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特許7659073評価用プログラム作成装置、及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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  • 特許-評価用プログラム作成装置、及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】評価用プログラム作成装置、及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20250401BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
G05B19/18 W
G05B19/4093 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023543620
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031571
(87)【国際公開番号】W WO2023026484
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊祐
(72)【発明者】
【氏名】相澤 誠彰
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162102(JP,A)
【文献】特開2016-130908(JP,A)
【文献】特開2018-181217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 ~ 19/416
G05B 19/42 ~ 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械のパラメータの調整を評価するための評価用プログラムを作成する評価用プログラム作成装置であって、
前記産業機械による加工に係るパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータに基づいて前記パラメータの評価に必要な加工形状を選択する形状選択部と、
前記パラメータおよび前記加工形状に基づいて前記パラメータの評価に必要な当該加工形状の各部寸法を計算する寸法計算部と、
前記形状選択部で選択した加工形状と前記寸法計算部で計算した各部寸法とに基づいて評価用プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記プログラム作成部が作成した評価用プログラムを出力するプログラム出力部と、
を備えた評価用プログラム作成装置。
【請求項2】
前記各部寸法は、直線距離または曲面曲率の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の評価用プログラム作成装置。
【請求項3】
産業機械のパラメータの調整を評価するための評価用プログラムを作成する評価用プログラム作成装置としてコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
前記産業機械による加工に係るパラメータを取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータに基づいて前記パラメータの評価に必要な加工形状を選択する形状選択部と、
前記パラメータおよび前記加工形状に基づいて前記パラメータの評価に必要な当該加工形状の各部寸法を計算する寸法計算部と、
前記形状選択部で選択した加工形状と前記寸法計算部で計算した各部寸法とに基づいて評価用プログラムを作成するプログラム作成部と、
前記プログラム作成部が作成した評価用プログラムを出力するプログラム出力部と、
してコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価用プログラム作成装置、及びプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工プログラムを作成し、該加工プログラムに基づいて工作機械、放電加工機などの産業機械を制御して、ワークの加工が行われている。例えば工作機械では、加工プログラム内で各軸の移動を指令する。この時指令する移動速度は工具と加工物の相対移動(工具移動)の最大速度である。実際にこの指令に基づいて工作機械を制御する際には、各軸の移動開始時やコーナ部、曲線部分などの加工時には、各軸に設定された最大加速度、コーナの速度差、補間後加減速時定数、内回り許容誤差などのパラメータに従い各軸の移動速度が変動するため、常に指令した移動速度での加工が行われるわけではない。これらの加工に係るパラメータは、加工後のワークの加工面品位を確認しながら工作機械のオペレータが調整している。
【0003】
加工に係るパラメータの調整に関連する従来技術として特許文献1がある。特許文献1には、制御パラメータを変更した後にテストプログラムを実行し、その実行結果を所定の評価基準で評価することで、最適な制御パラメータを抽出する技術が開示されている。また、特許文献2には、機械学習の技術を用いて加工に係るパラメータを調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-130908号公報
