(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】充電制御装置、移動体、充電制御システム及び充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250403BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20250403BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20250403BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250403BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 B
B60L53/30
B60L58/16
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2021020565
(22)【出願日】2021-02-12
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】齊田 陽
(72)【発明者】
【氏名】藤村 悠
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-61401(JP,A)
【文献】特開2013-210340(JP,A)
【文献】特開2012-186906(JP,A)
【文献】特開2017-134571(JP,A)
【文献】特開2017-135926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 1/00-3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電源からバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、
前記バッテリの現在SOCを取得する現在SOC取得部と、
目標SOCを取得する目標SOC取得部と、
前記外部電源の単位電力当りの電気料金を取得する電気料金取得部と、
前記バッテリの劣化促進度合を取得する劣化促進度合取得部と、
現在時刻より前記現在SOCから前記目標SOCまで前記バッテリを充電する際の前記電気料金
及び前記バッテリの劣化促進度合に関する評価値と、前記現在時刻から一定時間後の時刻より前記現在SOC
から前記目標SOC
まで前記バッテリを充電する際の前記電気料金及び前記バッテリの劣化促進度合に関する評価値とを取得する評価値取得部と、
取得された前記現在時刻に対する前記評価値と、取得された前記一定時間後の時刻に対する前記評価値とを比較
し、比較した前記評価値のうち、より評価値が低い方に対する前記現在時刻又は前記一定時間後の時刻を前記バッテリへの充電を実際に開始する充電開始時刻に設定することで、前記バッテリの劣化促進度合が低くなるような前記バッテリの充電スケジュールを設定する充電スケジュール設定部と、
を有する、充電制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の充電制御装置において、
前記バッテリを有し、該バッテリからの電力供給で駆動する移動体の駆動予定時刻を取得する駆動予定時刻取得
部をさらに有し、
前記充電スケジュール設定部は、前記バッテリが充電可能な状態である場合に、前記劣化促進度合取得部が取得した前記劣化促進度合に基づき、前記現在SOC及び前記目標SOCに対する前記バッテリの劣化促進度合を特定し、
前記充電開始時刻から前記駆動予定時刻までの間で、前記バッテリの劣化促進度合
が低い状態に維持されるような前記充電スケジュールを設定する、充電制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記劣化促進度合取得部が取得した前記劣化促進度合に基づき、前記現在SOC及び現在バッテリ温度に対する前記バッテリの劣化促進度合と、前記目標SOC及び充電終了後のバッテリ温度に対する前記バッテリの劣化促進度合とを特定し、
前記充電開始時刻から前記駆動予定時刻までの間で、前記バッテリの劣化促進度合
が低い状態に維持されるような前記充電スケジュールを設定する、充電制御装置。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれか1項に記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、
前記評価値取得部が前記一定時間間隔で前記評価値を取得する毎に、前記現在時刻
に対する前記評価値と前記一定時間後の時刻
に対する前記評価値とを比較し、
前記一定時間後の時刻
に対する前記評価値が低ければ、該
一定時間後の時刻を選択し、
前記一定時間後の時刻
に対する前記評価値が前記現在時刻
に対する前記評価値よりも高くなれば、該現在時刻を前記充電開始時刻に設定し、前記評価値取得部での前記評価値の取得処理を中止させる、充電制御装置。
【請求項5】
請求項
1~3のいずれか1項に記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、
前記評価値取得部が前記一定時間間隔で前記評価値を取得する毎に、前記現在時刻
に対する前記評価値と前記一定時間後の時刻
に対する前記評価値とを比較して、
比較した前記評価値のうち、より評価値
が低い
方に対する前記現在時刻又は前記一定時間後の時刻を選択し、
前記評価値のうち、最も低い評価値
に対する時刻を前記充電開始時刻に設定する、充電制御装置。
【請求項6】
請求項
5記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記一定時間間隔を可変にすることで、前記最も低い評価値
に対する時刻の選択処理を複数回実行する、充電制御装置。
【請求項7】
請求項
2又は3記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記駆動予定時刻までに前記バッテリへの充電が終了するような前記評価値のうち、最小の評価値
に対する時刻を前記充電開始時刻に設定する、充電制御装置。
【請求項8】
請求項
2、3、7のいずれか1項に記載の充電制御装置において、
前記評価値は、
前記外部電源から前記バッテリへの有効電力と前記電気料金の単価と第1重み係数とを乗じて得られる電気料金評価値と、
前記移動体の前回の駆動完了時から前記駆動予定時刻までの時間帯における前記バッテリの劣化を示す劣化特性係数の時間積分に第2重み係数を乗じて得られるバッテリ劣化評価値と、
前記駆動予定時刻までに前記バッテリへの充電が終了するか否かを評価する充電終了評価値と、
の和である、充電制御装置。
【請求項9】
請求項
8記載の充電制御装置において、
前記移動体のユーザが前記バッテリの劣化よりも前記電気料金を重視する場合、前記第1重み係数が前記第2重み係数よりも大きく設定され、
前記ユーザが前記電気料金よりも前記バッテリの劣化を重視する場合、前記第2重み係数が前記第1重み係数よりも大きく設定され、
前記駆動予定時刻までに前記バッテリへの充電が終了する場合には、前記充電終了評価値が低く設定され、
前記駆動予定時刻までに前記バッテリへの充電が終了しない場合には、前記充電終了評価値が高く設定される、充電制御装置。
【請求項10】
請求項
8又は9記載の充電制御装置において、
前回の前記バッテリへの充電における前記電気料金と、今回の前記バッテリへの充電における前記電気料金とに変更がない場合、前記充電スケジュール設定部は、前回の前記バッテリへの充電における前記電気料金を用いて、前記電気料金評価値を算出する、充電制御装置。
【請求項11】
請求項
