(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】水溶液中で上限臨界溶液温度を有するポリマー
(51)【国際特許分類】
C08F 20/36 20060101AFI20250403BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20250403BHJP
C07C 275/06 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
C08F20/36
C08F20/10
C07C275/06 CSP
(21)【出願番号】P 2021568357
(86)(22)【出願日】2020-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020031690
(87)【国際公開番号】W WO2020231703
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-02
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・モンテイロ
(72)【発明者】
【氏名】ダロア・ホサイン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2002/016454(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/016528(WO,A1)
【文献】特開昭58-179838(JP,A)
【文献】ADAM MONDRZYK; ET AL,NEW TYPES OF ASSOCIATING MONOMERS AND POLYMERS FROM [ALPHA]-AMINOCAPROLACTAM 以下備考,POLYMER INTERNATIONAL,英国,2014年10月15日,VOL.64. NO.5,PAGE(S):661-667,http://dx.doi.org/10.1002/pi.4813,AND 2-ISOCYANATOETHYL (METH)ACRYLATE: PROPERTIES IN CONDENSED PHASE AND IN SOLUTION
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のアミドまたはチオアミド基と、
1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基と、
1つ以上のエチレン性不飽和基と
を含む、化合物であって、
式(I):
【化1】
で表され、
式中、
Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、
R
1およびR
2は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンであり、
R
3、R
4、R
5およびR
6は、独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである、
化合物。
【請求項2】
Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4が、それぞれ酸素であり、R
3、R
4、R
5およびR
6が、それぞれ水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R
1が-C
2H
4-であり、
R
2が-CH
2-である、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法であって、クロマトグラフィーを行わずに前記化合物を精製するステップを含む、方法。
【請求項5】
ポリマーであって、
モノマー単位の複数の繰り返し単位(n)であって、各モノマー単位が、独立して、1つ以上のアミドまたはチオアミド基および1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含み、nが10~200の整数である、繰り返し単位(n)と、
任意選択的に存在してもよいコモノマー単位の複数の繰り返し単位(m)であって、mが0~100の整数であり、n>mである、繰り返し単位(m)と、
可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の少なくとも一部
とを含み、
前記ポリマーが、1気圧で
1.5mLの水性液体媒体中に
15mgのポリマーが存在する場合、1℃~
70℃の上限臨界溶液温度を示すように構成されており、
前記モノマー単位が、式(II):
【化2】
で表され、
式中、
Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、
R
1は、アルキルまたはハロアルキルであり、
R
2およびR
3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンであり、
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである、
ポリマー。
【請求項6】
Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4が、それぞれ酸素であり、R
4、R
5、R
6およびR
7が、それぞれ水素である、請求項5に記載のポリマー。
【請求項7】
前記上限臨界溶液温度が、0超~160mMのナトリウムイオン濃度を有する水溶液中におけるものである、請求項5又は6に記載のポリマー。
【請求項8】
三重検出によって決定される数平均分子量(M
n)が、7,000Da~40,000Daである、請求項5又は6に記載のポリマー。
【請求項9】
三重検出によって決定される多分散度が、1.0~1.3である、請求項5又は6に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリマーが、
1.5mLの水性液体媒体中に
15mgのポリマーが存在する場合、5℃~60℃の前記上限臨界溶液温度を示すように構成されている、請求項5又は6に記載のポリマー。
【請求項11】
コポリマーであって、
モノマー単位の複数の繰り返し単位(n)であって、各モノマー単位が、独立して、1つ以上のアミドまたはチオアミド基および1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含み、nが10~200の整数である、繰り返し単位(n)と、
コモノマー単位の複数の繰り返し単位(m)であって、各コモノマー単位が、疎水性コモノマー、親水性コモノマー、pH応答性コモノマー、光応答性コモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、mが1~100の整数であり、n>mである、繰り返し単位(m)と、
可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の少なくとも一部
とを含み、
前記コポリマーが、1気圧で
1.5mLの水性液体媒体中
に15mgのコポリマーが存在する場合、1℃~
70℃の上限臨界溶液温度を示すように構成されており、
前記モノマー単位が、式(II):
【化3】
で表され、
式中、
Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、
R
1は、アルキルまたはハロアルキルであり、
R
2およびR
3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンであり、
R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである、
コポリマー。
【請求項12】
前記コモノマー単位が疎水性コモノマー単位である、請求項11に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記モノマー単位のホモポリマーと比較して、より高い上限臨界溶液温度を示す、請求項12に記載のコポリマー。
【請求項14】
前記コモノマー単位が、式(III):
【化4】
で表され、
式中、
Q
1およびQ
2は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである、
請求項12に記載のコポリマー。
【請求項15】
Q
1およびQ
2が、それぞれ酸素である、請求項14に記載のコポリマー。
【請求項16】
前記上限臨界溶液温度が、0mM超~160mMのナトリウムイオン濃度を有する水溶液中におけるものである、請求項11に記載のコポリマー。
【請求項17】
前記コポリマーが、
1.5mLの水性液体媒体中に
15mgのコポリマーが存在する場合、5℃~60℃の前記上限臨界溶液温度を示すように構成されている、請求項11に記載のコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月6日に出願された同時係属の米国非仮特許出願番号第16/867,955号の優先権を主張するPCT出願であり、該米国出願は、2019年5月15日に出願された米国仮特許出願番号第62/848,132号の利益を主張する。上記の関連する特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
複数の態様は、一般に温度応答性ポリマーに関し、より具体的には、水溶液中で上限臨界溶液温度を示すポリマーに関する。
【背景技術】
【0003】
水溶性熱応答性ポリマーは、温度の変化に伴って溶解度が変化する類のポリマーである。下限臨界溶液温度(LCST)ポリマーは、下限臨界溶液温度を有するポリマーであり、この温度を下回るとポリマーは溶液に可溶になる。LCSTを超えると、ポリマーは溶液に部分的に可溶であるか、不溶である。上限臨界溶液温度(UCST)ポリマーは、上限臨界溶液温度を有するポリマーであり、この温度を超えるとポリマーは溶液に可溶になる。UCSTを下回ると、ポリマーは溶液に部分的に不溶であるか、不溶である。LCSTおよびUCSTポリマーは、外部温度の変化に応答して物理的特性を変化させることができるため、LCSTおよびUCSTポリマーは、薬物送達システム、バイオセンサーおよび医療用途で研究中の材料である。
【0004】
