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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/14 20060101AFI20250402BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20250402BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C07D263/14 CSP
C09K3/00 104
G02B5/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020154466
(22)【出願日】2020-09-15
(65)【公開番号】P2022048579
(43)【公開日】2022-03-28
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000179306
【氏名又は名称】山田化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】青木 陽
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194508(JP,A)
【文献】特開平03-063642(JP,A)
【文献】特開昭53-134431(JP,A)
【文献】特表2013-522259(JP,A)
【文献】特開昭53-97425(JP,A)
【文献】特表2008-509906(JP,A)
【文献】国際公開第2011/030927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 263/08-263/28
C09K 3/00
G02B 5/20- 5/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物。
【化1】
(一般式(1)中、R1a及びR2aは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基示し、
3aは、水素原子、フェニル基を有していてもよい、炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、は一般式(2)で示される基を示し、
4aシアノ基示し、
5aは、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を有していてもよい、シクロヘキシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基、又は一般式(3)で示される基を示
【化2】
(一般式(2)中、L1aは、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖アルキル基から1個の水素原子が脱離した基示し
1aは、一般式(4)で示される基を示す。
*は、一般式(1)中の窒素原子との結合部位を示す。)
【化3】
(一般式(4)中、R1b及びR2bは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基示し、
4bシアノ基示し、
5bは、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有していてもよい、シクロヘキシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基を示
*は、一般式(2)中のL1aとの結合部位を示す。)
【化4】
(一般式(3)中、L2aは、シクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基又は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基から1個の水素原子が脱離した基示し
2a一般式(5)で示される基を示す。
*は、一般式(1)中の酸素原子との結合部位を示す。)
【化5】
(一般式(5)中、R1c及びR2cは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基示し、
3cは、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖アルキル基示し、
4cシアノ基
*は、一般式(3)中のL2aとの結合部位を示す。))
【請求項2】
一般式(1)におけるR1a及びR2aが、互いに独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、
3a は、メチル基、エチル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基又は一般式(2)で示される基を示し、
5a、メチル基若しくはtert-ブチル基を有していてもよいシクロヘキシル基ノルボルニル基又はアダマンチル基又は一般式(3)で示される基を示し、
一般式(2)において、L 1a は、炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖アルキル基から1個の水素原子が脱離した基を表し、
一般式(4)において、R 1b 及びR 2b は、互いに独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示し、R 5b は、メチル基若しくはtert-ブチル基を有していてもよい、シクロヘキシル基、ノルボルニル基又はアダマンチル基を示し、
一般式(5)においてR1c及びR2cが、互いに独立に、水素原子、メチル基又はエチル基を示し3c 炭素数1~の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す請求項に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)におけるR 1a 及びR 2a が、メチル基を示し、
3a は、メチル基、フェニルメチル基又は一般式(2)で示される基を示し、
5a が、シクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基、1-若しくは2-アダマンチル基、イソボルニル基又は一般式(3)で示される基を示し、
一般式(2)において、L 1a は、炭素数1~8の直鎖アルキル基から1個の水素原子が脱離した基を表し、
一般式(4)において、R 1b 及びR 2b は、メチル基を示し、R 5b は、シクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基又は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基を示し、
一般式(5)においてR 1c 及びR 2c が、メチル基を示し、R 3c がメチル基又はエチル基を示す、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の化合物を含むことを特徴とする紫外線吸収剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収剤として使用可能な化合物、該化合物を含む光学フィルタ及び紫外線吸収剤に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線は強いエネルギーをもっており、例えば網膜にダメージを与えて眼疾患の原因となる場合がある。また紫外線は、皮膚にもダメージを与えることが知られている。このため紫外線吸収剤として使用可能な化合物が求められている。特許文献1には紫外~紫色領域に吸収ピークを示すエチレン化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-14707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
