(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】ロールスクリーン装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20250403BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20250403BHJP
H02S 30/20 20140101ALI20250403BHJP
【FI】
E06B5/00 A
E06B9/17 Z
H02S30/20
(21)【出願番号】P 2021017628
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】石井 久史
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-076293(JP,A)
【文献】特開平10-093124(JP,A)
【文献】特開2015-166525(JP,A)
【文献】特開平11-022332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 9/17
H02S 30/20
H10F 19/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に構成されるスクリーン部と、前記スクリーン部を保持する保持部とを備えるロールスクリーン装置であって、
前記スクリーン部は、
太陽電池セルと、
前記太陽電池セルの受光面上に形成される受光面側封止層と、
前記受光面側封止層上に形成される受光面側被覆層と、
前記受光面側被覆層に形成される透光孔と、
を備えることを特徴とするロールスクリーン装置。
【請求項2】
前記スクリーン部の昇降を案内するガイドレールをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のロールスクリーン装置。
【請求項3】
前記透光孔は、前記ガイドレールと摺動する前記受光面側被覆層の端部に形成されないことを特徴とする請求項2に記載のロールスクリーン装置。
【請求項4】
前記ガイドレールによって挟み込まれる前記スクリーン部の端部に、発電に寄与しないダミー太陽電池セル部が形成されることを特徴とする請求項2または3に記載のロールスクリーン装置。
【請求項5】
前記スクリーン部を巻き取るための巻取部をさらに備え、
前記スクリーン部の上端の前記巻取部に固定される部分に、発電に寄与しないダミー太陽電池セル部が形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロールスクリーン装置。
【請求項6】
前記スクリーン部の下部に設けられたボトムレールをさらに備え、
前記スクリーン部の下端の前記ボトムレールに固定される部分に、発電に寄与しないダミー太陽電池セル部が形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のロールスクリーン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルを備えたロールスクリーン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン部分に太陽電池セルを設けたロールスクリーン装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなロールスクリーン装置では、太陽電池セルの受光面上に封止層を形成し、さらにその上に表面保護のための被覆層を形成している。しかしながら、被覆層を設けたことにより、発電効率が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、太陽電池セルを備えたロールスクリーン装置において、発電効率を向上する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のロールスクリーン装置は、シート状に構成されるスクリーン部と、スクリーン部を保持する保持部とを備える。スクリーン部は、太陽電池セルと、太陽電池セルの受光面上に形成される受光面側封止層と、受光面側封止層上に形成される受光面側被覆層と、受光面側被覆層に形成される透光孔と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係るロールスクリーン装置の概略正面図である。
【
図2】第1実施形態に係るロールスクリーン装置の概略水平断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、透光孔の種類を説明するための図である。
【
図4】ロールスクリーン装置の変形例を説明するための図である。
【
図5】変形例に係るロールスクリーン装置の概略正面図である。
【
図6】変形例に係るロールスクリーン装置の巻取部の周辺を示す図である。
【
図7】変形例に係るロールスクリーン装置のボトムレールの周辺を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係るロールスクリーン装置の概略水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るロールスクリーン装置10の概略正面図である。ロールスクリーン装置10は、建物の開口部に取り付けて使用される。
【0010】
ロールスクリーン装置10は、スクリーン部12と、スクリーン部12を吊り下げ保持する保持部14と、スクリーン部12の昇降を案内する一対のガイドレール16,17とを備える。
【0011】
スクリーン部12は、可撓性を有する長方形状のシート体として構成される。このスクリーン部12は、その長手方向の上端部が保持部14内の巻取部19に連結され、下端部にボトムレール18が設けられている。ボトムレール18は、スクリーン部12を下方向に引き降ろす方向に力を加えると共に、スクリーン部12に張力を付与して平面性を高める作用を及ぼす。
