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特許7659174高炉操業方法、高炉操業制御装置、及び高炉操業制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】高炉操業方法、高炉操業制御装置、及び高炉操業制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20250402BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C21B5/00 311
C21B7/24 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021061896
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022157588
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】中野 薫
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-136417(JP,A)
【文献】特開2011-219800(JP,A)
【文献】特開2012-107298(JP,A)
【文献】特開平06-136415(JP,A)
【文献】国際公開第2020/166347(WO,A1)
【文献】特開2014-224289(JP,A)
【文献】特開2021-167453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21B 3/00 - 5/06
C21B 11/00 - 15/04
C21B 7/00 - 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを前記高炉内に交互に層状に形成する高炉操業方法において、
前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入重量を決定し、
決定した装入重量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する、
高炉操業方法。
【請求項2】
炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、
前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入重量を決定し、
決定した装入重量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する、
処理を実行する制御部を含む高炉操業制御装置。
【請求項3】
炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類を取得し、
前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入重量を決定し、
決定した装入重量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する、
処理を実行する制御部を含む高炉操業制御装置。
【請求項4】
炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、
前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入重量を決定し、
決定した装入重量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する、
処理をコンピュータに実行させる高炉操業制御プログラム。
【請求項5】
炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類を取得し、
前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入重量を決定し、
決定した装入重量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する、
処理をコンピュータに実行させる高炉操業制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉操業方法、高炉操業制御装置、及び高炉操業制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉内に、鉄鉱石層とコークス層とを交互に層状に形成し、高炉の下部の羽口から熱風及び補助燃料等を高炉内に吹き込むことにより、鉄鉱石を加熱、還元して銑鉄を生成する高炉操業方法が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-136415号公報
【文献】特開平6-136417号公報
【文献】実開昭60-28669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、炉頂から高炉内に装入される鉱石及びコークスの装入量は、鉄鉱石層及びコークス層が所定の層厚比で、高炉内に形成されるように設定されている。これにより、高炉内を上昇する還元ガスの通気性が確保される。
【0005】
しかしながら、コークスの種類によって、コークスの嵩密度が変動する場合がある。コークスの嵩密度が変動した場合、炉頂から高炉内に所定装入量のコークスを装入しても、高炉内に形成されるコークス層の層厚が変動するため、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比が所定範囲内に収まらない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、コークスの種類に関わらず、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比を所定範囲内にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る高炉操業方法は、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを前記高炉内に交互に層状に形成する高炉操業方法において、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する。
【0008】
上記高炉操業方法によれば、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを高炉内に交互に層状に形成する。この際、高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定する。つまり、本態様では、コークスの嵩密度に応じて、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を調整する。
【0009】
ここで、コークスの嵩密度に応じて、高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積が変動すると、高炉内の中心領域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比も変動してしまう。
【0010】
