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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】エアコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/02 20060101AFI20250402BHJP
   F04B 41/02 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
F04B49/02 331A
F04B41/02 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021121075
(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公開番号】P2023016607
(43)【公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100166039
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 款
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 義照
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154294(JP,A)
【文献】特開2004-211620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/02
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気を圧縮して圧縮エアを生成するための圧縮機と、
前記圧縮機を駆動するためのモータと、
生成した圧縮エアを貯留するためのタンクと、
前記タンクの容量を推定するためのタンク容量推定手段と、を有しており、
前記タンク容量推定手段は、エアコンプレッサの工場出荷時の状態で、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータを有しており、
前記タンク容量推定手段は、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係る前記ベースデータをもとに、タンク容量または所定のタンク容量との比であるタンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、前記仮タンク容量(比)データが一定の記憶量に達したら、その分布に基づいてタンク容量(比)を決定する、ことを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項2】
圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、記憶の際に、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて、昇順に記憶され、データ列の所定個数について順列の変化が所定回以上なくなったら、前記所定個数のデータに基づいてタンク容量(比)を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項3】
圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、記憶の際に、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて、昇順に記憶され、データ列の所定個数について順列の変化が所定回以上なくなったら、前記所定個数のデータのうち所定の位置のデータ列に基づいてタンク容量(比)を決定する、ことを特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項4】
外気を圧縮して圧縮エアを生成するための圧縮機と、
前記圧縮機を駆動するためのモータと、
生成した圧縮エアを貯留するためのタンクと、
前記タンクの容量を推定するためのタンク容量推定手段と、を有しており、
前記タンク容量推定手段は、エアコンプレッサの工場出荷時の状態で、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータを有しており、
前記タンク容量推定手段は、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係る前記ベースデータをもとに、タンク容量または所定のタンク容量との比であるタンク容量(比)を時々刻々と算出・記憶し、繰返してタンク容量(比)を決定する、ことを特徴とするエアコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気を圧縮して圧縮エアを生成しタンクに貯留するエアコンプレッサであって、例えば圧縮エア駆動式の釘打機やエアタッカ等のエア工具に圧縮エアを供給するためのエアコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
エアコンプレッサは、主として、外気を圧縮して圧縮エアを生成する圧縮機と、この圧縮機を駆動するモータと、生成した圧縮エアを貯留するタンクを有している。モータが起動することで圧縮機は圧縮運転を開始する。圧縮機は、シリンダ内に外気を取り込み、シリンダ内で往復運動するピストンで圧縮することで圧縮エアを生成する。タンクに貯留された圧縮エアは、例えば釘打機やエアタッカ等の圧縮エア駆動式のエア工具に供給される。
【0003】
釘打機などのエア工具用のエアコンプレッサでは、タンク内の圧縮空気を減圧弁によって任意の設定圧力まで減圧して出力する。減圧弁で減圧された圧縮エアは、エアホースを接続可能な取出口を介してエア工具へ供給される。
【0004】
特許文献1では、エアコンプレッサの更なる利便性向上を目的として、圧力上昇時および下降時の圧力変化データの比と、検出した圧力変化データの関係に基づいて、補助タンクの有無を判定することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3141220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアコンプレッサの停止圧力/再起動圧力をエア消費量に合わせて最適化することが本願出願人によって提案されている。かかる最適化の制御では、タンク圧力が停止圧力に達したときに圧縮機を駆動するモータを停止させ、タンク圧力が再起動圧力に達したときにモータを再起動させる。モータが停止することで圧縮機の圧縮運転が停止し、モータが再起動することで圧縮運転が再開する。このような停止圧力/再起動圧力の最適化制御では、エアコンプレッサが具備するタンク容量に関するデータが不可欠である。
しかしながら、エアコンプレッサのタンク容量は一様ではなく、機種によって異なる場合がある。そのため、停止圧力/再起動圧力をエア消費量に合わせて最適化するなどの目的でタンク容量の把握が必要な場合、タンク容量別に専用コントローラ(タンク容量が予め入力されたコントローラ)が必要となり、その分、エアコンプレッサの製造コストが高くなるといった問題がある。
また、エアコンプレッサのタンク容量は常に一定ではなく、補助タンク接続やタンク内での水の生成によってタンク容量が実質的に変化する。そのため、単にタンク容量別にコントローラを用意しただけでは、補助タンク接続や水の生成によるタンク容量の変化に追従することができず、エアコンプレッサの使い勝手が悪くなるなどの問題が生じる。
したがって、上記問題をすべて同時に解決するためには、特許文献1で提案されているような補助タンクの有無ではなく、増減含めてタンク容量を正確に取得することが必要である。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑み、タンク容量を推定する機能を備えたエアコンプレッサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、外気を圧縮して圧縮エアを生成するための圧縮機と、前記圧縮機を駆動するためのモータと、生成した圧縮エアを貯留するためのタンクと、前記タンクの容量を推定するためのタンク容量推定手段と、を有するエアコンプレッサであって、前記タンク容量推定手段が、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、予め測定・記憶された所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量または所定のタンク容量との比(この出願では両者の総称として「タンク容量(比)」とまとめて記述する。)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、前記仮タンク容量(比)データが一定の記憶量に達したら、その分布に基づいてタンク容量(比)を決定する、ことにより達成される。
【0009】
上記エアコンプレッサでは、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、予め測定・記憶された所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、記憶の際に、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて、昇順に記憶され、データ列の所定個数について順列の変化が所定回以上なくなったら、前記所定個数のデータに基づいてタンク容量(比)を決定する、ことも可能である。
【0010】
また、上記エアコンプレッサでは、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、予め測定・記憶された所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、記憶の際に、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて、昇順に記憶され、データ列の所定個数について順列の変化が所定回以上なくなったら、前記所定個数のデータのうち所定の位置のデータ列に基づいてタンク容量(比)を決定する、ことも可能である。
【0011】
また、前述した目的は、外気を圧縮して圧縮エアを生成するための圧縮機と、前記圧縮機を駆動するためのモータと、生成した圧縮エアを貯留するためのタンクと、前記タンクの容量を推定するためのタンク容量推定手段と、を有するエアコンプレッサであって、前記タンク容量推定手段が、圧縮機運転中のタンク圧力とその変化量とを計測し、予め測定・記憶された所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータをもとに、タンク容量(比)を時々刻々と算出・記憶し、繰返してタンク容量(比)を決定する、ことにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアコンプレッサによれば、自己のタンク容量のデータを予め持っていなくても、タンク容量を推定することができる。これにより、タンク容量別にコントローラを用意する必要がなく、製品をコストダウンすることができる。
【0013】
また、本発明のエアコンプレッサでは、演算を通じてタンク容量(比)を推定するが、演算に用いるデータのなかにはエア消費などの外乱を含むデータがある可能性もあるので、一回の演算結果だけでは正しい推定結果が得られるとは限らない。そこで、本発明では、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶し、一定量の仮タンク容量(比)データの分布に基づいてタンク容量(比)の推定値を決定する。このようにデータ分布に基づいてタンク容量(比)の推定値を決定することで、真のタンク容量(比)に近い高い精度の値を導き出すことが可能になる。
【0014】
また、本発明のエアコンプレッサでは、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶するが、暫定値である仮タンク容量(比)データの分布は、真のタンク容量(比)を中心にして、値の大きな方へ広がる分布となる。タンク容量(比)が真値より小さくなること(圧縮機のエア供給能力が実力以上になること)は理論上ない。
そこで、本発明では、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて昇順に記憶し、仮タンク容量(比)のより小さいデータを選んで残すこととしている。
このように仮タンク容量(比)のより小さいデータを選んで残すことにより、真のタンク容量(比)近傍のデータのみが残ることになるので、タンク容量(比)の推定処理において真のタンク容量(比)に限りなく近い高い精度の値を得ることが可能になる。
【0015】