照明装置、ディスプレイ装置等から発せられる光や、自然光から特定の波長の光をカットするために光学フィルタが使用されている。光学フィルタやこれを用いた各種器具、装置などは、温度が高い環境下で使用されることがある。また、光学フィルタ等の製造においては、高温での混錬や、熱処理等が行われる場合がある。このため、耐熱性が良好な紫外線吸収剤の開発が望まれている。また、光学フィルタ等に紫外線吸収剤を配合する場合、着色を抑制するために、可視光領域の吸収が少ない紫外線吸収剤が望まれる。また、紫外線吸収剤の紫外線の吸光度が小さいと、紫外線を効果的に低減するためにその添加量を多くする必要があることから、紫外線領域において吸光度が大きい化合物が望まれる。特許文献1の化合物は紫外~紫色領域に吸収ピークを示すが、紫外線領域の光をより効率的に吸収でき、かつ、可視光領域の吸収がより少ないものとするための改善の余地があった。
【0005】
本発明は、耐熱性が良好であり、紫外線、特に370~380nmの波長領域の光を効率的に吸収し、かつ、可視光領域の吸収が少ない化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究したところ、下記一般式(1)で示される化合物が、耐熱性が良好であるうえに、370~380nmの波長領域に吸収極大を有し、吸光度が大きいためこの波長の光を効率的に吸収することができ、かつ、可視光領域の吸収が少ないことを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(1)中、R1a及びR2aは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
3aは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6a-、-CONR6a-、-NR6aCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基又は一般式(2)で示される基を示し、
4aは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7a基、-CO7a基、-CONR7a7aa基又は-SO7a基を示し、
5aは、置換基を有していてもよい環状アルキル基又は一般式(3)で示される基を示し、
6aは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
7a及びR7aaは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0010】
【化2】
【0011】
(一般式(2)中、L1aは、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基から1個の水素原子が脱離した基又は前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6b-、-CONR6b-、-NR6bCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基から1個の水素原子が脱離した基を示し、R6bは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
1aは、一般式(4)で示される基を示す。
*は、一般式(1)中の窒素原子との結合部位を示す。)
【0012】
【化3】
【0013】
(一般式(4)中、R1b及びR2bは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
4bは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7b基、-CO7b基、-CONR7b7bb基又は-SO7b基を示し、
5bは、置換基を有していてもよい環状アルキル基を示し、
7b及びR7bbは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
*は、一般式(2)中のL1aとの結合部位を示す。)
【0014】
【化4】
【0015】
(一般式(3)中、L2aは、置換基を有していてもよい環状アルキル基から1個の水素原子が脱離した基又は上記環状アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6c、-CONR6c-、-NR6cCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基から1個の水素原子が脱離した基を示し、R6cは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
2aは、水素原子又は一般式(5)で示される基を示す。
*は、一般式(1)中の酸素原子との結合部位を示す。)
【0016】
【化5】
【0017】
(一般式(5)中、R1c及びR2cは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
3cは、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6d-、-CONR6d-、-NR6dCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基を示し、
4cは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7c基、-CO7c基、-CONR7c7cc基又はSO7c基を示し、
6dは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、
7c及びR7ccは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
*は、一般式(3)中のL2aとの結合部位を示す。))
【0018】
本発明においては、一般式(1)におけるR4aがシアノ基を示すことが好ましい。
本発明においては、一般式(1)におけるR1a及びR2aが、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、R5aが、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいノルボルニル基、置換基を有していてもよいアダマンチル基又は一般式(3)で示される基を示し、一般式(3)において、L2aが、置換基を有していてもよい環状アルキル基から1個の水素原子が脱離した基を示し、T2aが一般式(5)で示される基を示し、一般式(5)においてR1c及びR2cが、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示し、R4cがシアノ基を示し、R3cが水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示すことが好ましい。
【0019】
本発明の光学フィルタは、本発明の化合物を含むことを特徴とする。
本発明の紫外線吸収剤は、本発明の化合物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐熱性が良好であり、紫外線、特に370~380nmの波長領域の光を効率的に吸収し、かつ、可視光領域の吸収が少ない化合物を提供することができる。本発明の化合物は、紫外線吸収剤等として好適に使用することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の化合物は、下記一般式(1)で示される化合物である。下記一般式(1)で示される化合物を、本明細書中、化合物(1)ともいう。
【0022】
【化6】
【0023】
