(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】締結装置および内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/068 20060101AFI20250403BHJP
【FI】
A61B17/068
(21)【出願番号】P 2023546660
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033265
(87)【国際公開番号】W WO2023037486
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】中村 隆志
(72)【発明者】
【氏名】竹本 昌太郎
(72)【発明者】
【氏名】野中 哲
(72)【発明者】
【氏名】小田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 清一郎
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0022720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/068-17/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手軸を有するシャフトと、
内視鏡に装着されることにより前記シャフトを前記内視鏡に固定するように構成される固定部材と、
前記シャフトの先端に取り付けられ、前記長手軸周りに回転自在なステープルユニットと、
前記シャフトの基端部に設けられる操作部と、
前記操作部の操作により、前記内視鏡に対する前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転を規制するように構成される回転規制機構と
を備える、
締結装置。
【請求項2】
前記固定部材よりも前記内視鏡の基端側に設けられ、前記長手軸に沿う方向に貫通する貫通孔が形成される弾性部材、をさらに備え、
前記貫通孔には、前記シャフトが挿通される、
請求項1に記載の締結装置。
【請求項3】
前記固定部材は、
前記長手軸に沿う方向に貫通して形成され、前記シャフトが挿通される第一貫通孔と、
前記長手軸に沿う前記方向に貫通して形成され、前記内視鏡が挿通される第二貫通孔と、
を備える、
請求項1に記載の締結装置。
【請求項4】
前記第一貫通孔は、前記固定部材の中心軸から偏心した位置に形成される、
請求項3に記載の締結装置。
【請求項5】
前記第一貫通孔には、スリットが設けられる、
請求項3に記載の締結装置。
【請求項6】
前記回転規制機構は、
前記第一貫通孔が形成された位置を含む領域において、前記固定部材の先端面より前記内視鏡の基端側へ向かって凹むように形成される被係合部と、
前記ステープルユニットの基端部に形成され、前記被係合部に係合可能な係合部と、
を備える、
請求項3に記載の締結装置。
【請求項7】
前記操作部の操作で前記係合部と前記被係合部とが互いに係合されることにより、前記ステープルユニットが前記長手軸周りの回転が規制される状態になり、
前記操作部の操作で前記係合部と前記被係合部との前記係合が解除されることにより、前記ステープルユニットが前記長手軸周りに回転可能な状態になる、
請求項6に記載の締結装置。
【請求項8】
前記回転規制機構は、前記ステープルユニットの基端に連結され、前記シャフトの基端側へ延びて設けられる回転規制ワイヤを有する、
請求項1に記載の締結装置。
【請求項9】
前記回転規制機構は、前記長手軸に沿う方向に貫通して形成され、前記回転規制ワイヤが挿通される第三貫通孔を有する、
請求項8に記載の締結装置。
【請求項10】
前記操作部の操作で前記回転規制ワイヤを牽引し、前記回転規制ワイヤに第一張力が生じることにより、前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転が規制される状態になり、
前記操作部の操作で前記回転規制ワイヤに対する牽引を解除し、前記回転規制ワイヤに前記第一張力よりも小さい第二張力が生じることにより、前記ステープルユニットが前記長手軸の周りに回転可能な状態になる、
請求項8に記載の締結装置。
【請求項11】
前記回転規制機構は、
前記ステープルユニットに設けられ、前記シャフトの前記長手軸に沿う方向に交差する方向に突出する突起と、
前記突起を把持する鉗子と、
を有する、
請求項1に記載の締結装置。
【請求項12】
前記操作部の操作で前記鉗子が前記突起を把持することにより、前記ステープルユニットの前記長手軸の周りの回転が規制される状態になり、
前記操作部の操作で前記鉗子が前記突起から離間することにより、前記ステープルユニットが前記長手軸周りに回転可能な状態になる、
請求項11に記載の締結装置。
【請求項13】
内視鏡と、
前記内視鏡に沿った長手軸を有するシャフトと、
前記シャフトの先端に取り付けられ、前記長手軸周りに回転自在なステープルユニットと、
前記シャフトの基端部に設けられる操作部と、
前記操作部の操作により、前記内視鏡に対する前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転を規制するように構成される回転規制機構と
を備える、
内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、締結装置、内視鏡システム、および縫合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消化管等を縫合する手術において、組織を縫合するために、医療用ステープラ(以下、ステープラと称する場合がある。)などの締結装置およびこのような締結装置を備える内視鏡システムが使用されている。適切なステープラを使用することで、消化管等を縫合する手術を容易に行い、手術時間を大幅に短縮することができる。
【0003】
特許文献1に記載された内視鏡縫合システムは、組織リトラクタが縫合デバイスに対して前進可能であり、前進させた組織リトラクタにより縫合対象組織を縫合デバイスまで引き込んで縫合対象組織を縫合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2018/0042603号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
締結装置を備える内視鏡システムを用いて体内の組織に対する処置を行う手技において、場合によって締結装置と内視鏡との相対位置関係を調整する場合がある。例えば、内視鏡を体内に挿入することにより、締結装置を処置対象である体内の組織の近傍まで挿入し処置を行う際、組織を縫合する方向に合わせてステープラの向きを調整する場合がある。例えば、組織を処置する過程において、締結装置により把持された組織を締結装置側から観察する場合がある。このような場合、内視鏡と内視鏡の先端側に取り付けられている締結装置との相対位置関係を調整する必要がある。より具体的に、内視鏡の長手軸周りの周方向に沿って、内視鏡に対して締結装置を回転させる場合がある。