また、本発明のエアコンプレッサでは、タンク容量(比)を時々刻々と算出して仮タンク容量(比)データとして記憶するが、その記憶の際に、仮タンク容量(比)データは新しい仮タンク容量(比)データを含めて、昇順に記憶される。そして、データ列の所定個数について順列の変化が所定回以上なくなったら、前記所定個数のデータのうち所定の位置のデータ列に基づいてタンク容量(比)を決定する。
タンク容量(比)の推定処理においてこのようなルールを適用することで、ノイズに相当する仮タンク容量(比)データを分布から除去することができ、その結果、真のタンク容量(比)に限りなく近い高い精度の値を推定値として決定することが可能になる。
【0016】
また、本発明のエアコンプレッサでは、タンク容量(比)の推定を一回だけでなく、繰返し実行する。これにより、補助タンク接続や水の生成によるタンク容量の変化に追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エアコンプレッサの外観を示す斜視図である。
図2】エアコンプレッサの機能的構成を示すブロック図である。
図3】エアコンプレッサの操作パネルが具備するボタンおよび表示部のレイアウトの一例を示す平面図である。
図4A】再起動圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理を概略的に示すチャート図である。
図4B図4Aの続きを示すチャート図である。
図4C図4Bの続きを示すチャート図である。
図5A】停止圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理を概略的に示すチャート図である。
図5B図5Aの続きを示すチャート図である。
図5C図5Bの続きを示すチャート図である。
図6】「再起動圧力(消費連動)」,「停止圧力(消費連動)」,「停止圧力(最小充填)」を用いた圧縮運転制御の原理を概略的に示すチャート図である。
図7】取出口設定値の認定条件の一つである「条件1」で判別する内容を例示するイメージ図である。
図8】取出口設定値の認定条件の一つである「条件2」で判別する内容と、条件2では判別できない内容を、それぞれ例示するイメージ図である。
図9】取出口設定値の認定条件の一つである「条件4」で判別する内容を例示するイメージ図である。
図10】エアコンプレッサがエア供給能力取得処理(S29)で用いるベースデータの一例を示すイメージ図である。
図11】エア供給能力演算処理(S503)の一例を示すイメージ図である。
図12】エアコンプレッサで実施する圧縮運転制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図13図12の圧力/圧力変化率取得処理(S25)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図14図12のタンク圧力の制御範囲取得処理(S27)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図15図14の取出口設定値取得処理(S207)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図16図14の圧力範囲取得処理(S209)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図17図12のエア供給能力取得処理(S29)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図18図17のタンク容量推定処理(S501)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図19A】仮タンク容量(比)データの分布を利用したタンク容量推定処理の一例を示すイメージ図である。
図19B図19Aの続きを示すイメージ図である。
図19C図19Bの続きを示すイメージ図である。
図20図12の再起動圧力取得処理(S31)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図21図12の停止圧力取得処理(S33)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図22図12のPFC/圧縮機制御処理(S35)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(エアコンプレッサの構成)
図1図3に基づいて、本実施形態に係るエアコンプレッサの構成について説明する。
図1は、エアコンプレッサの外観を示す斜視図である。
図2は、エアコンプレッサの機能的構成を示すブロック図である。
図3は、エアコンプレッサの操作パネルが具備するボタンおよび表示部のレイアウトの一例を示す平面図である。
【0019】
本実施形態のエアコンプレッサは、圧縮エアを生成する圧縮機11と、圧縮機11を駆動するモータ13と、モータ13のロータの回転位置の変化を検出するホールセンサ15と、生成した圧縮エアを貯留するタンク17と、タンク17の内圧を計測するタンク圧センサ19と、タンク内の圧縮空気を任意の圧力に減圧して出力する減圧弁1V,2Vと、減圧弁1Vの下流側に設けられた取出口1a,1bと、減圧弁2Vの下流側に設けられた取出口2a,2bと、取出口圧力を計測する取出口圧センサ1S,2Sと、各種情報を表示する表示部や操作用のボタンなどを備えた操作パネル20と、操作パネル20での情報表示やモータ13の制御、タンク容量推定処理などを担うコントローラ30などを有している。
【0020】
圧縮機11はモータ13の動力を受けて駆動する。この圧縮機11は、シリンダ内に外気を取り込み、モータ13の動力を受けてシリンダ内で往復運動するピストンで圧縮することで圧縮エアを生成する。
【0021】
圧縮機11を駆動するモータ13は、例えばアウタロータ形のブラシレスモータで構成されている。なお、モータ駆動はセンサ付きでもセンサレスでもよく、また、矩形波でも正弦波でもよく、駆動方式は特に限定されない。また、モータの種類は特に限定されるものではなく、例えば磁石モータでもよく或いは誘導モータでもよい。
【0022】
圧縮機11によって生成された圧縮エアはタンク17に貯留される。このタンク17には、タンク圧力(タンク内圧)を計測するためのタンク圧センサ19が設けられている。なお、本実施形態において、タンク17のタンク容量データは予めエアコンプレッサに入力されているものではなく、コントローラ30(タンク容量推定手段)による推定処理によって決定される。タンク容量推定処理については後述する。
【0023】
減圧弁1V,2Vのうち、第1の減圧弁1Vは、取出口圧力を調整するための圧力調整つまみ1Dを具備しており、タンク内の圧縮エアを第1の設定圧力(例えば任意の値の常圧)まで減圧して出力する。第2の減圧弁2Vは、取出口圧力を調整するための圧力調整つまみ2Dを具備しており、タンク内の圧縮エアを第2の設定圧力(例えば任意の値の高圧)まで減圧して出力する。以下、第1の減圧弁1Vを単に「減圧弁1V」という。第2の減圧弁2Vを単に「減圧弁2V」という。
【0024】
取出口1a,1b,2a,2bは、エア工具のエアホースを接続可能なエアカプラを有している。第1の取出口1a,1bからは、それぞれ減圧弁1Vによって減圧された圧縮エアを取り出すことができる。第2の取出口2a,2bからは、それぞれ減圧弁2Vによって減圧された圧縮エアを取り出すことができる。以下、第1の取出口1a,1bを単に「取出口1」という。第2の取出口2a,2bを単に「取出口2」という。
【0025】
取出口1の近傍には、取出口圧力(取出口1から取り出される圧縮エアの圧力)を計測するための取出口圧センサ1Sが設けられている。この取出口圧センサ1Sは、例えば、減圧弁1Vの下流側であって、減圧弁1Vから取出口1に向かうエア流路の途中に設けられる。以下、取出口圧センサ1Sで計測した取出口1の圧力を、単に「取出口1圧力」という。
取出口2の近傍には、取出口圧力(取出口2から取り出される圧縮エアの圧力)を計測するための取出口圧センサ2Sが設けられている。この取出口圧センサ2Sは、例えば、減圧弁2Vの下流側であって、減圧弁2Vから取出口2に向かうエア流路の途中に設けられる。以下、取出口圧センサ2Sで計測した取出口2の圧力を、単に「取出口2圧力」という。
【0026】
操作パネル20は、取出口1圧力表示部21と、取出口2圧力表示部22と、タンク圧力表示部23と、エアコンプレッサの電源On/Offの操作時に用いる電源On/Offボタン25と、エアコンプレッサの自動On/Offの切り替え時に用いる自動On/Offボタン27と、上記の各部を制御するとともに、コントローラ30との間での情報の送受信などを担うパネルMCU29などを有している。
【0027】
操作パネル20が具備する取出口1圧力表示部21、取出口2圧力表示部22、タンク圧力表示部23、電源On/Offボタン25、自動On/Offボタン27は、ユーザが目視でき且つ操作できるように例えば図3に示すようなレイアウトで配置される。
【0028】
タンク圧力表示部23には、タンク圧センサ19で取得したタンク圧力を複数回移動平均処理したものを表示する。
取出口1圧力表示部21には、後述する所定の条件(条件1~4)を満たす時の取出口1圧力(すなわち取出口1設定値(Pext1_mva[最新]))を表示する。
取出口2圧力表示部22には、後述する所定の条件(条件1~4)を満たす時の取出口2圧力(すなわち取出口2設定値(Pext2_mva[最新]))を表示する。
【0029】
電源On/Offボタン25は、タンク圧力に応じたモータ制御(圧縮運転制御)を行う際、およびこの制御を停止する際に操作するボタンである。エアコンプレッサの電源On/Offボタン25を操作し、電源Onにセットすることで、タンク圧力に応じてモータ13の起動/停止を行うモードに移行する。
【0030】
エアコンプレッサの自動On/Offボタン27は、エアコンプレッサの運転制御モードを「自動On」モードと「自動Off」モードの間で切り替えるためのボタンである。
「自動Off」の運転制御モードでは、モータ停止の判断基準となる停止圧力を予め定めた一つの固定値(例えば4.5Mpa)に設定し、また、モータ再起動の判断の基準となる再起動圧力を予め定めた一つの固定値(例えば4.1Mpa)に設定し、これらの固定の基準値を使って圧縮運転の停止・再開の制御を行う。
「自動On」の運転制御モードでは、モータ停止の判断基準となる停止圧力(第1の停止圧力,第2の停止圧力)を可変とし、また、モータ再起動の判断基準となる再起動圧力を可変とし、これらの可変の基準値を使って圧縮運転の停止・再開の制御を行う。
【0031】
なお、操作パネル20は、上述したボタンに加えて、モータ回転数や圧力範囲切替えなどを変更する複数のスイッチを備えて、これらのスイッチによる設定情報を通信によりコントローラへ伝え、その情報に従って圧縮機が動くようにしてもよい。
また、操作パネル20は、電源On/Offの状態を表示する手段を操作パネルに備えて、現在の電源On/Off状態を表示してもよい。
また、操作パネル20は、自動On/Offの状態を表示する手段を操作パネルに備えて、自動On/Off状態を表示してもよい。
また、操作パネル20は、タンク圧力表示部23や取出口圧力表示部21,22に加えて、電源電圧表示部や,各種異常要因を知らせるためのランプなどを備えてもよい。この場合には、各々の表示情報をコントローラから通信により操作パネルへ伝え、その情報に従って各々の表示を行う。
【0032】
コントローラ30は、操作パネル20やモータ13の制御などを担うほか、モータ13のロータの回転位置の変化を検出するホールセンサ15からの信号に基づいてモータ13の回転数を検出する。また、本実施形態において、コントローラ30は、タンク容量を推定するためのタンク容量推定手段としても機能する。タンク容量推定手段による具体的処理(タンク容量推定処理)については後述する。
【0033】
このコントローラ30は、PFC回路31(力率改善回路)と、INV回路33(インバータ回路)と、これらの回路31,33を制御するコントローラMCU35を有している。PFC回路31は、商用電源41からの交流電圧を直流電圧に変換する。INV回路33は、PFC回路31で変換された直流電圧から所望の交流電圧を生成し、モータ13を駆動する。モータ13が駆動することで圧縮機11が圧縮運転を行う。コントローラMCU35は、前記回路31,33を制御し、センサ15,19,1S,2Sからの信号を受信し、操作パネル20のパネルMCU29との間で送受信を行う。
【0034】
(エアコンプレッサにおける圧縮運転制御の概要)
次に、上述した構成を具備するエアコンプレッサにおける圧縮運転制御の概要について説明する。
【0035】
本実施形態のエアコンプレッサが具備するコントローラは、タンク圧力が停止圧力に達したときに圧縮機を駆動するモータを停止させ、タンク圧力が再起動圧力に達したときにモータを再起動させる制御を行う。モータが停止することで圧縮機の圧縮運転が停止し、モータが再起動することで圧縮運転が再開する。
【0036】