8又は9記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記移動体のユーザが各日毎の電力需給バランスによって前記電気料金が可変する変動タリフ料金契約を行っている場合、前記電気料金を定期的に取得し、該当日の前記電気料金を用いて、前記電気料金評価値を算出する、充電制御装置。
【請求項12】
請求項
8~11のいずれか1項に記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記有効電力及び前記電気料金の単価の時系列変化と前記第1重み係数とを考慮して前記電気料金評価値を算出する、充電制御装置。
【請求項13】
請求項2
、3、7~12のいずれか1項に記載の充電制御装置において、
前記充電スケジュール設定部は、前記駆動予定時刻よりも所定時間前に前記バッテリへの充電を終了するような前記充電スケジュールを設定する、充電制御装置。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の充電制御装置と、バッテリとを備える、移動体。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の充電制御装置と、バッテリとを備える、充電制御システム。
【請求項16】
外部電源からバッテリへの充電を制御する充電制御方法であって、
現在SOC取得部が前記バッテリの現在SOCを取得するステップと、
目標SOC取得部が前記バッテリの目標SOCを取得するステップと、
電気料金取得部が前記外部電源の単位電力当りの電気料金を取得するステップと、
前記バッテリの劣化促進度合を取得するステップと、
現在時刻より前記現在SOCから前記目標SOCまで前記バッテリを充電する際の前記電気料金及び前記バッテリの劣化促進度合に関する評価値と、前記現在時刻から一定時間後の時刻より前記現在SOCから前記目標SOCまで前記バッテリを充電する際の前記電気料金及び前記バッテリの劣化促進度合に関する評価値とを取得するステップと、
充電スケジュール設定部が、
取得された前記現在時刻に対する前記評価値と、取得された前記一定時間後の時刻に対する前記評価値とを比較
し、比較した前記評価値のうち、より評価値が低い方に対する前記現在時刻又は前記一定時間後の時刻を前記バッテリへの充電を実際に開始する充電開始時刻に設定することで、前記バッテリの劣化促進度合が低くなるような前記バッテリの充電スケジュールを設定するステップと、
を有する、充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源からバッテリへの充電を制御する充電制御装置、充電制御システム及び充電制御方法と、バッテリが搭載された移動体とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車の次回の走行日時が設定された場合に、外部電源から電気自動車に搭載されるバッテリに対して、次回の走行日時の直前の低料金時間帯に充電することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、電動車両のバッテリに対して、充電開始時刻から充電完了時刻までの間で、充電時に劣化が進みやすいSOC領域及び温度域の滞在時間が短くなるように、中SOC領域の直前まで一次充電を行い、その後、充電完了時刻までに満充電状態となるように二次充電を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-186906号公報
【文献】特開2019-154167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1には、電気料金を考慮したバッテリの充電制御が開示されている。また、特許文献2には、SOCの状態によるバッテリの劣化を考慮した該バッテリの充電制御について開示されている。しかしながら、いずれの特許文献にも、電気料金とバッテリの劣化との双方を考慮してバッテリの充電を制御することは検討されていない。
【0006】
本発明の目的は、電気料金の削減と、バッテリの劣化の抑制とを共に実現する充電制御装置、充電制御システム及び充電制御方法、並びに、充電制御装置及びバッテリが備えられた移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による充電制御装置は、外部電源からバッテリへの充電を制御する充電制御装置であって、前記バッテリの現在SOCを取得する現在SOC取得部と、目標SOCを取得する目標SOC取得部と、前記外部電源の単位電力当りの電気料金を取得する電気料金取得部と、前記電気料金を考慮し、且つ、前記現在SOCと前記目標SOCとを比較することで、前記バッテリの劣化促進度合が低くなるような前記バッテリの充電スケジュールを設定する充電スケジュール設定部とを有する。
【0008】
本発明の他の態様による移動体は、上記のような充電制御装置とバッテリとを備える。
【0009】
本発明のさらに他の態様による充電制御システムは、上記のような充電制御装置とバッテリとを備える。
【0010】
本発明のさらに他の態様による充電制御方法は、外部電源からバッテリへの充電を制御する充電制御方法であって、現在SOC取得部が前記バッテリの現在SOCを取得するステップと、目標SOC取得部が前記バッテリの目標SOCを取得するステップと、電気料金取得部が前記外部電源の単位電力当りの電気料金を取得するステップと、充電スケジュール設定部が、前記電気料金を考慮し、且つ、前記現在SOCと前記目標SOCとを比較することで、前記バッテリの劣化促進度合が低くなるような前記バッテリの充電スケジュールを設定するステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電気料金と、充電前及び充電後のバッテリの劣化特性(バッテリの劣化のしやすさ)との双方を考慮して、バッテリの充電スケジュールを設定する。従って、この充電スケジュールに従って外部電源からバッテリへの充電を実行することで、電気料金を削減しつつ、バッテリの劣化の抑制を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態による充電制御装置及び車両を含む充電制御システムのブロック図である。
【
図3】SOCとバッテリの劣化促進度合との関係を示す図である。
【
図5】評価関数(評価値)の時間経過を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による充電制御装置、移動体、充電制御システム及び充電制御方法について、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0014】
[1.本実施形態の概略構成]
図1は、本実施形態による充電制御装置10及びバッテリ12を備えた充電制御システム14のブロック図である。充電制御システム14は、バッテリ12が搭載された移動体としての車両16と、外部電源としての充電設備18と、管理サーバ20と、バッテリ12を含む車両16のユーザが使用する情報通信機器としてのスマートデバイス22とから構成される。以下の説明では、管理サーバ20が、車両16外の充電設備18から車両16内のバッテリ12への充電を制御する充電制御装置10として機能する場合について説明する。
【0015】
なお、本実施形態において、移動体は、バッテリ12からの電力供給によって移動(駆動)可能な物体であればよい。従って、本実施形態は、二輪、三輪、四輪等の各種の車両、航空機等の飛行体、船舶等の各種の移動体に適用可能である。また、本実施形態は、移動体に限らず、バッテリ12からの電力供給によって駆動する各種の機器における該バッテリ12の充電制御にも適用可能である。
【0016】
また、本実施形態では、
