(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】非対称型リン酸トリエステルの製造方法、対称型リン酸トリエステルの製造方法、リン酸エステルの製造方法、及び、有機リン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/09 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
C07F9/09 Z
(21)【出願番号】P 2023503656
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2022004557
(87)【国際公開番号】W WO2022185843
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2021033869
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】布施 新一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 宙士
(72)【発明者】
【氏名】小竹 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩之
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-020789(JP,A)
【文献】特開2005-206605(JP,A)
【文献】特開平03-123790(JP,A)
【文献】特開平04-041498(JP,A)
【文献】特開昭52-113949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CASREACT(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通系反応装置を用いて、非対称型リン酸トリエステルを合成する非対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、
第1の流路を流れる三塩化リン又は三臭化リン、及び、
第2の流路を流れる下記一般式(H-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を
第1の混合機で反応させて、下記一般式(P-1)で表される化合物P1を合成する工程(A1)と、
前記第1の混合機から排出されるとともに第3の流路を流れる前記化合物P1及び
第4の流路を流れる下記一般式(H-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を
第2の混合機で反応させて、下記一般式(P-2)で表される化合物P2を合成する工程(B1)と、
前記第2の混合機から排出されるとともに第5の流路を流れる前記化合物P2及び
第6の流路を流れる下記一般式(H-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を
第3の混合機で反応させて、下記一般式(P-3)で表される化合物P3を合成する工程(C1)と、
前記化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D1)とを有し、
前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、-80℃以上であり、
前記工程(A1)及び(B1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【化1】
[R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【請求項2】
前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、0℃以上である、請求項1に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項3】
前記工程(A1)及び(B1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上である、請求項1又は2に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項4】
前記工程(A1)と前記工程(B1)との間に、
前記第1の混合機から排出されるとともに前記第3の流路を流れる前記化合物P1と
第7の流路を流れる塩基とを
第4の混合機で反応させる工程(N1)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項5】
前記塩基は、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択される一種以上の塩基である、請求項4に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項6】
前記塩基は、下記一般式(I-1)で表される化合物である、請求項4に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【化2】
[式中、RI
1及びRI
2は、水素原子又は炭化水素基である。]
【請求項7】
前記工程(A1)において、三塩化リン又は三臭化リン及びR
1OHの
反応系内の当量比(三塩化リン又は三臭化リン:R
1OH)は、0.1:1~10:1である、請求項1~6のいずれか一項に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項8】
前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、20℃以上40℃以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項9】
前記工程(A1)及び(B1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上5mL/min以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項10】
前記工程(A1)において、三塩化リン又は三臭化リンの流速と、R
1OHの流速とは、異なっている、請求項1~9のいずれか一項に記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項11】
前記工程(A1)において、三塩化リン又は三臭化リンの流速は、R
1OHの流速の0.3~0.9倍である、請求項10記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項12】
前記工程(A1)において、R
1OHの流速は、三塩化リン又は三臭化リンの流速の0.3~0.9倍である、請求項10記載の非対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項13】
流通系反応装置を用いて、対称型リン酸トリエステルを合成する対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、
第1の流路を流れる三塩化リン又は三臭化リン及び
第2の流路を流れる下記一般式(H-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を
第1の混合機で反応させて、下記一般式(P-1)で表される化合物P1を合成する工程(A2)と、
前記第1の混合機から排出されるとともに第3の流路を流れる前記化合物P1及び
第4の流路を流れる下記一般式(H-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を
第2の混合機で反応させて、下記一般式(P-4)で表される化合物P4を合成する工程(B2)と、
前記化合物P4を酸化させて、対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D2)とを有し、
前記工程(A2)及び(B2)における反応温度は、-80℃以上であり、
前記工程(A2)及び(B2)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【請求項14】
前記工程(A2)及び(B2)における反応温度は、0℃以上である、請求項13に記載の対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項15】
前記工程(A2)及び(B2)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上である、請求項13又は14に記載の対称型リン酸トリエステルの製造方法。
【請求項16】
流通系反応装置を用いて、リン酸エステルを合成するリン酸エステルの製造方法であって、
第1の流路を流れる三塩化リン又は三臭化リン及び
第2の流路を流れる下記一般式(H1-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を
第1の混合機で反応させて、下記一般式(P1-1)で表される化合物P11を合成する工程(A11)と、
前記第1の混合機から排出されるとともに第3の流路を流れる前記化合物P11及び
第4の流路を流れる下記一般式(H1-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を
第2の混合機で反応させて、下記一般式(P1-2)で表される化合物P12を合成する工程(B11)と、
前記第2の混合機から排出されるとともに第5の流路を流れる前記化合物P12及び
第6の流路を流れる下記一般式(H1-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を
第3の混合機で反応させて、下記一般式(P1-3)で表される化合物P13を合成する工程(C11)と、
前記化合物P13を酸化させて、リン酸エステルを合成する工程(D11)とを有し、
前記工程(A11)及び(B11)における反応温度は、-80℃以上であり、
前記工程(A11)及び(B11)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、リン酸エステルの製造方法。
【化4】
[式中、R
11~R
13は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
11~R
13のうち、少なくとも1つは有機基であり、少なくとも1つは水素原子である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【請求項17】
流通系反応装置を用いて、有機リン化合物を合成する有機リン化合物の製造方法であって、
第1の流路を流れる三塩化リン又は三臭化リン及び
第2の流路を流れる下記一般式(H0-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を
第1の混合機で反応させて、下記一般式(P0-1)で表される化合物P01を合成する工程(A01)と、
前記第1の混合機から排出されるとともに第3の流路を流れる前記化合物P01及び
第4の流路を流れる下記一般式(H0-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を
第2の混合機で反応させて、下記一般式(P0-2)で表される化合物P02を合成する工程(B01)と、
前記第2の混合機から排出されるとともに第5の流路を流れる前記化合物P02及び
第6の流路を流れる下記一般式(H0-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を
第3の混合機で反応させて、下記一般式(P0-3)で表される化合物P03を合成する工程(C01)とを有し、
前記工程(A01)及び(B01)における反応温度は、-80℃以上であり、
前記工程(A01)及び(B01)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、有機リン化合物の製造方法。
【化5】
[式中、R
01~R
03は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
01~R
03のうち、少なくとも1つは有機基であり、R
1~R
3の全てが有機基の場合、前記有機基が全て同じになることはない。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称型リン酸トリエステルの製造方法、対称型リン酸トリエステルの製造方法、リン酸エステルの製造方法、及び、有機リン化合物の製造方法に関する。
本願は、2021年3月3日に日本に出願された、特願2021-033869号に基づき優先権主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
リン酸トリエステルは、リン酸と、ヒドロキシ化合物とが縮合した構造を有する。該リン酸トリエステルには、同一の2つのヒドロキシ化合物と、それらとは異なる1つのヒドロキシ化合物とが縮合されている対称型リン酸トリエステルと、異なる3つのヒドロキシ化合物が縮合されている非対称型リン酸トリエステルとが存在する。
【0003】
対称型リン酸トリエステル及び非対称型リン酸トリエステルは、可塑剤、難燃剤、殺虫剤など様々な分野で利用されている。また、非対称型リン酸トリエステルは、さらに核酸のプロドラッグであるプロチド、DNA化学合成の中間体などでも利用されている。
【0004】
非対称型リン酸トリエステルの製造方法としては、例えば、ホスホロアミダイト(phosphoramidite)法が挙げられる。この方法では、一般に、テトラゾールを促進剤として、ホスホロアミダイトとアルコールとの縮合反応により、亜リン酸トリエステルを得て、該亜リン酸トリエステルを、I2、tert-ブチルヒドロペルオキシド等により酸化してリン酸トリエステルに変換する。
【0005】
また、特許文献1には、非極性溶剤中で第三級アミンの存在下、約10℃以下の温度において、使用されるオキシ塩化リンに対して約1.8~2.2倍モル量の、ハロゲン若しくは低級アルキル置換された、又は置換されないフェノールにオキシ塩化リンを攪拌下で添加、反応させ、次いで使用されたオキシ塩化リンに対して約1倍モル量以上の、ハロゲン若しくはエーテル結合を含有していてもよい一価のアルカノールを添加、反応させることを特徴とする非対称型リン酸トリエステルの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、非対称型リン酸トリエステル及び対称型リン酸トリエステルの製造方法において、より安価で、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することのできるリン酸トリエステルの製造方法が求められる。
また、他のリン酸エステルである、リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルについても、より安価で、収率高く目的のリン酸モノエステル及びリン酸ジエステルを製造することのできる製造方法が求められる。
また、有機リン化合物についても、より安価で、収率高く目的の有機リン化合物を製造することのできる製造方法が求められる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、より安価で、収率高く目的のリン酸エステルを製造することができるリン酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、より安価で、収率高く目的の有機リン化合物を製造することができる有機リン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の第1の態様は、流通系反応装置を用いて、非対称型リン酸トリエステルを合成する非対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン、及び、下記一般式(H-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P-1)で表される化合物P1を合成する工程(A1)と、前記化合物P1及び下記一般式(H-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P-2)で表される化合物P2を合成する工程(B1)と、前記化合物P2及び下記一般式(H-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P-3)で表される化合物P3を合成する工程(C1)と、前記化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D1)とを有し、前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(A1)及び(B1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、非対称型リン酸トリエステルの製造方法である。
【0010】
【化1】
[式中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0011】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、0℃以上であってもよい。
【0012】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)及び(B1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上であってもよい。
【0013】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)と前記工程(B1)との間に、前記化合物P1と塩基とを反応させる工程(N1)を有してもよい。
【0014】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記塩基は、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択される一種以上の塩基であってもよい。
【0015】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記塩基は、下記一般式(I-1)で表される化合物であってもよい。
【0016】
【化2】
[式中、RI
1及びRI
2は、水素原子又は炭化水素基である。]
【0017】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)における、三塩化リン又は三臭化リン及びR1OHの応系内の当量比(三塩化リン又は三臭化リン:R1OH)は、0.1:1~10:1であってもよい。
【0018】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)及び(B1)における反応温度は、20℃以上40℃以下であってもよい。
【0019】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)及び(B1)における、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上5mL/min以下であってもよい。
【0020】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)における、三塩化リン又は三臭化リンの流速と、R1OHの流速とは、異なっていてもよい。
【0021】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)における、三塩化リン又は三臭化リンの流速は、R1OHの流速の0.3~0.9倍であってもよい。
【0022】
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A1)における、R1OHの流速は、三塩化リン又は三臭化リンの流速の0.3~0.9倍であってもよい。
【0023】
本発明の第2の態様は、流通系反応装置を用いて、対称型リン酸トリエステルを合成する対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン、及び、下記一般式(H-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P-1)で表される化合物P1を合成する工程(A2)と、前記化合物P1及び下記一般式(H-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P-4)で表される化合物P4を合成する工程(B2)と、前記化合物P4を酸化させて、対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D2)とを有し、前記工程(A2)及び(B2)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(A2)及び(B2)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、対称型リン酸トリエステルの製造方法である。
【0024】
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0025】
本発明の第2の態様に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A2)及び(B2)における反応温度は、0℃以上であってもよい。
【0026】
本発明の第2の態様に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法において、前記工程(A2)及び(B2)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、1mL/min以上であってもよい。
【0027】
本発明の第3の態様は、流通系反応装置を用いて、リン酸エステルを合成するリン酸エステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン、及び、下記一般式(H1-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-1)で表される化合物P11を合成する工程(A11)と、前記化合物P11及び下記一般式(H1-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-2)で表される化合物P12を合成する工程(B11)と、前記化合物P12及び下記一般式(H1-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-3)で表される化合物P13を合成する工程(C11)と、前記化合物P13を酸化させて、リン酸エステルを合成する工程(D11)とを有し、前記工程(A11)及び(B11)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(A11)及び(B11)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、リン酸エステルの製造方法である。
【0028】
【化4】
[R
11~R
13は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
11~R
