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▶ バイエル・アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】抗SEMA3A抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20250402BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250402BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20250402BHJP
   C12N 1/15 20060101ALN20250402BHJP
   C12N 1/19 20060101ALN20250402BHJP
   C12N 1/21 20060101ALN20250402BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20250402BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 13/12 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 3/10 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 9/04 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 13/02 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 7/06 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 7/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 3/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 9/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 9/10 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/02 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/04 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/28 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/16 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 25/14 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 21/02 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20250402BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20250402BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20250402BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20250402BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C07K19/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K47/68
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P13/12
A61P3/10
A61P11/00
A61P9/04
A61P13/02
A61P7/06
A61P7/00
A61P3/00
A61P9/00
A61P9/10
A61P27/02
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/04
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P21/02
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
C12N15/63 Z
C12N15/13
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023560024
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022058123
(87)【国際公開番号】W WO2022207554
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2025-02-13
(31)【優先権主張番号】21165960.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313006625
【氏名又は名称】バイエル・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シェーンフェルト,ドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドレブナー,カロリーネ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,エルンスト
(72)【発明者】
【氏名】フィラスキー,カタリーナ
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】マカリース・エセル,フィオヌアラ・メアリー
(72)【発明者】
【氏名】フランメ,インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ヴンダーリッヒ,ヴィンフリート
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,アンチェ
(72)【発明者】
【氏名】ゼダガット,ヤルダ
(72)【発明者】
【氏名】ヤング・ケニース
【審査官】齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500889(JP,A)
【文献】国際公開第2020/225400(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/123186(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/261281(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
GenBank/EMBL/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、配列番号142を含むH-CDR1、配列番号143を含むH-CDR2および配列番号144を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号146を含むL-CDR1、配列番号147を含むL-CDR2および配列番号148を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む、前記離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
【請求項2】
配列番号141に対して少なくとも8%同一である可変重鎖ドメイン、および配列番号145に対して少なくとも8%ある可変軽鎖ドメイン含む、請求項1載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項3】
列番号141を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号145を含む可変軽鎖ドメインを含む、求項1記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
【請求項4】
gG1またはIgG4抗体である、求項1記載の単離された抗体。
【請求項5】
列番号157を含む重鎖および配列番号158を含む軽鎖を含む、求項1記載の単離された抗体。
【請求項6】
scFv、Fab、Fab’フラグメントまたはF(ab’)2フラグメントである、求項1記載の抗原結合性フラグメント。
【請求項7】
求項1~6のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメントを含む抗体コンジュゲート。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは請求項記載の抗体コンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメント請求項記載のコンジュゲート、または請求項8記載の医薬組成物と使用説明とを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトセマフォリン3A(Sema3A)に結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントを提供する。本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、i)配列番号600の配列のヒトSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、ii)マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、iii)表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性で配列番号600の配列のヒトSema3Aに結合し、iv)インビトロメサンギウム細胞遊走アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を10nM以下、5nM以下、2.5nM以下または1nM以下のEC50で阻害し、v)インビトロ成長円錐崩壊アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を50nM以下、25nM以下、10nM以下または5nM以下のEC50で阻害し、および/またはvi)インビトロHUVEC反発(repulsion)アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を1nM以下または0.3nM以下、0.1nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下のEC50で阻害し、および/またはvii)配列番号600の配列の細胞Sema3Aによって誘発されるHUVEC反発に対する効力の増強を示す。本発明は更に、該抗体またはその抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列、およびそれを含むベクター、該抗体またはその抗原結合性フラグメントを発現する単離された細胞、該抗体またはその抗原結合性フラグメントの製造方法、ならびに該抗体またはその抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物およびキットを提供する。
【0002】
本発明による抗体は、Sema3Aのレベルまたは活性の増強に関連する疾患、例えばアルポート症候群、急性腎障害(AKI)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)または慢性腎疾患(CKD)の治療において使用されうる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
セマフォリン3A(Sema3A)は、ガイダンスタンパク質として機能する分泌型二量体タンパク質である。それは、種々のシグナル伝達経路の活性化を招く、ニューロピリン-1および種々のプレキシンとの三元複合体を形成する。それは細胞遊走、接着、細胞骨格安定化およびアポトーシスの重要な調節因子である。Sema3Aは、損傷後にそれが誘導される成体腎臓における有足細胞において発現される。
【0004】
過剰なSema3Aは糸球体濾過障壁を妨げて、濾過障壁の超微細構造変化を誘発して、有足細胞足突起消失およびアルブミン尿を招く。また、Sema3AはAKI後に高度に誘導され、尿細管炎症、尿細管上皮細胞アポトーシス、および濾過障壁の超微細構造異常を促進することによって損傷を悪化させる。齧歯動物におけるSema3Aの遺伝的欠損または薬理学的阻害は腎疾患の種々の動物モデルにおける腎損傷の低減をもたらす。
【0005】
更に、Sema3Aは網膜ニューロンおよび内皮において発現される。それは、齧歯類モデルにおいて、血管透過性を高めること、網膜炎症および細胞老化を促進すること、ならびに網膜血管再生を阻害することが示されている。Sema3AはCNS障害においても或る役割を果たしている。Sema3Aの阻害は損傷軸索の再生および/または維持の促進、アポトーシス細胞数の減少ならびに血管新生の増強をもたらして、相当に更に良好な機能的回復をもたらす。
【0006】
WO 20141/23186はトリ-マウスキメラ抗体(クローン番号4-2株由来)およびその2つのヒト化IgG1変異体を開示しており、アルツハイマー病の治療におけるそれらの適合性を示唆している。
【0007】
WO 2017/074013は抗Sema3A IgG抗体A08、C10およびF11を開示しており、がん(以下、癌と表記される)の治療におけるそれらの適合性を示唆している。
【0008】
現在、Sema3Aとその受容体との相互作用を阻害する治療選択肢は、例えばアルポート症候群のようなタンパク尿性腎疾患を有する患者の治療には利用できず、治療用Sema3Aモノクローナル抗体がこれに最適であると考えられている。したがって、Sema3Aのレベルまたは活性の増強に関連する疾患、例えばアルポート症候群、急性腎障害(AKI)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)または慢性腎疾患(CKD)の治療に有用な新規治療用Sema3A抗体に対する、これまでに満たされていない多大なニーズが存在する。
【発明の概要】
【0009】
発明の目的
先行技術を考慮して、先行技術のSema3A抗体の欠点を克服する新規治療用Sema3A抗体を提供することが本発明の目的である。特に、Sema3A活性を効率的に遮断するヒトSema3Aの高アフィニティ結合物質である新規Sema3A抗体を提供することが本発明の目的である。望ましいSema3A抗体は、前臨床実験が可能となるように、複数の種のSema3Aに対して交差反応性である。それらはヒトの治療においては非免疫原性であり、すなわち、それらはヒト抗体またはヒト化抗体である。望ましいSema3A抗体はSema3Aに対して選択的であり、それらはオフターゲットに結合せず、特に、他のセマフォリンタンパク質ファミリーメンバーと交差反応しない。
【0010】
そのような新規Sema3A抗体は、Sema3Aのレベルまたは活性の増強に関連する疾患、例えばアルポート症候群、急性腎障害(AKI)、原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)または慢性腎疾患(CKD)の治療において大きな進歩をもたらすであろう。
【0011】
発明の概括
前記の目的および他の目的は本発明の教示によって達成される。本発明は、Sema3Aに対うる特異的アフィニティを有し対象に治療的利益をもたらしうる新規抗体の発見に基づく。
【0012】
したがって、第1の態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)配列番号600の配列のヒトSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、ii)マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、iii)表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性で配列番号600の配列のヒトSema3Aに結合し、iv)インビトロメサンギウム細胞遊走アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を10nM以下、5nM以下、2.5nM以下または1nM以下のEC50で阻害し、v)インビトロ成長円錐崩壊アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を50nM以下、25nM以下、10nM以下または5nM以下のEC50で阻害し、vi)インビトロHUVEC反発(repulsion)アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を1nM以下または0.3nM以下、0.1nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下のEC50で阻害し、および/またはvii)配列番号600の配列の細胞Sema3Aによって誘発されるHUVEC反発に対する効力の増強を示す。
【0013】
本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントはヒトSema3Aに高いアフィニティで結合し、その機能を阻害する。したがって、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、Sema3Aのレベルまたは活性の増強に関連する疾患、例えば以下の疾患の治療において使用されうる:i)腎疾患、特に、急性および慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、アルポート症候群、急性および慢性腎不全、多発性嚢胞腎疾患(PCKD)ならびにADH分泌不全症候群(SIADH);ii)腎不全の続発症、特に肺水腫、心不全、尿毒症、貧血、電解質障害、例えば高カリウム血症および低ナトリウム血症、ならびに骨および炭水化物代謝の障害;iii)血管透過性亢進、糖尿病性網膜症、血液網膜関門の悪化、黄斑浮腫、特に加齢黄斑浮腫、非増殖性加齢黄斑浮腫および非増殖性糖尿病性黄斑浮腫;iv)中枢神経系または末梢神経系の疾患、特に神経因性疼痛、脊髄損傷、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脳浮腫および神経変性疾患、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、黒色物質変性症、シャイ-ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症および脊髄小脳変性症;v)癌、特に腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳癌、黒色腫、腎細胞癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部の扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌および喉頭癌。
【0014】
本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは更に、Sema3A関連障害の診断において使用されうる。
【0015】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列に関する。
【0016】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による核酸配列を含むベクターに関する。
【0017】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による抗体もしくは抗原結合性フラグメントを発現する、および/または本発明による核酸もしくは本発明によるベクターを含む単離された細胞に関する。
【0018】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による細胞を培養すること、および所望により抗体またはその抗原結合性フラグメントを精製することを含む、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法に関する。
【0019】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明による抗体コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。
【0020】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明によるコンジュゲートおよび使用説明を含むキットに関する。
一態様において、本発明は以下を提供する。
[項目1]
ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントが、
i)配列番号600の配列のヒトSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、
ii)マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合し、
iii)表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性で配列番号600の配列のヒトSema3Aに結合し、
iv)インビトロメサンギウム細胞遊走アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を10nM以下、5nM以下、2.5nM以下または1nM以下のEC50で阻害し、
v)インビトロ成長円錐崩壊アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を50nM以下、25nM以下、10nM以下または5nM以下のEC50で阻害し、および/または
vi)インビトロHUVEC反発アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を1nM以下または0.3nM以下、0.1nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下のEC50で阻害する、前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
[項目2]
前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントがマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、ヒトSema3Aに対するアフィニティと比較して100倍未満、特に50倍未満、より詳細には25倍未満、更により詳細には10倍未満、最も詳細には5倍未満異なる、マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに対するアフィニティを有する、項目1記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目3]
前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントがヒトSema3B、Sema3C、Sema3D、Sema3E、Sema3Fおよび/またはSema3Gと有意に交差反応せず、特に、前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントがヒトSema3Gと有意に交差反応しない、項目1または2記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目4]
前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントがSema3A誘発性アルブミン尿および/またはタンパク尿を抑制する、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目5]
前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントがSema3A誘発性線維症を抑制する、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目6]
前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメントとSema3Aへの結合に関して競合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントであって、前記の単離された抗体または抗原結合性フラグメントが、i)配列番号800および配列番号804、またはii)配列番号810および配列番号811を含む抗体の、Sema3Aへの結合とは競合しない、前記の単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
[項目7]
i)配列番号141に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一である重鎖可変ドメイン、および配列番号145に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一である軽鎖可変ドメイン、または
ii)配列番号61に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一である重鎖可変ドメイン、および配列番号65に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%同一である軽鎖可変ドメイン
を含む、項目1または2記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目8]
i)a)配列RDDYTSRDAFDX(配列番号594)(ここで、Xは、YおよびVからなる群から選択され、特に、XはYである)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域、およびb)配列X1AWDDSLNX2X3X4V(配列番号598)(ここで、X1は、AおよびHからなる群から選択され、X2は、V、DおよびGからなる群から選択され、特に、X2は、VおよびDからなる群から選択され、X3は、IおよびYからなる群から選択され、X4は、PおよびVからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ii)a)配列SGYSSSWFDPDFDY(配列番号64)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域、およびb)配列X1SYX2GX3NPYVV(配列番号599)(ここで、X1は、SおよびQからなる群から選択され、X2は、EおよびAからなる群から選択され、X3は、P、IおよびSからなる群から選択され、特に、X3は、PおよびIからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目9]
i)配列SYX1MX2(配列番号588)(ここで、X1はGおよびAから選択され、X2はH、SおよびLから選択される)を含むH-CDR1、特に、配列SYAMX(配列番号589)(ここで、XはSおよびLから選択される)を含むH-CDR1;配列AIGX1GGDTYYADSVX2G(配列番号590)(ここで、X1はTおよびYから選択され、X2はKおよびMから選択される)を含むH-CDR2、特に、配列AIGXGGDTYYADSVKG(配列番号591)(ここで、XはTおよびYから選択される)を含むH-CDR2;および配列RDDYTSRDAFDX(配列番号594)(ここで、Xは、YおよびVからなる群から選択され、特に、XはYである)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域;ならびにb)配列SGSSSNIGSNTVN(配列番号46)を含むL-CDR1;配列YDDLXPS(配列番号596)(ここで、XはLおよびRから選択される)を含むL-CDR2、特に、配列YDDLRPS(配列番号127)を含むL-CDR2;および配列X1AWDDSLNX2X3X4V(配列番号598)(ここで、X1は、AおよびHからなる群から選択され、X2は、V、DおよびGからなる群から選択され、特に、X2は、VおよびDからなる群から選択され、X3は、IおよびYからなる群から選択され、X4は、PおよびVからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ii)配列SYEMN(配列番号62)を含むH-CDR1;配列GISWNSGX1IX2YADSVKG(配列番号592)(ここで、X1はWおよびSから選択され、X2はGおよびDから選択される)を含むH-CDR2、特に、配列GISWNSGWIXYADSVKG(配列番号593)(ここで、XはGおよびDから選択される)を含むH-CDR2;および配列SGYSSSWFDPDFDY(配列番号64)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域;ならびにb)配列TGSSSXIGAGYDVH(配列番号595)(ここで、Xは、NおよびDから選択される)を含むL-CDR1;配列GXSNRPS(配列番号597)(ここで、XはNおよびAから選択される)を含むL-CDR2;および配列X1SYX2GX3NPYVV(配列番号599)(ここで、X1は、SおよびQからなる群から選択され、X2は、EおよびAからなる群から選択され、X3は、P、IおよびSからなる群から選択され、特に、X3は、PおよびIからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域
を含む、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目10]
項目8の選択肢i)による単離された抗体または抗原結合性フラグメントにおいて、H-CDR1にその5’末端で直接隣接するアミノ酸残基がSまたがYである;あるいは、項目8の選択肢ii)による単離された抗体または抗原結合性フラグメントにおいて、H-CDR1にその5’末端で直接隣接する3つのアミノ酸残基がX1FX2であり、ここで、X1がTおよびDから選択され、X2がSおよびDから選択される、項目8記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目11]
i)配列番号42を含むH-CDR1、配列番号43を含むH-CDR2および配列番号44を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号46を含むL-CDR1、配列番号47を含むL-CDR2および配列番号48を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ii)配列番号62を含むH-CDR1、配列番号63を含むH-CDR2および配列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号66を含むL-CDR1、配列番号67を含むL-CDR2および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
iii)配列番号102を含むH-CDR1、配列番号103を含むH-CDR2および配列番号104を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号106を含むL-CDR1、配列番号107を含むL-CDR2および配列番号108を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
iv)配列番号122を含むH-CDR1、配列番号123を含むH-CDR2および配列番号124を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号126を含むL-CDR1、配列番号127を含むL-CDR2および配列番号128を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
v)配列番号142を含むH-CDR1、配列番号143を含むH-CDR2および配列番号144を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号146を含むL-CDR1、配列番号147を含むL-CDR2および配列番号148を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vi)配列番号162を含むH-CDR1、配列番号163を含むH-CDR2および配列番号164を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号166を含むL-CDR1、配列番号167を含むL-CDR2および配列番号168を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vii)配列番号182を含むH-CDR1、配列番号183を含むH-CDR2および配列番号184を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号186を含むL-CDR1、配列番号187を含むL-CDR2および配列番号188を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
viii)配列番号202を含むH-CDR1、配列番号203を含むH-CDR2および配列番号204を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号206を含むL-CDR1、配列番号207を含むL-CDR2および配列番号208を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ix)配列番号222を含むH-CDR1、配列番号223を含むH-CDR2および配列番号224を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号226を含むL-CDR1、配列番号227を含むL-CDR2および配列番号228を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