図1のように、プラグイン方式で充電設備18からバッテリ12に充電する場合について説明する。本実施形態では、非接触給電方式で充電設備18からバッテリ12に充電することも可能である。
【0017】
さらに、移動体が車両16である場合、該車両16には、バッテリ12からの電力供給によって走行する電動車両や、バッテリ12からの電力供給を受けて駆動するモータと内燃機関とを備えるハイブリッド車両が含まれる。
【0018】
さらにまた、充電設備18からバッテリ12への充電を制御する充電制御装置10は、管理サーバ20に限らず、車両16内の不図示のECUが充電制御装置10の機能を担ってもよい。あるいは、スマートデバイス22が充電制御装置10の機能を担ってもよい。
【0019】
車両16は、バッテリ12、充電実施部24、車載ディスプレイ26、通信制御ユニット28及び充電ポート30を備える。充電設備18は、例えば、車両16のユーザの自宅の敷地内に設置された充電設備である。車両16が敷地内にある場合、ユーザは、充電設備18から延びるケーブル32の先端に設けられた充電コネクタ34(充電ガン)を充電ポート30に差し込むことで、充電設備18からバッテリ12への充電を可能な状態にする。充電実施部24は、充電コネクタ34が充電ポート30に接続されている場合、管理サーバ20からの制御に従って、充電設備18からバッテリ12への充電を実施する。また、充電実施部24は、各種のセンサを用いて、バッテリ12を含む車両16に関わる各種の情報(例えば、バッテリ12のSOC、バッテリ12の温度(以下、バッテリ温度と呼称する。)、車両16の外気温)を取得可能である。
【0020】
車載ディスプレイ26は、車両16に備わるナビゲーション装置等である。従って、車載ディスプレイ26は、各種の情報を画像として表示すると共に、該情報を音として出力可能である。また、車載ディスプレイ26は、ユーザの操作入力を受け付けるタッチパネル等の操作部を備えている。
【0021】
通信制御ユニット28は、管理サーバ20及びスマートデバイス22との間で、無線通信による情報の送受信が可能である。通信制御ユニット28は、例えば、管理サーバ20からバッテリ12の充電制御に関わる指示内容を受信して充電実施部24に出力し、一方で、充電実施部24が取得したバッテリ12に関わる各種の情報を管理サーバ20に送信する。
【0022】
管理サーバ20は、通信部36と、制御部38(現在SOC取得部、目標SOC取得部、電気料金取得部、充電スケジュール設定部、駆動予定時刻取得部、劣化促進度合取得部、評価値取得部)と、電気料金テーブル保持部39及び車両履歴保持部40を含む記憶部42とを有する。制御部38は、該管理サーバ20のCPUであって、不揮発性の記憶媒体である記憶部42に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、充電設備18からバッテリ12への充電スケジュールの設定等を行う充電計画判断部44として機能する。充電計画判断部44の具体的な機能については、後述する。
【0023】
通信部36は、車両16の通信制御ユニット28及びスマートデバイス22との間で、無線通信による情報の送受信が可能である。通信部36は、例えば、通信制御ユニット28から車両16に関わる各種の情報(例えば、バッテリ12のSOC及びバッテリ温度、車両16の外気温)を受信する。また、通信部36は、ユーザが契約している電力会社、又は、ユーザと電力会社とを仲介する電力アグリゲータから、充電設備18の単位電力当たりの電気料金(料金プラン、時間経過に対する電気料金の関数(電気料金関数))の情報を受信可能である。受信された充電設備18の料金プランは、電気料金テーブル保持部39に格納される。そのため、電気料金テーブル保持部39には、ユーザの契約に基づく電気料金テーブルが格納されている。あるいは、各日毎の電力の需給バランスによって、所定分単位で電気料金が可変する変動タリフ料金契約の場合、通信部36が電力会社又は電力アグリゲータと定期的に通信することで、電気料金テーブル保持部39の電気料金テーブルが自動的に更新される。
【0024】
スマートデバイス22は、通信部46、表示部48及び操作部50を備える。通信部46は、管理サーバ20の通信部36及び車両16の通信制御ユニット28との間で、無線通信による情報の送受信が可能である。表示部48は、各種の情報を画像として表示する。操作部50は、ユーザの操作入力を受け付けるタッチパネル等である。
【0025】
[2.本実施形態の充電制御の概念]
次に、本実施形態によるバッテリ12の充電制御の概念について、
図2~
図4Bを参照しながら説明する。本実施形態の充電制御では、料金プランと、充電前及び充電後のバッテリ12(
図1参照)の劣化特性(バッテリ12の定性的な劣化のしやすさ)とを考慮して、バッテリ12の充電スケジュールを設定する。そして、該充電制御では、設定された充電スケジュールに従って、充電設備18からバッテリ12への充電を実行することにより、電気料金を削減しつつ、バッテリ12の劣化の抑制を図る。
【0026】
図2は、本実施形態の充電制御の概念を示す説明図である。ここでは、ユーザの運転する車両16(
図1参照)が自宅に帰宅し、その後、ユーザが車両16を運転して自宅から出発するまでの時間帯に、充電設備18からバッテリ12に充電する場合について説明する。また、ここでは、一例として、電気料金が時間帯別に3段階で変わるような電気料金契約の形態(割高料金→割安料金→中間料金)である場合について説明する。なお、本実施形態では、単位電力当たりの電気料金(以下、電気料金単価ともいう。)が、各日毎の電力の需給バランスにより、30分単位でフレキシブルに可変する変動タリフ料金の契約形態の場合も容易に適用可能である。
【0027】
前述のように、特許文献1及び2の手法では、車両16が自宅を出発する予定時刻(以下、出発予定時刻t_start(駆動予定時刻)という。)の前に満充電となるようにバッテリ12を充電していた。しかしながら、従来の手法では、充電開始前と比較して、充電終了後、バッテリ12が却って劣化する場合がある。また、料金プランを考慮して、割安料金の時間帯にバッテリ12を充電することで、電気料金の削減を図ることが可能である。
【0028】
図3は、バッテリ12(
図1参照)のSOCと、バッテリ12の劣化促進度合との関係を示す。
図3において、SOCが50%以下の領域では、バッテリ12の劣化促進度合は、SOCの増加に伴い上昇する。また、SOCが50%以上且つ70%以下の領域では、バッテリ12の劣化促進度合は、SOCの増加に伴い下降する。さらに、SOCが70%以上の領域では、バッテリ12の劣化促進度合は、SOCの増加に伴い上昇する。
【0029】
なお、バッテリ12の劣化促進度合は、厳密にはバッテリ温度に依存して変化する。
図3には、一例として、バッテリ温度がTb1、Tb2(Tb1<Tb2)の場合のバッテリ12の劣化促進度合を図示している。
【0030】
従って、SOCの値によっては、バッテリ12の劣化が促進する場合がある。例えば、
図3において、SOCが50%周辺及び90%以上では、バッテリ12の劣化促進度合が大きい。そのため、劣化促進度合が大きなSOCを目標値(目標SOC)としてバッテリ12を充電した場合、充電終了後、バッテリ12の劣化が促進されやすい。
【0031】
例えば、
図2の「条件1」では、車両16(
図1参照)の帰宅後、一定時間はバッテリ12の充電を行わず、その後、割安料金の時間帯のうち、時刻tcs1以降の時間帯にバッテリ12を充電する。この場合、バッテリ12は、一定時間において、放置劣化によってバッテリ容量(SOH)が減少する可能性がある。しかしながら、帰宅直後のSOCが20%程度であれば、一定時間充電を行わなくても、放置劣化は比較的緩やかに進行する。条件1では、一定時間の経過後、時刻tcs1以降の時間帯において、SOCを20%程度から70%程度にまで充電する。この場合、SOCが70%における劣化促進度合は、20%における劣化促進度合よりも大きい。そのため、SOCが70%でバッテリ12の充電が終了した場合、SOHの減少量は、放置劣化によって相対的に大きくなる。つまり、条件1の場合、充電開始前よりも充電終了後の方がバッテリ12は劣化しやすい。