この制御において、コントローラは、エアコンプレッサの電源が投入されている間、タンク圧センサを介してタンク圧力を監視し続け、圧縮機が停止している(モータが停止している)ときには、タンク圧力が再起動圧力に達したか否かの判断を行う。一方、圧縮機が運転している(モータが駆動している)ときには、タンク圧力が停止圧力に達したか否かの判断を行う。
【0037】
圧縮機が停止しているときには、コントローラは、モータを再起動させる判断基準(閾値)となる再起動圧力を、タンク圧力の変化率に基づいて変化させる。この再起動圧力はエア消費量に比例(連動)することから、以下「再起動圧力(消費連動)」という。再起動圧力(消費連動)は、タンク圧力および取出口圧力に基づいて設定される。
【0038】
一方、圧縮機が運転しているときには、コントローラは、モータを停止させる判断基準(閾値)となる停止圧力の候補として、2つの停止圧力(第1の停止圧力,第2の停止圧力)を設定し、いずれか高い方を有効停止圧力(有効な閾値として実際に機能する停止圧力)として採用する。すなわち、タンク圧力が採用された有効停止圧力に達したときに、コントローラがモータを停止させる。
【0039】
本実施形態では、圧縮機が運転している間、第1の停止圧力を、タンク圧力の変化率に基づいて変化させる。この第1の停止圧力はエア消費量に比例(連動)することから、以下、第1の停止圧力を「停止圧力(消費連動)」という。停止圧力(消費連動)は、タンク圧力および取出口圧力に基づいて設定される。
【0040】
また、本実施形態では、第2の停止圧力を、再起動圧力(消費連動)に基づいて算出する。この第2の停止圧力は、最小限度の圧力充填(最小充填)を行うのに必要と考えられる停止圧力値であることから、以下、第2の停止圧力を「停止圧力(最小充填)」という。停止圧力(最小充填)は、タンク圧力および取出口圧力に基づいて設定される。
【0041】
(再起動圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理)
次に、図4A図4B図4Cに基づいて、再起動圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理について説明する。図4A図4B図4Cは、圧縮機停止状態(モータ停止状態)における、再起動圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理を示すチャート図である。
図4Aは、エア工具によるエア消費量が一定(エア消費量が中程度)の場合を想定したチャート図である。
図4Bは、図4Aの続きを示すチャート図であって、エア工具によるエア消費量が途中で変動(エア消費量が中程度から少程度に減少)し、それに起因して再起動圧力(消費連動)が途中で低下した場合を想定したチャート図である。
図4Cは、図4Bの続きを示すチャート図であって、低下し続けるタンク圧力が再起動圧力(消費連動)に達してモータを実際に再起動させる場合を想定したチャート図である。
【0042】
図4A図4B図4Cに示す想定事例では、コントローラが次の(1)~(5)の処理を順に実施して、休止している圧縮運転を再開するか否かを判断する。なお、以下説明する(1)~(5)の処理は、図4A図4B図4Cに示す(1)~(5)の処理に対応している。
【0043】
(1)タンク圧力の圧力値を計測する。
この処理では、タンク圧センサからの信号に基づいて、タンク圧力の圧力値を計測する。
【0044】
(2)圧力の変化率(傾き)を計算する。
この処理では、今回と前回計測したタンク圧力の圧力値に基づいて、タンク圧力の変化率(傾き)を計算する。なお、図4A図4B図4Cに示す事例では、圧縮運転が停止した状態でエア工具によって圧縮エアが消費されているため、タンク圧力は経時的に低下している。
【0045】
(3)最小備蓄圧力を算出する。
この処理では、上記(2)で算出したタンク圧力の変化率(傾き)と、最小備蓄時間に基づいて、最小備蓄圧力を計算する。最小備蓄時間とは、予め定められた所定の時間(例えば20秒程度)であり、現在の作業量(変化率)を確保する最小時間を意味する。最小備蓄圧力は次の演算式1で求めることができる。
演算式1: 最小備蓄圧力 = -タンク圧力の変化率 × 最小備蓄時間
【0046】
(4)最小備蓄圧力を再起動圧力(消費連動)へ換算する。
この処理では、上記(3)で求めた最小備蓄圧力と、再起動圧力の下限圧力に基づいて、再起動圧力(消費連動)を計算する。再起動圧力(消費連動)は次の演算式2で求めることができる。なお、再起動圧力の下限圧力は、取出口圧力に基づいて設定される(詳細は後述)。
演算式2: 再起動圧力(消費連動) = 最小備蓄圧力 + 再起動圧力の下限圧力
なお、上記の演算式1とこの演算結果を用いる演算式2から分かるとおり、本実施形態では再起動圧力(消費連動)を算出するための基礎データとして、タンク圧力および取出口圧力を用いている。すなわち、本実施形態においてコントローラは、タンク圧力および取出口圧力に基づいて、再起動圧力(消費連動)を設定する。
【0047】
(5)圧縮機の運転を再開するか否かの判断
この処理では、タンク圧力と再起動圧力(消費連動)を比較し、「タンク圧力>再起動圧力(消費連動)」の場合には、圧縮機の運転再開はまだ不要と判断し、モータを停止したまま(圧縮機を停止したまま)とする。図4A,4Bに示す事例では、「タンク圧力>再起動圧力(消費連動)」であるため、モータは停止したまま(圧縮機は停止したまま)である。
一方、「タンク圧力≦起動圧力(消費連動)」の場合には、圧縮機の運転再開が必要と判断し、モータを再起動して圧縮機の運転を再開する。図4Cに示す事例では、「タンク圧力≦起動圧力(消費連動)」を満たした時点で、モータが駆動(圧縮機が運転再開)する。
【0048】
(停止圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理)
次に、図5A図5B図5Cに基づいて、第1の停止圧力である「停止圧力(消費連動)」を利用した圧縮運転制御の原理について説明する。図5A図5B図5Cは、圧縮機運転時(モータ駆動時)における、停止圧力(消費連動)を利用した圧縮運転制御の原理を示すチャート図である。
図5Aは、エア工具によるエア消費量が一定(エア消費量が中程度)の場合を想定したチャート図である。
図5Bは、図5Aの続きを示すチャート図であって、エア工具によるエア消費量が途中で変動(エア消費量が中程度から少程度に減少)し、それに起因して停止圧力(消費連動)が途中で低下した場合を想定したチャート図である。
図5Cは、図5Bの続きを示すチャート図であって、上昇し続けるタンク圧力が停止圧力(消費連動)に達してモータを実際に停止させる場合を想定したチャート図である。
【0049】
図5A図5B図5Cに示す想定事例では、コントローラが次の(1)~(5)の処理を順に実施して、圧縮運転を休止するか否かを判断する。なお、以下説明する(1)~(5)の処理は、図5A図5B図5Cに示す(1)~(5)の処理に対応している。
【0050】
(1)タンク圧力の圧力値を計測する。
この処理では、タンク圧センサからの信号に基づいて、タンク圧力の圧力値を計測する。
【0051】
(2-1)圧力の変化率(傾き)を計算する。
この処理では、今回と前回計測したタンク圧力の圧力値に基づいて、タンク圧力の変化率(傾き)を計算する。なお、図5A図5B図5Cに示す事例では、エア工具によって圧縮エアが消費されている状況下で、圧縮運転によって圧縮エアが連続して供給されており、タンク圧力は経時的に上昇している。
【0052】
(2-2)エア消費分圧力変化率(傾き)を計算する。
この処理では、上記(2)で算出したタンク圧力の変化率(傾き)と、エア供給分圧力変化率に基づいて、エア消費分圧力変化率を計算する。なお、タンク圧力とモータ回転数と圧縮機によるエア供給能力との間には相関関係があり、タンク圧力とモータの回転数が分かればそのときの圧縮機のエア供給能力を導き出すことができるので、それに基づいてエア供給分圧力変化率を求めることができる。エア消費分圧力変化率は次の演算式1で求めることができる。
演算式1: エア消費分圧力変化率 = タンク圧力の変化率 - エア供給分圧力変化率
【0053】
(3)最大備蓄圧力を算出する。
この処理では、上記(2―2)で求めたエア消費分圧力変化率と、最大備蓄時間に基づいて、最大備蓄圧力を計算する。最大備蓄時間とは、予め定められた所定の時間(例えば60秒程度)であり、圧縮機を止めた場合に現在の作業量(変化率)を確保しておく最大時間を意味する。最大備蓄圧力は次の演算式2で求めることができる。
演算式2: 最大備蓄圧力 = -エア消費分圧力変化率 × 最大備蓄時間
【0054】
(4)最大備蓄圧力を停止圧力(消費連動)へ換算する。
この処理では、上記(3)で求めた最大備蓄圧力と、停止圧力の下限圧力に基づいて、停止圧力(消費連動)を計算する。停止圧力(消費連動)は次の演算式で求めることができる。なお、停止圧力の下限圧力は、取出口圧力に基づいて設定される(詳細は後述)。
演算式3: 停止圧力(消費連動) = 最大備蓄圧力 + 停止圧力の下限圧力
なお、上記の演算式1,2とこれらの演算結果を用いる演算式3から分かるとおり、本実施形態では停止圧力(消費連動)を算出するための基礎データとして、タンク圧力および取出口圧力を用いている。すなわち、本実施形態においてコントローラは、タンク圧力および取出口圧力に基づいて、停止圧力(消費連動)を設定する。
【0055】
(5)圧縮機の運転を停止するか否かの判断
この処理では、タンク圧力と停止圧力(消費連動)を比較し、「タンク圧力<停止圧力(消費連動)」の場合には、圧縮機の運転継続が必要と判断し、モータを駆動したまま(圧縮機を運転したまま)とする。図5A,5Bに示す事例では、「タンク圧力<停止圧力(消費連動)」であるため、モータは駆動したまま(圧縮機は運転したまま)である。
一方、「タンク圧力≧停止圧力(消費連動)」の場合には、圧縮機の停止が必要と判断し、モータを停止して圧縮機の運転を停止する。図5Cに示す事例では、「タンク圧力≧停止圧力(消費連動)」を満たした時点で、モータが停止(圧縮機が停止)する。
【0056】
(「停止圧力(消費連動)」と「停止圧力(最小充填)」を併用した圧縮運転制御の概要)
上述した「停止圧力(消費連動)」は、圧縮運転制御において、エア消費量の時間平均の大小に応じて変動する可変の閾値である。この「停止圧力(消費連動)」を利用した圧縮運転制御は、図5A図5B図5Cに見られるような、エア消費量に時間的偏りがほとんどない連続的なエア消費に対しては有効である。
しかしながら、エア消費量に時間的偏りがみられる、緩急のあるエア消費に対しては、エア不足に陥り、エアコンプレッサの使用感を著しく損ねるといった問題が生じる。すなわち、圧縮運転の停止制御の閾値を、前述した「停止圧力(消費連動)」だけに頼る場合、エア消費がある区間では、停止圧力(消費連動)は高くなるが、圧力がなかなか上がらない。また、エア消費がない区間では、停止圧力(消費連動)は低くなり、タンクに圧縮エアを十分蓄えることができない。したがって、エア消費量の時間平均が大きい場合でも停止圧力は上がらず、エア不足に陥るといった、エアコンプレッサの使用感を著しく損ねるといった問題が生じる。
【0057】
上述したような、エア消費量に時間的偏りがある場合にエア不足に陥りエアコンプレッサの使用感を損ねるといった問題を解決するためには、圧縮機がひとたび起動したら、その時の圧力(起動圧力)から最小限度の圧力充填(最小充填)を行う必要がある。
【0058】
そこで、本実施形態では、停止圧力として、第1の停止圧力である「停止圧力(消費連動)」と、第2の停止圧力である「停止圧力(最小充填)」の、2つの概念を導入し、高い方の圧力を有効停止圧力(有効な閾値として実際に機能する停止圧力)として採用する。「停止圧力(最小充填)」は、圧縮機が再起動した時の圧力(再起動圧力)を基準に導き出され、最小限度の圧力充填(最小充填)を行うのに必要と考えられる停止圧力値である。
【0059】
なお、「停止圧力(最小充填)」は、固定値ではなく、エア消費の緩急の度合に応じて(すなわちエア消費の時間平均の度合に応じて)変動する可変値である。この「停止圧力(最小充填)」を求めるにあたって、本実施形態では、下限圧力までの余裕度を計るための余剰圧力判定基準と不足圧力判定基準を設け、これらの基準に基づいて、停止圧力(最小充填)の値を運転/停止のサイクルで最適化する。
【0060】
以下、「再起動圧力(消費連動)」、「停止圧力(消費連動)」、「停止圧力(最小充填)」を用いた圧縮運転制御の原理について、図6に基づいて説明する。図6は、「再起動圧力(消費連動)」,「停止圧力(消費連動)」,「停止圧力(最小充填)」を用いた圧縮運転制御の原理を示すチャート図であって、圧縮機が停止と運転再開を繰り返す様子を示している。
【0061】
図6の(1)~(6)に示す、圧縮機の停止中および運転中における主な処理について順に説明する。
【0062】
(1)停止中
圧縮機が停止している状態では、エア消費に伴ってタンク圧力が低下する。そして、タンク圧力が再起動圧力(消費連動)に到達すると、コントローラはモータを起動させ、圧縮運転を再開する。
