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特許7659245生体関連物質の抽出装置及び処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】生体関連物質の抽出装置及び処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20250402BHJP
   G01N 1/10 20060101ALI20250402BHJP
   G01N 1/38 20060101ALI20250402BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20250402BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20250402BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
G01N1/28 J
G01N1/10 C
G01N1/38
G01N1/00 101K
G01N35/00 Z
G01N35/00 B
C12M1/00 A
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023538464
(86)(22)【出願日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2022028147
(87)【国際公開番号】W WO2023008270
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2021121766
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022007079
(32)【優先日】2022-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502338292
【氏名又は名称】ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141025
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 勝久
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀二
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-192232(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005299(WO,A1)
【文献】特表2020-528754(JP,A)
【文献】特開2015-019632(JP,A)
【文献】国際公開第2020/162431(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077400(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/093824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
G01N 35/00-37/00
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性粒子を用いて検体から生体関連物質を抽出する抽出装置であって、
前記磁性粒子及び前記検体を含む溶液を保持し第1方向にそって配置された複数の抽出容器と、
前記複数の抽出容器に磁力を及ぼす1つ又は複数の磁石体と、
前記複数の抽出容器に対して、前記1つ又は複数の磁石体が接触する接触位置と前記1つ又は複数の磁石体が接触しない非接触位置との間で、前記1つ又は複数の磁石体を移動する磁石移動機構と、
前記複数の抽出容器及び前記磁石移動機構を揺動させる揺動機構と、
前記揺動機構、及び前記1つ又は複数の磁石移動機構の動作を制御する制御部と
前記第1方向にそって配置された複数の分注ノズル、及び前記第1の方向とは異なる第2方向に前記複数の分注ノズルを移動するノズル移動機構を有するノズル部を備え、
前記揺動機構は、前記第1方向に延びる揺動軸を備え、
前記複数の抽出容器のそれぞれは、溶液を貯留する容器本体と、前記容器本体を覆う蓋体とを備え、
前記蓋体は、分注口を備え、
前記容器本体は、前記第2方向に対して傾斜した傾斜平面部又は傾斜側面を備える、抽出装置。
【請求項2】
請求項に記載の抽出装置であって、
前記容器本体は、前記傾斜平面部の下端に接続される最下部を備える、抽出装置。
【請求項3】
請求項に記載の抽出装置であって、
前記最下部の周囲は、当該最下部に向かって傾斜している、抽出装置。
【請求項4】
請求項に記載の抽出装置であって、
前記最下部は、前記抽出容器の中心から前記第2方向にずれた位置に形成されている、抽出装置。
【請求項5】
請求項に記載の抽出装置であって、
前記磁石移動機構は、前記傾斜平面部の外面に対して前記1つ又は複数の磁石体を移動する、抽出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記抽出容器は、一方の側面に、廃液チューブと、前記廃液チューブを通る液体の流れを調節する廃液バルブとを備え、他方の側面に、採取チューブと、前記採取チューブを通る液体の流れを調節する採取バルブとを備える、抽出装置。
【請求項7】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記抽出装置は、容器本体を備え、前記容器本体は、平底面と前記平底面に接続される前記傾斜側面とを備える、抽出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記複数の抽出容器に対して、前記1つ又は複数の温度調節ユニットが接触する接触位置と前記1つ又は複数の温度調節ユニットが接触しない非接触位置との間で、前記1つ又は複数の温度調節ユニットを移動する温度調節ユニット移動機構を備え、
前記制御部が、前記1つ又は複数の温度調節ユニットの動作を制御する、抽出装置。
【請求項9】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記温度調節ユニットは、ヒータ又はペルチェ素子と、前記ヒータ又はペルチェ素子と前記容器本体との間に配置された熱伝導部とから構成される、抽出装置。
【請求項10】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記揺動機構によって揺動する揺動体を備え、前記揺動体は、前記複数の抽出容器、前記1つ又は複数の磁石体、前記磁石移動機構、及び前記温度調節ユニットを含む、抽出装置。
【請求項11】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、少なくとも前記磁石体を前記接触位置又は前記非接触位置とした状態で、前記揺動体を揺動する、抽出装置。
【請求項12】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記揺動機構を制御することによって、0.8°/秒から1.2°/秒の速度範囲にある傾斜速度で、前記抽出容器を揺動させる、抽出装置。
【請求項13】
請求項12に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記揺動機構を制御することによって、±15°から±25°の角度範囲にある傾斜角度で、前記抽出容器を揺動させる、抽出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記傾斜速度及び前記傾斜角度から構成される1つの揺動動作を複数回繰り返すように前記揺動機構を制御する、抽出装置。