【0006】
一方、内視鏡を体内に挿入する過程において、内視鏡の先端側に取り付けられた締結装置が体内の組織に意図せず接触することや、締結装置が内視鏡の視野を遮ることなどを防止する必要がある。
【0007】
上記事情を踏まえ、本開示は、体内の組織に対して処置を行う過程において、内視鏡と内視鏡の先端側に取り付けられた締結装置とが周方向における相対位置関係を好適に調整できる締結装置、このような締結装置を備える内視鏡システム、および内視鏡システムを用いて体内の組織を縫合する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一つの態様によれば、締結装置は、長手軸を有するシャフトと、内視鏡に装着されることにより前記シャフトを前記内視鏡に固定するように構成される固定部材と、前記シャフトの先端に取り付けられ、前記長手軸周りに回転自在なステープルユニットと、前記シャフトの基端部に設けられる操作部と、前記操作部の操作により、前記内視鏡に対する前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転を規制するように構成される回転規制機構とを備える。
【0009】
本開示のもう一つの態様によれば、内視鏡システムは、内視鏡と、前記内視鏡に沿った長手軸を有するシャフトと、前記シャフトの先端に取り付けられ、前記長手軸周りに回転自在なステープルユニットと、前記シャフトの基端部に設けられる操作部と、前記操作部の操作により、前記内視鏡に対する前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転を規制するように構成される回転規制機構とを備える。
【0010】
本開示の更なる一つの態様によれば、長手軸を有するシャフトと、内視鏡に装着されることにより前記シャフトを前記内視鏡に固定するように構成される固定部材と、前記シャフトの先端に取り付けられ、前記長手軸周りに回転自在なステープルユニットと、前記シャフトの基端部に設けられる操作部と、前記操作部の操作により、前記内視鏡に対する前記ステープルユニットの前記長手軸周りの回転を規制するように構成される回転規制機構と、を備える締結装置による組織の縫合方法は、前記長手軸周りの前記回転が規制された状態にある前記ステープルユニットと前記内視鏡とを体内に挿入するステップと、少なくとも前記組織の一部を鉗子により把持するステップと、前記組織の一部を相対的に前記内視鏡の基端側へ牽引し、前記鉗子により把持された前記組織の一部を前記締結装置の縫合可能な範囲に位置させるステップと、前記ステープルユニットの前記長手軸周りの前記回転が規制された状態を解除するステップと、前記ステープルユニットにより、ステープルを射出し前記組織を縫合するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の上述の各態様に係る締結装置、内視鏡システム、および縫合方法によれば、体内の組織に対して処置を行う過程において、内視鏡の先端側に取り付けられた締結装置が長手軸方向周りに回転可能な状態と、締結装置が長手軸周りの回転が規制される状態とを好適に切り替える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第一実施形態に係る締結装置を備えた内視鏡システムの全体構成を示す図である。
【
図2】同内視鏡システムのワイヤシース固定部の構成を示す斜視図である。
【
図3】同内視鏡システムの締結装置の先端部の構成を示す斜視図である。
【
図4】同締結装置が内視鏡に装着され、把持部の閉状態を示す斜視図である。
【
図5】同締結装置が内視鏡に装着され、把持部の開状態を示す斜視図である。
【
図6】同締結装置に対する回転規制を解除する操作を示す図である。
【
図7】同締結装置に対する回転規制を解除する操作を示す下面図である。
【
図9】本実施形態に係る締結装置を用いて体内組織を縫合する方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10】同実施形態に係る、体内組織を縫合する方法を示す図である。
【
図11】同実施形態に係る、体内組織を縫合する方法を示す図である。
【
図12】同実施形態に係る、体内組織を縫合する方法を示す図である。
【
図13】同実施形態に係る、体内組織を縫合する方法を示す図である。
【
図14】同実施形態に係る、体内組織を縫合する方法を示す図である。
【
図15】本開示の第一実施形態の変形例に係る締結装置の構成を示す図である。
【
図16】同締結装置の回転規制機構の構成を示す正面図である。
【
図17】同締結装置に対して回転規制を行う操作を示す図である。
【
図18】同締結装置に対して回転規制を行う操作を示す図である。
【
図19】同締結装置に対して回転規制を行う操作を示す図である。
【
図20】本開示の第二実施形態に係る締結装置の構成を示す下面図である。
【
図21】同締結装置に対して回転規制を解除する操作を示す図である。
【
図22】同締結装置に対して回転規制を行う操作を示す図である。
【
図23】本開示の第二実施形態の変形例1に係る締結装置の構成を示す下面図である。
【
図24】同締結装置に対する回転規制を行う操作を示す下面図である。
【
図25】同締結装置に対する回転規制を解除する操作を示す下面図である。
【
図26】本開示の第二実施形態の変形例2に係る締結装置の構成を示す下面図である。
【
図27】同締結装置に対する回転規制を解除する操作を示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
以下、本開示の第一実施形態について、
図1から
図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る締結装置100を含む内視鏡システム300の全体構成を示す図である。
【0014】
本実施形態に係る内視鏡システム300は、消化管等を縫合する手術等に使用される。医療システム300は、締結装置100(医療用ステープラ、ステープルユニット)と、内視鏡200と、開閉操作部250と、針打ち出し操作部270と、ワイヤシース(シャフト)280と、樹脂シース290と、ワイヤシース固定部260と、を備える。開閉操作部250は、開閉操作ワイヤ5により締結装置100を作動させる操作部である。開閉操作ワイヤ5は、ワイヤとワイヤを覆うように設けられるコイルシースによって構成される。針打ち出し操作部270は、針打ち出しワイヤ6により締結装置100を作動させる操作部である。針打ち出しワイヤ6も、開閉操作ワイヤ5と同様に、ワイヤとワイヤを覆うように設けられるコイルシースによって構成される。本実施形態において、締結装置100は、例えば、医療用ステープラとして構成される。
【0015】
内視鏡200は、公知の軟性内視鏡の構成を備える。内視鏡200は、先端から体内に挿入される長尺の挿入部210と、挿入部210の基端部に設けられた操作部220と、ユニバーサルコード240と、を備える。