x)配列番号242を含むH-CDR1、配列番号243を含むH-CDR2および配列番号244を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号246を含むL-CDR1、配列番号247を含むL-CDR2および配列番号248を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xi)配列番号262を含むH-CDR1、配列番号263を含むH-CDR2および配列番号264を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号266を含むL-CDR1、配列番号267を含むL-CDR2および配列番号268を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xii)配列番号282を含むH-CDR1、配列番号283を含むH-CDR2および配列番号284を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号286を含むL-CDR1、配列番号287を含むL-CDR2および配列番号288を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiii)配列番号302を含むH-CDR1、配列番号303を含むH-CDR2および配列番号304を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号306を含むL-CDR1、配列番号307を含むL-CDR2および配列番号308を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiv)配列番号322を含むH-CDR1、配列番号323を含むH-CDR2および配列番号324を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号326を含むL-CDR1、配列番号327を含むL-CDR2および配列番号328を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xv)配列番号342を含むH-CDR1、配列番号343を含むH-CDR2および配列番号344を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号346を含むL-CDR1、配列番号347を含むL-CDR2および配列番号348を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvi)配列番号362を含むH-CDR1、配列番号363を含むH-CDR2および配列番号364を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号366を含むL-CDR1、配列番号367を含むL-CDR2および配列番号368を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvii)配列番号382を含むH-CDR1、配列番号383を含むH-CDR2および配列番号384を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号386を含むL-CDR1、配列番号387を含むL-CDR2および配列番号388を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xviii)配列番号402を含むH-CDR1、配列番号403を含むH-CDR2および配列番号404を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号406を含むL-CDR1、配列番号407を含むL-CDR2および配列番号408を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xix)配列番号422を含むH-CDR1、配列番号423を含むH-CDR2および配列番号424を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号426を含むL-CDR1、配列番号427を含むL-CDR2および配列番号428を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xx)配列番号442を含むH-CDR1、配列番号443を含むH-CDR2および配列番号444を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号446を含むL-CDR1、配列番号447を含むL-CDR2および配列番号448を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxi)配列番号462を含むH-CDR1、配列番号463を含むH-CDR2および配列番号464を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号466を含むL-CDR1、配列番号467を含むL-CDR2および配列番号468を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxii)配列番号482を含むH-CDR1、配列番号483を含むH-CDR2および配列番号484を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号486を含むL-CDR1、配列番号487を含むL-CDR2および配列番号488を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiii)配列番号502を含むH-CDR1、配列番号503を含むH-CDR2および配列番号504を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号506を含むL-CDR1、配列番号507を含むL-CDR2および配列番号508を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiv)配列番号522を含むH-CDR1、配列番号523を含むH-CDR2および配列番号524を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号526を含むL-CDR1、配列番号527を含むL-CDR2および配列番号528を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxv)配列番号542を含むH-CDR1、配列番号543を含むH-CDR2および配列番号544を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号546を含むL-CDR1、配列番号547を含むL-CDR2および配列番号548を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxvi)配列番号562を含むH-CDR1、配列番号563を含むH-CDR2および配列番号564を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号566を含むL-CDR1、配列番号567を含むL-CDR2および配列番号568を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域
を含む、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目12]
i)配列番号41を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号45を含む可変軽鎖ドメイン;または
ii)配列番号61を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号65を含む可変軽鎖ドメイン;または
iii)配列番号101を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号105を含む可変軽鎖ドメイン;または
iv)配列番号121を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号125を含む可変軽鎖ドメイン;または
v)配列番号141を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号145を含む可変軽鎖ドメイン;または
vi)配列番号161を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号165を含む可変軽鎖ドメイン;または
vii)配列番号181を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号185を含む可変軽鎖ドメイン;または
viii)配列番号201を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号205を含む可変軽鎖ドメイン;または
ix)配列番号221を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号225を含む可変軽鎖ドメイン;または
x)配列番号241を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号245を含む可変軽鎖ドメイン;または
xi)配列番号261を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号265を含む可変軽鎖ドメイン;または
xii)配列番号281を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号285を含む可変軽鎖ドメイン;または
xiii)配列番号301を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号305を含む可変軽鎖ドメイン;または
xiv)配列番号321を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号325を含む可変軽鎖ドメイン;または
xv)配列番号341を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号345を含む可変軽鎖ドメイン;または
xvi)配列番号361を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号365を含む可変軽鎖ドメイン;または
xvii)配列番号381を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号385を含む可変軽鎖ドメイン;または
xviii)配列番号401を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号405を含む可変軽鎖ドメイン;または
xix)配列番号421を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号425を含む可変軽鎖ドメイン;または
xx)配列番号441を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号445を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxi)配列番号461を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号465を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxii)配列番号481を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号485を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxiii)配列番号501を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号505を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxiv)配列番号521を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号525を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxv)配列番号541を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号545を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxvi)配列番号561を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号565を含む可変軽鎖ドメイン
を含む、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目13]
IgG抗体、特に、IgG1またはIgG4抗体である、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体。
[項目14]
i)配列番号57を含む重鎖および配列番号58を含む軽鎖;または
ii)配列番号77を含む重鎖および配列番号78を含む軽鎖;または
iii)配列番号117を含む重鎖および配列番号118を含む軽鎖;または
iv)配列番号137を含む重鎖および配列番号138を含む軽鎖;または
v)配列番号157を含む重鎖および配列番号158を含む軽鎖;または
vi)配列番号177を含む重鎖および配列番号178を含む軽鎖;または
vii)配列番号197を含む重鎖および配列番号198を含む軽鎖;または
viii)配列番号217を含む重鎖および配列番号218を含む軽鎖;または
ix)配列番号237を含む重鎖および配列番号238を含む軽鎖;または
x)配列番号257を含む重鎖および配列番号258を含む軽鎖;または
xi)配列番号277を含む重鎖および配列番号278を含む軽鎖;または
xii)配列番号297を含む重鎖および配列番号298を含む軽鎖;または
xiii)配列番号317を含む重鎖および配列番号318を含む軽鎖;または
xiv)配列番号337を含む重鎖および配列番号338を含む軽鎖;または
xv)配列番号357を含む重鎖および配列番号358を含む軽鎖;または
xvi)配列番号377を含む重鎖および配列番号378を含む軽鎖;または
xvii)配列番号397を含む重鎖および配列番号398を含む軽鎖;または
xviii)配列番号417を含む重鎖および配列番号418を含む軽鎖;または
xix)配列番号437を含む重鎖および配列番号438を含む軽鎖;または
xx)配列番号457を含む重鎖および配列番号458を含む軽鎖;または
xxi)配列番号477を含む重鎖および配列番号478を含む軽鎖;または
xxii)配列番号497を含む重鎖および配列番号498を含む軽鎖;または
xxiii)配列番号517を含む重鎖および配列番号518を含む軽鎖;または
xxiv)配列番号537を含む重鎖および配列番号538を含む軽鎖;または
xxv)配列番号557を含む重鎖および配列番号558を含む軽鎖;または
xxvi)配列番号577を含む重鎖および配列番号578を含む軽鎖
を含む、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体。
[項目15]
scFv、Fab、Fab’フラグメントまたはF(ab’)2フラグメントである、前記請求項のいずれか1項記載の抗原結合性フラグメント。
[項目16]
モノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目17]
ヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体またはその抗原結合性フラグメントである、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメント。
[項目18]
ヒトSema3Aへの結合に関して、前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメントと競合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメント。
[項目19]
前記請求項のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメントを含む抗体コンジュゲート。
[項目20]
項目1~17のいずれか1項記載の抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列。
[項目21]
項目19記載の核酸配列を含むベクター。
[項目22]
項目1~17のいずれか1項記載の抗体もしくは抗原結合性フラグメントを発現する、および/または項目19記載の核酸もしくは項目20記載のベクターを含む単離された細胞。
[項目23]
前記細胞が原核細胞または真核細胞である、項目21記載の単離された細胞。
[項目24]
項目21または22のいずれか1項記載の細胞を培養し、所望により、抗体またはその抗原結合性フラグメントを精製することを含む、項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法。
[項目25]
項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載の抗体コンジュゲートを含む医薬組成物。
[項目26]
医薬としての使用のための、項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載のコンジュゲートまたは項目24記載の医薬組成物。
[項目27]
診断剤としての使用のための、項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載の抗体コンジュゲート。
[項目28]
i)腎疾患、特に、急性および慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、アルポート症候群、急性および慢性腎不全、多発性嚢胞腎疾患(PCKD)ならびにADH分泌不全症候群(SIADH);ii)腎不全の続発症、特に肺水腫、心不全、尿毒症、貧血、電解質障害、例えば高カリウム血症および低ナトリウム血症、ならびに骨および炭水化物代謝の障害;iii)血管透過性亢進、糖尿病性網膜症、血液網膜関門の悪化、黄斑浮腫、特に加齢黄斑浮腫、非増殖性加齢黄斑浮腫および非増殖性糖尿病性黄斑浮腫;iv)中枢神経系または末梢神経系の疾患、特に神経因性疼痛、脊髄損傷、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脳浮腫および神経変性疾患、特にアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、黒色物質変性症、シャイ-ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症および脊髄小脳変性症;またはv)癌、特に腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳癌、黒色腫、腎細胞癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部の扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌および喉頭癌の治療および/または予防における使用のための、項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載のコンジュゲートまたは項目24記載の医薬組成物。
[項目29]
1以上の追加的な治療活性化合物との同時投与、別々の投与または連続的投与のための組合せにおける使用のための、項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載のコンジュゲートまたは項目24記載の医薬組成物。
[項目30]
項目1~17のいずれか1項記載の単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは項目18記載のコンジュゲートと使用説明とを含むキット。
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の本発明の詳細な説明およびそれに含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解されうる。
【0022】
定義
特に示されていない限り、本明細書中で用いる全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。しかし、以下の参考文献は、本発明に関連する技術分野の当業者に、本発明において用いる用語の多くの一般的な定義を提供しうるものであり、そのような定義が、当技術分野で一般的に理解されている意味に合致する限り、該参照文献が参照され用いられうる。そのような参考文献には以下のものが含まれるが、それらに限定されるものではない:Singletonら,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編,1988);Hale & Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991);Lackieら,The Dictionary of Cell & Molecular Biology(3d ed.1999);ならびにCellularおよびMolecular Immunology,Abbas,LichtmanおよびPober編,2nd Edition,W.B.Saunders Company。当技術分野で一般的に理解されている意味を有する本明細書中で用いる用語の定義を提供する、当業者に利用可能な追加的な技術的資料が参照されうる。本発明の目的においては、以下の用語が更に定義される。追加的な用語は該説明における別の箇所で定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において用いる単数形は、文脈が別段の定めを明らかに示していない限り、複数形対象物を含む。したがって、例えば、「遺伝子」に対する言及は1以上の遺伝子に対する言及であり、当業者に公知のその同等物を含む、などである。
【0023】
本発明の文脈においては、「含む」または「含み」なる語は「限定的ではなく包含する」を意味する。この用語は、示されている任意の特徴、要素、整数、工程または成分の存在を特定する非限定的(オープン・エンド)なものであると意図され、1以上の他の特徴、要素、整数、工程、成分またはそれらの群の存在または追加を排除するとは意図されない。したがって、「含む」なる語は、より限定的な用語である「からなる」および「から本質的になる」を含む。1つの実施形態においては、本出願の全体、特に特許請求の範囲において用いる「含む」なる語は「からなる」なる語によって置換されうる。
【0024】
この文脈においては、「約」または「おおよそ」なる語は所与の値または範囲の80%~120%以内、あるいは90%~110%以内(95%~105%以内を含む)を意味する。
【0025】
「ポリペプチド」および「タンパク質」なる語は本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマー(重合体)を意味する。この用語は、1以上のアミノ酸残基が対応天然アミノ酸の人工化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーに適用される。特に示されていない限り、特定のポリペプチド配列はその保存的修飾変異体をも暗黙裡に包含する。
【0026】
本明細書中で用いる「Sema3A」は「セマフォリン3A」を意味し、これは「HH16」、「SemD」、「COLL1」、「SEMA1」、「SEMAD」、「SEMAL」、「coll-1」、「Hsema-I」、「SEMAIII」、「Hsema-III」、「コラプシン1」、「セマフォリンD」、「セマフォリンIII」および「セマフォリンL」としても公知である。
【0027】
「抗Sema3A抗体」および「Sema3Aに結合する抗体」なる語は、Sema3Aを標的とする診断用および/または治療用物質として該抗体が有用となるように十分なアフィニティでSema3Aに結合しうる抗体を意味する。1つの実施形態においては、無関係な非Sema3Aタンパク質に対する抗Sema3A抗体の結合の程度は、例えば標準的なELISA法で測定された場合、Sema3Aへの該抗体の結合の約10%未満、約5%未満または約2%未満である。特定の実施形態においては、Sema3Aに結合する抗体は1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nMまたは0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の結合活性(EC50)を有する。特定の実施形態においては、抗Sema3A抗体は、種々の種からのSema3Aの間で保存されているSema3Aのエピトープに結合する。
【0028】
本明細書中で用いる「抗体」なる語は免疫グロブリン分子を意味すると意図される。抗体は、典型的にはジスルフィド結合によって互いに連結されている2つの重(H)鎖(約50~70kDa)および2つの軽(L)鎖(約25kDa)である4つのポリペプチド鎖を含みうる。特定の実施形態においては、抗体は、ポリペプチド鎖の、2つの同一ペアから構成される。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識をもたらす約100~110個以上のアミノ酸の「可変」領域を含む。重鎖可変領域は本明細書においてはVHと略称され、軽鎖可変領域は本明細書においてはVLと略称される。各鎖のカルボキシル末端部分は、主にエフェクター機能をもたらす定常領域を定める。重鎖定常領域は、例えばCH1、CH2およびCH3の3つのドメインを含みうる。軽鎖定常領域は1つのドメイン(CL)から構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分可能であり、CDRは、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存された複数の領域の間に散在する。各VHおよびVLは、典型的には、3つのCDRと4つまでのFRから構成され、これらは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、例えば以下の順序で配置されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。
【0029】
本明細書中で用いる「相補性決定領域」(CDR;例えばCDR1、CDR2およびCDR3)なる語は、抗原結合のために存在が必要である抗体可変ドメインのアミノ酸残基を意味する。各可変ドメインは、典型的には、CDR1、CDR2およびCDR3として特定される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabat(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))によって定義された「相補性決定領域」からのアミノ酸残基、および/または「超可変ループ」(ChothiaおよびLesk;J Mol Biol 196:901-917(1987))からのアミノ酸残基を含みうる。幾つかの場合には、相補性決定領域は、Kabatに従い定義されたCDR領域と超可変ループとの両方からのアミノ酸を含みうる。
【0030】
「フレームワーク」またはFR残基は超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0031】
「定常領域」なる語は、エフェクター機能を付与する抗体分子の部分を意味する。
【0032】
本明細書における「Fc領域」なる語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定めるために用いられる。この用語は天然配列Fc領域および変異体Fc領域を含む。1つの実施形態においては、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸長している。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書中で特に示されていない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されている、EUインデックスとも称されるEU番号付け系に準拠している。
【0033】
免疫グロブリンは、その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて異なるクラスに割り当てられうる。重鎖はミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)およびイプシロン(ε)として分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEとして定める。特定の実施形態においては、本発明による抗体はIgG抗体である。これらの幾つかはサブクラスまたはアイソタイプ、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2に更に分類されうる。特定の実施形態においては、本発明による抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体、より詳細にはIgG1またはIgG4抗体である。アイソタイプが異なれば、それらが有するエフェクター機能も異なりうる。ヒト軽鎖はカッパ(κ)軽鎖およびラムダ(λ)軽鎖に分類される。軽鎖および重鎖内で、可変領域と定常領域とは約12個以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖は更に約10個のアミノ酸の「D」領域をも含みうる。全般的には、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0034】
抗体/免疫グロブリンの「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」は、本明細書においては、抗原結合性領域を保持する抗体/免疫グロブリンのフラグメント(例えば、IgGの可変領域)として定義される。抗体の「抗原結合性領域」は、典型的には、抗体の、1以上の超可変領域、例えばCDR1、2および/または3領域において見出されるが、可変「フレームワーク」領域も、例えばCDRにスカフォールドを提供することにより、抗原結合において重要な役割を果たしうる。好ましくは、「抗原結合性領域」は、少なくとも、可変軽鎖(VL)のアミノ酸残基4~103および可変重鎖(VH)のアミノ酸残基5~109、より好ましくは、VLのアミノ酸残基3~107およびVHのアミノ酸残基4~111を含み、特に好ましいのは完全なVL鎖およびVH鎖(VLのアミノ酸1~109位およびVHの1~113位;番号付けはWO 97/08320に基づく)である。
【0035】
「機能的フラグメント」または「抗原結合性抗体フラグメント」の非限定的な例には以下のものが含まれる:Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ドメイン抗体(dAb)、相補性決定領域(CDR)フラグメント、単鎖抗体(scFv)、単鎖抗体フラグメント、ジアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、線状抗体(Zapataら,Protein Eng.,8(10):1057-1062(1995));キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小型モジュラー免疫医薬(SMIP)、抗原結合性ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、VHH含有抗体またはムテインまたはその誘導体、および例えばCDR配列のような、特異的抗原結合をポリペプチドにもたらすのに十分である免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチド(ただし、該抗体は所望の生物活性を保持していなければならない);ならびに多重特異性抗体、例えば、抗体フラグメントから形成される二重特異性抗体および三重特異性抗体(C.A.K Borrebaeck編,(1995)Antibody Engineering(Breakthroughs in Molecular Biology),Oxford University Press;R.Kontermann & S.Duebel編,(2001)Antibody Engineering(Springer Laboratory Manual),Springer Verlag)。「二重特異性」または「二機能性」抗体以外の抗体は、その結合部位のそれぞれが同一であると理解される。F(ab’)またはFabは、CH1ドメインとCドメインとの間で生じる分子間ジスルフィド相互作用を最小にする又は完全に除去するように操作されうる。抗体のパパイン消化は、単一の抗原結合性部位をそれぞれが有する2つの同一の抗原結合性フラグメント(「Fab」フラグメントと称される)と、容易に結晶化する能力を反映した名称を有する残りの「Fc」フラグメントとを生成する。ペプシン処理は、2つの「Fv」フラグメントを有するF(ab’)2フラグメントを生成する。「Fv」フラグメントは、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小抗体フラグメントである。この領域は、緊密な非共有結合によって結合した1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインとの二量体からなる。該VH-VL二量体の表面上の抗原結合性部位を定めるように各可変ドメインの3つのCDRが相互作用するのは、この配置においてである。全体として、6つのCDRが抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半分)であっても、抗原を認識しそれに結合する能力を有する。
【0036】
「単鎖Fv」または「sFv」または「scFv」抗体フラグメントは抗体のVHドメインおよびVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖内に存在する。
【0037】
好ましくは、Fvポリペプチドは、抗原結合のための望ましい構造をFvが形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーを更に含む。Fvの総説は、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,RosenburgおよびMoore編,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0038】
Fabフラグメントはまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の最初の定常ドメイン(CH1)とを含有する。Fabフラグメントは、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端に数個の残基(抗体ヒンジ領域からの1以上のシステイン残基を含む)が付加されている点で、Fab’フラグメントとは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を含有するFab’の本明細書における名称である。F(ab’)2抗体フラグメントは元々は、ヒンジシステイン残基をお互いの間に有するFab’フラグメントのペアとして生成された。
【0039】
「ムテイン」または「変異体」なる語は互換的に使用可能であり、可変領域または可変領域と同等の部分に少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失または挿入を含有する抗体または抗原結合性フラグメントを意味する。ただし、ムテインまたは変異体は所望の結合アフィニティまたは生物活性を保持していなければならない。本発明において想定される抗体または抗原結合性抗体フラグメントの変異体は、抗体または抗原結合性抗体フラグメントの結合活性が維持されている分子である。
【0040】
「キメラ抗体」またはその抗原結合性フラグメントは、本明細書においては、可変ドメインが非ヒト由来であり、定常ドメインの一部または全部がヒト由来であるものとして定義される。
【0041】
「ヒト化抗体」は、例えば、必要なフレームワーク復帰突然変異と共にヒト配列由来V領域内に移植された、マウスのような非ヒト種に由来するCDR領域を含有する。したがって、ほとんどの場合、ヒト化抗体は、所望の特異性、アフィニティおよび能力を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって、レシピエントの超可変領域からの残基が置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。例えば、米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,859,205号(それぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。幾つかの場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク残基は対応非ヒト残基によって置換されている(例えば、米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号(それぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい)。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見出されない残基を含みうる。これらの修飾は、抗体の性能を更に改良するために(例えば、所望のアフィニティを得るために)施される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変領域の全てまたは実質的に全ては非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク領域の全てまたは実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体は、所望により、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部をも含んでいてもよい。更なる詳細は、Jonesら,Nature 331:522-25(1986);Riechmannら,Nature 332:323-27(1988);およびPresta,Curr.Opin.Struct.Biol.2:593-96(1992)(それぞれを参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0042】
「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」は、ヒト由来CDR、すなわち、ヒト起源のCDRを含む。完全ヒト抗体は、IMGTデータベース(http://www.imgt.org)に基づいて決定された最も近いヒト生殖系列参照と比較して少数の生殖系列逸脱(germline deviation)を含みうる。例えば、本発明による完全ヒト抗体は、最も近いヒト生殖細胞系参照と比較して、CDRにおいて最大1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の生殖細胞系逸脱を含みうる。完全ヒト抗体は、細胞富化または不死化工程と組合されたクローニング技術によってヒト由来B細胞から発生可能である。しかし、完全ヒト抗体の大部分は、ヒトIgG遺伝子座に関してトランスジェニックである免疫化マウスから、またはファージディスプレイによる精巧なコンビナトリアルライブラリーから単離される(Bruggemann M.,Osborn M.J.,Ma B.,Hayre J.,Avis S.,Lundstrom B.およびBuelow R.,Human Antibody Production in Transgenic Animals,Arch Immunol Ther Exp(Warsz.)63(2015),101-108;Carter P.J.,Potent antibody therapeutics by design,Nat Rev Immunol 6(2006),343-357;Frenzel A.,Schirrmann T.およびHust M.,Phage display-derived human antibodies in clinical development and therapy,MAbs 8(2016),1177-1194;Nelson A.L.,Dhimolea E.およびReichert J.M.,Development trends for human monoclonal antibody therapeutics,Nat Rev Drug Discov 9(2010),767-774)。
【0043】
