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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】撹拌装置、及び撹拌方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 27/805 20220101AFI20250403BHJP
   B01F 23/43 20220101ALI20250403BHJP
   B01F 23/53 20220101ALI20250403BHJP
   B01F 35/45 20220101ALI20250403BHJP
【FI】
B01F27/805
B01F23/43
B01F23/53
B01F35/45
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024062039
(22)【出願日】2024-04-08
(65)【公開番号】P2025009815
(43)【公開日】2025-01-20
【審査請求日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2023109688
(32)【優先日】2023-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】325001313
【氏名又は名称】みづほ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100195752
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 一正
(72)【発明者】
【氏名】田邉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 遼一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 良治
(72)【発明者】
【氏名】八谷 真由子
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅照
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-021225(JP,Y1)
【文献】中国実用新案第218923859(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第113368767(CN,A)
【文献】中国実用新案第208660961(CN,U)
【文献】韓国公開特許第10-2023-0119787(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1014403(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第112958024(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112337346(CN,A)
【文献】特開2012-170924(JP,A)
【文献】特開2012-170923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 27/00 - 27/96
B01F 35/00 - 35/95
G01N 1/00 - 1/44
A61K 8/00 - 8/99
A21C 1/00 - 1/14
A23L 5/00 - 5/49
C12M 1/00 - 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌装置であって、
内部が視認可能な窓部を少なくとも側面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記蓋部の前記一方の面における前記密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根と、
前記蓋部の他方の面に有した材料投入部と、
前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部と、を備え、
前記下限位置では前記蓋部と前記撹拌槽とは分離されて前記撹拌槽の天面は開放され、
前記撹拌槽は、前記下限位置からの上昇に伴い、前記中間位置にて降下が防止されている前記蓋部に接触して前記蓋部の前記密着部が前記撹拌槽の前記側壁上面に密着し、さらに、前記蓋部を押上げて上限位置まで上昇することを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
前記蓋部の前記他方の面側には、前記撹拌羽根を回転若しくは回動させる回転駆動部を備え、前記撹拌槽が前記下限位置から前記中間位置に上昇することで、前記撹拌羽根が前記撹拌槽内に収納されることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
