(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】火花点火内燃機関のための燃料噴射装置および相対制御方法
(51)【国際特許分類】
F02B 23/08 20060101AFI20250403BHJP
F02B 19/10 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
F02B23/08 B
F02B23/08 A
F02B19/10
F02B19/10 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021042292
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】102020000005683
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519372043
【氏名又は名称】マレリ・ヨーロッパ・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マッテオ・デ・チェーザレ
(72)【発明者】
【氏名】フェデリコ・ストラ
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102015221286(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0003132(US,A1)
【文献】特開2007-198140(JP,A)
【文献】特開2007-032453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00 - 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火内燃機関のための燃料噴射装置(1)であって、
新鮮な空気を含む混合ガスを受けるいくつかのシリンダ(11)であって、それぞれに主燃焼室(MC)が規定されるシリンダ(11)と、
各シリンダ(11)にそれぞれ結合され、燃焼サイクルの間に圧力下で該シリンダ(11)内に燃料を噴射する第1インジェクタ(2)と、
各シリンダ(11)にそれぞれ結合され、前記主燃焼室(MC)内に存在する前記燃料の点火を周期的に確定する点火プラグ(13)と、
各点火プラグ(13)の領域でそれぞれ得られた燃焼前室(PC)であって、各シリンダ(11)の前記主燃焼室(MC)内の乱流を増加させるために、新鮮な空気と燃料からなる混合ガスの燃焼が行われる燃焼前室(PC)と、
を備え、
さらに、該燃料噴射装置(1)は、
いくつかの抽出ダクト(17;28)であって、それぞれが、抽出ポイント(P)の領域において各シリンダ(11)から発し、燃焼サイクルの間に各主燃焼室(MC)内に存在する混合ガスを抽出する抽出ダクト(17;28)と、
前記抽出ダクト(17;28)から前記混合ガスを受ける少なくとも1つのリザーブ(18)であって、該リザーブ(18)内で、前記抽出ダクト(17;28)からの混合ガスが、前記燃焼前室(PC)内部での化学量論的条件下での燃焼を得るために必要な量の燃料と混合される、少なくとも1つのリザーブ(18)と、
各燃焼前室(PC)にそれぞれ結合されて、各燃焼前室(PC)内に、前記リザーブ(18)からのガスと燃料の混合物を噴射する第2インジェクタ(27)と、
前記燃料を前記リザーブ(18)に送り、かつ、第1ダクト(23)によって低圧ポンプ(8)または高圧ポンプ(4)に結合される第3インジェクタ(22)と、
を備えてなる、燃料噴射装置。
【請求項2】
各抽出ダクト(17;28)に沿ってそれぞれ配され、各前記シリンダ(11)の前記主燃焼室(MC)から前記混合ガスを抽出して前記リザーブ(18)に送る第4インジェクタ(20)を備える、請求項1に記載の燃料噴射装置。
【請求項3】
各抽出ダクト(17;28)に沿って前記第4インジェクタ(20)の上流にそれぞれ配されたフィルタ(21)を備える、請求項2に記載の燃料噴射装置。
【請求項4】
前記抽出ダクト(17)に沿って、前記リザーブ(18)の上流かつ前記第4インジェクタ(20)の下流にそれぞれ配されたポンプ装置(29)を備える、請求項2または3に記載の燃料噴射装置。
【請求項5】
