(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、電力変換装置、及びリアクトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/24 20060101AFI20250402BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20250402BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
H01F27/24 K
H01F27/24 V
H01F27/24 W
H01F37/00 A
H01F37/00 M
H01F41/04 A
(21)【出願番号】P 2021057588
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-035965(JP,A)
【文献】中国実用新案第206595138(CN,U)
【文献】特開2010-118611(JP,A)
【文献】特開2009-158886(JP,A)
【文献】特開2020-119963(JP,A)
【文献】特開2015-103690(JP,A)
【文献】実開昭62-087420(JP,U)
【文献】特開平07-335463(JP,A)
【文献】実開昭59-131125(JP,U)
【文献】特開2008-140837(JP,A)
【文献】特開平11-233348(JP,A)
【文献】特開2003-318036(JP,A)
【文献】特開平06-140261(JP,A)
【文献】特開2011-077304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 37/00
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと磁性コアとモールド樹脂部と弾性体とを備え、
前記コイルは、一つの巻回部を備え、
前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、
前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、
前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、
前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、
前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、
前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、
前記モールド樹脂部は、
前記巻回部の内周面と前記ミドルコア部の外周面との間に配置されるように前記磁性コアの少なくとも一部を覆っており、
前記弾性体は、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように設けられており、
前記ミドルコア部の横断面積に対する前記弾性体の面積の割合が100%超110%以下であり、
前記ミドルコア部の横断面積は、前記ミドルコア部を前記ミドルコア部の長手方向に直交する方向に切断した断面の面積であり、
前記弾性体の面積は、圧縮状態の前記弾性体における前記ミドルコア部に向かい合う面の面積である、
リアクトル。
【請求項2】
前記二つのサイドコア部と前記二つのエンドコア部とは、一連に構成されている請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
特定面積に対する前記弾性体の面積の割合が70%以上であり、
前記特定面積は、長さA×長さBで求められ、
前記長さAは、前記ミドルコア部の長手方向及び前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部との並列方向の双方に直交する方向に沿った前記ミドルコア部の長さであり、
前記長さBは、前記二つのサイドコア部の内側面間の長さであり、
前記弾性体の面積は、圧縮状態の前記弾性体における前記ミドルコア部に向かい合う面の面積である請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記弾性体は、シリコーンゴム又はブチルゴムで構成されている請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第一コア片及び前記第二コア片の各々は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部の一部と、前記二つのサイドコア部の各々の一部とを備えるE字状の部材である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部の一部と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるE字状の部材であり、
前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方と、前記ミドルコア部の残部とを備えるT字状の部材である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるE字状の部材であり、
前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方を備えるI字状の部材である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部と、前記二つのサイドコア部の各々の一部とを備えるE字状の部材であり、
前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方と、前記二つのサイドコア部の各々の残部とを備えるU字状の部材である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の各々と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるO字状の部材であり、
前記第二コア片は、前記ミドルコア部を備えるI字状の部材である請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項10】
請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項
10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【請求項12】
コイルと磁性コアと弾性体とを含む組物を準備する工程と、
前記組物を金型に配置し、前記金型内に樹脂を注入して前記磁性コアの少なくとも一部を覆うようにモールド樹脂部を形成する工程とを備え、
前記コイルは、一つの巻回部を備え、
前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、
前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、
前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、
前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、
前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、
前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、
前記準備する工程では、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように前記弾性体を配置し、
前記モールド樹脂部を形成する工程では、前記二つのエンドコア部が互いに近づく方向に15MPa以上の圧力をかけて行う、
リアクトルの製造方法。
【請求項13】
前記準備する工程では、特定面積の45%以上の面積を有する非圧縮状態の弾性体を配置し、
前記特定面積は、長さA×長さBで求められ、
前記長さAは、前記ミドルコア部の長手方向及び前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部との並列方向の双方に直交する方向に沿った前記ミドルコア部の長さであり、
前記長さBは、前記二つのサイドコア部の内側面間の長さである請求項
12に記載のリアクトルの製造方法。
【請求項14】
前記準備する工程では、前記ミドルコア部の横断面積の75%以上95%以下の面積を有する非圧縮状態の弾性体を配置し、
前記ミドルコア部の横断面積は、前記ミドルコア部を前記ミドルコア部の長手方向に直交する方向に切断した断面の面積である請求項
12又は請求項
