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特許7659268デュアルモード18F標識セラノスティック化合物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】デュアルモード18F標識セラノスティック化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20250402BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20250402BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20250402BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250402BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20250402BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20250402BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20250402BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20250402BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250402BHJP
   C07K 5/09 20060101ALI20250402BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C07F5/02 B CSP
C07K16/28 ZNA
C12N15/115 Z
A61K47/68
A61P35/00
A61P35/02
A61P25/00
A61P11/06
A61P1/04
A61P25/18
A61P29/00
A61K47/66
A61K51/10 200
A61K51/08 200
A61K51/04 320
A61K51/04 100
A61K51/10 100
A61K51/08 100
A61K51/04 310
A61K47/54
A61K31/555
C07K19/00
C07K5/09
C07K7/06
A61K51/04 200
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021534657
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 CA2019051853
(87)【国際公開番号】W WO2020124237
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】62/781,584
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520143199
【氏名又は名称】プロビンシャル・ヘルス・サービシーズ・オーソリティ
【氏名又は名称原語表記】PROVINCIAL HEALTH SERVICES AUTHORITY
(73)【特許権者】
【識別番号】300066874
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・ブリティッシュ・コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベナール、フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】リン、クオシュヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】クオ、シャオ - ティン
(72)【発明者】
【氏名】ペラン、ダヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ロキシン、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】ルパージュ、マチュー
(72)【発明者】
【氏名】フー、サンジョン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、チーボ
(72)【発明者】
【氏名】カンダサミー、ラジャグル
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106967152(CN,A)
【文献】国際公開第2015/100498(WO,A1)
【文献】Nuclear Medicine and Biology,2018年,61,11-20
【文献】Bioconjugate Chem.,2019年03月21日,30(4),1210-1219
【文献】ChemBioChem,2019年10月16日,21(7),943-947,2020, First Published: 20191016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F,A61K,A61P
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)経細胞最晩期抗原4(VLA-4)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、ソマトスタチン受容体、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)、又はブラジキニン受容体を標的とする細胞抗原結合モジュールと、
b)DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン1,4,7-三酢酸)、NODAGA(2-(4,7-ビス(カルボキシメチル)-1,4,7-トリアゾナン-1-イル)ペンタン二酸)、Octapa(N,N’-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸)、及びMacropa(N,N’-ビス[(6-カルボキシ-2-ピリジル)メチル]-4,13-ジアザ-18-クラウン-6)から選択される少なくとも1種の金属キレート剤と、
c)ジメチルアンモニオメチルトリフルオロボラート(AMBF)を含むトリフルオロボラート(BF)含有部分と、
を含む、化合物。
【請求項2】
前記細胞抗原結合モジュールが、ペプチド、ポリペプチド、標的となる細胞抗原に結合することができる非ペプチド/非タンパク質リガンド、又は抗体若しくは抗体断片を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記細胞抗原結合モジュールが、LLP2A、PSMA-617、TATE、又はペプチドD-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
リンカーを含む請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記リンカーが、前記AMBFを含むBF含有部分を含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記AMBFを含むBF含有部分がLys-ε-1,2,3トリアゾール-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-トリフルオロボラート(Lys(AMBF))である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記BF含有部分が少なくとも1つの18Fを含み、前記少なくとも1種の金属キレート剤がキレート化されていないか又は非放射性金属同位体でキレート化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記BF含有部分が18Fで標識されておらず、前記少なくとも1種の金属キレート剤がキレート化されていないか又は非放射性金属同位体でキレート化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
前記BF含有部分が少なくとも1つの18Fを含み、前記少なくとも1種の金属キレート剤が放射性金属同位体でキレート化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

及び
【化5】

からなる群から選択される化合物。
【請求項11】
放射性金属同位体でキレート化されている、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
少なくとも1つの18Fを含む、請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
疾患の治療に使用するための又は放射線治療に使用するための請求項1~6いずれか一項に記載の化合物であって、
前記金属キレート剤が放射性金属同位体でキレート化されている、
化合物。
【請求項14】
疾患の治療に使用するための又は放射線治療に使用するための、請求項11又は請求項11を引用する請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
前記疾患が癌である、請求項13又は14に記載の化合物。
【請求項16】
前記癌が黒色腫又は前立腺癌である、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
インビボ画像診断の方法に使用するための請求項1~6及び10~12のいずれか一項に記載の化合物であって、前記BF含有部分が少なくとも1つの18Fを含む、化合物。
【請求項18】
エクスビボ画像診断の方法に使用するための請求項1~6及び10~12のいずれか一項に記載の化合物であって、前記BF含有部分が少なくとも1つの18Fを含む、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イメージング及び/又は治療のための化合物/複合体に関する。特に、本発明は、18F標識されている場合はイメージング用に、放射性金属でキレート化されている場合は治療用に構成されたデュアルモード化合物/複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
PETイメージングは、非侵襲的な臨床診断においてますます重要な役割を果たしている1~7。MRI又はSPECTと比較して、PETは、生体内分布及びクリアランスを調べるために、非常に高い感度10と動的時空間分解能とを組み合わせている11、1218F-デオキシグルコース(FDG)及び18F-チミジン(FLT)13は、すべてではないがほとんどの癌に特徴的な代謝の亢進に基づく画像を提供する。癌サブタイプは、病理学的に異なる細胞型を区別し、特定の分子標的の存在を評価するペプチド4、14~19によってますます区別されており、FDGでは不可能な功績である20~23。臨床用ペプチドトレーサ及び薬物には、オクトレオテート24~28、ボンベシン29、及びRGD30~32、リュープリン(商標)及びサンドスタチン(商標)33、34が含まれる。
【0003】
放射性金属(例えば68Ga、64Cu、99mTc)キレート化は標識の容易さを提供するが、18F-フッ化物はより低いコストで拡張性を提供する。したがって、18F-フッ化物が好ましく、18F-フッ化物は、きれいに崩壊し(97%超のβ+)、68Gaよりもはるかに低コスト(400ドルで1Ci超)で高い同位体純度で製造することができ35、最適なイメージング特性を持つ36、37。半減期が短いため、放射線量を最小限に抑え、一方、高比放射能により、トレーサがマイクロドーズ要件を満たすことができる38。それにもかかわらず、その半減期の短さ(109.8分)はまた、ペプチドの標識化にも課題がある。18F標識オルガノトリフルオロボラート(RBF3s)に関する以前の研究は、現在、放射性金属キレート化と同様に18F標識を容易にする39。特定の18F-RBF3ペプチドは高い腫瘍取込みを示すが40、放射性金属化ペプチドの明確な利点は、一般に腫瘍取込みが高いことである41
【0004】
それにもかかわらず、放射性毒性メタロペプチドは、治療の選択肢がほとんど存在しない特定の癌を治療するために使用される。例えば、膵臓癌を治療するために、オクトレオテート-キレート剤を90Yと複合体化した42。いくつかのペプチドが、放射線療法のための標的化(targetting)剤として出現している43、44。それにもかかわらず、すべての患者がそのような治療に応答するわけではない。理想的には、患者は治療前に同じペプチドでイメージングされるべきである。しかし、放射線治療ペプチドのPETイメージングは、一方がイメージング用であり、他方が治療用である一対の同位体(例えば86Y/90Y、64Cu/67Cu、203Pb/212Pb)を有する金属に限定される45、46。残念ながら、診断用PET金属の製造は制限され、高価である。さらに悪いことに、いくつかの放射性金属、例えば177Luでは、PETに容易に利用可能な又は有用な同位体はない(β+を放出する167Luを用いたPETの報告が1件ある)。典型的には、異なる金属がイメージングに使用される。
【0005】
したがって、現在の実施は、1種の放射性金属がイメージングに使用され、異なる放射性金属が治療に使用される場合に重大な問題を引き起こす。例えば、TATEを111In(イメージング用)及び90Y(治療用)で標識した。取込みに有意な差があることから、TATEは同じ同位体、すなわちβ+を放出する86Yで評価すべきだという結論に達した45、46。残念ながら、86Yは非常に高価であり、18Fよりも分解能が低い47。同様の問題は、SPECTイメージングにも及び、111In、67Ga、177Lu、及び90YのDOTA-TATEキレートはすべて異なる親和性を示し、放射性金属が親和性とイメージングシグナルの両方に影響を及ぼすため、異なるメタロペプチド間で画像を相関させることが困難になる43、48。同様の違いがボンベシン-NOTAで見られ、68Ga-キレートは、111In-キレートよりもはるかに低い親和性を示し、それぞれ1.2nM対23pMである49。親和性の変動は、画像相関及び放射線治療による取込みの予測を妨げる。さらに、2種の金属同位体を同定して、同位体置換体のセラノスティックペアを提供することができる例はごくわずかである。したがって、PETイメージング結果に基づく治療計画の改善を容易にするセラノスティック二重機能PETイメージングトレーサ/放射線治療薬の分野における満たされていない必要性がある。
【0006】
前述の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成することを、必ずしも承認することを意図しておらず、また解釈すべきでもない。
【発明の概要】
【0007】
様々な実施形態は、化合物又は分子複合体に関するものであり、この化合物又は分子複合体は、放射性金属同位体又は非放射性金属同位体とのキレート化のために構成された金属キレート剤、及び19F/18F交換用に構成されたトリフルオロボラート(BF)含有部分、又は18F標識トリフルオロボラートへの変換が可能なボロナート前駆体を含む。
【0008】
様々な実施形態は、化合物又は分子複合体に関するものであり、この化合物又は分子複合体は、細胞標的化ドメイン、金属放射性同位体又は非放射性金属同位体とのキレート化のために構成された金属キレート剤、及び19F/18F交換用に構成されたトリフルオロボラート(BF)含有部分、又は18F標識トリフルオロボラートへの変換が可能なボロナート前駆体を含む。いくつかのこのような実施形態では、細胞標的化ドメインは、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質、ペプチド模倣物、あるいは核酸アプタマー、大環状分子、ステロイド、又は小分子を含むことができ、細胞標的化ドメインは、細胞マーカーに特異的に結合する。他のこのような実施形態では、細胞標的化ドメインは、LLP2A、PSMA-617、TATE、又はペプチドD-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHを含む。他のこのような実施形態では、細胞標的化ドメインは、(i)標的細胞の抗原に特異的に結合する抗体又は抗体誘導体又は断片、あるいは(ii)抗原に特異的に結合する抗体又は抗体誘導体又は断片に特異的に結合するタンパク質ドメインを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、BF含有部分を含有するリンカーによって細胞標的化ドメインに連結することができる。リンカーは、複数のBF含有部分を含むことができる。リンカーは、ペプチドリンカーであってもよい。リンカーは、Lys(AMBF)を含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤の化合物又は分子複合体は、キレート化されていないか、又は非放射性金属同位体でキレート化されており、BF含有部分は18F標識されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、放射性金属同位体でキレート化されており、BF含有部分は19F標識されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、放射性金属同位体でキレート化されており、BF含有部分は18F標識されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、放射性金属同位体は、アルファ放射体、ベータ放射体又はオージェ放射体である。
【0014】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、DOTA及び誘導体;DOTAGA;NOTA;NODAGA;NODASA;CB-DO2A;3p-C-DEPA;TCMC;DO3A;DTPA並びにCHX-A’’-DTPA及び1B4M-DTPAから選択されてもよいDTPA類似体;TETA;NOPO;Me-3,2-HOPO;CB-TE1A1P;CB-TE2P;MM-TE2A;DM-TE2A;サルコファジン並びにSarAr、SarAr-NCS、diamSar、AmBaSar、及びBaBaSarから選択されてもよいサルコファジン誘導体;TRAP;AAZTA;DATA及びDATA誘導体;H2-macropa又はその誘導体;H2dedpa、H4octapa、H4py4pa、H4Pypa、H2azapa、H5decapa、及び他のピコリン酸誘導体;CP256;PCTA;DOTP;HEHA;C-NETA;C-NE3TA;HBED;SHBED;BCPA;CP256;YM103;サイクラム;DiamSar;デスフェリオキサミン(DFO)及びDFO誘導体;H6phospa;トリチオールキレート;メルカプトアセチル;ヒドラジノニコチンアミド;ジメルカプトコハク酸;1,2-エチレンジイルビス-L-システインジエチルエステル;メチレンジホスホナート;ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム;及びヘキサキス(メトキシイソブチルイソニトリル);ポルフィリン、クロリン、テキサフリン、フタロシアニンからなる群から選択されるキレート剤から選択されるキレート剤である。いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、DOTA及びDOTA誘導体から選択される。いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、DOTAである。
【0015】
いくつかの実施形態では、BF含有部分は、
【0016】
【化1】

あるいは表3又は4に示される基であり、式中、各Rは独立して、C~C直鎖又は分岐アルキル基である。
【0017】
いくつかの実施形態では、化合物は、DOTA-AMBF3-PEG2-LLP2A、PSMA-617-LysAMBF3-DOTA、DOTA-Lys(AMBF3)-TATE、及びDOTA-Lys-AMBF3-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHからなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、フルオロフォア又は他の発光部分をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、Lys(AMBF)を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、化合物は、DOTA-Bn-NH-Lys-(AMBF3)を含む。
【0021】
化合物又は分子複合体がBF含有部分と細胞標的化ドメインの両方を含むいくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、18Fで標識された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態の細胞マーカーの存在を確認するために対象をイメージングすること、及び治療用放射性同位体でキレート化された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態を治療することに使用するためのものである。
【0022】
化合物又は分子複合体が、BF含有部分を含む化合物であり、細胞標的化ドメインを含まないいくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、対象の疾患又は状態を画像化及び/又は治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するためのものであり、二重特異性抗体は、(i)疾患又は状態の細胞マーカー、及び(ii)金属キレート剤に特異的である。いくつかのそのような実施形態では、化合物又は分子複合体は、二重特異性抗体との複合体として対象に投与するためのものであってもよい。他のこのような実施形態では、二重特異性抗体は、二重特異性抗体が細胞マーカーに結合するプレ標的化ステップにおいて、化合物又は分子複合体を対象に投与する前に対象に投与するためのものであってもよい。
【0023】
本発明の特徴は、添付の図面を参照する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】特定のデュアルモードPETイメージング放射線治療薬の機能的ドメインの様々な相対的構成の概略図を示す。
【0025】
図2】DOTA-AMBF3-PEG2-LLP2A(LLP2A-LysAMBF3-DOTAとも呼ばれる)及びPSMA-617-LysAMBF3-DOTAの化学構造を示す図である。
【0026】
図3】非放射性LLP2A-Lys-AMBF3-DOTA(100μg)の同時注射(A)なし及び(B)ありのB16F10黒色腫異種移植片を有するマウスにおけるF-18標識LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAの最大強度投影画像(注射1時間後)を示す。
【0027】
図4】DCFPyL(0.5mg)の同時注射(A)なし及び(B)ありのLNCaP前立腺癌異種移植片を有するマウスにおけるF-18標識PSMA-617-Lys-AMBF3-DOTAの最大強度投影画像(注射1時間後)を示す。
【0028】
図5】(1:9)EtOH:0.9%生理食塩水(v/v)に配合された精製18F放射性トレーサ、7、(分取HPLC精製及びC18 Sep-Pak溶出後)の代表的なHPLCクロマトグラムを示しており、a)HPLC方法Bを使用して、t=14.97分で、98.5%の放射化学純度、1.1%の18(t=2.30分)及び0.4%の不純物(t=8.26分)を示す7のラジオクロマトグラム、及びb)7単独(t=14.44分)及び0.1nmolの低温前駆体6との同時注射(t=14.49分)の吸光クロマトグラムを示す。
【0029】
図6】7単独(a及びb、4~6MBq注射)の1時間p.i.でのPET画像、及びブロック剤1(200μg)(c及びd)との7(4~6MBq注射)の同時注射からのPET画像を、B16-F10腫瘍(矢印)を有するマウスにおいて示し、スケールバーは0~20%ID/gである。
【0030】
図7】B16-F10腫瘍を有するマウスにおける[18F]6(5MBq注射)の動的PETスキャン(5秒~52.5分p.i.、28時点)を示す。
【0031】
図8】1のH NMR(アセトン-d、300MHz、室温)スペクトルを示す。
【0032】
図9】LLP2A-PEG-AMBF-Fmoc(3)のESI-MS(+)スペクトルを示し、C7698BF1413について1483.5m/zと計算され、実測値は[M+Na]=1506.8m/z、[M+K]=1520.9m/zとなった。
【0033】
図10】AMBF-PEG-LLP2A-NH(4)のESI-MS(+)スペクトルを示し、C6188BF1411について1261.3m/zと計算され、実測値は[M+H]=1262.6m/z、[M+Na]=1284.6m/zとなった。
【0034】
図11】DOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)のESI-MS(+)スペクトルを示し、C77114BF1818について1647.6m/zと計算され、実測値は[M+H]=1648.9m/z、[M+Na]=1670.9m/z、[M+K]=1687.0m/zとなった。
【0035】
図12】HPLC方法Aを使用して実施したセミ分取HPLC精製(純度95%超)後の6(t=8.9分)の分析HPLCクロマトグラム(λAbs=241nm)を示す。
【0036】
図13】6のUV-vis吸収(λ=257nm)に基づいて[18F]6(HPLC精製及び製剤化後)を特徴付けるために使用され、HPLC方法Cを使用して得られた標準曲線を示す。
【0037】
図14】VLA-4発現B16-F10細胞(それぞれ反復しており、エラーバーは±SDを示す)を用いた18F放射性トレーサ[18F]6のインビトロ結合飽和アッセイを示し、計算K値は6.9±0.59nMであった(n=3)。
【0038】
図15】1の13C{H}NMR(アセトン-d、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0039】
図16】1のESI-MS(+)スペクトルを示し、C1223BNO =224.1m/zと計算され、実測値は[M]=224.6m/zとなった。
【0040】
図17】2のH NMR(アセトン-d、300MHz、室温)を示す。
【0041】
図18】2の13C{H}NMR(アセトン-d、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0042】
図19】2の19F{H}NMR(アセトン-d、282MHz、室温)スペクトルを示す。
【0043】
図20】2のESI-MS(+)スペクトルを示し、C11BFNについて165.0m/zと計算され、実測値は[M+Na]=188.4m/zとなった。
【0044】
図21】3のH NMR(CDCl、300MHz、室温)スペクトルを示す。
【0045】
図22】3の13C{H}NMR(CDCl、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0046】
図23】3のESI-MS(-)スペクトルを示し、C2122について394.4m/zと計算され、実測値は[M-H]=393.4m/z及び[2M-H]=787.7m/zとなった。
【0047】
図24】4のH NMR(CDCN、300MHz、室温)スペクトルを示す。
【0048】
図25】4の13C{H}NMR(CDCN、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0049】
図26】4の19F{H}NMR(CDCN、282MHz、室温)スペクトルを示す。
【0050】
図27】4のESI-MS(-)スペクトルを示し、C2733BFについて559.4m/zと計算され、実測値は[M-H]=558.5m/z及び[M+I]=686.4m/zとなった。
【0051】
図28】5のH NMR(CDCN、300MHz、室温)スペクトルを示す。
【0052】
図29】5の13C{H}NMR(CDCN、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0053】
図30】5の13C DEPT-135 NMR(CDCN、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0054】
図31】5の19F{H}NMR(CDCN、282MHz、室温)スペクトルを示す。
【0055】
図32】5のESI-MS(+)スペクトルを示し、C3136BFについて656.5m/zと計算され、実測値は[M+Na]=679.8m/zとなった。
【0056】
図33】5のスペクトルのHRMSを示し、C3136BFについて656.4702m/zと計算され、実測値は[M+Na]=679.2618m/zとなった。
【0057】
図34】Fmoc-LysAMBF-OHのH NMR(CDCN、300MHz、室温)スペクトルを示す。
【0058】
図35】Fmoc-LysAMBF-OHの13C{H}NMR(CDCN、75MHz、室温)スペクトルを示す。
【0059】
図36】Fmoc-LysAMBF-OHの19F{H}NMR(CDCN、282MHz、室温)スペクトルを示す。
【0060】
図37】Fmoc-Lys(AMBF)-OHのESI-MS(-)スペクトルを示し、C2733BFについて559.4m/zと計算され、実測値は[M-H]=558.5m/z及び[M+I]=686.4m/zとなった。
【0061】
図38H NMR(CDCN、300MHz、室温)によるFmoc-LysAMBF-O-NHSの構造特性評価を示す。
【0062】
図3913C{H}NMR(CDCN、75MHz、室温)によるFmoc-LysAMBF-O-NHSの構造特性評価を示す。
【0063】
図40】Fmoc-LysAMBF-O-NHSの19F{H}NMR(CDCN、282MHz、室温)スペクトルを示す。
【0064】
図41】Fmoc-LysAMBF-O-NHSのESI-MS(+)スペクトルを示し、C3136BFについて656.5m/zと計算され、実測値は[M+Na]=679.8m/zとなった。
【0065】
図42】PSMA-617-NHのESI-MS(+)スペクトルを示し、C4161について767.97m/zと計算され、実測値は[M+H]=768.7m/zとなった。
【0066】
図43】PSMA-617-LysAMBF-FmocのESI-MS(+)スペクトルを示し、C6892BF1012について1309.35m/zと計算され、実測値は[M-F]=1290.1m/z、[M+Na]=1332.0m/zとなった。
【0067】
図44】PSMA-617-LysAMBF-NHのESI-MS(+)スペクトルを示し、C5382BF1010について1087.10m/zと計算され、実測値は[M-F]=1068.1m/z、[M+H]=1088.1m/z、[M+Na]=1110.1m/zとなった。
【0068】
図45】PSMA-617-LysAMBF-DOTAのESI-MS(+)スペクトルを示し、C6193BF1317について1360.31m/zと計算され、実測値は[M-3F-2H]=1302.1m/z、[M+H]=1362.1m/zとなった。
【0069】
図46】PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)のESI-MS(+)スペクトルを示し、C6190BCuF1010について1422.8m/zと計算され、実測値は[M-3F-2H]=1362.8m/z、[M-F]=1402.8m/z、[M+H]=1423.8m/z、[M+Na]=1444.8m/zとなった。
【0070】
図47】DOTA/AMBFコンジュゲートRM2ペプチド(11)を示す。
【0071】
図48】DOTA/AMBFコンジュゲートBKペプチド(9)を示す。
【0072】
図49】固相ペプチド合成に使用される共通の保護基を示す。
【0073】
図50】229nmでのDOTA-Lys(AMBF)-BK(化合物9)のHPLCトレースを示す。
【0074】
図51】分解されたペプチド(10)のMALDI-TOFを示す。
【0075】
図52】分解されたペプチド(10)の特徴的な同位体パターンを示す。
【0076】
図53】DOTA-Lys(AMBF)-BK(9)のMALDI-TOFを示す。
【0077】
図54】DOTA-Lys(AMBF)-BK(9)の特徴的な同位体パターンを示す。
【0078】
図55】切断手順(スキーム6v)中のペプチド9の脱ホウ素化反応の結果であると予測されたDOTA-Lys(AMBF)-BK(10)の提唱された脱ホウ素化反応生成物を示す。正確な質量は1784.03である。図52は、[M+Na=1807.02での予測同位体パターンを示す、ペプチド10のMALDI-TOFを示す。
【0079】
図56】DOTA-Lys(AMBF)-RM2(11)のMALDI-TOFを示す。
【0080】
図57】DOTA-((L)-Lys-ε-1,2,3トリアゾール-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-トリフルオロボラート)-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン-Lys-Arg-Pro-Hyp-Gly-Cha-Ser-Pro-Leu-COOHの構造を示す。
【0081】
図58】粗化合物9のHPLCトレース(229nm)を示す。
【0082】
図59】化合物9のMALDI-TOFスペクトルを示す。
【0083】
図60】DOTA-Lys(AMBF)-TATEのESI-MS(+)スペクトルを示し、C79114BF2021について1811.8m/zと計算され、実測値は[M+2Na]=1855.1m/zとなった。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」という用語及びその文法的変形は、包括的又はオープンエンドであり、その一部として定義された特徴/構成要素が特定の特徴/構成要素からなるか、又は本質的になる場合であっても、追加の列挙されていない要素及び/又は方法ステップを排除しない。「から本質的になる」という用語は、化合物、組成物、使用又は方法に関連して本明細書で使用される場合、追加の要素及び/又は方法ステップが存在してもよいが、これらの追加は、列挙された化合物、組成物、方法又は使用機能の様式に実質的に影響を及ぼさないことを示す。「からなる」という用語は、化合物、組成物、使用又は方法の特徴に関連して本明細書で使用される場合、その特徴における追加の要素及び/又は方法ステップの存在を除外する。特定の要素及び/又はステップを含むものとして本明細書に記載される化合物、組成物、使用又は方法はまた、特定の実施形態では、これらの要素及び/又はステップから本質的になってもよく、他の実施形態では、これらの実施形態が具体的に言及されているか否かにかかわらず、これらの要素及び/又はステップからなってもよい。特定の要素及び/又はステップを含むものとして本明細書に記載される使用又は方法はまた、特定の実施形態では、これらの要素及び/又はステップから本質的になってもよく、他の実施形態では、これらの実施形態が具体的に言及されているか否かにかかわらず、それらの要素及び/又はステップからなってもよい。
【0085】
不定冠詞「a」による要素への言及は、文脈上、要素が1つだけであることが明確に要求されない限り、複数の要素が存在する可能性を排除しない。単数形「a」、「an」、及び「the」には、文脈で明確に指示されていない限り、複数の参照が含まれる。「含む(comprising)」という用語と組み合わせて本明細書で使用される場合の「a」又は「an」という単語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の意味とも一致する。
【0086】
本開示では、端点による数値範囲の列挙は、すべての整数(whole number)、すべての整数(integer)、及び適切な場合にはすべての小数中間体(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5などを含み得る)を含む、その範囲内に包含されるすべての数を含む。
【0087】
別段の指定がない限り、「特定の実施形態」、「様々な実施形態」、「実施形態」及び同様の用語は、他の実施形態が直接的又は間接的に参照されるか否かにかかわらず、及びその特徴又は実施形態が方法、生成物、使用、組成物、化合物などの文脈で記載されているかどうかにかかわらず、その実施形態について記載された特定の特徴(複数可)を単独で、又は本明細書に記載された任意の他の実施形態又は実施形態と組み合わせて含む。
【0088】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療(treatment)」、「治療的(therapeutic)」などの用語は、症状の改善、疾患進行の低減、予後の改善、及び再発の低減を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合、「診断薬」という用語は「イメージング剤」を含む。したがって、「診断用放射性核種」には、イメージング剤での使用に適した放射性核種が含まれる。
【0090】
「対象」という用語は、動物(例えば、哺乳動物又は非哺乳動物)を指す。対象は、ヒト又は非ヒト霊長類であってもよい。対象は、実験用哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスターなど)であってもよい。対象は、農業動物(例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダなど)又は家畜(例えば、イヌ、ネコなど)であってもよい。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0091】
本明細書に開示される化合物はまた、その塩基を含まない形態、溶媒和物、塩又は薬学的に許容される塩を含むことができる。別段の指定又は指示がない限り、特許請求の範囲に記載され、本明細書に記載される化合物は、本明細書に明示的に表されているか否かにかかわらず、すべてのラセミ混合物及びすべての個々のエナンチオマー又はそれらの組合せを含むことを意味する。
【0092】
本明細書に開示される化合物は、1つ又は複数の荷電基を有するものとして示すことができ、非荷電(例えばプロトン化)状態のイオン化性基で示すことができ、又は形式的な電荷を指定せずに示すことができる。当業者には理解されるように、化合物(例えば、限定されないが、COH、PO、SOH、SOH、SOH、OPOなど)内の特定の基のイオン化状態は、とりわけ、その基のpKa及びその位置のpHに依存する。例えば、限定されないが、カルボン酸基(すなわち、COOH)は、プロトン化状態が安定化されない限り、通常、中性pH及びほとんどの生理学的pH値において、脱プロトン化(及び負に帯電)されると理解される。同様に、OSOH(すなわち、SOH)基、SOH基、SOH基、OPO(すなわち、PO)基及びPOH基は、一般に、中性及び生理学的pH値において、脱プロトン化(及び負に帯電)される。
【0093】
本明細書で使用される場合、「塩」及び「溶媒和物」という用語は、化学においてそれらの通常の意味を有する。したがって、化合物が塩又は溶媒和物である場合、それは適切な対イオンと会合する。塩を調製する方法又は対イオンを交換する方法は当技術分野で周知である。一般に、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸形態を化学量論量の適切な塩基(例えば、限定されないが、Na、Ca、Mg、又はK水酸化物、炭酸、炭酸水素など)と反応させることによって、又はこれらの化合物の遊離塩基形態を化学量論量の適切な酸と反応させることによって調製することができる。そのような反応は、一般に、水中又は有機溶媒中、あるいはこれら2つの混合物中で行われる。対イオンは、例えば、イオン交換クロマトグラフィなどのイオン交換技術によって変化させることができる。特定の形態が具体的に示されていない限り、すべての双性イオン、塩、溶媒和物及び対イオンが意図される。
【0094】
特定の実施形態では、塩又は対イオンは、対象への投与のために薬学的に許容され得る。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」は、対象におけるインビボ使用に適していることを意味し、必ずしも治療的使用に限定されず、診断的使用も含む。より一般的には、本明細書に開示される任意の医薬組成物に関して、適切な賦形剤の非限定的な例としては、任意の適切な緩衝剤、安定化剤、塩、酸化防止剤、錯化剤、等張化剤、凍結防止剤、凍結保護剤、懸濁化剤、乳化剤、抗菌剤、保存剤、キレート剤、結合剤、界面活性剤、湿潤剤、非水性ビヒクル、例えば固定油、あるいは持続放出又は徐放のためのポリマーが挙げられる。例えば、Bergeら、1977(J.Pharm Sci.66:1~19)又はRemington-The Science and Practice of Pharmacy、第21版(Gennaroら編、Lippincott Williams&Wilkins社、フィラデルフィア)を参照されたい。これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「Cy~Cz」という表現は、y及びzが整数(例えば、C~C15、C~C30、C~C100など)である場合、化合物、R基又は置換基中の炭素数(例えば、アルキル、アルケニル又はアルキニル基において)を指すか、又は1つ又は複数のヘテロ原子を有する又は有してもよいと表現がさらに定義される場合には、炭素+ヘテロ原子の数を指す。後者の場合、式「Xy~Xz」を使用することができ(例えば、X~X15など)、ここで、y及びzは、炭素+ヘテロ原子の数を指す整数である。ヘテロ原子は、任意の、いくつかの、又はすべての可能なヘテロ原子を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、N、O、S、P及びSeから選択される。いくつかの実施形態では、ヘテロ原子は、N、O、S及びPから選択される。そのような実施形態は非限定的である。
【0096】
特に明記しない限り、「アルキル」という用語は、水素原子を欠いているアルカンを指し、直鎖アルキル、分岐アルキル、非環式アルキル、単環式及び多環式シクロアルキル(例えば、縮合環、複数の非縮合環、又はそれらの組合せ)を含むシクロアルキル、並びに/あるいは非置換又は置換のいずれか1つ又は複数を含む。例えば、アルキルは、分岐及び環状の両方であってもよい。指定されない場合、アルキルのサイズは、当業者にとって合理的であると考えられるものである。例えば、限定されないが、指定されない場合、アルキルのサイズは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100又は100を超える長さの炭素であってもよく、当業者の一般的な知識に従う。本明細書で使用される場合、「アルキレニル」という用語は、アルキル基の二価類似体を指す。
【0097】
化合物のアルキル基の文脈において本明細書で使用される場合、「直鎖」という用語は、当業者に通常理解されるように使用することができ、一般に、2つ以上の連続した鎖に分割されない骨格又は主鎖を含む化学的実体を指す。直鎖アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル及びn-ブチルが挙げられる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「分岐」という用語は、当業者に通常理解されるように使用することができ、一般に、2つ以上の連続した鎖に分かれる骨格又は主鎖を含む化学的実体を指す。2つ以上の方向に分割される骨格又は主鎖の部分は、直鎖状、環状、又はそれらの任意の組合せであってもよい。分岐アルキル基の非限定的な例としては、tert-ブチル及びイソプロピルが挙げられる。
【0099】
~C20アルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、sec-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、i-ペンチル、sec-ペンチル、t-ペンチル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、1,2-ジメチルプロピル、2-エチルプロピル、1-メチル-2-エチルプロピル、l-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1,2-トリエチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2-エチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、sec-ヘキシル、t-ヘキシル、n-ヘプチル、i-ヘプチル、sec-ヘプチル、t-ヘプチル、n-オクチル、i-オクチル、sec-オクチル、t-オクチル、n-ノニル、i-ノニル、sec-ノニル、t-ノニル、n-デシル、i-デシル、sec-デシル、t-デシル、シクロプロパニル、シクロブタニル、シクロペンタニル、シクロヘキサニル、シクロヘプタニル、シクロオクタニル、シクロノナニル、シクロデカニルなどが挙げられ得る。したがって、別段の指定がない限り、C~C20アルキレニルは、上記の飽和アルキル基のすべての二価類似体を包含するが、これらに限定されない。
【0100】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」及び「アルキニル」という用語は、水素原子を欠いているアルケン及びアルキンをそれぞれ指し、直鎖、分岐及び/又は環状基を含むことができ、非置換であっても置換されていてもよい。C~C20アルケニル基の非限定的な例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、l-プロペン-2-イル、1-ブテン-l-イル、l-ブテン-2-イル、l-ブテン-3-イル、2-ブテン-l-イル、2-ブテン-2-イル、オクテニル、デセニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロノナネニル、シクロデカネニルなどが挙げられ得る。したがって、別段の指定がない限り、C~C20アルケニレニルは、上記のアルケニル基のすべての二価類似体を包含するが、これらに限定されない。C~C20アルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニルなどが挙げられ得る。したがって、別段の指定がない限り、C~C20アルキニレニルは、上記のアルキニル基のすべての二価類似体を包含するが、これらに限定されない。
【0101】
非芳香族複素環基の非限定的な例としては、アジリジニル、アゼチジニル、ジアゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリジニル、フタルイミジル、スクシンイミジル、オキシラニル、テトラヒドロピラニル、オキセタニル、ジオキサニル、チエタニル、チエピニル、モルホリニル、オキサチオラニルなどが挙げられる。さらに指定されない限り、「アリール」基は、単一の芳香環並びに少なくとも1つの芳香環を含む縮合環の両方を含む。C~C20アリール基の非限定的な例としては、フェニル(Ph)、ペンタレニル、インデニル、ナフチル及びアズレニルが挙げられる。X~X20芳香族複素環基の非限定的な例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、アクリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、プリニル、カルバゾリル、インダゾリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、フェナントリジニル、フェナジニル、フェナントロリニル、ペリミジニル、フリル、ジベンゾフリル、キサンテニル、ベンゾフリル、チオフェニル、チアントレニル、ベンゾチオフェニル、ホスホリニル、ホスフィノリニル、ホスフィンドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリルなどが挙げられる。
【0102】
本明細書で使用される場合、「置換」という用語は、当業者に通常理解されるように使用され、一般に、1つの化学基が異なる化学基で置換された化合物又は化学的実体を指す。別段の指定がない限り、置換アルキルは、1個又は複数の水素原子がそれぞれ独立して、水素ではない原子で置き換えられているアルキルである。例えば、クロロメチルは、置換アルキルの非限定的な例、より具体的には置換メチルの例である。アミノエチルは、置換アルキルの別の非限定的な例、より具体的には置換エチルの例である。別段の指定がない限り、置換された化合物又は基(例えば、アルキル、アリールなど)は、当業者に合理的な任意の化学基で置換され得る。例えば、限定されないが、炭素又はヘテロ原子(例えば、N)に結合した水素は、ハロゲン化物(例えば、F、I、Br、Cl)、アミン、アミド、オキソ、ヒドロキシル、チオール、ホスファート、ホスホナート、スルファート、SOH、SOH、アルキル、アリール、ケトン、カルボキシアルデヒド、カルボキシラート、カルボキサミド、ニトリル、モノハロメチル、ジハロメチル又はトリハロメチルで置換されてもよい。
【0103】
本明細書で使用される場合、「非置換」という用語は、当業者に通常理解されるように使用される。非置換アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、tert-ブチル、ペンチルなどが挙げられる。「置換されていてもよい」という表現は、「非置換又は置換されている」という表現と互換的に使用される。
【0104】
本明細書で提供される構造では、水素は、示されても示されなくてもよい。いくつかの実施形態では、水素(図示又は暗黙)は、プロチウム(すなわち、H)、重水素(すなわち、H)又はHとHの組合せであってもよい。HをHと交換する方法は、当技術分野で周知である。溶媒交換可能な水素の場合、HとHの交換は、適切な重水素源の存在下で、触媒なしで容易に起こる。酸、塩基又は金属触媒を使用して、高温度及び高圧の条件と組み合わせると、交換不可能な水素原子の交換が促進され、一般的には分子中のすべてのHをHに交換することができる。
【0105】
化学式(例えば、表3及び表4に列挙した基において)の結合を介して、又は末端部に示される波線「
【化2】

