(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】クロロプレン重合体ラテックス及びその製造方法、並びに該クロロプレン重合体ラテックスを用いた水性接着剤
(51)【国際特許分類】
C08L 11/02 20060101AFI20250402BHJP
C08F 2/38 20060101ALI20250402BHJP
C08F 36/00 20060101ALI20250402BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250402BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20250402BHJP
C09J 111/02 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C08L11/02
C08F2/38
C08F36/00 510
C09J11/04
C09J11/06
C09J111/02
(21)【出願番号】P 2022563725
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041700
(87)【国際公開番号】W WO2022107693
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020192785
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 駿広
(72)【発明者】
【氏名】安藤 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】上野 夢実
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/133191(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008509(WO,A1)
【文献】特開2000-319452(JP,A)
【文献】特開2013-173938(JP,A)
【文献】特開2001-019923(JP,A)
【文献】特開2019-143002(JP,A)
【文献】特開平08-027448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08F 2/00- 2/60
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤と、クロロプレン重合体を含むクロロプレン重合体ラテックスであって、
前記クロロプレン重合体ラテックスの固形分中のトルエン不溶分であるゲル分の含有率が20質量%以下であり、かつ
前記クロロプレン重合体ラテックスの固形分中のトルエン可溶分であるゾル分の重量平均分子量が
125万以上であり、
前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、アミノ酸を1~20質量部、可塑剤を0.1~30質量部含む水性接着剤としたとき、
厚さ20mm×長さ50mm×幅50mmであり、密度30kg/m
3のウレタンフォーム表面上へ、接着剤を70g/m
2となるようにスプレー塗布し、10秒のオープンタイムの後、前記ウレタンフォーム同士を貼り合せ、張り合わせた前記ウレタンフォームの合計の厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持したのち、解放し10秒間放置後に接着面と垂直方向に引張り試験を行ったときの、初期接着強度が5.5N/cm
2以上であることを特徴とする、クロロプレン重合体ラテックス。
【請求項2】
請求項1に記載のクロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が0.1~10.0質量部であることを特徴とするクロロプレン重合体ラテックス。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のクロロプレン重合体ラテックスを含む水性接着剤。
【請求項4】
前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、アミノ酸を1~20質量部含む、請求項3に記載の水性接着剤。
【請求項5】
前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、可塑剤を0.1~30質量部含む、請求項3または4のいずれかに記載の水性接着剤。
【請求項6】
厚さ20mm×長さ50mm×幅50mmであり、密度30kg/m
3のウレタンフォーム表面上へ、接着剤を70g/m
2となるようにスプレー塗布し、10秒のオープンタイムの後、前記ウレタンフォーム同士を貼り合せ、張り合わせた前記ウレタンフォームの合計の厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持したのち、解放し10秒間放置後に接着面と垂直方向に引張り試験を行ったときの、初期接着強度が5.5N/cm
2以上である請求項3~5のいずれか一項に記載の水性接着剤。
【請求項7】
被着体が発泡体を対象とする請求項3~6のいずれか一項に記載の水性接着剤。
