空間内に水が入り込んだとしても、その水を第1リップ62で止めることができる。
【0065】
グロメット本体160においては、第1金型611と第2金型612で止水部材160Aの本体161と第1リップ62が形成され、第3金型613と第4金型614で止水部材160Aの第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)が形成される(
図19から
図22)。また、このグロメット本体160においては、第1金型611と第2金型612で支持部材160Bが形成される(
図19から
図22)。第1金型611は、止水部材160Aと支持部材160Bの成形後に、本体161の軸方向における一方に向けた抜取り方向M1へと抜き取られる。また、第2金型612と第3金型613は、止水部材160Aと支持部材160Bの成形後に、本体161の軸方向における他方に向けた抜取り方向M2,M3へと抜き取られる。第4金型614は、実施形態で示した第3金型603に相当するものであり、少なくとも2つ設けられ、径方向で外側に向けた抜取り方向M4へと抜き取られる。
【0066】
第1金型611と第2金型612は、爪状の第2係合部182を存在させない第1領域と爪状の第2係合部182を存在させる第2領域とに周方向で区分けして、止水部材160Aの本体161及び第1リップ62と支持部材160Bを形成する。但し、その本体161の内周縁部161bにおける内周面161cは、第2金型612の円板部612aの外周面によって形成される(
図19、
図21及び
図22)。
【0067】
本体161と第1リップ62と支持部材160Bの大部分を占める第1領域にて、その本体161の第1リップ62側と第1リップ62は、第1金型611の第1円板部611aによって形成される(
図19及び
図21)。また、この第1領域における支持部材160Bの環状部165は、第1金型611の第1円板部611aと第2円板部611bによって形成される(
図19及び
図21)。第1円板部611aには、第1領域の第1リップ62を形成するための溝部611cが設けられている(
図20及び
図21)。
【0068】
また、第2領域における本体161の第1リップ62側と第1リップ62は、第2金型612の突起部612bによって形成される(
図19、
図20及び
図22)。この突起部612bは、円板部612aから第1金型611側に突出させ且つ円板部612aの外周面よりも径方向の外側に突出させて、第2係合部182毎に設けている。この突起部612bには、第2領域の第1リップ62を形成するための溝部612cが設けられている(
図19、
図20及び
図22)。
【0069】
第1金型611の第1円板部611aには、突起部612bを嵌め込む溝部611dが形成されている(
図19、
図20及び
図22)。この第1円板部611aには、溝部611dの溝底に連なる壁面であり、爪状の第2係合部182の傾斜面182aを形成すると共に、突起部612bとの間に第2係合部182を形作るための空間部610aを形成するための壁面611eが設けられている(
図20及び
図22)。よって、第2領域の支持部材160Bにおいては、環状部165の内周面における第2係合部182よりも本体161側が第2金型612の突起部612bで形成され、環状部165の内周面の残りが第1金型611の第1円板部611aで形成される。
【0070】
止水部材160Aにおいては、第1金型611を抜取り方向M1へと抜き取る際に、この第1金型611から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第2金型612を抜取り方向M2へと抜き取る際に、円板部612aの外周面よりも径方向の外側に突出させた突起部612bの存在を懸念することになるが、この突起部612bの存在する領域を第2係合部182の存在する第2領域だけに限定して極力減らしているので、この第2金型612から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第3金型613を抜取り方向M3へと抜き取る際に、この第3金型613から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第4金型614を抜取り方向M4へと抜き取る際にも、この第4金型614から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0071】
このように、本変形例のグロメット2は、実施形態のグロメット1と同じように、互いに硬質樹脂から成るベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)と支持部材160Bとの間に係合機構180を設けており、ベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)とグロメット本体160との間の保持力を確保することができる。そして、本変形例のグロメット本体160においては、第1金型611、第2金型612、第3金型613及び第4金型614から止水部材160Aに加えられる荷重を軽減させたまま第1金型611、第2金型612、第3金型613及び第4金型614をそれぞれの抜取り方向M1,M2,M3,M4へと抜き取ることができる(