完全ヒト抗体を生成させるためには幾つかの技術が利用可能である(WO 2008/112640 A3を参照されたい)。Cambridge Antibody Technologies(CAT)およびDyaxは、免疫化されたヒトから単離された末梢B細胞から抗体cDNA配列を得、特定の特異性のヒト可変領域配列を特定するためのファージディスプレイライブラリーを案出した。簡潔に説明すると、抗体可変領域配列をM13バクテリオファージのGene IIIまたはGene VIII構造体のいずれかと融合させる。これらの抗体可変領域配列を、それぞれの配列を担持するファージの先端においてFabまたは単鎖Fv(scFv)構造体として発現させる。種々のレベルの抗原結合条件(ストリンジェンシー)を用いるパンニングプロセスのラウンドを通じて、目的の抗原に特異的なFabまたはscFv構造体を発現するファージを選択し、単離することが可能である。ついで、選択されたファージの抗体可変領域cDNA配列は、標準的な配列決定法を用いて明らかにされうる。ついで、これらの配列は、確立された抗体操作技術を用いて、所望のアイソタイプを有する完全抗体の再構築のために使用されうる。この方法に従い構築された抗体は完全ヒト抗体(CDRを含む)とみなされる。選択された抗体の免疫反応性(抗原結合アフィニティおよび特異性)を改善するために、異なる重鎖と軽鎖のと組合せ(コンビナトリアル)結合、(V-JおよびV-D-J組換えを模倣するための)重鎖および軽鎖のCDR3における欠失/付加/突然変異ならびに(体細胞超突然変異を模倣するための)ランダム突然変異を含むインビトロ成熟プロセスが導入されうる。この方法によって生成される「完全ヒト」抗体の一例は抗腫瘍壊死因子α抗体ヒュミラ(Humira)(アダリムマブ)である。
【0044】
「Human Engineered(商標)」抗体は、Studnickaら,米国特許第5,766,886号に記載されている方法に従い親配列を改変することによって生成される。
【0045】
本発明の抗体は組換え抗体遺伝子ライブラリーから誘導されうる。組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーの作製および糸状バクテリオファージの表面上のコード化抗体フラグメントの提示のための技術の開発は、ヒト抗体を直接的に作製し選択するための組換え手段を提供しており、これはヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体またはムテイン抗体にも適用されうる。ファージ技術によって生成される抗体は細菌において抗原結合性フラグメント(通常はFvまたはFabフラグメント)として生成され、したがって、エフェクター機能を欠いている。エフェクター機能は2つの方法の1つによって導入されうる。フラグメントは、哺乳類細胞における発現の場合には完全抗体へと操作可能であり、またはエフェクター機能を誘発しうる第2の結合部位を有する二重特異性抗体フラグメントへと操作可能である。典型的には、抗体の重鎖VH-CH1および軽鎖VL-CLはPCRによって個別にクローニングされ、コンビナトリアル・ファージ・ディスプレイ・ライブラリーにおいてランダムに組換えられ、ついでこれは特定の抗原への結合に関して選択されうる。Fabフラグメントはファージ表面上で発現され、すなわち、該フラグメントをコードする遺伝子に物理的に連結されて発現される。したがって、抗原結合によるFabの選択は、後で増幅されうるFabコード配列に関して同時選択する。数ラウンドの抗原結合および再増幅、すなわち、パンニングと称される方法により、抗原に特異的なFabが富化され、最終的に単離される。
【0046】
ファージ・ディスプレイ・ライブラリーから誘導されるヒト抗体に関しては、種々の方法が記載されている。そのようなライブラリーは単一のマスターフレームワーク上で構築可能であり、そのフレームワーク内に、多様なインビボで形成される(すなわち、ヒト由来の)CDRが組換え可能であり、これはCarlssonおよびSoderlind Exp.Rev.Mol.Diagn.1(1),102-108(2001);Soderlinら,Nat.Biotech.18,852-856(2000);ならびに米国特許第6,989,250号に記載されている。あるいは、そのような抗体ライブラリーは、インシリコ(in silico)で設計された、合成作製核酸によってコードされるアミノ酸配列に基づくものでありうる。抗体配列のインシリコ設計は、例えば、ヒト配列のデータベースを分析すること、およびそれから得られたデータを利用してポリペプチド配列を案出することによって達成される。インシリコ作製配列を設計し得るための方法は、例えば、Knappikら,J.Mol.Biol.(2000)296:57;Krebsら,J.Immunol.Methods.(2001)254:67;および米国特許第6,300,064号に記載されている。ファージ・ディスプレイ・スクリーニングの総説は例えば以下のものを参照されたい:Hoet RMら,Nat Biotechnol 2005;23(3):344-8)、十分に確立されたハイブリドーマ技術(例えば、KohlerおよびMilstein Nature.1975 Aug 7;256(5517):495-7を参照されたい)、またはマウスの免疫化、とりわけhMAbマウス(例えば、VelocImmuneマウス(登録商標))の免疫化。
【0047】
本明細書中で用いる「モノクローナル抗体」なる語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味する、すなわち、該集団を構成する個々の抗体は、少量で存在しうる可能な突然変異、例えば天然で生じる突然変異以外は同一である。したがって、「モノクローナル」なる語は、異なる抗体の混合物ではないという、抗体の性質を示す。ポリクローナル抗体調製物は、典型的に、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むが、そのようなポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対するものである。モノクローナル抗体調製物は、その特異性に加えて、典型的に、他の免疫グロブリンが混入していないという点でも有利である。「モノクローナル」なる語は、いずれかの特定の方法による抗体の製造を要するものとして解釈されるべきではな。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら,Nature,256:495[1975]に最初に記載されたハイブリドーマ法によって製造可能であり、あるいは組換えDNA法によって製造可能である(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、組換えモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、Human Engineered(商標)または抗体フラグメントでありうる。
【0048】
「単離された」抗体は、同定(特定)され、それを発現した細胞の成分から分離された抗体である。細胞の汚染成分は、抗体の診断的または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含みうる。
【0049】
「単離された」核酸は、同定され、自然環境の成分から分離された核酸である。単離された核酸には、核酸分子を通常含有する細胞に含有されている核酸分子が含まれるが、核酸分子は染色体外に存在し、または天然染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0050】
本明細書中で用いる、目的の抗原、例えばSema3A「に特異的に結合する」、「に特異的である」または「を特異的に認識する」抗体は、該抗原を発現する細胞または組織を標的化する際に抗体が治療用物質として有用となるように十分なアフィニティで該抗原に結合する抗体である。本明細書中で用いる、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「を特異的に認識する」または「に特異的に結合する」または「に特異的である」なる語は、例えば、約10-4M未満、あるいは約10-5M未満、あるいは約10-6M未満、あるいは約10-7M未満、あるいは約10-8M未満、あるいは約10-9M未満、あるいは約10-10M未満、あるいは約10-11M未満、あるいは約10-12M未満の、抗原に対する1価Kを有する抗体またはその抗原結合性フラグメントによって示されうる。
【0051】
抗体が抗原「に選択的に結合する」、「に選択的である」または「を選択的に認識する」と言えるのは、そのような抗体がそのような抗原と1以上の参照抗原とを識別しうる場合である。特に、抗原「に選択的に結合する」抗体は、前記の抗原標的のオルソログおよび変異体(例えば、突然変異体、スプライス変異体またはタンパク質分解トランケート化形態)以外のタンパク質とは有意に交差反応しない。「選択的結合」、「選択的に結合する」、「選択的である」または「選択的に認識する」は、その最も一般的な形態においては、例えば以下の方法の1つに従い決定される、目的の抗原と無関係な抗原とを識別する抗体の能力を指す。そのような方法には、表面プラズモン共鳴(SPR)、ウェスタンブロット、ELISA試験、RIA試験、ECL試験、IRMA試験およびペプチドスキャンが含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、標準的なELISAアッセイが行われうる。スコア化は標準的な発色(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼの存在下の二次抗体、および過酸化水素の存在下のテトラメチルベンジジン)によって行われうる。特定のウェルにおける反応は、例えば450nmにおける光学密度によってスコア化される。典型的なバックグラウンド(=陰性反応)は0.1 ODでありうる。典型的な陽性反応は1 ODでありうる。これは、陽性/陰性の差異が5倍超(すなわち、5倍を超える)、10倍超、50倍超、好ましくは100倍超であることを意味する。典型的には、結合選択性の決定は、単一の参照抗原ではなく約3~5個の無関係な抗原の組合せ(例えば、粉乳、BSA、トランスフェリンなど)を使用して行われる。
【0052】
「結合アフィニティ」または「アフィニティ」は或る分子の単一結合部位とその結合パートナーとの間の非共有結合性相互作用の総和の強度を意味する。特に示されていない限り、本明細書中で用いる「結合アフィニティ」は、結合ペア(例えば、抗体および抗原)のメンバーの間の1:1相互作用を反映する固有の結合アフィニティを意味する。解離定数「K」は、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との間のアフィニティ、すなわち、リガンドが特定のタンパク質にどのくらい強固に結合するのかを表すために一般に用いられる。リガンド-タンパク質のアフィニティは2つの分子の間の非共有結合性分子間相互作用によって影響される。アフィニティは、本明細書に記載されている方法を含む、当技術分野で公知の一般的方法によって測定されうる。1つの実施形態においては、本発明による「K」または「K値」は、Biacore T200装置(GE Healthcare Biacore,Inc.)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを用いることによって測定される。他の適切な装置としては、BIACORE T100、BIACORE(R)-2000、BIACORe 4000、BIACORE(R)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)またはProteOn XPR36装置(Bio-Rad Laboratories,Inc.)が挙げられる。
【0053】
本明細書中で用いる「エピトープ」なる語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合しうる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸もしくは糖側鎖またはそれらの組合せのような、分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。
【0054】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」または参照抗体への「結合に関して競合する抗体」は、競合アッセイにおいて参照抗体のその抗原への結合を10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上遮断する抗体を意味し、逆に、参照抗体は競合アッセイにおいて該抗体のその抗原への結合を10%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上遮断する。
【0055】
「成熟抗体」または「成熟抗原結合性フラグメント」(例えば、成熟Fab変異体または「最適化」変異体)なる語は、例えば標的タンパク質の細胞外ドメインのような所与の抗原への、より強力な結合、すなわち、増加したアフィニティでの結合を示す、抗体または抗体フラグメントの誘導体を含む。成熟は、このアフィニティの増加を招く、抗体または抗体フラグメントの6つのCDR内の少数の突然変異を特定するプロセスである。成熟プロセスは、抗体への突然変異の導入のための、および改善した結合物質の特定用のスクリーニングのための分子生物学的方法の組合せである。
【0056】
それぞれ参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に対する「配列同一性の割合(%)」は、配列を整列(アライメント)させ、最大配列同一性割合が得られるように必要に応じてギャップを導入した後の、それぞれ参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列におけるそれぞれ核酸またはアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるそれぞれ核酸またはアミノ酸残基の百分率として定義される。保存的置換は配列同一性の一部とはみなされない。ギャップ無しのアライメントが好ましい。アミノ酸配列同一性の割合を決定する目的のためのアラインメントは、例えば、公に入手可能なコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用する、当技術分野における技量の範囲内である種々の方法で達成されうる。当業者は、比較される配列の全長にわたる最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメーターを決定しうる。
【0057】
「配列相同性」は、同一である又は保存的アミノ酸置換に相当するアミノ酸の百分率を示す。
【0058】
「アンタゴニスト」抗体または「遮断性」抗体は、それが結合する抗原の生物活性を(部分的または完全に)有意に阻害する抗体である。特定の実施形態においては、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントはSema3A遮断性抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0059】
「抗体コンジュゲート」なる語は、1以上の分子にコンジュゲート化(結合)された抗体を意味し、前記の1以上の分子には、薬物[この場合、抗体コンジュゲートは「抗体薬物コンジュゲート」(「ADC」)と称される]および高分子量分子、例えばペプチドまたはタンパク質が含まれる。
【0060】
「抗体薬物コンジュゲート」または「ADC」なる語は、1以上の細胞毒性または細胞増殖抑制性物質、例えば化学療法剤、薬物、増殖抑制物質、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物に由来する酵素的に活性な毒素またはその断片)または放射性同位体(すなわち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲート化された抗体を意味する。免疫コンジュゲートは、癌の治療において、細胞毒性物質、すなわち、細胞を殺滅し又は細胞の成長もしくは増殖を抑制する薬物の局所送達に使用されている(例えば、Liuら,Proc Natl.Acad.Sci.(1996),93,8618-8623)。免疫コンジュゲートは腫瘍への薬物部分の標的送達およびそれにおける細胞内蓄積を可能にし、この場合、未コンジュゲート化薬物の全身投与は正常な細胞および/または組織に対して許容できないレベルの毒性をもたらしうる。抗体-毒素コンジュゲートにおいて使用される毒素には、細菌毒素、例えばジフテリア毒素、植物毒素、例えばリシン、小分子毒素、例えばゲルダナマイシンが含まれる。毒素は、チューブリン結合、DNA結合またはトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムによって、その細胞毒性効果を発揮しうる。
【0061】
アミノ酸は、本明細書においては、それらの一般に公知である3文字記号によって、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されている1文字記号によって言及されうる。ヌクレオチドも同様に、それらの一般に受け入れられている1文字記号によって言及されうる。
【0062】
本明細書中で用いる「ベクター」なる語は、それが連結している別の核酸を増殖させうる核酸分子を意味する。この用語は、自己複製性核酸構造体としてのベクター、およびそれが導入された宿主細胞のゲノム内に組み込まれたベクターを含む。特定のベクターは、それが機能的に連結されている核酸の発現を導きうる。そのようなベクターは本明細書においては「発現ベクター」と称される。
【0063】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」および「宿主細胞培養」なる語は互換的に用いられ、少なくとも1つの外因性核酸が導入されている細胞(そのような細胞の後代を含む)を意味する。宿主細胞には、「形質転換体」および「形質転換細胞」、「トランスフェクタント」および「トランスフェクト化細胞」および「形質導入細胞」が含まれ、これらには、初代形質転換/トランスフェクト化/形質導入細胞、および継代数には無関係にそれに由来する後代が含まれる。後代は、核酸含有量において、親細胞と完全に同一でなくてもよく、突然変異を含有していてもよい。元の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異後代が本明細書に含まれる。
【0064】
本明細書中で用いる「治療的有効量」なる語は、所望の治療レジメンに従って投与された場合に疾患のそのような症状の一部もしくは全部を緩和すること又は疾患に対する素因を軽減することを含む、治療または予防の所望の効果または応答を誘発するのに適切である、治療用抗体または予防用抗体の量を意味すると意図される。
【0065】
「医薬製剤」/「医薬組成物」なる語は、それに含有されている有効成分の生物活性が有効となることを可能にするような形態であり、該製剤が投与される対象に対して許容できないほど毒性である追加的な成分を含有しない調製物(製剤)を意味する。
【0066】
本発明による抗体
1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号600の配列のヒトSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合する。特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号582のHisタグ付きヒトSema3Aドメインに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合する。
【0067】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに50nM以下、20nM以下、10nM以下、1nM以下または0.1nM以下の解離定数(KD)で結合する。
【0068】
特定のそのような実施形態においては、該アフィニティは配列番号601のマウスSema3A、配列番号602のカニクイザルSema3A、配列番号603のラットSema3A、配列番号604のブタSema3Aおよび配列番号605のイヌに対するものである。特定の実施形態においては、該アフィニティは配列番号583のHisタグ付きマウスSema3Aドメイン、配列番号586のHisタグ付きカニクイザルSema3Aドメイン、配列番号584のHisタグ付きラットSema3Aドメイン、配列番号587のHisタグ付きブタSema3Aドメインおよび配列番号585のHisタグ付きイヌSema3Aドメインに対するものである。
【0069】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性でヒトSema3Aに結合する。特定の実施形態においては、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表面プラスミン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性で配列番号600の配列のヒトSema3Aに結合する。特定の実施形態においては、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表面プラスミン共鳴(SPR)によって測定された場合に60%以上、70%以上、80%以上または90%以上の結合活性で配列番号582の配列のHisタグ付きヒトSema3Aドメインに結合する。
【0070】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、インビトロメサンギウム細胞遊走アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を10nM以下、5nM以下、2.5nM以下または1nM以下のEC50で阻害する。
【0071】
特に、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヒト初代メサンギウム細胞を使用する実施例9に更に詳細に記載されているインビトロスクラッチアッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を阻害しする。
【0072】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、インビトロ成長円錐崩壊アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を50nM以下、25nM以下、10nM以下または5nM以下のEC50で阻害する。
【0073】
特に、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、実施例10に更に詳細に記載されているとおり、マウス後根神経節(DRG)ニューロンを使用するインビトロ成長円錐崩壊アッセイにおいてSema3A誘発細胞骨格崩壊を阻害する。実施例10に記載されているインビトロ成長円錐アッセイは、Mikuleら(PMID:12077190)に記載されている成長円錐アッセイの修飾形態である。
【0074】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、インビトロHUVEC反発アッセイにおいて、配列番号600の配列のヒトSema3Aの活性を1nM以下または0.3nM以下、0.1nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下のEC50で阻害する。
【0075】
特に、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、実施例11に記載されているヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のコンフルエント単層上に播種された、配列番号600の配列のSema3Aを発現するHEK293細胞を使用するインビトロ反発アッセイにおいて、Sema3A誘発性細胞反発を阻害する。
【0076】
もう1つの態様においては、本発明は、配列番号600の配列のSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、HUVEC反発アッセイにおいて、効力の改善を示し、ここで、i)該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号81、85、97、98を有するTPP-17755、または配列番号1、5、17、18を有するTPP-11489、または配列番号800、804、810、811を有するTPP-30788、または配列番号814、818、824、825を有するTPP-30789、または配列番号828、832、838、839を有するTPP-30790、または配列番号842、846、852、853を有するTPP-30791と比較して、HUVEC反発アッセイにおいて、効力の改善を示し、ii)該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号81、85、97、98を有するTPP-17755、または配列番号1、5、17、18を有するTPP-11489、または配列番号800、804、810、811を有するTPP-30788、または配列番号814、818、824、825を有するTPP-30789、または配列番号828、832、838、839を有するTPP-30790、または配列番号842、846、852、853を有するTPP-30791と比較して、EC50値に基づいて、細胞性Sema3A誘発性HUVEC反発に対して、好ましくは400倍超(すなわち、400倍を超える)、好ましくは50倍超、好ましくは5倍超、好ましくは2倍超増強した効力を示し、iii)該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、前記配列を有するTPP-17755、TPP-11489、TPP-30788、TPP-30789、TPP-30790またはTPP-30791と比較して、少なくとも30%増加したSema3A阻害率、好ましくは少なくとも50%増加したSema3A阻害率を示し、iv)該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、インビトロHUVEC反発アッセイにおいて、ヒトSema3Aに対する2桁のピコモル活性を有するが、前記配列を有するTPP-17755、TPP-11489、TPP-30788、TPP-30789、TPP-30790またはTPP-30791の先行技術抗体の効力は3桁のピコモルまたは更にはナノモルの範囲であり、v)該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、実施例11に記載されているとおり、インビトロHUVEC反発アッセイにおいて、ヒトSema3Aの活性を1nM以下または0.3nM以下、0.1nM以下、0.07nM以下、0.06nM以下のEC50で阻害する。
【0077】
本発明の単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、TPP-30788~TPP-30791(BIクローンI~IV)と比較して、HUVEC反発アッセイにおいて、改善された効力を示し、これはヒトSema3Aの異なるエピトープへの結合によるものでありうる。
【0078】
もう1つの態様においては、本発明は、Sema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはインビボでSema3Aの活性を阻害する。なぜなら、本発明による抗体はSema3A誘発性尿アルブミン排泄を低減するからである。したがって、もう1つの態様においては、本発明は、Sema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはインビボでSema3Aの阻害活性の改善を示し、ここで、i)該抗体は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、Sema3A誘発性尿アルブミン排泄の減少の増強を示し、ii)該抗体は、TPP-17755(Samsung)と比較して、Sema3A誘発性尿アルブミン排泄の減少の増強を示し、iii)該抗体は、実施例12に記載されているとおり、TPP-11489(Chiome)と比較して、Sema3A誘発性尿アルブミン排泄の減少の増強を示す。
【0079】
本発明の単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、TPP-30788~TPP-30791(BIクローンI~IV)と比較して、誘発性尿アルブミン排泄に関するインビボモデルにおいて、有効性の改善を示し、これはヒトSema3Aの異なるエピトープへの結合によるものでありうる。
【0080】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)TPP-30788(BIクローンI)と比較して、増強した安定性(例えば、PBS中で25mg/mlに希釈され、700rpm、40℃で2週間インキュベートされた場合の、増強したストレス安定性)を示し、ii)増強した安定性は、SECによって測定された場合に、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、単量体抗Sema3A抗体の量の増加を示し、iii)増強した安定性は、cGEによって測定された場合に、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、抗Sema3A抗体のLCおよびHCの割合の減少を示し、これは、残存LCおよびHCの存在によって測定される分解速度の低下を証明しており、iv)増強した安定性は、単量体抗Sema3A抗体の量が維持される(例えば、40℃、700rpmで2週間インキュベートされた後、Δ%単量体=1である)ことを示し、v)増強した安定性は、抗Sema3A抗体のLCおよびHCの量が維持される(例えば、40℃、700rpmで2週間インキュベートされた後、Δ%LC+HC<1)ことを示す。
【0081】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合するTPP-23298に関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)TPP-30788(BIクローンI)と比較して、増強した安定性(例えば、PBS中で25mg/mlに希釈され、700rpm、40℃で2週間インキュベートされた場合の、増強したストレス安定性)を示し、ii)増強した安定性は、SECによって測定された場合に、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、単量体抗Sema3A抗体の量の増加を示し、iii)増強した安定性は、cGEによって測定された場合に、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、抗Sema3A抗体のLCおよびHCの割合の減少を示し、これは、残存LCおよびHCの存在によって測定される分解速度の低下を証明しており、iv)増強した安定性は、単量体抗Sema3A抗体の量が維持される(例えば、40℃、700rpmで2週間インキュベートされた後、Δ%単量体=1である)ことを示し、v)増強した安定性は、抗Sema3A抗体のLCおよびHCの量が維持される(例えば、40℃、700rpmで2週間インキュベートされた後、Δ%LC+HC<1)ことを示す。
【0082】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)増加した溶解度を示し、ii)増加した溶解度は、90%の回収率での濃縮の後、mg/mlの単位で測定され、iii)溶解度は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して増加しており、iv)溶解度は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、1倍以下、1.5倍以下、2倍以下増加しており、v)増加した溶解度は、単量体抗Sema3A抗体の割合が濃縮後に増加していない(例えば、SECによって測定された場合、Δ%単量体<1)ことを示す。
【0083】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合するTPP-23298に関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)増加した溶解度を示し、ii)増加した溶解度は、90%の回収率での濃縮の後、mg/mlの単位で測定され、iii)溶解度は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して増加しており、iv)溶解度は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、1倍以下、1.5倍以下、2倍以下増加しており、v)増加した溶解度は、単量体抗Sema3A抗体の割合が濃縮後に増加していない(例えば、SECによって測定された場合、Δ%単量体<1)ことを示す。
【0084】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)水またはPBSと比較して増加した粘度を示し、ii)TPP-30788(BIクローンI)と比較して、PBS中の粘度の低下を示し、iii)ここで、粘度はビスコサイザー(Viscosizer)によって測定され、5.1(150mg/ml)のcP値を示す。
【0085】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合するTPP-23298に関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、i)水またはPBSと比較して増加した粘度を示し、ii)TPP-30788(BIクローンI)と比較して、PBS中の粘度の低下を示し、iii)ここで、粘度はビスコサイザー(Viscosizer)によって測定され、5.1(150mg/ml)のcP値を示す。
【0086】
特に、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、実施例17に記載されているとおり、TPP-30788より遥かに高い溶解度および安定性を示し、熱ストレスに対して、より耐性であり、PBSバッファー中で、より低粘度である。
【0087】
特に、TPP-23298は、実施例17に記載されているとおり、TPP-30788より遥かに高い溶解度および安定性を示し、熱ストレスに対して、より耐性であり、PBSバッファー中で、より低粘度である。
【0088】
もう1つの態様においては、本発明は、哺乳類細胞において高力価で産生されうる、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、i)ここで、高力価は、実施例16に記載されているとおり、200mg/L以下である。
【0089】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該抗体は、切断型Sema3A TPP-19068と比較して、活性Sema3A(TPP-13211)に対して、より高い結合選択性を示し、i)ここで、該抗体は、実施例8に記載されているとおり、活性Sema3Aに対するTPP-30788~TPP-30791の結合選択性と比較して、活性Sema3A(TPP-13211)に対して、より高い結合選択性を示す。
【0090】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合するTPP-23298に関するものであり、ここで、該抗体は、切断型Sema3A TPP-19068と比較して、活性Sema3A(TPP-13211)に対して、より高い結合選択性を示し、i)ここで、該抗体は、実施例8に記載されているとおり、活性Sema3Aに対するTPP-30788~TPP-30791の結合選択性と比較して、活性Sema3A(TPP-13211)に対して、より高い結合選択性を示す。
【0091】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該抗体は、TPP-30788と比較して、Sema3A上の異なるエピトープに結合し、i)ここで、エピトープ結合は、実施例5aに記載されているとおり、SPRアッセイにおいて測定される。同じエピトープに結合し、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントの結合と競合する全ての抗体は、本発明に含まれる。
【0092】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aに結合するTPP-23298に関するものであり、ここで、該抗体は、TPP-30788と比較して、Sema3A上の異なるエピトープに結合し、i)ここで、エピトープ結合は、実施例5aに記載されているとおり、SPRアッセイにおいて測定される。同じエピトープに結合し、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントの結合と競合する全ての抗体は、本発明に含まれる。
【0093】
もう1つの態様においては、本発明は、前記請求項のいずれか1項記載の単離抗体または抗原結合性フラグメントとSema3Aへの結合に関して競合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関するものであり、ここで、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントは、配列番号800、配列番号804、配列番号810または配列番号811を有する抗体の、Sema3Aへの結合とは競合しない。
【0094】
本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは前記の特徴の任意の組合せを示しうる。
【0095】
本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントはSema3A遮断性抗体またはその抗原結合性フラグメントである。特定の実施形態においては、該抗体は、セマフォリン3AのSema3Aドメインに、特異的に、そしてより詳細には選択的に結合し、その受容体ニューロピリン1の相互作用を妨げる。