【請求項15】
請求項1に記載の抽出装置であって、
前記複数の抽出容器の温度を調節する1つ又は複数の温度調節ユニットを備える、抽出装置。
【請求項16】
請求項1に記載の抽出装置を備え、前記生体関連物質を処理する処理システムであって、
前記第1方向にそって配置された前記複数の抽出容器と、
前記第1方向にそって配置された複数の分注ノズルと、
抽出処理に用いる各種試薬及び/又は溶液を保持する複数のカートリッジとを備え、
前記複数のカートリッジが、前記第1方向とは異なる第2方向にそって配置される、処理システム。
【請求項17】
請求項16に記載の処理システムであって、
前記複数の分注ノズルを前記第2方向にそって移動可能に支持するノズル部を備える、処理システム。
【請求項18】
請求項16記載の処理システムであって、
前記複数の抽出容器中で抽出された複数の生体関連物質をそれぞれ測定する測定部を備える、処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体関連物質の抽出装置及び処理システムに関し、より詳細には、磁性粒子及び磁性体を用いて、特定の糖鎖等の物質を含む生体関連物質を分離する生体関連物質の抽出装置及び処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
全血には、肝臓由来のトランスフェリン、脳由来のトランスフェリンが含まれており、両者は備える糖鎖の構造が相違するため、識別及び分離が可能である。早期のアルツハイマー型認知症において、特有の糖鎖を有する脳(髄液)由来のトランスフェリンが生じることが知られている。そこで、特許文献1において、橋本らにより、特有の糖鎖を有するトランスフェリンを、早期のアルツハイマー型認知症のマーカーとして用いることが提案されている。
【0003】
一方、生体関連物質の抽出に関して、本願発明者によって特許文献2の方法及び装置が提案されている。この方法及び装置は、生体関連物質(核酸)を吸着する磁性粒子と、磁性粒子を含む溶液を保持する分注チップと、分注チップに対して移動可能な外部磁石とを用いて、生体関連物質の抽出を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6680873号公報(WO2017/195778)
【文献】国際公開97/44671号(EP0965842A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全血等の検体からタンパク質(例えばトランスフェリン)等の生体関連物質を、特許文献2の方法及び装置を用いて、抽出することができる。しかしながら、このように抽出されたタンパク質等の生体関連物質は、生体関連物質に結合した糖鎖等が相違するものが含まれている。
【0006】
生体関連物質に結合する糖鎖等は、抗体(レクチン等)と結合可能であるものの、糖鎖等と抗体とのアフィニティが比較的弱い。分注チップへの溶液の吸引吐出という比較的激しい処理を行うと、糖鎖等と抗体との結合が破壊されるため、特許文献2の方法及び装置では、異なる糖鎖等を含む生体関連物質から、特定の糖鎖等を含む生体関連物質を分離することが困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、比較的穏やかな処理で特定の糖鎖等の物質を含む生体関連物質を抽出可能な抽出装置及び処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各態様は次の通り構成される。
[態様1]
磁性粒子を用いて検体から生体関連物質を抽出する抽出装置であって、
前記磁性粒子及び前記検体を含む溶液を保持し第1方向にそって配置された複数の抽出容器と、
前記複数の抽出容器に磁力を及ぼす1つ又は複数の磁石体と、
前記1つ又は複数の抽出容器に対して、前記1つ又は複数の磁石体が接触する接触位置と前記1つ又は複数の磁石体が接触しない非接触位置との間で、前記1つ又は複数の磁石体を移動する磁石移動機構と、
前記複数の抽出容器及び前記磁石移動機構を揺動させる揺動機構と、
前記揺動機構、及び前記1つ又は複数の磁石移動機構の動作を制御する制御部とを備える、抽出装置。
【0009】
[態様2]
態様1に記載の抽出装置であって、
第1方向にそって配置された複数の分注ノズル、及び前記第1の方向とは異なる第2方向に前記複数の分注ノズルを移動するノズル移動機構を有するノズル部を備え、
前記揺動機構は、前記第1方向に延びる揺動軸を備え、
前記複数の抽出容器のそれぞれは、溶液を貯留する容器本体と、前記容器本体を覆う蓋体とを備え、
前記蓋体は、円形の分注口又は前記第2方向に延びる細長い分注口を備える、抽出装置。
[態様3]
態様2に記載の抽出装置であって、
前記容器本体は、前記第2方向に対して傾斜した傾斜平面部を備える、抽出装置。
[態様4]
態様3に記載の抽出装置であって、
前記容器本体は、前記傾斜平面部の下端に接続される最下部を備える、抽出装置。
[態様5]
態様4に記載の抽出装置であって、
前記最下部の周囲は、当該最下部に向かって傾斜している、抽出装置。
【0010】
[態様6]
態様4又は5に記載の抽出装置であって、
前記最下部は、前記抽出容器の中心から前記第2方向にずれた位置に形成されている、抽出装置。
[態様7]
態様3乃至6のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記磁石移動機構は、前記傾斜平面部の外面に対して前記1つ又は複数の磁石体を移動する、抽出装置。
[態様8]
態様1に記載の抽出装置であって、
前記抽出容器は、一方の側面に、廃液チューブと、前記廃液チューブを通る液体の流れを調節する廃液バルブとを備え、他方の側面に、採取チューブと、前記採取チューブを通る液体の流れを調節する採取バルブとを備える、抽出装置。
【0011】
[態様9]
態様1又は2に記載の抽出装置であって、
前記抽出装置は、容器本体を備え、前記容器本体は、平底面と前記平底面に接続される傾斜側面とを備える、抽出装置。
[態様10]
態様1、8乃至9のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記1つ又は複数の抽出容器に対して、前記1つ又は複数の温度調節ユニットが接触する接触位置と前記1つ又は複数の温度調節ユニットが接触しない非接触位置との間で、前記1つ又は複数の温度調節ユニットを移動する温度調節ユニット移動機構を備え、
前記制御部が、前記1つ又は複数の温度調節ユニットの動作を制御する、抽出装置。
[態様11]
態様1乃至10のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記温度調節ユニットは、ヒータ又はペルチェ素子と、前記ヒータ又はペルチェ素子と前記容器本体との間に配置された熱伝導部とから構成される、抽出装置。
【0012】
[態様12]
態様1乃至9のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記揺動機構によって揺動する揺動体を備え、前記揺動体は、前記複数の抽出容器、前記1つ又は複数の磁石体、前記磁石移動機構、及び前記温度調節ユニットを含む、抽出装置。
[態様13]
態様1乃至12のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、少なくとも前記磁石体を前記接触位置又は前記非接触位置とした状態で、前記揺動体を揺動する、抽出装置。
[態様14]
