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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】発光式表示パネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20250403BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G09F9/30 349Z
G09F9/30 338
G09F9/33
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021075394
(22)【出願日】2021-04-27
(65)【公開番号】P2022169382
(43)【公開日】2022-11-09
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503185921
【氏名又は名称】株式会社タテイシ広美社
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】立石 良典
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138779(JP,A)
【文献】特開2017-003751(JP,A)
【文献】特開2021-012251(JP,A)
【文献】特開2021-034441(JP,A)
【文献】特開2009-193754(JP,A)
【文献】特開2008-129043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0370182(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0154130(US,A1)
【文献】国際公開第2018/138892(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/082399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F9/00-9/46
13/00-13/46
H10H20/00
20/85-20/858
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースパネルのオモテ面に二次元的に配列された複数の発光モジュールの発光状態を切り替えることによって発光画像を表示する発光式表示パネルの製造方法であって、
透光性を有する熱収縮フィルムでベースパネルのオモテ面側を覆うとともに、ベースパネルの周縁に対して熱収縮フィルムを固定する熱収縮フィルム被覆工程と、
熱収縮フィルムを加熱して収縮させることで、ベースパネルに沿って熱収縮フィルムが張った状態にする熱収縮フィルム加熱工程と
を経ることによって、ベースパネルのオモテ面側を平滑化することを特徴とする発光式表示パネルの製造方法。
【請求項2】
熱収縮フィルムのオモテ面側にバックグランド画像を印刷するバックグランド画像印刷工程を行う請求項1記載の発光式表示パネルの製造方法。
【請求項3】
熱収縮フィルム被覆工程を行うよりも前に、透光性を有する緩衝シートでベースパネルのオモテ面側を覆う緩衝シート被覆工程を行う請求項1又は2記載の発光式表示パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元的に配列された複数の発光モジュールの発光状態を切り替えることによって発光画像を表示する発光式表示パネルと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
ベースパネル上に二次元的に配列された複数の発光モジュール(LED等)の発光状態を切り替えることによって発光画像を表示する発光式表示パネルは、宣伝広告を行う電子看板等として、広く使用されるようになってきている。発光式表示パネルとしては、これまでに種々のものが提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-255862号公報
【文献】特開2012-089806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発光式表示パネルで発光画像を表示することができるのは、当然ながら、その電源を駆動して発光モジュールを発光させているときだけである。電子看板として設置された発光式表示パネルは、深夜から早朝にかけての人通りが少ない時間帯には、電源をオフにすることが一般的であるところ、その間は、発光式表示パネルの発光面(発光画像を表示する表示面)が真っ暗な状態になる。このため、景観を損ねることにつながる。
【0005】