【0096】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントはマウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aと交差反応し、特に、ヒトSema3Aに対するアフィニティと比較して100倍未満、特に50倍未満、より詳細には25倍未満、更により詳細には10倍未満、最も詳細には5倍未満異なる、マウス、カニクイザル、ラット、ブタおよび/またはイヌSema3Aに対するアフィニティを有する。
【0097】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントはヒトSema3B、Sema3C、Sema3D、Sema3E、Sema3Fおよび/またはSema3Gと有意に交差反応しない。特に、該単離抗体またはその抗原結合性フラグメントはヒトSema3Gと有意に交差反応しない。
【0098】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントはSema3A誘発性アルブミン尿および/またはタンパク尿を抑制する。
【0099】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントはSema3A誘発性線維症を抑制する。
【0100】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号141に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である重鎖可変ドメインと、配列番号145に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である軽鎖可変ドメインとを含む。
【0101】
特定の他の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号61に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である重鎖可変ドメインと、配列番号65に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である軽鎖可変ドメインとを含む。
【0102】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列RDDYTSRDAFDX(配列番号594)(ここで、Xは、YおよびVからなる群から選択され、特に、XはYである)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0103】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列XAWDDSLNXV(配列番号598)(ここで、Xは、AおよびHからなる群から選択され、Xは、V、DおよびGからなる群から選択され、特に、Xは、VおよびDからなる群から選択され、Xは、IおよびYからなる群から選択され、Xは、PおよびVからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0104】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域と、前記で定義されたL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域とを含む。
【0105】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列SGYSSSWFDPDFDY(配列番号64)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0106】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列XSYXGXNPYVV(配列番号599)(ここで、Xは、SおよびQからなる群から選択され、Xは、EおよびAからなる群から選択され、特に、Xは、P、IおよびSからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0107】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域と、前記で定義されたL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域とを含む。
【0108】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列SYXMX(配列番号588)(ここで、XはGおよびAから選択され、XはH、SおよびLから選択される)を含むH-CDR1を含む重鎖抗原結合性領域を含む。特に、重鎖抗原結合性領域は、配列SYAMX(配列番号589)(ここで、XはSおよびLから選択される)を含むH-CDR1を含む。
【0109】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列AIGXGGDTYYADSVXG(配列番号590)(ここで、XはTおよびYから選択され、XはKおよびMから選択される)を含むH-CDR2を含む重鎖抗原結合性領域を含む。特に、重鎖抗原結合性領域は、配列AIGXGGDTYYADSVKG(配列番号591)(ここで、XはTおよびYから選択される)を含むH-CDR2を含む。
【0110】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列RDDYTSRDAFDX(配列番号594)(ここで、Xは、YおよびVからなる群から選択される)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。特に、XはYである。
【0111】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0112】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列SGSSSNIGSNTVN(配列番号46)を含むL-CDR1を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0113】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列YDDLXPS(配列番号596)(ここで、XはLおよびRから選択される)を含むL-CDR2を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。特に、軽鎖抗原結合性領域は、配列YDDLRPS(配列番号127)を含むL-CDR2を含む。
【0114】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列XAWDDSLNXV(配列番号598)(ここで、Xは、AおよびHからなる群から選択され、Xは、V、DおよびGからなる群から選択され、特に、Xは、VおよびDからなる群から選択され、Xは、IおよびYからなる群から選択され、Xは、PおよびVからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0115】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたL-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0116】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域と、前記で定義されたL-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域とを含む。
【0117】
特定のそのような実施形態においては、(配列番号121の参照VHドメインの残基30に対応する)H-CDR1の5’末端に直接隣接するアミノ酸残基はSまたはYである。
【0118】
特定の他の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列SYEMN(配列番号62)を含むH-CDR1を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0119】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列GISWNSGXIXYADSVKG(配列番号592)(ここで、XはWおよびSから選択され、XはGおよびDから選択される)を含むH-CDR2を含む重鎖抗原結合性領域を含む。特に、重鎖抗原結合性領域は、配列GISWNSGWIXYADSVKG(配列番号593)(ここで、XはGおよびDから選択される)を含むH-CDR2を含む。
【0120】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列SGYSSSWFDPDFDY(配列番号64)を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0121】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域を含む。
【0122】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列TGSSSXIGAGYDVH(配列番号595)(ここで、Xは、NおよびDから選択される)を含むL-CDR1を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0123】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列GXSNRPS(配列番号597)(ここで、XはNおよびAから選択される)を含むL-CDR2を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0124】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列XSYXGXNPYVV(配列番号599)(ここで、Xは、SおよびQからなる群から選択され、Xは、EおよびAからなる群から選択され、Xは、P、IおよびSからなる群から選択される)を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。特に、Xは、PおよびIからなる群から選択される。
【0125】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたL-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0126】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、前記で定義されたH-CDR1、H-CDR2およびH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域と、前記で定義されたL-CDR1、L-CDR2およびL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域とを含む。
【0127】
特定のそのような実施形態においては、(配列番号101の参照VHドメインの残基28~30に対応する)H-CDR1の5’末端に直接隣接する3つのアミノ酸残基はXFXであり、ここで、XはTおよびDから選択され、XはSおよびDから選択される。
【0128】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは以下のものを含む:
i)配列番号44を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号48を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ii)配列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または。
【0129】
iii)配列番号104を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号108を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
iv)配列番号124を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号128を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
v)配列番号144を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号148を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vi)配列番号164を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号168を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vii)配列番号184を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号188を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
viii)配列番号204を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号208を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ix)配列番号224を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号228を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
x)配列番号244を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号248を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xi)配列番号264を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号268を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xii)配列番号284を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号288を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiii)配列番号304を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号308を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiv)配列番号324を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号328を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xv)配列番号344を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号348を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvi)配列番号364を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号368を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvii)配列番号384を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号388を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xviii)配列番号404を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号408を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xix)配列番号424を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号428を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xx)配列番号444を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号448を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxi)配列番号464を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号468を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxii)配列番号484を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号488を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiii)配列番号504を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号508を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiv)配列番号524を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号528を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxv)配列番号544を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号548を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxvi)配列番号564を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域および配列番号568を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域。
【0130】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号42、62、102、122、142、162、182、202、222、242、262、282、302、322、342、362、382、402、422、442、462、482、502、522、542および562のいずれか1つを含むH-CDR1を含む重鎖抗原結合性領域を含む。。
【0131】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号43、63、103、123、143、163、183、203、223、243、263、283、303、323、343、363、383、403、423、443、463、483、503、523、543および563のいずれか1つを含むH-CDR2を含む重鎖抗原結合性領域を含む。。
【0132】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号46、66、106、126、146、166、186、206、226、246、266、286、306、326、346、366、386、406、426、446、466、486、506、526、546および566のいずれか1つを含むL-CDR1を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0133】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号47、67、107、127、147、167、187、207、227、247、267、287、307、327、347、367、387、407、427、447、467、487、507、527、547および567のいずれか1つを含むL-CDR2を含む軽鎖抗原結合性領域を含む。
【0134】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは以下のものを含む:
i)配列番号42を含むH-CDR1、配列番号43を含むH-CDR2および配列番号44を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号46を含むL-CDR1、配列番号47を含むL-CDR2および配列番号48を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ii)配列番号62を含むH-CDR1、配列番号63を含むH-CDR2および配列番号64を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号66を含むL-CDR1、配列番号67を含むL-CDR2および配列番号68を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
iii)配列番号102を含むH-CDR1、配列番号103を含むH-CDR2および配列番号104を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号106を含むL-CDR1、配列番号107を含むL-CDR2および配列番号108を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
iv)配列番号122を含むH-CDR1、配列番号123を含むH-CDR2および配列番号124を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号126を含むL-CDR1、配列番号127を含むL-CDR2および配列番号128を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
v)配列番号142を含むH-CDR1、配列番号143を含むH-CDR2および配列番号144を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号146を含むL-CDR1、配列番号147を含むL-CDR2および配列番号148を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vi)配列番号162を含むH-CDR1、配列番号163を含むH-CDR2および配列番号164を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号166を含むL-CDR1、配列番号167を含むL-CDR2および配列番号168を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
vii)配列番号182を含むH-CDR1、配列番号183を含むH-CDR2および配列番号184を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号186を含むL-CDR1、配列番号187を含むL-CDR2および配列番号188を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
viii)配列番号202を含むH-CDR1、配列番号203を含むH-CDR2および配列番号204を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号206を含むL-CDR1、配列番号207を含むL-CDR2および配列番号208を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
ix)配列番号222を含むH-CDR1、配列番号223を含むH-CDR2および配列番号224を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号226を含むL-CDR1、配列番号227を含むL-CDR2および配列番号228を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
x)配列番号242を含むH-CDR1、配列番号243を含むH-CDR2および配列番号244を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号246を含むL-CDR1、配列番号247を含むL-CDR2および配列番号248を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xi)配列番号262を含むH-CDR1、配列番号263を含むH-CDR2および配列番号264を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号266を含むL-CDR1、配列番号267を含むL-CDR2および配列番号268を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xii)配列番号282を含むH-CDR1、配列番号283を含むH-CDR2および配列番号284を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号286を含むL-CDR1、配列番号287を含むL-CDR2および配列番号288を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiii)配列番号302を含むH-CDR1、配列番号303を含むH-CDR2および配列番号304を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号306を含むL-CDR1、配列番号307を含むL-CDR2および配列番号308を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xiv)配列番号322を含むH-CDR1、配列番号323を含むH-CDR2および配列番号324を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号326を含むL-CDR1、配列番号327を含むL-CDR2および配列番号328を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xv)配列番号342を含むH-CDR1、配列番号343を含むH-CDR2および配列番号344を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号346を含むL-CDR1、配列番号347を含むL-CDR2および配列番号348を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvi)配列番号362を含むH-CDR1、配列番号363を含むH-CDR2および配列番号364を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号366を含むL-CDR1、配列番号367を含むL-CDR2および配列番号368を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xvii)配列番号382を含むH-CDR1、配列番号383を含むH-CDR2および配列番号384を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号386を含むL-CDR1、配列番号387を含むL-CDR2および配列番号388を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xviii)配列番号402を含むH-CDR1、配列番号403を含むH-CDR2および配列番号404を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号406を含むL-CDR1、配列番号407を含むL-CDR2および配列番号408を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xix)配列番号422を含むH-CDR1、配列番号423を含むH-CDR2および配列番号424を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号426を含むL-CDR1、配列番号427を含むL-CDR2および配列番号428を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xx)配列番号442を含むH-CDR1、配列番号443を含むH-CDR2および配列番号444を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号446を含むL-CDR1、配列番号447を含むL-CDR2および配列番号448を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxi)配列番号462を含むH-CDR1、配列番号463を含むH-CDR2および配列番号464を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号466を含むL-CDR1、配列番号467を含むL-CDR2および配列番号468を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxii)配列番号482を含むH-CDR1、配列番号483を含むH-CDR2および配列番号484を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号486を含むL-CDR1、配列番号487を含むL-CDR2および配列番号488を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiii)配列番号502を含むH-CDR1、配列番号503を含むH-CDR2および配列番号504を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号506を含むL-CDR1、配列番号507を含むL-CDR2および配列番号508を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxiv)配列番号522を含むH-CDR1、配列番号523を含むH-CDR2および配列番号524を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号526を含むL-CDR1、配列番号527を含むL-CDR2および配列番号528を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxv)配列番号542を含むH-CDR1、配列番号543を含むH-CDR2および配列番号544を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号546を含むL-CDR1、配列番号547を含むL-CDR2および配列番号548を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域;または
xxvi)配列番号562を含むH-CDR1、配列番号563を含むH-CDR2および配列番号564を含むH-CDR3を含む重鎖抗原結合性領域ならびに配列番号566を含むL-CDR1、配列番号567を含むL-CDR2および配列番号568を含むL-CDR3を含む軽鎖抗原結合性領域。
【0135】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは以下のものを含む:
i)配列番号41を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号45を含む可変軽鎖ドメイン;または
ii)配列番号61を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号65を含む可変軽鎖ドメイン;または
iii)配列番号101を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号105を含む可変軽鎖ドメイン;または
iv)配列番号121を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号125を含む可変軽鎖ドメイン;または
v)配列番号141を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号145を含む可変軽鎖ドメイン;または
vi)配列番号161を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号165を含む可変軽鎖ドメイン;または
vii)配列番号181を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号185を含む可変軽鎖ドメイン;または
viii)配列番号201を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号205を含む可変軽鎖ドメイン;または
ix)配列番号221を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号225を含む可変軽鎖ドメイン;または
x)配列番号241を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号245を含む可変軽鎖ドメイン;または
xi)配列番号261を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号265を含む可変軽鎖ドメイン;または
xii)配列番号281を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号285を含む可変軽鎖ドメイン;または
xiii)配列番号301を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号305を含む可変軽鎖ドメイン;または
xiv)配列番号321を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号325を含む可変軽鎖ドメイン;または
xv)配列番号341を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号345を含む可変軽鎖ドメイン;または
xvi)配列番号361を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号365を含む可変軽鎖ドメイン;または
xvii)配列番号381を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号385を含む可変軽鎖ドメイン;または
xviii)配列番号401を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号405を含む可変軽鎖ドメイン;または
xix)配列番号421を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号425を含む可変軽鎖ドメイン;または
xx)配列番号441を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号445を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxi)配列番号461を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号465を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxii)配列番号481を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号485を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxiii)配列番号501を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号505を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxiv)配列番号521を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号525を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxv)配列番号541を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号545を含む可変軽鎖ドメイン;または
xxvi)配列番号561を含む可変重鎖ドメインおよび配列番号565を含む可変軽鎖ドメイン。
【0136】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体はIgG抗体である。特定のそのような実施形態においては、本発明による単離された抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である。最も詳細には、本発明による単離された抗体はIgG1またはIgG4抗体である。
【0137】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体は以下のものを含む:
i)配列番号57を含む重鎖および配列番号58を含む軽鎖;または
ii)配列番号77を含む重鎖および配列番号78を含む軽鎖;または
iii)配列番号117を含む重鎖および配列番号118を含む軽鎖;または
iv)配列番号137を含む重鎖および配列番号138を含む軽鎖;または
v)配列番号157を含む重鎖および配列番号158を含む軽鎖;または
