(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】積層メモリ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G11C 29/00 20060101AFI20250403BHJP
G11C 5/04 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G11C29/00 412
G11C29/00 462
G11C5/04 220
(21)【出願番号】P 2023539576
(86)(22)【出願日】2021-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2021029421
(87)【国際公開番号】W WO2023013065
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】515225518
【氏名又は名称】ウルトラメモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 康利
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚記
(72)【発明者】
【氏名】元山 裕二
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-505491(JP,A)
【文献】特開2014-071932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0180840(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0055895(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0047343(US,A1)
【文献】米国特許第05430679(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0204847(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0223171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 29/00
G11C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、
前記メモリチップは、
複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロックと前記正規メモリブロックの不良メモリセルを代替する予備メモリブロックとを有するメモリ部と、
積層された2以上の前記メモリチップに関して、前記正規メモリブロックを前記予備メモリブロックで代替する対象となる前記メモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部と、
アクセス要求先の前記スライスアドレス及び前記メモリアドレスを示す要求アドレスと、前記代替元スライスアドレス及び前記代替元メモリアドレスと、を比較する比較部と、
比較結果に基づいて、実際にアクセスする前記メモリ部を特定するとともに、アクセスタイミングを生成する特定部と、
生成されたアクセスタイミングと他のメモリチップから送信されるアクセスタイミングとのいずかを選択して、選択されたアクセスタイミングで前記メモリ部へのアクセスを制御するタイミング制御部と、
特定された前記メモリ部に対して選択されたアクセスタイミングでリードライトを実行する実行部と、
を備える積層メモリ。
【請求項2】
複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、
前記複数のメモリチップのうちの1つは、外部との間で入出力信号を送受信可能な入出力回路を備え、リードライトのタイミングを示すアクセスタイミングを前記複数のメモリチップのうちの他のメモリチップに送信するマスタースライスであり、
前記
複数のメモリチップ
のうちの他のメモリチップのそれぞれは、
複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部と、
前記メモリ部へのアクセスタイミングを生成する特定部と、
前記特定部で生成されたアクセスタイミングと
前記マスタースライスから送信されるアクセスタイミングとのいずれかを選択するタイミング制御部と、
選択されたアクセスタイミングで
前記メモリ部へのリードライト
データの送受信、及び前記マスタースライスの前記入出力回路へのリードライトデータの送受信を実行する実行部と、
を備える積層メモリ。
【請求項3】
複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、
前記メモリチップのそれぞれは、
複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロックと前記正規メモリブロックの不良メモリセルを代替する予備メモリブロックとを有するメモリ部と、
積層された全部の前記メモリチップに関して、前記正規メモリブロックを前記予備メモリブロックで代替する対象となる前記メモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部と、
アクセス要求先の前記スライスアドレス及び前記メモリアドレスを示す要求アドレスと、前記代替元スライスアドレス及び前記代替元メモリアドレスと、を比較する比較部と、
比較結果に基づいて、実際にアクセスする前記メモリ部を特定する特定部と、
特定された前記メモリ部に対してリードライトを実行する実行部と、
を備える積層メモリ。
【請求項4】
前記タイミング制御部は、他の前記メモリチップから出力されるアクセス先のスライスアドレスに基づいて、アクセス先スライスを特定する請求項
1に記載の積層メモリ。
【請求項5】
前記タイミング制御部は、他の前記メモリチップによって生成されたタイミングを外部からの実行タイミングの指示として取得する請求項
1に記載の積層メモリ。
【請求項6】
前記比較部は、自身の前記メモリチップの前記正規メモリブロック又は前記予備メモリブロックを用いるか否かを示す信号を比較結果として出力する請求項1又は3に記載の積層メモリ。