【請求項8】
クロロプレン単量体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、連鎖移動剤を0.005~0.1質量部添加し、20℃より低い温度でクロロプレン単量体の重合転化率50~90%まで重合する、請求項1または2に記載のクロロプレン重合体ラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤として有効なクロロプレン重合体ラテックスおよびその製造方法、並びに該クロロプレン重合体ラテックスを用いた水性接着剤に関する。さらに詳しくは特に初期接着力、特に湿潤状態での接着強度に優れるクロロプレン重合体ラテックスおよびその製造方法並びに該クロロプレン重合体ラテックスを用いた水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロプレン重合体は、幅広い被着体に対して低圧着で高度の接着力が得られるため、溶剤系コンタクト接着剤やグラフト接着剤などの接着剤用途で好適に使用されている。しかしながら、溶剤系接着剤は、作業環境における引火の危険や、その予防ために講じられる特別な排気・回収設備コストに加えて、環境汚染や人体の健康に対する配慮から揮発性有機化合物(VOC)規制や溶剤規制が年々厳しくなっている。この規制への対応のために溶剤を排除すべく、クロロプレン重合体ラテックスを使用した水性接着剤の開発が盛んであるが、水性接着剤は、従来の溶剤系接着剤に比較して接着力が低いという課題がある。
【0003】
そこで、接着剤の接着力、特に、初期の接着力を向上させるための技術の一つとして2液型接着剤の検討がおこなわれており、例えば、主剤として特定のクロロプレン重合体ラテックス組成物にアクリル系ラテックス又はSBR系ラテックスとアニオン系界面活性剤を特定量配合した組成物を用い、硬化剤として多価金属塩を用いた2液型接着剤(特許文献1、2参照)が知られており、ポットライフと初期接着のバランスを調整して使用する。
【0004】
特開2007-332207号公報(特許文献3参照)にはクロロプレン重合体ラテックス組成物と、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩と、pH調整剤とを含有した水性接着剤が開示されている。
国際公開2016/133190号、国際公開2016/133191号(特許文献4,5参照)などにはクロロプレン単独重合体ラテックスとクロロプレン共重合体を含有するクロロプレン共重合体ラテックスまたはアクリル系重合体を含有するアクリル系重合体ラテックスのブレンドよりなる1液型水系接着剤が開示されている。
また、国際公開2008/026671号(特許文献6参照)には特定のクロロプレン重合体ラテックス組成物に特定の受酸剤、特定の酸化防止剤を含むことを特徴とする水性接着剤が開示されている。
これらの公報の実施例に従い作製された水系接着剤は塗布後に乾燥させてから貼り合わせることで接着強度を発現する。初期接着力、特に湿潤状態における接着性能が十分とは言えず、この改良が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭56-59874号公報
【文献】特開平9-188860号公報
【文献】特開2007-332207号公報
【文献】国際公開2016/133190号
【文献】国際公開2016/133191号
【文献】国際公開2008/026671号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた初期接着力、特に湿潤状態における優れた接着力を有する水性接着剤となる、水性接着剤用途に好適なクロロプレン重合体ラテックス、及びこれを用いた水性接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、その固形分が、特定の量のゲル分を有し、かつ、その固形分のゾル分の重量平均分子量が特定の数値範囲であるクロロプレン重合体ラテックスを用いることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤と、クロロプレン重合体を含むクロロプレン重合体ラテックスであって、前記クロロプレン重合体ラテックスの固形分中のトルエン不溶分であるゲル分の含有率が20質量%以下であり、かつ、前記クロロプレン重合体ラテックスの固形分中のトルエン可溶分であるゾル分の重量平均分子量が100万以上であることを特徴とする、クロロプレン重合体ラテックスである。
【0009】
好ましくは、クロロプレン重合体ラテックスは、前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が0.1~10.0質量部であることを特徴とする。
【0010】
本発明の別の観点によれば、前記のクロロプレン重合体ラテックスを含む水性接着剤が提供される。
好ましくは、水性接着剤は、前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、アミノ酸を1~20質量部含む。
好ましくは、水性接着剤は、前記クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、可塑剤を0.1~30質量部含む。