態様1乃至13のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記揺動機構を制御することによって、0.8°/秒から1.2°/秒の速度範囲にある傾斜速度で、前記抽出容器を揺動させる、抽出装置。
【0013】
[態様15]
態様14に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記揺動機構を制御することによって、±15°から±25°の角度範囲にある傾斜角度で、前記抽出容器を揺動させる、抽出装置。
[態様16]
態様15に記載の抽出装置であって、
前記制御部は、前記速度範囲及び前記角度範囲から構成される1つの揺動動作を複数回繰り返すように前記揺動機構を制御する、抽出装置。
[態様17]
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の抽出装置であって、
前記1つ又は複数の抽出容器の温度を調節する1つ又は複数の温度調節ユニットを備える、抽出装置。
[態様18]
態様1乃至17のいずれか一項に記載の抽出装置を備え、前記生体関連物質を処理する処理システムであって、
前記第1方向にそって配置された前記複数の抽出容器と、
前記第1方向にそって配置された複数の分注ノズルと、
抽出処理に用いる各種試薬及び/又は溶液を保持する複数のカートリッジとを備え、
前記複数のカートリッジが、前記第1方向とは異なる第2方向にそって配置される、処理システム。
【0014】
[態様19]
態様18に記載の処理システムであって、
前記複数の分注ノズルを前記第2方向にそって移動可能に支持するノズル部を備える、処理システム。
[態様20]
態様18または19に記載の処理システムであって、
前記複数の抽出容器中で抽出された複数の生体関連物質をそれぞれ測定する測定部を備える、処理システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の生体関連物質の抽出装置及び処理システムは、揺動機構を用いてアフィニティが比較的弱い結合物質及び生体関連物質の結合構造を破壊することなく、特定の結合物質が結合した生体関連物質を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る生体関連物質の抽出システムを示す上面図である。
図1A図1の抽出システムを示す斜視図である。
図2】第1の実施形態に係る抽出容器を示す斜視図である。
図3図2の抽出容器を示す、(a)バルブ開状態の上面図、(b)バルブ閉状態の上面図、及び(c)側面図である。
図4】第1の実施形態に係る抽出装置を示す斜視図である。
図5図4の抽出装置の揺動体を示す分解斜視図である。
図6図4の抽出装置を示す、(a)上面図、(b)正面図、(c)I-I方向の断面図である。
図7図6(c)の抽出装置における昇降状態を示す断面図である。
図8図4の抽出装置の揺動状態を示す斜視図である。
図9】抽出容器の第1変形例を示す斜視図である。
図10図9の抽出容器を示す、(a)バルブ開状態の上面図、(b)バルブ閉状態の上面図、及び(c)側面図である。
図11図9の抽出容器を備えた抽出装置の斜視図である。
図12】抽出容器の第2変形例を示す分解斜視図である。
図13図12の抽出容器を示す、(a)上方斜視図、(b)下方斜視図である。
図14図12の抽出容器を示す、(a)上面図、(b)側面図、及び(c)底面図である。
図15図12のスライドバルブの動作を示す、(a)開状態の上方斜視図、(b)閉状態の上方斜視図である。
図16】第2の実施形態に係る揺動体を示す、(a)一部分解状態の上方斜視図、(b)組立状態の上方斜視図である。
図16A図16の揺動体の揺動状態を示す上方斜視図である。
図17図16の揺動体の揺動機構を示す側面図である。
図18図16の揺動体の磁石移動機構を示す側面図である。
図19図16の揺動体の温度調節ユニットを示す、(a)上面図、(b)b-b線断面図である。
図20図16の揺動体の抽出容器を示す、(a)分解斜視図、(b)使用状態の斜視図である。
図21図20の抽出容器の容器本体を示す、(a)上面図、(b)b-b断面図、(c)c-c線断面図、(d)d-d線断面図である。
図22】第2の実施形態に係る抽出容器の各傾斜状態に対する、分注ノズルの位置を示す断面図である。
図23】トランスフェリンとレクチン固定磁性ビーズとの結合状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の生体関連物質の抽出装置及び処理システムに係る各実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付し適宜説明を省略する。図1A乃至22において、各部分の相対的な大きさ及び/又は配置は、原則として正確に図示しているが、本発明はこれらに限定はされない。
【0018】
本発明の実施形態において、検体から抽出される生体関連物質は、特定の糖鎖と結合したトランスフェリンとしたが、これに限定されず、例えば、細胞に含まれる任意の成分、エクソソーム、任意の糖タンパク質とすることができる。なお、本実施形態のx方向、及びy方向は、それぞれ、特許請求の範囲の第1方向、及び第2方向に対応する。また、本実施形態の第1抽出液(肝臓及び脳由来のトランスフェリン)は、特許請求の範囲の検体に対応し、本実施形態の第2抽出液(脳由来のトランスフェリン)は、特許請求の範囲の生体関連物質に対応する。
【0019】
(概要)
本発明の実施形態に係る生体関連物質の抽出装置及び処理システムは、特許文献2の方法を用いて全血等の検体から第1抽出液(肝臓及び脳由来のトランスフェリン)を抽出し、第1抽出液から、比較的穏やかな条件(穏やかな所定の揺動条件)で、第2抽出液(脳由来のトランスフェリン)を抽出又は分離する。
【0020】
(処理システムの基本構成)
本発明の第1及び第2の実施形態に係る処理システム1000の基本構成を、図1及び1Aを用いて説明する。図1及び1Aに示すように、処理システム1000は、各部を支持する基部100を備えている。基部100には、揺動式の生体関連物質の抽出装置200(200A)と、カートリッジ保持部104と、消耗品保持部106と、測定部400とが設けられている。第1の実施形態に係る処理システム1000は、抽出装置200(図4)及び揺動体200S(図5図8)を備え、第2の実施形態に係る処理システム1000は、抽出装置200A(図16)及び揺動体200SA(図16図17)を備える。
【0021】
抽出装置200(200A)は、その上面に、揺動可能な複数の抽出容器210(210A)を備える。カートリッジ保持部104は、y方向に延びる複数のレーンを備え、種類が異なる複数のカートリッジ(第1、第2、及び第3カートリッジ302、304、306)を各レーンに一列に保持する。第1カートリッジ302は、トランスフェリンTR等のタンパク質と特異的に結合する第1抗体が固定された磁性ビーズ(磁性粒子)、各種溶液、及び各種試薬等を収容する。第2カートリッジ304は、化学発光又は蛍光用物質が固定されると共にスフェリンTR等のタンパク質と特異的に結合する第2抗体、各種溶液、及び各種試薬等を収容する。第3カートリッジ306は、トランスフェリンの糖鎖Gと結合する物質(レクチンL)が固定されたレクチン固定磁性ビーズLMB(磁性粒子)、各種溶液、及び化学発光試薬又は蛍光試薬等の各種試薬等を収容する。消耗品保持部106は、消耗品を保持する。消耗品としては、分注チップ502a(図4図11図16図22等)、及び/又はカートリッジのアルミシールを穿孔する穿孔具等である。
【0022】
測定部400には、第2抽出液を収容する複数の測定用ウェル402と、複数の測定用ウェル402からの光を受光する複数の受光部404と、複数の受光部404からの光を光ファイバを介して測定する測定装置(光電子倍増管)406とを備える。測定用ウェル402からの光としては、化学発光又は蛍光等を用いることができる。測定用ウェル402は、好ましくは遮光のために黒色の材料から形成されている。