」記号は、波線の反対側の構造の定義を変更することなく、波線の片側にR基を定義することを意図している。R基が2つ以上の側に結合している場合(例えば、R)、波線の外側に示されている原子は、R基の向きを明確にすることを意図している。したがって、2つの波線の間の原子のみがR基の定義を構成する。原子が波線の外側に示されていない場合、又は波線なしで示されているが複数の側に結合を有する化学基(例えば、-C(O)NH-など)の場合、化学基は、他の向きが明確に意図されていない限り、その基が関連する式の向きと一致して左から右に読み取られる(例えば、式-R-R-R-の場合、-C(O)NH-としてのRの定義は、-R-NHC(O)-R-としてではなく-R-C(O)NH-R-として式に組み込まれる)べきである。
【0106】
本開示は、放射性同位体及び非放射性同位体、並びに同位体置換体である化合物、複合体又は分子組成物に関する。同位体置換体が特定の同位体を含有すると同定される場合、化合物/複合体/組成物は、実際には、同定された同位体に大きく有利な同位体置換体の混合物中で得られる可能性があることが理解される。例えば、hot-F又は18F同位体置換体として同定された化合物/複合体/組成物の調製物は、実際には、対応する19F同位体置換体の最小量を含有してもよい。逆に、hot-M又は放射性金属化同位体置換体(例えば、177Lu)として同定された化合物/複合体/組成物の調製物は、対応する非放射性同位体置換体(例えば174Lu、natLu)の最小量を含有してもよい。
【0107】
「Xaa」という用語は、ペプチド鎖中のアミノ酸残基、又はそうでなければ化合物の一部であるアミノ酸を指す。アミノ酸は、アミノ基とカルボン酸基の両方を有し、そのいずれか又は両方を共有結合に使用することができる。化合物の残りの部分に結合する際に、アミノ基及び/又はカルボン酸基は、アミド又は他の構造に変換されてもよく、例えば、第1のアミノ酸のカルボン酸基は、第2のアミノ酸のアミノ基に結合するとアミド(すなわち、ペプチド結合)に変換される。したがって、Xaaは、式-N(R)RC(O)-を有することができ、式中、R及びRはR基である。Rは、典型的には、水素又はメチルであるか、又はR及びRは、環状構造を形成し得る。ペプチドのアミノ酸残基は、典型的なペプチド(アミド)結合を含むことができ、側鎖官能基と別のアミノ酸の側鎖又は主鎖官能基との間の結合をさらに含むことができる。例えば、ペプチド中の1つのアミノ酸残基の側鎖カルボキシラート(例えば、Asp、Gluなど)は、ペプチド中の別のアミノ酸残基のアミン(例えば、Dap、Dab、Orn、Lys)に結合することができる。さらなる詳細を以下に提供する。別段の指示がない限り、「Xaa」は、タンパク質原性又は非タンパク質原性アミノ酸を含む任意のアミノ酸であってもよい。非タンパク質原性アミノ酸の非限定的な例を表1に示し、D-アミノ酸(以下のアミノ酸のD型を含むがこれに限定されない)、オルニチン(Orn)、3-(1-ナフチル)アラニン(Nal)、3-(2-ナフチル)アラニン(2-Nal)、α-アミノ酪酸、ノルバリン、ノルロイシン(Nle)、ホモノルロイシン、ベータ-(1,2,3-トリアゾール-4-イル)-L-アラニン、1,2,4-トリアゾール-3-アラニン、Phe(4-F)、Phe(4-Cl)、Phe(4-Br)、Phe(4-I)、Phe(4-NH)、Phe(4-NO)、ホモアルギニン(hArg)、2-アミノ-4-グアニジノ酪酸(Agb)、2-アミノ-3-グアニジノプロピオン酸(Agp)、Β-アラニン、4-アミノ酪酸、5-アミノ吉草酸、6-アミノヘキサン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノ-3-(アントラセン-2-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(アントラセン-9-イル)プロパン酸、2-アミノ-3-(ピレン-1-イル)プロパン酸、Trp(5-Br)、Trp(5-OCH)、Trp(6-F)、Trp(5-OH)又はTrp(CHO)、2-アミノアジピン酸(2-Aad)、3-アミノアジピン酸(3-Aad)、プロパルギルグリシン(Pra)、ホモプロパルギルグリシン(Hpg)、ベータ-ホモプロパルギルグリシン(Bpg)、2,3-ジアミノプロピオン酸(Dap)、2,4-ジアミノ酪酸(Dab)、アジドリジン(Lys(N))、アジドオルニチン(Orn(N))、2-アミノ-4-アジドブタン酸Dab(N)、Dap(N)、2-(5’-アジドペンチル)アラニン、2-(6’-アジドヘキシル)アラニン、4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン(Pip)、4-(2-アミノエチル)-1-カルボキシメチル-ピペラジン(Acp)、及びトラネキサム酸が挙げられる。L-又はD-アミノ酸として指定されない場合、アミノ酸はL-アミノ酸と理解されるものとする。
【0108】
【表1-1】