【0032】
また、
図2の「条件2」では、車両16の帰宅後、割安料金の時間帯のうち、初期の時間帯の時刻tcs2からバッテリ12を充電する。条件2では、充電開始前のSOCが45%程度であり、70%程度のSOCを目標SOCとしてバッテリ12を充電する。この場合、SOCが45%における劣化促進度合は、70%における劣化促進度合よりも大きい。そのため、条件2では、充電終了後よりも充電開始前の方がバッテリ12の劣化が促進されやすい。
【0033】
このように、SOCの値によって、バッテリ12の劣化促進度合は変化する。そのため、本実施形態では、バッテリ12の劣化促進度合が相対的に低くなるように、バッテリ12を充電する。
【0034】
図4A及び
図4Bは、バッテリ12(
図1参照)の劣化促進度合と電気料金との関係を示す図である。
図4A及び
図4Bでは、バッテリ12への充電を開始する時刻(以下、充電開始時刻tcsという。)をパラメータとして、バッテリ12の劣化促進度合と電気料金との関係を示したものである。
図4Aは、バッテリ12のSOCを50%から80%にまで充電する場合の充電開始時刻tcsと劣化促進度合及び電気料金との関係を示す。
図4Bは、バッテリ12のSOCを20%から80%にまで充電する場合の充電開始時刻tcsと劣化促進度合及び電気料金との関係を示す。
【0035】
図4Aの場合、充電開始時刻tcsを22時に設定すれば、電気料金の削減と、充電終了後のバッテリ12の劣化の抑制とを、共に実現することが可能である。つまり、
図4Aの場合、22時が最適な充電開始時刻tcs(以下、最適時刻tcs_optという。)となる。また、
図4Bの場合、充電開始時刻tcsを23時に設定すれば、電気料金の削減と、充電終了後のバッテリ12の劣化の抑制とを、共に実現することができる。つまり、
図4Bの場合、23時が最適時刻tcs_optとなる。
【0036】
このように、時間帯毎の電気料金や、充電前及び充電後のバッテリ12の定性的な劣化のしやすさ(バッテリ12の劣化特性)を比較して、最適時刻tcs_optからバッテリ12への充電を開始すれば、電気料金を削減しつつ、充電終了後のバッテリ12の劣化を抑制することが可能となる。
【0037】
[3.具体的な充電制御]
次に、具体的な充電制御について、
図5~
図7を参照しながら説明する。この具体的な充電制御は、
図2~
図4Bに示す充電制御の概念の具体例である。
【0038】
この具体例では、
図5のように、ユーザの車両16(
図1参照)が前日の18時(時刻t1)に自宅に帰宅し、翌日の8時に車両16が自宅から出発する場合について説明する。従って、出発予定時刻t_startは翌日の8時である。また、バッテリ12への充電は、一定時間Tm(例えば、Tm=1時間)のマージンを考慮し、出発予定時刻t_startよりも前の翌日の7時には、遅くとも終了させる必要がある。以下の説明では、最も遅いバッテリ12の充電の終了時刻を充電終了時刻tcfという。
【0039】
バッテリ12の充電時間Tcは、現時点のSOCの値(現在SOC)と、SOCの目標値(目標SOC)と、充電設備18の特性(普通充電又は急速充電の違い等)と、バッテリ12の周辺温度とによって決まる。この具体例では、充電終了時刻tcfまでにバッテリ12への充電を確実に終了させるように、充電開始時刻tcs(後述する最適時刻tcs_opt)を設定する必要がある。この場合、充電終了時刻tcfから充電時間Tcを逆算することで、最も遅い充電開始時刻t_constを算出することができる。従って、充電開始時刻t_constよりも前にバッテリ12への充電を開始させると、充電終了時刻tcfまでに充電を終了させることができる。一方、充電開始時刻t_const以降にバッテリ12への充電を開始すると、充電終了時刻tcfまでに充電を終了させることができない。
【0040】
また、料金プランは、ユーザの契約する電力会社により、時間帯によって異なる電気料金に設定されている。この具体例では、帰宅時刻(18時)から20時までの時間帯は、割高料金である。また、20時から22時の時間帯は、割高料金よりも安価な中間料金である。さらに、22時から翌日の6時までの時間帯は、最も安価な割安料金である。さらにまた、翌日の6時以降は、中間料金の時間帯である。
【0041】
つまり、この具体例では、割安料金の時間帯を含む所望の充電時間Tcでバッテリ12を充電するため、充電開始時刻tcsの最適化を図り、充電開始時刻t_const前の最適時刻tcs_optからバッテリ12への充電を開始することで、充電終了時刻tcfまでに充電を終了させ、電気料金の削減と、充電終了後のバッテリ12の劣化の抑制とを共に実現する。そして、この具体例では、
図5に示す評価関数Q(t)を用いて、最適時刻tcs_optを特定する。以下の説明では、便宜上、評価関数Q(t)の値を「総合評価値Q(t)」と呼称する場合がある。
【0042】
評価関数Q(t)とは、電気料金、バッテリ12の劣化促進度合、及び、充電開始時刻tcsから充電終了時刻tcfまでの充電の完了の有無を総合的に評価するための関数である。すなわち、評価関数Q(t)とは、時刻t1から充電終了時刻tcfまでの時間帯において、ある時刻tiから充電を開始し、充電時間Tc(ti)で現在SOCから目標SOCにまで充電する場合に、電気料金、及び、バッテリ12の劣化促進度合を用いて総合的に評価するものである。従って、評価関数Q(t)は、
図5に示すように、それぞれの時刻tiにおいて得られる。
【0043】
なお、充電開始時刻tcs(時刻ti)が変化した場合、車両16の外気温の影響によって時刻tiでのバッテリ温度が変化し、充電時間Tcが変化する可能性がある。このように、充電時間Tcは、充電開始時刻tcs及びバッテリ温度に依存して変化するため、以下の説明では、ある時刻tiから充電を開始するときの充電時間Tcを充電時間Tc(ti)、充電開始時刻t_constから充電を開始するときの充電時間Tcを充電時間Tc(t_const)と呼称する場合がある。
【0044】
具体的に、評価関数Q(t)は、下記の(1)式で表わされる。
Q(t)=k1×(電気料金評価関数Qcost(t))+k2
×(バッテリ劣化評価関数Qbat(t))+k3 (1)
【0045】
ここで、(1)式の第1項目を電気料金評価値と呼称する。電気料金評価値のうち、電気料金評価関数Qcost(t)は、時刻tiから充電を開始するときの電気料金を評価するための関数である。また、k1は、電気料金評価関数Qcost(t)に対する第1重み係数である。この場合、電気料金評価関数Qcost(t)は、下記の(2)式で表わされる。
Qcost(t)=Σ(充電設備18の有効電力P(t)
× 電気料金単価M(t)) (2)
【0046】
P(t)は、ある時刻tiから充電を開始する場合の充電設備18からバッテリ12への有効電力である。M(t)は、ある時刻tiから充電を開始する場合の単位電力当たりの電気料金(電気料金の単価)である。Σは、バッテリ12の充電開始から充電終了までのP(t)×M(t)の総和を示す数学記号である。そのため、(2)式は、バッテリ12への充電開始(時刻ti)から充電終了(時刻tiから充電時間Tc(ti)経過した時刻(ti+Tc(ti)))までの電気料金の時間積分を示している。従って、ある時刻tiの電気料金評価値は、各時刻tにおける充電設備18の有効電力P(t)と電気料金単価M(t)とを乗算し、時刻tiから充電終了時刻(ti+Tc(ti))まで積分することで算出される。