そこで、本態様では、前述したように、コークスの嵩密度に応じて、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を調整する。これにより、コークスの種類に関わらず、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積を所定範囲内に収めることができる。この結果、高炉内の中心領域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比を所定範囲内に収めることができる。
【0011】
したがって、高炉内の中心領域において、上昇する還元ガスの通気性が確保されるため、高炉操業を安定させることができる。このように高炉内の中心領域を上昇する還元ガスの通気性を確保することにより、高炉操業をより効率的に安定させることができる。
【0012】
第2態様に係る高炉操業方法は、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを前記高炉内に交互に層状に形成する高炉操業方法において、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の全域に装入する。
【0013】
上記高炉操業方法によれば、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを高炉内に交互に層状に形成する。この際、高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定する。つまり、本態様では、コークスの嵩密度に応じて、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を調整する。
【0014】
ここで、コークスの嵩密度に応じて、高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積が変動すると、高炉内の全域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比も変動してしまう。
【0015】
そこで、本態様では、前述したように、コークスの嵩密度に応じて、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を調整する。これにより、コークスの種類に関わらず、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積を所定範囲内に収めることができる。この結果、高炉内の全域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比を所定範囲内に収めることができる。
【0016】
したがって、高炉内の全域において、上昇する還元ガスの通気性が確保されるため、高炉操業を安定させることができる。
【0017】
第3態様に係る高炉操業方法は、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを前記高炉内に交互に層状に形成する高炉操業方法において、前記高炉内の全域に装入されるコークスの基準装入体積に対し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に応じて変動した前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積の体積比に基づいて、前記高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を前記高炉内に装入する。
【0018】
上記高炉操業方法によれば、炉頂から高炉内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層とコークス層とを高炉内に交互に層状に形成する。この際、高炉内の全域に装入されるコークスの基準装入体積に対し、高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に応じて変動した高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積の体積比に基づいて、高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を決定する。つまり、本態様では、コークスの嵩密度に応じて、高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を調整する。
【0019】
ここで、コークスの嵩密度に応じて、高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積が変動すると、高炉内の全域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比も変動してしまう。
【0020】
そこで、本態様では、前述したように、コークスの嵩密度に応じて、高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を調整する。これにより、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの種類に関わらず、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークス、及び鉄鉱石の装入体積比を所定範囲内に収めることができる。この結果、高炉内の全域において、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比を所定範囲内に収めることができる。
【0021】
したがって、高炉内の全域において、上昇する還元ガスの通気性が確保されるため、高炉操業を安定させることができる。
【0022】
第4態様に係る高炉操業制御装置は、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する。
【0023】
第5態様に係る高炉操業制御装置は、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の全域に装入する。
【0024】
第6態様に係る高炉操業制御装置は、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類を取得し、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する。
【0025】
第7態様に係る高炉操業制御装置は、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの種類を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の全域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の全域に装入する。
【0026】
第8態様に係る高炉操業制御装置は、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの基準装入体積に対し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に応じて変動した前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積の体積比を算出し、算出したコークスの装入体積の体積比に基づいて、前記高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を前記高炉内に装入する。
