(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20250403BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/087 331
(21)【出願番号】P 2021109559
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野本 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】志方 柊大
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-063412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、変性シリコーンとの反応物であり、
120℃で60分間加熱した際に揮発する環状シロキサンを含む揮発性有機化合物の
トルエン換算の含有量が10mg/kg以下であるトナー用結着樹脂の製造方法であって、
工程1:前記アルコール成分と、前記カルボン酸成分と、前記変性シリコーンと、を縮合し、
環状シロキサンを含む反応混合物を得る工程、
工程2:前記反応混合物を水蒸気蒸留する工程、及び
工程3:減圧して水分を除去し、前記反応混合物の更なる縮合を行う工程、
を含むトナー用結着樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記工程1の縮合が、200℃以上235℃以下で行われる、請求項1に記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記工程2の水蒸気蒸留が、180℃以上200℃以下で行われる、請求項1又は2に記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記工程3の縮合が、180℃以上200℃以下、且つ3kPa以上70kPa以下で行われる、請求項1~3のいずれかに記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記変性シリコーンが、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びカルビノール基から選ばれる少なくとも1種を有する変性シリコーンである、請求項1~4のいずれかに記載のトナー用結着樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー用結着樹脂の製造方法、トナー用結着樹脂、及び静電荷像現像用トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した静電荷像現像用トナーの開発が求められている。
【0003】
トナー及びトナーバインダーの高機能化に伴い、結着樹脂としてシリコーン樹脂を用いることが知られている。特許文献1には、結着樹脂及び白色顔料を有するトナー粒子を含む白色トナーであり、結着樹脂は、樹脂Aを含み、樹脂Aは、(i)シロキサン結合及びフルオロ基からなる群より選択される少なくとも一方と、エステル結合とを含み、(ii)結着樹脂中、50質量%以上含有されていることを特徴とする白色トナーが記載され、高い耐擦過性を保持しつつ、白色度の高い画像が得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、オフィス環境の改善意識が高まり、電子写真システムから発散される臭気等の原因ともなる揮発性有機化合物(VOC)の人体への影響に対して、欧州を中心に環境規格が制定されるようになり、電子写真システムにおいても環境と安全に配慮し、環境規格への対処が必要となっている。環境規格のなかでも、最も厳格な規格は、ドイツのエコラベル制度である「ブルーエンジェル」マーク規格であり、ここに規格されている「電子機器からの化学物質放散速度の測定」ECMA-328/RAL-UZ-122に規定された測定方法で得られたVOCの放散速度が規制値以下を満たすようにすることが求められている。
結着樹脂の製造時に変性シリコーンを用いると、元々変性シリコーンが有している揮発性有機化合物(VOC)に加え、合成時に変性シリコーンの熱分解に起因する揮発性有機化合物(VOC)が増加する傾向にあり、生成したシリコーン変性樹脂中にVOCが多く含有される。それが原因となり、電子写真システムからVOCが発散されることが懸念される。
本発明は、優れた耐擦過性を有し、かつ、VOCの含有量が低いトナー用結着樹脂の製造方法、トナー用結着樹脂、及び静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、以下の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、変性シリコーンとの反応物であり、揮発性有機化合物の含有量が10mg/kg以下であるトナー用結着樹脂の製造方法であって、
工程1:前記アルコール成分と、前記カルボン酸成分と、前記変性シリコーンと、を縮合し、反応混合物を得る工程、
工程2:前記反応混合物を水蒸気蒸留する工程、及び
工程3:減圧して水分を除去し、前記反応混合物の更なる縮合を行う工程、
を含むトナー用結着樹脂の製造方法。
〔2〕2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、変性シリコーンとの反応物であり、揮発性有機化合物の含有量が10mg/kg以下である、トナー用結着樹脂。
〔3〕〔2〕に記載のトナー用結着樹脂を含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた耐擦過性を有し、かつ、VOCの含有量が低いトナー用結着樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[トナー用結着樹脂の製造方法]
本発明の一実施形態のトナー用結着樹脂の製造方法は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、変性シリコーンとの反応物であり、揮発性有機化合物の含有量が10mg/kg以下であるトナー用結着樹脂の製造方法である。なお、揮発性有機化合物の含有量は、トルエン換算の含有量である。
そして、当該製造方法は、
工程1:前記アルコール成分と、前記カルボン酸成分と、前記変性シリコーンと、を縮合し、反応混合物を得る工程、
工程2:前記反応混合物を水蒸気蒸留する工程、及び
工程3:減圧して水分を除去し、前記反応混合物の更なる縮合を行う工程、を含む。
本発明によれば、優れた耐擦過性を有し、かつ、VOCの含有量が低いトナーに用いられるトナー用結着樹脂の製造方法を提供することができる。
【0009】
本発明の製造方法で、トナー用結着樹脂中のVOCが低減する理由は、定かではないが、次のように考えられる。工程1で反応混合物を得た後に、反応混合物を水蒸気蒸留する工程2を導入することで、変性シリコーン中の不純物や熱分解物等と水が共沸し、効率よく揮発性有機化合物を除去できる。また、水蒸気蒸留した後に減圧しながら反応混合物の更なる縮合を行う工程3を導入することで、変性シリコーンの熱分解を抑制しつつ、効率よく水や熱分解物等の揮発性有機化合物を除去できる。それとともに、シリコーン変性樹脂のトナー用結着樹脂中での運動性を活発化し、変性シリコーン部分をトナー層の表面に局在化させることにより、印字物の滑り性を向上させ、画像の耐擦過性を向上させることができる。
【0010】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
明細書中、カルボン酸化合物とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
ビスフェノールAは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである。
明細書中、単に「結着樹脂組成物」とは、トナー用結着樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂、並びに結晶性ポリエステル樹脂を含むトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。非晶性樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.6未満、好ましくは1.5以上、又は0.5以下、より好ましくは1.6以上、又は0.5以下の樹脂である。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。なお、吸熱の最大ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。結晶性指数は、実施例に記載の樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度の測定方法により得られた値から算出することができる。
【0011】
〔工程1〕
工程1は、アルコール成分と、カルボン酸成分と、及び変性シリコーンとを反応させ、反応混合物を得る工程である。
【0012】
