(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-01
(45)【発行日】2025-04-09
(54)【発明の名称】ガラス組成物、ガラス繊維、及びガラスフィラー
(51)【国際特許分類】
C03C 3/093 20060101AFI20250402BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20250402BHJP
C03C 13/02 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
C03C3/093
C03C3/091
C03C13/02
(21)【出願番号】P 2024557779
(86)(22)【出願日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2024020548
【審査請求日】2024-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2023094429
(32)【優先日】2023-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 文
(72)【発明者】
【氏名】倉上 拓真
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064922(JP,A)
【文献】特開2009-203154(JP,A)
【文献】特開2003-137600(JP,A)
【文献】特開平07-172863(JP,A)
【文献】特開平01-028249(JP,A)
【文献】特開昭61-163696(JP,A)
【文献】特開昭59-137341(JP,A)
【文献】特開昭57-027945(JP,A)
【文献】特開昭63-050345(JP,A)
【文献】特開平02-164741(JP,A)
【文献】特開昭59-116147(JP,A)
【文献】特表2023-512885(JP,A)
【文献】特開2000-187828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 3/093
C03C 3/091
C03C 13/02
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦1、
0.1≦ZrO
2≦5、
の成分を含有し、
BaO、TiO
2及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項2】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0.1≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦1、
の成分を含有し、TiO
2、ZrO
2及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項3】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦1、
1≦ZrO
2≦4、
の成分を含有し、TiO
2及びZrO
2の含有率の和が4質量%以下であり、
BaO、PbO及びHfO
2を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項4】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦1、
1≦ZrO
2≦5、
の成分を含有し、
BaO、PbO、P
2O
5及びHfO
2を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項5】
質量%で表示して、75≦(SiO
2+B
2O
3+Al
2O
3+MgO+CaO+ZnO)≦99、の成分を含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項6】
質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
1≦(ZnO+ZrO
2)≦15、の成分を含有
し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項7】
質量%で表示して、1≦(Li
2O+Na
2O+K
2O+TiO
2+ZrO
2+T-Fe
2O
3)≦19、の成分を含有する、請求項1から4
及び6のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、T-Fe
2O
3は、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄である。
【請求項8】
質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
2≦B
2O
3≦6、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦4、
の成分を含有
し、TiO
2
及びZrO
2
の含有率の和が4質量%以下であり、PbO及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項9】
質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
2≦B
2O
3≦6、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有
し、PbO、P
2
O
5
及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項10】
質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
5≦MgO≦13、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有
し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項11】
質量%で表示して、0≦CaO≦1、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項12】
SrOを実質的に含有しない、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項13】
BaOを実質的に含有しない、請求項
2、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項14】
質量%で表示して、0≦ZnO≦8、の成分を含有する、請求項1、3
、4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項15】
質量%で表示して、4≦(MgO+ZnO)≦17、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項16】
質量%で表示して、0≦(Na
2O+K
2O)≦1、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項17】
質量%で表示して、0≦T-Fe
2O
3≦5、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、T-Fe
2O
3は、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄である。
【請求項18】
質量%で表示して、0≦Y
2O
3≦3、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項19】
質量%で表示して、0≦T-SnO
2≦2、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、T-SnO
2は、SnO
2に換算した全酸化錫である。
【請求項20】
質量%で表示して、0≦CeO
2≦2、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項21】
質量%で表示して、0≦F
2≦5、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項22】
質量%で表示して、0≦SO
3≦0.5、の成分を含有する、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項23】
粘度が1000dPa・secであるときの温度を作業温度としたとき、前記作業温度が1450℃以下である、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項24】
粘度が1000dPa・secであるときの温度を作業温度としたとき、前記作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが0℃以上である、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項25】
ヤング率が85~100GPaである、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項26】
50~350℃における平均線膨張係数が20~35×10
-7/℃である、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項27】
周波数1GHzにおける誘電率が6.5以下である、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項28】
周波数1GHzにおける誘電正接が0.0060以下である、請求項1から4
、6及び8から10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項29】
下記1~4のいずれか1