【0027】
第9態様に係る高炉操業制御プログラムは、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する。
【0028】
第10態様に係る高炉操業制御プログラムは、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の全域に装入する。
【0029】
第11態様に係る高炉操業制御プログラムは、炉頂から高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類を取得し、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の中心領域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の中心領域に装入する。
【0030】
第12態様に係る高炉操業制御プログラムは、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの種類を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積、及び前記高炉内の全域に装入されるコークスの種類に応じた前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に基づいて、前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを前記高炉内の全域に装入する。
【0031】
第13態様に係る高炉操業制御プログラムは、炉頂から高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度を取得し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの基準装入体積に対し、前記高炉内の全域に装入されるコークスの嵩密度に応じて変動した前記高炉内の全域に装入されるコークスの装入体積の体積比を算出し、算出したコークスの装入体積の体積比に基づいて、前記高炉内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を前記高炉内に装入する。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、コークスの種類に関わらず、鉄鉱石層及びコークス層の層厚比を所定範囲内にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第一実施形態に係る高炉を示す断面図である。
図2】第一実施形態に係る高炉操業制御装置の機能ブロック図である。
図3】コークス情報テーブルの一例を示す図である。
図4】第一実施形態に係る高炉内に形成される鉄鉱石層及びコークス層の一例を示す断面図である。
図5】第一実施形態に係る高炉操業制御装置のハードウェア構成図である。
図6】第一実施形態に係る高炉操業制御処理の一例を示すフローチャートである。
図7】比較例に係る高炉内に形成される鉄鉱石層及びコークス層の一例を示す断面図である。
図8】コークス情報テーブルの一例を示す図である。
図9】第二実施形態に係る高炉操業制御装置の機能ブロック図である。
図10】第二実施形態に係る高炉操業制御処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0035】
(高炉)
図1には、本実施形態に係る高炉10が示されている。高炉10は、ベルレス式高炉とされている。この高炉10には、後述する装入装置30によって、炉頂12から原料としての鉄鉱石とコークスとが装入される。これにより、高炉10内に、鉄鉱石層20とコークス層22とが交互に層状に形成される。
【0036】
また、高炉10内には、高炉10の下部に設けられた図示しない羽口から熱風及び補助燃料等が吹き込まれる。これにより、補助燃料及びコークスが燃焼し、上昇する高温ガス(還元ガス)が発生する。この還元ガスによって、高炉10内に形成された鉄鉱石層20の鉄鉱石が加熱、還元されながら降下する。そして、降下しながら溶融した鉄鉱石が、炉底部の側壁に設けられた出銑孔から銑鉄として排出される。
【0037】
なお、高炉10は、ベルレス式高炉に限らず、ベル式高炉であっても良い。
【0038】
(装入装置)
図1に示されるように、装入装置30は、高炉10の炉頂部に設けられるベルレス式装入装置とされている。なお、装入装置30は、ベルレス式装入装置に限らず、ベル式装入装置であっても良い。
【0039】
装入装置30は、炉頂12から高炉10内に、原料としての鉄鉱石及びコークスを装入することにより、高炉10内に、高炉10の径方向に所定層厚の鉄鉱石層20とコークス層22とを交互に層状に形成する。この装入装置30は、切替シュート34、一対の炉頂ホッパ36、貯留ホッパ38、及び旋回シュート40を備えている。また、装入装置30には、搬送装置32が接続されている。
【0040】
搬送装置32は、例えば、ベルトコンベアとされており、図示しない原料槽から原料としての鉄鉱石及びコークスを切替シュート34に搬送する。切替シュート34は、一対の炉頂ホッパ36の間で原料の供給先を切り替え可能とされている。この切替シュート34によって、一方の炉頂ホッパ36に所定量の鉄鉱石が供給され、他方の炉頂ホッパ36に所定量のコークスが供給される。
【0041】
一対の炉頂ホッパ36内にそれぞれ貯留された鉄鉱石及びコークスは、貯留ホッパ38を介して、旋回シュート40に供給される。旋回シュート40は、高炉10の中心軸を中心として旋回しながら、高炉内に鉄鉱石及びコークスを層状に装入する。また、旋回シュート40の傾動角度(傾斜角度)を調整することにより、高炉10の径方向の所定位置に鉄鉱石及びコークスが装入される。この装入装置30の動作は、高炉操業制御装置50(図2参照)によって制御される。
【0042】
なお、装入装置30によって炉頂12から高炉10内に所定装入量の鉄鉱石及びコークスを装入し、高炉10内の全域に、鉄鉱石層20及びコークス層22を一組(合計二層)形成することを1チャージという。この際、鉄鉱石は、装入装置30によって、炉頂12から高炉10内に1回で装入しても良いし、複数回(複数バッチ)に分けて装入しても良い。これと同様に、コークスは、装入装置30によって、炉頂12から高炉10内に1回で装入しても良いし、複数回(複数バッチ)に分けて装入しても良い。
【0043】
(高炉操業制御装置)
高炉操業では、原料として、複数種類(複数の銘柄)のコークスが使用される。コークスは、例えば、製造条件又は製造方法によって、粒子径分布(粒度分布)等が変動する。そのため、コークスの種類(銘柄)が異なると、コークスの嵩密度が変動する場合がある。
【0044】
各チャージにおいて、炉頂12から高炉10内に所定装入量のコークスを装入する場合、コークスの嵩密度が変動すると、高炉10内に形成されるコークス層22の層厚が変動する。そのため、高炉操業制御装置50は、コークスの嵩密度に基づいて、炉頂12から高炉10内に装入するコークスの装入量を調整する。
【0045】