(一般式(1)中、R1a及びR2aは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R3aは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基、前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6a-、-CONR6a-、-NR6aCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基又は一般式(2)で示される基を示し、R4aは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7a基、-CO7a基、-CONR7a7aa基又は-SO7a基を示し、R5aは、置換基を有していてもよい環状アルキル基又は一般式(3)で示される基を示し、R6aは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R7a及びR7aaは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。
【0024】
【化7】
【0025】
(一般式(2)中、L1aは、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基から1個の水素原子が脱離した基又は前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6b-、-CONR6b-、-NR6bCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基から1個の水素原子が脱離した基を示し、R6bは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、T1aは、一般式(4)で示される基を示す。*は、一般式(1)中の窒素原子との結合部位を示す。)
【0026】
【化8】
【0027】
(一般式(4)中、R1b及びR2bは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R4bは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7b基、-CO7b基、-CONR7b7bb基又は-SO7b基を示し、R5bは、置換基を有していてもよい環状アルキル基を示し、R7b及びR7bbは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。*は、一般式(2)中のL1aとの結合部位を示す。)
【0028】
【化9】
【0029】
(一般式(3)中、L2aは、置換基を有していてもよい環状アルキル基から1個の水素原子が脱離した基又は上記環状アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6c、-CONR6c-、-NR6cCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基から1個の水素原子が脱離した基を示し、R6cは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、T2aは、水素原子又は一般式(5)で示される基を示す。*は、一般式(1)中の酸素原子との結合部位を示す。)
【0030】
【化10】
【0031】
(一般式(5)中、R1c及びR2cは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R3cは、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6d-、-CONR6d-、-NR6dCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基を示し、R4cは、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、-COR7c基、-CO7c基、-CONR7c7cc基又はSO7c基を示し、R6dは、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、R7c及びR7ccは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。*は、一般式(3)中のL2aとの結合部位を示す。))
【0032】
本発明において、置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基として、置換基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられる。本明細書中、置換基を有していてもよい基の炭素数は、置換基を含めた基全体の炭素数である。
直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-へプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基等の直鎖アルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、3-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1-エチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2-エチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,5,5-トリメチルペンチル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、1,1-ジメチルヘキシル基、1,1,3,3-テトラメチルブチル基、3,5,5-トリメチルヘキシル基、4-エチルオクチル基、4-エチル-4,5-ジメチルヘキシル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、4-ブチルオクチル基、6,6-ジエチルオクチル基、6-メチル-4-ブチルオクチル基、3,5-ジメチルヘプタデシル基、2,6-ジメチルヘプタデシル基、2,4-ジメチルヘプタデシル基、2,2,5,5-テトラメチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の環状アルキル基等が挙げられる。
【0033】
置換基を有していてもよい、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基における置換基は特に限定されず、例えば、炭素数6~10の単環又は多環の芳香環基(フェニル基、ナフチル基等)、炭素数1~8の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基、アミノ基、モノ-又はジ-アルキルアミノ基(アルキルの炭素数は1~8)、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基、炭素数2~10のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、トルオイル基、シンナモイル基、アニソイル基、ナフトイル基等)、炭素数2~10のアシルオキシ基、炭素数2~10のアルケニル基(例えば、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、ブテニル基、スチリル基等)等が挙げられる。
置換基を有していてもよい、環状のアルキル基における置換基として、例えば、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基等)も挙げられる。
アルキル基が置換基を有する場合において、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0034】