工程1においては、必要に応じて、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)、酸化ジブチル錫、チタニウムジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)等のエステル化触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.01質量部以上5質量部以下;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸と同じ)等のエステル化助触媒をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて縮合させ、反応混合物を得てもよい。
なお、反応は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
【0013】
工程1は、好ましくは200℃以上、より好ましくは210℃以上、更に好ましくは220℃以上で行われ、そして、好ましくは235℃以下、より好ましくは230℃以下であり、更に好ましくは225℃以下で行われる。
工程1の反応時間は、反応混合物が所望の重合度となる時間であれば特に限定されないが、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは9時間以下である。
【0014】
(アルコール成分)
アルコール成分は、2価以上のアルコールを含む。
2価以上のアルコールとしては、例えば、芳香族基を有するジオール(以下、「芳香族ジオール」ともいう)、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族ジオール、又は、直鎖若しくは分岐の脂肪族ジオールが好ましく、芳香族ジオールがより好ましい。
【0015】
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
【0016】
【化1】
(式中、OR
1及びR
2Oはオキシアルキレン基であり、R
1及びR
2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を単独で、又はビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を組み合せて用いることが好ましい。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を組み合せて用いる場合、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物と、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とのモル比(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物/ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物)は、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0017】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを用いてもよい。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは3以上4以下である。
第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられる。
アルコール成分として、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを用いる場合、その量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0018】
その他の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0019】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0020】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分は、2価以上のカルボン酸化合物を含む。
2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0021】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0022】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは16以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物若しくは炭素数1以上3以下のアルキルエステルが挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又はこれらの無水物が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物を含む場合、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0023】
3価以上の多価カルボン酸化合物としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸又はその無水物が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸又はその無水物が好ましい。
3価以上の多価カルボン酸化合物を含む場合、3価以上の多価カルボン酸化合物の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0024】
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0025】
(変性シリコーン)
トナー用結着樹脂に用いられる変性シリコーンは、優れた耐擦過性を有する静電荷像現像用トナーを得る観点から、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、及びカルビノール基から選ばれる少なくとも1種を側鎖又は末端に有する変性シリコーンであり、好ましくは側鎖に有する変性シリコーンである。
【0026】
変性シリコーンは、より具体的には、好ましくは、式(1):
【0027】
【化2】
〔式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、R’はそれぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1又は0であり、Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は結合部位である。〕で表される繰り返し単位、及び、式(2):
【0028】
【化3】
〔式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上6以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕で表される繰り返し単位を有する。
【0029】
なお、変性シリコーンの末端は、式(3):
【0030】
【化4】
〔式中、R’’は、炭素数1以上10以下の炭化水素基であり、*は結合部位である。〕で表される基であってもよい。
【0031】
Rの炭化水素基の炭素数は、6以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
Rの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が好ましい。
R’のアルキレン基の炭素数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R’のアルキレン基としては、例えば、メタンジイル基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、n-プロパン-1,3-ジイル基、n-プロパン-1,2-ジイル基、n-ブタン-1,4-ジイル基、tert-ブタン-1,2-ジイル基、n-ペンタン-1,5-ジイル基が挙げられる。これらの中でも、メタンジイル基が好ましい。
R’’の炭化水素基の炭素数は、10以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下、更に好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
R’’の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ベンジル基が挙げられる。
【0032】
Xは、それぞれ独立に、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基である。なお、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を総称して、「反応性基」といい、反応性基と、その他の部分とを含む基を「反応性基含有基」ともいう。従って、Xは、反応性基又は反応性基含有基である。
式(1)中、aが1である場合、Xは反応性基であり、aが0である場合、Xは反応性基含有基である。
【0033】
aが0のとき、Xは、エーテル結合を有していてもよく、一部のメチレン基がエーテル結合で置換された炭化水素基に、1つ以上の反応性基が置換した基であってもよい。すなわちXは、1つ以上のアミノ基、カルボキシ基、エポキシ基又はヒドロキシ基で置換された、エーテル結合を有していてもよい脂肪族炭化水素基であってもよく、Xの総炭素数は、好ましくは10以下、より好ましくは9以下であり、そして、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。