好ましくは、水性接着剤は、厚さ20mm×長さ50mm×幅50mmであり、密度30kg/m3のウレタンフォーム表面上へ、接着剤を70g/m2となるようにスプレー塗布し、10秒のオープンタイムの後、前記ウレタンフォーム同士を貼り合せ、張り合わせた前記ウレタンフォームの合計の厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持したのち、解放し10秒間放置後に接着面と垂直方向に引張り試験を行ったときの、初期接着強度が5.5N/cm2以上である。
好ましくは、被着体が発泡体を対象とする。
【0011】
本発明のさらに別の観点によれば、クロロプレン単量体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、連鎖移動剤を0.005~0.1質量部添加し、20℃より低い温度でクロロプレン単量体の重合転化率50~90%まで重合する、前記クロロプレン重合体ラテックスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン重合体が本来有する速い結晶化速度を保持し、初期接着力、特に湿潤状態における接着力を改善しているため、優れた初期接着強度の求められる用途に好適な接着剤として広く使用することが出来る。特にポリウレタンフォームの接着に使用されるスプレータイプの接着剤として好適に用いられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
1.クロロプレン重合体ラテックス
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤と、クロロプレン重合体を含む。本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン単量体を、または、クロロプレン単量体と共重合可能な単量体とクロロプレン単量体とを、乳化剤の存在下で乳化重合することで得ることができるものであり、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤と、クロロプレン重合体を主要な成分として含み、水等の溶媒を含むことができ、その他乳化重合時に用いる添加剤等を含むことができる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、その固形分を100質量%とした時、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤およびクロロプレン重合体との合計を90質量%以上含むものとでき、92質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体は、クロロプレン単量体を、または、クロロプレン単量体と共重合可能な単量体とクロロプレン単量体とを、乳化剤の存在下で乳化重合することで得ることができる。本発明におけるクロロプレン重合体は、2-クロロ-1,3-ブタジエン(以下クロロプレン単量体と記す)の単独重合体、または、クロロプレン単量体と共重合可能な他の単量体とクロロプレン単量体との共重合体であり、他の単量体としては、1-クロロ-1,3-ブタジエン、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、硫黄、アクリル酸及びそのエステル類、メタクリル酸及びそのエステル類などを挙げることができ、他の単量体として、これらを2種以上併用してもよい。
【0016】
クロロプレン重合体が、クロロプレン単量体と共重合可能な他の単量体とクロロプレン単量体との共重合体である場合、クロロプレン重合体は、クロロプレン重合体全体を100質量部とした時、クロロプレン単量体に由来する構造単位を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。クロロプレン重合体は、クロロプレン単量体の単独重合体とすることもできる。
【0017】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン重合体ラテックス全体に含まれる固形分を100質量%としたとき、その固形分中のゲル分の含有率が20質量%以下であり、かつ固形分中のゾル分の重量平均分子量が100万以上である。
【0018】
本発明におけるクロロプレン重合体ラテックスの固形分のゲル分とは、クロロプレン重合体ラテックスの固形分のうちのトルエン溶媒に不溶な成分をいい、ゾル分とはクロロプレン重合体ラテックスの固形分中のトルエン溶媒に可溶な成分をいう。
ゲル分の含有量は以下のように算出することができる。まず、クロロプレン重合体ラテックスを、凍結乾燥後、精秤してA(g)とする。これを、23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6%に調製)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲルを分離する。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤してBとする。ゲル分の含有率は下式に従って算出できる。
ゲル分含有率=B/A×100(%)
