(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】係留システム及び係留方法
(51)【国際特許分類】
B63B 21/00 20060101AFI20250403BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20250403BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20250403BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20250403BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20250403BHJP
B64U 10/60 20230101ALI20250403BHJP
B64U 20/87 20230101ALI20250403BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20250403BHJP
B64U 50/23 20230101ALI20250403BHJP
B64U 101/30 20230101ALN20250403BHJP
B64U 101/57 20230101ALN20250403BHJP
【FI】
B63B21/00 Z
B64C39/02
B64C27/08
B63B35/44 Z
B64U10/13
B64U10/60
B64U20/87
B64U50/19
B64U50/23
B64U101:30
B64U101:57
(21)【出願番号】P 2021082667
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大江 啓司
(72)【発明者】
【氏名】風間 英輝
(72)【発明者】
【氏名】野田 嵩
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-252091(JP,A)
【文献】国際公開第2018/026285(WO,A1)
【文献】米国特許第10042067(US,B1)
【文献】実開平04-039192(JP,U)
【文献】実開昭59-156093(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039730(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/00
21/04
35/44
B64C 27/08
39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留システムであって、
係留索と、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能に係止される係止具と、
前記係留索を保持する保持具を有する少なくとも1機の無人機と、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から、前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機を制御する制御装置とを備え
、
前記無人機は前記係留索を搬送する搬送用無人機であって、前記搬送用無人機の移動を先導する先導用無人機を更に備え、前記制御装置は前記先導用無人機を追尾するように前記搬送用無人機を制御する、
係留システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記無人機が前記係留索のうち前記係止具に係合された前記先端部と前記ウインチから引き出された前記基部との間の前記中途部を保持した状態で前記第2物体から前記係留柱へ向かうように前記無人機を制御する、
請求項1に記載の係留システム。
【請求項3】
前記係止具には、前記係留索にかかる張力を検出する張力センサが設けられている、
請求項1又は2に記載の係留システム。
【請求項4】
前記係止具に前記係留索にかかる張力の変化を緩和する張力緩衝器が設けられている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の係留システム。
【請求項5】
前記保持具は、前記係留索が遊挿される環状部分を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の係留システム。
【請求項6】
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留システムであって、
係留索と、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能に係止される係止具と、
前記係留索を保持する保持具を有する少なくとも1機の無人機と、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から、前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機を制御する制御装置とを備え、
前記無人機は、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記先端部を保持する第1無人機と、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記中途部を保持する第2無人機とを含む、
係留システム。
【請求項7】
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留方法であって、
係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能な係止具とが前記第2物体に配置され、
少なくとも1機の無人機によって前記係留索が保持されること、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機が制御されること、及び、
前記係留索が前記係留柱に掛けられる前又は後に、前記係止具に前記係留索の前記先端部が係止されること、を含
み、
前記無人機は前記係留索を搬送する搬送用無人機であって、前記搬送用無人機の移動を先導用無人機に先導させ、前記搬送用無人機が前記先導用無人機を追尾する、
係留方法。
【請求項8】
前記無人機によって前記係留索のうち前記係止具に係合された前記先端部と前記ウインチから引き出された前記基部との間の前記中途部が保持され、前記無人機は前記係留索の前記中途部を保持した状態で前記第2物体から前記係留柱へ向かう、
請求項
7に記載の係留方法。
【請求項9】
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留方法であって、
係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能な係止具とが前記第2物体に配置され、
少なくとも1機の無人機によって前記係留索が保持されること、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機が制御されること、及び、
前記係留索が前記係留柱に掛けられる前又は後に、前記係止具に前記係留索の前記先端部が係止されること、を含み、
前記無人機は、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記先端部を保持する第1無人機と、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記中途部を保持する第2無人機とを含む、