【0034】
変性シリコーンの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは600以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは70,000以下、更に好ましくは60,000以下、更に好ましくは50,000以下、更に好ましくは40,000以下である。
変性シリコーンの数平均分子量(Mn)は、好ましくは500以上、より好ましくは700以上、更に好ましくは800以上であり、そして、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。
【0035】
変性シリコーンは、優れた耐擦過性を有する静電荷像現像用トナーを得る観点から、好ましくは、
(i)アミノ基を側鎖若しくは末端に有する変性シリコーン、又は、
(ii)カルボキシ基、エポキシ基、及びカルビノール基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する変性シリコーンであり、より好ましくはアミノ基を側鎖に有する変性シリコーンである。
【0036】
変性シリコーンとしては、優れた耐擦過性を有するトナーを得る観点から、アミノ基を側鎖に有する変性シリコーン(a)(以下、単に「変性シリコーン(a)」ともいう)が好ましい。
変性シリコーン(a)は、下記式(1a0):
【0037】
【化5】
〔式中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1以上5以下の炭化水素基であり、R’はそれぞれ独立に、炭素数1以上10以下のアルキレン基であり、aは1又は0であり、Xは、それぞれ独立に、-NH
2又は-R'''-NH-R’’’-NH
2であり、R’’’はそれぞれ独立に、炭素数1以上5以下のアルキレン基であり、*は結合部位である。〕で表される繰り返し単位、
好ましくは、式(1a):
【0038】
【化6】
〔式中、R、R’、a、及び*は、前述の式(1)と同定義である。〕で表される繰り返し単位、及び、式(2):
【0039】
【化7】
〔式中、R、及び*は、前述の式(2)と同定義である。〕で表される繰り返し単位を有する。
式(1a
0)中、aが1のとき、Xは-NH
2であり、aが0のとき、Xは-R’’’-NH-R’’’-NH
2である。式(1a)中、aは1であり、R’は炭素数1以上10以下のアルキレン基である。
式(1a)中、*-(R’)
a-NH
2で表される基は、例えば、下記の置換基1a-1~1a-3が挙げられる。
【0040】
【0041】
なお、変性シリコーン(a)の末端は、式(3):
【0042】
【化9】
〔式中、R’’、及び*は、前述の式(3)と同定義である。〕で表される基であってもよい。
【0043】
変性シリコーン(a)の動粘度は、25℃において、好ましくは500mm2/s以上、より好ましくは1,000mm2/s以上、更に好ましくは1,500mm2/s以上であり、そして、好ましくは3,000mm2/s以下、より好ましくは2,000mm2/s以下、更に好ましくは1,800mm2/s以下である。
変性シリコーン(a)の動粘度は、全自動微量動粘度計(ビスコテック株式会社製)を用い、25℃における動粘度を測定する。
【0044】
変性シリコーン(a)の官能基当量は、好ましくは300g/mol以上、より好ましくは1,000g/mol以上、更に好ましくは2,000g/mol以上、更に好ましくは3,000g/mol以上であり、そして、好ましくは6,000g/mol以下、より好ましくは5,000g/mol以下、更に好ましくは4,500g/mol以下である。
なお、官能基当量とは、官能基1モル当たりの変性シリコーンの質量を意味する。
【0045】
変性シリコーン(a)としては、例えば、アミノ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば「KF-864」(信越化学工業株式会社製))が挙げられる。
【0046】
トナー用結着樹脂中、変性シリコーン(a)の使用量は、原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分から得られるポリエステルの理論出来高100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、更に好ましくは6質量部以下である。
【0047】
変性シリコーンとしては、優れた耐擦過性を有するトナーを得る観点から、カルボキシ基、エポキシ基、及びカルビノール基から選ばれる少なくとも1種を側鎖に有する変性シリコーン(b)(以下、単に「変性シリコーン(b)」ともいう)が好ましい。
変性シリコーン(b)は、より具体的には、好ましくは、式(1b):
【0048】
【化10】
〔式中、R、R’、a、及び*は、前述の式(1)と同定義であり、X’は、それぞれ独立に、カルボキシ基、エポキシ基、又はヒドロキシ基を含む基であり、*は結合部位である。〕で表される繰り返し単位、及び、式(2):
【0049】
【化11】
〔式中、R、及び*は、前述の式(2)と同定義である。〕で表される繰り返し単位を有する。
【0050】
変性シリコーン(b)がカルボキシ基を側鎖に有する変性シリコーンである場合、X’はカルボキシ基を含む基である。aが1であり、X’はカルボキシ基(-COOH)であることが好ましく、R’は好ましくは炭素数1以上10以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数1以上5以下のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基である。
また、変性シリコーン(b)がカルボキシ基を側鎖に有する変性シリコーンであり、aが0である場合、X’は、カルボキシ基で置換された好ましくは炭素数1以上10以下のエーテル結合を含む脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上6以下のエーテル結合を含む脂肪族炭化水素基であってもよい。なお、エーテル結合を含む脂肪族炭化水素基とは、炭素-炭素結合間に、エーテル結合(-O-)を有することをいう。
【0051】
変性シリコーン(b)がエポキシ基を側鎖に有する変性シリコーンである場合、X’はエポキシ基を含む基である。aが1であり、X’がエポキシ基であるか、又はaが0であり、X’がエポキシ基を含む、好ましくは炭素数1以上10以下のエーテル結合を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上6以下のエーテル結合を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基である。
【0052】
変性シリコーン(b)がヒドロカルビル基を側鎖に有する変性シリコーンである場合、X’はヒドロキシ基を含む基である。aが1であり、X’はヒドロキシ基であるか、又は、aが0であり、X’はヒドロキシ基で置換された好ましくは炭素数1以上10以下のエーテル結合を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数1以上6以下のエーテル結合を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基であり、X’が有するヒドロキシ基の数は、1以上、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。
【0053】
式(1b)中、*-(R’)a-X’で表される基は、例えば、下記の置換基1b-1~1b-9が挙げられる。
【0054】
【0055】
なお、変性シリコーン(b)の末端は、式(3):
【0056】
【化13】
〔式中、R’’、及び*は、前述の式(3)と同定義である。〕で表される基であってもよい。
【0057】
変性シリコーン(b)の動粘度は、25℃において、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは15mm2/s以上、更に好ましくは20mm2/s以上であり、そして、好ましくは3,000mm2/s以下、より好ましくは2,800mm2/s以下、更に好ましくは2,600mm2/s以下である。
変性シリコーン(b)の動粘度は、全自動微量動粘度計(ビスコテック株式会社製)を用い、25℃における動粘度を測定する。
【0058】
変性シリコーン(b)の官能基当量は、好ましくは300g/mol以上、より好ましくは500g/mol以上であり、そして、好ましくは6,000g/mol以下、より好ましくは5,000g/mol以下、更に好ましくは4,000g/mol以下である。
なお、官能基当量とは、官能基1モル当たりの変性シリコーンの質量を意味する。
【0059】
変性シリコーン(b)としては、例えば、カルボキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、例えば、「X-22-3701E」(信越化学工業株式会社製)、「BY16-880」(東レ・ダウコーニング株式会社製))、エポキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-343」(信越化学工業株式会社製))、ヒドロキシ基を側鎖に有する変性シリコーン(市販品としては、「X-22-4039」(信越化学工業株式会社製))が挙げられる。