13に記載のリアクトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、電力変換装置、及びリアクトルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイルと磁性コアと樹脂モールド部とを備えるリアクトルを開示する。磁性コアは、複数のコア片とギャップ材とが組み合わされてなる。樹脂モールド部は、コイルと磁性コアとを一体化している。樹脂モールド部は、射出成形によって構成されている。具体的には、樹脂モールド部は、コイルと磁性コアとの組物を金型に配置して、樹脂モールド部の未固化の構成樹脂を金型内に充填し、上記未固化の構成樹脂を固化することで構成されている。金型内では、磁性コアの各コア片間には、ギャップ材の厚さに対応した隙間が形成されている。ギャップ材は、上記未固化の構成樹脂が複数のコア片間に形成された隙間に流入して固化することで構成されている。以下、樹脂モールド部をモールド樹脂部と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モールド樹脂部を射出成形によって構成する場合、磁性コアの形状によっては、射出成形時の圧力で磁性コアに割れが生じるおそれがある。そのため、例えば、磁性コアの形状によっては、射出成形時の圧力に制約がある。
【0005】
本開示は、磁性コアに割れが少ないリアクトルを提供することを目的の一つとする。本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを別の目的の一つとする。また、本開示は、製造過程で高い圧力がかかっても磁性コアに割れが生じ難いリアクトルの製造方法を提供することを別の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、コイルと磁性コアとモールド樹脂部と弾性体とを備え、前記コイルは、一つの巻回部を備え、前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、前記モールド樹脂部は、前記磁性コアの少なくとも一部を覆っており、前記弾性体は、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように設けられている。
【0007】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備える。
【0008】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備える。
【0009】
本開示のリアクトルの製造方法は、コイルと磁性コアと弾性体とを含む組物を準備する工程と、前記組物を金型に配置し、前記金型内に樹脂を注入して前記磁性コアの少なくとも一部を覆うようにモールド樹脂部を形成する工程とを備え、前記コイルは、一つの巻回部を備え、前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、前記準備する工程では、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように前記弾性体を配置し、前記モールド樹脂部を形成する工程では、前記二つのエンドコア部が互いに近づく方向に15MPa以上の圧力をかけて行う。
【発明の効果】
【0010】
本開示のリアクトルは、磁性コアに割れが少ない。本開示のコンバータ及び本開示の電力変換装置は、磁性コアに割れが少ない。本開示のリアクトルの製造方法は、製造過程で高い圧力がかかっても磁性コアに割れが生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1のリアクトルの概略を示す
断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のリアクトルの磁性コアにおける磁束の流れを示す概略図である。
【
図3】
図3は、圧縮後の弾性体の第一の面積割合を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、圧縮後の弾性体の第二の面積割合を説明する説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1のリアクトルの製造方法における成形工程を説明する説明図である。
【
図6】
図6は、圧縮前の弾性体の第一の面積割合を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、圧縮前の弾性体の第二の面積割合を説明する説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態2のリアクトルの概略を示す
断面図である。
【
図9】
図9は、実施形態3のリアクトルの概略を示す
断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態4のリアクトルの概略を示す
断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態5のリアクトルの概略を示す
断面図である。
【
図12】
図12は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図13】
図13は、コンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、コイルと磁性コアとモールド樹脂部と弾性体とを備え、前記コイルは、一つの巻回部を備え、前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、前記モールド樹脂部は、前記磁性コアの少なくとも一部を覆っており、前記弾性体は、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように設けられている。
【0014】
本開示のリアクトルは、ミドルコア部の途中又は端部に弾性体が設けられていることで、磁性コアに割れが少ない。本開示のリアクトルは、後述する製造方法によって得られる。具体的には、本開示のリアクトルは、コイルと磁性コアと弾性体とを含む組物を金型に配置し、金型内に樹脂を注入してモールド樹脂部を形成することで得られる。モールド樹脂部を形成する際には、二つのエンドコア部が互いに近づく方向に圧力がかかる。本開示のリアクトルは、上記圧力の影響を受け易いミドルコア部の途中又は端部に弾性体が設けられていることで、製造過程において上記圧力による荷重を弾性体で吸収でき、磁性コアに割れが生じ難い。製造過程で磁性コアに割れが生じ難いことで、得られた本開示のリアクトルは、磁性コアに割れが少ない。
【0015】
一般的に、所定のインダクタンスを維持するために、磁性コアのうち巻回部の内側に配置されている部分を有するコア部にはギャップ材が設けられる。本開示のリアクトルのように、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備える磁性コアでは、ミドルコア部にギャップ材が設けられる。特許文献1に記載の技術のように、ギャップ材がモールド樹脂部の構成樹脂で成形される場合、リアクトルの製造過程において、モールド樹脂部の未固化の構成樹脂が充填される隙間がミドルコア部に設けられる。ミドルコア部に隙間が設けられていると、エンドコア部の両端部がサイドコア部に支持されているのに対し、エンドコア部の中央部が上記隙間によって支持されずに浮いた状態となる。この状態で上記未固化の構成樹脂を射出成形すると、エンドコア部の両端部を支点として、エンドコア部の中央部に荷重がかかり易い。
【0016】
本開示のリアクトルは、ギャップ材として弾性体を用いることで、所定のインダクタンスを維持できる上に、上記荷重を弾性体で吸収でき、磁性コアに割れが生じ難い。ギャップ材として弾性体を用いることで、ギャップ長を調整し易いという効果も期待できる。弾性体が配置されるギャップは、第一コア片と第二コア片とが組み合わされた状態において、第一コア片と第二コア片との間に構成される。ギャップ長とは、上記ギャップにおけるミドルコア部の軸方向に沿った長さのことである。ギャップ長は圧縮状態の弾性体の厚さに等しい。
【0017】
(2)上記リアクトルの一形態として、前記二つのサイドコア部と前記二つのエンドコアとは、一連に構成されていることが挙げられる。
【0018】
上記形態では、二つのサイドコア部及び二つのエンドコア部の各々に弾性体が不要であり、部品点数が少なく、リアクトルの組立性に優れる。「一連に構成されている」とは、以下の二つの形態を含む。一つ目の形態は、いずれのコア部も第一コア片又は第二コア片の単一のコア片の少なくとも一部として一体の成形体で構成されている形態である。例えば、一つのサイドコア部を見たとき、サイドコア部が第一コア片又は第二コア片の一部として構成されている形態が挙げられる。二つ目の形態は、一つのコア部が第一コア片及び第二コア片の各々の一部として分割された二つの成形体で構成されているものの、分割されたコア部同士が他の部材を介することなく直接接触するように構成されている形態である。例えば、一つのサイドコア部を見たとき、サイドコア部の一部が第一コア片によって構成されており、サイドコア部の残部が第二コア片によって構成されている形態が挙げられる。この形態の場合、第一コア片と第二コア片とが組み合わされた状態において、第一コア片におけるサイドコア部の一部と第二コア片におけるサイドコア部の残部とが他の部材を介することなく直接接触することで連続して構成されている。
