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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】無線システム及び無線機
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/25 20230101AFI20250402BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20250402BHJP
   H04W 24/02 20090101ALI20250402BHJP
   H04W 72/541 20230101ALI20250402BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20250402BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20250402BHJP
【FI】
H04W72/25
H04W4/38
H04W24/02
H04W72/541
H04W84/18
H04W92/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021096901
(22)【出願日】2021-06-09
(65)【公開番号】P2022188676
(43)【公開日】2022-12-21
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大江 英城
(72)【発明者】
【氏名】小畑 滋男
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智雄
【審査官】吉倉 大智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108333(JP,A)
【文献】特開2018-78414(JP,A)
【文献】特開2010-49622(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101621836(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
IEEE 802.11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線機を有して構成されるネットワーク内において情報の送受信が可能とされると共に前記複数の無線機のうち特定の無線機がセンタ側と情報の送受信が可能とされ、前記複数の無線機のうち前記特定の無線機を除く非特定無線機については他の非特定無線機を経由して又は経由することなく前記特定の無線機との情報の送受信を行い、前記特定の無線機を通じてセンタ側と情報の送受信を行う無線システムであって、
前記無線機は、
周囲に第1情報を送信する第1通信部と、
他の無線機から前記第1情報を受信した場合に前記第1情報の送信元に送信すべき要送信情報が存在するときに前記第1情報の送信元を指定して第2情報を送信し、以後、前記第1情報の送信元と情報の送受信を行う第2通信部と、
現在使用中のチャネルの電波強度に基づき、自己が電波干渉状態であるかを判断する干渉判断部と、
前記干渉判断部により自己が電波干渉状態であると判断した場合に、他の無線機から前記第1情報を受信したときに、前記第1情報の送信元のみの指定状態でなく周囲に向けて、前記第2情報にチャネル切替情報を追加して、又は前記第2情報に代えてチャネル切替情報を送信する第3通信部と、
前記第3通信部によってチャネル切替情報を送信した後に自己のチャネルを切り替えるチャネル切替部と、
を備えることを特徴とする無線システム。
【請求項2】
前記無線機は、他の無線機からチャネル切替情報を受信した場合に、チャネル切替情報を周囲に送信する第4通信部をさらに備え、
前記チャネル切替部は、前記第4通信部によってチャネル切替情報を送信した後に自己のチャネルを切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の無線システム。
【請求項3】
前記第3通信部は、前記チャネル切替部により自己のチャネルを切り替えた後に、チャネル切替前後の2チャネルで、再度チャネル切替情報を送信するリカバリー処理を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の無線システム。
【請求項4】
前記第4通信部は、他の無線機からチャネル切替情報を受信した場合に、チャネル切替前後の2チャネルで、チャネル切替情報を周囲に送信する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の無線システム。
【請求項5】
前記無線機は、
他の無線機から前記第2情報を受信した場合、当該他の無線機に対して前記要送信情報の返信を求める要求情報を送信したにもかかわらず、当該他の無線機から前記要送信情報の返信がないときに、当該他の無線機が電波干渉状態であると判断する第2干渉判断部と、
前記第2干渉判断部により当該他の無線機が電波干渉状態であると判断した場合に、自己以外の無線機から前記第1情報を受信したときに、当該自己以外の無線機のみの指定状態ではなく周囲に向けて、前記第2情報にチャネル切替情報を追加して送信する第5通信部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の無線システム。
【請求項6】
周囲に第1情報を送信する第1通信部と、
他の無線機から前記第1情報を受信した場合に前記第1情報の送信元に送信すべき要送信情報が存在するときに前記第1情報の送信元を指定して第2情報を送信し、以後、前記第1情報の送信元と情報の送受信を行う第2通信部と、
現在使用中のチャネルの電波強度に基づき、自己が電波干渉状態であるかを判断する干渉判断部と、