【請求項7】
前記メモリチップは、自身の前記メモリチップを識別するスライスアドレスである個別スライスアドレスをチップ識別情報として格納するチップ識別情報格納部をさらに備え、
前記比較部は、
前記個別スライスアドレスが前記要求アドレスに含まれるスライスアドレスに合致するか否かを比較するチップ比較部と、
前記要求アドレスが前記代替元
スライスアドレス
及び前記代替元メモリアドレスと合致するか否かを比較するアドレス比較部と、
を備え、
前記特定部は、比較結果に基づいて、
実際にアクセスする前記メモリ部を特定する請求項1又は3に記載の積層メモリ。
【請求項8】
前記正規メモリブロック及び前記予備メモリブロックは、自身の不良メモリセルを置換可能な冗長メモリセルを有する請求項1又は3に記載の積層メモリ。
【請求項9】
請求項1又は3に記載の積層メモリの製造方法であって、
複数の前記メモリチップを含む半導体ウエハを積層する積層工程と、
積層された前記半導体ウエハに含まれる前記正規メモリブロックの不良メモリセルを前記予備メモリブロックのメモリセルで置換する置換工程と、
前記置換工程の後に、積層された前記メモリチップを個片化する個片化工程と、
を備える積層メモリの製造方法。
【請求項10】
前記積層工程の前に、積層される全ての前記半導体ウエハのうち、積層される他の前記メモリチップにアクセス要求及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する前記半導体ウエハについて、配線層を用いて決定する配線層形成工程をさらに備える請求項9に記載の積層メモリの製造方法。
【請求項11】
前記積層工程の後、置換工程の前に、積層される全ての前記半導体ウエハのうち、積層される他の前記メモリチップに命令信号及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する前記半導体ウエハを決定するマスターチップ決定工程をさらに備える請求項9に記載の積層メモリの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層メモリ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記憶装置としてDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ(RAM)が知られている。DRAMには、演算装置(以下、論理チップという)の高性能化やデータ量の増大に耐えうる大容量化が求められている。そこで、メモリ(メモリセルアレイ、メモリチップ)の微細化及びセルの平面的な増設による大容量化が図られてきた。一方で、微細化によるノイズへの惰弱性や、ダイ面積の増加等により、この種の大容量化は限界に達してきている。
【0003】
そこで、昨今では、平面的なメモリを複数積層して3次元化(3D化)して大容量化を実現する技術が開発されている。そして、複数積層されたモジュールを電気的に接続する半導体モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の半導体モジュールは、欠陥の無いセル、欠陥セル、及び予備セルを有する複数のダイを備える。また、特許文献1の半導体モジュールでは、複数のダイの1つがインターフェースダイとして機能する。インターフェースダイには、I/O回路、インターフェースI/O回路等のコンポーネントが含まれる。また、インターフェースダイには、全てのダイに関するアクセス対象のアドレスと、欠陥セルのアドレスとを比較する比較回路を有する。
【0006】
一方、特許文献1では、インターフェースダイにおいて全てのダイの制御が実施される。そのため、インターフェースダイから各ダイへの信号線の数(TSV又はマイクロバンプの数)が増加する。そのため、半導体モジュールの歩留まりが低下する。また、引用文献1では、各ダイで比較回路を有する半導体モジュールも開示されているが、インターフェースダイにおいて、いずれのダイにアクセスされているかについての情報を有していない。そのため、各ダイのI/Oの動作タイミングをどのように制御するのかについては開示されていない。
【0007】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、歩留まりを改善するとともに、好適な動作タイミングの制御が可能な積層メモリ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、前記メモリチップは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロックと前記正規メモリブロックの不良メモリセルを代替する予備メモリブロックとを有するメモリ部と、積層された2以上の前記メモリチップに関して、前記正規メモリブロックを前記予備メモリブロックで代替する対象となる前記メモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部と、アクセス要求先の前記スライスアドレス及び前記メモリアドレスを示す要求アドレスと、前記代替元スライスアドレス及び前記代替元メモリアドレスと、を比較する比較部と、比較結果に基づいて、実際にアクセスする前記メモリ部を特定するとともに、アクセスタイミングを生成する特定部と、生成されたアクセスタイミングと他のメモリチップから送信されるアクセスタイミングとのいずかを選択して、選択されたアクセスタイミングで前記メモリ部へのアクセスを制御するタイミング制御部と、特定された前記メモリ部に対して選択されたアクセスタイミングでリードライトを実行する実行部と、を備える積層メモリに関する。
【0009】
また、本発明は、複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、前記メモリチップのそれぞれは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部と、前記メモリ部へのアクセスタイミングを生成する特定部と、生成された前記アクセスタイミングと他のメモリチップから送信されるアクセスタイミングとのいずれかを選択して、選択されたアクセスタイミングでアクセスを制御するタイミング制御部と、選択されたアクセスタイミングでリードライトを実行する実行部と、を備える積層メモリに関する。
【0010】
