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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】光偏向器
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20250402BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20250402BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
B81B3/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021114173
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010200
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-013621(JP,A)
【文献】特開2012-123364(JP,A)
【文献】国際公開第2021/193669(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0171500(US,A1)
【文献】特開2008-249858(JP,A)
【文献】特開2010-197994(JP,A)
【文献】特開2011-232589(JP,A)
【文献】特開2016-001275(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111751980(CN,A)
【文献】国際公開第2020/218585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/08 - 26/10
B81B 3/00
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を含むミラー部と、
前記ミラー部の周囲を囲むフレーム部と、
前記ミラー部と前記フレーム部との間を連結する一対のトーションバー部と、
前記トーションバー部と連結された状態で、前記ミラー部を前記トーションバー部の軸回りに揺動させる一対のアクチュエータ部とを備え、
前記アクチュエータ部は、前記トーションバー部を挟んだ両側に位置する複数の圧電素子により共振状態で駆動される一対のカンチレバー部を有し、
前記カンチレバー部は、前記複数の圧電素子が前記トーションバー部の軸線方向に並んで配置されると共に、前記複数の圧電素子の互いに隣り合うもの同士の一端と他端とが折返部を介して折り返し連結された構造を有することを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
前記一対のカンチレバー部は、前記トーションバー部を挟んだ両側に対称に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記アクチュエータ部は、前記複数の圧電素子のうち、互いに隣り合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動することを特徴とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記アクチュエータ部は、前記複数の圧電素子のうち、前記トーションバー部を挟んで向かい合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動することを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の光偏向器。
【請求項5】
前記アクチュエータ部は、前記フレーム部と前記カンチレバー部とが連結部を介して連結された構造を有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記一対のアクチュエータ部は、前記一対のトーションバー部のうち、一方のトーションバー部と連結された一方側のカンチレバー部と、他方のトーションバー部と連結された他方側のカンチレバー部とが連結部を介して連結された構造を有することを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の光偏向器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光等の光ビームを偏向・走査する光偏向器の例として、ガルバノミラーやポリゴンミラーが一般的に用いられている。このうち、ガルバノミラーは、偏光用の平面ミラーを回転軸に取り付け、電気信号に応じて電磁モータを駆動してミラーの回転角を可変にした光偏向器である。このガルバノミラーは、非共振型の光偏向器なので、ノコギリ歯型やランダムな電気信号で駆動できる。一方、ポリゴンミラーは、偏光用の多面ミラーを回転軸に取り付けた光偏向器であり、ガルバノミラーに比べ高速に走査可能である。
【0003】
しかしながら、ガルバノミラーやポリゴンミラーは、駆動源に電磁モータを使用しているため、小型化や軽量化が困難であり、省スペースを必要とするアプリケーションに使用することが困難である。
【0004】
これに対して、半導体製造技術を応用してシリコンやガラスを微細加工するマイクロマシニング技術(いわゆるMEMS技術)を用いて、半導体基板上にミラーや弾性体等の機構部品を一体的に形成した光偏向器(マイクロミラーともいう。)が提案されている(例えば、下記特許文献1~3を参照。)。