また、ゾル分の重量平均分子量は、上記の分離により得られたゾル分について、GPC測定を行うことにより求めることができる。ここで、分子量はポリスチレン換算で求めることができる。
【0019】
本発明における優れた初期接着力の発現は、クロロプレン重合体ラテックスが分子運動性に優れたゾル分を多量に含むことによる。このため、接着界面におけるクロロプレン重合体分子鎖の融合が速やかに起こり、接着強度が瞬時に発現し、優れた初期接着力を発現することが可能となる。クロロプレン重合体ラテックスのゲル分の含有率が20質量%を越えると、この初期接着力が低下するため好ましくない。本発明におけるクロロプレン重合体ラテックスは、その固形分のゲル分の含有率が20質量%以下である。より好ましくは、10質量%以下が望ましい。クロロプレン重合体ラテックスの固形分のゲル分の含有率は、例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0質量%とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン重合体ラテックスはゲル分を含まないものとすることもできる。
【0020】
また本発明においては、ゾル分、即ちクロロプレン重合体ラテックスの固形分のトルエン溶媒可溶成分の重量平均分子量が重要な役割を果たし、本発明におけるクロロプレン重合体ラテックスの固形分のゾルの重量平均分子量は100万以上である。ゾル分の重量平均分子量が100万以上であることによって、クロロプレン重合体の分子鎖の絡み合いが起きやすく、接着力が向上する。また、生産性の観点から、ゾル分の重量平均分子量が250万以下であることが好ましい。接着物性、生産性の観点から、ゾル分の重量平均分子量のより好ましい範囲は、110万超、250万以下であり、好ましくは120万以上200万以下、さらにより好ましくは125万超、200万以下である。ゾルの重量平均分子量は、例えば、100万、105万、110万、115万、120万、125万、130万、135万、140万、145万、150万、160万、170万、180万、190万、200万、210万、220万、230万、240万、250万であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤を含む。すなわち、本発明の一実施形態において、乳化重合に用いる乳化剤は、ロジン酸、又は、そのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上を使用することが好ましい。乳化剤として、ロジン酸又は、そのアルカリ金属塩を用いると、クロロプレン重合体ラテックス組成物に機械的な刺激が加わった場合に容易にその乳化安定性が低下する。このため、クロロプレン重合体ラテックス組成物を接着剤として用いた場合に優れた初期接着強度を発現させることができる。
【0022】
乳化重合時に用いる乳化剤として最も好ましいのはロジン酸であり、ロジン酸としては、ウッドロジン酸、ガムロジン酸、トール油ロジン酸、又はこれらを不均化した不均化ロジン酸、またはこれらのアルカリ金属塩の何れも使用可能であり、不均化ロジン酸を用いることが特に好ましい。本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩を、2種以上含むことができる。
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン重合体ラテックスを100質量%としたとき、クロロプレン重合体ラテックス中に、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩を1.0~4.5質量%含むことが好ましく、1.5~4.0質量%含むことがより好ましく、2.0~3.5質量%含むことがさらに好ましい。
【0023】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩以外に、炭素数が8~20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン系の乳化剤や分散剤をさらに含むこともできる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン重合体ラテックスを100質量部としたとき、クロロプレン重合体ラテックス中に、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩とは別に、アニオン系の乳化剤や分散剤を0.05~5質量部含むことができ、好ましくは0.1~2質量部含むことができる。
【0024】
乳化剤は、ノニオン系の乳化剤や分散剤を併用してもよい。ノニオン系の乳化剤を併用することで、クロロプレン重合体ラテックス組成物の低温安定性や接着剤としたときの接着物性を改良することができる。本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、これらのノニオン系の乳化剤や分散剤をさらに含むこともできる。
