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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20250402BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20250402BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20250402BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20250402BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/34 G
H02J7/35 K
H02J9/06 120
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021004150
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2022108919
(43)【公開日】2022-07-27
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河▲崎▼ 吉則
(72)【発明者】
【氏名】西村 荘治
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187107(JP,A)
【文献】特開2008-043144(JP,A)
【文献】特開2020-162323(JP,A)
【文献】特許第6338131(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、
前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記電力線において前記機械式スイッチに並列接続され、機械式スイッチのアーク抵抗よりも小さいインピーダンスを持つコンデンサと、
前記電力線において前記機械式スイッチ及び前記コンデンサに並列接続された半導体スイッチと、
前記機械式スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の異常を検出する系統異常検出部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の復電を検出する系統復電検出部と、
前記重要負荷への給電を制御する制御部とを備え、
定常運用時においては、前記機械式スイッチが投入されるとともに、前記半導体スイッチが開放されており、
前記系統異常検出部により前記商用電力系統の異常が検出された場合には、前記制御部が、前記機械式スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記コンデンサを介して接続された状態で、前記分散型電源が運転を継続し、
前記系統復電検出部により前記商用電力系統の復電が検出された場合には、前記制御部が、前記半導体スイッチを投入し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが当該半導体スイッチを介して接続される、電源システム。
【請求項2】
前記半導体スイッチが前記制御部により投入された後に、前記機械式スイッチが前記制御部により投入され、その後、前記半導体スイッチが前記制御部により開放される、請求項1記載の電源システム。
【請求項3】
前記系統復電検出部により復電が検出されてから0.1秒以内に前記半導体スイッチが投入される、請求項1又は2記載の電源システム。
【請求項4】
前記半導体スイッチが、自己消弧能力を持たない素子である、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の電源システム。
【請求項5】
前記コンデンサに直列接続又は並列接続されており、前記コンデンサと前記電力線又は前記重要負荷のリアクトルとの共振を抑制する共振抑制回路をさらに備える、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の電源システム。
【請求項6】
前記共振抑制回路が、
前記コンデンサに直列接続された抵抗素子と、
前記抵抗素子に並列接続されたスイッチング素子とを有する、請求項5記載の電源システム。
【請求項7】
前記系統異常検出部により前記商用電力系統の異常が検出された場合には、前記制御部が、前記機械式スイッチを開放し、その後に、前記スイッチング素子を開放する、請求項6記載の電源システム。
【請求項8】
前記電力線に設けられて、前記商用電力系統から前記重要負荷への給電を遮断する解列スイッチと、
前記系統異常検出部により検出された異常が、周波数変動であるか停電であるかを判断する異常判断部とをさらに備え、
前記系統異常検出部により検出された異常が周波数変動であると前記異常判断部により判断された場合には、前記制御部が、前記スイッチング素子を開放し、前記コンデンサと前記抵抗素子とが接続された状態で、前記分散型電源が運転を継続し、