LCSTポリマーには多くの例があるが、UCSTポリマーの例は稀で、ほんの一握りの例しかない。UCSTポリマーの一例は、双性イオン性ポリマー(例えば、ポリ(ベタイン))に基づいている。しかし、これらのポリマーは電解液には適さない場合がある。UCSTポリマーの別の例は、ポリ(ウラシルアクリレート)尿素修飾ポリマーである。しかし、少量のポリ(ウラシルアクリレート)側基が加水分解しただけでも、結果としてUCSTは経時的に失われる。UCSTポリマーの別の例は、ポリ(N-アクリロイルグリシンアミド)(ポリ(NAGA))およびその誘導体である。しかし、アクリル酸不純物を含まない純粋なN-アクリロイルグリシンアミドモノマーの合成は、依然として難題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、電解液に適したUCSTポリマーが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
複数の態様は、一般に温度応答性ポリマーに関し、より具体的には、水溶液中で上限臨界溶液温度(UCST)を示すポリマーに関する。一態様では、モノマー化合物は、1つ以上のアミドまたはチオアミド基と、1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む。一態様では、ポリマー、例えばホモポリマーまたはコポリマーは、複数のモノマー単位を含む。各モノマー単位は、1つ以上のアミドまたはチオアミド基および1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含む。ポリマーは、1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを示す。別の態様では、コポリマーは、複数のモノマー単位と、複数のコモノマー単位とを含む。各モノマー単位は、1つ以上のアミドまたはチオアミド基および1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含む。各コモノマー単位は、疎水性コモノマー、親水性コモノマー、pH応答性コモノマー、光応答性コモノマーおよびそれらの組み合わせを含む群から選択される。コポリマーは、1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを示す。
【0007】
上述した本開示の特徴を詳しく理解できるように、上記で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明が複数の態様を参照することによって得られ、該態様のうちいくつかを添付の図面に示す。しかし、添付の図面は例示の態様のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なすべきではなく、等しく有効な他の態様も認め得ることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】特定の態様による、MEGA-BMAコポリマーの
1H NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。1つの態様の要素および特徴は、有利なことに、さらに列挙することなく他の態様に組み込まれ得ると考えられる。
【0010】
次に、特定の態様、形式および例を含めて、いくつかの態様を以下により詳細に説明するが、本開示は、本開示における情報が利用可能な情報および技術と組み合わされた場合に、当業者が態様を構成し使用することができるように含められたこれらの態様、形式または例に限定されない。
【0011】
本明細書で使用される様々な用語を以下に定義する。請求項で使用される用語は、以下に定義されない限り、1つ以上の刊行物または発行された特許に反映されているように、関連技術の当業者がその用語に与えた最も広い定義を与えられるものとする。
【0012】
本明細書に記載されたすべての文献は、本文書と矛盾しない範囲で、あらゆる優先権書類および/または試験手順を含めて、参照により本明細書に組み込まれる。上記の概説および特定の態様から明らかなように、これらの態様の諸形態が図示され記載されているが、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることを意図するものではない。同様に、「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると見なされる。同様に、構成、要素または要素群の前に「含む(comprising)」という移行句がついている場合は常に、その構成、要素または複数の要素の列挙の前に「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる群から選択される(selected from the group of consisting of)」または「I」という移行句がついた同じ構成または要素群も考慮しているものと理解され、逆もまた同様である。例えば「含む(comprising)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consisting of)」という用語はまた、該用語の後に列挙された要素の組み合わせの産物をも含む。
【0013】
簡潔にするために、特定の範囲のみが本明細書で明示的に開示されている。しかし、あらゆる下限からの範囲をあらゆる上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得、また、あらゆる下限からの範囲をあらゆる他の下限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。同様に、あらゆる上限からの範囲をあらゆる他の上限と組み合わせて、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。さらに、ある範囲内には、明示的に列挙されていなくても、その終点間のすべての点または個々の値が含まれる。したがって、すべての点または個々の値は、他の点もしくは個々の値または他の下限もしくは上限と組み合わせて独自の下限または上限として機能して、明示的に列挙されていない範囲を列挙し得る。
【0014】
特定の態様は、1つ以上のウレイドおよび/またはチオウレイド基と、1つ以上のアミドおよび/またはチオアミド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む、ウレイドアミドモノマー化合物、およびウレイドアミドモノマーを製造する方法に関する。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、1つ以上のウレイド基と、1つ以上のアミド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む。
【0015】
特定の態様は、ウレイドアミドモノマー化合物のホモポリマーまたはコポリマー(総称して「ポリウレイドアミド」と呼ばれる)に関する。本開示のコポリマーは、ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。本発明のポリウレイドアミドは、上限臨界溶液温度(UCST)を有し、この温度を超えるとポリマーは溶液、例えば水溶液に可溶になる。ポリウレイドアミドは、生物学的に適切な温度範囲、例えば約1℃~約100℃の温度範囲の水溶液中でUCSTを示し得る。ポリウレイドアミドは、生物学的に適切な電解質条件、例えば0超~約160mMのナトリウムイオン濃度の水溶液中でUCSTを示し得る。
【0016】
ウレイド基の例としては、-NH(CO)NH-、-NR(CO)NH-、-NH(CO)NR-または-NR(CO)NR’-が挙げられ、式中、RおよびR’は、それぞれ独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。チオウレイド基の例としては、-NH(CS)NH-、-NR(CS)NH-、-NH(CS)NR-または-NR(CS)NR’-が挙げられ、式中、RおよびR’は、それぞれ独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。特定の態様では、ウレイドアミドモノマーのウレイド基は、-NH(CO)NH-である。理論に束縛されるものではないが、ウレイド基は、UCSTを下回ると、水分子との水素結合に関与すると考えられている。
【0017】
アミド基の例としては、NH2(CO)R-、NHR’(CO)R-またはNR”R’(CO)R-が挙げられ、式中、Rはアルキレンまたはハロアルキレンであり、R’およびR”は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである。チオアミド基の例としては、NH2(CS)R-、NHR’(CS)R-またはNR”R’(CS)R-が挙げられ、式中、Rはアルキレンまたはハロアルキレンであり、R’およびR”は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである。特定の態様では、ウレイドアミドモノマーのアミド基は、NH2(CO)R-であり、式中、Rはアルキレンまたはハロアルキレンである。理論に束縛されるものではないが、アミド基は、UCSTを下回ると、水分子との水素結合に関与すると考えられている。
【0018】
ウレイドアミドモノマーのエチレン性不飽和基は、いずれかの重合しやすいエチレン性不飽和基である。例えば、エチレン性不飽和基としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート(すべての異性体)、ブチルメタクリレート(すべての異性体)、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、メタクリル酸、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、メタクリロニトリル、アルファ-メチルスチレン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート(すべての異性体)、ブチルアクリレート(すべての異性体)、2-エチルヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、アクリル酸、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、アクリロニトリル、スチレン、官能性メタクリレート、官能性アクリレートおよび官能性スチレンの誘導体、異性体および類似体(例えば、硫黄類似体)が挙げられ、これらは、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート(すべての異性体)、ヒドロキシブチルメタクリレート(すべての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、イタコン酸無水物、イタコン酸、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート(すべての異性体)、ヒドロキシブチルアクリレート(すべての異性体)、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジエチルアミノエチルアクリレート、トリエチレングリコールアクリレート、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N5N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、アルファ-メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノアルファ-メチルスチレン(すべての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルアクリレート、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、エチレンおよびクロロプレンから選択される。