このような実状に鑑みて、本出願人は、図柄を印刷した透光性パネルを、ベースパネルのオモテ面(発光モジュールが配列された面)側に重ねて配することを考えた。これにより、発光モジュールが発光していないときには、透光性パネルに印刷された図柄が視認されるようになる。このため、上記の問題を解決することができる。一方、発光モジュールが発光しているときには、発光モジュールからの出射光が透光性パネルを通過し、発光式表示パネルの表示面を見ている人に、発光画像(発光モジュールの発光に起因する表示画像)を視認させることができる。このとき、透光性パネルに印刷された図柄は、発光画像に負けて殆ど視認できない状態となる。
【0006】
しかし、上記のように、図柄を印刷した透光性パネルをベースパネルに重ねた発光式表示パネルでは、発光画像が歪んで見えることがあった。というのも、透光性パネルが僅かにでも撓んでいると、その撓んだ部分が擬似レンズとなって、その部分に重なる発光画像が歪んで表示されてしまうところ、透光性パネルを撓みのない完全に平坦な状態で発光式表示パネルに重ねて固定することは、非常に難しいからである。
【0007】
このため、本出願人は、上記の問題を解決すべく、さらに検討を進め、ベースパネルのオモテ面(発光モジュールが配列された面)側に透明樹脂を流し込んで固化させることで、ベースパネルのオモテ面側を平滑化し(発光モジュール等による凹凸を透明樹脂で埋めて平滑な状態とし)、その平滑化した面に図柄を印刷することを考えた。これにより、上述した擬似レンズによる発光画像の歪を抑えることができる。
【0008】
しかし、上記のように、透明樹脂を流し込んで固化させることによってベースパネルのオモテ面側を平滑化する方法は、透明樹脂を流し込んだり、その透明樹脂の表面を平坦に整えたりするのに、手間を要する。また、この方法では、透明樹脂は、ベースパネルに完全に一体化された状態となる。このため、図柄(発光モジュールが発光していないときに視認される図柄)を変更する場合には、発光式表示パネル全体を交換する必要が生じる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ベースパネルのオモテ面(発光モジュールが配列された面)側を平滑化する工程を手間のかからないものとすることで、発光画像の歪が抑えられた発光式表示パネルを容易に製造できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
ベースパネルのオモテ面に二次元的に配列された複数の発光モジュールの発光状態を切り替えることによって発光画像を表示する発光式表示パネルの製造方法であって、
透光性を有する熱収縮フィルムでベースパネルのオモテ面側を覆うとともに、ベースパネルの周縁に対して熱収縮フィルムを固定する熱収縮フィルム被覆工程と、
熱収縮フィルムを加熱して収縮させることで、ベースパネルに沿って熱収縮フィルムが張った状態にする熱収縮フィルム加熱工程と
を経ることによって、ベースパネルのオモテ面側を平滑化することを特徴とする発光式表示パネルの製造方法
を提供することによって解決される。
【0011】
これにより、熱収縮フィルム被覆工程でベースパネルのオモテ面側に配された熱収縮フィルムに弛みやシワがあっても、その後に行われる熱収縮フィルム加熱工程によって、熱収縮フィルムが収縮してベースパネルのオモテ面側でピンと張った状態となる。このため、熱収縮フィルムをベースパネルに固定して加熱するという簡単な作業で、ベースパネルのオモテ面側を平滑化することができる。したがって、発光画像の歪が抑えられた発光式表示パネルを容易に製造することが可能になる。
【0012】
本発明の発光式表示パネルの製造方法においては、熱収縮フィルムのオモテ面側にバックグランド画像を印刷するバックグランド画像印刷工程を行うことが好ましい。
【0013】
これにより、発光モジュールが発光しているときには発光画像を視認させ、発光モジュールが発光していないときにはバックグランド画像を視認させることが可能になる。このため、発光式表示パネルの電源をオフにしているときでも、発光式表示パネルをお洒落に見せることが可能になる。また、バックグランド画像を変更する場合には、熱収縮フィルムのみの交換で対応することが可能になる。発光モジュールが発光しているときのバックグランド画像は、発光画像に負けて殆ど視認できない状態となる。
【0014】
本発明の発光式表示パネルの製造方法においては、熱収縮フィルム被覆工程を行うよりも前に、透光性を有する緩衝シートでベースパネルのオモテ面側を覆う緩衝シート被覆工程を行うことも好ましい。
【0015】
というのも、発光モジュールの角部等が熱収縮フィルムに当たっていると、熱収縮フィルムを加熱して収縮させる際に、その角部等に熱収縮フィルムが引っ掛かって、熱収縮フィルムにシワが形成されたり、熱収縮フィルムが破れたりするおそれがある。この点、ベースパネルと熱収縮フィルムとの間に緩衝シートを配することで、発光モジュールの角部等が熱収縮フィルムに直接当たらないようにすることができるからである。また、発光モジュールからの出射光を緩衝シートで適度に拡散させ、発光画像を美しく見せることも可能になる。
