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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】バリアフィルム
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/065 20060101AFI20250403BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20250403BHJP
   B32B 15/20 20060101ALI20250403BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
F16L59/065
B32B15/08 D
B32B15/20
C23C14/14 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021066661
(22)【出願日】2021-04-09
(62)【分割の表示】P 2020559253の分割
【原出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021183416
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2024-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2018231560
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
(72)【発明者】
【氏名】後藤 花奈子
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】横山 幸弘
【審判官】小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223545号公報(JP,A)
【文献】国際公開第2018/147137(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/159140(WO,A1)
【文献】特開2005-028835(JP,A)
【文献】特開2008-036948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312942(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材層と、
前記フィルム基材層上に形成されたアルミ蒸着層と、
前記アルミ蒸着層上に形成され、水溶性高分子と、金属アルコキシドまたはその加水分解物とを含むバリアコート層と、
を備え、
前記アルミ蒸着層における、前記バリアコート層側の面のXPS分析において、酸素と結合したアルミニウム(Al-O)のピーク面積値が、酸化していないアルミニウム(Al)のピーク面積値の2倍以下である、
バリアフィルム。
【請求項2】
前記XPS分析における炭素の割合が5%以下である、
請求項1に記載のバリアフィルム。
【請求項3】
前記アルミ蒸着層の厚さが10~100nmの範囲内である、
請求項1または2に記載のバリアフィルム。
【請求項4】
前記バリアコート層の厚さが0.01~50μmの範囲内である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のバリアフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリアフィルム、より詳しくは、真空断熱材用積層体に好適なバリアフィルムに関する。本願は、2018年12月11日に出願された日本国特願2018-231560に対し優先権を主張し、その内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車両、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。
中でも、消費電力量の低減の観点から、電気製品、車両、建築等に使用される様々な物品への真空断熱材の採用が進められている。これらの物品に真空断熱材を備えることで、物品全体としての断熱性能を向上させることが可能となり、エネルギー削減効果が期待される。
【0003】
真空断熱材は、芯材を積層体で包み、芯材の周囲を真空状態にし、気体による熱伝導率を限りなくゼロに近づけることにより、断熱性能を高めた断熱材である。
【0004】
真空断熱材は、一般に、対向させた2枚の外装材(以下、「一対の外装材」とも称する。)の周縁を熱で溶着させて袋体とし、その中に発泡樹脂や繊維材等の芯材を入れ、脱気して内部を真空状態とし、袋体の開口を封止して密閉することで形成されている。
真空断熱材はその内部が高真空状態にあることから、内部での空気の対流による熱移動が遮断されるため、高い断熱性能を発揮することができる。
【0005】
真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、内部の真空状態を保持する必要がある。そのため、真空断熱材に用いられる外装材には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性や、芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の種々の機能が要求され、上記外装材としては、通常、これらの機能を備える複数の機能層を備えた積層体が用いられる。
【0006】
例えば、特許文献1~3には、真空断熱材の芯材側から熱融着層、単層または多層のガスバリア層、および単層または多層の保護層がこの順で積層された外装材が開示されている。また、外装材を構成するこれらの機能層は、通常、層間接着層を介して積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2010-255938号公報
【文献】日本国特開2011-89740号公報