また、本発明は、複数のメモリチップを積層した積層メモリであって、前記メモリチップのそれぞれは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロックと前記正規メモリブロックの不良メモリセルを代替する予備メモリブロックとを有するメモリ部と、積層された全部の前記メモリチップに関して、前記正規メモリブロックを前記予備メモリブロックで代替する対象となる前記メモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部と、アクセス要求先の前記スライスアドレス及び前記メモリアドレスを示す要求アドレスと前記代替元スライスアドレス及び前記代替元メモリアドレスとを比較する比較部と、比較結果に基づいて、実際にアクセスする前記メモリ部を特定する特定部と、特定された前記メモリ部に対してリードライトを実行する実行部と、を備える積層メモリに関する。
【0011】
また、前記タイミング制御部は、他の前記メモリチップから出力されるアクセス先のスライスアドレスに基づいて、アクセス先スライスを特定するのが好ましい。
【0012】
また、前記タイミング制御部は、他の前記メモリチップによって生成されたタイミングを外部からの実行タイミングの指示として取得するのが好ましい。
【0013】
また、前記比較部は、自身の前記メモリチップの前記正規メモリブロック又は前記予備メモリブロックを用いるか否かを示す信号を比較結果として出力するのが好ましい。
【0014】
また、前記メモリチップは、自身の前記メモリチップを識別するスライスアドレスである個別スライスアドレスをチップ識別情報として格納するチップ識別情報格納部をさらに備え、前記比較部は、前記個別スライスアドレスが前記要求アドレスに含まれるスライスアドレスに合致するか否かを比較するチップ比較部と、前記要求アドレスが前記代替元アドレスと合致するか否かを比較するアドレス比較部と、を備え、前記特定部は、比較結果に基づいて、前記アクセス先アドレスを特定するのが好ましい。
【0015】
また、前記正規メモリブロック及び前記予備メモリブロックは、自身の不良メモリセルを置換可能な冗長メモリセルを有するのが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記の積層メモリの製造方法であって、複数の前記メモリチップを含む半導体ウエハを積層する積層工程と、積層された前記半導体ウエハに含まれる前記正規メモリブロックの不良メモリセルを前記予備メモリブロックのメモリセルで置換する置換工程と、前記置換工程の後に、積層された前記メモリチップを個片化する個片化工程と、を備える積層メモリの製造方法に関する。
【0017】
また、積層メモリの製造方法は、前記積層工程の前に、積層される全ての前記半導体ウエハのうち、積層される他の前記メモリチップにアクセス要求及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する前記半導体ウエハについて、配線層を用いて決定する配線層形成工程をさらに備えるのが好ましい。
【0018】
また、積層メモリの製造方法は、前記積層工程の後、置換工程の前に、積層される全ての前記半導体ウエハのうち、積層される他の前記メモリチップに命令信号及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する前記半導体ウエハを決定するマスターチップ決定工程をさらに備えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、歩留まりを改善するとともに、好適な動作タイミングの制御が可能な積層メモリ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層メモリの構成を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態の積層メモリの正規メモリブロック及び予備メモリブロックのメモリセルを示す概略図である。
【
図3】一実施形態の積層メモリのアドレス比較部を示す回路構成図である。
【
図4】
図3の要素であるヒューズ比較部を示す回路構成図である。
【
図5】一実施形態の積層メモリのマスターチップにおけるリードライトスライスアドレス生成回路を示す回路図である。
【
図6】一実施形態の積層メモリの製造の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る積層メモリ1及びその製造方法について、
図1から
図6を参照して説明する。
本実施形態に係る積層メモリ1は、例えば、複数のメモリチップを積層して構成される。積層メモリ1は、
図1に示すように、n枚(nは2以上の自然数)のメモリチップを積層して構成される。また、本実施形態において、メモリチップのうちの1つは、外部との間で入出力信号DQを送受信可能な入出力回路を備えたマスタースライス10として動作する。また、マスタースライス10は、比較部50で選択されるメモリ部20が存在するスライスアドレスを他のメモリチップに送信可能に動作する。また、マスタースライス10は、リードライトのタイミングを示すタイミング信号を他のメモリチップに送信可能に動作する。また、他のメモリチップは、マスタースライス10から送信されるスライスアドレス及びタイミング信号を受信可能なスレーブスライス11として動作する。
【0022】
本実施形態において、メモリチップのそれぞれは、メモリチップの主メモリ領域(正規メモリブロック21)に不良メモリセルがある場合に、これを代替して用いることができる予備メモリ領域(予備メモリブロック)を有している。特に、本実施形態において、メモリチップのそれぞれは、メモリチップの正規メモリブロック21における不良メモリセルについて、自身のメモリチップの予備メモリブロック22又は他のメモリチップの予備メモリブロック22を用いて代替する。メモリチップのそれぞれは、アクセス先のアドレスの入力に応じて、正規メモリブロック21を用いるか、自身又は他のメモリチップの予備メモリブロック22を用いるかを選択する。メモリチップのそれぞれは、自身の正規メモリブロック21又は予備メモリブロック22の選択に応じて、アクセスを実行する。これにより、メモリチップのそれぞれがアクセス先のアドレスをマスタースライス10によらずに個別に判断する。
【0023】