本発明において、置換基を有していてもよいアリール基として、置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基が挙げられる。アリール基としては特に限定されず、例えば、フェニル基等の単環の芳香族炭化水素基;ナフチル基、アントラセニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基等の多環の芳香族炭化水素基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基における置換基は特に限定されず、例えば、炭素数1~8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基、アミノ基、モノ-又はジ-アルキルアミノ基(アルキルの炭素数は1~8)、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、炭素数1~8のハロゲン化炭化水素基、カルボキシ基、炭素数1~8のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。好ましくは、炭素数1~8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基、ハロゲン原子である。
置換基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基として、例えば、アルキル基で置換されていてもよいフェニル基(例えば、フェニル基、3-メチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基等)等が好ましい。
アリール基が置換基を有する場合において、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
一般式(1)において、R1a及びR2aは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0036】
3aは、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又は一般式(2)で示される基であることが好ましい。
3aにおける置換基を有していてもよい、炭素数1~8の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基として、置換基を有していてもよい炭素数1~8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよいメチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基、エチル基、フェニルメチル基又はフェニルエチル基がさらに好ましく、メチル基又はフェニルメチル基が特に好ましい。R6aは、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい、炭素数6~20のアリール基を示すことが好ましい。
【0037】
一般式(2)において、L1aは、置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基から1個の水素原子が脱離した基又は前記アルキル基において、アルキル基を構成する-CH-の1以上が、不飽和結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-、-OCO-、-NR6b-、-CONR6b-、-NR6bCO-及びアリーレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種で置換された基から1個の水素原子が脱離した基を示すことが好ましい。R6bは、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい、炭素数6~20のアリール基を示すことが好ましい。L1aは、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~8)の直鎖又は分岐鎖のアルキル基から1個の水素原子が脱離した基であることがより好ましく、炭素数1~10の直鎖アルキル基から1個の水素原子が脱離した基であることがさらに好ましい。
【0038】
一般式(4)で示される基において、R1b及びR2bは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
7b及びR7bbは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい、炭素数6~20のアリール基を示すことが好ましい。
一般式(4)で示される基において、R4bは、シアノ基を示すことが好ましい。
【0039】
一般式(4)で示される基において、R5bは、置換基を有していてもよい炭素数6~20の環状アルキル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいシクロへキシル基、置換基を有していてもよいノルボルニル基、置換基を有していてもよいアダマンチル基等であることがより好ましく、シクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基等であることがさらに好ましい。
【0040】
一態様において、一般式(4)で示される基の一例として、下記式(4-1)又は式(4-2)で示される基が挙げられる。式(4-1)及び(4-2)中、*は、一般式(2)中のL1aとの結合部位を示す。一態様において、一般式(4)で示される基として、下記式(4-1)で示される基、下記式(4-2)で示される基が好ましい。
【0041】
【化11】
【0042】
一般式(1)中、R4aは、シアノ基を示すことが好ましい。R7a及びR7aaは、互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい、炭素数6~20のアリール基を示すことが好ましい。
【0043】
一般式(1)において、R5aにおける置換基を有していてもよい環状アルキル基として、置換基を有していてもよい炭素数6~20の環状アルキル基が好ましく、置換基を有していてもよいシクロへキシル基、置換基を有していてもよいノルボルニル基又は置換基を有していてもよいアダマンチル基であることがより好ましい。
一態様において、R5aは、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいノルボルニル基、置換基を有していてもよいアダマンチル基又は一般式(3)で示される基を示すことが好ましい。R5aにおける置換基を有していてもよい環状アルキル基として、シクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基、1-若しくは2-アダマンチル基、イソボルニル基がさらに好ましい。
【0044】
一般式(3)においては、L2aが、置換基を有していてもよい環状アルキル基から1個の水素原子が脱離した基を示すことが好ましい。一態様において、T2aは水素原子であることが好ましい。L2aにおける置換基を有していてもよい環状アルキル基は、より好ましくは、置換基を有していてもよいシクロペンチル基、置換基を有していてもよいシクロヘキシル基、置換基を有していてもよいシクロへプチル基、置換基を有していてもよいシクロオクチル基であり、さらに好ましくはシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基である。R6cは、水素原子、置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基、置換基を有していてもよい、炭素数6~20のアリール基を示すことが好ましい。
【0045】