【文献】特開2018-181217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
産業機械のパラメータを調整する際には、パラメータを調整し、調整したパラメータを設定した産業機械で加工を試行する。その後、目標の加工結果が得られているのか加工結果を評価する。そして、予想通りでなかった場合、上記手順を繰り返す。この手順は、手動でパラメータを調整する場合であっても、また、シミュレーションや機械学習を用いてパラメータを調整する場合であっても、同様である。この時、調整したパラメータによる加工の試行には評価用プログラムが用いられる。
【0006】
評価用プログラムは、一般に固定的なものであり、どのようなパラメータの調整が行われたとしても同じ評価用プログラムが用いられる。そのため、従来の評価用プログラムはさまざまなパラメータの設定値に対して評価が行えるようにする必要がある。図9は、評価用プログラムにより制御される工具の経路を例示している。図9に例示されるように、従来の評価用プログラムにより制御される工具経路は、1辺の長さが長く、少なくとも四角コーナとR角コーナなどを含むものであった。そのため、例えば円弧に係るパラメータの調整をしていない場合にも、評価時にR角コーナの加工が行われる。このR角コーナの加工に係る評価は、パラメータの調整結果の評価に用いられないため無駄な加工となる。このような評価時の無駄な加工が、パラメータ調整作業のサイクルタイムを長くする原因となっている。
そこで、パラメータの調整をする過程においてパラメータ設定値に合わせた最適な評価用プログラムを提供する技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示による評価用プログラム作成装置は、パラメータの調整を行う際に、調整したパラメータの項目や設定値に合わせて、当該項目や設定値を評価するに足る最適な評価用プログラムを作成することで、上記課題を解決する。
【0008】
そして、本開示の一態様は、産業機械のパラメータの調整を評価するための評価用プログラムを作成する評価用プログラム作成装置であって、前記産業機械による加工に係るパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータに基づいて前記パラメータの評価に必要な加工形状を選択する形状選択部と、前記パラメータおよび前記加工形状に基づいて前記パラメータの評価に必要な当該加工形状の各部寸法を計算する寸法計算部と、前記形状選択部で選択した加工形状と前記寸法計算部で計算した各部寸法とに基づいて評価用プログラムを作成するプログラム作成部と、前記プログラム作成部が作成した評価用プログラムを出力するプログラム出力部と、を備えた評価用プログラム作成装置である。
【0009】
本開示の他の態様は、産業機械のパラメータの調整を評価するための評価用プログラムを作成する評価用プログラム作成装置としてコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、前記産業機械による加工に係るパラメータを取得するパラメータ取得部と、前記パラメータに基づいて前記パラメータの評価に必要な加工形状を選択する形状選択部と、前記パラメータおよび前記加工形状に基づいて前記パラメータの評価に必要な当該加工形状の各部寸法を計算する寸法計算部と、前記形状選択部で選択した加工形状と前記寸法計算部で計算した各部寸法とに基づいて評価用プログラムを作成するプログラム作成部と、前記プログラム作成部が作成した評価用プログラムを出力するプログラム出力部と、してコンピュータを動作させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様により、パラメータの調整を試行する毎に、調整したパラメータを評価するのに適する評価用プログラムへと変更できるので、パラメータの調整効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による評価用プログラム作成装置の概略的なハードウェア構成図である。
図2】本発明の一実施形態による評価用プログラム作成装置の概略的な機能を示すブロック図である。
図3】評価形状データの例を示す図である。
図4】四角コーナ形状の寸法条件の例を説明する図である。
図5】R角コーナ形状の寸法条件の例を説明する図である。
図6】加工形状をつなぎ合わせる処理について説明する図である。
図7】加工形状を省略する処理について説明する図である。
図8】加減速調整装置と連携して動作する評価用プログラム作成装置の例を示す図である。