13のうち、少なくとも1つは有機基であり、少なくとも1つは水素原子である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0029】
本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用いて、有機リン化合物を合成する有機リン化合物の製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン、及び、下記一般式(H0-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-1)で表される化合物P01を合成する工程(A01)と、前記化合物P01及び下記一般式(H0-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-2)で表される化合物P02を合成する工程(B01)と、前記化合物P02及び下記一般式(H0-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-3)で表される化合物P03を合成する工程(C01)とを有し、前記工程(A01)及び(B01)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(A01)及び(B01)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、有機リン化合物の製造方法である。
【0030】
【化5】
[R
01~R
03は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
01~R
03のうち、少なくとも1つは有機基であり、R
01~R
03の全てが有機基の場合、前記有機基が全て同じになることはない。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0031】
本発明の第5の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用いて、有機リン化合物を合成する有機リン化合物の製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リンと、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第1化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-1)で表される化合物PZ1を合成する工程(AZ1)と、前記化合物PZ1と、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第2化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-2)で表される化合物PZ2を合成する工程(BZ1)と、前記化合物PX2と、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第3化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-3)で表される化合物PZ3を合成する工程(CZ1)とを有し、前記工程(AZ1)及び(BZ1)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(AZ1)及び(BZ1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1化合物、及び前記第2化合物の流速は、0.01mL/min以上である、有機リン化合物の製造方法である。
【0032】
【化6】
[式中、Z
1~Z
3は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ化合物から水素原子を1つ除いた基、アミン化合物から水素原子を1つ除いた基、又はチオール化合物から水素原子を1つ除いた基である。但し、Z
1~Z
3は、全て同じになることはない。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【発明の効果】
【0033】
本発明の製造方法によれば、より安価で、収率高く目的のリン酸エステルを製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、より安価で、収率高く目的の有機リン化合物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【
図2】本実施形態の対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【
図3】実施例の対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【
図4】実施例の対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【
図5】実施例の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【
図6】実施例の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[概要]
非対称型リン酸トリエステル及び対称型リン酸トリエステルの製造方法において、より安価で、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することのできるリン酸トリエステルの製造方法が求められている。
しかしながら、例えば、従来の製造方法であるホスホロアミダイト(phosphoramidite)法は、高い選択性は有するものの、高価な試薬を用いる必要がある、廃棄物が多い、工程数が多い、爆発性のテトラゾールを使用する必要がある等の課題を有する。
また、特許文献1に記載されている非対称型リン酸トリエステルの製造方法では、反応に長時間要する、使用するヒドロキシ化合物の種類によっては、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することが困難である等の課題を有する。
【0036】
本発明者らは、上記課題を解決するために、リン酸エステルの製造方法について、鋭意検討を行った。
その結果、三塩化リン又は三臭化リンと、第1ヒドロキシ化合物とを反応させる第一反応を行い、次いで、第一反応で得られた化合物と第2ヒドロキシ化合物とを反応させる第二反応を行う際に、撹拌速度よりも第一反応の反応速度が上回る場合、第二反応が行われる前に、第一反応で得られた化合物が、第一反応に用いた第1ヒドロキシ化合物と再度反応する副反応が起きてしまうことが分かった。
そこで、本発明者らは、流通系反応装置を用いた検討を行い、反応温度及び流速を適切に制御し、撹拌効率を向上させることにより、より安価で、収率高く目的のリン酸エステルを製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0037】
<流通系反応装置>
本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法、第2の態様に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法、第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法、及び、第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用いた製造方法である。
流通系反応装置は、回分式ではなく、連続的なフローで化学反応を行う。
流通系反応装置は、通常管状であり、非反応性材料で作製される。当該非反応性材料は、従来技術において知られているものであり、原料又は反応物の特性に依存する。混合方法は、拡散法である。
混合機内の原料の滞留時間は、混合機体積及びそれを通過する流速により計算される(滞留時間=混合機体積/流速)。例えば、比較的長い滞留時間を達成するために、原料をより遅くポンピングすること、又は、体積がより大きな混合機を使用することにより達成できる。
【0038】
流通系反応装置の混合機は、単位容積あたりの表面積が非常に大きいので、精密温度制御、界面反応の効率化が可能である。
また、流通系反応装置は、フロー系であり滞留時間を短くすることができるため、生成物分子はリアクター外に速やかに放出され、二次的な反応の起こる可能性を小さくすることができる。したがって、流通系反応装置は、望まない副反応物の生成を効果的に抑制できる。
【0039】
混合機としては、T字型の混合機、V字型の混合機等が挙げられるが、撹拌効率向上の観点から、V字型の混合機であることが好ましい。
【0040】
(本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法)
以下、本実施形態に係る流通系反応装置の形態と、それを用いた非対称型リン酸トリエステルの製造方法を、
図1を参照して説明する。
図1は、流通系反応装置1の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置1は、第1の液を収容するタンク11と、第2の液を収容するタンク12と、第3の液を収容するタンク13と、第4の液を収容するタンク14と、第5の液を収容するタンク15とを備える。
【0041】
例えば、第1の液は、第1ヒドロキシ化合物(以下、「R1OH」ともいう)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を含み、第2の液は、三塩化リン又は三臭化リンを含み、第3の液は、求核性塩基を含み、第4の液は、第2ヒドロキシ化合物(以下、「R2OH」ともいう)を含み、第5の液は、第3ヒドロキシ化合物(以下、「R3OH」ともいう)を含む。
【0042】
流通系反応装置1は流体を輸送するための流路f1、f2、f3、f4、f5、f6、及びf7を備える。流路及び混合機の内径は、例えば、0.1~1mmであってもよく、0.1~0.8mmであってもよく、0.2~0.6mmであってもよい。また、流路及び混合機の内径は、1mm~数cmであってもよい。
タンク11、12、13、14、及び15、並びに、流路f1、f2、f3、f4、f5、f6、及びf7は、例えば、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
【0043】
タンク11はポンプ21に接続し、ポンプ21の作動により、タンク11に収容された第1の液は、流路f1内を移動して混合機31に流入する。タンク12はポンプ22に接続し、ポンプ22の作動により、タンク12に収容された第2の液は、流路f2内を移動して混合機31に流入する。次いで、第1の液及び第2の液は、混合機31により混合されて第1の混合液となり、流路f5へと送られる。この混合の過程で、第1の液に含まれるR1OHと第2の液に含まれる三塩化リン又は三臭化リンとが反応し、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、R1O-基に置換された化合物P1が得られる(非対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程A1)。得られた化合物P1を含む第1の混合液は、流路f5内を移動して、混合機32へと流入する。
【0044】
タンク13はポンプ23に接続し、ポンプ23の作動により、タンク13に収容された第3の液は、流路f3内を移動して混合機32へと流入する。次いで、第3の液と、第1の混合液とが混合されて第2の混合液となり、流路f6へと送られる。この混合の過程で、工程A1で得られた化合物P1と、第3の液に含まれる求核性塩基(nucleophilic base)とが反応し、化合物P1の2つの塩素原子(又は、化合物P1の2つの臭素原子)が、それぞれ求核性塩基から水素原子を一つ除いた基に置換された化合物(以下、「化合物N1」ともいう)が得られる。得られた化合物N1を含む第2の混合液は、流路f6内を移動して、混合機33へと流入する。
【0045】
タンク14はポンプ24に接続し、ポンプ24の作動により、タンク14に収容された第4の液は、流路f4内を移動して混合機33へと流入する。次いで、第4の液と、第2の混合液とが混合されて第3の混合液となり、流路f7へと送られる。この混合の過程で、化合物N1と、第4の液に含まれるR2OHとが反応し、化合物N1の1つの求核性塩基から水素原子を一つ除いた基が、R2O-基に置換された化合物N2(以下、「化合物N2」ともいう)が得られる。得られた化合物N2を含む第3の混合液は、流路f7内を移動して、タンク15へと流入する。
【0046】
タンク15には、R3OHを含む第5の液が貯留されており、そこに化合物N2を含む第3の混合液が流入する。これにより、化合物N2と、R3OHとが反応し、化合物P3が合成され、タンク15に化合物P3が貯留される(非対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程C1)。次いで、化合物P3を酸化させることにより、非対称型リン酸トリエステルが合成され、タンク15に非対称型リン酸トリエステルが貯留される(非対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程D1)。
【0047】
本実施形態に係る流通系反応装置1によれば、反応溶液の体積あたりの熱交換を行う面積を大きくすることができる。加えて、流速や流路の長さによって反応時間を制御することができる。このため、反応溶液の厳密な制御を可能とし、結果、望まない副反応の進行を最小化でき、目的物の収率を向上させることができる。
【0048】
化合物P1及び化合物P2は、反応性が高く、化合物P1と、R1OHとが再度反応する副反応、及び、化合物P2と、R2OHとが再度反応する副反応が起こりやすく、反応のコントロールが重要となる。
本実施形態に係る流通系反応装置1によれば、合成された化合物P1及び化合物P2を、混合機から速やかに放出することができるため、副反応を抑制することができ、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することができる。
【0049】
流通系反応装置1は、混合機により液が混合される形態を例示したが、液の混合は流路同士が連通することのみで達成され得るため、本実施形態の流通系反応装置は、必ずしも混合機を備えていなくともよい。
【0050】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法は、流通系反応装置を用いて、非対称型リン酸トリエステルを合成する非対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン及び第1ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P1を合成する工程(A1)(以下、「工程(A1)」という)と、前記化合物P1及び第2ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P2を合成する工程(B1)(以下、「工程(B1)」という)と、前記化合物P2及び第3ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P3を合成する工程(C1)(以下、「工程(C1)」という)、前記化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D1)(以下、「工程(D1)」という)とを有する。
【0051】
≪工程(A1)≫
工程(A1)は、三塩化リン又は三臭化リン、及び、下記一般式(H-1)で表される第1ヒドロキシ化合物(R1OH)を反応させて、下記一般式(P-1)で表される化合物P1を合成する工程である。
【0052】
【化7】
[式中、R
1は、有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0053】
上記一般式(H-1)及び(P-1)中、R1は、有機基である。
該有機基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。
該炭化水素基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもよい。環状の炭化水素基である場合は、脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、多環式基でも単環式基でもよい。
該置換基としては、特に限定されず、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、カルボキシ基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。
また、該炭化水素基は、炭素原子の一部がヘテロ原子を含む置換基で置換されてもよい。該ヘテロ原子を含む置換基としては、-O-、-C(=O)-O-、-S-、-S(=O)2-、-S(=O)2-O-等が挙げられる。
【0054】
R1として、より具体的には、後述する第1ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた基であることが好ましい。
【0055】
[第1ヒドロキシ化合物(R1OH)]
第1ヒドロキシ化合物(R1OH)は、1つ以上のヒドロキシ基を有する化合物であれば、特に限定されず、公知の化合物を使用可能である。R1OHは、ヒドロキシ基以外の置換基を有していてもよい。
【0056】
R1OHとして、具体的には、モノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、ヌクレオシド等が挙げられる。
【0057】
・モノオール
モノオールとして、より具体的には、1価の脂肪族アルコールと1価の芳香族アルコールとが挙げられる。
【0058】
・・脂肪族アルコール
1価の脂肪族アルコールは、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の脂肪族炭化水素基に1つのヒドロキシ基を有する化合物である。
1価の脂肪族アルコールとしては、例えば、炭素原子数1~20の脂肪族アルコールが好ましく、炭素原子数1~10の脂肪族アルコールがより好ましく、炭素原子数1~7の脂肪族アルコールがより好ましい。
具体的には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-メチルプロピルアルコール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、1-ペンタノール(n-アミルアルコール)、2-ペンタノール(sec-アミルアルコール)、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール(イソアミルアルコール)、2-メチル-2-ブタノール(tert-アミルアルコール)、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール(ネオペンチルアルコール)、ヒドロキシ酢酸tert-ブチル(グリコール酸tert-ブチル)、2-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]エタノール、2-メトキシ-エタン-1-オール(エチレングリコールモノメチルエーテル)、tert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)カーバメート、2-シアノエタノール等の飽和脂肪族アルコール;2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール、プロパルギルアルコール等の不飽和脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0059】
・・1価の芳香族アルコール
1価の芳香族アルコールは、1つのヒドロキシ基と、1つ以上の芳香環を有する化合物である。この芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。
1価の芳香族アルコールとしては、例えば、炭素原子数6~30の芳香族アルコールが好ましく、炭素原子数6~15の芳香族アルコールがより好ましい。
具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、tert-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、スチレン化フェノール、p-クミルフェノール、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)、2-ヒドロキシインダン(2-インダノール)等が挙げられる。
【0060】
・ポリアルキレングリコールモノエーテル
ポリアルキレングリコールモノエーテルとしては、上記モノオールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、長鎖α-オレフィンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
具体的には、ポリオキシエチレンモノオクチルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノオクチルエーテル、ポリオキシエチレンモノデシルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノデシルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノラウリルエーテル、ポリオキシエチレンモノミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンモノパルミチルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノステアリルエーテル、ポリオキシエチレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノオレイルエーテル、ポリオキシエチレンモノヤシアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノヤシアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノパームアルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノパームアルキルエーテル、ポリオキシエチレンモノ牛脂アルキルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノ牛脂アルキルエーテル等が挙げられる。
【0061】
・ポリアルキレングリコールモノエステル
ポリアルキレングリコールモノエステルとしては、脂肪酸にアルキレンオキサイドを付加した化合物や、ポリアルキレングリコールと脂肪酸をエステル化反応させた化合物等が挙げられる。