【0005】
具体的に、この光偏向器では、支持板上に、圧電体の上部及び下部に電極を有した複数の圧電素子を配置し、この圧電素子の上に弾性体を接続させた圧電アクチュエータを用いている。圧電アクチュエータは、上下電極間に印加される交流電圧により圧電体に上下に直線往復振動を生じさせ、この振動が弾性体を介して反射板へと伝わり、回転支持体を中心として反射板を左右に偏向させる。
【0006】
このような光偏向器では、その全体が微小な機械構造体で構成されたMEMSデバイスであるため、小型化や軽量化が容易である。さらに、半導体プロセスと同様に1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるため、量産が容易でコストを抑えることが可能である。
【0007】
また、このような光偏向器では、圧電アクチュエータの駆動により発生する微小な力で大きな変位量や偏向角を得るために、共振型の圧電アクチュエータを構成し、ミラー部を固有の共振周波数で駆動させ、この共振駆動によって駆動電圧当たりの振れ角を大きくすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5493735号公報
【文献】特開2011-013621号公報
【文献】特開2009-244602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した光偏向器において、ミラー部の振れ角を大きくするためには、圧電アクチュエータの長さを伸ばす必要がある。しかしながら、圧電アクチュエータの長さを伸ばした場合、デバイスの大型化を招くことなる。さらに、デバイスが大きくなると、1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるチップの個数が減るため、チップ単価が高くなる。したがって、チップサイズがコストに影響することから、デバイス自体をなるべく小さく設計したいといった要求がある。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、小型化を図ることを可能とした光偏向器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
〔1〕 反射面を含むミラー部と、
前記ミラー部の周囲を囲むフレーム部と、
前記ミラー部と前記フレーム部との間を連結する一対のトーションバー部と、
前記トーションバー部と連結された状態で、前記ミラー部を前記トーションバー部の軸回りに揺動させる一対のアクチュエータ部とを備え、
前記アクチュエータ部は、前記トーションバー部を挟んだ両側に位置する複数の圧電素子により共振駆動される一対のカンチレバー部を有し、
前記カンチレバー部は、前記複数の圧電素子が前記トーションバー部の軸線方向に並んで配置されると共に、前記複数の圧電素子の互いに隣り合うもの同士の一端と他端とが折返部を介して折り返し連結された構造を有することを特徴とする光偏向器。
〔2〕 前記一対のカンチレバー部は、前記トーションバー部を挟んだ両側に対称に配置されていることを特徴とする前記〔1〕に記載の光偏向器。
〔3〕 前記アクチュエータ部は、前記複数の圧電素子のうち、互いに隣り合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動することを特徴とすることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の光偏向器。
〔4〕 前記アクチュエータ部は、前記複数の圧電素子のうち、前記トーションバー部を挟んで向かい合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動することを特徴とする前記〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の光偏向器。
〔5〕 前記アクチュエータ部は、前記フレーム部と前記カンチレバー部とが連結部を介して連結された構造を有することを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の光偏向器。
〔6〕 前記一対のアクチュエータ部は、前記一対のトーションバー部のうち、一方のトーションバー部と連結された一方側のカンチレバー部と、他方のトーションバー部と連結された他方側のカンチレバー部とが連結部を介して連結された構造を有することを特徴とする前記〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の光偏向器。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、小型化を図ることを可能とした光偏向器を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光偏向器の構成を示す平面図である。
図2図1中に示す線分A-Aによるアクチュエータ部の断面図である。
図3図1中に示す線分B-Bによるアクチュエータ部の断面図である。
図4】アクチュエータ部の複数の圧電素子に印加される駆動電圧を示し、(A)は一方の駆動電圧の波形を示すグラフ、(B)は他方の駆動電圧の波形を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る光偏向器の構成を示す平面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る光偏向器の構成を示す平面図である。