【0016】
上記課題は、
ベースパネルと、
ベースパネルのオモテ面に二次元的に配列された複数の発光モジュールと
を備え、
複数の発光モジュールの発光状態を切り替えることによって発光画像を表示する発光式表示パネルであって、
ベースパネルのオモテ面側が、熱収縮された熱収縮フィルムで覆われて平滑化されたことを特徴とする発光式表示パネル
を提供することによっても解決される。
【0017】
本発明の発光式表示パネルにおいては、
ベースパネルのオモテ面に、複数のスペーサー用凸部を二次元的に繰り返し形成し、
熱収縮フィルムを、複数のスペーサー用凸部の先端面に載った状態とする
ことが好ましい。
【0018】
というのも、発光モジュールの上側に熱収縮フィルムが直接載っていると、熱収縮フィルムを加熱して収縮させる際の収縮力が発光モジュールに伝わり、発光モジュールの向きや位置がずれたり、最悪の場合には、発光モジュールがもげたりするおそれがある。この点、上記のように、スペーサー用凸部を設けることで、熱収縮フィルムの収縮力が発光モジュールに伝わりにくくすることができるからである。また、発光モジュールと熱収縮フィルムとの間に適度な隙間を設け、発光モジュールからの出射光をその隙間で適度に拡散させることも可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によって、ベースパネルのオモテ面(発光モジュールが配列された面)側を平滑化する工程を手間のかからないものとすることで、発光画像の歪が抑えられた発光式表示パネルを容易に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態の発光式表示パネルの全体を示した斜視図である。
図2】第一実施形態の発光式表示パネルの分解斜視図である。
図3】第一実施形態の発光式表示パネルをy軸に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図4】発光画像の非表示時(バックグランド画像の表示時)における第一実施形態の発光式表示パネルを示した斜視図である。
図5】第二実施形態の発光式表示パネルの全体を示した斜視図である。
図6】第二実施形態の発光式表示パネルの分解斜視図である。
図7】第二実施形態の発光式表示パネルをy軸に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の発光式表示パネルの好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明の発光式表示パネルを説明するが、本発明の発光式表示パネルの技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明の発光式表示パネル及びその製造方法には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0022】
1.第一実施形態の発光式表示パネル
まず、第一実施形態の発光式表示パネルについて説明する。図1は、第一実施形態の発光式表示パネルの全体を示した斜視図である。図2は、第一実施形態の発光式表示パネルの分解斜視図である。図3は、第一実施形態の発光式表示パネルをy軸に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。図4は、発光画像の非表示時(バックグランド画像αの表示時)における第一実施形態の発光式表示パネルを示した斜視図である。図1~4には、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を示している。x軸、y軸及びz軸のそれぞれの向きは、異なる図面間においても共通している。
【0023】
1.1 第一実施形態の発光式表示パネルの構造
第一実施形態の発光式表示パネルは、図1に示すように、パネル状の表示装置となっており、そのオモテ面(z軸方向正側を向く面。以下同じ。)に、発光画像を表示するものとなっている。この発光式表示パネルは、街角や、店舗の駐車場や、道路脇等で宣伝広告を行うための電子看板として好適に用いることができる。また、道路で交通渋滞情報等を表示する電子表示板としても好適に用いることができる。さらに、駅や空港等の交通機関で発車時刻やフライト時刻等を案内するための電子案内板としても好適に用いることができる。さらにまた、スタジアム等でゲーム経過やリプレイ画像等を流す大型ビジョンとしても好適に用いることができる。発光式表示パネルで表示される発光画像には、静止画だけでなく、動画も含まれる。
【0024】