前記撹拌槽の前記中間位置から前記上限位置への上昇に伴い、前記蓋部は前記撹拌槽の側壁上面に密着して前記撹拌槽とともに前記蓋部及び前記回転駆動部が上昇することを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌槽の前記上限位置から前記中間位置への下降に伴い、前記蓋部は前記撹拌槽の側壁上面に密着して前記撹拌槽とともに前記蓋部及び前記回転駆動部が下降することを特徴とする請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記撹拌槽を前記上限位置から前記中間位置に下降させるときに、前記蓋部の下降を禁止する蓋部下降禁止部を備えたことを特徴とする請求項4に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記撹拌槽が前記下限位置にあるときに、前記撹拌槽を少なくとも横向けに傾斜させることが可能であることを特徴とする請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記撹拌槽が、前記上限位置から前記中間位置においては、前記蓋部の前記密着部が前記撹拌槽の前記側壁上面に密着して前記撹拌槽内を真空引きすることが可能であることを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記撹拌槽が前記上限位置、前記中間位置、及び前記下限位置のどの位置にあるかに合わせて、少なくとも上下方向の角度又は高さを調整可能な表示操作部を備えたことを特徴とする請求項1―4のいずれかに記載の撹拌装置。
【請求項9】
液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌装置であって、
内部が視認可能な窓部を少なくとも側面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記蓋部の前記一方の面における前記密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根と、
前記蓋部の他方の面に有した材料投入部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部と、
前記撹拌槽が前記上限位置、前記中間位置、及び前記下限位置のどの位置にあるかに合わせて、少なくとも上下方向の角度又は高さを調整可能な表示操作部と、
を備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項10】
液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌槽を備えた撹拌装置における撹拌方法であって、
前記撹拌槽の少なくとも側面に視認可能な窓部を有し、作業者から前記窓部を通して前記撹拌槽内を視認可能な上限位置、前記撹拌槽に材料を投入する中間位置、及び前記撹拌槽の天面を開放して横向けに傾斜可能な下限位置に前記撹拌槽が昇降可能であり、
前記撹拌槽を中間位置に位置させて材料投入部に材料を投入する材料投入工程と、
前記撹拌槽を上限位置に上昇させて撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌槽を下限位置に下降させて、前記撹拌槽内を洗浄する洗浄工程と、
を備え、
少なくとも前記上限位置及び前記中間位置においては蓋部に設けた密着部が前記撹拌槽の側壁上面に密着することを特徴とする撹拌方法。
【請求項11】
前記撹拌工程の前、又は前記撹拌工程の後に、前記撹拌槽を前記中間位置に位置させて撹拌する中間位置撹拌工程を備えたことを特徴とする請求項10に記載の撹拌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌装置、及び撹拌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧品、食品、化学品、又は医薬品における液体又は液体と固形物の混合体を材料として微細化し撹拌するために撹拌装置が用いられている。撹拌装置は、回転軸に設けられた回転羽根が回転して材料を撹拌する略円筒状の撹拌槽と当該回転軸を回転させるための駆動部等からなっている。
【0003】
撹拌する材料や時間により撹拌度合いが変わるので、撹拌槽内での撹拌がどの程度進んでいるのか確認できるようにすることが望まれている。
【0004】
特許文献1には、撹拌槽の蓋体に設けられた覗き窓から撹拌槽内を確認する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特許文献1:特許第5264635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の撹拌槽上部の蓋体に設けられた覗き窓からでは、底の方まで十分に撹拌槽内を確認することが困難であるという問題があった。これに対応するために、例えば、撹拌槽の側面に覗き窓を設けると撹拌槽内が確認しやすくなるが、その場合、撹拌槽上部に設けられる材料投入口が目線より上になり材料投入が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決して、撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認できるともに、材料投入や撹拌槽の洗浄を容易にすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌装置であって、