つに記載のガラス組成物を含む、ガラス繊維。
1.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
2.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
の成分を含有し、TiO
2
、ZrO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
3.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦4、
の成分を含有し、TiO
2
及びZrO
2
の含有率の和が4質量%以下であり、PbO及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
4.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、PbO、P
2
O
5
及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項30】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、
0.1≦ZrO
2≦5、
の成分を含有し、TiO
2を実質的に含有しないガラス組成物を含む、ガラス繊維。
【請求項31】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、
の成分を含有し、TiO
2及びZrO
2を実質的に含有しないガラス組成物を含む、ガラス繊維。
【請求項32】
質量%で表示して、
56≦SiO
2≦70、
0.1≦B
2O
3≦8、
15≦Al
2O
3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、
1≦ZrO
2≦5、
の成分を含有し、HfO
2を実質的に含有しないガラス組成物を含む、ガラス繊維。
【請求項33】
ロービング、ロービングクロス、連続ストランドマット、ミルドファイバー、フラットファイバー、フィラメントマット、チョップドストランド、ヤーン、ガラスクロス及びガラステープからなる群より選ばれる少なくとも1種の形状を有する、請求項
29から32のいずれか1項に記載のガラス繊維。
【請求項34】
下記1から4のいずれか1
つに記載のガラス組成物を含む、ガラスフィラー。
1.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
2.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
の成分を含有し、TiO
2
、ZrO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
3.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦4、
の成分を含有し、TiO
2
及びZrO
2
の含有率の和が4質量%以下であり、PbO及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
4.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、PbO、P
2
O
5
及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項35】
フレーク状ガラス、ガラス粉末、ガラスビーズ、及びファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項34に記載のガラスフィラー。
【請求項36】
請求項34に記載のガラスフィラーを含み、強化プラスチック、塗料、インク、プリント基板、無機硬化体、及び化粧品からなる群より選ばれる少なくとも1種である、フィラー含有製品。
【請求項37】
請求項
29から32のいずれか1項に記載のガラス繊維を含み、ゴム強化用コード、不織布、プリプレグ、強化プラスチック、プリント基板、無機硬化体、フィルター、断熱材、吸音材、及びバッテリーセパレータからなる群より選ばれる少なくとも1種である、成形体。
【請求項38】
下記1から4のいずれか1
つに記載のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラス繊維へと成形する工程と、を含む、ガラス繊維の製造方法。
1.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
2.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
の成分を含有し、TiO
2
、ZrO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
3.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦4、
の成分を含有し、TiO
2
及びZrO
2
の含有率の和が4質量%以下であり、PbO及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
4.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、PbO、P
2
O
5
及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【請求項39】
下記1から4のいずれか1
つに記載のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含む、ガラスフィラーの製造方法。
1.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
0.1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、TiO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
2.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
の成分を含有し、TiO
2
、ZrO
2
及びPbOを実質的に含有しないガラス組成物。
3.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦4、
の成分を含有し、TiO
2
及びZrO
2
の含有率の和が4質量%以下であり、PbO及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
4.質量%で表示して、
56≦SiO
2
≦70、
0.1≦B
2
O
3
≦8、
15≦Al
2
O
3
≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0.1≦(Li
2
O+Na
2
O+K
2
O)≦1、
1≦ZrO
2
≦5、
の成分を含有し、PbO、P
2
O
5
及びHfO
2
を実質的に含有しないガラス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物に関し、またガラス繊維及びガラスフィラーに関し、さらにガラス繊維又はガラスフィラーを含む成形体等の製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、電気絶縁部材及び機構部材を構成するために、樹脂組成物が広く使用されている。電気絶縁部材の例は、SMT(surface mount technology)、FPC(flexible printed circuits)、ボード間、CPU(central processing unit)ソケット、メモリカード、カードエッジ、光コネクタ等に用いるコネクタハウジング、LCD(liquid crystal display)バックライト、コイル、フラット、トランス、磁気ヘッド等に用いるリアクタンス用ボビン、リレーケース、リレーベーススイッチ、リフローディップスイッチ、タクトスイッチ等に用いる開閉器、センサーケース、コンデンサケーシング、ボリュームケーシング、トリマーケーシングである。機構部材の例は、光ピックアップ用のレンズホルダ及びピックアップベース、マイクロモータ用の絶縁体及び端子、並びにレーザプリンタ用ドラムである。樹脂組成物は、FPC用ベースフィルム、銅張積層板用ベースフィルム等のフィルムとしても使用されている。また、電子機器が備えるプリント回路板(printed circuit board)の一種にも樹脂組成物から構成される基板がある。電子部品が実装される前のプリント配線板(printed wiring board)にも樹脂組成物から構成される基板がある。以下、本明細書では、プリント回路板及びプリント配線板の双方を合わせて、「プリント基板(printed board)」と記載する。
【0003】
上記の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とガラス繊維とを含み、必要に応じ、硬化剤、改質剤等をさらに含む。プリント基板には無機充填材がさらに含まれることがある。無機充填材としては、ガラスフィラーが使用されることがある。近年、電子機器の小型化の要求と、高機能化を目的とした薄型化の要求とに応えるため、樹脂組成物には寸法安定性が求められ、それに応じてその構成材料にも低い熱膨張係数や高い弾性率が求められている。特許文献1には、線熱膨張係数が低く、ヤング率の高いガラス組成物やそのガラス組成物から構成されたガラス繊維が開示されている。
【0004】
