IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新明和工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図1
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図2
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図3
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図4
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図5
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図6
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図7
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図8
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図9
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図10
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図11
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図12
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図13
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図14
  • 特許-多芯ケーブルの加工装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-31
(45)【発行日】2025-04-08
(54)【発明の名称】多芯ケーブルの加工装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/14 20060101AFI20250401BHJP
   H02G 1/12 20060101ALI20250401BHJP
   B21F 1/02 20060101ALI20250401BHJP
【FI】
H02G1/14
H02G1/12 053
B21F1/02 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023554662
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 JP2022038481
(87)【国際公開番号】W WO2023063428
(87)【国際公開日】2023-04-20
【審査請求日】2024-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2021169027
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶紀
(72)【発明者】
【氏名】白井 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 守弘
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-123215(JP,A)
【文献】特開2021-9053(JP,A)
【文献】特開2009-245703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/14
H02G 1/12
B21F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースと前記シースに挿通された複数の芯線とを有する多芯ケーブルを加工する装置であって、
周方向に沿った切れ目を前記シースに形成する切込装置と、
前記切れ目よりも前記多芯ケーブルの先端側のシースと根元側のシースとのうちの少なくとも一方を前記多芯ケーブルの長手方向に移動させて、前記複数の芯線を露出させる引き抜き装置と、
前記複数の芯線のうち特定の芯線の前記多芯ケーブルの周方向に関する位置を検出する検出装置と、
前記検出された前記特定の芯線の周方向の位置に基づいて前記多芯ケーブルを回転させ、前記特定の芯線を予め定められた周方向の位置に移動させる回転装置と、を備えた、
多芯ケーブルの加工装置。
【請求項2】
前記複数の芯線は、ドレイン線と複数のコア線からなり、
前記特定の芯線は、前記ドレイン線であり、
前記検出されたドレイン線の周方向の位置に基づき、前記ドレイン線および前記複数のコア線のうちの少なくとも一方を付勢することによって、前記ドレイン線と前記複数のコア線とを分離する分離装置と、
前記分離されたドレイン線を絶縁処理する絶縁処理装置と、
前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、前記回転装置、前記分離装置、および前記絶縁処理装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、をさらに備えた、
請求項1に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項3】
前記絶縁処理の前に、前記分離されたドレイン線を周方向に撚りながら引っ張りテンションを加えることにより矯正する矯正装置をさらに備えている、
請求項2に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項4】
前記絶縁処理装置は、
前記分離されたドレイン線を熱収縮チューブに挿入する挿入装置と、
前記ドレイン線が挿入された状態の前記熱収縮チューブを加熱する加熱装置と、を備えている、
請求項2または3に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項5】
前記引き抜き装置は、前記先端側のシースが前記根元側のシースに対して周方向に回転するように前記先端側のシースおよび前記根元側のシースのうちの少なくとも一方を回転させながら、前記先端側のシースを引き抜き、前記複数の芯線の撚りをほどくように構成されている、
請求項1~4のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項6】
前記引き抜き装置は、
前記複数の芯線の一部が露出し、かつ、前記複数の芯線の他の一部に前記先端側のシースが残るように前記先端側のシースを引き抜くセミストリップを、前記検出装置による前記特定の芯線の検出よりも前に行い、
前記先端側のシースを前記複数の芯線から離脱させる全ストリップを、前記検出装置による前記特定の芯線の検出よりも後に行うように構成されている、
請求項1~5のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項7】
前記複数の芯線を所定の間隔で並ばせる整列装置をさらに備え、
前記整列装置は、
複数の櫛歯を有し、前記複数の芯線に対応した複数の隙間が前記櫛歯同士の間に設けられた整列部材と、
前記整列部材および前記多芯ケーブルのうちの少なくとも一方を移動させ、前記複数の芯線を前記整列部材の前記複数の隙間にそれぞれ挿入する移動装置と、を備え、
前記複数の隙間は、前記複数の芯線が挿入される際の移動方向前方に向かうほど互いに離れるように形成され、前記移動方向の前端において前記所定の間隔で並んでいる、
請求項1~6のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項8】
それぞれ1本の前記芯線を把持可能な複数の把持部材と、
前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部の被覆を剥くストリップ装置と、
前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持された前記芯線を個別に前記ストリップ装置に装填する装填装置と、をさらに備えている、
請求項1~7のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項9】
前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部に端子を圧着する圧着装置をさらに備え、
前記装填装置は、前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持されるとともに先端部の被覆が剥かれた前記芯線を、個別に前記圧着装置に装填するように構成されている、
請求項8に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項10】
前記複数の芯線は、複数のコア線を含み、
前記コア線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記コア線に防水ゴム栓を装着するゴム栓装着装置をさらに備え、
前記装填装置は、前記コア線の先端部の被覆が剥かれる前に、前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持された前記コア線を個別に前記ゴム栓装着装置に装填するように構成されている、
請求項8または9に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項11】
前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの少なくとも1つが設けられた加工ステーションと、
前記加工ステーションと所定方向に並んで配置され、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの他の少なくとも1つが設けられた他の加工ステーションと、
前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、をさらに備え、
前記第1搬送装置は、
一端と他端とが前記所定方向に並ぶように曲げられた前記多芯ケーブルを把持する把持装置と、
前記把持装置を前記所定方向に移動させる把持装置移動装置と、を備え、
前記他の加工ステーションに設けられた装置は、前記加工ステーションに設けられた装置が前記多芯ケーブルの前記一端を加工しているときに前記他端を加工する、
請求項1~10のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項12】
前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、
前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部の被覆を剥くストリップ装置と、
前記芯線の先端部が装填されるように構成され、前記ストリップ装置によって前記被覆が剥かれた芯線の先端部に端子を圧着する圧着装置と、
前記ストリップ装置および前記圧着装置に前記多芯ケーブルを搬送する第2搬送装置と、をさらに備え、
前記第2搬送装置は、
それぞれ1本の前記芯線を把持可能な複数の把持部材を備えたキャリアと、
前記多芯ケーブルを引き取る引き取り位置と、前記ストリップ装置に対向した第1対向位置と、前記圧着装置に対向した第2対向位置と、前記端子が圧着された後の前記多芯ケーブルを離すリリース位置との間で前記キャリアを移動させるキャリア移動装置と、を備えている、
請求項1~11のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項13】
前記第2搬送装置は、複数の前記キャリアを備え、
前記キャリア移動装置は、前記複数のキャリアを循環移動させる、
請求項12に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項14】
前記キャリアの循環移動は、前記引き取り位置、前記第1対向位置、および前記第2対向位置の間の横移動と、前記引き取り位置、前記第1対向位置、および前記第2対向位置よりも下方位置との間の上下移動とを含む循環移動であり、