図7】本発明の第4の実施形態に係る光偏向器の構成を示す平面図である。
図8】(A)は実施例1となる光偏向器の平面図、(B)は比較例1となる光偏向器の平面図、(C)は比較例2となる光偏向器の平面図である。
図9】実施例1及び比較例1,2の駆動電圧に対する振れ角を測定したシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0015】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば図1図4に示す光偏向器1について説明する。
【0016】
なお、図1は、光偏向器1の構成を示す平面図である。図2は、図1中に示す線分A-Aによるアクチュエータ部5の断面図である。図3は、図1中に示す線分B-Bによるアクチュエータ部5の断面図である。図4は、アクチュエータ部5の複数の圧電素子に印加される駆動電圧を示し、(A)は一方の駆動電圧の波形を示すグラフ、(B)は他方の駆動電圧の波形を示すグラフである。
【0017】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を光偏向器1の平面内における第1の方向(横方向)、Y軸方向を光偏向器1の平面内において第1の方向と直交する第2の方向(縦方向)、Z軸方向を光偏向器1の平面内に対して直交する第3の方向(厚み方向)として、それぞれ示すものとする。
【0018】
本実施形態の光偏向器1は、図1図3に示すように、反射面2aを含むミラー部2と、ミラー部2の周囲を囲むフレーム部3と、ミラー部2とフレーム部3との間を連結する一対のトーションバー部4と、トーションバー部4と連結された状態で、ミラー部2をトーションバー部4の軸回りに揺動させる一対のアクチュエータ部5とを備えている。
【0019】
また、本実施形態の光偏向器1は、MEMS技術を用いて、支持体となる半導体基板の上に、ミラー部2、フレーム部3、一対のトーションバー部4及び一対のアクチュエータ部5を一体的に形成したマイクロミラーからなる。
【0020】
本実施形態の光偏向器1は、平面視で略円形状のミラー部2と、この周囲を囲む略矩形枠状のフレーム部3との間に空間Kを有している。
【0021】
一対のトーションバー部4は、それぞれ平面視で第2の方向に延在しながら直線状に形成されると共に、ミラー部2とフレーム部3との間を連結しながら、フレーム部3に対してミラー部2を第2の方向の中心軸回りに揺動自在に支持している。
【0022】
一対のアクチュエータ部5は、一対のトーションバー部4の各々に対応して設けられている。各アクチュエータ部5は、各トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に位置する複数(本実施形態では4つ)の圧電素子6a~6dにより共振駆動される一対のカンチレバー部7A,7Bを有している。
【0023】
一対のカンチレバー部7A,7Bは、トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一対のトーションバー部4は、ミラー部2を挟んだ第2の方向の両側に対称に配置されている。また、一対のトーションバー部4のうち、一方側のトーションバー部4に連結された一対のカンチレバー部7A,7Bと、他方側のトーションバー部4に連結された一対のカンチレバー部7A,7Bとは、ミラー部2を挟んだ第2の方向の両側に対称に配置されている。
【0024】
複数の圧電素子6a~6dは、トーションバー部4と連結された振動板11の上に、下部電極12と、圧電体13と、上部電極14とを順次積層することによって構成されている。
【0025】
各カンチレバー部7A(7B)は、複数(本実施形態では2つ)の圧電素子6a,6b(6c,6d)がトーションバー部4の軸線方向(第2の方向)に並んで配置されると共に、複数の圧電素子6a,6b(6c,6d)の互いに隣り合うもの同士の一端と他端とが折返部8a(8b)を介して折り返し連結された構造(以下、「折返構造」という。)を有している。
【0026】
具体的に、これら複数の圧電素子6a~6dのうち、一方側のカンチレバー部7Aを構成する第1の圧電素子6a及び第2の圧電素子6bが折返部8aを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Bを構成する第3の圧電素子6c及び第4の圧電素子6dが折返部8bを介して連結されている。
【0027】
第1の圧電素子6aと第3の圧電素子6cとは、トーションバー部4のフレーム部3側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一方、第2の圧電素子6bと第4の圧電素子6dとは、トーションバー部4のミラー部2側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。
【0028】
一方側のカンチレバー部7Aでは、第1の方向に延在する第1の圧電素子6aの一端がトーションバー部4と連結され、この第1の圧電素子6aの他端が第2の方向に延在する折返部8aの一端と連結され、第1の方向に延在する第2の圧電素子6bの一端が折返部8aの他端と連結され、第2の圧電素子6bの他端が連結されずに自由端となっている。
【0029】
他方側のカンチレバー部7Bでは、第1の方向に延在する第3の圧電素子6cの一端がトーションバー部4と連結され、この第3の圧電素子6cの他端が第2の方向に延在する折返部8bの一端と連結され、第1の方向に延在する第4の圧電素子6dの一端が第2の方向に延在する折返部8bの他端と連結され、この第4の圧電素子6dの他端が連結されずに自由端となっている。