なお、マスタースライス10の構成は、外部との間で通信可能な外部端子(C: Command, A: Address, SA: Slice Addressの入力回路)を有する点でスレーブスライス11と異なる。また、マスタースライス10の構成は、アクセス先のスライスアドレス(リードライド対象の半導体チップのスライスアドレス)及びタイミング信号をスレーブスライス11に送信可能な点でスレーブスライス11と異なる。以下の構成の説明において、マスタースライス10及びスレーブスライス11に共通の構成については、スレーブスライス11の構成として説明される。また、以下の実施形態において、積層メモリ1は、8枚のメモリチップを積層した場合を例に説明される。スレーブスライス11の構成のうち、マスタースライス10の特有の構成については、別途説明する。
【0024】
次に、本実施形態に係る積層メモリ1のメモリチップの構造について説明する。
メモリチップは、
図1に示すように、メモリ部20と、アドレス格納部30と、チップ識別情報格納部40と、比較部50と、特定部60と、タイミング制御部80と、実行部70と、を備える。
【0025】
メモリ部20は、例えば、メモリセルによって構成されるメモリブロックである。すなわち、メモリ部20は、データを格納可能な構成である。メモリ部20は、正規メモリブロック21と、予備メモリブロック22と、を備える。
【0026】
正規メモリブロック21は、データのリードライトにおいてメインで用いられるメモリ領域である。したがって、正規メモリブロック21は、メモリチップにおいて、最も大きな記憶容量を有する。本実施形態において、正規メモリブロック21は、
図2に示すように、正規メモリセル領域と、冗長メモリセル領域と、を有する。正規メモリセル領域は、通常のリードライトに用いられる領域である。冗長メモリセル領域は、正規メモリセル領域の不良メモリセルを置換可能な領域である。すなわち、正規メモリブロック21は、自身の不良メモリセルを置換可能な冗長メモリセルを有する。正規メモリブロック21は、例えば、冗長メモリセル領域で正規メモリセル領域の不良メモリセルを置換できない場合、以下の予備メモリブロック22を用いて置換され得る。
【0027】
予備メモリブロック22は、正規メモリブロック21の不良メモリセルを代替するメモリ領域である。したがって、予備メモリブロック22は、正規メモリブロック21に比べて少ない記憶容量を有する。本実施形態において、予備メモリブロック22は、例えば、正規メモリブロック21のメモリ領域のうち、一定の割合のメモリ領域を代替可能に構成される。予備メモリブロック22は、例えば、正規メモリブロック21のメモリ領域のうち、不良メモリセルを含む1/16の容量のメモリ領域を代替可能に構成される。予備メモリブロック22は、正規メモリブロック21と同様に、冗長メモリセルを有する。予備メモリブロック22は、例えば、正規メモリブロック21の不良メモリセル領域について、自身の予備メモリセル領域を用いて代替する。予備メモリブロック22は、自身の予備メモリセル領域に不良メモリセルが存在する場合、自身の冗長メモリセル領域を用いて不良メモリセルを代替する。
【0028】
アドレス格納部30は、例えば、ヒューズ素子を含む。アドレス格納部30は、積層された全部のメモリチップに関して、正規メモリブロック21を予備メモリブロック22で代替する対象となるメモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスとを代替元アドレスとして格納する。
図3にこれらの格納された情報をスライス1救済情報、乃至スライス8救済情報として示す。また、アドレス格納部30は、それぞれのスライスに関して、自身のスライスが代替する代替元のメモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納する。具体的には、それぞれのスライスに関して、アドレス格納部30は、自身のスライスが代替する不良メモリセルを含む領域の代替元の正規メモリブロック21を備えるメモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納する。また、それぞれのスライスに関して、アドレス格納部30は、自身のスライスが代替する不良メモリセルを含む領域の代替元の正規メモリブロック21へのアクセス先アドレスを代替元メモリアドレスとして格納する。
図3にこれらの格納された情報を自スライス救済情報として示す。
【0029】
本実施形態において、アドレス格納部30は、例えば、代替元の不良メモリセルを含む領域を示す不良アドレスとして、8ビットのアドレスを格納する。
図3にこれを救済情報として示す。アドレス格納部30は、例えば、アドレス格納部30に格納されているアドレスの有効又は無効を示す1ビットと、代替対象のメモリチップを特定するアドレス(以下、不良スライスアドレスともいう)に対応するアドレスを示す3ビットと、代替対象のメモリ領域を特定するメモリアドレス(以下、不良メモリアドレスともいう)を示す4ビットと、によって構成されるアドレスを格納する。アドレス格納部30は、例えば、不良メモリセルの上位4ビットのアドレスを代替するメモリ領域を特定するアドレスとして格納する。これにより、アドレス格納部30は、正規メモリブロック21の不良メモリセルを含む1/16の領域に対応するアドレスを格納する。各スライスのアドレス格納部30は全てのスライスの救済情報64ビット(8スライス×8ビット)及び自身のスライスが代替する代替元の救済情報である自スライス救済情報8ビットの合計72ビットのアドレスを格納する。
【0030】
チップ識別情報格納部40は、例えば、ヒューズ素子を含む。チップ識別情報格納部40は、メモリチップを識別するチップ識別情報を格納する。チップ識別情報格納部40は、例えば、自身のメモリチップを識別するスライスアドレスである個別スライスアドレスをチップ識別情報として格納する。
【0031】