【0016】
挿入部210には、内視鏡用処置具が挿通する処置具チャネル230が形成されている。挿入部210の先端部212には、処置具チャネル230の先端開口である鉗子口214が設けられている。処置具チャネル230は、挿入部210の先端部212から操作部220まで延びている。
【0017】
挿入部210の先端部211は、CCD等を備える撮像ユニット(不図示)を備える。撮像ユニットの対物レンズ215は、挿入部210の先端部212において露出している。挿入部210の先端部211は、先端側に硬質部を備える。
【0018】
操作部220の基端側には、挿入部210を操作するノブ223や撮像ユニット等を操作するスイッチ224が設けられている。術者は、ノブ223を操作することで挿入部210を所望の方向に湾曲させることができる。
【0019】
操作部220の先端側には、処置具チャネル230に連通する鉗子挿入口222が設けられている。術者は、鉗子挿入口222から内視鏡用処置具を処置具チャネル230に挿入することができる。
【0020】
ユニバーサルコード240は、操作部220と外部周辺機器とを接続する。ユニバーサルコード240は、例えば、撮像ユニットが撮像した画像を外部機器に出力する。撮像ユニットが撮像した画像は、画像処理装置を経由して、液晶ディスプレイなどの表示装置に表示される。
【0021】
開閉操作部250は、開閉操作ワイヤ5を操作することにより締結装置100を開閉させるように構成される。開閉操作部250は、
図1に示すように、開閉操作部本体252と、開閉操作スライダ253と、を備える。開閉操作ワイヤ5の基端は、開閉操作スライダ253に連結されている。術者は、開閉操作部本体252に対して開閉操作スライダ253を長手軸方向において進退させることにより、開閉操作ワイヤ5を進退させることができる。
【0022】
針打ち出し操作部270は、針打ち出しワイヤ6を操作することにより締結装置100からステープルS(
図25参照)を放出し、処置対象である体内組織を縫合するように構成される。針打ち出し操作部270は、
図1に示すように、針打ち出し操作部本体272と、放出操作スライダ273と、を備える。針打ち出しワイヤ6の基端は、放出操作スライダ273に連結されている。術者は、針打ち出し操作部本体272に対して放出操作スライダ273を長手軸方向において進退させることにより、針打ち出しワイヤ6を進退させることができる。
【0023】
ワイヤシース280は、開閉操作ワイヤ5および針打ち出しワイヤ6が挿通するシースである。
図8に示すように、ワイヤシース280は、外周に形成された被覆層281と、被覆層281の内側に形成されたコイルシース282とを有して形成されている。被覆層281は、例えば、ブレード入りチューブや、3層コイルなどにより形成され、術者による回転操作に追従して回転することができる。コイルシース282は、可撓性を有し、後述する二本のインナーシース283が挿通可能な内腔が形成されている。本実施形態において、ワイヤシース280の径方向において、被覆層281がコイルシース282の外側に形成される例を説明するが、本実施形態は、この構成に限定されない。例えば、ワイヤシース280の径方向において、被覆層281がコイルシース282の内側に形成されてもよい。
【0024】
ワイヤシース280に形成された内腔には、二本のインナーシース283が挿通している。二本のインナーシース283は、樹脂材により形成され、可撓性を有する。開閉操作ワイヤ5および針打ち出しワイヤ6は、二本のインナーシース283にそれぞれに挿入されている。ワイヤシース280は、二本のインナーシース283の代わりに、二つのルーメンを備えるマルチルーメンチューブを備えてもよい。
【0025】
図1に示すように、樹脂シース290は、ワイヤシース280が進退可能に挿通するシースである。樹脂シース290は、樹脂材により形成されている。
図1に示すように、樹脂シース290の先端側は、バンド291により内視鏡200の挿入部210に連結されている。樹脂シース290は、先端が締結装置100のキャップ1に、基端がワイヤシース固定部260に固定されている。
【0026】
図2は、ワイヤシース固定部260の斜視図である。ワイヤシース固定部260は、樹脂シース290に対してワイヤシース280の意図しない進退または意図しない回転を規制する固定部である。ワイヤシース固定部260は、ワイヤシース固定部本体261と、バンド取付部264と、を備える。
【0027】
ワイヤシース固定部本体261は、円筒状に形成されており、先端開口262と、基端開口263と、を備える。先端開口262には、樹脂シース290の基端が固定されている。基端開口263からは、ワイヤシース280が基端側へ延びて形成されている。
【0028】
バンド取付部264は、操作部本体261に取り付けられた部材であり、バンド挿通孔265を備える。バンド挿通孔265を通過させた図示しないバンドを内視鏡200に取り付けることで、操作部本体261を内視鏡200に簡単に固定できる。操作部本体261を内視鏡200に固定することにより、ワイヤシース280や樹脂シース290が内視鏡200の挿入部210から離れることを防ぐことができる。
【0029】
ワイヤシース280における基端開口263には、ワイヤシース280と接触するゴム栓266が設けられている。ワイヤシース280とゴム栓266との間に発生する摩擦力によって、処置における意図しないワイヤシース280の進退動作および回転動作を抑制できる。
【0030】
図3は、本実施形態に係る締結装置100の斜視図である。締結装置100は、キャップ(固定部材)1と、把持部(ステープルユニット)2と、ステープル放出部3と、ステープル受容部4と、開閉操作ワイヤ5と、放出操作ワイヤ6と、を備える。把持部2は、第一把持部材(第一ジョー、ステープルヘッド)21と、第二把持部材(第二ジョー、アンビル)22と、開閉回転軸23と、可動ピン(非図示)と、を有する。第一把持部材21と第二把持部材22とは、開閉回転軸23により開閉可能に連結している。第一把持部材21と第二把持部材22とが相対的に回転して対象組織を把持する。開閉回転軸23は、キャップ1より先端側に設けられている。開閉回転軸23の軸方向Cは、キャップ1の軸方向Aおよび上下方向Bと垂直である。締結装置100は、内視鏡200の挿入部210の先端部211に着脱可能である。
【0031】
キャップ1は、略円柱形状に形成されている。キャップ1は、軸方向Aに貫通する第一貫通孔11と、軸方向Aに貫通する第二貫通孔12(
図6参照)と、を有する。第一貫通孔11は、挿入部210の先端部211が挿入される孔である。第一貫通孔11の形状は、挿入部210の先端部211の外形に沿うように形成されている。そのため、第一貫通孔11に内視鏡200の先端部211を挿入することで、キャップ1を内視鏡200の先端部211に装着させることができる。本実施形態において、第一貫通孔11の軸方向Aの中心軸は、キャップ1の軸方向Aの中心軸に対して偏心している。