図21及び
図22)。従って、本変形例のグロメット2においては、止水部材160Aの品質低下が抑えられたグロメット本体160を備えることができる。
【0072】
[変形例2]
本変形例のグロメット3は、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260を備える(
図23から
図25)。そして、このグロメット3は、そのベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260との間に、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)に設けた第1係合部281とグロメット本体260に設けた第2係合部282を係合させ、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260を組付け完了位置で保持する係合機構280を備える(
図23から
図25)。
【0073】
ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とは、前述した変形例1のベース部材110X(互いに組み付けられたベース部材110,110)において下記の変更を加えたものである。また、グロメット本体260とは、前述した変形例1のグロメット本体160において下記の変更を加えたものである。このため、実施形態や変形例1と同じ符号で付したものは、本変形例の説明においても実施形態や変形例1と同じ部品や部位等を示すものとする。
【0074】
本変形例のベース部材210Xは、変形例1のベース部材110Xにおいて、フランジ120をフランジ220へと変更したものに相当する(
図23から
図26)。そして、このフランジ220は、変形例1のフランジ120に係合機構280における突起形状の第1係合部281を設けたものに相当する。つまり、このフランジ220は、変形例1のフランジ120と同様の第1フランジ部121と第2フランジ部122と連結部123を有するのみならず、突起形状の第1係合部281を更に有している。よって、このベース部材210Xにおいては、変形例1のベース部材110Xとは異なり、第1フランジ部121と第2フランジ部122との間の環状の隙間を係合機構280のために利用しない。
【0075】
第1係合部281は、爪状の突起形状に形成され、フランジ220の外周縁部120aに設ける(
図23から
図26)。ここでは、ベース部材210Xの筒軸に対する直交方向で第2フランジ部122の外周面から第1係合部281を突出させる。第2フランジ部122の外周面には、その筒軸の軸周りに等間隔で4つの第1係合部281を設けている。
【0076】
尚、このベース部材210Xにおいては、ベース部材210Xの筒軸に対する直交方向で筒状体30の外周面30aから第2フランジ部122の外周面の位置までリブ状の連結部123を延在させている。
【0077】
グロメット本体260は、変形例1のグロメット本体160において、支持部材160Bを支持部材260Bへと変更したものに相当する(
図23から
図25及び
図27)。そして、この支持部材260Bは、変形例1の支持部材160Bにおいて、環状部165の内周面から突起形状の第2係合部182を無くした上で、その環状部165に係合機構280における空洞形状の第2係合部282を設けたものに相当する。つまり、このグロメット本体260は、変形例1のグロメット本体160と同様の止水部材160Aと支持部材260Bとを一体化させたものである。
【0078】
ここで、環状部165の内周面は、組付け完了位置で第2フランジ部122の外周面に対して同心上で対向配置される。そこで、第2係合部282は、環状部165と止水部材160Aの本体161との間にて、環状部165の内周面に矩形の開口を有する貫通孔状の空洞形状として形成される。この第2係合部282は、第1係合部281毎に設けられている。よって、ここで示す第2係合部282は、環状部165の周方向に等間隔で4つ形成されている。
【0079】
本変形例の係合機構280においては、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260とを組み付けて、これらが組付け完了位置となったときに、第1係合部281が開口から第2係合部282に挿入される。その第1係合部281は、第2係合部282にて支持部材260Bの環状部165に係止させる。これにより、グロメット3においては、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260が組付け完了位置に保たれる。
【0080】
ここで、支持部材260Bにおいては、変形例1の支持部材160Bと同じように、環状部165で囲われた円板状の空間内に第1リップ62が配置される。よって、フランジ220は、その支持部材260Bの円板状の空間を組付け完了位置で塞ぐ蓋としての機能を持つことになる。そして、このグロメット本体260においては、変形例1のグロメット本体160と同じように、フランジ220における第1フランジ部121の外周縁部121aの外径と環状部165の外径が同径になっており、第1フランジ部121の外周縁部121aと環状部165との間の隙間に水が掛かり難くなっている。このため、このグロメット本体260においては、その隙間から支持部材260Bの円板状の空間内への水の浸入を抑止することができ、この隙間から支持部材260Bの円板状の空間内に水が入り込んだとしても、その水を第1リップ62で止めることができる。