前記キャリアの前記複数の把持部材は、前記キャリアが前記引き取り位置よりも下方位置から前記引き取り位置に移動するときに前記複数の芯線を把持する、
請求項13に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項15】
前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの1つ以上が設けられた加工ステーションを複数備え、
前記第1搬送装置は、
前記複数の加工ステーションにそれぞれ対向するように設けられ、前記多芯ケーブルを把持する複数の固定把持装置と、
それぞれ前記多芯ケーブルを把持するように構成され、前記複数の固定把持装置のうち隣り合った2つの固定把持装置の間を往復移動する1つまたは複数の移動把持装置と、を備えている、
請求項12~14のいずれか一つに記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項16】
前記第1搬送装置から前記多芯ケーブルを受け取り、前記第2搬送装置に前記多芯ケーブルを引き渡す受け渡し装置をさらに備えている、
請求項15に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項17】
前記複数の加工ステーションは、前記移動把持装置による前記多芯ケーブルの搬送方向に並んで配置され、
前記複数の加工ステーションよりも前記搬送方向の上流に配置され、両端が前記搬送方向に並ぶように前記多芯ケーブルを略U字に曲げる屈曲装置をさらに備え、
前記複数の固定把持装置は、それぞれ、前記屈曲装置によって曲げられた前記多芯ケーブルの一端を把持するように構成され、
前記各加工ステーションに設けられた装置は、上流側に隣接する加工ステーションに設けられた装置が前記曲げられた前記多芯ケーブルの上流側の端部を加工しているときに下流側の端部を加工する、
請求項15または16に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項18】
前記キャリアの前記複数の把持部材は、
前記曲げられた多芯ケーブルの上流側の端部に露出している前記複数の芯線を把持する上流側グループと、
前記上流側グループよりも前記搬送方向の下流に配置され、前記曲げられた多芯ケーブルの下流側の端部に露出している前記複数の芯線を把持する下流側グループと、を含んでいる、
請求項17に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項19】
前記複数の把持部材は、前記複数の固定把持装置によって把持されるよりも前記多芯ケーブルの両端の間隔が狭くなるように前記多芯ケーブルを把持する、
請求項18に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【請求項20】
前記第1搬送装置から前記多芯ケーブルを受け取り、前記第2搬送装置に前記多芯ケーブルを引き渡す受け渡し装置をさらに備え、
前記受け渡し装置は、
前記多芯ケーブルの両端をそれぞれ把持する一対の把持部材と、
前記一対の把持部材を接近または離反させ、前記一対の把持部材の間の距離を、前記第1搬送装置に把持されているときの前記多芯ケーブルの両端間の距離に対応させ、または、前記第2搬送装置に把持されるときの前記多芯ケーブルの両端間の距離に対応させる駆動装置と、を備えている、
請求項19に記載の多芯ケーブルの加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多芯ケーブルの加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドレイン線を有する多芯シールドケーブルのドレイン線を絶縁処理する方法が従来から提案されている。例えば特許文献1には、シースを除去して被覆電線(コア線)とドレイン線とを露出させた後に、ドレイン線を90度曲げてコア線から分離し、熱収縮チューブにドレイン線を挿入するドレイン線の絶縁処理方法が開示されている。特許文献1に開示された方法では、その後、熱収縮チューブが加熱収縮されることにより、ドレイン線が絶縁処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている方法では、ドレイン線を曲げてコア線から分離し、熱収縮チューブにドレイン線を挿入する作業は、手作業により行われている。このように、多芯ケーブルの各芯線の処理は自動化されていない場合があるが、その理由の1つとして、多芯ケーブルの各芯線の位置が特定されていないことが挙げられる。ここでは、多芯ケーブルの複数の芯線に対して処理を行いやすくするために、多芯ケーブルの複数の芯線の位置を特定できる多芯ケーブルの加工装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置は、シースと前記シースに挿通された複数の芯線とを有する多芯ケーブルを加工する装置であって、周方向に沿った切れ目を前記シースに形成する切込装置と、前記切れ目よりも前記多芯ケーブルの先端側のシースと根元側のシースとのうちの少なくとも一方を前記多芯ケーブルの長手方向に移動させて、前記複数の芯線を露出させる引き抜き装置と、前記複数の芯線のうち特定の芯線の前記多芯ケーブルの周方向に関する位置を検出する検出装置と、前記検出された前記特定の芯線の周方向の位置に基づいて前記多芯ケーブルを回転させ、前記特定の芯線を予め定められた周方向の位置に移動させる回転装置と、を備えている。
【0006】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、検出装置によって検出された特定の芯線の周方向の位置に基づいて多芯ケーブルを回転させ、特定の芯線の位置を予め定められた周方向の位置とすることができる。これにより、多芯ケーブルの複数の芯線の位置を特定することができる。
【0007】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記複数の芯線は、ドレイン線と複数のコア線からなっており、前記特定の芯線は、前記ドレイン線である。多芯ケーブルの加工装置は、前記検出されたドレイン線の周方向の位置に基づき、前記ドレイン線および前記複数のコア線のうちの少なくとも一方を付勢することによって、前記ドレイン線と前記複数のコア線とを分離する分離装置と、前記分離されたドレイン線を絶縁処理する絶縁処理装置と、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、前記回転装置、前記分離装置、および前記絶縁処理装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、をさらに備えている。
【0008】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、多芯ケーブルがドレイン線を備えた多芯シールドケーブルである場合に、ドレイン線の絶縁処理までの多芯シールドケーブルの加工を自動で行うことができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記絶縁処理の前に、前記分離されたドレイン線を周方向に撚りながら引っ張りテンションを加えることにより矯正する矯正装置をさらに備えている。
【0010】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、ドレイン線が矯正されることにより、ドレイン線の絶縁処理を容易に行うことができる。
【0011】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記絶縁処理装置は、前記分離されたドレイン線を熱収縮チューブに挿入する挿入装置と、前記ドレイン線が挿入された状態の前記熱収縮チューブを加熱する加熱装置と、を備えている。
【0012】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、熱収縮チューブにドレイン線を挿入し、熱収縮チューブを熱収縮させることにより絶縁処理が行われる。そのため、他の方法、例えば、ドレイン線に絶縁テープを巻き付ける方法に比べて、自動機による絶縁処理を行いやすい。
【0013】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記引き抜き装置は、前記先端側のシースが前記根元側のシースに対して周方向に回転するように前記先端側のシースおよび前記根元側のシースのうちの少なくとも一方を回転させながら、前記先端側のシースを引き抜き、前記複数の芯線の撚りをほどくように構成されている。
【0014】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、複数の芯線の撚りをほどくことにより、検出装置による特定の芯線の位置の検出を容易に行うことができる。
【0015】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記引き抜き装置は、前記複数の芯線の一部が露出し、かつ、前記複数の芯線の他の一部に前記先端側のシースが残るように前記先端側のシースを引き抜くセミストリップを、前記検出装置による前記特定の芯線の検出よりも前に行うように構成されている。また、前記引き抜き装置は、前記先端側のシースを前記複数の芯線から離脱させる全ストリップを、前記検出装置による前記特定の芯線の検出よりも後に行うように構成されている。
【0016】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、検出装置による特定の芯線の位置の検出時に、芯線がばらけて検出がしにくくなるのを防ぐことができる。
【0017】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記複数の芯線を所定の間隔で並ばせる整列装置をさらに備えている。前記整列装置は、整列部材と、移動装置と、を備えている。前記整列部材は、複数の櫛歯を有し、前記複数の芯線に対応した複数の隙間が前記櫛歯同士の間に設けられている。前記移動装置は、前記整列部材および前記多芯ケーブルのうちの少なくとも一方を移動させ、前記複数の芯線を前記整列部材の前記複数の隙間にそれぞれ挿入する。前記複数の隙間は、前記複数の芯線が挿入される際の移動方向前方に向かうほど互いに離れるように形成され、前記移動方向の前端において前記所定の間隔で並んでいる。
【0018】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、複数の芯線が所定の間隔で整列され、それぞれの位置が特定される。その結果、後工程での複数の芯線の処理が容易となる。
【0019】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、それぞれ1本の前記芯線を把持可能な複数の把持部材と、前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部の被覆を剥くストリップ装置と、前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持された前記芯線を個別に前記ストリップ装置に装填する装填装置と、をさらに備えている。
【0020】
多芯ケーブルの芯線のストリップは、品質管理上、芯線の1本ずつに対して行うことが好ましい。上記多芯ケーブルの加工装置によれば、複数の芯線は、装填装置により1本ずつストリップ装置に装填される。そのため、芯線のストリップの品質を確保することができる。
【0021】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部に端子を圧着する圧着装置をさらに備えている。前記装填装置は、前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持されるとともに先端部の被覆が剥かれた前記芯線を、個別に前記圧着装置に装填するように構成されている。
【0022】
芯線への端子の圧着も、品質管理上、芯線の1本ずつに対して行うことが好ましい。よって、上記多芯ケーブルの加工装置によれば、芯線への端子圧着の品質を確保することができる。