【0032】
第二貫通孔12(
図6参照)は、樹脂シース290が挿入される孔である。第二貫通孔12の内径は、樹脂シース290の外径と略一致する。樹脂シース290の先端部は、第二貫通孔12に挿通されて固定されている。樹脂シース290を挿通するワイヤシース280、開閉操作ワイヤ5および放出操作ワイヤ6は、第二貫通孔12を挿通して先端側まで延びている。
【0033】
第二貫通孔12の軸方向Aの中心軸は、キャップ1の軸方向Aの中心軸に対して偏心している。第二貫通孔12の中心軸がキャップ1の中心軸に対して偏心している向きと、中第一貫通孔11の中心軸がキャップ1の中心軸に対して偏心している向きとは、反対である。言い換えれば、本実施形態において、第一貫通孔11の中心軸と第二貫通孔12の中心軸とは、キャップ1の中心軸の上下方向Bにおける両側に配置されている。
【0034】
図4は、本実施形態に係る締結装置100が内視鏡200の挿入部210の先端部に装着された状態を示す斜視図である。第一把持部材21は、第一先端部21aと基端部21bとを有し、平面視において略T字形状に形成されている。第一先端部21aは、基端部21bよりも先端側に配置されている。第一先端部21aは、略直方体状に形成されている。第一先端部21aは、平面視において開閉回転軸23の軸方向Cに延びる矩形状に形成されている。第一先端部21aには、ステープル放出部3が設けられている。第一先端部21aの上方の面には、ステープル放出部3の開口が設けられている。基端部21bは、後述するキャップ1の凹部1aに収容できるように形成されている。
図5に示すように、第一把持部材21は、さらに当接ピン21cおよび第一係合溝21dを有する。当接ピン21cは、第一本体部21bの基端に設けられており、閉状態の第二把持部材22に当接して、第二把持部材22の可動範囲を規制する。第一係合溝21dは、第一把持部材21において、開閉回転軸23の軸方向Cに貫通する溝である。第一係合溝21dは、軸方向Aに延びている。
【0035】
第二把持部材22は、略U字形状に形成されたU字部材22aと、U字部材22aを回転可能に支持する第二本体部22bと、を有している。U字部材22aは、略U字形状に形成されており、両端部が第二本体部22bに連結され、中央部が先端側に配置されている。U字部材22aの中央部の先端側は、略直方体状に形成され、ステープル受容部4が設けられている。第二本体部22bは、開閉回転軸23により第一把持部材21の第一本体部21bに回転可能に取り付けられている。第二本体部22bには、第一本体部21bが挿入されるガイド溝22d(
図6参照)が形成されている。
図5および
図6に示すように、第二本体部22bのガイド溝22dの両側部には、第二係合溝22eが形成されている。
【0036】
締結装置100は、内視鏡200の挿入部210の先端部に装着され体内に挿入される際、把持部2において、第一把持部材21と第二把持部材22とが閉じた状態でキャップ1と当接している。より具体的に、
図4に示すように、第一把持部材21の基端部21bがキャップ1の先端側に形成された凹部1a(
図6参照)に嵌合されている。
【0037】
キャップ1が内視鏡200の先端部211に装着されると、
図4および
図5に示すように、キャップ1の第一貫通孔11における先端側の開口13から対物レンズ215および鉗子口214が露出する。術者は、内視鏡200の先端部211に締結装置100を装着した状態であっても、対物レンズ215により処置対象を観察できる。
【0038】
図4に示すように、把持部2が閉状態であるとき、ステープル放出部3とステープル受容部4とは対向する。把持部2が閉状態であるとき、ステープル放出部3とステープル受容部4との間にはわずかな隙間が形成される。把持部2が閉状態であるとき、対物レンズ215の光軸は、第一把持部材21および第二把持部材22の外側を通過する。把持部2が閉状態であるとき、鉗子口214の中心軸は、第一把持部材21には重ならないが、第二把持部材22に重なる位置にある。
【0039】
図5に示すように、把持部2が開状態であるとき、ステープル受容部4は開閉回転軸23よりも基端側に配置される。把持部2が開状態であるとき、ステープル放出部3とステープル受容部4とは、対物レンズ215の光軸を挟んで両側に配置される。把持部2が開状態であるとき、対物レンズ215の光軸は視野空間25を通過する。把持部2が開状態であるとき、鉗子口214の中心軸は、視野空間25を通過する。
【0040】
図6は、把持部2とキャップ1との係合が解除された状態(第一状態)を示す図である。
図6に示すように、キャップ1の先端部において、第一把持部材21の基端部21bの少なくとも一部が嵌合できる寸法を有する凹部1aが形成されている。第一把持部材21の基端部21bは、キャップ1の凹部1aの形状に対応した形状に形成される。このため、第一把持部材21の基端部21bが凹部1aに少なくとも一部が収容された状態で、把持部2とキャップ1とが係合すると、把持部2がキャップ1に対して回転することが規制される(第二状態)。本実施形態において、第一把持部材21の基端部21bとキャップ1の凹部1aとは、締結装置100の回転規制機構を構成する。
【0041】
図7は、ワイヤシース280がキャップ1との係合が解除された状態を示す下面図である。
図6および
図7に示すように、キャップ1の凹部1aの周方向において、斜面1bが形成されている。第一把持部材21の基端部21bの周方向において、斜面1bに対応する斜面21fが形成されている。上述のように、把持部2とキャップ1とは、第一把持部材21の斜面21fとキャップ1の斜面1bとが当接する状態で係合することが可能である。このため、
図4に示すように、把持部2とキャップ1とが係合された状態において、術者がワイヤシース固定部260を操作することにより、ワイヤシース280を回転させようとしても、ワイヤシース280に連結された把持部2が長手軸に対する回転が規制される。
【0042】
図6および
図7に示すように、術者がワイヤシース固定部260を操作し、ワイヤシース280をキャップ1よりも先端側へ突出させると、ワイヤシース280に連結された把持部2も先端側へ移動される。このような操作により、把持部2とキャップ1との係合が解除される。言い換えれば、術者は、ワイヤシース固定部260を操作し、ワイヤシース280をキャップ1よりも先端側へ突出させることにより、把持部2の長手軸周りの回転が規制される状態を解除できる。この際、把持部2は、長手軸周りに回転可能な状態(第一状態)になる。
【0043】
術者は、この状態において、ワイヤシース280を回転操作することで把持部2を長手軸周りに回転させることが可能である。このような操作により、例えば、把持部2の向きを組織に合わせて調整することが可能である。その後、術者は、従来の締結装置と同様の操作で処置対象の組織に対して処置を行うことができる。この処置過程において、術者がワイヤシース280を回転させることにより、内視鏡200の撮像ユニットを用いて、把持部2により把持された処置対象の組織を所望の角度を観察することができる。例えば、術者がワイヤシース280を回転させることにより、第一把持部材21側から組織を観察することができる。