前記系統異常検出部により検出された異常が停電であると前記異常判断部により判断された場合には、前記制御部が、前記解列スイッチを開放し、前記重要負荷を前記商用電力系統から解列する、請求項6又は7記載の電源システム。
【請求項9】
商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、
前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、
前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、
前記電力線において前記機械式スイッチに並列接続されたコンデンサと、
前記電力線において前記機械式スイッチ及び前記コンデンサに並列接続された半導体スイッチと、
前記機械式スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の異常を検出する系統異常検出部と、
前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の復電を検出する系統復電検出部と、
前記重要負荷への給電を制御する制御部と、
前記コンデンサに直列接続又は並列接続されており、前記コンデンサと前記電力線又は前記重要負荷のリアクトルとの共振を抑制する共振抑制回路とを備え、
定常運用時においては、前記機械式スイッチが投入されるとともに、前記半導体スイッチが開放されており、
前記系統異常検出部により前記商用電力系統の異常が検出された場合には、前記制御部が、前記機械式スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記コンデンサを介して接続された状態で、前記分散型電源が運転を継続し、
前記系統復電検出部により前記商用電力系統の復電が検出された場合には、前記制御部が、前記半導体スイッチを投入し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが当該半導体スイッチを介して接続されており、
前記共振抑制回路は、
前記コンデンサに直列接続された抵抗素子と、
前記抵抗素子に並列接続されたスイッチング素子とを有する、電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムとして、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
特許文献1の電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に、半導体スイッチと、当該半導体スイッチに並列接続されたインピーダンス素子とを設け、半導体スイッチよりも重要負荷側に分散型電源を設けて構成されている。また、半導体スイッチよりも商用電力系統側に解列スイッチが設けられている。この電源システムは、商用電力系統に瞬時電圧低下又は周波数変動が発生した場合には、半導体スイッチを開放することにより、インピーダンス素子を介して商用電力系統と分散型電源とを接続するとともに、分散型電源は逆潮流を含む運転を継続する(FRT運転)。一方、商用電力系統に停電が発生した場合には、一定時間(例えば2秒間)瞬時電圧低下と認識してFRT運転をした後に、停電と認識して更に解列スイッチを開放し、分散型電源を自立運転させる。これにより、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6338131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した電源システムは、高価な半導体スイッチにより電力線の開閉を切り替えるので、システムのコストが増大してしまう。
【0006】
そこで、本願発明者は、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムを低コストで提供するべく、図4に示すように、商用電力系統から重要負荷に給電するための電力線に機械式スイッチを設けるとともに、この機械式スイッチにコンデンサを並列接続したシステム構成を、本発明の開発に当たって中間的に検討した。
【0007】
このようなシステムであれば、瞬時電圧低下や周波数変動が発生した場合に機械式スイッチを開放することで、分散型電源と商用電力系統とがコンデンサを介して連系された状態となる。これにより、高価な半導体スイッチを安価な機械式スイッチで代用することができ、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムを低コストで提供することが可能となり、上述した課題が解決されるかに思われた。
【0008】
ところが、FRT要件には、先に述べたものとは別に、瞬時電圧低下が発生した後、商用電力系統の電圧が健全状態に復帰(以下、復電という)した場合に、復電から最短で0.1秒以内に分散型電源の出力を80%まで回復させなければならないという規定がある。
【0009】