【0060】
トナー用結着樹脂中、変性シリコーン(b)の使用量は、原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分から得られるポリエステルの理論出来高100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。
【0061】
〔工程2〕
工程2は、工程1で得た反応混合物を水蒸気蒸留する工程であり、反応混合物からVOCを分離・除去する工程である。
【0062】
反応混合物に含まれるVOCは環状シロキサンを含み、例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等が挙げられる。また、反応混合物は、2-フェノキシエタノール、1-フェノキシ-2-プロパノール等のVOCを含んでいてもよい。
【0063】
水蒸気蒸留は、反応系内に水蒸気を導入することで行ってもよく、反応系に水を滴下することにより反応系内で水蒸気を発生させて行ってもよい。操作の簡便性から、反応系に水を滴下することにより反応系内で水蒸気を発生させることが好ましい。反応混合物からVOCを効率よく分離するために、水蒸気又は水の供給量は、原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。また、工程2の終了後の水分の除去を簡便にする観点から、水蒸気又は水の供給量は、原料中のアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは9.5質量部以下、更に好ましくは9質量部以下である。
【0064】
水蒸気蒸留は、水蒸気を反応混合物中に滞留させ、VOCを効率よく分離するために、好ましくは180℃以上で行われ、そして反応混合物の分解によるVOCの更なる発生を抑制するためにも、好ましくは工程1の縮合が行われる温度より低い温度で行われ、より好ましくは200℃以下で行われる。水蒸気蒸留が行われる温度と工程1の縮合が行われる温度の差は、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下である。
【0065】
水蒸気蒸留において、反応系に水を滴下することにより反応系内で水蒸気を発生させる場合、水の滴下は好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上かけて行われる。一方、反応系内に水蒸気を導入する場合は、水蒸気の導入を短時間で行われてもよいが、好ましくは30分間以上、より好ましくは1時間以上かけて行われる。
【0066】
水蒸気蒸留は、通常常圧で行われるが、わずかに減圧として行われてもよい。
【0067】
〔工程3〕
工程3は、反応系を減圧することで水分とVOCの除去を行い、反応混合物の更なる縮合を行う工程である。工程2における水蒸気蒸留の後、反応系を減圧することで水分とVOCが除去され、反応系から水分が十分に除去されることにより反応混合物の縮合が更に進行する。
【0068】
水分及びVOCの除去と反応混合物の縮合を行うために、工程3は、好ましくは180℃以上で行われ、そして反応混合物の分解によるVOCの更なる発生を抑制するために、好ましくは工程2の水蒸気蒸留を行った温度と同じ温度、又は工程2の水蒸気蒸留を行った温度より低い温度で行われ、より好ましくは200℃以下で行われる。工程3の縮合が行われる温度が、水蒸気蒸留が行われる温度よりも低い場合、その差は、好ましくは1℃以上、より好ましくは3℃以上であり、そして、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。
また、工程3は、工程2の水蒸気蒸留の残分である水分及び縮合で生じる水分とVOCが除去される程度に減圧されていればよく、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上で行われ、そして好ましくは70kPa以下、より好ましくは40kPa以下、更に好ましくは20kPa以下、更に好ましくは10kPa以下で行われる。
【0069】
[トナー用結着樹脂]
本発明の一実施形態のトナー用結着樹脂は、2価以上のアルコールを含むアルコール成分と、2価以上のカルボン酸化合物を含むカルボン酸成分と、変性シリコーンとの反応物であり、揮発性有機化合物(VOC)の含有量が10mg/kg以下である。なお、前記VOCの含有量は、トルエン換算での含有量である。以下、本発明の一実施形態のトナー用結着樹脂を「低VOCトナー用結着樹脂」とも称する。低VOCトナー用結着樹脂は、上記製造方法により製造することができる。
低VOCトナー用結着樹脂は、反応物の他に、微量の未反応のアルコール成分、カルボン酸成分、及び変性シリコーン、並びに上記製造方法の工程1で加えた触媒や助触媒由来の化合物等を含んでいてもよい。
【0070】
低VOCトナー用結着樹脂は非晶性ポリエステルであることが好ましい。
【0071】
〔低VOCトナー用結着樹脂の物性〕
低VOCトナー用結着樹脂のVOCの含有量は10mg/kg以下であり、好ましくは7.5mg/kg以下、より好ましくは5.0mg/kg以下、更に好ましくは4.0mg/kg以下、更に好ましくは3.0mg/kg以下である。VOCの含有量の下限は、特に限定されない。VOCの含有量は実施例記載の方法で測定され、トルエン換算での含有量である。
【0072】
低VOCトナー用結着樹脂の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは0.5mgKOH/g以上、更に好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは3mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。
【0073】
低VOCトナー用結着樹脂の水酸基価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上、更に好ましくは20mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは90mgKOH/g以下、更に好ましくは80mgKOH/g以下である。
【0074】
低VOCトナー用結着樹脂の軟化点は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは75℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0075】
低VOCトナー用結着樹脂のガラス転移温度は、保存性をより向上させる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは45℃以上、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
【0076】
低VOCトナー用結着樹脂の数平均分子量は、優れた耐擦過性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上であり、そして、優れた低温定着性の観点から、好ましくは8,000以下、より好ましくは6,000以下、更に好ましくは4,000以下である。
【0077】
低VOCトナー用結着樹脂の重量平均分子量は、優れた耐擦過性の観点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは1,500以上、更に好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、優れた低温定着性の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは8,000以下、更に好ましくは6,000以下である。
【0078】
低VOCトナー用結着樹脂の酸価、軟化点、ガラス転移温度、数平均分子量、及び重量平均分子量は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、反応物を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0079】
低VOCトナー用結着樹脂の含有量は、静電荷像現像用トナーの耐擦過性をより向上させる観点から、静電荷像現像用トナーの結着樹脂組成物中、好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
【0080】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の一実施形態の静電荷像現像用トナーは、優れた耐擦過性を有するトナーを得る観点から、上記の低VOCトナー用結着樹脂を含有する。
静電荷像現像用トナーは、例えば、トナー粒子及び外添剤を含む。
【0081】
<トナー粒子>
トナー粒子は、上記の低VOCトナー用結着樹脂を含む。
トナー粒子は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは、上記低VOCトナー用結着樹脂を除く、非晶性ポリエステル系樹脂を更に含有する。
トナー粒子は、その他、離型剤(ワックス)、荷電制御剤、着色剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0082】