係留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶等の浮体構造物を岸壁等の係留施設に係留させるための係留システム及び係留方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶と岸壁とを係船索で繋ぐ係船作業は、陸側作業員と船側作業員との協働により行われている。従来の係船作業は次の手順で行われる。先ず、船側作業員は、船舶に搭載されたホーサードラムから係船索を引き出し、この係船索の先端に結び付けられた投索を岸壁側へ投げる。次に、陸側作業員は、投索を引っ張って係船索を手繰り寄せ、係船索の一端を岸壁に設けられた係船柱に固定する。最後に、船舶側のホーサードラムで係船索が巻き取られることにより係船索に張力が与えられて、船舶が岸壁に係留される。
【0003】
上記のような係船作業の省人化を図るために、特許文献1では無人機(空中ドローン、水陸両用ドローン)を用いて、第1コネクタに接続された係留索の端部を第2コネクタへ運ぶことが提案されている。ここで、第1コネクタが船舶に設けられ第2コネクタが岸壁に設けられた場合、第1コネクタが岸壁に設けられ第2コネクタが船舶に設けられた場合、第1コネクタ及び第2コネクタが船舶に設けられた場合が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の無人機は、係留索の先端を運ぶものであり、係留索の先端を第2のコネクタ(例えば、係船柱)に固定/固定解除可能であると記載されているものの、具体的な態様は開示されていない。無人機で係留索の先端を第2のコネクタに掛けることは可能であろうが、無人機の制御に高度な位置精度が要求されることから、作業効率を考慮すれば現実的ではない。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、船舶等の浮体を岸壁等に設けられた係留柱に係留及び係留解除させるための係留システムであって、係留及び係留解除作業の省人化を実現できるものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る係留システムは、
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留システムであって、
係留索と、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、
前記第2物体に配置されて、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能に係止される係止具と、
前記係留索を保持する保持具を有する少なくとも1機の無人機と、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から、前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機を制御する制御装置とを備える。
本開示の一態様に係る係留システムは、上記構成の係留システムにおいて、前記無人機は前記係留索を搬送する搬送用無人機であって、前記搬送用無人機の移動を先導する先導用無人機を更に備え、前記制御装置は前記先導用無人機を追尾するように前記搬送用無人機を制御することを特徴としている。
また、本開示の別の一態様に係る係留システムは、上記構成の係留システムにおいて、前記無人機は、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記先端部を保持する第1無人機と、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記中途部を保持する第2無人機とを含むものである。
【0008】
また、本開示に係る係留方法は、
浮体構造物と係留施設のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、前記浮体構造物を前記係留施設に係留させる係留方法であって、
係留索の巻き取りと引き出しとが可能なウインチと、前記係留索の先端部の係合と係脱とが可能な係止具とが前記第2物体に配置され、
少なくとも1機の無人機によって前記係留索が保持されること、
前記無人機が前記係留索を保持した状態で前記第2物体から前記第1物体に配置された係留柱へ向かい、前記係留索のうち前記先端部と前記ウインチから引き出された基部との間の中途部を前記係留柱に掛けるように、前記無人機が制御されること、及び、
前記係留索が前記係留柱に掛けられる前又は後に、前記係止具に前記係留索の前記先端部が係止されること、を含む。
本開示の一態様に係る係留方法は、上記係留方法において、前記無人機は前記係留索を搬送する搬送用無人機であって、前記搬送用無人機の移動を先導用無人機に先導させ、前記搬送用無人機が前記先導用無人機を追尾することを特徴としている。
また、本開示の別の一態様に係る係留方法は、上記係留方法において、前記無人機は、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記先端部を保持する第1無人機と、前記係留索の搬送中に前記係留索の前記中途部を保持する第2無人機とを含むことを特徴としている。
【0009】
上記係留システム及び係留方法によれば、係留索を係留柱へ掛ける作業が無人機によって行われる。ここで、無人機は係留索の中途部を係留柱に掛けることから、無人機に高度な位置精度が要求されない。よって、風や計器類の精度などによって係留柱に対する無人機の位置に誤差が生じても、係留索を係留柱へ掛ける作業を安定して行うことができる。これにより、係留柱に係留索を縛り付ける作業を行うための係留柱側の作業員が不要となり、省人化を図ることができる。また、浮体構造物の係留を解除する場合には、係止具から係留索の先端部がリリースされ、ウインチで係留索が巻き取られる。よって、係留解除作業においても、係留柱から係留索をリリースさせる作業を行うための係留柱側の作業員が不要となり、省人化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、船舶等の浮体を岸壁等に設けられた係留柱に係留及び係留解除させるための係留システムであって、係留及び係留解除作業の省人化を実現できるものを提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る係留システムによって浮体構造物が係留施設に係留される様子を示す平面図である。
【
図5】
図5A~Cは、保持具の態様を示す図である。
【
図6】
図6は、無人機が係留柱へ係留索を掛ける様子を示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の変形例に係る係留システムにおいて無人機が係留柱へ係留索を掛ける様子を示す平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2実施形態に係る係留システムによって浮体構造物が係留施設に係留される状態を示す図である。
【
図9】
図9は、係留索の係留柱への巻き方向の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、係留索の係留柱への巻き方向の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態の変形例に係る係留システムにおいて無人機が係留柱へ係留索を掛ける様子を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の第3実施形態に係る係留システムにおいて無人機が係留柱へ係留索を掛ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
次に、図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る係留システム1によって浮体構造物10が係留施設11に係留される様子を示す平面図である。
