(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】光電変換素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20250403BHJP
H10K 30/10 20230101ALI20250403BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/10
(21)【出願番号】P 2021123431
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2024-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】竹本 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】図子 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】本部 惇史
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/042579(WO,A1)
【文献】特表2020-517111(JP,A)
【文献】特開2020-063177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0285521(US,A1)
【文献】KUMAR, Anil et al.,“Effect of Different Annealing Methods on the Performance Parameters of PEDOT:PSS/n-Si Solar Cells”,2020 5th IEEE International Conference on Emerging Electronics (ICEE),2020年11月26日,pp. 1-3,DOI: 10.1109/ICEE50728.2020.9776719
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 39/00-39/38
H10F 10/00-10/19
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、
有機半導体層と無機半導体層とを積層した発電層と、を備え、
上記一対の電極で上記発電層を挟持した光電変換素子であって、
上記有機半導体層が、励起子を発生する光活
性領域を有する有機半導体を含有し、
上記無機半導体層が、格子定数が異なる複数の材料で形成され、その格子が歪んで発生した電界によって、上記励起子の電荷を解離する解離領域を有する無機半導体を含有し、
上記光活性領域における有機半導体と上記解離領域における無機半導体とのエネルギー順位の関係が、下記式(1)及び式(2)を満たし、
上記無機半導体層の表面終端で、上記無機半導体がその未結合手を介して電荷輸送性を有する終端材料と結合し、
上記終端材料と上記有機半導体とが、分子間相互作用を介して電気的に接続されていることを特徴とする光電変換素子。
E
LUMO > E
C ・・・式(1)
E
HOMO > E
V ・・・式(2)
但し、式(1)、式(2)中、
E
LUMOは、有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位を表し、
E
HOMOは、有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位を表し、
E
Cは、無機半導体の伝導帯下端のエネルギー準位を表し、
E
Vは、無機半導体の価電子帯上端のエネルギー準位を表す。
【請求項2】
上記終端材料が、その分子構造中にπ電子共役系を有することを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
上記終端材料の分子構造が、チオール部位と芳香族化合物部位が直接結合した部位を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
上記終端材料が、光活性領域を有する部位と上記無機半導体の未結合手と結合する終端部位と、を有する有機半導体であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項5】
上記終端材料を通じて、上記有機半導体層で発生した上記励起子の電子を上記無機半導体層に輸送することを特徴とする請求項1~4のいずれか1つの項に記載の光電変換素子。
【請求項6】
上記無機半導体が、AlN/AlGaN、AlGaN/GaN、GaN/InGaN、InGaN/InN、AlAs/AlGaAs、AlGaAs/GaAs、GaAs/InGaAs、InGaAs/InAs、AlP/AlGaP、AlGaP/GaP、GaP/GaAsP、GaAsP/GaAs、AlP/AlAsP、AlAsP/AlAs、AlAs/InAlAs、InAlAs/InAs、GaAs/GaAsSb、GaAsSb/GaSb、AlSb/AlGaSb、AlGaSb/GaSb、AlSb/AlInSb、AlInSb/InSb、MgS/MgZnS、MgZnS/ZnS、MgS/MgSSe、MgSSe/MgSe、ZnS/ZnSSe、ZnSSe/ZnSe、MgSe/MgZnSe、MgZnSe/ZnSe、CuAlS
2
/CuAlSSe、CuAlSSe/CuAlSe
2
、CuAlS
2
/CuGaAlS
2
、CuGaAlS
2
/CuGaAlS
2
、CuGaS
2
/CuGaSSe、CuGaSSe/CuGaSe
2
、CuGaS
2
/CuInGaS
2
、CuInGaS
2
/CuInS
2
、CuInS
2