【表1-2】
【0109】
本明細書で使用される場合、「分子組成物」という用語は、多鎖タンパク質などの非共有結合相互作用(例えば、疎水性、イオン性、静電性など)によって2つ以上の分子が一緒に保持されている分子複合体を意味すると理解される。
【0110】
本発明の様々な態様は、化合物又は分子複合体に関するものであり、
・放射性同位体又は非放射性同位体あるいは非金属でキレート化してもよいように構成された金属キレート剤、
19F/18F交換による放射性フッ素化のために構成されたトリフルオロボラート(BF)含有部分又は18F標識トリフルオロボラートへの変換が可能なボロナート前駆体、及び場合により
・細胞標的化ドメインを含む。
【0111】
そのような化合物/複合体は、イメージング又は放射線療法に適しているという点でデュアルモードであり、又は両方の用途に使用することができる。例えば、化合物/複合体は、18F標識されている場合(「hot-F」)、イメージング/診断剤として使用されてもよく、又は治療用放射性金属同位体(「hot-M」)でキレート化されている場合、治療剤として使用されてもよい。これは、イメージング及び治療のために同じ化合物を使用する利点を提供し、すなわち、放射線治療剤(hot-Mを使用した治療に最適化された)と化学的に同一である18F標識コンパニオン診断薬(hot-Fを使用したイメージングに最適化)が提供される。
【0112】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、非キレート化であるか、又は非放射性金属同位体(「cold-M」)でキレート化されている。本明細書で使用される場合、非キレート化及び非放射性金属同位体でのキレート化の両方が「cold-M」であると考えられる。そのような実施形態のBF含有部分が18F標識されている場合、hot-F/cold-M化合物/複合体は、放射性金属同位体からのいかなる悪影響も引き起こすことなく、イメージング剤又は診断剤として有用である。
【0113】
対象が治療的処置の候補であることをイメージングが明らかにする場合、同じ化合物/複合体を(cold-F/hot-M又はhot-F/hot-Mのいずれかとして)投与することができる。したがって、hot-F/cold-M化合物/複合体は、hot-M治療剤のコンパニオン診断薬として有用である。他の場合には、キレートされていない化合物/複合体を同様に良好に使用することができることが考えられ、他の実施形態では、ホットメタルカチオンの代わりに代替の金属カチオンを使用してもよいことが認識されている。例えば、いくつかの実施形態では、放射性Zn2+が治療的又は診断的に一般的に使用されない場合でも、非放射性Zn2+でキレート化されたhot-F化合物を使用することができる。したがって、いくつかの実施形態では、金属キレート剤は放射性同位体でキレート化され、BF含有部分は19F標識され、他の実施形態では、金属キレート剤は放射性同位体でキレート化され、BF含有部分も18F標識される。
【0114】
「BF3」及び「BF」という用語(すなわち、下付き文字「3」)は同じ意味を有し、本出願では互換的に使用される。
【0115】
「細胞標的化ドメイン」(「細胞抗原標的化モジュール」とも呼ばれる)という用語は広い意味を有し、細胞マーカーに特異的に結合する任意の化合物又は複合体、例えば、限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、核酸、ステロイド、アプタマー、アフィボディ、ミニボディ、ビタミン、小分子、大環状分子などを含む。「細胞マーカー」という用語は、限定するものではないが、分化クラスター(CD)分子などの細胞表面抗原を含む。別段の指示がない限り、本明細書で使用される「抗原」という用語は、細胞標的化ドメインの細胞マーカー(又は抗原)への結合によって誘発される免疫応答を必ずしも必要としないと理解され、様々な実施形態は、生理学的条件下(例えばインビボ)での細胞マーカーへの特異的結合のみを必要とする。いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、ヒト細胞マーカー又はヒトCD分子を標的とする。上記の各カテゴリーの様々な細胞標的化ドメインが生産されており、多くが市販されている。例えば、抗体は、広範囲のヒトCD分子について生成されている。
【0116】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」という語句は、タンパク質及び/又は他の高分子の異種集団とのバックグラウンドでの会合とは対照的に、好ましい会合(例えば、非共有結合性複合体の形成)を指す。したがって、指定された条件下(例えば、イムノアッセイ条件)で、細胞標的化ドメインは、サンプル(インビトロ)又は生物(インビボ)中に存在する他の高分子との会合のバックグラウンドレベルの少なくとも2倍を会合すると、細胞マーカーに「特異的に結合する」。様々なイムノアッセイ形式又は他の結合アッセイを使用して、特定の標的マーカーと特異的に結合する細胞標的化ドメインを選択することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的に結合する抗体を選択するために日常的に使用されている。いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、バックグラウンドシグナルに対して少なくとも2倍、場合によってはバックグラウンドに対して少なくとも10倍~100倍の結合シグナルを生じる。別段の指定がない限り、細胞標的化ドメインと標的マーカーとの会合は、一般に、約10-4M~10-15Mの平衡解離定数(K)を有する。いくつかの実施形態では、会合は約10-4M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-5M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-6M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-7M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-8M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-9M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-10M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-11M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-12M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-13M未満である。いくつかの実施形態では、会合は約10-14M未満である。当技術分野で既知の任意の方法を使用して平衡解離定数を測定することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である。ペプチド及びポリペプチドは、標準的な方法を使用して合成することができ、その非限定的な例を以下にさらに詳細に記載する。タンパク質は、標準的な分子生物学的方法を使用して調製することができる。
【0118】
標的細胞マーカーに特異的に結合する様々なペプチド、ポリペプチド及びペプチド模倣物が知られている。非限定的な例としては、LLP2A、PSMA-617、TATE、ボンベシン又は誘導体(例えば、D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHなど)、RGD、コレシストキニンが挙げられる。LLP2Aは、経細胞最晩期抗原4(VLA-4)を標的とする。PSMA-617は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を標的とする。TATEは、ソマトスタチン受容体を標的とする。ボンベシン及びその誘導体は、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)を標的とする。ブラジキニン(BK)及びその誘導体は、ブラジキニン1受容体を標的とする。受容体の任意の他のペプチドリガンドを使用することができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、ペプチド模倣物である。ペプチド模倣物は、ペプチド/ポリペプチド基を非ペプチド基で置換することによって産生することができる。例えば、限定されないが、ペプチド結合アミド(-C(O)-NH-)は、インビボでのペプチド半減期を増加させるために、擬似ペプチド結合(-CH-NH-)、炭素-炭素結合(-CH-CH-)又は尿素結合(-NH-C(O)-NH-)で置き換えることができる。
【0120】
細胞マーカーを特異的に標的化することができる様々なタイプのポリペプチド/タンパク質ドメインが知られている。いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、細胞マーカーに特異的に結合する抗体、又は抗体可変ドメインを含む抗体誘導体/断片であるか、又はそれを含む。抗体及び抗体誘導体の場合、細胞マーカーは、抗体可変ドメインによって特異的に結合されるエピトープを含有する抗原と考えられる。一般に、「エピトープ」は、ペプチド、タンパク質、核酸、炭水化物、多糖、脂質、有機化合物など、並びに抗体可変ドメインとの接触を形成するそれらの複合体であってもよい。エピトープは、連続的でも不連続的であってもよい。抗体可変ドメインと接触するエピトープの領域は、典型的には約4~10nmである。リンカーの有無にかかわらず、抗体又は抗体誘導体/断片を化合物/複合体の残りの部分に結合させる方法は公知である。例えば、化合物は、そのN末端、C末端、システイン残基、リジン残基、又は他の場所で、化学的又は酵素的コンジュゲーション(例えば、抗体-薬物コンジュゲートについて十分に実証されているように)によって抗体に結合されている。
【0121】
抗体の重鎖は、可変ドメイン(V)及び複数の定常ドメイン(例えば、IgG1の場合、C 、C 及びC )から構成される。抗体の軽鎖は、可変ドメイン(V)及び定常ドメイン(C)から構成される。V及びVの各々は、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)並びにフレームワーク領域を含む。6つのCDRはすべてエピトープ結合に寄与し得るが、それらの相対的寄与は様々であり、特定の場合には、6つすべてのCDRが結合に必要であるわけではない。例えば、重鎖のCDR3は、エピトープ結合に不釣り合いに多く寄与する傾向がある。さらに、3つのCDRのみを有する単一ドメイン抗体、ナノボディなどが公知である(例えば、ヒトコブラクダ、ラクダ、ラマ、アルパカ、サメ又は類似の動物の重鎖可変ドメインから得られるか又はそれに由来するか、あるいはヒト抗体及びマウス抗体を含むがこれらに限定されない従来の抗体の重鎖から操作された単一ドメイン抗体)。別段の指定がない限り、本明細書で使用される「抗体可変ドメイン」という語句は、V、VとVの両方、単一ドメイン抗体、ナノボディ、又は抗原のエピトープ部分の特異的結合に必要なCDR(例えば、1、2、3、4、5又は6つのCDR)を適切に配置する任意の抗体由来タンパク質を含む任意のタンパク質を指す。標的エピトープに結合する抗体可変ドメインを含むタンパク質を産生する方法は公知であり、(限定されないが)、免疫化動物からの抗体の単離、全抗体の改変、組換えDNA法又は固相ペプチド/ポリペプチド合成を用いたデノボ合成、又はディスプレイライブラリーなどから選択される抗体の単離が挙げられる。
【0122】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、抗体を含む。抗体は、任意の種のものであってもよく、あるいはキメラ又は人工又は遺伝子操作されたものであってもよい。例えば、限定されないが、抗体は、非ヒト(例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ラマなどのラクダ科動物、サメなどの軟骨魚類、マウス、ラット、サル又はその他)、霊長類化、ヒト化又は完全ヒトであってもよい。キメラ抗体は、複数の種、例えばヒト及び非ヒト又は2つの非ヒト種由来のアミノ酸配列を含む。非ヒト抗体をヒト化又は霊長類化するための方法は、当技術分野で周知であり、例えば、非ヒト(又は非霊長類)定常ドメインをヒト抗体の定常ドメインと置換する(キメラ抗体を作成する)ことによるか、又はヒト(又は霊長類)抗体のCDRの1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5又は6つ)を非ヒト抗体と置換することによる。抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖から構成され得る。抗体は、リンカーによって分離された重鎖及び軽鎖を有する一本鎖抗体であってもよい。抗体は、重鎖のみの抗体(例えば、軽鎖を欠くラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ、ラマ、又はサメ抗体、あるいはヒト重鎖)であってもよい。抗体は、単一ドメイン抗体(sdAb)であってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、抗体誘導体を含む。本明細書で使用される場合、「抗体誘導体」という用語は、抗原結合機能を保持する抗体断片、並びに人工抗体を含む。抗体誘導体は、抗体可変ドメインを含む。抗原結合断片は、V及びVの両方、又はVを含まないVを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体誘導体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv(すなわち、一本鎖Fv)、scFv-Fc、sdAb、ミニボディ、ナノボディ、二重特異性抗体又は三重特異性抗体を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、抗体又は抗体誘導体は、IgA、IgM、IgG、IgE、IgD、sdAb、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、scFv-Fc、ミニボディ、ナノボディ、二重特異性抗体又は三重特異性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、IgG抗体である。
【0125】
多くの抗体は、低いマイクロモル濃度からナノモル濃度の範囲のK値を有し、高親和性抗体は、低いナノモル濃度のK値を有し、非常に高親和性の抗体は、ピコモル濃度のK値を有する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体誘導体は、500nM未満、400nM未満、300nM未満、200nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、5nM未満、又は1nM未満のKで細胞抗原に結合する。いくつかの実施形態では、抗体又は抗体誘導体は、ピコモル濃度のK(10-10M~10-12M)で結合基質に結合し得る。このような結合親和性は、mRNAディスプレイ、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、及び酵母ディスプレイなどの公知のディスプレイ技術を使用して、所望の標的に対する特異的及び高親和性について選択することによってライブラリーをスクリーニングして、そしていくつかの場合には親和性成熟方法によって得ることができる。
【0126】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、細胞マーカーに特異的に結合する核酸アプタマーである。アプタマーは、広範囲の細胞標的に結合することができる一本鎖オリゴヌクレオチド(DNA又はRNA)である。アプタマーは、ランダムライブラリーからの選択及び配列最適化などの様々な方法を使用して、所望の標的に高親和性、例えばサブナノモル濃度Kで結合するように産生することができる。アプタマーは、標準的なオリゴヌクレオチド合成方法/装置によって合成され、リンカーの有無にかかわらず、化学的コンジュゲーションを使用して化合物/複合体の残りの部分に結合することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、細胞標的化ドメインは、注射前又は注射後のいずれかにキレート剤-BFと反応する反応性基に最初にコンジュゲートされるプレ標的化の状況で使用され得る。例えば、限定されないが、抗体又はアプタマーは、シクロオクテンにコンジュゲートされる。これを注射し、標的と会合させ、次いで同じ動物又は患者に、N押出環化付加反応を介してシクロオクテンコンジュゲートとインビボで反応するように、テトラジンに連結されたキレート剤-BF3を注射する。他の場合では、N押出環化付加反応を注射前に行う。
【0128】
金属キレート剤は、放射性金属を結合するのに適した任意のキレート剤であってもよい。多くの適切な放射性金属キレート剤は、例えばPrice及びOrvig、Chem.Soc.Rev.、2014、43、260~290に要約されているように、公知であり、広範な種類の金属キレート剤が市販されているか(例えば、Macrocyclics(商標)から)、又は文献に記載されており、ここに列挙するには多すぎる。
【0129】
いくつかの実施形態では、限定されないが、金属キレート剤は、DOTA及び誘導体;DOTAGA;NOTA;NODAGA;NODASA;CB-DO2A;3p-C-DEPA;TCMC;DO3A;DTPA並びにCHX-A’’-DTPA及び1B4M-DTPAから選択されてもよいDTPA類似体;TETA;NOPO;Me-3,2-HOPO;CB-TE1A1P;CB-TE2P;MM-TE2A;DM-TE2A;サルコファジン並びにSarAr、SarAr-NCS、diamSar、AmBaSar、及びBaBaSarから選択されてもよいサルコファジン誘導体;TRAP;AAZTA;DATA及びDATA誘導体;H2-macropa又はその誘導体;H2dedpa、H4octapa、H4py4pa、H4Pypa、H2azapa、H5decapa、及び他のピコリン酸誘導体;CP256;PCTA;DOTP;HEHA;C-NETA;C-NE3TA;HBED;SHBED;BCPA;CP256;YM103;サイクラム;DiamSar;デスフェリオキサミン(DFO)及びDFO誘導体;H6phospa;トリチオールキレート;メルカプトアセチル;ヒドラジノニコチンアミド;ジメルカプトコハク酸;1,2-エチレンジイルビス-L-システインジエチルエステル;メチレンジホスホナート;ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム;及びヘキサキス(メトキシイソブチルイソニトリル);ポルフィリン、クロリン、テキサフリン、フタロシアニンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、DOTA又はDOTA誘導体である。特に、当業者は、本明細書に列挙されたキレート剤のいずれかを当技術分野の別のキレート剤で置き換えることができる。
【0130】
金属キレート剤の例示的な非限定的な例及びこれらのキレート剤によってキレート化され得る例示的な放射性金属を表2に示す。代替の実施形態では、金属キレート剤は、表2で選択される金属キレート剤であるか、又はそれを含む。
【0131】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【0132】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、キレート化されていない(すなわち、非金属化)。
【0133】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、放射性金属同位体(放射性金属)又は非放射性金属同位体のいずれかの金属にキレート化/複合体形成される。いくつかの実施形態では、キレート化金属は、非放射性である。いくつかの実施形態では、キレート化金属は、放射性金属である。いくつかの実施形態では、放射性金属は、治療用放射性金属であり、放射性毒性であることを意味する(本明細書では「放射性毒素」とも呼ばれる)。いくつかの実施形態では、放射性金属は、治療用アルファ放射体である。いくつかの実施形態では、放射性金属は、ベータ放射体である。いくつかの実施形態では、放射性金属は、オージェ放射体である。いくつかの実施形態では、治療用放射性金属は、64Cu、67Ga、111In、177Lu、117mSn、165Er、90Y、227Th、225Ac、213Bi、212Bi、211As、212Pb、47Sc、166Ho、188Re、186Re、149Pm、159Gd、105Rh、109Pd、198Au、199Au、175Yb、142Pr又は114mInである。
【0134】
いくつかの実施形態では、放射性金属は、68Ga、61Cu、64Cu、67Cu、67Ga、111In、44Sc、86Y、89Zr、90Nb、177Lu、117mSn、165Er、90Y、227Th、225Ac、213Bi、212Bi、72As、77As、211At、203Pb、212Pb、47Sc、166Ho、188Re、186Re、149Pm、159Gd、105Rh、109Pd、198Au、199Au、175Yb、142Pr、114mIn、94mTc、99mTc、149Tb、152Tb、155Tb又は161Tbである。他の実施形態では、放射性金属、放射性核種結合金属、又は放射性核種結合金属含有部分又は補欠分子族は、68Ga、61Cu、64Cu、67Cu、67Ga、111In、44Sc、86Y、177Lu、90Y、225Ac、213Bi又は212Biである。いくつかの実施形態では、キレート剤は表2のキレート剤であり、キレート化放射性金属/放射性核種は、キレート剤の結合剤として表2に示される放射性核種である。
【0135】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、DOTAあるいは177Lu、111In、213Bi、68Ga、67Ga、203Pb、212Pb、44Sc、47Sc、90Y、86Y、225Ac、117mSn、153Sm、149Tb、152Tb、155Tb、161Tb、165Er、213Bi、224Ra、212Bi、212Pb、225Ac、227Th、223Ra、47Sc、64Cu又は67Cuでキレート化したその誘導体、225AcとコンジュゲートしたH2-MACROPA、227Thでキレート化したMe-3,2-HOPO、225Ac、227Th又は177Luでキレート化したHpy4pa、177Luでキレート化したHpypa、68Gaでキレート化したNODAGA、111Inでキレート化したDTPA、又は89Zrでキレート化したDFOである。
【0136】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、TETA(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸)、SarAr(1-N-(4-アミノベンジル)-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]エイコサン-1,8-ジアミン)、NOTA(1,4,7-トリアザシクロノナン1,4,7-三酢酸)、TRAP(1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-トリス[メチル(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸)、HBED(N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)-エチレンジアミン-N,N-二酢酸)、2,3-HOPO(3-ヒドロキシピリジン-2-オン)、PCTA(3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸)、DFO(デスフェリオキサミン)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、OCTAPA(N,N-ビス(6-カルボキシ-2-ピリジルメチル)-エチレンジアミン-N,N-二酢酸)又は別のピコリン酸誘導体である。
【0137】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、メルカプトアセチル、ヒドラジノニコチンアミド、ジメルカプトコハク酸、1,2-エチレンジイルビス-L-システインジエチルエステル、メチレンジホスホナート、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム及びヘキサキス(メトキシイソブチルイソニトリル)などの、99mTc、94mTc、186Re、又は188Reで放射性標識するためのキレート剤である。いくつかの実施形態では、キレート剤は、メルカプトアセチル、ヒドラジノニコチンアミド、ジメルカプトコハク酸、1,2-エチレンジイルビス-L-システインジエチルエステル、メチレンジホスホナート、ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム又はヘキサキス(メトキシイソブチルイソニトリル)である。これらの実施形態のいくつかでは、キレート剤は、放射性金属によって結合される。いくつかのこのような実施形態では、放射性金属は、99mTc、94mTc、186Re、又は188Reである。
【0138】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、72As又は77Asに結合することができるキレート剤、例えばトリチオールキレートなどである。いくつかの実施形態では、キレート剤は、トリチオールキレートである。いくつかの実施形態では、キレート剤は、72Asにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、キレート剤は、77Asにコンジュゲートされる。
【0139】
上記の金属キレート剤へのキレート化に適した非放射性金属、例えば89Y、174Lu、208Pbなどが周知であり、金属キレート化の技術分野に精通した者によって典型的に使用されるような遷移金属、ランタニド及びアクチニドにおいて一般に知られている既知の安定又は準安定同位体を含む。
【0140】
BF含有部分(「BF含有補欠分子族」とも呼ばれる)は、18F/19F交換放射標識が可能な任意のそのような基であってもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、BF含有部分は
【化3】

であり、R及びRの各々は独立してC~C直鎖又は分岐アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、同一である。いくつかの実施形態では、R及びRは、異なる。
【0142】
いくつかの実施形態では、BF含有部分は、表3(下記)に示す基であり、例えば-OR、-SR、-NR-、-NHR又は-NR基で置換されたピリジン中の各R(存在する場合)は、独立してC~C直鎖又は分岐アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチルである。いくつかの実施形態では、BF含有部分は、
【化4】

である。
【0143】
【表3-1】

【表3-2】
【0144】
いくつかの実施形態では、BF含有部分は、表4(下記)に示す基であり、例えば-OR、-SR、-NR-、-NHR又は-NR基で置換されたピリジン中の各R(存在する場合)は、独立してC~C直鎖又は分岐アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。
【0145】
【表4-1】

【表4-2】
【0146】
いくつかの実施形態では、BF含有部分は、18Fを含む。いくつかの実施形態では、BF含有部分中の1個のフッ素は、18Fである。いくつかの実施形態では、3個のフッ素はすべて18Fである。いくつかの実施形態では、BF含有部分の3個のフッ素はすべて19Fである。
【0147】
いくつかの実施形態では、化合物又は複合体は、複数のBF含有部分を含み、その各々は、同一であっても異なっていてもよく、又はそれらの組合せであってもよい。いくつかの実施形態は、2個のBF含有部分を含み、その各々は、上に列挙したものから独立して選択される。いくつかの実施形態は、3個のBF含有部分を含み、その各々は、上に列挙したものから独立して選択される。いくつかの実施形態は、4個のBF含有部分を含み、その各々は、上に列挙したものから独立して選択される。いくつかの実施形態では、BF含有部分は、金属キレート剤と細胞標的化ドメインとの間に位置するリンカーに結合している。
【0148】
同位体交換による18F標識化は、標識化の好ましい方法であってもよいが、他のsp2/sp3ハイブリダイズしたボロナート種の変換は、特定の場合には有利であってもよいことが理解される。そのようなボロナートの例としては、ピナコラート、ジ-、トリ-、テトラ-アリール化ピナコラート、ネオペンチルジオラート、カテコラート、ジオラート一般、MIDA-ボロナート、アントラニルアミドに基づく複合体、場合によってはボロヒドリドが挙げられる。そのようなボロナート複合体は、有機ボロン化学の当業者に知られているか又は容易に知られており、そのような複合体は、対応するトリフルオロボラートに容易に変換することができる場合、場合により興味深い。したがって、いくつかの実施形態では、化合物/複合体は、BF含有部分の代わりに18F標識トリフルオロボラートに変換することができるボロナート前駆体を含む。
【0149】
化合物又は分子複合体は、リンカーをさらに含むことができる。例えば、限定されないが、金属キレート剤は、BF含有部分を含有するリンカーによって細胞標的化ドメインに連結することができる。いくつかの実施形態では、リンカーは、2個(又はそれを超える)のBF含有部分を含む。しかし、化合物/複合体の成分は、任意の構成を有し得る。例えば、BF含有部分(1個又は複数)は、金属キレート剤及び/又は細胞標的化ドメインに直接結合することができる。リンカーの非限定的な例は、ペプチドリンカーである。
【0150】
リンカーは、例えば、限定されないが、アミノ酸リンカー、ペプチドリンカー、ポリエチレングリコール(PEG)リンカー、アルキレンリンカー(例えば、C~C30)、エーテル、エステル、チオエーテル、ジスルフィド、チオエステル、アミド、カルバマート、ウレイド、ホスホジエステルを含む任意のリンカーであってもよい。いくつかの実施形態では、リンカーは、nが1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15又は15超である-N(H)-(CH)n-C(O)-であるか、又はそれを含む。
【0151】
いくつかの実施形態では、リンカーは、直鎖又は分岐ペプチドリンカー(Xaaであり、式中、nは1~8であり、各Xaaは、同一又は異なり、あるいはそれらの組合せである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、直鎖ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、ペプチドリンカーは、分岐ペプチドリンカーである。いくつかの実施形態では、nは、1である。いくつかの実施形態では、nは、2である。いくつかの実施形態では、nは、3である。いくつかの実施形態では、nは、4である。いくつかの実施形態では、nは、5である。いくつかの実施形態では、nは、6である。いくつかの実施形態では、nは、7である。いくつかの実施形態では、nは、8である。いくつかの実施形態では、各Xaaは、表1に列挙されたタンパク質原性アミノ酸及び非タンパク質原性アミノ酸から独立して選択される。いくつかの実施形態では、リンカー中の各ペプチド骨格アミノ基は、メチル化されていてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、リンカーは、Lys(AMBF)を含む。いくつかの実施形態、例えば(限定されないが)PEGリンカー又はペプチドリンカー(Xaa1~8を含むいくつかの実施形態では、リンカーは、-N(H)-C(R)(H)-C(O)-として定義されるアミノ酸残基Xaaを含み、式中、RはC~Cアルキレニル基であり、R
【化5】

又は
【化6】

であり、R
【化7】

あるいは表1又は表2に示す基であり、各Rは独立してC~C直鎖又は分岐アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、-CH-である。いくつかの実施形態では、Rは、-(CH-である。いくつかの実施形態では、Rは、-(CH-である。いくつかの実施形態では、Rは、-(CH-である。いくつかの実施形態では、Rは、-(CH-である。いくつかの実施形態では、Rは、
【化8】

である。いくつかの実施形態では、Rは、
【化9】

である。いくつかの実施形態では、Rは、
【化10】

であり、式中、R及びRの各々は、独立して、C~C直鎖又は分岐鎖アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは、同一である。いくつかの実施形態では、R及びRは、異なる。いくつかの実施形態では、Rは、
【化11】