【文献】日本国特開2006-194297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
真空断熱材は100℃前後の高温環境下で長期間使用されることがある。外装材の耐熱性が低い場合、上記外装材の劣化により真空断熱材内部の真空状態が維持できなくなる。その結果、長期間の断熱性能を発揮できないという問題が生じる。
【0009】
断熱性能を高めるために、アルミ蒸着フィルムが上記外装材に用いられることが多い。このとき、アルミ蒸着フィルムのバリア性を更に高めるために、アルミニウム蒸着膜の上にバリアコート層が形成されることがある。しかし、アルミ蒸着膜とバリアコート層が十分に密着しなかったり、ラミネート強度が経時的に低下したりすることがあり、積層体においてデラミネーションが生じることがあった。
詳細は後述するが、発明者はこの原因を突き止めた。
【0010】
本発明は、アルミ蒸着膜とバリアコート層とが十分密着し、かつ密着状態を長期間維持できるバリアフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、フィルム基材層と、フィルム基材層上に形成されたアルミ蒸着層と、アルミ蒸着層上に形成され、水溶性高分子と、金属アルコキシドまたはその加水分解物とを含むバリアコート層とを備えるバリアフィルムである。
アルミ蒸着層におけるバリアコート層側の面のXPS分析において、酸素と結合したアルミニウム(Al-O)のピーク面積値は、酸化していないアルミニウム(Al)のピーク面積値の2倍以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバリアフィルムは、アルミ蒸着層とバリアコート層とが十分密着し、かつ密着状態を長期間維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る真空断熱材の断面模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る真空断熱材用積層体の部分断面模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係るバリアフィルムの部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら詳細な説明を加える。ただし本発明は、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0015】
図1は本発明の一実施形態に係る真空断熱材を説明するための断面模式図である。
芯材(3)が真空断熱材用積層体(2)で被覆され封入されており、全体で真空断熱材(1)を構成する。このとき内部は脱気され、真空状態となっている。また、真空断熱材用積層体(2)は、2枚を熱融着層同士を対向する形で重ねて熱融着することにより、袋状に形成されている。
【0016】
図3は、真空断熱材用積層体(2)の一部を構成するバリアフィルムの一実施形態を説明するための断面模式図である。
バリアフィルム(10)はガスバリア層を成すものであって、その構成はフィルム基材層(11)上に蒸着層(12)を積層し、さらにその上にバリア性の保護機能を保持するためのバリアコート層(13)を積層してなる。
【0017】
図2は、真空断熱材用積層体(2)の部分断面模式図である。本実施形態においては、真空断熱材用積層体(2)の基材(4)としてポリアミドフィルムを用いる。基材(4)は、真空断熱材(1)の最外層となる。
【0018】
基材(4)上には、ガスバリア層(9)が積層されている。本実施形態では、バリアコートアルミ蒸着ポリエチレンテレフタレート(以下、「バリアVM-PET」と称する。)フィルム(5)と、アルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「VM-EVOH」と称する)フィルム(6)との2つのフィルムがガスバリア層(9)として用いられている。バリアVM-PETフィルム(5)は、ドライラミネート層(8)により基材(4)と接合されている。VM-EVOHフィルム(6)は、ドライラミネート層(8)によりバリアVM-PETフィルム(5)と接合されている。
【0019】
VM-EVOHフィルム(6)には、熱融着層(7)が形成されている。熱融着層(7)は、ドライラミネート層(8)によりVM-EVOHフィルム(6)と接合されている。
ドライラミネート層(8)としては、ドライラミネーションに用いる各種接着剤を適宜選択して使用できる。ドライラミネーションに代えて、無溶剤型接着剤を用いたノンソルベントラミネーションが用いられてもよい。
【0020】
図2に示されるバリアVM-PETフィルム(5)は、図3に示したバリアフィルム(10)のように、フィルム基材層(11)、蒸着層(12)、およびバリアコート層(13)の3つの層を有する。蒸着層(12)は厚さ10nm~100nmのアルミ蒸着層である。VM-EVOHフィルム(6)は、バリアフィルム(10)からバリアコート層(13)を除いた二層構成を有する。
ガスバリア層(9)の層の数には、特に制限がなく、バリア性を発揮する層を少なくとも1つ有すればよい。ガスバリア層(9)の層構成や材質等は、真空断熱材の用途等を考慮して適宜決定できる。
【0021】
(基材)
次に真空断熱材用積層体(2)の各構成要素について説明を加える。
基材(4)には、高分子材料を素材としたプラスチックフィルムを用いることができる。高分子フィルムは高分子樹脂組成物からなるフィルムであって、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
例えば図2に示した実施形態例はポリアミドフィルムを用いた例であるが、真空断熱材を被覆する最外層の材料として、強度の点でより好ましい。
【0022】
真空断熱材用積層体(2)は、内部の真空状態を維持するためにガスバリア性が求められる。そのために、積層体を構成する層中にガスバリア層を設けてガスバリア性を付与するが、ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属箔を用いることもでき、また表面にガスバリア層を設けたガスバリアフィルムを用いることもできる。