比較部50は、例えば、電子回路である。比較部50は、アクセス要求先のスライスアドレス及びメモリアドレスを示す要求アドレスと、代替元アドレスと、を比較する。比較部50は、アクセス先のメモリチップの情報(以下、スライスアドレスSAともいう)及びメモリアドレス(以下、メモリアドレスAともいう)を取得する。比較部50は、例えば、外部から要求されるアクセス対象のスライスアドレスSA及びメモリアドレスAを取得する。また、比較部50は、取得したスライスアドレスSAと、チップ識別情報に含まれる自身のスライスアドレスとを比較する。そして、比較部50は、アクセス先のメモリアドレスAと代替元メモリアドレスとを比較する。これにより、比較部50は、自身のメモリチップの正規メモリブロック21又は予備メモリブロック22を用いるか否かを示す信号を比較結果として出力する。具体的には、比較部50は、例えば、比較結果として、自身又は他のメモリチップの正規メモリブロック21にアクセスするか否かと、自身又は他のメモリチップの予備メモリブロック22にアクセスするか否かを出力する。比較部50は、チップ比較部52と、アドレス比較部51と、を備える。
【0032】
チップ比較部52は、チップ識別情報格納部40からチップ識別情報に含まれる自身のスライスアドレスを取得する。チップ比較部52は、取得した自身のメモリチップを識別するスライスアドレスと、アクセス先として要求されたメモリチップのスライスアドレスSAとを比較する。チップ比較部52は、比較の結果、自身のメモリチップにアクセスするか否かを出力する。チップ比較部52は、スライスアドレスSAと、アクセス先のメモリチップの情報とが同じ場合、自身のメモリチップへのアクセスであることを示す比較結果OSH(Own Slice Hit)信号を出力する。一方、チップ比較部52は、チップ識別情報格納部に格納されている自身のスライスアドレスと、アクセス先として要求されたメモリチップのスライスアドレスSAとが異なる場合、自身のメモリチップへのアクセスでないので比較結果OSH信号を出力しない。
【0033】
アドレス比較部51は、外部から取得したアクセス先のメモリチップのアドレスA及びスライスアドレスSAと、アドレス格納部30から取得した自身のスライスが代替する代替元アドレス及び他のスライスが代替する代替元アドレスとを比較する。本実施形態において、アドレス比較部51は、外部から取得したアクセス先のアドレスAの上位4ビットと、代替元メモリアドレスとを比較する。また、アドレス比較部51は、スライスアドレスAと、代替元スライスアドレスと、を比較する。アドレス比較部51は、比較結果として、自身のメモリチップの予備メモリブロック22を使用するか否か(以下、Own Redundancy Hit(ORH信号)ともいう)と、自身のメモリチップの正規メモリブロック21を使用するか否か(Any Redundancy Hit(ARH信号))と、を出力する。
【0034】
アドレス比較部51は、一例として、
図3に示すように、複数の比較回路を備える。比較回路は、メモリチップの数に応じて設けられる。本実施形態において、アドレス比較部51は、8積層のメモリチップに合わせて、ORH出力用の1つの比較回路と、ARH出力用の8つの比較回路と、を用いて構成される。具体的には、アドレス比較部51は、自身のメモリチップの予備メモリブロック22を使用するか否かを比較する第1比較回路と、8つのメモリチップの予備メモリブロック22のいずれかを使用するか否かを比較する第2から第9比較回路を有する。アドレス比較部51は、第1比較回路の結果をORH信号として出力する。また、アドレス比較部51は、ゲート回路を用いて、第2比較回路から第9比較回路の出力結果の論理和をARH信号として出力する。
【0035】
第1比較回路511は、自身のメモリチップの予備メモリブロック22を使用するか否かを比較結果として出力する。第1比較回路511は、要求アドレスを取得するとともに、アドレス格納部30から自身のスライスが代替する代替元ヒューズアドレスを取得する。第1比較回路511は、要求アドレスと、代替元ヒューズアドレスとを比較して、自身のメモリチップの予備メモリブロック22を使用するか否かを比較結果ORH信号として出力する。具体的には、要求メモリアドレスが代替元スライスアドレス及び代替元メモリアドレスにヒットする場合に、第1比較回路511は、自身の予備メモリブロック22を使用するORH信号(High信号)を比較結果として出力する。
【0036】
第2比較回路512から第9比較回路519は、自身のメモリチップを含め、積層メモリ1に設けられる予備メモリブロック22が用いられるか否かを比較結果として出力する。本実施形態において、第2比較回路512から第9比較回路519のそれぞれは、8積層のメモリチップのうち、いずれかのメモリチップの予備メモリブロック22を用いるか否かを比較結果として出力する。第2比較回路512から第9比較回路519のそれぞれは、8つのメモリチップのそれぞれに対応して、設けられる。第2比較回路512から第9比較回路519は、例えば、順に積層される、1番目のメモリチップ(マスタースライス10)、2番目のメモリチップ(スレーブスライス11)、・・・8番目のメモリチップ(スレーブスライス11)のいずれかで予備メモリブロック22が用いられるか否かを比較結果として出力する。第2比較回路512から第9比較回路519は、要求アドレスと、8つのメモリチップのそれぞれが代替する代替元スライスアドレスと、代替元メモリアドレスとが一致するか否かを比較する。それぞれのチップのアドレス格納部30に格納されているヒューズ情報は、第1比較回路511に対応するビット0から7は、それぞれのチップが代替する代替元アドレスで8つのメモリチップのそれぞれで固有の値となる。一方、第2比較回路512から第9比較回路519に対応するビット8から71は8つのメモリチップ全て同じ値となる。
【0037】
例えば、第2比較回路512は、要求アドレスと、スライス1が代替する代替元スライスアドレスと、代替元メモリアドレスとが一致するか否かを比較する。第2比較回路512は、代替元メモリアドレス及び代替元スライスアドレスが要求アドレスと全て一致した場合に、Highを示す信号HIT1を比較結果として出力する。第3比較回路から第9比較回路519は、要求アドレスと、スライス2から8が代替する代替元アドレス及び代替元スライスアドレスの比較に基づいて、High又はLowを比較結果として出力する。すなわち、積層メモリ1の予備メモリブロック22のいずれかが用いられる場合、第2比較回路512から第9比較回路519のいずれかは、High信号を出力する。その結果、第2比較回路512から第9比較回路519は、ARH信号としてHigh信号を出力する。一方で、積層メモリ1の予備メモリブロック22が用いられない場合、第2比較回路512から第9比較回路519は、いずれもLow信号を出力する。その結果、第2比較回路512から第9比較回路519は、ARH信号としてLow信号を出力する。換言すると、第2比較回路512~第9比較回路519は、要求アドレスに対してARH信号としてHigh信号が出力された場合は、積層メモリ1の予備メモリブロック22のいずれかが用いられるため、8つのメモリチップ全てで正規メモリブロック21が使用されないことを示す。一方、ARH信号としてLow信号が出力された場合は、積層メモリ1の正規メモリブロック21のいずれかが使用されることを示す。