vi)配列番号177を含む重鎖および配列番号178を含む軽鎖;または
vii)配列番号197を含む重鎖および配列番号198を含む軽鎖;または
viii)配列番号217を含む重鎖および配列番号218を含む軽鎖;または
ix)配列番号237を含む重鎖および配列番号238を含む軽鎖;または
x)配列番号257を含む重鎖および配列番号258を含む軽鎖;または
xi)配列番号277を含む重鎖および配列番号278を含む軽鎖;または
xii)配列番号297を含む重鎖および配列番号298を含む軽鎖;または
xiii)配列番号317を含む重鎖および配列番号318を含む軽鎖;または
xiv)配列番号337を含む重鎖および配列番号338を含む軽鎖;または
xv)配列番号357を含む重鎖および配列番号358を含む軽鎖;または
xvi)配列番号377を含む重鎖および配列番号378を含む軽鎖;または
xvii)配列番号397を含む重鎖および配列番号398を含む軽鎖;または
xviii)配列番号417を含む重鎖および配列番号418を含む軽鎖;または
xix)配列番号437を含む重鎖および配列番号438を含む軽鎖;または
xx)配列番号457を含む重鎖および配列番号458を含む軽鎖;または
xxi)配列番号477を含む重鎖および配列番号478を含む軽鎖;または
xxii)配列番号497を含む重鎖および配列番号498を含む軽鎖;または
xxiii)配列番号517を含む重鎖および配列番号518を含む軽鎖;または
xxiv)配列番号537を含む重鎖および配列番号538を含む軽鎖;または
xxv)配列番号557を含む重鎖および配列番号558を含む軽鎖;または
xxvi)配列番号577を含む重鎖および配列番号578を含む軽鎖。
【0138】
特定の実施形態においては、本発明による抗原結合性フラグメントはscFv、Fab、Fab’フラグメントまたはF(ab’)2フラグメントである。
【0139】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントはモノクローナル抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0140】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントはヒト抗体、ヒト化抗体もしくはキメラ抗体またはその抗原結合性フラグメント、より詳細には、完全ヒト抗体またはその抗原結合性フラグメントである。
【0141】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは単一特異性抗体である。特定の他の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、Sema3Aおよび少なくとも1つの追加的な抗原に結合する多重特異性抗体、例えば二重特異性、三重特異性または四重特異性抗体である。
【0142】
もう1つの態様においては、本発明は、ヒトSema3Aへの結合に関して本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントと競合する単離された抗体またはその抗原結合性フラグメントに関する。
【0143】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントを含む抗体コンジュゲートに関する。例えば、抗体は細胞毒性物質、免疫毒素、トキソフォア(毒素族)または放射性同位体にコンジュゲート化されうる。検出可能なマーカーにコンジュゲート化された抗Sema3A抗体も提供する。好ましいマーカーは放射能標識、酵素、発色団または発蛍光団である。抗体は、高分子量分子、例えばペプチドまたはタンパク質、例えばインターロイキンにもコンジュゲート化されうる。
【0144】
本発明によるADCは、1以上の細胞毒性物質、例えば化学療法剤または薬物、増殖抑制物質、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物もしくは動物に由来する酵素的に活性な毒素またはその断片)または放射性同位体にコンジュゲート化された抗Sema3A抗体を含む。
【0145】
1つの実施形態においては、本発明によるADCは、メイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号および欧州特許第EP0425235号を参照されたい)(これらに限定されるものではない);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬物部分DEおよびDF(MMAEおよびMMAF)(米国特許第5,635,483号、第5,780,588号および第7,498,298号を参照されたい);ドラスタチン;カリケアマイシンまたはその誘導体;アントラサイクリン、例えばダウノマイシンまたはドキソルビシン;メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセルおよびオルタタキセル;トリコテセン;ならびにCC1065を含む1以上の薬物にコンジュゲート化された、本明細書に記載されている抗Sema3A抗体を含む。
【0146】
もう1つの実施形態においては、本発明によるADCは、酵素的に活性な毒素またはその断片、限定的なものではないが例えばジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖[シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来]、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(P API、P APIIおよびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)インヒビター、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)インヒビター、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシンおよびトリコテセンにコンジュゲート化された、本明細書に記載されている抗Sema3A抗体を含む。
【0147】
もう1つの実施形態においては、本発明によるACDは、放射性コンジュゲートを形成するように放射性原子にコンジュゲート化された、本明細書に記載されている抗Sema3A抗体を含む。放射性コンジュゲートの製造には、種々の放射性同位体が利用可能である。具体例には、227Th、225Ac、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、およびLuの放射性同位体が含まれる。放射性コンジュゲートを検出に使用する場合、それはシンチグラフィー研究用の放射性原子、例えばTc99m、または核磁気共鳴(NMR)イメージング用のスピンラベル、例えば、再びヨウ素123、ヨウ素131、インジウム111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガンまたは鉄を含みうる。
【0148】
抗体と細胞毒性物質とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、ジメチルアジピミダートHCl)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアナート(例えば、トルエン2,6-ジイソシアナート)、およびビス-活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して製造されうる。
【0149】
リンカーは、細胞内での細胞毒性薬の遊離を促進する「切断可能リンカー」でありうる。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカーまたはジスルフィド含有リンカー(Chariら,Cancer Res.52:127-131(1992))が挙げられる。
【0150】
本発明によるACDには、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCCおよびスルホ-SMPBならびにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾアート)(これらは、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから商業的に入手可能である)(これらに限定されるものではない)を含む架橋試薬を使用して製造されるものが含まれる。
【0151】
本発明による好ましい抗体および3つの従来技術の抗体のアミノ酸配列および核酸配列を表1および表1Aに列挙する。
【0152】
ペプチド変異体
本発明の抗体または抗原結合性フラグメントは、本明細書において提供される特定のペプチド配列に限定されるものではない。むしろ、本発明はこれらのポリペプチドの変異体をも包含する。本開示および従来利用可能な技術および参考文献を参照して、当業者は、本明細書に開示されている抗体の機能的変異体を製造し、試験し、および使用することが可能であり、一方、Sema3Aに結合する能力を有するこれらの変異体は本発明の範囲内に含まれると理解される。
【0153】
変異体には、例えば、開示されているペプチド配列と比較して改変した少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)(超可変)および/またはフレームワーク(FR)(可変)ドメイン/位置を有する抗体が含まれうる。
【0154】
CDRまたはFR領域内の1以上のアミノ酸残基を改変することによって、当業者は、突然変異または多様化した抗体配列を常套的に生成させることが可能であり、これを、例えば新規特性または改善された特性に関して、抗原に対してスクリーニングすることが可能である。
【0155】
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、VH配列およびVL配列が、表1および表1Aに示されているとおりに選択される、抗体またはその抗原結合性フラグメントである。当業者は表1および表1Aにおけるデータを使用して、本発明の範囲内であるペプチド変異体を設計することが可能である。変異体は、1以上のCDR領域におけるアミノ酸を変化させることによって構築されることが好ましく、変異体は1以上の改変フレームワーク領域をも有しうる。例えば、生殖系列配列と比較して残基における逸脱が存在する、ペプチドFRドメインが変更されうる。
【0156】
あるいは、当業者は、例えばKnappik A.ら,JMB 2000,296:57-86に記載されている手順を用いて、本明細書に開示されているアミノ酸配列をそのような抗体の同じクラスの既知配列と比較することによって、同じ分析を行うことが可能であろう。
【0157】
更に、更なる最適化のための出発点として1つの抗体を使用し、該抗体における1以上のアミノ酸残基、好ましくは、1以上のCDRにおけるアミノ酸残基を多様化させることによって、そして、得られた抗体変異体集合体を、改善した特性を有する変異体に関してスクリーニングすることによって、変異体が得られうる。特に好ましいのは、VLおよび/またはVHのCDR3における1以上のアミノ酸残基の多様化である。多様化は、例えば、トリヌクレオチド突然変異誘発(TRIM)技術を用いてDNA分子の集合体を合成することによって行われうる(Virnekas B.ら,Nucl.Acids Res.1994,22:5600)。抗体またはその抗原結合性フラグメントには、例えば、半減期の変化をもたらす修飾(例えば、Fc部分の修飾、またはPEGのような追加的な分子の結合)、結合アフィニティの変化をもたらす修飾またはADCCもしくはCDC活性の変化をもたらす修飾(これらに限定されるものではない)を含む修飾/変異を有する分子が含まれる。
【0158】
保存的アミノ酸変異体
本明細書に記載されている抗体ペプチド配列の全体的な分子構造を保持するポリペプチド変異体が製造されうる。個々のアミノ酸の特性を考慮して、幾つかの合理的な置換が当業者によって認識されるであろう。アミノ酸置換、すなわち「保存的置換」は、例えば、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または両親媒性における類似性に基づいて行われうる。
【0159】
例えば、(a)無極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。(b)極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが含まれる。(c)正荷電(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。(d)負荷電(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。置換は、典型的には、グループ(a)~(d)内で行われうる。また、グリシンおよびプロリンは、α-ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて、相互に置換されうる。同様に、アラニン、システイン、ロイシン、メチオニン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジンおよびリジンのような特定のアミノ酸は、αヘリックスにおいて、より一般的に見出され、一方、バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびスレオニンは、β-プリーツシートにおいて、より一般的に見出される。グリシン、セリン、アスパラギン酸、アスパラギンおよびプロリンが順によく見出される。幾つかの好ましい置換は以下のグループ内で行われうる:(i)SおよびT;(ii)PおよびG;ならびに(iii)A、V、LおよびI。既知の遺伝暗号ならびに組換えおよび合成DNA技術があれば、熟練した科学者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することが可能である。
【0160】
グリコシル化変異体
抗体がFc領域を含む場合、それに結合している炭水化物は改変されうる。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのKabat EU番号付けを用いた場合のAsn297へのN結合によって一般に結合している分枝状二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wrightら,Trends Biotechnol.15:26-32(1997)を参照されたい。
【0161】
特定の実施形態においては、本明細書において提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるために改変される。抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、発現系(例えば、宿主細胞)を改変することによって、および/または1以上のグリコシル化部位が生成もしくは除去されるようにアミノ酸配列を改変することによって、簡便に達成されうる。
【0162】
本発明の1つの実施形態においては、低下したエフェクター機能を有するアグリコシル抗体または抗体誘導体が原核生物宿主における発現によって製造される。適切な原核生物宿主には、大腸菌(E.coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0163】
1つの実施形態においては、低下したエフェクター機能を有する抗体変異体を提供し、これは、該抗体のFc部分のCH2ドメイン内の保存されたN結合部位における修飾によって特徴付けられる。本発明の1つの実施形態においては、修飾は、重鎖グリコシル化部位におけるグリコシル化を妨げるための、その部位における突然変異を含む。したがって、本発明の好ましい1つの実施形態においては、アグリコシル抗体または抗体誘導体は、重鎖グリコシル化部位の突然変異、すなわち、Kabat EU番号付けを用いた場合のN297の突然変異によって製造され、適切な宿主細胞において発現される。
【0164】
本発明のもう1つの実施形態においては、アグリコシル抗体または抗体誘導体は、低下したエフェクター機能を有し、ここで、該抗体または抗体誘導体のFc部分のCH2ドメイン内の保存されたN結合部位における修飾は、CH2ドメイングリカンの除去、すなわち、脱グリコシル化を含む。これらのアグリコシル抗体は通常の方法によって作製され、次いで酵素的に脱グリコシル化されうる。抗体の酵素的脱グリコシル化の方法は当技術分野で周知である(例えば、Winkelhake & Nicolson(1976),J Biol Chem.251(4):1074-80)。
【0165】
本発明のもう1つの実施形態においては、脱グリコシル化は、グリコシル化インヒビターであるツニカマイシンを使用して達成されうる(Nose & Wigzell(1983),Proc Natl Acad Sci USA,80(21):6632-6)。すなわち、修飾は、該抗体のFc部分のCH2ドメイン内の保存されたN結合部位におけるグリコシル化の防止である。
【0166】
1つの実施形態においては、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体を提供する。例えば、そのような抗体におけるフコースの量は1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%でありうる。フコースの量は、例えばWO 2008/077546に記載されているとおりに、MALDI-TOF質量分析法で測定される、Asn297に結合した全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッドおよび高マンノース構造)の合計に対するAsn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域における約297位(Fc領域残基のEu番号付け)に位置するアスパラギン残基を意味する。しかし、Asn297は、抗体におけるわずかな配列変異ゆえに、297位の約±3アミノ酸上流または下流、すなわち294位と300位との間に位置しうる。そのようなフコシル化変異体は、改善したADCC機能を有しうる。
【0167】
「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関連する刊行物の例には、Okazakiら J Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnukiら Biotech.Bioeng.87:614(2004)が含まれる。
【0168】
脱フコシル化抗体を産生しうる細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠損しているLec13 CHO細胞(Ripkaら,Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);およびWO 2004/056312)およびノックアウト細胞株、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.ら,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006))が含まれる。
【0169】
更に、二分岐(bisected)オリゴ糖を有する抗体変異体を提供し、例えば、この場合、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている。そのような抗体変異体は、低減したフコシル化および/または改善したADCC機能を有しうる。そのような抗体変異体の例は、例えば、WO 2003/011878、米国特許第6,602,684号およびUS 2005/0123546に記載されている。
【0170】
Fc領域に結合したオリゴ糖における少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も提供する。そのような抗体変異体は、改善したCDC機能を有しうる。そのような抗体変異体は、例えば、WO 1997/30087、WO 1998/58964およびWO 1999/22764に記載されている。
【0171】
FC領域変異体
特定の実施形態においては、本明細書において提供される抗体のFc領域(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)内に1以上のアミノ酸修飾(例えば、置換)を導入し、それにより、Fc領域変異体を生成させることが可能である。
【0172】
特定の実施形態においては、本発明は、必ずしも全てではないが一部のエフェクター機能を有する抗体変異体を想定しており、これにより、それは、インビボでの抗体の半減期は重要であるが特定のエフェクター機能(例えば、補体およびADCC)は不要または有害である用途のための望ましい候補となる。CDCおよび/またはADCC活性の低下/枯渇を確認するために、インビトロおよび/またはインビボ細胞傷害性アッセイが行われうる。例えば、抗体がFcγR結合を欠いている(したがってADCC活性を欠いている可能性がある)が、FcRn結合能力を保持していることを確認するために、Fc受容体(FcR)結合アッセイが行われうる。幾つかの実施形態においては、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)の変化(すなわち、改善または減少)をもたらす改変がFc領域に施される。
【0173】
特定の実施形態においては、本発明は、増加または減少した半減期を有する抗体変異体を想定している。増加した半減期、および新生児Fc受容体(FcRn)への結合[これは胎児への母体IgGの移行をもたらす(Guyerら,J Immunol.117:587(1976)およびKimら,J Immunol.24:249(1994))]の改善を伴う抗体が、US2005/0014934(Hintonら)に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1以上の置換をそれにおいて有するFc領域を含む。
【0174】
抗体の作製
本発明の抗体は、多数の健康なボランティアの抗体から単離されたアミノ酸配列に基づく組換え抗体ライブラリーから誘導されうる。例えば、n-CoDeR(登録商標)技術を用いて、完全ヒトCDRを新たな抗体分子へと組換える(Carlson & Soderlind,Expert Rev Mol Diagn.2001 May;1(1):102-8)。あるいは、例えば、Hoet RMら,Nat Biotechnol 2005;23(3):344-8に記載されている完全ヒト抗体ファージディスプレイライブラリーとしての抗体ライブラリーを使用して、Sema3A特異的抗体を単離することが可能である。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体フラグメントは本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体フラグメントとみなされる。
【0175】
更に、ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答して無傷ヒト抗体またはヒト可変領域含有無傷抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって製造されうる。そのような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座と置き換わる又は染色体外に存在する若しくは動物の染色体内にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含む。例えば、遺伝子操作されたマウスの免疫化、とりわけ、hMAbマウス(例えば、VelocImmuneマウス(登録商標)またはXENOMOUSE(登録商標))の免疫化が行われうる。
【0176】
更に、ハイブリドーマ技術(例えば、KohlerおよびMilstein Nature.1975 Aug 7;256(5517):495-7を参照されたい)を使用して抗体が製造可能であり、それにより、例えば、キメラ抗体またはヒト化抗体に変換されうるマウス、ラットまたはウサギ抗体が得られうる。ヒト化抗体およびその製造方法は、例えば、AlmagroおよびFransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、以下のものに更に詳細に記載されている:Riechmannら,Nature 332:323-329(1988);Queenら,Proc.Natl Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号および第7,087,409号;Kashmiriら,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフティングを記載している);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載している);Dall’Acquaら,Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載している);ならびにOsboumら,Methods 36:61-68(2005)、およびKlimkaら,Br.J.Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングのための「ガイド化(guided)選択」アプローチを記載している)。
【0177】
組換え抗体ライブラリーを使用する抗体の作製の例が提供される。
【0178】
本発明によるDNA分子
本発明はまた、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列に関する。本発明による抗体または抗原結合性フラグメントをコードする単離された核酸配列は、例えば、Sambrookら,1989およびAusubelら,1989に記載されている技術によって、あるいは化学合成[例えば、オリゴヌクレオチド合成(1984,Gait編、IRL Press,Oxford)に記載されている技術]によって製造されうる。発現される抗体に使用されるDNA配列およびそれぞれの配列番号を表1および1Aに示す。これらの配列は、特定の場合には、哺乳類発現用に最適化される。本発明のDNA分子は、本明細書に開示されている配列に限定されず、その変異体をも含む。本発明に含まれるDNA変異体は、ハイブリダイゼーションにおけるそれらの物理的特性を参照することによって記載されうる。DNAを使用して、その相補体を特定することが可能であり、DNAは二本鎖であるため、核酸ハイブリダイゼーション技術を用いて、その同等物またはホモログを特定することが可能である、と当業者は認識するであろう。また、ハイブリダイゼーションは100%未満の相補性で生じうることも認識されるであろう。しかし、条件を適切に選択すれば、ハイブリダイゼーション技術を用いて、特定のプローブに対するそれらの構造的関連性に基づいてDNA配列を識別することが可能である。そのような条件に関する指針は、Sambrookら,1989(前掲)およびAusubelら,1995(Ausubel,F.M.,Brent,R.,Kingston,R.E.,Moore,D.D.,Sedman,J.G.,Smith,J.A.,& Struhl,K.編(1995).Current Protocols in Molecular Biology.New York:John Wiley and Sons)を参照されたい。
【0179】
2つのポリヌクレオチド配列間の構造的類似性は、2つの配列が互いにハイブリダイズする条件の「ストリンジェンシー」の関数として表されうる。本明細書中で用いる「ストリンジェンシー」なる語は、条件がハイブリダイゼーションを妨げる程度を意味する。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーションを強く妨げ、そのような条件下では、最も構造的に関連した分子のみが互いにハイブリダイズする。逆に、非ストリンジェントな条件は、より低い構造的関連性の程度を示す分子のハイブリダイゼーションを促進する。したがって、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、2つの核酸配列の構造的関係と直接的に相関する。
【0180】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、全DNA濃度、イオン強度、温度、プローブサイズ、および水素結合を破壊する物質の存在を含む多くの因子の関数である。ハイブリダイゼーションを促進する因子には、高いDNA濃度、高いイオン強度、低い温度、より長いプローブサイズ、および水素結合を破壊する物質の非存在が含まれる。ハイブリダイゼーションは、典型的には、「結合」段階と「洗浄」段階との2つの段階で行われる。
【0181】
機能的に同等なDNA変異体
本発明の範囲内の更にもう1つのクラスのDNA変異体は、それらがコードする産物を参照して記載されうる。これらの機能的に同等なポリヌクレオチドは、それらが遺伝暗号の縮重ゆえに同じペプチド配列をコードすることによって特徴付けられる。
【0182】
本明細書で提供されるDNA分子の変異体は幾つかの異なる方法で構築されうると認識される。例えば、それらは完全合成DNAとして構築されうる。オリゴヌクレオチドを効率的に合成する方法が広範に利用可能である。Ausubelら,section 2.11,Supplement 21(1993)を参照されたい。Khoranaら,J.Mol.Biol.72:209 217(1971)に最初に報告された方法で、重複オリゴヌクレオチドが合成され、合体されうる。Ausubelら(前掲),Section 8.2も参照されたい。合成DNAは、好ましくは、適切なベクター内へのクローニングを促進するために、遺伝子の5’末端および3’末端に設けられた簡便な制限部位を含有するように設計される。
【0183】
示されているとおり、変異体の作製方法は、本明細書に開示されているDNAの1つから開始し、次いで部位特異的突然変異誘発を行うことである。Ausubelら(前掲),chapter 8,Supplement 37(1997)を参照されたい。典型的な方法においては、標的DNAを一本鎖DNAバクテリオファージビヒクル内にクローニングする。一本鎖DNAを単離し、所望のヌクレオチド改変を含有するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズさせる。相補鎖を合成し、二本鎖ファージを宿主内に導入する。得られた子孫の幾つかは所望の突然変異体を含有し、これを、DNA配列決定を用いて確認することが可能である。また、子孫ファージが所望の突然変異体である確率を増加させる種々の方法が利用可能である。これらの方法は当業者によく知られており、そのような突然変異体を作製するためのキットが商業的に入手可能である。
【0184】
組換えDNA構築物および発現
本発明は更に、本発明によるヌクレオチド配列の1以上を含む組換えDNA構築物を提供する。本発明の組換え構築物は、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体をコードするDNA分子が挿入されるベクター、例えばプラスミド、ファージミド、ファージまたはウイルスベクターと組合せて使用されうる。
【0185】
したがって、1つの態様においては、本発明は、本発明による核酸配列を含むベクターに関する。
【0186】
本明細書において提供される抗体、抗原結合性部分またはその変異体は、軽鎖および重鎖またはその一部をコードする核酸配列の、宿主細胞における組換え発現によって製造されうる。抗体、抗原結合性部分またはその変異体を組換え発現させるために、軽鎖および/または重鎖またはその一部をコードするDNA断片を含有する1以上の組換え発現ベクターを宿主細胞にトランスフェクトして、宿主細胞内で軽鎖および重鎖を発現させる。標準的な組換えDNA法を用いて、重鎖および軽鎖をコードする核酸を調製および/または入手し、これらの核酸を組換え発現ベクター内に組み込み、該ベクターを宿主細胞内に導入する。そのような方法は、例えば、Sambrook,FritschおよびManiatis(編),Molecular Cloning;A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,(1989)、Ausubel,F.M.ら(編)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates,(1989)、およびBossらの米国特許第4,816,397号に記載されている。
【0187】
また、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする核酸配列は、例えば、完全長抗体鎖、FabフラグメントまたはscFvをコードする核酸配列に変換されうる。VLまたはVHをコードするDNA断片は、例えば抗体定常領域または柔軟性リンカーをコードする別のDNA断片に(それらの2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームとなるように)機能的に連結されうる。ヒト重鎖および軽鎖定常領域の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照されたい)、これらの領域を含むDNA断片は標準的なPCR増幅によって得られうる。
【0188】
scFvをコードするポリヌクレオチド配列を作製するためには、柔軟性リンカーによって連結されたVL領域とVH領域とを含有する連続的な一本鎖タンパク質としてVH配列およびVL配列が発現されるように、VHおよびVLをコードする核酸を、柔軟性リンカーをコードする別の断片に機能的に連結することが可能である(例えば、Birdら(1988)Science 242:423-426;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCaffertyら,Nature(1990)348:552-554を参照されたい)。
【0189】
抗体、その抗原結合性フラグメントまたはその変異体を発現させるためには、標準的な組換えDNA発現法が用いられうる(例えば、Goeddel;Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)を参照されたい)。例えば、所望のポリペプチドをコードするDNAを発現ベクター内に挿入し、次いでこれを適切な宿主細胞内にトランスフェクトすることが可能である。適切な宿主細胞は原核細胞および真核細胞である。原核宿主細胞の例としては、例えば細菌が挙げられ、真核宿主細胞の例としては、酵母、昆虫および昆虫細胞、植物および植物細胞、トランスジェニック動物または哺乳類細胞が挙げられる。宿主細胞内への組換え構築物の導入は、標準的な技術、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入またはファージ感染を用いて行われうる。
【0190】
幾つかの実施形態においては、重鎖および軽鎖をコードするDNAを別々のベクター内に挿入する。他の実施形態においては、重鎖および軽鎖をコードするDNAを同じベクター内に挿入する。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル、発現が構成的であるか誘導的であるかのような要因によって影響を受けると理解される。
【0191】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、本発明による抗体もしくは抗原結合性フラグメントを発現するおよび/または本発明による核酸もしくは本発明によるベクターを含む単離された細胞に関する。
【0192】
単離された細胞は、発現ベクターが利用可能である実質的に任意の細胞でありうる。単離された細胞は、例えば、高等真核宿主細胞、例えば哺乳類細胞、下等真核宿主細胞、例えば酵母細胞であることが可能であり、原核細胞、例えば細菌細胞であることも可能である。
【0193】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による細胞を培養することを含む、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントの製造方法に関する。特定の実施形態においては、本発明による細胞を抗体発現のための適切な条件下で培養し、抗体またはその抗原結合性フラグメントを回収する。特定の実施形態においては、抗体またはその抗原結合性フラグメントを、特に少なくとも95重量%の均質性まで、精製する。
【0194】
細菌発現
細菌の使用に有用な発現ベクターは、機能的プロモーターの存在下の機能的リーディングフェーズにおける適切な翻訳開始および終結シグナルと共に、所望のタンパク質をコードするDNA配列を挿入することによって構築される。ベクターは、ベクターの維持が確保され、必要に応じて宿主内での増幅がもたらされるように、1以上の表現型選択マーカーおよび複製起点を含む。形質転換のための適切な原核生物宿主には、大腸菌(E.coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0195】
細菌ベクターは、例えば、バクテリオファージ、プラスミドまたはファージミドに基づくものでありうる。これらのベクターは、選択マーカーと、よく知られたクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)のエレメントを典型的に含有する商業的に入手可能なプラスミドに由来する細菌複製起点とを含有しうる。適切な宿主株の形質転換および適切な細胞密度への宿主株の増殖の後、選択されたプロモーターを適切な手段(例えば、温度変化または化学的誘導)によって抑制解除/誘導し、細胞を追加的な期間にわたって培養する。典型的には、細胞を遠心分離によって採集し、物理的または化学的手段によって破壊し、得られた粗抽出物を更なる精製のために保存する。
【0196】
細菌系においては、発現されるタンパク質に意図される用途に応じて、多数の発現ベクターが有利に選択されうる。例えば、抗体の作製またはペプチドライブラリーのスクリーニングのためにそのようなタンパク質を大量に製造する場合には、例えば、容易に精製される高レベルの融合タンパク質産物の発現を導くベクターが望ましいかもしれない。