内部が視認可能な窓部を少なくとも側面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽と、
前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、
前記蓋部の前記一方の面における前記密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根と、
前記蓋部の他方の面に有した材料投入部と、
前記蓋部は、前記撹拌槽に支持されて上限位置と中間位置の間でのみ昇降し、前記蓋部が下限位置に降下することを防止する蓋部中間位置停止部と、
前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部と、を備え、
前記下限位置では前記蓋部と前記撹拌槽とは分離されて前記撹拌槽の天面は開放され、
前記撹拌槽は、前記下限位置からの上昇に伴い、前記中間位置にて降下が防止されている前記蓋部に接触して前記蓋部の前記密着部が前記撹拌槽の前記側壁上面に密着し、さらに、前記蓋部を押上げて上限位置まで上昇することを特徴とする撹拌装置を提供するものである。
【0009】
この構成により、内部が視認可能な窓部を撹拌槽の少なくとも側面に設け、作業員の視線位置に近い上限位置では撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認することができ、中間位置では作業員にとって材料を材料投入部に投入しやすい位置となり、下限位置においては蓋部が分離されることで撹拌槽を容易に洗浄することができる。
【0010】
撹拌装置であって、前記蓋部の前記他方の面側には、前記撹拌羽根を回転若しくは回動させる回転駆動部を備え、前記撹拌槽が前記下限位置から前記中間位置に上昇することで、前記撹拌羽根が前記撹拌槽内に収納される構成としてもよい。
【0011】
この構成により、蓋部の前記他方の面側には、前記撹拌羽根を回転若しくは回動させる回転駆動部を備えることで、簡単な構成で撹拌羽根を回転若しくは回動させることができる。また、下限位置では撹拌槽内に撹拌羽根が存在せず撹拌羽根が露出することから、撹拌槽内及び撹拌羽根を洗浄することが容易であるとともに、中間位置では撹拌羽根が撹拌槽内に収納されることで撹拌羽根を回転又は回動させて撹拌することが可能となる。
【0012】
撹拌装置であって、前記撹拌槽の前記中間位置から前記上限位置への上昇に伴い、前記蓋部は前記撹拌槽の側壁上面に密着して前記撹拌槽とともに前記蓋部及び前記回転駆動部が上昇する構成としてもよい。
【0013】
この構成により、蓋部及び回転駆動部がともに上限位置に上昇することで、上限位置においても、中間位置から上限位置への上昇中においても撹拌羽根を回転又は回動させることができる。
【0014】
撹拌装置であって、前記撹拌槽の前記上限位置から前記中間位置への下降に伴い、前記蓋部は前記撹拌槽の側壁上面に密着して前記撹拌槽とともに前記蓋部及び前記回転駆動部が下降する構成としてもよい。
【0015】
この構成により、撹拌槽内で撹拌動作を実行しながら、上限位置から中間位置への下降中においても撹拌羽根を回転又は回動させることができるとともに、中間位置において材料投入することが容易にできる。
【0016】
撹拌装置であって、前記撹拌槽を前記上限位置から前記中間位置に下降させるときに、前記蓋部の下降を禁止する蓋部下降禁止部を備えた構成としてもよい。
【0017】
この構成により、蓋部を上限位置に保持した状態で撹拌槽を中間位置に下降させることで、蓋部の一方の面に備えた撹拌羽根が露出することになり、作業員の目線位置である高い位置で撹拌羽根の清掃や点検などのメンテナンスができる。
【0018】
撹拌装置であって、前記撹拌槽が下限位置にあるときに、前記撹拌槽を少なくとも横向けに傾斜させることが可能である構成としてもよい。
【0019】
この構成により、下限位置での撹拌槽から材料の排出や撹拌槽内の洗浄がさらに容易となる。
【0020】
撹拌装置であって、前記撹拌槽が、上限位置から中間位置においては、前記蓋部の前記密着部が前記撹拌槽の前記側壁上面に密着して前記撹拌槽内を真空引きすることが可能である構成としてもよい。
【0021】
この構成により、材料によっては、撹拌、乳化が容易となる。
【0022】
撹拌装置であって、前記撹拌槽が前記上限位置、前記中間位置、及び前記下限位置のどの位置にあるかに合わせて、少なくとも上下方向の角度又は高さを調整可能な表示操作部を備えた構成としてもよい。
【0023】
この構成により、前記撹拌槽が前記上限位置、前記中間位置、及び前記下限位置のいずれの位置においても簡単に表示操作部が見やすく操作しやすくすることができる。
【0024】
また、上記課題を解決するために本発明は、液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌槽を備えた撹拌装置における撹拌方法であって、