(3)上記リアクトルの一形態として、特定面積に対する前記弾性体の面積の割合が70%以上であり、前記特定面積は、長さA×長さBで求められ、前記長さAは、前記ミドルコア部の長手方向及び前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部との並列方向の双方に直交する方向に沿った前記ミドルコア部の長さであり、前記長さBは、前記二つのサイドコア部の内側面間の長さであり、前記弾性体の面積は、圧縮状態の前記弾性体における前記ミドルコア部に向かい合う面の面積であることが挙げられる。
【0019】
長さBは、エンドコア部の両端部においてサイドコア部に支持された支点同士を結ぶ支点間距離に相当する。特定面積は、リアクトルの製造過程において、モールド樹脂部を形成する際にかかる圧力の影響を受け易い領域である。この領域では、上記支点に曲げが作用し易い。特定面積のある程度の範囲に弾性体が設けられていることで、ミドルコア部にかかる荷重を弾性体で吸収し易く、磁性コアに割れがより生じ難い。製造過程で磁性コアに割れがより生じ難いことで、得られた本開示のリアクトルは、磁性コアに割れがより少ない。
【0020】
(4)上記リアクトルの一形態として、前記ミドルコア部の横断面積に対する前記弾性体の面積の割合が70%以上であり、前記ミドルコア部の横断面積は、前記ミドルコア部を前記ミドルコア部の長手方向に直交する方向に切断した断面の面積であり、前記弾性体の面積は、圧縮状態の前記弾性体における前記ミドルコア部に向かい合う面の面積であることが挙げられる。
【0021】
ミドルコア部の横断面積のある程度の範囲に弾性体が設けられていることで、ミドルコア部にかかる荷重を弾性体で吸収し易く、磁性コアに割れがより生じ難い。製造過程で磁性コアに割れがより生じ難いことで、得られた本開示のリアクトルは、磁性コアに割れがより少ない。
【0022】
(5)上記リアクトルの一形態として、前記弾性体は、シリコーンゴム又はブチルゴムで構成されていることが挙げられる。
【0023】
上記形態では、ミドルコア部にかかる荷重を弾性体で吸収し易く、磁性コアに割れがより生じ難い。製造過程で磁性コアに割れがより生じ難いことで、得られた本開示のリアクトルは、磁性コアに割れがより少ない。
【0024】
(6)上記リアクトルの一形態として、前記第一コア片及び前記第二コア片の各々は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部の一部と、前記二つのサイドコア部の各々の一部とを備えるE字状の部材であることが挙げられる。
【0025】
上記形態では、ミドルコア部が第一コア片と第二コア片とに分割されているため、ミドルコア部の途中に弾性体を容易に設けることができる。上記形態は、同一形状の金型で二つのコア片を作製することができ、リアクトルの生産性を向上できる。
【0026】
(7)上記リアクトルの一形態として、前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部の一部と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるE字状の部材であり、前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方と、前記ミドルコア部の残部とを備えるT字状の部材であることが挙げられる。
【0027】
上記形態では、ミドルコア部が第一コア片と第二コア片とに分割されているため、ミドルコア部の途中に弾性体を容易に設けることができる。
【0028】
(8)上記リアクトルの一形態として、前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるE字状の部材であり、前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方を備えるI字状の部材であることが挙げられる。
【0029】
上記形態では、第一コア片のミドルコア部の一方の端部と第二コア片、即ちエンドコア部との間に弾性体を容易に設けることができる。
【0030】
(9)上記リアクトルの一形態として、前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の一方と、前記ミドルコア部と、前記二つのサイドコア部の各々の一部とを備えるE字状の部材であり、前記第二コア片は、前記二つのエンドコア部の他方と、前記二つのサイドコア部の各々の残部とを備えるU字状の部材であることが挙げられる。
【0031】
上記形態では、第一コア片のミドルコア部の一方の端部と第二コア片のエンドコア部との間に弾性体を容易に設けることができる。
【0032】
(10)上記リアクトルの一形態として、前記第一コア片は、前記二つのエンドコア部の各々と、前記二つのサイドコア部の各々とを備えるO字状の部材であり、前記第二コア片は、前記ミドルコア部を備えるI字状の部材であることが挙げられる。
【0033】
上記形態では、第二コア片、即ちミドルコア部の少なくとも一方の端部と第一コア片のエンドコア部との間に弾性体を容易に設けることができる。
【0034】
(11)本開示の実施形態に係るコンバータは、上記(1)から(10)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0035】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備えるため、磁性コアに割れが少ない。
【0036】
(12)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、上記(11)に記載のコンバータを備える。
【0037】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備えるため、磁性コアに割れが少ない。
【0038】
(13)本開示の実施形態に係るリアクトルの製造方法は、コイルと磁性コアと弾性体とを含む組物を準備する工程と、前記組物を金型に配置し、前記金型内に樹脂を注入して前記磁性コアの少なくとも一部を覆うようにモールド樹脂部を形成する工程とを備え、前記コイルは、一つの巻回部を備え、前記磁性コアは、互いに組み合わされた第一コア片と第二コア片とを備え、前記第一コア片及び前記第二コア片の少なくとも一方は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる複合材料の成形体で構成されており、前記第一コア片と前記第二コア片とが組み合わされた状態の前記磁性コアは、ミドルコア部と、二つのサイドコア部と、二つのエンドコア部とを備え、前記ミドルコア部は、前記巻回部の内側に配置されている部分を有し、前記二つのサイドコア部の各々は、前記巻回部の外側で前記ミドルコア部と並んで配置されており、前記二つのエンドコア部の各々は、前記巻回部の端部の外側で前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部とをつなぐように配置されており、前記準備する工程では、前記ミドルコア部の途中、又は前記ミドルコア部と前記エンドコア部との境界の少なくとも一方を分断するように前記弾性体を配置し、前記モールド樹脂部を形成する工程では、前記二つのエンドコア部が互いに近づく方向に15MPa以上の圧力をかけて行う。
【0039】
本開示のリアクトルの製造方法は、モールド樹脂部を形成する際に15MPa以上の高い圧力がかかっても磁性コアに割れが生じ難い。本開示のリアクトルの製造方法では、上記圧力の影響を受け易いミドルコア部の途中又は端部に弾性体が設けられていることで、上記圧力による荷重を弾性体で吸収できるからである。
【0040】
上述したように、一般的に、所定のインダクタンスを維持するために、磁性コアのうち巻回部の内側に配置されている部分を有するコア部にはギャップ材が設けられる。特許文献1に記載の技術のように、ギャップ材がモールド樹脂部の構成樹脂で成形される場合、リアクトルの製造過程において、モールド樹脂部の未固化の構成樹脂が充填される隙間がミドルコア部に設けられる。ミドルコア部に隙間が設けられていると、エンドコア部の両端部がサイドコア部に支持されているのに対し、エンドコア部の中央部が上記隙間によって支持されずに浮いた状態となる。この状態で上記未固化の構成樹脂を射出成形すると、エンドコア部の両端部を支点として、エンドコア部の中央部に荷重がかかり易い。
【0041】
本開示のリアクトルの製造方法では、ギャップ材として弾性体を用いることで、所定のインダクタンスを維持できる上に、上記荷重を弾性体で吸収でき、磁性コアに割れが生じ難い。ギャップ材として弾性体を用いることで、ギャップ長を調整し易いという効果も期待できる。
【0042】
(14)上記リアクトルの製造方法の一形態として、前記準備する工程では、特定面積の45%以上の面積を有する非圧縮状態の弾性体を配置し、前記特定面積は、長さA×長さBで求められ、前記長さAは、前記ミドルコア部の長手方向及び前記ミドルコア部と前記二つのサイドコア部との並列方向の双方に直交する方向に沿った前記ミドルコア部の長さであり、前記長さBは、前記二つのサイドコア部の内側面間の長さであることが挙げられる。
【0043】