具体的には、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールミリステート、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノミリステート、ポリエチレングリコールパルミテート、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノパルミテート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノヤシ脂肪酸エステル、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノヤシ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノパーム脂肪酸エステル、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノパーム脂肪酸エステルラウレート、ポリエチレングリコールモノ牛脂脂肪酸エステル、ポリエチレン/ポリプロピレングリコールモノ牛脂脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0062】
・ポリオール
ポリオールは、2つ以上のヒドロキシ基を有する化合物である。
具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,6-ヘキサンジオール、1,6-ヘプタンジオール、2-メチル-1,7-ヘプタンジオール、3-メチル-1,7-ヘプタンジオール、4-メチル-1,7-ヘプタンジオール、1,7-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3-メチル-1,8-オクタンジオール、4-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-ノナンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,9-ノナンジオール、4-メチル-1,9-ノナンジオール、5-メチル-1,9-ノナンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2-ジエチルプロパンジオール、2-ブチル2-エチルプロパンンジオール等の2価アルコール;グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,3-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-2,3,4-ブタントリオール、2-エチル-1,2,3-ブタントリオール、2,3,4-ペンタントリオール、2,3,4-ヘキサントリオール、4-プロピル-3,4,5-ヘプタントリオール、2,4-ジメチル-2,3,4-ペンタントリオール、ペンタメチルグリセリン、ペンタグリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,4-ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、エリスリトール、1,2,3,4-ペンタンテトロール、2,3,4,5-ヘキサンテトロール、1,2,4,5-ペンタンテトロール、1,3,4,5-ヘキサンテトロール、ジグリセリン、ソルビタン等の4価アルコール;アドニトール、アラビトール、キシリトール、トリグリセリン等の5価アルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、イノシトール、ダルシトール、タロース、アロース等の6価アルコール;又はこれらの化合物が有する水素原子の一部又は全部が他の置換基に置換された該ポリオールの誘導体などが挙げられる。
イノシトールを例に挙げて説明すると、イノシトールには、cis-イノシトール、epi-イノシトール、allo-イノシトール、myo-イノシトール、muco-イノシトール、neo-イノシトール、chiro-イノシトール(D体及びL体が存在する)、scyllo-イノシトールの9つの立体異性体が存在するが、他の化合物も同様に、1種の異性体のみを使用してもよく、2種以上の異性体を併用してもよい。
【0063】
・糖
糖は、単糖であってもよく、オリゴ糖であってもよい。ここで、単糖とは、それ以上加水分解されない糖を意味し、多糖を形成する際の構成要素となる化合物を意味する。単糖は、糖類の最小単位であるということもできる。オリゴ糖とは、単糖がグリコシド結合によって複数個結合した糖のオリゴマーである。
【0064】
・・単糖
単糖として、具体的には、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース、リボース、キシロース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0065】
・・オリゴ糖
オリゴ糖として、具体的には、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース、セロビオース、マルチトール等の二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース等の三糖;スタキオース等の四糖;α-シクロデキストリン等の六糖;β-シクロデキストリン等の七糖;γ-シクロデキストリン等の八糖が挙げられる。
【0066】
・・その他の糖
また、糖としては、その他の糖、例えば、ヘプトース、デオキシ糖、アミノ糖、チオ糖、セレノ糖、アルドン酸、ウロン酸、糖酸、アスコルビン酸、ケトアルドン酸、アンヒドロ糖、不飽和糖、糖エステル、糖エーテル、グリコシド等でもよく、デンプン、グリコーゲン、セルロース等の多糖類を加水分解したものでもよい。
【0067】
・グリセリン脂肪酸エステル
グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンが有する3つのヒドロキシ基のうち1つ又は2つのヒドロキシ基に脂肪酸がエステル結合した化合物である。
具体的には、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノヤシ脂肪酸エステル、グリセリンモノパーム脂肪酸エステル、グリセリンモノ牛脂脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0068】
・エタノールアミド
エタノールアミドとしては、モノエタノールアミン又はジエタノールアミンの脂肪酸アミドや該脂肪酸アミドにさらにアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
具体的には、ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ラウリン酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ミリスチン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ミリスチン酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、パルミチン酸モノエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、パルミチン酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ステアリン酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、オレイン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、オレイン酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ脂肪酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、ヤシ脂肪酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、パーム脂肪酸モノエタノールアミド、パーム脂肪酸ジエタノールアミド、パーム脂肪酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、パーム脂肪酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミドエチレンオキサイド付加物、牛脂脂肪酸ジエタノールアミドエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0069】
・ヌクレオシド
ヌクレオシドは、塩基と糖が結合した化合物である。該塩基としては、アデニン、グアニン等のプリン塩基;チミン、シトシン、ウラシル等のピリミジン塩基;ニコチンアミド;ジメチルイソアロキサジンなどが挙げられる。
具体的には、アデノシン、グアノシン、5-メチルウリジン、ウリジン、シチジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシグアノシン、チミジン、デオキシウリジン、デオキシシチジン等が挙げられる。また、これらの化合物が有する水素原子若しくはヒドロキシ基の一部又は全部が他の置換基に置換されたヌクレオシド誘導体(例えば、5―(3―ベンゾイル―5―メチル―2,4―ジオキソ―3,4―ジヒドロピリミジン―1(2H)―イル)―2―(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン―3―イルベンゾエート、又は、3―ベンゾイル―1―[4―ヒドロキシ―5―(tert-ブチルジメチルシリルオキシメチル)テトラヒドロフラン―2―イル)―5―メチルピリミジン―2,4(1H,3H)―ジオン)などが挙げられる。
【0070】
R1OHは、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド及びヌクレオシド以外であってもよく、例えば、トレオニン、セリン等のヒドロキシアミノ酸や該アミノ酸の誘導体(例えば、メチル[[(9H-フルオレニル)メトキシ]カルボニル]セリネート);グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、リシノール酸等のヒドロキシ酸であってもよい。
【0071】
R1OHとしては、上記の中でも、モノオール、アミノ酸(アミノ酸の誘導体も含む)、ヌクレオシド(ヌクレオシドの誘導体も含む)であることが好ましい。
該モノオールとしては、炭素原子数1~20の脂肪族アルコール又は炭素原子数6~30の芳香族アルコールが好ましく、炭素原子数1~7の脂肪族アルコール又は炭素原子数6~15の芳香族アルコールがより好ましい。
【0072】
より具体的には、R1OHにおけるモノオールとしては、エタノール、1-ブタノール、2-メチルプロピルアルコール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、ヒドロキシ酢酸tert-ブチル、2-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]エタノール、2-プロペン-1-オール、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、tert-ブチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デシルフェノール、ウンデシルフェノール、ドデシルフェノール、トリデシルフェノール、テトラデシルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、スチレン化フェノール、p-クミルフェノール、2-フェニルエタノール、又は、2-ヒドロキシインダンであることが好ましく、エタノール、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-メチルプロピルアルコール(イソブタノール)、2-ブタノール(sec-ブタノール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブタノール)、ヒドロキシ酢酸tert-ブチル(グリコール酸tert-ブチル)、2-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]エタノール、2-プロペン-1-オール(アリルアルコール)、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、フェノール、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)、2-ヒドロキシインダン(2-インダノール)、2-メトキシ-エタン-1-オール、プロパルギルアルコール、tert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)カーバメート、2-シアノエタノールであることがより好ましい。
【0073】
R1OHにおけるアミノ酸(アミノ酸の誘導体も含む)としては、メチル[[(9H-フルオレニル)メトキシ]カルボニル]セリネートが好ましい。
【0074】
R1OHにおけるヌクレオシド(ヌクレオシドの誘導体も含む)としては、5―(3―ベンゾイル―5―メチル―2,4―ジオキソ―3,4―ジヒドロピリミジン―1(2H)―イル)―2―(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン―3―イルベンゾエート、又は、3―ベンゾイル―1―[4―ヒドロキシ―5―(tert-ブチルジメチルシリルオキシメチル)テトラヒドロフラン―2―イル)―5―メチルピリミジン―2,4(1H,3H)―ジオンが好ましい。
【0075】
工程(A1)において、三塩化リン又は三臭化リン及びR1OHのそれぞれの使用量は、R1OHの種類を考慮し、目的とする反応に応じて適宜調節すればよい。
三塩化リン又は三臭化リンとR1OHとの、反応系内の当量比(三塩化リン又は三臭化リン:R1OH)は、0.1:1~10:1であってもよく、0.2:1~5:1であってもよく、0.5:1~3:1であってもよい。
本実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)によれば、R1OHに対して、等当量に近い比較的少量の三塩化リン又は三臭化リンを反応させた場合であっても、高収率で化合物P1を合成することができる。
【0076】
工程(A1)の反応温度の下限値は、-80℃以上であり、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは0℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。
また、工程(A1)の反応温度の上限値は、特に限定されず、例えば、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。
【0077】
工程(A1)の反応温度の下限値が、-80℃以上であれば、撹拌効率が向上し、副反応をより抑制することができる。また、工程(A1)の反応温度の下限値が、上記の好ましい下限値以上であれば、撹拌効率がより向上し、副反応をさらに抑制することができ、化合物P1の収率をより向上させることができる。
工程(A1)の反応温度の上限値が、上記の好ましい上限値以下であれば、三塩化リン又は三臭化リンとR1OHとの反応速度を適度に制御することができ、副反応をより抑制することができる。
【0078】
例えば、工程(A1)の反応温度は、-80℃以上80℃以下であることが好ましく、-10℃以上80℃以下であることがより好ましく、0℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましく、20℃以上40℃以下であることが最も好ましい。
【0079】
工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速の下限値は、0.01mL/min以上であり、好ましくは0.1mL/min以上であり、より好ましくは1mL/min以上である。
また、工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速の上限値は、特に限定されず、例えば、10mL/min以下であってもよく、8mL/min以下であってもよく、5mL/min以下であってもよい。
【0080】
工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速の下限値が、0.01mL/min以上であれば、撹拌効率が向上し、副反応をより抑制することができる。また、工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速の下限値が、上記の好ましい下限値以上であれば、撹拌効率がより向上し、副反応をさらに抑制することができ、化合物P1の収率をより向上させることができる。
また、工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速の上限値が、上記の好ましい上限値以下であれば、三塩化リン又は三臭化リンとR1OHとの反応速度を適度に制御することができ、副反応をより抑制することができる。
【0081】
例えば、工程(A1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リンの流速は、0.01mL/min以上10mL/min以下であることが好ましく、0.1mL/min以上8mL/min以下であることがより好ましく、1mL/min以上5mL/min以下であることがさらに好ましい。
【0082】
工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速の下限値は、0.01mL/min以上であり、好ましくは0.1mL/min以上であり、より好ましくは1mL/min以上であり、さらに好ましくは2mL/min以上である。
また、工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速の上限値は、特に限定されず、例えば、10mL/min以下であってもよく、8mL/min以下であってもよく、5mL/min以下であってもよい。
【0083】
工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速の下限値が、0.01mL/min以上であれば、撹拌効率が向上し、副反応をより抑制することができる。また、工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速の下限値が、上記の好ましい下限値以上であれば、撹拌効率がより向上し、副反応をさらに抑制することができ、化合物P1の収率をより向上させることができる。
また、工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速の上限値が、上記の好ましい上限値以下であれば、三塩化リン又は三臭化リンとR1OHとの反応速度を適度に制御することができ、副反応をより抑制することができる。
【0084】
例えば、工程(A1)において、流路内を流れるR1OHの流速は、0.01mL/min以上10mL/min以下であることが好ましく、0.1mL/min以上8mL/min以下であることがより好ましく、1mL/min以上5mL/min以下であることがさらに好ましく、2mL/min以上5mL/min以下であることが特に好ましい。
【0085】
工程(A1)において、三塩化リン又は三臭化リンの流速と、R1OHの流速とは、異なっていても、同一であっても良いが、異なっている方が好ましい。
具体的には、どちらか一方の流速に対して、残りの一方の流速が0.1~1.0倍であることが好ましく、0.3~0.9倍であることがより好ましい。
【0086】
例えば、三塩化リン又は三臭化リンの流速が1mL/min以上5mL/min以下であり、R1OHの流速が、該三塩化リン又は三臭化リンの流速の0.3~0.9倍であってもよく、三塩化リン又は三臭化リンの流速が2mL/min以上5mL/min以下であり、R1OHの流速が、該三塩化リン又は三臭化リンの流速の0.3~0.9倍であってもよい。
また、反対に、R1OHの流速が1mL/min以上5mL/min以下であり、三塩化リン又は三臭化リンの流速が、該R1OHの流速の0.3~0.9倍であってもよく、R1OHの流速が2mL/min以上5mL/min以下であり、三塩化リン又は三臭化リンの流速が、該R1OHの流速の0.3~0.9倍であってもよい。
【0087】
工程(A1)において、流通系反応装置の混合機内で、三塩化リン又は三臭化リン及びR1OHを反応させる反応時間は、特に限定されず、例えば、0.01秒~1分であり、1~30秒であってもよく、1~20秒であってもよい。
【0088】
工程(A1)で合成される化合物P1は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、R1OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
例えば、化合物P1は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
【0089】
≪工程(B1)≫
工程(B1)は、上述した化合物P1及び第2ヒドロキシ化合物(R2OH)を反応させて、下記一般式(P-2)で表される化合物P2を合成する工程である。
【0090】
【化8】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0091】
上記一般式(H-2)及び(P-2)中、R2は、有機基であり、上述したR1と同様の基が挙げられる。但し、R1及びR2は、それぞれ異なる有機基である。
【0092】
R2OHとしては、上述したR1OHと同様のものが挙げられるが、R2OHは、R1OHとは、同一の化合物ではない。
【0093】
工程(B1)の反応温度の下限値は、-80℃以上であり、好ましくは-10℃以上であり、より好ましくは0℃以上であり、さらに好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは20℃以上である。
また、工程(B1)の反応温度の上限値は、特に限定されず、例えば、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。
【0094】
工程(B1)の反応温度の下限値が、-80℃以上であれば、撹拌効率が向上し、副反応をより抑制することができる。また、工程(B1)の反応温度の下限値が、上記の好ましい下限値以上であれば、撹拌効率がより向上し、副反応をさらに抑制することができ、化合物P2の収率をより向上させることができる。
工程(B1)の反応温度の上限値が、上記の好ましい上限値以下であれば、化合物P1とR2OHとの反応速度を適度に制御することができ、副反応をより抑制することができる。
【0095】
例えば、工程(B1)の反応温度は、-80℃以上80℃以下であることが好ましく、-10℃以上80℃以下であることがより好ましく、0℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましく、20℃以上40℃以下であることが最も好ましい。
【0096】
工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速の下限値は、0.01mL/min以上であり、好ましくは0.1mL/min以上であり、より好ましくは1mL/min以上であり、さらに好ましくは2mL/min以上である。
また、工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速の上限値は、特に限定されず、例えば、10mL/min以下であってもよく、8mL/min以下であってもよく、5mL/min以下であってもよい。
【0097】