前記撹拌槽の少なくとも側面に視認可能な窓部を有し、作業者から前記窓部を通して前記撹拌槽内を視認可能な上限位置、前記撹拌槽に材料を投入する中間位置、及び前記撹拌槽の天面を開放して横向けに傾斜可能な下限位置に前記撹拌槽が昇降可能であり、
前記撹拌槽を中間位置に位置させて材料投入部に材料を投入する材料投入工程と、
前記撹拌槽を上限位置に上昇させて撹拌する撹拌工程と、
前記撹拌槽を下限位置に下降させて、前記撹拌槽内を洗浄する洗浄工程と、
を備え、
少なくとも前記上限位置及び前記中間位置においては蓋部に設けた密着部が前記撹拌槽の側壁上面に密着することを特徴とする撹拌方法を提供するものである。
【0025】
この構成により、内部が視認可能な窓部を撹拌槽の少なくとも側面に設け、作業員の視線位置に近い上限位置では撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認することができ、中間位置では作業員にとって材料を材料投入部に投入しやすい位置となり、下限位置においては蓋部及び撹拌羽根が分離されることで撹拌槽を容易に洗浄することができる。
【0026】
前記撹拌工程の前、又は前記撹拌工程の後に、前記撹拌槽を中間位置に位置させて撹拌する中間位置撹拌工程を備えた構成としてもよい。
【0027】
この構成により、上限位置に上昇を待たずに、又は上限位置からの下降後も、中間位置撹拌工程を実施できるので、効率的な運用が可能である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の撹拌装置、及び撹拌方法により、上限位置で撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認することができるとともに、中間位置で材料を投入でき、下限位置で撹拌槽内を洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が上限位置にある図である。
図2】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が中間位置にある図である。
図3】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置にある図である。
図4】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置で横転した図である。
図5】本発明の実施例1における撹拌装置の表示操作部の表示を説明する図である。
図6】本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽保持部を説明する図である。
図7】本発明の実施例1における撹拌装置の中間位置ストッパを説明する図である。
図8】本発明の実施例1における撹拌装置の上限位置ストッパを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
本発明の実施例1の撹拌装置について、図1図8を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が上限位置にある図である。図2は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が中間位置にある図である。図3は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置にある図である。図4は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽が下限位置で横転した図である。図5は、本発明の実施例1における撹拌装置の表示操作部の表示を説明する図である。図6は、本発明の実施例1における撹拌装置の撹拌槽保持部を説明する図である。なお、図6においては、撹拌羽根を省略している。図7は、本発明の実施例1における撹拌装置の中間位置ストッパを説明する図である。図8は、本発明の実施例1における撹拌装置の上限位置ストッパを説明する図である。
【0031】
実施例1における撹拌装置100は、内部が視認可能な窓部11を側面及び底面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽10と、撹拌槽10の側壁上面と密着可能な密着部(図示せず)を一方の面に有した略円形状の蓋部20と、蓋部20の一方の面の密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根23と、蓋部20の他方の面に有した材料投入部21と、撹拌槽10を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部(図示せず)と、を備えている。撹拌槽10内で撹拌羽根により撹拌された材料は、実施例1においては、後述のように下限位置にて撹拌槽10を横向けに傾斜させてタンク等に排出させるが、撹拌槽10の底部に設けられた図示しないホースを介して所定のタンクへと導くようにしてもよい。
【0032】