長さBは、エンドコア部の両端部においてサイドコア部に支持された支点同士を結ぶ支点間距離に相当する。特定面積は、モールド樹脂部を形成する際にかかる圧力の影響を受け易い領域である。この領域では、上記支点に曲げが作用し易い。特定面積のある程度の範囲に弾性体が設けられていることで、ミドルコア部にかかる荷重を弾性体で吸収し易く、磁性コアに割れがより生じ難い。
【0044】
(15)上記リアクトルの製造方法の一形態として、前記準備する工程では、前記ミドルコア部の横断面積の75%以上95%以下の面積を有する非圧縮状態の弾性体を配置し、前記ミドルコア部の横断面積は、前記ミドルコア部を前記ミドルコア部の長手方向に直交する方向に切断した断面の面積であることが挙げられる。
【0045】
ミドルコア部の横断面積のある程度の範囲に弾性体が設けられていることで、ミドルコア部にかかる荷重を弾性体で吸収し易く、磁性コアに割れがより生じ難い。ミドルコア部に荷重がかかると、弾性体が圧縮される。圧縮された弾性体は、ミドルコア部の外周部分からはみ出る。ミドルコア部の横断面積の95%以下の面積を有する弾性体を配置することで、圧縮された弾性体がミドルコア部の外周部分からはみ出過ぎることを抑制できる。
【0046】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0047】
<実施形態1>
図1から
図7を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、コイル2と磁性コア3とモールド樹脂部9とを備える。実施形態1のリアクトル1の特徴の一つは、磁性コア3を構成するミドルコア部4を分断するように弾性体10が設けられている点にある。以下、各構成を詳細に説明する。
【0048】
図1は、リアクトル1の概略を示す。
図1では、モールド樹脂部9のうち、磁性コア3の外周に設けられているモールド樹脂部9の輪郭のみを二点鎖線で示す。
図2は、
図1のリアクトル1の磁性コア3における磁束の流れを二点鎖線の矢印で示す。
図3及び
図4は、
図1のリアクトル1のうち第二コア片32及び弾性体10のみを示す。
図3及び
図4の各上図は、第二コア片32及び弾性体10を第三方向D3から見た図である。
図3及び
図4の各下図は、第二コア片32を第一方向D1の外側から見た図である。第三方向D3及び第一方向D1については後述する。
図1から
図4に示す弾性体10は、圧縮された状態である。
図5は、リアクトル1を製造する過程において、コイル2と磁性コアと弾性体10αとを含む組物が金型100内に配置された状態を示す。
図6及び
図7は、上記組物のうち磁性コア3を構成する第二コア片32及び弾性体10αのみを示す。
図5から
図7に示す弾性体10αは、製造過程における圧縮前の非圧縮の状態である。
【0049】
≪コイル≫
コイル2は、
図1に示すように、一つの巻回部20を備える。巻回部20は、1本の巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線の両端部は、巻回部20の軸方向の各端部から引き出される。巻回部20から引き出された巻線の両端部には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない電源等の外部装置が接続される。なお、
図1等は、巻回部20のみを示し、巻線の端部等は省略している。
【0050】
巻線は、導体線と、絶縁被覆とを有する被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅等が挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミド等の樹脂が挙げられる。被覆線としては、断面形状が長方形状の被覆平角線や、断面形状が円形状の被覆丸線等が挙げられる。
【0051】
本例のコイル2は、被覆平角線がエッジワイズ巻きされた矩形筒状のエッジワイズコイルである。よって、巻回部20を軸方向から見た端面形状が矩形状である。矩形には、長方形の他に正方形が含まれる。巻回部20は、4つの平面と4つの角部とを備える。各角部は、丸められている。巻回部20の角部以外の面は、実質的に平面で構成されている。よって、巻回部20と設置対象との接触面積が大きく確保され易い。上記接触面積が大きいことで、巻回部20は、設置対象に安定して保持され易い。また、上記接触面積が大きいことで、リアクトル1は、巻回部20を介して設置対象に放熱し易い。巻回部20は、円筒状のコイルであってもよい。
【0052】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、
図1に示すように、互いに組み合わされた第一コア片31と第二コア片32とを備える。磁性コア3は、第一コア片31と第二コア片32とが組み合わされて、全体としてθ状に構成される。第一コア片31と第二コア片32とが組み合わされた状態の磁性コア3は、ミドルコア部4と、二つのサイドコア部5,6と、二つのエンドコア部7,8とを備える。本例では、第一コア片31及び第二コア片32はそれぞれ、E字状の部材である。
【0053】
以下では、まず磁性コア3の全体形状を説明し、その後に磁性コア3を構成する第一コア片31及び第二コア片32の各形状を説明する。以下の説明では、巻回部20の軸方向に沿った方向を第一方向D1、一つのミドルコア部4と二つのサイドコア部5,6との並列方向を第二方向D2、第一方向D1及び第二方向D2の双方に直交する方向を第三方向D3とする。また、以下の説明では、各サイドコア部5,6における巻回部20から遠い側を外側、各サイドコア部5,6における巻回部20に近い側を内側と呼ぶ。同様に、各エンドコア部7,8における巻回部20から遠い側を外側、各エンドコア部7,8における巻回部20に近い側を内側と呼ぶ。
【0054】
〔磁性コアの全体形状〕
ミドルコア部4は、巻回部20の内側に配置されている部分を有する。二つのサイドコア部5,6の各々は、巻回部20の外側でミドルコア部4と並んで配置されている。二つのエンドコア部7,8の各々は、巻回部20の端部の外側でミドルコア部4と二つのサイドコア部5,6とをつなぐように配置されている。磁性コア3は、ミドルコア部4と二つのサイドコア部5,6と二つのエンドコア部7,8とが接続されることで、コイル2を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。磁束は、
図2の二点鎖線の矢印で示すように、ミドルコア部4からエンドコア部7に流れ、エンドコア部7から二つのサイドコア部5,6の各々に流れ、各サイドコア部5,6からエンドコア部8に流れ、エンドコア部8からミドルコア部4に流れる。
【0055】
(ミドルコア部)
ミドルコア部4の形状は、巻回部20の内周形状に概ね対応した形状である。本例では、ミドルコア部4の形状が四角柱状、より具体的には矩形柱状であり、ミドルコア部4を軸方向から見た端面形状が矩形状である。ミドルコア部4の角部は、巻回部20の角部に沿うように丸められている。ミドルコア部4の外周面と巻回部20の内周面との間には隙間が存在する。この隙間の少なくとも一部には、後述するモールド樹脂部9が構成される。
【0056】
本例のミドルコア部4は、
図1に示すように、第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42とで構成されている。第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間には、後述する弾性体10が設けられている。言い換えると、本例のミドルコア部4は、弾性体10によって途中で分断されている。
【0057】
ミドルコア部4における第一方向D1に沿った長さは、巻回部20における第一方向D1に沿った長さと同等以上である。本例では、ミドルコア部4における第一方向D1に沿った長さは、
図1に示すように、巻回部20における第一方向D1に沿った長さよりも若干長い。本例のミドルコア部4は、巻回部20の内側に配置される部分と、巻回部20の外側に配置される部分とを備える。ミドルコア部4の両端部が、巻回部20の外側に位置している。
【0058】
(サイドコア部)
各サイドコア部5,6の形状は、巻回部20の外側で第一方向D1に沿って延びる形状であれば、特に限定されない。本例では、各サイドコア部5,6は、第一方向D1に沿って延びる直方体状である。各サイドコア部5,6は、巻回部20を外側から挟むように配置されている。巻回部20が矩形筒状のエッジワイズコイルである場合、各サイドコア部5,6は、巻回部20の外周面を構成する四面のうち、互いに向かい合う位置にある二面に面するように配置されている。巻回部20における両サイドコア部5,6に向き合わない面は、磁性コア3から露出されている。
【0059】
本例のサイドコア部5は、
図1に示すように、第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とで構成されている。第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。言い換えると、第一サイドコア部51と第二サイドコア部52との間には、隙間やギャップ材等が配置されていない。
【0060】