【0044】
締結装置100を用いて処置対象である組織に対する処置が完了し、締結装置100を体内から抜去する際、抜去の操作を容易に行い、かつ、体内組織に意図しない接触を避けるため、把持部2とキャップ1とを再度係合させることにより、一体化した構成で抜去することが好ましい。このため、術者がワイヤシース280を回転操作し、第一把持部材21の基端部21bとキャップ1の凹部1aとが合わせてから、ワイヤシース280を基端側へ引き込む。より具体的に、例えば、術者が内視鏡200の撮像ユニットで把持部2の姿勢を観察しながらワイヤシース280を回転させることにより、第一把持部材21の基端部21bの斜面21fとキャップ1の凹部1aに形成された斜面1bと合わせることができる。この状態で、術者がワイヤシース280を基端側へ引き込むことにより、第一把持部材21の基端部21bがキャップ1の凹部1aに収容された状態で把持部2とキャップ1とが係合する。その後、術者は、係合されて一体化した把持部2とキャップ1とを体内から抜去することができる。
【0045】
本実施形態に係る締結装置100によれば、キャップ1と把持部2との係合状態を適宜切り換えることができる。キャップ1と把持部2とが係合された状態では、術者がワイヤシース280を回転しても、把持部2が長手軸周りに回転することが規制される。言い換えれば、この状態において、把持部2が内視鏡200に対して軸周りに回転することが規制される。本実施形態に係る締結装置100を内視鏡200に取付けて体内に挿入される際、内視鏡200の撮像ユニットの視野を妨げることや、意図せず体内の組織に接触することなどを回避できる。
【0046】
術者がワイヤシース280を先端側へ移動し、把持部2をキャップ1よりもさらに先端側へ突出させると、キャップ1と把持部2との係合が解除される。この状態において、術者がワイヤシース280とワイヤシース280に連結された把持部2とを長手軸周りに回転させることができる。本実施形態に係る締結装置100を体内に挿入し、組織に対して処置を行う際、把持部2の方向を組織を縫合する方向に合わせることや、所望の方向から組織を観察することなどが可能である。
【0047】
上述のように、本実施形態に係る締結装置100および締結装置100を有する内視鏡システム300によれば、術者がワイヤシース280を操作するのみで、内視鏡200に対して、締結装置100の回転可能な状態と回転規制状態とを適宜切り換えることができる。
【0048】
次に、
図9から
図14を参照し、一例として上述の本実施形態に係る締結装置100の動作について説明する。
図9は、術者による締結装置100を用いた手技手順を示すフローチャートである。
図10から
図14は、締結装置100の動作を説明する図である。
【0049】
図9に示すように、術者は、締結装置100を内視鏡200の先端部211に装着する(装着ステップS11)。術者は、締結装置100と内視鏡200とを体内に挿入する(挿入ステップS12)。
【0050】
術者は、締結装置100が装着された内視鏡200の先端部211を処置対象T(対象組織の一例)に接近させる。術者は、開閉操作部250を操作して開閉操作ワイヤ5を前進させることで、把持部2を開状態に遷移させる。対物レンズ215の光軸は視野空間25を通過するため、術者は内視鏡200の撮像ユニットを介して処置対象Tを観察できる。鉗子口214の中心軸は視野空間25を通過するため、
図10に示すように、術者は鉗子口214から把持鉗子(処置具)Gを突出させ(突出ステップS13)、把持鉗子Gを操作し処置対象に把持鉗子Gの先端を近づける(前進ステップS14)、処置対象Tを把持する(把持ステップS15)。
【0051】
術者は、処置対象Tを把持鉗子Gにより把持した状態で、把持鉗子Gを後退させる。術者は、把持鉗子Gを後退させることにより、処置対象Tが少なくとも視野空間25に位置するよう処置対象Tを引き込む(引込ステップS16)。本実施形態において、術者が把持鉗子Gの先端が視野空間25を通過するまで把持鉗子Gを後退させることにより、処置対象Tが視野空間25を通過するまで処置対象Tを引き込んでもよい。
【0052】
この状態において、術者が、ワイヤシース280を先端側へ移動させることにより、キャップ1と把持部2との係合が解除される(回転規制解除ステップS17)。これにより、術者がワイヤシース280を操作し回転させることにより、把持部2が長手軸周りに回転することができる。このため、術者が処置対象Tを縫合したい方向に合せて把持部2の向きや姿勢を調整できる。
【0053】
引込ステップS16において、術者は、把持鉗子Gに対して把持部2を前進させることにより、処置対象Tを引き込んでもよい。すなわち、引込ステップS16は、術者が把持部2に対して把持鉗子Gを相対的に後退させて処置対象Tを引き込む。
図11に示すように、第一把持部材21が処置対象Tの周辺部を抑えつけているため、術者は把持鉗子Gにより処置対象Tを引き込みやすい。
【0054】
処置対象Tを把持鉗子Gにより把持した状態で、把持部を前進させることで多くの組織を把持部に取り込むことができる。また、処置対象Tに近づけない場合にも把持部を前進させることにより処置対象Tに近づくことができる。
把持鉗子Gに対して把持部2を前進させることにより、処置対象Tを引き込む場合は、実質的に引込ステップS16の前に回転規制解除ステップを行うこととなる。本実施形態において、回転規制解除ステップS17は、引込ステップS16の前に実施してもよく、引込ステップS16の後に実施してもよい。
【0055】
術者は、
図12に示すように、開閉操作部250を操作して開閉操作ワイヤ5を後退させることで、把持部2を閉状態に遷移させる。処置対象Tは、第一把持部材21のステープル放出部3と第二把持部材22のステープル受容部4とによって挟み込まれる。
【0056】
把持部2が閉状態であるとき、把持鉗子Gによって把持された処置対象Tの一部を、第二把持部材22のU字部材22aと第二本体部22bによって形成された空間(視野空間25)に収めることができる。このため、ステープル放出部3とステープル受容部4とよって挟み込んだ処置対象Tを逃しにくい。この状態において、把持部2の長手軸周りの回転に対する規制が解除されているため、術者がワイヤシース280を回転させることにより、所望の角度から処置対象Tを観察することが可能である。
【0057】
術者は、処置対象Tをステープル放出部3とステープル受容部4とよって挟み込んだ状態で、放出操作部270を操作して放出操作ワイヤ6を牽引することで、格納されたステープルSをステープル受容部4に向けて放出する。ステープルSの針先S1は処置対象Tを貫通し、ステープル受容部4のポケット41(
図5参照)に接触することにより屈曲する。その結果、
図12に示すように、処置対象Tは縫合される(縫合ステップS18)。
【0058】
術者は、