【0030】
アクチュエータ部5では、複数の圧電素子6a~6dに駆動電圧(例えば正弦波や矩形波などの交流電圧)を印加し、一対のカンチレバー部7A,7Bを屈曲させることで、ミラー部2をトーションバー部4の軸周りに揺動させることが可能である。
【0031】
具体的に、このアクチュエータ部5では、複数の圧電素子6a~6dのうち、互いに隣り合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。また、アクチュエータ部5では、複数の圧電素子6a~6dのうち、トーションバー部4を挟んで向かい合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。
【0032】
すなわち、これら複数の圧電素子6a~6dのうち、第1及び第4の圧電素子6a,6dには、図4(A)に示す波形の駆動電圧を印加する。一方、第2及び第3の圧電素子6b,6cには、図4(A)に示す駆動電圧とは逆位相となる図4(B)に示す波形の駆動電圧を印加する。
【0033】
また、アクチュエータ部5では、複数の圧電素子6a~6dに対して共振周波数付近の駆動電圧を印加する。これにより、一対のカンチレバー部7A,7Bを共振状態で駆動(以下、「共振駆動」という。)させながら、ミラー部2をより大きな偏向角で揺動させることが可能である。
【0034】
以上のような構成を有する本実施形態の光偏向器1では、上述した一方側のカンチレバー部7Aを構成する第1の圧電素子6a及び第2の圧電素子6bが折返部8aを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Bを構成する第3の圧電素子6c及び第4の圧電素子6dが折返部8bを介して連結された折返構造を有している。
【0035】
これにより、本実施形態の光偏向器1では、一対のカンチレバー部7A,7Bの長さを確保しながら、これら一対のカンチレバー部7A,7Bを空間K内に効率良く配置することが可能である。
【0036】
以上のように、本実施形態の光偏向器1では、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、デバイスの小型化を図ることができる。また、1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるチップの個数を増やすことで、チップ単価を下げることが可能である。
【0037】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば図5に示す光偏向器1Aについて説明する。
【0038】
なお、図5は、光偏向器1Aの構成を示す平面図である。また、以下の説明では、上記光偏向器1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0039】
本実施形態の光偏向器1Aは、図5に示すような一対のアクチュエータ部5Aを備える以外は、基本的に上記光偏向器1と基本的に同じ構成を有している。
【0040】
具体的に、各アクチュエータ部5Aは、各トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に位置する複数(本実施形態では6つ)の圧電素子16a~16fにより共振駆動される一対のカンチレバー部7C,7Dを有している。
【0041】
各カンチレバー部7C(7D)は、複数(本実施形態では3つ)の圧電素子16a,16b,16c(16d,16e,16f)がトーションバー部4の軸線方向(第2の方向)に並んで配置されると共に、複数の圧電素子16a,16b,16c(16d,16e,16f)の互いに隣り合うもの同士の一端と他端とが折返部18a,18b(18c,18d)を介して折り返し連結された折返構造を有している。
【0042】
具体的に、これら複数の圧電素子16a~16fのうち、一方側のカンチレバー部7Cを構成する第1の圧電素子16a、第2の圧電素子16b及び第3の圧電素子16cが折返部18a,18bを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Dを構成する第4の圧電素子16d、第5の圧電素子16e及び第6の圧電素子16fが折返部18c,18dを介して連結されている。
【0043】
第1の圧電素子16aと第4の圧電素子16dとは、トーションバー部4のフレーム部3側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一方、第2の圧電素子16bと第5の圧電素子16eとは、トーションバー部4の中間に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一方、第3の圧電素子16cと第6の圧電素子16fとは、トーションバー部4のミラー部2側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。
【0044】
また、第2及び第5の圧電素子16b,16eは、第1及び第4の圧電素子16a,16dよりも短く、第3及び第6の圧電素子16c,16fは、第2及び第5の圧電素子16b,16eよりも幅狭となっている。すなわち、複数の圧電素子16a~16fは、長さや幅を適宜変更することが可能である。
【0045】