特許文献1の実施例に開示されているガラス組成物は、SiO2、B2O3、Al2O3、MgO等と共に、質量基準で0.7%以上3.0%以下の酸化チタン(TiO2)を含み、酸化ジルコニウム(ZrO2)の含有率は0.6%以下に制限されている。特許文献2の実施例に開示されているガラス組成物は、SiO2、B2O3、Al2O3、MgO等と共に、質量基準で4.0%以上7.5%以下の酸化亜鉛(ZnO)を含んでいる。特許文献2には、酸化ジルコニウム(ZrO2)を含むガラス組成物は開示されていない。なお、特許文献2に開示されている温度範囲(50~200℃)におけるEガラスの線熱膨張係数は、53×10-7/℃であるが(特許文献2比較例1)、後述するやや広い温度範囲(50~350℃)におけるEガラスの同係数は、60×10-7/℃とやや大きくなる(本願比較例1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-105554号公報
【文献】国際公開第2012/104999号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子機器の小型化や高機能化を目的とした薄型化に伴い、電子機器を構成する樹脂組成物には寸法安定性が求められ、その構成材料であるガラス繊維及びガラスフィラーには、低い線熱膨張係数や高い弾性率が求められている。そこで、本発明は、低い線熱膨張整数及び高いヤング率を有し、かつ量産にも適した、新たなガラス組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
0.1≦ZrO2≦5、
の成分を含有し、TiO2を実質的に含有しないガラス組成物、を提供する。
【0008】
本発明は、別の側面から、質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
の成分を含有し、TiO2及びZrO2を実質的に含有しないガラス組成物、を提供する。
【0009】
本発明は、また別の側面から、質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
1≦ZrO2≦5、
の成分を含有するガラス組成物、を提供する。
【0010】
本発明は、以下のように記載することもできる。
本発明は、質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、の成分を含有し、
a)及びc)からなる群より選択される少なくとも1つ、又はb)が成立する、ガラス組成物、を提供する。
a)0≦ZnO≦10、及び0.1≦ZrO2≦5、の成分をさらに含有し、
TiO2を実質的に含有しない。
b)0.1≦ZnO≦3、の成分をさらに含有し、
TiO2及びZrO2を実質的に含有しない。
c)0≦ZnO≦10、及び1≦ZrO2≦5、の成分をさらに含有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低い線熱膨張係数及び高いヤング率を有し、量産に適した新たなガラス組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の説明は本発明を特定の実施形態に限定する趣旨ではない。本明細書において、「実質的に含有しない」及び「実質的に含有されていない」は、含有率が、0.1質量%未満、0.05質量%未満、0.01質量%未満、さらに0.005質量%未満、特に0.003質量%未満、場合によっては0.001質量%未満であることを意味する。「実質的に」は、ガラス原料、製造装置、成形装置等に由来する微量の不純物の含有を許容する趣旨である。「主成分」は、質量基準で含有率が最も大きい成分を意味する。「T-Fe2O3」は、三酸化二鉄(Fe2O3)に換算した全酸化鉄を意味する。「T-SnO2」は、二酸化錫(SnO2)に換算した全酸化錫を意味する。「アルカリ金属酸化物」は、酸化リチウム(Li2O)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化カリウム(K2O)を意味する。以下に述べる含有率の上限及び下限は、任意に組み合わせることができる。以下、ガラス組成物は単にガラス、線熱膨張係数は単に線膨張係数、とそれぞれ記載することがある。
【0013】
[ガラス組成物]
<成分>
(SiO2)
SiO2は、ガラスの骨格を形成する成分であり、ガラス組成物の主成分である。また、SiO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分であり、ガラスの耐水性を向上させる成分である。さらに、SiO2は、ガラスの線膨張係数を下げる成分である。そして、SiO2は誘電率及び誘電正接を下げる作用を有する成分である。SiO2の含有率は、56質量%以上70質量%以下である。SiO2の含有率の下限は、57質量%以上、58質量%以上、58.5質量%以上、59質量%以上、59.5質量%以上、60質量%以上、さらには60.1質量%以上でありうる。SiO2の含有率の上限は、68質量%以下、66質量%以下、65質量%以下、64質量%以下、63.5質量%以下、63質量%以下、62.5質量%以下、62質量%以下、さらに61.9質量%以下、場合によっては61.8質量%以下でありうる。
【0014】
(B2O3)
B2O3は、ガラスの骨格を形成する成分である。また、B2O3は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分でもある。一方で、過度のB2O3の含有はガラスのヤング率を低下させ、ガラスの線膨張係数を増大させる。さらに、B2O3は誘電率及び誘電正接を下げる作用を有する成分である。B2O3の含有率は、0.1質量%以上8質量%以下である。B2O3の含有率の下限は、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、2.6質量%以上、2.7質量%以上、2.8質量%以上、2.9質量%以上、3質量%以上、3.1質量%以上、3.2質量%以上、3.3質量%以上、3.4質量%以上、場合によっては3.5質量%以上でありうる。B2O3の含有率の上限は、7質量%以下、6質量%以下、さらには5.8質量%以下、5.5質量%以下、5質量%以下、4.5質量%以下、4.4質量%以下、4.3質量%以下、4.2質量%以下、4.1質量%以下、4.0質量%以下、3.9質量%以下、場合によっては3.5質量%以下でありうる。B2O3の含有率は、0.1質量%以上6質量%以下であってもよい。
【0015】
(Al2O3)
Al2O3は、ガラスの骨格を形成する成分である。また、Al2O3は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分でもある。さらに、Al2O3は、ガラスのヤング率を向上させる成分であり、ガラスの線膨張係数を下げる成分でもある。そして、Al2O3は、ガラスの誘電率及び誘電正接を調整する成分である。Al2O3の含有率が15質量%以上24質量%以下では、ガラスの失透温度の上昇が抑えられるとともに、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。Al2O3の含有率の下限は、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、18.5質量%以上、19質量%以上、19.5質量%以上、20質量%以上、20.1質量%以上、さらには20.5質量%以上でありうる。Al2O3の含有率の上限は、23.5質量%以下、23質量%以下、22.5質量%以下、22質量%以下、さらには21.8質量%以下、21.5質量%以下、場合によっては21質量%以下、20.9質量%以下、20.8質量%以下、20.7質量%以下、20.6質量%以下、20.5質量%以下でありうる。
【0016】
(MgO)
MgOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分であり、ガラスのヤング率を向上させる成分でもある。また、MgOは、ガラスの誘電率及び誘電正接を調整する成分である。MgOの含有率は、4質量%以上14質量%以下である。MgOの含有率の下限は、5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、7質量%以上、7.5質量%以上、8質量%以上、8.5質量%以上、さらには9質量%以上でありうる。MgOの含有率の上限は、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9.5質量%以下、9質量%以下、8.5質量%以下、場合によっては8質量%以下でありうる。
【0017】
(CaO)
CaOは任意成分である。CaOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。一方で、過度のCaOの含有はガラスのヤング率を低下させ、ガラスの線膨張係数を増大させる。CaOの含有率の下限は、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.1質量%以上でありうる。CaOの含有率の上限は、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、さらに0.15質量%以下でありうる。CaOは実質的に含有されていなくてもよい。
【0018】
(MgO+CaO)
ガラスの熔融性や成形性に関し、MgO及びCaOの含有率の和(MgO+CaO)の値が重要となることがある。ガラスの製造に適した熔融性や成形性を得る観点からは、(MgO+CaO)の下限は、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、8.5質量%以上、さらには9質量%以上でありうる。また、(MgO+CaO)の上限は、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9.5質量%以下、9質量%以下、場合によっては8.5質量%以下、さらには8質量%以下でありうる。
【0019】
(MgO/CaO)
CaOの含有率に対するMgOの含有率の比(MgO/CaO)の値もガラス形成時の失透温度及び粘度、さらにガラスのヤング率や線膨張係数を調整する上で重要となる場合がある。ここでも含有率は質量基準である。(MgO/CaO)の下限は、30以上、50以上、80以上、90以上、さらに95以上、場合によっては100以上でありうる。(MgO/CaO)の上限は、特に限定されないが、10000以下、1000以下、さらに500以下でありうる。