図1に示す例では、係留システム1は浮体構造物10に設けられ、係留柱12は係留施設11に設けられている。但し、係留システム1が係留施設11に設けられ、係留柱12が浮体構造物10に設けられてもよい。係留システム1のうち一部要素が浮体構造物10に設けられ残部要素が係留施設11又はその他の構造物(例えば、小型船舶)に設けられてもよい。
【0013】
本実施形態に係る浮体構造物10は、舟形の浮体構造物10(即ち、船舶)である。但し、浮体構造物10は、船舶に限定されず、洋上プラットホーム(浮体生産設備、浮体貯蔵設備)等の洋上に浮かぶ構造物であってもよい。また、本実施形態に係る係留施設11は、港湾の岸壁である。但し、係留施設11は、岸壁に限定されず、浮体構造物10とは別の船舶、係留用浮体、浮体生産設備などであってもよい。
【0014】
浮体構造物10は、船体5と、船体5に対し前後方向の推力を出力する少なくとも1つの前後推進機2と、船体5に対し横方向の推力を出力する少なくとも1つの横推進機3とを備える。ここで、
図1に示すように、船体5の船首と船尾を繋ぐ水平方向を船体5の「前後方向」とし、前後方向と直交する水平方向(左右方向)を船体5の「横方向」とする。浮体構造物10は推進機を備えずに曳かれて移動するものであってもよい。
【0015】
浮体構造物10には、少なくとも1つの係留システム1が設けられている。
図1に示す例では船体5の前後方向に分散した4か所に係留システム1が設けられている。但し、浮体構造物10に設けられる係留システム1の数は本実施形態に限定されない。
【0016】
〔係留システム1の構成〕
係留システム1の各々は実質的に同じ構成を有する。
図2は、係留システム1の概略構成図である。
図2に示すように、係留システム1は、係留索20と、係留索20の巻き取りと引き出しとが可能なウインチ30と、係止具24と、係留索20を搬送する少なくとも1機の搬送用無人機(以下、単に「無人機6」と称する)と、制御装置60とを備える。無人機6は、複数の係留システム1で共用されてもよい。本実施形態において無人機6は浮体構造物10に配置されているが、無人機6は係留施設11に配置されていてもよい。また、本実施形態において制御装置60は浮体構造物10に配置されているが、制御装置60は係留施設11に配置されてもよいし、浮体構造物10から独立した小型船舶に配置されていてもよい。
【0017】
図3は、ウインチ30の概略構成図である。
図3に示すウインチ30は、係留索20が巻かれたホーサードラム31と、ホーサードラム31を回転駆動するモータ32と、モータ32からホーサードラム31への動力伝達の接続と遮断とを切り替える油圧式のクラッチ33と、モータ32からホーサードラム31への動力伝達経路上に設けられた減速機34と、常時制動力を与える油圧解除式のブレーキ35とを備える。本実施形態に係るウインチ30は電動油圧式であるが、ウインチ30の構造は上記に限定されず、ウインチ30は電動式であってもよい。
【0018】
係留索20がホーサードラム31へ巻き取られる際には、クラッチ33によってモータ32からホーサードラム31への動力伝達経路が接続され、ホーサードラム31が巻き取り方向に回転駆動される。係留索20がホーサードラム31から引き出される際には、クラッチ33が切断されてモータ32からホーサードラム31への動力伝達経路が切断され、ホーサードラム31は空転可能な状態となり引き出し方向へ回転することができる。或いは、係留索20が引き出される際には、クラッチ33によってモータ32からホーサードラム31への動力伝達経路が接続され、ホーサードラム31が引き出し方向へ回転駆動されてもよい。ホーサードラム31から引き出された係留索20は、チョック(ムアリングホール)、フェアリーダー、デッキエンドローラ、スタンドローラなどの適宜の係留索案内器23によって、保護と案内がなされる。
【0019】
係留システム1は、回転位置センサ51、張力センサ26、索長計53、及び、これらの検出値に基づいてウインチ30の動作を制御するウインチ制御装置50を更に備える。回転位置センサ51は、モータ32又はホーサードラム31の回転位置及び回転数を検出する。索長計53は、ホーサードラム31から引き出された係留索20の長さを計測する。ウインチ制御装置50は、回転位置センサ51の検出信号及び/又は索長計53の測定値に基づいて、モータ32又はホーサードラム31の回転を計測し、係留索20の巻き取り長さや引き出し長さを推定する。
【0020】
係止具24は、係留索20の先端を係合・係脱可能に係止する。係止具24は、浮体構造物10に設けられている。係止具24は、甲板上、船体5の側面、及び、係留システム1のホーサードラム31の支持台など、係留索20のルートに応じた適切な位置に配置される。
【0021】
係留索20の係止具24に対する係合及び係脱は、作業員によって行われてよい。或いは、係留索20の係止具24への係合は作業員によって行われ、係留索20の係止具24からの係脱は自動で行われてもよい。即ち、係止具24は係留索20の自動リリース機能を備えていてもよい。この場合、例えば、係止具24は係脱動作するためのアクチュエータを有し、このアクチュエータが図示されない操作器からの係脱信号を受けて動作することにより、係留索20が係止具24から係脱するように構成される。
【0022】
係止具24には、張力緩衝器27が設けられている。張力緩衝器27は、例えば、スプリングなどの緩衝部材を含む。張力緩衝器27は、係止具24に係止されている係留索20に不測の過大な張力が加わったときにこの張力を吸収して、係留索20の切断、係止具24又はそれが係止具24が固定された構造物の損傷が防止される。
【0023】
係止具24には、張力センサ26が設けられている。張力センサ26は、例えば、ロードセルであって、当該ロードセルで検出された荷重に基づいて係留索20の張力を推定可能である。ウインチ制御装置50は、張力センサ26の検出値に基づいて、係留索20に作用する張力が所定の上限値を超えない所定の値に維持されるようにホーサードラム31の回転を制御する。
【0024】
無人機6は、係留索20を浮体構造物10から係留柱12まで移動させる。無人機6は、浮体構造物10と係留施設11との間を移動可能であればよく、海、陸、空のいずれを走行するものであってもよい。無人機6として、ドローンと呼ばれる無人航空機や、水陸両用ドローンと呼ばれる水陸両用無人機が例示される。
【0025】
図4は、無人機6の概略構成を示す図である。
図4に示すように、無人機6は、複数組のロータ61及びモータ62、バッテリ63、センサ類64、送信機65、受信機66、カメラ67、並びに、コントローラ68を備える。モータ62はロータ61を回転駆動する。バッテリ63は、モータ62へ電力を供給する。但し、バッテリ63に代えてエンジンが搭載されてもよい。センサ類64は、無人機6の飛行角度、飛行速度、及び、位置情報(GPS位置情報)を検出する少なくとも1種類の検出器を含む。但し、無人機6の構成は本実施形態に限定されず、遠隔操作で又は自律して飛行及び/又は水泳(潜水)するように構成されていればよい。
【0026】
無人機6は、制御装置60によって制御される。制御装置60は、無人機6を遠隔操縦するための操縦装置である。制御装置60は、無人機6を自律移動(自律飛行)させる装置であってもよい。制御装置60は、操作具41、ディスプレイ42、送信機43、受信機44、演算器45、及び、通信機46を備える。
【0027】