【0081】
グロメット本体260においては、第1金型621と第2金型622と第3金型623で止水部材160Aと支持部材260Bが形成される(
図28及び
図29)。第1金型621は、止水部材160Aと支持部材260Bの成形後に、本体161の軸方向における一方に向けた抜取り方向M1へと抜き取られる。また、第2金型622は、止水部材160Aと支持部材260Bの成形後に、本体161の軸方向における他方に向けた抜取り方向M2へと抜き取られる。第3金型623は、実施形態で示した第3金型603に相当するものであり、少なくとも2つ設けられ、径方向で外側に向けた抜取り方向M3へと抜き取られる。
【0082】
ここでは、第1リップ62が第1金型621によって形成され、第2リップ63(外周リップ63A、内周リップ63B)が第2金型622によって形成される(
図28及び
図29)。また、第3金型623は、実施形態の第3金型603と同じように外周リップ63Aにおける径方向で外側の壁面63cを形成すると共に、空洞形状の第2係合部282を形成する(
図28及び
図29)。
【0083】
止水部材160Aにおいては、第1金型621を抜取り方向M1へと抜き取る際に、この第1金型621から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第2金型622を抜取り方向M2へと抜き取る際に、この第2金型622から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第3金型623を抜取り方向M3へと抜き取る際にも、この第3金型623から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0084】
このように、本変形例のグロメット3は、変形例1のグロメット2と同じように、互いに硬質樹脂から成るベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)と支持部材260Bとの間に係合機構280を設けており、ベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)とグロメット本体260との間の保持力を確保することができる。そして、本変形例のグロメット本体260においては、第1金型621、第2金型622及び第3金型623から止水部材160Aに加えられる荷重を軽減させたまま第1金型621、第2金型622及び第3金型623をそれぞれの抜取り方向M1,M2,M3へと抜き取ることができる(
図28及び
図29)。従って、本変形例のグロメット3においては、止水部材160Aの品質低下が抑えられたグロメット本体260を備えることができる。
【0085】
[変形例3]
本変形例のグロメット4は、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360を備える(
図30及び
図31)。そして、このグロメット4は、そのベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360との間に、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)に設けた第1係合部381とグロメット本体360に設けた第2係合部382を係合させ、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360を組付け完了位置で保持する係合機構380を備える(
図30及び
図31)。
【0086】
ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とは、前述した変形例2のベース部材210X(互いに組み付けられたベース部材210,210)において下記の変更を加えたものである。また、ここで示すグロメット本体360は、前述した変形例2のグロメット本体260と同様のものとして構成されており、止水部材160Aと支持部材260Bを備えている。このため、実施形態や変形例1,2と同じ符号で付したものは、本変形例の説明においても実施形態や変形例1,2と同じ部品や部位等を示すものとする。
【0087】
本変形例のベース部材310Xは、変形例2のベース部材210Xにおいて、フランジ220をフランジ320へと変更したものに相当する(
図30から
図32)。そして、このフランジ320は、変形例2のフランジ220において第1フランジ部121と第2フランジ部122との間の環状の隙間を埋めたものに相当しており、実施形態のフランジ20に類する形状を採っている。よって、2つのベース部材310,310は、それぞれに、互いの接合面10aを合わせてフランジ320を形成する分割フランジ311を有している(
図30から
図32)。
【0088】