本例のサイドコア部6は、サイドコア部5と同様に、第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とで構成されている。第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。言い換えると、第一サイドコア部51と第二サイドコア部52との間には、隙間やギャップ材等が配置されていない。
【0061】
本例では、二つのサイドコア部5,6の形状及び寸法は、同一である。各サイドコア部5,6における第一方向D1に沿った長さは、ミドルコア部4における第一方向D1に沿った長さよりも長い。本例では、各サイドコア部5,6における第二方向D2に沿った長さは、ミドルコア部4における第二方向D2に沿った長さより短い。本例では、サイドコア部5における第二方向D2に沿った長さとサイドコア部6における第二方向D2に沿った長さとの合計は、ミドルコア部4における第二方向D2に沿った長さよりも短い。本例では、各サイドコア部5,6における第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部4における第三方向D3に沿った長さと同じである。各サイドコア部5,6における第二方向D2に沿った長さの上記合計は、ミドルコア部4における第二方向D2に沿った長さと同じでもよいし、長くてもよい。各サイドコア部5,6における第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部4における第三方向D3に沿った長さよりも短くてもよいし、長くてもよい。各サイドコア部5,6における第三方向D3に沿った長さは、巻回部20における第三方向D3に沿った長さよりも短い。各サイドコア部5,6における第三方向D3に沿った長さは、巻回部20における第三方向D3に沿った長さと同等以上であってもよい。二つのサイドコア部5,6の形状及び寸法は、異なっていてもよい。
【0062】
(エンドコア部)
各エンドコア部7,8の形状は、一つのミドルコア部4と二つのサイドコア部5,6の各端部同士をつなぐ形状であれば、特に限定されない。本例では、各エンドコア部7,8は、第二方向D2に長い直方体状である。
【0063】
本例では、二つのエンドコア部7,8の形状及び寸法は、同一である。各エンドコア部7,8における第一方向D1に沿った長さは、各サイドコア部5,6における第二方向D2に沿った長さとほぼ同じである。各エンドコア部7,8における第三方向D3に沿った長さは、ミドルコア部4及び各サイドコア部5,6における第三方向D3に沿った長さと同じである。二つのエンドコア部7,8の形状及び寸法は、異なっていてもよい。
【0064】
〔第一コア片及び第二コア片の各形状〕
第一コア片31及び第二コア片32は、
図1に示すように、磁性コア3が第一方向D1に離れるように分割される分割片である。本例の第一コア片31及び第二コア片32は、同一形状のE字状の部材である。本例の第一コア片31及び第二コア片32は、寸法も同じである。第一コア片31と第二コア片32との分割される位置は、磁性コア3の第一方向D1の中央部である。第一コア片31及び第二コア片32は、同一形状であるため、同一形状の金型で作製することができる。第一コア片31及び第二コア片32の形状及び寸法は、異なっていてもよい。
【0065】
第一コア片31は、エンドコア部7と、第一ミドルコア部41と、二つの第一サイドコア部51,61とを備える。第二コア片32は、エンドコア部8と、第二ミドルコア部42と、二つの第二サイドコア部52,62とを備える。
【0066】
第一ミドルコア部41及び第二ミドルコア部42の各々は、ミドルコア部4の一部である。第一方向D1に沿った第一ミドルコア部41及び第二ミドルコア部42の長さは同じである。第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間には、間隔が設けられている。この間隔には、後述する弾性体10が設けられている。
【0067】
第一サイドコア部51及び第二サイドコア部52の各々は、サイドコア部5の一部である。第一方向D1に沿った第一サイドコア部51及び第二サイドコア部52の長さは同じである。第一サイドコア部51と第二サイドコア部52との間には、間隔が設けられていない。第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とは、直接接触することで連続して構成されている。サイドコア部5は、直接接触した第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とにより、分断されることなく一連に構成されている。
【0068】
第一サイドコア部61及び第二サイドコア部62の各々は、サイドコア部6の一部である。第一方向D1に沿った第一サイドコア部61及び第二サイドコア部62の長さは同じである。第一サイドコア部61と第二サイドコア部62との間には、間隔が設けられていない。第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とは、直接接触することで連続して構成されている。サイドコア部6は、直接接触した第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とにより、分断されることなく一連に構成されている。
【0069】
〔構成材料〕
第一コア片31及び第二コア片32の少なくとも一方は、複合材料の成形体で構成されている。複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散してなる。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば比透磁率や飽和磁束密度を制御し易い。特に、複合材料は、軟磁性粉末の含有量を少なく調整し易く、比透磁率を低くし易い。更に、複合材料は、後述する圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも形成し易い。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば、20体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。複合材料の成形体中の樹脂の含有量は、複合材料を100体積%とすると、例えば、20体積%以上80体積%以下であることが挙げられる。
【0070】
圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末、即ち軟磁性粉末を圧縮成形することで得られる。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して、コア片に占める軟磁性粉末の割合を高くできる。よって、圧粉成形体は、磁気特性、例えば比透磁率や飽和磁束密度を高くし易い。圧粉成形体中の軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%とすると、例えば80体積%超、更に85体積%以上であることが挙げられる。
【0071】
軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子は、軟磁性材料で構成されている。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金等の金属、フェライト等の非金属が挙げられる。鉄合金は、例えば、Fe-Si合金、Fe-Ni合金等が挙げられる。軟磁性粒子は、軟磁性粒子の表面に絶縁被覆を有する被覆粒子であってもよい。絶縁被覆の構成材料は、リン酸塩等が挙げられる。複合材料の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9T等)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、複合材料の放熱性を向上させることができる。フィラーは、例えば、セラミックスやカーボンナノチューブ等の非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属又は非金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。酸化物の一例として、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム等が挙げられる。窒化物の一例として、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。炭化物の一例として、炭化珪素等が挙げられる。
【0072】
第一コア片31及び第二コア片32の双方が複合材料の成形体で構成されていることが挙げられる。この場合、第一コア片31と第二コア片32とは、同じ複合材料の成形体で構成されていてもよいし、軟磁性粉末の含有量が異なる複合材料の成形体で構成されていてもよい。他に、第一コア片31及び第二コア片32の一方が複合材料の成形体で構成され、第一コア片31及び第二コア片32の他方が圧粉成形体で構成されていてもよい。
【0073】
≪モールド樹脂部≫
モールド樹脂部9は、