/CuInSSe、CuInSSe/CuInSe
2
、CuGaSe
2
/CuInGaSe
2
、CuInGaSe
2
/CuInSe
2
、MgSe/MgZnSeTe、及びMgZnSeTe/ZnTeから成る群から選ばれた少なくとも一つの組み合わせであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の光電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子に係り、更に詳細には、有機半導体と無機半導体とを用いた光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体層と無機半導体層とを有する光電変換素子は、半導体層を塗工により成膜することが可能で作製が容易であると共に高い発電効率を達成できるので次世代太陽電池材料として有望である。
【0003】
上記無機半導体層が圧電性を有する無機材料で形成されていると、圧力などによりその結晶格子を歪ませることで電界が生じ、この電界により有機半導体層で生じた励起子から電子を解離させることが可能であり、光電変換効率を向上させることができる。
【0004】
特許文献1には、励起子を発生させる有機半導体層と、この励起子の電子と正孔とを解離させる解離領域を有する無機半導体層との界面に微細凹凸を形成し、無機半導体層と有機半導体層との接触界面を増やすことで光電変換効率を向上させた光電変換素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2018/042579号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、無機半導体層の表面に微細な凹凸を形成すると、その表面には無機半導体の結合に関与しない不対電子で占められた未結合手(ダングリングボンド)が生じ、一部の電子が未結合手に捕捉されて無機半導体層に輸送されないため、接触界面の拡大に伴なった光電変換効率の向上が望めない。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ダングリングボンドによる電子の捕捉を防止し、有機半導体層で発生した電子を高い効率で無機半導体層に輸送できる光電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、無機半導体の未結合手に電荷輸送性を有する終端材料を結合させることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の光電変換素子は、一対の電極と、有機半導体層と無機半導体層とを積層した発電層と、を備え、上記一対の電極で上記発電層を挟持している。
そして、上記有機半導体層が、励起子を発生する光活性性領域を有する有機半導体を含有し、上記無機半導体層が、格子定数が異なる複数の材料で形成され、その格子が歪んで発生した電界によって、上記励起子の電荷を解離する解離領域を有する無機半導体を含有し、上記光活性領域における有機半導体と上記解離領域における無機半導体とのエネルギー順位の関係が、下記式(1)及び式(2)を満たし、上記無機半導体層の表面終端で、上記無機半導体がその未結合手を介して電荷輸送性を有する終端材料と結合し、上記終端材料と上記有機半導体とが、分子間相互作用を介して電気的に接続されていることを特徴とする;
ELUMO > EC ・・・式(1)
EHOMO > EV ・・・式(2)
但し、式(1)、式(2)中、
ELUMOは、有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位を表し、
EHOMOは、有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位を表し、
ECは、無機半導体の伝導帯下端のエネルギー準位を表し、
EVは、無機半導体の価電子帯上端のエネルギー準位を表す。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無機半導体の未結合手に電荷輸送性を有する終端材料を結合させることとしたため、有機半導体層で発生した電子を高い効率で無機半導体層に輸送できる光電変換素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】光電変換素子の構成の一例を示す概略断面図である。
【
図2】光活性領域と解離領域との界面におけるエネルギー準位を説明する図である。
【
図3】光活性領域と解離領域との界面にダンクリングボンドが存在する場合のエネルギー準位を説明する図である。
【
図4】光電変換素子の構成の他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光電変換素子について詳細に説明する。
図1に示すように、上記光電変換素子は、一対の電極と、有機半導体層と無機半導体層とを積層した発電層と、を備え、上記一対の電極で上記発電層を挟持している。
【0013】
上記有機半導体層は、励起子を発生する光活性領域を有する有機半導体を含有し、上記無機半導体層は、上記光活性領域で発生した励起子の電荷を解離する解離領域を有する無機半導体を含有する。また、上記無機半導体は、格子定数が異なる複数の材料で形成され、圧電体としての性質を併せ持つ。
【0014】
そして、この光電変換素子は、光活性領域における有機半導体と解離領域における無機半導体とのエネルギー順位の関係が、下記式(1)及び式(2)を満たす。
ELUMO > EC ・・・式(1)
EHOMO > EV ・・・式(2)
但し、式(1)、式(2)中、
ELUMOは、有機半導体の最低空軌道のエネルギー準位を表し、