実施例1における撹拌槽10は天面が開放された略円筒形のガラスで構成され、背面及び底面の一部を保護金属で支持する構造を有している。したがって、撹拌槽10の外面のうち保護金属で保護されていない側面のうち正面と底面の大部分が窓部11として機能する。また、撹拌槽10のガラスは、二重ガラスで構成されており、ガラス間に温水を注入して撹拌槽10内の温度を上昇又は維持することができるとともに、冷水を注入して撹拌槽10内の温度を下降又は維持することができる。
【0033】
なお、実施例1においては、窓部11を撹拌槽10の側面及び底面に有する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、側面及び上面に窓部11を有する構成としてもよく、少なくとも側面に有すればよい。また、実施例1においては、撹拌槽10を天面が開放された略円筒形のガラスで構成するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、天面が開放された略多角柱のガラスで構成してもよい。
【0034】
また、上限位置から中間位置においては、蓋部20が撹拌槽10と密着しているため撹拌羽根23を回転又は回動させて撹拌槽10内を撹拌することができるし、撹拌槽10内は真空引きすることができる。このため、撹拌する材料によっては、効率的に撹拌することができる。
【0035】
なお、実施例1においては、上限位置から中間位置においては、蓋部20が撹拌槽10と密着する構成としたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、上限位置及び中間位置においてのみ、蓋部20が撹拌槽10と密着する構成としてもよく、少なくとも上限位置及び中間位置においては蓋部20の密着部が撹拌槽10の側壁上面に密着するように構成すればよい。
【0036】
蓋部20は、撹拌槽10の側壁の上面に密着させることができるように、その一方の面(撹拌槽10の天面に接触する面)にゴム製のパッキンからなる密着部が蓋部20の周縁全周にわたって設けられている。そして、上限位置から中間位置においては、蓋部20の密着部に撹拌槽10の側壁上面が密着し、蓋部20の一方の面(撹拌槽10の天面に接触する面)に設けられた撹拌羽根23が撹拌槽10内で回転又は回動して投入された材料を撹拌することができる。
【0037】
撹拌羽根23を回転又は回動させる回転駆動部22が、蓋部20の他方の面に設けられている。そして、回転駆動部22は、蓋部20と一体になって後述するように、昇降する。
【0038】
撹拌槽10は撹拌槽保持部50(図6参照)に保持され、この撹拌槽保持部50がレール保持部43に固定されて上下に延びたレール40に沿って、図示しないモータと台形ネジとからなる駆動部が駆動することで昇降することができる。作業員Hは、表示操作部30に表示された「上限位置」と表示されたタッチパネルをタッチすることで上限位置へと撹拌槽10は昇降する。また、同様に「中間位置」をタッチすることで撹拌槽10は中間位置へと昇降する。さらに、「下限位置」をタッチすることで下限位置へと撹拌槽10は昇降する。図1に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から1533mmに設定された上限位置であり、作業員Hが窓部11を介して撹拌槽10内を視認して撹拌状態を確認することができる位置としている。また、この上限位置で、撹拌槽10の底部の窓部11からも撹拌槽10内の撹拌状態を確認することができる。
【0039】
なお、実施例1においては、上限位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を1533mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、1534mm以上としてもよいし1532mm以下としてもよく、作業員Hが窓部11から撹拌槽10内を視認しやすい位置に設定すればよい。上限位置を変更するには、後述するように、上限位置ストッパ42(図8参照)の位置を調整すればよい。
【0040】
ここで、表示操作部30は、撹拌槽10が上限位置、中間位置、及び下限位置のいずれの位置にあっても表示が見やすく操作が容易になるように、少なくとも上下方向の角度を変更することができる。例えば、撹拌槽10が上限位置にあるときは表示操作部30の表示操作面を垂直にし、撹拌槽10が中間位置にあるときは表示操作部30の表示操作面を垂直よりわずかに下方に向け、撹拌槽10が下限位置にあるときは表示操作部30の表示操作面を垂直より大きく下方に向けることができる。これにより、撹拌槽10が上限位置、中間位置、及び下限位置もいずれの位置にあっても表示が見やすく操作を容易にできる。
【0041】
また、上下方向の角度調整に加えて、左右方向の角度調整を可能としてもよい。これにより、さらに表示が見やすく操作が容易にすることができる。上下方向及び左右方向の角度調整を自在にするには、公知の角度調整治具等を用いることができる。
【0042】
なお、実施例1においては、表示操作部30の表示操作面における上下方向の角度を変更するようにしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、表示操作盤30を上下方向に昇降可能としてもよい。
【0043】