【0197】
したがって、本発明の1つの実施形態は、本発明の新規抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターである。
【0198】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体には、天然に精製された産物、化学合成法の産物、および原核生物宿主[例えば、大腸菌(E.coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種を含む]から組換え技術によって産生された産物が含まれる。
【0199】
哺乳類発現
哺乳類宿主細胞発現のための好ましい調節配列には、哺乳類細胞における高レベルのタンパク質発現を導くウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)由来のプロモーターおよび/またはエンハンサー(例えば、CMVプロモーター/エンハンサー)、シミアンウイルス40(SV40)(例えば、SV40プロモーター/エンハンサー)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマが含まれる。抗体の発現は構成的または調節性でありうる(例えば、Tet系と組合されたテトラサイクリンのような小分子誘導因子の添加または除去によって誘導可能)。ウイルス調節エレメントおよびその配列の更なる説明は、例えば、StinskiによるU.S.5,168,062、BellらによるU.S.4,510,245およびSchaffnerらによるU.S.4,968,615を参照されたい。組換え発現ベクターは複製起点および選択マーカーをも含みうる(例えば、U.S.4,399,216、4,634,665およびU.S.5,179,017を参照されたい)。適切な選択マーカーには、ベクターが導入された宿主細胞における、薬物に対する耐性を付与する遺伝子、例えばG418、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、ゼオシン/ブレオマイシンもしくはメトトレキサート、または栄養要求性を利用する選択マーカー、例えばグルタミンシンセターゼ(Bebbingtonら,Biotechnology(NY).1992 Feb;10(2):169-75)が含まれる。例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子はメトトレキサートに対する耐性を付与し、neo遺伝子はG418に対する耐性を付与し、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)からのbsd遺伝子はブラストサイジンに対する耐性を付与し、ピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼはピューロマイシンに対する耐性を付与し、Sh ble遺伝子産物はゼオシンに対する耐性を付与し、ハイグロマイシンに対する耐性は大腸菌(E.coli)ハイグロマイシン耐性遺伝子(hygまたはhph)によって付与される。また、DHFRまたはグルタミンシンセターゼのような選択マーカーは、MTXおよびMSXと組合された増幅技術に有用である。
【0200】
宿主細胞内への発現ベクターのトランスフェクションは、標準的な技術、縦えばエレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、ポリカチオンに基づくトランスフェクション、例えばポリエチレンイミン(PEI)に基づくトランスフェクション、およびDEAE-デキストラントランスフェクションを用いて行われうる。
【0201】
本明細書において提供される抗体、その抗原結合性フラグメントまたはその変異体を発現させるための適切な哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、例えばCHO-K1、CHO-S、CHO-K1SV[DHFRマーカー、例えばR.J.KaufmanおよびP.A.Sharp(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されているものと共に使用される、UrlaubおよびChasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220ならびにUrlaubら,Cell.1983 Jun;33(2):405-12に記載されているdhfr-CHO細胞;ならびにFanら,Biotechnol Bioeng.2012 Apr;109(4):1007-15に例示されている他のノックアウト細胞を含む]、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、HEK293細胞、HKB11細胞、BHK21細胞、CAP細胞、EB66細胞およびSP2細胞が含まれる。
【0202】
また、HEK293、HEK293T、HEK293-EBNA、HEK293E、HEK293-6E、HEK293-Freestyle、HKB11、Expi293F、293EBNALT75、CHO Freestyle、CHO-S、CHO-K1、CHO-K1SV、CHOEBNALT85、CHOS-XE、CHO-3E7またはCAP-T細胞のような発現系においては、発現は一過性または半安定性でありうる(例えば、Durocherら,Nucleic Acids Res.2002 Jan 15;30(2):E9)。
【0203】
幾つかの実施形態においては、発現ベクターは、宿主細胞が増殖する培地内に発現タンパク質が分泌されるように設計される。抗体、その抗原結合性フラグメントまたはその変異体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培地から回収されうる。
【0204】
精製
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体は、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、プロテインAクロマトグラフィー、プロテインGクロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホ-セルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィー(これらに限定されるものではない)を含む周知の方法により、組換え細胞培養から回収され、精製されうる。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)も精製に使用されうる。例えば、Colligan,Current Protocols in Immunology,or Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,N.Y.,(1997-2001),例えばChapters 1,4,6,8,9,10(それぞれの全体を参照により本明細書に組み入れることとする)を参照されたい。
【0205】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体は、天然に精製された産物、化学合成法の産物、ならびに例えば酵母、高等植物、昆虫および哺乳類細胞を含む真核宿主から組換え技術によって産生された産物が含まれる。組換え生産法において使用される宿主に応じて、本発明の抗体はグリコシル化またはアグリコシル化されうる。そのような方法は、多数の標準的な実験マニュアル、例えばSambrook(前掲),Sections 17.37-17.42;Ausubel(前掲),Chapters 10,12,13,16,18および20に記載されている。
【0206】
好ましい実施形態においては、抗体は以下の程度まで精製される:(1)例えばローリー(Lowry)法、UV-Vis分光法またはSDS-キャピラリーゲル電気泳動(例えば、Caliper LabChip GXII、GX90またはBiorad Bioanalyzer装置上)による測定で、95重量%超の抗体、更に好ましい実施形態においては、99重量%超の抗体、(2)N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度、あるいは(3)クーマシーブルーまたは好ましくは銀染色を使用する還元条件または非還元条件下のSDS-PAGEによる均質状態。単離された天然に存在する抗体には、組換え細胞内のインサイチュの抗体が含まれる。なぜなら、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないからである。しかし、通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0207】
治療方法
治療方法は、本発明によって意図される抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体の治療的有効量を、治療を要する対象に投与することを含む。本明細書における「治療的有効」量は、単独で又は他の物質と組合されて、単一用量として又は複数用量レジメンに従い、対象におけるSema3A活性を低下させるのに十分な量である、抗体またはその抗原結合性フラグメントの量であって、有害状態の軽減をもたらすが毒物学的に許容される量として定義される。対象はヒトまたは非ヒト動物(例えば、ウサギ、ラット、マウス、イヌ、サルまたは他の下等霊長類)でありうる。
【0208】
したがって、1つの態様においては、本発明は、医薬としての使用のための、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントを含むコンジュゲート、または本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物に関する。
【0209】
本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは種々のSema3A関連障害における治療または診断手段として使用されうる。
【0210】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、腎疾患、特に、急性および慢性腎疾患、糖尿病性腎疾患、アルポート症候群ならびに急性および慢性腎不全の治療および/または予防における使用のための、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントを含むコンジュゲート、または本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントを含む医薬組成物に関する。一般用語の「腎疾患」または「腎臓疾患」は、腎臓が血液から老廃物を濾過し除去できない病態のクラスを示す。腎疾患には、急性腎疾患(急性腎障害、AKI)と慢性腎疾患(CKD)との2つの主要な形態がある。本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはそれを含むコンジュゲートもしくは医薬組成物は更に、虚血再灌流傷害、放射線造影剤の投与、心肺バイパス手術、ショックおよび敗血症のような複数の傷害から生じる急性腎障害の続発症の治療および/または予防に使用されうる。本発明の文脈においては、腎不全および腎機能不全なる語は以下のものを含む:腎不全の急性および慢性の両方の症状発現、ならびに基礎疾患または関連腎疾患、例えば腎低灌流、透析中低血圧、閉塞性尿路障害、糸球体症、IgA腎症、糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、糸球体硬化症、尿細管間質性疾患、腎症疾患、例えば原発性腎疾患および先天性腎疾患、腎炎、アルポート症候群、腎炎症、免疫性腎疾患、例えば腎移植拒絶反応、免疫複合体誘発性腎疾患、有毒物質誘発性腎症、造影剤誘発性腎症;微小変化型糸球体腎炎(リポイド);膜性糸球体腎炎;巣状分節性糸球体硬化症(FSGS);溶血性尿毒症症候群(HUS)、アミロイドーシス、グッドパスチャー症候群、ウェゲナー肉芽腫症、シェーンライン-ヘノッホ紫斑病、糖尿病性および非糖尿病性腎症、腎盂腎炎、腎嚢胞、腎硬化症、高血圧性腎硬化症およびネフローゼ症候群;これらは、例えば、クレアチニンおよび/または水分排泄の異常な減少、尿素、窒素、カリウムおよび/またはクレアチニンの血中濃度の異常な増加、グルタミルシンテターゼのような腎酵素の活性の変化、尿浸透圧または尿量の変化、微量アルブミン尿、マクロアルブミン尿の増加、糸球体および細動脈の病変、尿細管拡張、高リン血症および/または透析の必要性によって、診断において特徴付けられうる。本発明はまた、腎不全の続発症、特に肺水腫、心不全、尿毒症、貧血、電解質障害(例えば、高カリウム血症、低ナトリウム血症)、および骨および炭水化物代謝の障害の治療および/または予防における使用のための、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはそれを含むコンジュゲートもしくは医薬組成物に関する。本発明による化合物はまた、多発性嚢胞腎疾患(PCKD)およびADH不適切分泌症候群(SIADH)の治療および/または予防にも適している。
【0211】
また、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはそれを含むコンジュゲートもしくは医薬組成物は、血管透過性亢進、糖尿病性網膜症、血液網膜関門の悪化および結果として生じる黄斑浮腫、好ましくは加齢黄斑浮腫、非増殖性加齢黄斑浮腫および非増殖性糖尿病性黄斑浮腫の治療および/または予防に使用されうる。
【0212】
更に、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはそれを含むコンジュゲートもしくは医薬組成物は、中枢神経系または末梢神経系の疾患、例えば神経因性疼痛、脊髄損傷、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脳浮腫および神経変性疾患の予防または治療に適しており、ここで、神経変性疾患はアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、黒色物質変性症、シャイ-ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮症および脊髄小脳変性症である。
【0213】
更に、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたはそれを含むコンジュゲートもしくは医薬組成物は癌の治療および/または予防に有用でありうる。ここで、癌は腸癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、脳癌、黒色腫、腎細胞癌、白血病、リンパ腫、T細胞リンパ腫、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部の扁平上皮癌、皮膚癌、尿路癌、前立腺癌、絨毛癌、咽頭癌および喉頭癌である。
【0214】
前記の障害はヒトにおいて十分に特徴付けられているが、哺乳動物を含む他の動物にも類似した病因が存在し、本発明による医薬組成物を投与することによって治療されうる。
【0215】
本発明による抗体または抗原結合性フラグメントまたはその変異体は公知医薬と共投与(co-administer)されることが可能であり、幾つかの場合には、該抗体またはその抗原結合性フラグメント自体が修飾されうる。例えば、抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体を薬物または別のペプチドもしくはタンパク質に結合させて、有効性を潜在的に更に増強することが可能である。
【0216】
本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体は、単独の薬剤として、または許容し得ない有害作用を引き起こさない、1以上の追加的な治療用物質との組合せとして投与されうる。
【0217】
したがって、もう1つの態様においては、本発明は、1以上の追加的な治療活性化合物との同時投与、別々の投与または連続的投与のための組合せにおける使用のための、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明によるコンジュゲートまたは本発明による医薬組成物に関する。
【0218】
本発明による抗体または抗原結合性フラグメントと組合せて使用される治療活性化合物の非限定的な例は以下のとおりである。
【0219】
- 血圧降下剤、例えば、好ましくは、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシンIIアンタゴニスト、ACEインヒビター、NEPインヒビター、バソペプチダーゼインヒビター、エンドセリンアンタゴニスト、レニンインヒビター、アルファ-ブロッカー、ベータ-ブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト及び利尿薬の群からのもの;
- 抗糖尿病剤(血糖降下または抗高血糖剤)、例えば、好ましくは、インスリンおよび誘導体、スルホニル尿素、ビグアニド、チアゾリジンジオン、アカルボース、DPP4インヒビター、GLP-1類似体またはSGLTインヒビター(グリフロジン);
- シグナル伝達カスケードを阻害する化合物、特に、チロシンおよび/またはセリン/スレオニンキナーゼインヒビター、例えばニンテダニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、レゴラフェニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、セジラニブ、アキシチニブ、テラチニブ、イマチニブ、ブリバニブ、パゾパニブ、バタラニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、カネルチニブ、レスタウルチニブ、ペリチニブ、セマキサニブまたはタンデュチニブ;
- 抗炎症薬、例えば非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えばアセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェンおよびナプロキセン、グルココルチコイド、例えば、好ましくは、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、フルニソリド、ブデソニドもしくはフルチカソン、または5-アミノサリチル酸誘導体、ロイコトリエンアンタゴニスト、TNF-アルファインヒビターおよびケモカイン受容体アンタゴニスト、例えばCCR1、2および/または5インヒビター、NF-κBインヒビターおよびNerf2アクチベーター;
- 抗線維化薬、例えばTGFベータアンタゴニストまたはマイクロRNA-21インヒビター;
- 有機ニトラートおよびNO供与体、例えばニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、一硝酸イソソルビド、二硝酸イソソルビド、モルシドミンまたはSIN-1および吸入性NO;
- 環状グアノシン一リン酸(cGMP)の分解を阻害する化合物、例えば、ホスホジエステラーゼ(PDE)1、2、5および/または9のインヒビター、特にPDE-5インヒビター、例えばシルデナフィル、バルデナフィル、タダラフィル、ウデナフィル、ダサンタフィル、アバナフィル、ミロデナフィル、ロデナフィル、CTP-499またはPF-00489791;
- カルシウム増感剤、例えば、好ましくは、レボシメンダン;
- 抗血栓剤、特に、血小板凝集インヒビター、抗凝固剤および線維素溶解物質からなる群から選択されるもの;
- NOおよびヘム依存性ならびにNOおよびヘム非依存性のcGMP合成を刺激する物質、例えば、好ましくは、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)モジュレーター、例えば、好ましくは、リオシグアト、シナシグアト、ベリシグアトまたはBAY1101042;
- 脂肪代謝改変剤、例えば、好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成インヒビター、例えば、好ましくは、HMG-CoA-レダクターゼまたはスクアレン合成インヒビター、ACATインヒビター、CETPインヒビター、MTPインヒビター、PPAR-アルファ、PPAR-ガンマおよび/またはPPAR-デルタアゴニスト、コレステロール吸収インヒビター、リパーゼインヒビター、ポリマー胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収インヒビターおよびリポタンパク質(a)アンタゴニストから選択されるもの。
【0220】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、血小板凝集インヒビター、特にアスピリン、クロピドグレル、チクロピジンまたはジピリダモールと組合せて投与される。
【0221】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、トロンビンインヒビター、特にキシメラガトラン、ダビガトラン、メラガトラン、ビバリルジンまたはエノキサパリンと組合せて投与される。
【0222】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、特にチロフィバンまたはアブシキシマブと組合せて投与される。
【0223】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、第Xa因子インヒビター、特にリバーロキサバン、アピキサバン、オタミキサバン、フィデキサバン、ラザキサバン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DU-176b、PMD-3112、YM-150、KFA-1982、EMD-503982、MCM-17、MLN-1021、DX9065a、DPC906、JTV803、SSR-126512およびSSR-128428から選択されるものと組合せて投与される。
【0224】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組合せて投与される。
【0225】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ビタミンKアンタゴニスト、特にクマリンから選択されるものと組合せて投与される。
【0226】
血圧降下剤は、特に、カルシウムアンタゴニスト、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACEインヒビター、NEPインヒビター、バソペプチダーゼインヒビター、エンドセリンアンタゴニスト、レニンインヒビター、アルファ-ブロッカー、ベータ-ブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストおよび利尿薬からなる群から選択される。
【0227】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、カルシウムアンタゴニスト、特にニフェジピン、アムロジピン、ベラパミルおよびジルチアゼムから選択されるものと組合せて投与される。
【0228】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、アンジオテンシンAII受容体アンタゴニスト、特にロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、エプロサルタン、エンブルサルタンおよびアジルサルタンからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0229】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ACEインヒビター、特にエナラプリル、カプトプリル、リシノプリル、ラミプリル、デラプリル、フォシノプリル、キノプリル、ペリンドプリル、ベナゼプリルおよびトランドプリルからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0230】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、エンドセリンアンタゴニスト、特にボセンタン、ダルセンタン、アンブリセンタン、テゾセンタン、シタクスセンタン、アボセンタン、マシテンタンおよびアトラセンタンからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0231】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、レニンインヒビター、特にアリスキレン、SPP-600およびSPP-800からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0232】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ミネラロコルチコイド受容体アンタゴニスト、特にフィネレノン、スピロノラクトン、カンレノン、カンレノ酸カリウム、エプレレノン、エサキセレノン(CS-3150)またはアパラレノン(MT-3995)、CS-3150およびMT-3995からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0233】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、利尿薬、特にフロセミド、ブメタニド、ピレタニド、トルセミド、ベンドロフルメチアジド、クロロチアジド、ヒドロクロロチアジド、キシパミド、インダパミド、ヒドロフルメチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、トリクロロメチアジド、クロロタリドン、メトラゾン、キネタゾン、アセタゾラミド、ジクロロフェンアミド、メタゾラミド、グリセリン、イソソルビド、マンニトール、アミロリドおよびトリアムテレンからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0234】
脂肪代謝改変剤は、特に、CETPインヒビター、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成インヒビター、例えばHMG-CoAレダクターゼインヒビターまたはスクアレン合成インヒビター、ACATインヒビター、MTPインヒビター、PPAR-アルファ、PPAR-ガンマおよび/またはPPAR-デルタアゴニスト、コレステロール吸収インヒビター、ポリマー胆汁酸吸着剤、胆汁酸再吸収インヒビター、リパーゼインヒビターおよびリポタンパク質(a)アンタゴニストからなる群から選択される。
【0235】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、Nerf2アクチベーター、特にバルドキソロンメチルから選択されるものと組合せて投与される。
【0236】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、甲状腺受容体アゴニスト、特に、D-チロキシン、3,5,3’-トリヨードサイロニン(T3)、CGS 23425およびアクシチローム(CGS 26214)からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0237】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、スタチンのクラスからのHMG-CoAレダクターゼインヒビター、特にロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチンおよびピタバスタチンからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0238】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、PPAR-ガンマモジュレーター、特にピオグリタゾンおよびロシグリタゾンから選択されるものと組合せて投与される。
【0239】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、PPAR-デルタモジュレーター、特にASP1128、GW 501516およびBAY 68-5042からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0240】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、コレステロール吸収インヒビター、特にエゼチミブ、チクエシドおよびパマクエシドからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0241】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、リパーゼインヒビター、特にオルリスタットから選択されるものと組合せて投与される。
【0242】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ポリマー胆汁酸吸着剤、特にコレスチラミン、コレスチポール、コレソルバム、コレスタゲル(CholestaGel)およびコレスチミドからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0243】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、胆汁酸再吸収インヒビター、特にASBT(IBAT)インヒビター、例えばAZD-7806、S-8921、AK-105、BARI-1741、SC-435およびSC-635からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0244】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、リポタンパク質(a)アンタゴニスト、特にゲムカベンカルシウム(CI-1027)およびニコチン酸からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0245】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、TGFベータアンタゴニスト、特にピルフェニドンおよびフレソリムマブから選択されるものと組合せて投与される。
【0246】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、抗マイクロRNA-21オリゴヌクレオチド、特にラデミルセンから選択されるものと組合せて投与される。
【0247】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、HIF-PHインヒビター、特にモリダスタットおよびロキサデュスタットから選択されるものと組合せて投与される。
【0248】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、CCR2アンタゴニスト、特にCCX-140から選択されるものと組合せて投与される。
【0249】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、TNFアルファアンタゴニスト、特にアダリムマブから選択されるものと組合せて投与される。
【0250】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ガレクチン-3インヒビター、特にGCS-100から選択されるものと組合せて投与される。
【0251】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、肝細胞増殖因子模倣物、特にレファナリンから選択されるものと組合せて投与される。
【0252】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、p53モジュレーター、特にQPI-1002から選択されるものと組合せて投与される。
【0253】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、NOX1/4インヒビター、特にGKT-137831から選択されるものと組合せて投与される。
【0254】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ビタミンD代謝に影響を及ぼす医薬、特にコレカルシフェロールおよびパラカルシトールから選択されるものと組合せて投与される。
【0255】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、細胞増殖抑制剤、特にシクロホスファミドから選択されるものと組合せて投与される。
【0256】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、抗VEGF療法、特にラニビズマブ、ベバシズマブおよびアフリベルセプトからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0257】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、免疫抑制剤、特にシクロスポリンから選択されるものと組合せて投与される。
【0258】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、ホスファート結合性物質、特にセベラマーおよび炭酸ランタンから選択されるものと組合せて投与される。
【0259】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、副甲状腺機能亢進症の治療のためにカルシウム模倣薬と組合せて投与される。
【0260】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、鉄欠乏治療用物質、特に鉄製品から選択されるものと組合せて投与される。
【0261】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、高尿酸血症治療用物質、特にアロプリノールおよびラスブリカーゼから選択されるものと組合せて投与される。
【0262】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、貧血の治療のための糖タンパク質ホルモン、特にエリスロポエチンから選択されるものと組合せて投与される。
【0263】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、免疫療法用の生物製剤、特にアバタセプト、リツキシマブ、エクリズマブおよびベリムマブからなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0264】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、Jakインヒビター、特にルキソリチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、CYT387、GSK2586184、レスタウルチニブ、パクリチニブ(SB1518)およびTG101348からなる群から選択されるものと組合せて投与される。
【0265】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、微小血栓の治療のためにプロスタサイクリン類似体と組合せて投与される。
【0266】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、アルカリ療法、特に重炭酸ナトリウムから選択されるものと組合せて投与される。
【0267】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、mTORインヒビター、特にエベロリムスおよびラパマイシンから選択されるものと組合せて投与される。
【0268】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、NHE3インヒビター、特にAZD1722から選択されるものと組合せて投与される。
【0269】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、eNOSモジュレーター、特にサプロプテリンから選択されるものと組合せて投与される。
【0270】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、CTGFインヒビター、特にFG-3019から選択されるものと組合せて投与される。
【0271】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、利尿薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACEインヒビター、ベータ受容体ブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、抗糖尿病薬、有機ニトラートおよびNO供与体、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)のアクチベーターおよび刺激物質ならびに陽性変力剤からなる群から選択される1以上の追加的な治療用物質と組合せて投与される。
【0272】
特定の実施形態においては、本発明による単離された抗体または抗原結合性フラグメントは、利尿薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACEインヒビター、ベータ受容体ブロッカー、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニスト、抗糖尿病薬、有機ニトラートおよびNO供与体、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)のアクチベーターおよび刺激物質、陽性変力剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、リン酸結合物質、およびビタミンD代謝を調節する抗体からなる群から選択される1以上の追加的な治療用物質と組合せて投与される。