【0023】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記複数の芯線は、複数のコア線を含んでいる。多芯ケーブルの加工装置は、前記コア線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記コア線に防水ゴム栓を装着するゴム栓装着装置をさらに備えている。前記装填装置は、前記コア線の先端部の被覆が剥かれる前に、前記複数の把持部材を個別に移動させて、前記把持部材に把持された前記コア線を個別に前記ゴム栓装着装置に装填するように構成されている。
【0024】
コア線への防水ゴム栓の装着も、品質管理上、コア線の1本ずつに対して行うことが好ましい。よって、上記多芯ケーブルの加工装置によれば、コア線への防水ゴムの装着の品質を確保することができる。
【0025】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの少なくとも1つが設けられた加工ステーションと、前記加工ステーションと所定方向に並んで配置され、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの他の少なくとも1つが設けられた他の加工ステーションと、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、をさらに備えている。前記第1搬送装置は、一端と他端とが前記所定方向に並ぶように曲げられた前記多芯ケーブルを把持する把持装置と、前記把持装置を前記所定方向に移動させる把持装置移動装置と、を備えている。前記他の加工ステーションに設けられた装置は、前記加工ステーションに設けられた装置が前記多芯ケーブルの前記一端を加工しているときに前記他端を加工する。
【0026】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、多芯ケーブルの一端と他端とを同時に加工できる。そのため、多芯ケーブルの加工のサイクルタイムを短縮できる。
【0027】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置に前記多芯ケーブルを搬送する第1搬送装置と、前記芯線の先端部が装填されるように構成され、装填された前記芯線の先端部の被覆を剥くストリップ装置と、前記芯線の先端部が装填されるように構成され、前記ストリップ装置によって前記被覆が剥かれた芯線の先端部に端子を圧着する圧着装置と、前記ストリップ装置および前記圧着装置に前記多芯ケーブルを搬送する第2搬送装置と、をさらに備えている。前記第2搬送装置は、それぞれ1本の前記芯線を把持可能な複数の把持部材を備えたキャリアと、前記キャリアを移動させるキャリア移動装置と、を備えている。前記キャリア移動装置は、前記多芯ケーブルを引き取る引き取り位置と、前記ストリップ装置に対向した第1対向位置と、前記圧着装置に対向した第2対向位置と、前記端子が圧着された後の前記多芯ケーブルを離すリリース位置との間で前記キャリアを移動させる。
【0028】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、芯線のストリップおよび端子の圧着の間、芯線を掴み替えることなく、多芯ケーブルを搬送することができる。そのため、芯線の位置が掴み替えによって変わるおそれがなく、安定する。これにより、芯線のストリップおよび端子の圧着を高品質に行うことができる。
【0029】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記第2搬送装置は、複数の前記キャリアを備えている。前記キャリア移動装置は、前記複数のキャリアを循環移動させる。
【0030】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、キャリアをリリース位置から引き取り位置に戻すことができるため、多芯ケーブルの搬送を継続的に行うことができる。かつ、複数のキャリアが循環するため、生産性を向上させることができる。
【0031】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記キャリアの循環移動は、前記引き取り位置、前記第1対向位置、および前記第2対向位置の間の横移動と、前記引き取り位置、前記第1対向位置、および前記第2対向位置よりも下方位置との間の上下移動とを含む循環移動である。前記キャリアの前記複数の把持部材は、前記キャリアが前記引き取り位置よりも下方位置から前記引き取り位置に移動するときに前記複数の芯線を把持する。
【0032】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、キャリアの循環移動中の上下移動を利用して芯線を把持できるため、工程時間を短縮できる。
【0033】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記切込装置、前記引き抜き装置、前記検出装置、および前記回転装置のうちの1つ以上が設けられた加工ステーションを複数備えている。前記第1搬送装置は、前記複数の加工ステーションにそれぞれ対向するように設けられ、前記多芯ケーブルを把持する複数の固定把持装置と、それぞれ前記多芯ケーブルを把持するように構成され、前記複数の固定把持装置のうち隣り合った2つの固定把持装置の間を往復移動する1つまたは複数の移動把持装置と、を備えている。
【0034】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、多芯シールドケーブルの搬送に関して高度な位置決めが求められない切込装置、引き抜き装置、検出装置、および回転装置に対しては、第1搬送装置が多芯ケーブルを搬送する。第1搬送装置は、移動把持装置と固定把持装置との間で多芯ケーブルを掴み替えるため、各芯線の位置精度が高精度になりにくいが、構成が簡易である。一方で、各芯線の位置精度が必要なストリップ装置および圧着装置に対しては、多芯ケーブルの掴み替えを行わない第2搬送装置が多芯ケーブルを搬送する。よって、上記多芯ケーブルの加工装置によれば、加工装置全体として簡略化を図りつつ、多芯ケーブルの加工品質を高めることができる。
【0035】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記第1搬送装置から前記多芯ケーブルを受け取り、前記第2搬送装置に前記多芯ケーブルを引き渡す受け渡し装置をさらに備えている。
【0036】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、第1搬送装置から第2搬送装置への多芯ケーブルの直接の受け渡しがなくなるため、第1搬送装置および第2搬送装置の待ち時間を削減することができる。よって、第1搬送装置から第2搬送装置への多芯ケーブルの受け渡しをスムーズに行うことができる。
【0037】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記複数の加工ステーションは、前記移動把持装置による前記多芯ケーブルの搬送方向に並んで配置されている。多芯ケーブルの加工装置は、前記複数の加工ステーションよりも前記搬送方向の上流に配置され、両端が前記搬送方向に並ぶように前記多芯ケーブルを略U字に曲げる屈曲装置をさらに備えている。前記複数の固定把持装置は、それぞれ、前記屈曲装置によって曲げられた前記多芯ケーブルの一端を把持するように構成されている。前記各加工ステーションに設けられた装置は、上流側に隣接する加工ステーションに設けられた装置が前記曲げられた前記多芯ケーブルの上流側の端部を加工しているときに下流側の端部を加工する。
【0038】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、多芯ケーブルの一端と他端とを同時に加工できる。そのため、多芯ケーブルの加工のサイクルタイムを短縮できる。
【0039】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記キャリアの前記複数の把持部材は、前記曲げられた多芯ケーブルの上流側の端部に露出している前記複数の芯線を把持する上流側グループと、前記上流側グループよりも前記搬送方向の下流に配置され、前記曲げられた多芯ケーブルの下流側の端部に露出している前記複数の芯線を把持する下流側グループと、を含んでいる。
【0040】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、第2搬送装置によっても、略U字に曲げられた多芯ケーブルの両端を把持することができる。
【0041】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置の好ましい一態様によれば、前記複数の把持部材は、前記複数の固定把持装置によって把持されるよりも前記多芯ケーブルの両端の間隔が狭くなるように前記多芯ケーブルを把持する。
【0042】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、第1搬送装置が多芯ケーブルを搬送する加工ステーションでは装置の配置に自由度が生まれるとともに、第2搬送装置においては多芯ケーブルの両端の間隔が狭くなることにより、加工装置の搬送方向の長さを短くすることができる。
【0043】
本発明の好ましい一態様によれば、多芯ケーブルの加工装置は、前記第1搬送装置から前記多芯ケーブルを受け取り、前記第2搬送装置に前記多芯ケーブルを引き渡す受け渡し装置をさらに備えている。前記受け渡し装置は、前記多芯ケーブルの両端をそれぞれ把持する一対の把持部材と、駆動装置と、を備えている。前記駆動装置は、前記一対の把持部材を接近または離反させ、前記一対の把持部材の間の距離を、前記第1搬送装置に把持されているときの前記多芯ケーブルの両端間の距離に対応させ、または、前記第2搬送装置に把持されるときの前記多芯ケーブルの両端間の距離に対応させる。
【0044】
上記多芯ケーブルの加工装置によれば、第1搬送装置から第2搬送装置に多芯ケーブルを受け渡す受け渡し装置により、多芯ケーブルの両端の間隔が狭くされる。そのため、多芯ケーブルの両端の間隔を狭くする装置と受け渡し装置とを共通化できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る多芯ケーブルの加工装置によれば、多芯ケーブルの複数の芯線の位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】多芯シールドケーブルの模式的な断面図である。
図2】一実施形態に係る多芯シールドケーブルの加工装置の模式的な平面図である。
図3】多芯シールドケーブルの加工装置のブロック図である。
図4】第2ステーションの模式的な側面図である。
図5】第3ステーションの模式的な平面図である。
図6】第3ステーションの模式的な正面図であって、コア線が分離された状態を示す図である。
図7】第4ステーションの模式的な側面図である。
図8】第5ステーションの模式的な側面図である。
図9】第6ステーションの模式的な平面図である。
図10】第6ステーションの模式的な正面図であって、ドレイン線およびコア線が整列した状態を示す図である。
図11】第7ステーションの模式的な平面図である。
図12】第8ステーションの模式的な平面図である。
図13】第9ステーションの模式的な平面図である。
図14】多芯シールドケーブルの搬送装置の背面図である。
図15】他の実施形態に係る多芯シールドケーブルの搬送装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
[加工装置の概要]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。まず、ここでの線処理の対象である多芯ケーブル、ここでは、シールドを有する多芯シールドケーブル1について図1を参照しながら説明する。図1は、一例に係る多芯シールドケーブル1の模式的な断面図である。図1に示すように、多芯シールドケーブル1は、シース2と、シース2に挿通されたドレイン線3および複数のコア線4と、シールド5と、を有している。多芯シールドケーブル1は、ドレイン線3と複数のコア線4とシールド5とがシース2によって覆われた電線である。複数のコア線4は、例えば、電気信号を伝達する信号線として使用される。複数のコア線4は、それぞれ、芯線4aと芯線4aを覆う絶縁体の被覆4bとを有している。シールド5は、コア線4を外部のノイズから遮蔽する導体である。シールド5は、複数のコア線4の外側を覆っている。ドレイン線3は、シールド5に電気的に接続されている。ドレイン線3は接地され、これによりシールド5が接地される。ドレイン線3は、複数の細い導体素線からなり、絶縁体による被覆はされていない。図示は省略するが、ドレイン線3と複数のコア線4とはシールド5の内部において撚り合わされている。シールド5は、絶縁体のシース2によって覆われている。コア線4の本数は特に限定されない。以下では、ドレイン線3と複数のコア線4とを特に区別しない場合には、総称して芯線と呼ぶことがある。