このFRT要件を満たすべく、0.1秒以内に分散型電源の出力を回復させようとすると、機械式スイッチを厳密に制御しなければならないが、機械式スイッチは、投入時間が約60ミリ秒±数10ミリ秒の範囲で前後する不安定なものであり、厳密な制御は現実的には難しい。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題を一挙に解決するべくなされたものであり、商用電力系統の異常時に課されるFRT要件のみならず、商用電力系統の復電時に課されるFRT要件をも満たすことができ、且つ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムを低コストで提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち本発明に係る電源システムは、商用電力系統と重要負荷との間に設けられ、前記重要負荷に電力を供給する電源システムであって、前記商用電力系統から前記重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられ、前記電力線を開閉する機械式スイッチと、前記電力線において前記機械式スイッチに並列接続されたコンデンサと、前記電力線において前記機械式スイッチ及び前記コンデンサに並列接続された半導体スイッチと、前記機械式スイッチよりも前記商用電力系統側の電圧を検出する系統側電圧検出部と、前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の異常を検出する系統異常検出部と、前記系統側電圧検出部の検出電圧から前記商用電力系統の復電を検出する系統復電検出部と、前記重要負荷への給電を制御する制御部とを備え、定常運用時においては、前記機械式スイッチが投入されるとともに、前記半導体スイッチが開放されており、前記系統異常検出部により前記商用電力系統の異常が検出された場合には、前記制御部が、前記機械式スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記コンデンサを介して接続された状態で、前記分散型電源が運転を継続し、前記系統復電検出部により前記商用電力系統の復電が検出された場合には、前記制御部が、前記半導体スイッチを投入し、前記分散型電源と前記商用電力系統とが当該半導体スイッチを介して接続されることを特徴とするものである。
【0012】
このように構成された電源システムであれば、上述した図4に記載のシステム構成と同様、商用電力系統の異常時には機械式スイッチを開放して、分散型電源と商用電力系統とをコンデンサを介して連系させるので、商用電力系統の異常時に課させるFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立させることができる。
しかも、半導体スイッチを機械式スイッチに並列接続するとともに、この半導体スイッチとして、素子構造が単純で高耐圧を有し、大容量ではあるが自己消弧能力を持たないサイリスタ等の素子を使用することができる。さらに、この半導体スイッチを商用電力系統の復電時にのみ投入・開放するので、従来の構成、すなわち半導体スイッチを商用電力系統の異常時及び復電時の両方で投入・開放する構成に比べて、半導体スイッチの使用回数を半分に減らすことができ、半導体スイッチやシステムの寿命を延ばすことができる。かかる作用効果は、電源システムのイニシャルコストやランニングコストの低減につながる。
さらに、商用電力系統の復電時に半導体スイッチを投入するので、復電から0.1秒以内に分散型電源の出力を回復させることが可能となり、復電時に課されるFRT要件をも満たすことができる。
このように、本発明によれば、商用電力系統に瞬時電圧低下や周波数変動が発生した場合におけるFRT要件のみならず、商用電力系統の復電時に課されるFRT要件をも満たすことができ、且つ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムを低コストで提供することが可能となる。
【0013】
前記半導体スイッチが前記制御部により投入された後に、前記機械式スイッチが前記制御部により投入され、その後、前記半導体スイッチが前記制御部により開放されることが好ましい。
これならば、分散型電源の出力の回復後に速やかに半導体スイッチを開放することができ、半導体スイッチのさらなる長寿命化を図ることができ、システムの長寿命化や低コスト化につながる。
【0014】
商用電力系統の復電時に課されるFRT要件が厳しいものであっても対応できるようにするためには、前記系統復電検出部により復電が検出されてから0.1秒以内に前記半導体スイッチが投入されることが好ましい。
【0015】
前記半導体スイッチの具体的な実施態様としては、自己消弧能力を持たない素子であり、例えばサイリスタを挙げることができる。
【0016】
ところで、商用電力系統に瞬時電圧低下や周波数変動が生じた場合に分散型電源と商用電力系統とをコンデンサを介して連系させると、コンデンサと電力線又は重要負荷のリアクトルとが共振する恐れがある。このことから、周波数変動時も運転を継続した場合、共振周波数が系統に存在する高調波や分散型電源から発生する高調波と一致すると、系統や重要負荷に不要な影響を与えかねない。