図13に示すように、開閉操作部250を操作して、再び把持部2を開状態にする。術者は、把持鉗子Gを処置対象Tから離して縫合処置を完了する。
図14に示すように、術者は、鉗子口214に経由し把持鉗子Gを抜去してから、スネアワイヤや高周波ナイフなどの処置具を鉗子口214より突出させて、縫合された処置対象Tを切除してもよい。
【0059】
その後、術者は、ワイヤシース280を回転させることにより、第一把持部材21の基端部21bとキャップ1の凹部1aとが合わせてから、ワイヤシース280を基端側へ引き込む。この状態で、術者がワイヤシース280を基端側へ引き込むことにより、第一把持部材21の基端部21bがキャップ1の凹部1aに収容された状態で把持部2とキャップ1とが係合する。このため、把持部2の長手軸周りの回転が規制される(回転規制ステップS19)。
【0060】
キャップ1と把持部2が係合されることによって回転が規制された締結装置100と内視鏡200とを体内から抜去する(抜去ステップS20)。その後、術者は、必要なステップを経て処置対象Tに対する縫合方法を終了する(終了S21)。
【0061】
本実施形態に係る処置対象Tに対する縫合方法について、
図9に示すようフローチャートを用いて説明したが、これに限定されることはない。上述のように、回転規制解除ステップS17は、引込ステップS16の前に実施してもよく、引込ステップS16の後に実施してもよい。術者は、実際の処置の状況を考慮し、適宜各ステップを調整することが可能である。
【0062】
(変形例)
以下、
図15から
図19を用いて、本実施形態の変形例に係る締結装置100Aの構成を説明する。本変形例に係る締結装置100Aについては、上述の第一実施形態に係る締結装置100と共通の構成に同様の符号を付与し、その説明を省略する。本変形例に係る締結装置100Aと第一実施形態に係る締結装置100と異なる点のみを説明する。
【0063】
図15は、本変形例に係る締結装置100Aの構成を示す図である。
図16は、本変形例に係る締結装置100Aを用いる操作を説明するための正面図である。
図17は、本変形例に係る締結装置100Aを用いる操作を説明するための図である。
図18は、本変形例に係る締結装置100Aの一部構成の拡大断面図である。
図19は、本変形例に係る締結装置100Aを用いる操作を説明するための図である。
【0064】
図15に示すように、本変形例に係る締結装置100Aは、第一把持部材21の基端部21bおよびキャップ1の凹部1aのそれぞれにおいて、ワイヤシース280の長手軸に対して傾斜する斜面が形成されている。第一把持部材21の基端部21bは、ワイヤシース280の長手軸に対して傾斜する斜面21gが形成されている。キャップ1の凹部1aは、斜面21gに対応し、ワイヤシース280の長手軸に対して傾斜する斜面1cが形成されている。本変形例に係る締結装置100Aのその他の構成は、上述の第一実施形態に係る締結装置100の構成と同じである。
【0065】
斜面21gと斜面1cとは、ワイヤシース280の長手軸に対して傾斜する角度は、略同等であってもよい。
図9に示された状態、すなわち、把持部2とキャップ1との係合が解除された状態から、術者がワイヤシース280を基端側へ引き込むと、第一把持部材21の基端部21bが同様に基端側へ牽引される。この操作により、斜面21gと斜面1cとが当接する状態で、第一把持部材21の基端部21bがキャップ1の凹部1aに係合する。
【0066】
上述の第一実施形態に係る締結装置100を用いて組織に対して処置を行ってから、術者が再度把持部2とキャップ1とを係合する際、把持部2の基端部21bに形成された斜面21fとキャップ1の凹部1aに形成された斜面1bとが対向するよう、ワイヤシース280を操作し、把持部2の姿勢を調整する必要がある。
図10に示すように、把持部2とキャップ1との周方向における相対位置関係がずれる場合では、術者が把持部2の状態および姿勢を観察しながら把持部2の位置を調整しキャップ1と係合させる必要がある。
【0067】
一方、本変形例に係る締結装置100Aによれば、
図16に示すような状態においても、術者がワイヤシース280を引き込む操作のみで、
図18に示すように、把持部2の基端部21bに形成された傾斜面21gとキャップ1の凹部1aの先端側に形成された斜面1cとが当接することにより、第一把持部材21の基端部21bが凹部1aに滑り込んで収容される。その結果、
図17および
図19に示すように、把持部2とキャップ1とが係合される。本変形例に係る締結装置100Aによれば、把持部2とキャップ1とを係合させる操作において、術者が把持部2の状態および姿勢を観察しなくてもよい。
【0068】
本変形例に係る締結装置100Aは、その他の構成が第一実施形態に係る締結装置100と同様であるため、同様の効果を有する。本変形例に係る締結装置100Aを有する内視鏡システムは、第一実施形態に係る内視鏡システム300と同様な効果を有する。
【0069】
(第二実施形態)
以下、
図20から
図22を用いて、本開示の第二実施形態に係る締結装置100Bの構成を説明する。本実施形態に係る締結装置100Bについては、上述の第一実施形態に係る締結装置100と共通の構成に同様の符号を付与し、その説明を省略する。本実施形態に係る締結装置100Bと第一実施形態に係る締結装置100と異なる点のみを説明する。
【0070】
図20は、本実施形態に係る締結装置100Bの下面図である。
図21および
図22は、本実施形態に係る締結装置100Bを用いた操作を説明する図である。本実施形態に係る締結装置100Bは、第一把持部材21の基端部21bに、1本の回転調整ワイヤ292が連結される点で、上述の第一実施形態に係る締結装置100と異なる。
【0071】
図20に示すように、可撓性を有する回転調整ワイヤ292が第一把持部材21の基端部21bに連結されている。回転調整ワイヤ292は、例えば、溶接および接着など各種公知の方法により第一把持部材21の基端部21bに連結されていてもよい。回転調整ワイヤ292は、図示しないが、樹脂シース290と並行に配置された樹脂シース293に挿通し基端側のワイヤシース固定部260まで延びて形成されている。本実施形態において、図示しないが、樹脂シース293が基端側のゴム栓266に取付けてもよい。回転調整ワイヤ292は、ワイヤシース固定部260で操作されるように構成してもよいし、回転調整ワイヤ292のみを調整する操作部を構成してもよい。
【0072】
図20に示すように、把持部2がキャップ1よりもさらに先端側に突出する状態で、回転調整ワイヤ292は、緩めた状態で把持部2の第一把持部材21の基端部21bに連結されている。この状態において、把持部2とキャップ1との係合が解除されているため、術者がワイヤシース280を回転する操作により、把持部2がワイヤシース280の長手軸周りに回転することが可能である。すなわち、本実施形態に係る締結装置100Bでは、把持部2がキャップ1よりも先端側に移動されると、術者が回転調整ワイヤ292を緩めた状態に操作すると、把持部2の長手軸方向周りの回転に対する規制が解除される。
【0073】