【0048】
図2は、一実施形態に係る多芯シールドケーブル1の加工装置(以下、単に加工装置と呼ぶ)200の模式的な平面図である。加工装置200は、ドレイン線3を絶縁処理するとともにその先端に端子8を圧着し、さらに、複数のコア線4の先端にも端子8を圧着する装置である。ドレイン線3に対する絶縁処理は、ここでは、ドレイン線3に熱収縮チューブ6を被せ、熱収縮チューブ6を熱収縮させる処理である。本実施形態では、ドレイン線3および複数のコア線4に防水用のゴム栓7も装着されるが、多芯シールドケーブル1の仕様により、ゴム栓7の装着は省略されてもよい。
【0049】
図2に示すように、本実施形態に係る加工装置200は、第1ステーションSt1~第10ステーションSt10の10のステーションを備えている。多芯シールドケーブル1は、第1ステーションSt1から第10ステーションSt10に向かってステーション間を搬送される。第1ステーションSt1~第9ステーションSt9は、多芯シールドケーブル1の搬送方向(ここでは、図2の左右方向)に並んで設けられている。第1ステーションSt1では、多芯シールドケーブル1を測長し、所定の長さに切断する処理が行われる。第2ステーションSt2では、シース2に切れ目を入れ、先端側のシース2を引き抜く処理が行われる。この処理では、シース2は多芯シールドケーブル1から離脱するまで引き抜かれず、多芯シールドケーブル1に差し込まれたままにされる。また、シース2を引き抜く際にシース2を周方向に回転させ、多芯シールドケーブル1の撚り合わされた芯線を撚り戻す処理が行われる。以下、第2ステーションSt2で行われる処理を「シース2のセミストリップ」とも呼ぶ。
【0050】
第3ステーションSt3では、シース2がセミストリップされることによって露出したドレイン線3をカメラ31a(図5参照)で検出し、多芯シールドケーブル1の周方向の所定位置にドレイン線3が位置するように多芯シールドケーブル1を回転させる。さらに、多芯シールドケーブル1からシース2が完全に引き抜かれる。以下、この多芯シールドケーブル1からシース2を完全に引き抜く処理を「シース2の全ストリップ」とも呼ぶ。第3ステーションSt3では、この後、ドレイン線3を避けて複数のコア線4だけを曲げることにより、ドレイン線3と複数のコア線4とを分離する。
【0051】
第4ステーションSt4では、ドレイン線3を撚るとともに真っ直ぐに伸ばすドレイン線3の矯正処理が行われる。第5ステーションSt5では、ドレイン線3に熱収縮チューブ6を被せ、熱収縮チューブ6を熱収縮させる絶縁処理が行われる。第6ステーションSt6では、複数のコア線4を曲げ戻し、絶縁処理済みのドレイン線3とともに整列させる。
【0052】
第7ステーションSt7では、複数のコア線4にゴム栓7が装着される。第8ステーションSt8では、ドレイン線3の熱収縮チューブ6の先端部およびコア線4の被覆4bの先端部がストリップされる。第9ステーションSt9では、ドレイン線3および複数のコア線4に端子8が圧着される。第10ステーションSt10には、加工済みの多芯シールドケーブル1が排出される。
【0053】
なお、各処理は、上記したステーションの区割りに従って行われなくてもよい。どの工程をどのステーションで行うかは適宜に設定されてよく、特に限定されない。また、工程の順序は、可能な限りにおいて適宜に変更されてよい。さらには、加工装置200は、1つの場所に設置されている必要はなく、複数の場所に分割設置されてもよい。後述するが、第2ステーションSt2~第6ステーションSt6と第7ステーションSt7以降とでは多芯シールドケーブル1を搬送する装置が異なる。そのため、例えば、加工装置200は、第1ステーションSt1~第6ステーションSt6を備える装置と、第7ステーションSt7~第10ステーションSt10を備える装置と、に分割されてもよい。
【0054】
第1ステーションSt1~第10ステーションSt10には、それぞれのステーションにおける処理を行うための装置が設置されている。第1ステーションSt1には、多芯シールドケーブル1を搬送する送給装置11と、多芯シールドケーブル1の長さを測定する測長装置12と、多芯シールドケーブル1を所定の長さに切断する切断装置13と、が設けられている。
【0055】
第1ステーションSt1の下流には、切断後の多芯シールドケーブル1を第2ステーションSt2~第6ステーションSt6の各装置に搬送する搬送装置110が設けられている。詳しくは、搬送装置110は、いずれも後述する切込装置21、シースセミストリップ装置22、ドレイン線検出装置31、シースストリップ装置32、コア線分離装置33、ドレイン線矯正装置41、絶縁処理装置51、曲げ戻し装置61、および整列装置62に多芯シールドケーブル1を搬送する。図2に示すように、搬送装置110は、多芯シールドケーブル1を第2ステーションSt2に搬送する前に、多芯シールドケーブル1をU字に曲げる処理を行う。以下では、多芯シールドケーブル1をU字状に曲げる搬送装置110の機能を屈曲装置110Aとも呼ぶ。図2に示すように、多芯シールドケーブル1は、両端が第1ステーションSt1~第9ステーションSt9の並び方向(図2の紙面左右方向)に並ぶように曲げられる。これにより、多芯シールドケーブル1の両端がステーションSt1~St9の方向(図2では、紙面上方向)を向く。搬送装置110は、U字に曲げられた多芯シールドケーブル1の両端を把持する一対の搬送クランプ111と、搬送クランプ111を第1ステーションSt1~第9ステーションSt9の並び方向(図2の紙面左右方向)に移動させるクランプ移動装置112と、を備えている。第2ステーションSt2~第6ステーションSt6は、クランプ移動装置112による搬送クランプ111の移動経路に沿って並んでいる。加工装置200は、多芯シールドケーブル1の両端に対して加工を行う装置である。1つのステーション(例えば、第2ステーションSt2)に設けられた装置は、別の加工ステーション(例えば、第3ステーションSt3)に設けられた装置が多芯シールドケーブル1の一端を加工しているときに他端を加工する。これにより、多芯シールドケーブル1の加工のサイクルタイムを短縮している。さらにここでは、多芯シールドケーブル1を連続的に加工できるよう、搬送クランプ111の対は複数設けられている。
【0056】
第2ステーションSt2~第6ステーションSt6の入口には、それぞれ、多芯シールドケーブル1を把持するとともに、周方向に回転させる固定クランプ130が設けられている。各固定クランプ130も一対で構成されており、U字に曲げられた多芯シールドケーブル1の両端を把持する。各ステーションの固定クランプ130は、ステーションの入口で搬送装置110の搬送クランプ111から多芯シールドケーブル1を受け取り、把持する。各ステーションにおける加工が終わると、各ステーションの固定クランプ130は、搬送クランプ111に多芯シールドケーブル1を受け渡す。なお、各ステーションの固定クランプ130の機能は、多芯シールドケーブル1を回転させる構成を付加した搬送クランプ111によって担われてもよい。
【0057】
第2ステーションSt2には、シース2に切れ目を入れる切込装置21と、シース2をセミストリップするシースセミストリップ装置22と、が設けられている。第3ステーションSt3には、ドレイン線3の周方向の位置を検出するドレイン線検出装置31と、シース2を全ストリップするシースストリップ装置32と、コア線4を分離するコア線分離装置33と、が設けられている。ドレイン線3の周方向の位置合わせは、ドレイン線検出装置31の検知に基づいて、シースストリップ装置32と固定クランプ130とによって行われる。なお、シースセミストリップ装置22とシースストリップ装置32とは、同じステーションに設けられた1つの装置であってもよい。シース2を引き抜く引き抜き装置は、本実施形態のように複数に分かれていてもよく、1つにまとめられていてもよい。例えば、本実施形態では、シース2のセミストリップは、多芯シールドケーブル1の周方向の回転を伴うが、多芯シールドケーブル1の回転は、固定クランプ130によって行われる。引き抜き装置は、シースセミストリップ装置22と、シースストリップ装置32と、2つの固定クランプ130とに分かれている。他の装置についても同様であり、1つの工程を行う装置は複数に分かれていてもよく、複数の工程を行う装置が1つにまとめられていてもよい。
【0058】
第4ステーションSt4には、ドレイン線3を矯正するドレイン線矯正装置41が設けられている。ドレイン線矯正装置41、シースセミストリップ装置22、およびシースストリップ装置32は、同じステーションに設けられた1つの装置であってもよい。上記の装置は、本実施形態のように複数に分かれていてもよく、1つにまとめられていてもよい。第5ステーションSt5には、絶縁処理装置51が設けられている。絶縁処理装置51は、熱収縮チューブ6のリールを巻き付けたチューブリール52と、熱収縮チューブ6を所定の長さに切断するとともに熱収縮チューブ6にドレイン線3を挿入するチューブ装着装置53と、熱収縮チューブ6を加熱収縮させる加熱装置54と、を備えている。
【0059】
第6ステーションSt6には、コア線分離装置33によって分離されたドレイン線3と複数のコア線4とを揃え直す曲げ戻し装置61と、ドレイン線3および複数のコア線4を整列させる整列装置62と、が設けられている。詳しくは後述するが、本実施形態では、曲げ戻し装置61と整列装置62とは一部の構成を共有して一体化されている。ただし、曲げ戻し装置61と整列装置62とは、別体に構成されていてもよい。曲げ戻し工程の前には、ドレイン線3および複数のコア線4が水平面に沿って並ぶように、多芯シールドケーブル1が周方向に回転される。この回転工程は、固定クランプ130によって行われる。
【0060】
第6ステーションSt6の下流には、多芯シールドケーブル1のドレイン線3および複数のコア線4を個別に把持するシャトル120と、シャトル120を第7ステーションSt7~第10ステーションSt10に搬送するシャトル搬送装置121と、が設けられている。第6ステーションSt6と第7ステーションSt7との間で、多芯シールドケーブル1は、搬送装置110からシャトル120に受け渡される。第7ステーションSt7~第10ステーションSt10は、シャトル搬送装置121によるシャトル120の搬送経路に沿って並んでいる。本実施形態では、シャトル120は複数あり(図示は省略)、ループ状の移動経路に沿って循環移動している。シャトル120は、ドレイン線3および複数のコア線4を個別に把持する複数の個別クランプ120aと、複数の個別クランプ120aを個別に圧着装置91、92等に接近させる装填装置120bと、を備えている。
【0061】
第7ステーションSt7には、ゴム栓装着装置71が設けられている。第8ステーションSt8には、芯線ストリップ装置81が設けられている。第9ステーションSt9には、右側圧着装置91と左側圧着装置92とが設けられている。U字に曲げられた多芯シールドケーブル1の両端に異なる端子8が圧着されることがあり得るため、第9ステーションSt9には、右側圧着装置91と左側圧着装置92とが設けられている。第10ステーションSt10には、良品用の排出トレイ101と、不良品用の排出トレイ102と、が設けられている。シャトル120は、良品用の排出トレイ101上で良品の多芯シールドケーブル1を離して、良品用の排出トレイ101に良品の多芯シールドケーブル1を落下させる。シャトル120は、不良品用の排出トレイ102上で不良品の多芯シールドケーブル1を離して、不良品用の排出トレイ102に不良品の多芯シールドケーブル1を落下させる。良品か不良品かの判定は、ここでは、第7ステーションSt7~第9ステーションSt9でそれぞれ行われる。不良品と判定された多芯シールドケーブル1は、次工程に進むことなく、不良品用の排出トレイ102に排出される。