【0273】
併用(組合せ)療法は、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントまたはその変異体と1以上の追加的な治療用物質とを含む単一の医薬投与製剤の投与、および本発明による抗体または抗原結合性フラグメントとそれぞれの追加的な治療用物質との、それ自体の別々の医薬投与製剤における投与を含む。例えば、本発明の抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体と治療用物質とは単一の液体組成物において一緒に患者に投与可能であり、あるいは各物質は別々の投与製剤において投与可能である。
【0274】
別々の投薬製剤を使用する場合、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントまたはその変異体と1以上の追加的な治療用物質とは、実質的に同じ時点で(例えば、同時に)または別々に時間差を付けて(例えば、連続的に)投与されうる。
【0275】
本発明による抗体または抗原結合性フラグメントまたはその変異体は、以下のもの(それらに限定されるものではない)を含む外科的介入と組合せて使用されうる:
- 主要な心臓血管手術、例えば冠状動脈バイパス移植術(CABG)、心臓弁の修復または置換、ペースメーカーまたは植込み型除細動器(ICD)の挿入、メイズ(maze)手術、動脈瘤修復、頸動脈手術/血管内膜切除術および血栓除去術;
- 主要な非心臓手術、例えば、胸部、整形外科、泌尿器科手術。
【0276】
診断方法
更に、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントは、それ自体で又は組成物として、研究および診断において又は分析参照標準などとして使用されうる。
【0277】
抗Sema3A抗体またはその抗原結合性フラグメントは、Sema3Aの存在を検出するために使用されうる。したがって、もう1つの態様においては、本発明は、診断剤としての使用のための、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明による抗体コンジュゲートに関する。
【0278】
医薬組成物および投与
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明による抗体コンジュゲートを含む医薬組成物に関する。前記障害のいずれかを治療するために、本発明による使用のための医薬組成物は、1以上の生理的に許容される担体、賦形剤または補助剤を使用して、任意の通常方法で製剤化されうる。製剤化および投与の技術に関する更なる詳細はRemington’s Pharmaceutical Sciences(Ed.Maack Publishing Co,Easton,Pa.)の最新版に見出されうる。
【0279】
本発明による抗体または抗原結合性フラグメントは、治療される障害のタイプに応じて変動しうる任意の適切な手段によって投与されうる。可能な投与経路には、経口、非経口および局所投与が含まれる。非経口送達の方法には、動脈内、筋肉内、皮下、髄内、くも膜下腔内、脳室内、静脈内、腹腔内または鼻腔内投与が含まれる。また、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントは、例えば抗体の用量を減少させながら、パルス注入によって投与される。好ましくは、投与は注射によるものであり、最も好ましくは、静脈内注射または皮下注射であり、これは、投与が短期間であるか長期間であるかに部分的に左右される。投与量は、例えば、臨床症状、個体の体重、他の薬剤が投与されるかどうかなどのような種々の要因に左右される。投与経路は、治療される障害または状態に応じて変動する、と当業者は認識するであろう。
【0280】
本発明による医薬組成物は、本発明による抗体または抗原結合性フラグメントを、単独で、または少なくとも1つの他の物質、例えば安定化化合物と共に含む。本発明による抗体または抗原結合性フラグメントは、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水(これらに限定されるものではない)を含む任意の無菌の生体適合性医薬担体中で投与されうる。特定の実施形態においては、本発明による医薬組成物は、1以上の追加的な薬学的活性化合物、特に、Sema3A関連障害を治療するのに適した1以上の追加的な薬学的活性化合物を含みうる。これらの物質はいずれも、賦形剤もしくは薬学的に許容される担体と混合された医薬組成物として、他の物質または薬物と組合せて、または単独で、患者に投与されうる。特定の実施形態においては、薬学的に許容される担体は、薬学的に不活性である。
【0281】
経口投与用の医薬組成物は、当技術分野で周知の薬学的に許容される担体を経口投与に適した量で使用して製剤化されうる。そのような担体は、患者による摂取のための錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして医薬組成物が製剤化されることを可能にする。
【0282】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と一緒にすることによって、そして所望により、得られた混合物を粉砕し、必要に応じて適切な補助剤を添加した後、顆粒混合物を加工して錠剤または糖衣錠コアを得ることによって、得られうる。適切な賦形剤としては、炭水化物またはタンパク質充填剤、例えば糖、例えばラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモまたは他の植物からのデンプン;セルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム;およびガム、例えばアラビアゴムおよびトラガカントガム;ならびにタンパク質、例えばゼラチンおよびコラーゲンが挙げられる。所望により、崩壊剤または可溶化剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムが添加されうる。
【0283】
糖衣錠コアには、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物をも含有しうる濃縮糖溶液のような適切なコーティングが施されうる。製品の識別のために、または活性化合物の量、すなわち投与量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠コーティングに染料または色素が添加されうる。
【0284】
経口的に使用されうる医薬製剤には、ゼラチン製のプッシュ-フィット(押込嵌め)カプセル、およびゼラチンとコーティング(例えば、グリセロールまたはソルビトール)とから構成される密封軟カプセルが含まれる。プッシュ-フィットカプセルは、充填剤または結合剤、例えばラクトースまたはデンプン、滑沢剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウム、および所望により安定剤と混合された有効成分を含有しうる。軟カプセルにおいては、活性化合物は、安定剤の存在下または非存在下、適切な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールに溶解または懸濁されうる。
【0285】
非経口投与用の医薬製剤には、活性化合物の水溶液が含まれる。注射の場合、本発明の医薬組成物は、水溶液、好ましくは、生理的に適合するバッファー、例えばハンクス液、リンガー液または生理緩衝食塩水において製剤化されうる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を高める物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有しうる。また、活性化合物の懸濁液は適切な油性注射懸濁液として調製されうる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリド、あるいはリポソームが含まれる。所望により、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を増加させる物質または適切な安定剤をも含有しうる。
【0286】
局所または経鼻投与の場合、浸透すべき特定の障壁に適した浸透剤が製剤中で使用される。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知である。
【0287】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で公知の方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、粉砕、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスによって製造されうる。
【0288】
医薬組成物は塩として提供されることが可能であり、酸、例えば塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸など(これらに限定されるものではない)と共に形成されうる。塩は、対応遊離塩基形態である水性溶媒または他のプロトン性溶媒に、より可溶性となる傾向にある。他の場合には、好ましい製剤は、使用前にバッファーと一緒にされる、ポリソルベートのような追加的な物質を所望により含んでいてもよい、4.5~7.5のpH範囲における、1mM~50mMのヒスチジンまたはホスファートまたはトリス、0.1%~2%のスクロースおよび/または2%~7%のマンニトール中の凍結乾燥粉末でありうる。
【0289】
許容可能な担体中で製剤化された本発明の化合物を含む医薬組成物を製造した後、それらは適切な容器内に配置され、適応病態の治療に関してラベル表示されうる。抗Sema3A抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与の場合、そのようなラベルは投与の量、頻度および方法を含むであろう。
【0290】
治療的有効量
本発明による使用に適した医薬組成物には、意図される目的、例えば、Sema3Aのレベルまたは活性の増強によって特徴付けられる個々の病態の治療を達成するための有効量の有効成分を含有する組成物が含まれる。
【0291】
有効量の決定は当業者の能力の範囲内に十分に含まれる。本発明の新規抗体またはその抗原結合性フラグメントまたはその変異体の治療的有効量の決定は、個々の患者の特徴、投与経路および治療される障害の性質に大きく左右される。一般的な指針は、例えば、ハーモナイゼーション国際会議(International Conference on Harmonization)の刊行物およびREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,chapters 27および28,pp.484-528(18th ed.,Alfonso R.Gennaro編,Easton,Pa.:Mack Pub.Co.,1990)に見出されうる。より詳細には、治療的有効量の決定は医薬の毒性および有効性のような要因に左右される。毒性は、当技術分野で周知であり前記参考文献において見出される方法を用いて決定されうる。有効性は、後記実施例に記載されている方法と共に同じ指針を用いて決定される。
【0292】
任意の化合物に関して、治療的有効量は、まず、細胞培養アッセイまたは動物モデル(通常はマウス、ウサギ、イヌ、ブタまたはサル)において推定されうる。動物モデルは、望ましい濃度範囲および投与経路を得るためにも使用される。次いでそのような情報は、ヒトにおける有用な用量および投与経路を決定するために使用されうる。
【0293】
治療的有効量は、症状または状態を改善する、抗体またはその抗原結合性フラグメントの量を意味する。そのような化合物の治療的有効性および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的方法、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効である用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)によって決定されうる。治療効果と毒性効果との間の用量比は治療指数であり、それはED50/LD50なる比として表されうる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトでの使用のための投与量範囲を決定する際に使用される。そのような化合物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど又は全く伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用される剤形、患者の感受性および投与経路に応じて、この範囲内で変動する。
【0294】
厳密な投与量は、治療されるべき患者を考慮して個々の医師によって選択される。投与量および投与は、十分なレベルの活性部分を供与するように、または所望の効果を維持するように調整される。考慮されうる追加的な要因には、患者の病態の重症度、年齢、体重および性別;食事;投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性ならびに治療に対する耐性/応答が含まれる。長時間作用型医薬組成物は、個々の製剤の半減期およびクリアランス速度に応じて、例えば3~4日ごと、毎週、2週間に1回または3週間に1回投与されうる。
【0295】
通常の投与量は、投与経路に応じて、総用量約10gまでで、0.1~100,000マイクログラムで変動しうる。個々の投与量および送達方法に関する指針は文献に記載されている。米国特許第4,657,760号、第5,206,344号または第5,225,212号を参照されたい。
【0296】
キット
もう1つの態様においては、本発明は、本発明による単離された抗体もしくは抗原結合性フラグメントまたは本発明によるコンジュゲートと使用説明とを含むキットに関する。特定の実施形態においては、キットは、本発明の前記組成物の成分の1以上が充填された1以上の容器を含む。そのような容器には、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた形式の通知が付属しうる。該通知はヒトへの投与のための製品の製造、使用または販売の政府機関による承認を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0297】
図1図1A:マウスにおけるSema3A誘発性アルブミン排泄に対する、TPP-15370(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)およびTPP-17755(正方形模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SD(n=10)を示す。*******:p<0.001、p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
【0298】
図1B:マウスにおけるSema3A誘発性アルブミン排泄に対する、TPP-23298(灰色のバー)、TPP-11489(点模様のバー)およびTPP-17755(縞模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SD(n=10)を示す。*******:p<0.001、p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図2図2A:TPP-11489(黒三角)と比較した、TPP-15370(白丸)およびTPP-23298(黒丸)での処置後のマウスにおけるSema3A誘発性アルブミン尿。比較は2つの別々の実験で行われた。平均値を示す。(n=10)。n.s.=TPP-15370に対して統計的に有意ではない;=p<0.05対TPP-23298。独立T検定。
【0299】
図2B:TPP-17755(黒四角)と比較した、TPP-15370(白丸)およびTPP-23298(黒丸)での処置後のマウスにおけるSema3A誘発性アルブミン尿。比較は2つの別々の実験で行われた。平均値を示す。(n=10)。n.s.=TPP-15370に対して統計的に有意ではない;=p<0.05対TPP-23298。独立T検定。
【0300】
図2C:TPP-30788(黒菱形)と比較した、TPP-15370(白丸)およびTPP-23298(黒丸)での処置後のマウスにおけるSema3A誘発性アルブミン尿。比較は2つの別々の実験で行われた。平均値を示す。(n=10)。n.s.=TPP-15370に対して統計的に有意ではない;=p<0.05対TPP-23298。独立T検定。
図3】マウスにおけるI/R損傷後の、A:血清クレアチニンレベル、B:血清尿素レベル、およびC:尿アルブミン排泄に対する、TPP-23374(点模様のバー)、TPP-23298(灰色のバー)およびTPP-15370(縞模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SDを示す(n=8~10)。******:p<0.05、p<0.01、p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図4】マウスにおけるI/R損傷後の、A:血清クレアチニンレベル、B:血清尿素レベルおよびC:尿アルブミン排泄に対する、TPP-15370(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)およびTPP-17755(正方形模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SDを示す(n=8~10)。******:p<0.05、p<0.01、p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図5】マウスにおけるI/R損傷後の、A:血清クレアチニンレベル、B:血清尿素レベルおよびC:尿アルブミン排泄に対する、TPP-23298(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)およびTPP-17755(正方形模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SD(n=10-12)を示す。******:アイソタイプ対照に対してp<0.05、p<0.01、p<0.0001。ダネットの事後検定。
図6】マウスにおけるI/R損傷後の、A:血清クレアチニンレベル、B:血清尿素レベルおよびC:尿アルブミン排泄に対する、TPP-15374(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SDを示す(n=10~12)。*********:p<0.05、p<0.01、p<0.001p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図7】アルポートマウスにおけるタンパク尿に対する、TPP-15370(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SDを示す(n=8~10)。****:p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図8】アルポートマウスにおける、A:血清クレアチニンレベル、B:血清尿素レベルおよび線維症、C:筋線維芽細胞およびD:コラーゲン沈着に対する、TPP-15370(灰色のバー)、TPP-11489(縞模様のバー)によるSema3A阻害の効果。平均値±SDを示す(n=8~10)。*******:p<0.05、p<0.001、p<0.0001対アイソタイプ対照。ダネットの事後検定。
図9】ブタの片側腎臓IRIモデルにおける単一用量予防設定での、105分間の虚血におけるTPP-23298によるSema3A阻害の効果。TPP-23298(A;黒点)または対照IgG(白丸)(10mg/kg)を、左腎動脈においてバルーンを膨張させる30分前に投与した。SHAM動物からの値は菱形で示されている。個々の動物の血漿クレアチニン濃度の時間経過(A)、および実験開始時(0時間)のベースライン値に対するクレアチニン血漿濃度の平均変化の時間経過(B)。24~27時間間隔のクレアチニンクリアランスの平均値。左(損傷)および右(非損傷)の腎臓ならびに偽(sham)動物からの腎臓のの側別のクレアチニンクリアランス(C)。総クレアチニンクリアランス(D);平均値±SEM、t検定からの(B)におけるp値、(C)および(D)における***:p<0.05/0.001、対応対照に対する一元配置分散分析およびそれに続くダネット多重比較。
図10】SPRを使用したサンドイッチベースのエピトープビニング実験の概略図(実施例5Aも参照されたい)。
図11】HRAイメージ解析工程:11A)DAPI/CM細胞の蛍光顕微鏡イメージ。11B)選択された領域における細胞の特定。11C)無細胞領域サイズ(灰色の面積)の計算。
図12】80pMの抗体濃度でのHUVEC反発アッセイにおけるSema3Aの阻害率(%)を示す(実施例11を参照されたい)。各柱状グラフは以下の左から右の順序での1つの抗体を表す:TPP-23298(黒柱状グラフ)、TPP-30788、TPP-TPP-30789、TPP-30790およびTPP-30791。
【0301】
実施例
実施例1:Sema3A配列および材料作製
【表1】
【0302】
一過性にトランスフェクトされたHEK293-6E細胞(National Research Council Canada)を使用する哺乳類細胞培養によって、Sema3Aドメインを製造した。全ての構築物はCMVプロモーターの制御下にあり、配列はC末端FXa切断部位およびそれに続く6×hisタグを含有する。0.1% プルロニック(登録商標)F68(Life Technologies)および4mM グルタマックス(Life Technologies)で補足されたF17培地(Life Technologies)を使用して、細胞培養を行った。トランスフェクションの24時間後、1% FCS超低IgG(Life Technologies)および0.5mM バルプロ酸(Sigma Aldrich)を添加した。細胞上清を滅菌濾過し、次いで精製し、または精製前にクロスフロー濾過によって濃縮した。
【0303】
アフィニティクロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーからなる2段階精製を用いて、Sema3Aドメインを精製した。簡潔に説明すると、Akta Avant系(GE Healthcare)に接続されたNi2+-NTAカラム(GE Healthcare)に細胞培養上清をローディングした。カラムを4CVの50mM NaHPO、300mM NaCl(pH8)で平衡化し、次いで、ベースラインに達するまで10CVのランニングバッファーで洗浄した。250mM イミダゾール(pH8.0)を含有する6CVのランニングバッファーを使用して溶出を行った。溶出ピークの画分を集め、Vivaflow 200 Hydrosart膜(カットオフ10kDa、Sartorius)を使用して濃縮し、Akta Pure25系に接続されたSuperdex 200カラム(GE Healthcare)を使用するサイズ排除クロマトグラフィーに付した。カラムを平衡化し、DPBS(pH7.4)中で移動させた。ドメイン溶出ピークの画分を集め、Vivaflow 200 Hydrosart膜(カットオフ10kDa、Sartorius)を使用して濃縮した。最終的なタンパク質の品質を、純度および単分散性に関して分析用サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)により、そしてSDS-PAGEにより評価した。Semaドメインをアリコート化し、液体窒素中で急速冷凍し、更なる使用まで-80℃で保存した。
【0304】
実施例2:BioInvent抗体ライブラリからの抗体の作製
完全ヒト抗体ファージディスプレイライブラリー(BioInvent n-CoDeR Fabラムダライブラリー)を使用して、以下のプロトコールを用いる組換えヒトSema3A(TPP-13211、R&D Systems)に対する選択によって本発明のヒトモノクローナル抗体を単離した。簡潔に説明すると、イムノチューブ(Nunc)を、回転させながら、1mlのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)中の100μgの標的分子(huSema3A)または無関連Fc含有オフターゲットで室温(RT)で1時間コーティングした。標的およびデプリーション(depletion)抗原コート化イムノチューブならびに空イムノチューブをPBS+0.05% Tween20(PBST)で4回洗浄し、次いでPBST溶液中の3mlの3% 粉乳を使用して、回転させながら、室温で1時間ブロックした。ファージライブラリーのアリコートを解凍し、PBST中の3% 粉乳の溶液中で、回転させながら、室温で1時間ブロックした。非コート化ディプリーションイムノチューブを4mlのPBS中で3回洗浄した後、ブロック化ファージライブラリーを添加し、回転させながら室温で30分間インキュベートした。非標的抗原コート化デプリーションイムノチューブに関して、この工程を繰り返した。huSema3Aコート化イムノチューブを4mlのPBS中で3回洗浄した後、デプリート化(depleted)ライブラリーを添加し、回転させながら室温で90分間インキュベートした。ストリンジェントな洗浄(4mlのPBSTで4回および4mlのPBSで1回)の後、コート化標的に特異的に結合するFab発現ファージを、500μlの100nM TEAを使用して溶出し、室温で10分間インキュベートし、次いで500μlのトリス-HCl(pH7.5)の添加により中和した。500μlの溶出ファージを使用して、大腸菌(Escherichia coli)HB101株に感染させた。次いで、M13KO7ヘルパーファージ(Invitrogen(商標))を使用して、ファージを大腸菌株HB101内で増幅した。後続の2ラウンドの選択において、標的濃度を25μg/mlに減少させた。最初の定性的評価では、各選択ラウンドからランダムに選択された88個のFab発現ファージクローンを単一ウェルにおいて発現させ、無関係なオフターゲットと比較してhuSema3Aへの結合に関して試験した。この実施例におけるラウンド3からのクローンプールは60%の陽性ヒット率を含むことが判明し、更なるスクリーニングのために選択された。
【0305】
次工程では、このプール内の遺伝子III融合体の一括除去によって可溶性Fabの発現が可能になり、大腸菌Top10株における発現およびhuSema3A結合ELISAにおけるFab含有上清の評価のために2208個の単一クローンを選択した。2208個全てのクローンのVH配列およびVL配列も、NGS法を用いて決定した。huSema3Aへの結合に関して陽性である154個の異なるクローンが特定された。これらの陽性結合性Fabフラグメントを確証的(confirmatory)結合ELISAにおいて試験し、また、マウスSema3A-Fc(TPP-13357、R&D Systems)への結合に関して、および追加的オフターゲット分子であるマウスSema3F(R&D Systems)を使用する特異性試験で評価した。この分析に基づいて、48個のヒト/マウス交差反応性Sema3A結合性Fabを優先することにした。次いでこれらのFabフラグメントを、Capture Select CH1マトリックス(Life Technologies)を使用して、25mlの発現培養物から精製し、pH2.5の12.5mM クエン酸を使用して溶出し、最後に、Zeba(商標)Spin脱塩プレート(ThermoFisher)を使用して、PBSへとバッファー交換した。表面プラズモン共鳴(SPR)により、48個全ての精製Fabフラグメントに関して、動力学的順位付けを行って、ヒトSema3AおよびマウスSema3Aの両方への結合を調べ、完全長ヒトIgG1に再フォーマット(reformat)し、SPRにおける結合に関して再試験した(実施例4を参照されたい)。
【0306】
実施例3:リード抗体TPP-15370およびTPP-15374の配列最適化、生殖系列化およびアフィニティ成熟
IgG1抗体TPP-15370およびTPP-15374を、(i)そのアフィニティを最適化する、(ii)機能的効率を増加させる、(iii)配列に基づく免疫原性のリスクを低減する、および(iv)下流開発プロセスとの適合性を改善する目的で、リード(lead)最適化操作に付した。
【0307】
最初の単一突然変異収集(gathering)ラウンド、およびそれに続く、生殖系列化され配列最適化された抗体バックボーンにおける最もアフィニティおよび効力を増加させるアミノ酸置換の組換えによって、アフィニティ成熟を行った。
【0308】
突然変異収集のために、以下の個々のアミノ酸位置におけるNNK(N=AまたはGまたはCまたはT、K=GまたはT)ランダム化を、コドン多様化のためにNNKを含む合成オリゴヌクレオチドを使用する部位特異的突然変異誘発によって行った。TPP-15370については、以下の領域をアフィニティに対するそれらの効果に関して分析した:GFTFSSYGMH(VH配列番号41の残基26~35)、WVSAIGTGGDTYYADSVMG(VH配列番号41の残基47~65)、ARRDDYTSRDAFDV(VH配列番号41の残基96~109)、SGSSSNIGSNTVNWY(VL配列番号45の残基23~37)、LLIYYDDLLPS(VL配列番号45の残基47~57)およびAAWDDSLNGYVV(VL配列番号の残基90~101)。
【0309】
TPP-15374については、以下の領域をアフィニティに対するそれらの効果に関して分析した:GFTFSSYEMN(VH配列番号61の残基26~35)、WVSGISWNSGSIGYADSVKG(VH配列番号61の残基47~66)、ARSGYSSSWFDPDFDY(配列番号61の残基97~112)、TGSSSNIGAGYDVHWY(VL配列番号65の残基23~38)、LLIYGNSNRPS(VL配列番号65の残基48~58)およびSSYAGSNPYV(VL配列番号65の残基91~101)。
【0310】
得られた単一のNNKライブラリーを配列決定し、TPP15370およびTPP-15374のそれぞれ約1000個の単一アミノ酸置換変異体を特定した。それらを哺乳類細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、得られた発現上清を、表面プラズモン共鳴および競合ELISAにおいてスクリーニングされる抗体濃度に関して正規化した。
【0311】
TPP-15370およびTPP-15374の生殖系列化および配列最適化プロセスでは、軽鎖および重鎖に関して最も近い生殖系列ファミリーを選択し、潜在的なCMC関連残基に関して精査した。CDR領域およびFW領域における最も近いヒト生殖系列からの逸脱およびCDR領域における潜在的なCMC関連残基を部位特異的突然変異誘発によって調整し、機能的アッセイおよび生物物理学的アッセイ(非特異的結合、DSCにおける温度安定性)で試験した。得られた単一復帰体および以下の組合せ(コンビナトリアル)IgG変異体を哺乳類細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、得られた発現上清を、結合アッセイ(SPR、競合ELISA)および機能的アッセイにおいてスクリーニングされる抗体濃度に関して正規化した。これにより、生殖系列化され配列最適化された分子である、TPP-15370の場合のTPP-21565、およびTPP-15374の場合のTPP-18533が得られた。TPP-21565は、TPP-15370と比較して、軽鎖に復帰L55RおよびR80Qを含有し、重鎖にG33A、H35S、M64KおよびV109Yを含有する。TPP-18533は、TPP-15374と比較して、軽鎖に復帰A10V、T13A、S78T、R81Q、S82Aを含有する。
【0312】
TPP-21565の最終組換えライブラリーとして、NNKライブラリーのスクリーニング工程でアフィニティおよび機能効率の改善を示すことが示された8個の単一置換変異体を選択した。軽鎖突然変異A90H、G98D、G98V、Y99IおよびV100Pならびに重鎖突然変異S30Y、S35LおよびT53Yを1つの組換えライブラリーにおいて組換えた(連続アミノ酸命名法;参照体は、配列番号121-VHおよび配列番号125-VLによって定義されるTPP-21565である)。
【0313】
TPP-18533の最終組換えライブラリーとして、NNKライブラリーのスクリーニング工程でアフィニティおよび機能効率の改善を示すことが示された11個の単一置換変異体を選択した。軽鎖突然変異N28D、N53A、S91K、S91Q、A94E、S96IおよびS96Pならびに重鎖突然変異T28D、S30D、S57WおよびG59Yを1つの組換えライブラリーにおいて組換えた(連続アミノ酸命名法;参照体は、配列番号101-VHおよび配列番号105-VLによって定義されるTPP-18533である)。
【0314】
TPP-18533については、選択された突然変異または対応野生型アミノ酸を各選択位置に導入するためのオリゴヌクレオチドを作製した。連続ラウンドの重複伸長(オーバーラップ・エクステンション)PCRを用いて、ライブラリーの構築を行った。最終的なPCR産物を哺乳類IgG4(S228P)発現ベクター内に連結し、大規模並列配列決定技術を使用して変異体を配列決定した。TPP-21565の場合、組換え変異体を別個のクローンとして設計し、IgG4(S228P)含有発現プラスミド内にクローニングした。
【0315】
TPP-18533の1000個を超えるユニーク(一意的)な組合せアミノ酸置換変異体、およびTPP-21565の100個を超えるユニークな組合せアミノ酸置換変異体をこの方法で作製し、哺乳類細胞の一過性トランスフェクションによって発現させ、得られた発現上清を、SPR、競合ELISAおよび機能的アッセイにおいて種々の数でスクリーニングされる抗体濃度に関して正規化した。これらのアッセイにおける結果に基づいて、突然変異体を「改善」または「非改善」のいずれかとして分類した。
【0316】
表1および1Aは、とりわけ、Sema3Aへの結合に関して及びSema3A依存性生物活性に対する拮抗に関して最も強力であるとして組合せライブラリースクリーニング工程において選択された、本発明による好ましい抗体候補、ならびに本発明による抗体のそれぞれのアミノ酸配列および核酸配列を列挙する。
【0317】
実施例4:表面プラズモン共鳴を用いたアフィニティおよび種交差反応性の決定
抗Sema3A抗体の結合速度論およびアフィニティならびにそれらの種交差反応性プロファイルを評価するために、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて結合アッセイを行った。結合アッセイは、アッセイバッファーHBS P+、300mM NaCl、0.75mM CaCl、2.5mM MgCl、1mg/ml BSA、0.05% NaNを使用して、Biacore T200装置またはBiacore 8K+装置(Cytiva)で25℃で行った。抗ヒトFc IgG(「ヒト抗体捕捉キット」、注文番号BR100839、Cytiva)により、またはFcタグ付きアナライトの場合には抗ヒトFab IgG(「ヒトFab捕捉キット」、注文番号28958325、Cytiva)[シリーズS CM5センサーチップ(Cytiva)に共有結合でアミンカップリングされているもの]により、抗体を捕捉した。アミンカップリングは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびエタノールアミンHCl(pH8.5)(「アミンカップリングキット」BR-1000-50、Cytiva)を使用して、製造業者の説明に従い行った。ファージディスプレイヒットに関しては、Fcタグ付きヒトおよびマウスSema3Aを1.56~200nMの濃度範囲でアナライトとして使用した。ヒト、マウス、カニクイザル、ラット、イヌおよびブタの一価Sema3Aドメインを、マルチ・サイクル・カイネティクス・モードで0.024~3.125nMの一連の濃度で、または結合分析のみの場合には100nMで、アナライトとして使用した。センサー表面を、各抗原の注入後、グリシン(pH2.0)で再生させた。得られたセンサーグラムを二重参照し(参照フローセルシグナルの減算およびバッファー注入)、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して、速度論データを導き出すために、1:1ラングミュア結合モデルにフィットさせた。結果を表3、4および4aに示す。
【表2】
【0318】
ファージディスプレイヒットの大部分は、より低いナノモル範囲で、ヒトおよびマウス二量体Sema3Aに結合する。
【表3】
【0319】
TPP-15370およびTPP-15374の全ての誘導体抗体は、それらの親抗体およびほとんどの先行技術の抗体と比較して、より低いピコモル範囲で、Sema3Aドメインに対する有意に増加したアフィニティを有する。
【表4】
【0320】
SPRにおいてSema3A分子への結合を示さなかった完全長3H4 IgG1(TPP-30792)とは対照的に、TPP-30792のFab変異体であるTPP-31357は、TPP-23298より低いアフィニティにおいてではあるが、ヒトSema3Aへの結合を示す。
【0321】
実施例5:表面プラズモン共鳴を用いた結合活性の測定