EHOMOは、有機半導体の最高被占軌道のエネルギー準位を表す。
ECは、無機半導体の伝導帯下端のエネルギー準位を表し、
EVは、無機半導体の価電子帯上端のエネルギー準位を表す。
【0015】
この光電変換素子は、光吸収により、有機半導体の最高被占軌道の電子が最低空軌道に移り、電子と正孔とがクーロン力によって対になった束縛励起子を生成し、この束縛励起子が拡散することで一部の束縛励起子が光活性領域と解離領域との界面に到達する。
【0016】
そして、界面に到達した束縛励起子を、負電荷(電子)と正電荷(正孔)とに分離し、この電荷キャリアを外部回路に取り出すことで光電変換を行う。
【0017】
ここで、光活性領域がドナー(p型)であり、解離領域がアクセプタ(n型)である場合を例に、光活性領域と解離領域とのエネルギー準位の関係について説明する。
図2の横軸は光活性領域と解離領域との界面からの距離を表し、縦軸はエネルギー準位を表す。
【0018】
光活性領域を有する有機半導体の最低空軌道(ELUMO)のエネルギー準位は、解離領域を有する無機半導体の伝導帯下端のエネルギー準位(EC)より高く、上記有機半導体の最高被占軌道(EHOMO)のエネルギー準位は、上記価電子帯上端のエネルギー準位(EV)よりも高い。
【0019】
光活性領域で発生した電子と正孔とが対になった束縛励起子が、光活性領域と解離領域との界面に到達すると、ELUMOのエネルキー準位がECのエネルキー準位よりも高いので、電子は解離領域に移る。
【0020】
しかし、EHOMOのエネルキー準位がEVのエネルキー準位よりも充分高く、正孔に対してエネルギー障壁が形成されるため、正孔は解離領域に移動しない。
【0021】
そして、束縛励起子の電子が解離領域に移っても、正孔が光活性領域に残っているので、有機半導体と無機半導体とは、その界面で静電的に引き付けられた電荷移動錯体と同様な状態になって安定化するため、一般に、電子や正孔を光活性領域と解離領域との界面から引き離し輸送することは困難である。
【0022】
特許文献1の光電変換素子にあっては、解離領域を有する無機半導体が圧電体としての性質を有するので、その結晶の格子歪による分極、所謂、圧電効果によって電界が生じ、解離領域のECのエネルキー準位が、界面から離れるにつれて低下するようになる。
【0023】
したがって、解離領域に移動した電子は、界面から離れる方向に移動し易くなるので束縛励起子の電子と正孔との解離を効率よく行うことができるはずである。
【0024】
しかし、無機半導体層の表面終端には、結合に関与しない不対電子で占められた未結合手(ダングリングボンド)が不可避的に存在する。
【0025】
この未結合手が無機半導体層の表面終端、すなわち、解離領域側の光活性領域と解離領域との界面に存在すると、上記未結合手のエネルギー準位は、
図3に示すように、E
Cよりも低いので、解離領域に移動した電子が未結合手に捕捉され、界面から離れる方向に輸送されないため、期待したほど光電変換効率が向上しない。
【0026】
このダングリングボンドに起因する光電変換効率の低下は、エッチング等によって無機半導体層の表面に凹凸を形成し、光活性領域と解離領域との接触界面を増大させるほど顕著である。
【0027】
本発明においては、無機半導体の未結合手が電荷輸送性を有する終端材料と結合しているので、解離領域に移動した電子が未結合手に捕捉されることが防止される。
【0028】
したがって、無機半導体層の表面に凹凸を形成しても、表面欠陥に由来する電圧損失が抑制され、高効率な光電変換が可能である。
【0029】
(終端材料)
上記終端材料としては、電荷輸送性を有し、無機半導体の未結合手と結合できればよく、例えば、4-Methylthiophenol、4-(trifluoromethyl)thiophenolなど、チオール基を有する化合物の他、Poly(3-hexylthiol thiophene)などのチオール基を有する有機半導体を挙げることができる。
【0030】
上記チオール基を有する化合物は、チオール部位と芳香族化合物部位とが直接結合した分子構造であり、チオール部位が無機半導体の未結合手と結合し、芳香族化合物部位が有機半導体側に向く。
【0031】
したがって、上記チオール基を有する化合物は、芳香族化合物部位のπ電子共役系によってチオール基を有する化合物自体が電荷輸送性を有すると共に、有機半導体と分子間相互作用を介して電気的に接続される。
【0032】
また、チオール基を有する有機半導体は、光活性性領域を有しチオール基が無機半導体の未結合手に直接結合するので、この結合を介して光活性領域と解離領域とが電気的に接続される。
【0033】
したがって、光活性領域で発生した束縛励起子の電子は、上記チオール基を有する化合物や、上記チオール基を有する有機半導体などの終端材料を通じて、束縛励起子の電子を光活性領域から解離領域に輸送されるので、これらの界面における電子輸送特性の低下を抑制でき、さらなる高効率な光電変換が可能となる。
【0034】
(有機半導体)
上記有機半導体としては、光を吸収して束縛励起子を発生できる光活性領域を有する有機半導体を使用することができ、例えば、P3HT(Poly-3-hexylthiophene)、PTB7、PTB7-Th、PffBT4T-2OD、PffBT4T-C9C13、PBDB-T、DTS(FBTTh2)2などを挙げることができる。
【0035】
(無機半導体)
上記無機半導体としては、励起子の電荷を解離する解離領域を有し、かつ圧電性を有する無機半導体を使用することができ、上記無機半導体は、格子定数の異なる複数種の材料により形成される。
【0036】
無機半導体が、格子定数が異なる複数種の材料で形成されていると、異なる材料同士が接する界面近傍で原子の並びが乱れ、ひずみ応力が発生するので、日射量や温度などの周囲の影響を受けることなく電界が安定して発生し、電子と正孔とを解離させることができる。