【0017】
そこで、前記コンデンサに直列接続又は並列接続されており、前記コンデンサと前記電力線又は前記重要負荷のリアクトルとの共振を抑制する共振抑制回路をさらに備えることが好ましい。
このような構成であれば、共振周波数が系統に存在する高調波や分散型電源から発生する高調波と一致したとしても、コンデンサと電力線又は重要負荷のリアクトルとの共振を共振抑制回路により抑制することができ、系統や重要負荷への不要な影響を防ぐことができる。
【0018】
前記共振抑制回路の具体的な実施態様としては、前記コンデンサに直列接続された抵抗素子と、前記抵抗素子に並列接続されたスイッチング素子とを有するものを挙げることができる。
【0019】
かかる構成において、機械式スイッチとスイッチング素子と制御方法としては、商用電力系統の異常が検出された場合に、機械式スイッチとスイッチング素子とを同時に開放する制御方法が考えられるが、この場合、スイッチ開放時間のばらつきにより、機械式スイッチの開放がスイッチング素子よりも遅れると、スイッチング素子の接点間でアークが発生してしまい、その接点寿命を低下させる恐れがある。
そこで、前記系統異常検出部により前記商用電力系統の異常が検出された場合には、前記制御部が、前記機械式スイッチを開放し、その後に、前記スイッチング素子を開放することが好ましい。
これならば、商用電力系統の異常時に電流をコンデンサに確実に転流及び限流させることができる。
【0020】
前記電力線に設けられて、前記商用電力系統から前記重要負荷への給電を遮断する解列スイッチと、前記系統異常検出部により検出された異常が、周波数変動であるか停電であるかを判断する異常判断部とをさらに備え、前記系統異常検出部により検出された異常が周波数変動であると前記異常判断部により判断された場合には、前記制御部が、前記スイッチング素子を開放し、前記コンデンサと前記抵抗素子とが接続された状態で、前記分散型電源が運転を継続し、前記系統異常検出部により検出された異常が停電であると前記異常判断部により判断された場合には、前記制御部が、前記解列スイッチを開放し、前記重要負荷を前記商用電力系統から解列することが好ましい。
このような構成であれば、商用電力系統の異常が周波数変動である場合には、コンデンサを介して商用電力系統と分散型電源とを連系させて、分散型電源をFRT運転させつつ、コンデンサと抵抗素子とが直列接続されるので、上述した共振を抑制することができる。
一方、商用電力系統の異常が停電である場合には、解列スイッチを開放して、分散型電源を自立運転させることができる。
これにより、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立させるようにしている。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、商用電力系統の異常時に課されるFRT要件のみならず、商用電力系統の復電時に課されるFRT要件をも満たすことができ、且つ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立する電源システムを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
図2】その他の実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
図3】その他の実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
図4】本発明の開発に当たり中間的に検討したシステム構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
<システムの全体構成>
本実施形態の電源システム100は、図1に示すように、商用電力系統10と重要負荷20との間に設けられ、商用電力系統10の異常時に重要負荷20に電力を供給する無停電電源システムとしての機能(無停電電源機能)と、商用電力系統10に対して順潮流及び逆潮流することで負荷平準化する分散型電源システムとしての機能(負荷平準化機能)を発揮するものである。
【0025】
ここで、商用電力系統10は、電力会社(電気事業者)の電力供給網であり、発電所、送電系統及び配電系統を有するものである。また、重要負荷20は、停電や瞬低などの系統異常時においても電力を安定して供給すべき負荷であり、図1では1つであるが、複数あってもよい。
【0026】
具体的に電源システム100は、分散型電源1と、商用電力系統10と分散型電源1及び重要負荷20とを接続する開閉スイッチ2と、開閉スイッチ2に並列接続された転流回路3と、重要負荷20を商用電力系統10から解列するための解列スイッチ4と、開閉スイッチ2よりも商用電力系統10側の電圧を検出する系統側電圧検出部5と、系統側電圧検出部5の検出電圧から商用電力系統10の異常を検出する系統異常検出部6と、系統側電圧検出部5の検出電圧から商用電力系統10の電圧が健全状態に復帰したこと(以下、復電という)を検出する系統復電検出部7と、重要負荷20への給電を制御する制御部8とを備えている。