【0019】
エチレン性不飽和基は、式(I)で表され、その誘導体、異性体および類似体を含む、エチレン性不飽和エステル基であり得、
【化1】
式中、Q
1およびQ
2は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、R
1およびR
2は、それぞれ独立して水素または式-COOR’、-CSOR’、-COSR’の基であり、式中、R’は、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、R
3は、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、R
4は、アルキレンまたはハロアルキレンである。エチレン性不飽和エステル基の不飽和炭素-炭素二重結合は、重合してポリマー鎖に組み込まれる。
【0020】
エチレン性不飽和基は、式中のQ
1およびQ
2がすべて酸素である式(I)で表され、すなわち式(II)でも表され、その誘導体、異性体および類似体を含む、エチレン性不飽和エステル基であり得、
【化2】
式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して水素または式COOR’の基であり、式中、R’は、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、R
3は、水素、アルキルまたはハロアルキルであり、R
4は、アルキレンまたはハロアルキレンである。ウレイドアミドモノマーの、すべてが酸素であるエステル基からなるエチレン性不飽和基は、モノマーの合成においてより費用効果が高い可能性があり、これは、エステルがチオエステルと比較してより広く入手可能であるためである。
【0021】
特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、エチレン性不飽和基の頭部、ウレイド基の本体、およびアミド基の尾部を含む。エチレン性不飽和基の頭部はポリマーの主鎖に組み込まれ、アミド基の尾部はポリマーの側鎖上にある。
【0022】
一例では、ウレイドアミドモノマー化合物は、式(III)で表され、その誘導体、異性体および類似体を含む、化合物を含み、
【化3】
式中、Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、R
2およびR
3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンであり、R
3、R
4、R
5およびR
6は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、式(III)で表される化合物を含み、式中、Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、すべて酸素であり、R
3、R
4、R
5およびR
6は、すべて水素である。
【0023】
別の例では、ウレイドアミドモノマー化合物は、式中のR
1が-C
2H
4-であり、R
2が-CH
2-である式(III)で表される化合物を含む。少なくとも1つの態様では、式(IV)で表されるウレイドアミドモノマーは、以下のとおりである:
【化4】
このモノマー化合物は、2-(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドグリシンアミド(「MEGA」とも呼ばれる)と称される。
【0024】
特定の態様では、式(III)または(IV)で表されるウレイドアミドモノマー化合物は、アミドハロゲン化水素酸塩(amide hydrohalide)とアクリレートとを反応させることによって合成される。例えば、式(IV)のウレイドアミドモノマー化合物は、グリシンアミド塩酸塩のアミドハロゲン化水素酸塩と2-イソシアナトエチルメタクリレートのアクリレートとを反応させることによって合成される。この反応は、有機溶媒または極性溶媒(極性有機溶媒であり得る)中で行うことができ、その結果、合成中に形成された塩不純物を溶媒中に沈殿させ、ろ過により除去することができる。
【0025】
ウレイドアミドモノマー化合物は、沈殿、再結晶、溶媒除去(例えば、蒸発)、ろ過およびそれらの組み合わせによって得ることができる。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、クロマトグラフィーを行わずに、例えばカラムクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーを行わずに得られるか、または精製される。クロマトグラフィーを行わずに精製することにより、モノマー化合物の製造の複雑さおよびコストが減少する。特定の態様では、モノマー化合物は、40%以上、例えば50%以上、または例えば60%以上の収率で合成され、クロマトグラフィーを行わずに精製される。これは、モノマー化合物を有機溶媒中で溶解および再結晶して、さらなる不純物を除去することができるためである。
【0026】
特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、合成され、クロマトグラフィーを行わずに精製されて、アクリル酸不純物が1重量%未満、例えばアクリル酸不純物が0.5重量%未満、または例えばアクリル酸不純物を含まない生成物を生じる。アクリル酸不純物が少ないかまったくないため、生体細胞への刺激および腐食が軽減または排除され、環境的に好ましい。
【0027】
特定の態様では、ポリウレイドアミドは、複数のウレイドアミドモノマー化合物、例えば式(III)または(IV)で表される化合物を含む。例えば、ポリウレイドアミドは、式(V)で表され、その誘導体、異性体および類似体を含む、複数のモノマー単位を含み、
【化5】
式中、Q
1、Q
2、Q
3およびQ
4は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、R
1は、アルキルまたはハロアルキルであり、R
2およびR
3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンであり、R
4、R
5、R
6およびR
7は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、式中のQ
1、Q
2、Q
3およびQ
4がそれぞれ酸素であり、R
4、R
5、R
6およびR
7がそれぞれ水素である式(V)で表され、すなわち式(VI)でも表され、その誘導体、異性体および類似体を含む、複数のモノマー単位を含み、
【化6】
式中、R
1は、アルキルまたはハロアルキルであり、R
2およびR
3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、式(VI)で表される、MEGAの重合したモノマー単位を含み、式中、R
1は-CH
3であり、R
2は-C
2H
4-であり、R
3は-CH
2-である。
【0028】
特定の態様では、ポリウレイドアミドは、重合したウレイドアミドモノマー化合物の繰り返し単位、すなわち式(V)または(VI)のモノマー単位の繰り返し単位(n)の数が、約10~約200、例えば約40~約110、例えば約50~約100である。ウレイドアミドモノマーは、重合してポリウレイドアミドになると異なる特性を示す。ポリウレイドアミドのポリマー主鎖は疎水性であるのに対し、ウレイドアミドモノマー単位のアミド尾部は親水性である。
【0029】
特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーは、複数のウレイドアミドモノマー化合物および1つ以上のコモノマーを含む。特定の態様では、コモノマーは、疎水性、親水性、pH応答性、光応答性またはそれらの組み合わせであり得る。特定の態様では、コモノマーは、疎水性コモノマーである。疎水性コモノマー単位は、疎水性のポリマー主鎖および親水性のウレイドアミドモノマー単位と組み合わせて、温度に応答してポリウレイドアミドコポリマーの全体的な疎水性または親水性に影響を与え得る。
【0030】
疎水性コモノマーの例としては、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート(BMA)(n-ブチルメタクリレートまたはtert-ブチルメタクリレート)、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、オレイルメタクリレート、リシノレイルメタクリレート、ビニルブチレート、ビニルtert-ブチレート、ビニルステアレート、ビニルラウレート、ならびにそれらの誘導体、異性体および類似体(例えば、硫黄類似体)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様では、疎水性コモノマーは、n-ブチルメタクリレートである。
【0031】
親水性コモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびジメチルアミノエチルメタクリレート、ならびにそれらの誘導体、異性体および類似体(例えば、硫黄類似体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーの複数のコモノマー単位は、式(VII)で表され、その誘導体、異性体および類似体を含み、