【0047】
なお、充電設備18の有効電力P(t)は、(1)充電設備18の特性、(2)車両16の外気温等の影響で変化するバッテリ温度、(3)車両16に搭載された高電圧の補機(負荷)の稼働状態(例えば、車両16内の空調、バッテリ12への加温等)に依存し、充電開始時刻tcs(時刻ti)によって変化する。つまり、充電設備18の有効電力P(t)は、常に一定ではなく、時刻tでのバッテリ温度や車両16の負荷の稼働状態を予測した上で、時刻tiから充電終了時刻(ti+Tc(ti))までの時系列的な変化を考慮して算出される。
【0048】
これにより、低温環境でバッテリ12を加温して動作させる状況、又は、ユーザが出発予定時刻t_startに合わせて、一定時間Tm内でタイマ空調を設定している状況等に対しても、電気料金評価値を精度良く算出することができる。
【0049】
従って、電気料金評価値は、(2)式からも明らかなように、電気料金が高くなる程大きくなり、一方で、電気料金が低くなる程小さくなる。
【0050】
(1)式の第2項目をバッテリ劣化評価値と呼称する。バッテリ劣化評価値のうち、バッテリ劣化評価関数Qbat(t)は、時刻tiから充電を開始するときのバッテリ12の劣化を評価するための関数である。また、k2は、バッテリ12の劣化促進度合(
図3参照)に応じたバッテリ劣化評価関数Qbat(t)に対する第2重み係数である。この場合、バッテリ劣化評価関数Qbat(t)は、下記の(3)式で表わされる。
Qbat(t)=Σk(t)×t (3)
【0051】
k(t)は、ある時刻tiから充電を開始した場合に、
図3のバッテリ12の劣化促進度合に基づいて定義される、バッテリ12のSOCに応じた放置劣化特性を示す。以下の説明では、放置劣化特性k(t)ともいう。Σは、バッテリ12の充電開始から充電終了までのk(t)×tの総和を示す数学記号である。従って、(3)式は、SOCの値によって異なる放置劣化特性k(t)を、バッテリ12への充電開始から充電終了まで時間積分することを示している。
【0052】
前述のように、厳密には、バッテリ12の劣化促進度合(
図3参照)は、バッテリ温度に依存し、該バッテリ温度によって変化する。そのため、放置劣化特性k(t)は、バッテリ12の劣化促進度合に基づいて定義される、バッテリ12のSOC及びバッテリ温度に応じた放置劣化特性を用いてもよい。この場合、(3)式は、SOC及びバッテリ温度の違いで異なる放置劣化特性k(t)を、時刻t1から出発予定時刻t_startまで時間積分することを示すことになる。なお、
図3では、SOCとバッテリ12の劣化促進度合との関係のみ図示している。
【0053】
従って、放置劣化特性k(t)は、ある時刻tiにおけるSOC及びバッテリ温度を予測することで算出される。すなわち、放置劣化特性k(t)は、時刻t1から時刻tiまで放置されているバッテリ温度の時系列変化から、時刻tiから充電終了時刻(ti+Tc(ti))まで充電する際のSOC及びバッテリ温度の時系列変化と、充電終了時刻(ti+Tc(ti))から出発予定時刻t_startまで放置されるバッテリ温度の時系列変化とを、それぞれ予測することで算出することができる。このように、バッテリ温度の時系列的な変化を考慮することで、バッテリ劣化評価関数Qbat(t)(バッテリ劣化評価値)を精度良く算出することができる。従って、著しく温度が低い又は高い状況においても、バッテリ12の劣化を一層抑制することが可能となる。
【0054】
従って、バッテリ劣化評価値は、(3)式からも明らかなように、バッテリ12の劣化促進度合が進む程大きくなり、一方で、バッテリ12の劣化促進度合が低くなる程小さくなる。
【0055】
k1及びk2の各係数は、車両履歴保持部40に予め保持されたユーザの志向を示す情報に基づき、充電計画判断部44が設定するか、又は、ユーザが車載ディスプレイ26又はスマートデバイス22の操作部50を操作して設定してもよい。
【0056】
k3は、充電終了時刻tcfまでにバッテリ12への充電が終了するかどうかを示す第3重み係数である。以下、第3重み係数を充電終了評価値と呼称する。ここで、評価関数Q(t)は0~1の範囲の値をとり、充電終了時刻tcfまでに充電が終了する場合には、k3=0に設定され、充電終了時刻tcfまでに充電が終了しない場合には、k3=1に設定される。つまり、k3は、充電終了時刻tcf、すなわち、出発予定時刻t_startまでにバッテリ12への充電が終了しない場合には、評価関数Q(t)が取り得る範囲の最大値に該評価関数Q(t)を設定するための制約条件である。
【0057】
このように、(1)式の評価関数Q(t)、すなわち、総合評価値Q(t)は、バッテリ12の充電制御に関して、電気料金、バッテリ12の劣化促進度合、及び、充電終了時刻tcfまでの充電の完了の有無を総合的に評価したものである。
【0058】
前述のように、評価関数Q(t)(総合評価値Q(t))は、任意の時刻t毎に得られる。この具体例において、評価関数Q(t)は、
図5のように、帰宅時刻t1から時間経過に伴って減少し、最小値(極小値)にまで低下した後は時間経過に伴って増加し、充電開始時刻t_const以降は上限値に固定される。
【0059】
ここで、帰宅時刻t1から22時までの時間帯に充電開始時刻tcsを設定し、バッテリ12への充電を開始する場合、総合評価値Q(t)は高くなる。これは、(1)電気料金が比較的割高であること、及び、(2)目標SOCに早く到達するため、充電終了後、放置劣化が進みやすいことで、総合評価値Q(t)が高くなるためである。
【0060】
また、22時から翌日の1時までの時間帯に充電開始時刻tcsを設定し、バッテリ12への充電を開始する場合、帰宅時刻t1から22時までの時間帯よりも、総合評価値Q(t)は低くなる。これは、電気料金が割安料金であるため、総合評価値Q(t)が低くなったものと考えられる。但し、この時間帯でも、目標SOCに早く到達し、放置劣化が進むため、総合評価値Q(t)はそれ程低下しない。
【0061】
さらに、翌日の1時から3時までの時間帯に充電開始時刻tcsを設定し、バッテリ12への充電を開始する場合、総合評価値Q(t)は最も低くなる。これは、(1)電気料金が割安料金であること、(2)充電終了時刻tcf直前に目標SOCに到達し、放置劣化が抑制されること、及び、(3)充電終了時刻tcfまでに充電が完了することで、総合評価値Q(t)が最も低くなるものと考えられる。
【0062】
さらにまた、翌日の3時~5時の時間帯に充電開始時刻tcsを設定し、バッテリ12への充電を開始する場合、総合評価値Q(t)は上昇する。また、翌日の5時以降の時間帯に充電開始時刻tcsを設定し、バッテリ12への充電を開始する場合、総合評価値Q(t)は上限値になる。すなわち、充電開始時刻t_const以降に充電を開始すれば、充電終了時刻tcfまでに充電が完了しないため、総合評価値Q(t)が上限値になるためである。
【0063】
従って、評価関数Q(t)が最小値になる時点を最適時刻tcs_optに設定すれば、電気料金が比較的安価となり、バッテリ12の劣化が小さくなり、且つ、充電終了時刻tcfまでに充電が終了する。すなわち、電気料金の削減とバッテリ12の劣化の抑制とを共に実現することが可能になる。
【0064】
図6及び
図7は、最適時刻tcs_optの設定処理と、該最適時刻tcs_optから充電終了時刻tcfまでのバッテリ12の充電処理とを示すフローチャートである。
図6及び
図7の処理は、主として、充電計画判断部44(
図1参照)が実行する。
【0065】
先ず、ユーザの運転する車両16(
図1参照)が自宅に帰宅した後、ユーザが充電設備18の充電コネクタ34を充電ポート30に差し込み、充電コネクタ34と充電ポート30とが接続された場合、充電実施部24は、充電設備18からバッテリ12への充電が可能な状態になったことを、通信制御ユニット28及び通信部36を介して、充電計画判断部44に通知する。