【0020】
(SrO)
SrOは任意成分である。SrOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。一方で、過度のSrOの含有はガラスのヤング率を低下させ、ガラスの線膨張係数を増大させる。SrOの含有率の上限は、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、さらに0.1質量%以下でありうる。SrOは実質的に含有されていなくてもよい。
【0021】
(BaO)
BaOも任意成分である。BaOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。一方で、過度のBaOの含有はガラスのヤング率を低下させ、ガラスの線膨張係数を増大させる。BaOの含有率の上限は、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、さらに0.1質量%以下でありうる。BaOは実質的に含有されていなくてもよい。
【0022】
(MgO+CaO+SrO+BaO)
ガラスの熔融性や成形性に関し、MgO、CaO、SrO及びBaOの含有率の合計(MgO+CaO+SrO+BaO)の値が重要となることがある。ガラスの製造に適した熔融性や成形性を得る観点からは、(MgO+CaO+SrO+BaO)の下限は、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、8.5質量%以上、さらには9質量%以上でありうる。また、(MgO+CaO+SrO+BaO)の上限は、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9.5質量%以下、9質量%以下、場合によっては8.5質量%以下、さらには8質量%以下でありうる。
【0023】
(ZnO、ZrO2)
ZnO及びZrO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。また、ZnO及びZrO2は、ガラスのヤング率を向上させる成分であり、ガラスの線膨張係数を下げる成分でもある。さらに、ZnO及びZrO2は、ガラスの誘電率及び誘電正接を調整する成分である。ZnO及びZrO2の含有率の和(ZnO+ZrO2)は、失透温度の上昇を抑制しながら、熔融ガラスの失透温度及び粘度をガラスの製造に適した範囲とする観点から、0.1質量%以上15質量%以下の範囲に調整されうる。この範囲は、低い線膨張係数及び高いヤング率を確保する観点からも好適である。(ZnO+ZrO2)の下限は、0.5質量%以上、1質量%以上、1.1質量%以上、1.3質量%以上、さらに1.5質量%以上、場合によっては2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、さらに3質量%超でありうる。(ZnO+ZrO2)の上限は、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%未満、9質量%以下、8質量%以下、7.5質量%以下、7質量%以下、さらに6.5質量%以下、6質量%以下、5.8質量%以下、5.5質量%以下、5質量%以下、場合によっては4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、さらに2質量%以下でありうる。ZnO及びZrO2のそれぞれは任意成分である。言い換えるとこれら各成分の含有率の下限は0であってもよい。(ZnO+ZrO2)は、0.1質量%以上8質量%以下であってもよい。
【0024】
ZnOの含有率の下限は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.1質量%以上、1.3質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.1質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、さらには3.5質量%以上でありうる。ZnOの含有率の上限は、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7.5質量%以下、7質量%以下、6.5質量%以下、6質量%以下、5.5質量%以下、5.3質量%以下、5.2質量%以下、5.1質量%以下、5質量%以下、4.5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.9質量%以下、2.8質量%以下、2.7質量%以下、2.5質量%以下、さらには2質量%以下であってもよい。また、ZnOは実質的に含有されていなくてもよい。
【0025】
ZrO2の含有率の下限は、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.25質量%以上、0.3質量%以上、0.35質量%以上、0.4質量%以上、0.45質量%以上、さらに0.5質量%以上でありうる。ZrO2の含有率の上限は、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.2質量%以下、さらに1質量%以下でありうる。特にTiO2を実質的に含まないガラスにおいて、ZrO2の含有率は、1質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、さらに0.6質量%以下であってもよい。。一方、TiO2を含むガラスにおいて、ZrO2の含有率は、1質量%以上、1.1質量%以上、さらに1.2質量%以上であってもよく、5質量%以下であってもよい。また、TiO2の含有率に関わらず、ZrO2は実質的に含有されていなくてもよい。ただし、低い誘電正接の達成に適したZrO2の含有率は、0.7質量%以上、さらに0.8質量以上である。
【0026】
(B2O3+ZnO+ZrO2)
B2O3、ZnO及びZrO2の含有率の合計(B2O3+ZnO+ZrO2)の値も各種特性を調整する上で重要となる場合がある。(B2O3+ZnO+ZrO2)の適切な調整は、失透温度の過度な上昇を抑制しながら熔融ガラスの失透温度および粘度を、ガラスの製造に適した範囲とする上で有効である。(B2O3+ZnO+ZrO2)の下限は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、さらに4.5質量%以上、場合によっては5質量%以上でありうる。(B2O3+ZnO+ZrO2)の上限は、18質量%以下、16質量%以下、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、さらに6質量%以下でありうる。
【0027】
(MgO+ZnO)
MgO及びZnOの含有率の和(MgO+ZnO)の値も各種特性を調整する上で重要となる場合がある。(MgO+ZnO)の適切な調整は、失透温度の過度な上昇を抑制しながら熔融ガラスの失透温度および粘度を、ガラスの製造に適した範囲とする上で有効である。(MgO+ZnO)の下限は、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、さらに9質量%以上、場合によっては10質量%以上でありうる。(MgO+ZnO)の上限は、17質量%以下、16.5質量%以下、16質量%以下、15.5質量%以下、15質量%以下、14.5質量%以下、14質量%以下、13.8質量%以下、さらに13.7質量%以下でありうる。
【0028】
(Li2O、Na2O、K2O)
アルカリ金属酸化物(Li2O、Na2O、K2O)は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。アルカリ金属酸化物の含有率の合計(Li2O+Na2O+K2O)の値が0質量%以上4質量%以下では、失透温度の過度な上昇を抑制しながら熔融ガラスの失透温度及び粘度を、ガラスの製造に適した範囲とすることができる。また、ガラスの融点の上昇を抑え、ガラス原料のより均一な熔融を実施できながらも、ガラス転移温度が過度に低下することなく、高いガラスの耐熱性を確保できる。(Li2O+Na2O+K2O)の下限は、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.25質量%以上、さらに0.3質量%以上でありうる。微量のアルカリ金属酸化物の添加は、ガラス中の泡の低減に有効である。(Li2O+Na2O+K2O)の上限は、3質量%以下、2質量%以下、2質量%未満、1.5質量%以下、1質量%以下、1質量%未満、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下でありうる。アルカリ金属酸化物は、実質的に含有されていなくてもよい。Li2O、Na2O、及びK2Oのそれぞれは任意成分である。言い換えるとこれら各成分の含有率の下限は0であってもよい。
【0029】
Li2Oの含有率の下限は、0.1質量%以上、さらには0.2質量%以上でありうる。Li2Oの含有率の上限は、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、1質量%未満、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、さらには0.2質量%以下でありうる。Li2Oは実質的に含有されていなくてもよい。
【0030】
Na2O及びK2Oの含有率の上限及び下限は、それぞれ、Li2Oの含有率の上限及び下限として述べた値でありうる。Na2O及びK2Oの含有率の和(Na2O+K2O)は、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、2質量%未満、1.5質量%以下、1質量%以下、1質量%未満、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、さらには0.15質量%以下、場合によっては0.1質量%以下ありうる。(Na2O+K2O)の含有率の下限は、0.1質量%以上、さらには0.2質量%以上であってもよい。Na2Oは実質的に含有されていなくてもよい。K2Oも実質的に含有されていなくてもよい。