【化7】
式中、Q
1およびQ
2は、それぞれ独立して酸素または硫黄であり、R
1およびR
2は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである。特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーの複数のコモノマー単位は、式中のQ
1およびQ
2がそれぞれ独立して酸素である式(VII)で表され、すなわち式(VIII)でも表され、
【化8】
式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである。
【0033】
特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーは、式(VII)または(VIII)のコモノマー単位の繰り返し単位(m)の数が、1~100、例えば10~50、例えば15~35である。
【0034】
特定の態様では、ポリウレイドアミドポリマーは、重合したコモノマーの繰り返し単位、すなわち式(VII)または(VIII)のコモノマー単位の繰り返し単位(m)の数が、任意の適切な数、例えばホモポリマーについては0で、例えばコポリマーについては0超である。特定の態様では、コモノマー単位のパーセンテージは、繰り返し単位の総数(モノマー+コモノマー)の約1%~約50%の範囲、例えばn+m(ここで、n>m)に対して、例えば約5%~約45%、例えば約10%~約40%の範囲である。
【0035】
特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物、すなわち式(V)または(VI)のモノマー単位の繰り返し単位(n)は、(モノマー+0コモノマー)の繰り返し単位の総数、例えばn+0に対して、ウレイドアミドモノマーのホモポリマーについて100%である。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物、すなわち式(V)または(VI)のモノマー単位の繰り返し単位(n)は、(モノマー+コモノマー)の繰り返し単位の総数、例えばn+m(ここで、n>m)に対して、ウレイドアミドモノマーのコポリマーおよびホモポリマーについて50%超~100%である。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物、すなわち式(V)または(VI)のモノマー単位の繰り返し単位(n)は、(モノマー+コモノマー)の繰り返し単位の総数、例えばn+m(ここで、n>m)に対して、コポリマーについて50%超~100%未満、例えばコポリマーについて約55%~約95%である。
【0036】
特定の態様では、ポリウレイドアミド、例えばポリウレイドアミドホモポリマーまたはポリウレイドアミドコポリマーは、温度の変化に応答してその水溶性が変化する水溶性熱応答性ポリマーである。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、上限臨界溶液温度(UCST)を有し、この温度を超えるとポリマーは溶液、例えば水溶液に可溶になる。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、1気圧で水溶液中で、生物学的に適切な温度範囲、例えば約1℃~約100℃、例えばヒトの体温の範囲である約34℃~約40℃、例えば室温の範囲である約15℃~約25℃、または他の生物学的に適切な温度範囲の水溶液中でUCSTを示す。
【0037】
ポリウレイドアミドのUCSTは、コモノマー単位に対するウレイドアミドモノマー単位の数および比によって、水溶液の液相中で任意の温度に調整することができる。換言すれば、ポリウレイドアミドのUCSTは、水溶液の凝固点を超えるが、水溶液の沸点以下の任意の温度に調整することができる。1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを有するポリウレイドアミドは、UCSTが1気圧で測定されることを意味するが、ポリウレイドアミドの使用を1気圧に限定するものではない。1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを有するポリウレイドアミドは、1気圧未満の圧力で使用することができる。周囲圧力が1気圧未満であり、1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを有するポリウレイドアミドを使用できる例としては、海水面よりも高い地上の場所、および航空機、航空宇宙機、宇宙船、宇宙衛星または宇宙ステーションの外側、ならびに1気圧未満の圧力を伴うその他の低圧用途が挙げられる。1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを有するポリウレイドアミドは、1気圧を超える圧力で使用することができる。周囲圧力が1気圧を超え、1気圧で水溶液中で約1℃~約100℃のUCSTを有するポリウレイドアミドを使用できる例としては、海水面よりも低い地上の場所、水中ビークルまたは水中建物の内側および/または外側、圧力のかかった航空機の客室内、ならびに1気圧を超える圧力を伴うその他の高圧用途が挙げられる。
【0038】
特定の態様では、ポリウレイドアミドは、広範囲の塩濃度、例えば0超~約160mMの塩濃度にわたって、UCSTの小さな変化(ΔT)、例えば約20℃以下の変化を示し得る。例えば、ポリウレイドアミドは、DLSで測定した場合、0超~約160mMの(水溶液中の)塩濃度の範囲で約20℃以下のΔT、例えば約18℃以下、例えば約15℃以下、例えば約12℃以下、例えば約10℃以下のΔTを示し得る。水溶液の塩は、塩化ナトリウムであり得る。ある範囲の塩濃度にわたるUCSTの小さな変化は、ポリウレイドアミドが塩含有水溶液にさらされる用途で使用することができる。
【0039】
ポリウレイドアミドホモポリマーおよびコポリマーのUCSTは、動的光散乱(DLS)分析によって決定される。UCSTを決定するために、ポリマー(15mg)をバイアル中で70℃の水浴で1.5mLのMilli-Q水に溶解する。バイアルは、測定前に少なくとも1時間水浴に保持する。キュベットを、バイアルからのポリマー溶液で満たす。キュベットをDLS装置内に設置する。ポリマー溶液のZ平均粒径のDLS測定を、ポリマー溶液を70℃から1℃未満に冷却することにより、様々な温度で行う。温度に対するZ平均粒径をプロットする。UCSTは、低温から高温までのZ平均粒径の曲線が非常に小さい値のZ平均粒径(典型的には<5nm)に減少する温度であり、凝集ポリマーが溶液に溶解した単分子ポリマー鎖へと解離していることを示す。
【0040】
特定の態様では、ポリウレイドアミドは、電解質水溶液、例えば生理食塩水中でUCSTを示す。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、生物学的に適切な電解質条件の水溶液、例えばナトリウムイオン濃度が0超~約160mMである水溶液、例えばナトリウムイオン濃度が、ヒトの血液中のナトリウム濃度の範囲である135mM~約145mMである水溶液中でUCSTを示す。ポリウレイドアミドホモポリマーおよびコポリマーは、驚くべきことに、ナトリウムイオン濃度が0濃度~約160mMのナトリウムイオン濃度の範囲で増加するにつれて、比較的安定したUCSTを示した。これは、ナトリウムイオン濃度が、ポリウレイドアミドの全体的な疎水性または親水性に最小限の影響しか与えないためである。対照的に、他の既知のUCST非ポリウレイドアミドは、ナトリウムイオン濃度に応じて非常に異なる転移温度を示し、ナトリウムイオン濃度は、非ポリウレイドアミドポリマーの全体的な疎水性または親水性に大きな影響を与える。
【0041】
特定の態様では、ポリウレイドアミドは、生物学的に適切なpH条件において、例えば1.5~8のpH、例えばヒトの胃のpHレベルである約1.5~約6.5のpH、あるいはヒトの血液のpHレベルである約7.35~約7.45のpH、あるいはヒトの皮膚のpHレベルである約4.5~約6.5のpH、あるいはヒトの口の唾液のpHレベルである約6.5~約7.5のpHレベル、あるいはヒトの大腸のpHレベルである約4.0~約7.0のpHレベルで、水溶液中でUCSTを示す。
【0042】
特定の態様では、UCSTを示すポリウレイドアミドは、様々な構造をとり得る。例えば、(i)UCSTを超えると、親水性の性質であり、水性液体媒体によって容易に湿潤または溶媒和される、拡張ランダムコイル構造、(ii)UCSTを下回ると、疎水性の性質であり、水性液体媒体によって容易に湿潤または溶媒和されない、崩壊した球状構造、および/または(iii)UCSTを下回ると、疎水性の性質であり、水性液体媒体によって容易に湿潤または溶媒和されない、複数のポリウレイドアミドの凝集構造である。特定の態様では、ポリウレイドアミドは、様々な構造のうち2つ以上の間で可逆的である。
【0043】
ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを構成するウレイドアミドモノマー単位のアミド官能基は、比較的低温で水分子との水素結合に関与し、ポリウレイドアミドを比較的低温で水に可溶にすると考えられている。一方、比較的高温では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーの炭素骨格の疎水性がアミド官能基の水素結合よりも優勢であり、ポリウレイドアミドを低温で水に不溶にする。
【0044】
ポリウレイドアミドコポリマーは、任意の適切な量でコモノマーを含み得る。特定の態様では、疎水性コモノマーの繰り返し単位のパーセンテージが高いポリウレイドアミドコポリマーは、ポリウレイドアミドホモポリマーと比較して、UCSTの上昇を示す。特定の態様では、親水性コモノマーの繰り返し単位のパーセンテージが高いポリウレイドアミドコポリマーは、ポリウレイドアミドホモポリマーと比較して、UCSTの低下を示す。
【0045】