【0062】
図3は、加工装置200のブロック図である。図3に示すように、加工装置200は制御装置150を備えている。加工装置200の各部の動作は、制御装置150によって制御されている。制御装置150は、送給装置11と、測長装置12と、切断装置13と、切込装置21と、シースセミストリップ装置22と、ドレイン線検出装置31と、シースストリップ装置32と、コア線分離装置33と、ドレイン線矯正装置41と、チューブ装着装置53と、加熱装置54と、曲げ戻し装置61と、整列装置62と、ゴム栓装着装置71と、芯線ストリップ装置81と、右側圧着装置91と、左側圧着装置92と、搬送装置110の搬送クランプ111およびクランプ移動装置112と、シャトル120の装填装置120bと、シャトル搬送装置121と、複数の固定クランプ130(1つのみ図示)と、に接続され、それらの動作を制御している。制御装置150の構成は特に限定されない。制御装置150は、例えば、中央演算処理装置(以下、CPUという)と、CPUが実行するプログラムなどが格納されたROMと、RAMなどを備えていてもよい。制御装置150の各部は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。また、各部は、プロセッサであってもよいし、回路であってもよい。制御装置150は、例えば、プログラマブルコントローラやコンピュータなどであってもよい。
【0063】
[工程の詳細]
以下、ステーション毎に行われる工程の詳細を説明する。以下の説明では、搬送装置110またはシャトル120から見たステーションSt1~St9の方向を前方と呼び、符号Fで表す。左方および右方は、前方に向かって見た左方および右方とする。図面において、F、Rr、L、R、U、Dはそれぞれ、前後左右上下を表している。ただし、これらの方向は説明の都合上のものであり、加工装置200の設置態様等を何ら限定するものではない。例えば、搬送装置110またはシャトル120の移動経路は直線でなくてもよいため、ステーションによって前方が変わることもあり得る。なお、第1ステーションSt1および第10ステーションSt10において行われる工程については、詳細な説明を省略する。
【0064】
図4は、第2ステーションSt2の模式的な側面図である。図4に示すように、第2ステーションSt2は、固定クランプ130よりも前方に設けられた切込装置21と、切込装置21よりもさらに前方に設けられたシースセミストリップ装置22と、を備えている。固定クランプ130は、多芯シールドケーブル1を略水平に保持している。切込装置21は、周方向に沿った切れ目をシース2に形成する。切込装置21は、多芯シールドケーブル1の周囲に配置された2枚以上の切込刃21aを備えている。切込装置21は、切込刃21aを多芯シールドケーブル1周りに回転させるように構成されている。切込装置21は、切込刃21aを接近させ、切込刃21aで多芯シールドケーブル1を挟んで回転することによって、シース2に切れ目を形成する。
【0065】
シースセミストリップ装置22は、切れ目よりも多芯シールドケーブル1の先端側のシース2を根元側のシース2に対して先端側に移動させ、ドレイン線3と複数のコア線4とを露出させる。シース2のセミストリップは、ドレイン線3および複数のコア線4の一部が露出し、かつ、ドレイン線3および複数のコア線4の他の一部(ここでは先端部)に先端側のシース2が残るように、先端側のシース2を引き抜く工程である。セミストリップは、ドレイン線検出装置31によるドレイン線3の検出よりも前に行われる。なお、全ストリップは、ドレイン線検出装置31によるドレイン線3の検出よりも後に行われる。
【0066】
固定クランプ130およびシースセミストリップ装置22は、セミストリップ工程において、先端側のシース2を根元側のシース2に対して周方向に回転させながら多芯シールドケーブル1の先端側に移動させる。ここでは、根元側のシース2を含む多芯シールドケーブル1が固定クランプ130によって把持されるとともに回転され、先端側のシース2がシースセミストリップ装置22によって先端側に移動される。固定クランプ130およびシースセミストリップ装置22は、これにより、ドレイン線3および複数のコア線4の撚りをほどくように構成されている。シースセミストリップ装置22は、先端側のシース2を把持するクランプ22aと、クランプ22aを多芯シールドケーブル1の長手方向に移動させるクランプ移動装置22bと、を備えている。
【0067】
セミストリップ工程では、クランプ22aが、切れ目よりも先端側のシース2を把持する。次に、固定クランプ130が芯線の撚りをほどく方向に回転し、クランプ22aが多芯シールドケーブル1の先端側に移動する。これにより、先端側のシース2が抜けるとともに、芯線の撚りが撚り戻される。芯線の撚り戻しを行うことにより、後工程のドレイン線3の位置の検出を容易に実施することができる。また、本実施形態では、シース2の引き抜きと芯線の撚り戻しを同時に行うことにより、多芯シールドケーブル1の処理のサイクルタイムを短縮している。クランプ22aの移動は、先端側のシース2がドレイン線3および複数のコア線4から完全に離脱する前に停止される。これにより、ドレイン線3および複数のコア線4の撚り戻しを含むセミストリップが終了する。
【0068】
ただし、セミストリップおよび撚り戻しにおいて、多芯シールドケーブル1の長手方向に移動する部材、および多芯シールドケーブル1の周方向に回転する部材は、上記に限定されない。セミストリップにおいては、先端側のシース2と根元側のシース2とのうちの少なくとも一方を移動させて先端側のシース2と根元側のシース2とを多芯シールドケーブル1の長手方向に遠ざければよく、このとき、根元側のシース2が移動されてもよいし、先端側のシース2および根元側のシース2の両方が移動されてもよい。「先端側のシース2を引き抜く」とは、このような先端側のシース2と根元側のシース2との相対移動のことを意味する。撚り戻しにおいては、先端側のシース2が根元側のシース2に対して周方向に回転するように先端側のシース2および根元側のシース2のうちの少なくとも一方を回転させながら、先端側のシース2を引き抜けばよい。これにより、ドレイン線3および複数のコア線4の撚りがほどかれる。他の装置における移動および回転についても同様であり、移動または回転する部材は、記載されている部材の相手方の部材、または両者であり得る。
【0069】
シース2の切込みおよびセミストリップは、U字に曲げられた多芯シールドケーブル1の搬送方向前方側の端部(ここでは左端)に対して、まず行われる。その後、多芯シールドケーブル1を左方に移動させ、多芯シールドケーブル1の右端に対してシース2の切込みおよびセミストリップが行われる。多芯シールドケーブル1の右端に対してシース2の切込みおよびセミストリップが行われているとき、多芯シールドケーブル1の左端に対しては、第3ステーションSt3における処理が行われていてもよい。このことは、特に断らない限り、第3ステーションSt3~第6ステーションSt6で行われる他の工程でも同様である。
【0070】
図5は、第3ステーションSt3の模式的な平面図である。図5に示すように、第3ステーションSt3には、カメラ31aを備えたドレイン線検出装置31が設けられている。ドレイン線検出装置31は、露出したドレイン線3を検知して、多芯シールドケーブル1の周方向に関するドレイン線3の位置を検出する。ドレイン線検出装置31は、ここでは、露出したドレイン線3および複数のコア線4をカメラ31aで撮像する。ドレイン線3は、導体素線からなっており、金属光沢を有する。複数のコア線4は、被覆4bに覆われている。そのため、ドレイン線検出装置31は、ドレイン線3とコア線4とを区別することが可能である。
【0071】
図5に示すように、第3ステーションSt3のシースストリップ装置32は、回転クランプ32aと、回転クランプ32aを多芯シールドケーブル1の長手方向に移動させるクランプ移動装置32bと、を有している。回転クランプ32aは、先端側のシース2(多芯シールドケーブル1から完全に抜かれていないシース2)を把持する。ドレイン線検出装置31によってドレイン線3の周方向の位置が検出されると、固定クランプ130とシースストリップ装置32の回転クランプ32aとは同期して回転し、ドレイン線3を前後方向視で0時の方向に向ける。ドレイン線3が0時の位置に位置していることがドレイン線検出装置31によって検出されると、固定クランプ130およびシースストリップ装置32の回転クランプ32aの回転は停止される。その後、シースストリップ装置32は、先端側のシース2を多芯シールドケーブル1の先端側にさらに移動させてドレイン線3および複数のコア線4から離脱させる全ストリップを行う。全ストリップは、ドレイン線検出装置31によるドレイン線3の検出よりも後に行われる。これは、ドレイン線検出装置31によるドレイン線3の検出時に、ドレイン線3および複数のコア線4がばらけて検出がしにくくなるのを防ぐためである。ドレイン線3および複数のコア線4の先端部にシース2が残っていることにより、ドレイン線3および複数のコア線4がばらけることが抑制される。
【0072】
なお、ドレイン線3の検出方法は、カメラ31aによってドレイン線3を撮像する方法には限定されない。ドレイン線3の位置は、例えば、ドレイン線3に電流を流すプローブによって検出されてもよい。
【0073】
第3ステーションSt3のコア線分離装置33は、ドレイン線検出装置31によって検出されたドレイン線3の周方向の位置に基づき、ドレイン線3と複数のコア線4とを分離する。ドレイン線3と複数のコア線4とを分離することにより、後工程のドレイン線3の処理が容易となる。ここでは、コア線分離装置33は、複数のコア線4を下方に向かって付勢することによって、ドレイン線3と複数のコア線4とを分離する。これにより、複数のコア線4が下方に曲がり、ドレイン線3から分離される。複数のコア線4の方を付勢するのは、コア線4が被覆4bに覆われているために、導体素線がばらけることなく曲げることができるためである。ただし、コア線4とドレイン線3との分離装置は、ドレイン線3および複数のコア線4のうちの少なくとも一方を付勢することによってドレイン線3と複数のコア線4とを分離するように構成されていればよく、本実施形態のような態様には限定されない。分離装置は、例えば、ドレイン線3、または、コア線4およびドレイン線3の両方を付勢することによってドレイン線3と複数のコア線4とを分離してもよい。また、分離装置は、本実施形態のように塑性的に複数のコア線4(またはドレイン線3)を曲げてもよく、付勢を中止すると戻るように、弾性的に複数のコア線4(またはドレイン線3)を曲げてもよい。
【0074】
図6は、第3ステーションSt3の模式的な正面図であって、コア線4が分離された状態を示す図である。図6に示すように、コア線分離装置33は、左右一対のフック33aと、フック開閉装置33bと、フック移動装置33cと、を備えている。一対のフック33aは、互いに離反または接近するように左右方向に移動することにより開閉する。フック開閉装置33bは、一対のフック33aを開閉する駆動部である。フック移動装置33cは、一対のフック33aを上下方向に移動させる駆動部である。一対のフック33aが閉じると、一対のフック33aは、前後方向視において、0時の方向を除いて多芯シールドケーブル1を囲い込む。この状態でフック移動装置33cにより一対のフック33aが下方に移動されると、複数のコア線4は一対のフック33aに引っ掛けられて下方に曲げられる。ドレイン線3は、一対のフック33aに引っ掛けられず、取り残される。これにより、ドレイン線3と複数のコア線4とが分離される。なお、ドレイン線3が位置付けられる周方向の位置は0時の方向には限定されず、コア線4の曲げ方向は下方に限定されない。
【0075】