操作具41は、作業者や操縦者によって操作され、操作具41を介して演算器45へ情報や操作などが入力される。操作具41は、例えば、キーボード、レバー、ボタン、タッチパネル式ディスプレイ、ジョイスティックなどのうち少なくとも1つが用いられてよい。ディスプレイ42は、スマートフォンやタブレットパソコンの表示部、ゴーグル式ディスプレイ、ヘッドマウント式ディスプレイのうち少なくとも1つが用いられてよい。送信機43は、無人機6へ向けて指令信号などを送信する。受信機44は、無人機6から画像信号、位置情報、センサ類64で検出された情報などを受信する。通信機46は、通信網やGPS通信装置を利用して、気象海象情報、係留柱12の位置情報などの係留システム1で利用される情報の送受信を行う。演算器45は、操作具41、受信機44、及び通信機46を介して情報や信号を取得し、演算処理し、その結果をディスプレイ42や送信機43を通じて出力する。演算器45は、操作具41を介して入力された情報に基づいて指令信号を生成して発信する手動操縦プログラムを備えていてもよい。或いは、演算器45は、無人機6が設定された経路を自律移動(自律飛行)するように、無人機6に搭載されたカメラ67からの画像情報をもとに指令信号を生成して発信する自動操縦プログラムを備えていてもよい。
【0028】
制御装置60の送信機43から発信された指令信号は、無人機6の受信機66で受信されコントローラ68へ送られる。コントローラ68は、指令信号をセンサ類64から取得した情報と供に処理し、モータ62により駆動されるロータ61の回転数を制御する。コントローラ68は、また、カメラ67で撮像された画像(又は映像)情報を送信機65を介して制御装置60へ送信する。制御装置60では、受信した画像情報がディスプレイ42に出力される。操縦者はディスプレイ42に映し出された画像情報を利用して、無人機6を操縦することができる。
【0029】
無人機6には、係留索20を保持するための保持具69が設けられている。保持具69には係留索20の中途部が通される。係留索20の中途部とは、係止具24に係止されている先端部分と、ホーサードラム31に巻き取られている部分との間である。保持具69は、係留索20を通すことの可能な環状部分を有する。係留索20は保持具69に遊挿されており、保持具69による係留索20の保持位置は可変である。このような保持具69として、リング形状(
図5A)、フック形状(
図5B)、及び、開閉式爪形状(
図5C)が例示される。開閉式爪形状の保持具69(
図5C)は、例えば、2本の爪を有し、各爪は先端の円弧状リンク69aと、円弧状リンク69aに連接された2本の直線状リンク69b,69cと、隣り合うリンク同士を連結する関節と、間接を駆動するアクチュエータ(図示略)とを備え、関節が回動することによって2本の爪の間を開閉できるように構成されている。
【0030】
〔係留システム1を用いた係留方法〕
続いて、上記構成の係留システム1を用いた係留方法について説明する。係留方法は、大きく分けて(1)準備工程、(2)索掛け工程、(3)索張り工程、から成る。索掛け工程は、手動で行われる場合と、自動で行われる場合とがある。
【0031】
(1)準備工程
係留索20の先端が係止具24に係合され、ウインチ30のホーサードラム31から係留索20が引き出される。ここで、係留索20は係留柱12まで往復分の十分な長さが予め引き出されてもよいし、無人機6の移動に伴って係留索20が少しずつ引き出されてもよい。引き出された係留索20の中途部が無人機6の保持具69に保持される。無人機6は浮体構造物10に規定された待機位置で待機している。
【0032】
(2)索掛け工程
(手動で行われる場合)
索掛け工程が手動で行われる場合は、操縦者が制御装置60と接続された操作具41を用いて無人機6を遠隔操縦する。操縦者によって操縦される無人機6は、待機位置を出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻る。操縦者は、無人機6に搭載されたカメラ67で撮像された画像を視認して、或いは、目視で無人機6と係留柱12との位置関係を把握して、無人機6を操縦することができる。
【0033】
(自動で行われる場合)
索掛け工程が自動で行われる場合は、作業者によって、ターゲットの係留柱12の位置と、この係留柱12に掛ける係留索20を備える係留システム1との指定とが制御装置60に入力される。ターゲットの係留柱12の位置は地図情報から取得することができる。或いは、係留柱12に位置情報発信機が設けられており、係留柱12の位置情報が位置情報発信機から通信網を介して制御装置60へ発信されるように構成されていてもよい。位置情報発信機としては、GPS衛星からの電波を受信して位置情報を算出しその位置情報を制御装置60へ発信するGPS発信機、通信網を利用して位置情報の把握を行いその位置情報を制御装置60へ発信するICタグなどが用いられてよい。或いは、係留柱12に光源が設けられに、その光源からの光を検出する光センサを利用して係留柱12の位置情報を求め、その位置情報を制御装置60へ伝達する位置情報検出器が設けられていてもよい。
【0034】
制御装置60に、作業者によって、索掛け開始の指令が入力される。制御装置60は、索掛け開始の指令を取得し、無人機6の飛行経路を求める。飛行経路の演算には、係留施設11の気象・海象情報、無人機6の位置情報、係留柱12の位置情報などが用いられ、無人機6が待機位置から出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻るような飛行経路が算出される。風の影響を抑えるために、無人機6の飛行経路は水面に近くを通っていることが望ましい。制御装置60は、算出された飛行経路に沿って無人機6が移動するように、無人機6を自動操縦する。ここで、制御装置60は、無人機6に搭載されたカメラ67で撮像された画像を解析して、無人機6の動作を制御することができる。
【0035】
索掛け工程(手動で行われる場合と自動で行われる場合の両方)において、無人機6は、係留索20の中途部を保持した状態で、待機位置から係留柱12へ向かって移動する。無人機6は、風の影響を抑えるために、水面に近くを移動することが望ましい。無人機6に中途部を保持された係留索20には、浮体構造物10と係留柱12の距離のおおよそ2倍の長さの係留索20が用いられた比較的大きな輪が形成されている。無人機6の保持具69が係留柱12を飛び越えたのち降下することにより、係留索20の輪が係留柱12に掛かる(
図6、参照)。係留索20が係留柱12に掛かったことは、無人機6のカメラ67が撮像した画像により判断可能である。係留索20が係留柱12に掛かれば、無人機6は係留索20をリリースしたのち、浮体構造物10の待機位置へ戻る。但し、無人機6は、係留索20をリリースせずに、係留索20に沿って浮体構造物10の待機位置へ戻ってもよい。このように無人機6の移動が係留索20によって拘束される場合には、係留索20に沿って浮体構造物10の待機位置へ戻る途中で無人機6が制御不能となったり故障したりしても無人機6を回収することができる。
【0036】
(3)索張り工程
係留索20が係留柱12に掛かった状態で、ウインチ30が稼働してホーサードラム31に係留索20が巻き取られることによって係留索20に張力が与えられて、浮体構造物10が係留施設11に係留される。ここで、係留柱12に対し係留索20が摺動するが、係留柱12及び/又は係留索20の摩耗を軽減するために、係留柱12の係留索20が掛かる部分が旋回するローラで形成されていてもよい。例えば
図2及び
図6に示す例では、係留柱12のうち少なくとも係留索20が掛かる胴部が、垂直方向の軸を中心として回転するプーリ(又は、ローラ)で構成されている。
【0037】
〔係留システム1を用いた係留解除方法〕
係留システム1では、浮体構造物10の係留解除を行うことができる。先ず、ホーサードラム31から係留索20が引き出され、係留索20の張力が十分に低減される。続いて、係止具24から係留索20が係脱される。ここで、係止具24からの係留索20の係脱は手動で行われてもよいし自動で行われてもよい。係止具24から係留索20がリリースされたあと、ウインチ30が稼働してホーサードラム31に係留索20が巻き取られ、浮体構造物10の係留が解除される。
【0038】
〔小括〕