【0023】
処理システム1000は、基部100の上面の上方をy方向に移動可能なノズル部500と、基部100内に設けられた廃液槽600と、各部の動作を制御する制御部(コンピュータ)700とを備えている。廃液槽600の開口600A(図1A)を基部100の上面に設けることができる。ノズル部500は、複数のレーンに対応してx方向に一列に配置された複数の分注ノズル502と、複数の分注ノズル502を有するノズル部5002をy方向に移動可能に支持するレール504と、ノズル部500を移動するノズル部移動機構(移動用モータ)506とを備えている。制御部700は、ノズル部500をy方向に移動するノズル移動機構506、複数の分注ノズル502の吸引吐出用ピストン502bを駆動するピストン用モータ502c、及び複数の分注ノズル502を昇降する昇降用モータ510の動作を制御する。
【0024】
(第1の実施形態)
[生体関連物質の抽出容器]
第1の実施形態に係る抽出装置200に設けられる抽出容器210を、図2及び3を用いて説明する。抽出容器210は、分注ノズル502の分注チップ502aから分注された第1抽出液を収容する容器本体212と、容器本体212の上面に固定される蓋体214と、容器本体212の一方の幅狭側面に設けられた可撓性の廃液チューブ216aと、容器本体212の他方の幅狭側面に設けられた可撓性の採取チューブ216bと、から構成される。なお、可撓性の廃液チューブ216a及び採取チューブ216bの管路は、後述するように容器の揺動及び回転を可能とするように、十分な長さを有している。
【0025】
容器本体212は、平底面を備え、一対の幅狭側面(傾斜側面)は平底面に対して傾斜して接続されている。容器本体212の一対の幅広側面には位置決め突起212aが形成されている。位置決め突起212aは、後述するように、揺動ステージ260上に設けられた位置決め凹部266に収容及び固定され、抽出容器210の位置決めを行う。
【0026】
蓋体214は、長方形状板であり、その中央部分(対角線の交点付近)に分注口214aが形成されている。分注口214aには、後述する分注ノズル502に取付けた分注チップ502aの先端から第1抽出液、各種試薬、及び/又は各種試薬が注入される。
【0027】
廃液チューブ216a及び採取チューブ216bには、それぞれのチューブを挟持して閉鎖するための一対の挟持体218が設けられている。廃液チューブ216aと一対の挟持体218とにより、廃液側ピンチバルブ(廃液側ピンチコック)が構成される。採取用チューブ216bと一対の挟持体218とにより、採取側ピンチバルブ(採取側ピンチコック)が構成される。図4に示すように、一対の挟持体218を駆動するバルブ駆動モータ219が設けられる。バルブ駆動モータ219は、制御部700によって制御される。
【0028】
[生体関連物質の抽出装置]
第1の実施形態に係る抽出装置200を、図4乃至9を用いて説明する。図4に示すように、複数の抽出容器210は、揺動ステージ260上でx方向にそって配置されている。抽出装置200は、複数の抽出容器210を揺動させる揺動機構220と、揺動機構220を支持する基部(ハウジング)202とを備えている。揺動機構220は、揺動用モータ222と、揺動用モータ222の回転軸224と、複数の抽出容器210に接続される揺動軸226と、回転軸224の回転を揺動軸226に伝達するベルト228とから構成される。揺動軸226は、x方向に延びており、各抽出容器210を収容及び固定する揺動ステージ260(揺動体200S)と接続される。
【0029】
図5に、抽出装置200の揺動体(揺動アセンブリ)200Sを分解斜視図を示す。揺動体200Sは、駆動モータ支持部230と、駆動モータ支持部230に対して昇降可能(z方向に移動可能)に取り付けられる磁石支持板240と、駆動モータ支持部230に対して昇降可能(z方向に移動可能)に取り付けられる温度調節ユニット支持板251と、駆動モータ支持部230に対して複数のガイドロッド269を介して固定される揺動ステージ260とから構成される。
【0030】
図5に示すように、揺動ステージ260は、複数の抽出容器210をそれぞれ収容する複数の収容開口268と、揺動ステージ260を揺動するための第1揺動軸262及び第2揺動軸264と、複数の抽出容器210の位置決め突起212aを収容する複数の位置決め凹部266とを有する。揺動ステージ260の下面には、複数のバルブ駆動モータ219が固定されている。揺動ステージの収容開口は、各抽出容器210の底面を下方に露出した状態で各抽出容器210を収容する。
【0031】
複数のガイドロッド269は、揺動ステージ260のコーナー部から下方に延びている。第1揺動軸262の一端は、基部202に形成した軸受けに揺動可能に支持され、揺動軸226と一体となって揺動する。第1揺動軸262の他端は、揺動ステージ260に固定される。第2揺動軸264の一端は、基部202に形成した軸受けに揺動可能に支持される。第2揺動軸264の他端は、揺動ステージ260に固定される。
【0032】
揺動体200Sは、駆動モータ支持部230及び揺動ステージ260の間で、磁石支持板240及び/又は温度調節ユニット支持板250をガイドロッド269に沿って昇降可能(z方向に移動可能)に保持している。なお、温度調節ユニット支持板250を昇降可能とせずに、温度調節ユニット支持板250をガイドロッド269に固定してもよい。
【0033】
温度調節ユニット支持板250は、温度調節ユニット251を備えている。温度調節ユニット251は、z方向に貫通する複数の貫通孔258を有する。温度調節ユニット251の加熱(温度調節)動作は、制御部700によって制御される。温度調節ユニット251は、ヒータ254またはペルチェ素子254とすることができる。ヒータ254は、温度調節ユニット支持板250の上側に配置されたシート状又は平板状の断熱材252と、断熱材252の上側に配置されたシート状又は平板状のヒータ254と、ヒータ254の上側に配置された平板状の熱伝導部(伝熱ブロック)256とから構成される。
【0034】
ペルチェ素子254は、下側吸放熱面(第2吸放熱面)252と上側吸放熱面(第1吸放熱面)256を備えており、制御部700によって、吸熱放熱の動作が制御される。温度調節ユニット251をペルチェ素子とした場合、温度調節ユニット支持板250は、下側吸放熱面252からの吸放熱を促進するように、複数の放熱口を設けるかヒートシンクを設けることができる。
【0035】
磁石支持板240は、z方向に延びる複数の磁石柱242を備えている。複数の磁石柱242の全体を磁石体と称することができる。複数の磁石柱242は、z方向において複数の貫通孔258と整合する位置に設けられている。複数の磁石柱242は、z方向において複数の貫通孔258に対して抜差し可能である。複数の貫通孔258及び複数の磁石柱242は、好ましくはマトリックス状に配置されている。複数の磁石柱242は、抽出容器210の底面から見て、好ましくは隣り合う磁石柱の極性が反転するように配置されている。
【0036】
駆動モータ支持部230は、図6(c)に示すように、磁石支持板240を昇降するための磁石昇降モータ248と、温度調節ユニット支持板251を昇降するための温度調節ユニット昇降モータ258とを支持している。磁石昇降モータ248及び温度調節ユニット昇降モータ258の動作は、制御部700によって制御される。
【0037】