【0037】
また複数種の材料の組み合わせは、組成が近い材料同士を用いることが好ましい。組成が近い材料同士であると、複数種の材料が積層した構造の無機半導体層を形成でき、ひずみによる電界の向きを揃えることができる。
【0038】
また、無機半導体は、上記有機半導体よりも誘電率が高いことが好ましい。
無機半導体の誘電率が高く分極し易いと、無機半導体自体が分極することによって束縛励起子の電子と正孔との間に働く束縛力を低減するので、光活性領域から移動した電子が界面から離れる方向に移動し易くなり、束縛励起子の電子と正孔との解離を効率よく行うことができる。
【0039】
このような無機半導体の組み合わせとしては、AlN/AlGaN、AlGaN/GaN、GaN/InGaN、InGaN/InN、AlAs/AlGaAs、AlGaAs/GaAs、GaAs/InGaAs、InGaAs/InAs、AlP/AlGaP、AlGaP/GaP、GaP/GaAsP、GaAsP/GaAs、AlP/AlAsP、AlAsP/AlAs、AlAs/InAlAs、InAlAs/InAs、GaAs/GaAsSb、GaAsSb/GaSb、AlSb/AlGaSb、AlGaSb/GaSb、AlSb/AlInSb、AlInSb/InSb、MgS/MgZnS、MgZnS/ZnS、MgS/MgSSe、MgSSe/MgSe、ZnS/ZnSSe、ZnSSe/ZnSe、MgSe/MgZnSe、MgZnSe/ZnSe、CuAlS2/CuAlSSe、CuAlSSe/CuAlSe2、CuAlS2/CuGaAlS2、CuGaAlS2/CuGaAlS2、CuGaS2/CuGaSSe、CuGaSSe/CuGaSe2、CuGaS2/CuInGaS2、CuInGaS2/CuInS2、CuInS2/CuInSSe、CuInSSe/CuInSe2、CuGaSe2/CuInGaSe2、CuInGaSe2/CuInSe2、MgSe/MgZnSeTe、及びMgZnSeTe/ZnTeなどを挙げることができる。
【0040】
上記無機半導体を含有する無機半導体層は、上記有機半導体層と接する界面側に凹凸を有することが好ましい。有機半導体層との界面に凹凸を有することで、有機半導体層との接触面積が増大し、高効率な光電変換が可能になる。
【0041】
(電極)
上記電極としては、有機半導体層側に光を透過できれば特に制限はないが、ITO膜などの透明電極は、有機半導体の全面に形成しても有機半導体に光が届くので好ましく使用できる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
GaN表面に一様にAlGaNが成長した、AlGaN/GaN無機半導体基板の一方側の表面を格子状にエッチングし、高さが1μmで1×1μm角の柱状の突起を1μm間隔で形成し、表面に凹凸を有する無機半導体層を形成し、フッ化水素(HF)溶液で表面の自然酸化膜を除去し、水洗しての無機半導体層を得た。
【0044】
4-Methylthiophenolをエタノールと水酸化アンモニウムとの混合溶媒に溶解して終端材料塗工液を作製し、この終端材料塗工液中に上記無機半導体層を10時間浸漬したた後、エタノールで洗浄し、無機半導体層表面に4-Methylthiophenolの単分子膜を形成した。
【0045】
この無機半導体層の表面をXPSにより解析したところ、S-Ga結合が生じており、無機半導体のダンクリングボンドと4-Methylthiophenolとが結合していることが確認された。
【0046】
次に、無機半導体層の他方側の面にスパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を形成し150~250℃の温度範囲でアニールを行い、無機半導体層に電極を形成した。
【0047】
Poly(3-hexylthiol thiophene)(銘柄:Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl),regioregular Electronic grade、品番:4002-EE、社名:RIEKE METALS)をエタノールと水酸化アンモニウムとの混合溶媒に溶解し、有機半導体層塗工液を作製した。
【0048】
表面凹凸が形成された無機半導体層の一方側の面に、上記有機半導体層塗工液をスピンコート法で製膜し、150℃でアニールを行って、無機半導体層上に有機半導体層を積層して発電層を形成した。
【0049】
有機半導体層上にスパッタ法によりITO(Indium Tin Oxide)膜を形成し150~250℃の温度範囲でアニールを行い、有機半導体層に電極を形成し、
図4に示す構造の光電変換素子を得た。
【0050】
[実施例2]
終端材料を、4-MethylthiophenolからPoly(3-hexylthiol thiophene)に替える他は実施例1と同様にして光電変換素子を得た。
無機半導体層の表面をXPSにより解析したところ、S-Ga結合が生じており、無機半導体のダンクリングボンドとPoly(3-hexylthiol thiophene)とが結合していることが確認された。
【0051】
本発明の光電変換素子は、無機半導体層の表面のダンクリングボンドに終端材料が結合しているため、無機半導体層の表面欠陥に由来する電圧損失の抑制、及び有機半導体と無機半導体との界面における電子輸送特性の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0052】
1 光電変換素子
2 発電層
3 有機半導体層
31 光活性領域
4 無機半導体層
41 解離領域
5 界面
6 束縛励起子
7 電子
8 正孔
9 電極