図1に示すように、磁性コア3の少なくとも一部を覆っている。モールド樹脂部9は、磁性コア3を外部環境から保護する機能を有する。モールド樹脂部9は、更にコイル2を覆っていてもよい。モールド樹脂部9がコイル2と磁性コア3との間に介在されていれば、コイル2と磁性コア3との絶縁を確保し易い。モールド樹脂部9がコイル2と磁性コア3との間に跨って存在していれば、コイル2と磁性コア3とを互いに位置決めし易い。また、モールド樹脂部9が、第一コア片31と第二コア片32との間に跨って存在していれば、第一コア片31と第二コア片32とを互いに固定できる。
【0074】
本例のモールド樹脂部9は、コイル2と磁性コア3と後述する弾性体10とを含む組物の外周を覆う。本例の組物は、モールド樹脂部9によって外部環境から保護される。また、本例の組物は、モールド樹脂部9によってコイル2と磁性コア3と弾性体10とが一体化されて構成されている。磁性コア3の外周面の少なくとも一部、又はコイル2の外周面の少なくとも一部がモールド樹脂部9から露出していてもよい。本例のモールド樹脂部9は、巻回部20の内面とミドルコア部4との間に介在されている。
【0075】
モールド樹脂部9を構成する樹脂は、例えば、上述した複合材料の樹脂と同様の樹脂が挙げられる。モールド樹脂部9の構成材料は、複合材料と同様に、上述したフィラーを含有していてもよい。
【0076】
≪弾性体≫
弾性体10は、
図1に示すように、ミドルコア部4の途中を分断するように設けられている。弾性体10は、所定のインダクタンスを維持する機能を有する。また、弾性体10は、リアクトル1の製造過程において、ミドルコア部4にかかる荷重を吸収する機能を有する。詳細は後述するが、リアクトル1の製造過程において、モールド樹脂部9を形成する際には、二つのエンドコア部7,8が互いに近づく方向に圧力がかかる。上記圧力によって、ミドルコア部4に荷重がかかり易い。弾性体10は、この荷重を吸収することで、磁性コア3に割れが生じることを抑制している。弾性体10は、ミドルコア部4の端面の中央部を含む領域に向かい合って配置されている。
【0077】
圧縮状態の弾性体10における第一の面積割合は、70%以上であることが挙げられる。第一の面積割合は、特定面積に対する弾性体10の面積の割合である。特定面積は、
図3に示す長さAと長さBとの乗算、すなわち長さA×長さBで求められる。長さAは、ミドルコア部4における第三方向D3に沿った長さである。本例では、ミドルコア部4における第三方向D3に沿った長さと、各エンドコア部7,8における第三方向D3に沿った長さとは同じである。長さBは、二つのサイドコア部5,6の内側面間の長さである。二つのサイドコア部5,6の内側面間とは、二つのサイドコア部5,6における互いに向かい合う面同士の間のことである。特定面積は、リアクトル1の製造過程において、モールド樹脂部9を形成する際にかかる圧力の影響を受け易い領域である。弾性体10の面積は、圧縮状態の弾性体10におけるミドルコア部4に向かい合う面の面積である。特定面積は、
図3の下図において左下がりの斜めハッチングで示す部分である。弾性体10の面積は、
図3の下図において右下がりの斜めハッチングで示す部分である。
【0078】
圧縮状態の第一の面積割合が70%以上であるということは、特定面積のある程度の範囲に弾性体10が設けられているということである。上記圧力がかかるある程度の範囲に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程において、ミドルコア部4にかかる荷重を弾性体10で吸収し易く、磁性コア3に割れがより生じ難い。リアクトル1の製造過程で磁性コア3に割れがより生じ難いことで、磁性コア3に割れがより少ないリアクトル1が得られる。第一の面積割合が大きいほど、弾性体10は上記荷重を吸収し易い。しかし、第一の面積割合が大き過ぎると、弾性体10が巻回部20の内周面に達する。弾性体10が巻回部20の内周面に達すると、弾性体10を挟んで、ミドルコア部4と巻回部20との間の隙間が巻回部20の軸方向に分断される。その結果、弾性体10がモールド樹脂部9の未固化の構成樹脂の流動を阻害するおそれがある。他に、弾性体10が巻回部20の内周面に達すると、弾性体10がミドルコア部4の外方でミドルコア部4の軸方向にまで広がり、ミドルコア部4の角部で弾性体10が損傷するおそれがある。また、弾性体10が巻回部20の内周面に達すると、巻回部20とミドルコア部4との間にモールド樹脂部9の未固化の構成樹脂が流れた際、弾性体10が上記構成樹脂の流れに引っ張られて破断するおそれがある。よって、第一の面積割合は、95%以下であることが挙げられる。第一の面積割合は、70%以上95%以下、更に75%以上90%以下、特に80%以上85%以下であることが挙げられる。
【0079】
圧縮状態の弾性体10における第二の面積割合は、70%以上であることが挙げられる。第二の面積割合は、ミドルコア部4の横断面積に対する弾性体10の面積の割合である。ミドルコア部4の横断面積は、
ミドルコア部4をミドルコア部4の長手方向に直交する方向に切断した断面の面積である。弾性体10の面積は、圧縮状態の弾性体10におけるミドルコア部4に向かい合う面の面積である。ミドルコア部4の横断面積は、
図4の下図において左下がりの斜めハッチングで示す部分である。弾性体10の面積は、
図4の下図において右下がりの斜めハッチングで示す部分である。
【0080】
圧縮状態の第二の面積割合が70%以上であるということは、ミドルコア部4の横断面積のある程度の範囲に弾性体10が設けられているということである。ミドルコア部4の横断面積のある程度の範囲に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程において、ミドルコア部4にかかる荷重を弾性体10で吸収し易く、磁性コア3に割れがより生じ難い。リアクトル1の製造過程で磁性コア3に割れがより生じ難いことで、磁性コア3に割れがより少ないリアクトル1が得られる。第二の面積割合が大きいほど、弾性体10は上記荷重を吸収し易い。圧縮された状態の弾性体10は、ミドルコア部4から若干はみ出ることが挙げられる。この場合、第二の面積割合は100%超である。第二の面積割合が100%超であることで、リアクトル1の製造過程において、圧縮された弾性体10がミドルコア部4の横断面の全面にわたって配置されることになり、上記荷重を弾性体10で吸収し易い。第二の面積割合が大き過ぎると、リアクトル1の製造過程において、モールド樹脂部9の構成樹脂が流れ難くなる。よって、第二の面積割合は、110%以下であることが挙げられる。第二の面積割合は、70%以上110%以下、更に80%超110%以下、特に80%以上100%以下であることが挙げられる。第二の面積割合が100%未満である場合、弾性体10の周囲にはモールド樹脂部9の構成樹脂が構成される。この場合、弾性体10とモールド樹脂部9の構成樹脂とでギャップ材が構成される。
【0081】
圧縮状態の弾性体10の厚さは、所望のインダクタンスを維持できる厚さを適宜選択できる。弾性体10の厚さは、例えば、0.2mm以上2.0mm以下、更に0.3mm以上2.0mm以下、特に0.3mm以上1.5mm以下であることが挙げられる。
【0082】
弾性体10は、モールド樹脂部9を形成する際に、モールド樹脂部9の未固化の構成樹脂によって溶解したり変形したりしない程度の耐熱性を有することが挙げられる。例えば、弾性体10は、耐熱温度が150℃以上であることが挙げられる。弾性体10は、モールド樹脂部9を形成する際の圧力によって圧縮される程度の弾性を有することが挙げられる。弾性体10は、ヤング率が1MPa以上100MPa以下であることが挙げられる。弾性体10は、熱伝導性に優れることが挙げられる。例えば、弾性体10は、熱伝導率が0.8W/m・K以上であることが挙げられる。弾性体10は、非磁性であることが挙げられる。弾性体10は、絶縁性であることが挙げられる。弾性体10の構成材料としては、シリコーンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。他に、弾性体10として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂からなるシートを用いることもできる。
【0083】
≪その他≫
リアクトル1は、図示していないものの、保持部材や接着層を備えることができる。保持部材は、コイル2と磁性コア3との間に介在され、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保する機能を有する。また、保持部材は、コイル2と磁性コア3との相互の位置を規定して、位置決め状態を保持する機能を有する。保持部材は、例えば、巻回部20の端面とエンドコア部7,8との間に配置される。保持部材は、例えば、巻回部20の内周面とミドルコア部4の外周面との間に配置される。巻回部20の内周面とミドルコア部4の外周面との間に配置される保持部材は、巻回部20とミドルコア部4との間にモールド樹脂部9の未固化の構成樹脂が流れることができるような構造となっている。接着層は、コイル2と磁性コア3と弾性体10とを含む組物を設置面に固定する。
【0084】
≪リアクトルの製造方法≫
図5から
図7を参照して、リアクトルの製造方法を説明する。リアクトルの製造方法は、準備工程と成形工程とを備える。
【0085】
〔準備工程〕
準備工程では、
図5に示すように、コイル2と磁性コア3と弾性体10αとを含む組物を準備する。