なお、鉄鉱石は、種類等による嵩密度の変動が小さい。そのため、本実施形態では、炉頂12から高炉10内に装入する鉄鉱石の装入量が一定とされており、後述する記憶部76(図5参照)に予め記憶されている。
【0046】
図2に示されるように、高炉操業制御装置50は、機能的に、コークス情報取得部52と、コークス装入量決定部54と、秤量・搬送・装入装置制御部56とを備えている。
【0047】
(コークス情報取得部)
コークス情報取得部52は、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの種類を取得する。このコークス情報取得部52は、例えば、高炉10の管理者が、後述する入出力装置78に入力したコークスの種類を取得しても良い。また、コークス情報取得部52は、例えば、コークスの装入スケジュールテーブルからコークスの種類を取得しても良い。
【0048】
コークスの装入スケジュールテーブルは、コークスのチャージ毎に、高炉10内に装入されるコークスの種類が定められたテーブルであり、例えば、後述する記憶部76に予め記憶される。
【0049】
なお、コークスの嵩密度は、例えば、JIS K2151:2004に記載された測定方法によって測定されるが、嵩密度の測定方法は、適宜変更可能である。
【0050】
コークス情報取得部52は、コークス情報テーブル60から、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を取得する。コークス情報テーブル60には、例えば、図3に示されるように、コークスの種類、及びコークスの種類に対応するコークスの嵩密度が予め格納されている。このコークス情報テーブル60は、後述する記憶部76に予め記憶されている。
【0051】
(コークス装入量決定部)
コークス装入量決定部54は、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの体積[m](以下、「装入体積」という)、及びコークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度[t/m]に基づいて、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの装入量[t]を決定する。
【0052】
具体的には、コークス装入量決定部54は、予め定められたコークスの装入体積に、コークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度を乗じることにより、コークスの装入量(=コークスの装入体積×コークスの嵩密度)を算出する。
【0053】
なお、コークスの装入体積は、高炉10内に形成するコークス層22の層厚(以下、「目標層厚」という)及びコークス層22の形成領域に基づいて定められている。
【0054】
例えば、図4には、高炉10内に形成する鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚t1,t2の一例が示されている。なお、図4には、高炉10の中心軸から、高炉10の一方の炉壁までの断面が示されている。
【0055】
図4では、鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚t1,t2が高炉10の径方向に変動している。また、鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚t1,t2は、高炉10の周方向に一定とされている。
【0056】
コークス層22の形成領域は、コークス層22が形成される高炉10内の平面積である。このコークス層22の形成領域、及びコークス層22の目標層厚t2に基づいて、コークスの装入体積が定められている。また、コークスの装入体積は、後述する記憶部76に予め記憶されている。
【0057】
図4に示される例では、高炉10内の中心領域10Aにおいて、鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚比(=鉄鉱石層20の目標層厚t1/鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚の合計(t1+t2)が、中心領域10A以外の周辺領域10Bの目標層厚比よりも低く設定されている。これにより、高炉10内の中心領域10Aでは、上昇する還元ガスの通気抵抗が、高炉10内の周辺領域10Bよりも小さくされている。また、本実施形態では、高炉10内の中心領域10Aにおいて、コークス層22上に鉄鉱石層20が形成されない領域が形成されている。
【0058】
なお、鉄鉱石層20及びコークス層22の目標層厚比は、高炉10の径方向に変動するため、高炉10の径方向の位置に応じて設定される。また、高炉10内の中心領域10Aとは、例えば、高炉10の中心軸から高炉10の半径の1~2割以内の領域を意味する。
【0059】
(秤量・搬送・装入装置制御部)
秤量・搬送・装入装置制御部56は、図示しない秤量装置の動作を制御して原料槽から所定装入量の鉄鉱石又はコークスを秤量する。また、秤量・搬送・装入装置制御部56は、搬送装置32の動作を制御し、秤量された鉄鉱石又はコークスを炉頂12の装入装置30へ搬送させる。さらに、秤量・搬送・装入装置制御部56は、装入装置30の動作を制御し、チャージ毎に、所定装入量の鉄鉱石とコークスとを炉頂12から高炉10内に装入させる。
【0060】
この際、秤量・搬送・装入装置制御部56は、予め定められた装入量の鉄鉱石が、炉頂12から高炉10内に装入されるように、装入装置30の動作を制御する。また、秤量・搬送・装入装置制御部56は、コークス装入量決定部54で決定された装入量のコークスが、炉頂12から高炉10内に装入されるように、装入装置30の動作を制御する。
【0061】
(高炉操業制御装置のハードウェア構成)
次に、高炉操業制御装置50のハードウェア構成について説明する。
【0062】
高炉操業制御装置50は、例えば、図5に示されるコンピュータ70で実現される。コンピュータ70は、CPU(Central Processing Unit)72と、一時記憶領域としてのメモリ74と、不揮発性の記憶部76とを備えている。また、コンピュータ70は、入出力装置78を備えている。これらのCPU72、メモリ74、記憶部76、及び入出力装置78は、バス79を介して互いに接続されている。なお、CPU72は、制御部の一例である。
【0063】
記憶部76は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記録媒体としての記憶部76には、コンピュータ70を、高炉操業制御装置50として機能させるための高炉操業制御プログラムが予め記憶されている。
【0064】
高炉操業制御プログラムは、コークス情報取得工程、コークス装入量決定工程、及び装入工程を有している。また、記憶部76には、鉄鉱石の装入量、コークスの装入体積、及びコークス情報テーブル60が予め記憶されている。
【0065】
CPU72は、高炉操業制御プログラムを記憶部76から読み出してメモリ74に展開し、高炉操業制御プログラムが有するコークス情報取得工程、コークス装入量決定工程、及び装入工程を順次実行する。このCPU72は、コークス情報取得工程を実行することにより、コークス情報取得部52として動作する。また、CPU72は、コークス装入量決定工程を実行することにより、コークス装入量決定部54として動作する。さらに、CPU72は、装入工程を実行することにより、秤量・搬送・装入装置制御部56として動作する。