【0023】
(バリアフィルム)
バリアフィルム(10)は、たとえばプラスチック材料からなるフィルム基材層(11)を用い、その片面に蒸着層を設けて形成されるが、蒸着層(12)とバリアコート層(13)を順次積層したものを用いてもよい。
プラスチック材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム等を用いることができる。
これらは、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、延伸されたものでも未延伸のものでも構わない。通常これらのものを、フィルム状に加工して用いられる。特に耐熱性等の観点から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
【0024】
また、フィルムの蒸着層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていてもよい。また、蒸着層との密着性を良くするために、基材の積層面側を前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などのいずれかの処理を施してもよい。
【0025】
フィルムの厚さは、とくに限定されるものではなく、またフィルムとしての適性を考慮して、単体フィルム以外の異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用することもできる。加工性を考慮すれば、3~200μmの範囲が好ましく、特に6~30μmがより好ましい。
【0026】
また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できる長尺の連続フィルムとすることが望ましい。
【0027】
(蒸着層)
次に蒸着層(12)は、例えばアルミニウム(アルミ)の蒸着膜からなり、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する。
【0028】
蒸着層の厚さは、用いられる化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、10~100nmの範囲内が望ましく、その厚さは適宜選択することができる。ただし、膜厚が10nm未満の場合は、均一な膜が得られず、膜厚が十分とはいえない。
【0029】
蒸着層をフィルム上に形成する方法としては、通常の真空蒸着法により形成することができる。また、その他の薄膜形成方法としてスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(PCVD)などを用いることも可能である。生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れる。真空蒸着法の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかが好ましい。
また、蒸着層と基材の密着性及び蒸着層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
【0030】
(バリアコート層)
さらに、ガスバリア層を形成するために蒸着層に重ねて形成することのできる、コーティングによるバリアコート層(13)を説明する。
バリアコート層は、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコーティング剤を用いて形成される。例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコキシドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合した溶液を調整し溶液とする。この溶液を無機化酸化物からなる蒸着層(12)にコーティング後、加熱乾燥し形成される。
【0031】
コーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を用いるとガスバリア性が最も優れる。このPVA は、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものであり、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等までを含み、特に限定されない。
【0032】
またコーティング剤に用いられる塩化錫は、塩化第一錫(SnCl)、塩化第二錫(SnCl)、或いはそれらの混合物であってもよい。またこれらの塩化錫は、無水物でも水和物でもあってもよい。
【0033】
更にコーティング剤に用いられる金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH,C等のアルキル基)で表せる化合物である。具体的にはテトラエトキシシラン〔Si(OC〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2'-C〕などがあげられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0034】
コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、或いは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0035】
例えばコーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。例えばトリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
【0036】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の手段を用いることができる。被膜の厚さは、コーティング剤の種類や加工機や加工条件によって異なる。乾燥後の厚さが、0.01μm以下の場合は、均一な塗膜が得られず十分なガスバリア性を得られない場合があるので好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題がある。そのため厚さは0.01~50μmの範囲にあることが好ましく、より好ましくは0.1~10μmの範囲にあることである。