である。いくつかの実施形態では、Rは、
【化12】

である。いくつかの実施形態では、リンカーは、それぞれが独立して上記に定義される通りである2個のXaa残基を含む(すなわち、同一又は異なる)。
【0153】
いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、アミド結合(アミノ基とカルボン酸基との間)又は1,2,3-トリアゾール(アジドとアルキンとの間の反応)を形成することによって、あるいはマレイミドとチオール基との間の反応によって、リンカー又は細胞標的化ドメインに結合する。
【0154】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインのN末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合し、BF含有部分(又は前駆体)は、細胞標的化ドメインのC末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインのC末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合し、BF含有部分(又は前駆体)は、細胞標的化ドメインのN末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインのN末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合し、BF含有部分(又は前駆体)は、細胞標的化ドメインの側鎖に(リンカーを用いて又は用いずに)結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインのC末端に(リンカーを用いて又は用いずに)結合し、BF含有部分(又は前駆体)は、細胞標的化ドメインの側鎖に(リンカーを用いて又は用いずに)結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤及びBF含有部分の両方が、ペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインの別々の側鎖に(リンカーを用いて又は用いずに)結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、リンカーを介してペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインのN末端又はC末端に結合し、BF含有部分(又は前駆体)はリンカーに結合する。いくつかの実施形態では、キレート剤は、リンカーを介してペプチド/ポリペプチド/タンパク質細胞標的化ドメインの側鎖に結合し、BF含有部分(又は前駆体)は、リンカーに結合する。例示を目的として、図1は、化合物又は複合体の様々な非限定的な構成を示す。
【0155】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、式Iを有するか、あるいは式Iの塩又は溶媒和物であり、
[キレート剤]-[リンカー]-[細胞標的化ドメイン](I)、
ここで、キレート剤は、上記の任意のキレート剤であり、細胞標的化ドメインは、上記の任意の細胞標的化ドメインであり、リンカーは、上記のものから独立して選択される1個又は複数の任意のBF含有部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、上記で定義した任意のペプチドリンカーである。
【0156】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、DOTA-AMBF3-PEG2-LLP2Aであるか、又はそれを含む。
【0157】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、PSMA-617-LysAMBF3-DOTAであるか、又はそれを含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、DOTA-Lys(AMBF3)-TATEであるか、又はそれを含む。
【0159】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、DOTA-Lys-AMBF3-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHであるか、又はそれを含む。
【0160】
いくつかの実施形態では、組成物は、[キレート剤]-[リンカー]-BFを含有する。
【0161】
いくつかの実施形態では、化合物又は分子複合体は、フルオロフォア又は他の発光部分、例えば(限定されないが)Cy3、Cy5、Cy7、他の近IR色素、又はフルオレセインをさらに含む。
【0162】
化合物又は分子複合体の様々な実施形態は、イメージング及び放射線療法に適し、a)細胞抗原標的化モジュール、b)18Fで容易に標識されるBF含有部分/補欠分子族、及びc)放射性治療用同位体又は非放射性同位体と容易に配合される放射性毒素含有部分を含む、デュアルモード化合物又は分子組成物に関する。上記のように、画像診断モード/フォーマットでは、BF部分は少なくとも1個の「hot」放射性フッ素(すなわち、18F)を含有し、放射性毒素含有部分は非放射性(「cold」)同位体/金属原子を含有する(あるいは、全く含有しない)。したがって、いくつかの実施形態では、BF含有部分/補欠分子族は18Fで標識され、放射性毒素含有部分は放射性治療同位体を含有する。標的化された放射線治療モード/形式では、BF部分は、「cold」フッ素(すなわち、19F)を含有し得るが、放射性毒素含有部分は、放射性/放射性毒性「hot」同位体/金属原子(放射線療法に適切に有効)を含有する。したがって、いくつかの実施形態では、BF含有部分/補欠分子族は、19Fで標識され、放射性毒素含有部分は、非放射性同位体を含有するか、又は放射性同位体を含有しない。したがって、このような化合物は、有用なセラノスティックペアを含み、それにより、画像診断モード(すなわち、18Fを用いる)で組成物を使用することによって疾患検出/診断が行われ、標的化された放射線治療モード(すなわち、18Fを用いない及び放射線治療同位体を用いる)で同じ組成物をその後使用することによって疾患治療/治療が行われる。そして、前者は、後者に対する「コンパニオン診断薬」を構成する。
【0163】
上記のように、様々な実施形態では、本発明のデュアルモード(イメージング/放射線療法)化合物の機能的ドメインは、当業者に周知の様々なサイズ/長さの様々なリンカー/介在基によって分離することができる。いくつかの実施形態では、細胞抗原結合モジュール、BF含有補欠分子族及び放射性毒素含有部分は、セラノスティックペアの所望の特性(同じ化学組成のイメージング及び標的化放射線治療のコンパニオン診断薬)を得るために複数の異なる構成で互いに相対的に配置することができる。図1は、デュアルモードPETイメージング剤/放射線治療薬のいくつかの構成の非限定的な表現を示す。
【0164】
いくつかの実施形態では、細胞抗原結合モジュールは、i)ペプチド/ポリペプチド、ii)標的となる細胞抗原に結合することができる非ペプチド/非タンパク質リガンド、iii)抗体又は抗体断片、iv)scFvドメイン/断片、v)核酸アプタマー、あるいはvi)二重特異性抗体又はその断片を含むことができる。したがって、トリフルオロボラート及びキレート剤の両方による修飾は、非ペプチド性小分子、薬物、又は多様な特性を有する他の組成物あるいはより大きな分子、例えば抗体、アプタマーなどに適用され得る。いくつかの実施形態では、標的となる細胞抗原は、経細胞最晩期抗原4(VLA-4)として知られるインテグリンであり、化合物はDOTA-AMBF-PEG2-LLP2Aであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、標的となる細胞抗原/タンパク質は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)であり、化合物はPSMA-617-LysAMBF-DOTAであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、標的となる細胞抗原は、ソマトスタチン受容体(すなわち、SSTR)であり、化合物はDOTA-Lys(AMBF)-TATEであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、標的となる細胞抗原は、ガストリン放出ペプチド受容体(GRPR)であり、化合物はDOTA-Lys(AMBF)-RM2(DOTA-Lys-AMBF-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH)であるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、標的となる細胞抗原は、ブラジキニン受容体(例えば、ブラジキニン-1受容体、B1R)であり、化合物はDOTA-Lys(AMBF3)-BKであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、18Fで容易に標識されるBF含有部分/補欠分子族は、以下の特許出願である国際公開第2005/077967号、国際公開第2009/012596A1号及び国際公開第2014/134716号に開示されている通りであり、これらはそれぞれその全体が参照により組み込まれる米国特許出願第61/775,280号に対する優先権を主張している。
【0165】
いくつかの実施形態では、限定されないが、放射性毒素キレート化部分は、金属イオンキレート剤(例えば、DOTA、NOTA、NODAGA、Octapa、Macropaなど)を含むことができる。他の実施形態では、二峰性又は多峰性と考えられる用途のために金属及びキレート剤を使用する方法で、キレート剤を使用して、蛍光用途、MRI用途、及び金属を含む他の用途(治療、診断、又は放射)のために金属をキレート化することができる。いくつかの実施形態では、限定されないが、治療用放射性毒素/金属は、177Lu又は210Bi又は212Pbを含む。本発明の治療モードを実施するのに有用であろう他の適切な放射性金属が公知であるか、又は得られる。いくつかの実施形態では、キレート剤は、金属なしで使用されるか、又は非放射性金属、例えばZn2+、Ca2+、Ni2+、Gd3+などをキレート化する。そのような化合物は、イメージング(例えば、PETイメージング)に有用であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、18Fと放射性金属(例えば、225Ac)の両方を含むことができる。そのような化合物は、225Acの安定同位体が存在しないという知識を用いて、225Acによる標的化療法に応答する患者を同定するためのイメージング(例えば、PET)に使用され得る。治療のために、放射性毒性225Acを保持しながら19F同位体置換体を使用する。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のトリフルオロボラートを、少なくとも1つのキレート剤を含むトレーサに連結することができる。したがって、いくつかの実施形態では、化合物/組成物は、2つ以上のトリフルオロボラート基を含む。放射性金属も所望されるイメージング用途のために、制限量の18F-フッ化物を使用して二重標識放射性トレーサを調製することも可能である。
【0166】
本明細書に提示される化合物は、当技術分野で確立された様々な方法のいずれかによって合成され得るペプチドを組み込む。これには、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)及び/又はt-ブチルオキシカルボニル(Boc)化学を用いる方法、並びに/あるいは他の合成アプローチを用いた液相及び固相ペプチド合成が含まれるが、これらに限定されない。
【0167】
固相ペプチド合成方法及び技術は、当技術分野において十分に確立されている。例えば、ペプチドは、目的のアミノ酸残基を1個ずつ連続的に組み込むことによって合成することができる。そのような方法では、ペプチド合成は、典型的には、目的のペプチドのC末端アミノ酸を適切な樹脂に結合させることによって開始される。これに先立って、アミノ酸の反応性側鎖及びアルファアミノ基は、適切な保護基によって反応から保護され、アルファカルボキシル基のみが固体支持体上のアミン基、ヒドロキシル基、又はハロゲン化アルキル基などの官能基と反応することを可能にする。C末端アミノ酸の支持体へのカップリングに続いて、アミノ酸の側鎖上の保護基及び/又はアルファアミノ基が選択的に除去され、次の目的のアミノ酸のカップリングが可能になる。所望のペプチドが完全に合成されるまでこのプロセスを繰り返し、その時点でペプチドを支持体から切断し、精製することができる。固相ペプチド合成のための機器の非限定的な例は、Aapptec Endeavor90ペプチド合成装置である。
【0168】
さらなるアミノ酸のカップリングを可能にするために、例えばDMF中のピペリジン(20~50%v/v)などの穏やかな塩基性条件下で、固体支持体上のアミノ酸からFmoc保護基を除去することができる。添加されるアミノ酸もカップリングのために活性化されていなければならない(例えば、アルファカルボキシラートで)。活性化試薬の非限定的な例としては、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HBTU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(TBTU)、2-(7-アザ-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)が挙げられるが、これらに限定されない。ラセミ化は、1-ヒドロキシ-ベンゾトリアゾール(HOBt)及び1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾール(HOAt)などのトリアゾールを使用することによって最小限に抑えられる。カップリングは、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA/DIEA)などの適切な塩基の存在下で行うことができる。長いペプチドの場合、又は所望であれば、ペプチド合成及びライゲーションを使用することができる。
【0169】
ペプチドを伸長させるための典型的なペプチド結合の形成とは別に、ペプチドは、側鎖官能基(例えば、カルボン酸基又はアミノ基)に、側鎖対側鎖、あるいは側鎖対骨格アミノもしくはカルボキシラートのいずれかで結合することによって分岐様式で伸長することができる。アミノ酸側鎖へのカップリングは、公知の方法で行うことができ、樹脂上又は樹脂外で行うことができる。非限定的な例としては、カルボキシル基を含有するアミノ酸側鎖(例えば、Asp、D-Asp、Glu、D-Gluなど)と、アミノ基を含有するアミノ酸側鎖(例えば、Lys、D-Lys、Orn、D-Orn、Dab、D-Dab、Dap、D-Dapなど)又はペプチドN末端との間にアミドを形成すること、アミノ基を含有するアミノ酸側鎖(例えば、Lys、D-Lys、Orn、D-Orn、Dab、D-Dab、Dap、D-Dapなど)と、カルボキシル基を含有するアミノ酸側鎖(例えば、Asp、D-Asp、Glu、D-Gluなど)又はペプチドC末端のいずれかとの間にアミドを形成すること、及びアジド基を含有するアミノ酸側鎖(例えば、Lys(N)、D-Lys(N)など)と、アルキン基(例えば、Pra、D-Praなど)との間にクリックケミストリーを介して1,2,3-トリアゾールを形成することが挙げられる。適切な官能基上の保護基は、アミド結合形成の前に選択的に除去されなければならないが、1,2,3-トリアゾールを形成するためのクリック反応を介したアルキンとアジド基との間の反応は、選択的な脱保護を必要としない。選択的に除去可能な保護基の非限定的な例としては、2-フェニルイソプロピルエステル(O-2-PhiPr)(例えば、Asp/Glu上)並びに4-メチルトリチル(Mtt)、アリルオキシカルボニル(alloc)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)エチル(Dde)及び1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキサ-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde)(例えば、Lys/Orn/Dab/Dap上)が挙げられる。O-2-PhiPr及びMtt保護基は、DCM中2.5%トリフルオロ酢酸(TFA)などの穏和な酸性条件下で選択的に脱保護することができる。Alloc保護基は、DCM中テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)及びフェニルシランを使用して選択的に脱保護することができる。Dde及びivDde保護基は、DMF中2~5%のヒドラジンを使用して選択的に脱保護することができる。次いで、Asp/Glu(L-又はD-形態)及びLys/Orn/Dab/Dap(L-又はD-形態)の脱保護された側鎖を、例えば上記のカップリング反応条件を使用することによってカップリングすることができる。
【0170】
ペプチド骨格アミドは、N-メチル化されていてもよい(すなわちアルファアミノメチル化)。これは、ペプチド合成中にFmoc-N-メチル化アミノ酸を直接使用することによって達成することができる。あるいは、光延条件下でN-メチル化を行ってもよい。最初に、NMP中の4-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(Ns-Cl)及び2,4,6-トリメチルピリジン(コリジン)溶液を使用して、遊離第一級アミン基を保護する。次いで、トリフェニルホスフィン、ジイソプロピルアゾジカルボキシラート(DIAD)及びメタノールの存在下でN-メチル化を達成することができる。続いて、NMP中のメルカプトエタノール及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)を使用して、N-脱保護を行うことができる。保護アミノ酸をN-メチル化アルファアミノ基にカップリングさせるために、HATU、HOAt及びDIEAを使用することができる。
【0171】
リンカーと、本発明の化合物/複合体の異なる成分との間のカップリングは、チオエーテル(-S-)又はエーテル(-O-)結合の形成を必要としてもよく、これは、固相又は溶液相のいずれかで達成することができる。例えば、チオエーテル(-S-)結合の形成は、塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下、適切な溶媒(N,N-ジメチルホルムアミドなど)中で、チオール含有化合物(システイン側鎖上のチオール基など)とハロゲン化アルキル(3-(Fmoc-アミノ)プロピルブロミドなど)との間のカップリングによって達成することができる。エーテル(-O-)結合の形成は、非プロトン性溶媒(例えば、1,4-ジオキサンなど)中、トリフェニルホスフィン及びジイソプロピルアジジカルボキシラート(DIAD)の存在下、アルコール(例えば、セリン又はトレオニンの側鎖上のヒドロキシル基など)とフェノール基(例えば、チロシンの側鎖など)との間の光延反応によって達成することができる。反応が溶液相で行われる場合、使用される反応物は、好ましくは当量モル比(1対1)であり、所望の生成物は、フラッシュカラムクロマトグラフィ又は高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって精製することができる。反応が固相で行われる場合、すなわち一方の反応物が固相に結合している場合、他方の反応物は通常過剰量(固相に結合した反応物の3当量以上)で使用される。反応後、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール及びジクロロメタンなどの溶媒の組合せを用いて固相(樹脂)を順次洗浄することにより、過剰の未反応の反応物や試薬を除去することができる。
【0172】
非ペプチド部分(例えば、放射性標識基、アルブミン結合基及び/又はリンカー)は、ペプチドが固体支持体に結合している間に、ペプチドN末端にカップリングすることができる。これは、非ペプチド部分が活性化されたカルボキシラート(及び必要に応じて保護された基)を含み、その結果、カップリングを樹脂に対して行うことができる場合に容易である。例えば、限定されないが、ペプチドにカップリングするために、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)トリス(tert-ブチルエステル)などの二官能性キレート剤を、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)の存在下で活性化することができる。あるいは、非ペプチド部分は、液相又は固相条件下のいずれかで、銅触媒クリック反応を介して化合物に組み込むことができる。銅触媒クリック反応は、当技術分野において十分に確立されている。例えば、2-アジド酢酸は、NHS及びDCCによって最初に活性化され、ペプチドにカップリングされる。次いで、アルキン含有非ペプチド部分を、水並びにアセトニトリル(ACN)及びDMFなどの有機溶媒中のCu2+及びアスコルビン酸ナトリウムの存在下で、アジド含有ペプチドにクリックすることができる。
【0173】
放射性金属キレート剤の合成は周知であり、多くのキレート剤が市販されている(例えば、シグマアルドリッチ(商標)/ミリポアシグマ(商標)など)。キレート剤への放射性金属のコンジュゲーションのためのプロトコルも周知である(例えば、以下の例1を参照)。
【0174】
一般に、BF含有モチーフは、リンカー上のBF含有アジド(又はアルキニル)基とアルキニル(又はアジド)基との間に1,2,3-トリアゾール環を形成することによって、又はリンカー上のBF含有カルボキシラートとアミノ基との間にアミド結合を形成することによって、クリックケミストリーを介してリンカーに結合することができる。BF含有アジド、アルキン又はカルボキシラートを生成するために、ボロン酸エステル含有アジド、アルキン又はカルボキシラートを最初に調製し、続いてHCl、DMF及びKHFの混合物中でボロン酸エステルをBFに変換する。アルキルBFの場合、ボロン酸エステル含有アジド、アルキン又はカルボキシラートは、ボロン酸エステル含有ハロゲン化アルキル(ヨードメチルボロン酸ピナコールエステルなど)をアミン含有アジド、アルキン又はカルボキシラート(例えば、N,N-ジメチルプロパルギルアミン)とカップリングさせることによって調製することができる。アリールBFの場合、ボロン酸エステルは、ハロゲン化アリール(ヨウ素又は臭化物)及びビス(ピナコラート)ジボロンを使用して鈴木カップリングによって調製することができる。
【0175】
18F-19F同位体交換反応を介したBF含有部分の18Fフッ素化は、以前に公開された手順(Liuら、Nat Protoc 2015 10:1423~1432、参照によりその全体が組み込まれる)に従って達成することができる。一般に、約100nmolのBF含有化合物を、15μlのピリダジン-HCl緩衝液(pH=2.0~2.5、1M)、15μlのDMF及び1μlの7.5mM KHF水溶液の混合物に溶解させる。18F-フッ化物溶液(生理食塩水中、60μl)を反応混合物に添加し、得られた溶液を80℃で20分間加熱する。反応の最後に、水とアセトニトリルの混合物を移動相として使用して、固相抽出又は逆高速液体クロマトグラフィ(HPLC)によって所望の生成物を精製することができる。
【0176】
ペプチドが固体支持体上で完全に合成されたとき、所望のペプチド/化合物は、TFA、トリイソプロピルシラン(TIS)及び水などの適切な試薬を使用して固体支持体から切断することができる。Boc、ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、トリチル(Trt)及びtert-ブチル(tBu)などの側鎖保護基を、同時に除去する(すなわち、脱保護)。粗ペプチド/化合物を沈殿させ、冷エーテルを添加し、続いて遠心分離することによって溶液から回収することができる。ペプチドの精製及び特性評価は、ペプチドのサイズ、電荷及び極性に基づいて、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などの標準的な分離技術によって実施することができる。精製ペプチドの同定は、質量分析又は他の同様のアプローチによって確認することができる。
【0177】
合成スキームの例は、例に提供されている。
【0178】
上記のように、本明細書に開示される化合物/複合体は、イメージング又は放射線療法に適しているという点でデュアルモードであり、又は両方の用途に使用することができる。例えば、化合物/複合体は、18F標識されている場合(「hot-F」)、イメージング/診断剤として使用されてもよく、又は治療用放射性金属同位体(「hot-M」)でキレート化されている場合、治療剤として使用されてもよい。
【0179】
したがって、いくつかの実施形態では、金属キレート剤は、hot-F/cold-M、すなわち18F標識(PETに好ましい)であり、キレート化されていないか、又は非放射性金属同位体でキレート化されている。そのような実施形態は、放射性金属同位体からの悪影響を引き起こすことなく、イメージング剤又は診断剤として有用である。対象が治療的処置の候補であることをイメージングが明らかにする場合、同じ化合物/複合体を(cold-F/hot-M又はhot-F/hot-Mのいずれかとして)投与することができる。したがって、hot-F/cold-M化合物/複合体は、hot-M治療剤のコンパニオン診断薬として有用である。したがって、18Fは、非放射性金属同位体、例えば89Y、174Lu、208Pbにキレート化された結合化合物/複合体を画像化するために使用される。hot-F/cold-M同位体置換体で陽性画像を示す患者は、cold-F/hot-Mを含む放射性毒性同位体置換体で治療することができる。
【0180】
BF含有部分基が18F標識されている場合(すなわち、hot-F)、対象において細胞マーカー/抗原を発現する組織をイメージングするための放射性標識トレーサを調製するための化合物/複合体の使用が開示されている。対象において細胞マーカー/抗原を発現する組織をイメージングする方法も開示され、その方法は、化合物/複合体及び適切な賦形剤を含む組成物を対象に投与すること、及び例えば、PET又はSPECTを使用して対象の組織をイメージングすることを含む。組織が疾患組織である場合、対象を治療するために、hot-Mバージョンを使用した標的治療を選択することができる。
【0181】
金属キレート剤が治療用放射性同位体にキレート化される場合、細胞マーカー/抗原の発現に関連する状態又は疾患の対象を治療するための化合物/複合体(又はその医薬組成物)の使用が開示される。したがって、細胞マーカー/抗原の発現に関連する状態又は疾患の対象を治療するための医薬の調製における化合物の使用が提供される。対象の状態又は疾患を治療する方法も開示され、その方法は、化合物/複合体及び薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0182】
化合物又は分子複合体の様々な実施形態は、18Fで標識された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態の細胞マーカーの存在を確認するために対象をイメージングするため、及び治療用放射性同位体でキレート化された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態を治療することために使用することができる。したがって、18F標識化合物又はセラノスティックペアの分子複合体を対象に投与すること、18Fで標識された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態の細胞マーカーの存在を確認するために対象をイメージングすること、及び放射性金属化化合物又はセラノスティックペアの分子複合体を投与することによって疾患又は状態を治療することを含む方法が開示されている。いくつかの実施形態では、方法/使用は、18F/19F同位体交換反応を行って、放射性フッ素化化合物/複合体を調製することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法/使用は、キレート化反応を行って、放射性金属化化合物/複合体を調製することをさらに含む。いくつかの実施形態では、診断工程に使用される化合物/複合体は、治療工程で使用される化合物/複合体にキレート化された治療用金属の非治療用同位体置換体で金属化される。
【0183】
例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、LLP2Aであってもよく、イメージングされる組織は、VLA-4発現組織であってもよい。例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、LLP2Aであってもよく、状態又は疾患は、多発性骨髄腫、白血病及び他の血液悪性腫瘍、並びに黒色腫、多発性硬化症、喘息、クローン病、炎症性腸疾患などのVLA-4発現状態又は疾患であってもよい。例えば、限定されないが、化合物は、DOTA-AMBF3-PEG2-LLP2Aであってもよい。
【0184】
例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、PSMA-617であってもよく、イメージングされる組織は、PSMA発現組織であってもよい。例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、PSMA-617であってもよく、疾患は、PSMA発現癌であってもよい。例えば、限定されないが、化合物は、PSMA-617-LysAMBF-DOTAであってもよい。PSMA発現は、様々な癌において検出されている(例えば、Roweら、2015年、Annals of Nuclear Medicine 29:877~882、Sathekgeら、2015年、Eur J Nucl Med Mol Imaging、42:1482~1483、Verburgら、2015年、Eur J Nucl Med Mol Imaging、42:1622~1623、及びPykaら、J Nucl Med 2015年11月19日、jnumed.115.164442)。したがって、限定されないが、PSMA発現癌は、前立腺癌、腎癌、乳癌、甲状腺癌、胃癌、結腸直腸癌、膀胱癌、膵臓癌、肺癌、肝臓癌、脳腫瘍、黒色腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌又は肉腫であってもよい。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌である。
【0185】
例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、TATEであってもよく、イメージングされる組織は、ソマトスタチン受容体発現組織であってもよい。例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、TATEであってもよく、状態又は疾患は、神経内分泌腫瘍、乳癌、小細胞肺癌、リンパ腫、髄膜腫、下垂体腺腫及び膵臓癌などのソマトスタチン受容体発現状態又は疾患であってもよい。例えば、限定されないが、化合物は、DOTA-Lys(AMBF)-TATEであってもよい。
【0186】
例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、ボンベシン又はボンベシン誘導体(例えば、D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH)であってもよく、イメージングされる組織は、GRPR発現組織であってもよい。例えば、限定されないが、細胞標的化ドメインは、ボンベシン又はボンベシン誘導体(例えば、D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH)であってもよく、状態又は疾患は、GRPR発現状態又は疾患であってもよい。異常又は異所性のGRPR発現が、精神医学的/神経学的障害、炎症性疾患及び癌を含む様々な状態及び疾患において検出されている。したがって、限定されないが、GRPR発現状態又は疾患は、精神障害、神経障害、炎症性疾患、前立腺癌、肺癌、頭頸部癌、結腸癌、腎臓癌、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、神経膠腫又は神経芽細胞腫であってもよい。いくつかの実施形態では、癌は、前立腺癌である。例えば、限定されないが、化合物は、DOTA-Lys(AMBF)-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NHであってもよい。
【0187】
引用されていない文献