工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速の下限値が、0.01mL/min以上であれば、撹拌効率が向上し、副反応をより抑制することができる。また、工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速の下限値が、上記の好ましい下限値以上であれば、撹拌効率がより向上し、副反応をさらに抑制することができ、化合物P2の収率をより向上させることができる。
また、工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速の上限値が、上記の好ましい上限値以下であれば、化合物P1とR2OHとの反応速度を適度に制御することができ、副反応をより抑制することができる。
【0098】
例えば、工程(B1)において、流路内を流れるR2OHの流速は、0.01mL/min以上10mL/min以下であることが好ましく、0.1mL/min以上8mL/min以下であることがより好ましく、1mL/min以上5mL/min以下であることがさらに好ましく、2mL/min以上5mL/min以下であることが特に好ましい。
【0099】
工程(B1)において、流通系反応装置の混合機内で、化合物P1及びR2OHを反応させる反応時間は、特に限定されず、例えば、0.01秒~1分であり、1~30秒であってもよく、1~20秒であってもよい。
【0100】
工程(B1)で合成される化合物P2は、化合物P1の1つの塩素原子(又は、化合物P1の1つの臭素原子)が、R2OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。また、化合物P2は、三塩化リンの1つの塩素原子(又は、三臭化リンの1つの臭素原子)が、R1OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換され、かつ、他の1つの塩素原子(又は、他の1つの臭素原子)が、R2OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物ともいえる。
例えば、化合物P2は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG1)で置換され、かつ、三塩化リンの他の1つの塩素原子又は三臭化リンの他の1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG2)で置換された化合物である(但し、HG1及びHG2はそれぞれ異なる置換基である)。
【0101】
≪工程(C1)≫
工程(C1)は、上述した化合物P2及び第3ヒドロキシ化合物(R3OH)を反応させて、下記一般式(P-3)で表される化合物P3を合成する工程である。
【0102】
【化9】
[式中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0103】
上記一般式(H-3)及び(P-3)中、R3は、有機基であり、上述したR1と同様の基が挙げられる。但し、R1~R3は、いずれも異なる有機基である。
【0104】
R3OHとしては、上述したR1OHと同様のものが挙げられるが、R3OHは、R2OH及びR1OHとは、同一の化合物ではない。
【0105】
工程(C1)は、上述のように、例えば、R3OHをタンクに貯蔵しておき、該タンクに上述した化合物P2を流入させることによって、化合物P3を合成することができる。
【0106】
工程(C1)の反応温度は、特に限定されず、-80℃以上80℃以下であることが好ましく、-10℃以上80℃以下であることがより好ましく、0℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましく、20℃以上40℃以下であることが最も好ましい。
【0107】
工程(C1)で合成される化合物P3は、化合物P2の1つの塩素原子(又は、化合物P2の1つの臭素原子)が、R3OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
例えば、化合物P3は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG1)で置換され、かつ、三塩化リンの他の1つの塩素原子又は三臭化リン他の1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG2)で置換され、かつ、三塩化リンの残りの1つの塩素原子又は三臭化リンの残りの1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG3)で置換された化合物である(但し、HG1、HG2及びHG3はそれぞれ異なる置換基である)。
【0108】
≪工程(D1)≫
工程(D1)は、前記化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステルを合成する工程である。
【0109】
【化10】
[式中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。]
【0110】
化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステル方法を得る方法は、特に限定されず、例えば、化合物P3と特定の酸化剤とを反応させることにより、化合物P3を酸化させることができる。
該酸化剤は、特に限定されないが、例えば、メタクロロ過安息香酸(mCPBA)、次亜塩素酸ナトリウム五水和物、トリクロロイソシアヌル酸、次亜塩素酸ターシャリーブチル、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド、ヨウ素等の含ハロゲン酸化剤;過酸化水素水;tert-ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
【0111】
工程(A1)~工程(D1)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料や反応の過程で生じる化合物の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0112】
工程(A1)~工程(D1)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0113】
前記工程(D1)によって得られる非対称型リン酸トリエステルには、非対称型チオリン酸トリエステルも含まれる。
例えば、以下に示すような反応により、非対称型チオリン酸トリエステルを得ることができる。
【0114】
【化11】
[式中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。]
【0115】
化合物P3を酸化させて、非対称型チオリン酸トリエステル方法を得る方法は、特に限定されず、例えば、化合物P3と特定の酸化剤とを反応させることにより、化合物P3を酸化させることができる。
該酸化剤は、特に限定されないが、例えば、キサンタンヒドリド等が挙げられる。
【0116】
以上説明した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法は、流通系反応装置を用い、上述した工程(A1)及び(B1)における反応温度を-80℃以上とし、かつ、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速を0.01mL/min以上とすることを特徴とする、非対称型リン酸トリエステルの製造方法である。反応温度及び流速を適切に制御することにより、撹拌効率が向上し、副反応を抑制することができる。
したがって、第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法によれば、より安価で、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することができる。
【0117】
上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、流通系反応装置の混合機の内径によって、好ましい流速が変化する。
例えば、上述した三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速の好ましい範囲は、混合機の内径が0.25mmである場合に特に好ましい範囲である。
例えば、流通系反応装置の混合機の内径をN倍(断面積をN2倍)する場合、上記流速の好ましい値をそれぞれN2倍することが好ましい。
【0118】
より具体的には、各化合物の流速は、流通系反応装置の混合機の内径が0.25mmである場合、0.01mL/min以上10mL/min以下であることが好ましく、0.1mL/min以上8mL/min以下であることがより好ましく、1mL/min以上5mL/min以下であることがさらに好ましく、2mL/min以上5mL/min以下であることが特に好ましい。
【0119】
流通系反応装置の混合機の内径が1mmである場合、上記の値42倍することが好ましく、具体的には、各化合物の流速は、0.16mL/min以上160mL/min以下であることが好ましく、1.6mL/min以上128mL/min以下であることがより好ましく、16mL/min以上80mL/min以下であることがさらに好ましく、32mL/min以上80mL/min以下であることが特に好ましい。
【0120】
また、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましいとも言える。
すなわち、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法において、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、0.01×(ID/0.25)2mL/min以上10×(ID/0.25)2mL/min以下であることが好ましく、0.1×(ID/0.25)2mL/min以上8×(ID/0.25)2mL/min以下であることがより好ましく、1×(ID/0.25)2mL/min以上5×(ID/0.25)2mL/min以下であることがさらに好ましく、2×(ID/0.25)2mL/min以上5×(ID/0.25)2mL/min以下であることが特に好ましい。
【0121】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法は、流通系反応装置を用いて、非対称型リン酸トリエステルを合成する非対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン及び第1ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P1を合成する工程(A1)と、化合物P1と塩基とを反応させて、化合物N1を合成する工程(N1)と、化合物N1及び第2ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物N2を合成する工程(BN1)と、化合物N2及び第3ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P3を合成する工程(CN1)と、化合物P3を酸化させて、非対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D1)を有する。
【0122】
第2の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び(D1)は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び(D1)と同一である。
【0123】
≪工程(N1)≫
工程(N1)は、化合物P1と塩基(求核性塩基)とを反応させて、下記一般式(N-1)で表される化合物N1を合成する工程である。
【0124】
【化12】
[式中、R
1は、有機基である。B
1は、塩基から水素原子を1つ除いた基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0125】
該塩基としては、求核性塩基であれば、特に限定されない。
具体的には、ピリジン、ピリジン誘導体(例えば、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)等)、イミダゾール、イミダゾール誘導体(例えば、N-メチルイミダゾール(NMI)、4-メチルイミダゾール(4-methylimidazole)等)及び1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンからなる群から選択される一種以上の塩基であることが好ましく、イミダゾール又はイミダゾール誘導体であることがより好ましく、下記一般式(I-1)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0126】
【化13】
[式中、RI
1及びRI
2は、水素原子又は炭化水素基である。]
【0127】
上記一般式(I-1)中のRI1及びRI2における炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく芳香族炭化水素基(アリール基)であってもよい。
該脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでもよい。環状である場合、単環状又は多環状のいずれでもよい。該脂肪族炭化水素基は、炭素原子数が1~20であってもよく、1~15であってもよい。
該脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基(アルキル基)であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、アルキル基が好ましい。
該アルキル基は、炭素原子数が1~20であってもよく、1~10であってもよく、1~5であってもよい。
【0128】
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0129】
工程(N1)の反応温度の下限値は、好ましくは-80℃以上であり、より好ましくは-10℃以上であり、さらに好ましくは0℃以上であり、特に好ましくは10℃以上であり、最も好ましくは20℃以上である。
また、工程(N1)の反応温度の上限値は、特に限定されず、例えば、80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。
【0130】
工程(N1)の反応温度が、上記の好ましい範囲内であれば、反応が円滑に進行し、化合物N1の収率をより向上させることができる。
【0131】
例えば、工程(N1)の反応温度は、-80℃以上80℃以下であることが好ましく、-10℃以上80℃以下であることがより好ましく、0℃以上60℃以下であることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下であることが特に好ましく、20℃以上40℃以下であることが最も好ましい。
【0132】
工程(N1)において、流路内を流れる塩基の流速の下限値は、0.01mL/min以上であり、好ましくは0.1mL/min以上であり、より好ましくは1mL/min以上である。
また、工程(N1)において、流路内を流れる塩基の流速の上限値は、特に限定されず、例えば、10mL/min以下であってもよく、8mL/min以下であってもよく、5mL/min以下であってもよい。
【0133】
工程(N1)において、流路内を流れる塩基の流速が、上記の好ましい範囲内であれば、反応が円滑に進行し、化合物N1の収率をより向上させることができる。
【0134】
例えば、工程(N1)において、流路内を流れる塩基の流速は、0.01mL/min以上10mL/min以下であってもよく、0.1mL/min以上8mL/min以下であってもよく、1mL/min以上5mL/min以下であってもよい。
【0135】
工程(N1)において、流通系反応装置の混合機内で、化合物P1及び塩基を反応させる反応時間は、特に限定されず、例えば、0.01秒~1分であり、1~30秒であってもよく、1~20秒であってもよい。
【0136】
工程(N1)で合成される化合物N1は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、R1OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換され、かつ、残りの2つの塩素原子、又は、残りの2つの臭素原子が、塩基から水素原子を一つ除いた基でいずれも置換された化合物である。
例えば、化合物N1は、三塩化リンの1つの塩素原子(又は、三臭化リンの1つの臭素原子)が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換され、かつ、三塩化リンの残りの2つの塩素原子(又は、三臭化リンの残りの2つの臭素原子)が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体又は1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンから水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
【0137】
≪工程(BN1)≫
工程(BN1)は、化合物N1及び第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(N-2)で表される化合物N2を合成する工程である。
【0138】
【化14】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ異なる有機基である。B
1は、塩基から水素原子を1つ除いた基である。]
【0139】
工程(BN1)は、化合物P1が、化合物N1であること以外は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(B1)と同様である。
【0140】
工程(BN1)で合成される化合物N2は、化合物N1の1つの塩基から水素原子を一つ除いた基が、R2OHのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
例えば、化合物N2は、三塩化リンの1つの塩素原子又は三臭化リンの1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG1)で置換され、かつ、三塩化リンの他の1つの塩素原子又は三臭化リンの他の1つの臭素原子が、上述したモノオール、ポリアルキレングリコールモノエーテル、ポリアルキレングリコールモノエステル、ポリオール、糖、グリセリン脂肪酸エステル、エタノールアミド、又はヌクレオシドのヒドロキシ基から水素原子を1つ除いた基(HG2)で置換された化合物であり(但し、HG1及びHG2はそれぞれ異なる置換基である)、三塩化リンの残りの1つの塩素原子又は三臭化リンの残りの1つの臭素原子が、ピリジン、ピリジン誘導体、イミダゾール、イミダゾール誘導体又は1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンから水素原子を1つ除いた基で置換された化合物である。
【0141】
≪工程(CN1)≫
工程(CN1)は、化合物N2及び第3ヒドロキシ化合物を反応させて、化合物P3を合成する工程である。
【0142】
【化15】
[式中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、有機基である。但し、R
1~R
3は、いずれも異なる有機基である。B
1は、塩基から水素原子を1つ除いた基である。]
【0143】
工程(CN1)は、化合物P2が、化合物N2であること以外は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(C1)と同様である。
【0144】
工程(A1)、工程(N1)、工程(BN1)、及び工程(CN1)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0145】
工程(A1)、工程(N1)、工程(BN1)、及び工程(CN1)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0146】
以上説明した第2の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法は、第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の各工程に加えて、さらに、工程(N1)を有する。化合物P1が有する2つの塩素原子(又は、化合物P1が有する2つの臭素原子)を、塩基から水素原子を一つ除いた基にそれぞれ置換することにより、反応性を適切に抑制することができる。
したがって、第2の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法によれば、さらに収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することができる。
【0147】
第2の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法についても、好ましい流速と流通系反応装置の混合機の内径との関係は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と同様である。
すなわち、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましい。
【0148】
(本発明の第2の態様に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法)
以下、本実施形態に係る流通系反応装置の形態と、それを用いた対称型リン酸トリエステルの製造方法を、
図2を参照して説明する。
図2は、流通系反応装置100の概略的な構成を示す模式図である。流通系反応装置100は、第1の液を収容するタンク110と、第2の液を収容するタンク120と、第3の液を収容するタンク130と、第3の液と第4の液との混合液を収容するタンク140とを備える。
【0149】
例えば、第1の液は、第1ヒドロキシ化合物(R1OH)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を含み、第2の液は、三塩化リン又は三臭化リンを含み、第3の液は、第2ヒドロキシ化合物(R2OH)含む。
【0150】
流通系反応装置100は流体を輸送するための流路f10、f20、f30、f40、及びf50を備える。流路及び混合機の内径は、例えば、0.1~1mmであってもよく、0.1~0.8mmであってもよく、0.2~0.6mmであってもよい。また、流路及び混合機の内径は、1mm~数cmであってもよい。
タンク110、120、130、及び140、並びに、流路f10、f20、f30、f40及びf50は、例えば、プラスチックやエラストマー等の樹脂や、ガラス材、金属、セラミックなどで形成されている。
【0151】
タンク110はポンプ210に接続し、ポンプ210の作動により、タンク110に収容された第1の液は、流路f10内を移動して混合機310に流入する。タンク120はポンプ220に接続し、ポンプ220の作動により、タンク120に収容された第2の液は、流路f20内を移動して混合機310に流入する。次いで、第1の液及び第2の液は、混合機310により混合されて第1の混合液となり、流路f50へと送られる。この混合の過程で、第1の液に含まれるR1OHと第2の液に含まれる三塩化リン又は三臭化リンとが反応し、三塩化リンの1つの塩素原子、又は、三臭化リンの1つの臭素原子が、R1O-基に置換された化合物P1が得られる(対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程A2)。得られた化合物P1を含む第1の混合液は、流路f40内を移動して、混合機320へと流入する。