【0037】
なお、蒸着層、バリアコート層上にさらに蒸着層、バリアコート層を同様に設けることも可能であり、必要に応じて複数層を積層して設けることができる。
【0038】
真空断熱材用積層体のガスバリア層(9)を構成する各層の積層方法は、たとえば2液硬化型ウレタン系接着剤を用いたドライラミネーションによる方法や、無溶剤型接着剤を用いたノンソルベントラミネーションによる方法、エクストルージョンラミネーションによる方法などが採用できるが、特に指定するものではない。
【0039】
(熱融着層)
熱融着層(7)の材質としては、ポリオレフィン樹脂を含むものである。上記熱融着層(7)は、通常、本発明の真空断熱材用積層体の積層方向の一方において最表層を担う層である。
【0040】
熱融着層(7)は、詳しくは直鎖状ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を選定することができ、本発明の真空断熱材用積層体を用いた真空断熱材において、上記真空断熱材の端部の接着を強固にすることができる。
【0041】
熱融着層の厚さとしては、所望の接着力を有することができる厚さであればよく、例えば20μm~100μmの範囲内であり、中でも25μm~90μmの範囲内が好ましく、特に30μm~80μmの範囲内が好ましい。熱融着層の厚さが上記範囲よりも大きいと、真空断熱材用積層体全体としてのガスバリア性や外観等が悪化する場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られず、高温下で長時間使用する間に剥離が生じる場合がある。
【0042】
熱融着層は、市販のフィルムやシートを用いてもよく、熱融着層と接する層表面に、熱溶着層の組成物を塗布して形成してもよい。
【0043】
本実施形態の真空断熱材において、真空断熱材用積層体は、熱融着層が芯材と接するように配置される。
芯材を覆うように対向して配置され、熱融着により接着される真空断熱材用積層体は、優れた耐熱性を示す。したがって、真空断熱材が高温環境下に長期間曝されても、真空断熱材の端部や真空断熱材用積層体の層間での剥離の発生や劣化を抑制することができ、真空断熱材の内部を長期間にわたり高真空状態に維持できる。
【0044】
(真空断熱材)
本実施形態の真空断熱材において、芯材(3)は、図1に示すように、対向する一対の真空断熱材用積層体の間に配置され、真空断熱材用積層体の周縁部を封止されることにより密封される。芯材(3)の材料としては、真空断熱材の芯材として一般的な材料を用いることができる。例えばシリカ等の粉体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維体等の多孔質体が挙げられる。これら多孔質体は、空隙率が50%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。空隙率が高くなるにつれて、芯材の熱伝導率は低くなる。
【0045】
芯材(3)は、外部から進入する微量のガスを吸着するためのゲッター剤を含んでいてもよい。例えばシリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭等をゲッター剤として使用できる。
【0046】
芯材(3)の厚さとしては、所望の断熱効果を発揮できる厚さであれば特に限定されないが、例えば、減圧後の状態で1mm~30mmの範囲内であることが好ましい。
【0047】
真空断熱材の内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材内部の空気の対流を遮断し、断熱性能を向上させることができるからである。
【0048】
本実施形態の真空断熱材の熱伝導率(初期熱伝導率)としては、例えば25℃環境下で10mW・m-1・K-1以下とでき、5mW・m-1・K-1以下が好ましく、3mW・m-1・K-1以下がより好ましい。真空断熱材が熱を外部に伝導しにくくなると、断熱効果が向上する。上記熱伝導率はJIS-A-1412-3に従い熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製 HC-074)を用いた熱流計法により測定された値である。
【0049】
本実施形態の真空断熱材の製造方法は、対向する一対のうち少なくとも一方の真空断熱材用積層体に上述した構成の積層体を用いて芯材を封入し、内部を脱気して真空状態にして密閉することが可能な方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0050】
本実施形態の真空断熱材は、電化機器用真空断熱材、建築用真空断熱材、保冷保温箱体用真空断熱材、自動車用真空断熱材等として、断熱を必要とするあらゆる場所に用いることができる。
【0051】
発明者らは、アルミ蒸着層上にバリアコート層が形成されたバリアフィルムをガスバリア層(9)に使用した真空断熱材用積層体の開発を進める中で、全く同一の層構成を有するフィルムを用いているにも関わらず、蒸着層とバリアコート層との界面で剥離(デラミネーション)を生じやすい積層体と生じにくい積層体が存在することに気づいた。
検討を進めたところ、製造の際にアルミ蒸着層形成後速やかにバリアコート層が形成されたバリアフィルムを使用した積層体では、デラミネーションが生じにくかった。一方、アルミ蒸着層形成後、バリアコート層が形成されるまでに一定の時間が経過したバリアフィルムを使用した積層体では、デラミネーションが生じやすかった。発明者らは、さらに検討を進めることにより、アルミ蒸着層表面におけるアルミニウムの酸化がデラミネーションの増加に関与していることを突き止めた。
【0052】