【0038】
第1比較回路511から第9比較回路519のそれぞれは、
図4に示すように、XNORゲートと、NANDゲートと、NORゲートと、NOTゲートとの組み合わせにより構成される。アドレス比較部51は、自身のメモリチップの代替ブロックを選択する信号(
図3のORH信号)と、自信の正規ブロックを使用するか否かを示す信号(
図3のARH信号)と、マスタースライス10のみにおいては、予備ブロックが使用される場合は代替先のスライスアドレス、予備ブロックが使用されない場合は要求されたスライスアドレスSA(
図5のRWSA<2:0>)のそれぞれを出力する。アドレス比較部51は、自身の予備メモリブロック22における代替がある場合に、有効(
図4のHIT0が値1)を出力する。そして、第1のアドレス比較回路は、
図3に示すように、自らのメモリチップの予備メモリブロック22を選択する信号(ORH信号)を出力する。また、第2から第9比較回路512から519は、いずれかのメモリチップの予備メモリブロック22が選択されたことを示す信号(ARH信号)を出力する。ここで、Fuse<7>は、対応するスライスで予備ブロックが使用されない場合はLow、使用される場合はHighとなるイネーブル情報を示す。
【0039】
マスタースライス10において、比較回路は、
図5に示すように、実際にリードライトするメモリチップを特定するチップ特定回路を有する。チップ特定回路は、HIT1からHIT8に基づいてHIT1を除いた残りの信号をエンコードすることで、実際にリードライトを実行するメモリチップを特定する。チップ比較回路は、NORゲートと、NANDゲート、及びマルチプレクサを用いて構成される。チップ比較回路は、いずれかのメモリチップの予備メモリブロック22が選択されたことを示す信号(ARH)がHighである場合に、外部からアクセス要求されたチップアドレスに代えて実際にアクセスする個別スライスアドレスを特定する。また、チップ比較回路は、いずれかのメモリチップの予備メモリブロック22を選択する信号(ARH)がLowである場合に、外部からアクセス要求されたスライスアドレスSAを出力する。
【0040】
特定部60は、例えば、電子回路である。特定部60は、比較結果に基づいて、実際にアクセスするメモリ部20を特定する。また、特定部60は、特定したメモリ部20に対するアクセスタイミングを生成する。また、特定部60は、生成したアクセスタイミングをタイミング制御部80に送る(RWSC:R/W Slave Control)。特定部60は、出力されるORH信号、ARH信号、ASH信号、コマンド、及びアクセス要求先のメモリアドレスに基づいて、アクセス先のメモリ部20を特定する。特定部60の動作は、以下のように分類することができる。
【0041】
(i) ORH=Highの場合
ORH信号がHighの場合、特定部60は、自身のメモリチップの予備メモリブロック22をアクセス先のメモリ部20として特定する。特定部60は、OSH信号の出力結果にかかわらず、自身のメモリチップの予備メモリブロック22をアクセス先のメモリ部20として特定する。
【0042】
(ii) ORH(自身のメモリチップの予備メモリブロック22の使用)=Low、ARH(他のメモリチップの予備メモリブロック22の使用)=Highの場合
ORH信号がLowで、ARH信号がHighの場合、特定部60は、自身のメモリチップの予備メモリブロック22を使わず、他のメモリチップの予備メモリブロック22が使われると特定する。この場合、特定部60は、自身のメモリチップにはアクセスが無いと特定する。特定部60は、OSH信号の出力結果にかかわらず、自身のメモリチップのメモリ部20を用いないと特定する。
【0043】
(iii) ORH=LOW、ARH=Low、OSH(自身のメモリチップの使用)=Highの場合
ORH信号がLow、ARH信号がLow、及びOSH信号がHighの場合、特定部60は、自身のメモリチップの正規メモリブロック21をアクセス先のメモリ部20として特定する。特定部60は、要求アドレスに含まれるメモリアドレスをアクセス先のメモリアドレスとして特定する。
【0044】
(iv) ORH=Low、ARH=Low、OSH=Lowの場合
ORH信号がLow、ARH信号がLow、及びOSH信号がLowの場合、特定部60は、自身のメモリチップのメモリ部20を使わず、他のメモリチップの正規メモリブロック21が使われると特定する。この場合、特定部60は、自身のメモリチップにはアクセスが無いと特定する。
【0045】
マスタースライス10において、特定部60は、スレーブスライス11に対してもアクセスタイミングを送信可能に構成される(RWMC:R/W Master Control)。特定部60は、マスタースライス10のタイミング制御部80に対してアクセスタイミングを送信可能に構成される。また、特定部60は、外部からのリードライト命令に従って、メモリ部20へのリードライトを実行する。
【0046】
実行部70は、例えば、電子回路である。実行部70は、特定されたアクセス先アドレスに対してリードライトデータの送受信を実行する。また、実行部70は、マスタースライス10の入出力回路との間のリードライトデータの送受信を実行する。実行部70は、例えば、特定部60によって特定されたアクセス先メモリブロック情報を取得して、取得したアクセス先メモリブロックにアクセスする。また、実行部70は、マスタースライス10の入出力回路とリードライトデータを送受信可能に構成される(RWBS:R/W Bus)。
【0047】
タイミング制御部80は、例えば、電子回路である。タイミング制御部80は、タイミング信号RWC(R/W Control)を出力して実行部70の実行タイミングを制御する。タイミング制御部80は、他のメモリチップによって生成されたタイミングを外部からの実行タイミングとして取得する。タイミング制御部80は、例えば、マスタースライス10から出力されるリードライト命令(