【0031】
(TiO2)
TiO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。また、TiO2は、ガラスのヤング率を向上させる成分であり、ガラスの線膨張係数を下げる成分でもある。さらに、TiO2は、ガラスの熔融性及び化学的耐久性を向上させ、ガラスの紫外線吸収特性を向上させる成分である。TiO2の含有率の下限は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、場合によっては1.2質量%以上であってもよい。ただし、ヤング率、線膨張係数、さらに量産適合性をバランスよく調整する上では、TiO2は過剰に含有させないことが望ましい。TiO2の含有率の上限は、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%以下、1.3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、0.3質量%以下、0.2質量%以下、さらには0.1質量%以下でありうる。TiO2は実質的に含有されていなくてもよい。
【0032】
(TiO2+ZrO2)
TiO2及びZrO2の含有率の和(TiO2+ZrO2)の値もガラス形成時の失透温度及び粘度、さらにガラスのヤング率や線膨張係数を調整する上で重要となる場合がある。(TiO2+ZrO2)の下限は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、さらに0.4質量%以上、場合によっては0.5質量%以上でありうる。(TiO2+ZrO2)の上限は、5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3.3質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、場合によっては2質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、1質量%以下、0.7質量%以下、さらに0.6質量%以下でありうる。ただし、実施形態によっては、TiO2及びZrO2は、ともに実質的に含有されていなくてもよい。
【0033】
(Fe)
ガラス中において、Feは、通常、Fe2+又はFe3+の状態で存在する。Fe3+はガラスの紫外線吸収特性を高める成分であり、Fe2+はガラスの熱線吸収特性を高める成分である。Feの含有率の上限は、T-Fe2O3により表示して5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、さらには0.3質量%以下でありうる。Feの含有率の下限は、T-Fe2O3により表示して0.1質量%以上、0.15質量%以上、さらに0.2質量%以上でありうる。特にアルカリ金属酸化物の含有率が低いガラス組成において、微量の酸化鉄はガラスの清澄を促進し、泡の低減に寄与しうる。Feは実質的に含有されていなくてもよい。
【0034】
(CeO2、SnO2)
CeO2及びSnO2は任意成分である。特にアルカリ金属酸化物の含有率が低いガラス組成において、微量のCeO2及びSnO2はガラスの清澄の促進に寄与することがある。CeO2及びSnO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。また、CeO2及びSnO2は、ガラスのヤング率を向上させる成分であり、ガラスの線膨張係数を下げる成分でもある。CeO2及びSnO2の含有率の上限は、それぞれ0.1質量%以上であってもよい。CeO2及びSnO2の含有率の上限は、それぞれ2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、さらに0.2質量%以下でありうる。CeO2は実質的に含まれていなくてもよい。SnO2も実質的に含まれていなくてもよい。なお、SnO2の含有率は、T-SnO2により表示した値である。
【0035】
(SO3)
SO3も任意成分である。微量のSO3は、ガラスに残存する泡を低減し、ガラスの量産適合性の向上に寄与しうる。SO3の含有率の下限は、0.001質量%以上、さらに0.002質量%以上であってもよい。SO3の含有率の上限は、0.5質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、0.05質量%以下、0.04質量%以下、0.03質量%以下、0.02質量%以下、さらに0.01質量%以下でありうる。SO3は実質的に含有されていなくてもよい。
【0036】
(F2、Cl2)
フッ素(F2)及び塩素(Cl2)も任意成分である。特にアルカリ金属酸化物の含有率が低いガラス組成において、F2及びCl2はガラスの清澄の促進に寄与しうる。ただし、F2及びCl2は、揮発し易いため、溶融時に飛散する可能性がある。F2及びCl2の含有率の上限は、それぞれ、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.2質量%以下、さらに0.1質量%以下でありうる。F2は実質的に含有されていなくてもよい。F2の含有率の下限は、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.35質量%以上、さらには0.4質量%以上であってもよい。Cl2も実質的に含有されていなくてもよい。
【0037】
(成分の合計)
上述の各成分、すなわちSiO2からF2及びCl2までに述べた各成分の合計は、95質量%以上、97質量%以上、さらに99質量%以上、場合によっては99.5質量%以上でありうる。(SiO2+B2O3+Al2O3+MgO+CaO+ZnO)で示される各成分の含有率の合計の下限は、75質量%以上、85質量%以下、90質量%以上、さらに95質量%以上、場合によっては97質量%以上であってもよい。(SiO2+B2O3+Al2O3+MgO+CaO+ZnO)で示される各成分の含有率の合計の上限は、99質量%以下であってもよい。(Li2O+Na2O+K2O+TiO2+ZrO2+T-Fe2O3)で示される各成分の合計の下限は、0.5質量%以上、0.7質量%以上、さらに1質量%以上であってもよい。(Li2O+Na2O+K2O+TiO2+ZrO2+T-Fe2O3)で示される各成分の合計の上限は、19質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、さらに3質量%以下であってもよい。
【0038】
(その他の成分)
その他の任意成分としては、P2O5、HfO2、Ga2O3、La2O3、Pr2O3、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Lu2O3、WO3、Nb2O5、Sc2O3、Y2O3、MoO3、Ta2O5、MnO2、Cr2O3、CuO、CoO、PbO、Bi2O3、Br2、I2、As2O3、及びSb2O3からなる群より選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。ただし、その他の任意成分がこれらに限定されるわけではない。その他の任意成分は、それぞれ3質量%以下の含有率で含有されていてもよい。その他の任意成分の許容される含有率は、それぞれ、2質量%以下、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、さらには0.1質量%以下でありうる。その他の任意成分は、それぞれ実質的に含有されていなくてもよい。Y2O3及びLa2O3は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する成分である。また、Y2O3及びLa2O3は、ガラスのヤング率を向上させる成分である。例えば、Y2O3及びLa2O3の含有率の和(Y2O3+La2O3)は、5質量%以下、3%質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.9質量%以下、0.5質量%未満、さらには0.1質量%以下でありうる。例えば、As2O3及びSb2O3は、環境保護の観点からは、それぞれ実質的に含有されていないことが望ましい。上記に列挙したその他の任意成分の含有率の合計は、5質量%以下、3%質量%未満、2質量%未満、1質量%未満、0.5質量%未満、さらには0.1質量%以下でありうる。
【0039】
<好ましい組成>
好ましい組成を以下に例示する。各成分について括弧内で併記する範囲は、より好ましい範囲である。
(組成A1)
質量%で表示して、
58≦SiO2≦64(58.5≦SiO2≦63)、
1≦B2O3≦6(1.5≦B2O3≦5)、
17≦Al2O3≦23(18≦Al2O3≦22)、
4≦MgO≦13(7≦MgO≦12)、
0≦CaO≦3(0≦CaO≦1)、
1≦ZnO≦8(1.1≦ZnO≦7)、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦3(0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦2)、
0.2≦ZrO2≦4(0.3≦ZrO2≦3)、
の成分を含有し、TiO2を実質的に含有しないガラス組成物。
【0040】
組成A1は、低い線熱膨張整数及び高いヤング率を有し、かつ量産適合性にも優れている。優れた量産適合性の一例は、作業温度から失透温度を差し引いたΔTが正の値となることである。
【0041】
(組成A2)
質量%で表示して、
58.5≦SiO2≦62
1.5≦B2O3≦5、
18≦Al2O3≦22、
7≦MgO≦12、
0≦CaO≦1、
1.1≦ZnO≦7、
0.1≦(Li2O+Na2O+K2O)≦2、
0.3≦ZrO2≦3、
の成分を含有し、9≦(MgO+ZnO)≦13.8を満たし、TiO2を実質的に含有しないガラス組成物。