【0066】
そして、
図6のステップS1において、充電計画判断部44は、この通知を受けて、時間帯別の電気料金(料金プラン、電気料金関数)を取得する。この場合、充電計画判断部44は、電気料金テーブル保持部39に予め格納されている料金プランを取得する。あるいは、充電計画判断部44は、ユーザが契約している電力会社から通信部36を介して料金プランを取得する。電力会社から料金プランを取得した場合、取得した料金プランは、電気料金テーブル保持部39に格納される。
【0067】
車両履歴保持部40には、SOC及びバッテリ温度とバッテリ12の劣化促進度合との関係がテーブルとして格納されている。そこで、ステップS2において、充電計画判断部44は、車両履歴保持部40を参照し、SOC及びバッテリ温度に対するバッテリ12の劣化促進度合を取得する。
【0068】
ステップS3において、充電計画判断部44は、出発予定時刻t_startを取得する。
【0069】
この場合、充電計画判断部44は、通信部36を介して、車両16の通信制御ユニット28に出発予定時刻t_startの送信要求を行う。これにより、車載ディスプレイ26は、通信制御ユニット28が受信した送信要求に基づき、出発予定時刻t_startの入力を促す表示等を行う。ユーザは、車載ディスプレイ26の表示内容を確認した後、該車載ディスプレイ26を操作して出発予定時刻t_startを入力する。この結果、充電計画判断部44は、通信制御ユニット28及び通信部36を介して、ユーザが入力した出発予定時刻t_startを取得することができる。
【0070】
あるいは、充電計画判断部44は、通信部36を介して、スマートデバイス22の通信部46に出発予定時刻t_startの送信要求を行ってもよい。この場合、スマートデバイス22の表示部48は、通信部46が受信した送信要求に基づき、出発予定時刻t_startの入力を促す表示を行う。ユーザは、表示部48の表示内容を確認した後、操作部50を操作して出発予定時刻t_startを入力する。この結果、充電計画判断部44は、各通信部36、46を介して、ユーザが入力した出発予定時刻t_startを取得することができる。
【0071】
ステップS4において、充電計画判断部44は、充電設備18の特性(普通充電又は急速充電の違い)を示す充電設備情報を取得する。この場合、充電計画判断部44は、ユーザが初期設定した充電設備情報、又は、車両履歴保持部40に充電設備情報が予め格納されている場合には、格納されている充電設備情報を参照すればよい。なお、充電設備情報を予め把握している場合は、ステップS4の取得処理をスキップしてもよい。
【0072】
一方、充電実施部24は、不図示のセンサを用いて、バッテリ12のSOC及びバッテリ温度、車両16の外気温等の車両16(バッテリ12)に関わる各種の情報を逐次取得している。そこで、ステップS5において、充電計画判断部44は、充電実施部24から通信制御ユニット28及び通信部36を介して、車両16に関わる各種の情報を取得する。
【0073】
次のステップS6において、充電計画判断部44は、目標SOCを設定する。この場合、ステップS3と同様に、ユーザが車載ディスプレイ26又はスマートデバイス22の操作部50を操作して目標SOCを入力し、充電計画判断部44が該目標SOCを設定すればよい。あるいは、車両履歴保持部40に保持された車両16の走行履歴を参照し、充電計画判断部44が目標SOCを設定すればよい。なお、目標SOCは、車両16の次回の走行に必要な充電量等、ユーザの利便性を損なわない程度に必要十分な充電量に応じたSOCである。
【0074】
次のステップS7において、充電計画判断部44は、ステップS5で取得した情報に基づいて、現在時刻以降のバッテリ温度の時間経過に対する推移(時系列推移)を予測する。
【0075】
次のステップS8において、充電計画判断部44は、出発予定時刻t_startから一定時間Tmのマージンを考慮して充電終了時刻tcfを算出する。次に、充電計画判断部44は、目標SOC、現在SOC、充電設備情報、及び、バッテリ温度の時系列推移を考慮した充電時間Tcを算出する。次に、充電計画判断部44は、充電終了時刻tcfから充電時間Tcを逆算して充電開始時刻t_constを算出する。
【0076】
次のステップS9において、充電計画判断部44は、上記の(1)式の評価関数Q(t)を定義する。前述のように、充電計画判断部44は、電気料金、バッテリ12の劣化促進度合(劣化特性)及び出発予定時刻t_startを既に取得又は算出している。
【0077】
また、k1及びk2の係数については、ユーザの志向に応じて、充電計画判断部44が設定する。例えば、バッテリ12の充電に関して、ユーザの志向が、バッテリ12の劣化の抑制よりも、電気料金の削減を重視している場合には、k1がk2よりも大きく設定される(k1>k2)。また、ユーザの志向が、電気料金の削減よりも、バッテリ12の劣化の抑制を重視している場合には、k2がk1よりも大きく設定される(k1<k2)。なお、ユーザの志向は、ステップS3の取得処理と同様に、充電計画判断部44から通信部36を介して車両16又はスマートデバイス22に送信要求を行うことで、電気料金の削減又はバッテリ12の劣化の抑制のどちらを重視(優先)するかをユーザに選択させ、その選択結果を踏まえて、充電計画判断部44がk1及びk2を設定すればよい。あるいは、車両履歴保持部40にユーザの志向に関する情報を予め格納しておき、充電計画判断部44がこの情報に基づいてk1及びk2を設定すればよい。
【0078】
また、k3については、現在の時刻が充電開始時刻t_constよりも前ならk3=0に設定され(充電終了時刻tcfまでに充電が終了)、現在の時刻が充電開始時刻t_const以降であればk3=1に設定される(充電終了時刻tcfまでに充電が終了しない)。
【0079】
さらに、(3)式のk(t)は、時刻tにおけるSOC、バッテリ温度及びバッテリ12の劣化促進度合に基づき設定される。
【0080】
このように、(1)式~(3)式の各係数及び各関数が設定されることで、充電計画判断部44は、評価関数Q(t)を定義することができる。
【0081】
図7のステップS10において、充電計画判断部44(
図1参照)は、ある時刻tiの変数iを1に設定する。つまり、ある時刻tiを帰宅時刻t1に設定する。なお、変数iは、1以上の整数である。なお、各時刻の単位は、秒、分、又は時間のいずれでもよい。
【0082】
次のステップS11において、充電計画判断部44は、(1)式~(3)式を用いて帰宅時刻t1(時刻ti)にバッテリ12の充電を開始した場合の評価関数Q(t)の値(総合評価値Q(t))を算出する。すなわち、充電計画判断部44は、帰宅時刻t1から充電時間Tcでバッテリ12を充電する場合の総合評価値Q(t1)を算出する。
【0083】
なお、以下の説明では、時刻tiにおける評価関数Q(ti)(総合評価値Q(ti))を、説明の便宜上、評価関数Q(i)(総合評価値Q(i))と呼称する。
【0084】
次のステップS12において、充電計画判断部44は、時刻tiよりも所定時間(時間α)だけ遅くした時刻t(i+1)の総合評価値Q(i+1)を算出する。この場合、i=1であるため、充電計画判断部44は、時刻t2での総合評価値Q(t)、すなわち、時刻t2から充電時間Tcでバッテリ12を充電する場合の総合評価値Q(t2)を算出する。
【0085】
次のステップS13において、充電計画判断部44は、時刻tiでの評価関数Q(t)の値(総合評価値Q(i))と、時刻t(i+1)での評価関数Q(t)の値(総合評価値Q(i+1))とを比較し、Q(i)<Q(i+1)であるかどうかを判定する。