図1のR/W Master Control:RWMC)を外部からの実行タイミングとして取得する。また、タイミング制御部80は、例えば、特定部60から出力される、各スライス固有のアクセスタイミング(
図1のR/W Slave Control:RWSC)を受信する。タイミング制御部80は、外部からの実行タイミングの指示信号RWMC又は自身の特定部60から出力された実行タイミングの指示信号RWSCのうち、予め定められた(予め選択された)タイミングで実行部70にリードライトデータの送受信を実行させる。すなわち、タイミング制御部80は、アクセス先アドレスの特定の後、予め定められた側の信号を受信したタイミングでリードライトを実行するようにタイミングを制御する。タイミング制御部80は、例えば、遅い側の信号の受信タイミングでリードライトデータの送受信を実行するようにタイミングを制御する。また、タイミング制御部80は、
図5に示すように、マスタースライス10の特定部60から出力される、アクセス先のスライスアドレスに基づいて、実行部70によるリードライトデータの送受信を制御する。
【0048】
マスタースライス10において、実行部70は入出力回路に接続される(RWBS:R/W Bus)。また、タイミング制御部80は、実行部70と接続される(RWC:R/W Control)。入出力回路は、外部と送受信可能に接続される(DQ)。
【0049】
次に、本実施形態の積層メモリ1の動作について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、比較部50は、要求アドレスを取得する(ステップS1)。次いで、比較部50は、ヒューズアドレスを取得する(ステップS2)。次いで、比較部50は、要求アドレスとヒューズアドレスを比較する(ステップS3)。
【0050】
特定部60は、比較結果に基づいて、自身のスライスへのアクセスか否かを判断する(ステップS4)。自身のスライスへのアクセスである場合(ステップS4:YES)、処理は、ステップS5に進む。一方。自身のスライスアドレスへのアクセスではない場合(ステップS4:NO)、処理は、ステップS8に進む。
【0051】
ステップS5において、特定部60は、正規メモリブロックのメモリアドレス、又は予備メモリブロックのメモリアドレスを特定する。次いで、タイミング制御部80は、特定されたメモリアドレスへのアクセスタイミングを制御する(ステップS6)。次いで、実行部70は、制御されたアクセスタイミングで特定されたメモリアドレスへのリードライトデータの送受信、及びマスタースライス10の入出力回路との間のリードライトデータの送受信を実行する(ステップS7)。これにより、本フローによる処理は、終了する。
【0052】
ステップS8において、他のメモリチップにおいてリードライトが実行される。これにより、本フローによる処理は、終了する。
【0053】
次に、積層メモリ1の製造方法について説明する。
積層メモリ1は、ウエハの状態で簡易試験が実施されることにより、積層メモリ1に用いられるウエハが決定される。その後、マスターチップとスライスアドレス特定のために各ウエハ上に配線パターンが形成されるか、ヒューズ素子などによるプログラムが実行される。その後、スライス内における正規ブロック及び予備ブロックの救済判定が実施される。さらに救済が必要な場合、スライス間での救済判定が実施される。
具体的には、積層メモリ1の製造方法は、ウエハ試験工程と、配線層形成工程又はヒューズ等を用いたプログラム工程と、積層工程と、置換工程と、個片化工程と、を備える。
【0054】
ウエハ試験工程において、単層ウエハ状態で簡易的に試験が実施される。ウエハ試験工程において、例えば、大電流不良確認等の試験が実施される。ウエハ試験工程において、不良率の高いウエハは除去される。
【0055】
配線層形成工程、又はプログラム工程において、積層される全ての半導体ウエハのうち、積層される他のメモリチップにアクセス要求及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する半導体ウエハを決定する。配線層形成工程、又はプログラム工程において、構成する半導体ウエハのうち、配線マスク層をマスターチップ用に異ならせることにより、マスターチップとするウエハを決定する。また、配線層形成工程、又はプログラム工程において、積層される全ての半導体ウエハについてスライスアドレスを決定する。
【0056】
積層工程において、複数のメモリチップを含む半導体ウエハが積層される。積層工程において、例えば、マスターチップを含むウエハと、スレーブチップを含むウエハとが積層される。
【0057】
置換工程において、積層された半導体ウエハに含まれる正規メモリブロック21の不良メモリセルが予備メモリブロック22のメモリセルで置換される。置換工程において、ウエハテストが実行され、チップ内における正規メモリブロック21の不良メモリセルが検出される。置換工程において、不良メモリセルは、例えば、同じチップ内の予備メモリセルに置換される。また、置換工程において、同じチップ内の予備メモリセルに置換が不能である場合、不良メモリセルは、積層される他のメモリチップの予備メモリに置換される。そして、置換工程において、積層されるチップ全てのアドレス格納部30に代替元アドレスが格納される。
【0058】
個片化固定は、置換工程の後に実施される。個片化工程において、積層されたメモリチップが個片化される。個片化工程において、個片化された積層メモリ1のテストが実施される。個片化工程において、正規メモリブロック21に不良メモリセルが検出された場合、積層チップにおける予備メモリセルに置換可能か否かが判断される。個片化工程において、置換可能である場合、アドレス格納部30は、代替元アドレスを格納する。一方、個片化工程において、置換不能である場合、積層メモリ1を不良とする。個片化工程において、不良メモリセルが検出されない場合及び置換可能である場合、積層メモリ1は良品と判断される。
【0059】
以上の一実施形態に係る積層メモリ1及びその製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0060】