各シリンダ(11)が各ピストン(12)を収容し、かつ、前記抽出ポイント(P)が前記ピストン(12)のストロークの上死点の上に得られている、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項6】
各シリンダ(11)が各ピストン(12)を収容し、かつ、前記抽出ポイント(P)が前記ピストン(12)のストロークの上死点の下に得られている、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項7】
各抽出ダクト(17)に沿って前記抽出ポイント(P)に近接してそれぞれ配され、前記抽出ダクト(17)を通る前記混合ガスの流れを調節するよう構成された第1制御弁(19)を備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項8】
前記第1ダクト(23)に沿って配された燃圧センサ(26)を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項9】
前記リザーブ(18)が温度および圧力センサ(24)を備え、かつ、前記ガスと燃料の混合物の空燃比を読み取るラムダセンサ(25)を有している、請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項10】
前記リザーブ(18)から各前記第2インジェクタ(27)へ前記ガスと燃料の混合物を送るいくつかの第2ダクト(28)を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の燃料噴射装置。
【請求項11】
前記第2ダクト(28)に沿って収容されたポンプ装置(29)を備える、請求項10に記載の燃料噴射装置。
【請求項12】
前記ガスと燃料の混合物の圧力のための圧力センサ(30;31)を備え、該圧力センサが前記第2ダクト(28)に沿って収容され、かつ前記ポンプ装置(29)と前記第2インジェクタ(27)との間に介装されている、請求項11に記載の燃料噴射装置。
【請求項13】
前記第2インジェクタ(27)が、前記リザーブ(18)から来る前記ガスと燃料の混合物を各前記燃焼前室(PC)内に噴射すること、および、各前記シリンダ(11)の前記主燃焼室(MC)から前記混合ガスを抽出して前記リザーブ(18)に送ることの双方に適しており、かつ、各前記主燃焼室(MC)からの前記混合ガスを前記リザーブ(18)に送るいくつかの第3ダクト(33)を備える、請求項11または12に記載の燃料噴射装置。
【請求項14】
前記第2ダクト(28)を通る前記ガスと燃料の混合物の通過を調節するよう構成された第2制御弁(32)と、前記第3ダクト(33)を通る前記混合ガスの通過を調節するよう構成された第3制御弁(34)とを備える、請求項13に記載の燃料噴射装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の燃料噴射装置(1)を制御する方法であって、
前記混合ガスが前記シリンダ(11)の前記主燃焼室(MC)から吸引される吸気工程と、
前記シリンダ(11)から来た前記混合ガスが前記リザーブ(18)内で前記燃料と混合される混合工程と、
前記ガスと燃料の混合物が前記燃焼前室(PC)内に噴射される噴射工程と、
前記点火プラグ(13)が点火され 燃焼前室(PC)内で前記ガスと燃料の混合物が点火される点火工程と、
を順に備える、制御方法。
【請求項16】
前記吸気工程、および/または、前記噴射工程、および/または、前記点火プラグ(13)の前記点火工程は、完全燃焼サイクルの角度ウィンドウ内に制限されている、請求項15に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この特許出願は、2020年3月17日に出願されたイタリア特許出願第102020000005683号からの優先権を主張するもので、その開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、火花点火内燃機関用の燃料噴射装置および相対制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