前記干渉判断部により自己が電波干渉状態であると判断した場合に、他の無線機から前記第1情報を受信したときに、前記第1情報の送信元のみの指定状態でなく周囲に向けて、前記第2情報にチャネル切替情報を追加して、又は前記第2情報に代えてチャネル切替情報を送信する第3通信部と、
前記第3通信部によってチャネル切替情報を送信した後に自己のチャネルを切り替えるチャネル切替部と、
を備えることを特徴とする無線機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線システム及び無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅設備機器に設けられた無線機子機と、住宅設備機器の各種データを収集するセンタ側装置と、住宅設備機器の各種データを収集するために無線回線を介して無線機子機と通信すると共にセンタ側装置と回線を通じて通信する無線機親機とを備えた無線システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。この無線システムは、定期的に電波状況を確認するキャリアビジーカウント部を無線機親機が有している。このため、通信に用いる周波数においてビジー状態が検出されると、無線機親機はその旨の情報をセンタ側装置に通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-180105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本件発明者らは、特許文献1に記載の無線システムのようにビジー状態(電波干渉状態)を検出した場合に、無線通信に用いる周波数を変更(通信チャネルを変更)することを検討している。
【0005】
しかし、通信チャネルを変更する場合には、ネットワーク内の複数の無線機の全てについて素早く変更する必要がある。すなわち、通信チャネルの変更に多くの時間が掛かってしまうと、変更が完了するまでの間においては、通信チャネルを変更した無線機と変更していない無線機とが混在してしまい、ネットワーク内の通信に支障を来たすおそれがある。
【0006】
そこで、通信チャネルを変更するために、通信可能な別機器を搭載することが考えられる。例えば、通常時における無線機間の通信については特定周波数帯で行い、これとは別に特定周波数帯と離れた周波数帯で通信を行う別機器を複数の無線機全てに搭載しておけば、電波干渉状態であるときに別機器を用いて通信チャネルの変更情報をネットワーク全域に行き渡らせることで、ネットワーク全体で通信チャネルを変更することができる。
【0007】
しかし、この場合には、別機器を搭載する必要があり、構成の複雑化を招くこととなってしまう。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、構成の複雑化を抑え、より素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる無線システム及び無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無線システムは、複数の無線機を有して構成されるネットワーク内において情報の送受信が可能とされると共に前記複数の無線機のうち特定の無線機がセンタ側と情報の送受信が可能とされ、前記複数の無線機のうち前記特定の無線機を除く非特定無線機については他の非特定無線機を経由して又は経由することなく前記特定の無線機との情報の送受信を行い、前記特定の無線機を通じてセンタ側と情報の送受信を行う無線システムであって、前記無線機は、周囲に第1情報を送信する第1通信部と、他の無線機から前記第1情報を受信した場合に前記第1情報の送信元に送信すべき要送信情報が存在するときに前記第1情報の送信元を指定して第2情報を送信し、以後、前記第1情報の送信元と情報の送受信を行う第2通信部と、現在使用中のチャネルの電波強度に基づき、自己が電波干渉状態であるかを判断する干渉判断部と、前記干渉判断部により自己が電波干渉状態であると判断した場合に、他の無線機から前記第1情報を受信したときに、前記第1情報の送信元のみの指定状態でなく周囲に向けて、前記第2情報にチャネル切替情報を追加して、又は前記第2情報に代えてチャネル切替情報を送信する第3通信部第3通信部と、前記第3通信部によってチャネル切替情報を送信した後に自己のチャネルを切り替えるチャネル切替部と、を備える。
【0010】
本発明に係る無線機は、周囲に第1情報を送信する第1通信部と、他の無線機から前記第1情報を受信した場合に前記第1情報の送信元に送信すべき要送信情報が存在するときに前記第1情報の送信元を指定して第2情報を送信し、以後、前記第1情報の送信元と情報の送受信を行う第2通信部と、現在使用中のチャネルの電波強度に基づき、自己が電波干渉状態であるかを判断する干渉判断部と、前記干渉判断部により自己が電波干渉状態であると判断した場合に、他の無線機から前記第1情報を受信したときに、前記第1情報の送信元のみの指定状態でなく周囲に向けて、前記第2情報にチャネル切替情報を追加して、又は前記第2情報に代えてチャネル切替情報を送信する第3通信部と、前記第3通信部によってチャネル切替情報を送信した後に自己のチャネルを切り替えるチャネル切替部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1情報と第2情報との送受信を通じて要送信情報の送受信を行い、電波干渉状態であると判断した場合には、他の無線機から第1情報を受信したときに、第2情報に追加して又は代えてチャネル切替情報を送信するため、通常の情報の送受信時と同様にしてチャネル切替情報を送信することとなり、別機器を備える場合等のような構成の複雑化を抑えることができる。
【0012】