【0063】
(2)運転中[区間n-1]
区間n-1における運転中の主な処理は以下のとおりである。
(2-1)停止圧力(最小充填)の変化
前回の区間n-2での運転中におけるタンク圧力の余裕度に応じて、停止圧力(最小充填)を増やす又は減らす。なお、図6に示す実施形態では、前回の区間n-2の運転について図示を省略しているので、今回の区間n-1の運転における停止圧力(最小充填)の設定についてはその具体的説明を省略する。
(2-2)停止圧力(消費連動)の変化
刻々と変化するエア消費の度合いに応じて、停止圧力(消費連動)を変化させる。停止圧力(消費連動)を変化させる原理については、図5に基づいて前述したとおりである。
(2-3)タンク圧力の余裕度の計測
予め定めた余剰圧力判定基準と不足圧力判定基準に基づいて、取出口圧力をベースとする下限圧力までのタンク圧力の余裕度を計る。なお、下限圧力の設定方法については後述する。
余剰圧力判定基準は、予め定められる所定の基準値であって、現在の運転区間(区間n-1)おける余剰圧力の発生を判定し、余剰度合いを計測するために用いられる判定基準である。計測した余剰度合いは、次の運転区間(区間n)おける停止圧力(最小充填)を導き出すのに用いられる。
不足圧力判定基準は、予め定められる所定の基準値であって、現在の運転区間における圧力不足の発生を判定し、圧力不足に陥った時間(不足時間)を計測するために用いられる判定基準である。計測した不足時間は、次の運転区間(区間n)における停止圧力(最小充填)を導き出すのに用いられる。
現在の運転区間(区間n-1)での運転では、タンク圧力が不足圧力判定基準を下回っており、この区間で圧力不足が生じていると判定する。このような場合、次の運転区間(区間n)における最小充填圧力[n]を、現在の運転区間(区間n-1)における不足時間(圧力不足に陥った時間)に応じて増やす。最小充填圧力とは、停止圧力(最小充填)を導き出すのに用いられる圧力値である。後述するとおり、次の運転区間(区間n)の再起動圧力に対し最小充填圧力を加算することで、停止圧力(最小充填)を導き出すことができる。
(2-4)圧縮運転停止の判断
今回の区間n-1での運転中において、停止圧力(消費連動)と停止圧力(最小充填)のうち、高い方の圧力を有効停止圧力(有効な閾値として実際に機能する停止圧力)として採用する。
上昇するタンク圧力が停止圧力(消費連動)に達した時点では、「停止圧力(消費連動)<停止圧力(最小充填)」のため、このときの停止圧力(消費連動)は有効停止圧力として採用されない。すなわち、この時点では、停止圧力(消費連動)は有効停止圧力として機能せず、圧縮運転は停止しない。
そして、タンク圧力がさらに上昇し、停止圧力(最小充填)に達した時点では、「停止圧力(消費連動)<停止圧力(最小充填)」のため、停止圧力(最小充填)を有効停止圧力として採用し、この時点で圧縮運転を停止する(モータを停止する)。
【0064】
(3)停止中
圧縮機が停止している状態では、エア消費に伴ってタンク圧力が低下する。そして、タンク圧力が再起動圧力(消費連動)に到達すると、コントローラはモータを起動させ、圧縮運転を再開する。
なお、圧縮機停止中の間、再起動圧力(消費連動)はエア消費の度合いに応じて変化するが、再起動圧力は、予め設定される下限圧力(取出口圧力ベース)を下回ることはない。再起動圧力の下限値である下限圧力については後述する。
【0065】
(4)運転中[区間n]
区間nにおける運転中の主な処理は以下のとおりである。
(4-1)停止圧力(最小充填)の変化
前回の区間n-1での運転中において、タンク圧力が不足圧力判定基準を下回ったため、今回の区間nでの運転では、最小充填圧力[n]を不足時間(圧力不足に陥った時間)に応じて増やす。そして、不足時間に応じて増やした最小充填圧力[n]と、今回の区間nでの再起動圧力に基づいて、停止圧力(最小充填)を計算する。なお前述したとおり、再起動圧力は、タンク圧力および取出口圧力に基づいて導き出される。停止圧力(最小充填)は次の演算式で求めることができる。
演算式: 停止圧力(最小充填) = 最小充填圧力 + 今回の区間での再起動圧力
上述したとおり、本実施形態では、停止圧力(最小充填)を算出するための基礎データとして、タンク圧力および取出口圧力を用いている。すなわち、本実施形態においてコントローラは、タンク圧力および取出口圧力に基づいて、停止圧力(最小充填)を設定する。
(4-2)停止圧力(消費連動)の変化
刻々と変化するエア消費の度合いに応じて、停止圧力(消費連動)を変化させる。
(4-3)タンク圧力の余裕度の計測
予め定めた余剰圧力判定基準と不足圧力判定基準に基づいて、下限圧力までのタンク圧力の余裕度を計る。
現在の運転区間(区間n)での運転では、タンク圧力の最小値が余剰圧力判定基準を上回っており、この区間で余剰圧力が生じていると判定する。このような場合、次の運転区間(区間n+1)における最小充填圧力[n+1]を、現在の運転区間(区間n)における余剰圧力に応じて減らす。
(4-4)圧縮運転停止の判断
今回の区間nでの運転中において、停止圧力(消費連動)と停止圧力(最小充填)のうち、高い方の圧力を有効停止圧力(有効な閾値として実際に機能する停止圧力)として採用する。
上昇するタンク圧力が停止圧力(消費連動)に達した時点では、「停止圧力(消費連動)<停止圧力(最小充填)」のため、このときの停止圧力(消費連動)は有効停止圧力として採用されない。すなわち、この時点では、停止圧力(消費連動)は有効停止圧力として機能せず、圧縮運転は停止しない。
そして、タンク圧力がさらに上昇し、停止圧力(最小充填)に達した時点では、「停止圧力(消費連動)<停止圧力(最小充填)」のため、停止圧力(最小充填)を有効停止圧力として採用し、この時点で圧縮運転を停止する(モータを停止する)。
【0066】
(5)停止中
圧縮機が停止している状態では、エア消費に伴ってタンク圧力が低下する。そして、タンク圧力が再起動圧力(消費連動)に到達すると、コントローラはモータを起動させ、圧縮運転を再開する。
なお、圧縮機停止中の間、再起動圧力(消費連動)はエア消費の度合いに応じて変化するが、再起動圧力は、予め設定される下限圧力(取出口圧力ベース)を下回ることはない。
【0067】
(6)運転中[区間n+1]
区間n+1における運転中の主な処理(図示する範囲内の処理)は以下のとおりである。
(6-1)停止圧力(最小充填)の変化
前回の区間nでの運転中において、タンク圧力の最小値が余剰圧力判定基準を上回ったため、今回の区間n+1での運転では、最小充填圧力[n+1]を余剰圧力に応じて減らす。そして、不足時間に応じて減らした最小充填圧力[n+1]と、今回の区間n+1での再起動圧力に基づいて、停止圧力(最小充填)を計算する。停止圧力(最小充填)は次の演算式で求めることができる。
演算式: 停止圧力(最小充填) = 最小充填圧力 + 今回の区間での再起動圧力
上記の演算式から分かるとおり、本実施形態では、停止圧力(最小充填)を算出するための基礎データとして、タンク圧力および取出口圧力を用いている。すなわち、本実施形態においてコントローラは、タンク圧力および取出口圧力に基づいて、停止圧力(最小充填)を設定する。
(6-2)停止圧力(消費連動)の変化
エア消費の度合いに応じて、停止圧力(消費連動)を変化させる。
【0068】
(エアコンプレッサにおける具体的な圧縮運転制御と取出口圧力表示値の最適化)
次に、図6に図示する圧縮運転制御について、図12図18図20図22に示すフローチャートに基づいて具体的に説明する。エアコンプレッサの構成については図2を参照する。図12は、エアコンプレッサで実施する圧縮運転制御の処理の流れを示すフローチャートであり、図13図18図20図22はサブルーチンを示すフローチャートである。
【0069】
はじめに、初期化処理を行う(図12のS11)。
この処理では、以下の処理に必要な変数や状態の初期値をコントローラ30が設定・取得する。
【0070】
次に、操作パネル送受信処理を行う(S13)。
この処理では、操作パネル20とコントローラ30との間で情報の送受信を行う。具体的には、ユーザが操作パネル20に対し行った操作情報(電源On/Off,自動On/Offの操作情報)や、操作パネル20への表示内容(タンク圧力,取出口1設定値,取出口2設定値)の受け渡しを行う。
【0071】
操作パネル20とコントローラ30との間で行う情報の送受信では、受信バッファと送信バッファを用意する。例えば、コントローラ30は、操作パネル20の操作情報(電源On/Off,自動On/Offの操作情報)を受信によって受信バッファに保存し、また、送信バッファに保存された操作パネル用の表示情報(タンク圧力,取出口1設定値,取出口2設定値)を操作パネル20へ送信する。
【0072】
次に、制御周期経過の判断を行う(S15)。
この判断処理では、ステップS17以降の制御を行うタイミングが来るまで一定期間待機し(S15:No)、所定の待期期間が経過したときにステップS17以降の制御を開始する(S15:Yes)。この判断処理での待期期間は各種圧力値の取得周期を考慮して、例えば100msに設定する。なお、コントローラMCUの負担を減らすため、この待期期間(制御周期)を各種圧力値の取得周期の正数分の1とする(例えば200ms)処理構造にしてもよい。
【0073】
次に、操作情報取得処理を行う(S17)。
この処理では、コントローラ30が受信バッファを参照して電源On/Off,自動On/Offの操作情報を取得する。
【0074】
次に、圧力値取得処理を行う(S19)。
この処理では、コントローラ30が、タンク圧センサ19からタンク圧力を取得し、取出口圧センサ1Sから取出口1圧力を取得し、取出口圧センサ2Sから取出口2圧力を取得する。取得した各圧力値のデータは、操作パネル表示用のベースデータとして使用されるとともに、取出口設定値の取得や自動On時の演算処理にも使用される。なお、各圧力センサ1S,2S,19からの圧力値取得においては、圧力センサ出力電圧をAD変換してコントローラMCU35に取り込んだ値を圧力値として取得してもよく、あるいは、計算しやすい値に変換した値を圧力値として取得してもよい。
【0075】
次に、表示用圧力値演算処理を行う(S21)。
この処理では、コントローラ30が、圧力値取得処理(S19)で取得したタンク圧力のデータを表示用に複数回移動平均をして、送信バッファに保存する。送信バッファに保存された演算処理後のタンク圧力のデータは、コントローラ30から操作パネル20へ送信され、タンク圧力表示部23に表示される。
【0076】
なお、取出口圧力表示部21,22に表示する取出口圧力については、後述する取出口設定値取得処理(図14のS207)を経て認定・更新された取出口1設定値,取出口2設定値を、取出口圧力表示部21,22での表示用のデータとして用いる。すなわち、本実施形態では、取出口圧センサ1S,2Sの計測値である取出口1圧力,取出口2圧力をそのまま取出口圧力表示部21,22に表示するのではなく、所定の条件(後述する条件1~4)を満たす時の取出口圧力を、取出口圧力表示部21,22での表示値として認定し、認定された圧力値を取出口圧力表示部21,22に表示する。
【0077】
次に、電源Onに設定されているか否かの判断を行う(S23)。
電源Offと判断した場合には(S23:No)、再びステップS13~S21の処理を繰り返す。一方、電源Onと判断した場合には(S23:Yes)、次の処理(S25)へと進む。
【0078】
次に、圧力/圧力変化率取得処理を行う(S25)。
この処理では、圧力値取得処理(S19)で取得したタンク圧力,取出口1圧力,取出口2圧力の各データに基づいて、タンク圧力変化率,取出口1圧力変化率,取出口2圧力変化率を取得する処理を行う。
【0079】
以下、図12のステップS25の圧力/圧力変化率取得処理の具体的処理について、図13に基づいて説明する。図13は、図12の圧力/圧力変化率取得処理(S25)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0080】
圧力/圧力変化率取得処理のサブルーチンでは、はじめに、タンク圧力LPF演算(Ptank_lpf)を行う(S101)。
エア工具使用時のタンク圧の変化はミクロ的にはステップ状になるので、それをスロープ状になまらせてから変化率を算出する。そこで、タンク圧力LPF演算では、「圧力値取得処理」(図12のS19)で取得したタンク圧力データにLPF処理をする(出力:Ptank_lpf)。圧力単位は[MPa]とする。例えば、ステップ的な変化をなまらすために時定数(例えば5sec)を大きくし、メモリの節約のため無限インパルス応答のLPFを使用する。
【0081】
次に、タンク圧力変化率演算(dPtank_lpf)を行う(S103)。
この変化率は、後述する再起動圧力取得処理(S31)および停止圧力取得処理(S33)で使用される。
この処理では、タンク圧力LPF演算(S101)で取得したPtank_lpfの前回と今回更新値と制御周期とから圧力の変化率を演算する(出力:dPtank_lpf)。演算式は次のとおりである。変化率単位は例えば[MPa/sec]とする。