第一実施形態の発光式表示パネルは、図2に示すように、ベースパネル1と、複数の発光モジュール2と、熱収縮フィルム3と、緩衝シート4とで構成されている。発光素子モジュール2は、ベースパネル1のオモテ面(z軸方向正側を向く面。以下同じ。)側に二次元的(x軸方向及びy軸方向)に配列されている。それぞれの発光モジュール2の発光状態を制御することで、発光式表示パネルのオモテ面(より正確には、熱収縮フィルム3のオモテ面3a)に所定の発光画像を表示することができる。発光モジュール2の上側(z軸方向正側)には、緩衝シート4と熱収縮フィルム3とが重ねられているが、これらの緩衝シート4及び熱収縮フィルム3はいずれも、透光性を有しているため、発光モジュール2からの出射光による発光画像は、緩衝シート4及び熱収縮フィルム3を透過して、熱収縮フィルム3のオモテ面3aに表示される。
【0025】
発光モジュール2には、通常、発光ダイオード(LED)等の発光素子が用いられる。第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、赤色LED、緑色LED及び青色LEDの3色のLEDが組み合わされ、それぞれのLEDごとに光量を制御可能としたフルカラーLEDモジュールを、それぞれの発光モジュール2として用いている。これにより、熱収縮フィルム3のオモテ面3aに表示される発光画像をフルカラー画像とすることができる。発光モジュール2に電力を供給する電源や配線等(図示省略)は、ベースパネル1のウラ側に設けられる。
【0026】
ベースパネル1のオモテ面側を覆う熱収縮フィルム3には、バックグランド画像α(図4)が印刷されている。図4に示す例では、バックグランド画像αとして、レンガ模様を表わしているが、これ以外にも、タイル模様や木目模様や無地模様(グラデーション模様を含む。)を表わすこともできる。また、風景や人物や製品等を撮影した写真や、キャラクターや製品等を描いたイラストや、製品名や会社名等を表わした文字又は記号や、「非常口」や「避難場所」等を案内する案内表示等を、バックグランド画像αとして表わすこともできる。
【0027】
このバックグランド画像αは、発光モジュール2(図2)を発光させて発光画像を表示しているとき(発光画像の表示時)には、その発光画像に負けて殆ど視認できない状態となるものの、発光モジュール2を発光させておらず発光画像を表示していないとき(発光画像の非表示時)には、視認できる状態となる。すなわち、発光画像の非表示時においては、図4に示すように、バックグランド画像αを表示し、発光式表示パネルの表示面が真っ暗にならないようにすることができる。
【0028】
このため、第一実施形態の発光式表示パネルでは、発光画像の非表示時における表示面をお洒落に見せることができる。また、発光画像の非表示時における表示面でも、宣伝広告や案内等を行うこともできる。さらに、ビルの壁等に発光式表示パネルを設置する場合には、バックグランド画像αをそのビルの壁等と同じ色及び模様とすることで、発光画像の非表示時における発光式表示パネルを、その周りの壁に溶け込ませ、目立ちにくくするといったことも可能である。
【0029】
1.2 第一実施形態の発光式表示パネルの製造方法
このように、第一実施形態の発光式表示パネルは、発光画像の非表示時においてもバックグランド画像αを表示できるものであり、その設置場所や景観等に配慮した様々な工夫を施すことができるものとなっている。この発光式表示パネルは、緩衝シート被覆工程と、熱収縮フィルム被覆工程と、熱収縮フィルム加熱工程と、バックグランド画像印刷工程とを経ることによって製造される。
【0030】
1.2.1 緩衝シート被覆工程
緩衝シート被覆工程は、図2に示すように、ベースパネル1のオモテ面(z軸方向正側を向く面)側を、緩衝シート4で覆う工程である。発光モジュール2による発光画像が緩衝シート4で遮られることがないように、緩衝シート4には、透光性を有するシートが用いられる。第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、薄手の不織布シートを緩衝シート4として用いている。この緩衝シート4によって、後述する熱収縮フィルム3が、ベースパネル1や発光モジュール2等に直接接触しないようにすることができる。また、発光モジュール2からの出射光を緩衝シート4で適度に拡散させて、発光画像を綺麗に見せることも可能になる。
【0031】
1.2.2 熱収縮フィルム被覆工程
緩衝シート被覆工程を終えると、続いて、熱収縮フィルム被覆工程が行われる。熱収縮フィルム被覆工程は、図2に示すように、熱収縮フィルム3でベースパネル1のオモテ面側を覆う工程である。熱収縮フィルム3の周縁は、ベースパネル1の周縁(ベースパネル1の側端面)に対して固定される。発光モジュール2による発光画像が熱収縮フィルム3で遮られることがないように、熱収縮フィルム3には、透光性を有するシートが用いられる。熱収縮フィルム3は、半透明等であってもよいが、通常、透明とされる。この熱収縮フィルム3は、後述する熱収縮フィルム加熱工程によって収縮され、ベースパネル1のオモテ面に沿って張った状態とされる。
【0032】