図7は、第4ステーションSt4の模式的な側面図である。第4ステーションSt4には、絶縁処理の前に、分離されたドレイン線3を矯正するドレイン線矯正装置41が設けられている。ドレイン線矯正装置41は、分離されたドレイン線3を周方向に撚りながら引っ張りテンションを加えることにより、分離されたドレイン線3を矯正する。図7に示すように、ドレイン線矯正装置41は、回転クランプ41aと、回転クランプ41aを多芯シールドケーブル1の長手方向に移動させるクランプ移動装置41bと、を有している。ドレイン線3の矯正では、回転クランプ41aにより、ドレイン線3の露出部分のうち根元付近が把持される。このとき、回転クランプ41aは、回転クランプ41aが前方に移動されると把持部分が滑る程度の弱い把持力で、ドレイン線3の露出部分を把持する。ドレイン線矯正装置41は、上記弱い把持力で回転クランプ41aにドレイン線3を把持させた状態で、回転クランプ41aを回転させるとともに、前方に移動させる。回転クランプ41aがドレイン線3の先端付近まで移動すると、ドレイン線矯正装置41は、回転クランプ41aの把持力を強めて、ドレイン線3をしっかりと撚る。これにより、ドレイン線3は、強固に撚られるとともに、直線状の形状に矯正される。ドレイン線3が矯正されることにより、ドレイン線3の絶縁処理が容易となる。
【0076】
ただし、ドレイン線矯正装置41は、ドレイン線3を周方向に撚りながら引っ張りテンションを加えるように構成されていればよく、その動作は上記したものには限定されない。例えば、ドレイン線矯正装置41は、当初からドレイン線3の先端付近を強く把持し、引っ張りテンションを加えながらドレイン線3を撚るように構成されていてもよい。
【0077】
図8は、第5ステーションSt5の模式的な側面図である。図8に示すように、第5ステーションSt5には、分離されたドレイン線3を絶縁処理する絶縁処理装置51が設けられている。絶縁処理装置51は、ここでは、切断前の熱収縮チューブ6が巻き付けられたチューブリール52と、分離されたドレイン線3を熱収縮チューブ6に挿入するチューブ装着装置53と、ドレイン線3が挿入された状態の熱収縮チューブ6を加熱する加熱装置54と、を備えている。絶縁処理工程では、チューブ装着装置53によってリールから熱収縮チューブ6が引き出され、チューブ装着装置53のチューブカッター53aにより所定の長さに切断される。ここでは、チューブ装着装置53は、切断後の熱収縮チューブ6を保持した保持部53bを後方(固定クランプ130の側)に移動させる。チューブ装着装置53は、保持部53bを前後方向に移動させる保持部移動装置53cを備えている。これにより、ドレイン線3が熱収縮チューブ6に挿入される。その状態で、加熱装置54は、保持部53b内に熱風を吹きこむ。これにより、熱収縮チューブ6が熱収縮し、ドレイン線3が絶縁処理される。
【0078】
ドレイン線3の絶縁処理の方法は、熱収縮チューブ6をドレイン線3に被せる方法には限定されない。ドレイン線3の絶縁処理は、例えば、ドレイン線3に絶縁テープを巻くことによって行われてもよい。ただし、熱収縮チューブ6をドレイン線3に被せる方法には、自動機によって実施しやすいという利点がある。
【0079】
図9は、第6ステーションSt6の模式的な平面図である。図9に示すように、第6ステーションSt6には、分離工程で曲げられた複数のコア線4を曲げ戻す曲げ戻し装置61と、ドレイン線3および複数のコア線4を整列させる整列装置62と、が設けられている。曲げ戻し装置61は、分離工程で分離されたドレイン線3と複数のコア線4とを揃え直す復帰装置の一例である。ここでは、分離工程で曲げられた複数のコア線4を曲げ戻すことによりドレイン線3と複数のコア線4とを揃え直すが、分離工程において複数のコア線4(またはドレイン線3)が弾性変形されているだけの場合には、復帰装置は、複数のコア線4(またはドレイン線3)の付勢を解除する装置であってもよい。前述したように、本実施形態では、曲げ戻し装置61と整列装置62とは一部の構成を共有して一体化されている。
【0080】
第6ステーションSt6では、曲げ戻し工程および整列工程の前に、ドレイン線3と複数のコア線4とが所定の並び方向、ここでは左右方向に並ぶように、多芯シールドケーブル1を周方向に回転させる回転工程が行われる。回転工程において、固定クランプ130は、多芯シールドケーブル1を周方向に回転させ、ドレイン線3を予め定められた回転位置、ここでは正面視において3時の方向に位置付ける。これにより、図9に示すように、複数の芯線のうちでドレイン線3が最も左に移動する。固定クランプ130は、ここでは、多芯シールドケーブル1を90度回転させる。回転工程の後、複数のコア線4は、ドレイン線3よりも右方に位置している。なお、ドレイン線3は、回転工程において、右端に位置付けられてもよい。詳しくは後述するが、ドレイン線3の位置が左端または右端に定まることにより、以降の工程を容易に実施できるようになる。
【0081】
曲げ戻し装置61は、ドレイン線3および複数のコア線4のうちコア線分離装置33によって曲げられた方(ここではコア線4)を曲げ戻す曲げ戻しを行う。図9に示すように、曲げ戻し装置61は、上下一対のローラ61a(下方のローラ61aのみ図示)と、図示しないローラ61aの開閉装置と、ローラ移動装置61bと、を備えている。曲げ戻しにおいて、曲げ戻し装置61は、まず、開閉装置を駆動して、露出したドレイン線3および複数のコア線4の根元部分(残っているシース2の近く)を一対のローラ61aで挟み込む。ローラ61aは、前後方向に回転するように構成されている。ローラ61aは、ドレイン線3および複数のコア線4にそれぞれ対応する複数の溝を備えている。複数の溝は、ローラ61aの外周面に沿って形成されている。曲げ戻し装置61は、一対のローラ61aによってドレイン線3および複数のコア線4が挟まれた状態でローラ移動装置61bを駆動して、一対のローラ61aを前方に移動させる。これにより、ドレイン線3および複数のコア線4(特に分離工程で曲げられた複数のコア線4)は、ローラ61aの溝に沿って前後方向に真っ直ぐに伸ばされる。ただし、コア線4の曲げ戻しの方式は、上記したようなローラを使用した方式には限定されない。
【0082】
整列装置62は、ドレイン線3と複数のコア線4とを左右方向に所定の間隔で並ばせるように構成されている。ドレイン線3および複数のコア線4の整列は、曲げ戻し工程の後に行われる。図10は、第6ステーションSt6の模式的な正面図であって、ドレイン線3およびコア線4が整列した状態を示す図である。図10に示すように、整列装置62は、ドレイン線3および複数のコア線4を整列させるための整列部材62aと、整列部材62aをドレイン線3および複数のコア線4に接近させる移動装置62bと、を備えている。整列部材62aは、左右方向および上下方向に延びる平板状の部材であって、左右方向に並んだ複数の櫛歯62a1を有している。櫛歯62a1同士の間には、ドレイン線3および複数のコア線4に対応した複数の隙間62a2が設けられている。移動装置62bは、整列部材62aを芯線の並び方向に直交する方向、ここでは上下方向に移動させ、ドレイン線3および複数のコア線4を整列部材62aの複数の隙間62a2にそれぞれ挿入する。なお、移動装置62bは、多芯シールドケーブル1を移動させてもよく、整列部材62aおよび多芯シールドケーブル1の両方を移動させてもよい。移動装置62bは、整列部材62aおよび多芯シールドケーブル1のうちの少なくとも一方を移動させるように構成されていればよい。整列部材62aにおいて、複数の隙間62a2は、ドレイン線3および複数のコア線4が挿入される際の移動方向前方(ここでは上方、整列部材62aの移動方向で言うと移動方向後方である)に向かうほど互いに離れるように形成されている。複数の隙間62a2は、ドレイン線3および複数のコア線4の移動方向の前端(すなわち、隙間62a2の突き当たり)において、左右方向に所定の間隔で並んでいる。図10に示すように、隙間62a2の突き当たりまでドレイン線3および複数のコア線4が挿入されることにより、ドレイン線3および複数のコア線4は、左右方向に所定の間隔で並ぶ。この整列によりドレイン線3および複数のコア線4の左右方向の位置が特定されるようになり、後の工程、例えば、多芯シールドケーブル1のシャトル120への受け渡し工程がスムーズに行えるようになる。
【0083】
整列工程の後、多芯シールドケーブル1は、搬送装置110からシャトル120に受け渡される。例えば図11に示すように、シャトル120は、整列されたドレイン線3および複数のコア線4と略同じ間隔で並んだ複数の個別クランプ120aを備えている。複数の個別クランプ120aは、絶縁処理されたドレイン線3および複数のコア線4をそれぞれ把持する。ここでは、各個別クランプ120aは、ドレイン線3またはコア線4を弾性力で挟持するように構成されている。ドレイン線3および複数のコア線4は、例えば、図示しない別の櫛歯によって複数の個別クランプ120aに押し込まれる。図2に示すように、複数の個別クランプ120aは、曲げられた多芯シールドケーブル1の上流側の端部に露出している複数の芯線3、4を把持する上流側グループ120Rと、上流側グループ120Rよりも搬送方向の下流に配置され、曲げられた多芯シールドケーブル1の下流側の端部に露出している複数の芯線3、4を把持する下流側グループ120Lと、を含んでいる。
【0084】
図11は、第7ステーションSt7の模式的な平面図である。図11に示すように、第7ステーションSt7には、コア線4の先端部が装填されるように構成され、装填されたコア線4にゴム栓7を装着するゴム栓装着装置71が設けられている。本実施形態では、ゴム栓装着装置71は、ゴム栓供給装置71aと、ゴム栓クランプ71bと、を備えている。ゴム栓供給装置71aは、例えば、圧縮エア等によりゴム栓クランプ71b内にゴム栓7を供給する。ゴム栓クランプ71bは、径方向の外方からゴム栓7を把持する。図11に示すように、シャトル120は、複数の個別クランプ120aを個別に前後方向に移動させる装填装置120bを備えている。装填装置120bは、コア線4の先端部の被覆が剥かれる前に、複数の個別クランプ120aを個別に移動させて、個別クランプ120aに把持されたコア線4を個別にゴム栓装着装置71に装填する。コア線4は、個別クランプ120aとともに前方に移動することにより、ゴム栓7内に挿入される。本実施形態では、シャトル120が左方に間欠的に移動しながら、4本のコア線4の8つの端部に順次ゴム栓7が装着される。かかるシャトル120の間欠移動は、ドレイン線3も処理の対象であることを除いて、芯線のストリップ工程でも同様である。また、かかるシャトル120の間欠移動は、ドレイン線3も処理の対象であること、および、多芯シールドケーブル1の左端と右端とが別の圧着装置91、92で処理されること、を除いて、圧着工程でも同様である。
【0085】
図12は、第8ステーションSt8の模式的な平面図である。図12に示すように、第8ステーションSt8には、ドレイン線3またはコア線4の先端部が装填されるように構成され、装填されたドレイン線3またはコア線4の先端部の被覆を剥く芯線ストリップ装置81が設けられている。シャトル120の装填装置120bは、複数の個別クランプ120aを個別に移動させて、個別クランプ120aに把持されたドレイン線3またはコア線4を個別に芯線ストリップ装置81に装填する。芯線ストリップ装置81は、一対のストリップ刃81aを備えている。
【0086】
先端がストリップされたドレイン線3および複数のコア線4は、先端の位置が揃うように、芯線ストリップ装置81の図示しないカッターにより揃え切りされる。揃え切り工程により、ドレイン線3および複数のコア線4の先端位置が特定される。これにより、圧着工程がスムーズに行えるようになる。
【0087】
図13は、第9ステーションSt9の模式的な平面図である。図13に示すように、第9ステーションSt9には、ドレイン線3またはコア線4の先端部が装填されるように構成され、装填されたドレイン線3またはコア線4の先端部に端子8を圧着する右側圧着装置91が設けられている。図2に示すように、第9ステーションSt9には、左側圧着装置92も設けられている。シャトル120の装填装置120bは、複数の個別クランプ120aを個別に移動させて、個別クランプ120aに把持されるとともに先端部の被覆が剥かれたドレイン線3またはコア線4を、個別に圧着装置91または92に装填する。右側圧着装置91の構成と左側圧着装置92の構成とは同様であるため、以下では、右側圧着装置91の構成についてだけ説明する。
【0088】