上述した新しい知見を踏まえ、本実施形態の真空断熱材用積層体(2)では、アルミ蒸着層形成後早期にバリアコート層を形成することにより、アルミ蒸着層の表面におけるアルミニウムの酸化が進む前にバリアコート層でアルミ蒸着層を被覆している。その結果、アルミ蒸着層のうちバリアコート層と接する面において、XPS分析による酸素と結合したアルミニウム(Al-O)のピーク面積が、酸化していないアルミニウム(Al)のピーク面積の2倍以下となっている。
上記構成により、本実施形態の真空断熱材用積層体では、製造直後からアルミ蒸着層とバリアコート層とが良好に密着し、真空断熱材が高温環境下で使用されても、良好な密着状態が長期間持続する。
Al-OおよびAlのピーク面積の値は、X線光電子分光分析結果のグラフに基づいて特定されるものであり、一般的なXPS分析装置(例えば、ULVAC-PHI社製 Quantum2000)を使用して簡便に算出および取得できる。
【0053】
発明者らの検討では、アルミ蒸着層形成後60時間以内にバリアコート層でアルミ蒸着層を被覆すれば、Al-Oのピーク面積をAlのピーク面積の2倍以下とできることを確認している。これは、酸素を含有する雰囲気下での条件であり、アルミ蒸着層形成後のフィルムが真空下や不活性ガス下等の無酸素環境で保存されれば、アルミ蒸着層形成後60時間を超えた後にバリアコート層を形成しても、Al-Oのピーク面積をAlのピーク面積の2倍以下とできる。
【0054】
発明者らの検討では、アルミ蒸着層表面の酸化度に加えて、アルミ蒸着層表面に存在する炭素がデラミネーションに関与していることもわかった。アルミ蒸着層表面における炭素の割合がXPS分析において5%以下であると、アルミ蒸着層とバリアコート層との密着が良好である。
この炭素は、空気中に存在するメタン等の炭化水素によるものと考えられ、炭化水素がアルミ蒸着層表面に付着することにより、バリアコート層とアルミ蒸着層との密着性を低下させていると考えられる。
【0055】
本実施形態の真空断熱材用積層体においては、アルミ蒸着層とバリアコート層との組が2つ以上設けられてもよい。これにより、ガスバリア性をさらに高めることができる。この場合は、アルミ蒸着層とバリアコート層との界面が組の数存在するため、そのいずれにおいても上記条件を満足することにより、デラミネーションを好適に抑制できる。
【実施例
【0056】
本実施形態に係る真空断熱材用積層体および真空断熱材について、実施例および比較例を用いてさらに説明する。本発明は、実施例および比較例の具体的内容には限定されない。
【0057】
<実施例1>
基材(4)として厚さ25μmのポリアミド(NY)フィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 製品名:ボニールRX)を用いた。
厚さ12μmのVM-PETフィルム(5)を、ドライラミネート層(8)を介して基材(4)上に積層した。ドライラミネート層(8)として、ウレタン系接着剤を使用した。VM-PETフィルム(5)におけるアルミ蒸着層の厚みは70nmであり、アルミ蒸着層上にテトラエトキシシラン(TEOS)とポリビニルアルコール(PVA)を主成分とするコーティング剤を用いてバリアコート層が形成されている。
厚さ約12μmのVM-EVOHフィルム(6)(株式会社クラレ製 製品名:VM-XL)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-PETフィルム(5)上に積層した。VM-EVOHフィルム(6)におけるアルミ蒸着層の厚みは40nmである。
さらに、熱融着層(7)として厚さ50μmの直鎖状ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:FCS)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-EVOHフィルム(6)上に積層し、実施例1に係る真空断熱材用外装材を得た。
ドライラミネート層(8)は、いずれもウレタン系接着剤とした。
【0058】
実施例1の真空断熱材用外装材2枚を、熱融着層(7)を対向させて重ね、三辺を熱融着により接合して袋状にした。この中に、芯材(3)としてガラス繊維を封入し、真空包装装置にて袋内の圧力を1.0Paに保持しつつ、未接合状態の一辺を熱融着により封止した。
以上の手順により、実施例1に係る真空断熱材を得た。
【0059】
<実施例2>
VM-EVOHフィルム(6)に代えてVM-PETフィルム(5)を使用し、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を2組設けた点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例2に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0060】
<実施例3>
VM-PETフィルム(5)をもう一枚重ね、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を3組設けた点を除き、実施例2と同様の手順で、実施例3に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0061】
<実施例4>
VM-PETフィルム(5)に代えて厚さ15μmのアルミ蒸着二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(VM-OPP)を使用し、VM-EVOHフィルム(6)に代えてVM-PETフィルム(5)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例4に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。VM-OPPは、ポリプロピレンとEVOHを共押出しし、延伸した基材フィルムのEVOH面に、アルミニウムを蒸着したものである。基材フィルムにおいてEVOHおよびポリプロピレンの厚さは、それぞれ2.0μm、13.0μmであり、アルミ蒸着層の厚みは40nmである。
【0062】
<実施例5>
VM-PETフィルム(5)のバリアコート層上に、ドライラミネート層(8)を介して実施例1と同一の基材(4)を積層し、基材(4)上に、ドライラミネート層(8)を介してさらにVM-PETフィルム(5)を積層した。