【0066】
また、CPU72は、コークス情報テーブル60、コークスの装入体積、及び鉄鉱石の装入量を記憶部76から読み出してメモリ74に展開する。これにより、高炉操業制御プログラムを実行したコンピュータ70が、高炉操業制御装置50として機能可能となる。
【0067】
なお、プログラムを実行するCPU72は、ハードウェアである。また、高炉操業制御プログラムによって実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で実現することも可能である。
【0068】
(高炉操業方法)
次に、高炉操業制御装置50の動作を説明しつつ、高炉操業方法の一例について説明する。
【0069】
炉頂12から高炉10内にコークスを装入する際に、高炉操業制御装置50において、図6に示される高炉操業処理が実行される。この高炉操業処理は、例えば、チャージ毎に実行される。なお、高炉操業処理は、高炉操業方法の一例である。
【0070】
図6に示されるように、先ず、ステップS10において、コークス情報取得部52が、例えば、入出力装置78に入力されたコークスの種類を取得する。
【0071】
次に、ステップS12において、コークス情報取得部52が、コークス情報テーブル60から、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を取得する。
【0072】
次に、ステップS14において、コークス装入量決定部54が、コークスの装入量を決定する。具体的には、コークス装入量決定部54は、予め定められたコークスの装入体積に、コークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度を乗じることにより、コークスの装入量を算出する。
【0073】
次に、ステップS16において、秤量・搬送・装入装置制御部56が、図示しない秤量装置の動作を制御し、原料槽から所定装入量のコークス又は鉄鉱石を秤量する。また、秤量・搬送・装入装置制御部56が、搬送装置32の動作を制御し、秤量されたコークス又は鉄鉱石を炉頂12の装入装置30へ搬送させる。
【0074】
また、秤量・搬送・装入装置制御部56が、装入装置30を作動し、コークス装入量決定部54で決定された装入量のコークスを、炉頂12から高炉10内に装入させる。さらに、秤量・搬送・装入装置制御部56が、装入装置30を作動し、予め定められた装入量の鉄鉱石を、炉頂12から高炉10内に装入させる。そして、高炉操業処理が終了する。
【0075】
高炉操業制御装置50は、以上の手順を繰り返すことにより、装入装置30によって、炉頂12から高炉10内にコークスと鉄鉱石とを装入し、高炉10内に、鉄鉱石層20とコークス層22とを交互に層状に形成する。
【0076】
(効果)
次に、第一実施形態の効果について説明する。
【0077】
本実施形態によれば、炉頂12から高炉10内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層20とコークス層22とを高炉10内に交互に層状に形成する。
【0078】
ここで、本実施形態では、前述したように、複数種類(複数の銘柄)のコークスが使用される。しかしながら、コークスの種類が変わると、コークスの嵩密度が変動する場合がある。コークスの嵩密度が変動した場合、炉頂12から高炉10内に所定装入量のコークスを装入しても、高炉10内に形成されるコークス層22の層厚が変動し、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比が所定範囲内に収まらない可能性がある。
【0079】
例えば、図7に示される比較例では、コークスの嵩密度の変動に伴って、高炉10内に装入されるコークスの装入体積が減少している。この比較例では、高炉10内の中心領域10Aにおいて、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比(=鉄鉱石層20の層厚/鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚の合計(1チャージ分の層厚))が目標層厚比(図4参照)よりも大きくなっている。この場合、高炉10内の中心領域10Aにおいて、通気性が低下し、上昇する還元ガスの流量が減少してしまう。
【0080】
この対策として、本実施形態では、高炉10内に装入するコークスの装入体積、及びコークスの嵩密度に基づいて、炉頂12から高炉10内に装入するコークスの装入量を決定する。つまり、本実施形態では、コークスの嵩密度に応じて、炉頂12から高炉10内に装入するコークスの装入量を調整する。
【0081】
これにより、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの種類に関わらず、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの装入体積を所定範囲内に収めることができる。この結果、例えば、図4に示されるように、高炉10内に形成されるコークス層22の層厚を目標層厚t2に近づけることができる。
【0082】
一方、鉄鉱石は、嵩密度の変動が小さい。そのため、予め定められた所定装入量の鉄鉱石を炉頂12から高炉10内に装入することにより、例えば、図4に示されるように、高炉10内に形成される鉄鉱石層20の層厚を目標層厚t1に近づけることができる。
【0083】
したがって、本実施形態では、高炉10内に形成される鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比を目標層厚比に近づけることができる。この結果、高炉10内において、所定の通気性が確保されるため、高炉操業を安定させることができる。
【0084】
特に、高炉操業を安定させるためには、高炉10内の中心領域10Aの通気性を高め、中心領域10Aを上昇する還元ガスの流量を大きくすることが望ましい。そのため、高炉10内の全域(中心領域10A及び周辺領域10B)のうち、少なくとも中心領域10Aにコークスを装入する際に、本実施形態を適用することが望ましい。
【0085】
この場合、高炉操業制御装置50は、例えば、高炉10内の中心領域10Aに装入されるコークスの装入体積、及び当該中心領域10Aに装入される嵩密度に基づいて、高炉10内の中心領域10Aに装入されるコークスの装入量を決定する。そして、高炉操業制御装置50は、装入装置30に、決定した装入量のコークスを高炉10内に装入させる。これにより、高炉操業をより効率的に安定させることができる。
【0086】
(第一実施形態の変形例)
次に、上記第一実施形態の変形例について説明する。
【0087】
上記第一実施形態では、コークス情報取得部52が、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの種類を取得した。しかし、コークス情報取得部52は、例えば、高炉10の管理者が入出力装置78に入力したコークスの嵩密度を取得しても良い。
【0088】
また、例えば、コークスの装入スケジュールテーブルに、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を予め格納しても良い。この場合、コークス情報取得部52は、コークスの装入スケジュールテーブルから、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を取得する。