【0086】
コイル2は、一つの巻回部20を備える。コイル2は、得られるリアクトル1におけるコイル2と同様である。
図5に示すコイル2と
図1に示すコイル2とは同じである。
【0087】
磁性コア3は、互いに組み合わされた第一コア片31と第二コア片32とを備える。磁性コア3は、第一コア片31と第二コア片32とが組み合わされて、全体としてほぼθ状に構成される。第一コア片31及び第二コア片32は、得られるリアクトル1における各第一コア片31及び第二コア片32と同様である。
図5に示す第一コア片31及び第二コア片32の各形状は、
図1に示す第一コア片31及び第二コア片32と同じである。第一コア片31と第二コア片32とが組み合わされた状態の磁性コア3は、ミドルコア部4と、二つのサイドコア部5,6と、二つのエンドコア部7,8とを備える。ミドルコア部4は、巻回部20の内側に配置されている部分を有する。二つのサイドコア部5,6の各々は、巻回部20の外側でミドルコア部4と並んで配置されている。二つのエンドコア部7,8の各々は、巻回部20の端部の外側でミドルコア部4と二つのサイドコア部5,6とをつなぐように配置されている。第一コア片31及び第二コア片32の少なくとも一方は、複合材料の成形体で構成されている。
【0088】
製造過程における磁性コア3では、第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間には、後述する弾性体10αが設けられている。言い換えると、製造過程におけるミドルコア部4は、弾性体10αによって途中で分断されている。弾性体10αの厚さW2(
図6)は、
図1に示すリアクトル1の弾性体10の厚さW1(
図3)よりも厚い。よって、製造過程における第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間隔は、得られるリアクトル1における第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間隔よりも大きい。製造過程における磁性コア3では、第一サイドコア部51と第二サイドコア部52との間には、ギャップ15が構成されている。同様に、製造過程における磁性コア3では、第一サイドコア部61と第二サイドコア部62との間には、ギャップ15が構成されている。
【0089】
非圧縮状態の弾性体10αにおける第一の面積割合は、45%以上であることが挙げられる。第一の面積割合は、特定面積に対する弾性体10αの面積の割合である。特定面積は、
図6に示す長さAと長さBとの乗算、すなわち長さA×長さBで求められる。
図6に示す特定面積は、
図4に示す特定面積と同じである。弾性体10αの面積は、非圧縮状態、即ち圧縮前の弾性体10αにおけるミドルコア部4に向かい合う面の面積である。特定面積は、
図6の下図において左下がりの斜めハッチングで示す部分である。弾性体10αの面積は、
図6の下図において右下がりの斜めハッチングで示す部分である。
【0090】
特定面積は、リアクトル1の製造過程において、モールド樹脂部9を形成する際にかかる圧力の影響を受け易い領域である。圧縮前の第一の面積割合が45%以上であるということは、特定面積のある程度の範囲に圧縮前の弾性体10αが設けられているということである。上記圧力がかかるある程度の範囲に圧縮前の弾性体10αが設けられていることで、リアクトル1の製造過程において、ミドルコア部4にかかる荷重を弾性体10αで吸収し易く、磁性コア3に割れがより生じ難い。第一の面積割合が大きいほど、弾性体10αは上記荷重を吸収し易い。弾性体10αは、上記荷重を受けて圧縮し、ミドルコア部4の中心側から外方に向かって放射状に広がる。第一の面積割合が大き過ぎると、弾性体10αが巻回部20の内周面に達するまで広がる。弾性体10αが巻回部20の内周面に達すると、弾性体10αを挟んで、ミドルコア部4と巻回部20との間の隙間が巻回部20の軸方向に分断される。その結果、弾性体10αがモールド樹脂部9の未固化の構成樹脂の流動を阻害するおそれがある。第一の面積割合は、80%以下であることが挙げられる。第一の面積割合は、45%以上80%以下、更に60%以上80%以下、特に70%以上80%以下であることが挙げられる。
【0091】
非圧縮状態の弾性体10αにおける第二の面積割合は、75%以上であることが挙げられる。第二の面積割合は、ミドルコア部4の横断面積に対する弾性体10αの面積の割合である。圧縮前の第二の面積割合が75%以上であるこということは、ミドルコア部4の横断面積のある程度の範囲に弾性体10αが設けられているということである。ミドルコア部4の横断面積のある程度の範囲に弾性体10αが設けられていることで、リアクトル1の製造過程において、ミドルコア部4にかかる荷重を弾性体10αで吸収し易く、磁性コア3に割れがより生じ難い。第二の面積割合が大きいほど、弾性体10αは上記荷重を吸収し易い。弾性体10αは、上記荷重を受けて圧縮し、ミドルコア部4の中心側から外方に向かって放射状に広がる。第二の面積割合が大き過ぎると、弾性体10αが巻回部20の内周面に達するまで広がる。弾性体10αが巻回部20の内周面に達すると、弾性体10αを挟んで、ミドルコア部4と巻回部20との間の隙間が巻回部20の軸方向に分断される。その結果、弾性体10αがモールド樹脂部9の未固化の構成樹脂の流動を阻害するおそれがある。よって、第二の面積割合は、
図7に示すように、95%以下であることが挙げられる。第二の面積割合は、75%以上95%以下、更に80%以上95%以下、特に85%以上95%以下であることが挙げられる。
【0092】
非圧縮状態の弾性体10αの厚さは、後述する成形工程によって弾性体10αが圧縮された際に荷重を吸収できると共に、圧縮された弾性体10αによって所望のインダクタンスが維持できる程度の厚さを適宜選択できる。弾性体10αの厚さは、例えば、0.2mm以上2.0mm以下、更に0.3mm以上1.9mm以下、特に0.3mm以上1.4mm以下であることが挙げられる。
【0093】
〔成形工程〕
成形工程では、
図5に示すように、上記組物を金型100に配置し、金型100内に樹脂を注入して磁性コア3の少なくとも一部を覆うようにモールド樹脂部9(
図1)を形成する。樹脂の注入は、二つのエンドコア部7,8が互いに近づく方向、
図5に示す白抜矢印の方向に15MPa以上の圧力をかけて行う。上記圧力は、樹脂を注入する際の射出圧力である。樹脂を金型内に充填した後に、ゲートから樹脂が逆流しないように組物に一定の圧力をかけて保持する場合がある。このときの保持圧力も15MPa以上としてもよい。
【0094】
上記圧力によって、第一コア片31と第二コア片32とが互いに近づき、弾性体10αが圧縮される。また、上記圧力によって、第一コア片31と第二コア片32とが互いに近づき、第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とが直接接触し、かつ第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とが直接接触する。つまり、
図5に示すギャップ15は消滅する。この状態で、上記樹脂が固化されることで、
図1に示すリアクトル1が得られる。
【0095】
≪効果≫
実施形態1のリアクトルの製造方法は、モールド樹脂部9を形成する際に15MPa以上の高い圧力がかかっても磁性コア3に割れが生じ難い。コイル2と磁性コア3と弾性体10αとを含む組物を金型100に配置し、金型100内に樹脂を注入してモールド樹脂部9を形成する際、二つのエンドコア部7,8が互いに近づく方向に圧力がかかる。実施形態1のリアクトルの製造方法では、上記圧力の影響を受け易いミドルコア部4の途中に弾性体10αが設けられていることで、上記圧力による荷重を弾性体10αで吸収でき、磁性コア3に割れが生じ難い。製造過程で磁性コア3に割れが生じ難いことで、得られた実施形態1のリアクトル1は、磁性コア3に割れが少ない。
【0096】
<実施形態2>
図8を参照して、実施形態2のリアクトル1を説明する。実施形態2のリアクトル1は、磁性コア3を構成する第一コア片31及び第二コア片32の形状が実施形態1のリアクトル1と相違する。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0097】
本例の第一コア片31は、エンドコア部7と、第一ミドルコア部41と、二つのサイドコア部5,6とを備える。第一ミドルコア部41は、ミドルコア部4の一部である。第一ミドルコア部41における第一方向D1に沿った長さは、二つのサイドコア部5,6における第一方向D1に沿った長さよりも短い。よって、本例の第一コア片31は、第一ミドルコア部41の上記長さが二つのサイドコア部5,6の上記長さよりも短いE字状の部材である。本例の第二コア片32は、エンドコア部8と、第二ミドルコア部42とを備える。第二ミドルコア部42は、ミドルコア部4の残部である。本例の第二コア片32は、T字状の部材である。磁性コア3は、E字状の第一コア片31とT字状の第二コア片32とを組み合わせることによって、全体としてθ状に構成される。第一ミドルコア部41と第二ミドルコア部42との間には、弾性体10が設けられている。言い換えると、本例のミドルコア部4は、弾性体10によって途中で分断されている。二つのサイドコア部5,6の各々とエンドコア部8とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。