【0086】
ステップS13において、Q(i)<Q(i+1)である場合(ステップS13:YES)、ステップS14に進み、時刻tiを最適時刻tcs_optに設定する。つまり、Q(i)及びQ(i+1)の両者を比較すると、Q(i)の方が小さいため、時刻tiからバッテリ12の充電を開始すれば、充電終了時刻tcfまでに充電が終了すると共に、電気料金の削減とバッテリ12の劣化の抑制とを図ることが可能になると考えられるためである。
【0087】
一方、ステップS13において、Q(i)≧Q(i+1)である場合(ステップS13:NO)、ステップS14の処理がスキップされ、次のステップS15に進む。つまり、Q(i)及びQ(i+1)の両者を比較すると、Q(i)は、Q(i+1)以上であるため、時刻tiからバッテリ12の充電を開始しても、電気料金の削減とバッテリ12の劣化の抑制とを図ることが難しいと想定されるためである。
【0088】
次のステップS15において、充電計画判断部44は、時刻tiが充電開始時刻t_constに到達したかどうかを判定する。
【0089】
ステップS15において、充電開始時刻t_constに到達していない場合(ステップS15:NO)、ステップS16に進み、変数iをカウントアップする。その後、ステップS12に戻り、ステップS12~S15の処理が繰り返し行われる。従って、充電計画判断部44は、帰宅時刻t1から所定時間の間隔で、時刻tiでの総合評価値Q(i)の算出と、最適時刻tcs_optの更新とを繰り返し行う。
【0090】
ステップS15において、充電開始時刻t_constに到達した場合(ステップS15:YES)、ステップS12~S16の処理が完了し、最適時刻tcs_optが確定する。
【0091】
次のステップS17において、充電計画判断部44は、通信部36及び通信制御ユニット28を介して充電実施部24に、確定した最適時刻tcs_opt及び目標SOCの情報、すなわち、充電スケジュールを送信する。これにより、充電実施部24は、受信した充電スケジュールに基づき、最適時刻tcs_optになったらバッテリ12の充電を開始する。
【0092】
充電実施部24は、充電開始後も、バッテリ12の現在SOCを逐次取得している。そして、ステップS18において、現在SOCが目標SOCに到達すれば(ステップS18:YES)、ステップS19に進み、バッテリ12の充電が終了する。これにより、充電終了時刻tcfまでにバッテリ12の充電を終了させることができる。
【0093】
なお、国、地域、電力会社の違いによって、料金プラン(電気料金が安い時間帯)が異なる場合がある。そのため、
図6及び
図7の処理を行う際、充電計画判断部44は、車両履歴保持部40に格納されている前回の充電制御の履歴を確認し、今回の処理との間で、電気料金に変更なければ、前回の電気料金をそのまま利用してもよい。これにより、ステップS1、S2の一部処理がスキップされるので、充電スケジュールの設定の効率化を図ることができる。但し、前回の充電制御と、今回の充電制御との間で、各条件に変更があれば、
図6及び
図7のフローチャートに沿って処理が順に行われる。
【0094】
また、
図6及び
図7の処理は、充電設備18側の充電コネクタ34と車両16側の充電ポート30とがプラグイン接続されることを条件に実行される。本実施形態では、充電設備18からバッテリ12に非接触充電が可能な状態に至った際に、
図6及び
図7の処理を実行してもよい。
【0095】
また、
図7のステップS17、S18において、充電設備18のブレーカが落ちて充電が停止した場合、その後、充電設備18から起動信号(CPL信号)を再度検知したときに、当初の充電スケジュール通りの充電を再開すればよい。また、充電コネクタ34が充電ポート30から抜かれた場合は、充電スケジュールをリセットせず、充電コネクタ34と充電ポート30とが再度接続されたときに、充電スケジュールに関わる評価関数Q(t)等の計算を再度行って、充電スケジュールを再設定すればよい。
【0096】
さらに、
図7のステップS11~S16において、現時点(時刻t(i))から充電する場合と、所定時間後(時刻t(i+1))に充電する場合とで、総合評価値Q(t)が同じになる場合(Q(i)=Q(i+1))には、所定時間後に充電する場合を選択してもよい。つまり、Q(i+1)に応じた時刻t(i+1)が最適時刻tcs_optに更新される。
【0097】
また、
図5のような評価関数Q(t)となる場合、
図6及び
図7の処理では、時刻t1から充電終了時刻tcfまでの所定時間間隔の時刻ti毎に評価関数Q(t)を算出し、それぞれの時刻tiについてステップS12~S16の処理を繰り返し行えばよい。
【0098】
あるいは、電気料金テーブル等から評価関数Q(t)の下に凸の変曲点が1つしかないことが予め分かっている場合には、時刻t1から所定時間間隔の時刻ti毎に評価関数Q(t)を算出し、それぞれの時刻tiについてステップS12~S16の処理を繰り返し行い、評価関数Q(t)が最小値から上昇に転じる時点を最適時刻tcs_optとして確定すればよい。この場合、最適時刻tcs_optが確定した時点で、ステップS12~S16の処理を中止し、ステップS17以降の処理に移行すればよい。
【0099】
あるいは、時刻tiを可変にして、最適時刻tcs_optの算出処理(最適時刻tcs_optを探索するための最適化演算)を複数回行ってもよい。具体的には、1回目の算出処理では、時間αを比較的大きく設定し(時間α1)、時刻tiから粗めにステップS12~S16の処理を繰り返し行うことで、最適時刻tcs_opt1を大まかに算出する。2回目の算出処理では、1回目の算出処理で求めた最適時刻tcs_opt1を含む時刻(tcs_opt1-α1)から時刻(tcs_opt1+α1)までの時間帯について、α1よりも短い時間α2を設定し、この時間帯において時間α2の間隔で、ステップS12~S16の処理を繰り返し行い、最適時刻tcs_opt2を求める。3回目の算出処理以降、同様な手法で、ステップS12~S16の処理対象の時間帯と時間αとをいずれも短く設定し、最適時刻tcs_optを算出する。これにより、最適時刻tcs_optを算出する際の演算処理負荷が軽減されると共に、ユーザが充電設備18を車両16に接続してから、より短時間で最適時刻tcs_optを精度良く設定することができる。
【0100】
[4.本実施形態の効果]
本実施形態に係る充電制御装置10は、充電設備18(外部電源)からバッテリ12への充電を制御する充電制御装置10であって、バッテリ12の現在SOCを取得する現在SOC取得部、目標SOCを取得する目標SOC取得部、充電設備18の単位電力当りの電気料金を取得する電気料金取得部、及び、電気料金を考慮し、且つ、現在SOCと目標SOCとを比較することで、バッテリ12の劣化促進度合が低くなるようなバッテリ12の充電スケジュールを設定する充電スケジュール設定部として機能させる充電計画判断部44を有する。
【0101】
本実施形態に係る車両16(移動体)は、上記のような充電制御装置10とバッテリ12とを備える。
【0102】
本実施形態に係る充電制御システム14は、上記のような充電制御装置10とバッテリ12とを備える。
【0103】
本実施形態に係る充電制御方法は、充電設備18からバッテリ12への充電を制御する充電制御方法であって、充電計画判断部44が現在SOCを取得するステップ(ステップS5)と、充電計画判断部44が目標SOCを取得するステップ(ステップS6)と、充電計画判断部44が充電設備18の単位電力当りの電気料金を取得するステップ(ステップS1)と、充電計画判断部44が電気料金を考慮し、且つ、現在SOCと目標SOCとを比較することで、バッテリ12の劣化促進度合が低くなるようなバッテリ12の充電スケジュールを設定するステップ(ステップS9~S16)とを有する。