このフランジ320は、実施形態のフランジ20と同じように、支持部材260Bの環状部165が同軸上で嵌め込まれる環状の嵌合部320dを外周縁部320aに有している(
図30から
図32)。この嵌合部320dは、環状部165の内周面に対向配置させる第1壁面320d
1と、環状部165における突出方向側の環状の端面に対向配置させる第2壁面320d
2と、を有している(
図30及び
図32)。そして、このフランジ320においては、その第1壁面320d
1に係合機構380における突起形状の第1係合部381が設けられている(
図30及び
図32)。その第1係合部381は、爪状の突起形状に形成される。そして、第1壁面320d
1には、ベース部材310Xの筒軸の軸周りに等間隔で4つの第1係合部381を設けている。
【0089】
また、係合機構380の第2係合部382は、変形例2の第2係合部282と同じように、支持部材260Bの環状部165に貫通孔状の空洞形状としてその軸周りに等間隔で4つ設けられている(
図30及び
図31)。
【0090】
本変形例の係合機構380においては、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360とを組み付けて、これらが組付け完了位置となったときに、第1係合部381が開口からグロメット本体360の第2係合部382に挿入される。その第1係合部381は、第2係合部382にて支持部材260Bの環状部165に係止させる。これにより、グロメット4においては、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360が組付け完了位置に保たれる。
【0091】
ここで、本変形例の支持部材260Bにおいては、変形例2の支持部材260Bと同じように、環状部165で囲われた円板状の空間内に第1リップ62が配置される。よって、フランジ320は、その支持部材260Bの円板状の空間を組付け完了位置で塞ぐ蓋としての機能を持つことになる。そして、このグロメット本体360においては、フランジ320における外周縁部320aの嵌合部320dに環状部165が嵌め込まれた状態で、変形例2のグロメット本体260と同じように、フランジ320における外周縁部320aの外径と環状部165の外径が同径になっており、第2壁面320d2と環状部165との間の隙間に水が掛かり難くなっている。このため、このグロメット本体360においては、その隙間から支持部材260Bの円板状の空間内への水の浸入を抑止することができ、この隙間から支持部材260Bの円板状の空間内に水が入り込んだとしても、その水を第1リップ62で止めることができる。
【0092】
グロメット本体360は、変形例2のグロメット本体260と同じように、第1金型621と第2金型622と第3金型623で止水部材160Aと支持部材260Bが形成される。このため、止水部材160Aにおいては、第1金型621を抜取り方向M1へと抜き取る際に、この第1金型621から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第2金型622を抜取り方向M2へと抜き取る際に、この第2金型622から加えられる荷重を軽減させることができる。また、止水部材160Aにおいては、第3金型623を抜取り方向M3へと抜き取る際にも、この第3金型623から加えられる荷重を軽減させることができる。
【0093】
このように、本変形例のグロメット4は、変形例2のグロメット3と同じように、互いに硬質樹脂から成るベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)と支持部材260Bとの間に係合機構380を設けており、ベース部材310X(互いに組み付けられたベース部材310,310)とグロメット本体360との間の保持力を確保することができる。そして、本変形例のグロメット本体360においては、第1金型621、第2金型622及び第3金型623から止水部材160Aに加えられる荷重を軽減させたまま第1金型621、第2金型622及び第3金型623をそれぞれの抜取り方向M1,M2,M3へと抜き取ることができる。従って、本変形例のグロメット4においては、止水部材160Aの品質低下が抑えられたグロメット本体360を備えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1,2,3,4 グロメット
10X,110X,210X,310X ベース部材
20,120,220,320 フランジ
20a,120a,320a 外周縁部
20d 嵌合部
20d1 第1壁面
20d2 第2壁面
30 筒状体
30a 外周面
60,160,260,360 グロメット本体
60A,160A 止水部材
60B,160B,260B 支持部材
61,161 本体
61c 内周面
62 第1リップ
63 第2リップ
65a 第1環状部(環状部)
65b 第2環状部
80,180,280,380 係合機構
81,181,281,381 第1係合部
82,182,282,382 第2係合部
161a 外周縁部
161a1 接合部
165 環状部
501 挿通対象物
502 貫通孔
503 周縁部
S1 一方の空間
S2 他方の空間
We 配索材