【0098】
実施形態2のリアクトル1も、実施形態1と同様に、ミドルコア部4の途中に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程でかかる圧力を弾性体10で吸収でき、磁性コア3に割れが生じ難い。
【0099】
<実施形態3>
図9を参照して、実施形態3のリアクトル1を説明する。実施形態3のリアクトル1は、磁性コア3を構成する第一コア片31及び第二コア片32の形状が実施形態1のリアクトル1と相違する。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0100】
本例の第一コア片31は、エンドコア部7と、ミドルコア部4と、二つのサイドコア部5,6とを備える。本例の第一コア片31は、E字状の部材である。本例の第二コア片32は、エンドコア部8を備える。本例の第二コア片32は、I字状の部材である。磁性コア3は、E字状の第一コア片31とI字状の第二コア片32とを組み合わせることによって、全体としてθ状に構成される。ミドルコア部4とエンドコア部8との間には、弾性体10が設けられている。言い換えると、本例では、ミドルコア部4とエンドコア部8との境界が弾性体10によって分断されている。二つのサイドコア部5,6の各々とエンドコア部8とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。
【0101】
実施形態3のリアクトル1も、実施形態1と同様に、ミドルコア部4の端部に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程でかかる圧力を弾性体10で吸収でき、磁性コア3に割れが生じ難い。
【0102】
<実施形態4>
図10を参照して、実施形態4のリアクトル1を説明する。実施形態4のリアクトル1は、磁性コア3を構成する第一コア片31及び第二コア片32の形状が実施形態1のリアクトル1と相違する。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0103】
本例の第一コア片31は、エンドコア部7と、ミドルコア部4と、二つの第一サイドコア部51,61とを備える。第一サイドコア部51は、サイドコア部5の一部である。第一サイドコア部61は、サイドコア部6の一部である。ミドルコア部4における第一方向D1に沿った長さは、二つの第一サイドコア部51,61における第一方向D1に沿った長さよりも長い。よって、本例の第一コア片31は、ミドルコア部4の上記長さが二つの第一サイドコア部51,61の上記長さよりも長いE字状の部材である。本例の第二コア片32は、エンドコア部8と、二つの第二サイドコア部52,62とを備える。第二サイドコア部52は、サイドコア部5の残部である。第二サイドコア部62は、サイドコア部6の残部である。本例の第二コア片32は、U字状の部材である。磁性コア3は、E字状の第一コア片31とU字状の第二コア片32とを組み合わせることによって、全体としてθ状に構成される。ミドルコア部4とエンドコア部8との間には、弾性体10が設けられている。言い換えると、本例では、ミドルコア部4とエンドコア部8との境界が弾性体10によって分断されている。第一サイドコア部51と第二サイドコア部52とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。また、第一サイドコア部61と第二サイドコア部62とは、直接接触することで、分断されることなく一連に構成されている。エンドコア部7とミドルコア部4とは一体に成形体された一体物である。
【0104】
実施形態4のリアクトル1も、実施形態1と同様に、ミドルコア部4の端部に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程でかかる圧力を弾性体10で吸収でき、磁性コア3に割れが生じ難い。
【0105】
<実施形態5>
図11を参照して、実施形態5のリアクトル1を説明する。実施形態5のリアクトル1は、磁性コア3を構成する第一コア片31及び第二コア片32の形状が実施形態1のリアクトル1と相違する。以下の説明では、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0106】
本例の第一コア片31は、二つのエンドコア部7,8と、二つのサイドコア部5,6とを備える。二つのエンドコア部7,8と二つのサイドコア部5,6とは、一体に成形された一体物である。本例の第一コア片31は、O字状の部材である。本例の第二コア片32は、ミドルコア部4を備える。本例の第二コア片32は、I字状の部材である。磁性コア3は、O字状の第一コア片31とI字状の第二コア片32とを組み合わせることによって、全体としてθ状に構成される。ミドルコア部4とエンドコア部7との間には、弾性体10が設けられている。言い換えると、本例では、ミドルコア部4とエンドコア部7との境界が弾性体10によって分断されている。同様に、ミドルコア部4とエンドコア部8との間には、弾性体10が設けられている。言い換えると、本例では、ミドルコア部4とエンドコア部8との境界が弾性体10によって分断されている。本例では、ミドルコア部4とエンドコア部7,8との境界の双方を分断するように弾性体10が設けられている。他に、ミドルコア部4とエンドコア部7との境界のみを分断するように弾性体10が設けられていてもよい。この場合、弾性体10が設けられないミドルコア部4とエンドコア部8との境界では、ミドルコア部4とエンドコア部8とが直接接触することで、分断されることなく一連に構成される。
【0107】
実施形態5のリアクトル1も、実施形態1と同様に、ミドルコア部4の端部に弾性体10が設けられていることで、リアクトル1の製造過程でかかる圧力を弾性体10で吸収でき、磁性コア3に割れが生じ難い。
【0108】
<実施形態6>
実施形態1から実施形態5に係る各リアクトルは、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態1から実施形態5に係る各リアクトルは、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車等の車両等に載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0109】
ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両1200は、
図12に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図12では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0110】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。本例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V~300V程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V~700V程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0111】
コンバータ1110は、
図13に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ等のパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1から実施形態5のいずれかのリアクトル1を備える。磁性コアに割れが少ないリアクトルを備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は、低損失が期待できる。
【0112】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1から実施形態5のいずれかのリアクトル1と同様の構成を備え、適宜、大きさや形状等を変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1から実施形態5のいずれかのリアクトル1を利用することもできる。
【符号の説明】
【0113】
1 リアクトル
2 コイル、20 巻回部
3 磁性コア、31 第一コア片、32 第二コア片
4 ミドルコア部
41 第一ミドルコア部、42 第二ミドルコア部
5,6 サイドコア部
51,61 第一サイドコア部、52,62 第二サイドコア部
7,8 エンドコア部
9 モールド樹脂部
10,10α 弾性体、15 ギャップ
100 金型
A,B 長さ、W1,W2 厚さ
D1 第一方向、D2 第二方向、D3 第三方向
1100 電力変換装置、1110 コンバータ、1111 スイッチング素子
1112 駆動回路、1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両、1210 メインバッテリ、1220 モータ
1230 サブバッテリ、1240 補機類、1250 車輪、1300 エンジン