磁石昇降モータ248の回転軸はねじ軸となっており、ねじ軸には磁石昇降部材249の下端の雌ねじ部が取り付けられて、ボールねじ機構を形成している。磁石昇降部材249の上端は磁石支持板240に固定されている。これによって、磁石昇降モータ248の回転軸の回転に伴って、磁石昇降部材249と共に磁石支持板240(複数の磁石柱242)が昇降する。磁石移動機構は、磁石昇降モータ248、磁石昇降部材249、及び磁石支持板240から構成される。
【0038】
温度調節ユニット昇降モータ258の回転軸はねじ軸となっており、このねじ軸には、温度調節ユニット昇降部材259の下端の雌ねじ部が取り付けられて、ボールねじ機構を形成している。温度調節ユニット昇降部材259の上端は温度調節ユニット支持板251に固定されている。これによって、温度調節ユニット昇降モータ258の回転軸の回転に伴って、温度調節ユニット昇降部材259と共に温度調節ユニット支持板251(ヒータ254)が昇降する。温度調節ユニット移動機構は、温度調節ユニット昇降モータ258、温度調節ユニット昇降部材259、及び温度調節ユニット支持板251から構成される。なお、温度調節ユニット移動機構を設けずに、温度調節ユニット251を抽出容器210の底面に接触した状態で固定配置することもできる。
【0039】
図7を用いて、温度調節ユニット251の昇降状態、及び複数の磁石柱242の昇降状態を説明する。図7(a)は、複数の磁石柱242が下降位置(非接触位置)にあり、温度調節ユニット251が上昇位置(接触位置)にある。図7(b)は、複数の磁石柱242が上昇位置にあり、温度調節ユニット251が下降位置にある。図7(c)は、複数の磁石柱242及び温度調節ユニット251が下降位置にある。
【0040】
図7(a)及び(c)に示すように、複数の磁石柱242が下降位置にある状態では、複数の磁石柱242の上端が抽出容器210の底平面から下方に離れており、複数の磁石柱242は抽出容器210の内部に磁力を及ぼさない。図7(b)に示すように、複数の磁石柱242が上昇位置にある状態では、複数の磁石柱242の上端が抽出容器210の底平面に接しており、複数の磁石柱242は抽出容器210の内部に磁力を及ぼしている。
【0041】
図7(a)に示すように、温度調節ユニット251が上昇位置にある状態では、温度調節ユニット251の上面が抽出容器210の底平面に当接しており、温度調節ユニット251が抽出容器210を加熱又は冷却可能となる。図7(b)及び(c)に示すように、温度調節ユニット251が下降位置にある状態では、温度調節ユニット251の上面が抽出容器210の底平面から下方に離れており、温度調節ユニット251が抽出容器210を加熱又は冷却しない。
【0042】
このように、複数の磁石柱242(磁石支持板240)及び温度調節ユニット251(温度調節ユニット支持板250)は互いに独立して昇降可能であるため、制御部700は、次の(1)~(3)状態を迅速に切り替えることができる。
(1)図7(a)に示す、抽出容器210を加熱又は冷却しつつ抽出容器210に磁力を及ぼさない状態、
(2)図7(b)に示す、抽出容器210に磁力を及ぼしつつ抽出容器210を加熱又は冷却しない状態、
(3)図7(c)に示す、抽出容器210を加熱又は冷却せず抽出容器210に磁力を及ぼさない状態
(4)図示していないが、抽出容器210に磁力を及ぼしつつ抽出容器210を加熱又は冷却する状態
【0043】
図8は、揺動体200Sの揺動状態を示している。揺動体200Sは、x方向に延びる揺動軸226の周囲を揺動機構220によって、図8(a)及び(b)の配置を揺動する。また、図8(a)は、抽出容器210からの廃液配置を示し、図8(b)は、抽出容器210からの採取配置を示している。図8(a)の廃液配置では、抽出容器210の廃液チューブ216a側は、下方に位置しており、バルブ218(後述するバルブ218A又は218B)を開状態とすれば、抽出容器210から廃液することができる。図8(b)の採取配置では、抽出容器210の採取チューブ216b側は、下方に位置しており、バルブ218(後述するバルブ218A又は218B)を開状態とすれば、抽出容器210から第2抽出液を第2抽出液容器201(図1)に落下移送して採取することができる。
【0044】
[抽出容器の第1変形例]
第1の実施形態に係る抽出容器の第1変形例を図9乃至11を用いて説明する。第1変形例に係る抽出容器210Aは、図2の抽出容器210のピンチバルブ(一対の挟持体)218に代えて、二方向バルブ218Aを廃液チューブ216a及び採取チューブ216bに備えている。二方向バルブ218Aは、バルブ駆動モータ219によって開閉される。
【0045】
[抽出容器の第2変形例]
第1の実施形態に係る抽出容器の第2変形例を図12乃至14を用いて説明する。第2変形例に係る抽出容器210Bは、図2の抽出容器210のピンチバルブ(一対の挟持体)218に代えて、スライドバルブ218Bを廃液管路及び採取管路に備えている。スライドバルブ218Bは、x方向にそってスライドすることにより、廃液管路及び採取管路を開閉する。抽出容器212の上面を覆うラミネート(アルミ)シール(蓋体)214を備え、ラミネートシール214の中央付近には、穿孔用目標ラベル214Baが形成されており、穿孔具により分注口が形成される。
【0046】
容器本体212は、廃液側及び採取側のスライドバルブ218Bをx方向にスライド可能に収容する凹部217Bを備えている。スライドバルブ218Bは、y方向に貫通するスライド貫通孔218B1を備えている。容器本体212と、各凹部217Bの間には、シール部材216Bcが配置され、シール部材216Bcはy方向に貫通する貫通孔を備える。採取側凹部217Bの外側には、第2抽出液容器201が一体成型されている。採取側凹部217Bと第2抽出液容器201との間には、シール部材216Bcが配置され、シール部材216Bcはy方向に貫通する貫通孔を備える。廃液側凹部217Bの外側には、y方向に延びる管路を備えるジョイント216Baが配置されている。ジョイント216Baの外側端は可撓性の廃液チューブ216aに接続される。
【0047】
図15(a)は、廃液側及び採取側のスライドバルブ218Bが開状態にあることを示し、図15(b)は、廃液側及び採取側のスライドバルブ218Bが閉状態にあることを示している。各スライドバルブ218Bは、下面に設けられた一対の突起が駆動モータ219で移動することにより、開状態及び閉状態が切り替えられる。制御部700は、廃液側のスライドバルブ218Bの駆動モータ219、及び採取側のスライドバルブ218Bの駆動モータ219をそれぞれ独立して制御する。
【0048】
スライドバルブ218Bは、好ましくは弾力性のあるシリコーンゴムで成形し、凹部217Bに圧入することにより、簡単な構造で容器本体212との密着性を高めることが可能となる。スライドバルブ218Bはz方向に形成した2つの孔を底面に有し、2つの穴に凹部217Bの下方からピン(突起)2本を挿入されている。これらのピンを駆動モータ219によって同時に開(または閉)方向へ動かすことで、スライドバルブ218B動作時の変形(圧縮・伸張)による摺動抵抗の増加やリークの発生を防ぐことが可能となる。
【0049】
スライドバルブ218B周辺の部品(パッド215、ラミネート(アルミ)シール214、ジョイント216Ba)は容器本体212と同じポリプロピレンとすることができる。ラミネートシール214と容器本体212との接触面を、溶着して一体化することでシール接合面からの液漏れを防ぐことが可能となる。
【0050】
[処理システムによる抽出処理]
第1の実施形態の処理システム1000は、比較的大量(5~10ml)の全血等の複数の検体から、複数の第1抽出液(肝臓及び脳由来のトランフェリンの混合液)を分離するために、次の各工程が実行される。
【0051】