【0027】
分散型電源1は、商用電力系統10から重要負荷20に給電するための電力線L1に接続されている。この分散型電源1は、商用電力系統10に連系されるものであり、例えば太陽光発電や燃料電池などの直流発電設備、二次電池(蓄電池)などの電力貯蔵装置(蓄電デバイス)、風力発電やマイクロガスタービンなどの交流で出力された電気エネルギを直流に整流したうえで、電力変換装置を用いて系統連系をされる発電設備、又は、同期発電機や誘導発電機などの交流発電設備である。
【0028】
開閉スイッチ2は、電力線L1において分散型電源1の接続点よりも商用電力系統10側に設けられて電力線L1を開閉するものであり、具体的には機械式スイッチ(以下、機械式スイッチ2ともいう)である。この機械式スイッチ2は、制御部8から送信される信号に応じて、所定の開極時間で開閉駆動される。
【0029】
転流回路3は、機械式スイッチ2を開放した際に電流が流れ込む(転流)ように構成され、これを限流させるものである。具体的にこの転流回路3は、機械式スイッチ2に対して並列接続され、互いに並列接続されているコンデンサ31と転流素子32とを備える。コンデンサ31は、具体的には例えばフィルムコンデンサ等であり、転流素子32は、具体的には例えば抵抗とリアクトルとを組み合わせた素子である。
【0030】
コンデンサ31は、機械式スイッチ2を開放した際に、機械式スイッチ2に流れる電流を、アークを生じさせることなく瞬時に転流回路3に転流させ、機械式スイッチ2をゼロ点関係なく高速に遮断できるようにその静電容量が定められている。すなわち、このコンデンサ31は、機械式スイッチ2のアーク抵抗よりも小さいインピーダンスのものである。
【0031】
本実施形態のコンデンサ31をより具体的に説明すると、商用電力系統10の定格電圧をV、機械式スイッチ2の開放(又は開極)を開始してから、当該機械式スイッチ2の両端電圧の変化量が安定するまでの時間(過渡時間ともいう)をT、機械式スイッチ2の開放時に流れる遮断電流(最大時)をiSWとして、コンデンサ31の容量Cが以下の(1)式を満たすようにコンデンサ31を構成している。また各パラメータの誤差を考慮すると、余裕をもって(1)’式を満たすようにコンデンサ31を構成するのが好ましい。
C×(V/T)>iSW・・・(1)
C×(V/T)>1.3×iSW・・・(1)’
【0032】
解列スイッチ4は、電力線L1において分散型電源1よりも商用電力系統10側に設けられており、例えば機械式スイッチである。この解列スイッチ4は、制御部8から送信される信号に応じて制御駆動される。
【0033】
系統側電圧検出部5は、電力線L1において機械式スイッチ2よりも商用電力系統10側の電圧を、計器用変圧器を介して検出するものである。具体的に系統側電圧検出部5は、機械式スイッチ2及び転流回路3からなる並列回路よりも商用電力系統10側に計器用変圧器を介して接続されている。
【0034】
系統異常検出部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧と、予め定められた整定値とを比較して、前記検出電圧が前記整定値以下である場合に、瞬時電圧低下を検出する。また、系統異常検出部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧から周波数変動(周波数上昇(OF)、周波数低下(UF))を検出する。なお、この周波数変動は、例えばステップ上昇や、ランプ上昇・下降である。さらに、系統異常検出部6は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧から停電を検出する。その他、系統異常検出部6は、瞬時電圧低下、周波数変動及び停電に加えて、電圧上昇、位相変動、電圧不平衡、高調波異常又はフリッカの少なくとも1つを検出してもよい。
【0035】
系統復電検出部7は、系統側電圧検出部5により検出された検出電圧と、予め定められた上述の整定値とを比較して、前記検出電圧が前記整定値を上回った場合に、商用電力系統10の電圧が復帰したこと、すなわち商用電力系統10の復電を検出する。
【0036】
制御部8は、電源システム100が備える各機器の運転/停止、開放/閉止等を制御するものである。
【0037】
然して、本実施形態の電源システム100は、電力線L1において、機械式スイッチ2及びコンデンサ31(転流回路3)に並列接続された半導体スイッチ9をさらに備えてなる。
【0038】
この半導体スイッチ9は、機械式スイッチ2よりも高速に動作するものであり、自己消弧能力を持たない素子であるサイリスタ等の高速に導通可能なものを挙げることができる。なお、半導体スイッチ9としては、IGBTを用いても良い。
【0039】
<システムの動作説明>
次に、上述した制御部8の具体的な動作について説明する。
【0040】