ベースパネル1のオモテ面側には、発光モジュール2を配列したため、凹凸が存在している(発光モジュール2のある箇所が凸部になって、隣り合う発光モジュール2の隙間が凹部になっている)ところ、ベースパネル1のオモテ面側に熱収縮フィルム3を張ることによって、ベースパネル1のオモテ面側を平滑化することが可能になる。このため、ベースパネル1のオモテ面側(発光式表示パネルのオモテ面)に、バックグランド画像α(図4)を綺麗な見やすい状態で表わすことが可能となっている。また、発光モジュール2による発光画像を、発光式表示パネルの表示面(オモテ面)に綺麗に映すことも可能となっている。
【0033】
熱収縮フィルム3は、加熱により収縮する(熱収縮する)ものであれば、特に限定されない。熱収縮フィルム3としては、ポリオレフィン系フィルムや、ポリエチレン系フィルムや、ポリスチレン系フィルムや、ポリ塩化ビニル系フィルムや、ポリエチレンテレフタレート系フィルム等が例示される。
【0034】
なかでも、ポリオレフィン系フィルムは、価格がやや高いという欠点を有するものの、[1]収縮率が高く仕上がりがよい(シワ等が形成されにくい)、[2]耐刺突性に優れる、[3]引裂強度が高い、[4]比較的低温で収縮させることができるのでその下側にある発光モジュール2等に余計な熱をかけることなく収縮させることができる、という利点を有しているため、上記の熱収縮フィルム3として好適に用いることができる。第一実施形態の発光式表示パネルにおいても、熱収縮フィルム3としてポリオレフィン系フィルムを用いている。
【0035】
熱収縮フィルム3の熱収縮率は、特に限定されない。しかし、熱収縮フィルム3の熱収縮率が小さいと、後述する熱収縮フィルム加熱工程を行っても、熱収縮フィルム3が思うように収縮せず、加熱後の熱収縮フィルム3にシワ等が残るおそれがある。このため、熱収縮フィルム3には、熱収縮率(JIS-Z-1709に準拠して測定される収縮率(%)のこと。以下同じ。)が30%以上のものを使用することが好ましい。熱収縮フィルム3の熱収縮率は、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。熱収縮フィルム3の熱収縮率に、特に上限はないが、通常、70~80%程度までである。第一実施形態の発光式表示パネルにおいて、熱収縮フィルム3の熱収縮率は、58~60%程度となっている。
【0036】
熱収縮フィルム3の厚さも、特に限定されない。しかし、熱収縮フィルム3が薄すぎると、熱収縮フィルム3の強度が低下し、熱収縮フィルム3の耐刺突性や引裂強度を維持に歯肉なる。このため、熱収縮フィルム3の厚さは、5μm以上とすることが好ましい。熱収縮フィルム3の厚さは、10μm以上であることがより好ましく、13μm以上であることがさらに好ましい。ただし、熱収縮フィルム3を厚くしすぎると、熱収縮フィルム3が熱収縮しにくくなるおそれがある。このため、熱収縮フィルム3の厚さは、通常、500μm以下とされる。熱収縮フィルム3の厚さは、100μm以下とすることがより好ましく、50μm以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態の発光式表示パネルにおいて、熱収縮フィルム3の厚さは、約15μmとなっている。
【0037】
既に述べたように、熱収縮フィルム3は、ベースパネル1の周縁に対して固定される。これにより、後述する熱収縮フィルム加熱工程で熱収縮フィルム3を加熱して収縮させたときに、熱収縮フィルム3にテンションがかかるようにして、熱収縮フィルム3をピンと張った状態とすることができる。ベースパネル1の周縁に対して熱収縮フィルム3を固定する方法は、特に限定されない。第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、図2に示すように、ベースパネル1の側端面に沿って両面粘着テープ5を貼り付けており、この両面粘着テープ5における外側の粘着面に対して、熱収縮フィルム3を粘着するようにしている。
【0038】
両面粘着テープ5は、ベースパネル1の側端面に対して間欠的に設けてもよいが、この場合には、熱収縮フィルム3の周縁近傍にかかるテンションが不均一になり、熱収縮フィルム3の周縁近傍にシワ等が形成されやすくなるおそれがある。このため、第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、両面粘着テープ5を、ベースパネル1の側端面に対して切れ目なく連続的に設けている。
【0039】
両面粘着テープ5に粘着するための部分(ベースパネル1の側端面に被せる部分)を確保するため、熱収縮フィルム3は、ベースパネル1のオモテ面よりも一回り大きな寸法に裁断された状態となっている。熱収縮フィルム3をベースパネル1の側端面に貼り付けた後、熱収縮フィルム3における、両面粘着テープ5よりも外側にはみ出た部分は、カッターやハサミ等で切除することが好ましい。これにより、発光式表示パネルの見た目を良くすることができる。