以上に説明した通り、本実施形態に係る係留システム1は、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させるものであって、
係留索20と、
第2物体に配置されて、係留索20の巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、
第2物体に配置されて、係留索20の先端部の係合及び係脱が可能に係止される係止具24と、
係留索20を保持する保持具69を有する、少なくとも1機の無人機6と、
無人機6が係留索20を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20のうち先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を係留柱12に掛けるように、無人機6を制御する制御装置60とを備えることを特徴としている。
【0039】
同様に、本実施形態に係る係留方法は、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させる係留方法であって、
係留索20が巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、係留索20の先端部が係合及び係脱が可能に係止される係止具24とが第2物体に配置され、
少なくとも一機の無人機6によって係留索20が保持されること、
無人機6が、係留索20を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20のうち先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を係留柱12に掛けるように、無人機6が制御されること、及び、
係留索20が係留柱12に掛けられる前に、係止具24に係留索20の先端部が係止されること、を含むことを特徴としている。
【0040】
上記構成の係留システム1及び係留方法では、係留索20を係留柱12へ掛ける作業が無人機6によって行われる。ここで、無人機6は係留索20の中途部を係留柱12に掛けることから、無人機6の制御に高度な位置精度が要求されない。よって、風や計器類の精度などによって係留柱12に対する無人機6の位置に誤差が生じても、係留索20を係留柱12へ掛ける作業を安定して行うことができる。これにより、係留柱12に係留索20を縛り付けるための作業員が不要となり、省人化を図ることができる。とりわけ、係留作業において、直接に係留索20に触れたり近づいたりする作業員の数を減らすことができる。また、例えば、係留柱12が設けられている岸壁を有する地域が火災、地震等により被災している場合に、当該岸壁に作業員を配置することが難しい状況であっても、浮体構造物10を岸壁に係留させることが可能となり、被災地への海上ルートでの早期の物資輸送を実現することができる。
【0041】
上記構成の係留システム1において、保持具69は係留索20のうち係止具24に係合された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を保持し、制御装置60は、無人機6が係留索20の中途部を保持した状態で第2物体から係留柱12へ向かうように無人機6を制御してよい。同様に、上記係留方法において、無人機6によって係留索20のうち係止具24に係合された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部が保持され、無人機6は係留索20の中途部を保持した状態で第2物体から係留柱12へ向かうように制御されてよい。ここで、係留索20が係留柱12に掛けられる前に、係止具24に係留索20の先端部が係止される。
【0042】
上記構成の係留システム1及び係留方法によれば、無人機6は、係留柱12と第2物体の距離のおおよそ2倍の長さの係留索20で形成された十分に大きな輪を係留柱12に掛ければよいことから、無人機6の制御に高度な位置精度が要求されない。
【0043】
上記構成の係留システム1及び係留方法において、浮体構造物10の係留を解除する場合には、係止具24から係留索20の先端部がリリースされ、ウインチ30で係留索20が巻き取られる。よって、係留解除作業においても、係留柱12から係留索20をリリースさせる作業を行うための係留柱12側の作業員が不要となり、省人化を図ることができる。例えば、被災地の岸壁に設けられた係留柱12に浮体構造物10が係留されている場合に、当該岸壁に作業員を配置することが難しい状況であっても、緊急に係留解除して浮体構造物10を離岸させることができる。浮体構造物10の係留を解除する場合には、予め係留索20の先端部を無人機6に保持させてから係止具24から係留索20の先端部をリリースし、無人機6が係留索20の先端部の移動経路に沿って飛行するように制御装置60が無人機6を制御してもよい。これにより、係留解除時に、係留索20の先端部が海に落ちることを防止することが可能となる。
【0044】
更に、上記の係留システム1及び係留方法では、係留索20は係留柱12で折り返されて二重の状態で使用されることから、係留索20にかかる張力は一重の状態で使用される場合のおよそ半分でよい。よって、係留索20に張力をかけるウインチ30の小型化を図ることができる。そのうえ、強度が低く、細くて軽い係留索20を用いることができるので、無人機6での運搬に適している。
【0045】
上記構成の係留システム1において、係止具24の位置は特に限定されないが、係止具24はウインチ30の支持台に設けられていてもよい。この場合、係止具24が配置されるスペースを確保しやすく、さらに、ウインチ30から引き出された係留索20は、係留柱12で折り返されて二重となっているがこの二重の係留索20の経路が実質的に同じになる。
【0046】
上記構成の係留システム1において、係止具24に係留索20にかかる張力を検出する張力センサ26が設けられている。係止具24に係止されている係留索20の先端部の側で張力の検出が行われるので、ウインチ30側に張力センサが設けられる場合と比較してより安定した張力測定を行うことができる。
【0047】
また、上記構成の係留システム1において、係止具24に係留索20にかかる張力の変化を緩和する張力緩衝器27が設けられている。通常、岸壁に係留されている船体5は、複数の係留索20(係船索)に繋がれており、各係留索20はその材料によって伸縮性に差異がある。船体5に外力が作用すると各係留索20の張力が変化するが、伸縮性の小さい係留索20に他と比較して大きな負荷がかかって破断する恐れがある。このような場合に、係止具24に張力緩衝器27が設けられていることによって、他と比較して伸縮性の小さい係留索20においても破断の可能性を低減することができる。これにより、係留索20に設けられる張力の吸収手段としてのテールロープを省略することができる。係留索20と比較して径の大きいテールロープを省略できるので、係留索20のハンドリングが簡易となり、また、索の種類を減らすことができるので索の管理が簡易となる。
【0048】
また、上記構成の係留システム1において、無人機6に設けられた保持具69は係留索20が遊挿される環状部分を有する。この環状部分は、完全な環である必要はなく、一部開放された環であってもよい。これにより、保持具69は係留索20に沿って自在に移動することができる。そのため、無人機6による係留索20の搬送時に係留索20にこじれが生じることを防止できる。更に、無人機6が操縦不能となった場合でも、無人機6は係留索20によって移動が拘束されているため飛び去ることがなく、無人機6の回収が容易となる。
【0049】
(変形例)
ここで、第1実施形態に係る係留システム1の変形例を説明する。
図7は、第1実施形態の変形例に係る係留システム1において無人機6A,6Bが係留柱12へ係留索20を掛ける様子を示す図である。