〔非晶性ポリエステル系樹脂〕
非晶性ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物であり、アルコール成分及びカルボン酸成分は、トナー用結着樹脂の製造方法において例示した通りである。
【0083】
(非晶性ポリエステル系樹脂の物性)
非晶性ポリエステル系樹脂の酸価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは2mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
【0084】
非晶性ポリエステル系樹脂の水酸基価は、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは20mgKOH/g以上、更に好ましくは30mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは60mgKOH/g以下、より好ましくは50mgKOH/g以下、更に好ましくは45mgKOH/g以下である。
【0085】
非晶性ポリエステル系樹脂の軟化点と低VOCトナー用結着樹脂の軟化点との差は、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは15℃以上であり、そして、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下である。
非晶性ポリエステル系樹脂の軟化点は、低VOCトナー用結着樹脂の軟化点よりも高いことが好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂の軟化点は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上、更に好ましくは110℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
【0086】
非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0087】
非晶性ポリエステル系樹脂の酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、非晶性ポリエステル系樹脂を2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた酸価、水酸基価、軟化点、ガラス転移温度の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
【0088】
非晶性ポリエステル系樹脂は、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。重縮合の条件は、例えば、前述のトナー用結着樹脂の製造方法の工程1で示した反応条件を適用することができる。
【0089】
非晶性ポリエステル系樹脂を含有する場合、低VOCトナー用結着樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂との質量比率[低VOCトナー用結着樹脂/非晶性ポリエステル系樹脂]は、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは50/50以上、更に好ましくは60/40以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0090】
非晶性ポリエステル系樹脂を含有する場合、非晶性ポリエステル系樹脂の含有量は、トナーの結着樹脂組成物中、耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0091】
〔結晶性ポリエステル樹脂〕
トナー粒子は、好ましくは結晶性ポリエステル樹脂を含有する。
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。以下、結晶性ポリエステル樹脂のアルコール成分とカルボン酸成分とについて説明する。
【0092】
アルコール成分は、好ましくは、α,ω-脂肪族ジオールを含む。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは10以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,6-ヘキサンジオールがより好ましい。
【0093】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0094】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、α,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。
【0095】
カルボン酸成分は、好ましくは脂肪族ジカルボン酸である。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が好ましい。
【0096】
脂肪族ジカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは98モル%以下である。
【0097】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸の他、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸を含有していてもよい。
芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、3価以上の多価カルボン酸の例は、トナー用結着樹脂の製造方法において例示したものと同様である。
なお、結晶性ポリエステル樹脂の分子量や軟化点を調整する観点から、カルボン酸成分には、1価のカルボン酸が、適宜含有されていてもよい。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0098】
1価のカルボン酸としては1価の長鎖脂肪族モノカルボン酸が好ましく、例えば、炭素数10以上22以下の脂肪族モノカルボン酸系化合物であり、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、これらの酸のアルキル基の炭素数が1以上3以下であるアルキルエステル等が挙げられる。
【0099】
1価のカルボン酸の含有量は、耐擦過性の観点から、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは1.5モル%以上、更に好ましくは2モル%以上であり、そして、好ましくは5モル%以下であり、より好ましくは4.5モル%以下、更に好ましくは4モル%以下である。
【0100】
アルコール成分のヒドロキシ基(OH基)に対するカルボン酸成分のカルボキシ基(COOH基)の当量比〔COOH基/OH基〕は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0101】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、アルコールとカルボン酸系化合物を含む原料モノマーを不活性ガス雰囲気中、好ましくはエステル化触媒の存在下、さらに必要に応じて、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、好ましくは130℃以上、より好ましくは170℃以上、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下の温度で重縮合させて製造することができる。
【0102】
結晶性ポリエステル樹脂の軟化点は、トナーの保存性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、さらに好ましくは75℃以上であり、そして、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
【0103】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、トナーの保存性をより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上であり、そして、トナーの低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、さらに好ましくは90℃以下である。
【0104】
結晶性ポリエステル樹脂の酸価は、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは0.8mgKOH/g以上、更に好ましくは1mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは10mgKOH/g以下である。
【0105】
結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、好ましくは2mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは8mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以下、更に好ましくは15mgKOH/g以下である。
【0106】
結晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは10,000以下である。