【0025】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、重合制御面、および初期接着力、特に湿潤状態における接着性能の観点から、アルカリ金属塩を含むことが好ましい。アルカリ金属塩としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどがある。コストや水溶性等から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。これら金属アルカリ塩は2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が0.1~10.0質量部であることが好ましい。本発明において、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が0.1以下であるとクロロプレン重合体ラテックスの貯蔵安定性が低下し、10.0以上であるとクロロプレン重合体の重合制御性、生産性が低下する。接着性能、貯蔵安定性等の観点から、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が0.5~8.0質量部であることがより好ましい。pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量は、クロロプレン重合体ラテックスに含まれるアルカリ金属塩の量を調整することで制御できる。
【0027】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、固形分濃度が40~60質量%であることが好ましく、例えば、40、45、50、55、60質量%とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。固形分濃度は、クロロプレン重合体ラテックスをCgとし、それを125℃雰囲気下で、1時間乾燥後の質量をDgとしたとき、D/C×100(%)で表すことができる。クロロプレン重合体ラテックスの固形分濃度が上記数値範囲内であると、該クロロプレン重合体を用いて接着剤とした時、十分に速やかに乾燥を行うことができ、かつ、均一な接着層を形成することができる。
【0028】
2.クロロプレン重合体ラテックスの製造方法
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、クロロプレン単量体を、または、クロロプレン単量体と共重合可能な単量体と、クロロプレン単量体とを、乳化剤の存在下で乳化重合する工程を含む製造方法で得ることができる。
【0029】
ここで、重合させるクロロプレン重合体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の種類および量比等については上記したとおりである。
【0030】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスの製造方法においては、乳化重合時にロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤を使用することが好ましい。ここで、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩から選ばれる1種または2種以上の乳化剤の添加量は、重合させるクロロプレン重合体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、0.5~10質量部が好ましく、2~6質量部がより好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスの製造方法においては、乳化重合時に、ロジン酸又はそのアルカリ金属塩以外に、炭素数が8~20個のアルキルスルホネート、アルキルアリールサルフェート、ナフタリンスルホン酸ナトリウムとホルムアルデヒドの縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン系の乳化剤や分散剤をさらに併用することもできる。ロジン酸又はそのアルカリ金属塩とは別に、アニオン系の乳化剤や分散剤をさらに併用する場合、アニオン系の乳化剤や分散剤の添加量は、重合させるクロロプレン重合体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、0.05~5質量部とでき、好ましくは0.1~2質量部とできる。
【0032】
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスの製造方法においては、乳化重合時に、アルカリ金属塩を添加することが好ましい。アルカリ金属塩としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどがある。アルカリ金属塩の添加量は、最終的に得られるクロロプレン重合体ラテックスにおいて、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量が、クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、0.1~10.0質量部となるような量であることが好ましく、0.5~8.0質量部となるような量であることがより好ましい。乳化重合時のアルカリ金属塩の添加量は、重合させるクロロプレン重合体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0033】