右側圧着装置91は、アプリケータ91aと、アプリケータ91aを押圧する図示しないプレスと、端子リール91bと、を備えている。アプリケータ91aは、端子8を成形する金型であるクリンパ(図示省略)およびアンビル91a1を備えている。クリンパとアンビル91a1とは、上下方向に向かい合っている。クリンパとアンビル91a1との間に端子リール91bから端子8が供給され、多芯シールドケーブル1の芯線の先端部がクリンパとアンビル91a1との間に挿入された状態でプレスが駆動すると、クリンパとアンビル91a1とが接近し、多芯シールドケーブル1の芯線の先端部に端子8が圧着される。
【0089】
ゴム栓7の装着、芯線のストリップ、および端子8の圧着は、品質管理上、芯線1本ずつに対して行うことが好ましい。そのため、本実施形態では、ドレイン線3またはコア線4は、装填装置120bにより1本ずつゴム栓装着装置71、芯線ストリップ装置81、右側圧着装置91、または左側圧着装置92に装填される。本実施形態では、整列工程によって芯線の左右位置が特定されているため、かかるゴム栓7の装着、芯線のストリップ、および端子8の圧着が確実に実施できる。また、回転工程でドレイン線3を左端に配置したため、後工程では、ドレイン線3の位置も特定されている(つまり、左端の芯線がドレイン線3であることが分かっている)。そのため、後工程で、ドレイン線3を処理する番なのか、コア線4を処理する番なのかを容易に判別することができる。例えば、圧着工程でコア線4用とは異なるドレイン線3用の端子8を使用するような場合、ドレイン線3の位置の特定が必要である。
【0090】
なお、ゴム栓7の装着、芯線3、4のストリップ、および端子8の圧着は、全ての芯線3、4(ゴム栓7の装着の場合は全てのコア線4)に対して行われなくてもよい。これらの工程は、ドレイン線3に対して行われなくてもよく、一部のコア線4に対して行われなくてもよい。これらの工程が行われないドレイン線3またはコア線4の露出部分は、これらの工程の前に切り落とされてもよい。
【0091】
[搬送装置]
加工装置200における多芯シールドケーブル1の搬送装置は、詳しくは、以下のような構成であってもよい。ただし、搬送装置の構成は、以下のようなものに限定されるわけではない。
【0092】
図14は、多芯シールドケーブル1の搬送装置の背面図である。図14に示すように、1つの好適な実施形態によれば、多芯シールドケーブル1の搬送装置は、切込装置21、シースセミストリップ装置22、ドレイン線検出装置31、シースストリップ装置32(ドレイン線検出装置31によって検出されたドレイン線3の周方向の位置に基づいて多芯シールドケーブル1を回転させ、ドレイン線3を予め定められた回転位置(ここでは0時の位置)に位置付ける回転装置としての回転クランプ32aを含む)、コア線分離装置33、ドレイン線矯正装置41、絶縁処理装置51、曲げ戻し装置61、および整列装置62に多芯シールドケーブル1を搬送する搬送装置110(上流側の搬送装置、以下、第1搬送装置110とも呼ぶ)と、ゴム栓装着装置71、芯線ストリップ装置81、右側圧着装置91、および左側圧着装置92に多芯シールドケーブル1を搬送する第2搬送装置119(下流側の搬送装置)と、を含んでいる。第2搬送装置119は、多芯シールドケーブル1の複数の芯線3、4をそれぞれ把持する複数の個別クランプ120aを備えたシャトル120と、シャトル120を移動させるシャトル搬送装置121と、を備えている。ここでは、第2搬送装置119は、複数のシャトル120を備えている。
【0093】
第1搬送装置110は、複数の加工ステーションSt2~St6にそれぞれ対向するように設けられ、多芯シールドケーブル1を把持する複数の固定クランプ130と、それぞれ多芯シールドケーブル1を把持するように構成され、複数の固定クランプ130のうち隣り合った2つの固定クランプ130の間を往復移動する複数の搬送クランプ111と、を備えている。固定クランプ130は、多芯シールドケーブル1を把持する固定把持装置の一例である。
【0094】
第1搬送装置110の複数の搬送クランプ111は、多芯シールドケーブル1の搬送方向に同じピッチで並び、搬送方向に往復移動する。第1搬送装置110のクランプ移動装置112は、搬送方向に延びるとともに複数の搬送クランプ111が係合したスライドレール112aと、スライドレール112aに沿って複数の搬送クランプ111を移動させる駆動部112bと、を備えている。固定把持装置としての複数の固定クランプ130は、停止位置にあるときの各搬送クランプ111と前後方向に並ぶように配置されている。複数の固定クランプ130のピッチは、複数の搬送クランプ111のピッチと同じであり、一定である。
【0095】
搬送方向の最も上流側の2つの搬送クランプ111は、U字状に曲げられた多芯シールドケーブル1を2か所で把持し、第2ステーションSt2に正対する位置まで移動させる。第2ステーションSt2の後方に配置された2つの固定クランプ130は、搬送されてきた多芯シールドケーブル1を2か所で把持する。その後、搬送クランプ111は第1ステーションSt1の後方に戻り、次の多芯シールドケーブル1を把持する。他の搬送クランプ111および他の固定クランプ130も、これらと同様に動作する。これにより、複数の多芯シールドケーブル1が搬送方向の下流に順次搬送される。
【0096】
第2搬送装置119のシャトル搬送装置121は、多芯シールドケーブル1を引き取る引き取り位置P0と、芯線ストリップ装置81に対向した第1対向位置P1と、圧着装置(右側圧着装置91および左側圧着装置92)に対向した第2対向位置P2と、ゴム栓装着装置71を備えた加工装置200の場合には、ゴム栓装着装置71に対向した第3対向位置P3と、端子8が圧着された後の多芯シールドケーブル1を離すリリース位置P4との間でシャトル120を移動させる。ここでは、シャトル搬送装置121は、複数のシャトル120を循環移動させる。ただし、シャトル搬送装置121は、1つのシャトル120を往復移動または循環移動させてもよい。
【0097】
本実施形態では、多芯シールドケーブル1がU字に曲げられているため、第1対向位置P1は、多芯シールドケーブル1の下流側の端部が芯線ストリップ装置81に対向する上流側第1対向位置と、多芯シールドケーブル1の上流側の端部が芯線ストリップ装置81に対向する下流側第1対向位置と、を含んでいる。第3対向位置P3についても同様である。第2対向位置P2は、多芯シールドケーブル1の下流側の端部が右側圧着装置91に対向する上流側第2対向位置と、多芯シールドケーブル1の上流側の端部が左側圧着装置92に対向する下流側第2対向位置と、を含んでいる。本実施形態では、各加工ステーションSt7~St9に設けられた装置は、上流側に隣接する加工ステーションに設けられた装置が多芯シールドケーブル1の上流側の端部を加工しているときに下流側の端部を加工するように構成されている。例えば、右側圧着装置91は、芯線ストリップ装置81が多芯シールドケーブル1の上流側の端部にストリップを行っているときに、下流側の端部に端子8を圧着する。このため、本実施形態では、例えば、下流側第1対向位置と上流側第2対向位置とは同じ位置である。このように、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、第2対向位置P2、およびリリース位置P4は、一部が重なっていてもよい。
【0098】
図14に示すように、シャトル搬送装置121は、複数のシャトル120が固定され、ループ状に走行する循環部材121aと、循環部材121aを循環走行させる駆動部121bと、を備えている。循環部材121aは、例えば、無端状のベルトやチェーンである。本実施形態では、循環部材121aは、前後方向視においてループを描くように構成されている。本実施形態では、シャトル120の循環移動は、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、および第2対向位置P2の間の横移動と、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、および第2対向位置P2よりも下方位置との間の上下移動とを含む循環移動である。リリース位置P4は、ここでは、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、および第2対向位置P2と並んでループの上段に設定されているが、ループの下段、または上段と下段との間に設定されていてもよい。ただし、循環部材121aは、例えば、水平面に沿って配置され、平面視においてループを描くように構成されていてもよい。
【0099】
シャトル120の複数の個別クランプ120aは、シャトル120が引き取り位置P0よりも下方位置から引き取り位置P0に移動するときに複数の芯線3、4を把持する。個別クランプ120aは、上方が開いたU字形状を有し、U字の内方でドレイン線3またはコア線4を保持する。個別クランプ120aは、芯線3、4をU字の内方に挿入可能であって挿入後にはこれを保持するように、弾性を備えている。シャトル120が引き取り位置P0に向かって上昇する動きと、上方から芯線3、4を押さえるように被さる整列装置62の押さえ部材の作用によって、芯線3、4は、個別クランプ120aに押し込まれる。
【0100】
このように、本実施形態に係る加工装置200は、切込装置21、シースセミストリップ装置22、ドレイン線検出装置31、シースストリップ装置32(回転クランプ32aを含む)、コア線分離装置33、ドレイン線矯正装置41、絶縁処理装置51、曲げ戻し装置61、および整列装置62に多芯シールドケーブル1を搬送する第1搬送装置110と、ゴム栓装着装置71、芯線ストリップ装置81、および圧着装置91、92に多芯シールドケーブル1を搬送する第2搬送装置119と、備えている。第2搬送装置119は、複数の芯線3、4をそれぞれ把持する複数の個別クランプ120aを備えたシャトル120と、シャトル120を移動させるシャトル搬送装置121と、を備えている。シャトル搬送装置121は、多芯シールドケーブル1を引き取る引き取り位置P0と、ゴム栓装着装置71に対向した第3対向位置P3と、芯線ストリップ装置81に対向した第1対向位置P1と、圧着装置91、92に対向した第2対向位置P2と、端子8が圧着された後の多芯シールドケーブル1を離すリリース位置P4との間でシャトル120を移動させる。かかる加工装置200によれば、ゴム栓7の装着、芯線3、4のストリップ、および端子8の圧着の間、芯線3、4を掴み替えることなく、多芯シールドケーブル1を搬送することができる。そのため、芯線3、4の位置が掴み替えによって変わるおそれがなく、安定する。これにより、ゴム栓7の装着、芯線3、4のストリップ、および端子8の圧着を高品質に行うことができる。
【0101】
本実施形態では、シャトル搬送装置121は、複数のシャトル120を循環移動させる。これにより、シャトル120をリリース位置P4から引き取り位置P0に戻すことができ、多芯シールドケーブル1の搬送が継続的に行われる。かつ、複数のシャトル120が循環するため、生産性を向上させることができる。
【0102】
本実施形態では、シャトル120の循環移動は、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、および第2対向位置P2の間の横移動と、引き取り位置P0、第3対向位置P3、第1対向位置P1、および第2対向位置P2よりも下方位置との間の上下移動とを含む循環移動である。シャトル120の複数の個別クランプ120aは、シャトル120が引き取り位置P0よりも下方位置から引き取り位置P0に移動するときに複数の芯線3、4を把持する。かかる構成によれば、シャトル120の循環移動中の上下移動を利用して芯線3、4を把持できるため、工程時間を短縮できる。
【0103】
本実施形態では、第1搬送装置110は、複数の加工ステーションSt2~St6にそれぞれ対向するように設けられ、多芯シールドケーブル1を把持する複数の固定クランプ130と、それぞれ多芯シールドケーブル1を把持するように構成され、複数の固定クランプ130のうち隣り合った2つの固定クランプ130の間を往復移動する複数の搬送クランプ111と、を備えている。なお、固定クランプ130の数によっては、搬送クランプ111は1つでもよい。かかる加工装置200によれば、多芯シールドケーブル1の搬送に関して高度な位置決めが求められない工程(ここでは、シース2に切れ目を入れる工程~芯線3、4の整列)では、搬送クランプ111が往復移動するとともに、多芯シールドケーブル1の掴み替えが行われる。これにより、かかる工程における多芯シールドケーブル1の搬送装置(第1搬送装置110)の構成が簡易化されている。