図2に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から962mmに設定された中間位置である。この中間位置では、作業員Hが材料投入部21に材料を投入しやすい位置に設定されている。なお、撹拌槽10内は真空引きされている場合があるが、その場合は、材料投入部21のホッパに材料を投入した後、コックを回して撹拌槽10内との境の扉を開ければ、真空により材料が引き込まれる。この後、真空状態を維持するためにコックを逆に回して撹拌槽10内との境の扉を閉めれば撹拌槽10内の真空引き状態が維持される。
【0044】
なお、実施例1においては、中間位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を962mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、963mm以上としてもよいし961mm以下としてもよく、作業員Hが材料投入部21に材料を投入しやすい位置に設定すればよい。
【0045】
図3に示す撹拌槽10の天面の位置は、床面から622mmに設定された下限位置である。この下限位置では、撹拌槽10の天面は開放されて撹拌槽10内を目視することができる。つまり、蓋部20は駆動部22とともに、中間位置ストッパ41(図7参照)により中間位置に留められ、下限位置に下降することはない。これにより、撹拌槽10の天面は蓋部20の密着を解除されて開放される。
【0046】
なお、実施例1においては、下限位置を床面から撹拌槽10の天面までの距離を622mmとしたが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、623mm以上としてもよいし621mm以下としてもよく、作業員Hが撹拌槽10内を目視や洗浄しやすい位置に設定すればよい。
【0047】
さらに、図4に示すように、下限位置においては、撹拌槽10を横向けに傾斜させることができ、撹拌槽10内を洗浄してカス等を排出することができる。また、洗浄水を撹拌槽10内に入れて洗浄することもできる。
【0048】
下限位置にある撹拌槽10を中間位置に上昇させる場合、表示操作部30の
タッチパネルに表示された「中間位置」(図5参照)という表示されたところをタッチすることで、撹拌槽10は上昇し中間位置に達する。そして中間位置で一旦停止させることができる。このとき、撹拌槽10の天面は蓋部20の一方の面に有した密着部と接触して密着する。この中間位置でも撹拌羽根が撹拌槽10内に収納されるため回転又は回動させて撹拌することができる。また、真空引きすることもできる。
【0049】
中間位置から上限位置に上昇させる場合、表示操作部30のタッチパネルに表示された「上限位置」(図5参照)という表示されたところをタッチすることで、撹拌槽10は上昇し上限位置に達する。このとき、撹拌槽10の上昇に伴い、撹拌槽10は蓋部20と密着し、蓋部20や回転駆動部22を保持している回転駆動部保持部60を撹拌槽保持部50が押上げて、撹拌槽10、蓋部20、及び回転駆動部22が一体となって上限位置まで上昇する(図7参照)。つまり、駆動部が駆動するのは、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50のみであって、蓋部20や回転駆動部22を保持した回転駆動部保持部60は、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50により押し上げられる。
【0050】
次に、蓋部20及び回転駆動部22の上限位置及び中間位置での位置決めについて図6図8を参照して詳細に説明する。図6においては、撹拌羽根部23の記載を省略している。ここで、図7及び図8は、背面側からみた図である。前述したように、台形ネジとモータからなる駆動部が昇降させるのは、撹拌槽10を保持した撹拌槽保持部50である。これにより、撹拌槽保持部50が保持している撹拌槽10を昇降させることができる。また、蓋部20及び回転駆動部22は回転駆動部保持部60が保持している。
【0051】
また、撹拌槽10と撹拌槽保持部50が中間位置及び下限位置にあるとき、回転駆動部保持部60はレール保持部43に固定された中間位置ストッパ41に回転駆動部保持部60下部の中間位置ストッパブロック61が接触して中間位置に停止し、これ以上、下降することができない。
【0052】
撹拌槽保持部50が下限位置から中間位置に上昇すると、撹拌槽保持部50の押上げ部51が回転駆動部保持部60の押上げ部対応ブロック63を少し押し上げることとなる。そして、撹拌槽10の側壁上面は蓋部20の密着部に密着する。次に、撹拌槽保持部50が中間位置から上限位置に上昇するとき、撹拌槽保持部50の押上げ部51が回転駆動部保持部60の押上げ部対応ブロック63を押し上げることで、撹拌槽10、蓋部20、及び回転駆動部22が一体となって上昇する。撹拌槽10が上限位置まで上昇すると、回転駆動部保持部60に固定された上限位置ストッパブロック62が上限ストッパ42と接触して停止する。そして、撹拌槽10はこれ以上上昇することはできない。
【0053】