【0188】
本発明を以下の例においてさらに説明する。
【0189】
【0190】
18F標識コンパニオン診断薬は、放射線治療薬と化学的に同一である。PETには18Fが好ましいので、イメージング用のhot-F/cold-M同位体置換体が調製され、これは治療に使用することができるcold-F/hot-M同位体置換体のコンパニオン診断薬として機能する。したがって、18Fを使用して、非放射性金属同位体、例えば89Y、174Lu、208Pbにキレート化されたペプチドを画像化することができる。次いで、hot-F/cold-M同位体置換体で陽性画像を示す患者は、cold-F/hot-Mを含む放射性毒性同位体置換体で治療することができる。
【0191】
治療のために、放射性毒性金属(例えば、90Y又は177Lu50、51など)を使用することができる。治療前のイメージングのために、例えばSPECTのための111In又はPETのための64Cuなど、異なる診断金属が通常使用される。この実施は、画像を潜在的な治療結果と相関させる際に問題を引き起こす。例えば、DOTA-TATEは、SPECTイメージングのために111Inで標識され、次いで治療のために90Yで標識されるが、取込みには明らかな違いがある。PET同位体86Yと同じトレーサを使用することは高価であり、容易に入手することはできない45、46。したがって、18F-フッ化物で標識するために、金属キレート剤、例えばDOTA並びにペンダントオルガノトリフルオロボロアートの両方を含有するペプチドには利点がある。最終的には、キレート剤は、治療的使用のための放射性毒性金属、又は放射性毒素(すなわち、放射性毒性金属)の代用として使用され得る非放射性金属のいずれかへの金属キレート化のために、又はF-18標識トレーサのPKPCを変化させることを含む他の目的のために使用することができるが、キレート剤及びBF補欠分子族の両方を有する化合物/複合体(トレーサ)は、優れたPETイメージング剤であり得る。
【0192】
最初に、PSMA標的化尿素及びインテグリン標的化ペプチド性リガンドLLP2Aに基づいて、2つの組成物を調製した(図2参照)。驚くべきことに、同位体交換によって18F-フッ化物で標識すると、これらの非金属化組成物は、並外れた腫瘍:非腫瘍比と共に優れた腫瘍取込み値を与える(表5、6、7並びに図3及び図4参照)。
【0193】
細胞培養方法
【0194】
B16F10黒色腫細胞株(ハツカネズミ)は、ATTC(CRL-6475)から購入した。細胞株は、IMPACT1マウスプロファイル試験(IDEXX BioResearch)によって病原体を含まないことが確認された。細胞を、5%CO2を含有する加湿インキュベーター中、37℃で、10%FBS、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、StemCell Technologies社)中で培養した。約90%のコンフルエンスまで増殖させた細胞を滅菌1×PBS(pH7.4)で洗浄した後、トリプシン処理した。
【0195】
LNCap細胞株をATCC(LNCaPクローンFGC、CRL-1740)から得た。その細胞株は、ヒト前立腺腺癌の左鎖骨上リンパ節の転移部位から確立された。細胞を、5%COを含有する加湿インキュベーター中、37℃で、10%FBS、ペニシリン(100U/mL)及びストレプトマイシン(100μg/mL)を補充したPRMI 1640培地中で培養した。次いで、80~90%のコンフルエンスまで増殖させた細胞を滅菌リン酸緩衝生理食塩水(1×PBS pH7.4)で洗浄し、トリプシン処理した。
【0196】
F-18 LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAのインビボ生体内分布及びPET/CTイメージング研究
【0197】
すべての動物実験は、Canadian Council on Animal Careによって確立されたガイドラインに従って行い、ブリティッシュコロンビア大学の動物倫理委員会によって承認された。マウスを病原体のない条件下で収容し、カナダ、バンクーバーのBC Cancer Research CentreのAnimal Resource Centreにおいて12時間の明暗サイクルで飼育した。雄C57BL/6Jマウスを使用して、PETイメージング及び生体内分布研究を実施した。腫瘍移植のために、マウスを2.0L/分の酸素中の2%イソフルランでの吸入によって麻酔し、1×10個のB16F10細胞を前肢のレベルで右背部の皮下に移植した。腫瘍が8~10日で直径8~10mmに達するまで増殖すると、マウスをイメージングするか、又は生体内分布研究に使用した。
【0198】
PET/CTイメージング研究を、マイクロPET/CTスキャナ(Inveon、Siemens社)で行った。簡潔には、静的PETスキャンのために、各腫瘍を有するマウスに、イソフルラン鎮静下で尾側外側尾静脈を介して4~6MBqのF-18標識LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAを注射した。ブロッキング試験のために、マウスに100μgの非放射性LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAを同時注射した。注射後、マウスを回復させ、ケージ内で自由に歩き回らせた。50分後、マウスを再び鎮静させ、スキャナに入れた。局在化及び減衰補正のためにベースラインCTスキャンを得た。これに続いて、10分間の静的PETスキャンを行った。取得中、マウスを加熱パッドによって保温した。静的PETイメージング後にCO吸入を使用してマウスを安楽死させ、続いて生体内分布を行った。PET画像は、オーダードサブセット期待値最大化及び最大事後確率アルゴリズム(OSEM3D/MAP)を使用して、2回のOSEM3D反復とそれに続く18回のMAP反復を用いて、1.5mmの要求分解能で再構成した。
【0199】
生体内分布研究のみのマウスを2%イソフルラン吸入によって麻酔し、1~2MBqのF-18標識LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAを注射した。ブロッキング研究のために、100μgの非放射性LLP2A-Lys-AMBF3-DOTAを放射性化合物と同時注射した。注射後、マウスを回復させ、ケージ内で自由に歩き回らせ、1時間後にCO吸入によって安楽死させた。血液を直ちに取り出し、目的の臓器を採取し、1×PBS(pH7.4)ですすぎ、ブロット乾燥した。各臓器を秤量し、WIZARD 2480(PerkinElmer社)を使用して、回収した組織の放射能を測定し、標準曲線を使用して注射用量に対して正規化し、組織1グラム当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)として表した。
【0200】
F-18 PSMA-Lys-AMBF3-DOTAのインビボ生体内分布及びPET/CTイメージング研究
【0201】
イメージング及び生体内分布実験を、NODSCID 1L2RγKO雄マウスを使用して行った。マウスを維持し、実験は、Canadian Council on Animal Careによって確立されたガイドラインに従って行い、ブリティッシュコロンビア大学の動物倫理委員会によって承認された。マウスを酸素中2%イソフルランでの吸入によって麻酔し、左肩の後ろに1×10個のLNCaP細胞を皮下移植した。腫瘍が5~6週間の間に直径5~8mmに達するまで増殖した際に、マウスをイメージングするか、又は生体内分布研究に使用した。
【0202】
PETイメージング実験は、Siemens社のInveon(Erlanger、ドイツ)マイクロPET/CTスキャナを使用して行った。各腫瘍を有するマウスに、麻酔下(酸素中2%イソフルラン)で6~8MBqのF-18標識PSMA-Lys-AMBF3-DOTAを尾静脈から注射した。ブロッキングのために、マウスに非放射性DCFPyL(0.5mg)を同時注射した。マウスを回復させ、ケージ内で自由に歩き回らせた。50分後、マウスを再び酸素吸入中の2%イソフルランで鎮静させ、スキャナに入れた。PET画像を再構成するためのセグメント化後に、局在化及び減衰補正のために、10分間のCTスキャンを最初に行った。次いで、10分間の静的PETイメージングを行い、腫瘍及び他の臓器における取込みを決定した。取得中、マウスを加熱パッドによって保温した。
【0203】
生体内分布研究のために、マウスに上記のように放射性トレーサを注射した。ブロッキングのために、マウスに非放射性DCFPyL(0.5mg)を同時注射した。1時間後、マウスを2%イソフルラン吸入により麻酔し、CO吸入により安楽死させた。血液を心臓から直ちに取り出し、目的の臓器/組織を回収した。回収した臓器/組織を秤量し、自動γカウンタを用いて計数した。各臓器/組織における取込みを、標準曲線を使用して注射用量に対して正規化し、%ID/gとして表した。
【0204】
例1:黒色腫のVLA-4標的PETイメージングのためのDOTAコンジュゲーションによる18F-LLP2Aトリフルオロボラート放射性トレーサの調整された生体内分布
【0205】
1.1 要約
【0206】
経細胞最晩期抗原4(VLA-4)は、腫瘍転移、薬物耐性に関連しており、多くの癌によって過剰発現される。以前の報告は、LLP2Aコンジュゲートにキレート化された64Cu及び68Gaを使用して、より最近では[18F]RBF放射性補欠分子族を使用した18Fを使用したVLA-4発現黒色腫腫瘍のPETイメージングが成功したことを示している。しかし、これらの先行する[18F]RBF-PEG-LLP2A誘導体は、中程度の腫瘍取込み値及びGI管内での有意な蓄積を示した。これに対処するために、本発明者らは、腫瘍取込みを増加させ、GI蓄積を減少させる、DOTA部分が付加された新規のRBF-LLP2Aバイオコンジュゲートを設計した。方法:本明細書において、本発明者らは、18F-トリフルオロボラート放射性補欠分子族、AMBF及びDOTA部分を備えた改変LLP2A-PEG-NH(1)コンジュゲートの合成を記載する。前駆体DOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)を同位体交換によって放射性標識し、半分取HPLC及びC18カートリッジ溶出によって精製した。VLA-4標的を過剰発現するB16-F10黒色腫腫瘍を有する雄C57BL/6Jマウスを使用して、静的及び動的PETスキャン、生体内分布研究、及び注射後(p.i.)1時間で[18F]6に対して過剰の1を同時注射することによるブロッキングの組合せを使用して、DOTA-[18F]AMBF-PEG-LLP2A([18F]6)を評価した。結果:前駆体6を合成し、18F標識して、4.8±2.9%の放射化学収率で、131.72±50.32GBq/μmolのモル活性を有する、95.9±1.8%の平均(±SD)放射化学純度の[18F]6の製剤を得た。[18F]6のインビボ静的PET画像は明確な腫瘍の視覚化を示し、生体内分布研究は、腫瘍取込みが組織1グラム当たり9.46±2.19%の注射用量(%ID/g)であり、それぞれ約8及び約10の高い腫瘍:筋肉及び腫瘍:血液コントラスト比を有することを示した。ブロッキングにより、腫瘍及び骨髄におけるVLA-4に対する[18F]6の特異性が確認された。動的PETは、主に腎経路を介して[18F]6のクリアランスを示し、腸への蓄積は以前に調査した[18F]RBF-PEG-LLP2Aと比較して約10倍減少したが、脾臓取込みは以前に報告されたLLP2A-キレート剤放射性トレーサと同様のレベルに増強された。結論:本研究は、[18F]6を有望なVLA-4放射性トレーサとして強調し、LLP2A放射性トレーサの生体内分布がGI管から脾臓及び膀胱にどのように経路変更され得るかを実証している。
【0207】
1.2 序論
【0208】
経細胞最晩期抗原4(VLA-4)受容体は、いくつかの癌で過剰発現し(1~15)、腫瘍転移(11、16~18)及び化学療法に対する耐性(19)と相関している。したがって、高親和性ペプチド模倣物リガンドLLP2Aによるイメージングのための汎用バイオマーカーを表す。Lamらによる最初の開発(20)以来、LLP2Aファーマコフォアは、NIR蛍光イメージング(21)、111In(22)及び99mTc(23)を使用する単一光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、並びに68Ga及び64Cuを用いた陽電子放射断層撮影法(PET)(23~27)によって広範に、インビボVLA-4標的化について検証されている。18Fを用いたPETイメージングの報告はこれまで1件しかなく、LLP2A-PEG-NH(1)を、2つの放射性補欠分子族であるアンモニウムジメチル-トリフルオロボラート(AMBF)及びN-ピリジニル-パラ-トリフルオロボラート(N-Pyr-p-BF)のうちの1つに付加し、次いで、単一ステップで18F標識に成功し、B16-F10黒色腫腫瘍を有するマウスにおいてPETイメージングを行った(28)。注射1時間後(p.i.)、これら2つの[18F]RBF-PEG-LLP2Aの腫瘍取込み値は中程度(2.8及び4.4%ID/g)であったが、高い腸内蓄積(約52%ID/g)が観察された。
【0209】
対照的に、キレート化放射性金属に対するLLP2Aコンジュゲートは、同じマウス黒色腫腫瘍モデルを用いて、1時間~2時間p.i.で10~15%ID/gの範囲の腫瘍取込み値を一貫して示す(23~27)。それにもかかわらず、放射性金属化LLP2A-キレート剤コンジュゲートは、細網内皮系(RES)による部分的なクリアランスのために、脾臓において一貫して隔離される。前述の[18F]RBF-PEG-LLP2Aは、最適以下の画像をもたらす疎水性特性を示したので、本発明者らは、RBF-PEG-LLP2Aバイオコンジュゲートへの親水性キレート剤DOTAの組み込みが腎臓クリアランスに有利であると仮定した。したがって、この仮説を試験するために、本発明者らは、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)をほぼ同一のAMBF-PEG-LLP2A前駆体骨格に結合させた。この目的のために、本発明者らは、DOTA部分のさらなる付加を可能にするためにグラフト化及び脱保護された新規アミノ酸Fmoc-Lys-(AMBF)も設計した。得られたコンジュゲートDOTA-[18F]AMBF-LLP2A(6)を18F/19F同位体交換(IEX)によって標識し(28、29)、検証されたブロッキング剤として1を使用して、インビボPETイメージング(静的及び動的スキャン)、生体内分布研究、及びVLA-4ブロッキング研究によって調査した。本発明者らの知る限り、本報告は、腎臓クリアランスに有利になるよう生体内分布を調整するために使用されるDOTA-キレート剤が付加された任意の18F標識ペプチド性放射性トレーサの最初の調査を表す。
【0210】
1.3 材料及び方法。
【0211】
DOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)の合成。LLP2Aペプチド模倣物は、以前に報告されたように(28、30)、PEGスペーサ及び-NHコンジュゲーションハンドルを固定するためにO-ビス-(アミノエチル)エチレングリコールトリチル樹脂を使用しながら、以前に報告されたように(20)、固相上で合成した。LLP2A-PEG-NH(1)(4.2mg、4.46μmol、1当量)を、200μLの(1:19)DIPEA:DMF(v/v)に溶解し、その後、Fmoc-Lys-(AMBF)-NHS(2)(5.85mg、8.91μmol、2当量)を溶解するために使用し、その合成は補足情報(スキーム2)に示す。コンジュゲーションは室温で2時間進行した。混合物をspeed-vacによって濃縮(約50μL~100μL)し、1.0mLのEtOで沈殿させ、遠心分離した。上清を除去し、生成物を50μLのDMFに再溶解した。記載されたEtO沈殿/遠心分離方法を繰り返し、最終ペレットをspeed-vacによって乾燥させた。これらの方法により、6.5mg(約4.3μmol)の生成物が、LLP2A-PEG-AMBF-Fmoc(3)のほぼ定量的収率で得られた。ESI-MS(+):C7698BF1413について1483.5m/zと計算され、実測値は[M+Na]=1506.8m/z、[M+2Na-H]=1528.8m/zとなった(図9)。TLC:[(1:19)NHOH:EtOH、v/v]、R=0.46(254nmで可視)。中間体3(1.5mg、1μmol、1当量)を200μLの(1:4)ピペリジン:DMF(v/v)で溶解し、室温で2時間以内にFmoc除去が達成された。混合物を濃縮し、記載のEtO沈殿/遠心分離方法を2回行った。最終ペレットをspeed-vacによって乾燥させて、約1.3mg(約1μmol)のAMBF-PEG-LLP2A-NH(4)を定量的収率で得た。ESI-MS(+):C6188BF1411について1261.3m/zと計算され、実測値は[M+H]=1262.6m/z、[M+Na]=1284.6m/zとなった(図10)。TLC:[(1:19)NHOH:EtOH、v/v]、R=0.18(254nmで可視、ニンヒドリンで染色)。中間体4(1.8mg、1.4μmol、1当量)を100μLの(1:19)DIPEA:DMF(v/v)に溶解し、室温で2時間以内にDOTA-NHS(5)(1.6mg、2.1μmol、1.5当量)にコンジュゲートした。混合物を濃縮し、記載のEtO沈殿/遠心分離方法を2回行った。最終ペレットをspeed-vacによって乾燥させて、2.4mg(約1.4μmol)の粗DOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)を得た。前述の手順を繰り返して、HPLC精製のための42.1mgの粗6を得た。これらの合わせたサンプルを、1.0mLの(1:1)0.1%ギ酸を含むMeCN:0.1%ギ酸(v/v)を含むHOに溶解し、HPLC方法Aによって精製した。生成物(6)をt=8.9分で回収し、等量のHOで希釈した後、ドライアイスで凍結し、凍結乾燥した。これらの方法により、3.1mg(1.9μmol)の精製(純度95%超)放射性トレーサ前駆体6(ESI-MSにより特性評価、図11及びHPLCにより特性評価、図12)を収率7.4%で得た。ESI-MS(+):C77114BF1818について1647.6m/zと計算され、実測値は[M+H]=1648.9m/z、[M+Na]=1670.9m/z、[M+K]=1687.0m/zとなった。TLC:[(1:19)NHOH:MeOH]、R=0.67(254nmで可視、ブロモクレゾールグリーンで薄青色に染色)。
【0212】
スキーム2:Fmoc-Lys(AMBF)-O-NHSの合成スキーム。
【化13】
【0213】
ESI-MS特性評価。質量スペクトルは、移動相としてMeOH又はCHCNのいずれかを用いてWaters ZQ分光計を使用して取得した。
【0214】
HPLC方法及び特性評価。Agilent 1100 HPLC(オートサンプラーユニット及びマルチチャネルPDA検出器)を使用して、HPLC方法Aによって前駆体6を精製した。Chromatographic Specialties社。Knauer社のスマートラインポンプ100及びBioscan社の放射線検出器は、HPLC法Bによって18F放射性トレーサ7を精製するためのものであった。Agilent Technologies社の1200 HPLC(Agilent Interface35900Eによって連結された、単一チャネル1200シリーズPDA検出器及びBioscan社の放射線検出器)を使用して、HPLC方法Cによる動物への前に、前駆体6について、及び7つの製剤のQCについて標準曲線を作成した。
【0215】
HPLC方法A:6の精製及び分析。Agilent Eclipse XDB-C18、9.4mm×250mm、5μmカラム、溶媒A=0.1%ギ酸(v/v)を含むMeCN及び溶媒B=0.1%ギ酸(v/v)を含むHO、流速=2.0mL/分、吸光度チャネル=257nm(精製)及び241nm(分析)。勾配:i)25%~80%の溶媒Aを15分間、ii)80%~100%の溶媒Aを1分間、iii)100%の溶媒Aを6分間、iv)100%~25%の溶媒Aを1分間、v)25%の溶媒Aを6分間。
【0216】
HPLC方法B:[18F]6の精製。Phenomenex社のLuna C18-100A、10mm×250mm、5μMカラム、溶媒A=0.1%TFA(v/v)を含むHO及び溶媒B=0.1%TFA(v/v)を含むMeOH、流速=4.5mL/分、吸光度チャネル=257nm。最初に、40%溶媒B(v/v)を含む均一濃度混合物を12分間使用し、次いで、100%溶媒B(v/v)にさらに12分間切り替えた。18F放射性トレーサ[18F]6を約21分~23分で回収した。
【0217】
HPLC方法C:[18F]6の分析。Phenomenex社のJupiter C18-300A、4.6mm×250mm、10μmカラム、溶媒A=0.1%TFA(v/v)を含むHO、溶媒B=0.1%TFA(v/v)を含むMeCN、流速=2.0mL/分、吸光度チャネル=257nm。勾配:i)0%の溶媒Bを4分間、ii)0%~40%の溶媒Bを2分間、iii)40%の溶媒Bを4分間、iv)40%~80%の溶媒Bを4分間、v)80%の溶媒Bを11分間、vi)80%~0%溶媒Bを3分間、及びvii)0%の溶媒Bを4分間。
【0218】
Fmoc-Lys-AMBF-NHSの合成
【0219】
化学物質、溶媒、ハードウェア。3-ジメチルアミノ-1-プロピン及びトリフルオロメチルスルホニル無水物は、Sigma-Aldrich社から購入した。ヨードメチルボロン酸ピナコールエステルは、Frontier Scientific社から購入した。二フッ化カリウム(KHF)は、Acros Organics社から購入した。アジ化ナトリウムは、Honeywell Riedel-de Haen社から購入した。Fmoc-Lys-OHは、Novabiochem社から購入した。硫酸銅、アスコルビン酸、水酸化ナトリウム、及び炭酸カリウムは、Fisher Scientific社から購入した。N-ヒドロキシスクシンイミド及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドは、Alfa Aesar社から購入した。フラッシュクロマトグラフィは、Silicycle社から購入したシリカゲル(230~400メッシュ)を使用して行った。薄層クロマトグラフィ(TLC)は、EMD Chemicals社から購入したシリカゲル60 F254で行った。H、19F及び13C NMRスペクトルは、室温でBruker社のAV300装置で記録した。重水素化溶媒アセトニトリル-d、クロロホルム-d及びアセトン-dは、Sigma-Aldrich社から購入した。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)は、Micromass LCT装置を使用して行った。HRMSは、飛行時間型(TOF)検出器を備えたWaters-Micromass LCTを使用して行った。
【0220】
N-プロパルギル-N,N-ジメチルアンモニオメチルボロニルピナコラート。Ar(g)下の火炎乾燥丸底フラスコに、1.5mLの3-ジメチルアミノ-1-プロピン(13.8mmol、1.01当量)を入れ、28mLのEtOに溶解した。3.67gサンプルのヨードメチルボロン酸ピナコールエステル(13.7mmol、1当量)を滴加し、反応物を室温で30分間撹拌した。生成物は、白色固体として沈殿し、真空濾過によって回収した。粗生成物を冷EtOで洗浄した。粗生成物を、予め秤量したシンチレーションバイアルに移し、真空中で乾燥させた。これにより、3.4g(9.81mmol)の1を、淡ベージュ色粉末として収率72%で得た。
【数1】
【0221】
N-プロパルギル-N,N-ジメチルアンモニオメチル-トリフルオロボラート。3M KHF2(水溶液)及び4M HCl(水溶液)のストック溶液を調製した。化合物1(1.87g、5.33mmol、1当量)を、10mLのCHCNを含む50mLファルコンチューブに入れた。9mL容量の3M KHF2(水溶液)(27mmol、5.1当量)及び8mLの4M HCl(水溶液)(32mmol、6当量)を添加し、溶液を45℃で加熱しながら2時間撹拌した。次いで、溶液を濃NHOH(水溶液)でpH約7まで中和し、CHCN及び水層の二相層を形成した。上部の層(有機CHCN層)を250mL丸底フラスコに回収し、水層をCHCN(3×10mL)で洗浄した。粗生成物を回転蒸発によって乾燥させた。20mL容量のアセトンを使用して、粗生成物サンプルからさらに塩を沈殿させ、混合物をガラス焼結漏斗を使用して濾過した。濾液を丸底フラスコに回収し、回転蒸発によって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。次いで、粗生成物を20mLのジエチルエーテルで洗浄し、次いで20mLのクロロホルムで洗浄して、残っている過剰のピナコールを溶解した。粗サンプルを最小限のアセトンで溶解し、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、43~60μm、230~400メッシュ、約40g、均一濃度アセトン)を、TLC(アセトン、R=0.41、Iで染色)によって溶出画分を監視しながらを行った。精製した2を含有する画分をプールし、回転蒸発によって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。固体生成物を、予め秤量したバイアルに回収し、真空中で乾燥させた。これにより、911mg(5.52mmol)の2を、淡橙色固体として定量的収率で得た。
【数2】
【0222】
Fmoc-Lys(N)-OH。Fmoc-Lys-OHの第一級アミンのジアゾ転移には、トリフルオロメチルスルホニルアジドを使用した。2.94gサンプルのNaN(45.2mmol、8.63当量)を丸底フラスコに入れ、20mLの(2:3)HO:CHCl(v/v)に溶解した。混合物を撹拌しながら、1.02mLのトリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)(6mmol、1.15当量)を30分間にわたって滴加した。反応物を約0℃の氷水浴中で5時間撹拌した。有機層をCHCl(2×20mL)で抽出し、続いて、回収した有機層を飽和NaHCO3(水溶液)(20mL)洗浄した。トリフルオロメチルスルホニルアジドを、記載の回収した有機層に溶解した。1.93gサンプルのFmoc-Lys-OH(5.24mmol、1当量)を、2.32gのKCO(16.8mmol、3当量)及び15mgのCu(II)SO(94.0μmol、0.39mol%)を入れた丸底フラスコに入れ、15mLの(1:1)MeOH:HO(v/v)に溶解した。トリフルオロメタンスルホニルアジドを含む有機層を30分間にわたって滴加した。溶液を室温で21時間撹拌し、反応物を60mLの2.5M HCl(水溶液)でクエンチした。有機層をCHCl(3×20mL)で抽出し、ブライン(2×50mL)で洗浄した。回収した有機層を無水NaSOで乾燥させ、塩を真空濾過によって除去した。回収した溶液を回転蒸発によって濃縮した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、43~60μm、230~400メッシュ、約80g、(0.5:99.5)MeOH:CHCl(v/v)~(1:99)MeOH:CHCl(v/v)の溶媒勾配)を、TLC((1:9)MeOH:CHCl(v/v)、R=0.37、254nmで可視、I及びブロモクレゾールグリーンで染色)によって溶出画分を監視しながら行った。純粋な画分を回転蒸発によって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。これにより、1.60g(4.06mmol)の3を、白色ワックス状固体として収率77%で得た。
【数3】
【0223】
Fmoc-Lys(AMBF)-OH。1Mアスコルビン酸ナトリウムの新鮮なストック溶液を、1.98gのアスコルビン酸ナトリウム(0.01mol)を10mLのDI HOに溶解することによって調製した。次いで、1M Cu(II)SO4(水溶液)のストック溶液を、1.60gの無水Cu(II)SO(0.01mol)を10mLのDI HOに溶解することによって調製した。414.6mgサンプルの化合物2(2.513mmol、5.24当量)を丸底フラスコに入れ、2.5mLの(3:2)CHCN:HO(v/v)に溶解した。1.5mL容量の1M Cu(II)SO4(水溶液)(1.5mmol、3.1当量)を最初に添加し、続いて3mLの1Mアスコルビン酸ナトリウム(3mmol、6.2当量)を添加した。次いで、189mgサンプルの化合物3(479μmol、1当量)を溶液に添加した。次いで、101mgのKCO(732μmol、1.5当量)を添加して溶液を約pH7に中和し、次いで、45℃で16時間撹拌した。混合物を真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって濃縮した。乾燥した粗生成物を(1:1)MeOH:CHCl(v/v)(5×10mL)に再懸濁し、真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって乾燥させた。次いで、乾燥した粗生成物を(5:95)MeOH:CHCl(v/v)(5×10mL)に再懸濁し、真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって再び乾燥させた。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、230~400メッシュ、約50g、(1:4:95)AcOH:MeOH:CHCl(v/v/v)の溶媒)を、TLC(1:10:89 AcOH:MeOH:CHCl(v/v/v)、R=0.21、254nmの光で可視、Iで染色)によって溶出画分を監視しながら行った。純粋な4を含有する画分をプールし、回転蒸発によって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。これにより、192mg(343μmol)の4を暗黄色油状物として収率71%で得た。
【数4】
【0224】
Fmoc-Lys(AMBF)-O-NHS。163.3mgサンプルの4(291.7μmol、1当量)を丸底フラスコに添加し、8mLの(1:1)CHCl:CHCN(v/v)で溶解した。305mgサンプルのDCC(1.48mmol、5.07当量)を溶液に添加し、その後、170mgのNHS(1.48mmol、5.07当量)を添加し、溶液を室温で21時間撹拌した。反応混合物を焼結漏斗を使用して真空濾過し、回収した濾液を回転蒸発によって濃縮した。カラムクロマトグラフィ(カラム直径=0.5cm、シリカゲル(230~400メッシュ)、約10g、50mLあたり10%CHCN(v/v)増加するCHCl~(1:1)CHCl:CHCN(v/v)の勾配)を、TLC(1:1)CHCl:CHCN(v/v)、R=0.52、254nmで可視、Iで染色)によって溶出画分を監視しながら行った。純粋な5を含有する画分をプールし、回転蒸発によって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。これにより、118mg(180μmol)の5を黄色油状物として収率61%で得た。
【数5】
【0225】
Lys-AMBFの構造的特性評価を添付の図15図33に示す。
【0226】
飽和結合アッセイ。公開された手順に従ってB16-F10細胞に対してインビトロ結合飽和アッセイを行った(n=3)(28)。細胞を24ウェルポリ-D-リジンプレート上でコンフルエンスに近くなるまで増殖させた。増殖培地を除去し、反応培地(RPMI、1%BSA、100U/mLペニシリン/ストレプトマイシン)を添加し、37℃で少なくとも1時間インキュベートした。漸増濃度(5pM~20nM)の[18F]6を細胞に添加し、穏やかに撹拌しながら25℃で1時間インキュベートした。非特異的結合は、1(10μM)を同時に添加しながら、[18F]6を用いた記載のインキュベーションを繰り返すことによって決定した。インキュベーション後、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、トリプシンとのインキュベーション後に回収し、WIZARD 2480ガンマカウンタ(PerkinElmer社)を使用して放射能を測定した。非特異的結合アッセイからの値を、特異的結合アッセイのそれぞれの値から差し引いた。解離定数(K’s)は、1部位特異的結合モデルを用いたGraphPad PRISM 7を使用して決定した。
【0227】
18F]フッ化物アニオンを用いたDOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)の放射性標識。前駆体6(80nmol)を15μLの1Mピリダジン-HCl(pH=2)、10μLのDMF、15μLのMeOH及び4μLの5mM KHF2(水溶液)(50mol%19担体)に溶解し、最終pHは約2.0であった(スキーム1)。18F/H 18O(約1Ci)を、活性化された9mg QMAカートリッジ(1.7mLのブラインで予めコンディショニングし、次いで2.5mLの水ですすぎ、3mLの空気で乾燥させた)に通して18Fを捕捉し(効率95%超)、次いで、これを、約80~100μLの0.9%生理食塩水を使用して前駆体を含有するセプタム密封反応容器に溶出した(効率90%超)。溶液を82~84℃で5分間加熱し、次いで、真空中で15分間加熱した。2mLの40mM NHHCO2(水溶液)(pH=6.8)でクエンチした後、溶液を、2つの連続した均一濃度溶媒条件を用いる半分取HPLCによって精製した(HPLC方法B)。放射性トレーサ[18F]6を回収し、50mLのHOに直接希釈した。容器に少量のHe(g)の圧力を印加することによって、得られた溶液をSep-Pak Light C18カートリッジ(9mLのEtOH、9mLのHO及び10mLの空気で連続的に予備洗浄)に通した。捕捉された[18F]6を、0.5mLの(9:1)EtOH:0.9%生理食塩水(v/v)を含むセプタム密封バイアルに溶出し、最後に4mLのPBSを用いて製剤化して、動物注射のために、pH約7の(1:9)EtOH:PBS(v/v)中の[18F]6を得た。[18F]6のすべての精製製剤を分析HPLC(方法C)によって特性評価し、動物注射前の標準曲線(図13)に基づいて放射化学純度、放射化学収率及びモル活性を定量した。
【0228】
スキーム1。4及び[18F]6を生成するための前駆体6の合成。
【化14】
【0229】
B16-F10腫瘍を有するマウスにおけるDOTA-[18F]AMBF-PEG-LLP2A([18F]6)のPETイメージング。B16-F10細胞(ATTC、CRL-6475)を、10%FBS(v/v)、100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを含むDMEM中、37℃、5%CO2(g)下で培養した。すべての動物実験は、Canadian Council on Animal Careのガイドラインに従って行い、ブリティッシュコロンビア大学の動物倫理委員会によって承認された。雄C57BL/6Jマウスを2%イソフルランで麻酔し、1×10個のB16-F10細胞を右肩の皮下に注射した。腫瘍を7~9mmの直径に達するまで増殖させた。PET及びCTイメージング研究は、以前に報告されたように、マイクロPET/CTスキャナ(Inveon、Siemens社)を使用した(28、31~33)。静的PETスキャン(10分間記録)のために、最初に、マウスは、2%イソフルランで麻酔しながら、尾静脈を介して4~6MBqの([18F]6)を注射し、PETイメージングの前にベースラインCTスキャン(10分間記録)に供した。競合的VLA-4ブロッキングを伴う静的PET画像の場合、200μgの1を4~6MBqの[18F]6と同時注射し、記載の方法を使用して1時間p.i.でベースラインCT及びPET画像の両方を得た。動的PETスキャンは、記載の麻酔、4~6MBqの[18F]6の注射、ベースラインCTスキャン、及び5秒~52.5分p.i.(28時点)で記録されたPETスキャンを伴った。各静的PETイメージング研究の後、最終的にマウスをCO2(g)吸入を使用して安楽死させ、生体内分布測定のためにその臓器を採取した。
【0230】
B16-F10腫瘍を有するマウスにおけるDOTA-[18F]AMBF-PEG-LLP2A([18F]6)の生体内分布。マウスを、2%イソフルランを使用して麻酔し、尾静脈を介して2~3MBqの[18F]6を注射した。競合的VLA-4ブロッキング研究のために、200μgの1を2~3MBqの[18F]6と同時注射した。1時間p.i.で、マウスをCO2(g)吸入によって安楽死させ、血液を採取し、臓器を切除した。サンプルをすすぎ、乾燥させた後、臓器を秤量し、Wallac WIZARD 2ガンマカウンタ(PerkinElmer社)を使用して放射能を記録し、値を各臓器の%ID/gとして表した。両側ANOVA Sidakの多重比較検定(グラフパッドプリズム)を使用して、[18F]6単独の生体内分布と、1の同時注射によるVLA-4の競合的ブロッキングとの間の統計的有意性を評価した。
【0231】
さらなる詳細は、Lepageら、ChemBioChem 10.1002/cbic.201900632に提供されている。
【0232】
1.4 結果
【0233】
DOTA-AMBF-PEG-LLP2A(6)の合成及びVLA-4親和性。LLP2Aペプチド模倣物は、本発明者らの研究室によって報告された改変(樹脂切断時のPEG-NH組み込み)(28)を用いて、他者によって以前に記載された(20)ように合成した。中間体1の末端第一級アミンを、NHS化学を介してFmoc保護リジン-AMBFコンジュゲート2に定量的収率でカップリングさせた。次の中間体3を、効率的なFmoc除去に供し(中間体4)、塩基性条件下で非保護DOTA-NHS(5)にカップリングさせた。これらの方法を繰り返して、HPLC精製のための実質的な粗サンプル(42.1mg)の6を得た。この戦略により、その後の18F放射性標識のための高純度(HPLCにより95%超)で、3.1mg(1.9μmol)の凍結乾燥前駆体6が得られた。6.9±0.59nM(n=3)のK値が計算され(図14)、他の[18F]RBF-PEG-LLP2Aコンジュゲートについて見出されたK値よりも少なくとも5倍高かった(図8)。
【0234】
DOTA-[18F]AMBF-PEG-LLP2A([18F]6)の放射合成。前駆体6(80nmol)を、71.8±1.0分(±SD)で酸性水性ピリダジン緩衝液中、IEXを介して[18F]フッ化物で放射性標識した(製剤への18F/H 18O送達、n=4)。HPLCによって6の18F標識誘導体としてのサンプルの同一性を確認した後(図5b)、[18F]6の平均放射化学純度は95.9±1.8%(±SD)であると計算された(図5a)。[18F]6の平均放射化学収率は4.8±2.9%であり、平均モル活性(A)は131.72±50.32GBq/μmol(3.56±1.36Ci/μmol)と算出された。
【0235】
B16-F10腫瘍を有するマウスにおけるDOTA-[18F]AMBF-PEG-LLP2A([18F]6)のPETイメージング。
【0236】
18F]6の静的PET画像は、B16-F10腫瘍を有するマウスの腫瘍、脾臓、腎臓及び骨髄(図6a及び6b)において、1時間p.i.で優先的なトレーサ取込みを示した(n=2)。[18F]6と1との同時注射を伴うブロッキング試験(n=2)では、腫瘍及び骨髄におけるトレーサ取込み値がベースラインレベルに近いレベルまで減少したが、脾臓では活性が認められたままであった(図6c及び図6d)。すべての画像は、膀胱における実質的な活性を示し、腎臓を介した[18F]6の腎臓クリアランスを確認した。
【0237】
動的PETスキャンは、循環による[18F]6の初期灌流及び4分p.i.以内の肝臓の初回通過を示した(図7)。放射性トレーサは、1.9分p.i.以内に腫瘍への効率的な取込み及び52.5分p.i.までの腫瘍への安定した蓄積を示した。VLA-4標的化は、骨髄における放射性トレーサ蓄積によっても観察された。これらのスキャンにより、スキャン期間中の腸内の[18F]6の初期の存在及び腸内の保持が特定された。[18F]6の蓄積がバックグラウンドの筋組織において低いままであるので、動的PETスキャンも高コントラスト静的PET画像を再現した。
【0238】
生体内分布研究により、脾臓での[18F]6の高い蓄積が明らかになり、1時間p.i.で肺及び腸に実質的に取り込まれた。(表5)。特異的なVLA-4結合は、腫瘍及び骨髄における[18F]6の高い取込みによって証明された。1の同時注射は、脾臓(88%低い、p<0.0001)、腸(43%低い、p<0.05)、肺(85%低い、p<0.0001)、骨及び骨髄(78%低い、p<0.0001)及び腫瘍(75%低い、p<0.0001)において[18F]6の蓄積を減少させた。コントラスト比(表6)は、バックグラウンドの筋肉(約7倍高い)及び血液プール(約9倍高い)と比較して、[18F]6の比較的高い腫瘍取込みを示した。VLA-4ブロッキングは、[18F]6についてこれらの腫瘍対筋肉(92%低い、p<0.0001)及び腫瘍対血液(85%低い、p<0.0001)のコントラストを低下させたが、腫瘍対腎臓及び腫瘍対骨及び骨髄のコントラストは有意に影響を受けなかった(p>0.05)。
【0239】
【表5】
【0240】
【表6】
【0241】
1.5 考察
【0242】
18F標識LLP2A放射性トレーサを以前に生成し、その各々を、構造的に関連しているが比較的疎水性の2つの[18F]RBF-PEG-LLP2Aトレーサ上の同位体交換によって標識した。放射性トレーサの極性を増加させるためにいくつかのアプローチが存在するが(例えば、グルタマートを添加し、PEGリンカーの長さを増加させる)、本開示は、親水性を増加させ、それによってトレーサのクリアランスを調節する手段としてDOTA部分を導入する新規なアプローチを提示する。[18F]RBF-PEG-LLP2Aコンジュゲートについて、高い腸取込みが以前に観察された。リガンドのLLP2Aクラスをペプチド性骨格として試験するために、化合物6を、他の点ではほぼ同一のLLP2AコンジュゲートにDOTAを付加して、DOTA部分のすべての差異を最小限に抑えるように設計した(図8の構造の比較を参照)。DOTA修飾LLP2A誘導体6の合成は、効率的な段階的様式で進行し、ほとんどの化学反応についてほ定量的収率が得られた。最終ステップにおける6の比較的低い回収率は、厳密なHPLC精製条件の結果としてのサンプル損失に起因していた。しかし、回収された材料は高純度であり、記載のすべての18F放射性標識及びインビボ試験に十分な量で得られた。
【0243】
18F]6の放射合成は、本発明者らの研究室によって評価されたAMBF放射性補欠分子族及び他のトリフルオロボラートについて以前に実証されたように、水性条件下で18F-IEXによって単一の水性ステップで達成された。放射合成時間、放射化学収率、純度及びモル活性はインビボ研究に適しており、先行する[18F]AMBF-PEG-LLP2A及び[18F]N-Pyr-p-BF-PEG-LLP2A(28)に類似していた。収率は比較的低かったが、[18F]6の十分な活性、0.37~1.85GBq(10~50mCi)が各インビボ研究について一貫して得られた(n>6)。標識方法及び回収方法の両方が最適化されていないので、本発明者らは、[18F]6の直接製剤化及び回収のためにHPLC精製中に代替の溶液(例えば、緩衝水性等張エタノール溶液)を使用することによって、これらの収率を高めることができると確信している。これは、標識後の[18F]6のC18カートリッジ単離の必要性を回避し、この親水性トレーサは、初期捕捉ステップ中に失われた可能性が高い。
【0244】
標的VLA-4を発現する標準的なマウス黒色腫モデルB16-F10を画像化した。[18F]6は、1時間p.iで脾臓、腫瘍及び骨髄への優先的な蓄積を示した。喜ばしいことに、B16-F10黒色腫腫瘍における[18F]6の取込み並びに対応する腫瘍対筋肉比及び腫瘍対血液比は、同様の時点(1時間~2時間p.i.)で同じ腫瘍モデルで、[64Cu]Cu-CB-TE1A1P-PEG-LLP2A、[64Cu]Cu-CB-TE2A-LLP2A、[64Cu]Cu-NODAGA-PEG-LLP2A及び[68Ga]Ga-NODAGA-PEG-LLP2Aについて観察されたものと類似していた(23、25~27)。ブロッキングは、腫瘍及び骨髄におけるVLA-4に対する[18F]6の特異性を確認し、B16-F10腫瘍及び骨髄中に見られる造血幹細胞における周知のVLA-4発現と一致する(2、9、10、34~37)。脾臓への[18F]6の高い蓄積は望ましくないが、前述の64Cu及び68Ga標識LLP2A誘導体では、RESへのLLP2A放射性トレーサの捕捉が観察されている(23、25~27)。本発明者らの結果はまた、LLP2A放射性トレーサを用いた以前に報告されたすべてのインビボ研究(22、24、26、38~40)と同様に、[18F]6のクリアランス経路が腎臓及び膀胱を介したことを確認した。
【0245】
18F]6は、64Cu標識LLP2A誘導体について以前に報告されたものよりも高いモル活性で標識された(24、26、27)。[18F]6の高コントラスト静的PET画像には高いモル活性が寄与している可能性があるが、VLA-4に対して4.6倍及び23倍高いインビトロ結合親和性を示した以前に報告された2つの[18F]RBF-PEG-LLP2Aトレーサについても同様に高いモル活性が達成された。しかし、両方の先行例において、腫瘍取込み値は、本明細書に示される値よりも2~3倍低かった。
【0246】
特に、6と先行するAMBF-PEG-LLP2Aコンジュゲートとの間の唯一の顕著な差はDOTA部分であり(図8)、これはより高い腫瘍取込み値及び良好な腎臓クリアランスの主な原因であることを本発明者らは示唆している。対照的に、本発明者らが以前に報告した[18F]RBF-PEG-LLP2Aは、[18F]6と比較して疎水性が高く(HPLC保持差によって証明)、したがって、これらの誘導体は、脾臓の保持が約3~5倍低く、GI管内での蓄積が約11倍高いことを示した。一般に、これらの結果は、他の結果と共に、LLP2Aバイオコンジュゲートのクリアランス経路(すなわち、腎臓対肝胆道)に影響を及ぼす手段として、親水性の高い部分(以前はリン酸基及びカルボン酸基を使用、本明細書ではDOTA)の付加をサポートする。腎臓クリアランスを促進するために配置されている他の化学的官能基とは異なり、DOTAは、様々な非放射性金属(例えば、Zn2+、Ca2+)にキレートすることができるため、18F-PETイメージングを介してインビボPK/PCへの影響をさらに調べることができるというさらなる利点を提供することができる。さらに、PETイメージングのためのF-18及び治療のための放射性金属にそれぞれ依存する、コンパニオン二重同位体「hot-cold/cold-hot」同位体置換体セラノスティック(例えば、18F/174Lu及び19F/177Lu)を開発する可能性が容易に企図される。
【0247】
この例は、18F標識が高いモル活性で同位体交換によって進行する一方で、18F標識RBF-PEG-LLP2Aの腫瘍取込みが、単純な合成アプローチで導入することができる親水性金属を含まないDOTAを使用することによって増強することができることを示している。インビボPETイメージング及び生体内分布研究は、DOTA部分が放射性トレーサ蓄積をGI管からRESに転換し、特に脾臓に蓄積することを実証している。本発明者らは、VLA-4標的化イメージングのために、大幅に改善された18F標識LLP2A放射性トレーサを提示しているので、付加されたDOTAは、トレーサクリアランスを調節するための新規かつ有用な基として機能するようである。これは、他の18F標識放射性補欠分子族でも使用できる可能性がある。
【0248】
例2:PSMA-617-LysAMBF3-DOTA
【0249】
報告された手順に従って、AMBF及びFmoc-LysN-OHを調製した。Perrinら、Angew.Chem.Int.Ed.2014、53、11876~11880。Nakaharaら、Tetrahedron Lett.2008、49、5492~5494。
【化15】
【0250】
I.Fmoc-LysAMBF-OH
【化16】
【0251】
1Mアスコルビン酸ナトリウムの新鮮なストック溶液を、1.98gのアスコルビン酸ナトリウム(0.01mol)を10mLの脱イオン水に溶解することによって調製した。次いで、1M Cu(II)SO4(水溶液)のストック溶液を、1.60gの無水Cu(II)SO4(0.01mol)を10mLの脱イオン水に溶解することによって調製した。AMBF(414.6mg、2.513mmol、5.24当量)をフラスコに入れ、(3:2)MeCN:HO(v/v)(2.5mL)に溶解した。1.5mL容量の1M Cu(II)SO4(水溶液)(1.5mmol、3.1当量)を最初に添加し、続いて3mLの1Mアスコルビン酸ナトリウム(3mmol、6.2当量)を添加した。次いで、Fmoc-LysN-OH(189.1mg、0.479mmol、1当量)を溶液に添加した。次いで、KCO(101.1mg、0.732mmol、1.5当量)を添加して溶液をpH7に中和した。溶液を45℃で16時間撹拌した。混合物を真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって濃縮した。乾燥した粗生成物を(1:1)MeOH:DCM(v/v)(5×10mL)に再懸濁し、真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって乾燥させた。次いで、乾燥した粗生成物を(5:95)MeOH:DCM(v/v)(5×10mL)に再懸濁し、真空濾過して沈殿物を除去し、濾液を回転蒸発によって再び乾燥させた。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル、230~400メッシュ、50g、(1:4:95)AcOH:MeOH:DCM(v/v)の溶媒)を、TLC(1:10:90 AcOH:MeOH:DCM(v/v)、生成物のR=0.21、254nmのUVランプ下で可視、I/シリカで染色)によって溶出画分を監視しながら行った。純粋な画分をロータリーエバポレータによって濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。これにより、Fmoc-LysAMBF-OH(192.0mg、0.343mmol)を暗黄色油状物として収率71%で得た。
【数6】
【0252】
II.Fmoc-LysAMBF-O-NHS
【化17】
【0253】
Fmoc-LysAMBF-OH(163.3mg、295.5μmol、1当量)をフラスコに添加し、8mLの(1:1)DCM:MeCN(v/v)に溶解した。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)(305mg、1.48mmol、5当量)を溶液に添加し、続いてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(170mg、1.48mmol、5当量)を添加した。溶液を室温で21時間撹拌した。反応混合物を焼結漏斗を使用して真空濾過し、回収した濾液をロータリーエバポレータで濃縮した。カラムクロマトグラフィ(カラム直径=0.5cm、シリカゲル(230~400メッシュ)、10g、50mLあたり10%CHCN(v/v)増加するDCM~(1:1)DCM:MeCN(v/v)の勾配)を、TLC(1:1 DCM:CHCN、生成物のR=0.52、254nmのUVランプ下で可視、I/シリカで染色)によって溶出画分を監視しながら行った。純粋な画分をプールし、ロータリーエバポレータで濃縮し、真空中でさらに乾燥させた。これにより、Fmoc-LysAMBF-O-NHS(118.3mg、180.2mmol)を黄色油状物として収率61%で得た。
【数7】
【0254】
III.PSMA-617-NH2
【0255】
報告された手順に従って、樹脂上のPSMA-617-FmocをSPPSによって合成した。Ederら、J.Nucl.Med.2015、56、914~920。
【化18】
【0256】
樹脂上のPSMA-617-Fmoc(45.6mg、15.1μmol)をエッペンドルフチューブに入れた。DMF(400μL)を添加して、サンプルをロティサリー振盪機に入れることによって樹脂を30分間膨潤させた。混合物を遠心分離し、上清を除去した。(1:4)ピペリジン:DMF(200μL)を樹脂に添加し、混合物をロティサリー振盪機を用いて室温で30分間撹拌した。次いで、混合物を遠心分離し、上清を除去した。DMF(3×200μL)を使用して、ボルテックス、遠心分離、及び上清の除去によって樹脂を洗浄した。(3:7)HFIP:DCM(200μL)を添加して生成物を樹脂から切断し、混合物をロティサリー振盪機で30分間撹拌した。生成物混合物を、1mLのピペットフィルタチップで濾過して樹脂を除去し、濾液を別個のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかな空気を吹き付けて、体積が約50~100μLになるまで混合物を濃縮した。次いで、冷ジエチルエーテル(1mL)を添加して生成物を粉砕した。生成物をボルテックスし、遠心分離した。次いで、上清を除去し、生成物を50μLのDMFに溶解した。さらなる洗浄のためにジエチルエーテル(1mL)を添加し、混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、混合物をspeed-vacによって乾燥させて、予想されるPSMA-617-NHを定量的収率(11.6mg、15.1μmol)で得た。ESI-MS(+):C4161について767.97m/zと計算され、実測値は[M+H]=768.7m/zとなった。TLC(2:98)MeOH、生成物のR=0.29、254nmのUVランプ下で可視)。データについては図42を参照。
【0257】
IV.PSMA-617-LysAMBF-NH
【化19】
【0258】
エッペンドルフチューブ中のPSMA-617-NH(12.2mg、9.3μmol、1当量)を(1:19)DIPEA:DMF(200μL)に溶解し、Fmoc-LysAMBF-O-NHS(25.2mg、38.4μmol、4.1当量)を含む別のエッペンドルフチューブに移した。混合物を、ロティサリー撹拌機を使用して室温で2時間撹拌した。混合物を、体積が約50から100μLになるまでspeed-vacによって濃縮した。冷ジエチルエーテル(1mL)を添加して生成物を沈殿させた。次いで、混合物をボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。最小量のDMF(50μL)を生成物に添加して生成物を溶解し、ジエチルエーテル(1mL)を添加して粗生成物を洗浄した。混合物をボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。次いで、生成物をspeed-vacによって乾燥させた。次いで、MeCN(500μL)を添加して、過剰のFmoc-LysAMBF-O-NHSを溶解及び除去した。混合物を遠心分離し、過剰な試薬を含む上清を除去した。生成物をspeed-vacで再度乾燥させた。生成物PSMA-617-LysAMBF-Fmocの少量のサンプルをMS用のMeOHに溶解した。ESI-MS(+):C6892BF1012について1309.35m/zと計算され、実測値は[M-F]=1290.1m/z、[M+Na]=1332.0m/zとなった。TLC(1:19のNHOH:EtOH、生成物のRf=0.42、254nmで可視)。図43を参照。
【0259】
次いで、PSMA-617-LysAMBF-Fmocを(1:4)ピペリジン:DMF(200μL)に溶解してFmocを除去した。反応を、ロティサリー撹拌機中で混合することによって室温で30分間行った。混合物を、容量が約50~100μLになるまでspeed-vacを使用して濃縮した。冷ジエチルエーテル(1mL)を添加して生成物を沈殿させた。次いで、これをボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。最小量のDMF(50μL)を生成物に添加して溶解させ、ジエチルエーテル洗浄を再度行った。混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、次いで生成物をspeed-vacによって乾燥させて、PSMA-617-LysAMBF-NHを含む粗混合物を得た。ESI-MS(+):C5382BF1010について1087.10m/zと計算され、実測値は[M-F]=1068.1m/z、[M+H]=1088.1m/z、[M+Na]=1110.1m/zとなった。TLC(1:19 NHOH:MeOH、生成物のR=0.23、254nmのUVランプ下で可視、ニンヒドリンで染色)。図44を参照。
【0260】
V.PSMA-617-LysAMBF-DOTA
【化20】
【0261】
DOTA-NHS・HPF・TFA(20.2mg、26.2μmol、2.8当量)を秤量し、エッペンドルフチューブ中の粗PSMA-617-LysAMBF-NH(最大9.3μmol、1当量)に添加した。(1:19)DIPEA:DMF(v/v)を混合物に添加し、ロティサリー撹拌機を使用して室温で2時間撹拌した。最小体積(50~100μL)になるまでspeed-vacによって混合物を濃縮し、混合物をジエチルエーテル(1mL)によって沈殿させた。混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、次いで生成物をspeed-vacによって乾燥させた。(95:2.5:2.5)TFA:TIPS:HO(v/v/v)(200μL)を添加することによってtert-ブチルを脱保護し、混合物を室温で1時間撹拌した。次いで、穏やかな空気を吹き付けて、体積が50~100μLになるまで混合物を濃縮した。ジエチルエーテル(1mL)を添加して生成物を沈殿させ、混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、次いで混合物をspeed-vacによって乾燥させて、PSMA-617-LysAMBF-DOTAを含有する粗残渣(33mg)を得た。ESI-MS(+):C6193BF1317について1360.31m/zと計算され、実測値は[M-3F-2H]=1302.1m/z、[M+H]=1362.1m/zとなった。図45を参照。
【0262】
粗残渣(33mg)を(1:1)MeCN:HO(+0.1%ギ酸)(1mL)に溶解し、HPLC(カラムはAgilent Eclipse XDB-C18、5μm、9.4mm×250mm、流速は2mL/min、UV-vis検出器は276nm、勾配は19分にわたって15%~65%MeCN:HO(+0.1%ギ酸))で精製した。ピークを9.25分で回収した。生成物を50mLファルコンチューブに回収し、ドライアイス上で凍結した。完全に凍結したら、回収した画分を凍結乾燥させ、純粋なPSMA-617-LysAMBF-DOTA(2.5mg、1.8μmol、19%)を得た。
【0263】
VI.PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)
【化21】
【0264】
PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)は、PSMA-617-LysAMBF-DOTA(44.2mg、31.1μmol)をMeCN(1.5mL)と共に0.1M CuCl-NaOAc(1.55mL、pH=4)で処理することによって合成した。混合物を65℃のホットプレートに30分間入れた。次いで、Speed-vacを使用して混合物を濃縮して、予想される銅キレートを含有する粗残渣を得た。ESI-MS(+):C6190BCuF1010について1422.8m/zと計算され、実測値は[M-3F-2H]=1362.8m/z、[M-F]=1402.8m/z、[M+H]=1423.8m/z、[M+Na]=1444.8m/zとなった。
【0265】
粗残渣(44.2mg)を(1:1)MeCN:HO(+0.1%ギ酸)(1mL)に溶解し、HPLC(カラムはAgilent Eclipse XDB-C18、5μm、9.4mm×250mm、流速は2mL/min、UV-vis検出器は276nm、勾配は23分にわたって15%~40%MeCN:HO(+0.1%ギ酸))で精製した。生成物を50mLファルコンチューブに回収し、ドライアイス上で凍結した。完全に凍結したら、回収した画分を凍結乾燥させ、純粋なPSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)(8.5mg、6.0μmol、19%)を得た。図46を参照。
【0266】
VII.PSMA-617-LysAMBF-DOTA又はPSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)の18F-標識。
【0267】
80nmolの19F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA又は19F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)を、ポリプロピレンチューブ内の水性ピリダジン-HCl緩衝液(15μL、1M、pH=2)、DMF(15μL)及び水性KHF(4μL、5mM)に再懸濁した。18MeVのプロトンをH 18Oに衝突させた後、陰イオン交換カラム(9mg、QMA、塩化物形態)で捕捉しても、担体を付加した18F-フッ化物は得られなかった。18F-フッ化物を生理食塩水(100μL)で反応チューブに溶出した。反応混合物を真空下、80℃で20分間加熱し、40mMギ酸アンモニウム水溶液(2mL)で希釈した。溶液を、半分取カラムを使用するHPLCによって精製し、4.5mL/分の流速で(30:70)MeCN/水(+0.1%TFA)(v/v)で溶出した。保持時間は、キレート化トレーサと非キレート化トレーサの両方について約10分であった。減衰補正放射化学収率は、18F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA又は18F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)について、それぞれ1.0±0.3%(n=3)又は2.7±0.7%(n=3)であった。放射性HPLCによって判定して、両方の標識トレーサについて99%超の放射化学純度が達成された。比活性は、分析HPLCシステムを使用して測定した。これは、最終生成物溶液中の注射放射能(1.5~3mCi)を注射溶液中の質量で割ることによって計算した。注射生成物の質量は、注射から得られたUV吸光度を予め調製した標準曲線と比較することによって推定した。18F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA又は18F-PSMA-617-LysAMBF-DOTA(Cu)の比活性は、それぞれ3.7±2.5Ci/μmol(n=3)又は4.8±2.2Ci/μmol(n=3)であった。
【0268】
結果
【0269】
表7は、PSMA発現LNCaP前立腺癌異種移植片を有するマウスにおけるF-18標識PSMA-617-Lys-AMBF3-DOTAの生体内分布(注射後1時間)を示す。PSMA-617-LysAMBF3-DOTAの構造を図2に示す。図4は、LNCaP前立腺癌異種移植片を有するマウスにおけるF-18標識PSMA-617-Lys-AMBF3-DOTAの最大強度投影PET画像(注射1時間後)を示す。
【0270】
【表7】
【0271】
例2の参考文献