演算式: (今回Ptank_lpf-前回Ptank_lpf)÷制御周期
【0082】
次に、タンク圧力移動平均演算(Ptank_mva[n])を行う(S104)。
この移動平均値は、後述する取出口設定値取得処理(S207)で使用される。
この処理では、コントローラ30が圧力値取得処理(図12のS19)で取得したタンク圧力のデータに対して移動平均処理(例えば10制御周期分=1sec)をする。圧力単位は[MPa]とする。
【0083】
次に、取出口1圧力移動平均演算(Pext1_mva[n])を行う(S105)。
この移動平均値は、後述する取出口設定値取得処理(S207)で使用される。
この処理では、コントローラ30が圧力値取得処理(図12のS19)で取得した取出口1圧力のデータに対して移動平均処理(例えば10制御周期分=1sec)をする。圧力単位は[MPa]とする。また、後の変化率演算処理や取出口設定値取得処理のために、過去の移動平均値(例えば過去40制御周期(4sec)分)をバッファに保存しておく。
【0084】
次に、取出口1圧力変化率演算(dPext1_mva[n])を行う(S107)。
この変化率は、後述する取出口設定値取得処理(S207)で使用される。
この処理では、取出口1圧力移動平均演算(S105)で取得したPext1_mvaの10制御周期前の値と今回更新値と制御周期とから圧力の変化率を演算する(出力:dPext1_mva[n])。演算式は次のとおりである。変化率単位は例えば[MPa/sec]とする。
演算式: (Pext1_mva[n]-Pext1_[n-10])÷(制御周期×10))
また、後の取出口設定値取得処理のために、過去の取出口1圧力変化率(例えば過去40制御周期(4sec)分)をバッファに保存しておく。
【0085】
次に、取出口2圧力移動平均演算(Pext2_mva[n])を行う(S109)。
この移動平均値は、後述する取出口設定値取得処理(S207)で使用される。
この処理では、コントローラ30が圧力値取得処理(図12のS19)で取得した取出口2圧力のデータに対して移動平均処理(例えば10制御周期分=1sec)をする。圧力単位は[MPa]とする。また、後の変化率演算処理や取出口設定値取得処理のために、過去の移動平均値(例えば過去40制御周期(4sec)分)をバッファに保存しておく。
【0086】
次に、取出口2圧力変化率演算(dPext2_mva[n])を行う(S111)。
この変化率は、後述する取出口設定値取得処理(S207)で使用される。
この処理では、取出口2圧力移動平均演算(S109)で取得したPext2_mvaの10制御周期前の値と今回更新値と制御周期とから圧力の変化率を演算する(出力:dPext2_mva[n])。演算式は次のとおりである。変化率単位は例えば[MPa/sec]とする。
演算式: (Pext2_mva[n]-Pext2_[n-10])÷(制御周期×10))
また、後の取出口設定値取得処理のために、過去の取出口2圧力変化率(例えば過去40制御周期(4sec)分)をバッファに保存しておく。
【0087】
以上で図13に示す圧力/圧力変化率取得処理のサブルーチンを終了する。なお、本実施形態では、圧力値演算,変化率演算においてLPF処理や移動平均処理を入れているが、適切な時定数を備えたLPF回路を各圧力センサ1S,2S,19とMCUコントローラ35の間に挿入する構造にすることで、これらの処理を入れなくてもよい。
【0088】
次に、タンク圧力の制御範囲取得処理を行う(図12のS27)。
以下、図12のステップS27のタンク圧力の制御範囲取得処理の具体的処理について、図14図16に基づいて説明する。
図14は、図12のタンク圧力の制御範囲取得処理(S27)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図15は、図14の取出口設定値取得処理(S207)のサブルーチンを示すフローチャートである。
図16は、図14の圧力範囲取得処理(S209)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0089】
タンク圧力の制御範囲取得処理のサブルーチンでは、はじめに、制御モードが自動Onに設定されているか否かの判断を行う(図14のS201)。制御モードの自動On/Offの切り替えは、操作パネル20の自動On/Offボタン27の操作によって行われる。
【0090】
自動Offと判断した場合には(S201:No)、モータ停止の判断基準となるタンク圧力の閾値(停止圧力)を、予め定めた固定値(例えば4.5Mpa)に設定する(S203)。また、モータ再起動の判断の基準となるタンク圧力の閾値(再起動圧力)を、予め定めた固定値(例えば4.1Mpa)に設定する(S203)。
【0091】
一方、自動Onと判断した場合には(S201:Yes)、モータ停止の判断基準となるタンク圧力の閾値(停止圧力)を可変とし、その上限を予め定めた上限値(例えば4.5Mpa)に設定する(S205)。また、モータ再起動の判断基準となるタンク圧力の閾値(再起動圧力)を可変とし、その上限を予め定めた上限値(例えば4.1Mpa)に設定する(S205)。
【0092】
なお、本実施形態では、自動Offの場合の停止圧力および再起動圧力を、自動Onの場合の停止圧力上限および再起動圧力上限と同じ圧力値に設定しているが、前者と後者を必ずしも同じ圧力値に設定する必要はない。すなわち、自動Offの場合の停止圧力および再起動圧力を、自動Onの場合の停止圧力上限および再起動圧力上限と異なる圧力値に設定してもよい。
【0093】
次に、取出口設定値取得処理を行う(S207)。
当該処理について、図15に基づいて具体的に説明する。
図15は、図14の取出口設定値取得処理(S207)のサブルーチンを示すフローチャートである。「取出口設定値」とは、エアコンプレッサにおける各種情報処理(取出口圧力表示部21,22での圧力表示の最適化や、再起動圧力や停止圧力の下限値の決定)に用いられる圧力値であって、後述する条件1~4のすべてを満たすときの取出口圧力の値である。
【0094】
エアコンプレッサの電源投入時、各取出口設定値、全体の取出口設定値(後述する取出口代表圧)は、暫定的に所定の値(例えば2.7MPa)に設定される。この設定処理は、初期化処理(図12のS11)において行われる。
【0095】
そして、エアコンプレッサの電源投入後は、取出口1圧力、取出口2圧力のそれぞれについて、次の条件1~4を満たすか否かを判断する。条件1~4のすべてを満たす場合には、エア工具が使用されておらず且つ取出口圧力が安定しているとみなして、そのときの取出口圧力を取出口設定値として確定する。
(条件1)取出口圧力がタンク圧力より一定値以下であること。
(条件2)所定時間にわたって取出口圧力の値が一定幅内であること。
(条件3)所定時間にわたって圧力変化率が0近傍であること。
(条件4)モータ停止状態(圧縮運転停止状態)であって取出口圧力が安定している時に、タンク圧変化率が0MPa/sec以上であること。
【0096】
以下、条件1~4のそれぞれについて具体的に説明する。
【0097】
(条件1)取出口圧力がタンク圧力より一定値以下であること。
減圧弁の二次圧である取出口圧力は、タンク圧力以上に上がることはないので(機械的な誤動作などの特殊ケースを除く)、次式で示す条件「取出口圧力がタンク圧力より一定値以下」を満たさない場合には、そのときの取出口圧力は(仮に取出口における圧力値,圧力変化値が安定していても)、取出口設定値として採用しない。ここでいう「一定値」とは、予め定めた所定の値である。
タンク圧力 - 取出口圧力 ≧ 一定値(例えば0.05MPa)
【0098】
条件1について、図7に示す具体例を挙げて説明する。図7は、条件1で判別する内容を例示するイメージ図である。図7に示す区間a-g(a点からg点に及ぶ区間)において、タンク圧力(実際には移動平均値(Ptank_mva[n])は、圧縮エアの充填や消費に伴って変動している。なお、図7において、取出口圧力の実線は、取出口における実際の圧力値(実際には移動平均値(Pext1_mva[n]ないしはPext2_mva[n]))の推移を示しており、破線は採用された取出口設定値(Pext1_mva[最新]ないしはPext2_mva[最新])の推移を示している。
【0099】
図7に示す全区間のうち、区間a-bでは、タンク圧力と常圧用の取出口1圧力(減圧弁1Vの二次側である取出口1の圧力)がほぼ同じ値で同時に上昇し続けている。区間a-bでは、取出口1圧力は減圧弁1Vの設定圧力に至っておらず、この区間における取出口1圧力は条件1を満たさない。すなわち、区間a-bにおいて、取出口1圧力は不安定であると判断し、取出口1設定値として採用しない。このような場合、エアコンプレッサの取出口1圧力表示部21には、例えば0表示をしてもよく、あるいは、圧力値(実際にはPext1_mva[n])を点滅表示してもよい。その後b点に達すると、取出口1圧力が減圧弁1Vの設定圧力に達し、その後に取出口1圧力は条件1「タンク圧力 - 取出口圧力 ≧ 一定値(例えば0.05MPa)」を満たす。この条件1に加え、条件2~4を満たす場合には、取出口1圧力が安定していると判断して、このときの取出口1圧力を取出口1設定値(Pext1_mva[最新])として採用する。
【0100】
区間a-cでは、タンク圧力と高圧用の取出口2圧力(減圧弁2Vの二次側である取出口2の圧力)がほぼ同じ値で同時に上昇し続けている。区間a-cでは、取出口2圧力は減圧弁2Vの設定圧力に至っておらず、この区間における取出口2圧力は条件1を満たさない。すなわち、区間a-cにおいて、取出口2圧力は不安定であると判断し、取出口2設定値として採用しない。このような場合、エアコンプレッサの取出口2圧力表示部22には、例えば0表示をしてもよく、あるいは、圧力値(実際にはPext2_mva[n])を点滅表示してもよい。その後c点に達すると、取出口2圧力が減圧弁2Vの設定圧力に達し、その後に取出口2圧力は条件1「タンク圧力 - 取出口圧力 ≧ 一定値(例えば0.05MPa)」を満たす。この条件1に加え、条件2~4を満たす場合には、取出口2圧力が安定していると判断して、このときの取出口2圧力を取出口2設定値(Pext2_mva[最新])として採用する。
【0101】
d点を過ぎるとタンク圧力がエア消費に伴って一時的に低下し、区間e-fでは、タンク圧力が減圧弁2Vの設定圧力を下回り、その結果、取出口2圧力がタンク圧力とほぼ同じ値で変動する。したがって、区間e-fでは、条件1を満たさないので、このときの取出口2圧力は不安定であると判断し、取出口2設定値として採用しない。なお、条件1を満たさない区間e-fでは、取出口2設定値を更新しないのではなく、直近で採用された取出口2設定値を使い、一定周期毎に同じ値で更新する。
【0102】
図7から分かるように、実線で示す取出口1圧力,取出口2圧力(Pext1_mva[n]ないしはPext2_mva[n])には変動が見られ不安定であるのに対し、破線で示す取出口設定値(Pext1_mva[最新]ないしはPext2_mva[最新])は安定している。したがって、本実施形態によれば、取出口圧力表示部21,22での表示値が最適化され安定する。
【0103】
(条件2)所定時間にわたって取出口圧力の値が一定幅内であること。
エア工具が使用されたり、設定圧力の変更操作(減圧弁の圧力調整)がされた場合は、取出口の圧力が変化するので、そのような不安定なときの取出口圧力は、取出口設定値として採用しない。例えば、1sec移動平均圧力値(Pext1_mva[n]ないしはPext2_mva[n])が4sec間(40制御周期)で 0.04MPa(最大 - 最小)以下のバラツキに収まる場合には、条件2を満たすと判断してもよい。
【0104】
条件2について、図8に示す取出口2圧力を具体例として挙げて説明する。図8において、取出口圧力の実線は、取出口における実際の圧力値(Pext2_mva[n])の推移を示しており、破線は採用された取出口設定値(Pext2_mva[最新])の推移を示している。
【0105】
図8は、条件2で判別する内容をグラフ上側に、条件2では判別できない内容をグラフ下側に、それぞれ例示するイメージ図である。図8上側において実線で示す取出口2圧力は、高圧用の取出口2圧力(減圧弁2Vの二次側である取出口2圧力)を示している。また、図8において破線で示す複数の矩形枠(以下「判定枠」という)はそれぞれ条件2を視覚的に表現したものであり、判定枠の横幅が条件2の「所定時間」を視覚的に示しており、判定枠の縦幅が条件2の「一定幅」を視覚的に示している。なお、条件2「所定時間」とは予め定めた所定の時間であり、「一定幅」とは予め定めた所定の幅である。
【0106】
図8において、例えば区間aでは、エア工具によるエア消費によって取出口2圧力が一瞬低下している。このとき、所定時間(判定枠の横幅)の範囲内で、取出口2圧力の変動幅が一定幅(判定枠の縦幅)を超えている。したがって、このときの取出口2圧力は条件2を満たさないので、取出口2圧力が不安定であると判断し、取出口2設定値として採用しない。