さらに、実施例1と同一の熱融着層(7)を、ドライラミネート層(8)を介してVM-PETフィルム(5)上に積層し、実施例5に係る真空断熱材用外装材を得た。実施例5に係る真空断熱材用外装材は、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を2組有する。
実施例1と同様の手順で、実施例5に係る真空断熱材を得た。
【0063】
<実施例6>
VM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-2)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で、実施例6に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
VM-PETフィルム(5-2)は、バリアコート層上に第二アルミ蒸着層(厚み70nm)が形成され、さらに第二アルミ蒸着層上に、第二バリアコート層が形成されている。第二バリアコート層の組成はバリアコート層と同一である。
実施例6に係る真空断熱材用外装材は、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を2組有する。
【0064】
<実施例7>
VM-PETフィルム(5-2)とVM-EVOHフィルム(6)との間に基材(4)を配置した点を除き、実施例6と同様の手順で、実施例7に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
実施例7に係る真空断熱材用外装材は、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を2組有する。
【0065】
<実施例8>
VM-EVOHフィルム(6)に代えてVM-PETフィルム(5)を使用した点を除き、実施例6と同様の手順で、実施例8に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
実施例8に係る真空断熱材用外装材は、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を3組有する。
【0066】
<実施例9>
VM-EVOHフィルム(6)に代えてVM-PETフィルム(5)を使用した点を除き、実施例7と同様の手順で、実施例9に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
実施例9に係る真空断熱材用外装材は、アルミ蒸着層とバリアコート層の組を3組有する。
【0067】
<実施例10>
基材(4)に代えて基材(4-2)を用いた点を除き、実施例5と同様の手順で、実施例9に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。基材(4-2)は、ポリアミド、EVOH、ポリアミドの三層構造を有する総厚17μmの多層共押出フィルムである。
【0068】
<実施例11>
基材(4)に代えて基材(4-2)を用いた点を除き、実施例2と同様の手順で、実施例9に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0069】
<比較例1>
VM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例1と同様の手順で、比較例1に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
VM-PETフィルム(5)およびVM-PETフィルム(5-2)と、VM-PETフィルム(5-Oxy)とは、アルミ蒸着層形成後バリアコート層が形成されるまでの時間が異なっている。VM-PETフィルム(5)およびVM-PETフィルム(5-2)は、アルミ蒸着層形成後24時間以内にバリアコート層が形成され、VM-PETフィルム(5-Oxy)は、アルミ蒸着層形成後96時間以上経過してからバリアコート層が形成されている。
【0070】
<比較例2>
基材4に最も近いVM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例2と同様の手順で、比較例2に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0071】
<比較例3>
基材4に最も近いVM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例3と同様の手順で、比較例3に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0072】
<比較例4>
VM-PETフィルム(5)に代えてVM-PETフィルム(5-Oxy)を使用した点を除き、実施例4と同様の手順で、比較例4に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0073】
<比較例5>
2枚のVM-PETフィルム(5)をいずれもVM-PETフィルム(5-Oxy)に変更した点を除き、実施例5と同様の手順で、比較例5に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0074】
<比較例6>
VM-PETフィルム(5-2)に代えてVM-PETフィルム(5-2Oxy)を使用した点を除き、実施例6と同様の手順で、比較例6に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
VM-PETフィルム(5-2Oxy)は、VM-PETフィルム(5-2)と同一の層構成を有するが、2つあるバリアコート層のいずれも、アルミ蒸着層形成後96時間以上経過してから形成されている。
【0075】
<比較例7>
VM-PETフィルム(5-2)に代えてVM-PETフィルム(5-2Oxy)を使用した点を除き、実施例7と同様の手順で、比較例7に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0076】
<比較例8>