(1) 複数のメモリチップを積層した積層メモリ1であって、メモリチップは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部20であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロック21と正規メモリブロック21の不良メモリセルを代替する予備メモリブロック22とを有するメモリ部20と、積層された2以上のメモリチップに関して、正規メモリブロック21を予備メモリブロック22で代替する対象となるメモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部30と、アクセス要求先のスライスアドレス及びメモリアドレスを示す要求アドレスと、代替元スライスアドレス及び代替元メモリアドレスと、を比較する比較部50と、比較結果に基づいて、実際にアクセスするメモリ部20を特定するとともに、アクセスタイミングを生成する特定部60と、生成されたアクセスタイミングと他のメモリチップから送信されるアクセスタイミングとのいずかを選択して、選択されたアクセスタイミングでメモリ部20へのアクセスを制御するタイミング制御部80と、特定されたメモリ部20に対して選択されたアクセスタイミングでリードライトを実行する実行部70と、を備える。これにより、歩留まりを改善することができる。また、アクセスタイミングを選択することにより、好適な動作タイミングの制御をすることができる。
【0061】
(2)複数のメモリチップを積層した積層メモリ1であって、メモリチップのそれぞれは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部20と、メモリ部20へのアクセスタイミングを生成する特定部60と、生成されたアクセスタイミングと他のメモリチップから送信されるアクセスタイミングとのいずれかを選択して、選択されたアクセスタイミングでアクセスを制御するタイミング制御部80と、選択されたアクセスタイミングでリードライトを実行する実行部70と、を備える。これにより、メモリチップの読み出し及び書き込みに適したタイミングを選択することができる。したがって、柔軟性を向上することができる。
【0062】
(3)複数のメモリチップを積層した積層メモリ1であって、メモリチップのそれぞれは、複数のメモリセルを含み、データを格納可能なメモリ部20であって、データのリードライトにおいてメインで用いられる正規メモリブロック21と正規メモリブロック21の不良メモリセルを代替する予備メモリブロック22とを有するメモリ部20と、積層された全部のメモリチップに関して、正規メモリブロック21を予備メモリブロック22で代替する対象となるメモリチップを識別するスライスアドレスを代替元スライスアドレスとして格納するとともに、代替する対象となるメモリアドレスを代替元メモリアドレスとして格納するアドレス格納部30と、アクセス要求先のスライスアドレス及びメモリアドレスを示す要求アドレスと、代替元スライスアドレス及び代替元メモリアドレスと、を比較する比較部50と、比較結果に基づいて、実際にアクセスするメモリ部20を特定する特定部60と、特定されたメモリ部20に対してリードライトを実行する実行部70と、を備える。これにより、正規メモリブロック21の不良メモリセルを複数のメモリチップのいずれかの予備メモリブロック22に置換することができる。したがって、積層メモリ1の歩留まりを向上することができる。
【0063】
(4)タイミング制御部80は、他のメモリチップから出力されるアクセス先のスライスアドレスに基づいて、アクセス先スライスを特定する。これにより、他のメモリブロックからの指令に基づいても容易にアクセス先スライスを特定することができる。
【0064】
(5)タイミング制御部80は、他のメモリチップによって生成されたタイミングを外部からの実行タイミングの指示として取得する。これにより、メモリの特性に応じてメモリへのアクセスの柔軟性を向上することができる。
【0065】
(6)比較部50は、自身のメモリチップの正規メモリブロック21又は予備メモリブロック22を用いるか否かを示す信号を比較結果として出力する。これにより、メモリチップのそれぞれでメモリ部20を用いるか否かを判断することができる。したがって、メモリチップ間の通信路の数を減らすことができる。
【0066】
メモリチップは、自身のメモリチップを識別するスライスアドレスである個別スライスアドレスをチップ識別情報として格納するチップ識別情報格納部40をさらに備え、比較部50は、個別スライスアドレスが要求アドレスに含まれるスライスアドレスに合致するか否かを比較するチップ比較部52と、要求アドレスが代替元アドレスと合致するか否かを比較するアドレス比較部51と、を備え、特定部60は、比較結果に基づいて、アクセス先アドレスを特定する。これにより、自身のメモリチップへのアクセスであるか否かを容易に判断することができる。
【0067】
正規メモリブロック21及び予備メモリブロック22は、自身の不良メモリセルを置換可能な冗長メモリセルを有する。これにより、不良メモリセルの数が少ない場合には、予備メモリブロック22を用いる前に冗長メモリブロックを用いることができる。したがって、積層メモリ1の歩留まりをさらに向上することができる。
【0068】
以上、本発明の積層メモリ1及びその製造方法の好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0069】
例えば、上記実施形態において、配線層形成工程において、マスターチップとスレーブチップとを決定したが、これに制限されない。配線マスク形成工程に変えて、積層工程の後、置換工程の前に、積層される全ての半導体ウエハのうち、積層される他のメモリチップに命令信号及びタイミング信号を送出可能なマスターチップを構成する半導体ウエハを決定するマスターチップ決定工程を備えてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、他のウェハチップは、例えば、マスターチップである。マスターチップは、スレーブチップからタイミング及びアクセス先アドレスを取得せずに、自身の特定部60及びタイミング制御部80で生成されたアクセス先アドレス及びタイミングでアクセスを制御してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 積層メモリ
20 メモリ部
21 正規メモリブロック
22 予備メモリブロック
30 アドレス格納部
40 チップ識別情報格納部
50 比較部
51 アドレス比較部
52 チップ比較部
60 特定部
70 実行部
80 タイミング制御部