【0104】
このように、本実施形態によれば、電気料金と、充電前及び充電後のバッテリ12の劣化特性(バッテリの劣化のしやすさ)とを考慮して、バッテリ12の充電スケジュールを設定する。従って、この充電スケジュールに従って充電設備18からバッテリ12への充電を実行することにより、電気料金を削減しつつ、バッテリ12の劣化の抑制を実現することができる。
【0105】
ここで、充電計画判断部44は、バッテリ12を有し、該バッテリ12からの電力供給で駆動する車両16(移動体)の出発予定時刻t_start(駆動予定時刻)を取得する駆動予定時刻取得部と、バッテリ12の劣化促進度合を取得する劣化促進度合取得部として機能する。充電計画判断部44は、バッテリ12が充電可能な状態である場合に、取得した劣化促進度合に基づき、現在SOC及び目標SOCに対するバッテリ12の劣化促進度合を特定し、出発予定時刻t_startまでの間で、バッテリ12の劣化促進度合が比較的低い状態に維持されるような充電スケジュールを設定する。
【0106】
これにより、バッテリ12の劣化促進度合が高い状態に維持される時間が減るので、バッテリ12の劣化の抑制が可能となる。
【0107】
また、充電計画判断部44は、取得した劣化促進度合に基づき、現在SOC及び現在のバッテリ温度に対するバッテリ12の劣化促進度合と、目標SOC及び充電終了後のバッテリ温度に対するバッテリ12の劣化促進度合とを特定し、出発予定時刻t_startまでの間で、バッテリ12の劣化促進度合が比較的低い状態に維持されるような充電スケジュールを設定する。
【0108】
これにより、低温環境でバッテリ12を加温動作する状況や、ユーザが出発予定時刻t_startに合わせて車両16内のタイマ空調を設定している状況等に対しても、充電スケジュールを精度良く設定することができる。
【0109】
また、充電計画判断部44は、時刻tiの現在SOCから目標SOCにまでバッテリ12を充電する際の電気料金及びバッテリ12の劣化促進度合に関する評価値(評価関数Q(i)、総合評価値Q(i))と、時刻tiから一定時間(時間α)後の時刻t(i+1)の現在SOCから目標SOCまでバッテリ12を充電する際の電気料金及びバッテリ12の劣化促進度合に関する評価値(評価関数Q(i+1)、総合評価値Q(i+1))とを取得する評価値取得部として機能する。この場合、充電計画判断部44は、取得された各評価値を比較して、評価値の低い時刻をバッテリ12への充電を実際に開始する充電開始時刻tcs(最適時刻tcs_opt)に設定する。
【0110】
これにより、適切な充電開始時刻tcs(最適時刻tcs_opt)を設定することが可能となる。
【0111】
また、充電計画判断部44は、一定時間間隔で総合評価値Q(t)を取得する毎に、時刻tiの総合評価値Q(i)と一定時間後の時刻t(i+1)の総合評価値Q(i+1)とを比較し、一定時間後の時刻t(i+1)の総合評価値Q(i+1)が低ければ、該総合評価値Q(i+1)の低い時刻t(i+1)を選択し、総合評価値Q(i+1)が総合評価値Q(i)よりも高くなれば、該時刻tiを充電開始時刻tcs(最適時刻tcs_opt)に設定し、総合評価値Q(t)の取得処理を中止する。
【0112】
これにより、出発予定時刻t_startまでに充電が終了しないような充電開始時刻tcsが設定されることを回避しつつ、設定処理の効率化を図ることができる。
【0113】
あるいは、充電計画判断部44は、一定時間間隔で評価値Qを取得する毎に、時刻tiの総合評価値Q(i)と一定時間後の時刻t(i+1)の総合評価値Q(i+1)とを比較して、評価値の低い時刻を選択し、最も低い評価値の時刻を充電開始時刻tcs(最適時刻tcs_opt)に設定する。
【0114】
この場合でも、出発予定時刻t_startまでに充電が終了しないような充電開始時刻tcsが設定されることを回避することができる。
【0115】
また、充電計画判断部44は、一定時間間隔を可変にすることで、最も低い評価値の時刻の選択処理を複数回実行する。
【0116】
これにより、当該時刻(最適時刻tcs_opt)を算出する際の演算処理負荷が軽減されると共に、ユーザが充電設備18を車両16に接続してから、より短時間で最適時刻tcs_optを精度良く設定することができる。
【0117】
また、充電計画判断部44は、出発予定時刻t_startまでにバッテリ12への充電が終了するような総合評価値Q(t)のうち、最小の総合評価値の時刻を充電開始時刻tcs(最適時刻tcs_opt)に設定する。
【0118】
これにより、出発予定時刻t_startまでに充電が終了しないような充電開始時刻tcsが設定されることを確実に回避することができる。
【0119】
この場合、総合評価値Q(t)は、充電設備18からバッテリ12への有効電力と電気料金の単価と第1重み係数k1とを乗じて得られる電気料金評価値と、車両16の前回の駆動完了時から出発予定時刻t_startまでの時間帯におけるバッテリ12の劣化を示す劣化特性係数の時間積分に第2重み係数k2を乗じて得られるバッテリ劣化評価値と、出発予定時刻t_startまでにバッテリ12への充電が終了するか否かを評価する充電終了評価値k3との和である。
【0120】
これにより、最適時刻tcs_optの設定を精度良く行うことができる。
【0121】
この場合、バッテリ12のユーザがバッテリ12の劣化よりも電気料金を重視する場合、第1重み係数k1が第2重み係数k2よりも大きく設定され、ユーザが電気料金よりもバッテリ12の劣化を重視する場合、第2重み係数k2が第1重み係数k1よりも大きく設定される。また、出発予定時刻t_startまでにバッテリ12への充電が終了する場合には、充電終了評価値k3が低く設定される(k3=0)。さらに、出発予定時刻t_startまでにバッテリ12への充電が終了しない場合には、充電終了評価値k3が高く設定される(k3=1)。
【0122】
これにより、最適時刻tcs_optの設定を一層精度良く行うことができる。
【0123】
また、前回のバッテリ12への充電における電気料金と、今回のバッテリ12への充電における電気料金とに変更がない場合、充電計画判断部44は、前回のバッテリ12への充電における電気料金を用いて、電気料金評価値を算出する。あるいは、充電計画判断部44は、車両16のユーザが各日毎の電力需給バランスによって電気料金が可変する変動タリフ料金契約を行っている場合、電気料金を定期的に取得し、該当日の電気料金を用いて、電気料金評価値を算出する。
【0124】
いずれの場合でも、充電スケジュールの設定の効率化を図ることができる。また、変動タリフ料金契約の場合、電気料金を定期的に取得するので、該電気料金が自動的に更新される。この結果、電気料金評価値を精度良く算出することができる。
【0125】
この場合、充電計画判断部44は、有効電力及び電気料金の単価の時系列変化と第1重み係数k1とを考慮して電気料金評価値を算出する。
【0126】
これにより、最適時刻tcs_optの設定をより精度良く行うことができる。
【0127】
また、充電計画判断部44は、出発予定時刻t_startよりも所定時間(一定時間Tm)前にバッテリ12への充電を終了するような充電スケジュールを設定する。
【0128】
これにより、ユーザは、余裕をもって車両16を出発させることができる。
【0129】
なお、この発明は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0130】
10…充電制御装置 12…バッテリ
14…充電制御システム 16…車両(物体、移動体)
18…充電設備(外部電源) 20…管理サーバ
44…充電計画判断部(現在SOC取得部、目標SOC取得部、電気料金取得部、充電スケジュール設定部、駆動予定時刻取得部、劣化促進度合取得部、評価値取得部)