また、第1情報と第2情報との送受信を行う場合、通常時は第1情報の送信元を指定して第2情報を送信するが、電波干渉状態であるときには第1情報の送信元を指定することなく第2情報に加えて又は代えてチャネル切替情報を送信する。このため、第1情報の送信元の無線機に限らず、周囲に存在する他の無線機についてもチャネル切替情報が受信されることとなる。このため、周囲の無線機のチャネル切替を一括して行うことができ、より素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる。
【0013】
従って、構成の複雑化を抑え、より素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる無線システム及び無線機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る無線システムを示す構成図である。
図2図1に示した複数の無線機それぞれの構成を示す機能ブロック図である。
図3】第1通信部による情報の送受の様子を示す概念図である。
図4】第1通信部及び第2通信部による情報の送受の様子を示す概念図である。
図5】電波干渉状態における情報の送受の様子を示す概念図である。
図6】電波干渉状態である無線機からチャネル切替情報を受信した無線機による情報の送受の様子を示す概念図である。
図7】第2判断部により電波干渉状態を判断する際の情報の送受の様子を示す概念図である。
図8】第2実施形態に係る無線システムを構成する無線機によるチャネル切替の様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る無線システムを示す構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る無線システム1は、複数の接続機器Mと、複数の無線機WDと、センタ側装置CAとを備えて構成されている。
【0017】
複数の接続機器Mは、ガスメータやガス警報器等であって、例えば有線によって各無線機WDに接続されている。これらの接続機器Mは、複数の無線機WDを通じて情報がセンタ側装置CAに送信されたり、複数の無線機WDを通じてセンタ側装置CAからの情報を受信したりする。接続機器Mからセンタ側装置CAに送信される情報は、例えばガスメータの検針情報や故障情報、及びガス警報器の警報情報や故障情報等が該当する。センタ側装置CAからの受信情報は、例えばガスメータの遮断弁を開閉する情報やガス警報器から出力する音声情報等が該当する。
【0018】
複数の無線機WDは、複数の無線機WDを有して構成されるネットワーク内において、他の無線機WDと無線による情報の送受信が可能とされたものである。複数の無線機WDは、特定の無線機WD1を有している。特定の無線機WD1は、LTE(Long Term Evolution)等の通信規格に従い回線を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。
【0019】
また、複数の無線機WDのうち、特定の無線機WD1を除く非特定無線機WD2については、特定の無線機WD1を介してセンタ側装置CAと情報の送受信が可能とされている。より詳細に説明すると、例えば第1無線機WD21については、他の非特定無線機WD2を有することなく特定の無線機WD1のみを通じてセンタ側装置CAと情報の送受信を行う。また、第2無線機WD22については、第1無線機WD21を経由して特定の無線機WD1と情報の送受信を行い、特定の無線機WD1を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信を行う。さらに、第3無線機WD23については、第1無線機WD21及び第2無線機WD22を経由して特定の無線機WD1と情報の送受信を行い、特定の無線機WD1を通じてセンタ側装置CAと情報の送受信を行う。
【0020】
図2は、図1に示した複数の無線機WDそれぞれの構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、各無線機WDは、入力部10と、出力部20と、通信部30と、第1判断部(干渉判断部)40と、第2判断部(第2干渉判断部)50と、チャネル切替部60とを備えている。
【0021】
入力部10は、センタ側装置CA(図1参照)に送信すべき情報を、接続される接続機器M(図1参照)から入力するものである。無線機WDは、入力部10により情報を入力すると、要送信情報ありと判断する。さらに、無線機WDは、他の無線機WDから要送信情報が送られてきた場合にも、要送信情報ありと判断する。
【0022】
出力部20は、センタ側装置CAから送信された情報を、接続される接続機器Mに出力するものである。接続機器Mは、無線機WDの出力部20からの情報を受信し、受信した情報に応じた制御を実行することとなる。
【0023】
通信部30は、他の無線機WDと無線通信を行う機能部である。この通信部30は、第1通信部31と、第2通信部32と、第3通信部33と、第4通信部34と、第5通信部35とを備えている。
【0024】
第1通信部31は、周囲に「RIT Data Request」(第1情報)を送信するものである。この「RIT Data Request」は、無線機WDが自己の存在を他の無線機WDに知らせるためのビーコン情報である。無線機WDの第1通信部31が「RIT Data Request」を送信すると、当該無線機WDは、短時間の受信状態(短受信状態)となる。また、無線機WDは、他の無線機WDから「RIT Data Request」を無線にて受信すると、他の無線機WDと通信可能であることを認識することができる。
【0025】
図3は、第1通信部31による情報の送受の様子を示す概念図である。図3では複数の無線機WDのうちの1つである無線機Aと他の1つである無線機Bとを例に説明する。無線機Aの第1通信部31(図2参照)は、特定の周期で「RIT Data Request」を送信する。また、図3に示すように、無線機Aの第1通信部31は、「RIT Data Request」を送信後、短受信状態となる。この短受信状態は、「RIT Data Request」に対する返信(後述の「RIT Data Response」)を待つ状態である。このように無線機Aは、第1通信部31により周期的に「RIT Data Request」を送信し、送信都度、短受信状態となる。