クロロプレン単量体等の乳化重合時には、クロロプレン重合体の分子量や分子量分布を調整するために連鎖移動剤を添加することが好ましい。また、連鎖移動剤は重合途中に添加してもよい。連鎖移動剤としては、n-ドデシルメルカプタンやt-ドデシルメルカプタン等の長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィド等のジアルキルキサントゲンジスルフィド類が好ましい。分子量やゲル含有量をコントロールしやすいという観点から、長鎖アルキルメルカプタン類がより好ましい。これらの連鎖移動剤は2種以上を併用してもよい。乳化重合時に添加する連鎖移動剤の合計添加量は、重合させるクロロプレン重合体およびクロロプレン単量体と共重合可能な単量体の合計100質量部に対して、0.005~0.1質量部が好ましく、例えば、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1質量部とでき、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0034】
クロロプレン重合体等の乳化重合時におけるクロロプレン単量体等の重合転化率は、50質量%以上、90質量%未満であることが好ましく、60~85質量%がより好ましく、例えば、50、55、60、65、70、75、80、85、90質量%とすることができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単量体の重合転化率が50%未満である場合は、クロロプレン重合体ラテックスの固形分濃度が低下し、接着剤塗布後の乾燥工程に負荷が掛かったり、接着層の均一化が困難となったりするだけでなく、残留クロロプレン単量体による臭気や粘着力、接着力を悪化させたりするなどの問題を起こすことがある。重合転化率が90質量%以上の場合は、クロロプレン重合体中に分岐が増えたり、分子量が大きくなるために分子量分布が広がったりする可能性があり、本発明において重要な性能である初期接着力を悪化させる問題を起こすことがある。重合転化率(質量%)は[(重合体質量/単量体質量の総和)×100]により求められる。以下、重合転化率を単に重合率と称することもある。
【0035】
クロロプレン重合体は、0~45℃の範囲で重合することができるが、特に5~15℃の低温で重合することが好ましく、例えば、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45℃で重合することができ、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。クロロプレン単独重合体は、トランス-1,4-結合が85%以上を占めることが知られており、その分子構造は比較的規則性に富むものである。クロロプレン単独重合体は、この分子構造の規則性の高さゆえに典型的な結晶性のポリマーとしての性質を持つ。重合温度を5~15℃の低温に設定することで、ポリクロロプレン分子内のトランス-1,4-結合の比率がさらに高まるため、結晶化速度がより高いクロロプレン単独重合体を得ることができ、これを一液系水系接着剤とした際に充分な接着力が達成される。
【0036】
乳化重合の開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を使用することができ、具体的には、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の有機あるいは無機の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を使用できる。アントラキノンスルホン酸塩や亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウムなどの助触媒を適宜併用してもよい。
【0037】
クロロプレン重合体の製造では、所望の分子量及び分布の重合体を得る目的で、所定の重合率に到達した時点で、重合停止剤を添加し、反応を停止させる。重合停止剤としては、フェノチアジン、p-t-ブチルカテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジエチルヒドロキシルアミンがある。
【0038】
上記したようにクロロプレン重合体ラテックスの固形分濃度は、特に制限するものではないが、通常40~65質量%である。クロロプレン重合体ラテックスの固形分濃度は、例えば、クロロプレン重合体の乳化重合時の水等の溶媒を含む配合比を調整することや、減圧下でクロロプレン重合体ラテックスに含まれる水分を蒸発させることによって制御することができる。
【0039】
3.水性接着剤
本発明の一実施形態に係るクロロプレン重合体ラテックスは、該クロロプレン重合体ラテックスを含むクロロプレン重合体ラテックス組成物とすることもでき、特には、水性接着剤とできる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る水性接着剤は、pH調整剤を含むことができる。pH調整剤は、クロロプレン重合体ラテックス組成物を水性接着剤として用いたときの初期接着力や貯蔵安定性を向上させるために配合するものである。pH調整剤としては、弱酸や緩衝液が使用可能であり、具体的には、クエン酸、グリコール酸などのヒドロキシ酸や、ホウ酸、アミノ酸から選ばれる少なくとも一種の化合物が望ましく、この中でもアミノ酸がより好ましい。前記アミノ酸としては、具体的には、グリシン、アラニン、トレオニン、プロリンを挙げることができる。コストや接着性能、ハンドリングの容易さ等からアミノ酸の一種であるグリシンの使用がさらに好ましい。