特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーは、任意の適切な量でpH応答性コモノマーを含み得る。ポリウレイドアミドコポリマーのpH応答性コモノマーは、pHに関連してUCSTに影響を与える。pH応答性コモノマーの一例としては、ビニルモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸および他のアルキル置換アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、アミノエチルメタクリレート、ホスホリルエチルアクリレートまたはメタクリレートが挙げられる。pH応答性コモノマーの別の例としては、アミノ酸由来のポリペプチド(例えば、ポリリジンもしくはポリグルタミン酸)、または多糖類(例えば、アルギン酸、ヒアルロン酸、カラギーナン、キトサン、カルボキシメチルセルロース)、または核酸、例えばDNAが挙げられる。pH応答性モノマーの別の例としては、ペンダントpH感受性官能基を有するモノマーが挙げられる。pH感受性官能基の例としては、-OPO(OH)2、-COOHまたは-NH2が挙げられるが、これらに限定されない。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、ペンダントpH感受性官能基を有するウレイドアミドモノマーを含み得る。特定の態様では、ポリウレイドアミドコポリマーは、ペンダントpH感受性官能基を有するコモノマーを含み得る。
【0046】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、ペンダント発色団官能基を有するウレイドアミドモノマーおよび/またはペンダント発色団官能基を有するコモノマーを含み得る。発色団官能基は、電磁放射(すなわち、可視光または非可視光)感受性のあらゆる官能基である。発色団官能基の例としては、トランス型とシス型との間で異性化の可能性がある、もしくは異性化を引き起こし得る基、比較的非極性の疎水性の非イオン化状態から親水性のイオン状態への転移の可能性がある、もしくは転移を引き起こし得る基、および電磁放射に応答して他のモノマーまたはコモノマー単位と重合する基が挙げられる。
【0047】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、温度の変化に応答して転移する、例えば、親水性の性質から疎水性の性質へと、または疎水性の性質から親水性の性質へと可逆的または不可逆的転移をする刺激応答性ポリマーである。
【0048】
ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、1種または複数の感受性をポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーに組み込むことにより、1種または複数の刺激に応答し得る。例えば、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、温度に、ならびに電解質濃度、pH濃度および電磁放射から選択される1種以上の刺激に応答し得る。例えば、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、温度応答性であり得、また電磁放射応答性であり得る。例えば、ポリマー骨格に沿って発色団官能基を光刺激すると、ポリマーはより疎水性または親水性のコンフォメーションに転移し、ポリマーの組成および温度に応じて、ポリマーの溶解/湿潤または沈殿が促進され得る。別の例では、発色団官能基が光を吸収し、光を熱エネルギーに変換して局所的な加熱を引き起こし、それにより、系の温度が相分離温度に近いときには、温度応答性ポリマーの相変化が刺激され得る。
【0049】
ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、直鎖状主鎖からなり得るか、または2つ以上の主鎖からなり得る。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、NMRスペクトルによって決定される数平均分子量(Mn)が、約6,000Da~約35,000Da、例えば約12,000Da~約29,000Daである。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、三重検出によって決定されるMnが、約7,000Da~約40,000Da、例えば約14,000Da~約33,000Daである。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、RI検出によって決定されるMnが、約30,000Da~約72,000Da、例えば約38,000Da~約64,000Daである。Mnは、UCSTを示すポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーの試料の数平均分子量である。
【0050】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、三重検出によって決定されるピーク分子量(Mp)が、約16,000Da~約50,000Da、例えば約20,000Da~約40,000Daである。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、RI検出によって決定されるMpが、約38,000Da~約82,000Da、例えば約50,000Da~約75,000Daである。Mpは、UCSTを示すポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーの試料の分子量分布のピークでの分子量である。
【0051】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、三重検出ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される多分散度(PDI)が、約1.00~約1.30、例えば約1.03~約1.20である。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、RI検出によって決定されるPDIが、約1.10~約1.45、例えば約1.20~約1.35である。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、三重検出ゲル浸透クロマトグラフィーによるPDIが1.30未満と低く、またはRI検出によるPDIが1.45未満と低く、より均一なサイズ、形状および/または質量分布を有するポリマーを提供する。
【0052】
ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを形成するための重合プロセスは、有機溶媒または水性溶媒などの溶媒を利用する溶液重合プロセスで行うことができる。ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを形成するための重合プロセスは、塊状重合プロセスで行うことができる。塊状重合プロセスでは、重合されるモノマー(存在する場合はコモノマーも)が溶媒または希釈剤として使用されるが、液体または希釈剤として不活性溶媒をほとんどまたはまったく使用しない。塊状重合プロセスでは、少量の不活性溶媒が触媒の担体および捕捉剤として使用され得る。
【0053】
ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、ラジカル、配位、イオンまたは他の適切な重合技法でエチレン性不飽和モノマー/コモノマーを重合することによって調製することができる。ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを製造するための重合プロセスは、リビングまたは非リビングであり得る。特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを製造するための重合プロセスは、リビング重合によるものである。リビング重合は連鎖重合の一形態であり、不可逆的な連鎖停止が実質的に存在しない。リビング重合の特徴は、モノマーおよび重合をサポートする反応条件が提供されている間は、ポリマー鎖が成長し続けることである。リビング重合によって調製されたポリマー鎖は、明確に定まった分子構造、所定の分子量、および/または狭い分子量分布もしくは低い多分散度を示し得る。リビング重合の例としては、イオン重合および精密ラジカル重合(CRP)が挙げられる。CRPの例としては、イニファーター重合、安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを製造するための重合プロセスは、RAFT重合プロセスを使用して実施される。RAFT重合プロセスは、RAFT剤を使用する。使用に適したRAFT剤は、チオカルボニルチオ基(これは、-C(S)S-で表される2価部分である)を含む。RAFT剤の例としては、キサントゲン酸塩、ジチオエステル、ジチオカーボネート、ジチオカルバメートおよびトリチオカーボネート化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
特定の態様では、RAFT剤は、一般式(IX)で表され、
【化9】
式中、R*は、xが1以上の整数であるx価基であり、Zは、独立して選択され、その結果、この薬剤は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合においてRAFT剤として機能し得る。Z基は、独立して、フリーラジカル付加に向けてRAFT剤中のC=S部分の適度に高い反応性を与えるように機能する有機基および/または置換有機基であり得る。R*基は、使用される重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能する有機基または置換有機基であり得る。R*基は、1価、2価、3価またはより高い原子価のものであり得る。特定の態様では、xは、1~20の範囲、例えば1~10、または例えば1~5の範囲の整数である。したがって、R*は、置換されていてもよいポリマー鎖であり得、RAFT剤の残りは、ポリマー鎖からペンダントする複数の基として与えられる。
【0056】
特定の態様では、RAFT剤は、一般式(X)で表され、
【化10】
式中、Z*は、yが2以上の整数であるy価基であり、Rは、独立して選択され、その結果、この薬剤は、1つ以上のエチレン性不飽和モノマーの重合においてRAFT剤として機能し得る。Z*基は、フリーラジカル付加に向けてRAFT剤中のC=S部分の適度に高い反応性を与えるように機能する有機基または置換有機基であり得る。Z*基は、2価、3価またはより高い原子価のものであり得る。特定の態様では、yは、2~20の範囲、例えば2~10または2~5の範囲の整数である。R基は、独立して、使用される重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能する有機基および/または置換有機基であり得る。
【0057】