【0012】
スクリーン部12は、複数の太陽電池セル20を内蔵している。
図1に示す例では、複数の長方形状の太陽電池セル20が上下方向(高さ方向)に並べて配列されているが、配列方法については特に限定されず、自由な配列が可能である。複数の太陽電池セル20は、互いに直列に接続される。太陽電池セル20は光起電力効果を利用し、光エネルギーを電力に変換するように構成される。スクリーン部12の層構成については後述する。
【0013】
保持部14は、スクリーン部12を巻き取るための巻取部19と、巻取部19を収納するケース15とを備える。スクリーン部12の昇降操作は、プルコード式、チェーン式などの既知の方式を採用することができる。あるいは、ケース15内に電動モータを設け、電動式としてもよい。
【0014】
ガイドレール16,17は、スクリーン部12の左右両端に配置されており、スクリーン部12の端部を挟み込むように構成されている。ガイドレール16,17を設けることにより、スクリーン部12の横側からの光漏れおよび熱漏れを防ぐことができるので、遮光性能、遮熱性能および断熱性能を向上することができる。また、スクリーン部12の皺を抑制する効果も期待できる。
【0015】
また、太陽電池セル20を内蔵したスクリーン部12は、通常のファブリック製のスクリーンと比較して皺や凹凸面が発生しやすいという性質がある。ガイドレール16,17を設けることにより、スクリーン部12の皺や凹凸面を低減することができる。ガイドレールとロールスクリーンの隙間はモヘヤなどで塞いでもよい。
【0016】
図2は、第1実施形態に係るロールスクリーン装置10の概略水平断面図である。スクリーン部12は、太陽電池セル20と、太陽電池セル20の受光面(発電面、表面とも呼ばれる)20a上に形成される受光面側封止層24と、太陽電池セル20の受光面20a上に形成される受光面側封止層24と、太陽電池セル20の裏面(非受光面とも呼ばれる)20b上に形成される裏面側封止層26と、受光面側封止層24上に形成される受光面側被覆層28と、裏面側封止層26上に形成される裏面側被覆層30と、を備える。ロールスクリーン装置10は、太陽電池セル20の受光面が室外側を向き、太陽電池セル20の裏面が室内側を向くように建物の開口部に取り付けられる。スクリーン部12の厚さは、例えば0.5mm~2.0mmであってよい。
【0017】
太陽電池セル20は、例えばポリイミド基板21と、ポリイミド基板21上に形成される例えば薄膜シリコン22と、薄膜シリコン22上に形成される透明導電膜(ITO)23とを備える。太陽電池セルは、薄膜シリコンに限定されず、有機薄膜、色素増感、ペロブスカイト、CIGS、CIS、これらのタンデム構造などでもよい。
【0018】
受光面側封止層24は、太陽電池セル20の受光面20aを覆うように設けられている。また、裏面側封止層26は、太陽電池セル20の裏面20bを覆うように設けられている。封止層の材料としては、オレフィン系エラストマー(TPO)を用いることができる。
【0019】
裏面側被覆層30は、裏面側封止層26を覆うように設けられている。裏面側被覆層30は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルなどの繊維類やプラスチック類(合成樹脂)で形成されてよい。裏面側被覆層30に遮光性を持たせるために、例えば有色で不透明な樹脂を用いてもよい。あるいは、裏面側被覆層30上に別途遮光層が設けられてもよい。
【0020】
受光面側被覆層28は、受光面側封止層24を覆うように設けられている。受光面側被覆層28は、ETFE(Ethylene Tetra Fluoro Ethylene)などの透明または半透明な樹脂で形成されてよい。あるいは受光面側被覆層28は、デザイン性の向上等を目的として、有色の樹脂で形成されてもよい。
【0021】
本第1実施形態に係るロールスクリーン装置10では、受光面側被覆層28に複数の透光孔32が形成されている。透光孔32は、規則的に配置されてもよいし、ランダムに配置されてもよい。透光孔32の直径は、0.1mm~20mmであってよい。受光面側被覆層28の全面積に対して透光孔32が占める割合は、1%未満~100%未満であってよく、好ましくは1%~99%、より好ましくは5%~80%であってよい。
【0022】
図3(a)~
図3(d)は、透光孔32の種類を説明するための図である。受光面側被覆層28に形成される複数の透光孔32は、
図3(a)に示すように、正面視で円形や多角形の孔であってよい。あるいは、透光孔32は、
図3(b)に示すように、一つの大きな孔が受光面側被覆層28の中央部に設けられたものであってもよい。一つの大きな孔は、完全に周囲を囲われた孔である必要はなく、図(c)に示すように上端が欠けた孔であってもよいし、図(d)に示すように上端と下端が欠けた孔であってもよい。
【0023】
透光孔32は、受光面側被覆層28の厚さ方向に貫通した貫通孔であってよい。このような貫通孔は、受光面側封止層24上にべたに受光面側被覆層28を形成する材料を塗布した後、該材料層に物理的又は化学的な方法で形成されてよい。あるいは、貫通孔は、受光面側封止層24上の貫通孔を形成したい部分をテープなどで養生し、受光面側被覆層28を形成する材料を塗布した後に養生を剥がすことにより形成されてもよい。
【0024】
太陽電池セルの受光面を被覆層で覆った場合、発電効率の低下が生じる。被覆層を透明または半透明とした場合であっても若干の発電効率の低下が生じ、被覆層を有色とした場合は発電効率の低下の度合いが高くなる。本第1実施形態に係るロールスクリーン装置10では、受光面側被覆層28に複数の透光孔32を形成したので、透光孔32を介して太陽光を太陽電池セル20に取り込むことができ、発電効率を向上することができる。特に受光面側被覆層28が有色の場合は、発電効率を大幅に向上することができる。