【0040】
1.2.3 熱収縮フィルム加熱工程
熱収縮フィルム被覆工程を終えると、続いて、熱収縮フィルム加熱工程が行われる。熱収縮フィルム加熱工程は、図3に示すように、ベースパネル1のオモテ面側に取り付けられた熱収縮フィルム3を加熱して収縮させる工程である。熱収縮フィルム被覆工程を行った直後の熱収縮フィルム3にシワ等が形成されていたとしても、この熱収縮フィルム加熱工程によって、熱収縮フィルム3を収縮させ、熱収縮フィルム3をベースパネル1に沿って張った状態とすることができる。すなわち、ベースパネル1のオモテ面側を平滑化することができる。
【0041】
熱収縮フィルム加熱工程において、熱収縮フィルム3を加熱する方法は、特に限定されない。しかし、発光式表示パネル全体を加熱すると、発光モジュール2や、ベースパネル1のウラ側に設けられた配線や電子基板等(図示省略)が損傷するおそれがある。このため、熱収縮フィルム3の加熱は、ベースパネル1のオモテ面側(熱収縮フィルム3のオモテ面3a側)から熱風を吹き付けることによって行うことが好ましい。これにより、熱収縮フィルム3よりも下側(z軸方向負側)にある発光モジュール2等が熱による損傷を受けにくくすることができる。
【0042】
第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、ドライヤー(ヒーティングガン)を用いて、ベースパネル1のオモテ面側(熱収縮フィルム3のオモテ面3a側)から熱風を吹き付けることで、熱収縮フィルム3を加熱している。熱収縮フィルム3に服浸ける熱風の風量は、特に限定されないが、通常、0.15~0.25m/分程度とされる。
【0043】
熱収縮フィルム3に吹き付ける熱風の温度(以下、「熱収縮フィルム3の加熱温度」という。)は、熱収縮フィルム3の種類等によっても異なり、特に限定されない。しかし、熱収縮フィルム3の加熱温度が低すぎると、熱収縮フィルム3が思ったように熱収縮しないおそれがある。この問題は、熱収縮フィルム3として、低い温度でも熱収縮するものを採用すれば、解消することができる。
【0044】
しかし、この場合には、発光式表示パネルを使用しているときに、発光モジュール2からの熱(発光モジュール2としてLEDを用いた場合でも、発光モジュール2が40℃程度まで昇温する。)や、太陽からの熱によって、熱収縮フィルム3が熱収縮するおそれがある。このため、熱収縮フィルム3は、40~50℃程度の熱では熱収縮しないものを用い、熱収縮フィルム加熱工程における熱収縮フィルム3の加熱温度も、それ以上の温度に設定することが好ましい。熱収縮フィルム3の加熱温度は、80℃以上とすることが好ましく、90℃以上とすることがより好ましく、100℃以上とすることがさらに好ましい。
【0045】
ただし、熱収縮フィルム3の加熱温度を高くしすぎると、発光モジュール2や、ベースパネル1のウラ側に設けられた配線や電子基板等(図示省略)が損傷するおそれがある。このため、熱収縮フィルム3の加熱温度を高くしすぎるのもよくない。熱収縮フィルム3の加熱温度は、200℃以下とすることが好ましく、170℃以下とすることがより好ましく、150℃以下とすることがさらに好ましい。第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、熱収縮フィルム3の加熱温度を、100~120℃程度に設定している。
【0046】
熱収縮フィルム3の加熱は、熱収縮フィルム3がピンと張ってシワ等がなくなるまで行う。熱収縮フィルム3が綺麗に張った状態となると、熱収縮フィルム加熱工程が完了する。
【0047】
1.2.4 バックグランド画像印刷工程
熱収縮フィルム加熱工程を終えると、続いて、バックグランド画像印刷工程を行う。バックグランド画像印刷工程は、図4に示すように、熱収縮フィルム3のオモテ面側にバックグランド画像α(図4に示す例ではレンガ模様)を印刷する工程である。これにより、非発光状態にあるときの発光式表示パネル(発光画像を表示していないときの発光式表示パネル)の表示面に、バックグランド画像αを表示することができる。バックグランド印刷工程を行う際には、上記の熱収縮フィルム加熱工程を終えて、熱収縮フィルム3がベースパネル1のオモテ面側でピンと張った状態となっているため、熱収縮フィルム3のオモテ面にバックグランド画像αを綺麗に印刷することができる。
【0048】
既に述べたように、バックグランド画像αとしては、レンガ模様のほか、タイル模様や木目模様や無地模様(グラデーション模様を含む。)等の模様や、風景や人物や製品等を撮影した写真や、キャラクターや製品等を描いたイラストや、製品名や会社名等を表わした文字又は記号や、「非常口」や「避難場所」等を案内する案内表示等を表わすことができる。
【0049】