【0042】
組成A2は、低い線熱膨張整数及び高いヤング率を有し、かつ量産適合性にも優れている。優れた量産適合性の一例は、低い作業温度及び大きなΔTである。ここで、低い作業温度とは、例えば1395℃以下であり、大きなΔTとは、例えば10℃以上である。
【0043】
(組成B)
質量%で表示して、
58≦SiO2≦64(58.5≦SiO2≦63)、
1≦B2O3≦6(1.5≦B2O3≦5)、
17≦Al2O3≦23(18≦Al2O3≦22)、
4≦MgO≦13(7≦MgO≦12)、
0≦CaO≦3(0≦CaO≦1)、
0.5≦ZnO≦2.8(1.1≦ZnO≦2.8)、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦3(0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦2)、
の成分を含有し、TiO2及びZrO2を実質的に含有しないガラス組成物。
【0044】
組成Bは、組成A1-A2及びCとは異なり、ZrO2を実質的に含有していない。組成Bは、低い線熱膨張整数及び高いヤング率を有し、かつ量産適合性にも優れている。
【0045】
(組成C)
質量%で表示して、
58≦SiO2≦64(58.5≦SiO2≦63)、
1≦B2O3≦6(1.5≦B2O3≦5)、
17≦Al2O3≦23(18≦Al2O3≦22)、
4≦MgO≦13(7≦MgO≦12)、
0≦CaO≦3(0≦CaO≦1)、
1≦ZnO≦8(1.1≦ZnO≦7)、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦3(0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦2)、
0.1≦TiO2≦4(0.3≦TiO2≦3)、
1.1≦ZrO2≦4(1.1≦ZrO2≦3)、
の成分を含有するガラス組成物。
【0046】
組成Cは、組成A1-A2及びBとは異なり、TiO2及びZrO2を共に含有している。組成Cは、低い線熱膨張整数及び高いヤング率を有し、かつ量産適合性にも優れている。また、組成Cは、低い誘電正接の実現にも適している。
【0047】
組成A1、A2、B及びCは、0.1≦T-Fe2O3≦3(より好ましい範囲として0.1≦T-Fe2O3≦2)をさらに含んでいてもよく、この範囲のT-Fe2O3と共に、0.001≦SO3≦0.5(より好ましい範囲として0.002≦SO3≦0.3)をさらに含んでいてもよい。また、組成A1、A2、B及びCは、<成分>の欄で述べたとおり、各成分の含有率の上限及び/又は下限を変更することができる。さらに、組成A1、A2、B及びCは、<成分>の欄で述べたとおり、成分の合計が調整されていてもよく、その他の成分を含有していてもよい。
【0048】
<特性>
本実施形態のガラス組成物がとりうる特性について、以下、説明する。
(熔融特性)
熔融ガラスの粘度が1000dPa・sec(1000poise)となるときの温度は、当該ガラスの作業温度と呼ばれ、ガラスの成形に適する温度である。ガラスの作業温度が1100℃以上であれば、ガラス繊維径等の寸法のばらつきを小さくできる。作業温度が1450℃以下であれば、ガラスを熔融する際の燃料費を低減でき、ガラス製造装置が熱による腐食を受け難くなり、装置寿命が延びる。作業温度の下限は、1200℃以上、1300℃以上、1320℃以上、1330℃以上、1340℃以上、さらには1350℃以上でありうる。作業温度の上限は、1420℃以下、1410℃以下、1400℃以下、1395℃以下、1390℃以下、1385℃以下、1382℃以下、さらに1380℃以下でありうる。
【0049】
作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが大きいほど、ガラス成形時に失透が生じ難く、均質なガラスを高い歩留りで製造できる。ΔTは、0℃以上、5℃以上、10℃以上、さらには15℃以上でありうる。ΔTの上限は、特に制限されないが、例えば100℃以下、80℃以下、70℃以下、65℃以下、60℃以下、55℃以下、さらに50℃以下である。なお、失透温度は、熔融ガラス素地中に結晶が生成し、成長しはじめるときの温度であり、後述する方法によって測定できる。
【0050】
(線膨張係数)
線膨張係数は、正確には50~350℃における平均線膨張係数である。ガラスの低い線膨張係数は、ガラスを含む樹脂組成物の寸法安定性の向上に寄与する。線膨張係数の下限は、20×10-7/℃以上、25×10-7/℃以上、26×10-7/℃以上、さらには27×10-7/℃以上でありうる。線膨張係数の上限は、35×10-7/℃以下、34×10-7/℃以下、33×10-7/℃以下、さらには32×10-7/℃以下、場合によっては31×10-7/℃以下でありうる。
【0051】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(ガラス転移点)は、ガラスの耐熱性の指標となる。ガラスを含有する樹脂組成物が熱処理に供される場合には、高いガラス転移温度が望まれる。ガラス転移温度の下限は、650℃以上、700℃以上、710℃以上、720℃以上、さらに730℃以上でありうる。ガラス転移温度の上限は、800℃以下、790℃以下、780℃以下、さらに770℃以下でありうる。
【0052】
(ヤング率)
ガラスの高いヤング率は、ガラス繊維又はガラスフィラーを含む樹脂組成物の機械特性や寸法安定性の向上に寄与する。ヤング率は、通常の超音波法により測定したガラス中を伝播する弾性波の縦波速度及び横波速度と、アルキメデス法により測定したガラスの密度とから算出することができる。ヤング率の下限は、85GPa以上、86GPa以上、87GPa以上、88GPa以上、89GPa以上、さらには90GPa以上でありうる。ヤング率の上限は、100GPa以下でありうるし、99GPa以下、98GPa以下、97GPa以下、96GPa以下、さらには95GPa以下でありうる。
【0053】
(誘電率、誘電正接)
ガラスの低い誘電率は、ガラス繊維又はガラスフィラーを含む樹脂組成物の誘電特性の向上に寄与する。測定周波数1GHzの誘電率は、6.5以下、6.4以下、6.3以下、6.2以下、6.1以下、6.0以下、5.9以下、5.8以下、5.7以下、5.6以下、5.5以下、さらには5.4以下であり、場合によっては5.3以下である。誘電率は、厳密には比誘電率を意味するが、本明細書では慣用に従って単に誘電率と表記する。誘電率は室温(25℃)での値である。誘電率は、5.0以上であってもよい。
【0054】
ガラスの低い誘電正接も、ガラス繊維又はガラスフィラーを含む樹脂組成物の誘電特性の向上に寄与する。測定周波数1GHzの誘電正接は、0.0060以下、0.0055以下、0.0050以下、0.0045以下、0.0044以下、0.0043以下、0.0042以下、0.0041以下、0.0040以下、0.0039以下、0.0038以下、0.0037以下、0.0036以下、0.0035以下、0.0034以下、0.0033以下、0.0032以下、0.0031以下、0.0030以下、さらには0.0029以下、0.0028以下、0.0027以下、0.0026以下、0.0025以下、0.0024以下、0.0023以下、0.0022以下、0.0021以下、0.0020以下であり、場合によっては0.0019以下、0.0018以下、0.0017以下、0.0016以下、0.0015以下である。誘電正接は室温(25℃)での値である。誘電正接は、0.0010以上であってもよい。
【0055】
[ガラス製品]
<ガラス繊維>
本実施形態のガラス繊維は、上述したガラス組成物により構成される。本実施形態によれば、繊維径が小さい場合においても当該ガラス繊維における失透の発生及び泡の混入をより抑制できることから、本実施形態のガラス繊維は繊維径の小さいガラス繊維でありうる。
【0056】
ガラス繊維の平均繊維径は、例えば0.1~50μmである。平均繊維径は0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.4μm以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、さらには3μm以上であってもよく、50μm以下、40μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、5μm以下、4.6μm以下、さらに4.3μm以下であってもよい。量産に適した特性温度を有するガラス組成物は、細いガラス繊維として安定して製造することに適している。好ましい一形態において、平均繊維径は、さらに細く、例えば3.9μm以下、さらに3.5μm以下である。ガラス繊維は、例えばガラス長繊維(フィラメント)である。
【0057】
ガラス繊維は、ロービング、ロービングクロス、連続ストランドマット、ミルドファイバー、フラットファイバー、フィラメントマット、チョップドストランド、ヤーン、ガラスクロス及びガラステープからなる群より選ばれる少なくとも1種の形状を有していてもよい。
【0058】
フラットファイバーは、断面が楕円等の偏平な形状であるガラス繊維を切断した形状を有する。フラットファイバーの断面の短径D1に対して長径D2は大きく、D2/D1は、例えば1.2以上である。短径D1は、例えば0.5~25μmである。長径D2は、例えば0.6~300μmである。フラットファイバーの長さLは、例えば10~100000μmである。フラットファイバーは、公知の方法により得ることができる。フラットファイバーの断面形状は、長径D2に沿って延びる表面が端部よりも中央部において後退した凹形状を有していてもよい。
【0059】
ガラス繊維は、本実施形態のガラス組成物を熔融する工程と、熔融したガラス組成物をガラス繊維へと成形する工程と、を含む方法により製造できる。
【0060】
<ガラスフィラー>