【0025】
上記の例では、透光孔32を貫通孔としたが、透光孔32は貫通孔に限定されず、その周囲の部分よりも高い透光性を有しているものであればよい。例えば、透光孔32は、非透明な受光面側被覆層28に透明な孔状部分を設けたものであってもよい。この場合も、透明な孔状部分から太陽光を太陽電池セル20に取り込むことができるので、全面を非透明とした場合と比較して発電効率を向上できる。
【0026】
上述したように、第1実施形態に係るロールスクリーン装置10では、スクリーン部12の左右の端部がガイドレール16,17によって挟み込まれている。ガイドレール16,17によって挟み込まれているスクリーン部12の端部には、太陽電池セル20(より詳細には薄膜シリコン22および透明電極膜23)は形成されていない。
【0027】
スクリーン部12の端部は、スクリーン部12の昇降によってガイドレール16,17と摺動するため、摺動に対する耐久性が必要とされる。そこで本実施形態では、ガイドレール16,17と摺動する受光面側被覆層28の端部28a,28bには透光孔が形成されていない。これにより、透光孔の存在による強度の低下や傷による透過性の低下を防ぐことができるので、耐摺動性を確保することができる。
【0028】
このように、本実施形態に係るロールスクリーン装置10によれば、発電効率の向上と耐摺動性の確保を両立することができる。
【0029】
図4は、ロールスクリーン装置の変形例を説明するための図である。
図4に示すように、変形例に係るロールスクリーン装置110においては、ガイドレール16,17によって挟み込まれているスクリーン部12の端部に、ダミー薄膜シリコン27およびダミー透明電極膜29が形成されている。ダミー薄膜シリコン27およびダミー透明電極膜29は、取り出し電極が設けられていない。すなわち、ダミー薄膜シリコン27およびダミー透明電極膜29が形成されている部分は、発電に寄与しないダミー太陽電池セル部51となっている。一方、スクリーン部12の面内においてダミー太陽電池セル部51より内側の薄膜シリコン22および透明電極膜23が形成されている部分は、取り出し電極が設けられており、発電に寄与する太陽電池セル部50となっている。このようなダミー太陽電池セル部51を形成することにより、太陽電池セル部50とのデザイン性の統一を図ることができる。仮にダミー薄膜シリコン27およびダミー透明電極膜29が形成されている部分に電極を設けたとしても、最終的に結線しなければ同義である。
【0030】
図5は、変形例に係るロールスクリーン装置110の概略正面図である。
図6は、変形例に係るロールスクリーン装置110の巻取部19の周辺を示す図である。
図7は、変形例に係るロールスクリーン装置110のボトムレール18の周辺を示す図である。
【0031】
上述したように、ロールスクリーン装置110においては、ガイドレール16,17によって挟み込まれているスクリーン部12の端部にダミー太陽電池セル部51が設けられている。また、ロールスクリーン装置110では、
図6に示すように、スクリーン部12の上端の巻取部19に固定される部分にも、ダミー太陽電池セル部52が設けられている。さらに、ロールスクリーン装置110では、
図7に示すように、スクリーン部12の下端のボトムレール18に固定される部分にも、ダミー太陽電池セル部52が設けられている。
【0032】
本実施形態に係るロールスクリーン装置10は、裏面側被覆層30に映像を投影することで、投影スクリーンとしても利用することができる。すなわち、本実施形態に係るロールスクリーン装置10によれば、遮光、発電、投影、遮熱および断熱を同時に実現することができる。
【0033】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係るロールスクリーン装置40の概略水平断面図である。第2実施形態に係るロールスクリーン装置40は、受光面側被覆層28の構成が第1実施形態に係るロールスクリーン装置10と異なる。
【0034】
第2実施形態に係るロールスクリーン装置40では、太陽電池セル20(より詳細には薄膜シリコン22および透明電極膜23)を覆う受光面側被覆層28の部分28cが、ガイドレール16,17と摺動する受光面側被覆層28の端部28a,28bよりも薄く形成されている。太陽電池セル20を覆う受光面側被覆層28の部分28cの厚さは、例えば0.025mm~0.25mmであってよい。ガイドレール16,17と摺動する受光面側被覆層28の端部28a,28bの厚さは、例えば0.5mm~1.5mmであってよい。
【0035】
このように、太陽電池セル20を覆う受光面側被覆層28の部分28cを薄く形成することにより、太陽電池セル20に光を取り込みやすくなるので、発電効率を向上することができる。特に受光面側被覆層28が有色の場合は、発電効率を大幅に向上することができる。
【0036】
一方、ガイドレール16,17と摺動する受光面側被覆層28の端部28a,28bについては厚くしているので、耐摺動性を確保することができる。
【0037】
このように、本実施形態に係るロールスクリーン装置40によっても、発電効率の向上と耐摺動性の確保を両立することができる。
【0038】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0039】
10,40,110 ロールスクリーン装置、 12 スクリーン部、 14 保持部、 15 ケース、 16 ガイドレール、 20 太陽電池セル、 21 ポリイミド基板、 22 薄膜シリコン、 24 受光面側封止層、 26 裏面側封止層、 28 受光面側被覆層、 30 裏面側被覆層、 32 透光孔、 50 太陽電池セル部、 51,52,53 ダミー太陽電池セル部。