【0026】
無線機Bについても同じである。すなわち、無線機Bは、第1通信部31により周期的に「RIT Data Request」を送信し、送信都度、短受信状態となる。
【0027】
再度図2を参照する。第2通信部32は、他の無線機WDから「RIT Data Request」を受信した場合において、自己が要送信情報を保有しているときに返信を行うものである。この際、第2通信部32は、「RIT Data Request」の送信元を指定し、「RIT Data Response」(第2情報)をSREQ(送信要求)として返信する。特に、第2通信部32は、自己が要送信情報を保有しているときに、他の無線機WDから「RIT Data Request」を受信すると、他の無線機WDが短受信状態であるうちに「RIT Data Response」が届くように素早く返信を行う。
【0028】
図4は、第1通信部31及び第2通信部32による情報の送受の様子を示す概念図である。図4においても無線機Aと無線機Bとを例に説明する。図3を参照して説明したように、無線機A,Bは、周期的に「RIT Data Request」を送信し、送信都度、短受信状態となる。ここで、無線機Bが無線機Aに送信すべき要送信情報を保有しているとする。この場合、無線機Bの第1通信部31(図2参照)は「RIT Data Request」の周期的な送信を中止し、無線機Aからの「RIT Data Request」を待つ受信状態となる。
【0029】
次いで、無線機Bは、無線機Aからの「RIT Data Request」を受信すると、無線機Aに対して、素早く(無線機Aが短受信状態である間に)「RIT Data Response」を送信する。そして、無線機Aは、無線機Bからの「RIT Data Response」を受信する。
【0030】
このように、無線機Aが短受信状態であるときに無線機Bから「RIT Data Response」が送信され、無線機Aにて受信されることで、両者の1対1通信(すなわちユニキャスト状態)が確立する。
【0031】
再度図2を参照する。図2に示すように、第2通信部32は第1~第3機能部32a~32cを備えている。第2通信部32は、上記の如く、1対1通信が確立すると、以後第1~第3機能部32a~32cにより、両無線機WD間で情報の送受信を行う。
【0032】
第1機能部32aは、他の無線機WDからの「RIT Data Response」を受信した場合に、「RIT Data Response」の送信元である他の無線機WDに対して、要送信情報を要求する「RACK」(要求情報)を送信するものである。
【0033】
第2機能部32bは、他の無線機WDからの「RACK」を受信した場合に、「RACK」の送信元である他の無線機WDに対して、要送信情報である「DATA」を送信するものである。
【0034】
第3機能部32cは、他の無線機WDからの「DATA(要送信情報)」を受信した場合に、要送信情報の送信元である他の無線機WDに対して、「DACK」(確認情報)を送信するものである。
【0035】
再度図4を参照する。上記したように、無線機Aが短受信状態であるときに無線機Bから「RIT Data Response」が送信され、無線機Aにて受信されることで、両者の1対1通信が確立する。その後、無線機Aの第1機能部32aは、無線機Bを指定して「RACK」を送信する。無線機Bの第2機能部32bは、「RACK」を受信すると、無線機Aを指定して「DATA」を送信する。次に、無線機Aの第3機能部32cは、「DATA」を受信すると、無線機Bを指定して「DACK」を送信する。
【0036】
以上、図4に示すように、無線機Bの要送信情報が無線機Aに送信される。その後、無線機Aは、他の非特定無線機WD2を経由等して、特定の無線機WD1まで要送信情報を送信する。特定の無線機WD1は、要送信情報を受信すると、基地局等を介してセンタ側装置CAに要送信情報を送信することとなる。
【0037】
再度図2を参照する。第1判断部40は、現在使用中のチャネルの電波強度に基づき、自己が干渉状態であるかを判断するものである(いわゆるキャリアセンスを実行するものである)。ここで、上記のような無線機WDは、周囲環境によって情報の送受信が困難な電波干渉状態となることがある。このため、第1判断部40は、周囲の電波強度が所定値以上であるか否かに基づいて電波干渉状態であるかを判断する。
【0038】
ここで、第1判断部40による判断は情報送信時に行われることが好ましい。具体的に無線機WDは、第1通信部31による「RIT Data Request」の送信に際して、現在使用中のチャネルの電波強度に基づき電波干渉状態であるかを判断する。また、第1判断部40は、第1機能部32a~第3機能部32cによる情報送信時にも電波干渉状態であるかを判断する。
【0039】
第1判断部40により電波干渉状態であると判断された場合、第1通信部31、及び第1機能部32a~第3機能部32cによる情報送信が禁止されることとなる。
【0040】
ここで、このような電波干渉状態においては、現在使用中のチャネルを切り替える必要があり、しかもネットワーク内の全体で素早くチャネルを切り替えることが好ましい。しかし、切替にあたり専用機器を備えることは構成の複雑化を招くこととなる。そこで、本実施形態に係る無線システム1では、図4に示した情報送受信の方式を利用してチャネル切替を実行すべく、第3通信部33及び第4通信部34を備えている。
【0041】
図2に示す第3通信部33は、自己の無線機WDが第1判断部40により電波干渉状態であると判断された場合に、例えば偶然に電波干渉が弱まって他の無線機WDから「RIT Data Request」を受信できたときにチャネル切替情報を送信するものである。この際、第3通信部33は、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して、相手を当該送信元に指定することなく、周囲に送信する。