知られているように、火花点火内燃機関用の燃料噴射装置は、一般に、いくつかのインジェクタと、圧力下で燃料をインジェクタに供給するコモンレールと、供給ダクトで燃料を前記コモンレールに供給する高圧ポンプと、燃料を供給ダクトを使用してタンクから前記高圧ポンプに供給する低圧ポンプと、を備える。
【0004】
火花点火内燃機関はさらに、いくつかのシリンダを含み、各シリンダはピストンをそれぞれ収容している。ピストンは、コネクティングロッドによってクランクシャフトに機械的に接続され、シリンダ内での燃焼によって生成された力をクランクシャフト自身に伝達するよう構成される。
【0005】
さらに、上記内燃機関は、各シリンダの内部に存在する混合ガスの点火を周期的に決定するために、各シリンダのための点火プラグを備える。特に、各点火プラグが周期的に作動して、シリンダの燃焼サイクルの各圧縮行程の終わりに、シリンダの内部に画定された主燃焼室内の圧縮ガスの点火を決定する。
【0006】
各シリンダに対し、対応のインジェクタが設けられる。噴射は間接噴射であってもよく、その場合、各インジェクタはシリンダの上流で吸気ダクト内に配置され、あるいは、噴射は直線噴射であってもよく、その場合、各インジェクタは一部がシリンダ内に配される。
【0007】
さらに、燃焼が、各点火プラグの近くに定義された燃焼前室(または補助燃焼室)内で化学量論的条件下で実行され、所定量の燃料と空気が燃焼前室に噴射され、燃焼前室内の混合ガスに存在する燃料(噴射された全燃料の約2~3%に相当する割合)への点火により、各シリンダの下流に配置された主燃焼室内での燃焼が生じてより効率的となる、噴射システムの使用が知られている。
【0008】
新鮮な空気は、燃焼前室の上部の領域に得られた穴(いわゆる受動燃焼前室)を介して主燃焼室によって燃焼前室に供給される。あるいは、いわゆる能動燃焼前室を備えたシステムでは、主燃焼室から来る空気に加えて、混合気を供給することも可能である。通常、燃焼前室は、好ましくは電気圧縮機装置が収容されているダクトによって、インジェクタの上流で前記混合気を用意するための新鮮な空気(すなわち、外部から来る空気)を受け取る。
【0009】
特許文献1には、これまでに説明したタイプの火花点火内燃機関用の燃料噴射システムの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許第10 2015 221286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、燃焼前室に空気を供給するために使用される既知の圧縮機装置は、6~7バールの範囲の圧力のみで供給が行われることを保証することができない。
【0012】
本発明の目的は、火花点火噴射機関用の燃料噴射システムを提供することであり、その燃料噴射システムは、上記欠点に悩まされることがなく、特に製造が容易で経済的であるものである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、火花点火噴射機関の燃料噴射システムを制御する方法を提供することであり、その方法は、上記の欠点に悩まされることがなく、特に実施が容易で経済的なものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明により、火花点火内燃機関用の燃料噴射システムおよび添付の特許請求の範囲による相対制御方法が提供される。
【0015】
以下、本発明を、その非限定的な実施形態を示した添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】火花点火内燃機関を、明りょう化のため細部を省略して示す概略図である。
【
図2】
図1に示した本発明の内燃機関のための燃料噴射装置の第1実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図1に示した本発明の内燃機関のための燃料噴射装置の第2実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図1に示した本発明の内燃機関のための燃料噴射装置の第3実施形態を示す概略図である。
【
図5】
図1に示した本発明の内燃機関のための燃料噴射装置の第4実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、全体として符号1は火花点火内燃機関のための燃料噴射装置を示している。