抗Sema3A抗体の結合活性を評価するために、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いて結合アッセイを行った。結合アッセイは、アッセイバッファーHBS P+、300mM NaCl、0.75mM CaCl、2.5mM MgCl、1mg/ml BSA、0.05% NaNを使用して、Biacore T200装置(Cytiva)で25℃で行った。シリーズS CM5センサーチップ(Cytiva)に共有結合でアミンカップリングされている抗ヒトFc IgG(「ヒト抗体捕捉キット」、注文番号BR100839、Cytiva)により、抗体を捕捉した。アミンカップリングは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびエタノールアミンHCl(pH8.5)(「アミンカップリングキット」BR-1000-50、Cytiva)を使用して、製造業者の説明に従い行った。ヒト、マウス、カニクイザル、ラット、イヌおよびブタの一価Sema3Aドメインをマルチ・サイクル・カイネティクス・モードで0.024~3.125nMの一連の濃度でアナライトとして使用した。センサー表面を、各抗原の注入後、グリシン(pH2.0)で再生させた。得られたセンサーグラムを二重参照し(参照フローセルシグナルの減算およびバッファー注入)、Biacore T200評価ソフトウェアを使用して、1:1ラングミュア結合モデルにフィットさせて、実験的にフィットされたRMax値を得た。結合活性を計算するためには、まず、理論的RMaxを以下の式1に従い計算する必要がある。
【数1】
式1:RMaxの理論的計算。Rリガンド=RU単位のリガンドレベル、Mr=分子量、価数リガンド=抗体分子当たりの結合部位の数、ここでは2。
【0322】
式2に従い、実験的に決定されたRMaxを、理論的に計算されたRMaxで割り算することによって、結合活性を決定した。
【数2】
式2:結合活性(%)の計算。
【表5】
【0323】
SPR実験において計算された結合活性は表面結合リガンドの活性の尺度である。表5から認められうるとおり、TPP-15370、TPP-15374、TPP-23298およびTPP30788~30791は、試験した全てのSema3Aドメインに約100%の活性で結合しうる。このことは、全ての結合領域が完全に結合しうることを意味する。先行技術の抗体TPP-17755は、種に応じて50~60%の活性レベルに達するに過ぎない。先行技術の抗体TPP-11489は、マウスおよびブタの場合(この場合、より高いレベルを示す)を除いて、50%未満の、より一層低いレベルを示す。驚くべきことに、そのような活性レベルに達するには、TPP-11489のリガンドレベルは、その他の抗体と比較して、10倍以上高いことが必要であり、このことは、一般に、TPP-15370、TPP-15374およびTPP-23298と比較して遥かに低い結合活性を示している。
【0324】
実施例6:競合ELISA
競合ELISA法でのスクリーニングのために、ヒトSema3a(TPP-13211)をコーティングバッファー(カルボナートに基づくもの、pH9.6、Candor 121125)中で0.5μg/mlの濃度で384ウェルプレート(Greiner bio-one、781077)上に10℃で一晩コーティングした。プレートを50μlのPBS 0.05% Tweenで3回洗浄した後、プレートを50μlのSmart Block(登録商標)(Candor 113500)で20℃で1時間ブロックし、記載されているとおりに再度3回洗浄した。
【0325】
次いで、予め混合された抗体溶液20μlをプレートに添加し、10℃で18時間インキュベートした。前記の予め混合された抗体溶液を得るためには、ウェルごとに、TPP-15370またはTPP-15374のいずれかである1つのビオチン化親抗体を、ビオチンタグを含有しない及びCDR領域内に1以上のアミノ酸変異を含む抗体(組換え変異体)と、1:1、1:5または5:1の比で混合した。追加的な対照として、ヒトSema3Aへの結合を示さないアイソタイプ対照抗体をも競合抗体として使用した。添加抗体溶液の総濃度は0.25μg/mlであった。インキュベーション時間中、それらの抗体は競合的にプレートに結合した。なぜなら、それらはヒトSema3Aタンパク質上の同一エピトープに関して競合するからである。
【0326】
次いで50μlのPBS 0.05% Tweenで3回洗浄した後、20μlのストレプトアビジン-HRP溶液(R&D Systems、DY998、PBS 0.05% Tween 10% SmartBlock中1:200)を添加し、20℃で1時間インキュベートし、次いで、50μlのPBS 0.05% Tweenで3回洗浄し、20μlのAmplex Red溶液(Invitrogen A12222;1:10000の30% H2O2を含有するNaPバッファー50mM(pH7.6)中、1:1000)を添加した。20℃で20分間の最終インキュベーション後、595nmの発光波長および530nmの励起を用いてシグナルを測定した。親抗体TPP-15370およびTPP-15374のビオチン化により、これらの変異体の結合のみが検出されうる。したがって、優れた結合を示す抗体変異体との競合は、例えば親抗体の、それ自体の非ビオチン化形態との競合と比較して、より低い結合シグナルを示す。
【0327】
全体として、TPP-15370の103個の組換え変異体、およびTPP-15374の1136個の組換え変異体が測定された。分析のために、そしてプレート間変動の補正を可能にするために、ELISAの生の値をアイソタイプ対照抗体TPP-9809との競合の値に対して正規化した。
【0328】
表6は、TPP-15370およびTPP-15374の選択された組換え変異体の競合ELISAの値を列挙する。それぞれ1:5または1:1の比での測定におけるアイソタイプ対照抗体TPP-9809に対する比率が示されている。
【表6】
【0329】
実施例5a:表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたエピトープビニング
古典的なサンドイッチ法を利用することにより、SPRを用いて抗Sema3A抗体のエピトープビンを決定するために、エピトープビニング実験を行った。この実験においては、1つの抗体をSPRチップに固定化し、Sema3Aを注入し、結合をモニターする(図10A)。第1抗体へのSema3Aの結合に成功した後、Sema3Aに結合した固定化mAbの複合体上に第2抗体を注入し、更なる結合をモニターする(図10Bおよび図10C)。第2抗体がSema3Aへの結合に関して第1抗体と競合する場合には、第2抗体の注入後に追加的な結合シグナルは検出されず、このことは、それらの2つの抗体が同一または非常に隣接するSema3Aエピトープに結合することを示す(図10C)。第2抗体がSema3Aへの結合に関して第1抗体と競合しない場合には、第2抗体の注入後に追加的な結合シグナルが検出され、このことは、それらの2つの抗体が、異なるSema3Aエピトープに結合することを示す(図10B)。
【0330】
アッセイバッファーHBS P+、300mM NaCl、0.75mM CaCl、2.5mM MgCl、1mg/ml BSA、0.05% NaNを使用して、Biacore T200装置(Cytiva)で25℃で実験を行った。抗体をシリーズS CM5センサーチップ(Cytiva)に共有結合によってアミンカップリングさせた。アミンカップリングは、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)およびエタノールアミンHCl(pH8.5)(「アミンカップリングキット」BR-1000-50、Cytiva)を使用して、製造業者の説明に従い行った。ヒトの一価Sema3Aドメインを第1アナライトとして200nMの濃度で使用し、次いで競合抗体の第2の注入を行った。この設定を全ての可能な組合せで行った。センサー表面を各抗原注入後にグリシン(pH2.0)で再生させた。表6aはビニング結果を示す。
【表7】
【0331】
ビニング実験は、TPP-30788(BIクローンI)と比較して、TPP-23298に対する別のエピトープを強く示しており、このことは、両方の抗体がSema3A上の独立した/異なるエピトープを標的としており、一方、TPP-23298は、TPP-17755(Samsung)と重複または隣接するエピトープを有しうることを意味する。
【0332】
実施例7:オフターゲットへの結合の評価
抗Sema3A mAb(TPP-15370、親mAb)の特異性を評価するために、Retrogenix技術を用いてオフターゲットスクリーニングを行った。一次スクリーニングでは、ZsGreen1と完全長ヒト細胞膜タンパク質または細胞表面結合ヒト分泌タンパク質との両方をコードする5484個の発現ベクターを、16個のマイクロアレイスライドにわたって、二重に重複して配置(array)した。ヒトHEK293細胞を逆トランスフェクション/発現に使用した。
【0333】
細胞固定後に試験抗体を各スライドに添加して、最終濃度を20μg/mlとした。プレスクリーニングで使用したものと同じAF647抗hIgG Fc検出抗体を使用して、結合の検出を行った。16個のスライドセットのそれぞれについて、2つのレプリケート(replicate)スライドをスクリーニングした。ヒットを、二重重複スポットの強度に応じて、「強い、中程度、弱い、または非常に弱い」に分類した。
【0334】
5484個のヒト細胞膜タンパク質およびヒト分泌タンパク質を発現する固定HEK293細胞に対する結合に関するスクリーニングの後、Retrogenix技術は試験抗体TPP-15370に関する特異的オフターゲット相互作用を特定しなかった。Sema3A(その一次標的)への結合が観察された。これらのデータは、TPP-15370のその一次標的に対する特異性が高いことを示している。
【0335】
実施例8:抗Sema3A mAbの選択性
セマフォリンタンパク質は、脊椎動物において見出される5つのクラス(クラス3~7)に細分されうる。セマフォリン3クラス(Sema3A~G)における親抗Sema3A mAbであるTPP-15370およびTPP-15374の選択性プロファイルを評価するために、R&D SystemsのSema3A、Sema3B、Sema3C、Sema3D、Sema3EおよびSema3F分子を使用してELISAアッセイを行った。どちらの抗体もSema3B、Sema3C、Sema3D、Sema3EおよびSema3Fへの結合を示さなかった。
【0336】
Sema3Gは腎臓保護性であることが最近確認されたため(PMID:27180624)、該抗体がSema3Gに結合しないかどうかを試験することが重要であった。Sema3A対Sema3Gに対する結合選択性を評価するために、1nMの組換えヒトSema3A-Fcキメラ(R&D Systems)または組換えヒトGST-Sema3G(Abnova)をMaxisorbプレート上にコーティングし、0.00015~10μg/mlの用量反応曲線における抗体と共にインキュベートし、抗体の結合を、HRP結合抗ヒト抗血清および化学発光基質を使用して定量した。
【表8】
【0337】
表7に示されているとおり、本発明の全試験抗体および先行技術の抗体は、腎臓保護性Sema3Gに結合しない。
【0338】
Sema3Aは、2つのフューリン切断部位を含有する分泌タンパク質であり、活性または不活性な切断型で存在する。インビボの状況では、Sema3Aは両方の形態で並んで存在する。抗Sema3A抗体が不活性形態と活性形態とを識別しうるかどうかを試験し、Sema3Aドメインのみを含有する不活性形態(切断型Sema3A TPP-19068に類似している)と比較して、活性Sema3A(完全長Sema3A(TPP-13211)に類似している)への結合において、抗体がどのように機能するかを試験するために、ELISAアッセイを行った。読取り結果としては、活性Sema3Aに対する試験抗体のELISAシグナルが不活性Sema3Aに対する試験抗体のELISAシグナルで割り算されている。
【表9】
【0339】
表7aに示されている結合分析は、本発明の抗体(TPP-23298)が、TPP-30788~TPP-30791(BIクローン)より増強した、活性Sema3Aへの結合を示すことを、明らかに示した。これは、おそらく、それらが、活性Sema3Aに対する、より高い選択性を示す、異なるエピトープを標的とするからであろう。
【0340】
実施例9:メサンギウム細胞遊走アッセイにおけるインビトロ有効性
ヒト初代メサンギウム細胞のコンフルエント単層を、血清含有培地内の細胞をイメージロックプレート内に24時間播種することによって作製した。無血清培地に切り替えた後、WoundMakerツールを使用して引っ掻き傷を作り、次いで細胞を、阻害抗体の非存在下または存在下、1nM 組換えヒトSema3A-Fcキメラ(R&D Systems)で処理した。細胞をIncucyteにおいてイメージングし、24時間後、Incucyte Integrated Cell Migration Analysisソフトウェアモジュールを使用して、創傷閉鎖の程度を評価した。
【表10】
【0341】
本発明者らは、ヒトメサンギウム細胞遊走アッセイにおいて3桁のピコモル範囲の効力を有する抗体を特定した。これは、表8に示されているとおり、先行技術の抗体よりかなり強力である。
【0342】
実施例10:成長円錐崩壊アッセイにおけるインビトロ有効性
Sema3A誘発性細胞骨格崩壊に対する抗体の効力を決定するために、幾つかの変更を伴う記載されているもの(PMID:12077190)と同様にして、成長円錐崩壊アッセイを用いた。簡潔に説明すると、マウス後根神経節(DRG)ニューロンをE13 C57Bl/6Jマウス胚から単離し、Neurobasal培地 + 100ng/mL NGF + B-27 + 10% FCSを含有する、ポリ-L-リジンおよびラミニンコート化96ウェル上で培養した。20時間後、細胞を、阻害抗体の非存在下または存在下、10nM 組換えヒトSema3A-Fcキメラ(RnD Systems)で1時間処理し、次いでPFA固定およびAlexa488-ファロイジンでの染色を行った。ウェル当たり100個を超える成長円錐に関して、アクチン成長円錐の面積/形状/質感により、免疫蛍光顕微鏡を使用して、成長円錐崩壊の程度を評価した。
【表11】
【0343】
特定された抗体はまた、マウス成長円錐崩壊アッセイにおいて1桁ナノモル範囲の効力を示し、表9に示されているとおり、この場合もまた、試験した先行技術の抗体(2桁~3桁のナノモル効力)よりかなり強力である。
【0344】
実施例11:HUVEC反発アッセイにおけるインビトロ有効性
組換えヒトSema3A-Fcキメラ(R&D Systems)はヒト生物流体中のSema3Aと同一ではない。なぜなら、それは幾つかの突然変異アミノ酸とカルボキシ末端における余分なタンパク質断片とを含有するからである。更に、前記アッセイ(ヒトメサンギウム細胞遊走アッセイおよびマウス成長円錐崩壊アッセイ)は、均一に分布したSema3Aを使用する。これは、組織内のSema3Aに関して記載されている勾配分布とは対照的である。本発明者らは、これらの相違が組換えタンパク質と内因性タンパク質とに対する抗体の異なる効力をもたらしうると仮定した。したがって、アゴニストとしてのヒト野生型Sema3Aの勾配を用いるアッセイを採用した(PMID:17569671)。簡潔に説明すると、このHUVEC反発アッセイにおいては、配列番号600の配列のヒトSema3Aを発現するヒト胎児腎臓293細胞(HEK293)細胞を、阻害抗体の非存在下または存在下、EGM-2培地内のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)のコンフルエント単層上に播種し、72時間培養し、固定し、DAPIで染色し、免疫蛍光顕微鏡法によって細胞反発の程度を評価した(細胞非含有面積の測定)。したがって、基質であるヒトSema3Aが過剰に存在する。
【0345】
DAPI/CM染色細胞の免疫蛍光顕微鏡イメージ(CM=HCS CellMask(商標)Stainは、全細胞領域を定めるために細胞全体を染色する)に基づいて、以下のとおりにデータ分析を行う。DAPI/CMシグナルに基づいて細胞を特定する(図11B)。分析のための細胞領域を定め、選択する。この領域において、細胞非含有領域を計算する(図11C)。アイソタイプ処理ウェルと比較して、抗体処理ウェルにおいてSema3Aによって誘導された「細胞非含有領域」に基づいて、阻害率(%)を計算する。阻害率(%)を抗体濃度に対してプロットし、それぞれの抗体のEC50値を計算する。
【0346】
詳細には、データ分析のために以下の工程を行う。
【0347】
1.ウェルごとに4つのフィールドをイメージングする。これはウェル領域の80%に相当する。これらのフィールドをつなぎ合わせた全体をDAPI/CM蛍光による細胞の検出に使用する。
【0348】
2.「細胞面積」を、DAPI/CM面積に基づいて計算する。
【0349】
3.「細胞非含有領域」を、「総面積」から「細胞面積」を差し引いた値に基づいて計算する。
【0350】
4.阻害率(%)を、抗体処理ウェル対アイソタイプ処理ウェルにおいてSema3Aによって誘導された「細胞非含有領域」に基づいて計算する。
【0351】
5.ソフトウェアGraphPad Prismを使用して、非線形回帰(可変勾配モデル=4パラメーター用量反応曲線)を用いてEC50値を決定する。
【表12】
【0352】
前記のヒトメサンギウム細胞遊走アッセイおよびマウス成長円錐崩壊アッセイにおける先行技術の抗体との効力の相違は、表10および10aに示されているとおり、天然野生型Sema3A(処理された不活性Sema3Aと未消化の活性Sema3Aとの混合物)の勾配を用いるこのHUVEC反発アッセイにおいて、より一層顕著である。TPP-17755、TPP-11489、TPP-30788、TPP-30789、TPP-30790またはTPP-30791と比較したHUVEC反発アッセイにおける改善された効力を、対応EC50値によって示されるピコモル活性を測定して定量する。TPP-23298は2桁のピコモル活性を示すが、TPP-17755、TPP-11489、TPP-30788、TPP-30789、TPP-30790またはTPP-30791の先行技術の抗体の効力は3桁ピコモルまたは更にはナノモル範囲である。
【0353】
該結果の代替的例証として、HUVEC反発アッセイにおける改善された効力を、それぞれの抗体の80pMの特定された濃度における細胞非含有領域を測定することによって定量する。TPP-23298は、TPP-30788、TPP-30789、TPP-30790またはTPP-30791より高いSema3A阻害率(%)を示す(図12)。
【0354】
表10および10aに示されている両方のアッセイからのデータの分析によると、TPP-23298は細胞Sema3A誘発性HUVEC反発に対する最高効力を示している。BI抗体であるTPP-30788、TPP-30798、TPP-30790およびTPP-30791は若干高いEC50値(2~5倍)を示した。Samsung抗体TPP-17755は、TPP-23298より著しく低い効力(50倍)を有する。Chiome抗体TPP-11489は最高試験濃度で阻害活性を示したに過ぎず、本発明による抗体の400倍を超える予測EC50値をもたらした。表10および10aに示されているとおり、このことは、添加外因性組換えセマフォリン3Aの非存在下の天然環境類似条件下では、本発明による抗体がSema3A誘発性細胞反発を最強活性で阻害することを示している。
【0355】
実施例12:腎臓保護効果を検出するためのインビボアッセイ:マウスにおけるSema3A誘発性アルブミン尿の阻害
Sema3Aインヒビターは、組換えSema3Aの全身注射によって誘発される尿アルブミン排泄を減少させる。アルブミン尿減少に対する該化合物の有益な効果を、以下のとおりに、Sema3A誘発性アルブミン尿モデルにおいて調べた。
【0356】
Taconicから購入した雄C57Bl/6マウス(8~10週齢)に抗Sema3A抗体を静脈内注射した。抗体適用の30分後、ヒト組換えSema3A(1.0mg/kg、R&D Systems)の静脈内注射によってアルブミン尿を誘発した。動物を代謝ケージ内に入れ、尿を4時間採集した。臨床生化学分析装置(Pentra400)によって尿クレアチニンを測定した。尿アルブミンの評価には、マウス特異的アルブミンELISA(Abcam)を製造業者のプロトコルに従い使用した。尿クレアチニンおよびアルブミンの両方を用いて、尿アルブミン対クレアチン比(ACR)を計算した。グループ間の差異を、多重比較のためのダネット補正を伴う一元配置分散分析によって分析した。統計的有意性はp<0.05として定義される。全ての統計分析は、GraphPad Prism8を使用して行った。
【0357】
表11~15aはマウスにおけるSema3A誘発性アルブミン尿モデルにおけるTPP-15370、TPP-15374、TPP-11489、TPP-17755、TPP-30788およびTPP-23298での用量反応実験を示す。TPP-11489および/またはTPP-17755および/またはTPP-30788と比較した、TPP-15370、TPP-23298によるアルブミン尿減少に対する効果を図1~2に示す。
【0358】
本発明による抗体はSema3A誘発性尿アルブミン排泄を減少させる。
【表13】
【0359】
実施例13:腎臓保護効果を検出するためのインビボアッセイ:マウスにおける急性虚血/再灌流傷害(I/RI)モデル
片側腎摘出マウスは虚血再灌流傷害後のSema3Aインヒビターでの処置から利益を受けうる。腎機能に対するSema3A抗体の有益な効果を、以下のとおりに、マウスにおける腎虚血再灌流傷害モデルにおいて調べた。
【0360】
実験室で飼育された6~8週齢の雄C57Bl/6JマウスをCharlesRiverから入手した。通常の餌および飲料水を自由に摂取可能な12時間の明暗周期の標準的な実験室条件下でマウスを維持した。虚血再灌流傷害モデルに、それぞれの対照群および実験群で合計8~10匹を使用した。
【0361】
連続吸入イソフルランで動物を麻酔した。対側腎臓の虚血処置の7日前に、右脇腹切開により右腎摘出術を行った。腎虚血開始の1時間前に、抗体および適切なアイソタイプ対照をマウスに静脈内注射により投与した。マウスを麻酔し、左脇腹を切開した。左腎茎を切開して腎血管を露出させた。非外傷性血管クランプを使用して、虚血の25分間(マウス)の間、血流(動脈および静脈)を停止させた。クランプを除去することによって再灌流を確立した。腹壁(筋肉層および皮膚)を5.0ポリプロピレン縫合糸で閉じた。Temgesic(登録商標)(ブプレノルフィン、0.025mg/kg皮下)を鎮痛薬として適用した。
【0362】
各動物の尿を代謝ケージ内で一晩採集した後、虚血後24時間の時点で犠死させた。臨床生化学分析装置(Pentra400)で尿クレアチニンを測定した。尿アルブミンの評価には、マウス特異的アルブミンキット(Hitachi)をPentra分析装置内で使用した。尿クレアチニンおよびアルブミンの両方を使用して、アルブミン尿(アルブミン/クレアチニン比)を測定した。犠死に際して、終末麻酔下で血液サンプルを採取した。血液サンプルの遠心分離の後、血清を単離した。血清クレアチニンおよび血清尿素の両方を臨床生化学分析装置(Pentra400)で測定した。グループ間の差異を、多重比較のためのダネット補正を伴う一元配置分散分析によって分析した。統計的有意性はp<0.05として定義される。全ての統計分析は、GraphPad Prism8を使用して行った。
【0363】
表16~20はマウスにおける急性腎虚血/再灌流傷害モデルにおけるTPP-15370、TPP-15374、TPP-11489、TPP-17755およびTPP-23298での用量反応実験を示す。図3はI/RIモデルにおける15mg/kgでの処置の後のTPP-23374、TPP-23298およびTPP-15370の有効性を示す。TPP-11489および/またはTPP-17755と比較した、TPP-15370、TPP-23298およびTPP-15374による処置効果を図4~6に示す。
【0364】
該抗体は、血清クレアチニンおよび血清尿素(糸球体濾過速度の代用)および尿アルブミン排泄を減少させることにより、虚血/再灌流誘発性腎損傷を軽減した。
【表14】
【0365】
実施例14:腎臓保護効果を検出するためのインビボアッセイ:アルポート症候群モデル(Col4α3欠損マウス)
アルポートマウスの表現型は、糸球体基底膜の特徴的肥厚および分裂ならびに強いタンパク尿を含む、アルポート患者の表現型に類似している。アルポートマウスは、それらのマウスの腎臓におけるSema3A発現の増強により、Sema3Aインヒビターでの処置から利益を受けうる。腎機能に対するSema3A遮断性抗体の有益な効果を、以下のとおりに、アルポートマウスモデルにおいて調べた。Bayer AG,Wuppertal,Germanyにおける飼育施設内でヘテロ接合動物を交配することによって、ノックアウトCol4α3(129-Col4a3<tm1Dec>/J)マウス(Jackson Laboratory,USA)のコロニーを確立した。4~5週齢の雄および雌のホモ接合および野生型のCol4α3マウスをBayer AGにおける動物飼育施設から入手し、この研究に使用した。
【0366】
ホモ接合マウス(HOM)をそれらの年齢および性別に従い幾つかの群にランダム化した(各群n=10)。アイソタイプ対照およびTPP-15370およびTPP-23298を週1回、マウスに投与した。TPP-11489を隔週で投与した。処置開始前から週1回、各動物の尿を代謝ケージ内に採集した。尿クレアチニンおよび総タンパク質を臨床生化学分析装置(Pentra400)で測定した。尿クレアチニンおよびアルブミンの両方を、タンパク尿(タンパク質/クレアチニン比)を測定するために用いた。処置開始後第21日または第28日における犠死に際して、終末麻酔下で血液サンプルを採取した。血液サンプルの遠心分離の後、血清を単離した。血清クレアチニンおよび血清尿素の両方を臨床生化学分析装置(Pentra400)によって測定した。
【0367】
腎臓を採取し、2つの部分に分けた。一方の部分をmRNA分析のために液体窒素中で瞬間凍結した。他方の部分を組織切片の調製のためにダビッドソン(Davidson)固定液中に保存した。採取した腎臓の部分から全RNAを単離した。腎臓組織をホモジナイズし、RNAを得、cDNAに転写させた。TaqManリアルタイムPCRを使用して、腎臓組織における線維化促進マーカーの腎臓mRNA発現を分析した。タンパク質レベルでの線維症の評価のため、標準的な方法を用いて、パラフィン組織切片をアルファ平滑筋アクチン(αSMA)およびシリウスレッド/ファストグリーンコラーゲン染色で染色した。
【0368】
腎臓内のアルファ平滑筋アクチン(αSMA)陽性およびシリウスレッド(コラーゲン)陽性の領域の定量的測定値を、AxioScan Z1(Zeiss)顕微鏡とZenソフトウェアを使用するコンピュータイメージ解析によって得た。
【0369】
全てのデータは平均値±S.D.として表されている。群間の差異を、多重比較のためのダネット補正を伴う一元配置分散分析によって分析した。統計的有意性はp<0.05として定義された。全ての統計分析は、GraphPad Prism8を使用して行った。
【0370】
表21A~21Cおよび22A~22Cは、アルポートモデルにおけるTPP-15370およびTPP-23298での処置の後に得られたタンパク尿、腎機能および腎線維症に対する効果を示す。タンパク尿、腎機能および腎線維症に対する、TPP-11489と比較したTPP-15370での処置の後の効果を、図7および8に示す。
【0371】
本発明による抗体はアルポート症候群のマウスモデルにおいて腎疾患の進行を停止させた。本発明による抗体は尿タンパク質の排泄を減少させ、クレアチニンおよび血清尿素(糸球体濾過速度の代用)を減少させ、筋線維芽細胞染色およびコラーゲン沈着によって定量される線維症を低減した。
【表15】
【0372】
実施例15:腎臓保護効果を検出するためのインビボアッセイ:ブタにおける片側腎臓IRIモデル
TPP-23298を成体ミニブタにおける最小侵襲性片側腎動脈バルーンカテーテル閉塞モデルで試験し、約24時間の再灌流後追跡調査を行った。体重範囲14~17kgの雌のゲッティンゲン(Gottingen)ミニブタ(Ellegaard,Denmark)を実験に使用した。動物をランダムに実験群に割り当てた。
【0373】
盲検対照研究において、TPP-23298を6頭の動物に投与し、6頭の対応するIgG処置対照と比較した。腎動脈閉塞を伴わずに全ての処置手順に付され、リン酸緩衝生理食塩水ビヒクルのみの投与を受けた動物を、偽(sham)処置参照群として用いた。
【0374】
腎動脈閉塞の開始前に、ボーラスとして、最終体積1ml/kgのリン酸緩衝生理食塩水中の重量調整用量で、ゆっくりとした静脈内注射により、TPP-23298を投与した(予防的な設定)。
【0375】
実験の第1日の介入のために、プロポフォールとフェンタニルとの組合せでブタを麻酔し、パンクロニウムによる筋弛緩下で経口気管チューブで人工換気した。乳酸リンゲル液の連続注入によって体積を連続的に置換した。手術の開始前に、抗生物質および血栓症予防物質を、それぞれ、エンロフロキサシンの筋肉内投与およびヘパリンの静脈内投与によって供与した。血圧および心拍数を、前脚カフを備えた非侵襲性獣医用装置を使用してモニターした。
【0376】
以下の全ての介入は、厳密な無菌条件下で行った。薬物投与のために、背頸部皮膚を通って頸静脈まで、カテーテルを皮下に通した。シース(sheath)を(好ましくは左側の)大腿動脈内に配置し、固定し、それを通して、バルーンカテーテルを内部に備えたホッケー・スティック・カテーテルを上流の腹部大動脈内に進め、その先端を左または右の腎動脈の開口部内に挿入した。次いでバルーンカテーテルを突き出し、バルーンを膨張させて腎臓への血流を遮断した。バルーンの正しい位置を、市販の超音波診断装置を使用したドップラー超音波によって制御した。ベースライン時および虚血開始の2時間後に血漿サンプルを収集した。
【0377】
バルーンを収縮させ、カテーテルおよびシースを引き抜くことにより、閉塞開始後の厳密に所定の時点(90分~120分の範囲)で腎虚血を除去した。血管を縫合し、創傷を閉鎖した後、動物を麻酔から再び目覚めさせ、自発呼吸が始まった後、抜管した。
【0378】
腎動脈閉塞から約22~23時間後、ケタセット/ドルミカムおよびパンクロニウムの組合せによって動物を再麻酔し、記載されているとおりに人工換気した。血圧および心拍数を頸動脈カテーテルを介して侵襲的にモニターした。体積置換を流速10ml/kg/hの乳酸リンガーの静脈内投与で行った。下腹部の小さな切開を介して、両方の尿管を膀胱壁上で切開し、体積測定および尿検査のために側別に尿を収集するために、カテーテルを挿入した。全てのパラメータが安定したら(これは、典型的には、閉塞の24時間後であった)、記録およびサンプル収集を開始した。ベースライン時および3時間にわたる各時間に(24~27時間間隔)、血液サンプルを収集した。並行して、1時間の3つの間隔で尿を採取した。
【0379】
尿体積流量(V)および尿クレアチニン濃度([Crea])を測定した後、標準式CLCrea=V [Crea]/[Crea]Pl(ここで、[Crea]Plは血漿クレアチニン濃度を表す)に従い、クレアチニンクリアランス(CLCrea)を側別に計算した。各動物の左および右の腎臓のCLCreaを加算することによって、総CLCreaを計算した。
【0380】
結果を図9に示す。TPP-23298は、閉塞の30分前に予防的に投与された場合、105分間の片側腎動脈閉塞の後のこの実験設定において、虚血/再灌流誘発性クレアチニンクリアランスの悪化を有意に予防した。
【0381】
実施例16:哺乳類細胞培養における抗Sema3A抗体の発現力価
HEK293-6E細胞を、TPP-30792のFabフラグメント(TPP-31357)または抗Sema3A抗体の重鎖および軽鎖をコードするpTT5プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの2日前に、所望の発現量の90%を構成する、振盪フラスコ内の0.1% Pluronic F68(Gibco,24040032)および4mM GlutaMax(Gibco,35050061)を含有するFreeStyle(商標)F17発現培地(Gibco,A1383501)における5×10?5細胞/mLの密度に、HEK293-6E細胞を分割した。HEK293-6E細胞を、75rpmで振とうしながら、37℃、5% COで培養した。
【0382】
トランスフェクションのために、最終発現量の10%を構成する、4mM GlutaMax(Gibco,35050061)を含有するFreeStyle(商標)F17発現培地(Gibco,A1383501)内で、該DNAとポリエチレンイミン(Polysciences,29366)とを混合する。溶液を10分間インキュベートし、振盪フラスコに加える。トランスフェクションの24時間後、1%(v/v)超低IgG FBS(Gibco,16250078)および0.05%(v/v)1N バルプロ酸(Sigma,P4543)を振盪フラスコに加える。
【0383】
トランスフェクションの4日後から毎日、細胞の生存率および密度をモニターし、生存率が70%であると決定された場合、遠心分離および滅菌濾過によって上清を採集する。生産力価を決定するために、50mM リン酸ナトリウム(Sigma,S0751,S9763)、150mM NaCl(Sigma,S6546)、5% 2-プロパノール(sigma,34863)(pH7.2)をランニングバッファーとして使用するHPLC系(Agilent,1100 HPLC系)を介して、100μLの採集上清を0.1mLのPoros Aアフィニティカラム(Thermo Scientific,2100100)にローディングする。次いで、12mM HCl(Sigma,H9892)、150mM NaCl、5% 2-プロパノール(pH2)を使用して、タンパク質を溶出する。既知サイズのタンパク質を使用して、5μg/mLから150μg/mLまでの検量線を設定し、また、HPLC系を介してPoros Aカラムに適用する。上清中のタンパク質のサイズおよび吸光係数を考慮して、標準曲線を使用して正確な力価が計算されうる。CHOにおける発現は、TPP-30792にプラスミドpTT22AKTが使用されたこと以外は、HEK細胞に類似している。
【表16】
【0384】
本発明の抗体、およびTPP-30792以外の全ての先行技術抗体は、表23に示されているとおり、哺乳類細胞において高力価で産生されうる。TPP-30792は、HEK細胞またはCHO細胞のいずれにおいても、有意な量で発現され得なかった。合計125μgのTPP-30792が4.5リットルのHEK293細胞培養から精製可能であった。同様に、TPP30792のFabフラグメント(TPP-31357)は5リットルのHEK293細胞培養から僅か200μgの精製Fabを与えたに過ぎなかった。
【0385】
実施例17:抗Sema3A抗体のCMCパラメータの安定性および溶解度の分析
50mg/mlを超える高濃度タンパク質溶液は、通常、より低い濃度のタンパク質溶液と比較して、より高い粘度を示すことが公知である。粘度の増加は、低い適用体積の場合に特に、タンパク質溶液の送達性に悪影響を及ぼし、それは注射時間および注射部位における疼痛を増大させうる。それに加えて、高粘度は産業上の大規模タンパク質生産に影響を及ぼす。したがって、長期の貯蔵期間にわたって安定性を維持しながら高濃度タンパク質溶液の粘度を低下させることはインビボでの治療状況に特に重要である。
【0386】
高濃度溶液中のタンパク質は、しばしば、希釈溶液中のものより低い安定性を示す。なぜなら、タンパク質は、より高濃度において、凝集する傾向にあり、可逆的に自己会合しうるからである。凝集は構造の完全性に悪影響を及ぼす可能性があり、したがって、インビボでの治療状況における機能的で生物学的に利用可能なタンパク質の量にも悪影響を及ぼしうる。これは注射による送達を更に困難にする。
【0387】
タンパク質の溶解度は、もう1つの重要な品質基準である。単離されたタンパク質の溶解度の増加は、インビボでの治療状況に必要な高濃度溶液の調製を可能にする。
【0388】
したがって、低い粘度ならびに高い安定性および溶解度を有する高濃度タンパク質溶液を得ることは、治療用分子の治療適用可能性にとって有益である。
【0389】
潜在的治療用途のための抗Sema3A抗体のCMC(化学、製造、管理)パラメータの安定性、溶解度および粘度を評価するために、抗体TPP-23289およびTPP-30788(BIクローンI)をPBS中で25mg/mlに希釈し、700rpm、40℃で2週間インキュベートした。抗体は、通常、短期の場合は4~10℃で、あるいは長期の場合は-18℃以下または-81℃以上で冷凍保存されるが、40℃以上の温度(哺乳動物の平均体温は36℃~39℃である)に対する哺乳類抗体の曝露は熱ストレス状態に類似している。この熱ストレス条件において、加速化タンパク質安定性/ストレス安定性を試験する。PBSバッファー中のAkta系(Cytiva)に接続されたSuperdex 200カラム(Cytiva)を使用するサイズ排除クロマトグラフィー、およびCaliper系(Perkin Elmer)を使用するキャピラリーゲル電気泳動によって、安定性の分析を評価した。プロファイルの変化を非ストレス化出発物質に対する割合(%)として計算された。PBSバッファー中で30kDaのカットオフを有するAmiconスピンフィルター(Millipore)を使用して抗Sema3A抗体を濃縮することによって、溶解度を決定した。溶解度を濃縮器からの90%の回収率において測定し、タンパク質濃度を、UV280nmでの吸光度を用いて測定した。
【表17】
【0390】
前記のとおり、安定性、溶解度および粘度は治療用分子にとって重要なCMCパラメータである。40℃に対する曝露のような熱ストレス条件または濃縮工程の後の構造的完全性をSECおよび/またはcGEによって分析して、構造的完全性に対する負荷ストレスの影響を調べる。開始時と比較して負荷ストレス後の1%未満の変化は安定な分子を示すが、1%を超える逸脱は分子における不安定性を示す。TPP-23289は、TPP-30788と比較して、PBS中の遥かに高い溶解度、すなわち、2倍を超える溶解度を示し、これは、例えば低い適用体積を可能にするのに、非常に有益である。更に、TPP-23298はTPP-30788より安定であり、熱ストレスに対して、より耐性であり、PBSバッファー中で、より低い粘性である。
【0391】
配列
【表18】
【表19】
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
【配列表】
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