【0107】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下である。
【0108】
〔離型剤(ワックス)〕
離型剤(ワックス)としては、例えば、炭化水素ワックス、エステルワックス、シリコーンワックス、脂肪酸アミドワックスが挙げられる。
炭化水素ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物又は石油系炭化水素ワックス;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリブテンワックス等のポリオレフィンワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。
エステルワックスとしては、例えば、モンタンワックス等の鉱物又は石油系エステルワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系エステルワックス;ミツロウ等の動物系エステルワックスが挙げられる。
脂肪酸アミドワックスとしては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いてもよい。
これらの中でも、炭化水素ワックス又はエステルワックスが好ましく、炭化水素ワックスがより好ましい。また、炭化水素ワックスとしては、パラフィンワックスが好ましい。
【0109】
ワックスの融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
なお、ワックスを2種以上組み合わせて使用する場合は、それぞれのワックスの融点が、前述の範囲内であることが好ましい。
ワックスを含有する場合、ワックスの含有量は、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0110】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤は、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」「ボントロンN-71」「ボントロンN-74」「ボントロンN-79」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)等が挙げられる。
【0111】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
荷電制御剤の中でも、負帯電性荷電制御剤が好ましく、サリチル酸化合物の金属化合物がより好ましい。
【0112】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。また、トナーの帯電量の環境安定性を向上させる観点から正帯電性荷電制御剤と、負帯電性荷電制御剤とを併用してもよい。
【0113】
本発明のトナーは、荷電制御剤に加えて、又は荷電制御剤の代わりに、荷電制御樹脂を含有していてもよい。荷電制御樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、ポリアミン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0114】
〔着色剤〕
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、その他のカラートナーのいずれであってもよい。
例えばイエロートナー用としては、C.I.ピグメントイエロー(P.Y.) 3,12,13,14,16,17,55,65,73,74,83,94,95,97,120,151,154,167,169,172,180,181,185及びこれらの混合顔料等が挙げられる。マゼンタトナー用としては、C.I.ピグメントレッド(P.R.) 5,31,57:1,122,146,147,150,176,184,185,202,269、C.I.ピグメントバイオレット(P.V.)19及びこれらの混合顔料等が挙げられる。シアントナー用としては、C.I.ピグメントブルー(P.B.) 15:3、C.I.ピグメントブルー 15:3とC.I.ピグメントグリーン(P.G.) 7又はC.I.ピグメントグリーン 36との混合顔料等が挙げられる。なお、ここでいう混合顔料とは、トナーの原料配合時にそれぞれの顔料が併用されていてもよく、両者を同一粒径に揃えてあらかじめ混合した状態で他のトナー原料に配合して用いられていてもよい。
【0115】
着色剤の含有量は、トナーの画像濃度を向上させる観点から、結着樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0116】
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、トナーの製造方法は、好ましくは
工程A:低VOCトナー用結着樹脂を含むトナー原料を溶融混練する工程、及び
工程B:工程Aで得られた溶融混練物を粉砕、分級しトナー粒子を得る工程
を含む。
工程Aでは、例えば、低VOCトナー用結着樹脂、非晶性ポリエステル系樹脂、ワックス、荷電制御剤、着色剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練することができる。
工程Aでは、好ましくは、上記のトナー原料を含有する混合物を80℃以上160℃以下の範囲内で溶融混練してもよい。溶融混練温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下である。
工程Aでは、溶融混練後の溶融混練物を冷却し、次の工程Bに供してもよい。
【0117】
工程Bでは、好ましくは、溶融混練により得られた溶融混練物を、粉砕及び分級しトナー粒子を得る。当該粉砕及び分級は、公知の方法により行うことができる。
更に、得られたトナー粒子を、機械式表面改質装置又は熱式表面改質装置でトナー形状を球形化する球形化工程を公知の方法により行うことができる。
【0118】
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは4μm以上、更に好ましくは6μm以上であり、そして、好ましくは14μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
【0119】
トナーは、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理されていることが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、及びポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。
これらの中でも、シリカが好ましく、シリカは、環境安定性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることが好ましい。疎水化の方法は特に限定されず、疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、メチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。疎水化処理剤の処理量は、シリカ粒子の表面積当たり1mg/m2以上7mg/m2以下が好ましい。
外添剤の個数平均粒径は、帯電性及び感光体への傷防止の観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。
外添剤を用いる場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0120】
トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる。トナーは、一成分系現像剤として、又はキャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。樹脂等の物性は、以下の方法により測定した。
【0122】
[測定方法]
〔トナー用結着樹脂及び比較用トナー用結着樹脂中の揮発性有機化合物(VOC)の含有量〕
(標準トルエン溶液の測定)
トルエン100mgを100mLメスフラスコに秤量し、メタノールでメスアップし、標準トルエン溶液とした。標準トルエン溶液を20mLのヘッドスペースバイアル瓶に10μL入れ、アルミキャップで素早く密封した。ヘッドスペースの気体を下記に示す条件で測定を行った。
【0123】
(サンプルの測定)
30~40gのトナー用結着樹脂又は比較用トナー用結着樹脂をコーヒーミルにて15秒間粉砕し、得られた微粉砕物を20mLのヘッドスペースバイアル瓶に試料を500mg秤量し、アルミキャップで密封した。
サンプルを封入したバイアル瓶をヘッドスペースサンプラー「Agilent 7697」(アジレント・テクノロジー社製)にセットし、120℃で60分間バイアル瓶を加熱した。その後、ヘッドスペースの気体をガスクロマトグラフ「Agilent 7890B」(アジレント・テクノロジー社製)に導入し、下記に示す条件にて測定を行った。
測定により得られたピーク面積と上記で測定したトルエンのピーク面積より、樹脂中のVOC量をトルエン換算にて算出した。
【0124】
(測定条件)
・ヘッドスペースサンプラー条件
オーブン温度:120℃
ループ温度:170℃
ライン温度:200℃
バイアル平衡時間:60分
・GC測定条件