【0042】
より詳しく説明すると、電波干渉がない場合、第2通信部32は、相手を「RIT Data Request」の送信元に指定して、「RIT Data Response」を送信する。これに対して、電波干渉がある場合、第3通信部33は、相手を当該送信元に指定することなく、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して周囲に送信する。
【0043】
これにより、自己の無線機WDと通信可能な距離に位置する他の無線機WDに対して、(すなわち「RIT Data Request」の送信元以外にも)チャネル切替情報を送信することができる。
【0044】
図5は、電波干渉状態における情報の送受の様子を示す概念図である。図5においても無線機Aと無線機Bとを例に説明する。まず、無線機Aの第1通信部31(図2参照)が「RIT Data Request」を周期的に送信しており、無線機Bの第1判断部40(図2参照)が自己の電波干渉状態であると判断したとする。
【0045】
電波干渉状態である場合、基本的に無線機Bは無線機Aからの「RIT Data Request」を受信できないが、電波干渉が一時的に弱まることがあり、このタイミングで無線機Aからの「RIT Data Request」を受信することができる。
【0046】
第1判断部40が電波干渉状態であると判断した状態において、無線機Aからの「RIT Data Request」を受信すると、無線機Bの第3通信部33(図2参照)は、無線機Aの短受信状態に間に合うように、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して送信する。特に、第3通信部33は、いわゆるユニキャストを行うわけではなく、ブロードキャスト又はマルチキャストにより周囲にチャネル切替情報を送信することとなる。この結果、チャネル切替情報については、周辺の多くの無線機WDに受信されることとなる。
【0047】
なお、この場合において、第1機能部32a~第3機能部32c(図2参照)による情報の送受信は行われないこととなるが、仮に無線機Bが要送信情報を保有している場合には、第1機能部32a~第3機能部32cによる通信が行われてもよい。
【0048】
再度、図2を参照する。チャネル切替部60は、第3通信部33によってチャネル切替情報を送信した後に、自己の無線機WDのチャネルを切り替えるものである。本実施形態においては、例えば2つの通信チャネルで通信可能となっており、チャネル切替部60は、現在使用中のチャネルから、もう一方のチャネルに切り替えることとなる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る無線機WDは、第4通信部34によってネットワーク内のチャネルを素早く切り替えるようにしている。第4通信部34は、他の無線機WDからチャネル切替情報を受信した場合に、チャネル切替情報を周囲に送信するものである。本実施形態において第4通信部34については「DATA」の送信に合わせてチャネル切替情報を送信することを想定している。
【0050】
図6は、電波干渉状態である無線機WDからチャネル切替情報を受信した無線機WDによる情報の送受の様子を示す概念図である。図6においてはチャネル切替情報を受信した無線機Aと、他の無線機Cとを例に説明する。
【0051】
まず、無線機Aが図5を参照して説明したように、無線機Bからチャネル切替情報を受信したとする。そして、無線機Aが要送信情報を保有しているとする。この場合、無線機Aは、無線機Cからの「RIT Data Request」に対して「RIT Data Response」を返信する。次いで、無線機Aは、無線機Cより「RACK」を受信すると、要送信情報(DATA)を返信する。このとき、無線機Aの第4通信部34(図2参照)は、要送信情報にチャネル切替情報を追加して送信を行う。加えて、第4通信部34は、この要送信情報をブロードキャスト又はマルチキャストによって周囲に送信する。これにより、チャネル切替情報は、無線機C以外の周囲の無線機WDにも受信されることとなる。なお、無線機C以外の周囲の無線機WDについては要送信情報が不要であるので破棄してもよいが、チャネル切替に伴う通信の不安定さを考慮し、破棄することなく他の無線機WDへ送信するようにしてもよい。また、無線機Cについては、要送信情報及びチャネル切替情報を受信すると、図6に示した無線機Aと同様に、上位側の無線機WD(センタ側の無線機WD)等に対して処理を実行する。
【0052】
次に、無線機Aは、要送信情報にチャネル切替情報を追加して送信した後に、無線機Cからの「DACK」を受信する。無線機Aのチャネル切替部60は、「DACK」の受信を確認すると、チャネルの切り替えを行う。
【0053】
なお、図6に示す例では、「DATA」と共にチャネル切替情報を送信しているが、特にこれに限らない。例えば、他の無線機WD(無線機Cに限らない)からの「RIT Data Request」を受信した場合に、「RIT Data Response」と共にチャネル切替情報をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信するようにしてもよい。これにより、無線機WDが要送信情報を保有していなくともチャネル切替情報を周囲に拡散できるからできる。
【0054】
加えて、図6に示す例ではチャネル切替情報と要送信情報とを無線機Aが有する場合に、図6に示す情報の送受信を行っているが、これに限らず、無線機Aがチャネル切替情報を有し要送信情報を有しないときに図6に示す情報の送受信を行ってもよい。この場合、無線機Aは「DATA」を送信することなくチャネル切替情報のみをブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信することとなる。