一方側のカンチレバー部7Cでは、第1の方向に延在する第1の圧電素子16aの一端がトーションバー部4と連結され、この第1の圧電素子16aの他端が第2の方向に延在する折返部18aの一端と連結され、第1の方向に延在する第2の圧電素子16bの一端が折返部18aの他端と連結され、この第2の圧電素子16bの他端が第2の方向に延在する折返部18bの一端と連結され、第1の方向に延在する第3の圧電素子16cの一端が折返部18bの他端と連結されている。
【0046】
また、一方側のカンチレバー部7Cでは、第3の圧電素子16cの他端が第1の方向に延在する連結部9aを介してフレーム部3と連結されている。
【0047】
他方側のカンチレバー部7Dでは、第1の方向に延在する第4の圧電素子16dの一端がトーションバー部4と連結され、この第4の圧電素子16dの他端が第2の方向に延在する折返部18cの一端と連結され、第1の方向に延在する第5の圧電素子16eの一端が折返部18cの他端と連結され、この第5の圧電素子16eの他端が第2の方向に延在する折返部18dの一端と連結され、第1の方向に延在する第6の圧電素子16fの一端が折返部18dの他端と連結されている。
【0048】
また、他方側のカンチレバー部7Dでは、第6の圧電素子16fの他端が第1の方向に延在する連結部9bを介してフレーム部3と連結されている。
【0049】
アクチュエータ部5Aでは、複数の圧電素子16a~16fに駆動電圧(例えば正弦波や矩形波などの交流電圧)を印加し、一対のカンチレバー部7C,7Dを屈曲させることで、ミラー部2をトーションバー部4の軸周りに揺動させることが可能である。
【0050】
具体的に、このアクチュエータ部5Aでは、複数の圧電素子16a~16dのうち、互いに隣り合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。また、アクチュエータ部5Aでは、複数の圧電素子16a~16fのうち、トーションバー部4を挟んで向かい合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。
【0051】
すなわち、これら複数の圧電素子16a~16fのうち、第1、第3及び第5の圧電素子16a,16c,16eには、図4(A)に示す波形の駆動電圧を印加する。一方、第2、第4及び第6の圧電素子16b,16d,16fには、図4(A)に示す駆動電圧とは逆位相となる図4(B)に示す波形の駆動電圧を印加する。
【0052】
また、アクチュエータ部5Aでは、複数の圧電素子16a~16fに対して共振周波数付近の駆動電圧を印加する。これにより、一対のカンチレバー部7C,7Dを共振駆動させながら、ミラー部2をより大きな偏向角で揺動させることが可能である。
【0053】
以上のような構成を有する本実施形態の光偏向器1Aでは、上述した一方側のカンチレバー部7Cを構成する第1、第2及び第3の圧電素子16a,16b,16cが折返部18a,18bを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Dを構成する第4、第5及び第6の圧電素子16d,16e,16fが折返部18c,18dを介して連結された折返構造を有している。
【0054】
これにより、本実施形態の光偏向器1Aでは、一対のカンチレバー部7C,7Dの長さを確保しながら、これら一対のカンチレバー部7C,7Dを空間K内に効率良く配置することが可能である。
【0055】
また、本実施形態の光偏向器1Aでは、上述したフレーム部3と一対のカンチレバー部7C,7Dとが連結部9a,9bを介して連結された構造を有している。この構成の場合、振れ角は上記光偏向器1よりも低下するものの、耐振動性を向上させることが可能である。
【0056】
以上のように、本実施形態の光偏向器1Aでは、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、デバイスの小型化を図ることができる。また、1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるチップの個数を増やすことで、チップ単価を下げることが可能である。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば図6に示す光偏向器1Bについて説明する。
【0058】
なお、図6は、光偏向器1Bの構成を示す平面図である。また、以下の説明では、上記光偏向器1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0059】
本実施形態の光偏向器1Bは、図6に示すような一対のアクチュエータ部5Bを備える以外は、基本的に上記光偏向器1と基本的に同じ構成を有している。
【0060】
具体的に、各アクチュエータ部5Bは、各トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に位置する複数(本実施形態では6つ)の圧電素子26a~26fにより共振駆動される一対のカンチレバー部7E,7Fを有している。
【0061】
各カンチレバー部7E(7F)は、複数(本実施形態では3つ)の圧電素子26a,26b,26c(26d,26e,26f)がトーションバー部4の軸線方向(第2の方向)に並んで配置されると共に、複数の圧電素子26a,26b,26c(26d,26e,26f)の互いに隣り合うもの同士の一端と他端とが折返部28a,28b(28c,28d)を介して折り返し連結された折返構造を有している。
【0062】
具体的に、これら複数の圧電素子26a~26fのうち、一方側のカンチレバー部7Eを構成する第1の圧電素子26a、第2の圧電素子26b及び第3の圧電素子26cが折返部28a,28bを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Fを構成する第4の圧電素子26d、第5の圧電素子26e及び第6の圧電素子26fが折返部28c,28dを介して連結されている。