本実施形態のガラスフィラーは、上述したガラス組成物により構成される。ガラスフィラーは、フレーク状ガラス、ガラス粉末、ガラスビーズ、及びファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0061】
フレーク状ガラスは、鱗片状ガラスとも呼ばれ、フレーク状の形状を有する。フレーク状ガラスの平均粒子径は、例えば0.2~15000μmである。フレーク状ガラスのアスペクト比は、例えば2~1000である。アスペクト比は、平均粒子径を平均厚さで除して求めることができる。平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて100枚以上のフレーク状ガラスの厚さtを測定し、その平均値を算出して求めることができる。フレーク状ガラスその他のガラスフィラーの平均粒子径は、レーザ回折散乱法により測定された粒度分布において累積体積百分率が50%に相当する粒子径(D50)により定めることができる。フレーク状ガラスは、公知のブロー法、カップ法等により得ることができる。
【0062】
ガラス粉末は、粉末状のガラスであり、ガラスを粉砕することによって製造される。ガラス粉末の平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラス粉末の粒子径は、ガラス粉末の粒子と同体積の球体の直径として定義される。ガラス粉末は、公知の方法により得ることができる。
【0063】
ガラスビーズは、球形又は略球形の形状を有する。ガラスビーズの平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラスビーズの粒子径は、ガラスビーズの粒子と同体積の球体の直径として定義される。ガラスビーズは、公知の方法により得ることができる。
【0064】
ファインフレークは、薄片状ガラスであり、薄物のフレーク状ガラスである。ファインフレークは、例えば、平均厚さが0.1~2.0μmのフレーク状ガラスで構成されていてもよく、また例えば、厚さ0.01~2.0μmの範囲にあるフレーク状ガラスを90質量%以上の割合で含有していてもよい。この程度に平均厚さが薄く、厚さのバラツキが小さいファインフレークは、樹脂を補強する効果が高く、樹脂の成形収縮率を低減する効果にも優れている。ファインフレークは、樹脂成形体の厚さ等の制限を従来よりも緩和することにも適している。ファインフレークは、好ましくは平均厚さが0.1~1.0μmのフレーク状ガラスで構成されている。ファインフレークは、好ましくは厚さ0.05~1.0μmの範囲にあるフレーク状ガラスを90質量%以上の割合で含有している。ファインフレークは、フレーク状ガラスについて述べた方法により得ることができる。
【0065】
ガラスフィラーは、本実施形態のガラス組成物を熔融する工程と、熔融したガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含む方法により製造できる。
【0066】
[ガラス繊維及び/又はガラスフィラーを含む製品]
本実施形態のガラス繊維及びガラスフィラーは、以下に例示する各種製品において使用することができる。各種製品は、成形体、フィラー含有製品、樹脂製品等としての側面を有する。
【0067】
<成形体>
本実施形態の成形体は、上述したガラス繊維を含み、所定の形状に成形されている。成形体は、以下に限定されるわけではないが、ゴム強化用コード、不織布、プリプレグ、強化プラスチック、プリント基板、無機硬化体、フィルター、断熱材、吸音材、及びバッテリーセパレータからなる群より選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0068】
<フィラー含有製品>
本実施形態のフィラー含有製品は、上述したガラスフィラーを含む。フィラー含有製品は、以下に限定されるわけではないが、強化プラスチック、塗料、インク、プリント基板、無機硬化体、及び化粧品からなる群より選ばれる少なくとも1種でありうる。
【0069】
<樹脂製品>
本実施形態の樹脂製品は、上述したガラス繊維及び/又はガラスフィラーと、樹脂とを含む。樹脂製品は、電気絶縁部材又は機構部材でありうる。これらの部材の例は上述したとおりである。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合体等である。ポリブチレンテレフタレートを用いると、ガラスフィラーとの混合による成形品の反り抑制や寸法安定性の改善効果が大きくなる。フレーク状ガラス、フラットファイバー及びファインフレークは、比表面積が相対的に大きく、熱可塑性樹脂との間の接合力の確保に適している。
【0070】
[本実施形態により提供される技術]
本実施形態により提供される技術は、以下のとおりである。
(技術1)
質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
0.1≦ZrO2≦5、
の成分を含有し、TiO2を実質的に含有しないガラス組成物。
【0071】
(技術2)
質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0.1≦ZnO≦3、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
の成分を含有し、TiO2及びZrO2を実質的に含有しないガラス組成物。
【0072】
(技術3)
質量%で表示して、
56≦SiO2≦70、
0.1≦B2O3≦8、
15≦Al2O3≦24、
4≦MgO≦14、
0≦CaO≦4、
0≦ZnO≦10、
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、
1≦ZrO2≦5、
の成分を含有するガラス組成物。
【0073】
(技術4)
質量%で表示して、75≦(SiO2+B2O3+Al2O3+MgO+CaO+ZnO)≦99、の成分を含有する、技術1から技術3のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0074】
(技術5)
質量%で表示して、1≦(ZnO+ZrO2)≦15、の成分を含有する、技術1から技術4のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0075】
(技術6)
質量%で表示して、1≦(Li2O+Na2O+K2O+TiO2+ZrO2+T-Fe2O3)≦19、の成分を含有する、技術1から技術5のいずれか1つに記載のガラス組成物。ただし、T-Fe2O3は、Fe2O3に換算した全酸化鉄である。
【0076】
(技術7)
質量%で表示して、2≦B2O3≦6、の成分を含有する、技術1から技術6のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0077】
(技術8)
質量%で表示して、5≦MgO≦13、の成分を含有する、技術1から技術7のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0078】
(技術9)
質量%で表示して、0≦CaO≦1、の成分を含有する、技術8に記載のガラス組成物。
【0079】
(技術10)
SrOを実質的に含有しない、技術1から技術9のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0080】
(技術11)
BaOを実質的に含有しない、技術1から技術10のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0081】
(技術12)
質量%で表示して、0≦ZnO≦8、の成分を含有する、技術1から技術11のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0082】
(技術13)
質量%で表示して、4≦(MgO+ZnO)≦17、の成分を含有する、技術1から技術12のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0083】
(技術14)
質量%で表示して、0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦1、の成分を含有する、技術1から技術13のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0084】
(技術15)
質量%で表示して、0.1≦(Li2O+Na2O+K2O)≦1、の成分を含有する、技術14に記載のガラス組成物。
【0085】
(技術16)
質量%で表示して、0≦(Na2O+K2O)≦1、の成分を含有する、技術1から技術15のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0086】
(技術17)
質量%で表示して、0≦(TiO2+ZrO2)≦4、の成分を含有する、技術1から技術16のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0087】
(技術18)
質量%で表示して、0≦T-Fe2O3≦5、の成分を含有する、技術1から技術17のいずれか1つに記載のガラス組成物。ただし、T-Fe2O3は、Fe2O3に換算した全酸化鉄である。
【0088】
(技術19)
質量%で表示して、0≦Y2O3≦3、の成分を含有する、技術1から技術18のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0089】
(技術20)
質量%で表示して、0≦T-SnO2≦2、の成分を含有する、技術1から技術19のいずれか1つに記載のガラス組成物。ただし、T-SnO2は、SnO2に換算した全酸化錫である。
【0090】
(技術21)
質量%で表示して、0≦CeO2≦2、の成分を含有する、技術1から技術20のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0091】
(技術22)