特定の態様では、RAFT剤の少なくとも一部がポリマーに組み込まれる。例えば、特定の態様では、式(IX)または式(X)のRAFT剤の少なくともC=S部分がポリマーに組み込まれる。
【0058】
式(IX)のR*の例および式(X)のRの例としては、置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアルケニル、アルキルアルキニル、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキニルオキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリロオキシ、アルキルヘテロアリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルケニルチオアルキル、アルキニルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアルケニルアルキル、アルキルアルキニルアルキル、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアルケニルアリール、アリールアルキニルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アルケニルオキシアリール、アルキニルオキシアリール、アリールオキシアリール、アルキルチオアリール、アルケニルチオアリール、アルキニルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオおよびポリマー鎖が挙げられる。
【0059】
式(IX)のR*の例および式(X)のRの例としては、置換されていてもよいアルキル、飽和、不飽和または芳香族の炭素環式または複素環式環、アルキルチオ、ジアルキルアミノ、有機金属種およびポリマー鎖が挙げられる。
【0060】
式(IX)のR*の具体例および式(X)のRの例としては、置換されていてもよいC1~C18アルキル、C2~C18アルケニル、C2~C18アルキニル、C6~C18アリール、C1~C18アシル、C3~C18カルボシクリル、C2~C18ヘテロシクリル、C3~C18ヘテロアリール、C1~C18アルキルチオ、C2~C18アルケニルチオ、C2~C18アルキニルチオ、C6~C18アリールチオ、C1~C18アシルチオ、C3~C18カルボシクリルチオ、C2~C18ヘテロシクリルチオ、C3~C18ヘテロアリールチオ、C3~C18アルキルアルケニル、C3~C18アルキルアルキニル、C7~C24アルキルアリール、C2~C18アルキルアシル、C4~C18アルキルカルボシクリル、C3~C18アルキルヘテロシクリル、C4~C18アルキルヘテロアリール、C2~C18アルキルオキシアルキル、C3~C18アルケニルオキシアルキル、C2~C18アルキニルオキシアルキル、C7~C24アリールオキシアルキル、C2~C18アルキルアシルオキシ、C2~C18アルキルチオアルキル、C3~C18アルケニルチオアルキル、C3~C18アルキニルチオアルキル、C7~C24アリールチオアルキル、C2~C18アルキルアシルチオ、C4~C18アルキルカルボシクリルチオ、C3~C18アルキルヘテロシクリルチオ、C4~C18アルキルヘテロアリールチオ、C4~C18アルキルアルケニルアルキル、C4~C18アルキルアルキニルアルキル、C8~C24アルキルアリールアルキル、C3~C18アルキルアシルアルキル、C13~C24アリールアルキルアリール、C14~C24アリールアルケニルアリール、C14~C24アリールアルキニルアリール、C13~C24アリールアシルアリール、C7~C18アリールアシル、C9~C18アリールカルボシクリル、C8~C18アリールヘテロシクリル、C9~C18アリールヘテロアリール、C8~C18アルケニルオキシアリール、C8~C18アルキニルオキシアリール、C12~C24アリールオキシアリール、C7~C18アルキルチオアリール、C8~C18アルケニルチオアリール、C8~C18アルキニルチオアリール、C12~C24アリールチオアリール、C7~C18アリールアシルチオ、C9~C18アリールカルボシクリルチオ、C8~C18アリールヘテロシクリルチオ、C9~C18アリールヘテロアリールチオ、および約500~約80,000の範囲、例えば約500~約30,000の範囲の数平均分子量を有するポリマー鎖が挙げられる。
【0061】
式(IX)のZの例および式(X)のZ*の例としては、F、Cl、Br、I、アルキル、アリール、アシル、アミノ、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アリールオキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、カルボシクリルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アリールオキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロアリールオキシ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アリールオキシアリール、アリールアシルオキシ、アリールカルボシクリルオキシ、アリールヘテロシクリルオキシ、アリールヘテロアリールオキシ、アルキルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオ、ジアルキルオキシ-、ジヘテロシクリルオキシ-またはジアリールオキシ-ホスフィニル、ジアルキル-、ジヘテロシクリル-またはジアリール-ホスフィニル、シアノ(すなわち-CN)および-S-R(式中、Rは式(IX)に関して定義したとおりである)が挙げられる。
【0062】
式(IX)のZの具体例および式(X)のZ*の例としては、F、Cl、C1~C18アルキル、C6~C18アリール、C1~C18アシル、アミノ、C3~C18カルボシクリル、C2~C18ヘテロシクリル、C3~C18ヘテロアリール、C1~C18アルキルオキシ、C6~C18アリールオキシ、C1~C18アシルオキシ、C3~C18カルボシクリルオキシ、C2~C18ヘテロシクリルオキシ、C3~C18ヘテロアリールオキシ、C1~C18アルキルチオ、C6~C18アリールチオ、C1~C18アシルチオ、C3~C18カルボシクリルチオ、C2~C18ヘテロシクリルチオ、C3~C18ヘテロアリールチオ、C7~C24アルキルアリール、C2~C18アルキルアシル、C4~C18アルキルカルボシクリル、C3~C18アルキルヘテロシクリル、C4~C18 C4~C18アルキルヘテロアリール、C2~C18アルキルオキシアルキル、C7~C24アリールオキシアルキル、C2~C18アルキルアシルオキシ、C4~C18アルキルカルボシクリルオキシ、C3~C18アルキルヘテロシクリルオキシ、C4~C18アルキルヘテロアリールオキシ、C2~C18アルキルチオアルキル、C7~C24アリールチオアルキル、C2~C18アルキルアシルチオ、C4~C18アルキルカルボシクリルチオ、C3~C18アルキルヘテロシクリルチオ、C4~C18アルキルヘテロアリールチオ、C8~C24アルキルアリールアルキル、C3~C18アルキルアシルアルキル、C13~C24アリールアルキルアリール、C13~C24アリールアシルアリール、C7~C18アリールアシル、C9~C18アリールカルボシクリル、C8~C18アリールヘテロシクリル、C9~C18アリールヘテロアリール、C12~C24アリールオキシアリール、C7~C18アリールアシルオキシ、C9~C18アリールカルボシクリルオキシ、C8~C18アリールヘテロシクリルオキシ、C9~C18アリールヘテロアリールオキシ、C7~C18アルキルチオアリール、C12~C24アリールチオアリール、C7~C18アリールアシルチオ、C9~C18アリールカルボシクリルチオ、C8~C18アリールヘテロシクリルチオ、C9~C18アリールヘテロアリールチオ、ジアルキルオキシ-、ジヘテロシクリルオキシ-またはジアリールオキシ-ホスフィニル(すなわち-P(=O)ORk
2)、ジアルキル-、ジヘテロシクリル-またはジアリール-ホスフィニル(すなわち-P(=O)Rk
2)(式中、Rkは、置換されていてもよいC1~C18アルキル、置換されていてもよいC6~C18アリール、置換されていてもよいC2~C18ヘテロシクリル、および置換されていてもよいC7~C24アルキルアリールから選択される)、シアノ(すなわち-CN)ならびに-S-R(式中、Rは式(IX)に関して定義したとおりである)が挙げられる。
【0063】
R*、R、ZおよびZ*の例では、多成分基が任意の順序で部分基を含むことが理解される。例えば、アルキルアリールの多成分基は、アリールアルキルを含む。
【0064】
Z、Z*、RまたはR*は、分岐であり得、かつ/または置換されていてもよい。Z、Z*、RまたはR*が置換されていてもよいアルキル部分を含む場合、存在してもよい置換基は、アルキル鎖の-CH2-基が、-O-、-S-、-NRa-、-C(O)-(すなわちカルボニル)、-C(O)O-(すなわちエステル)および-C(0)NRa-(すなわちアミド)から選択される基によって置換される場合を含み、式中、Raは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールアルキルおよびアシルから選択され得る。
【0065】
本明細書においてx価、y価、多価または2価の「形態」に言及する場合、指定した基が、それぞれx価、y価、多価または2価のラジカルであることを意味することを意図している。例えば、xまたはyが2の場合、指定した基が2価のラジカルであることを意図している。その場合、2価のアルキル基は事実上アルキレン基(例えば、-CH2-)である。同様に、2価の形態のアルキルアリール基は、例えば-(C6H4)-CH2-で表され得、2価アルキルアリールアルキル基は、例えば-CH2-(C6H4)-CH2-で表され得、2価アルキルオキシ基は、例えば-CH2-O-で表され得、2価アルキルオキシアルキル基は、例えば-CH2-O-CH2-で表され得る。「置換されていてもよい」という用語がこれらのx価、y価、多価または2価の基と組み合わせて使用される場合、その基は、本明細書に記載されるように置換されるか、または融合し得る。x価、y価、多価、2価の基が2つ以上の部分基を含む場合、例えば[基A][基B][基C](例えば、アルキルアリールアルキル)である場合、可能であれば、これらの部分基のうち1つ以上が置換されていてもよい。RAFT剤の一例は、ベンジル末端シアノRAFT剤であるが、他のRAFT剤も使用することができる。