図9】評価用プログラムにより制御される工具の経路を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は本発明の一実施形態による評価用プログラム作成装置の要部を示す概略的なハードウェア構成図である。本発明の評価用プログラム作成装置1は、例えば制御用プログラムに基づいて産業機械を制御する制御装置として実装することができる。また、本発明の評価用プログラム作成装置1は、制御用プログラムに基づいて産業機械を制御する制御装置に併設されたパソコンや、有線/無線のネットワークを介して制御装置と接続されたパソコン、セルコンピュータ、フォグコンピュータ6、クラウドサーバ7の上に実装することができる。本実施形態では、評価用プログラム作成装置1を、制御用プログラムに基づいて産業機械を制御する制御装置と有線/無線のネットワークを介して接続されたパソコンの上に実装した例を示す。
【0013】
本実施形態による評価用プログラム作成装置1が備えるCPU11は、評価用プログラム作成装置1を全体的に制御するプロセッサである。CPU11は、バス22を介してROM12に格納されたシステム・プログラムを読み出し、該システム・プログラムに従って評価用プログラム作成装置1全体を制御する。RAM13には一時的な計算データや表示データ、及び外部から入力された各種データ等が一時的に格納される。
【0014】
不揮発性メモリ14は、例えば図示しないバッテリでバックアップされたメモリやSSD(Solid State Drive)等で構成され、評価用プログラム作成装置1の電源がオフされても記憶状態が保持される。不揮発性メモリ14には、産業機械2から取得されたデータ、インタフェース15を介して外部機器72から読み込まれた制御用プログラムやデータ、入力装置71を介して入力されたデータ、ネットワーク5を介して産業機械4や他の装置から取得されたプログラム、データ、パラメータなどが記憶される。不揮発性メモリ14に記憶されたプログラム、データ、パラメータなど、実行時/利用時にはRAM13に展開されても良い。また、ROM12には、公知の解析プログラムなどの各種システム・プログラムがあらかじめ書き込まれている。
【0015】
インタフェース15は、評価用プログラム作成装置1のCPU11とUSB装置等の外部機器72と接続するためのインタフェースである。外部機器72側からは、例えば産業機械2の制御に用いられる制御用プログラムや設定データ等が読み込まれる。また、評価用プログラム作成装置1内で編集した制御用プログラムや設定データ等は、外部機器72を介して外部記憶手段に記憶させることができる。
【0016】
インタフェース20は、評価用プログラム作成装置1のCPUと有線乃至無線のネットワーク5とを接続するためのインタフェースである。ネットワーク5には、工作機械や放電加工機などの他の産業機械4やフォグコンピュータ6、クラウドサーバ7等が接続され、評価用プログラム作成装置1との間で相互にデータのやり取りを行っている。
【0017】
表示装置70には、メモリ上に読み込まれた各データ、プログラム等が実行された結果として得られたデータ等がインタフェース17を介して出力されて表示される。また、キーボードやポインティングデバイス等から構成される入力装置71は、オペレータによる操作に基づく指令,データ等をインタフェース18を介してCPU11に渡す。
【0018】
図2は、本発明の第1実施形態による評価用プログラム作成装置1が備える機能を概略的なブロック図として示したものである。本実施形態による評価用プログラム作成装置1が備える各機能は、図1に示した評価用プログラム作成装置1が備えるCPU11がシステム・プログラムを実行し、評価用プログラム作成装置1の各部の動作を制御することにより実現される。
【0019】
本実施形態の評価用プログラム作成装置1は、パラメータ取得部100、形状選択部110、寸法計算部120、プログラム作成部130、プログラム出力部140を備える。また、評価用プログラム作成装置1のRAM13又は不揮発性メモリ14の上には、それぞれのパラメータと、そのパラメータを評価するために用いる加工形状との対応関係を示す評価形状データを予め記憶する評価形状記憶部210が用意されている。
【0020】
パラメータ取得部100は、産業機械4による加工に係る評価対象となるパラメータの項目とそのパラメータ値を取得する。パラメータ取得部100が取得するのは、産業機械4において調整が行われた加工に係るパラメータの項目とパラメータ値である。加工に係るパラメータとしては、直線の加速度、直線の加加速度、補間後加減速時定数、コーナ速度差、曲面の許容加速度、位置ループゲイン、フィードフォワード係数などが例示される。パラメータ取得部100は、例えば産業機械4に設定されている加工に係るパラメータの内で、前回参照してからその値が変更されたパラメータについて、その項目とパラメータ値を取得するようにしてもよい。また、産業機械4で実行された加工プログラム内の編集された加工に係るパラメータを取得するようにしてもよい。更に、例えばどのパラメータが変更されたのかについて、入力装置71からオペレータが指示するようにしてもよい。更に、寸法計算部120からの要求に応じて、寸法の計算に必要な追加のパラメータの値を取得するようにしてよい。パラメータ取得部100が取得した加工に係るパラメータの項目とそのパラメータ値は、形状選択部110に出力される。
【0021】