【0152】
タンク130はポンプ230に接続し、ポンプ230の作動により、タンク130に収容された第3の液は、流路f30内を移動して混合機320へと流入する。次いで、第3の液と、第1の混合液とが混合されて第2の混合液となり、流路f50へと送られる。この混合の過程で、工程A2で得られた化合物P1と、第3の液に含まれるR2OHとが反応し、化合物P1の2つの塩素原子(又は、化合物P1の2つの臭素原子)が、それぞれR2O-基に置換された化合物P4が得られる(対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程B2)。得られた化合物P4は、流路f50内を移動して、タンク140で貯留される。次いで、化合物P4を酸化させることにより、対称型リン酸トリエステルが合成され、タンク140に対称型リン酸トリエステルが貯留される(対称型リン酸トリエステルの製造方法の工程D2)。
【0153】
化合物P1は、反応性が高く、化合物P1と、R1OHとが再度反応する副反応が起こりやすく、反応のコントロールが重要となる。
本実施形態に係る流通系反応装置100によれば、合成された化合物P1を、混合機から速やかに放出することができるため、副反応を抑制することができ、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することができる。
【0154】
流通系反応装置100は、混合機により液が混合される形態を例示したが、液の混合は流路同士が連通することのみで達成され得るため、本実施形態の流通系反応装置は、必ずしも混合機を備えていなくともよい。
【0155】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法は、流通系反応装置を用いて、対称型リン酸トリエステルを合成する対称型リン酸トリエステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン及び第1ヒドロキシ化合物(R1OH)を反応させて、化合物P1を合成する工程(A2)(以下、「工程(A2)」という)と、前記化合物P1及び第2ヒドロキシ化合物(R2OH)を反応させて、化合物P4を合成する工程(B2)(以下、「工程(B2)」という)と、化合物P4を酸化させて、対称型リン酸トリエステルを合成する工程(D2)(以下、「工程(D2)」という)とを有する。
【0156】
【化16】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ異なる有機基である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0157】
工程(A2)及び(B2)における反応温度は、-80℃以上であり、工程(A2)及び(B2)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である。
また、該反応温度及び流速の好ましい範囲は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び工程(B1)で記載した範囲とそれぞれ同じである。
また、工程(D2)も、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(D1)で記載した内容と同じである。
【0158】
工程(A2)及び(B2)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0159】
工程(A2)及び(B2)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0160】
以上説明した第3の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法は、流通系反応装置を用い、上述した工程(A2)及び(B2)における反応温度を-80℃以上とし、かつ、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速を0.01mL/min以上とすることを特徴とする、対称型リン酸トリエステルの製造方法である。反応温度及び流速を適切に制御することにより、撹拌効率が向上し、副反応を抑制することができる。
したがって、第3の実施形態の対称型リン酸トリエステルの製造方法によれば、より安価で、収率高く目的のリン酸トリエステルを製造することができる。
【0161】
第3の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法についても、好ましい流速と流通系反応装置の混合機の内径との関係は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と同様である。
すなわち、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましい。
【0162】
(本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法)
本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法は、流通系反応装置を用いて、リン酸エステルを合成するリン酸エステルの製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン及び下記一般式(H1-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-1)で表される化合物P11を合成する工程(A11)(以下、「工程(A11)」という)と、前記化合物P11及び下記一般式(H1-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-2)で表される化合物P12を合成する工程(B11)(以下、「工程(B11)」という)と、前記化合物P12及び下記一般式(H1-3)で表される第3ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P1-3)で表される化合物P13を合成する工程(C11)(以下、「工程(C11)」という)と、前記化合物P13を酸化させて、リン酸エステルを合成する工程(D11)(以下、「工程(D11)」という)とを有する。
上述した態様の製造方法とは異なり、本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法においては、第1~第3ヒドロキシ化合物のうち少なくとも1つは水であるため、該リン酸エステルの製造方法は、具体的には、リン酸モノエステル、又はリン酸ジエステルの製造方法である。
【0163】
【化17】
[R
11~R
13は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
11~R
13のうち、少なくとも1つは有機基であり、少なくとも1つは水素原子である。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0164】
該リン酸エステルの製造方法が、リン酸モノエステルの製造方法である場合の、反応式の一例を以下に示す。以下の反応式において、第2ヒドロキシ化合物が水である場合の一般式(P1-2)で表される化合物P12を、化合物P12-1と表記し、第3ヒドロキシ化合物も水である場合の一般式(P1-3)で表される化合物P13を、化合物P13-1と表記する。
【0165】
【0166】
該リン酸エステルの製造方法が、リン酸ジエステルの製造方法である場合の、反応式の一例を以下に示す。以下の反応式において、第3ヒドロキシ化合物のみが水である場合の一般式(P1-3)で表される化合物P13を、化合物P13-2と表記する。
【0167】
【0168】
本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法における第1ヒドロキシ化合物、第2ヒドロキシ化合物、及び第3ヒドロキシ化合物は、上述したR1OH、R2OH及びR3OHで例示したヒドロキシ化合物と同様のものと、水とが挙げられる。
【0169】
工程(A11)及び(B11)における反応温度は、-80℃以上であり、工程(A11)及び(B11)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である。
また、該反応温度及び流速の好ましい範囲は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び工程(B1)で記載した範囲とそれぞれ同じである。
また、工程(D11)も、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(D1)で記載した内容と同じである。
【0170】
工程(A11)及び(B11)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0171】
工程(A11)及び(B11)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0172】
以上説明した本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法は、流通系反応装置を用い、上述した工程(A11)及び(B11)における反応温度を-80℃以上とし、かつ、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速を0.01mL/min以上とすることを特徴とする、リン酸モノエステル又はリン酸ジエステルの製造方法である。反応温度及び流速を適切に制御することにより、撹拌効率が向上し、副反応を抑制することができる。
したがって、本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法によれば、より安価で、収率高く目的のリン酸モノエステル又はリン酸ジエステルを製造することができる。
【0173】
本発明の第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法についても、好ましい流速と流通系反応装置の混合機の内径との関係は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と同様である。
すなわち、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましい。
【0174】
(本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法)
本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用いて、有機リン化合物を合成する有機リン化合物の製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リン及び下記一般式(H0-1)で表される第1ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-1)で表される化合物P01を合成する工程(A01)と、前記化合物P01及び下記一般式(H0-2)で表される第2ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-2)で表される化合物P02を合成する工程(B01)と、前記化合物P02及び第3ヒドロキシ化合物を反応させて、下記一般式(P0-3)で表される化合物P03を合成する工程(C01)とを有し、前記工程(A01)及び(B01)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(A01)及び(B01)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1ヒドロキシ化合物、及び前記第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である、有機リン化合物の製造方法である。
【0175】
【化20】
[R
01~R
03は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基である。但し、R
01~R
03のうち、少なくとも1つは有機基であり、R
01~R
03の全てが有機基の場合、前記有機基が全て同じになることはない。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0176】
本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、より具体的には、本発明の第1の態様に係る非対称型リン酸トリエステルの製造方法、第2の態様に係る対称型リン酸トリエステルの製造方法、及び第3の態様に係るリン酸エステルの製造方法における中間体の製造方法である。すなわち、上記化合物P03は、上述した化合物P3、化合物P4及び化合物P13を全て含む化合物である。
該有機リン化合物としては、互変異性体も含まれる。
例えば、上述した化合物P13の互変異性体として、上述した化合物P13-1及び化合物P13-2の互変異性体が挙げられ、具体的には、下記化合物P13-1-1及び化合物P13-2-1が挙げられる。
【0177】
【0178】
本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法における第1ヒドロキシ化合物、第2ヒドロキシ化合物、及び第3ヒドロキシ化合物として、具体的には、上述したR1OH、R2OH及びR3OHで例示したヒドロキシ化合物とそれぞれ同様のものと、水とが挙げられる。
【0179】
工程(A01)及び(B01)における反応温度は、-80℃以上であり、工程(A01)及び(B01)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速は、0.01mL/min以上である。
また、該反応温度及び流速の好ましい範囲は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び工程(B1)で記載した範囲とそれぞれ同じである。
【0180】
工程(A01)及び(B01)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0181】
工程(A01)及び(B01)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0182】
以上説明した本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用い、上述した工程(A01)及び(B01)における反応温度を-80℃以上とし、かつ、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1ヒドロキシ化合物、及び第2ヒドロキシ化合物の流速を0.01mL/min以上とすることを特徴とする、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、又はリン酸トリエステルを製造するのに用いる有機リン化合物(中間体)の製造方法である。反応温度及び流速を適切に制御することにより、撹拌効率が向上し、副反応を抑制することができる。
したがって、本発明の第4の態様に係る有機リン化合物によれば、より安価で、収率高く目的のリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、又はリン酸トリエステルを製造するのに用いる有機リン化合物(中間体)を製造することができる。
【0183】
本発明の第4の態様に係る有機リン化合物の製造方法についても、好ましい流速と流通系反応装置の混合機の内径との関係は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と同様である。
すなわち、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましい。
【0184】
(本発明の第5の態様に係る有機リン化合物の製造方法)
本発明の第5の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用いて、有機リン化合物を合成する有機リン化合物の製造方法であって、三塩化リン又は三臭化リンと、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第1化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-1)で表される化合物PZ1を合成する工程(AZ1)と、前記化合物PZ1と、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第2化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-2)で表される化合物PZ2を合成する工程(BZ1)と、前記化合物PX2と、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物のいずれかである第3化合物とを反応させて、下記一般式(PZ-3)で表される化合物PZ3を合成する工程(CZ1)とを有し、前記工程(AZ1)及び(BZ1)における反応温度は、-80℃以上であり、前記工程(AZ1)及び(BZ1)において、流路内を流れる前記三塩化リン又は三臭化リン、前記第1化合物、及び前記第2化合物の流速は、0.01mL/min以上である、有機リン化合物の製造方法である。
【0185】
【化22】
[式中、Z
1~Z
3は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシ化合物から水素原子を1つ除いた基、アミン化合物から水素原子を1つ除いた基、又はチオール化合物から水素原子を1つ除いた基である。但し、Z
1~Z
3は、全て同じになることはない。Xは、臭素原子又は塩素原子である。]
【0186】
工程(AZ1)及び(BZ1)における反応温度は、-80℃以上であり、工程(AZ1)及び(BZ1)において、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1化合物、及び第2化合物の流速は、0.01mL/min以上である。
また、該反応温度及び流速の好ましい範囲は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法における工程(A1)及び工程(B1)で記載した範囲とそれぞれ同じである。
【0187】
工程(AZ1)及び(BZ1)における反応は、溶剤の存在下で行ってもよい。該溶剤は特に限定されないが、化合物の反応を妨げないものが好ましく、反応で用いる原料の溶解性が高いものが好ましい。例えば、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O)、1,4-ジオキサン、アセトニトリル(MeCN)、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0188】
工程(AZ1)及び(BZ1)における反応は、非求核性塩基の存在下で行ってもよい。該非求核性塩基は、反応の過程で生じるHClを捕捉できるものであれば、特に限定されない。例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、トリエチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、2,6-ルチジン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-ベンジルジメチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。
【0189】
<第1~第3化合物>
第1~第3化合物は、それぞれ異なる、ヒドロキシ化合物、アミン化合物、又はチオール化合物ある。
【0190】
<ヒドロキシ化合物>
第1~第3化合物におけるヒドロキシ化合物としては、上述したR1OH、R2OH及びR3OHで例示したヒドロキシ化合物とそれぞれ同様のものと、水とが挙げられる。
【0191】
<アミン化合物>
第1~第3化合物におけるアミン化合物としては、脂肪族アミン、混成アミン、芳香族アミン、複素環アミン、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、アミド誘導体、イミド誘導体等が挙げられる。
【0192】
脂肪族アミンとしては、脂肪族第1級アミン、脂肪族第2級アミンが挙げられる。
脂肪族第1級アミンとして、具体的には、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、tert-アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0193】
脂肪族第2級アミンとして、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルテトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
【0194】
混成アミンとして、具体的には、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が挙げられる。
【0195】
芳香族アミン及び複素環アミンとして、具体的には、アニリン誘導体(例えば、アニリン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-プロピルアニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2-ニトロアニリン、3-ニトロアニリン、4-ニトロアニリン、2,4-ジニトロアニリン、2,6-ジニトロアニリン、3,5-ジニトロアニリン)、ジフェニル(p-トリル)アミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えば、ピロール、1-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、2,5-ジメチルピロール等)、イミダゾール誘導体(例えば、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、ピロリン誘導体(例えば、2-ピロリン、3-ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えば、2-メチル-ピロリジン)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H-インダゾール誘導体、インドリン誘導体、プリン誘導体、カルバゾール誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が挙げられる。
【0196】
カルボキシ基を有する含窒素化合物として、具体的には、アミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えばニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3-アミノピラジン-2-カルボン酸、メトキシアラニン)等が挙げられる。