カラム:HP-5MS(φ0.25mm×60m(膜厚0.25μm):アジレント・テクノロジー社製)
検出器:FID
オーブン昇温条件:初期温度 40 ℃(3分間保持)
第1段階昇温速度:2℃/分(70℃まで)
第2段階昇温速度:5℃/分(150℃まで)
第3段階昇温速度:10℃/分(300℃まで)
最終温度:300℃(5分間保持)
注入口温度:200℃
検出器温度:300℃
スプリット比:10:1
カラム流量:1mL/min(He)
【0125】
〔樹脂の酸価及び水酸基価〕
樹脂の酸価及び水酸基価は、JIS K0070:1992の中和滴定法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、トナー用結着樹脂、比較用トナー用結着樹脂、及び非晶性ポリエステル系樹脂の場合はアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕に、結晶性ポリエステル樹脂の場合はクロロホルムに変更した。
【0126】
〔樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mLになるように、試料を、溶媒に、25℃で溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC製)を用いて濾過して不溶解分を除き、試料溶液とした。なお、試料がトナー用結着樹脂、比較用トナー用結着樹脂、及び非晶性ポリエステル系樹脂の場合は溶媒としてテトラヒドロフランを用い、試料が結晶性樹脂の場合は溶媒としてクロロホルムを用いた。
(2)分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液を、毎分1mLの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μLを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン「A-500」(5.0×102)、「A-1000」(1.01×103)、「A-2500」(2.63×103)、「A-5000」(5.97×103)、「F-1」(1.02×104)、「F-2」(1.81×104)、「F-4」(3.97×104)、「F-10」(9.64×104)、「F-20」(1.90×105)、「F-40」(4.27×105)、「F-80」(7.06×105)、「F-128」(1.09×106)(以上、東ソー株式会社製)を標準試料として作成したものを用いた。括弧内は分子量を示す。なお、試料がトナー用結着樹脂、比較用トナー用結着樹脂、及び非晶性ポリエステル系樹脂の場合は溶離液としてテトラヒドロフランを用い、試料が結晶性樹脂の場合は溶離液としてクロロホルムを用いた。
測定装置:「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製)
分析カラム:「GMHXL+G3000HXL」(東ソー株式会社製)
【0127】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
【0128】
〔トナー用結着樹脂、比較用トナー用結着樹脂、及び非晶性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0129】
〔樹脂の結晶性指数〕
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温(20℃)から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。試料を0℃で1分間維持し、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、最も大きいピークの温度を吸熱の最大ピーク温度とした。上記の方法で測定した樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))から樹脂の結晶性指数を算出した。
【0130】
〔結晶性ポリエステル樹脂の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで-10℃まで冷却し、1分間温度を保持した。次に試料を昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで-30℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピーク温度を融点とした。
【0131】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。得られた吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
【0132】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
・測定装置:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマン・コールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「コールターマルチサイザー(登録商標)IIIバージョン 3.51」(ベックマン・コールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマン・コールター株式会社製)
・分散液:「エマルゲン(登録商標)109P」〔ポリオキシエチレンラウリルエーテル、花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance、グリフィン法)=13.6〕を前記電解液に溶解して濃度5質量%に調整したもの。
・分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機「ASU-2」(アズワン株式会社製)にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:ビーカー内で、前記試料分散液を、前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、得られた粒度分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
【0133】
[評価方法]
〔耐擦過性〕
複写機「AR-505」(シャープ株式会社製)に各トナーを実装し、定着機を通過する前にベタ画像を取り出して未定着の状態で印刷物を得た(印字面積:2cm×12cm、付着量:0.5mg/cm2)。更に、同じ紙に対して2度未定着画像を印刷し、層厚を1.5mg/cm2とした。このようにして得られた未定着画像を180℃、300mm/secで定着して印刷物を得た。
得られた印刷物に、縦×横×高さ=3cm×3cm×6.5cm、重さ500gのステンレス製のおもり(接触面積9cm2)をのせて、速度0.5m/sで印字上を往復させた。1往復を1回とし、50回を上限とした。黒い帯状のトナーの付着物が非印字部に現れた時点の回数を目視で確認し擦過性を評価した。回数が多いほど耐擦過性が良好であることを示す。
【0134】
[樹脂の製造]
<トナー用結着樹脂の製造>
製造例1(樹脂AL-1の製造)
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4900g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1859g、アミン変性シリコーンとしてシリコーン「KF-864」(信越化学工業株式会社製、重量平均分子量30,000、動粘度1,700(25℃)、官能基当量3,800g/mol)191g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)33.8g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.38gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で4.5時間反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、イオン交換水506.9gを1時間かけて滴下した。その後、185℃まで冷却し、8kPaにて脱水しながら更に所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AL-1を得た。各種物性を測定し表1に示す。
【0135】
製造例2(樹脂AL-2の製造)
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1952g、アミン変性シリコーンとしてシリコーン「KF-864」(信越化学工業株式会社製、重量平均分子量30,000、動粘度1,700(25℃)、官能基当量3,800g/mol)188g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)33.4g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.34gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、220℃まで昇温し、常圧で7時間反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、イオン交換水500.8gを1時間かけて滴下した。その後、185℃まで冷却し、8kPaにて脱水しながら更に所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AL-2を得た。各種物性を測定し表1に示す。