本実施形態の制御部8は、系統異常検出部6や系統復電検出部7からの信号に応じて、(1)定常運用時モード、(2)瞬低時・周波数変動時モード、(3)停電時モード、(4)復電時モードの複数の制御モードを取るように構成されている。以下に、各制御モードについて説明する。
【0041】
(1)定常運用時モード
系統異常検出部6により系統異常が検出されていない定常運用時には、制御部8は機械式スイッチ2及び解列スイッチ4を閉じるとともに、半導体スイッチ9を開放している。この場合、分散型電源1及び重要負荷20は、機械式スイッチ2を介して商用電力系統10に接続されている。転流回路3は、機械式スイッチ2に並列接続されているが、機械式スイッチ2のインピーダンスが転流回路3のインピーダンスよりも小さいため、商用電力系統10と分散型電源1及び重要負荷20とは、機械式スイッチ2を介して電力をやり取りする。かかる構成により、分散型電源1による逆潮流によって、ピークカットを実現することができる。
【0042】
(2)瞬低時・周波数変動時モード
系統異常検出部6により瞬時電圧低下又は周波数変動が検出された瞬低時・周波数変動時には、制御部8は、機械式スイッチ2を開放する。そして、商用電力系統10と分散型電源1及び重要負荷20とを転流回路3を介して接続された状態として、分散型電源1による運転を継続し、重要負荷20の電圧・周波数が安定するように充放電させ、潮流バランスを調整する。
【0043】
(3)停電時モード
系統異常検出部6により停電が検出された停電時には、制御部8は、解列スイッチ4を開放するとともに分散型電源1を自立運転させる。具体的に制御部8は、系統側電圧検出部5の検出電圧が所定の解列条件を満たす場合に解列スイッチ4を開放する。ここで、所定の解列条件は、系統電圧の電圧低下(検出電圧が前記整定値以下となっている状態)の継続時間が所定値以上(瞬低継続時間よりも長い時間)となることである。つまり、所定の解列条件を満たすまでは、瞬時電圧低下と認識して、制御部8は機械式スイッチ2を開放し、分散型電源1は、FRT運転をする。そして、所定の解列条件を満たすと、制御部8は解列スイッチ4を開放し、解列スイッチ4が開放された状態で、分散型電源1は自立運転モードとなり重要負荷20に給電する。このように分散型電源1は、健全時の連系運転からFRT運転をした後に自立運転になる。なお、解列スイッチ4を開放する時には、機械式スイッチ2は既に解放されているので、解列スイッチ4の開放による過電流は転流回路3によって限流される。
【0044】
(4)復電時モード
系統復電検出部7により商用電力系統10の復電が検出された復電時には、制御部8は、半導体スイッチ9を投入する。具体的にこの実施形態では、上述した瞬低時・周波数変動時モードの最中に復電が検出された場合に、制御部8が、半導体スイッチ9を投入し、これにより分散型電源1と商用電力系統10とが半導体スイッチ9を介して接続される。なお、本実施形態の半導体スイッチ9は、系統復電検出部7により復電が検出されてから0.1秒以内に投入可能なものである。本実施形態では、復電が検出された場合に、制御部8が半導体スイッチ9と機械式スイッチ2との双方に同時に投入信号を出力するが、動作の速い半導体スイッチ9が先に投入され、その後に、機械式スイッチ2が投入される。なお、制御部8としては、半導体スイッチ9に投入信号を出力した後、所定時間後に、機械式スイッチ2に投入信号を出力しても良い。そして、機械式スイッチ2が投入された後、制御部8は、半導体スイッチ9を開放する。
【0045】
<本実施形態の効果>
このように構成された電源システム100であれば、商用電力系統10の異常時には機械式スイッチ2を開放して、分散型電源1と商用電力系統10とをコンデンサ31を介して連系させるので、商用電力系統10の異常時に課させるFRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源1を用いて両立させることができる。しかも、コンデンサ31として、機械式スイッチ2のアーク抵抗よりも小さいインピーダンスのものを選定しているので、機械式スイッチ2の開放時にアークを生じさせることなくコンデンサ31に転流及び限流させることができ、機械式スイッチ2をゼロ点関係なく高速に遮断することができる。
しかも、半導体スイッチ9としてIGBTよりも素子構造がより単純で高耐圧を有し、大容量ではあるが自己消弧能力を持たないサイリスタを使用するとともに、この半導体スイッチ9を商用電力系統10の復電時にのみ投入・開放するので、従来の構成、すなわち半導体スイッチ9としてIGBTなど自己消弧能力を持つ素子を使用し、その半導体スイッチ9を商用電力系統10の異常時及び復電時の両方で投入・開放する構成に比べて、半導体スイッチ9の使用回数を半分に減らすことができ、半導体スイッチ9やシステムの寿命を延ばすことができる。かかる作用効果は、電源システム100のイニシャルコストやランニングコストの低減につながる。
さらに、商用電力系統10の復電時に半導体スイッチ9を投入するので、復電から0.1秒以内に分散型電源1の出力を回復させることが可能となり、復電時に課されるFRT要件をも満たすことができる。