【0197】
水酸基を有する含窒素化合物として、具体的には、アミノクレゾール、3-インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2,2’-イミノジエタノール、2-アミノエタノ-ル、3-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール等が挙げられる。
【0198】
アミド誘導体として、具体的には、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等が挙げられる。
イミド誘導体として、具体的には、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が挙げられる。
【0199】
<チオール化合物>
第1~第3化合物におけるチオール化合物としては、脂肪族チオール化合物、芳香族チオール化合物、脂肪族ポリチオール化合物、メルカプトカルボン酸エステル化合物、メルカプトカルボン酸、メルカプトエーテル等が挙げられる。
【0200】
脂肪族チオール化合物として、具体的には、メチルチオール、エチルチオール、1-プロピルチオール(n-プロピルメルカプタン)、イソプロピルチオール、1-ブチルチオール(n-ブチルメルカプタン)、イソブチルチオール、tert-ブチルチオール、1-ペンチルチオール、イソペンチルチオール、2-ペンチルチオール、3-ペンチルチオール、1-ヘキシルチオール、シクロヘキシルチオール、4-メチル-2-ペンチルチオール、1-ヘプチルチオール(n-ヘプチルメルカプタン)、2-へプチルチオール、1-オクチルチオール(n-オクチルメルカプタン)、イソオクチルチオール、2-エチルヘキシルチオール、2,4,4-トリメチル-2-ペンチルチオール(tert-オクチルメルカプタン)、1-ノニルチオール(n-ノニルメルカプタン)、tert-ノニルチオール(tert-ノニルメルカプタン)、イソノニルチオール、1-デシルチオール、1-ウンデシルチオール、1-ドデシルチオール、tert-ドデシルチオール(tert-ドデシルメルカプタン)、トリデシルチオール、テトラデシルチオール、1-ペンチルデシルチオール、1-ヘキシルデシルチオール、1-ヘプチルデシルチオール、1-オクチルデシルチオール、ノナデシルチオール、エイコサンチオール、トリアコンタンチオール、テトラコンタンチオール、ペンタコンタンチオール、ヘキサコンタンチオール、ヘプタコンタンチオール、オクタコンタンチオール、ノナコンタンチオール、ヘクタンチオール、1-ミリスチルチオール、セチルチオール、1-ステアリルチオール、イソステアリルチオール、2-オクチルデシルチオール、2-オクチルドデシルチオール、2-ヘキシルデシルチオール、ベヘニルチオール等が挙げられる。
【0201】
芳香族チオール化合物として、具体的には、ベンゼンチオール、フェニルメタンチオール、キシレンチオール、1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2-ビス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3-ビス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4-トリス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,4,5-テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(2-メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(2-メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2’-ジメルカプトビフェニル、4,4’-チオビス-ベンゼンチオール、4,4’-ジメルカプトビフェニル、4,4’-ジメルカプトビベンジル、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,4-ナフタレンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオール、2,7-ナフタレンジチオール、2,4-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、4,5-ジメチルベンゼン-1,3-ジチオール、9,10-アントラセンジメタンチオール、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオメチル)ベンゼン、1,3-ビス(2-メルカプトエチルチオメチル)ベンゼン、1,4-ビス(2-メルカプトエチルチオメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4-テトラキス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5-テトラキス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5-テトラキス(2-メルカプトエチルチオ)ベンゼン、ベンジルチオール、m-トルエンチオール、p-トルエンチオール、2-ナフタレンチオール、2-ピリジルチオール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0202】
脂肪族ポリチオール化合物としては、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,7-ヘプタンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、1,10-デカンジチオール、1,12-ドデカンジチオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジチオール、3-メチル-1,5-ペンタンジチオール、2-メチル-1,8-オクタンジチオール、1,4-シクロヘキサンジチオール、1,4-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,1-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ-exo-cis-2,3-ジチオール、1,1-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)等のジチオール化合物;1,1,1-トリス(メルカプトメチル)エタン、2-エチル-2-メルカプトメチル-1,3-プロパンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス((メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル)イソシアヌレート等のトリチオール化合物;ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブタネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ-3-メルカプトプロピオネート等のSH基を4個以上有するチオール化合物等が挙げられる。
【0203】
メルカプトカルボン酸エステル化合物として、メルカプト酢酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸4-メトキシブチル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸n-オクチル、3-メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0204】
その他のチオール化合物として、メルカプト酢酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプト酪酸、メルカプトヘキサン酸、メルカプトオクタン酸、メルカプトステアリン酸、チオグリコール酸等のメルカプトカルボン酸;ジ(メルカプトエチル)エーテル等のメルカプトエーテル;2-メルカプトエタノール、4-メルカプト-1-ブタノール等のメルカプトアルコール化合物;(γ-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン及び(γ-メルカプトプロピル)トリエトキシシラン等のシラン含有チオール化合物等が挙げられる。
【0205】
上記式(PZ-1)~(PZ-3)中、Z1~Z3は、それぞれ独立に、水素原子、上述したヒドロキシ化合物から水素原子を1つ除いた基、上述したアミン化合物から水素原子を1つ除いた基、又は上述したチオール化合物から水素原子を1つ除いた基である。但し、Z1~Z3は、全て同じになることはない。
【0206】
以上説明した本発明の第5の態様に係る有機リン化合物の製造方法は、流通系反応装置を用い、上述した工程(AZ1)及び(BZ1)における反応温度を-80℃以上とし、かつ、流路内を流れる三塩化リン又は三臭化リン、第1化合物、及び第2化合物の流速を0.01mL/min以上とすることを特徴とする、有機リン化合物の製造方法である。反応温度及び流速を適切に制御することにより、撹拌効率が向上し、副反応を抑制することができる。
したがって、本発明の第5の態様に係る有機リン化合物によれば、より安価で、収率高く目的の有機リン化合物を製造することができる。
【0207】
本発明の第5の態様に係る有機リン化合物の製造方法についても、好ましい流速と流通系反応装置の混合機の内径との関係は、上述した第1の実施形態の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と同様である。
すなわち、流通系反応装置の混合機の内径をIDとした場合、各化合物の流速は、上述した好ましい流速に(ID/0.25)2を掛けた値が好ましい。
【実施例】
【0208】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0209】
〔対称型リン酸トリエステルの合成1〕
(実施例1~8、比較例1)
実施例1~8の対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図を
図3に示す。
〔原料〕
R
1OHとしては、2-ヒドロキシインダンを用いた。R
2OHとしては、エタノールを用いた。
【0210】
≪実施例1~8≫
流通系反応装置としては、PTFE製チューブ(内径0.80mm,外径1.59mm)と表1に記載されたT字型又はV字型混合機(いずれも内径0.25mm)とで構成された流通系反応装置を用いた。
【0211】
反応前の溶液は3つに分けて調製した。
第1の溶液は、2-ヒドロキシインダンとDIEAとジクロロメタン(DCM)とを混合して、調製した。
第2の溶液は、三塩化リンとジクロロメタン(DCM)とを混合して、調製した。
第3の溶液は、エタノールとジクロロメタン(DCM)とを混合して、調製した。
それぞれの当量の比は、2-ヒドロキシインダン1.0に対して、DIEAが3.0、三塩化リンが1.0、エタノールが10とした。
【0212】
対称型リン酸トリエステルを合成するために、まず、第1の溶液と第2の溶液とを表1に記載されたT字型又はV字型混合機にて混合し、表1に示す反応温度で10秒間反応させることで、化合物3aを得た。次いで、すぐさま化合物3aを含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、表1に示す反応温度で5秒間反応させることで、化合物4aを得た。また、続けて化合物4aを室温(25℃)で10分間撹拌しながら、化合物4aを貯留した。次いで、室温(25℃)で化合物4aとメタクロロ過安息香酸(mCPBA)とを1時間反応させ、化合物4aを酸化することで、主生成物5aを得た。また、副反応により副生成物5bも得られた。
各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。第1の溶液と第3の溶液の流速はそれぞれ表1に示す通りであり、第2の溶液の流速は、表1に示す流速×0.6とした。
【0213】
≪比較例1≫
上記と同様の手順で、第1の溶液、第2の溶液、第3の溶液、及びmCPBAをそれぞれマグネットスターラーで撹拌した試験管に滴下し、バッチ式で主生成物5aと、副生成物5bを得た。
【0214】
実施例1~8、比較例1の製造方法により、対称型リン酸トリエステルを合成するための各反応を以下に示す。
【0215】
【0216】
〔分析法〕
NMR測定により、主生成物5a及び副生成物5bの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータを以下に示し、主生成物5a及び副生成物5bの収率を表1に示す。
【0217】
主生成物5a:
Colorless oil;IR(neat):2980,1653,1541,1457,1260,1165,1026,799,744
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24-7.17(m,4H),5.25-5.22(m,1H),4.13-4.06(m,4H),3.29(dd,J=6.1,16.6Hz,2H),3.17(dd,J=3.6,16.6Hz、2H),1.33(td,J=0.6,7.0Hz,6H)
【0218】
副生成物5b:
Colorless oil;IR(neat):2957,1653,1541,1458,1260,1008,740,669
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.23-7.16(m,8H),5.24-5.20(m,2H),4.11-4.04(m,2H),3.26(dd,J=6.1,16.7Hz,4H),3.15(dd,J=3.6,16.7Hz,4H),1.31(t,J=7.1Hz,3H)
【0219】
【0220】
表1に示す通り、実施例の製造方法で対称型リン酸トリエステルを製造した場合、比較例の製造方法に比べて、主生成物5aの収率が高かった。
【0221】
〔対称型リン酸トリエステルの合成2〕
(実施例9~14)
実施例9~14の対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図を
図4に示す。
〔原料〕
R
1OHとしては、1-ブタノール(実施例9)、2-ブタノール(実施例10)、tert-ブタノール(実施例11)、アリルアルコール(実施例12)、2-[[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ]エタノール(実施例13)、ヒドロキシ酢酸tert-ブチル(実施例14)を用いた。
R
2OHとしては、2-ヒドロキシインダンを用いた(実施例9~14)。
【0222】
流通系反応装置としては、PTFE製チューブ(内径0.80mm,外径1.59mm)とT字型混合機及びV字型混合機(いずれも内径0.25mm)とで構成された流通系反応装置を用いた。
【0223】
反応前の溶液は3つに分けて調製した。
第1の溶液は、上述したR1OHのいずれか一種とDIEAとDCMとを混合して、調製した。
第2の溶液は、三塩化リンとDCMとを混合して、調製した。
第3の溶液は、2-ヒドロキシインダンとDCMとを混合して、調製した。
それぞれの当量の比は、R1OH1.0に対して、DIEAが3.0、三塩化リンが1.0、2-ヒドロキシインダンが2.5とした。
【0224】
対称型リン酸トリエステルを合成するために、まず、第1の溶液と第2の溶液とをV字型混合機にて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物3を得た。次いで、すぐさま化合物3を含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で5秒間反応させることで、化合物4を得た。また、続けて化合物4を室温(25℃)で10分間撹拌しながら、化合物4を貯留した。次いで、室温(25℃)で化合物4とmCPBAとを10分間反応させ、化合物4を酸化することで、主生成物5c~5hをそれぞれ得た。
各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。第1の溶液と第3の溶液の流速はそれぞれ2.0mL/minとし、第2の溶液の流速は1.2mL/minとした。
【0225】
NMR測定により、主生成物5c~5hの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータと、主生成物5c~5hの構造及び収率を以下に示す。
実施例9~14の対称型リン酸トリエステルの製造方法と、得られる主生成物との関係は以下の通りである。
実施例9:主生成物5c、実施例10:主生成物5d、実施例11:主生成物5e、実施例12:主生成物5f、実施例13:主生成物5g、実施例14:主生成物5h。
【0226】
【0227】
5c:n-Butylbis(indan-2-yl)phosphate
Purification method:columnchromatography(Hexane:Ethylacetate=3:2)
Colorless oil;IR(neat):2956,1460,1273,1004,740
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.27-7.17(m,8H),5.24-5.20(m,2H),4,03-3.98(m,2H),3.29-3.23(m,4H),3.15(dd,J=3.2,16.9Hz,4H),1.66-1.62(m,2H),1.42-1.36(m,2H),0.91(t,J=7.3Hz,3H)
【0228】
5d:s-Butylbis(indan-2-yl)phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:Ethylacetate=3:2)
Colorless oil;IR(neat):2968,1460,1261,994,740
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.18-7.09(m,8H),5.15-5.13(m,2H),4.39-4.33(m,1H),3.21-3.15(m,4H),3.10-3.06(m,4H),1.63-1.49(m,2H),1.22(d,J=6.4Hz,3H),0.85(t,J=7.2Hz,3H)
【0229】
5e:t-Butyl bis(indan-2-yl) phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:Ethylacetate=3:2)
Colorless oil;IR(neat):2977,1460,1276,994,739
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.26-7.16(m,8H),5.20-5.17(m,2H),3.28-3.13(m,8H),1.48(s,9H)
【0230】
5f:Bis(indan-2-yl) 2-propen-1-yl phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:Ethylacetate=3:2)and Gel Permeation Chromatography
Colorless oil;IR(neat):2954,1459,1277,988,930,739
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.23-7.15(m,8H),5.97-5.87(m,1H),5.37-5.32(m,1H),5.27-5.20(m,3H),4.52-4.48(m,2H),3.28-3.21(m,4H),3.15(dd,J=4.1,16.5Hz)
【0231】
5g:3-[[tert-Butyl(dimethyl)silyl]oxy]propan-1-yl bis(indan-2-yl) phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:Diethylether=1:4)
Colorless oil;IR(neat):2954,1467,1259,1011,837,741
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.23-7.16(m,8H),5.25-5.19(m,2H),4.11(q,J=6,5Hz),3.69(t,J=6.0Hz),3.26(dd,J=6.1,16.7Hz),3.15(dd,J=3.6,16.7Hz),1.85(q,J=6.1Hz),0.88(s,9H),0.03(s,6H)
【0232】
5h:tert-Butyl glycolatyl bis(indan-2-yl) phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:Diethylether=1:4)
Colorless oil;IR(neat):2927,1755,1460,1367,1278,1163,1106,1005,741
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.23-7.16(m,8H),5.33-5.27(m,2H),4.43(d,J=10.3Hz,2H),3.27(dd,J=6.0,16.8Hz,2H),3.20-3.15(m,4H),1.48(s,9H)
【0233】
上記の通り、実施例の製造方法で、対称型リン酸トリエステルを製造した場合、主生成物5c~5hを高収率で得ることができた。
【0234】
〔非対称型リン酸トリエステルの合成1〕
(実施例15~25、比較例2)
実施例15~25の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図を
図5に示す。
図5には、一例として、塩基としてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いたものを示している。また、化合物中の「base」は、求核性塩基(nucleophilic base)から水素原子を一つ除いた基を示す。
〔原料〕
実施例15~25のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)、R
3OHとしては、エタノールを用いた。
塩基(非求核性塩基)としては、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr
2NEt)、2,6-ルチジン(lutidine)、N-メチルモルホリン(NMM)、N-エチルモルホリン(N-ethylmorpholine)、N-ベンジルジメチルアミン(Me
2NBn)、又はトリブチルアミン(n-Bu
3N)を用いた。
求核性塩基としては、ピリジン(pyridine)、イミダゾール(imidazole)、N-メチルイミダゾール(NMI)、4-メチルイミダゾール(4-methylimidazole)、又は4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いた。
【0235】
≪実施例15~25≫
流通系反応装置としては、PTFE製チューブ(内径0.80mm,外径1.59mm)とT字型混合機及びV字型混合機(いずれも内径0.25mm)とで構成された流通系反応装置を用いた。
【0236】
反応前の溶液は4つに分けて調製した。
第1の溶液は、2-ヒドロキシインダンと表2に示す塩基とジクロロメタンとを混合して、調製した。