熱収縮フィルム3に対してバックグランド画像αを印刷する方法は、特に限定されない。バックグランド画像αの印刷方法としては、インクジェット印刷や、スクリーン印刷や、熱転写印刷等が例示される。しかし、熱転写印刷等、熱収縮フィルム3を加熱する方式の印刷は、熱収縮フィルム3を意図せず熱収縮させるおそれがある。このため、バックグランド画像αの印刷方法としては、インクジェット印刷やスクリーン印刷を採用することが好ましい。第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、インクジェット印刷によってバックグランド画像αを印刷している。インクジェット印刷では、高精細な印刷を行うことができる。加えて、インクを厚盛りすることも可能であるため、バックグランド画像αに微小な凹凸を形成することも可能である。
【0050】
2.第二実施形態の発光式表示パネル
続いて、第二実施形態の発光式表示パネルについて説明する。第二実施形態の発光式表示パネルについては、主に、上述した第一実施形態の発光式表示パネル(図1~4)と異なる構成に絞って説明する。第二実施形態の発光式表示パネルについて特に言及しない構成については、第一実施形態の発光式表示パネルで述べたものと同様の構成を採用することができる。
【0051】
図5は、第二実施形態の発光式表示パネルの全体を示した斜視図である。図6は、第二実施形態の発光式表示パネルの分解斜視図である。図7は、第二実施形態の発光式表示パネルをy軸に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。図5~6には、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標系を示している。x軸、y軸及びz軸のそれぞれの向きは、異なる図面間においても共通している。
【0052】
上述した第一実施形態の発光式表示パネルにおいては、図2に示すように、ベースパネル1のオモテ面(z軸方向正側を向く面)には、発光モジュール2以外のものを取り付けておらず、ベースパネル1のオモテ面における、発光モジュール2を配置していない箇所が、平坦となっていた。このため、図3に示すように、発光モジュール2に対して、緩衝シート4及び熱収縮フィルム3が直接載る構造となっていた。したがって、熱収縮フィルム加熱工程で熱収縮フィルム3を加熱した際に、熱収縮フィルム3の収縮力が発光モジュール2に伝わり、発光モジュール2の向きや位置がずれるおそれや、発光モジュールがもげるおそれがあった。
【0053】
これに対し、第二実施形態の発光式表示パネルにおいては、図6に示すように、ベースパネル1のオモテ面(z軸方向正側を向く面)に、スペーサー用凸部1aを形成している。スペーサー用凸部1aは、隣り合う発光モジュール2の隙間となる部分に、二次元的に繰り返し形成されている。スペーサー用凸部1aの先端面(z軸方向正側を向く端面)は、発光モジュール2の発光面(z軸方向正側を向く面)よりも、オモテ側(z軸方向正側)に高く突き出た状態となっている。それぞれのスペーサー用凸部1aの高さは、全て一定に揃えられている。
【0054】
このため、第二実施形態の発光式表示パネルでは、図7に示すように、緩衝シート4及び熱収縮フィルム3が、発光モジュール2の発光面ではなく、スペーサー用凸部1aの先端面に載る構造となっている。したがって、熱収縮フィルム加熱工程で熱収縮フィルム3を加熱した際に、熱収縮フィルム3の収縮力が、発光モジュール2に伝わらないようになっている。これにより、熱収縮フィルム3が熱収縮する際の発光モジュール2の向きや位置のずれを抑えることができる。加えて、発光モジュール2の発光面側に隙間βを形成し、熱収縮フィルム3に当てた熱風の熱が、発光モジュール2に伝わりにくくすることも可能となっている。また、その隙間βによって、発光モジュール2からの出射光を適度に拡散させ、発光画像を綺麗に見せることも可能となっている。
【0055】
3.その他
上述した第一実施形態の発光式表示パネルや第二実施形態の発光式表示パネルにおいては、バックグランド画像αを印刷により設けたところ、バックグランド画像αは、印刷以外の方法により設けることもできる。例えば、バックグランド画像αを手書きすることもできる。また、第一実施形態の発光式表示パネルや第二実施形態の発光式表示パネルにおいては、バックグランド画像αを熱収縮フィルム3に表したところ、バックグランド画像αは、熱収縮フィルム3以外に表すこともできる。例えば、緩衝シート4のオモテ面4aやウラ面4bに、バックグランド画像αを表わすこともできる。
【符号の説明】
【0056】
1 ベースパネル
1a スペーサー用凸部
2 発光モジュール
3 熱収縮フィルム
3a 熱収縮フィルムのオモテ面(表示面)
3b 熱収縮フィルムのウラ面
4 緩衝シート
4a 緩衝シートのオモテ面
4b 緩衝シートのウラ面
5 両面粘着テープ
α バックグランド画像
β 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7