【0041】
pH調整剤の添加量は、特に限定するものではないが、水性接着剤のpHを7~10の範囲に調整できる量を使用することが好ましい。より好ましくは、pHの範囲を8~10に調整するできる量添加することが望ましい。
【0042】
pH調整剤としてアミノ酸、特には、グリシンを使用する場合には、クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~16質量部、更に好ましくは3~13質量部を使用すると、十分な接着力を有利なコストで発現させることができる。
【0043】
本発明の一実施形態に係る水性接着剤は、可塑剤を含むことができる。可塑剤の添加量は、クロロプレン重合体ラテックス100質量部に対し、0.1~30質量部、好ましくは1~20質量部、より好ましくは2~15質量部である。可塑剤を添加することにより、得られるクロロプレン重合体ラテックスを含む水性接着剤の初期強度が向上するとともに、乾燥後の接着剤皮膜の風合いを柔らかくすることができる。特に、ポリウレタンフォーム用の接着剤として使用する際には可塑剤を添加することがよい。可塑剤は、クロロプレン重合体との相溶性が良好なものが良く、特に限定するものではないが、例えば、ジブチルセバケート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルアゼレート、ジオクチルセバケート、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等がある。
【0044】
クロロプレン重合体ラテックス組成物は、一般に酸素による劣化を受けやすい。本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、水性接着剤に、酸化防止剤などの安定剤を適宜使用することができる。
【0045】
クロロプレン重合体ラテックス組成物、特には水性接着剤に酸化剤を配合する場合、酸化防止剤の添加量は、クロロプレン重合体ラテックスの固形分100質量部に対して酸化防止剤0.1~3質量部とすることが好ましい。この範囲に設定することによって、得られる接着層の柔軟性の経時安定性を改良することができる。酸化防止剤が水に不溶であったり、クロロプレン重合体ラテックス組成物の乳化状態を不安定化させたりする場合には、予め水系分散体に調製してから添加するとよい。
【0046】
本発明のクロロプレン重合体ラテックス組成物、特には水性接着剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記以外の添加剤として、充填材、粘着付与剤、顔料、着色剤、湿潤剤、消泡剤、増粘剤などを適宜使用することができる。また全組成物の30質量%(固形分換算)を上限に、その他の樹脂エマルション(ラテックス)を、補助的に配合しても差し支えない。具体的には、(変性)酢酸ビニル、酢酸ビニル・アクリル混合、アクリル・スチレン混合、ウレタンなどの樹脂エマルションが挙げられる。
【0047】
本発明の一実施形態に係る水性接着剤は、厚さ20mm×長さ50mm×幅50mmであり、密度30kg/m3のウレタンフォーム表面上へ、接着剤を70g/m2となるようにスプレー塗布し、10秒のオープンタイムの後、前記ウレタンフォーム同士を貼り合せ、張り合わせた前記ウレタンフォームの合計の厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持したのち、解放し10秒間放置後に接着面と垂直方向に引張り試験を行ったときの、初期接着強度が5.5N/cm2以上であることが好ましく、6.0N/cm2以上であることがより好ましく、6.5N/cm2以上であることがさらにより好ましい。従来、水性接着剤においては、オープンタイムが長い場合も接着強度が高く、短い場合も接着強度が高い接着剤が望まれていたが、既存の技術では、例えば、10秒のオープンタイム等の短いオープンタイムで、高い接着強度を得ることができなかった。本発明の一実施形態に係る水性接着剤によれば、10秒のオープンタイムにおいても、高い接着強度を得ることができる。
【0048】
本発明の一実施形態に係る水性接着剤は、厚さ20mm×長さ50mm×幅50mmであり、密度30kg/m3のウレタンフォーム表面上へ、接着剤を70g/m2となるようにスプレー塗布し、1分のオープンタイムの後、前記ウレタンフォーム同士を貼り合せ、張り合わせた前記ウレタンフォームの合計の厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持したのち、解放し10秒間放置後に接着面と垂直方向に引張り試験を行ったときの、初期接着強度が6.0N/cm2以上であることが好ましく、6.5N/cm2以上であることがより好ましく、7.0N/cm2以上であることがさらにより好ましい。本発明の一実施形態に係る水性接着剤によれば、10秒のオープンタイムにおいても、1分のオープンタイムにおいても、高い接着強度を得ることができ、水性接着剤を用いる作業現場でオープンタイムのばらつきが許容されるようになり、工程の自由度が増すという利点を得ることができる。