【0055】
再度図2を参照する。さらに、本実施形態に係る無線システム1は、第1判断部40によって無線機WDが自己の電波干渉状態を判断するのみならず、第2判断部50を備え、第2判断部50によって他の無線機WDが電波干渉状態であることを判断可能となっている。
【0056】
より詳細に第2判断部50は、他の無線機WDから「RIT Data Response」を受信して「RACK」を送信したにもかかわらず、「DATA」を受信できないときに(返信がないときに)、他の無線機WDが電波干渉状態であると判断する。
【0057】
また、本実施形態に係る無線機WDは、第5通信部35を備えており、第2判断部50により他の無線機WDの電波干渉状態を判断した場合、第5通信部35によりチャネル切替情報を周囲に送信する。このとき、第5通信部35は、自己以外の無線機WDから「RIT Data Request」を受信すると、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信を行って周囲にチャネル切替情報を送信することとなる。
【0058】
図7は、第2判断部50により電波干渉状態を判断する際の情報の送受の様子を示す概念図である。図7においても無線機Aと無線機Bとを例に説明する。
【0059】
まず、無線機Aは、周期的に「RIT Data Request」を送信し、送信都度、短受信状態となる。ここで、無線機Bが無線機Aに送信すべき要送信情報を保有しているとする。この場合、無線機Bは、無線機Aからの「RIT Data Request」を受信すると、無線機Aが短受信状態である間に「RIT Data Response」を送信する。その後、無線機Aは、無線機Bに対して「RACK」を送信する。
【0060】
次に、無線機Bは、「RACK」を受信して「DATA」を無線機Aに送信することになるが、無線機Aにおいて「DATA」が受信されなかったとする。このとき、無線機Aの第2判断部50は、無線機Bが電波干渉状態であると判断する。
【0061】
その後、自己以外の無線機WD(無線機Bでも可)から「RIT Data Request」を受信したとする。これにより、無線機Aの第5通信部35は、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信を行って周囲にチャネル切替情報を送信する。これにより、無線機Aは、無線機Bの電波干渉状態を判断して、周囲にチャネル切替情報を送信することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る無線システム1の動作を説明する。まず、図1に示す各無線機WDは、図3に示すように、周期的に「RIT Data Request」を送信している。ここで、例えば、第3無線機WD23に接続されるガス警報器(接続機器M)がガス漏れを検知して警報を発したとする。この場合、第3無線機WD23の入力部10は、警報情報を要送信情報として入力する。そして、第3無線機WD23は、図4に示すように、センタ側装置CAに要送信情報を送信すべく、上位機器である第2無線機WD22からの「RIT Data Request」を待つ受信状態となる。
【0063】
次いで、第3無線機WD23が第2無線機WD22からの「RIT Data Request」を受信したとすると、第3無線機WD23の第1通信部31は、第2無線機WD22の短受信状態に間に合うように、「RIT Data Response」を返信する。その後、第2無線機WD22の第1機能部32aは「RACK」を第3無線機WD23を指定して送信し、第3無線機WD23の第2機能部32bは「DATA」を第2無線機WD22を指定して送信する。次に、第2無線機WD22の第3機能部32cは「DACK」を第3無線機WD23を指定して送信する。これにより、第3無線機WD23の警報情報(「DATA」であって要送信情報)が第2無線機WD22に送信される。
【0064】
以後、第2無線機WD22は第1無線機WD21と同様の通信を行って、警報情報を第1無線機WD21に送信し、第1無線機WD21は特定の無線機WD1と同様の通信を行って、警報情報を特定の無線機WD1に送信する。特定の無線機WD1は、LTE等の通信規格に従って、基地局等を介してセンタ側装置CAに警報情報を送信する。
【0065】
また、このような警報情報を受信したセンタ側装置CAは、例えば第2無線機WD22に接続されるガスメータ(接続機器M)の遮断弁を閉じるべく、基地局等を介して特定の無線機WD1に遮断情報(「DATA」であって要送信情報)を送信する。
【0066】
特定の無線機WD1は、上記と同様に、第1無線機WD21を介して、第2無線機WD22に遮断情報を送信する。遮断情報を受信した第2無線機WD22は、出力部20を通じて遮断情報をガスメータに送信する。これにより、ガスメータは自己の遮断弁を閉じることとなる。
【0067】
なお、このような情報の送受信の過程において、例えば第2無線機WD22が第1無線機WD21に「RACK」を送信したにもかかわらず「DATA」が返信されなかったとする。この場合、第2無線機WD22の第2判断部50は、図7に示すように、ユニキャスト通信を行う相手側となる第1無線機WD21が電波干渉状態であると判断する。
【0068】
そして、第2無線機WD22は、他の無線機WDから「RIT Data Request」を受信するとする。このとき、第2無線機WD22の第5通信部35は、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信を行って周囲にチャネル切替情報を送信する。これにより、第2無線機WD22の通信相手であった第1無線機WD21のみならず周囲の無線機WDに対してチャネル切替情報が送信されることとなる。なお、第2無線機WD22のチャネル切替部60は、チャネル切替情報の送信後にチャネルを切り替える。
【0069】