【0089】
また、上記第一実施形態では、コークス装入量決定部54が、予め定められたコークスの装入体積、及びコークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度に基づいてコークスの装入量を決定した。
【0090】
しかし、例えば、図8に示されるように、コークス情報テーブル62に、コークスの種類、又は嵩密度に対応するコークスの装入量を予め格納しても良い。この場合、コークス装入量決定部54は、コークス情報取得部52で取得されたコークスの種類又は嵩密度に対応するコークスの装入量をコークス情報テーブル62から取得することにより、コークスの装入量を決定する。
【0091】
また、高炉操業制御装置50は、チャージ毎に、高炉10内に装入されるコークスの装入体積、及び嵩密度に基づいて、高炉10内に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを高炉10内に装入しても良い。また、1チャージにおいて、高炉10内にコークスを複数回(複数バッチ)に分けて装入する場合、高炉操業制御装置50は、バッチ毎に、高炉10内に装入されるコークスの装入体積、及び嵩密度に基づいて、高炉10内に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを高炉10内に装入しても良い。
【0092】
なお、本実施形態におけるコークスとは、高炉10内の中心領域10Aに装入されるコークスの装入量を算出する場合には、高炉10内の中心領域10Aに装入されるコークスを意味し、高炉10内の全域に装入されるコークスの装入量を算出する場合には、高炉10内の全域に装入されるコークスを意味する。また、本実施形態における鉄鉱石とは、高炉10内の全域(図4では、中心領域10Aの一部を除く)に装入される鉄鉱石を意味する。
【0093】
(実施例)
次に、第一実施形態の実施例について説明する。
【0094】
先ず、高炉10内の中心領域10Aに、コークスを装入する実施例について説明する。
【0095】
表1には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内の中心領域10Aに装入したコークスの装入量、嵩密度、及び体積(装入体積)が示されている。また、表1には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内の相対通気抵抗が示されている。
【0096】
表1において、コークスの装入量、嵩密度、及び体積の目標値は、高炉10内の中心領域10Aに形成されるコークス層22の層厚が所定値(目標層厚)になった場合のコークスの装入量、嵩密度、及び体積である。
【0097】
比較例、及び実施例では、コークスの嵩密度が目標値よりも大きい。ここで、比較例では、コークスの嵩密度を考慮せずに、目標値と同じ装入量のコークスを高炉10内の中心領域10Aに装入した。
【0098】
一方、実施例では、コークスの嵩密度、及びコークスの体積の目標値(装入体積)に基づいて、高炉10内の中心領域10Aに装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを高炉10内の中心領域10Aに装入した。そして、実施例及び比較例において、高炉10内の相対通気抵抗を測定した。なお、高炉10内の中心領域10Aには、予め定められた装入量の鉄鉱石を装入した。
【0099】
相対通気抵抗は、高炉10内に設置された複数の圧力センサで検出した高炉10内に圧力差に基づいて算出した。また、比較例、及び実施例の相対通気抵抗は、高炉10内の中心領域10Aに形成されるコークス層22の層厚を所定値(目標層厚)にした場合の高炉10内の通気抵抗を1(1.00)としたときの相対比で表されている。なお、相対通気抵抗が大きくなるに従って、通気性が低下する。
【表1】
【0100】
表1から分かるように、比較例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.20となり、高炉10内の通気抵抗が増加した。一方、実施例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.03となり、1に近似した。このことから、実施例では、高炉10内の中心領域10Aにおいて、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比が、目標層厚比に近似したことが推定される。
【0101】
次に、高炉10内の全域(中心領域10A及び周辺領域10B)に、コークスを装入する実施例について説明する。
【0102】
表2には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内の全域(中心領域10A及び周辺領域10B)に装入したコークスの装入量、嵩密度、及び体積(装入体積)が示されている。また、表2には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内の相対通気抵抗が示されている。
【0103】
なお、表2において、コークスの装入量、嵩密度、及び体積の目標値は、高炉10内の全域に形成されるコークス層22の層厚が所定値(目標層厚)になった場合のコークスの装入量、嵩密度、及び体積である。
【0104】
比較例、及び実施例では、コークスの嵩密度が目標値よりも大きい。ここで、比較例では、コークスの嵩密度を考慮せずに、目標値と同じ装入量のコークスを高炉10内の全域に装入した。
【0105】
一方、実施例では、コークスの嵩密度、及びコークスの体積の目標値(装入体積)に基づいて、高炉10内の全域に装入されるコークスの装入量を決定し、決定した装入量のコークスを高炉10内の全域に装入した。そして、実施例及び比較例において、高炉10内の相対通気抵抗を測定した。なお、高炉10内には、予め定められた装入量の鉄鉱石を装入した。
【表2】
【0106】
表2から分かるように、比較例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.21となり、高炉10内の通気抵抗が増加した。一方、実施例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.02となり、1に近似した。このことから、実施例では、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比が、目標層厚比に近似したことが推定される。
【0107】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0108】
第二実施形態に係る高炉操業制御装置80は、コークスの種類、すなわちコークスの嵩密度の変動に応じて鉄鉱石の装入量を調整し、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比の変動を低減する。
【0109】
具体的には、本実施形態では、炉頂12から高炉10内の全域に装入するコークスの装入量を一定にする。この場合、コークスの嵩密度が変動すると、高炉10内の全域に形成されるコークス層22の層厚が変動する。この結果、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比が変動してしまう。