【0104】
本実施形態では、多芯シールドケーブル1の搬送に関して高度な位置決めが求められない工程では多芯シールドケーブル1の掴み替えを行って第1搬送装置110を簡易化し、各芯線3、4の位置精度が必要な工程(ここでは、ゴム栓7の装着~端子8の圧着)では多芯シールドケーブル1の掴み替えを行わず、芯線3、4を把持した状態のシャトル120を移動させる。これにより、加工装置200全体として簡略化が図られるとともに、多芯シールドケーブル1の加工品質が高められている。
【0105】
本実施形態では、複数の加工ステーションSt2~St6は、搬送クランプ111による多芯シールドケーブル1の搬送方向に並んで配置されている。加工装置200は、複数の加工ステーションSt2~St6よりも搬送方向の上流に配置され、両端が搬送方向に並ぶように多芯シールドケーブル1を略U字に曲げる屈曲装置110A(ここでは搬送装置110の曲げ機能、ただし、専用の屈曲装置であってもよい)を備えている。複数の固定クランプ130は、それぞれ、屈曲装置110Aによって曲げられた多芯シールドケーブル1の一端を把持するように構成されている。各加工ステーションSt2~St6に設けられた装置は、上流側に隣接する加工ステーションに設けられた装置が曲げられた多芯シールドケーブル1の上流側の端部を加工しているときに下流側の端部を加工する。かかる構成によれば、多芯シールドケーブル1の両端の処理を同時進行的に行うことができるため、生産性を向上させることができる。
【0106】
本実施形態では、シャトル120の複数の個別クランプ120aは、曲げられた多芯シールドケーブル1の上流側の端部に露出している複数の芯線3、4を把持する上流側グループ120Rと、上流側グループ120Rよりも搬送方向の下流に配置され、曲げられた多芯シールドケーブル1の下流側の端部に露出している複数の芯線3、4を把持する下流側グループ120Lと、を含んでいる。かかる構成によれば、シャトル120で多芯シールドケーブル1を搬送する工程においても、U字に曲げられた多芯シールドケーブル1の両端を把持することができる。なお、シャトル120で多芯シールドケーブル1を搬送する工程においても、各加工ステーションSt7~St9に設けられた装置は、上流側に隣接する加工ステーションに設けられた装置が多芯シールドケーブル1の上流側の端部を加工しているときに下流側の端部を加工する。
【0107】
[搬送装置の他の実施形態]
図15は、他の実施形態に係る多芯シールドケーブル1の搬送装置の背面図である。なお、以下の他の実施形態の説明でも、上記した実施形態と同じ機能を奏する部材には、同じ符号を使用する。図15に示すように、多芯シールドケーブル1の搬送装置は、第1搬送装置110から多芯シールドケーブル1を受け取り、第2搬送装置119に多芯シールドケーブル1を引き渡す受け渡し装置140を備えていてもよい。受け渡し装置140を設けることにより、第1搬送装置110から第2搬送装置119への多芯シールドケーブル1の直接の受け渡しがなくなる。そのため、第1搬送装置110および第2搬送装置119の待ち時間を削減することができる。この実施形態では、受け渡し装置140は、第5ステーションSt5と第6ステーションSt6との間に配置されている。第1搬送装置110は、第2ステーションSt2から第5ステーションSt5を経て、受け渡し装置140まで多芯シールドケーブル1を搬送する。第2搬送装置119は、引き取り位置P0において受け渡し装置140から多芯シールドケーブル1を引き取り、第10ステーションSt10まで搬送する。
【0108】
本実施形態では、第2搬送装置119の複数の個別クランプ120aは、第1搬送装置110の複数の固定クランプ130によって把持されるよりも多芯シールドケーブル1の両端の間隔が狭くなるように多芯シールドケーブル1を把持する。これにより、加工装置200の搬送方向の長さを短くすることができる。また、シャトル120の搬送方向の幅も狭くすることができる。一方、第1搬送装置110が多芯シールドケーブル1を搬送するステーションSt2~St5では、多芯シールドケーブル1の両端の間隔が広いため、装置の配置に自由度や余裕が生まれる。これに対応して、受け渡し装置140は、第1搬送装置110から多芯シールドケーブル1を受け取った後、第2搬送装置119に引き渡す前に、多芯シールドケーブル1の両端間の距離を縮めるように構成されている。本実施形態では、受け渡し装置140に多芯シールドケーブル1の両端の間隔を狭くする機能を設けることにより、多芯シールドケーブル1の両端の間隔を狭くする装置と受け渡し装置140とを共通化している。
【0109】
図15に示すように、受け渡し装置140は、多芯シールドケーブル1の両端をそれぞれ把持する一対のクランプ141と、一対のクランプ141を接近または離反させる駆動装置142と、クランプ141および駆動装置142を支持する移動体143と、移動体143を上下方向に移動させる昇降装置144と、移動体143を搬送方向に移動させるスライド装置145と、を備えている。多芯シールドケーブル1を第1搬送装置110から引き取るとき、受け渡し装置140は、スライド装置145によって、移動体143を、最下流の搬送クランプ111(下流側に移動された状態)の上方に移動させる。さらに、受け渡し装置140は、昇降装置144により、クランプ141の上下位置が多芯シールドケーブル1と同じになる位置まで移動体143を下降させる。その状態で、一対のクランプ141は、多芯シールドケーブル1の両端を把持する。このとき、一対のクランプ141の間の距離は、第1搬送装置110に把持されるときの多芯シールドケーブル1の両端間の距離に対応している。
【0110】
受け渡し装置140は、一対のクランプ141が多芯シールドケーブル1を把持すると、移動体143を上昇させる。さらに、受け渡し装置140は、移動体143を搬送方向の下流側に移動させ、引き取り位置P0にあるシャトル120の上方まで移動させる。この間、駆動装置142は、一対のクランプ141を接近させ、一対のクランプ141の間の距離を、第2搬送装置119に把持されるときの多芯シールドケーブル1の両端間の距離に対応させる。駆動装置142は、一対のクランプ141を接近または離反させ、一対のクランプ141の間の距離を、第1搬送装置110に把持されているときの多芯シールドケーブル1の両端間の距離に対応させ、または、第2搬送装置119に把持されるときの多芯シールドケーブル1の両端間の距離に対応させるように構成されている。受け渡し装置140は、その後、下降し、引き取り位置P0にあるシャトル120に多芯シールドケーブル1を引き渡す。
【0111】
本実施形態では、駆動装置142は、把持した多芯シールドケーブル1の軸線とは異なる位置に配置された回転軸周りに一対のクランプ141を回転させることにより、多芯シールドケーブル1の両端間の距離を変更する。図15に示すように、駆動装置142は、多芯シールドケーブル1の両端間の距離を縮めるとき、上流側のクランプ141Rを回転軸Ar周りに下流側に90度回転させる。また、駆動装置142は、下流側のクランプ141Lを回転軸Al周りに上流側に90度回転させる。これにより、多芯シールドケーブル1の両端間の距離が小さくなる。なお、本実施形態では、固定クランプ130ではなく、駆動装置142によって多芯シールドケーブル1の両端部が回転され、複数の芯線3、4が搬送方向に並ぶ。これにより、曲げ戻し装置61および整列装置62でコア線4を曲げ戻し、ドレイン線3および複数のコア線4を整列させることが可能となる。
【0112】
ただし、受け渡し装置140の構成は、上記したものには限定されない。例えば、受け渡し装置140が多芯シールドケーブル1の両端間の距離を変更する構成は、クランプ141を回転させる構成には限定されない。受け渡し装置140は、例えば、一対のクランプ141の一方または両方を搬送方向にスライドさせることにより、多芯シールドケーブル1の両端間の距離を変更するように構成されていてもよい。受け渡し装置140は、多芯シールドケーブル1を上昇下降させなくてもよい。
【0113】
なお、本実施形態では、第2搬送装置119の複数の個別クランプ120aは、第1搬送装置110の複数の固定クランプ130によって把持されるよりも多芯シールドケーブル1の両端の間隔が狭くなるように多芯シールドケーブル1を把持したが、固定クランプ130によって把持されるのと同じ間隔で多芯シールドケーブル1の両端を把持してもよい。
【0114】
[他の実施形態]
以上、本発明の好適ないくつかの実施形態について説明した。ただし、上記実施形態は例示に過ぎず、他にも種々の実施形態が可能である。例えば、上記した実施形態では、シース2のセミストリップ工程を行った後にドレイン線3の位置を検出し、さらにその後にシース2の全ストリップ工程を行っていた。しかし、例えば、シース2のストリップ長が短く、芯線がばらけるおそれが少ない場合などには、シース2の全ストリップ工程を行った後にドレイン線3の位置を検出してもよい。また、シース2のストリップ長が短く、芯線の撚りが問題にならない場合などには、シース2のストリップにおける芯線の撚り戻しは行われなくてもよい。さらには、シース2のストリップ長が短く、露出したドレイン線3が短い場合などには、ドレイン線3の矯正工程は行われなくてもよい。
【0115】
上記した実施形態では、ドレイン線3と複数のコア線4とを含む多芯シールドケーブル1を加工していた。しかし、加工されるケーブルは、ドレイン線を含まない多芯ケーブルであってもよい。多芯ケーブルの加工装置は、シースとシースに挿通された複数の芯線とを有する多芯ケーブルを加工する装置であってもよい。多芯ケーブルの加工装置は、周方向に沿った切れ目をシースに形成する切込装置と、切れ目よりも多芯ケーブルの先端側のシースと根元側のシースとのうちの少なくとも一方を多芯ケーブルの長手方向に移動させて複数の芯線を露出させる引き抜き装置と、を備えていてもよい。多芯ケーブルの加工装置は、さらに、複数の芯線のうち特定の芯線の多芯ケーブルの周方向に関する位置を検出する検出装置と、検出された特定の芯線の周方向の位置に基づいて多芯ケーブルを回転させ、特定の芯線を予め定められた周方向の位置に移動させる回転装置と、を備えていてもよい。特定の芯線はドレイン線であってもよいが、他の芯線であってもよい。
【0116】
かかる多芯ケーブルの加工装置によれば、検出装置によって検出された特定の芯線の周方向の位置に基づいて多芯ケーブルを回転させ、特定の芯線の位置を予め定められた周方向の位置とすることができる。それに伴って、複数の芯線の位置が定まる。これにより、多芯ケーブルの各芯線の位置を特定できるようになる。
【0117】
各工程の詳細や各装置の構成は、本発明の技術思想に反しない限りにおいて、特に限定されない。その他、特に言及されない限り、上記した実施形態は本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0118】
1 多芯シールドケーブル(多芯ケーブル)
2 シース
3 ドレイン線(芯線)
4 コア線(芯線)
6 熱収縮チューブ
7 ゴム栓(防水ゴム栓)
8 端子
21 切込装置
22 シースセミストリップ装置(引き抜き装置)
31 ドレイン線検出装置(検出装置)
32 シースストリップ装置(引き抜き装置)
32a 回転クランプ(回転装置)
33 コア線分離装置(分離装置)
41 ドレイン線矯正装置(矯正装置)
51 絶縁処理装置
53 チューブ装着装置(挿入装置)
54 加熱装置
61 曲げ戻し装置
62 整列装置
62a 整列部材
62b 移動装置
71 ゴム栓装着装置
81 芯線ストリップ装置(ストリップ装置)
91 右側圧着装置(圧着装置)
92 左側圧着装置(圧着装置)
110 搬送装置(第1搬送装置)
110A 屈曲装置
111 搬送クランプ(把持装置、移動把持装置)
112 クランプ移動装置(把持装置移動装置)
119 第2搬送装置
120 シャトル(キャリア)
120a 個別クランプ(把持部材)
121 シャトル搬送装置(キャリア移動装置)
120b 装填装置
130 固定クランプ(固定把持装置)
140 受け渡し装置
141 クランプ(把持部材)
142 駆動装置
150 制御装置
200 加工装置
St2~St9 ステーション(加工ステーション、他の加工ステーション)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15