さらに、上記の要送信情報の送受信過程とは別に各無線機WDの第1判断部40は自己について電波干渉状態であるかを判断している。ここで、第2無線機WD22の第1判断部40が自己について電波干渉状態であると判断したとする。この場合、第2無線機WD22は、一時的に電波干渉が弱まり、他の無線機WDからの「RIT Data Request」を受信できたときに、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加して、ブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信を行って周囲にチャネル切替情報を送信する。これにより、例えば第2無線機WD22の近くに存在する第1無線機WD21及び第3無線機WD23にはチャネル切替情報が受信されることとなる。なお、第2無線機WD22のチャネル切替部60は、チャネル切替情報の送信後にチャネルを切り替える。
【0070】
チャネル切替情報を受信した第1無線機WD21は、チャネル切替情報の保有状態となり、他の無線機WDから要送信情報を受信したり、入力部10により接続機器Mからの要送信情報を入力した場合に、図6に示した情報の送受信を行う。すなわち、第1無線機WD21は、例えば特定の無線機WD1からの「RIT Data Request」を受信し、「RIT Data Response」を返信する。次いで、特定の無線機WD1から「RACK」を受信すると、第4通信部34は、「DATA」にチャネル切替情報を追加してブロードキャスト通信又はマルチキャスト通信を行う。これにより、チャネル切替情報は、特定の無線機WD1のみならず、周囲の他の無線機WDにも受信される。なお、第1無線機WD21のチャネル切替部60は、チャネル切替情報の送信後にチャネルを切り替える。
【0071】
このようにして、本実施形態に係る無線システム1及び無線機WDによれば、「RIT Data Request」と「RIT Data Response」との送受信を通じて要送信情報の送受信を行い、電波干渉状態であると判断した場合には、他の無線機WDからの「RIT Data Request」を受信したときに、「RIT Data Response」に追加して又は代えてチャネル切替情報を送信するため、通常の情報の送受信時と同様にしてチャネル切替情報を送信することとなり、別機器を備える場合等のような構成の複雑化を抑えることができる。
【0072】
また、「RIT Data Request」と「RIT Data Response」との送受信を行う場合、通常時は「RIT Data Request」の送信元を指定して「RIT Data Response」を送信するが、電波干渉状態であるときには「RIT Data Request」の送信元を指定することなく「RIT Data Response」に加えてチャネル切替情報を送信する。このため、「RIT Data Request」の送信元の無線機WDに限らず、周囲に存在する他の無線機WDについてもチャネル切替情報が受信されることとなる。このため、周囲の無線機WDのチャネル切替を一括して行うことができ、より素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる。
【0073】
従って、構成の複雑化を抑え、より素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる無線システム1を提供することができる。
【0074】
また、無線機WDは、他の無線機WDからチャネル切替情報を受信した場合に、チャネル切替情報を周囲に送信し、送信後に自己の無線機WDのチャネルを切り替えるため、電波干渉状態の無線機WDのみならず、その無線機WDからチャネル切替情報を受信した無線機WDについても、チャネル切替情報を周囲に送信でき、より一層素早くネットワーク全体の通信チャネルを変更することができる。
【0075】
また、他の無線機WDから「RIT Data Response」を受信した場合、当該他の無線機WDに対して要送信情報(DATA)の返信を求める「RACK」を送信したにもかかわらず、当該他の無線機WDから要送信情報の返信がない場合に、当該他の無線機WDが電波干渉状態であると判断するため、電波干渉がない場合に、本来であれば、「RIT Data Response」の受信、「RACK」の送信、及び、「DATA」の受信と連続するはずが、「DATA」を受信できないということは、他の無線機WDが突然に電波干渉状態になったといえる。よって、「DATA」を受信できないときに他の無線機WDが電波干渉状態であると判断して、電波干渉状態の無線機WDの周囲の無線機WDからチャネル切替情報を送信することができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る無線システムは第1実施形態のものと同様であるが、一部処理内容が異なっている。
【0077】
図8は、第2実施形態に係る無線システム1を構成する無線機WDによるチャネル切替の様子を示す概念図である。なお、図8においては、複数の無線機WDの1つである無線機A~Cを例に説明する。無線機Bは電波干渉状態にあるものとする。また、図8に示す無線機A~Cから延びる棒部は白抜きと黒塗りとなっているが、白抜きが切替前のチャネルを示し、黒塗りが切替後のチャネルを示している。
【0078】
まず、無線機Bの第1判断部40は自己が電波干渉状態であると判断したとする。これにより、無線機Bの第3通信部33は、図5を参照して説明した方法と同様に、「RIT Data Response」にチャネル切替情報を追加してブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。チャネル切替情報を送信した無線機Bはチャネルを切り替える。
【0079】