初めに、第1抽出液の抽出工程が実行される。第1抽出液の抽出工程において、処理システム1000の制御部700は、複数の第1カートリッジ302の上方でy方向にノズル部500の複数の分注ノズル502を移動させる。次いで、特許文献2の方法にしたがって、第1抗体固定磁性ビーズとレクチンの結合を用いて、複数の分注ノズル502による吸引吐出を行って、全血等の複数の検体から複数の第1抽出液(トランフェリン)を分離する。第1抽出液に含まれるトランフェリン等の糖タンパク質は、糖鎖が相違するタンパク質を含んでいる。複数の第1抽出液は、複数の第1抽出液ウェルにそれぞれ保持される。
【0052】
第1抽出液から第2抽出液を抽出するための準備工程が実行される。準備工程において、制御部700は、複数の第1抽出液ウェル内の第1抽出液を、複数の分注ノズル502を用いて、複数の抽出容器210に移送する。複数の分注ノズル502は、複数の第1抽出液を複数の抽出容器210のそれぞれの分注口214aを介して分注チップ502aから複数の抽出容器210内に分注する。
【0053】
さらに、準備工程において、制御部700は、複数の第2カートリッジ304のぞれぞれに保持された、レクチンが固定されたレクチン固定磁性ビーズLMB、各種溶液、及び各種試薬等を、所定の手順で、複数の分注ノズル502を用いて複数の抽出容器210内に移送する。なお、レクチンLは、例えば、特許文献1に記載されるように、脳由来のトランスフェリンTRと特異的に結合するレクチンを用いることができる。
【0054】
次に揺動工程が実行される。揺動工程において、各抽出容器210内に、レクチンが固定された磁性ビーズと、複数の第1抽出液とが収容された状態で、図8に示すように、制御部700は、抽出装置200の揺動体200Sを穏やかな所定の揺動条件で揺動させる。穏やかな所定の揺動条件とは、分注ノズルによる吸引吐出に比較して溶液に加わる圧力が低いことを意味する。穏やかな所定の揺動条件は、実施例で後述する。揺動条件は、次の揺動角度、揺動周期、及び/又は揺動時間から構成される。揺動体200Sの揺動角度は、水平方向に対して好ましくは±45度の範囲、より好ましくは±30度の範囲とすることができる。揺動体200Sの揺動周期は、好ましくは5乃至30秒、より好ましくは3乃至10秒とすることができる。これらの揺動角度及び揺動周期は、任意に組合せることができる。また、揺動時間は、複数回の揺動周期から構成される。
【0055】
第1の実施形態において、図8に示した揺動体200Sを揺動する際、図7(a)に示すように、制御部700は、複数の磁石柱242が降下し温度調節ユニット251が上昇した揺動用配置とする。
【0056】
揺動用配置において、抽出容器210内に磁力は及ぼされず、抽出容器210内は冷却される。温度調節ユニット251(ペルチェ素子)による抽出容器210の冷却温度は、2~8℃の範囲とすることができ、より好ましくば3~5℃とすることができ、さらに好ましくは約4℃とすることができる。なお、図23に示したように脳由来のトランスフェリンTRとレクチンL(レクチン固定磁性ビーズLMB)とは、このような冷却温度において、比較的弱いアフィニティで結合することができる。
【0057】
揺動体200Sの揺動を、前記揺動条件、揺動用配置、及び冷却温度で実行すると、図23に示すように脳由来のトランスフェリンTRがレクチン固定磁性ビーズLMBと比較的弱いアフィニティで結合する一方、溶液中に肝臓由来のトランスフェリンが溶液中に遊離した遊離状態となる。この遊離状態で、第1の実施形態において、制御部700は、揺動体200Sの揺動を水平位置で停止し、図7(b)に示すように、温度調節ユニット251を下降状態とする一方、複数の磁石柱242を上昇した磁性ビーズ吸着用配置とする。
【0058】
次に、廃液工程が実行される。第1の実施形態の廃液工程において、図7(b)の磁性ビーズ吸着用配置を維持したまま、制御部700は、図8(a)に示すように、廃液チューブ216aが下方に位置するように、揺動体200Sを所定角度(例えば45~90度)傾けて、バルブ駆動モータ219を用いて廃液バルブ(ピンチバルブ(一対の挟持体)218、二方向バルブ218A、またはスライドバルブ218B)を開放すると、抽出容器210の内底面に、脳由来のトランスフェリンが結合したレクチン固定磁性ビーズLMBが磁力で吸着される一方、肝臓由来のトランスフェリンが遊離した溶液は、抽出容器210内から廃液チューブ216aを通って流出し、廃液槽600に落下移送される。
【0059】
廃液工程が実行された後、制御部700は、揺動体200Sを水平状態に戻す。制御部700は、さらに肝臓由来のトランスフェリンを洗浄するために、洗浄液を分注口214aから分注した後、揺動工程及び廃液工程が順に実行される。
【0060】
次に、レクチン分離工程が実行される。第1の実施形態のレクチン分離工程において、制御部700は、揺動体200Sを水平状態に戻して、図7(a)に示すように、温度調節ユニット251を上昇状態とし、複数の磁石柱242を下降状態としたレクチン分離用配置とする。
【0061】
制御部700は、レクチン分離用配置の状態で、温度調節ユニット251を用いて抽出容器210内を所定温度となるように制御しつつ、揺動体200Sの揺動を実行する。抽出容器210内の溶液が所定温度に制御されると、レクチン及び/又は脳由来のトランスフェリンの三次元構造が変化することにより、レクチン固定磁性ビーズと脳由来のトランスフェリンとが分離する。
【0062】
レクチン分離工程が終了すると、トランスフェリン回収工程が実行される。第1の実施形態のトランスフェリン回収工程において、図7(b)の磁性ビーズ吸着用配置を維持したまま、制御部700は、図8(b)に示すように、採取チューブ216bが下方に位置するように揺動体200Sを所定角度(例えば45~90度)傾けて、バルブ駆動モータ219を用いて採取バルブ(ピンチバルブ(一対の挟持体)218、二方向バルブ218A、またはスライドバルブ218B)を開放すると、抽出容器210の内底面に、脳由来のトランスフェリンと結合していないレクチン固定磁性ビーズが磁力で吸着される一方、脳由来のトランスフェリンを含む溶液(第2抽出液)は、抽出容器210内から流出し、第2抽出液容器201に落下移送される。
【0063】
制御部700は、複数の分注チップ502aに吸引された第2抽出液を、複数の測定用ウェル402に移動する。複数の測定用ウェル402に第3カートリッジ306から検出用試薬を分注する。検出用試薬は、化学発光又は蛍光用物質が固定されると共にタンパク質(トランスフェリン)を結合する第2抗体とすることができる。その後、制御部700は、検出機構400の検出器(PMT等)406を用いて、複数の測定用ウェル402内で、第2抽出液中の脳由来のトランスフェリンの検出又は定量を実行する。
【0064】
(第2の実施形態)
[抽出装置]
第2の実施形態に係る抽出装置200Aを図16及び図16Aを用いて説明する。抽出装置200Aは、基部(ハウジング)202に対して揺動軸226を中心に揺動可能に支持された揺動体200SAを備えている。揺動体200SAは、第1の実施形態の揺動機構220と同等の揺動機構220を備えている。揺動体200SAは、カバー203と、複数の抽出容器210を温度調節可能に支持する温度調節ユニット(加熱ブロック)270と、温度調節ユニット270と一体となって揺動する一対の弧状体229を備える。複数の抽出容器210Aは、図1、16、及び16Aに示すように、x方向にそって配置されている。
【0065】
揺動体200SAは、図16A及び図17に示すように、(a)水平状態、(b)第1の傾斜状態(反時計方向に回転した状態)、(c)第2の傾斜状態(時計方向に回転した状態)を取ることができる。揺動体200SAは、さらに揺動軸226と共に回転する揺動歯車(外歯車)226gを備える。揺動歯車226gは、弧状体229の内曲面に設けられた内歯車229gと噛み合っている。弧状体229の外曲面は、基部202に回転可能に支持された複数の支持ローラ204によって支持されている。