第2の溶液は、三塩化リンとDCMとを混合して、調製した。
第3の溶液は、表2に示す求核性塩基とDCMとを混合して、調製した。
第4の溶液は、2-フェニルエタノールとDCMとを混合して、調製した。
それぞれの当量の比は、2-ヒドロキシインダン1.0に対して、塩基が3.0、三塩化リン1.0(実施例23~28は0.5)、求核性塩基が2.0、2-フェニルエタノールが1.0、エタノールが10とした。
表2中の濃度Y[M]は、三塩化リンのモル濃度である。
【0237】
非対称型リン酸トリエステルを合成するために、まず、第1の溶液と第2の溶液とをV字型混合機にて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物3aを得た。次いで、すぐさま化合物3aを含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物6aを得た。次いで、すぐさま化合物6aを含む反応溶液と第4の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で5秒間反応させることで、化合物7aを得た。次いで、化合物7aを含む反応溶液をエタノールが貯留されているビーカーに流入させ、室温(25℃)で10分間反応させることにより、化合物7abを得た。次いで、室温(25℃)で10分間、化合物7abとmCPBAとを反応させ、化合物7abを酸化することで、主生成物8aが得られた。また、副反応により副生成物8b及び8cが得られた。
各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。第1の溶液と第4の溶液の流速はそれぞれ2.0mL/minとし、第2の溶液と第3の溶液の流速は1.2mL/minとした。
【0238】
≪比較例2≫
上記と同様の手順で、第1の溶液、第2の溶液、第3の溶液、第4の溶液、エタノール及びmCPBAをそれぞれマグネットスターラーで撹拌した試験管に滴下し、バッチ式で主生成物8aと、副生成物8b及び8cとを得た。
【0239】
実施例15~25、比較例2の製造方法により、対称型リン酸トリエステルを合成するための各反応を以下に示す。
【0240】
【0241】
〔分析法〕
NMR測定により、主生成物8a、副生成物8b及び8cの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータを以下に示し、主生成物8a、副生成物8b及び8cの収率を表2及び3に示す。
【0242】
主生成物8a:
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31-7.16(m,9H),5.16-5.11(m,1H),4.22(q,J=7.0Hz,2H),4.01(t,7.3Hz,2H),3.25-3.06(m,4H),2.98(t,J=7.0Hz,2H),1.27(t,J=7.1Hz,3H)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.17
【0243】
副生成物8b:
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31-7.15(m,13H),5.15-5.11(m,2H),4.20(q,J=6.9Hz,2H),3.22-3.04(m,8H),2.98-2.91(m,2H)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.88
【0244】
副生成物8c:
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.30-7.15(m,14H),5.08-5.03(m,1H),4.17-4.10(m,4H),3.18-3.01(m,4H),2.92(t,J=7.1Hz,4H)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.37
【0245】
【0246】
【0247】
表2及び3に示す通り、実施例の製造方法で非対称型リン酸トリエステルを製造した場合、比較例の製造方法に比べて、主生成物8aの収率が高かった。
【0248】
〔非対称型リン酸トリエステルの合成2〕
(実施例26~33)
実施例26~33の非対称型リン酸トリエステルの製造方法の模式図を
図6に示す。
〔原料〕
実施例26のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、エタノール、R
3OHとしては、フェノールを用いた。
実施例27のR
1OHとしては、1-ブタノール、R
2OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
3OHとしては、フェノールを用いた。
実施例28のR
1OHとしては、2-ブタノール、R
2OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
3OHとしては、フェノールを用いた。
実施例29のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、アリルアルコール、R
3OHとしては、2-メトキシ-エタン-1-オールを用いた。
実施例30のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、プロパルギルアルコール、R
3OHとしては、2-メトキシ-エタン-1-オールを用いた。
実施例31のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、tert-ブチル(2-ヒドロキシエチル)カーバメート、R
3OHとしては、エタノールを用いた。
実施例32のR
1OHとしては、2-ヒドロキシインダン、R
2OHとしては、メチル[[(9H-フルオレニル)メトキシ]カルボニル]セリネート、R
3OHとしては、エタノールを用いた。
実施例33のR
1OHとしては、3―ベンゾイル―1―[4―ヒドロキシ―5―(tert-ブチルジメチルシリルオキシメチル)テトラヒドロフラン―2―イル)―5―メチルピリミジン―2,4(1H,3H)―ジオン、R
2OHとしては、5―(3―ベンゾイル―5―メチル―2,4―ジオキソ―3,4―ジヒドロピリミジン―1(2H)―イル)―2―(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン―3―イルベンゾエート、R
3OHとしては、2-シアノエタノールを用いた。
【0249】
流通系反応装置としては、PTFE製チューブ(内径0.80mm,外径1.59mm)とV字型及びT字型混合機(いずれも内径0.25mm)とで構成された流通系反応装置を用いた。
【0250】
反応前の溶液は4つに分けて調製した。
第1の溶液は、上述したR1OHのいずれか一種とDIEAとDCMとを混合して、調製した。
第2の溶液は、三塩化リンとDCMとを混合して、調製した。
第3の溶液は、イミダゾールとDCMとを混合して、調製した。
第4の溶液は、上述したR2OHのいずれか一種とDCMとを混合して、調製した。
それぞれの当量の比は、R1OH1.0に対して、DIEAが3.0、三塩化リンが1.0、R2OHが1.0、イミダゾールが2.0、R3OHが4.0、後述するmCPBAが1.4とした。
【0251】
非対称型リン酸トリエステルを合成するために、まず、第1の溶液と第2の溶液とをV字型混合機にて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物1xを得た。次いで、すぐさま化合物1xを含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物2xを得た。次いで、すぐさま化合物2xを含む反応溶液と第4の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で30秒間反応させることで、化合物3xを得た。次いで、化合物3xを含む反応溶液をR3OHが貯留されているビーカーに流入させ、室温(25℃)で10分間反応させることにより、化合物4xを得た。次いで、室温(25℃)で10分間、化合物4xとmCPBAとを反応させ、化合物4xを酸化することで、主生成物1y~8yをそれぞれ得た。
各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。第2の溶液と第4の溶液の流速はそれぞれ2.0mL/minとし、第1の溶液と第3の溶液の流速は1.2mL/minとした。
【0252】
実施例26~33の製造方法により、非対称型リン酸トリエステルを合成するための各反応を以下に示す。
【0253】
【0254】
NMR測定により、主生成物1y~8yの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータと、主生成物1y~8yの構造及び収率を以下に示す。
実施例26~33の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と、得られる主生成物との関係は以下の通りである。
実施例26:主生成物1y、実施例27:主生成物2y、実施例28:主生成物3y、実施例29:主生成物4y、実施例30:主生成物5y、実施例31:主生成物6y、実施例32:主生成物7y、実施例33:主生成物8y。
【0255】
【0256】
1y:Ethyl indan-2-yl phenyl phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:EtOAc=2:1)
Colorless oil;IR(neat):2981,1592,1490,1279,1210,1164,1009,942,742,689
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.34-7.15(m,9H),5.38-5.32(m,1H),4.24-4.15(m,2H),3.34-3.09(m,4H),1.33(dt,J=1.1,7.1Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=150.84,150.78,139.83,139.80,129.8,127.0,125.1,124.77,124.75,120.21,120.17,80.15,80.11,64.81,64.76,40.91,40.87,40.79, 40.75,16.2(d,J=6.8Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-6.97
【0257】
2y:n-Butyl indan-2-yl phenyl phosphate
Purification method:column chromatography (Hexane:EtOAc=2:1)
Colorless oil;IR(neat):2960,1592,1490,1281,1211,1009,943,742,689
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.34-7.15(m,9H),5.36-5.33(m,1H),4.15-4.09(m,2H),3.34-3.09(m,4H),1.67-1.61(m,2H),1.40-1.35(m,2H),0.90(t,J=7.9Hz,3H)
13C NMR(100MHz,CDCl3):δ=150.9(d,J=7.1Hz),139.8(d,J=2.9Hz),129.8,127.0,125.1,124.8(d,J=1.8Hz),120.2(d,J=5.0Hz),80.1(d,J=6.0Hz),68.4(d,J=6.5Hz),40.9(dd,J=7.4,18.1Hz),32.3(d,J=6.9Hz),18.7,13.6
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-6.82
【0258】
3y:s-Butyl indan-2-yl phenyl phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:EtOAc=2:1)
Colorless oil;IR(neat):2973,1592,1490,1278,1211,997,940,741,689
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.33-7.13(m,9H),5.35-5.32(m,1H),4.59-4.50(m,1H),3.29-3.09(m,4H),1.70-1.58(m,2H),1.34(d,J=6.2Hz,3H),1.27(d,J=6.2Hz,3H),0.93(t,J=7.5Hz,3H),0.88(t,J=7.5Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=151.0(dd,J=3.3,10.5Hz),139.9(m),129.7,127.0,125.0,124.7(d,J=2.9Hz),120.2(t,J=4.8Hz),79.9(dd,J=2.5,6.2Hz),78.6(d,J=6.6Hz),40.9(d,J=5.4Hz),40.7(dd,J=2.4,8.1Hz),30.4(dd,J=6.2,10.6Hz),21.1(dd,J=3.5,16.5Hz),9.5(d,J=15.9Hz),0.1
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-7.52,-7.63
【0259】
4y:Indan-2-yl 2-methoxyethan-1-yl 2-propen-1-yl phosphate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=2:3)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24-7.17(m,4H),5.98-5.89(m,1H),5.36(ddd,J=1.4,3.0,17.2Hz,1H),5.30-5.23(m,2H),4.53(t,J=6.4Hz,2H),4.20-4.12(m,2H),3.62-3.58(t,J=4.8Hz,2H),3.38(s,3H),3.31-3.14(m,4H)
【0260】
5y:Indan-2-yl 2-methoxyethan-1-yl 2-propyn-1-yl phosphate
Purification method:column chromatography(Hexane:EtOAc=2:3)
Colorless oil;IR(neat):3217,2924,1457,1275,1033,843,747
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24-7.17(m,4H),5.33-5.26(m,1H),4.67(dd,J=2.3,10.1Hz,2H),4.21-4.17(m,2H),3.60(t,J=4.6Hz,2H),3.38(s,3H),3.30(dd,J=6.0,16.9Hz,2H),3.21(dd,J=3.4,16.7Hz,2H),2.55(t,J=2.3Hz,1H)
【0261】
6y:2-(N-(tert-Butoxycarbonyl)-amino)-ethan-1-yl ethyl indan-1-yl phosphate
Purification method: column chromatography(Hexane:EtOAc=2:3)
Colorless oil;IR(neat):3310,2976,1714,1508,1457,1268,1171,1027,741
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.25-7.18(m,4H),5.27-5.23(m,1H),5.02(s,1H),4.15-4.04(m,4H),3.39,(d,J=5.0Hz,2H),3.29(dd,J=16.5,6.0Hz,2H),3.17(dd,J=16.7,3.4Hz,2H),1.44(s,9H),1.34(t,J=6.4Hz,3H)
【0262】
7y:Ethyl 2-(N-(9-fluorenylmethyloxycarbonyl)-amino)-3-methoxycarbonylethan-1-yl indan-1-yl phosphate
Purification method:column chromatography (Hexane:EtOAc=2:3)
Colorless oil;IR(neat):3279,2953,1723,1541,1449,1261,1213,1026,741
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.77-7.73(m,2H),7.62-7.57(m,2H),7.41-7.16(m,8H),5.96-5.93(m,1H),5.27-5.21(m,1H),4.60-4.58(m,1H),4.49-4.40(m,2H),4.36-4.28(m,2H),4.26-4.18(m,1H),4.13-4.02(m,2H),3.82-3.69(m,3H),3.31-3.23(m,2H),3.21-3.13(m,2H),1.36-1.26(m,3H)
【0263】
8y:N3-Bz-5’-O-TBS-thymidine-3’-yl 2-cyanoethan-1-yl N3-Bz-3’-O-Bz-thymidine-5’-yl phosphate
Purification method: column chromatography(Hexane:EtOAc=1:4)
Colorless oil;IR(neat):2954,1749,1703,1662,1448,1270,1101,1011,835,762
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ=7.99(d,J=8.0Hz,2H),7.95-7.92(m,4H),7.66-7.57(m,3H),7.52-7.42(m,8H),6.42(dd,J=5.6,8.0Hz,1H),6.38(dd,J=4.0,9.2Hz,1H),5.53(brd,J=6.9Hz,1H),5.11(brt,J=5.5Hz,1H),4.52-4.40(m,2H),4.37(brs,1H),4.32(brs,1H),4.31(t,J=6.0Hz,3H),3.95(brs,2H),2.79(t,J=6.0Hz,2H),2.69-2.60(m,2H),2.46-2.38(m,1H),2.30-2.22(m,1H),2.00(s,3H),1.97(s,3H),0.95(s,9H),0.16(s,3H),0.15(s,3H)
【0264】
上記の通り、実施例の製造方法で、非対称型リン酸トリエステルを製造した場合、主生成物1y~8yを高収率で得ることができた。
【0265】
〔有機リン化合物の合成1〕
(実施例34)
〔原料〕
R1OHとしては、2-ヒドロキシインダンを用いた。R2OHとしては、2-ブタノールを用いた。R3OHとしては、飽和食塩水を用いた。
【0266】
流通系反応装置としては、PTFE製チューブ(内径0.80mm,外径1.59mm)とT字型混合機及びV字型混合機(いずれも内径0.25mm)で構成された流通系反応装置を用いた。
【0267】
反応前の溶液は4つに分けて調製した。
第1の溶液は、2-ヒドロキシインダンとDIEAとDCMとを混合して、調製した。
第2の溶液は、三塩化リンとDCMとを混合して、調製した。
第3の溶液は、イミダゾールとDCMとを混合して、調製した。
第4の溶液は、2-ブタノールとDCMとを混合して、調製した。
それぞれの当量の比は、2-ヒドロキシインダン1.0に対して、DIEAが3.0、三塩化リン1.0、イミダゾールが2.0、2-ブタノールが1.0とした。
【0268】
有機リン化合物を合成するために、まず、第1の溶液と第2の溶液とをV字型混合機にて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物1pを得た。次いで、すぐさま化合物1pを含む反応溶液と第3の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で10秒間反応させることで、化合物2pを得た。次いで、すぐさま化合物2pを含む反応溶液と第4の溶液とを新たなT字型混合機を用いて混合し、20℃で30秒間反応させることで、化合物3pを得た。次いで、化合物3pを含む反応溶液を、飽和食塩水1mLが貯留されているビーカーに流入させ、室温(25℃)で10分間反応させることにより、有機リン化合物4pを得た。
各種溶液はシリンジポンプを用いて流出した。第1の溶液と第4の溶液の流速はそれぞれ2.0mL/minとし、第2の溶液と第3の溶液の流速は1.2mL/minとした。
【0269】
実施例34の製造方法により、有機リン化合物を合成するための各反応を以下に示す。
また、NMR測定により有機リン化合物4pの同定を行った。
有機リン化合物4pの構造及び収率と、NMRスペクトルデータについても以下に示す。
【0270】
【0271】
有機リン化合物4p:
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=3:2)
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.25-7.18(m,4H),6.88(d,J=692Hz,1H),5.35-5.30(m,1H),4.54(tq,J=6.0,6.4Hz,1H),3.30(dd,J=6.2,16.7Hz,2H),3.17(dd,J=3.4,16.7Hz,2H),1.72-1.59(m,2H),1.34(dd,J=6.4,6.9Hz,3H),0.95(t,J=7.3Hz,3H)(ジアステレオマー混合物)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=6.16,6.51(ジアステレオマー混合物)
【0272】
上記の通り、実施例の製造方法で、有機リン化合物を製造した場合、有機リン化合物4pを高収率で得ることができた。
【0273】
〔対称型リン酸トリエステルの合成3〕
(実施例35~40)
R1OH及びR2OHを下記の原料に変更したこと以外は、〔対称型リン酸トリエステルの合成1〕と同様の方法で、対称型リン酸トリエステルを製造した。
【0274】
実施例35においては、R1OHとして、n-ブタノールを用い、R2OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用いた。
実施例36においては、R1OHとして、2-ブタノールを用い、R2OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用いた。
実施例37においては、R1OHとして、tert-ブタノールを用い、R2OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用いた。
実施例38においては、R1OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用い、R2OHとして、n-ブタノールを用いた。
実施例39においては、R1OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用い、R2OHとして、2-ブタノールを用いた。
実施例40においては、R1OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用い、R2OHとして、フェノールを用いた。