質量%で表示して、0≦F2≦5、の成分を含有する、技術1から技術21のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0092】
(技術23)
質量%で表示して、0≦SO3≦0.5、の成分を含有する、技術1から技術22のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0093】
(技術24)
粘度が1000dPa・secであるときの温度を作業温度としたとき、前記作業温度が1450℃以下である、技術1から技術23のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0094】
(技術25)
粘度が1000dPa・secであるときの温度を作業温度としたとき、前記作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが0℃以上である、技術1から技術24のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0095】
(技術26)
ヤング率が85~100GPaである、技術1から技術25のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0096】
(技術27)
50~350℃における平均線膨張係数が20~35×10-7/℃である、技術1から技術26のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0097】
(技術28)
周波数1GHzにおける誘電率が6.5以下である、技術1から27のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0098】
(技術29)
周波数1GHzにおける誘電正接が0.0060以下である、技術1から28のいずれか1つに記載のガラス組成物。
【0099】
(技術30)
技術1から29のいずれか1つに記載のガラス組成物を含む、ガラス繊維。
【0100】
(技術31)
ロービング、ロービングクロス、連続ストランドマット、ミルドファイバー、フラットファイバー、フィラメントマット、チョップドストランド、ヤーン、ガラスクロス及びガラステープからなる群より選ばれる少なくとも1種の形状を有する、技術30に記載のガラス繊維。
【0101】
(技術32)
技術1から29のいずれか1つに記載のガラス組成物を含む、ガラスフィラー。
【0102】
(技術33)
フレーク状ガラス、ガラス粉末、ガラスビーズ、及びファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種である、技術32に記載のガラスフィラー。
【0103】
(技術34)
技術30に記載のガラス繊維を含み、ゴム強化用コード、不織布、プリプレグ、強化プラスチック、プリント基板、無機硬化体、フィルター、断熱材、吸音材、及びバッテリーセパレータからなる群より選ばれる少なくとも1種である、成形体。
【0104】
(技術35)
技術32に記載のガラスフィラーを含み、強化プラスチック、塗料、インク、プリント基板、無機硬化体、及び化粧品からなる群より選ばれる少なくとも1種である、フィラー含有製品。
【0105】
(技術36)
技術1から29のいずれか1つに記載のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラス繊維へと成形する工程と、を含む、ガラス繊維の製造方法。
【0106】
(技術37)
技術1から29のいずれか1つに記載のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含む、ガラスフィラーの製造方法。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例及び比較例)
表1~4に示した組成となるように、珪砂等の通常のガラス原料を調合し、実施例及び比較例毎にガラス原料のバッチを作製した。電気炉を用いて、各バッチを1500~1600℃まで加熱して熔融させ、組成が均一になるまで約4時間そのまま維持した。その後、熔融したガラス(ガラス熔融物)の一部を鉄板上に流し出し、電気炉中で室温まで徐冷し、バルクとしてのガラス組成物(板状物、ガラス試料)を得た。なお、実施例16、28、35~37及び比較例3においてはSnO2源として酸化錫(IV)(SnO2)を用いた。実施例17、19、38、39においてはCeO2源として酸化セリウム(IV)(CeO2)を用いた。実施例19~23、29、31~36,38~42においてはSO3源として硫酸ナトリウムを、実施例26、37においてはSO3源として硫酸リチウム一水和物を用いた。
【0108】
特性の評価法を以下に説明する。
(作業温度)
得られたガラス組成物について、通常の白金球引き上げ法により粘度と温度との関係を調べ、その結果から作業温度を求めた。ここで、白金球引き上げ法とは、溶融ガラス中に白金球を浸し、その白金球を等速運動で引き上げる際の負荷荷重(抵抗)と、白金球に働く重力及び浮力等との関係を、微小の粒子が流体中を沈降する際の粘度と落下速度との関係を示したストークス(Stokes)の法則にあてはめることにより、粘度を測定する方法である。
【0109】
(失透温度)
粒子径1.0~2.8mmの大きさに粉砕したガラス組成物を白金ボートに入れ、温度勾配(900~1500℃)を設けた電気炉中で2時間保持し、結晶の出現した位置に対応する電気炉の最高温度から失透温度を求めた。ガラスが白濁して結晶が観察できない場合は、白濁の出現した位置に対応する電気炉の最高温度を失透温度とした。ここで、粒子径は、ふるい分け法により測定された値である。なお、電気炉内の場所に応じて異なる温度(電気炉内の温度分布)は、予め測定されており、電気炉内の所定の場所に置かれたガラス組成物は、予め測定された、当該所定の場所の温度で加熱される。温度差ΔTは、作業温度から失透温度を差し引いた温度差である。
【0110】
(線膨張係数)
得られたガラス組成物について、市販の膨張計〔(株)リガク、熱機械分析装置、TMA8510〕を用いて50~350℃における平均線膨張係数を測定した。また、TMA装置から得た熱膨張曲線に基づいて、ガラス転移温度Tgを得た。
【0111】
(ヤング率)
ヤング率Eは、通常の超音波法により、ガラス中を伝播する弾性波の縦波速度vlと横波速度vtを測定し、別にアルキメデス法により測定したガラスの密度ρから、E=3ρ・vt
2・(vl
2-4/3・vt
2)/(vl
2-vt
2)の式により求めた。
【0112】
(誘電率、誘電正接)
周波数1GHzにおける誘電率及び誘電正接は、空洞共振器摂動法による誘電率測定装置を用いて測定した。測定温度は25℃、測定用サンプルの寸法は、底面が1辺1.5mmの正方形である高さ100mmの直方体とした。
【0113】
(泡数)
珪砂等の通常のガラス原料を調合し、実施例および比較例ごとにガラス原料のバッチを作製した。電気炉を用いて、150gの各バッチを試験温度である1600℃で加熱して熔解させ、組成が均一になるまで2時間そのまま維持した。その後、熔融したガラス(ガラス熔融物)の一部を鉄板上に流し出し、電気炉中で室温まで徐冷し、ガラス試料を得た。このガラス試料中の泡個数を光学顕微鏡で観察し、ガラス100g当たりの泡個数を算出した。ガラス100g中の泡個数が400個未満のものをA、400個以上2000個未満のものをB、2000個以上10000個未満のものをC、10000個以上のものをDとした。
【0114】
測定結果を表1~4に示す。なお、表中のガラス組成は、すべて質量%で表示した値である。また、表中のFe2O3及びSnO2は、それぞれT-Fe2O3及びT-SnO2を示す。
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
各実施例からは、線膨張係数29~32×10-7/℃、ヤング率90~92GPa、作業温度1324~1410℃、差ΔT(作業温度-失透温度)0~54℃の結果が得られた。
【0120】
比較例1のガラス組成物はEガラス組成を有する。Eガラスは50~350℃における平均線膨張係数及びヤング率に劣る。比較例2のガラス組成物はSガラス組成を有する。Sガラスは、作業温度が高くΔTが負であって、量産性に劣る。比較例3のガラス組成物は、特許文献1実施例2のガラス組成を有する。このガラスは、ヤング率に劣り、作業温度がやや高い。比較例4のガラス組成物は、特許文献2実施例2のガラス組成を有する。このガラスは、50~350℃における平均線膨張係数に劣る。なお、比較例4の線膨張係数が特許文献2における測定値(29×10-7/℃)より高い(33×10-7/℃)理由は、測定した温度範囲の相異による。また、本発明者が追試したところ、比較例4は、ΔTが負であって、量産性に劣る。比較例5-16のガラス組成物も、平均線膨張係数、ヤング率、及び差ΔTの少なくとも1つが十分ではなかった。
【要約】
本開示は、低い線膨張率と高いヤング率を有し、量産に適したガラス組成物を提供する。本開示は、質量%で表示して、i)56≦SiO2≦70、0.1≦B2O3≦8、15≦Al2O3≦24、4≦MgO≦14、0≦CaO≦4、0≦ZnO≦10、0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、0.1≦ZrO2≦5の成分を含有し、TiO2を実質的に含有しないガラス組成物;ii)56≦SiO2≦70、0.1≦B2O3≦8、15≦Al2O3≦24、4≦MgO≦14、0≦CaO≦4、0.1≦ZnO≦3、0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4の成分を含有し、TiO2及びZrO2を実質的に含有しないガラス組成物;iii)56≦SiO2≦70、0.1≦B2O3≦8、15≦Al2O3≦24、4≦MgO≦14、0≦CaO≦4、0≦ZnO≦10、0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、1≦ZrO2≦5の成分を含有するガラス組成物、を提供する。