一般式(5)においては、R1c及びR2cが、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示すことが好ましく、水素原子又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であることがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
3cは、水素原子又は炭素数1~8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示すことが好ましく、水素原子又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示すことがより好ましく、メチル基又はエチル基を示すことがさらに好ましい。R4cはシアノ基を示すことが好ましい。R6dは、水素原子、炭素数1~10の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示すことが好ましい。
【0046】
一態様において、一般式(5)で示される基として、下記式(5-1)で示される基が好ましい。式(5-1)中、*は、一般式(3)中のL2aとの結合部位を示す。
【0047】
【化12】
【0048】
本明細書中、一般式(1)、(4)、(5)等の式中の波線
【0049】
【化13】
【0050】
は、単結合であって、それが結合している二重結合についての立体配置が、E配置若しくはZ配置又はそれらの混合であることを示す。
【0051】
本発明の化合物の好ましい態様の一例として、一般式(1)において、R及びRがメチル基であり、Rがメチル基、フェニルメチル基、上記式(4-1)で示される基又は式(4-2)で示される基であり、Rがシアノ基であり、Rがシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基、1-若しくは2-アダマンチル基、イソボルニル基又は上記式(5-1)で示される基である化合物が挙げられる。このような化合物として、例えば、実施例に記載の化合物(1-1)~(1-10)等が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐光性に優れることから、Rがメチル基又は上記式(4-2)で示される基であり、Rが2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルシクロヘキシル基である化合物がより好ましい。
【0052】
本発明の化合物において幾何異性が存在する場合、本発明はその幾何異性体のいずれも包含する。また、本発明の化合物において1つ以上の不斉炭素原子が存在する場合、本発明は各々の不斉炭素原子がR配置の化合物、S配置の化合物及びそれらの任意の組み合せの化合物のいずれも包含する。またそれらのラセミ化合物、ラセミ混合物、単一のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物のいずれも本発明に包含される。
【0053】
本発明の化合物の製造方法について、以下に合成方法の一例を挙げて説明するが、本発明の化合物の製造方法は下記方法に限定されるものではない。また、後述の反応を行う際に、当該部位以外の官能基については、必要に応じてあらかじめ適当な保護基により保護しておき、適当な段階においてこれを脱保護してもよい。
【0054】
一般式(1)で示される化合物の製造方法は特に限定されず、周知一般の方法を利用した方法で得ることができる。例えば、下記に示す反応により、一般式(6a)で示される化合物(化合物(6a))及び一般式(7a)で示される化合物(化合物(7a))から化合物(1)を合成することができる。
【0055】
【化14】
【0056】
上記式中のR1a、R2a、R3a、R4a及びR5a並びにこれらの好ましい態様は、一般式(1)と同じである。Xは、1価のアニオンを示す。N(Ac)Phはアセトアニリド基を示す。以下も同じである。
【0057】
一般式(1)において、R3aが一般式(2)で示される基である化合物は、例えば、次に示す反応により、一般式(6b)で示される化合物(化合物(6b))、化合物(7a)及び一般式(7b)で示される化合物(化合物(7b))から合成することができる。下記一般式(1b)で示される化合物は、一般式(1)において、R3aが一般式(2)で示される基である化合物である。
【0058】
【化15】
【0059】
上記式中、R1a、R2a、R4a及びR5a並びにこれらの好ましい態様は、一般式(1)と同じである。L1a及びその好ましい態様は、一般式(2)と同じである。R1b、R2b、R4b及びR5b並びにこれらの好ましい態様は、一般式(4)と同じである。
及びXは、それぞれ独立して、1価のアニオンを示す。
【0060】
一般式(1)において、R5aが一般式(3)で示される基である化合物(下記一般式(1c)で示される化合物)は、例えば、次に示す反応により、化合物(6a)、一般式(6c)で示される化合物(化合物(6c))及び一般式(7c)で示される化合物(化合物(7c))から合成することができる。下記一般式(1c)で示される化合物は、一般式(1)において、R5aが一般式(3)で示される基である化合物の一例である。
【0061】
【化16】
【0062】
上記式中、R1a、R2a、R3a及びR4a並びにこれらの好ましい態様は、一般式(1)と同じである。L2a及びその好ましい態様は、一般式(3)と同じである。R1c、R2c、R3c及びR4c並びにこれらの好ましい態様は、一般式(5)と同じである。
及びXは、それぞれ独立して、1価のアニオンを示す。
【0063】
、X及びXにおける1価のアニオンとして、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;トシラートイオン等が挙げられる。
【0064】
上記の化合物(6a)、(6b)及び(6c)は、アルキルハライドと2,4,4-トリアルキルオキサゾリンを反応させてアルキル化した化合物を、ジフェニルホルムアミジンと反応させることにより得ることができる。化合物(7a)及び(7b)は、例えば、US6271410B1等に記載の方法で得ることができる。化合物(7c)は、例えば、Macromolecules,1992,25(22),pp6055-6058.等に記載の方法で得ることができる。
【0065】
化合物(6a)及び(7a)を反応させる条件、化合物(6b)、(7a)及び(7b)を反応させる条件、化合物(6a)、(6c)及び(7c)を反応させる条件などは特に限定されない。反応は、通常、塩基存在下で、溶媒中で行われる。塩基は特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩等の無機塩基;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)等の有機塩基等が挙げられる。
溶媒としては、該反応に対して不活性な溶媒であればよく、特に限定されない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、アセトン、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド、N-メチルモルホリン、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ピリジン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
反応の際の温度は、5~100℃とすることができ、10~50℃が好ましい。反応時間は、0.5~48時間とすることができ、1~24時間が好ましい。
【0066】
上記の製造方法における各生成物の単離や精製は、通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせて行うことができる。また、中間体においては、特に精製せずに次の反応に供することも可能である。
【0067】