【0066】
特定の態様では、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーは、追加の成分を(内部および/または外部に)保持し得る。例えば、薬物、治療用化合物または生物活性剤が、UCST未満で、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーの内部および/または外部に含まれ得る。薬物または治療用化合物または生物活性剤は、UCSTを超える温度でポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーを転移させることにより、該ポリマーから放出され得る。
【0067】
複数の態様は、一般に温度応答性ポリマーに関し、より具体的には、水溶液中で上限臨界溶液温度(UCST)を示すポリマーに関する。特定の態様は、1つ以上のウレイドおよび/またはチオウレイド基と、1つ以上のアミドおよび/またはチオアミド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む、ウレイドアミドモノマー化合物、およびウレイドアミドモノマーを製造する方法に関する。特定の態様では、ウレイドアミドモノマー化合物は、1つ以上のウレイド基と、1つ以上のアミド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む。特定の態様のポリマー、例えばホモポリマーまたはコポリマーは、ウレイドアミドモノマー化合物の重合によって製造される。コポリマーは、モノマー化合物と、コモノマー、例えば疎水性コモノマー、親水性コモノマー、pH応答性コモノマー、光応答性コモノマーおよびそれらの組み合わせとの重合によって製造され得る。ホモポリマーまたはコポリマーは、生物学的に適切な温度範囲の水溶液中でUCSTを示す。特定の態様では、ホモポリマーまたはコポリマーは、生物学的に適切な温度範囲および生物学的に適切な電解質条件において、水溶液中でUCSTを示す。
【0068】
項目1:1つ以上のアミドまたはチオアミド基と、1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基と、1つ以上のエチレン性不飽和基とを含む、化合物。
【0069】
項目2:前記1つ以上のエチレン性不飽和基が、式(I)または式(II)で表される、項目1および3から6のいずれか一項に記載の化合物。
【0070】
項目3:式(III)で表される、項目1、2および4から6のいずれか一項に記載の化合物。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ独立して酸素または硫黄である。R1およびR2は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。R3、R4、R5およびR6は、独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである。
【0071】
項目4:式(III)で表される、項目1から3、5および6のいずれか一項に記載の化合物。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ酸素である。R3、R4、R5およびR6は、それぞれ水素である。
【0072】
項目5:式(III)で表される、項目1から4および6のいずれか一項に記載の化合物。R1は-C2H4-であり、R2は-CH2-である。
【0073】
項目6:化合物が式(IV)で表される、項目1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【0074】
項目7:項目1から6のいずれか一項に記載の化合物のいずれかを製造する方法であって、クロマトグラフィーを行わずに前記化合物を精製するステップを含む、方法。
【0075】
項目8:モノマー単位の複数の繰り返し単位(n)を含む、ポリマー。各モノマー単位は、独立して、1つ以上のアミドまたはチオアミド基を含み、1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含み、nは10~200の整数である。ポリマーは、存在してもよいコモノマー単位の複数の繰り返し単位(m)であって、mが0~100の整数であり、n>mである、繰り返し単位(m)を含む。ポリマーは、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の少なくとも一部を含む。ポリマーは、1気圧で水溶液中に存在する場合、約1℃~約100℃の上限臨界溶液温度を示すように構成されている。
【0076】
項目9:モノマー単位が式(V)で表される、項目8および10から14のいずれか一項に記載のポリマー。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ独立して酸素または硫黄である。R1は、アルキルまたはハロアルキルである。R2およびR3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである。
【0077】
項目10:モノマー単位が式(V)で表される、項目8、9および11から14のいずれか一項に記載のポリマー。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ酸素である。R4、R5、R6およびR7は、それぞれ水素である。
【0078】
項目11:前記上限臨界溶液温度が、0超~約160mMのナトリウムイオン濃度を有する水溶液中におけるものである、項目8から10および12から14のいずれか一項に記載のポリマー。
【0079】
項目12:三重検出によって決定される数平均分子量(Mn)が、約7,000Da~約40,000Daである、項目8から11、13および14のいずれか一項に記載のポリマー。
【0080】
項目13:三重検出によって決定される多分散度が、約1.0~約1.3である、項目8から12および14のいずれか一項に記載のポリマー。
【0081】
項目14:前記ポリマーが、前記水溶液中に存在する場合、約5℃~約60℃の前記上限臨界溶液温度を示すように構成されている、項目8から13のいずれか一項に記載のポリマー。
【0082】
項目15:モノマー単位の複数の繰り返し単位(n)と、コモノマー単位の複数の繰り返し単位(m)とを含む、コポリマー。各モノマー単位は、独立して、1つ以上のアミドまたはチオアミド基および1つ以上のウレイドまたはチオウレイド基を含み、nは10~200の整数である。各コモノマー単位は、疎水性コモノマー、親水性コモノマー、pH応答性コモノマー、光応答性コモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され、mは1~100の整数であり、n>mである。コポリマーは、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)剤の少なくとも一部を含む。コポリマーは、1気圧で水溶液中で、約1℃~約100℃の上限臨界溶液温度を示すように構成されている。
【0083】
項目16:前記モノマー単位が式(V)で表される、項目15および17から24のいずれか一項に記載のコポリマー。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ独立して酸素または硫黄である。R1は、アルキルまたはハロアルキルである。R2およびR3は、独立してアルキレンまたはハロアルキレンである。R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して水素、アルキルまたはハロアルキルである。
【0084】
項目17:モノマー単位が式(V)で表される、項目15、16および18から24のいずれか一項に記載のコポリマー。Q1、Q2、Q3およびQ4は、それぞれ酸素である。R4、R5、R6およびR7は、それぞれ水素である。
【0085】
項目18:複数の前記コモノマー単位が疎水性コモノマー単位である、項目15から17および19から24のいずれか一項に記載のコポリマー。
【0086】
項目19:複数の前記コモノマー単位が、UCSTを低下させる疎水性コモノマー単位である、項目15から18および20から24のいずれか一項に記載のコポリマー。
【0087】
項目20:前記コモノマー単位が式(VII)で表される、項目15から19および21から24のいずれか一項に記載のコポリマー。Q1およびQ2は、それぞれ独立して酸素または硫黄である。R1およびR2は、それぞれ独立してアルキルまたはハロアルキルである。
【0088】
項目21:前記コモノマー単位が式(VII)で表される、項目15から20、22および23のいずれか一項に記載のコポリマー。Q1およびQ2は、それぞれ酸素である。
【0089】
項目22:前記上限臨界溶液温度が、0超~約160mMのナトリウムイオン濃度を有する水溶液中におけるものである、項目15から21および23のいずれか一項に記載のコポリマー。
【0090】
項目23:前記コポリマーが、前記水溶液中に存在する場合、約5℃~約60℃の前記上限臨界溶液温度を示すように構成されている、項目15から22のいずれか一項に記載のコポリマー。
【実施例】
【0091】
以下は、ポリウレイドアミドホモポリマーまたはコポリマーの製造の様々な態様を説明するための実施例である。これらの実施例は、特許請求の範囲に具体的に記載されていない限り、特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0092】
実施例1:2-(メタクリロイルオキシ)エチルウレイドグリシンアミド(MEGA)の合成