【0018】
この噴射装置1は、複数のインジェクタ2と、これらインジェクタ2に圧力下で燃料を供給するコモンレール3と、供給ダクト5によって燃料をコモンレール3に供給し、かつ流量調整装置6を備える高圧ポンプ4と、コモンレール3内の燃料圧力を、一般にエンジンの運転条件に応じて時間とともに変化する所望の値とする電子制御ユニット7と、供給ダクト10によって燃料をタンク9から前記高圧ポンプ4に供給する低圧ポンプ8と、を備える。
【0019】
電子制御ユニット7は、高圧ポンプ4の流量を制御するように流量調整装置6に結合され、コモンレール3に、該コモンレール3内で所望の圧力値を持つのに必要な燃料の量を瞬時に供給する。
【0020】
火花点火内燃機関はさらに、好ましくは一列に配置されたいくつかの(特には4つの)シリンダ11を含む。各シリンダ11は各ピストン12を収容し、各ピストン12は、コネクティングロッドによってクランクシャフトに機械的に接続されており、シリンダ11内部の燃焼によって生成された力をクランクシャフト自体に伝達する。
【0021】
さらに、火花点火機関の場合、4つの点火プラグ13(各シリンダ11に1つ)が、シリンダ11内に存在する混合ガスの点火を周期的に確定するように、シリンダ11に結合される。各点火プラグ13は、シリンダ11の燃焼サイクルの各圧縮行程の終わりにシリンダ11の内部で定義された主燃焼室MC内の圧縮ガスの点火を決定するために、周期的に作動される。
【0022】
図2によれば、吸気マニホルド43が、2つの吸気弁14(それらのうちの1つのみが
図2に示されている)によって各シリンダ11に接続され、それら吸気弁14から、新鮮な(すなわち、外部からの)空気および必要に応じEGRを含む混合ガスを取り込む。さらに、この内燃機関は、排気マニホルド15を備え、排気マニホルド15は、2つの排気弁16(それらのうちの1つのみが
図2に示されている)によって各シリンダ11に接続され、燃焼によって生成されたガスを大気中へ放出するため排出ダクト(図示せず)に通じている。
【0023】
知られているように、完全な燃焼サイクルは、4ストロークの連続の結果であり、その終わりに、720°の角度をカバーしてクランクシャフトの2回転が完了する。通常、吸気行程および/または後続の圧縮行程および/または後続の膨張行程中に、燃料がシリンダ11の燃焼室に噴射され、膨張行程またはその前の圧縮行程の最後の部分で、点火プラグ13の電極がスパークを生成し、それがシリンダ11内の空気と燃料の混合物に点火し、実際の燃焼を開始して温度と圧力を上昇させる。最終的に、排気行程において、燃焼ガスは、ピストン12の動きによりそれぞれの排気弁16を通して排出され、排気マニホルド15に放出される。
【0024】
シリンダ11毎に、対応するインジェクタ2が設けられる。噴射は間接噴射であってよく、その場合、各インジェクタ2は、吸気マニホルド43をシリンダ11に接続する吸気ダクト内でシリンダ11の上流に配置され、あるいは、噴射は直接噴射であってよく、その場合、各インジェクタ2は、部分的にシリンダ11の内部に配置される。
【0025】
各シリンダ11はさらに、それぞれのダクト17を備えている。このダクト17は、各シリンダ11の主燃焼室MCから混合ガス(新鮮な空気およびEGRおよび/または燃料)を抽出するために、シリンダ11の側壁における抽出ポイントPのエリアから延びて、4つのシリンダ11によって共有される共通のリザーブ18に至る。前記抽出ポイントPは、ピストン12のストロークの上死点の上または下で取得することもできる。抽出ダクト17に沿って、制御弁19が収容されている。この制御弁19は、抽出ダクト17を通過する混合ガスを調節するよう構成され、抽出ポイントPの近くに配置されている。制御弁19は、好ましくは、圧縮行程およびそれに続く燃焼サイクルの膨張行程中に油が漏れるのを防ぐために、所定の圧力値(4または5バールの範囲)に設定される。制御弁19とリザーブ18との間には、インジェク20が介装されており、各シリンダ11の主燃焼室MCから抽出された混合ガスをリザーブ18に供給する。インジェクタ20は、電子制御ユニット7に接続されており、燃焼サイクルの圧縮行程中に各シリンダ11の主燃焼室MCから混合ガスを抽出し、それをリザーブ18に供給するように制御される。特に、インジェクタ20は、(燃焼サイクルの所与の角度ウィンドウ内で)主燃焼室MC内部の圧力が燃焼前室PCの噴射圧力以上であるときに、各シリンダ11の主燃焼室MCから混合ガスを抽出するように、電子制御ユニット7によって制御される。燃焼前室PCの噴射圧力は8~12バールの範囲であり、好ましくは、燃焼前室PCの噴射圧力は10バールに等しい。