本発明の化合物は、通常370~380nmに吸収極大波長(λmax)を有するものである。このため紫外線を効果的に吸収することができる。本発明の化合物の吸収極大波長は、例えば、上記化合物のクロロホルム溶液の吸収スペクトルを紫外可視分光光度計で測定することで得られる吸収極大ピークの波長として求めることができる。本発明の化合物は、吸収極大波長が375~380nmであることが好ましい。
【0068】
本発明の化合物は、クロロホルム溶液で測定したときの吸収極大波長におけるグラム吸光係数が100以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましい。吸収極大波長におけるグラム吸光係数が100以上であると、吸収極大波長付近の波長の光をより効果的に吸収することができる。グラム吸光係数は、実施例に記載の方法で求めることができる。
【0069】
本発明の化合物は、半値幅が20nm未満であることが好ましい。
本明細書中、半値幅とは、下記式で表される吸収スペクトルの急峻性を示す数値である。
半値幅=λ1/2-λmax
上記式中、λmaxは、クロロホルム溶液中の350~800nmにおける吸収極大波長を表し、λ1/2は、その波長における吸光度がλmaxにおける吸光度の1/2となり、かつ、λ1/2>λmaxである波長を表す。
上記の半値幅が小さいほど、吸収スペクトルが可視光線側で急峻となり、着色を抑制することができる。
上記半値幅が20nm未満であると、吸収極大波長付近の波長の光を選択的に吸収することができる。また、可視光領域の吸収が少ないことから、着色を効果的に抑制することができる。本発明の化合物は、上記半値幅が17nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましく、15nm未満であることが特に好ましい。
上記半値幅は、例えば、上記化合物のクロロホルム溶液の吸収スペクトルを紫外可視分光光度計で測定することで得られる吸収極大ピークから求めることができる。
【0070】
本発明の化合物は、有機溶媒に溶解する化合物であることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン等)、ケトン類(メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等)、エーテル類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、エステル類(例えば、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル等)及びこれらの2種以上の混合溶媒が挙げられる。
本発明の化合物は、上記有機溶媒の少なくとも1種に対し、0.1重量%以上溶解することが好ましく、例えば、0.1重量%以上50重量%以下溶解することが好ましく、1重量%以上40重量%以下溶解することがより好ましく、3重量%以上30重量%以下溶解することが更に好ましい。より好ましくは、20℃における有機溶媒に対する溶解性がこのような範囲にあることである。有機溶媒に対する溶解性がこのような範囲にあると、本発明の化合物を、例えば、光学フィルタ等の製造に使用する際に、製造性が良好であるため好ましい。
【0071】
本発明の化合物は、耐熱性が良好である。本発明の化合物は、その熱分解温度が205℃以上であることが好ましく、210℃以上がより好ましく、例えば、250~400℃であることが好ましい。熱分解温度は、熱重量測定装置により測定することができる。
【0072】
本発明の化合物は、370~380nmに吸収波長を持ち、この波長の光を効率よく吸収することができ、かつ、耐熱性が良好である。このため本発明の化合物は、例えば、光学フィルタ等に好適に使用される。本発明の化合物は、1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。例えば本発明の化合物を光学フィルタに使用すると、紫外線を選択的かつ効果的に低減することができる。
【0073】
本発明の化合物は、例えば樹脂と混合することにより、樹脂組成物とすることができる。
上記樹脂は特に限定されず、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等を、樹脂組成物の用途等に応じて適宜選択すればよい。例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の樹脂が挙げられる。これらは1種のみ使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
樹脂組成物における本発明の化合物の配合量は、例えば、樹脂組成物の総固形分に対して当該化合物が0.001~50重量%であることが好ましく、0.01~40重量%であることがより好ましい。
【0075】
樹脂組成物は、その用途等に応じて、本発明の化合物及び樹脂以外の任意成分を含んでもよい。任意成分として、例えば、酸化防止剤、消泡剤、色素(染料、顔料等)、赤外線吸収剤、重合性単量体、重合開始剤、増感剤等が挙げられる。また、本発明の化合物以外の紫外線吸収剤を含んでもよい。
樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、例えば、本発明の化合物及び樹脂、並びに、所望により配合される任意成分を混合すればよい。
本発明の化合物、及び、本発明の化合物を含む樹脂組成物は、例えば、光学フィルタの製造に好適に用いられる。本発明の化合物を含む光学フィルタも、本発明の1つである。
【0076】
光学フィルタは、本発明の化合物を含むものであればよく、光学フィルタの構成は特に限定されない。例えば、従来のものと同様に、少なくとも支持体を有し、必要に応じて、粘着層、光学機能層、反射防止層、ハードコート層等の各種機能層を有することができる。光学フィルタにおいて、本発明の化合物は、支持体及び各種機能層のいずれかに含まれていればよく、例えば、支持体又は光学機能層に含有されていることが好ましい。また、光学フィルタの大きさ及び形状は、特に限定されず、用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0077】
支持体及び各種機能層の構成も特に限定されない。例えば支持体は、通常、透明樹脂を用いて形成される。透明樹脂としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。
【0078】
光学フィルタの製造方法は特に限定されない。例えば、支持体上に本発明の化合物を含む光学機能層を形成する方法として、溶媒中に本発明の化合物及びバインダー樹脂等を溶解又は分散させた後、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法等の塗工方法によって支持体上に塗膜形成する方法が挙げられる。上記溶媒としては、特に制限されず、有機溶媒等を使用することができる。
【0079】
また、本発明の化合物を含む光学機能層又は支持体の製造方法として、本発明の化合物と、光硬化性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂並びに光重合開始剤及び/又は熱重合開始剤とを混合した後、光照射及び/又は加熱処理により硬化膜を形成し、これを光学機能層又は支持体とすることもできる。
【0080】
光学フィルタは、例えば、紫外線遮蔽用フィルタ、カラーフィルタ、色変換フィルタ、光吸収フィルタ等の光学フィルタとして、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、撮像装置、照明用具や窓ガラス等の防虫(走光性を持つ飛翔昆虫の飛来抑制)材料等に好適に使用することができる。
【0081】
本発明の化合物、及び、本発明の化合物を含む樹脂組成物は、例えば、紫外線遮蔽材料、紫外線吸収剤、記録材料、化粧品の製造にも好適に用いられる。本発明の化合物を含む紫外線吸収剤も本発明の1つである。