【0063】
第1の圧電素子26aと第4の圧電素子26dとは、トーションバー部4のミラー部2側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一方、第2の圧電素子26bと第5の圧電素子26eとは、トーションバー部4の中間に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。一方、第3の圧電素子26cと第6の圧電素子26fとは、トーションバー部4のフレーム部3側に位置して、このトーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に対称に配置されている。
【0064】
また、第2及び第5の圧電素子26b,26eは、第1及び第4の圧電素子26a,26dよりも短く、第3及び第6の圧電素子26c,26fは、第2及び第5の圧電素子26b,26eよりも幅狭となっている。すなわち、複数の圧電素子26a~26fは、長さや幅を適宜変更することが可能である。
【0065】
一方側のカンチレバー部7Eでは、第1の方向に延在する第1の圧電素子26aの一端がトーションバー部4と連結され、この第1の圧電素子26aの他端が第2の方向に延在する折返部28aの一端と連結され、第1の方向に延在する第2の圧電素子26bの一端が折返部28aの他端と連結され、この第2の圧電素子26bの他端が第2の方向に延在する折返部28bの一端と連結され、第1の方向に延在する第3の圧電素子26cの一端が折返部28bの他端と連結されている。
【0066】
また、一方側のカンチレバー部7Eでは、第3の圧電素子16cの他端が第2の方向に延在する連結部9cを介してフレーム部3と連結されている。
【0067】
他方側のカンチレバー部7Fでは、第1の方向に延在する第4の圧電素子26dの一端がトーションバー部4と連結され、この第4の圧電素子26dの他端が第2の方向に延在する折返部28cの一端と連結され、第1の方向に延在する第5の圧電素子26eの一端が折返部28cの他端と連結され、この第5の圧電素子26eの他端が第2の方向に延在する折返部28dの一端と連結され、第1の方向に延在する第6の圧電素子26fの一端が折返部28dの他端と連結されている。
【0068】
また、他方側のカンチレバー部7Fでは、第6の圧電素子26fの他端が第2の方向に延在する連結部9dを介してフレーム部3と連結されている。
【0069】
アクチュエータ部5Bでは、複数の圧電素子26a~26fに駆動電圧(例えば正弦波や矩形波などの交流電圧)を印加し、一対のカンチレバー部7E,7Fを屈曲させることで、ミラー部2をトーションバー部4の軸周りに揺動させることが可能である。
【0070】
具体的に、このアクチュエータ部5Bでは、複数の圧電素子26a~26dのうち、互いに隣り合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。また、アクチュエータ部5Bでは、複数の圧電素子26a~26fのうち、トーションバー部4を挟んで向かい合うもの同士の間で逆位相の駆動電圧を印加しながら駆動する。
【0071】
すなわち、これら複数の圧電素子26a~26fのうち、第1、第3及び第5の圧電素子26a,26c,26eには、図4(A)に示す波形の駆動電圧を印加する。一方、第2、第4及び第6の圧電素子26b,26d,26fには、図4(A)に示す駆動電圧とは逆位相となる図4(B)に示す波形の駆動電圧を印加する。
【0072】
また、アクチュエータ部5Bでは、複数の圧電素子26a~26fに対して共振周波数付近の駆動電圧を印加する。これにより、一対のカンチレバー部7E,7Fを共振駆動させながら、ミラー部2をより大きな偏向角で揺動させることが可能である。
【0073】
以上のような構成を有する本実施形態の光偏向器1Bでは、上述した一方側のカンチレバー部7Eを構成する第1、第2及び第3の圧電素子26a,26b,26cが折返部28a,28bを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Fを構成する第4、第5及び第6の圧電素子26d,26e,26fが折返部28c,28dを介して連結された折返構造を有している。
【0074】
これにより、本実施形態の光偏向器1Bでは、一対のカンチレバー部7E,7Fの長さを確保しながら、これら一対のカンチレバー部7E,7Fを空間K内に効率良く配置することが可能である。
【0075】
また、本実施形態の光偏向器1Bでは、上述したフレーム部3と一対のカンチレバー部7E,7Fとが連結部9c,9dを介して連結された構造を有している。この構成の場合、振れ角は上記光偏向器1よりも低下するものの、耐振動性を向上させることが可能である。
【0076】
以上のように、本実施形態の光偏向器1Bでは、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、デバイスの小型化を図ることができる。また、1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるチップの個数を増やすことで、チップ単価を下げることが可能である。
【0077】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば図7に示す光偏向器1Cについて説明する。
【0078】