【0275】
NMR測定により、主生成物5i~5nの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータ、精密質量測定データ、主生成物5i~5nの構造及び収率を以下に示す。
実施例35~40の対称型リン酸トリエステルの製造方法と、得られる主生成物との関係は以下の通りである。
実施例35:主生成物5i、実施例36:主生成物5j、実施例37:主生成物5k、実施例38:主生成物5l、実施例39:主生成物5m、実施例40:主生成物5n。
【0276】
【0277】
主生成物5i:Butyl diphenethyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
Colorless oil;IR(neat):2959,1271,1019,746cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31-7.26(m,4H),7.23-7.18(m,6H),4.19-4.11(m,4H), 3.87(td,J=6.8,6.8Hz,2H),2.94(t,J=7.2Hz,4H),1.56(tt,J=6.8,7.6Hz,2H),1.53(qt,J=7.2,7.6Hz,2H),0.90(t,J=7.2Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=137.2,129.0,128.5,126.6,67.8(d,J=5.7Hz),67.5(d,J=6.6Hz),36.7(d,J=6.6Hz),32.2(d,J=6.7Hz),18.6,13.5
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-0.59
HRMS(ESI):calcd for [C20H27O4P+Na]+ 385.1539,found 385.1539
【0278】
主生成物5j:Diphenethyl 1-methylpropyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=3:1)
Colorless oil;IR(neat):2969,1269,1006,746cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.30-7.26(m,4H),7.23-7.18(m,6H),4.32(dtq,J=6.4,6.4,6.4Hz,1H),4.17-4.11(m,4H),2.94(t,J=7.2Hz,4H),1.65-1.46(m,2H),1.23(d,J=6.4Hz,3H),0.88(t,J=7.4Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=137.2,129.0,128.4,126.6,77.4,67.7(d,J=5.7Hz),36.7 (d,J=7.6Hz),30.2(d,J=5.7Hz),20.9(d,J=3.8Hz),9.4
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.34
HRMS (ESI): calcd for [C20H27O4P+Na]+ 385.1539,found 385.1539
【0279】
主生成物5k:1,1-Dimethylethyl diphenethyl phosphate
Purification method:GPC
Colorless oil;IR(neat):2975,1271,1006,748
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.30-7.26(m,4H),7.23-7.15(m,6H),4.14-4.06(m,4H),2.93(t,J=7.0Hz,4H),1.41(s,9H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=137.4,129.0,128.4,126.6,82.9(d,J=6.7Hz),67.5(d,J=5.8Hz),36.7(d,J=7.6Hz),29.7(d,J=4.8Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-5.09
HRMS(ESI): calcd for [C20H27O4P+Na]+ 385.1539,found 385.1539
【0280】
主生成物5l:Dibutyl phenethyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)andGPC
Colorless oil;IR(neat):2959,1272,1022,745cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.32-7.27(m,2H),7.24-7.18(m,3H),4.23(dt,J=7.1,7.1Hz,2H),3.96(dt,J=6.7,6.7Hz,2H),3.95(dt,J=6.9,6.9Hz,2H),3.00(t,J=6.8Hz,2H),1.61(tt,J=6.8,7.2Hz,4H),1.37(tq,J=7.2,7.4Hz,4H),0.92(t,J=7.4Hz,6H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=137.2,129.0,128.5,126.6,67.8(d,J=5.7Hz),67.4(d,J=5.7Hz),36.8(d,J=7.7Hz),32.2(d,J=6.7Hz),18.6,13.5
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-0.29
HRMS(ESI):calcd for [C16H27O4P+Na]+ 337.1539,found 337.1540
【0281】
主生成物5m(ジアステレオ混合物):Di-1-methylpropyl phenethyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
Colorless oil;IR(neat):2971,1266,1002,745cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31-7.26(m,2H),7.24-7.18(m,3H),4.37(dtq,J=5.8,5.9,6.4Hz,1H),4.36(dtq,J=5.8,5.9,6.4Hz,1H),4.24-4.17(m,2H),2.99(t,J=7.2Hz,2H),1.70-1.49(m,4H),1.28(d,J=6.4Hz,3H),1.26(d,J=6.4Hz,3H),0.92(t,J=7.8Hz,3H),0.90(t,J=7.8Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=137.7,128.9,128.3,126.4,76.2(d,J=5.7Hz),67.1(d,J=6.6Hz),35.9(d,J=7.6Hz),29.6(d,J=7.6Hz),20.7,9.2
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.71
HRMS(ESI):calcd for[C16H27O4P+Na]+ 337.1539,found337.1540
【0282】
主生成物5n:Diphenylphenethylphosphate
Purification method:preparativeTLC(Hexane:EtOAc=4:1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.36-7.22(m,7H),7.19-7.08(m,8H),4.44(td,J=6.8,7.6Hz,2H),3.01(t,J=6.8Hz,2H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=150.5(d,J=7.6Hz),136.6,129.7,129.0,128.6,126.8,125.3,120.0(d,J=4.8Hz),69.4(d,J=6.7Hz),36.6(d,J=7.6Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-11.41
HRMS(ESI):calcd for [C20H19O4P+Na]+ 377.0913,found377.0914
【0283】
〔非対称型リン酸トリエステルの合成3〕
(実施例41~45)
R1OH、R2OH及びR3OHを下記の原料に変更したこと以外は、〔非対称型リン酸トリエステルの合成2〕と同様の方法で、非対称型リン酸トリエステルを製造した。
【0284】
(実施例46)
R1OH、R2OH及びR3OHを下記の原料に変更し、酸化に使う試薬をmCPBAから、キサンタンヒドリドに変更したこと以外は、〔非対称型リン酸トリエステルの合成2〕と同様の方法で、非対称型リン酸トリエステル(非対称型チオリン酸トリエステル)を製造した。
【0285】
実施例41においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール)を用い、R3OHとして、エタノールを用いた。
実施例42においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、メントールを用い、R3OHとして、エタノールを用いた。
実施例43においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールを用い、R3OHとして、フェノールを用いた。
実施例44においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、2メチル2,3,4-トリ-O-ベンジル-α-D-グルコピラノシドを用い、R3OHとして、フェノールを用いた。
実施例45においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、1-O,2-O-ジパルミトイル-D-グリセロールを用い、R3OHとして、エタノールを用いた。
実施例46においては、R1OHとして、2-ヒドロキシインダンを用い、R2OHとして、2-ブタノールを用い、R3OHとして、フェノールを用いた。
【0286】
NMR測定により、主生成物9y~14yの同定を行った。また、HPLC-UVを用いて収率の計測を行った。
NMRスペクトルデータ、精密質量測定データ、主生成物9y~14yの構造及び収率を以下に示す。
実施例41~46の非対称型リン酸トリエステルの製造方法と、得られる主生成物との関係は以下の通りである。
実施例41:主生成物9y、実施例42:主生成物10y、実施例43:主生成物11y、実施例44:主生成物12y、実施例45:主生成物13y、実施例46:主生成物14y。
【0287】
【0288】
主生成物9y:Ethyl 2-indanyl phenethyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Toluene:EtOAc=4:1)
Colorless oil; IR (neat): 2959, 1276, 1015, 745 cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31-7.27(m,2H),7.24-7.16(m,7H),5.14(ttd,J=3.6,6.0,6.0Hz,1H),4.22(td,J=7.2,7.2Hz,2H),4.05-3.97(m,2H),3.25-3.16(m,2H),3.14-3.06(m,2H),2.98(t,J=7.2Hz,2H),1.27(dt,J=0.8Hz,7.2Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=139.8,137.2,129.0,128.5,126.8,126.6,124.6,79.0(d,J=5.7Hz),67.9(d,J=5.8Hz),63.7(d,J=5.7Hz),40.7(d,J=4.8Hz),40.6(d,J=4.7Hz),36.7(d,J=7.6Hz),16.1(d,J=6.7Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.125
HRMS(ESI):calcd for[C19H23O4P+Na]+ 369.1226, found 369.1228
【0289】
主生成物10y(ジアステレオ混合物):Ethyl 2-indanyl (-)-p-menthane-3-yl phosphate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=4:1)
Colorlessoil;IR(neat):2956,1266,1007,743cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24-7.22(m,2H),7.19-7.16(m,2H),5.26-5.18(m,1H),4.20-4.12(m,1H),4.11-4.03(m,2H),3.28(dd,J=6.4,16.4Hz,2H),3.20-3.14(m,2H),2.21(brd,J=12.4Hz,1H),2.16-2.08(m,1H),1.66(brs,1H),1.64(brs,1H),1.47-1.38(m,1H),1.37-1.29(m,1H),1.32(t,J=7.2Hz,3H),1.12(ddd,J=2.8,11.2,12.0Hz,1H),1.05-0.95(m,1H),0.90(d,J=6.4Hz,6H),0.89(d,J=7.2Hz,6H),0.86-0.82(m,1H),0.79(d,J=6.8Hz,3H),0.75(d,J=7.2Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=140.0,126.8,124.6,79.3(d,J=6.7Hz),79.2(d,J=6.7Hz),78.8(d,J=5.7Hz),78.7(d,J=7.7Hz),63.5(d,J=4.8Hz),63.4(d,J=5.7Hz),48.4(d,J=6.7Hz),42.5,40.8(d,J=5.7Hz),40.7(d,J=4.8Hz),34.0,31.5,25.5(d,J=4.8Hz),22.8(d,J=3.8Hz),21.9,20.9,16.2(d,J=5.7Hz),16.1(d,J=6.7Hz),15.6(d,J=3.8Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.55,-1.63
HRMS(ESI):calcd for[C21H33O4P+Na]+ 403.2009, found 403.2008
【0290】
主生成物11y(ジアステレオ混合物):2,2-Dimethyl-1,3-dioxolane-4-methyl 2-indanyl phenyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=3:2)
Colorlessoil;IR(neat):2925,1281,1212,1015,947,749cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.35-7.31(m,2H),7.25-7.16(m,7H),5.37(ddt,J=3.0,3.2,6.0Hz,1H),5.36(ddt,J=3.0,3.2,6.0Hz,1H),4.29(dq,J=2.8,6.0Hz,1H),4.18-4.05(m,2H),4.02(dd,J=6.4,8.8Hz,2H),3.79(ddd,J=2.8,6.0,8.8Hz,2H),3.34-3.10(m,4H),1.40(s,3H),1.39(s,3H),1.34(s,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=150.5(d,J=6.7Hz),139.6,129.7,126.9,125.2,124.6,120.0(d,J=4.7Hz),109.9,80.4(d,J=5.7Hz),73.9,73.8,68.0(d,J=6.7Hz),67.9(d,J=5.7Hz),40.7(d,J=4.8Hz),40.6(d,J=5.7Hz),26.7,25.2
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-6.39,-6.44
HRMS(ESI):calcd for[C21H25O6P+Na]+ 427.1281, found 427.1281
【0291】
主生成物12y(ジアステレオ混合物):2-Indanyl methyl-2,3,4-tri-O-Bz-α-D-glucopyranoside-6-yl phenyl phosphate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=3:2)
Colorlessoil;IR(neat):2956,1730,1601,1491,1279,1210,1025,950,757,688cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.97(d,J=6.8Hz,2H),7.92(d,J=7.6Hz,2H),7.85(d,J=7.6Hz,2H),7.51(t,J=7.4Hz,2H),7.44-7.34(m,5H),7.32-7.25(m,4H),7.23-7.13(m,7H),6.14(dd,J=9.4,9.4Hz,1H),6.12(dd,J=9.4,9.4Hz,1H),5.52(dd,J=9.2,9.2Hz,1H),5.51(dd,J=9.2,9.2Hz,1H),5.38-5.34(m,1H),5.26-5.14(m,2H),4.34-4.24(m,3H),3.41(s,3H),3.38(s,3H),3.31-3.10(m,4H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=165.8,165.7,165.2,139.6,133.5,133.4,133.1,129.92,129.87,129.7,128.45,128.42,128.3,126.9,125.1(d,J=4.8Hz),124.6,120.11(d,J=4.7Hz),120.06(d,J=4.8Hz),96.9(d,J=1.9Hz),80.44(d,J=5.8Hz),80.38(d,J=6.6Hz),71.9(d,J=4.8Hz),70.3,69.1,69.0,68.4(d,J=3.8Hz),68.3(d,J=3.8Hz),66.6(d,J=5.7Hz),66.5(d,J=5.8Hz),55.6(d,J=2.9Hz),40.7(d,J=4.7Hz)
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-6.46,-6.51
HRMS(ESI):calcd for[C43H39O12P+Na]+ 801.2071, found 801.2071
【0292】
主生成物13y(ジアステレオ混合物):1,2-O-Dipalmitoyl-glycerol-3-yl ethyl 2-indanyl phosphate
Purification method: preparative TLC(Hexane:EtOAc=7:3)
Colorlessoil;IR(neat):2924,2853,1744,1276,1035,742cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.24-7.22(m,2H),7.20-7.17(m,2H),5.25-5.22(m,2H),4.32(dd,J=4.0,12.0Hz,1H),4.18-4.08(m,4H),3.29(dd,J=6.0,16.6Hz,2H),3.16(dd,J=3.4,16.6Hz,2H),2.31(t,J=7.6Hz,2H),2.30(t,J=7.6Hz,2H),1.62-1.56(m,4H),1.35-1.25(m,51H),0.88(t,J=6.9Hz,6H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=173.2,172.8,139.7,126.9,124.6,79.4(d,J=5.7Hz),69.4(d,J=7.6Hz),65.1(d,J=5.8Hz),64.1(d,J=4.7Hz),61.7,40.7(d,J=4.7Hz),34.1,34.0,31.9,29.7,29.6,29.4,29.35,29.27,29.11,29.07,24.8,22.7,16.1(d,J=6.7Hz),14.1
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=-1.13
HRMS(ESI):calcd for[C46H81O8P+Na]+ 815.5561, found 815.5561
【0293】
主生成物14y:O-(sec-Butyl) O-(2,3-dihydro-1H-inden-2-yl) O-phenyl phosphorothioate
Purification method:preparative TLC(Hexane:EtOAc=4:1)
Colorlessoil;IR(neat):2873,1593,1489,1207,995,931,784,742,689cm-1
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.31(dd,J=8.08.0Hz,2H),7.23-7.15(m,7H),5.42(ttd,J=3.2,6.4,9.5Hz,1H),4.67(tqd,J=2.4,6.1,6.2Hz,1H),4.65(tqd,J=2.4,6.1,6.2Hz,1H),3.34-3.22,(m,2H),3.22-3.09(m,2H),1.68(dq,J=6.8,7.2Hz,2H),1.34(d,J=6.2Hz,3H),1.29(d,J=6.2Hz,3H),0.94(t,J=7.4Hz,3H),0.90(t,J=7.4Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3):δ=150.8(d,J=7.6Hz),139.87,139.85,129.4,126.8,125.1,124.62,124.58,121.14(d,J=4.7Hz),121.11(d,J=4.8Hz),80.38(d,J=5.7Hz),80.37(d,J=5.7Hz),79.22(d,J=6.7Hz),79.15(d,J=6.6Hz),40.5(d,J=5.7Hz)40.43(d,J=5.7Hz),40.41(d,J=5.7Hz),30.12(d,J=6.7Hz),30.05(d,J=7.6Hz),20.8(d,J=3.8Hz),20.7(d,J=3.8Hz),9.5,9.4
31P NMR(162MHz,CDCl3):δ=62.3,62.1
HRMS(ESI):calcd for[C19H23O3PS+Na]+ 385.0998, found 385.0998
【0294】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0295】
1、100・・・流通系反応装置、11,12,13,14,15,110,120,130,140,・・・タンク、21,22,23,24,210,220,230・・・ポンプ、31,32,33,310,320・・・混合機、f1,f2,f3,f4,f5,f6,f7,f10,f20,f30,f40,f50・・・流路