区間bでは、取出口2圧力の変動は無く、所定時間(判定枠の横幅)の範囲内で、取出口2圧力の変動幅は一定幅(判定枠の縦幅)の範囲内に収まっている。したがって、このときの取出口2圧力は条件2を満たすので、他の条件1,3,4を同時に満たす場合には、取出口2圧力が安定していると判断して、取出口2設定値として採用する。
区間cでは、減圧弁の設定圧力が調整され取出口2圧力が徐々に低下し始めている。このとき、所定時間(判定枠の横幅)の範囲内で、取出口2圧力の変動幅は一定幅(判定枠の縦幅)を超えている。したがって、このときの取出口2圧力は条件2を満たさないので、取出口2圧力が不安定であると判断し、取出口2設定値として採用しない。
区間dでは、取出口2圧力が減圧弁2Vの設定圧力に到達し、その変動は僅かである。このとき、所定時間(判定枠の横幅)の範囲内で、取出口2圧力の変動幅は一定幅(判定枠の縦幅)の範囲内に収まっている。したがって、このときの取出口2圧力は条件2を満たすので、他の条件1,3,4を同時に満たす場合には、取出口2圧力が安定していると判断して、取出口2設定値として採用する。
なお、条件2を満たさない区間a,cでは、取出口2設定値を更新しないのではなく、直近で採用された取出口2設定値を使い、一定周期毎に同じ値で更新する。
【0107】
図8から分かるように、実線で示す取出口2圧力(Pext2_mva[n])には変動が見られ不安定であるのに対し、破線で示す取出口2設定値(Pext2_mva[最新])は安定している。したがって、本実施形態によれば、取出口2圧力表示部22での表示値が最適化され安定する。
【0108】
(条件3)所定時間にわたって圧力変化率が0近傍であること。
常圧用の減圧弁では、エア工具使用直後の取出口圧力の戻りが遅い場合があり、このような場合、条件2をすり抜けるおそれがある。そこで、条件2をすり抜ける場合(常圧用工具等を使用して使用直後の圧力戻りが遅くなるような場合)を除外するため、「所定時間にわたって圧力変化率が0近傍」の条件を満たさない場合には、そのときの取出口圧力は、取出口設定値として採用しない。ここでいう「所定時間」とは、予め定めた時間である。条件3を満たすか否かは、例えば「1sec移動平均圧力値による圧力変化率(dPext1_mva[n]ないしはdPext2_mva[n])の絶対値が4sec間(40制御周期) 0.04MPa/sec以下であるか否か」を基準に判断することができる。
【0109】
条件3について、図8下側に示す取出口1圧力を具体例として挙げて説明する。
図8の取出口1圧力のグラフに示すように、常圧用のエア工具を使用する場合、通常、工具使用よる工具内で抜けたエアを充填するのに、減圧弁前後の圧力差から最初はエア流量が多くてステップ的に取出口1圧力が下がるが、その後は圧力差に応じて減圧弁後の圧力(取出口圧力)は減圧弁設定圧力まで徐々に回復する。この後半の徐々に回復する圧力変化は、特に常圧の減圧弁では非常にゆっくりとした変化になる。条件3は、取出口圧力の変化率がこのようになる場合を除外する。
【0110】
図8において、例えば区間Aでは、エア工具によるエア消費によって取出口1圧力が一瞬低下している。このとき、所定時間(判定枠の横幅)の範囲内で、取出口1圧力の変動幅が一定幅(判定枠の縦幅)を超えている。したがって、区間Aにおける取出口1圧力は、条件2によって除外されるので、(条件3について判断するまでもなく)取出口1設定値として採用しない。
【0111】
一方、区間Bでは、取出口1圧力が減圧弁設定圧力まで徐々に回復する変化を満たせている。特に常圧用の減圧弁では非常にゆっくりとした変化になる。このように徐々に回復する圧力変化は、条件2の判定枠の範囲内に収まるため、取出口1圧力は条件2を満たしてしまう。しかしながら、区間Bにおける取出口1圧力は、条件3の「所定時間にわたって圧力変化率が0近傍」を満たさないため、不安定であると判断し、取出口1設定値として採用しない。
【0112】
図8から分かるように、実線で示す取出口1圧力(Pext1_mva[n])には変動が見られ不安定であるのに対し、破線で示す取出口1設定値(Pext1_mva[最新])は安定している。したがって、本実施形態によれば、取出口1圧力表示部21での表示値が最適化され安定する。
【0113】
(条件4)モータ停止状態(圧縮運転停止状態)であって取出口圧力が安定している時に、タンク圧変化率が0MPa/sec以上であること。
ダスターなどのエア工具を用いて連続して安定したエア放出を継続した場合には、取出口圧力が下がった状態で安定する。このように取出口圧力が一時的に下がった状態で安定する場合を除外するため、「タンク圧変化率が0MPa/sec以上」の条件を満たさない場合には、そのときの取出口圧力は(たとえ取出口圧力が安定していても)、取出口設定値として採用しない。
【0114】
なお、タンク圧力は実際には自然減等の要因により減少することが想定される。このようなタンク圧力の自然減等まで考慮に入れる場合には、条件4におけるタンク圧変化率の閾値を「0MPa/sec近辺のマイナス」に設定してもよい。
【0115】
条件4について、図9に示す常圧用の取出口1圧力を具体例として挙げて説明する。図9は、条件4で判別する内容を例示するイメージ図である。図9において、取出口圧力の実線は、取出口における実際の圧力値(Pext1_mva[n])の推移を示しており、破線は採用された取出口設定値(Pext1_mva[最新])の推移を示している。
【0116】
釘打ちなどのエア工具では、1打毎に(極短時間)取出口の圧力変化が起こるが、ダスターなどで連続して安定したエア消費が続けられると、図9に示すように取出口圧力が長時間(数秒以上の感覚)にわたって安定するので、このような場合は条件2,3をすり抜けてしまう。したがって、条件4により、タンク圧力からみてエア消費の有無を判断して、このような場合を除外する。
【0117】
図9は、ダスターを用いて連続して安定したエア放出を継続した場合を例示しているが、破線で示す判定枠の区間では、ダスターによるエア放出が安定した状態が継続しており、前述した条件2,3を満たしてしまう。しかしながら、この区間におけるタンク圧変化率は負であって、条件4の「タンク圧変化率が0MPa/sec以上」を満たさないため、取出口1設定値として採用しない。
【0118】
図9に示す想定事例は、タンク圧力が下がっていて取出口圧力が安定しているケースとして、例えばダスターが連続使用されているような状況を想定している。このような場合は、たとえ取出口圧力が安定していても、当該取出口圧力を取出口設定値として採用しない。減圧弁によって設定されている取出口圧力ではないためである。
また、条件4で除外可能なものは上述したケースに限定されず、例えばタンクないしは取出口に接続されたエアホースやエア工具から圧力が漏れている状況下で取出口圧力が安定しているケースも、条件4で除外することができる。このような状況は、たとえ取出口圧力が安定していても、異常状態と考えられるからである。
【0119】
図9から分かるように、実線で示す取出口1圧力(Pext1_mva[n])には変動が見られ不安定であるのに対し、破線で示す取出口1設定値(Pext1_mva[最新])は安定している。したがって、本実施形態によれば、取出口1圧力表示部21での表示値が最適化され安定する。
【0120】
なお、本実施形態では、条件4に「モータ停止状態(圧縮運転停止状態)」の要件を含んでいるが、仮にモータ駆動状態(圧縮運転中)の場合でも、圧縮機のエア供給量を正確に把握することが可能であれば、条件4で使うタンク圧変化率のしきい値(本実施形態では0MPa/sec)を正確に決めることができる。すなわち、圧縮機のエア供給量を正確に把握することが可能であれば、圧縮機の運転/停止にかかわらず、条件4で使うタンク圧変化率の正確なしきい値を決めることができる。
【0121】
上記の条件1~4をすべて満たすか否かについて、取出口1圧力、取出口2圧力のそれぞれについて判断する(図15のS311~S314,S321~S324)。
取出口1圧力について条件1~4がすべて満たされた場合には(S311~S314:Yes)、その時の取出口1圧力を、取出口1設定値として認定・更新する(S317)。そして、取出口圧力表示部21の表示値を、認定・更新された取出口1設定値に更新する。一方、取出口1圧力について、条件1~4のうち一つでも満たさない場合には(S311~S314のいずれか:No)、取出口圧力表示部21の表示値を更新しない。この場合_、取出口圧力表示部21の表示値は、直近で認定・更新された取出口1設定値を使い、一定周期毎に同じ値で更新する。
取出口2圧力について条件1~4がすべて満たされた場合には(S321~S324:Yes)、その時の取出口2圧力を、取出口2設定値として認定・更新する(S327)。そして、取出口圧力表示部22の表示値を、認定・更新された取出口2設定値に更新する。一方、取出口2圧力について、条件1~4のうち一つでも満たさない場合には(S321~S324のいずれか:No)、取出口圧力表示部22の表示値を更新しない。この場合_、取出口圧力表示部22の表示値は、直近で認定・更新された取出口2設定値を使い、一定周期毎に同じ値で更新する。
【0122】
なお、本実施形態では、取出口圧力を取出口設定値として採用するか否かの判断(図15のS311~S314,S321~S324)において、前述した条件1~4の四つの条件を用いているが、この判断において必要な条件は必ずしも前述した四条件に限定されるものではない。すなわち、条件1~4のいずれか1種、2種または3種だけを、取出口設定値として採用するか否かの判断において用いてもよい。また、条件1~4に対し更に別の条件を加えたものを、取出口設定値として採用するか否かの判断において用いてもよい。
また、各条件における閾値は、例えば高圧用の取出口と常圧用の取出口で別の閾値としてもよい。
【0123】
次に、認定・更新された取出口1設定値、取出口2設定値を比較する(S331)。そして、取出口1設定値,取出口2設定値の中で最大の圧力値を、エアコンプレッサの取出口代表圧として採用する。すなわち、「取出口1設定値≧取出口2設定値」となる場合には(S331:No)、取出口1設定値を、エアコンプレッサの取出口代表圧として採用する(S333)。一方、「取出口1設定値<取出口2設定値」となる場合には(S331:Yes)、取出口2設定値を、エアコンプレッサの取出口代表圧として採用する(S335)。
【0124】
このようにして採用された取出口代表圧、すなわち取出口1設定値、取出口2設定値の中で最大の圧力値を、下限圧力(図6のチャート図に記載の下限圧力を参照)として使用する。なお、取出口代表圧を、そのまま下限圧力として使用してもよく、あるいは、取出口代表圧に対し緩衝圧力(例えば0.1MPa程度のマージン)を加えた値を下限圧力として使用しもよい。
【0125】
なお、上述した実施形態では、取出口1設定値,取出口2設定値の中で最大の圧力値を、エアコンプレッサの取出口代表圧として採用し、この代表圧を下限圧力として使用しているが、取出口代表圧の決定方法はこれに限定されない。例えば、取出口1,取出口2のそれぞれについて取出口の使用/不使用を判別するセンサ等の判別手段を設け、一方の取出口だけが使用されている場合には、使用されている取出口の取出口設定値を代表圧として採用してもよい。
【0126】
次に、圧力範囲取得処理を行う(図14のS209)。
図16は、図14の圧力範囲取得処理(S209)のサブルーチンを示すフローチャートである。この圧力範囲取得処理では表1に示すように、圧縮運転制御のための圧力範囲として、再起動圧力の上限値と下限値、停止圧力の上限値と下限値を、それぞれ取得する。
【0127】
【表1】
【0128】
表1に示す上限値と下限値の設定原理はそれぞれ次のとおりである。
【0129】
図14のS201において前述したとおり、自動Onと判断した場合には(S201:Yes)、モータの停止判断の基準となるタンク圧力の閾値(停止圧力)を可変とし、その上限を予め定めた上限値(例えば4.5Mpa)に設定する(S205)。また、モータの再起動判断の基準となるタンク圧力の閾値(再起動圧力)を可変とし、その上限を予め定めた上限値(例えば4.1Mpa)に設定する(S205)。
【0130】
また、取出口設定値取得処理(S207)で取得した取出口設定値(取出口代表圧)に基づいて、再起動圧力下限(自動Onにおける再起動圧力の下限値)を算出する。この算出は次式で表すことができる。
再起動圧力下限=取出口設定値+緩衝圧力(例えば0.1MPa程度のマージン)
【0131】
また、算出した再起動圧力下限から、停止圧力下限(自動Onにおける停止圧力の下限値)を算出する。この算出は次式で表すことができる。
停止圧力下限=再起動圧力下限+緩衝圧力(例えば0.2MPa程度のマージン)
【0132】
以上で図14図16に示すタンク圧力の制御範囲取得処理のサブルーチンを終了する。
【0133】
次に、エア供給能力取得処理を行う(図12のS29)。
図12のエア供給能力取得処理(S29)のサブルーチンを図17に示す。また、図17のタンク容量推定処理(S501)のサブルーチンを図18に示す。