形状選択部110は、評価対象となるパラメータの項目とパラメータ値に基づいて、そのパラメータ値の評価に必要な加工形状を選択する。本実施形態による形状選択部110は、パラメータと、そのパラメータの評価に用いる加工形状との対応関係を示す評価形状データを記憶する評価形状記憶部210を参照し、それぞれのパラメータの評価に用いる形状を選択する。
【0022】
図3は、評価形状記憶部210に予め記憶されている評価形状データの例を示している。評価形状データは、少なくともそれぞれの産業機械の種類ごとに、加工に係るパラメータと、そのパラメータの評価に用いる加工形状との対応関係を定義する。図3の例では、評価形状データに含まれる加工形状を、それぞれの形状の名称で示しているが、それぞれの加工形状は、例えばその形状を加工する際に用いるプログラム指令の列で定義すると好適である。この時、例えば四角コーナ形状を「G01 X{変数:x} F{パラメータ:送り速度};G01 Y{変数:y} F{パラメータ:送り速度}」などといったように、所定のパラメータの値や、後述する寸法条件で計算可能な変数を含むプログラム指令の列で定義することができる。評価に用いる加工形状としては、所定の長さの直線形状、所定の角度の角コーナ形状、所定の曲率及び内角のR角コーナ形状、所定回数連続する微小線分などが例示される。
【0023】
それぞれの評価形状データは、1つのパラメータにたいして複数の加工形状を対応付けてもよい。これは、そのパラメータを評価するために、複数の加工形状が必要であることを意味する。また、評価するパラメータの範囲に対して、評価に用いる加工形状をそれぞれ設定できるようにしてもよい。例えば、コーナの速度差が所定の値V1以下である場合は、直角の角コーナ形状で評価をするが、コーナの速度差が所定の値V1より大きい場合は、直角の角コーナ形状と、より鋭角に曲がる角コーナ形状の2つの加工形状で評価をする、といった設定をすることも可能である。
【0024】
評価形状データは、更にそれぞれの加工形状における各部の寸法に係る条件を含んでいてよい。寸法の条件は、加工形状の所定の部分に係る寸法を、加工に係るパラメータの値から算出する数式の形で定義されていてよい。この数式は、加工形状のプログラム指令の列に含まれる所定の変数の値を計算するためのものであってよい。また、1つの加工形状に対して、複数の寸法条件が定義されていてよい。加工形状の寸法の条件は、寸法計算部120で用いられる。
【0025】
寸法計算部120は、評価対象となるパラメータと、形状選択部110が選択した加工形状に基づいて、それぞれのパラメータの評価に必要な当該加工形状の各部の寸法を計算する。寸法計算部120は、評価形状記憶部210に記憶される寸法条件に基づいて、それぞれの加工形状の各部寸法を計算する。寸法計算部120は、各部の寸法を計算するために必要となる追加のパラメータの値をパラメータ取得部100から取得する。
【0026】
例えば、寸法計算部120は、コーナの速度差のパラメータに設定されるパラメータ値に基づいて、四角コーナの加工形状におけるコーナ加工後の直線の長さ寸法を決定する。図4は、四角コーナを加工後の直線を加工する際の速度変化を示す図である。図4に例示するように、直線形状を加工する際、工具は加工開始時に直線の加速度alで送り速度Fまで加速し、送り速度Fで定速移動した後、直線の加速度a1で送り速度0まで減速する。そして、送り速度F定速移動する部分には、コーナ部通過後の加減速が振動となって現れる。そのため、この部分が所定以上の長さとなるように長さ寸法を設定する必要がある。直線の加速度をal、コーナの速度差Vc、送り速度F、定速移動する部分がt1秒だけ必要であるとした場合、コーナ加工後の直線の長さ寸法yは、以下の数1式で計算できる。そして、寸法計算部120は、この条件を満足する範囲で最も加工時間が短くなるように、即ち最も長さが短くなるように長さ寸法を計算する。
【0027】
【数1】
【0028】
また、例えば寸法計算部120は、曲面の許容加速度のパラメータに設定される値に基づいて、R角コーナの加工形状における曲率寸法を決定する。図5は、R角コーナを加工する際の工具の移動経路を示す図である。R角コーナを加工する際の曲面の長さは曲率(曲率半径)によって定まる。一般に、曲面の加工状態を評価する際には、送り速度をF、曲面の許容加速度がacである場合に、以下の数2式で計算される曲率κが以下の条件を満たすことが望ましい。なお、rはR角コーナの曲率半径である。そして、寸法計算部120は、この条件を満足する範囲で最も曲率が小さくなるように曲率寸法を計算する。
【0029】
【数2】
【0030】
プログラム作成部130は、形状選択部110で選択した加工形状と寸法計算部120で計算した各部寸法とに基づいて評価用プログラム200を作成する。プログラム作成部130が作成する評価用プログラム200は、評価対象のパラメータに基づいて選択した加工形状を順に結合したものになる。また、評価用プログラム200により移動する工具経路の各部の寸法は、寸法計算部120により計算された寸法となる。プログラム作成部130は、作成した評価用プログラム200をプログラム出力部140に出力する。
【0031】
プログラム作成部130は、加工形状を前後に結合する際に、前の加工形状の終点における工具移動方向と、後の加工形状の始点における工具移動方向とが滑らかに接続されるように後の加工形状の向きを変更する。