この際、術者が把持部2を用いて組織に対して処置を行うことができる。術者が組織に対して処置を行って締結装置100Bを体内から抜去する際、再度把持部2とキャップ1とを係合される。例えば、
図21に示すように、把持部2とキャップ1とが周方向における相対位置関係がずれる場合、術者が位置調整ワイヤ292を基端側へ牽引することにより、位置調整ワイヤ292に作用する力量(牽引力)が把持部2に伝達される。術者が位置調整ワイヤ292を基端側へ牽引する力量により、位置調整ワイヤ292が緩めた状態から
図16に示すような略直線の状態に遷移する。これとともに、位置調整ワイヤ292に作用する力量が把持部2に作用し、把持部2を長手軸方向周りに回転させるモーメントが生じる。その結果、
図22に示すように、把持部2の基端部21bとキャップ1に形成された凹部1aとが周方向における相対位置が一致する。この状態において、術者がワイヤシース280を基端側へ引き込むことにより、把持部2の基端部21bがキャップ1に形成された凹部1aに収容され、把持部2とキャップ1とが係合される。
【0074】
本実施形態に係る締結装置100Bによれば、位置調整ワイヤ292に作用する基端側への牽引力が先端側の把持部2に回転モーメントとして作用し、把持部2を長手軸周りに回転させる。このため、術者が把持部2とキャップ1とを係合させる操作において、把持部2の基端部21bとキャップ1の凹部1aとの相対位置を合せる操作が簡易になる。
【0075】
本実施形態に係る締結装置100Bは、その他の構成が第一実施形態に係る締結装置100と同様であるため、同様の効果を有する。本実施形態に係る締結装置100Bを有する内視鏡システムは、第一実施形態に係る内視鏡システム300と同様な効果を有する。
【0076】
(変形例1)
以下、
図23から
図25を用いて、本実施形態の変形例1に係る締結装置100Cの構成を説明する。本変形例に係る締結装置100Cについては、上述の第二実施形態に係る締結装置100Bと共通の構成に同様の符号を付与し、その説明を省略する。本変形例に係る締結装置100Bと第二実施形態に係る締結装置100Bと異なる点のみを説明する。
【0077】
図23は、本変形例に係る締結装置100Cにおいて、把持部2とキャップ1とが係合された状態を示す下面図である。
図24は、本変形例に係る締結装置100Cにおいて、把持部2がキャップ1よりもさらに先端側へ移動されることにより、把持部2とキャップ1との係合が解除され、かつ、把持部2の長手軸周りの回転が規制される状態を示す下面図である。
図25は、本変形例に係る締結装置100Cにおいて、把持部2とキャップ1との係合が解除され、かつ、把持部2の長手軸周りの回転に対する規制が解除される状態を示す下面図である。
【0078】
図23に示すように、本変形例に係る締結装置100Cは、回転調整ワイヤ292の代わりに、強度がより高い回転規制ワイヤ294が樹脂シース293に挿通される点で上述の第二実施形態に係る締結装置100Bと異なる。そして、本変形例に係る締結装置100Cは、把持部2の基端部21bに、基端側へ向かって開口し、回転規制ワイヤ294が挿入可能なポート295を有している。
【0079】
本変形例に係る回転規制ワイヤ294は、締結装置100Cが体内に挿入される際、湾曲した管腔内にスムーズに通過できるために、可撓性を有することが好ましい。一方、回転規制ワイヤ294は、後述する
図19に示すように、キャップ1よりも先端側へ移動されてポート295に挿入できるように、所定の剛性を有することが好ましい。回転規制ワイヤ294は、キャップ1に形成された貫通孔および樹脂シース293に挿通されて基端側のワイヤシース固定部260まで延びて形成されている。本変形例において、図示しないが、回転規制ワイヤ294は、ワイヤシース固定部260で操作されるように構成してもよいし、回転規制ワイヤ294のみを調整する操作部を構成してもよい。
【0080】
本変形例に係る締結装置100Cは、体内に挿入される際、
図23に示すように、回転規制ワイヤ294が把持部2の基端部21bに形成されたポート295に挿入される状態で、把持部2とキャップ1との係合が維持される。この状態において、把持部2が長手軸方向周りに回転することが規制される。本変形例に係る締結装置100Cは、把持部2とキャップ1とが係合されて一体化した状態で体内における処置対象となる組織の近傍までに挿入される。
【0081】
図24に示すように、本変形例に係る締結装置100Cは、組織の近傍まで挿入される状態で、術者がワイヤシース280を先端側へ押し込むと、ワイヤシース280に連結された把持部2が一緒に先端側へ移動する。これにより、把持部2とキャップ1との係合が解除される。ただし、回転規制ワイヤ294が把持部2の基端部21bに形成されたポート295に挿入されているため、把持部2の長手軸方向周りの回転に対する規制が維持される。
【0082】
図25に示すように、術者が回転規制ワイヤ294を基端側へ移動させると、回転規制ワイヤ294がポート295から引き抜かれる。このため、把持部2の長手軸方向周りの回転に対する規制が解除される。その結果、術者がワイヤシース280を回転させるように操作すると、把持部2が長手軸周りに回転することができる。そして、上述の各実施形態および変形例同様、術者が締結装置100Cを用いて体内組織に対する処置を行うことができる。
【0083】
図示しないが、術者は、締結装置100Cを用いて体内組織に対する処置が完了し、締結装置100Cを体外へ抜去する際、再度キャップ1と把持部2とを係合させる。術者がキャップ1と把持部2とを係合させる際、例えば、ワイヤシース280を回転させるように操作し、把持部2の基端部21bに形成されたポート295の位置と回転規制ワイヤ294の位置とを合わせてから、回転規制ワイヤ294をポート295に向けて押し込むことができる。そして、回転規制ワイヤ294がポート295に挿入された状態、すなわち、把持部2の長手軸周りの回転が規制された状態で、術者がワイヤシース280を基端側へ移動すると、把持部2の基端部21bがキャップ1の凹部1aに収容され、把持部2とキャップ1とが係合される。術者は、把持部2とキャップ1とが係合された締結装置100Cを体外へ抜去することができる。
【0084】
本変形例に係る締結装置100Cは、その他の構成が本実施形態に係る締結装置100Bと同様であるため、同様の効果を有する。本変形例に係る締結装置100Cを有する内視鏡システムは、本実施形態に係る内視鏡システムと同様な効果を有する。
【0085】
(変形例2)
以下、
図26および
図27を用いて、本実施形態の変形例2に係る締結装置100Dの構成を説明する。本変形例に係る締結装置100Dについては、上述の変形例1に係る締結装置100Cと共通の構成に同様の符号を付与し、その説明を省略する。本変形例に係る締結装置100Dと変形例1に係る締結装置100Cと異なる点のみを説明する。
【0086】
図26は、本変形例に係る締結装置100Dにおいて、把持部2がキャップ1よりもさらに先端側へ移動されることにより、把持部2とキャップ1との係合が解除され、かつ、把持部2の長手軸周りの回転が規制される状態を示す下面図である。