【0134】
エア供給能力演算処理(図17のS503)では、タンク容量,モータ回転数,タンク圧力から圧縮機のエア供給能力を算出する。本実施形態では、モータ回転数は、ホールセンサ15からの信号に基づいて検出することができる。タンク圧力は、タンク圧センサ19からの信号に基づいて検出することができる。タンク容量(タンク17のタンク容量)は予めエアコンプレッサに入力されているものではなく、コントローラ30(タンク容量推定手段)による推定処理によってタンク容量の推定を行う。
【0135】
そこで、本実施形態のエア供給能力取得処理では、はじめにタンク17のタンク容量を推定する処理を行い(図17のS501)、次いで、タンク容量の推定結果等を利用してエア供給能力を演算する処理を行う(図17のS503)。
【0136】
はじめに、タンク容量推定処理(図17のS501)におけるタンク容量推定の原理について説明する。
【0137】
圧縮機が同じという前提において、タンク容量が既知のエアコンプレッサと、タンク容量が未知のエアコンプレッサがある仮定する。かかる前提と仮定のもとでは、圧縮機を同一回転数で駆動していれば、同じタンク圧力下においては、次式で示す関係が成立する。なお、この出願では、エアコンプレッサを必要に応じて「機体」と略称する。
【0138】
未知の機体のタンク容量 × 未知の機体のタンク圧変化率
= 既知の機体のタンク容量 × 既知の機体のタンク圧変化率
※ タンク容量の単位は例えば[L]とする。
タンク圧変化率の単位は例えば[MPa/sec]とする。
【0139】
上記式は、圧縮機(のエア供給能力)が同じであれば、圧縮空気を溜める際のタンク圧力変化率は、タンク容量に反比例することを意味している。
【0140】
すなわち、未知の機体のタンク容量 = 既知の機体のタンク容量 × ( 既知の機体のタンク圧変化率 / 未知の機体のタンク圧変化率 ) となるので、既知の機体のタンク容量とタンク圧変化率の相関に係るベースデータを予め記憶していれば、未知の機体のタンク容量(または既知の機体のタンク容量との比)は、未知の機体のタンク圧変化率とベースデータから計算できる。
【0141】
そこで、本実施形態では、エアコンプレッサが実際に装備するタンク17のタンク容量が未知である(すなわち、エアコンプレッサが自己のタンク容量に係るデータを持っていない)ことを前提とし、上述した原理に基づいてタンク17のタンク容量(またはベースデータに係るタンク容量との比)の推定を行う。
【0142】
エアコンプレッサが予めベースデータとして取得しておく情報は、例えば図10に示すような相関データ(一次式)である。
図10に例示するベースデータは、
所定のタンク容量 Vt_base [L], 所定の圧縮機回転数 N_base [min-1] における
タンク圧 Pt_base [MPa] とタンク圧変化率 dPt_base [MPa/sec] の相関(一次式)
を示している。
【0143】
なお、ベースデータにおける「所定のタンク容量」とは、あらかじめ定めたタンク容量であり、その容量は特に限定されない。本実施形態では、ベースデータにおける「所定のタンク容量」の一例として16Lを採用している。
また、ベースデータにおける「所定の圧縮機回転数」とは、あらかじめ定めた圧縮機のモータ回転数であり、その回転数は特に限定されない。本実施形態では、ベースデータにおける「所定の圧縮機回転数」の一例として 2500min-1 を採用している。
また、図10に示すベースデータ(一次式)は一例であって、本発明で利用可能なベースデータはこれに限定されない。例えば一次式で近似できない場合は、タンク圧とタンク圧変化率の対比テーブルをベースデータとして利用することもできる。
【0144】
圧縮機が同じという条件下では、図10に示すような「タンク圧力-タンク圧力変化率」の相関(一次式)の係数および切片は、ベース(本実施形態では一例として、タンク容量 16L,回転数 2500min-1)に対し、タンク容量に反比例し、圧縮機回転数に比例する。
すなわち、現在のタンク圧力と圧縮機回転数を用いてベースデータ特性から16L機の場合のタンク圧変化率を求め、その値と現在のタンク圧変化率との比の逆数が、タンク容量比として求まる。
【0145】
次に、上述した原理に基づくタンク容量推定処理について、図18に基づいて具体的に説明する。図18は、図17のタンク容量推定処理(S501)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0146】
タンク容量推定処理では、はじめに仮タンク容量(比)を算出するための演算を行う(図18のS511)。仮タンク容量(比)の算出方法は次のとおりである。
なお、この出願において「タンク容量(比)」とは、タンク容量推定処理によって推定する「タンク容量」の値、または、「ベースデータに係るタンク容量と推定するタンク容量との比」の値を意味するものである。すなわち、この出願では、「推定するタンク容量」と「ベースデータに係るタンク容量と推定するタンク容量との比」の総称として、「タンク容量(比)」の用語を用いる。
また、この出願において、単に「ベースデータに係るタンク容量と推定するタンク容量との比」を指す場合には、「タンク容量比」の用語を用いる。
また、この出願において「仮タンク容量(比)」とは、タンク容量(比)の推定に用いる暫定値(仮の値)である。
【0147】
仮タンク容量(比)演算処理では、タンク圧力とタンク圧力変化率を取得する。
タンク圧力は、例えば、前述したタンク圧力LPF演算(図13のS101)で出力した値を用いることができる(出力:Ptank_lpf)。圧力単位は[MPa]とする。
タンク圧力変化率は、例えば、前述したタンク圧力変化率演算処理(図13のS103)で出力した値を用いることができる(出力:dPtank_lpf)。タンク圧力変化率の単位は例えば[MPa/sec]とする。
【0148】
また、仮タンク容量(比)演算処理では、モータ回転数を取得する。
モータ回転数は、ホールセンサ15からの信号に基づいて検出することができる(出力:Nmot)。検出したモータ回転数は、後述するエア供給能力演算処理(図17のS503)において用いる。また、検出したモータ回転数は、後述する圧縮機モータ駆動制御処理(図22のS805)においても用いることができる。
【0149】
さらに、仮タンク容量(比)演算処理では、現在のタンク圧変化率を、ベースデータの回転数(2500min-1)に合わせた値へ補正する。この補正処理は次式によって表すことができる。
dPtank_rate = dPtank_lpf * 2500 / Nmot
【0150】
次に、ベースデータ上でのエア供給能力(dPtank_base)を計算する。この計算処理は次式によって表すことができる。
dPtank_base = f(Ptank_lpf)
【0151】
次に、仮タンク容量(比)を計算する。この計算処理は次式によって表すことができる。
TankRate_new = dPtank_base / dPtank_rate
【0152】
上述した要領で、現在のタンク圧力・タンク圧力変化率・圧縮機回転数、およびベースデータ(一次式)から、仮タンク容量(比)を算出する。
【0153】
本実施形態では、上述した演算処理によって仮タンク容量(比)を時々刻々と算出する(図18のS511)。この演算処理によって算出した仮タンク容量(比)は暫定値であり、この値は以後の処理で「仮タンク容量(比)データ」として扱われる。
【0154】
上記演算処理によって得られた仮タンク容量(比)データは、コントローラ30のメモリに記憶される(図18のS513)。すなわち、暫定値である仮タンク容量(比)を時々刻々と算出し、算出するたびに、新たな仮タンク容量(比)データをコントローラ30のメモリに記憶する。
【0155】
そして、タンク容量(比)の暫定値である「仮タンク容量(比)データ」が複数集まって一定の記憶量に達したら、そのデータ分布(すなわち一群の仮タンク容量(比)データ)に基づいて正規のタンク容量(比)を決定する(図18のS515,S517)。このようにして決定した値は、タンク容量(比)の推定値として採用される。
【0156】
次に、タンク容量推定処理で利用する仮タンク容量(比)データの分布について説明する。
【0157】
圧縮機運転中(エア供給中)にエア漏れやエア消費があれば、タンク圧変化率は小さくなるが、大きくなることはない。すなわち、仮タンク容量(比)は、実際の値より大きくなることはあっても、原理的に小さく算出されることはない。
上記の理由から、暫定値である仮タンク容量(比)データの分布は、真のタンク容量(比)を中心にして、値の大きな方へ広がる分布となる。
したがって、仮タンク容量(比)のより小さいデータを選んで残すことにより、真のタンク容量(比)近傍のデータのみが残ることになる。
【0158】
次に、仮タンク容量(比)データの分布に基づくタンク容量(比)の決定処理(図18のS515,S517)について、図19A図19B図19Cに例示する具体例に基づいて説明する。以下、図19A図19B図19Cを、単に「図19」と略称する。
なお、以下の具体例では、「所定のタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータ」として、16Lのタンク容量についてのタンク圧力とその変化量の相関に係るベースデータ(図10参照)を用いる。このベースデータは、エアコンプレッサのコントローラ30がはじめから(工場出荷状態で)有しているデータである。
また、以下の具体例では、エアコンプレッサが具備するタンク17のタンク容量が11Lであるとする(ただし、コントローラ30から見て未知のタンク容量である)。
【0159】
このように16L機のベースデータを利用して11L機のタンク容量を推定する場合、真のタンク容量比は約0.69(11L÷16L)である。本実施形態のエアコンプレッサはタンク容量推定処理によって、真のタンク容量比に限りなく近い値を推定値として取得する。
【0160】
仮タンク容量(比)を時々刻々と算出する各々の演算(図18のS511)において、下記のように時系列に算出されものとする。各周期において、後述するデータ蓄積&ソート処理を実行する(図18のS513)。
なお、理論的には0.69を下まわる値は算出されることはないはずであるが、現実にはまれに発生するものとする(上記の周期3を参照)。
【0161】
上記を前提とする図19の具体例では、仮タンク容量(比)のデータ分布に基づくタンク容量(比)の推定を以下の流れで実行する。
【0162】
はじめに、図19(a)に示す初期状態にセットするために、次の事前準備を行う。
図19(a)に示すように、仮タンク容量(比)データの配列(DATA[0-4]:初期値最大値)と、各仮タンク容量(比)データの安定度データの配列(CNT[0-4]:初期値0)を準備する。
仮タンク容量(比)データの配列(DATA[0-4])の初期値は、前述した仮タンク容量(比)の算出において出るはずのない値(大きく外れた値)とする。図19(a)に示す具体例では、一例として初期値を8としている。
なお、図19に示す具体例では各配列の個数を5個としているが、配列個数はこれに限定されるものではなく、各配列の個数を2個~4個としてもよく、あるいは、6個以上としてもよい。
【0163】
次に、図19(b)~(j)に示す各周期において、データ蓄積&ソート処理を実行する(図18のS513)。なお、図示する各周期において、それぞれの上段はデータ蓄積処理を示しており、下段はソート処理(並べ換え処理)を示している。
【0164】
各周期におけるデータ蓄積&ソート処理(図18のS513)は、予め定めた所定のルールに従って実行する。データ蓄積&ソート処理のルールは例えば次のとおりである。
【0165】
図19(b)~(j)の各周期の上段に示すデータ蓄積処理では、新しく算出された仮タンク容量(比)データを、タンク容量(比)データ配列の最後尾((DATA[4])に付け加える。
図19(b)~(j)の各周期の各下段に示すソート処理では、新しく算出された仮タンク容量(比)を含めてタンク容量(比)データ配列を昇順に並べ換える。具体的には、新しい仮タンク容量(比)データから、データの先頭へ向かって、昇順のバブルソートを行う。なお、仮タンク容量(比)データの配列(DATA[0-4])と、安定度データの配列(CNT[0-4])は、セットで並び替える。
その際に、仮タンク容量(比)データの入れ替わりがあれば、該当する2つのデータの安定度データ(安定度を示すカウント値)は0リセットする。例えば図19(d)に示す周期3では、CNT[0]について、安定度データを0リセットしている。
一方、仮タンク容量(比)データの入れ替わりがなければ、その2つのデータより先頭にあるデータの安定度データは各々+1する。例えば図19(c)に示す周期2では、CNT[0]について、安定度データを+1している。
【0166】
上述したルールに基づくデータ蓄積&ソート処理(図18のS513)を、新たな仮タンク容量(比)データを算出するたびに実行し、仮タンク容量(比)の分布が安定するまで繰り返す。仮タンク容量(比)の分布が安定したか否かの判断(図18のS515)は、例えば次のような基準に基づいて行う。