【0110】
そこで、高炉操業制御装置80は、高炉10内の全域に形成されるコークス層22の層厚、すなわち炉頂12から高炉10内の全域に装入されるコークスの装入体積の変動に応じて、炉頂12から高炉10内に装入される鉄鉱石の装入体積を調整する。そして、鉄鉱石の装入体積に基づいて、炉頂12から高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を調整し、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比の変動を低減する。
【0111】
(高炉操業制御装置)
図9に示されるように、高炉操業制御装置80は、機能的に、コークス情報取得部52と、鉄鉱石装入量決定部84と、秤量・搬送・装入装置制御部86とを備えている。
【0112】
(鉄鉱石装入量決定部)
鉄鉱石装入量決定部84は、高炉10内の全域に装入されるコークスの嵩密度に応じて変動するコークスの装入体積に基づいて、炉頂12から高炉10内に装入される鉄鉱石の装入体積を決定する。
【0113】
すなわち、鉄鉱石装入量決定部84は、先ず、コークスの装入量[t]、及びコークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度[t/m]に基づいて、炉頂12から高炉10内の全域に装入されるコークスの装入体積[m]を算出する。
【0114】
具体的には、鉄鉱石装入量決定部84は、予め定められたコークスの装入量を、コークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度で除すことにより、コークスの装入体積(=コークスの装入量/コークスの嵩密度)を算出する。
【0115】
なお、コークスの装入量は、基準となるコークスの装入体積(以下、「基準装入体積」という)に、基準となるコークスの嵩密度(以下、「基準嵩密度」という)を乗じることにより算出される(コークスの装入量=コークスの基準装入体積×基準嵩密度)。コークスの基準装入体積は、例えば、図4に示されるように、高炉10内の全域に形成させるコークス層22の目標層厚t2、及び形成領域に基づいて定められており、記憶部76に予め記憶されている。
【0116】
次に、鉄鉱石装入量決定部84は、コークスの基準装入体積に対するコークスの装入体積の体積比(=コークスの装入体積/コークスの基準装入体積)を算出する。
【0117】
次に、鉄鉱石装入量決定部84は、基準となる鉄鉱石の装入体積(以下、「基準装入体積」という)に、算出したコークスの体積比を乗じることにより、鉄鉱石の装入体積(=鉄鉱石の基準装入体積×コークスの体積比)を算出する。
【0118】
なお、鉄鉱石の基準装入体積は、例えば、図4に示されるように、高炉10内の全域に渡る鉄鉱石層20の目標層厚t1、及び鉄鉱石層20の形成領域に基づいて定められており、記憶部76に予め記憶されている。
【0119】
次に、鉄鉱石装入量決定部84は、鉄鉱石の装入体積に、予め定められた鉄鉱石の嵩密度を乗じることにより、鉄鉱石の装入量(=鉄鉱石の装入体積×鉄鉱石の嵩密度)を算出する。なお、鉄鉱石の嵩密度は、記憶部76に予め記憶されている。
【0120】
(秤量・搬送・装入装置制御部)
秤量・搬送・装入装置制御部86は、図示しない秤量装置の動作を制御して原料槽から所定装入量の鉄鉱石又はコークスを秤量する。また、秤量・搬送・装入装置制御部86は、搬送装置32の動作を制御し、秤量された鉄鉱石又はコークスを炉頂12の装入装置30へ搬送させる。さらに、秤量・搬送・装入装置制御部86は、装入装置30の動作を制御し、チャージ毎に、所定装入量の鉄鉱石及びコークスを炉頂12から高炉10内に装入させる。
【0121】
この際、秤量・搬送・装入装置制御部86は、鉄鉱石装入量決定部84で決定された装入量の鉄鉱石が、炉頂12から高炉10内に装入されるように、装入装置30の動作を制御する。また、秤量・搬送・装入装置制御部86は、予め定められたコークスの装入量が、炉頂12から高炉10内に装入されるように、装入装置30の動作を制御する。
【0122】
(高炉操業制御装置のハードウェア構成)
次に、高炉操業制御装置80のハードウェア構成について説明する。
【0123】
図5に示されるように、記録媒体としての記憶部76には、コンピュータ70を、高炉操業制御装置80として機能させるための高炉操業制御プログラムが記憶されている。高炉操業制御プログラムは、コークス情報取得工程、鉄鉱石装入量決定工程、及び装入工程を有している。また、記憶部76には、コークスの基準装入体積、コークスの基準嵩密度、鉄鉱石の基準装入体積、及び鉄鉱石の嵩密度が記憶されている。
【0124】
CPU72は、高炉操業制御プログラムを記憶部76から読み出してメモリ74に展開し、高炉操業制御プログラムが有するコークス情報取得工程、鉄鉱石装入量決定工程、及び装入装置制御工程を順次実行する。
【0125】
CPU72は、コークス情報取得工程を実行することにより、コークス情報取得部52として動作する。また、CPU72は、鉄鉱石装入量決定工程を実行することにより、鉄鉱石装入量決定部84として動作する。また、CPU72は、装入工程を実行することにより、秤量・搬送・装入装置制御部86として動作する。
【0126】
また、CPU72は、コークス情報テーブル60、コークスの基準装入体積、コークスの基準嵩密度、鉄鉱石の基準装入体積、及び鉄鉱石の嵩密度を記憶部76から読み出してメモリ74に展開する。これにより、高炉操業制御プログラムを実行したコンピュータ70が、高炉操業制御装置80として機能可能となる。
【0127】
(高炉操業方法)
次に、高炉操業制御装置80の動作を説明しつつ、高炉操業方法の一例について説明する。
【0128】
炉頂12から高炉10内に鉄鉱石を装入する際に、高炉操業制御装置80において、図10に示される高炉操業処理が実行される。この高炉操業処理は、例えば、チャージ毎に実行される。なお、高炉操業処理は、高炉操業方法の一例である。
【0129】
図10に示されるように、先ず、ステップS20において、コークス情報取得部52が、例えば、入出力装置78に入力されたコークスの種類を取得する。
【0130】
次に、ステップS22において、コークス情報取得部52が、コークス情報テーブル60(図3参照)から、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を取得する。
【0131】
次に、ステップS24において、鉄鉱石装入量決定部84が、コークスの装入体積を算出する。具体的には、鉄鉱石装入量決定部84は、予め定められたコークスの装入量を、コークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度で除することにより、コークスの装入体積を算出する。
【0132】
次に、ステップS26において、鉄鉱石装入量決定部84が、算出したコークスの装入体積を、予め定められたコークスの基準装入体積で除すことにより、コークスの体積比を算出する。
【0133】
次に、ステップS28において、鉄鉱石装入量決定部84が、鉄鉱石の装入量を決定する。具体的には、鉄鉱石装入量決定部84は、先ず、予め定められた鉄鉱石の基準装入体積に、算出したコークスの体積比を乗じることにより、鉄鉱石の装入体積を算出する。次に、算出した鉄鉱石の装入体積に、予め定められた鉄鉱石の嵩密度を乗じることにより、鉄鉱石の装入量を算出する。