【0049】
本発明の一実施形態に係る水性接着剤は、一液系水性接着剤とすることができる。本発明の一実施形態に係る水性接着剤の好適な被着体は、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンなどの材質からなる発泡体(フォーム)、あるいは木材、布、織物などの吸水性の被着体である。
【0050】
以上の様々な条件で製造されたクロロプレン重合体ラテックスを含むクロロプレン重合体ラテックス組成物は、優れた初期接着力とコンタクト性、耐水性、スプレー塗装性、貯蔵安定性を兼ね備えた、水性接着剤、特には一液系水性接着剤として好適に使用できるものである。
【実施例】
【0051】
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらはいずれも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。
【0052】
[実施例1]
内容積10リットルの反応器を用い、窒素気流下で、水90質量部、不均化ロジン酸4.5質量部、水酸化カリウム0.5質量部、ホルムアルデヒドナフタレンスルホン酸縮合物のナトリウム塩0.3質量部を仕込み、溶解後、撹拌しながらクロロプレン単量体100質量部とn-ドデシルメルカプタン0.05質量部を加えた。過硫酸カリウムを開始剤として用い、窒素雰囲気下、10℃で重合し、重合率が70%に達したところでフェノチアジンの乳濁液を加えて重合を停止した。減圧下で未反応クロロプレン単量体を除去し、クロロプレン重合体ラテックスを得た。更に減圧下で水分を蒸発させ濃縮を行い、固形分濃度が55質量%となるように調整した。なお、得られたクロロプレン重合体ラテックス100質量部に対して、pHを10.5に調整するのに必要な1/3mol/L塩酸の滴下量は7.6質量部であった。
【0053】
得られたクロロプレン重合体ラテックスの固形分のゲル分含有率、及びゾル分の重量平均分子量を下記の方法に従い測定した。
〔ゲル分含有率〕
クロロプレン重合体ラテックス試料を凍結乾燥し精秤してAとした。23℃で20時間、トルエンで溶解(0.6%に調製)し、遠心分離機を使用し、更に200メッシュの金網を用いてゲルを分離した。ゲル分を風乾後110℃雰囲気下で、1時間乾燥し、精秤してBとした。ゲル分は下式に従って算出した。
ゲル分含有率=B/A×100(%)
【0054】
〔ゾル分の重量平均分子量〕
下記の条件でGPC測定を行った。重量平均分子量の算出はポリスチレン換算で求めた。試料は分離したゾルを0.1%THF溶液に調製した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)およびブロック共重合体の生成率の測定装置:東ソー社製ゲル浸透クロマトグラフ(HLC-8320)
カラム:東ソー社製TSKgel ALPHA-M
溶離液:テトラヒドロフラン(関東化学製)
溶離液流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)計
検量線:標準ポリスチレンを用いて作成
【0055】
上記で得られたクロロプレン重合体ラテックスの100質量部に対して、ジブチルセバケート5質量部、グリシンを6質量部の比率でスリーワンモーターを使用して配合し、水性接着剤を作製した。
【0056】
〔初期接着強度1〕
密度30kg/m3 のウレタンフォーム(厚さ20mm×長さ50mm×幅50mm)を被着体に用い、23℃雰囲気下で水性接着剤を70g/m2となるようにスプレー塗布した。塗布後23℃雰囲気中で10秒間放置後(オープンタイム;O.T.=10秒)、水性接着剤が未乾燥の状態で2個のウレタンフォームの接着面同士を重ね合わせ、厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持した。その後、圧力がかからない状態で10秒間放置し(セットタイム;S.T.=10秒)、直ちに引張り試験機(A&D製テンシロン;引張り速度200mm/min)で接着面と垂直方向に引張り試験を行い、初期接着強度1を測定した。
【0057】
〔初期接着強度2〕
密度30kg/m3のウレタンフォーム(厚さ20mm×長さ50mm×幅50mm)を被着体に用い、23℃雰囲気下で水性接着剤を70g/m2となるようにスプレー塗布した。塗布後23℃雰囲気中で1分間放置後(O.T.=1分)、水性接着剤が未乾燥の状態で2個のウレタンフォームの接着面同士を重ね合わせ、厚さ40mmを10mmに圧縮して5秒間保持した。その後、圧力がかからない状態で10秒間放置し(S.T.=10秒)、直ちに引張り試験機(A&D製テンシロン;引張り速度200mm/min)で接着面と垂直方向に引張り試験を行い、初期接着強度2を測定した。
【0058】
[実施例2~6]
試験に使用するn-ドデシルメルカプタン量と重合率を変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、実施例2~6とし、接着試験結果をまとめて、表1とした。
【0059】
[比較例1~4]
試験に使用するn-ドデシルメルカプタン量と重合率を変更した以外は、実施例1と同様に試験を実施し、比較例1~4とし、接着試験結果をまとめて、表1とした。
【0060】