【0026】
好ましい変形例によれば、抽出ダクト16に沿って、好ましくはインジェク20と制御弁19との間に介装されて、インジェク20を保護するフィルタ21が収容されている。
【0027】
さらに、以下でより詳細に説明するように、燃焼前室PC内で化学量論的条件下での燃焼が実行されるのに必要な所定量の燃料をリザーブ18に供給するのに適したインジェクタ22が設けられている。このインジェクタ22は、ダクト23によって、低圧ポンプ8または高圧ポンプ4に接続されている。好ましい変形例によれば、リザーブ18は、電子制御ユニット7に接続された温度および圧力センサ24と、混合ガスの燃料-空気当量比を読み取るためのラムダセンサ25とをさらに備えており、これらセンサは電子制御ユニット7にも接続されている。好ましい変形例によれば、ダクト23に沿って燃圧センサ26が収容されている、この燃圧センサ26は、電子制御ユニット7に接続され、かつ起こり得る故障を診断するのに適したものとされている。
【0028】
各シリンダ11はさらに、各ダクト28によってリザーブ18に接続されたインジェクタ27を備えている。このインジェクタ27は、リザーブ18に含まれるガスと燃料の混合物を、点火プラグ13の近くに画定された燃焼前室PC(または補助燃焼室)に供給するよう構成されている。燃焼前室PCに噴射された混合ガスに存在する燃料(噴射される全燃料の約2~3%に相当する割合)の点火は、各シリンダ11内の主燃焼室MC内の乱流を増加させ、したがって、各シリンダ11の主燃焼室MCに噴射される燃料の点火を向上させる。特に、インジェクタ27は、(燃焼サイクルの所与の角度ウィンドウ内で)当該燃焼前室PC内の圧力が主燃焼室MCから混合ガスが吸引されたときの圧力値よりも小さいときに、リザーブ18に含まれるガスと燃料の混合物を燃焼前室PCに供給するように、電子制御ユニット7によって制御される。
【0029】
図3は、噴射装置1が、インジェクタ27の上流のダクト28に沿って収容されたポンプ装置29を含む点で
図2とは異なる。ポンプ装置29の存在により、リザーブ18に含まれるガスと燃料の混合物を(燃焼サイクルの任意の角度ウィンドウ内で)常に燃焼前室PC内に供給するようインジェク27を制御することが可能となるため、燃焼前室PCへの噴射の柔軟性が高まる。さらに、ガスと燃料の混合物の圧力センサ30が設けられている。この圧力センサ30は、ダクト28に沿って収容され、ポンプ装置29とインジェクタ27との間に介装されている。このセンサ30は、制御ユニット7に接続されており、ガスと燃料の混合物の燃焼前室PC内への噴射を制御できるようになっている。
【0030】
図4は、リザーブ18の上流かつインジェクタ20の下流において、ポンプ装置29が抽出ダクト17に沿って収容されている点で
図3のものと異なっている。この場合も、このポンプ装置の存在により、リザーブ18に含まれるガスと燃料の混合物を(燃焼サイクルの任意の角度ウィンドウ内で)常に燃焼前室PC内に供給するようインジェク27を制御することが可能となるため、燃焼前室PCへの噴射の柔軟性が高まる。
【0031】
好ましくは、リザーブ18にすべてのシリンダ11から来る混合ガスを供給する単一のポンプ装置29が設けられている。あるいは、リザーブ18に各シリンダ11から来る混合ガスを供給するのに適した一つのポンプ装置29が各シリンダ11に対して設けられる。
【0032】
図5は、ポンプ装置29がインジェク27の上流で抽出ダクト28に沿って収容されている点で
図3のものと異なる。この場合もまた、このポンプ装置の存在により、リザーブ18に含まれるガスと燃料の混合物を(燃焼サイクルの任意の角度ウィンドウ内で)常に燃焼前室PC内に供給するようインジェク27を制御することが可能となるため、燃焼前室PCへの噴射の柔軟性が高まる。
【0033】