【0272】
例3及び4:DOTA-Lys(AMBF3)-RM2(DOTA-Lys-AMBF3-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH2)及びDOTA-Lys(AMBF3)-BKの合成及び特性評価
【0273】
結果及び考察
【0274】
DTPAの合成
【化22】
【0275】
ジエチレンペンタ酢酸(DTPA)は、放射性金属(例えば、64Cu)のシャペロンとして治療薬と診断薬の両方の合成に使用される酸性キレート剤である25。このキレート剤は、ペプチドへのコンジュゲーションに利用可能な5つのアームを有するので、アーム自体は、本出願に特有の設計で保護されなければならない。本発明者らの目的のために、1つの遊離アームが固相化学に望ましいが、他の4つのアームは酸不安定性保護基(化合物4)によって保護されるべきであった。次いで、最終的に酸性TFAでペプチドを樹脂から切断すると、保護基を除去することができた。この設計概念は、文献から採用された合成スキーム3につながった26、27
【0276】
スキーム3。DTPAの合成スキーム。
【化23】
【0277】
化合物4の合成は、塩基性条件下で市販のエタノールアミンを2当量のt-ブチルブロモアセタートと混合することによって行った。ジエチルエーテルで抽出し、続いて炭酸水素ナトリウム及びブライン洗浄した後、油性残渣をシリカカラムで精製した。ほぼ3gの化合物1が収率71%で精製されたため、精製はスケールアップに適していた。この化合物のH-NMRは高純度を示し、水及びヘキサンからのシグナルは無視できるほどであった(付録を参照)。その後、無水条件下でDCM中のNBS/PPhで第三級アミノアルコールを処理することによって化合物1を2に変換し、収率71%で精製した。反応が完了したら、トリフェニルホスフィンオキシド副生成物を、粗反応混合物を短いシリカカラムで濾過することによって除去し、その後、所望の生成物を、5:1ヘキサン/ジエチルエーテルを使用する第2のシリカカラムによって精製した。この化合物の純度をH-NMRにより確認し、ESI-MSは予想される臭素同位体パターンを示した(データは示さず)。
【0278】
この時点で、適切なグリシンエステルを、2を用いて二重アルキル化して、DTPA誘導体(3)を得た。本発明者らが最初にメチルエステルを選択したのは、鹸化によってメチル基を容易に除去し、他の4つのアームのtert-ブチル保護基に影響を与えないことを想定していたからである。この目的のために、リン酸ナトリウム塩から作成したリン酸緩衝アセトニトリル水溶液中で3aの合成を行った。残念なことに、リン酸塩の溶解度は非常に低く、周囲温度が低下すると塩が沈殿することが多かった。したがって、リン酸塩のモノ-及びジ-カリウム塩を代わりに使用して緩衝液を作成し、NaOH又はHCl水溶液を添加してpHを8に調整した。この高濃度溶液は、アセトニトリルと混合すると二相系を形成した。24時間後、混合物を濾過し、有機層を除去し、蒸発させた。残りの無機塩を除去するために、非晶質油をCHClに溶解し、再濾過した。この化合物のクロマトグラフィ精製は、酸性シリカ上で容易にプロトン化され得る3個の第三級アミノ基のために問題があった。残念なことに、シリカをトリエチルアミンで前処理し、1%トリエチルアミンで溶出しても、完全な精製は依然としてできなかった。それにもかかわらず、本発明者らは、不純物である3aを1当量のLiOH水溶液で処理し、メチルエステル(4)の鹸化を行うことにした。反応の完了をTLCが示した後、生成物をジエチルエーテルに抽出した。質量分析により、モノ脱保護DTPA付加物の存在が確認され、m/z=640で[M+Na]シグナルを示した(データは示さず)。鹸化は、いくつかの所望の材料の形成をもたらしたが、反応は、清浄でも高収率でもなかった。本発明者らは、鹸化条件が生成物の精製を妨げていると仮定し、実際、文献調査により、モノメチルテトラ-tert-ブチル保護DTPA(3a)の合成は報告されていないことが示された。代わりにベンジル保護グリシンエステルを使用すると、パラジウム触媒水素化によって所望の生成物(3b)が得られた26、28
【0279】
3bを合成するために、グリシンベンジルエステルを、エーテル/カルボナート抽出を用いてベンジルグリシナートp-トルエンスルホナートの塩から最初に単離し、直ちに使用した。これを同様の条件(上記参照)で化合物2と反応させて、ベンジル保護DTPAを27%粗収率で得た。この場合も、官能基の性質のために、クロマトグラフィによる精製は困難であることが判明し、徹底的に追求することはできなかった。他の精製方法(例えば、酸性/塩基性/中性アルミナ、C18逆相、蒸留)は調査しなかった。むしろ、粗3bは、パラジウム触媒水素化により、MeOH中で一晩かけて81%の収率で脱保護した。完了したら、焼結ガラス漏斗で混合物を濾過することによってPd/C固体を除去した。興味深いことに、化合物4は、H-NMRによって確認されたように、さらなる精製を必要としなかった(付録を参照)。全収率は4ステップにわたって11.4%であった。
【0280】
新規AMBFの合成
【0281】
本プロジェクトのこの時点で、本発明者らの焦点は、DTPAキレート剤(4)の合成から、任意のペプチド鎖に組み込むことができる新規なトリフルオロボラートの構築へと移った。ジメチルアンモニオメチルトリフルオロボラート(AMBF)(7)は、その高い加水分解安定性、調製の容易さ、及び銅支援アジド-アルキン環化付加反応の有用性のために前駆体として選択された19。実際、pH7.5の非常に希薄な条件(約5mM)であっても、化合物7は、図4に示すように非常に遅い一次速度で遊離フッ化物を失った19。このインビトロ安定性に加え、化合物7の合成が容易であることから、AMBF構造はPETイメージング剤の固有の標的となる。
【0282】
化合物6を、ジエチルエーテル中の市販のヨードメチルボロナートピナコールエステルとN,N-ジメチルプロパルギルアミンとの等モル反応から得た(スキーム4参照)。塩を迅速に沈殿させ、続いて濾過すると、90%超の収率でNMR純粋な生成物が得られた(付録を参照)。pH2でKHFを用いてフッ素化すると、化合物7が得られた(スキーム4参照)。遊離フッ化物を、20%ACN/EtOHで溶出する短いシリカプラグに通すことによって除去した。生成物のH-NMRはδ=1.15ppmを示し、ピナコールジオール不純物を示している。さらに、フッ化物塩、KBF(-150ppmの19F-NMRで見られる)、溶解したケイ酸塩、及び他の特徴付けられていない無機不純物などの汚染のために、反応収率は200%~300%であることが多かった。これらの問題のいくつかを改善するために、粗固体をジエチルエーテルに溶解し、再濾過した。得られた白色粉末は、依然として除去されていないKBF不純物を除いて、H-NMR及び19F-NMR純粋であった。
【0283】
スキーム4。AMBF(7)の合成スキーム。
【化24】
【0284】
アルキルトリフルオロボラートの電子的性質に関する啓発的な議論は、化合物6及び7のH-NMRスペクトルに基づいて行うことができる。NMR実験は、いずれもDOで行ったが、これは、2つの化合物が溶解し、目的のシグナルを妨害しない唯一の溶媒であったためである。アンモニウム基とホウ素との間のメチレンプロトンのシグナルは、フッ素化の際に大きくシフトする。具体的には、6の2H一重項はδ=3.09ppmにあるが、化合物7では、シグナルはδ=2.55ppmに存在する(付録を参照)。化合物7中のホウ素は、NMR環境をより遮蔽するはずの形式的な負電荷を有することが明らかであるが、3つのフッ素原子の存在は、メチレンプロトンにとって非常に電子吸引性の高い(それにより遮蔽性のない)環境を提供する。この相反する機能性は、アップフィールドシフトがDO及びMeODの両方で観察されるので、実際には電子遮蔽(電子供与)として現れる(データは示さず)。メチレンシグナルの化学シフトの変化に加えて、その外観も、強い一重項から広い一重項又は場合によっては多重項に変化する。ホウ素-11へのカップリングは、これが化合物6のスペクトルでは見られなかったので、除外することができる。したがって、これは、フッ素-19への長距離カップリングによって、又はNMRタイムスケール内にあるいくつかの配座の非柔軟性に起因して説明することができる。これらの理論のいずれかの検証は、徹底的に追求されなかった。
【0285】
化合物7及び8の19F-NMRに関して、11B-19Fカップリングから予想される1:1:1:1四重項は高分解能では観察されない。11Bの核スピンは3/2であるが、比較的緩和が速いため、標準的なパルスプログラムを使用するNMR実験では分裂パターンの可視化が困難な場合がある29~31。見られるのは、-140ppmのかなり広いシグナルである。前述のように、化合物7のジエチルエーテル洗浄では、テトラフルオロホウ酸塩不純物を除去することができず、このシグナルは化合物7では-150ppmに現れる。しかし、次のステップで得られた修飾AMBF残基は、-150ppmのシグナルがない。化合物6、7、及び8の11B-NMR分析は、ピークが非常に広く(5ppm)、分割パターンが得られなかったため、追加情報が得られなかったことに留意すべきである(データは示さず)。
【0286】
クリック反応のアジドパートナーは、修飾リジン残基の形態をとった(5)。スキーム5に示すように、この短い合成プロトコルは、標準的な固相ペプチド合成を使用して、必要なトリフルオロボラート官能基を組み込むために使用することができる、潜在的に用途の広いペプチドビルディングブロックを得ることができる。Perrinらによって以前に使用されたアリールトリフルオロボラートは、固体支持体から切断され、HPLC精製された後にしかペプチドに付加することができないので、これは重要な違いである。過去2年間に、いくつかの刊行物がこの技術を描写しており、主にRGDのアジド誘導体とアルキン-ArBFとの間の銅触媒クリック反応に焦点を当てている18、32~35。アルキン置換アリールトリフルオロボラートは、SPPSでの樹脂切断に必要な低いpHでは化合物が不安定なため、これらのペプチドの合成と精製には困難が生じた。実際、HPLCに0.1%TFA/HO溶媒系を使用しても、アリールトリフルオロボラートの分解が生じた19。セクション2.3の議論は、新規のリジン-AMBFとコンジュゲートした2つのペプチドの安定性を概説する。5を合成するために、DCM中のNaN及びTfOの混合物をFmoc-Lys-OHに添加した。この反応の機構は、リジン上のε-アミノ基の求電子剤として働くトリフルオロメタンスルホニルアジド(トリフルオロメタンスルホニルアジド)中間体を介して進行する。この二次反応中間体は、続いて、直近で放出されたアジドアニオンによってε-炭素が攻撃され、Fmoc-Lys(N)-OH(5)が収率86%で得られる。
【0287】
スキーム5。Lys(AMBF)(8)の合成スキーム。
【化25】
【0288】
2001年にSharplessらによって最初に記載されたクリック反応は、「モジュール式で、範囲が広く、高収率で、立体特異的であり、無害な副生成物のみを生成する」任意の反応として定義される36。増え続けるクリックケミストリーの下には、最も広く使われている例があり、60年代初頭にRolf Huisgenが開発した銅触媒アジド-アルキン環化付加がある37。このケミストリーを利用して、アルキン化合物7とアジド化合物5を用いて化合物8を合成した。8の合成は、反応条件の最適化及び再現性の問題のために困難であった(表8)。
【0289】
【表8】
【0290】
アスコルビン酸ナトリウムを使用して、アルキン基質が最初に結合するために、銅をCu(II)からCu(I)にその場で還元した。すべての反応の溶媒は、およそ3:2のACN/HOであった。必要に応じて、この比を調整して単相系を維持した。すべての反応を45℃で一晩行った。還元剤である1Mアスコルビン酸ナトリウムを新たに調製した。Fmoc-Lys-(N)-OHは9:1のDCM/MeOH中でR=0.37を有するが、化合物8はR=0.15でベースラインに近いので、反応の進行をTLCで監視した。反応1及び2は、24時間にわたって出発物質から生成物へ有意に変換しなかった(UV可視化)。1M炭酸水素ナトリウムによって中和されなかった反応3でも同様の問題が生じた。反応1~3と同様にして、反応4を中和し、さらにカラム精製した。溶媒系では精製が非常に遅く、生成物は多くの画分にわたって溶出した。反応5の粗混合物をDCMに溶解し、ブライン(3×5mL)で洗浄して無機塩を除去した。有機抽出物はカラム精製により適していたが、全体的な反応収率は依然として低かった。反応6では、粗反応混合物の単純なDCM抽出を使用して、有機層から無機塩を除去した。次いで、有機抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィで精製した(収率は65%であった)。残念なことに、スケールアップ時に、この方法の再現性は低く、反応7及び8(2×スケール及び4×スケール)の収率はそれぞれ45%及び10%未満であった。このクリック反応がグラムスケールの条件に合致しない理由を理解するには、さらなる洞察が必要である。化合物8の全収率は、4工程にわたって56%であると計算された(収束的合成)。
【0291】
最近、アスコルビン酸ナトリウムの還元環境を促進するために、混合物を濃縮すること、及び溶液を脱気することの両方により、反応を完了するための「ドライダウン」法が提案されている。反応9~11を、漸増当量の銅及びアスコルビン酸塩を使用して行った。反応物は精製されなかったが、TLCプレートの目視検査により、ドライダウン法で識別可能な改善がなかったことが示された。しかし、24時間後、反応9及び10では、11と比較して、有意により多くの出発物質が残存したことが判明した。これは、化学量論的、又はさらに過剰の銅を使用することがこの反応に必須であることを示唆している。
【0292】
固相ペプチド合成
【0293】
最近、Lys(AMBF)残基をそれらの配列に組み込む2つのペプチドが合成された。第1のペプチド、DOTA-及びAMBF-コンジュゲートRM2(DOTA-Lys-AMBF-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH)を、自動ペプチド合成装置を用いて生成し、Zhibo LiuによってHPLCで精製した(図4719。樹脂結合ペプチドRM2は、BC Cancer Association(BCCA)のLin Labによって本発明者らに提供された。RM2は、前立腺、乳房、及びGI管腫瘍に見られるガストリン放出ペプチド受容体(GRPr)に対して高い親和性を有するボンベシンアンタゴニストである20、38~42。以下の説明では、第2のペプチドであるブラジキニン由来AMBFコンジュゲートの合成に焦点を当てている(図48)。スキーム6は、RM2コンジュゲートの合成に最初に使用され、その後、手動固相ペプチド合成にも応用された。
【0294】
キニンと総称される天然ブラジキニン及びその類似体は、疼痛及び正常な生理学的調節のシグナルとして体内に存在する43。これらのノナペプチドは、2つのタイプの受容体であるB1及びB2を有する44。後者は、細胞内のB1受容体よりも一般的であり、正常なノナマー及び類似のキニン類似体に結合する。逆に、B1受容体は、1アミノ酸短いキニンのみに結合し、具体的には[des-Arg]-BKである44。体内のBKを破壊する主要な酵素は、7-8及び5-6結合で切断するアンジオテンシンI変換酵素(ACE)である45。癌治療におけるBK受容体の役割は、B2受容体が全身に高濃度であるため、魅力的な薬物標的にならないという事実によって証明される。むしろ、B1受容体は、炎症及び腫瘍増殖の増加中により一般的になるが、癌部位に特異的であるため、有望な薬物標的である45。この理由から、本発明者らは、Lys(AMBF)をB1受容体特異的[des-Arg]ブラジキニン類似体にコンジュゲートすることを選択した。
【0295】
これらのペプチドの設計は、いくつかの要因に基づいている。まず、セクション1.5で述べたように、これらの天然の親油性ペプチドは、マウスのPETスキャンにおいて肝臓及び腸に蓄積することが示されている21。キレート剤DOTAなどの薬物動態学的調整剤の添加は、肝胆クリアランスの減少を促進し、画像コントラストを改善する22、23。しかし、これはキレート剤を付加する唯一の目的ではない。名前が示唆するように、DOTA及びDTPAなどのキレート化官能基は、疾患の治療薬として、又は18Fと同様に画像診断剤(例えば、68Ga)のいずれかとして作用することができる特定の金属(例えば、90Y又は186Re)をキレート化するのに役立つ25、46、47。この比較的新しい医学分野は、2002年にFunkhouserによってセラノスティックと名付けられたもので、標的治療が疾患の可視化と攻撃の両方を可能にすることから、非常に有望視されている47、48。本発明者らのアーキテクチャでは、AMBF18F-PETイメージングと組み合わせることで診断として機能し、DOTAにキレートされた金属は、癌に対する潜在的な治療法として機能すると仮定される。これらの2つの機能は両方とも、高い腫瘍取込みに依存しており、これにより、Lys(AMBF)と天然ペプチドとの間のカチオン性リンカーが極めて重要になる。Mansiらは、4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジンが、ペプチドにコンジュゲートされ、生理学的pHでプロトン化されると、DOTA-RM2のKをほぼ3分の1に減少させることができることを示した20
【0296】
スキーム6。DOTA-Lys(AMBF)-BKペプチド(9)の合成スキーム。(i)標準的なFmoc合成。BCCAのLin Labで行われた手順。ステップ(ii)で使用した樹脂カップリングBKは、共同研究により提供され、(ii)20%ピペリジン/DMF、室温、3×5分、次いでFmoc-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン、HBTU、DIPEA、DMF、室温、2時間、(iii)20%ピペリジン/DMF、室温、3×5分、次いでFmoc-L-Lys-AMBF-OH(8)、HBTU、DIPEA、DMF、室温、24時間、(iv)20%ピペリジン/DMF、室温、3×5分、次いでDOTA-トリ-t-ブチル-エステル、NHS、DCC、DCM、室温、24時間、(v)30mM KHFを含む95:2.5:2.5のTFA/HO/TIPS。
【化26】
【0297】
スキーム6は、ペプチド9を生成するために使用される手動固相ペプチド合成プロトコルを示す。固体支持体は、ヒドロキシメチルフェニル官能化樹脂(Wang樹脂)であり、これをLin labによってBCCAでFmoc保護修飾ブラジキニンにカップリングさせた。より高いインビボ安定性を得るために、この合成で使用するBK類似体は、Hyp及びChaをそれぞれ使用して、3位及び5位で修飾する(図48)。これらの修飾により、これらの位置でのACEの効果が変化し、ペプチドの半減期が長くなり、優れたPET画像が得られるはずである49。リジン残基及びアルギニン残基は、それぞれBoc(tert-ブトキシカルボニル)基及びPbf(2,2,4,6,7-ペンタメチル-ジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル)基によって保護されている。これらの基は酸に不安定であり、したがって、最終的なTFA樹脂の切断においてのみ脱離する。天然のブラジキニンは末端ロイシン残基を含まないので、アゴニストBKをアンタゴニスト形態に変換するために、末端ロイシン残基を付加した。すべての反応は3mLスピンカラムで行う。脱保護条件は、2.5mLの20%ピペリジン/DMFでそれぞれ5分ずつ3回連続洗浄した。樹脂をDMF及びDCMで洗浄した後、第1のカップリング反応(スキーム6ii)でカチオン性スペーサを連結し、活性化剤としてHBTUを使用してDMF中で行った。各脱保護/カップリング反応(スキーム6ii~6iv)の後にカイザー(ニンヒドリン)テストを使用して、完了について試験した。簡潔には、この色試験は、第一級アミノ基の存在により、保護ペプチドと非保護ペプチドとを迅速に識別することができた50。これは半定量的分析方法であるが(ビーズの目視検査のみでは、保護アミンがどれだけ脱保護されているかを正確に区別することはできないため)、陽性対照を使用することで、ビーズをどれだけ加熱すべきかを決定することができた。試験は、樹脂のビーズを数個採取し、それらをニンヒドリン、エタノールに溶解したフェノール及びピリジン中のKCN水溶液で処理することを含んだ。一方の試験管は、遊離アミノ基を有するRinkアミド樹脂を含有し(陽性対照)、他方の試験管は、問題のペプチドを有する樹脂を含有した。加熱すると、遊離末端アミンでは暗青色が予想されたが、Fmoc保護ペプチドでは色の変化は観察されなかった。
【0298】
次のカップリング反応(スキーム6iii)は同様の条件を使用したが、化合物8がカチオン性リンカーよりもはるかに価値が高いため、可能な最大の収率を確保するために24時間混合した。DOTA-トリ-t-ブチル-エステル(スキーム6iv)のカップリングは、最初にDMF中NHS/DCCを用いて24時間試みた。反応期間後、カイザーテストにより、有意な青色が依然として観察された。さらに24時間後にも同様の結果が見られた。このようにして、溶媒をDCMに切り替え、満足のいくことに、48時間後にカイザーテストが陰性となった。HBTUは、低分子ペプチドの合成のためにDOTAと協働することが示されているが、RM2及びBK類似体に関する以前の経験から、DCCカップリングによるDOTAのNHSエステルの合成がより効率的な方法であることが示されていた19、51
【0299】
水中95%TFAを使用して樹脂からペプチドを切断しようとすると、困難が生じた。切断されたペプチドのHPLCトレースは、10~20分に多数のピークを示し、MALDI-TOF分析によって生成物を確認することはできなかった(データは示さず)。AMBFが樹脂からの配列の切断時に分解したか、又はTFAが複数の位置でペプチドを潜在的に切断したかのいずれかであると仮定した。この新しい技術の目的は、加水分解安定性であったので、これは失望を招いた。それにもかかわらず、これらが極めて過酷な条件であり、したがっていかなるトリフルオロボラートも存在することができない可能性があることを認識することが重要であった。この問題を解決するために、過剰の遊離フッ化物を開裂混合物に添加して、平衡をボロン酸の方向ではなく、トリフルオロボラートの方向に押し進めるべきであることが示唆された。これは、スキーム4に示すTingらによって行われた動力学的研究に基づいていた。この推論に照らして、30mMのKHFを95:2.5:2.5のTFA/HO/TIPSに添加し、開裂反応を最大2時間行った。溶液を濾過し、回収し、蒸発させ、MeOH/ジエチルエーテルを用いて粉砕した。沈殿した固体を50%アセトニトリル水溶液に溶解し、図50に示すようにHPLCによって精製した(詳細なHPLCプロトコルについては方法及び材料を参照)。10~11分(ピーク1)、11.1~12分(ピーク2)、14~14.8分(ピーク3)及び14.9~15.7分(ピーク4)のピークを回収し、MALDI-TOFによって分析した。最初の2つのピークのみが有用な特性評価データを提供した(図51図54)。
【0300】
ブラジキニン誘導体のHPLC精製は、ピークが両方とも本質的に広い保持時間で類似しているので困難であることが証明されている。これは合成手順の品質による可能性があるが、他のBK類似体についても同様のHPLCトレースが以前に観察されている19。説明として、BKペプチドは、それぞれ3/4及び8位のPro及びHyp残基により、複数の立体配座を有する傾向があるということが考えられる。したがって、化学的に純粋なペプチドであっても、広いピークで溶出し得る。図50に見られるように、ピーク1及び2は別々に溶出し、残念なことに、ピーク1(m/z=1807)の化合物はピーク2のMALDI-TOF中に見出すことができ、逆もまた同様であるため、分離は完全には効果的ではなかった。ピーク1の正体は、ペプチド9の脱ホウ素生成物であると考えられる(図55)。構造の予測同位体パターンは、観察されたMALDI-TOFスペクトルと非常によく一致する(図52)。
【0301】
図53は、所望の生成物DOTA-Lys(AMBF)-BKであるピーク2のMALDI-TOFを示す。残念なことに、困難なHPLC精製の結果として、スペクトルは、少量の脱ボロニル化生成物に加えて、いくつかのさらなる特徴付けられていない不純物があることを示している。これはブラジキニンに特異的であると考えられており、前述のRM2ペプチドでは、HPLCのトレースがきれいになり、MALDI-TOFのスペクトルも非常によく一致している(図56)。
【0302】
ペプチド9の収率はわずか5.5%であり、これはいくつかの理由により説明することができる。まず、保護されたBKを16.5μmolのみ使用したため、固相合成の全体的なスケールは非常に低かった。さらに、上記のように、生成物のHPLC精製では、所望のペプチドと同様の保持時間を有する他のピークが邪魔になった。最後に、DOTA-Lys(AMBF)-BKの脱ホウ素は、低収率の原因の一部である。それにもかかわらず、MADLI-TOF分析により、ブラジキニンなどの合成的に困難なペプチドでも、この方法が成功したことが確認できたのは喜ばしいことである。
【0303】
ペプチド11のMALDI-TOFは、m/z=[M+H1959.1に単一のピークを示す。この純粋なスペクトルは、BK(ペプチド9)と比較してRM2の比較的容易な合成を明らかにしている。
【0304】
上記の議論に基づいて、以下の、この技術はAMBFに特化したものなのか、又はアリールトリフルオロボラートにも使えるものなのか、アリールトリフルオロボラートをアミノ酸残基にコンジュゲートし、固相合成によってペプチドに組み込むことができるか、という疑問が生じる。本明細書に提示される観察結果は、ArBFを使用するよりもLys(AMBF)官能性を使用してこれらのペプチドを合成する方がはるかに容易であることを示唆している。ArBF官能性は、開裂及び精製条件がトリフルオロボラートを破壊するので、クリッカブルペプチドのSPPS及び精製後にのみコンジュゲートすることができる21。これは、トリフルオロボラートがアンモニウム基に隣接する場合、アリールトリフルオロボラート同族体と比較して、加水分解の安定性が高いことによる(図3及び図419。さらに、AMBFはインビボで安定である可能性の結果として、遊離フッ化物の骨への取り込みが少ないという本質的に有用な利点がある。新規のAMBFでは2つのペプチドしか合成されていないが、本発明者らは、やがてさらにいくつかのペプチドを調査する予定である。
【0305】
結論
【0306】
このプロジェクトの目的は、アリールトリフルオロボラート由来の18F-PETイメージング剤が抱えるいくつかの問題点を改善することであった。具体的には、高い親油性及び固相ペプチド合成との不適合性により、それぞれ画質が低下し、合成の汎用性が制限された。この目的のために、極性を増大させるためにペプチドにコンジュゲーションすることを目的として、保護された金属キレート剤を標的とした。テトラ-t-ブチル保護DTPA(4)を、4工程にわたって全体収率11%で合成した。化合物3a及び3bの精製に関する問題のため、収率は不満足なものとなった。
【0307】
AMBF(7)と修飾リジン-アジドアミノ酸(5)とのクリック反応の結果として、新規なアルキルトリフルオロボラート(8)を合成した。加水分解に対するAMBFのインビトロ安定性の改善を示す以前の動態研究に基づいて、この残基は、高い腫瘍親和性を有する低分子ペプチドの固相ペプチド合成に適合すると仮定された16。Lys(AMBF)残基を付加する基質としてブラジキニンアンタゴニストを選択した。ペプチドには、DOTA(金属キレート剤)及びカチオン性アンモニウムリンカーもカップリングされており、これらはそれぞれ低親油性及び高腫瘍取り込みに不可欠であることが知られている20。ペプチドをHPLCによって精製し、MALDI-TOF分析によって特性評価した。
【0308】
この新しい技術の強みは、固相ペプチド合成によるトリフルオロボラートペプチド類似体の合成における高い汎用性である。AMBFはまた、加水分解に安定しているので、骨への遊離フッ化物の取り込みを減少させることができ、本質的に有用である。この研究は、18F標識ペプチドを、DOTAにキレート化された治療用金属とカップリングさせることによって、デュアルモーダルなセラノスティックの研究を可能にする。
【0309】
実験
【0310】
すべての市販の化学物質をSigma-Aldrich社、Fischer Scientific社、Alfa-Aesar社、Oakwood Chemicals社又はCombi-Block社から購入し、さらに精製することなく使用した。溶媒をFischer Scientific社又はSigma-Aldrich社から購入し、さらに精製することなく使用した。乾燥THFを、指示薬としてベンゾフェノンを用いたナトリウム金属上での蒸留によって得た。使用前に少なくとも24時間、活性化4Aモレキュラーシーブ上に溶媒を保存することによってDMFを乾燥させた。重水素化溶媒は、Cambridge Isotope Laboratories社から購入した。H-NMRデータを300MHz Bruker Avance Spectrometerで収集し、すべての化学シフトを、溶媒シグナルを基準点としてδスケールでppmで報告し、CDCl3についてδ7.26、CDCNについてδ1.94、DOについてδ4.79、CDClについてδ5.32、及びCDODについてδ3.31である。多重度は、一重項(s)、二重項(d)、三重項(t)、四重項(q)、多重項(m)、又はブロードな(br)一重項として報告される。質量スペクトルは、サンプル注入用のWaters 2695 HPLCと組み合わせたWaters ZQ GC-MSを使用して取得した。フラッシュカラムクロマトグラフィに使用したHPLCシリカゲルは、SiliCycle社からのSiliaFlash F60(230~400メッシュ)シリカゲルであった。HPLC精製は、Agilent Eclipse XDB-C18カラムを介してAgilent 1100シリーズシステムを使用して行った。検出は、229nmでのUV吸光度によって行った。勾配プログラムは以下の、溶媒Aがアセトニトリル、溶媒Bが0.1%TFA/HO、0~2分で0%~5%A、2~15分で5%~20%A、15~16分で20%~35%A、16~18分で35%~100%A、18~19分で100%~5%A、流速は3mL/分、カラム温度は50~51℃の通りであった。文献から改変された合成手順は、参照により以下に記載されている。
【0311】
N,N-ビス[(tert-ブチルオキシカルボニル)メチル]-2-アミノエタノール(1)26
【0312】
火炎乾燥した丸底フラスコ中で、tert-ブチルブロモアセタート(5.00mL、33.9mmol、2.5当量)、無水KHCO(3.45g、34.5mmol、2.5当量)及びDMF(22mL)の混合物を0℃に冷却した。DMF(1.68mL)中のエタノールアミン(0.826mL、13.7mmol、1当量)の溶液を、不活性雰囲気下で5分間にわたってフラスコに滴加し、30分間撹拌した。反応物を室温でさらに24時間撹拌した。次いで、混合物を濾過し、濾液にジエチルエーテル(25mL)及び飽和NaHCO(17mL)を添加した。その後、水層をジエチルエーテル(3×10mL)で抽出し、合わせた有機抽出物をブライン(3×10mL)で洗浄した。MgSOで乾燥させた後、有機混合物を濾過し、減圧下で蒸発させて粘性油を得て、これをシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(石油エーテル/ジエチルエーテル、2:1、R=0.17)によって精製した。
【数8】
【0313】
N,N-ビス[tert-ブチルオキシカルボニル)メチル]-2-ブロモエチルアミン(2)26
【0314】
火炎乾燥した丸底フラスコ中で、1(2.77g、9.51mmol、1当量)をDCM(15mL)に溶解した。この溶液にトリフェニルホスフィン(2.17g、8.27mmol、0.8当量)を添加し、混合物を0℃に冷却した。次いで、N-ブロモスクシンイミド(1.47g、8.27mmol、0.8当量)を5分間にわたってゆっくり添加した。無色混合物を0℃で90分間撹拌したが、観察可能な変色はほとんどなかった。混合物を減圧下で蒸発させて淡桃色固体を得た。これにジエチルエーテル(28mL)を添加し、得られた白色沈殿物を濾過した。濾液を再び減圧下で蒸発させて黄色油を得て、これを短いシリカカラムに充填し、ジエチルエーテルで溶出した。粗溶出液を再度蒸発させ、最後にシリカカラムでのフラッシュクロマトグラフィ(ヘキサン/ジエチルエーテル、5:1、R=0.65)によって精製した。
【数9】
【0315】
N,N,N’’,N’’-テトラキス[(tert-ブチルオキシカルボニル)メチル]-N’-[(メチルオキシカルボニル)メチル]ジエチレントリアミン(3a)52
【0316】
アセトニトリル(2mL)中のグリシンメチルエステル塩酸塩(32.5mg、259μmol、1当量)及び2(187mg、533μmol、2.1当量)の溶液を作成した。次いで、HO(10mL)中のKHPO(3.26g、18.8mmol)及びKHPO(167mg、1.23mmol)を混合することによって作成したリン酸緩衝液(1mL、2M、pH8)を添加し、反応物を室温で24時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を分液漏斗に移した。有機層を水層から除去し、MgSOで乾燥させた。減圧下での蒸発により黄色油を得て、これをシリカカラム(CHCl/MeOH/NEt 150:3:1、R=0.3)に充填した。この溶媒系は、試みられた数ある中でもとりわけ(例えば、Hex/エーテル/NEt、Hex/EtOAc/NEt)、酸性及び塩基性官能基の性質のため、並びに溶解性の問題のために、標的化合物を高純度で単離することができなかった。
【0317】
N,N,N’’,N’’-テトラキス[(tert-ブチルオキシカルボニル)メチル]-N’-[(ベンジルオキシカルボニル)メチル]ジエチレントリアミン(3b)52、27
【0318】
ベンジルグリシナートp-トルエンスルホナート(200mg、592μmol、1当量)をジエチルエーテル(4mL)に添加し、NaCO水溶液(189mg、1.8mmol、3当量、4mLの溶液)を添加した。室温で30分間撹拌した後、エーテル層を分離し、MgSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させて、ベンジルグリシンエステル(89mg、540μmol)を得た。この中間体を、標的化合物3bに向けてさらに精製することなく使用した。リン酸緩衝液(1mL、2M、pH=8)を、アセトニトリル(2mL)に溶解したベンジルグリシンエステル(60mg、364μmol、1当量)及び2(280mg、795μmol、2.2当量)に添加した。この二相性反応物を室温で24時間撹拌した。沈殿した塩を濾別し、有機層を単離し、MgSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。次いで、半固体残渣をクロロホルムに溶解し、濾過し、再び蒸発させた。得られた黄色油をフラッシュクロマトグラフィ(CHCl/MeOH/NEt 150:3:1、R=0.35)用のシリカカラムに充填した。3aと同様に、シリカクロマトグラフィによる完全な精製は、塩基性官能基の性質のために困難であった。
【0319】
N,N,N’’,N’’-テトラキス[(tert-ブチルオキシカルボニル)メチル]-N’-[酢酸]ジエチレントリアミン(4)52、27
【0320】
3b(76mg、108μmol、1当量)をメタノール(1mL)に溶解し、10%Pd/C(約20mg、50%湿潤)を添加した。反応物を水素雰囲気下(2つの大きなバルーン)、室温で24時間撹拌した。反応物を焼結ガラス漏斗で濾過し、減圧下で蒸発させて粘性黄色油を得た。
【数10】
【0321】
Fmoc-(L)-Lys(N)-OH(5)24
【0322】
0℃で、NaN(7.3g、113mmol)をHO(20mL)とDCM(30mL)の混合物に添加した。これに、TfO(3.8mL、22.45mmol)を30分間かけて滴下した。この反応物を0℃で5時間撹拌し、続いてDCM(2×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、NaCOの飽和水溶液(1×50mL)で洗浄し、さらに精製することなく使用した。次いで、1:1のMeOH/HO(33mL)中のKCO(5.6g、39.5mmol)、CuSO・5HO(約25mg)及びFmoc-(L)-Lys-OH(4.78g、13mmol)の混合物を生成した。これに有機抽出物を30分間かけて滴加し、混合物を室温で一晩さらに撹拌した。2.5N HCl(150mL)を使用して反応をクエンチし、その後、生成物をDCM(3×50mL)で抽出し、ブライン(2×50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。混合物を濾過し、減圧下で蒸発させて粗油を得て、これを直ちにフラッシュクロマトグラフィ(MeOH/DCMの勾配0.5:99.5~1:99)用のシリカカラムに充填した。
【数11】
【0323】
N-プロパルギル-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-ボロニルピナコラート(6)53
【0324】
火炎乾燥した丸底フラスコ中で、N,N-ジメチルプロパルギルアミン(0.67mL、6.27mmol、1当量)をジエチルエーテル(28mL)に添加し、反応物を45℃に加熱した。ヨードメチルピナコールボロナート(1.144mL、6.27mmol、1当量)を溶液に滴加した。添加直後に混合物は濁り、続いて白色固体が溶液から沈殿した。反応物をさらに15分間撹拌し、生成物を濾過し、冷ジエチルエーテルで洗浄した。残渣を高真空下で乾燥させて、薄片状の白色固体を得た。
【数12】
【0325】
N-プロパルギル-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-トリフルオロボラート(7)
【0326】
6(1g、4.46mmol、1当量)をアセトニトリル(12mL)に溶解し、KHF水溶液(3M、4.25mL、12.8mmol、2.8当量)及びHCl(4M、4.25mL、17mmol、3.8当量)を45℃で2時間添加することによってフッ素化した。透明なオレンジ色の溶液を、濃NHOH水溶液(約1.5mL)を添加してpH7にすることによってクエンチした。この混合物をより大きな丸底フラスコに移し、20%アセトニトリル/エタノール溶液(100mL)を添加する。シリカ(40mL)をこの溶液に直接入れ、混合物を20分間撹拌した。それまでは明るい黄色だった溶液は、色が大幅に失われ、無色透明の混合物に変化した。この混合物を短いシリカカラムに充填し、これを焼結ガラス漏斗にセットし、20%アセトニトリル/エタノールで溶出した。減圧下で蒸発させ、続いて高真空で乾燥させた後、淡黄色固体を単離した。これを洗浄し、冷ジエチルエーテル(20mL)で濾過して、NMR純粋な双性イオンを生成した。ヨウ化物(ESI-MSによって観察可能)及びKBF19F-NMRで見られる)に加えて、生成物中に過剰の塩が残っているため、生成物の収率は定量的よりも高かった。さらなる反応のために、7の合成の収率は定量的であると仮定した。
【数13】
【0327】
Fmoc-(L)-Lys-ε-1,2,3-トリアゾール-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-トリフルオロボラート[Fmoc-Lys(AMBF)](8)
【0328】
CuSO水溶液(1M、0.75mL、0.75mmol)及びアスコルビン酸ナトリウム(1M、1.5mL、1.5mmol)の混合物を、アセトニトリル/水3:2(2.5mL)に溶解した7(250mg、約0.75mmol、約3当量)に添加した。5(100mg、0.25mmol、1当量)を最小量のアセトニトリルに溶解し、混合物に滴加し、45℃で一晩撹拌した。いくつかのCu塩又はアスコルビン酸塩が反応全体にわたって沈殿することが一般的であった。反応をシリカTLCで監視し、出発物質は20~24時間の反応時間の間に消失した。スケールアップ時に再現性が常に達成されるとは限らず、多くの場合、反応を完了させるために、より多くの触媒、還元剤、又はアルキンを添加しなければならなかった。沈殿物を濾過し、反応混合物を減圧下で蒸発させた。暗赤色残渣を1:1のMeOH/DCMに溶解し、濾過し、再び蒸発させた。このプロセスを再度繰り返して、5:95のMeOH/DCMを使用してすべての過剰な塩及び不溶性不純物を除去した。最終的な粗油は5:95のMeOH/DCMに完全に溶解し、続いてシリカカラムに充填し、MeOH/DCMの勾配系(5%~10%)を用いたフラッシュクロマトグラフィによって溶出した。
【数14】
【0329】
DOTA-((L)-Lys-ε-1,2,3-トリアゾール-N,N-ジメチル-アンモニオメチル-トリフルオロボラート)-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン-Lys-Arg-Pro-Hyp-Gly-Cha-Ser-Pro-Leu-COOH(9)
【0330】
この直鎖修飾ペプチドは、Wang(ヒドロキシメチルフェニル)樹脂上で標準的なFmoc固相ペプチド合成化学を用いて調製した。非天然型のブラジキニン(Fmoc-Lys-Arg-Pro-Hyp-Gly-Cha-Ser-Pro-Leu-COOH)を樹脂に予め充填し、カチオン性スペーサ、Lys(AMBF)残基及びDOTAキレート剤を結合させるための足場として使用した。樹脂充填値は、0.44mmol/gで予め計算した。乾燥した樹脂(37.5mg、16.7μmol)を3mLスピンカラムに添加し、DMF(2.5mL)中で2時間膨潤させた後、最初のカップリング反応を行った。DMFを濾別し、20%ピペリジン/DMF(3×2.5mL、各5分間)を用いてFmocを除去した。樹脂をDMF(3×2.5mL)、DCM(3×2.5mL)、及びDMF(3×2.5mL)で洗浄した。Fmoc-4-アミノ-1-カルボキシメチル-ピペリジン(25mg、65μmol、4当量)、HBTU(25mg、65μmol、4当量)及びDIPEA(11.4μL、65μmol、4当量)をDMF(2.5mL)に溶解し、キャップ付きスピンカラムに添加した。反応物を室温で2時間振盪した。溶液をスピンカラムを通して濾過し、次のカップリング反応の前にDMF(3×2.5mL)、DCM(3×2.5mL)、及びDMF(3×2.5mL)で洗浄した。8(14mg、25μmol、1.5当量)、HBTU(10mg、25μmol、1.5当量)及びDIPEA(5.6μL、32.5μmol、2当量)をDMF(2.5mL)に溶解し、キャップ付きスピンカラムに添加した。この反応物を室温で一晩振盪した。再び、溶液をスピンカラムを通して濾過し、次のカップリング反応の前にDMF(3×2.5mL)、DCM(3×2.5mL)、及びDMF(3×2.5mL)で洗浄した。DOTA-トリ-t-ブチル-エステル(24mg、41.6μmol、2.5当量)、NHS(4.6mg、41.6μmol、2.5当量)及びDCC(8.5mg、41.6μmol、2.5当量)をDCM(2.5mL)に溶解し、キャップ付きスピンカラムに添加した。この反応物を室温で48時間振盪した。この最終的な付属物は保護Fmoc基を有していなかったので、ストック溶液TFA(9.5mL)、HO(0.25mL)、TIPS(0.25mL)及び30mM KHF(10μLの3M KHF)から作成したカクテル(2.5mL)を使用して、ペプチドを樹脂から切断した。混合物を室温で2時間振盪し、濾過し、減圧下で蒸発させた。残渣を0℃で1:11のMeOH/EtO(24mL)で粉砕して白色固体を得た。混合物を24本の1.5mLエッペンドルフチューブに均等に分け、遠心分離してジエチルエーテル上清を除去した。各チューブにジエチルエーテル(1mL)を再度添加し、遠心分離し、上清を除去した。残留固体を1:1のHO/アセトニトリル(合計2mL)で回収し、HPLC(上記の条件)によって精製した。
【0331】
例3及び4の参考文献