チャネル切替情報を受信した無線機Aの第4通信部34は、例えば図6を参照して説明した方法と同様に、「DATA」にチャネル切替情報を追加してブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。チャネル切替情報を送信した無線機Aはチャネルを切り替える。さらに、第2実施形態において無線機Aの第4通信部34は、チャネル切替後に、切替後のチャネルにて再度チャネル切替情報をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。すなわち、第4通信部34は、他の無線機WDからチャネル切替情報を受信した場合に、チャネル切替前後の2チャネルで、チャネル切替情報を周囲に送信することとなる。
【0080】
ここで、図8に示すように、切替前のチャネルで送信されたチャネル切替情報については、偶然に電波環境が悪くなったことにより無線機Cに未到達であったとする。この場合、無線機Cはチャネルの切替が行われていないことから、切替後のチャネルで送信されたチャネル切替情報についても受信できず、無線機Cはチャネル切替がされることなく孤立する可能性がある。
【0081】
そこで、本実施形態において無線機Bの第3通信部33は、チャネル切替部60により自己のチャネルを切り替えた後に、チャネル切替前後の2チャネルで、再度チャネル切替情報を送信するリカバリー処理を実行する。これにより、例えば無線機Cのようなチャネルが切り替えられることなく孤立状態にある無線機WDに対して、切替前のチャネルで再度チャネル切替情報を送信することが可能となる。
【0082】
また、無線機Bから孤立する無線機WDに対して直接チャネル切替情報が到達する距離にない場合であっても、図8に示すように、無線機Aを経由して無線機Cにチャネル切替情報を到達させることができる。すなわち、上記したように、無線機Aの第4通信部34は、チャネル切替情報を受信すると、切替前後の2チャネルでチャネル切替情報を送信するようになっている。このため、無線機Bのリカバリー処理によってチャネル切替情報を受信した場合、無線機Aからは、切替前後の2チャネルにてチャネル切替情報がブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信され、孤立状態にある無線機Cについては切替前のチャネルにてチャネル切替情報を受信することができる。
【0083】
このように、第2実施形態に係る無線システム1では、第1判断部40にて自己が電波干渉状態であると判断した無線機WDについては、チャネル切替情報をブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信してチャネルを切り替えた後であっても、リカバリー処理によって再度チャネル切替情報を切替前後の2チャネルにてブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。
【0084】
しかも、第2実施形態に係る無線システム1では、チャネル切替情報を受信した無線機WDについては、チャネル切替情報を切替前後の2チャネルにてブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信する。このため、リカバリー処理によってチャネル切替情報を受信した場合においても、チャネル切替情報を切替前後の2チャネルにてブロードキャスト送信又はマルチキャスト送信して、2チャネルにてチャネル切替情報を拡散していくこととなる。この結果、孤立状態の無線機WDが生じないように素早くネットワーク内全体の無線機WDについてチャネルを切り替えるようにしている。
【0085】
このようにして、第2実施形態に係る無線システム1及び無線機WDによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
さらに、第2実施形態によれば、第3通信部34がリカバリー処理を実行するため、チャネル切替情報を受信できずに孤立状態にある無線機WDに対して再度チャネル切替情報を周囲に送信することが可能となり、ネットワーク内全体の通信チャネルの切替をより確実に行うことができる。
【0087】
また、チャネル切替情報を受信した無線機WDについて第4通信部34は、切替前後の2チャネルにてチャネル切替情報を周囲に送信するため、孤立状態にある無線機WDがリカバリー処理によってチャネル切替情報を受信できる距離になくとも、チャネル切替情報を受信した無線機WDが中継する形となり、通信チャネルの切替をより一層確実に行うことができる。
【0088】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0089】
例えば、上記実施形態においてチャネル切替情報は、「RIT Data Response」に追加され、又は、「DATA」に追加されて送信されているが、追加に限らず、「RIT Data Response」や「DATA」に代えて送信されるようになっていてもよい。
【0090】
また、無線機WDに接続される接続機器Mは、1つの無線機WDに対して1つではなく、1つの無線機WDに対して複数の接続機器Mが接続されてもよい。また、無線機WDと接続機器Mとは有線接続されていてもよいし、無線接続されていてもよい。
【0091】
加えて、本実施形態に係る第1判断部40は、現在のチャネルについて周囲の電波強度が所定回数連続して所定値以上である場合に電波干渉状態を判断してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 :無線システム
10 :入力部
20 :出力部
30 :通信部
31 :第1通信部
32 :第2通信部
32a :第1機能部
32b :第2機能部
32c :第3機能部
33 :第3通信部
34 :第4通信部
35 :第5通信部
40 :第1判断部(干渉判断部)
50 :第2判断部(第2干渉判断部)
60 :チャネル切替部
CA :センタ側装置
M :接続機器
WD :無線機
WD1 :特定の無線機
WD2 :非特定無線機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8