撹拌槽保持部50が上限位置から下降するとき、撹拌槽10と蓋部20は密着したまま、撹拌槽保持部50が保持している撹拌槽10も下降を始める。つまり、撹拌槽保持部50の押上げ力が解除された回転駆動部保持部60は、撹拌槽保持部50とともに下降し、同時に蓋部10及び回転駆動部22も一緒に下降する。撹拌槽保持部50が中間位置まで下降して停止すると、レール保持部43に支持される中間位置ストッパ41に、回転駆動部保持部60に固定された中間位置ストッパブロック61が接触して、これ以上、下降することができなくなる。
【0054】
撹拌槽保持部50が中間位置からさらに下降すると、蓋部20と撹拌槽10の側壁上面の密着が解除されて蓋部20及び回転駆動部22は中間位置に留まったまま、撹拌槽10と撹拌槽保持部50のみが下限位置まで下降することで、撹拌槽10と蓋部20の密着は解除される。撹拌槽10が下限位置まで下降して蓋部20と分離されることで、撹拌槽10内の洗浄を容易に行うことができる。そして、撹拌羽根23は撹拌槽10から露出しているため撹拌羽根23の洗浄も容易である。
【0055】
このように、実施例1においては、液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌装置であって、 内部が視認可能な窓部を少なくとも側面に有し、天面が開放された略円筒状の撹拌槽と、 前記撹拌槽の側壁上面と密着可能な密着部を一方の面に有した蓋部と、 前記蓋部の前記一方の面における前記密着部より内側に設けた回転又は回動する撹拌羽根と、 前記蓋部の他方の面に有した材料投入部と、 前記撹拌槽を上限位置、中間位置、及び下限位置に昇降させる駆動部と、を備え、 少なくとも前記上限位置及び前記中間位置では前記蓋部の前記密着部が前記撹拌槽の前記側壁上面に密着し、前記下限位置では前記蓋部と前記撹拌槽とは分離されて前記撹拌槽の天面は開放されることを特徴とする撹拌装置により、撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認できるともに、材料投入や撹拌槽の洗浄を容易にすることができる。
【0056】
また、実施例1においては、液体と液体、液体と固体を含む液体、又は固体を含む液体と固体を含む液体とを撹拌する撹拌槽を備えた撹拌装置における撹拌方法であって、 前記撹拌槽の少なくとも側面に視認可能な窓部を有し、作業員が前記窓部を通して前記撹拌槽内を視認可能な上限位置、作業員が前記撹拌槽に材料を投入する中間位置、及び前記撹拌槽の天面を開放して横向けに傾斜可能な下限位置に前記撹拌槽が昇降可能であり、 前記撹拌槽を中間位置に位置させて材料投入部に材料を投入する材料投入工程と、 前記撹拌槽を上限位置に上昇させて撹拌する撹拌工程と、 前記撹拌槽を下限位置に下降させて、前記撹拌槽内を洗浄する洗浄工程と、を備えたことを特徴とする撹拌方法により、撹拌槽内の撹拌状況を十分に視認できるともに、材料投入や撹拌槽の洗浄を容易にすることができる。
【実施例2】
【0057】
本発明の実施例2は、撹拌槽を上限位置から下降させるときに、蓋部の下降を禁止する蓋部下降禁止部を備えた点で、実施例1と異なっている。
【0058】
実施例2においては、回転駆動部保持部60が上限位置に上昇したときに、作動させることができる蓋部下降禁止部をレール保持部43に備えている。この蓋部下降禁止部は電動で動作するスライドピンであり、回転駆動部保持部60に設けたスライドピン挿入孔に挿入させることにより、撹拌槽保持部50が中間位置に下降しても回転駆動部保持部60は上限位置に留まることができる。
【0059】
なお、実施例2においては、蓋部下降禁止部を電動のスライドピンで構成したが、必ずしもこれに限定されず適宜変更が可能である。例えば、手動のスライドピンで構成してもよいし、回転駆動部保持部60を上方から移動不能に固定するフックで構成してもよい。
【0060】
これにより、蓋部が保持された回転駆動部保持部60を上限位置に保持した状態で撹拌槽が保持された撹拌槽保持部50を中間位置に下降させることで、蓋部の一方の面に備えた撹拌羽根23が露出することになり、作業員Hの目線の位置である高い位置で撹拌羽根23の清掃や点検などのメンテナンスを行うことができる。
【0061】
このように、実施例2においては、前記撹拌槽を前記上限位置から前記中間位置に下降させるときに、前記蓋部の下降を禁止する蓋部下降禁止部を備えたことにより、作業員の目線の位置である高い位置で撹拌羽根の清掃や点検などのメンテナンスを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明における撹拌槽洗浄装置、及び撹拌槽洗浄方法は、液体、又は液体と固形物の混合体を原料として撹拌する撹拌装置の洗浄の分野に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10:撹拌槽 11:窓部 20:蓋部 21:材料投入部 22:回転駆動部 23:撹拌羽根 30:表示操作部 40:レール 41:中間位置ストッパ 42:上限位置ストッパ 43:レール保持部 50:撹拌槽保持部 51:押上げ部 60:回転駆動部保持部 61:中間位置ストッパブロック 62:上限位置ストッパブロック 63:押上げ部対応ブロック 100:撹拌装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8