紫外線遮蔽材料、紫外線吸収剤、記録材料、化粧品は、本発明の化合物を含むものであればよく、その構成は特に限定されない。本発明の化合物は、1種のみ使用してもよく、2種以上を使用してもよい。
紫外線遮蔽材料は特に限定されず、例えば、紫外線カットフィルム;紫外線カット用眼鏡のレンズ又はコンタクトレンズ等の紫外線遮断レンズ等が挙げられる。紫外線遮蔽材料の一例であるレンズを製造する方法としては、例えば、透明樹脂に本発明の化合物を混練し、射出成形法、圧縮成形法、押出成形法等により成形する方法や、前述の支持体上に本発明の化合物を含む光学機能層を形成する方法等の各種の方法を採ることができる。紫外線吸収剤は、ガラス、プラスチック、繊維、紙、塗料、インク、化粧品等の様々な材料に使用することができる。紫外線吸収剤は、種々の材料に混合して用いることができ、該材料中に分散していてもよく、溶解していてもよい。また、紫外線吸収剤は、種々の材料に化学的又は物理的に担持されていてもよい。
本発明の化合物を含む記録材料としては、光学ディスク等が挙げられる。
【実施例
【0082】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
以下で、得られた化合物の物性を測定する際に使用した機器は次の通りである。
(LC/MS)
(株)島津製作所製 高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-2010EV(ESI法)
(NMR)
日本電子(株)製 核磁気共鳴装置JNM-ECZ400S
【0084】
<実施例1>
中間体(6-1)の合成
2,4,4-トリメチルオキサゾリン(東京化成工業(株)製、70.8g)と、ヨウ化メチル(118g)、テトラヒドロフラン(THF)(80ml)を300mL反応フラスコに入れ、15時間撹拌した。反応溶液から析出した結晶を濾取した。この結晶を50℃で乾燥することで、2,3,4,4-テトラメチルオキサゾリニウムヨージドを126g得た。
50mL反応フラスコに、2,3,4,4-テトラメチルオキサゾリニウムヨージド(5.0g)、N,N’-ジフェニルホルムアミジン(東京化成工業(株)製、4.0g)、無水酢酸(20mL)を混合し、95~100℃で6.5時間撹拌した。反応後、酢酸エチルを用いて結晶を析出させ、ろ集し、下記式(6-1)で示される化合物(中間体(6-1))を3.0g得た。式中、N(Ac)Phはアセトアニリド基を示す。以下も同様である。
【0085】
【化17】
【0086】
中間体(7-1)の合成
特開2000-310841号公報に記載の方法で、下記式(7-1)で示される化合物(中間体(7-1))を合成した。式中、t-Buはtert-ブチル基を示す。以下も同様である。
【0087】
【化18】
【0088】
化合物(1-1)の合成
50mL反応フラスコ中の中間体(6-1)(3.0g)、中間体(7-1)(2.2g)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(15mL)の混合液に、トリエチルアミン(1.0g)を25℃前後で滴下した。室温下で19時間撹拌後、水に排出してしばらく撹拌して析出した結晶をろ集した。イソプロピルアルコール(IPA)で洗浄し、得られた結晶を80℃で乾燥させることで化合物(1-1)を2.1g得た。
MS:m/z=431[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.24(d,1H),5.73(s,1H),4.93(d,1H),4.18(s,2H),2.85(s,3H),1.64(s,1H),1.56(d,2H),1.41(t,2H),1.33(s,6H),1.13(d,2H),1.02(d,3H),0.87(s,18H)
【0089】
<実施例2>
中間体(6-2)の合成
特開平07-126314号公報に記載の方法で得たN-ベンジル-2,4,4-トリメチルオキサゾリニウムブロマイド(7.2g)、N,N’-ジフェニルホルムアミジン(東京化成工業(株)製、5.0g)、IPA(25mL)の混合液を、100mLナスフラスコ中、80℃で4.5時間反応させ、減圧濃縮してオイル状物を得た。
50mLナスフラスコ中に、上記オイル状物(8.5g)と無水酢酸(22mL)の混合液を90~95℃で5.5時間反応させ、減圧濃縮して下記式(6-2)で示される化合物(中間体(6-2))を5.8g得た。
【0090】
【化19】
【0091】
化合物(1-2)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(6-1)を中間体(6-2)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-2)を得た。
MS:m/z=507[M+H]
【0092】
<実施例3>
中間体(7-2)の合成
US6271410B1に記載の方法と同様にして、下記式(7-2)で示される化合物(中間体(7-2))を得た。
【0093】
【化20】
【0094】
化合物(1-3)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-2)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-3)を得た。
MS:m/z=361[M+H]
【0095】
<実施例4>
中間体(7-3)の合成
US6271410B1に記載の方法で、下記式(7-3)で示される化合物(中間体(7-3))を得た。
【0096】
【化21】
【0097】
化合物(1-4)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-3)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-4)を得た。
MS:m/z=305[M+H]
【0098】
<実施例5>
中間体(7-4)の合成
US6271410B1に記載の方法と同様にして、下記式(7-4)で示される化合物(中間体(7-4))を得た。
【0099】
【化22】
【0100】
化合物(1-5)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-4)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-5)を得た。
MS:m/z=357[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.14(d,1H),4.89(d,1H),4.18(s,2H),2.83(s,3H),2.17(s,9H),1.69-1.61(m,6H),1.33(s,6H)
【0101】
<実施例6>
中間体(7-5)の合成
US6271410B1に記載の方法と同様にして、下記式(7-5)で示される化合物(中間体(7-5))を得た。
【0102】
【化23】
【0103】
化合物(1-6)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-5)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-6)を得た。
MS:m/z=357[M+H]
【0104】
<実施例7>
中間体(7-6)の合成
Macromolecules,1992,25(22),pp6055-6058.に記載の方法と同様にして、下記式(7-6)で示される化合物(中間体(7-6))を合成した。
【0105】
【化24】
【0106】
化合物(1-7)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-6)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-7)を得た。
MS:m/z=525[M+H]
【0107】