【0167】
安定度データの先頭より所定個数(具体例3)のデータが所定回数(具体例5)以上となったら、仮タンク容量(比)の分布が安定したと判断する(図18のS515:Yes)。
本実施形態では、図19(j)の周期9に例示するように、安定度データの先頭から数えて3個のデータが安定度5以上となったら、仮タンク容量(比)の分布が安定したと判断する。
なお、仮タンク容量(比)の分布安定の判断基準として参照する安定度データの個数は、特に限定されるものではなく、例えば安定度データの先頭(CNT[0])から数えて1個または2個のデータだけを参照してもよく、あるいは、安定度データの先頭から数えて4個以上のデータを参照してもよい。
また、タンク容量(比)の分布安定の判断基準として参照する安定度のカウントは、特に限定されるものではなく、例えば安定度1~4のいずれかで安定したと判断してもよく、あるいは、安定度6以上で安定したと判断してもよい。
【0168】
一方、安定したと判断できなければタンク容量(比)推定処理を終了する(図18のS515:No)。
【0169】
そして、仮タンク容量(比)データの分布が安定した(図18のS515:Yes)と判断した場合、図19(k)に例示するように、仮タンク容量(比)は、所定個数(例えば先頭から数えて3個)の内、先頭のDATA[0]をノイズとして分布している成分とみなす。そして、残りのDATA[1]とDATA[2]の平均値を、タンク容量(比)の推定値として採用する。採用されたタンク容量(比)は正規の値として扱われる。
【0170】
続いて、図19(m)に例示するように、仮タンク容量(比)データと安定度データの配列を初期化する。これにより、仮タンク容量(比)データの配列(DATA[0-4])と、各仮タンク容量(比)データの安定度データの配列(CNT[0-4])は、再び図19(a)に示す初期状態にリセットされる。
【0171】
上述した要領で、タンク容量推定処理を繰り返し実行して、タンク容量(比)の推定値を繰り返し取得する。
【0172】
なお、図19に示す実施形態では、仮タンク容量(比)として「ベースデータに係るタンク容量と推定するタンク容量との比」を繰り返し算出し、その仮データの分布に基づいてタンク容量比の推定を行っているが、(タンク容量比ではなく)タンク容量そのものを仮データとして直接算出し、その仮データの分布に基づいてタンク容量の推定を行ってもよい。
すなわち、タンク容量(比)の推定に用いるデータ分布に係る各データは、「ベースデータに係るタンク容量と推定するタンク容量との比」でもよく、あるいは、「推定するタンク容量」でもよい。
【0173】
また、予めタンク容量の種類(例えば16L,11L,7L)が予めわかっている場合は、推定値として算出したタンク容量(比)が一番近いタンク容量(例えば16L,11L,7Lのいずれか)を最終推定結果としてもよい。
【0174】
また、タンク容量推定処理によって推定した結果はコントローラ30のメモリに記憶して、次回からは推定を不要としてもよいし、または記憶値から所定以上のズレがあった場合のみ更新するようにしてもよい。
【0175】
また、タンク容量推定処理によって得た推定値が、決定されたタンク容量(比)より大きい場合は、エアコンプレッサの性能劣化やエア漏れなどの不具合の可能性が考えられるので、エアコンプレッサの不具合を想定してタンク容量(比)を計測してもよい。
【0176】
また、タンク容量推定処理によって得た推定値が、決定されたタンク容量(比)より小さい場合は、タンク内の水によって実質的なタンク容量の縮小を招いている可能性があるので、タンク容量推定処理の結果に応じて、タンク内の水抜きが必要となることなどを報知するようにしてもよい。
【0177】
以上で図18に示すタンク容量推定処理のサブルーチンを終了する。
【0178】
続いて、上述したタンク容量推定処理(図17のS501、図18)で得られたタンク容量の推定値を利用して、エア供給能力を演算する処理を行う(図17のS503)。以下、図11に基づいて、エア供給能力演算処理について具体的に説明する。図11はエア供給能力演算処理の一例を示すイメージ図である。
【0179】
図11に示す事例は、コントローラが予めベースデータ(モータ2500min-1,タンク容量16L製品における汲上時のタンク圧力-タンク圧力変化率の相関データ)を有していることを前提とする。図11において、実線は、エア供給能力の算出に用いるベースデータのエア供給能力の変化を示している。破線は、エアコンプレッサが実際に具備するエア供給能力の変化を示している。エア供給能力はタンク圧力変化率[MPa/sec]で表される。なお、本実施形態では、ベースデータの一例として、16Lのタンクを具備する場合のエアコンプレッサ(16L製品)のデータをベースデータとしている。また、本実施形態のエアコンプレッサの一例として、11L製品のエアコンプレッサを想定している。
【0180】
圧縮機が同じでタンク容量だけが異なる2つのエアコンプレッサでは、図11に示すように、エア供給の限界圧力は同じである。そして、あるタンク圧力でのエア供給能力は、回転数に比例し、タンク容量に反比例する。
【0181】
したがって、コントローラが予めベースデータ(モータ2500min-1,タンク容量16L製品における汲上時のタンク圧力-タンク圧力変化率の相関データ)を有していれば、このベースデータを基準に、推定したタンク容量とモータ回転数で補正することで、エアコンプレッサの現在のエア供給能力を導き出すことができる。
【0182】
次に、再起動圧力取得処理を行う(図12のS31)。
この処理では、再起動圧力(消費連動)を取得するための演算処理を行う(図20のS601)。図20は、図12の再起動圧力取得処理(S31)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0183】
再起動圧力(消費連動)を取得するための演算処理では、圧縮機停止中、常時、タンク圧変化率,最小備蓄時間,再起動圧力下限に基づいて、再起動圧力(消費連動)を常時演算する。この演算処理は、次式によって表すことができる(図4のチャート図も併せて参照)。なお、前述したとおり再起動圧力には上限と下限が定められる(表1参照)。
再起動圧力(消費連動) = -タンク圧変化率 × 最小備蓄時間 + 再起動圧力下限
【0184】
次に、停止圧力取得処理を行う(図12のS33)。
この処理では、停止圧力(消費連動)と停止圧力(最小充填)をそれぞれ取得するための演算処理を行う(図21のS701~S705)。図21は、図12の停止圧力取得処理(S33)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0185】
停止圧力(消費連動)を取得するための演算処理では(図21のS701)、圧縮機起動中、常時、エア供給能力,タンク圧変化率,最小備蓄時間,再起動圧力下限に基づいて、停止圧力(消費連動)を演算する。この演算は次式によって表すことができる(図5のチャート図も併せて参照)。なお、前述したとおり停止圧力には上限と下限が定められる(表1参照)。
停止圧力(消費連動)=
-(タンク圧変化率 - エア供給能力)×最大備蓄時間 + 再起動圧力下限
【0186】
停止圧力(最小充填)を取得するための演算処理では(図21のS703)、次の(1)~(4)の処理を順に実行する。なお、図6のチャート図も併せて参照のこと。
【0187】
(1) 圧縮機の運転中、常時、余剰圧力判定基準、不足圧力判定基準、再起動圧力下限を算出する(余剰圧力判定基準≧不足圧力判定基準≧再起動圧力下限)。
【0188】
余剰圧力判定基準と不足圧力判定基準は、例えば次式に基づいて決定される。
余剰圧力判定基準 = 再起動圧力下限 + 0.1MPa
不足圧力判定基準 = 再起動圧力下限 + 0.05MPa
【0189】
(2) 圧縮機の運転中、停止圧力(最小充填)の更新を行うとともに、不足時間(圧力不足に陥った時間)とタンク圧力最小値(最小充填圧力の算出用)の更新を行う。
【0190】
「停止圧力(最小充填)」は、次式に基づいて算出することができる。
停止圧力(最小充填)=
最小充填圧力+再起動圧力(今回運転を開始した際の再起動圧力)
【0191】
「タンク圧力最小値」は、今回運転を開始した時からのタンク圧力を監視して更新する。つまり、今回運転中における最小のタンク圧力の値をタンク圧力最小値として採用する。
【0192】
「不足時間」は、圧縮機の運転中においてタンク圧力が不足圧力判定基準を下回った時間をカウントすることで取得することができる。
【0193】
(3) 圧縮機の運転停止時に、最小充填圧力の更新を行う。
最小充填圧力の初期値は暫定的に例えば1.0MPaに設定する。
最小充填圧力の更新処理では、はじめに、「余裕圧=タンク圧力最小値-余剰判定基準圧」の式に基づいて余裕圧を算出する。
そして、「余裕圧>0」となる場合には、次式(3-1)に基づいて停止圧力(最小充填)を算出する。
一方、余裕圧>0ではなく「不足時間>0」となる場合には、次式(3-2)に基づいて停止圧力(最小充填)を算出する。
【0194】
(3-1) if 余裕圧>0
最小充填圧力(新)=
最小充填圧力(旧)-余裕圧×所定の減圧ゲイン(暫定下限0.2MPa)
(3-2) elseif 不足時間>0
最小充填圧力(新)=
最小充填圧力(旧)+不足時間×所定の増圧ゲイン(暫定上限1.0MPa)
【0195】
「最小充填圧力(新)」とは、今回の運転区間における停止圧力(最小充填)の算出に用いられる最小充填圧力である。
「最小充填圧力(旧)」とは、前回の運転区間における停止圧力(最小充填)の算出に用いた最小充填圧力である。
【0196】
このように、本実施形態では、最小充填圧力を前回の運転期間中のタンク圧力の余裕度に応じて増減させ、これを今回の圧縮運転における停止圧力(最小充填)に反映させる。なお、本発明はこれに限定されるものではなく、最小充填圧力を今回の運転期間中のタンク圧力の余裕度に応じて増減させ、これを今回の圧縮運転における停止圧力(最小充填)に反映させてもよい。これにより、より早くエア不足を回避することが可能となる。
【0197】
(4) 圧縮機の運転開始時に、不足時間およびタンク圧力最小値をリセットして、タンク圧力最小値を現在のタンク圧力に設定し、不足時間を0にする。
【0198】
以上で停止圧力(最小充填)を取得するための演算処理(図21のS703)を終了する。
【0199】
次に、有効停止圧力決定処理を行う(図21のS705)。
この処理では、第1の停止圧力である「停止圧力(消費連動)」と、第2の停止圧力である「停止圧力(最小充填)」のうち、高い方の圧力を有効停止圧力(有効な閾値として実際に機能する停止圧力)として採用するための演算を行う。この演算は次式に基づいて行う。
有効停止圧力= Max(停止圧力(消費連動),停止圧力(最小充填))
【0200】
以上で図21に示す停止圧力取得処理のサブルーチンを終了する。
【0201】
次に、PFC/圧縮機制御処理を行う(図12のS35)。
以下、図22に基づいて説明する。図22は、図12のPFC/圧縮機制御処理(S35)のサブルーチンを示すフローチャートである。
【0202】
PFC/圧縮機制御処理では、はじめに、圧縮機運転/停止判断処理を行う(図22のS801)。この処理では、圧縮機停止中に、タンク圧力と再起動圧力(消費連動)を比較し、「タンク圧力<再起動圧力(消費連動)」の場合には、圧縮機を運転すると判断する。また、圧縮機運転中に、タンク圧力と有効停止圧力を比較し、「タンク圧力≧有効停止圧力」の場合には、圧縮機を停止すると判断する。
【0203】
次に、PFC-ON/OFF制御処理を行う(S803)。
この処理では、圧縮機11を駆動するモータ13の制御を行う。すなわち、圧縮機運転/停止判断処理(S801)において「圧縮機を運転する」と判断した場合には、PFC制御をOnにする。一方、「圧縮機を停止」と判断した場合には、PFC制御をOffにする。
【0204】
次に、圧縮機モータ駆動制御処理を行う(S805)。
この処理ではCS信号に基づいてモータ13を駆動する。
【0205】
以上で、PFC/圧縮機制御処理(図12のS35)が終了する。
【符号の説明】
【0206】
1a…第1の取出口、1b…第1の取出口、2a…第2の取出口、2b…第2の取出口、1D…圧力調整つまみ、2D…圧力調整つまみ、1S…第1の取出口圧センサ、2S…第2の取出口圧センサ、1V…第1の減圧弁、2V…第2の減圧弁、11…圧縮機、13…モータ、15…ホールセンサ、17…タンク、19…タンク圧センサ、20…操作パネル、21…取出口1圧力表示部、22…取出口2圧力表示部、23…タンク圧力表示部、25…電源On/Offボタン、27…自動On/Offボタン、29…パネルMCU、30…コントローラ、31…PFC回路、33…INV回路、35…コントローラMCU、41…商用電源
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図20
図21
図22