さらに、噴射装置1にはインジェクタ20と抽出ダクト17の両方を欠いている。この実施形態によれば、インジェクタ27は、主燃焼室MCからリザーブ18に向かう混合ガスを吸引することと、ガスと燃料の混合物をリザーブ18から燃焼前室PCへ供給することの両方に適したものとなっている。さらに、ガスと燃料の混合物の圧力センサ31が設けられている。この圧力センサ31は、ポンプ装置29とインジェクタ27との間に介装されて、ダクト28に沿って収容されている。この圧力センサ31は、ガスと燃料の混合物の圧力を検出して燃焼前室PCへの噴射を制御することができるよう、電子制御ユニット7に接続されている。ポンプ装置29の下流では、ダクト28に沿って、制御弁32が収容されている。この制御弁32は、ダクト28を通るガスおよび燃料の混合物の通過を調節するよう構成されている。この制御弁32は、好ましくは、所定の圧力値(約22バールの範囲)に設定される。
【0034】
さらに、接続ダクト33が設けられている。この接続ダクト33は、インジェクタ27をリザーブ18に接続し、該接続ダクトに沿って各制御弁34が収容されている。制御弁34は、該ダクト33を通る混合ガスの通過を調節するよう構成され、好ましくは、所定の圧力値(約12バールの範囲)に設定される。
【0035】
電子制御ユニット7は、噴射装置1の動作を管理し、とりわけ、各シリンダ2内の圧縮ガスの点火を決定するように点火プラグ13を制御する。
【0036】
噴射装置1を制御する方法を以下に説明する。前記方法は、主燃焼室MCから混合ガスを吸引するための最初の吸気工程を含む。吸気工程は、電子制御ユニット7がインジェクタ20(
図2、
図3、および
図4に示される実施形態による)またはインジェクタ27(
図5に示される実施形態による)の開放を制御することを要求する。明らかに、インジェクタ20またはインジェクタ27の開放は、電子制御ユニット7に格納されている完全燃焼サイクルの角度ウィンドウ内に制限される。各角度ウィンドウは、エンジン角度の度数で表され、シリンダ11の完全燃焼サイクルの圧縮行程に関連付けられている。各角度ウィンドウは、クランクシャフトの端部に取り付けられたフォニックホイールセンサー(図示せず)の信号によって認識され、その回転速度を検出する。さらに、
図4および
図5に示される実施形態によれば、電子制御ユニット7は、センサ24,31によって検出された信号に応じて、主燃焼室MCから吸引された混合ガスの圧力を、燃焼前室PCへの注入のために定められた値まで高めるようにポンプ装置29を制御する。
【0037】
吸気工程に続いて、噴射装置1を制御する方法は、リザーブ18内のガスと燃料の混合物を混合する混合工程を含む。この混合工程中、電子制御ユニット7は、インジェクタ22の開放を制御して、ラムダセンサ25からの信号を介して実行されるフィードバック(または閉ループ)制御によって決定される燃料の量をリザーブ18に供給する。
【0038】
混合工程に続いて、噴射装置1を制御する方法は、ガスと燃料の混合物を燃焼前室PCに噴射する噴射工程を含む。噴射工程の間、電子制御ユニット7は、インジェクタ27の開放を制御する。インジェクタ27の開放は、電子制御ユニット7に格納されている完全燃焼サイクルの角度ウィンドウ内に制限されている。各角度ウィンドウは、エンジン角度の度数で表される。さらに、
図4に示される実施形態によれば、電子制御ユニット7は、センサ24,31によって検出された信号に応じて、主燃焼室MCから吸引された混合ガスの圧力を、燃焼前室PCへの注入のために定められた値まで高めるようにポンプ装置29を制御する。
【0039】
最後に、噴射工程に続いて、噴射装置1を制御する方法は、燃焼前室PC内のガスおよび燃料の混合物に点火するための点火工程を含む。点火工程の間、電子制御ユニット7は、点火プラグ13の点火を制御する。明らかに、点火プラグ13の点火は、電子制御ユニット7に格納されている完全燃焼サイクルの角度ウィンドウ内に制限されている。 各角度ウィンドウはエンジン角度の度数で表される。
【符号の説明】
【0040】
1 燃料噴射装置
2 インジェクタ
4 高圧ポンプ
8 低圧ポンプ
11 シリンダ
12 ピストン
13 点火プラグ
17 抽出ダクト
18 リザーブ
20 インジェクタ
22 インジェクタ
23 ダクト
24 圧力センサ
26 燃圧ポンプ
27 インジェクタ
28 抽出ダクト
29 ポンプ装置
33 ダクト
P 抽出ポイント
PC 燃焼前室
MC 主燃焼室