【0134】
次に、ステップS30において、秤量・搬送・装入装置制御部86が、図示しない秤量装置の動作を制御して原料槽から所定装入量の鉄鉱石又はコークスを秤量する。また、秤量・搬送・装入装置制御部86が、図示しない搬送装置の動作を制御して、秤量された鉄鉱石又はコークスを炉頂12の装入装置30へ搬送させる。
【0135】
さらに、秤量・搬送・装入装置制御部86が、装入装置30を作動し、鉄鉱石装入量決定部84で決定された装入量のコークスを、炉頂12から高炉10内に装入させる。次に、秤量・搬送・装入装置制御部86が、装入装置30を作動し、予め定められた装入量のコークスを、炉頂12から高炉10内に装入させる。そして、高炉操業処理が終了する。
【0136】
高炉操業制御装置80は、以上の手順を繰り返すことにより、装入装置30によって、炉頂12から高炉10内にコークスと鉄鉱石とを装入し、高炉10内に鉄鉱石層20とコークス層22とを交互に層状に形成する。
【0137】
(効果)
次に、第二実施形態の効果について説明する。
【0138】
本実施形態によれば、炉頂12から高炉10内に鉄鉱石とコークスとを装入し、鉄鉱石層20とコークス層22とを高炉10内に交互に層状に形成する。この際、高炉10内の全域に装入されるコークスの基準装入体積に対し、コークスの嵩密度に応じて変動した高炉10内の全域に装入されるコークスの装入体積の体積比に基づいて、高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を決定する。つまり、本実施形態では、コークスの嵩密度に応じて、高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を調整する。
【0139】
これにより、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの種類に関わらず、炉頂12から高炉10内に装入されるコークス及び鉄鉱石の装入体積比を所定範囲内に収めることができる。したがって、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比を目標層厚比に近づけることができる。この結果、高炉10内の全域において、所定の通気性が確保されるため、還元ガスのガス流分布が安定する。
【0140】
特に、高炉10内の中心領域10Aにおいて、還元ガスのガス流分布が安定させることにより、高炉操業をより効率的に安定させることができる。
【0141】
(第二実施形態の変形例)
次に、上記第二実施形態の変形例について説明する。
【0142】
上記第二実施形態では、コークス情報取得部52が、炉頂12から高炉10内に装入されるコークスの種類を取得した。しかし、コークス情報取得部52は、例えば、高炉10の管理者が入出力装置78に入力したコークスの嵩密度を取得しても良い。
【0143】
また、例えば、コークスの装入スケジュールテーブルに、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を予め格納しても良い。この場合、コークス情報取得部52は、コークスの装入スケジュールテーブルから、コークスの種類に対応するコークスの嵩密度を取得する。
【0144】
また、上記第二実施形態では、鉄鉱石装入量決定部84が、コークス情報取得部52で取得されたコークスの嵩密度等に基づいて、鉄鉱石の装入量を算出した。
【0145】
しかし、例えば、コークス情報テーブルに、コークスの種類又は嵩密度に対応する鉄鉱石の装入量を予め格納しても良い。この場合、鉄鉱石装入量決定部84は、コークス情報取得部52で取得されたコークスの種類又は嵩密度に対応する鉄鉱石の装入量をコークス情報テーブルから取得することにより、鉄鉱石の装入量を決定する。
【0146】
また、高炉操業制御装置80は、チャージ毎に、高炉10内に装入されるコークスの基準装入体積に対し、コークスの嵩密度に応じて変動したコークスの装入体積の体積比に基づいて、高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を高炉10内に装入しても良い。また、1チャージにおいて、高炉10内に鉄鉱石を複数回(複数バッチ)に分けて装入する場合、高炉操業制御装置80は、バッチ毎に、コークスの嵩密度に応じて変動したコークスの装入体積の体積比に基づいて、高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を高炉10内に装入しても良い。
【0147】
なお、本実施形態におけるコークスとは、高炉10内の全域に装入されるコークスを意味する。また、本実施形態における鉄鉱石とは、高炉10内の全域(図4では、中心領域10Aの一部を除く)に装入される鉄鉱石を意味する。
【0148】
(実施例)
次に、第二実施形態の実施例について説明する。
【0149】
表3には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内に装入したコークス及び鉄鉱石の装入量、嵩密度、及び体積(装入体積)が示されている。また、表3には、目標値、比較例、及び実施例について、高炉10内の相対通気抵抗が示されている。
【0150】
表3において、コークスの装入量、嵩密度、及び体積の目標値は、高炉10内の全域において、コークス層22の層厚が所定値(目標層厚)になった場合のコークスの装入量、嵩密度、及び体積である。これと同様に、また、鉄鉱石の装入量、嵩密度、及び体積の目標値は、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20の層厚が所定値(目標層厚)になった場合の鉄鉱石の装入量、嵩密度、及び体積である。
【0151】
比較例、及び実施例では、コークスの嵩密度が目標値よりも大きい。また、比較例、及び実施例では、目標値と同じ装入量のコークスを高炉10内の全域に装入した。
【0152】
ここで、比較例では、コークスの嵩密度を考慮せずに、目標値と同じ装入量の鉄鉱石を高炉10内の全域に装入した。
【0153】
一方、実施例では、高炉10内の全域に装入されるコークスの装入体積の目標値(基準装入体積)に対するコークスの装入の体積比に基づいて、高炉10内に装入される鉄鉱石の装入量を決定し、決定した装入量の鉄鉱石を高炉10内に装入した。そして、実施例及び比較例において、高炉10内の相対通気抵抗を測定した。
【0154】
【表3】
【0155】
表3から分かるように、比較例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.20となり、高炉10内の通気抵抗が増加した。一方、実施例では、高炉10内の相対通気抵抗が1.05となり、1に近似した。このことから、実施例では、高炉10内の全域において、鉄鉱石層20及びコークス層22の層厚比が、目標層厚比に近似したことが推定される。
【0156】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0157】
10 高炉
10A 中心領域
12 炉頂
20 鉄鉱石層
22 コークス層
50 高炉操業制御装置
72 CPU(制御部の一例)
80 高炉操業制御装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10