【0136】
製造例3〔樹脂AL-3の製造〕
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1836g、アミン変性シリコーンとしてシリコーン「KF-864」(信越化学工業株式会社製)185g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)32.8g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.28gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、225℃まで昇温し、常圧で4時間反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、イオン交換水492.1gを1時間かけて滴下した。その後、185℃まで冷却し8kPaにて脱水しながら更に所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AL-3を得た。各種物性を測定し表1に示す。
【0137】
製造例4及び5〔樹脂AL-4及びAL-5〕
原料組成を表1に示すように変更した以外は製造例3と同様にして、樹脂AL-4及びAL-5を得た。各種物性を測定し表1に示す。
【0138】
【0139】
<比較用トナー用結着樹脂の製造>
製造例6〔樹脂AX-1の製造〕
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4900g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1882g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)33.9g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.39gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にてマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で6時間反応を行った後、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AX-1を得た。各種物性を測定し表2に示す。
【0140】
製造例7〔樹脂AX-2の製造〕
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1952g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)33.4g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.34gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で3時間反応を行った後、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AX-2を得た。各種物性を測定し表2に示す。
【0141】
製造例8〔樹脂AX-3の製造〕
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1952g、アミン変性シリコーンとしてシリコーン「KF-864」(信越化学工業株式会社製)313g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)33.4g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物3.34gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で3時間反応を行った後、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AX-3を得た。各種物性を測定し表2に示す。
【0142】
製造例9〔樹脂AX-4の製造〕
原料組成を表2に示すように変更した以外は製造例8と同様にして、樹脂AX-4を得た。各種物性を測定し表2に示す。
【0143】
【0144】
表1に示すように、本発明の製造方法で製造されたトナー用結着樹脂(樹脂AL-1~5)は、従来の方法で製造された変性シリコーンを含む比較用トナー用結着樹脂(樹脂AX-3及び4)と比較して、VOCの含有量が低減していた。また、驚くべきことに、樹脂AL-1~5のVOCの含有量は、変性シリコーンを含まない比較用トナー用結着樹脂(樹脂AX-1及び2)よりも少なかった。これは、原料由来のVOCが、本発明の製造方法により除去されたためと考えられる。
【0145】
<非晶性ポリエステル系樹脂の製造>
製造例10〔樹脂AH-1の製造〕
アルコール成分としてビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物2450g及びビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物2275g、カルボン酸成分としてテレフタル酸1322g及びドデセニル無水コハク酸188g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)20.4g、及びエステル化助触媒として没食子酸1水和物2.04gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、235℃まで昇温し、常圧で2.5時間反応を行った後、8kPaにて1時間減圧で反応を行った。その後、常圧で190℃まで冷却し、トリメリット酸無水物554gを添加したあと、210℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温した。その後、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、樹脂AH-1を得た。各種物性を測定し表3に示す。
【0146】
【0147】
<結晶性ポリエステル樹脂の製造>
製造例11〔樹脂C-1の製造〕
アルコール成分として1,6-ヘキサンジオール1652g、カルボン酸成分としてドデカン二酸3123g及びステアリン酸119g、エステル化触媒としてジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)24.5gを、温度計、ステンレス製撹拌棒、分留塔、脱水管、冷却管、及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて撹拌しながらマントルヒーター中で、140℃まで昇温し、常圧で5時間反応を行った後、200℃まで10℃/hの速度で段階的に昇温を行った。その後8kPaにて所望の軟化点まで反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂である樹脂C-1を得た。各種物性を測定し表4に示した。
【0148】
【0149】
[トナーの製造]
実施例1〔トナー1の製造〕
樹脂AL-1を65質量部、樹脂AH-1を35質量部、樹脂C-1を5質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロンE-81」(オリヱント化学工業株式会社製)1質量部、着色剤「シアニンブルー4927」(大日精化工業株式会社製、C.I.ピグメントブルー15:3(PB 15:3))10質量部、及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)1質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)で十分混合した後、同方向回転二軸押出し機(株式会社池貝製PCM-30)を用い、スクリュー回転速度200r/min、バレル設定温度100℃で溶融混練した。得られた溶融混練物を冷却し、IDS粉砕・分級機(日本ニューマチック社製)分級して、体積中位粒径(D50)が8μmのトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に、外添剤「AEROSIL NAX 50」(日本アエロジル株式会社製、疎水性シリカ、疎水化処理剤:HMDS、個数平均粒子径:約30nm)1質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3,600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー1を得た。耐擦過性を測定し表5に示す。
【0150】
実施例2~5、比較例1~4〔トナー2~5、及び51~54〕
樹脂を表5のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例1~4のトナー2~5及び51~54を得た。耐擦過性を測定し表5に示す。
【0151】
【0152】
以上、実施例及び比較例の結果から、本願発明によれば、VOCの含有量の低いトナー用結着樹脂が得られ、更に、該トナー用結着樹脂を含有する静電荷像現像用トナーは、優れた耐擦過性を有することがわかる。