【0332】
例5:DOTA-Lys(AMBF3)-TATE及びDOTA-Bn-NH-Lys-(AMBF3)-NHFmoc。
【0333】
OctreoTATE
【化27】
【0334】
TATEを含む19.9mgの樹脂(4.6μmol、1当量)をDMFで30分間膨潤させた。遠心分離し、上清を除去することによってDMFを除去した。DMF中の6mMのタリウム(III)トリフルオロアセタート(713μL、4.28μmol、0.93当量)を添加し、反応物を室温で8時間撹拌した。樹脂を遠心分離し、上清を除去した。DMF(200μL)を使用して3回洗浄した。次いで、(500μL)のDCMを添加し、遠心分離した。上清を除去し、サンプルをspeed vacによって乾燥させた。樹脂の少量のサンプルをマイクロピペットチップですくい取り、別のエッペンドルフチューブに入れ、(3:7)HFIP:DCM(100μL)を使用して、室温で10分間、生成物を切断した。フィルターピペットチップを使用して混合物を濾過し、濾液を別のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかに空気を吹き付けて、混合物を乾燥させ、ジエチルエーテルを添加して生成物を粉砕した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。MeOH(200μL)を添加してMS用の生成物を溶解した。ESI-MS(+):C1011271115Si=1855.5m/zと計算され、実測値は[M-Trt+2H]=1615.8m/z、[M-TBS-tBu]=1684.9m/zとなった。
【化28】
【0335】
(1:4)ピペリジン:DMF(200μL)を樹脂に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。DMF(3×200μL)を添加して樹脂を洗浄した。混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、混合物をspeed vacによって乾燥させた。樹脂の少量のサンプルをマイクロピペットチップですくい取り、別のエッペンドルフチューブに入れ、(3:7)HFIP:DCM(100μL)を使用して、室温で10分間、生成物を切断した。フィルターピペットチップを使用して混合物を濾過し、濾液を別のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかに空気を吹き付けて、混合物を乾燥させ、ジエチルエーテルを添加して生成物を粉砕した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。MeOH(200μL)を添加してMS用の生成物を溶解した。ESI-MS(+):C861171113Siについて1633.2m/zと計算され、実測値は[M]=1663.0、[M+2CHCN+2H]=1390.7m/zとなった。
【化29】
【0336】
Fmoc-Lys(AMBF3)-NHS(15.1mg、23.0μmol、5当量)を秤量し、200μlの(1:19)DIPEA:DMFに溶解した。次いで、溶液を樹脂に添加し、混合し、室温で2時間撹拌した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。DMF(3×200μL)を添加して樹脂を洗浄した。混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、混合物をspeed vacによって乾燥させた。樹脂の少量のサンプルをマイクロピペットチップですくい取り、別のエッペンドルフチューブに入れ、(3:7)HFIP:DCM(100μL)を使用して、室温で10分間、生成物を切断した。フィルターピペットチップを使用して混合物を濾過し、濾液を別のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかに空気を吹き付けて、混合物を乾燥させ、ジエチルエーテルを添加して生成物を粉砕した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。MeOH(200μL)を添加してMS用の生成物を溶解した。ESI-MS(+):C113148BF1616Siについて2173.03m/zと計算され、実測値は[M+CHCN+Na]=2236.5m/zとなった。
【化30】
【0337】
(1:4)ピペリジン:DMF(200μL)を樹脂に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。(3×200μL)DMFを添加して樹脂を洗浄した。(200μL)のDCMを添加し、遠心分離した。DCMを除去し、樹脂をspeed vacによって乾燥させた。樹脂の少量のサンプルをマイクロピペットチップですくい取り、別のエッペンドルフチューブに入れ、(3:7)HFIP:DCM(100μL)を使用して、室温で10分間、生成物を切断した。フィルターピペットチップを使用して混合物を濾過し、濾液を別のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかに空気を吹き付けて、混合物を乾燥させ、ジエチルエーテルを添加して生成物を粉砕した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。MeOH(200μL)を添加してMS用の生成物を溶解した。ESI-MS(+):C98138BF1614Siについて1952.3m/zと計算され、実測値は[M+Na]=1975.4m/zとなった。
【化31】
【0338】
DOTA-NHS・HPF・TFA(8.75mg、11.5μmol、2.5当量)を(1:19)DIPEA:DMF(200μL)に溶解し、混合物をHN-Lys(AMBF)-TATEと共に樹脂に添加し、室温で2時間撹拌した。樹脂をDMF(3×200μL)で洗浄した。混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去した。樹脂をspeed vacによって乾燥させた。樹脂の少量のサンプルをマイクロピペットチップですくい取り、別のエッペンドルフチューブに入れ、(3:7)HFIP:DCM(100μL)を使用して、室温で10分間、生成物を切断した。フィルターピペットチップを使用して混合物を濾過し、濾液を別のエッペンドルフチューブに回収した。穏やかに空気を吹き付けて、混合物を乾燥させ、ジエチルエーテルを添加して生成物を粉砕した。混合物を遠心分離し、上清を除去した。MeOH(200μL)を添加してMS用の生成物を溶解した。ESI-MS(+):C114164BF2021Siについて2337.1m/zと計算され、実測値は[M+K]=2375.4m/zとなった。
【化32】
【0339】
(95:2.5:2.5)TFA:TIPS:HO(200μL)を樹脂に添加して、ユニバーサル脱保護を行うと共に、DOTA-Lys(AMBF)-TATEを樹脂から切断した。樹脂を室温で30分間撹拌した。ピペットチップフィルターを用いて濾液を回収し、樹脂を除去した。穏やかに空気を吹き付けて、体積が約50~100μLになるまで濾液を濃縮した。ジエチルエーテル(1mL)を添加して生成物を粉砕して、混合物をボルテックスし、遠心分離した。上清を除去し、混合物をspeed vacによって乾燥させた。収量は3.2mgであった。ESI-MS(+):C79114BF2021について1811.8m/zと計算され、実測値は[M+2Na]=1855.1m/zとなった。
【0340】
DOTA-Bn-NH-Lys-(AMBF3)-NHFmocの合成:
【化33】
【0341】
エッペンドルフチューブ中のDOTA-Bn-NH(10mg、0.015mmol、1当量)を(2:18)DIPEA:DMF(200μL)に溶解し、Fmoc-Lys(AMBF3)-NHS(14mg、0.025mmol、1.5当量)の別のエッペンドルフチューブに移した。混合物を、ロティサリー撹拌機を使用して室温で2時間撹拌した。次いで、1mLの冷ジエチルエーテルを添加して生成物を沈殿させた。次いで、これをボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。最小量のDMF(約50μL)を生成物に添加して生成物を再溶解し、ジエチルエーテル(1mL)を添加して粗生成物を再洗浄した。混合物をボルテックスし、遠心分離して上清を除去した。次いで、生成物を乾燥させ、次いで、MeCN(約500μL)を添加して、過剰のFmoc-Lys(AMBF3)-NHSを再溶解及び除去した。混合物を遠心分離し、過剰な試薬を含む上清を除去した。生成物を再度speed vacで乾燥させた。生成物の少量のサンプルをMS用のMeOHに溶解した。ESI-MS(+):C5066BF1011について1050.94m/zと計算され、実測値は[M+H]=1051.7m/zとなり、[TLC(1:19のNHOH:EtOH、生成物のRf=0.2、254nmで可視)であった。
【0342】
上記のDOTA-Lys(AMBF)を蛍光分子にさらにコンジュゲートさせることができることが、当業者にはさらに理解される。そのような例は、マルチモーダルイメージング用途の当業者によって考慮され得る多くの例の1つとして、以下に提供される。そのような例は、実用的であることが見出されるDOTA、Cy7又はLysAMBFに限定されないであろう。
【化34】
【0343】
本発明は、1つ又は複数の実施形態に関して説明されている。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形及び修正を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本発明の範囲は、例に記載された好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体としての説明と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0344】
優先権出願.本出願は、2018年12月18日に出願された米国特許出願第62/781,584号の優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
本発明の一態様を以下に示すが、本発明はそれに限定されない。
[発明1]
化合物又は分子複合体であって、前記化合物又は分子複合体が、放射性金属同位体又は非放射性金属同位体とのキレート化のために構成された金属キレート剤と、 19 F/ 18 F交換用に構成されたトリフルオロボラート(BF )含有部分又は 18 F標識トリフルオロボラートへの変換が可能なボロナート前駆体と、を含む、化合物又は分子複合体。
[発明2]
化合物又は分子複合体であって、前記化合物又は分子複合体が、細胞標的化ドメインと、放射性金属同位体又は非放射性金属同位体とのキレート化のために構成された金属キレート剤と、 19 F/ 18 F交換用に構成されたトリフルオロボラート(BF )含有部分又は 18 F標識トリフルオロボラートへの変換が可能なボロナート前駆体と、を含む、化合物又は分子複合体。
[発明3]
前記細胞標的化ドメインが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ペプチド模倣物、核酸アプタマー、大環状分子、ステロイド、又は小分子を含み、前記細胞標的化ドメインが、細胞マーカーに特異的に結合する、発明2に記載の化合物又は分子複合体。
[発明4]
前記細胞標的化ドメインが、LLP2A、PSMA-617、TATE、又はペプチドD-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH を含む、発明3に記載の化合物又は分子複合体。
[発明5]
前記細胞標的化ドメインが、(i)標的細胞の抗原に特異的に結合する抗体又は抗体誘導体又は断片、あるいは(ii)前記抗原に特異的に結合する抗体又は抗体誘導体又は断片に特異的に結合するタンパク質ドメインを含む、発明2から4のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明6]
前記金属キレート剤が、前記BF 含有部分を含有するリンカーによって前記細胞標的化ドメインに連結されている、発明2から5のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明7]
前記リンカーが複数のBF 含有部分を含む、発明6に記載の化合物又は分子複合体。
[発明8]
前記リンカーがペプチドリンカーである、発明6又は7に記載の化合物又は分子複合体。
[発明9]
前記リンカーがLys(AMBF )を含む、発明8に記載の化合物又は分子複合体。
[発明10]
前記金属キレート剤が、キレート化されていないか又は非放射性金属同位体でキレート化されており、前記BF 含有部分が 18 F標識されている、発明1~9のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明11]
前記金属キレート剤が放射性金属同位体でキレート化されており、前記BF 含有部分が 19 F標識されている、発明1~9のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明12]
前記金属キレート剤が放射性金属同位体でキレート化されており、前記BF 含有部分が 18 F標識されている、発明1~9のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明13]
前記放射性金属同位体が、アルファ放射体、ベータ放射体又はオージェ放射体である、発明11又は12に記載の化合物又は分子複合体。
[発明14]
前記金属キレート剤が、DOTA及び誘導体;DOTAGA;NOTA;NODAGA;NODASA;CB-DO2A;3p-C-DEPA;TCMC;DO3A;DTPA並びにCHX-A’’-DTPA及び1B4M-DTPAから選択されてもよいDTPA類似体;TETA;NOPO;Me-3,2-HOPO;CB-TE1A1P;CB-TE2P;MM-TE2A;DM-TE2A;サルコファジン並びにSarAr、SarAr-NCS、diamSar、AmBaSar、及びBaBaSarから選択されてもよいサルコファジン誘導体;TRAP;AAZTA;DATA及びDATA誘導体;H2-macropa又はその誘導体;H2dedpa、H4octapa、H4py4pa、H4Pypa、H2azapa、H5decapa、及び他のピコリン酸誘導体;CP256;PCTA;DOTP;HEHA;C-NETA;C-NE3TA;HBED;SHBED;BCPA;CP256;YM103;サイクラム;DiamSar;デスフェリオキサミン(DFO)及びDFO誘導体;H6phospa;トリチオールキレート;メルカプトアセチル;ヒドラジノニコチンアミド;ジメルカプトコハク酸;1,2-エチレンジイルビス-L-システインジエチルエステル;メチレンジホスホナート;ヘキサメチルプロピレンアミンオキシム;及びヘキサキス(メトキシイソブチルイソニトリル);ポルフィリン、クロリン、テキサフリン、及びフタロシアニンからなる群から選択されるキレート剤である、発明1~13のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明15]
前記金属キレート剤がDOTA及びDOTA誘導体から選択される、発明1~13のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明16]
前記BF 含有部分が
[化1]