図27は、本変形例に係る締結装置100Dにおいて、把持部2の長手軸周りの回転に対する規制が解除される状態を示す下面図である。
【0087】
本変形例に係る締結装置100Dは、把持部2の長手軸周りの回転に対する規制の形態で上述の変形例1と異なる。より具体的に、本変形例に係る締結装置100Dは、把持部2の基端部21bに形成された突起297と、突起297を把持することができる鉗子(回転規制部材)296とを有する。
【0088】
本変形例に係る締結装置100Dにおいて、把持部材2の基端部21bにおいて、ワイヤシース280の長手軸に対して交差する方向に、すなわち、径方向外側へ突出する突起297が形成されている。一方、鉗子296は、キャップ1に形成された貫通孔および樹脂シース293に挿通し、キャップ1に形成された貫通孔および樹脂シース293に挿通されて基端側のワイヤシース固定部260まで延びて形成されている。本変形例において、図示しないが、鉗子296は、ワイヤシース固定部260で操作されるように構成してもよいし、鉗子296のみを操作する操作部を構成してもよい。本変形例に係る鉗子296は、例えば、上述の本実施形態の変形例1に係る回転規制ワイヤ294の先端に、突起297を把持できる一対の鉗子を設けて構成してもよい。ただし、本変形例に係る鉗子296は、この構成に限定されない。例えば、可撓性を有し、かつ、所定の強度を有するワイヤの先端に、突起297に引っ掛かることができるフックを設けてもよい。
【0089】
本変形例に係る締結装置100Dは、把持部2とキャップ1とが係合され一体化となった状態で処置対象となる体内の組織の近傍まで挿入される。本変形例に係る締結装置100Dは、体内に挿入される際、把持部2の基端部21bがキャップ1に形成された凹部1aに収容され、かつ、鉗子296が突起297を把持する状態になる。これにより、把持部2の長手軸周りの回転が規制される。
【0090】
本変形例に係る締結装置100Dは、組織の近傍まで挿入される際、
図26に示すように、術者がワイヤシース280を先端側へ押し込むと、ワイヤシース280に連結された把持部2が一緒に先端側へ移動する。これにより、把持部2とキャップ1との係合が解除される。ただし、鉗子296が突起297を把持する状態が維持されるため、把持部2の長手軸方向周りの回転に対する規制が維持される。
【0091】
図27に示すように、術者が鉗子296を操作することにより、鉗子296が突起297を把持する状態を解除できる。この操作により、把持部2の長手軸方向周りの回転に対する規制が解除される。その結果、術者がワイヤシース280を回転させるように操作すると、把持部2が長手軸周りに回転することができる。そして、上述の各実施形態および変形例同様、術者が締結装置100Dを用いて体内組織に対する処置を行うことができる。
【0092】
術者は、締結装置100Dを用いて体内組織に対する処置が完了し、締結装置100Dを体外へ抜去する際、再度キャップ1と把持部2とを係合させる。術者がキャップ1と把持部2とを再度係合させる際、例えば、ワイヤシース280を回転させるように操作し、把持部2の基端部21bに形成された突起297の位置と鉗子296の位置とを合わせてから、鉗子296を把持部2の基端部21bに向けて移動し、突起297を把持することができる。そして、鉗子296が突起297を把持する状態、すなわち、把持部2の長手軸周りの回転が規制された状態で、術者がワイヤシース280を基端側へ移動すると、把持部2の基端部21bがキャップ1の凹部1aに収容され、把持部2とキャップ1とが係合される。術者は、把持部2とキャップ1とが係合された締結装置100Dを体外へ抜去することができる。
【0093】
本変形例に係る締結装置100Dは、その他の構成が本実施形態に係る締結装置100Bと同様であるため、同様の効果を有する。本変形例に係る締結装置100Dを有する内視鏡システムは、本実施形態に係る内視鏡システムと同様な効果を有する。
【0094】
以上、本開示の各実施形態および各実施形態に対応する変形例について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0095】
例えば、本開示の第一実施形態の変形例に係る締結装置100Bの構成を第二実施形態および各変形例に適用することが可能である。より具体的に、本開示の第二実施形態および各変形例に係る締結装置100B,100C,100Dの第一把持部材21の基端部21bおよびキャップ1の凹部1aのそれぞれにおいて、ワイヤシース280の長手軸に対して傾斜する斜面を形成してもよい。これにより、術者がキャップ1と把持部2とを係合させる操作において、ワイヤシース280を回転させるように操作し、周方向においてキャップ1と把持部2との位置合わせを行う必要がない。その結果、術者による操作がより簡単になる。
【0096】
本開示に係る処置対象Tに対する縫合方法について、第一実施形態に係る締結装置100の動作を一例として説明したが、これに限定されることがない。例えば、本開示の第一実施形態の変形例、第二実施形態、および第二実施形態の各変形例に係る締結装置についても、把持部2の長手軸周りの回転を規制するステップと把持部2の長手軸周りの回転に対する規制を解除するステップとを適宜変更することで、本開示の各実施形態および対応する変形例に適用することができる。
【0097】
以上、本開示の各実施形態および対応する各変形例について図面を参照して詳述したが、本開示はこれらの実施形態および変形例に限定されることはない。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本開示は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本開示は、体内の組織を処置する際、内視鏡の先端側に取り付けられた締結装置が長手軸方向周りに回転可能な状態と、締結装置が長手軸周りの回転が規制される状態とを好適に切り替えることができる締結装置、内視鏡システム、および縫合方法を提供できる。
【符号の説明】
【0099】
1 キャップ
1a 凹部
1b,1c 斜面
2 把持部
21 第一把持部材(第一ジョー)
22 第二把持部材(第二ジョー)
21a 第一先端部
21b 基端部
21c 当接ピン
21d 第一係合溝
21d,21f 斜面
22a U字部材
23 開閉回転軸
25 視野空間
3 ステープル放出部
4 ステープル受容部
41 ポケット
5 開閉操作ワイヤ
6 放出操作ワイヤ
100,100A,100B,100C,100C 締結装置(医療用ステープラ、ステープラユニット)
200 内視鏡
210 挿入部
211 先端部
214 鉗子口
215 対物レンズ
260 ワイヤシース固定部
266 ゴム栓
280 ワイヤシース
290,293 樹脂シース
292 回転調整ワイヤ
294 回転規制ワイヤ
295 ポート
296 鉗子
297 突起
300 医療システム