ウレイドアミドモノマー化合物であるMEGAの合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例として、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrichから入手可能なグリシンアミド塩酸塩(20g、18.1mmol)および炭酸カリウム(50g、36.2mmol)を200mLの乾燥DMFに加え、2時間撹拌した。アルゴン環境を維持するために、セプタムを通して針を接続した。次いで、混合物を氷浴に移し、撹拌しながら10分間保持した。次いで、ミズーリ州セントルイスのSigma-Aldrichから入手可能な2-イソシアナトエチルメタクリレート(30.9g、20mmol)を滴下した。2-イソシアナトエチルメタクリレートの添加が完了した後、氷浴を除去し、反応混合物を室温で約16時間撹拌した。反応の進行は、溶離液DCM/MeOH(9/1、V/V)を使用して、薄層クロマトグラフィーによる確認によってモニターした。次いで、粗混合物を大過剰の熱したアセトン(40℃)に加え、30分間撹拌した。次いで、アセトン混合物をろ過して塩不純物を除去した。ろ過したアセトン混合物を、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発させてアセトンを除去した。残った固体を大過剰の冷却したエーテル(-20℃)に加え、冷凍庫で数時間保持した。このエーテル混合物をろ過し、固体を乾燥させてすべての溶媒を除去した。粗固体を100mLのアセトンに加え、40℃で15分間振とうした。可溶性画分を回収し、不溶性画分を追加の100mLのアセトンに加えた。このプロセスを少なくとも3回繰り返した。可溶性画分を合わせて蒸発させてアセトンの量を減らし、約200mLの溶液が残るようにする。残りの溶液は再結晶のために冷凍庫で保持した。再結晶した固体をろ過し、高真空下で一晩乾燥させた。この合成は、反応スキーム(I)で表される。
【化11】
【0093】
乾燥した固体を1Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)に基づいて分析した。すべてのNMRスペクトルは、重水素化DMSOを使用してBruker 500MHz分光計で記録した。
【0094】
実施例2:ベンジル末端シアノRAFT剤の合成
ベンジル末端シアノRAFT剤の合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例は、ジスルフィドの合成、ベンジル末端開始剤の合成、およびジスルフィドとベンジル末端開始剤との反応によるベンジル末端シアノRAFT剤の形成を含む。
【0095】
ジスルフィドの合成の一例は、ビス(ブチルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドの合成である。合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例は、1-ブタンチオール(18g、0.2mol)を水酸化カリウム(14g、0.25mol)の水(70mL)溶液に滴下し、30分間撹拌させることを含む。次いで、二硫化炭素(31g、0.4mol)を反応物に加え、さらに40分間撹拌した。p-トシルクロリド(19g、0.1mol)のアセトン(110mL)溶液を何回かに分けて反応物に加え、反応物を2時間撹拌した。溶媒を減圧下で濃縮してから得られた残留物をCH
2Cl
2(100mL)に再溶解し、水(3×100mL)で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。生成物の精製をフラッシュカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)により行い、ジスルフィド中間体を赤色の油として得た。この合成は、反応スキーム(II)で表される。
【化12】
【0096】
ベンジル末端開始剤の合成の一例は、ACVA-ベンジルの合成である。合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例として、ベンジルアルコール、DCCおよびDMAPを乾燥THF(200mL)に溶解した。溶液を撹拌して0℃に冷却し、次いでACVA(4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸))(乾燥THF 50mL中10.0g)の溶液を滴下した。混合物を0℃でさらに30分間、次いで周囲温度で一晩撹拌した。塩をろ過により除去し、揮発性物質を減圧下で除去し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)により精製して、白色の固体を得た。この合成は、反応スキーム(III)で表される。
【化13】
【0097】
ベンジル末端シアノRAFT剤の合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例は、ジスルフィド、すなわちビス(ブチルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィドと、ベンジル末端開始剤、例えばACVA-ベンジルとの反応を含む。ビス(ブチルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド(1.5g、4.5mmol)およびACVA-ベンジル(1.5g、5.4mmol)の酢酸エチル(20mL)溶液を20時間加熱還流した。溶媒を回転蒸発により除去した。粗生成物を、溶離液:ヘキサン/酢酸エチル(1/1)を使用してカラムクロマトグラフィーにより精製して、ベンジル末端シアノRAFT剤を黄色の油として得た。この合成は、反応スキーム(IV)で表される。
【化14】
生成物を、
1Hおよび
13C核磁気共鳴(NMR)に基づいて測定した。すべてのNMRスペクトルは、重水素化クロロホルムを使用してBruker 500MHz分光計で記録した。
【0098】
実施例3:RAFT重合によるポリ(MEGA)およびポリ(MEGA)-コ-ポリ(BMA)の合成
MEGAホモポリマーおよびコポリマーの合成には様々な変形例および代替例があり得るが、合成の一例は、RAFTプロセスを含む。表1に示すように、疎水性モノマー(例えば、n-ブチルメタクリレート(BMA))の比率が異なるMEGAのホモポリマー(実施例A)およびコポリマー(実施例B~E)を合成した。
【0099】
【0100】
ベンジル末端シアノRAFT(8.5×10
-3g、22.3×10
-3mmol)、様々な比率のMEGA(100~60mol当量)とBMA(0~40mol当量)およびAIBN(0.73×10
-3g、4.5×10
-3mmol)を、マグネチックスターラーバーを備えた5つの異なるバイアル中の1.5mLのDMSOに溶解した。混合物をアルゴンで40分間パージして脱酸素し、次いで70℃に4時間加熱した。氷浴中、0℃まで冷却することにより反応を停止し、空気にさらした。NMRによって変換率を確認するためにアリコートを採取した。粗ポリマー溶液を大量のアセトン/メタノール(9/1、v/v)に沈殿させた(1mLのDMSOポリマー混合物の場合、約50mLの溶媒を使用した)。沈殿した溶液を少なくとも1時間撹拌し、次いでろ過した。次いで、ポリマーを大過剰のアセトン(1gのポリマー、50mLの溶媒)に分散させ、少なくとも1時間撹拌した。このプロセスをもう一度繰り返して、溶媒および未反応のモノマーを完全に除去した。ポリマーをろ過し、高真空下で一晩乾燥させて、黄色の固体生成物を得た。この合成は、反応スキーム(V)で表される。
【化15】
【0101】
乾燥した固体を
1H核磁気共鳴(NMR)に基づいて測定した。NMRスペクトルは、重水素化DMSOを使用してBruker 400MHz分光計で記録した。特定の態様による、MEGAとBMAとの繰り返し単位の比が約89:18である、MEGAのモノマーとBMAのコモノマーとのポリマーの
1H NMRスペクトルを
図1に示す。溶媒の水素ピーク(*)、RAFT剤の一部の水素ピーク(a~b)、BMAコモノマーの水素ピーク(c~e)およびMEGAモノマーの水素ピーク(f~j)を
図1に示す。
【0102】
MEGAおよびBMAのポリマーへの変換率は、
1H NMRスペクトルデータ(例えば、
図1)を使用して次のように計算した:変換率=[(ポリマーのNH
2ピーク(a)の合計)/(ポリマーのピークとモノマーのピークとの合計)]×100%。
【0103】
ポリマーへのMEGAの繰り返し単位は、
1H NMRスペクトルデータ(例えば、
図1)を使用して次のように計算した:(ポリマーのNH
2ピーク(j)の合計)/(参照ピークとしてのベンジルCH
2プロトン(b))。
【0104】
ポリマーへのBMAの繰り返し単位は、
1H NMRスペクトルデータ(例えば、
図1)を使用して次のように計算した:(3.9ppmでの(c)ピークと(f)ピークとの合計-3.6ppmでの(i)ピークの合計)/2。
【0105】
ポリMEGAホモポリマーおよびコポリマーの数平均分子量(M
n)は、鎖末端のベンジルCH
2プロトン(b)のNMRスペクトルデータを参照として(例えば、
図1におけるように)使用して次のように計算した:Mn=(繰り返し単位×モノマーのMW)+(繰り返し単位×コモノマーのMW)+RAFT剤のMW。
【0106】
MEGAホモポリマーおよびコポリマーの数平均分子量(Mn)およびピーク分子量(Mp)も、三重検出GPCおよびRI検出法によって行った。
【0107】
MEGAホモポリマーおよびコポリマーのSECトレースを、0.03重量%のLiClを含む溶離液DMAc中で、較正のためのポリスチレン標準物質および屈折率検出器を使用して測定した。
【0108】
三重検出は、乾燥ポリマーを0.03重量%のLiClを含む溶離液DMAcに一晩溶解し、注入前に0.45μmのPTFEシリンジフィルターに通して調製した既知濃度のポリマー試料で行った。この溶液を、較正のためのポリスチレン標準物質および屈折率検出器を使用してろ過した。計算は、dn/dcおよびポリマー濃度に基づいていた。
【0109】
屈折率検出は、0.03重量%のLiClを含む溶離液DMAc中で測定されるように、較正のためのポリスチレン標準物質および屈折率検出器を使用してポリマー試料で行った。
【0110】
分子量データを表2に示す。
【0111】
【0112】
動的光散乱(DLS)分析をMEGAホモポリマーおよびコポリマーについて行い、UCSTを決定した。各乾燥ポリマー(15mg)を、70℃の水浴で0、50、100または150mmolのNaClを含む水のバイアル中で70℃の水浴で1.5mLのMilli-Q水に溶解した。バイアルは、測定前に少なくとも1時間水浴に保持した。各バイアルを使用して、キュベットをポリマー溶液で満たした。各キュベットをDLS装置内に設置した。各ポリマー溶液のZ平均粒径のDLS測定を、ポリマー溶液を70℃から1℃未満に冷却することにより、様々な温度で行った。温度に対するZ平均粒径をプロットした。UCSTは、低温から高温までのZ平均粒径の曲線がZ平均粒径0まで減少する温度である。様々なナトリウム濃度でのUCSTデータを表3に示す。
【0113】
【0114】
上述の記載は本開示の態様に関するものであるが、本開示の他の態様およびさらなる態様が、その基本的な範囲から逸脱することなく考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。