なお、図7は、光偏向器1Cの構成を示す平面図である。また、以下の説明では、上記光偏向器1,1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0079】
本実施形態の光偏向器1Cは、図7に示すような一対のアクチュエータ部5Cを備える以外は、基本的に上記光偏向器1と基本的に同じ構成を有している。
【0080】
具体的に、各アクチュエータ部5Cは、上記アクチュエータ部5Aが備える連結部9a,9bの代わりに、一対のトーションバー部4のうち、一方のトーションバー部4と連結された一方側のカンチレバー部7C,7Dと、他方のトーションバー部4と連結された他方側のカンチレバー部7C,7Dとが連結部9e,9fを介して連結された構造を有している。
【0081】
以上のような構成を有する本実施形態の光偏向器1Cでは、上述した一方側のカンチレバー部7Cを構成する第1、第2及び第3の圧電素子16a,16b,16cが折返部18a,18bを介して連結され、他方側のカンチレバー部7Dを構成する第4、第5及び第6の圧電素子16d,16e,16fが折返部18c,18dを介して連結された折返構造を有している。
【0082】
これにより、本実施形態の光偏向器1Cでは、一対のカンチレバー部7C,7Dの長さを確保しながら、これら一対のカンチレバー部7C,7Dを空間K内に効率良く配置することが可能である。
【0083】
また、本実施形態の光偏向器1Cでは、上述した一方のトーションバー部4と連結された一方側のカンチレバー部7C,7Dと、他方のトーションバー部4と連結された他方側のカンチレバー部7C,7Dとが連結部9e,9fを介して連結された構造を有している。この構成の場合、上記光偏向器1と比べて、振れ角を維持したまま、耐振動性を向上させることが可能である。
【0084】
以上のように、本実施形態の光偏向器1Cでは、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、デバイスの小型化を図ることができる。また、1枚のウェハから複数のデバイスを同時に作製できるチップの個数を増やすことで、チップ単価を下げることが可能である。
【0085】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記光偏向器1A(1B)では、上述したフレーム部3と一対のカンチレバー部7C,7D(7E,7F)とが連結部9a,9b(9c,9d)を介して連結された構造となっているが、第3及び第6の圧電素子16c,16f(26c,26f)を延在し、フレーム部3と連結された構造とすることも可能である。
【実施例
【0086】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0087】
本実施例では、図8(A)に示す実施例1となる光偏向器1と、図8(B)に示す比施例1となる光偏向器100Aと、図8(C)に示す比施例2となる光偏向器100Bとを用いて、シミュレーションにより駆動電圧に対する振れ角を測定した。
【0088】
なお、図8(A)は、実施例1となる光偏向器の平面図である。図8(B)は、比較例1となる光偏向器100Aの平面図である。図8(C)は、比較例2となる光偏向器100Bの平面図である。また、以下の説明では、上記光偏向器1と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0089】
このうち、図8(B)に示す光偏向器100Aは、トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に位置する一対の圧電素子60a,60bにより共振駆動される一対のカンチレバー部70A,70Bを有している。一対のカンチレバー部70A,70Bでは、一対の圧電素子60a,60bの一端がトーションバー部4と連結され、一対の圧電素子60a,60bの他端が連結されずに自由端となっている。
【0090】
一方、図8(C)に示す光偏向器100Bは、トーションバー部4を挟んだ第1の方向の両側に位置する一対の圧電素子60a,60bにより共振駆動される一対のカンチレバー部70C,70Dを有している。一対のカンチレバー部70C,70Dでは、一対の圧電素子60a,60bの一端がトーションバー部4と連結され、一対の圧電素子60a,60bの他端が第1の方向に延在する連結部80a,80bを介してフレーム部3と連結されている。
【0091】
これら実施例1及び比較例1,2の光偏向器1,100A,100Bについて、駆動電圧に対する振れ角を測定したシミュレーション結果を図9に示す。
【0092】
図9に示すように、実施例1及び比較例1の光偏向器1,100Aは、比較例2の光偏向器100Bに比べて、振れ角を大きくすることが可能である。また、実施例1の光偏向器1は、比較例1の光偏向器100Aに比べて、小型化が可能である。
【0093】
したがって、実施例1の光偏向器1では、駆動電圧当たりの振れ角を維持したまま、デバイスの小型化を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1,1A~1C…光偏向器 2…ミラー部 2a…反射面 3…フレーム部 4…トーションバー部 5,5A~5C…アクチュエータ部 6a~6d…圧電素子 7A~7F…カンチレバー部 8a,8b…折返部 9a~9f…連結部 16a~6f…圧電素子 18a~18d…折返部 26a~26f…圧電素子 28a~28d…折返部 K…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9