【0066】
揺動機構220が動作すると、揺動軸226と共に揺動歯車226gが回転し、揺動歯車226gと噛み合っている弧状体229の内歯車229gが回転することにより、揺動体200SAが図16A及び図17の(a)から(b)の状態、及び(a)から(c)の状態に回動する。
【0067】
[磁石移動機構]
第2の実施形態に係る磁石移動機構280を図18を用いて説明する。磁石移動機構280は、揺動体200SAに設けられており、揺動体200SAと一体となって揺動する。磁石移動機構280は、板状の磁石体282を支持する磁石支持体284と、磁石体282及び磁石支持体284を反応容器210Aの傾斜平面部212A2の外面に対して移動するリンク機構286と、リンク機構286を駆動する磁石移動用モータ288とから構成される。
【0068】
図18(a)は、磁石体282が反応容器210Aの傾斜平面部212A2に接触した状態を示す。図18(b)は、磁石体282が反応容器210Aの傾斜平面部212A2から分離した状態を示す。図18(c)は、図18(a)の状態の断面図を示す。磁石移動機構280は、(a)及び(b)の状態の間で、磁石体282を矢印方向に移動することができる。
【0069】
[温度調節ユニット]
第2の実施形態に係る温度調節ユニット270を図19を用いて説明する。温度調節ユニット270は、金属製本体(熱伝導部)271と、金属製本体271の外表面に設けられた温度調節体(シート状の加熱体又はペルチェ素子)272と、複数の磁石体282を移動可能に収容するために金属製本体271の下面側に設けられた複数の開口部274と、複数の抽出容器210Aを収容するために金属製本体271の上面側に設けられた複数の容器収容部276と、金属製本体271の外表面に設けられた温度センサ278とから構成される。図18(c)に示すように、金属製本体271は、温度調節体272と容器本体212Aとの間に配置される。温度調節体272がペルチェ素子である場合、ペルチェ素子は、金属製本体271を介して抽出容器210Aの容器本体212Aに接触可能な第1吸放熱面と、抽出容器212Aの容器本体212Aに接触しない第2吸放熱面とを備える。
【0070】
[抽出容器]
第2の実施形態に係る抽出容器210Aを図20~23を用いて説明する。抽出容器210Aは、分注ノズル502から分注された第1抽出液を収容する容器本体212Aと、容器本体212Aの上面に固定される蓋体214Aとから構成される。蓋体214Aは、長方形状板であり、その中央部分(対角線の交点付近)に、蓋体214Aの長手方向に延びる細長い分注口(スリット)214Aaが形成されている。図20(b)に示すように、分注ノズル502に取付けた分注チップ502aは、分注口214Aaを介して抽出容器210Aの内部に挿入される。挿入された分注チップ502aは、抽出容器210Aの内部に、第1抽出液、各種試薬、及び/又は各種試薬を分注する。さらに、挿入された分注口214Aaは、抽出容器210Aの内部から、廃液及び/又は第2抽出液を吸引する。細長い分注口214Aaは、好ましくは揺動軸226の軸線(x方向)に垂直な方向(y方向)に延びている。なお、細長い分注口214Aaに代えて、円形の分注口とすることもできる。円形の分注口は、細長い分注口214Aaの長手方向の長さと同じ長さを直径とすることができる。例えば、円形の分注口は、容器本体212A内のx方向幅と同じ長さとすることができる。
【0071】
図21に示すように、容器本体212Aの底面は、y方向に対して傾斜した傾斜平面部212A2と、傾斜平面部212A2の下端に接続される最下部212A1とを備える。最下部212A1の周囲は、最下部に向かって傾斜している(図21(c))。最下部212A1は、水平状態で抽出容器210A(分注口214Aa)の中心からy方向にずれた位置に形成されているため、抽出容器210Aの内部の溶液は、揺動体200SAの回転移動に伴い、図22(a)~(c)に示したように移動する。図22は、容器本体210Aの傾斜平面部212A2に磁石体282が接触した状態を示している。図22において、(a)は、抽出容器210Aの蓋体214Aが水平な状態を示し、(b)は、抽出容器210Aが反時計方向に回動した状態を示し、(c)は、抽出容器210Aが時計方向に回動した状態を示す。
【0072】
図22(a)~(c)のいずれの状態であっても、分注口214Aaがy方向に細長い孔又は十分に大きな孔であるため、分注ノズル502の分注チップ502aを抽出容器210A内に挿入することができる。図22(b)に示すように、抽出容器210Aを回動すると、傾斜平面212A2の傾斜角度が大きくなり、最下部212A1に抽出容器210Aの溶液が集中する。これによって、分注ノズル502の分注チップ502aを用いて、抽出容器210Aの最下部212A1からより多くの溶液を無駄なく吸引できる。
【0073】
[処理システムによる抽出処理]
第2の実施形態の処理システム1000は、比較的大量(5~10ml)の全血等の複数の検体から、複数の第1抽出液(肝臓及び脳由来のトランフェリンの混合液)を分離するために、次の各工程が実行される。
【0074】
初めに、第1抽出液の抽出工程が実行される。第1抽出液の抽出工程において、処理システム1000の制御部700は、複数の第1カートリッジ302の上方でy方向にノズル部500の複数の分注ノズル502を移動させる。次いで、特許文献2の方法にしたがって、第1抗体固定磁性ビーズとレクチンの結合を用いて、複数の分注ノズル502の分注チップ502aによる吸引吐出を行って、全血等の複数の検体から複数の第1抽出液(トランフェリン等)を分離する。第1抽出液に含まれるトランフェリン等の糖タンパク質は、糖鎖が相違するタンパク質を含んでいる。複数の第1抽出液は、複数の第1抽出液ウェルにそれぞれ保持される。
【0075】
第1抽出液から第2抽出液を抽出するための準備工程が実行される。準備工程において、制御部700は、複数の第1抽出液ウェル内の第1抽出液を、複数の分注ノズル502を用いて、複数の抽出容器210Aに移送する。具体的には、複数の分注ノズル502の複数の分注チップ502aは、複数の抽出容器210Aのそれぞれの分注口214Aaを介して、複数の抽出容器210A内に複数の第1抽出液を分注する。
【0076】
さらに、準備工程において、制御部700は、複数の第2カートリッジ304のぞれぞれに保持された、レクチン固定磁性ビーズLMB、各種溶液、及び各種試薬等を、所定の手順で、複数の分注ノズル502の分注チップ502aを用いて複数の抽出容器210A内に移送する。なお、レクチンは、例えば、特許文献1に記載されるように、脳由来トランスフェリンと特異的に結合するレクチンを用いることができる。
【0077】
次に揺動工程が実行される。揺動工程において、各抽出容器210A内に、レクチンが固定された磁性ビーズと、複数の第1抽出液とが収容された状態で、図16A及び図17に示すように、制御部700は、抽出装置200Aの揺動体200SAを穏やかな所定の揺動条件で揺動させる。穏やかな所定の揺動条件とは、分注ノズルによる吸引吐出に比較して溶液に加わる圧力が低いことを意味する。穏やかな所定の揺動条件は、実施例で後述する。揺動条件は、次の揺動角度、揺動周期、及び/又は揺動時間から構成される。揺動体200Sの揺動角度は、水平方向に対して好ましくは±45度の範囲、より好ましくは±30度の範囲とすることができる。揺動体200Sの揺動周期は、好ましくは5乃至30秒、より好ましくは3乃至10秒とすることができる。これらの揺動角度及び揺動周期は、任意に組合せることができる。また、揺動時間は、複数回の揺動周期から構成される。
【0078】