であるか、あるいは表3又は4に示される基であり、式中、各Rは独立してC ~C 直鎖又は分岐アルキル基である、発明1~15のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明17]
DOTA-AMBF3-PEG2-LLP2A;
PSMA-617-LysAMBF3-DOTA;
DOTA-Lys(AMBF3)-TATE;及び
DOTA-Lys-AMBF3-Pip-D-Phe-Gln-Trp-Ala-Val-Gly-His-Sta-Leu-NH
からなる群から選択される、発明2に記載の化合物又は分子複合体。
[発明18]
前記化合物又は分子複合体がフルオロフォア又は他の発光部分をさらに含む、発明1~17のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体。
[発明19]
Lys(AMBF )を含む化合物である、発明1又は18に記載の化合物又は分子複合体。
[発明20]
前記金属キレート剤がDOTAである、発明1、18又は19に記載の化合物又は分子複合体。
[発明21]
前記化合物がDOTA-Bn-NH-Lys-(AMBF )を含む、発明20に記載の化合物又は分子複合体。
[発明22]
発明2から18のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体であって、
前記化合物又は分子複合体が、前記BF 含有部分と前記細胞標的化ドメインの両方を含み、
18 Fで標識された化合物又は分子複合体を使用して、疾患又は状態の細胞マーカーの存在を確認するために対象をイメージングすることと、
治療用放射性同位体でキレート化された前記化合物又は分子複合体を使用して、前記疾患又は状態を治療することと、
に使用するための、化合物又は分子複合体。
[発明23]
対象の疾患又は状態を画像化及び/又は治療するために二重特異性抗体と組み合わせて使用するための、発明1あるいは発明6から22のいずれか一に記載の化合物又は分子複合体であって、前記化合物又は分子複合体が、前記BF 含有部分を含む化合物であり、前記細胞標的化ドメインを含まず、前記二重特異性抗体が、(i)前記疾患又は状態の細胞マーカーと(ii)前記金属キレート剤に特異的である、化合物又は分子複合体。
[発明24]
前記化合物又は分子複合体が、前記二重特異性抗体との複合体として前記対象に投与するためのものである、発明23に記載の化合物又は分子複合体。
[発明25]
前記二重特異性抗体が、前記二重特異性抗体が前記細胞マーカーに結合するプレ標的化ステップにおいて、前記化合物又は分子複合体を前記対象に投与する前に前記対象に投与するためのものである、発明23に記載の化合物又は分子複合体。
図1
図2
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