図7に示すように、変形例に係る係留システム1は、前述の第1実施形態に係る係留システム1と対比して、複数の搬送用無人機(第1無人機6A、及び、第2無人機6B)を備える点、複数の搬送用無人機の各々に対して設けられた制御装置(第1無人機6Aを制御する第1制御装置60Aと、第2無人機6Bを制御する第2制御装置60B)を備える点で相違する。本変形例では、前述の第2実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
第1無人機6A及び第2無人機6Bは、第1実施形態に係る係留システム1の無人機6と実質的に同じ構成を有する。第1制御装置60Aは、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成を有する。第1無人機6Aは、第1制御装置60Aにより手動又は自動操縦される。第2制御装置60Bは、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成を備える。第2制御装置60Bは、第2無人機6Bが第1無人機6Aを自動的に追尾するように第2無人機6Bを制御する機能を更に備えてもよい。第2無人機6Bが第1無人機6Aに対してどのような位置で追尾するのかは予め設定されている。例えば、第2無人機6Bは第1無人機6Aと同じ高さで数m後を飛行する。第1制御装置60A及び/又は第2制御装置60Bは、第1無人機6A及び/又は第2無人機6Bが手動操縦されるように、制御方法を切り替えることができる。
【0051】
〔変形例に係る係留システム1を用いた係留方法〕
次に、変形例に係る係留システム1を用いた係留方法について説明する。変形例に係る係留システム1を用いた係留解除方法は前述の第1実施形態と実質的に同一である。変形例に係る係留システム1を用いた係留方法は、大きく分けて(1)準備工程、(2)索掛け工程、(3)索張り工程、から成るが、変形例に係る係留システム1を用いた(3)索張り工程は、前述の第1実施形態と実質的に同一であるから説明を省略する。
【0052】
(1)準備工程
ホーサードラム31から係留索20が引き出される。ここで、係留索20は係留柱12まで往復分の十分な長さが予めホーサードラム31から引き出されてもよいし、無人機6A,6Bの移動に伴って係留索20が少しずつホーサードラム31から引き出されてもよい。引き出された係留索20の先端部は係止具24に係止される。係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部が、第1無人機6Aと第2無人機6Bによって保持される。第1無人機6A及び第2無人機6Bは浮体構造物10に規定された待機位置で待機している。
【0053】
(2)索掛け工程
索掛け工程において、第1無人機6A及び第2無人機6Bは、操縦者によって手動操縦されてもよいし、第1無人機6A及び第2無人機6Bのうち少なくとも一方が自動操縦されて自律飛行してもよい。
【0054】
第1無人機6A及び第2無人機6Bは、待機位置を出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻る。望ましくは、第1無人機6A及び第2無人機6Bは、互いの距離を保持しながら両者を繋ぐ線分が係留施設11の岸壁と略平行となるように飛行し、係留索20のうち第1無人機6Aの保持具69と第2無人機6Bの保持具69との間が係留柱12に掛けられる。係留索20が係留柱12に掛かった後、第1無人機6A及び第2無人機6Bは、係留索20をリリースしてから待機位置へ戻る、又は、係留索20を保持しながら係留索20に沿って待機位置へ戻る。このように、2機の無人機6A,6Bで係留索20が搬送されることにより、無人機6が1機の場合と比較して各無人機6A,6Bに係る係留索20の荷重を軽減することができるとともに、係留柱12に掛けられる係留索20の輪が確実に形成されることから、安定した索掛けが行われる。
【0055】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
図8は、本発明の第2実施形態に係る係留システム1Aの構成を示す図である。第2実施形態に係る係留システム1Aは、第1実施形態に係る係留システム1と対比して、無人機6が係留索20の中間を保持するのではなく、無人機6が係留索20の先端部又は先端部に接続された投索を保持して索掛けが行われる点で相違する。つまり、第2実施形態に係る係留システム1Aは、第1実施形態に係る係留システム1に対して係留方法が異なり、係留システム1Aの構成自体は第1実施形態に係る係留システム1と実質的に同じである。よって、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0056】
〔係留システム1Aを用いた係留方法〕
係留システム1Aを用いた係留方法について説明する。係留システム1Aを用いた係留解除方法は前述の第1実施形態と実質的に同一である。係留システム1Aを用いた係留方法は、大きく分けて(1)準備工程、(2)索掛け工程、(3)索張り工程、から成る。索掛け工程は、手動で行われる場合と、自動で行われる場合とがある。係留システム1Aを用いた(3)索張り工程は、前述の第1実施形態と実質的に同一であるから説明を省略する。
【0057】
(1)準備工程
ホーサードラム31から係留索20が引き出される。ここで、係留索20は係留柱12まで往復分の十分な長さが予めホーサードラム31から引き出されてもよいし、無人機6の移動に伴って係留索20が少しずつホーサードラム31から引き出されてもよい。引き出された係留索20の先端部(又は先端部に接続された投索)が無人機6の保持具69に保持される。ここで、係留索20の先端部が輪になっており、保持具69にこの輪が引っ掛けられていてもよい。或いは、係留索20の先端部が保持具69に縛り付けられていてもよい。無人機6は浮体構造物10に規定された待機位置で待機している。
【0058】
(2)索掛け工程
(手動で行われる場合)
索掛け工程が手動で行われる場合は、操縦者が制御装置60の操作具41を用いて無人機6を遠隔操縦する。操縦者によって操縦される無人機6は、待機位置を出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻る。操縦者は、無人機6に搭載されたカメラ67で撮像された画像を視認して、或いは、目視で無人機6と係留柱12との位置関係を把握して、無人機6を操縦することができる。
【0059】
(自動で行われる場合)
索掛け工程が自動で行われる場合は、作業者によって、係留システム1の係留索20を掛けるターゲットの係留柱12の指定(又は、係留柱12の位置)が制御装置60に入力される。但し、1つの制御装置60で複数の無人機6が操縦されてもよく、この場合、ターゲットの係留柱12と当該係留柱12に掛ける係留索20を備える係留システム1の指定とが入力される。制御装置60に、作業者によって、索掛け開始の指令が入力される。制御装置60は、索掛け開始の指令を取得し、無人機6の飛行経路を求める。無人機6が待機位置から出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻るような飛行経路が算出される。制御装置60は、算出された飛行経路に沿って無人機6が移動するように、無人機6を自動操縦する。
【0060】
索掛け工程(手動で行われる場合と自動で行われる場合の両方)において、無人機6は、係留索20の先端部を保持した状態で、待機位置から係留柱12へ向かって移動する。保持具69が係留柱12を中心として弧を描くように旋回することによって、係留索20が係留柱12に掛かる。係留索20が係留柱12に掛かれば、無人機6は係留索20の先端を保持した状態で浮体構造物10の待機位置へ戻る。作業者は、無人機6から係留索20の先端部を受け取り、係止具24に係合させる。
【0061】
〔係留索20の係留柱12への巻き方向〕