このように、本実施形態の電源システム100によれば、商用電力系統10に瞬時電圧低下や周波数変動が発生した場合におけるFRT要件のみならず、商用電力系統10の復電時に課されるFRT要件をも満たすことができ、且つ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源1を用いて両立する電源システム100を低コストで提供することが可能となる。
【0046】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0047】
例えば、半導体スイッチ9は、図2に示すように、機械式スイッチ2及び解列スイッチ4の双方に対して並列接続されていても良い。
このような構成であれば、瞬低時・周波数変動時モードの最中における復電時のみならず、停電時モードの最中における復電時においても、制御部8が半導体スイッチ9を投入することで、0.1秒以内に分散型電源1の出力を回復させることができ、FRT要件をより確実に満たすことができるようになる。
【0048】
また、前記実施形態における転流回路3は、並列接続されたコンデンサ31と転流素子32とを備えていたが、転流回路3としてはコンデンサ31のみを備えるものであっても良い。
【0049】
ところで、商用電力系統10に瞬時電圧低下や周波数変動が生じた場合に分散型電源1と商用電力系統10とをコンデンサ31を介して連系させると、コンデンサ31と電力線L1又は重要負荷20のリアクトルとが共振する恐れがある。このことから、周波数変動時も運転を継続した場合、共振周波数が商用電力系統10に存在する高調波や分散型電源1から発生する高調波と一致すると、商用電力系統10や重要負荷20に不要な影響を与えかねない。
【0050】
そこで、本発明に係る電源システム100としては、図3に示すように、コンデンサ31に直列接続されており、コンデンサ31と電力線L1又は重要負荷20のリアクトルとの共振を抑制する共振抑制回路Xをさらに備えていても良い。なお、図示していないが、共振抑制回路Xは、コンデンサ31に並列接続されていても良いし、複数の共振抑制回路Xが設けられていても良い。
具体的にこの共振抑制回路Xは、コンデンサ31に直列接続されたダンピング素子たる抵抗素子X1と、抵抗素子X1に並列接続されたスイッチング素子X2とを有する。なお、ダンピング素子としては、抵抗素子X1とリアクトル(不図示)とを組み合わせて、例えば偶数時調波などの任意の共振点に変更可能なものであっても良い。
このような構成であれば、共振周波数が商用電力系統10に存在する高調波や分散型電源1から発生する高調波と一致したとしても、コンデンサ31と電力線L1又は重要負荷20のリアクトルとの共振を共振抑制回路Xにより抑制することができ、商用電力系統10や重要負荷20への不要な影響を防ぐことができる。
【0051】
また、同図3に示す構成において、制御部8としては、系統異常検出部6により商用電力系統10の異常が検出された場合に、機械式スイッチ2を開放し、その後に、スイッチング素子X2を開放することが好ましい。
これならば、商用電力系統10の異常時に電流をコンデンサ31に確実に転流及び限流させることができる。
【0052】
さらに、同図3に示す構成において、制御部8としては、系統異常検出部6により検出された異常が、周波数変動であるか停電であるかを判断する異常判断部81をさらに備えていても良い。
そして、系統異常検出部6により検出された異常が周波数変動であると異常判断部81により判断された場合には、制御部8は、スイッチング素子X2を開放し、コンデンサ31と抵抗素子X1とが接続された状態で、分散型電源1が運転を継続する。
一方、系統異常検出部6により検出された異常が停電であると異常判断部81により判断された場合には、制御部8は、解列スイッチ4を開放し、重要負荷20を商用電力系統10から解列する。
【0053】
このような構成であれば、商用電力系統10の異常が周波数変動である場合には、コンデンサ31を介して商用電力系統10と分散型電源1とを連系させて、分散型電源1をFRT運転させつつ、コンデンサ31と抵抗素子X1とが直列接続されるので、上述した共振を抑制することができる。
一方、商用電力系統10の異常が停電である場合には、解列スイッチ4を開放して、分散型電源1を自立運転させることができる。
これにより、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源1を用いて両立させるようにしている。
【0054】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・電源システム
10 ・・・商用電力系統
20 ・・・重要負荷
L1 ・・・電力線
1 ・・・分散型電源
2 ・・・機械式スイッチ
31 ・・・コンデンサ
4 ・・・解列スイッチ
5 ・・・系統側電圧検出部
6 ・・・系統異常検出部
7 ・・・系統復電検出部
8 ・・・制御部
81 ・・・異常判断部
9 ・・・半導体スイッチ
X ・・・共振抑制回路
図1
図2
図3
図4