<実施例8>
中間体(7-7)の合成
US6271410B1に記載の方法と同様にして、下記式(7-7)で示される化合物(中間体(7-7))を得た。
【0108】
【化25】
【0109】
化合物(1-8)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)を中間体(7-7)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1-8)を得た。
MS:m/z=359[M+H]
【0110】
<実施例9>
中間体(6-3)の合成
25mL反応フラスコ中の2,4,4-トリメチルオキサゾリン(東京化成工業(株)製、3.4g)、1,6-ジヨードヘキサン(東京化成工業(株)製、3.4g)、アセトニトリル(10mL)の混合液を、約75℃で18.5時間、さらに約90℃で2.5時間反応させた。結晶をろ集し、酢酸エチルで洗浄して、中間物を結晶として4.8g得た。
50mL反応フラスコ中に、上記結晶(4.8g)、N,N’-ジフェニルホルムアミジン(3.5g)、アセトニトリル(20mL)の混合液を入れ、約75℃で15時間反応させた。析出した結晶をろ集し、中間物を結晶として3.9g得た。
50mLナスフラスコ中に、上記結晶(3.9g)と無水酢酸(20mL)を入れ、約130℃で2時間撹拌した。反応後、酢酸エチルで結晶を析出させ、ろ集し、下記式(6-3)で示される化合物(中間体(6-3))を4.2g得た。
【0111】
【化26】
【0112】
化合物(1-9)の合成
50mL反応フラスコ中に、中間体(6-3)(3.0g)、中間体(7-3)(1.3g)、DMF(13mL)を入れ、トリエチルアミン(0.80g)とDMF(2mL)の混合液を約20℃で滴下した。室温下で14時間撹拌し、反応液を水に排出した。析出した結晶をろ集し、メタノールで洗浄して化合物(1-9)を1.2g得た。
MS:m/z=663[M+H]
【0113】
<実施例10>
化合物(1-10)の合成
実施例9の化合物(1-9)の合成における中間体(7-3)を中間体(7-1)に変更した以外は、化合物(1-9)の合成と同様にして、化合物(1-10)を得た。
MS:m/z=916[M+H]
H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.22(d,2H),5.73(s,2H),4.90(d,2H),4.17(s,4H),3.20(t,4H),1.72-1.40(m,8H),1.60(s,2H),1.56(d,4H),1.50-40(m,4H),1.35(s,12H),1.12(d,4H),1.01(d,6H),0.88(s,36H)
【0114】
<比較例1>
化合物(1’-1)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)をシアノ酢酸エチル(東京化成工業(株)製)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1’-1)を得た。
【0115】
<比較例2>
化合物(1’-2)の合成
実施例1の化合物(1-1)の合成における中間体(7-1)をシアノ酢酸tert-ブチル(東京化成工業(株)製)に変更した以外は、化合物(1-1)の合成と同様にして、化合物(1’-2)を得た。
【0116】
<比較例3>
化合物(1’-3)の合成
WO2019/004046に記載の方法で、化合物(1’-3)を得た。
【0117】
実施例1~10で得られた化合物(1-1)~(1-10)は、下記一般式(11)において、R及びRがそれぞれ表1に示す基である化合物である。下記式中、Meはメチル基を示す。
【0118】
【化27】
【0119】
比較例1~3で得られた化合物(1’-1)~(1’-2)は、上記一般式(11)において、R及びRがそれぞれ表2に示す基である化合物である。化合物(1’-3)は、表2に示す構造の化合物である。
【0120】
実施例及び比較例で得られた化合物について、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0121】
<吸収波長測定試験>
実施例及び比較例で得た各化合物について、クロロホルム中での吸収スペクトルを測定し、波長300~800nmにおける吸収極大波長(λmax)、半値幅及び極大吸収波長におけるグラム吸光係数を求めた。
測定機器:日本分光社(株)製、紫外可視分光光度計V-560
【0122】
半値幅は、下記式(I)で表される吸収スペクトルの急峻性を示す数値である。
半値幅=λ1/2-λmax (I)
上記式中、λmaxは、350~800nmにおける吸収極大波長を表し、λ1/2は、その波長における吸光度がλmaxにおける吸光度の1/2となり、かつ、λ1/2>λmaxである波長を表す。半値幅は、下記基準により評価した。
A:半値幅が15未満
B:半値幅が15以上、20未満
C:半値幅が20以上
【0123】
グラム吸光係数は、下記基準により評価した。
A:グラム吸光係数が120より大きい
B:グラム吸光係数が90より大きく、120以下
C:グラム吸光係数が90以下
【0124】
<耐熱性試験>
実施例及び比較例で得た化合物について、(株)島津製作所製の熱重量測定装置TGA-50を使用して下記の測定条件で熱分解による重量減少を測定し、初期重量の1%の減量が観測された温度を分解開始温度とした。
(測定条件)
試料量10mg、昇温速度10℃/分(最高到達温度500℃)、窒素雰囲気中、流量20mL/分の条件で測定した。
耐熱性は、分解開始温度から下記基準により評価した。
A:分解開始温度が240℃より高い
B:分解開始温度が200℃より高く、240℃以下
C:分解開始温度が200℃以下
【0125】
<耐光性試験>
実施例及び比較例で得た一部の化合物について、耐光性試験を行った。
各化合物10mgを、ポリメタクリレート8重量%トルエン溶液5mLに溶融し、ガラス基板上にスピンコート法により塗布し、乾燥させることで膜厚1.5μmの薄膜を作製した。
作製した薄膜にキセノンランプ(142klux)の光を連続的に24時間照射し、照射前(0時間)、照射後の薄膜の透過率を分光光度計で測定し、下記式(II)に従って化合物の残存率を測定した。
化合物の残存率(%)={(1-T)/(1-T)}×100 (II)
[ただし、Tはキセノンランプ照射前の透過率、Tはキセノンランプ照射後の透過率であり、T及びTは0~1である。]
なお、「透過率」とは、各化合物の吸収極大波長における透過率を表しており、上記の残存率が高い程、化合物が光によって分解されにくく、耐光性が高いことを示す。耐光性は、下記基準により評価した。
A:化合物の残存率が65%より大きい
B:化合物の残存率が50%より大きく、65%以下
C:化合物の残存率が50%以下
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
表1に示す置換基において、*は一般式(11)との結合部位を表す。Meはメチル基、Etはエチル基、Cyはシクロヘキシル基、t-Buはtert-ブチル基、Phはフェニル基を示す。
【0129】
化合物(1-1)~(1-10)は耐熱性が良好であった。化合物(1-1)~(1-10)は、370~380nmに吸収極大波長を有し、半値幅が15nm未満であった。また、化合物(1-1)~(1-10)は、グラム吸光係数が120以上であった。これらの化合物は、半値幅が狭く、グラム吸光係数が高く、370~380nmの光を選択的にかつ効果的に吸収できる。また、これらの化合物は半値幅が狭いことから、可視光領域の吸収が少ないものである。化合物(1-1)及び(1-10)は、耐光性も良好であった。比較例1~2の化合物(1’-1)及び(1’-2)は、実施例の化合物と比較して耐熱性が劣っていた。比較例3の化合物(1’-3)は、吸収極大が380nmよりも長波長側にあった。比較例3の化合物(1’-3)は、半値幅が広く、グラム吸光係数も小さかった。