ここで、係留索20の係留柱12への巻き方向について説明する。係留システム1Aでは、無人機6が係留柱12へ係留索20を掛ける際に、無人機6の制御によって、係留索20の係留柱12への巻き方向を決定することができる。より詳細には、係留索20が係留柱12に前側から後ろ側へ掛けられるのか後ろ側から前側へ掛けられるのかを、無人機6の係留柱12を中心とする旋回方向によって制御可能である。例えば、係留柱12に対して、無人機6が前側から後ろ側へ旋回して係留索20を掛けることや、無人機6が後ろ側から前側へ旋回して係留索20を掛けることが可能である。なお、前側と後ろ側は、浮体構造物10の船体5の前後方向と平行に見て前側を「前側」としその反対側を「後ろ側」とする。また、係留柱12に掛けられた係留索20において、係止具24に係合された先端部から係留柱12までの間を第1部分21とし、係留柱12からホーサードラム31までの間を第2部分22とする。
【0062】
図9は、係留索20の係留柱12への巻き方向の一例を示す図である。
図9に示すように、浮体構造物10に設けられた係留索20は、第1部分21が第2部分22よりも後ろ側に位置する。つまり、係留索20は係留柱12に前側から後ろ側へ掛けられている。このように係留索20が係留柱12に掛けられることによって、浮体構造物10を係留施設11から離すために前進させる際に、係留索20が絡まりにくい。
【0063】
図10は、係留索20の係留柱12への巻き方向の一例を示す図である。或いは、
図10に示すように、浮体構造物10の前部に設けられた係留索20は第1部分21が第2部分22よりも後ろ側に位置し、浮体構造物10の後部に設けられた係留索20は第1部分21が第2部分22よりも前側に位置する。つまり、浮体構造物10の前部に設けられた係留索20は係留柱12に前側から後ろ側へ掛けられており、浮体構造物10の後部に設けられた係留索20は係留柱12に後ろ側から前側へ掛けられている。このように係留索20が係留柱12に掛けられた状態において、第1部分21と第2部分22にかかる張力は実質的に同じであるが、第2部分22よりも第1部分21のほうが高い張力がかかることがある。このような場合に、張力の増加を係止具24に設けられた張力センサ26で速やかに検出することができる。
【0064】
(変形例)
ここで、第2実施形態に係る係留システム1Aの変形例を説明する。
図11は、第2実施形態の変形例に係る係留システム1Aにおいて無人機6C,6Dが係留柱12へ係留索20を掛ける様子を示す図である。変形例に係る係留システム1Aは、前述の第2実施形態に係る係留システム1Aと対比して、複数の搬送用無人機(第1無人機6C、及び、第2無人機6D)を備える点、複数の無人機の各々に対して設けられた制御装置(第1無人機6Cを制御する第1制御装置60Cと、第2無人機6Dを制御する第2制御装置60D)を備える点で相違する。本変形例において、前述の第2実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0065】
第1無人機6C及び第2無人機6Dは、第1実施形態に係る係留システム1の無人機6と実質的に同じ構成を有する。第1制御装置60Cは、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成を有する。第1無人機6Cは、第1制御装置60Cにより手動又は自動操縦される。第2制御装置60Dは、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成を備える。第2制御装置60Dは、第2無人機6Dが第1無人機6Cを自動的に追尾するように第2無人機6Dを制御する機能を更に備えてもよい。第2無人機6Dが第1無人機6Cに対してどのような位置で追尾するのかは予め設定されている。例えば、第2無人機6Dは第1無人機6Cと同じ高さで数m後を飛行する。第1制御装置60C及び/又は第2制御装置60Dは、第1無人機6C及び/又は第2無人機6Dが手動操縦されるように、制御方法を切り替えることができる。
【0066】
〔変形例に係る係留システム1Aを用いた係留方法〕
次に、変形例に係る係留システム1Aを用いた係留方法について説明する。変形例に係る係留システム1Aを用いた係留解除方法は前述の第1実施形態と実質的に同一である。変形例に係る係留システム1Aを用いた係留方法は、大きく分けて(1)準備工程、(2)索掛け工程、(3)索張り工程、から成るが、変形例に係る係留システム1Aを用いた(3)索張り工程は、前述の第1実施形態と実質的に同一であるから説明を省略する。
【0067】
(1)準備工程
ホーサードラム31から係留索20が引き出される。ここで、係留索20は係留柱12まで往復分の十分な長さが予めホーサードラム31から引き出されてもよいし、無人機6Cの移動に伴って係留索20が少しずつホーサードラム31から引き出されてもよい。引き出された係留索20の先端部(又は先端部に接続された投索)は第1無人機6Cの保持具69に保持される。ここで、係留索20の先端部が輪になっており、保持具69にこの輪が引っ掛けられていてもよい。或いは、係留索20の先端部が保持具69に縛り付けられていてもよい。係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部は、第2無人機6Dの保持具69に保持される。第1無人機6C及び第2無人機6Dは浮体構造物10に規定された待機位置で待機している。
【0068】
(2)索掛け工程
索掛け工程において、第1無人機6C及び第2無人機6Dは、操縦者によって手動操縦されてもよいし、第1無人機6C及び第2無人機6Dのうち少なくとも一方が自動操縦されて自律飛行してもよい。
【0069】
第1無人機6Cは、待機位置を出発して係留柱12へ向かい、係留柱12に係留索20を掛けて、再び待機位置へ戻る。第1無人機6Cの保持具69が係留柱12を中心として弧を描くように旋回することによって、係留索20が係留柱12に掛かる。第2無人機6Dは、第1無人機6Cに続いて待機位置を出発して係留柱12へ向かう。第2無人機6Dは、待機位置から係留柱12までは、第1無人機6Cを追尾するように自律飛行してもよい。
【0070】
第2無人機6Dは、第1無人機6Cが再び待機位置へ戻るまで、或いは、係留索20の先端部が係止具24に係止されるまで、係留柱12を超えたところで停止飛行する。ここで、第2無人機6Dは、係留索20の輪の中に係留柱12が位置するように、係留索20を係留施設11側で引っ張る。これにより、第1無人機6Cが係留柱12から待機位置へ戻るまでに係留索20が緩んだとしても、係留索20の輪の中に係留柱12がある状態が保持され、係留索20が係留柱12から外れることがない。
【0071】
第1無人機6Cが待機位置へ戻れば、作業者は、第1無人機6Cから係留索20の先端部を受け取り、係止具24に係合させる。係留索20の先端部が係止具24に係止された後で、第2無人機6Dは係留索20をリリースする。
【0072】
以上に説明した通り、本実施形態の変形例に係る係留システム1Aは、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させるものであって、
係留索20と、
第2物体に配置されて、係留索20の巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、
第2物体に配置されて、係留索20の先端部の係合及び係脱が可能に係止される係止具24と、
係留索20を保持する保持具69を有する、第1無人機6C及び第2無人機6Dと、
第1無人機6Cが係留索20の先端部を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を係留柱12へ掛けるように、第1無人機6Cを制御する第1制御装置60Cと、
第2無人機6Dが係留索20の前記中途部を保持した状態で第2物体から係留柱12へ向かい、第1無人機6Cが第2物体へ戻るまで又は係留索20の先端部が係止具24に係止されるまで、第1物体側で係留索20を引っ張った状態で停止するように、第2無人機6Dを制御する第2制御装置60Dとを備える。