VM-PETフィルム(5-2)に代えてVM-PETフィルム(5-2Oxy)を使用した点を除き、実施例8と同様の手順で、比較例8に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0077】
<比較例9>
VM-PETフィルム(5-2)に代えてVM-PETフィルム(5-2Oxy)を使用した点を除き、実施例9と同様の手順で、比較例9に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0078】
<比較例10>
2枚のVM-PETフィルム(5-2)をいずれもVM-PETフィルム(5-2Oxy)に変更した点を除き、実施例10と同様の手順で、比較例10に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0079】
<比較例11>
2枚のVM-PETフィルム(5-2)をいずれもVM-PETフィルム(5-2Oxy)に変更した点を除き、実施例11と同様の手順で、比較例11に係る真空断熱材用外装材および真空断熱材を得た。
【0080】
各例の真空断熱材用外装材および真空断熱材を用いて、以下の評価を行った。
(アルミ蒸着層表面の分析)
X線光電子分光分析装置(XPS)(ULVAC-PHI社製 Quantum2000)を用いて、アルミ蒸着層表面のうちバリアコート層と接する面におけるAl-Oのピーク面積値、Alのピーク面積値、および炭素の割合を取得した。
アルミ蒸着層とバリアコート層の組を複数有する例においては、該当する表面すべてについて分析を行った。ただし、VM-PETフィルム(5-2)およびVM-PETフィルム(5-2Oxy)においては、フィルム基材層から遠いアルミ蒸着層のフィルム基材層側の面もバリアコート層と接しているが、この面については分析していない。この面ではアルミが蒸着された瞬間にバリアコート層と接触し、酸化の問題が生じないためである。
【0081】
(ラミネート強度の測定)
テンシロン万能材料試験機RTFシリーズ(株式会社エー・アンド・デイ製)を用い、JIS-K-6854に準じて測定を行った。
ラミネート強度は、試験片を複数準備し、基材、バリアフィルム、および熱融着層の各界面について測定した。
【0082】
(熱伝導率の測定)
各例の真空断熱材を温度90℃で8週間保持した。保存前、4週間後、8週間後の3ポイントにおいて、熱伝導率測定装置(英弘精機製 HC-074)を用いて、JIS-A-1412-3に準じて測定を行なった。
実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に、それぞれ示す。表1では、測定された各界面のラミネート強度を示しているが、各例で層数が異なるため、熱融着層との界面の値は、すべて「熱融着層」の欄に記載している。
VM-PETフィルム(5-2)およびVM-PETフィルム(5-2Oxy)については、各アルミ蒸着層表面の値を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
表1に示すように、各実施例においては、バリアコート層に接するアルミ蒸着層表面のAL-OとALとのピーク面積値の比は、いずれも2以下であった。これに対し、各比較例に使用されたVM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)のバリアフィルムは、いずれもピーク面積値の比が2を超えていた。また、炭素の割合は、いずれの実施例も5%以下であったのに対し、比較例におけるVM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)では、いずれも10%を超えていた。
各真空断熱材のラミネート強度は、各実施例において値が3.0N/15mm前後と大きな強度を示したが、各比較例では、VM-PETフィルム(5-2Oxy)およびVM-PETフィルム(5-Oxy)のアルミ蒸着層側の界面において、0.2以下となり、デラミネーションを生じやすくなっていた。
この検討では、熱融着層に接するバリアフィルムが、いずれもフィルム基材層を熱融着層に対向させていたため、実施例および比較例のいずれにおいても熱融着層との界面におけるラミネート強度は良好であった。しかし、真空断熱材用外装材を形成するにあたっては、芯材の材質や真空断熱材が適用される装置等に応じて、バリアコート層を熱融着層に対向させて積層されることも十分考えられる。このような場合、バリアコート層とアルミ蒸着層との密着性が十分でないと、ガスバリア層と熱融着層との間においてデラミネーションが生じることが懸念されるが、本発明の真空断熱材用外装材を適用することにより、これを好適に防止できる。
すなわち、本発明の真空断熱材用外装材において、バリアフィルムは、いずれの側が熱融着層に対向してもよい。
【0086】
90℃保管時の熱伝導率は、各実施例において保管前の値が8週間後まで好適に維持されていた。一方、各比較例は、保管前の値は実施例と同程度であったものの、時間経過とともに熱伝導率が大きく低下した。
【0087】
VM-PETフィルム(5-2)のように、アルミ蒸着層とバリアコート層との組を複数設ける構成は、ガスバリア性能を高める目的でしばしば採用される。しかし、本発明に係る知見によって、アルミ蒸着層の表面が所定の状態に保たれていないと、アルミ蒸着層とバリアコート層との組が増えるほどデラミネーションのリスクが高くなるというジレンマが生じることが明らかになった。本発明に係る真空断熱材用外装材では、このジレンマが生じず、デラミネーションを抑制しながらバリア性能を高めることができる。
【0088】
以上、本発明の一実施形態および実施例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に係るバリアフィルムの適用対象は、上述した真空断熱材用外装材に限られず、バリアフィルム単独で多様な用途に応用可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 バリアフィルム
11 フィルム基材層
12 蒸着層
13 バリアコート層
図1
図2
図3