揺動用配置において、抽出容器210A内に磁力は及ぼされず、抽出容器210A及びはペルチェ素子272(図18(c))及び/冷却ファン290(図17)等を用いて冷却される。ペルチェ素子272及び/又は冷却ファン290による抽出容器210Aの冷却温度は、2~8℃の範囲とすることができ、より好ましくば3~5℃とすることができ、さらに好ましくは約4℃とすることができる。なお、図23に示すように、脳由来のトランスフェリンTRとレクチンL(レクチン固定磁性ビーズLMB)とは、このような冷却温度において、比較的弱いアフィニティで結合することができる。
【0079】
揺動体200SAの揺動を、前記揺動条件、揺動用配置、及び冷却温度で実行すると、脳由来のトランスフェリンTRがレクチン固定磁性ビーズLMBと比較的弱いアフィニティで結合する一方、溶液中に肝臓由来のトランスフェリンが溶液中に遊離した遊離状態となる。この遊離状態で、この遊離状態で、第2の実施形態において、制御部700は、揺動体200SAの揺動を水平位置で停止し、図18(a)に示すように、磁石体282を上昇した磁性ビーズ吸着用配置とする。
【0080】
次に、廃液工程が実行される。第2の実施形態の廃液工程において、図18(a)の磁性ビーズ吸着用配置を維持したまま、制御部700は、図22(b)に示す状態に抽出容器210Aを傾斜させる。図22(b)の状態で、抽出容器210Aの傾斜平面部212A2の内面に、脳由来のトランスフェリンTRが結合したレクチン固定磁性ビーズLMBが磁力で吸着される一方、抽出容器210A内の溶液は、分注口214Aaから挿入された分注チップ502aを用いて分注ノズル502によって吸引される。分注チップ502aに吸引された状態の溶液は、廃液槽600の開口600Aに吐出される。
【0081】
廃液工程が実行された後、制御部700は、揺動体200SAを水平状態(図22(a))に戻す。制御部700は、さらに肝臓由来のトランスフェリンを洗浄するために、洗浄液を分注口214Aaから分注した後、揺動工程及び廃液工程が順に実行される。
【0082】
次に、レクチン分離工程が実行される。第2の実施形態のレクチン分離工程において、制御部700は、揺動体200SAを水平状態に戻して、図18(b)に示すように、磁石体282を傾斜平面部212Aaから離れるように移動したレクチン分離用配置とする。
【0083】
制御部700は、レクチン分離用配置の状態で、温度調節ユニット270及び/又は冷却ファン290により抽出容器210A内を所定温度となるように制御しつつ、揺動体200SAの揺動を実行する。抽出容器210A内の溶液が所定温度に制御されると、レクチン及び/又は脳由来のトランスフェリンTRの三次元構造が変化することにより、レクチン固定磁性ビーズMLBと脳由来のトランスフェリンとが分離する。
【0084】
レクチン分離工程が終了すると、トランスフェリン回収工程が実行される。第2の実施形態のトランスフェリン回収工程において、図18(a)の磁性ビーズ吸着用配置を維持したまま、制御部700は、図22(b)の状態に抽出容器210Aを傾けると、抽出容器210Aの傾斜平面部212A2の内面に、脳由来のトランスフェリンと結合していないレクチン固定磁性ビーズLMBが磁力で吸着される一方、脳由来のトランスフェリンを含む溶液(第2抽出液)は、最下部212A1から、分注ノズル502に装着された分注チップ502aを用いて吸引される。
【0085】
制御部700は、ノズル部500を移動することにより、複数の分注ノズル502の複数の分注チップ502aに吸引された第2抽出液を、複数の測定用ウェル402に移動する。複数の測定用ウェル402に第3カートリッジ306から検出用試薬を分注する。検出用試薬は、化学発光又は蛍光用物質が固定されると共にタンパク質(トランスフェリン)を結合する第2抗体とすることができる。その後、制御部700は、検出機構400の検出器(PMT等)406を用いて、複数の測定用ウェル402内で、第2抽出液中の脳由来のトランスフェリンの検出又は定量を実行する。
【0086】
[レクチン固定磁性ビーズ]
第1及び第2の実施形態に用いるレクチン固定磁性ビーズLMBを用いた、脳由来のトランスフェリンTRの捕捉を説明する。図23に示すように、レクチン固定磁性ビーズLMBの表面には、脳由来のトランスフェリンTRと特異的に結合するレクチンLが固定されている。トランスフェリンTRは、糖タンパク質であり、タンパク質Pから延びる糖鎖Gを備えている。冷却温度(例えば約4℃)で、糖鎖GにレクチンLが弱いアフィニティで結合することにより、レクチン固定磁性ビーズLMBを用いてトランスフェリンTRを捕捉することができる。
【0087】
(温度調節ユニットの変形例)
第1の実施形態において、温度調節ユニット251は、揺動体200Sと一体となって回動すると共に、容器本体212の底部に接触して抽出容器210内部を加熱又は冷却するように構成した。第2の実施形態において、温度調節ユニット270は、揺動体200SAと一体となって回動すると共に、容器本体212Aの傾斜平面部(底面)212A2に接触して抽出容器210A内部を加熱又は冷却するように構成した。これに対して、変形例に係る温度調節ユニットは、揺動体200S又200SAと一体となって回動せず、抽出装置200又は200Aの基部(ハウジング)202内に、又はシステム1000の基部(ハウジング)100内に、設けた1つ又は複数の空気調和機(エアコンディショナー)とすることができる。温度調節ユニットを揺動体側に設けず、基部側に設けることにより、揺動体200S又は200SAが軽量化され揺動機構の構造が簡略化される。
【実施例
【0088】
第1及び第2の実施形態に係るノズル部500及び揺動体200S又は200SAの処理プロセスを、例示的に表1に示している。表1の処理プロセスは、予め制御部700で実行される制御プログラムにしたがって実行される。処理プロセスを規定する揺動パラメータは、表1に示すように、抽出容器200又は200Aの傾斜角度(蓋体214又は214Aの傾斜角度)と、この傾斜角度の傾斜速度と、この傾斜角度の加速度、この傾斜角度の減速度、各ステップの繰り返し回数又は時間、繰り返しの間の待ち時間とから規定される。
【0089】
【表1】
【0090】
第1及び第2の実施形態で言及した「穏やかな所定の揺動条件」は、例示的に、表1のステップ2に規定されている。ステップ2の揺動条件は次の通り所定範囲で変更可能である。ステップ2の傾斜角度は、容器本体(蓋体)の水平状態(図11図16図22(a))に対して、±15°から±25°の角度範囲で定めることができる。ステップ2の傾斜速度は0.8°/秒から1.2°/秒の速度範囲で定めることができる。ステップ2の加速度又は減速度は0.03°/秒から0.06°/秒の範囲で定めることができる。ステップ2の繰り返し回数は、7回から13回の範囲で定めることができる。ステップ2の繰り返しの間の待ち時間は、1.0秒から3.0秒の範囲で定めることができる。各揺動パラメータは、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
1000 処理システム
100 基部
200 抽出装置
200S 揺動体
210 抽出容器
214a 分注口
216a 廃液用管路
216b 採取用管路
220 揺動機構
242 磁石柱
251 温度調節ユニット
400 検出機構
500 ノズル部
502 分注ノズル
200A 抽出装置
200SA 揺動体
210A 抽出容器
270 温度調節ユニット(加熱ブロック)
280 磁石移動機構
282 磁石体
図1
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図2
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