【0073】
また、本実施形態の変形例に係る係留方法は、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させる係留方法であって、
係留索20が巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、係留索20の先端部が係合及び係脱が可能に係止される係止具24とが第2物体に配置され、
第1無人機6Cによって係留索20の先端部が保持されること、
第2無人機6Dによって係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部が保持されること、
第1制御装置60Cによって、第1無人機6Cが係留索20の先端部を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20の中途部を係留柱12に掛けて、第2物体へ戻るように、第1無人機6Cが制御されること、
第2制御装置60Dによって、第2無人機6Dが、係留索20の中途部を保持した状態で、第2物体から係留柱12へ向かい、第1無人機6Cが第2物体へ戻る又は係留索20の先端部が係止具24に係止されるまで第1物体側で停止することにより係留索20のテンションが保持されるように、第2無人機6Dが制御されること、
係留索20が係留柱12に掛けられた後に、係止具24に係留索20の先端部が係止されること、を含む。
【0074】
上記構成の係留システム1A及び係留方法によれば、第1無人機6C及び第2無人機6Dの協動により索掛け作業が行われる。特に、第1無人機6Cが係留柱12へ係留索20を掛けてから第2物体へ戻るまで、第2無人機6Dによって係留索20のテンションが保持されることから、係留索20が緩んで係留柱12から外れることを防止できる。
【0075】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を説明する。
図12は、本発明の第3実施形態に係る係留システム1Bの構成を示す図である。
図12に示す第3実施形態に係る係留システム1Bは、第1実施形態に係る係留システム1と対比して、先導用無人機6Eと、先導用無人機6Eを制御する先導用制御装置60Eとを更に備える点で相違する。この相違点を除いて、第3実施形態に係る係留システム1Bの構成は第1実施形態に係る係留システム1と実質的に同じである。よって、本実施形態の説明においては、前述の第1実施形態に係る係留システム1との相違点について詳細に説明し、前述の第1実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0076】
先導用制御装置60Eは、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成を有する。先導用無人機6Eは、先導用制御装置60Eにより手動又は自動操縦される。制御装置60は、第1実施形態に係る係留システム1の制御装置60と実質的に同じ構成に加えて、先導用無人機6Eを自動的に追尾させるように搬送用無人機6を制御する機能を備えている。制御装置60は、搬送用無人機6が手動操縦されるように、制御方法を切り替えることができる。搬送用無人機6が先導用無人機6Eに対してどのような位置で追尾するのかは予め設定されている。例えば、搬送用無人機6は先導用無人機6Eと同じ高さで数m後を飛行する。
【0077】
搬送用無人機6は、係留索20の保持具69を有し、係留索20は搬送用無人機6に保持される。そのため、搬送用無人機6として、先導用無人機6Eと比較して大型で搬送力のある機体が採用される。また、先導用無人機6Eは係留索20を運搬しないため、搬送用無人機6よりも軽量の機体が採用され、更に充実した経路探索用のセンサ類が搭載される。
【0078】
以上に説明した通り、本実施形態に係る係留システム1Bは、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させるものであって、
係留索20と、
第2物体に配置されて、係留索20の巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、
第2物体に配置されて、係留索20の先端部の係合及び係脱が可能に係止される係止具24と、
係留索20を保持する保持具69を有する、少なくとも1機の搬送用無人機6と、
搬送用無人機6の移動を先導する先導用無人機6Eと、
先導用無人機6Eを制御する先導用制御装置60Eと、搬送用無人機6を制御する制御装置60とを備える。
制御装置60は、搬送用無人機6が先導用無人機6Eを追尾するように、搬送用無人機6を制御する。
先導用制御装置60Eは、先導用無人機6Eを追尾する搬送用無人機6が、係留索20を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を係留柱12に掛けるように、先導用無人機6Eを制御する。
【0079】
また、本実施形態に係る係留方法は、浮体構造物10と係留施設11のうち一方を第1物体とし他方を第2物体とし、浮体構造物10を係留施設11に係留させる係留方法であって、
係留索20が巻き取り及び引き出しが可能なウインチ30と、係留索20の先端部が係合及び係脱が可能に係止される係止具24とが第2物体に配置され、
少なくとも一機の搬送用無人機6によって係留索20が保持されること、
搬送用無人機6の移動を先導用無人機6Eに先導させ、搬送用無人機6が先導用無人機6Eを追尾することにより、搬送用無人機6が係留索20を保持した状態で第2物体から第1物体に設けられた係留柱12へ向かい、係留索20のうち係止具24に係止された先端部とウインチ30から引き出された基部との間の中途部を係留柱12に掛けるように、先導用無人機6E及び搬送用無人機6が制御されること、及び、
係留索20が係留柱12に掛けられる前(又は、後)に、係止具24に係留索20の先端部が係止されること、を含むことを特徴としている。
【0080】
上記構成の係留システム1B及び方法によれば、経路探索を担う先導用無人機6Eと係留索20の搬送を担う搬送用無人機6とに機能を分散させることによって、それぞれの役割に適した機能を備えることができる。これにより、先導用無人機6Eの経路の探索精度の向上とそれに伴う先導用無人機6E及び搬送用無人機6の飛行安定度の向上を図ることができる。
【0081】
本明細書では、幾つかの実施形態を開示したが、幾つかの実施形態のうちの2つ以上が適宜組み合わされてもよい。例えば、前述の第2実施形態に係る係留システム1Aに、係留システム1Bの特徴を適用可能である。つまり、第2実施形態に係る係留システム1Aを用いた係留方法において、無人機6の移動を先導用無人機6Eに先導させ、無人機6が先導用無人機6Eを追尾するように無人機6を制御してもよい。
【0082】
本明細書で開示する演算器45及びコントローラ68の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせを含む回路、又は、処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見做される。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、或いは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0083】
1,1A,1B:係留システム
6、6A~6D:無人機(搬送用)
6E :先導用無人機
10 :浮体構造物
11 :係留施設
12 :係留柱
20 :係留索
24 :係止具
26 :張力センサ
27 :張力緩衝器
30 :ウインチ
60,60A~60F :制御装置
69 :保持具