また、プログラム作成部130は、加工形状を前後に結合する際に、前の加工形状の最後の移動指令と、後の加工形状の最初の移動指令とを比較する。そして、これらが同じ種類の移動指令である場合、前後となる移動指令を1つの移動指令で置き換えた上で、加工形状を前後に結合する。この時、置き換える移動指令の寸法は、前後の移動指令に定義される寸法条件を満たす範囲で加工時間が短くなるように設定すればよい。例えば、図6に例示するように、四角コーナ形状の後にR角コーナ形状を結合する場合を考える。この時、四角コーナ形状の最後の移動指令には、寸法条件が定義されている。また、R角コーナ形状の最初の移動指令には、寸法条件が定義されていない。この場合、四角コーナ形状の最後の移動指令及びR角コーナ形状の最初の移動指令を、四角コーナ形状の最後の移動指令の寸法条件を満たす範囲で加工時間が短くなる移動指令に置き換えた上で結合する。
【0032】
プログラム作成部130は、2以上のパラメータの評価に共通に用いることができる加工形状がある場合、それらの加工形状を1つの加工形状へと統合するようにしてよい。例えば、直線の加速度のパラメータ及びコーナの速度差のパラメータを評価する必要がある場合、それぞれの評価に用いる加工形状は直線形状及び四角コーナ形状となる。ここで、寸法計算部120が、直線形状の長さ寸法をX1、四角コーナ形状のコーナ加工後の直線の長さ寸法をX2と計算していたとする。この時、X1の長さがX2の長さよりも大きい場合、図7に例示するように、コーナ加工後の直線の長さ寸法をX1とする四角コーナ形状へと統合するようにしてよい。統合した形状においては、コーナ加工後の直線において直線の加速度のパラメータ及びコーナ速度差のパラメータの両方のパラメータを評価することができる。
【0033】
プログラム出力部140は、プログラム作成部130が作成した評価用プログラム200を出力する。プログラム出力部140は、表示装置70に対して表示出力することで、評価用プログラム200をオペレータに提示するようにしてもよい。また、プログラム出力部140は、評価用プログラム200を、ネットワーク5を介して産業機械4に対して出力するようにしてよい。更に、フォグコンピュータ6やクラウドサーバ7などの上位のコンピュータに対して出力するようにしてもよい。
【0034】
上記構成を備えた評価用プログラム作成装置1は、パラメータの調整を試行する毎に、調整したパラメータを評価するのに適する評価用プログラムへと変更できるので、パラメータの調整効率が向上する。例えば、オペレータが所定の産業機械のパラメータの調整作業をしている際に、パラメータの調整を行うたびに、そのパラメータを評価するために必要最低限の形状を加工する評価用プログラムが作成される。このようにすることで、パラメータの調整を行うたびに固定的な評価用プログラムを実行する場合と比較して、余計な加工を行わなくて済む。そのため、パラメータの調整におけるサイクルタイムが向上する。これは、手動でパラメータの調整を行う場合に限るものでは無く、例えばシミュレーション装置や、機械学習器などを用いてパラメータの調整を行う場合にも利用可能である。
【0035】
例えば、図8に例示するように、産業機械4における加工に係るパラメータを機械学習の技術を用いて調整する加減速調整装置300がある場合を考える。加減速調整装置300は、条件に適したパラメータの調整を推定する機械学習装置350を備えている。そして、加減速調整装置300は、機械学習装置350が推定したパラメータの調整を行った上で、加工を試行し、その結果から機械学習装置350が推定したパラメータの調整について評価をする。機械学習装置350は、その評価結果に基づいて、パラメータの調整を学習する。このような動作を行う加減速調整装置300において、機械学習装置350がパラメータの調整を推定した際に、その推定したパラメータの調整を本発明の評価用プログラム作成装置1に出力する。そして、評価用プログラム作成装置1が出力した評価用プログラム200を用いて、加工を試行し、パラメータの調整について評価をする。これにより、繰り返し行われるパラメータの調整の評価効率が格段に向上することが見込まれる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態の例のみに限定されることなく、適宜の変更を加えることにより様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 評価用プログラム作成装置
2 産業機械
4 産業機械
5 ネットワーク
6 フォグコンピュータ
7 クラウドサーバ
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 不揮発性メモリ
15,17,18,20 インタフェース
22 バス
70 表示装置
71 入力装置
72 外部機器
100 パラメータ取得部
110 形状選択部
120 寸法計算部
130 プログラム作成部
140 プログラム出力部
200 評価用プログラム
210 評価形状記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9