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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】徐放脂質組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/127 20250101AFI20250403BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20250403BHJP
   A61P 23/00 20060101ALI20250403BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20250403BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250403BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20250403BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20250403BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20250403BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
A61K9/127
A61P7/04
A61P23/00
A61P25/04
A61P29/00
A61K47/34
A61K31/445
A61K47/24
A61K47/28
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021577357
(86)(22)【出願日】2020-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 CN2020098417
(87)【国際公開番号】W WO2020259670
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】201910571807.3
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911390028.X
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519352757
【氏名又は名称】江▲蘇▼恒瑞医▲薬▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI PHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.7 KUNLUNSHAN ROAD, ECONOMIC AND TECHNOLOGICAL DEVELOPMENT ZONE, LIANYUNGANG, JIANGSU 222047, CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲同▼ 新勇
(72)【発明者】
【氏名】▲鄒▼ ▲愛▼峰
(72)【発明者】
【氏名】段 子▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】王 萍萍
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】何 ▲維▼
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513839(JP,A)
【文献】特表2010-507658(JP,A)
【文献】国際公開第2019/046293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00- 47/69
A61P 1/00- 43/00
A61K 31/33- 33/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥固体組成物を水和することにより得られるリポソーム組成物であって、
前記水和の操作が、前記固体組成物を水または水溶液と混合することを含み、
前記固体組成物は、
(1)少なくとも1つのホスファチドを含む脂質と、(2)薬物の遊離酸又は遊離塩基と、(3)前記薬物の薬学的に許容される塩、錯化合物又はキレートとを含み、
前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を実質的に含まない、リポソーム組成物。
【請求項2】
前記ホスファチドは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項3】
前記脂質は、ステロイドをさらに含む、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項4】
前記ステロイドはコレステロールであり、前記脂質のモル総量に対して、前記コレステロールのモルパーセントは、0.1%~90%である、請求項3に記載のリポソーム組成物。
【請求項5】
前記固体組成物の合計モル量に基づき、前記薬物の遊離酸又は遊離塩基と前記薬物の薬学的に許容される塩、錯化合物又はキレートとの合計の含有量は、1%~90%である、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項6】
前記薬物の遊離酸又は遊離塩基と前記薬物の薬学的に許容される塩、錯化合物又はキレートとのモル比は、0.01:1~100:1である、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項7】
前記薬物は、麻酔剤、止血剤、鎮痛薬又は非ステロイド系抗炎症剤からなる群から選ばれる、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項8】
前記固体組成物は、
(1)少なくとも1つのホスファチドを含む脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、とを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項9】
前記固体組成物は、
(1)少なくとも1つのホスファチジルコリン及びコレステロールを含む脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、とを含み、
前記ホスファチジルコリンとコレステロールとのモル比は、4:1~1:4であり、
前記遊離塩基とロピバカインの薬学的に許容される塩とのモル比は、9:1~1:9であって、
前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を実質的に含まない、請求項1に記載のリポソーム組成物。
【請求項10】
前記固体組成物は、水和された後に、リポソーム組成物を形成する、請求項1~9のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項11】
前記水和操作は、前記固体組成物を水又は水溶液と混合することによって実現される、請求項10に記載のリポソーム組成物。
【請求項12】
前記リポソーム組成物は、個体に投与した後、約3時間以内に薬物のピーク濃度に達する、請求項10に記載のリポソーム組成物。
【請求項13】
前記リポソーム組成物は、個体において12時間以上の薬物の持効放出を提供する、請求項10に記載のリポソーム組成物。
【請求項14】
固体組成物を製造するステップと、前記固体組成物を水和するステップとを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のリポソーム組成物の製造方法であって、
前記固体組成物を製造するステップは、(1)脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、前記薬物の薬学的に許容される塩、錯化合物又はキレート、液体媒体を混合するステップ、及び前記液体媒体を除去するステップ、又は(2)前記脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、塩化剤、液体媒体を混合するステップ、及び前記液体媒体を除去するステップを含み、
ここで、前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を実質的に含まない、リポソーム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年6月28日及び2019年12月30に中国で提出された中国特許出願番号がそれぞれCN201910571807.3及びCN201911390028.Xである中国特許出願の優先権を主張しており、同出願の内容の全ては、ここに参照として取り込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、製薬分野に属し、徐放脂質組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リポソームは、脂質ベシクルとも呼ばれ、水媒体を含む内部体積を含有する完全に閉鎖された脂質二重層膜である。脂質二重層は、一般に、ホスファチド、例えば、レシチンと関連する材料、例えば糖脂質からなる。脂質二重層膜は、一般に、細胞膜と類似した方式として機能する。従って、これらは、ある生体特性、例えば、生細胞環境内に受け入れられやすい能力を示している。そのため、近年、患者に特別な生物学的又は薬学的特性を有する化合物を送達するベクターとしてリポソームを利用することへの関心が高まっている。
【0004】
リポソームは、構造に含まれる二重層ホスファチド膜層数によって、単層リポソームと多層リポソームに分けることができる。単層二重層ホスファチド膜を含有するベシクルは、単層リポソームと呼ばれ、多層二重層ホスファチド膜を含有するベシクルは、多層リポソーム(multilamellar vesicle、MLV)と呼ばれる。単層リポソームはまた、小型単層リポソーム(small unilamellar vesicular、SUV)と大型単層リポソーム(1arge unilamellar vesicular、LUV)に分けられる。多層リポソームは、二層脂質膜が水と交互に形成されたタマネギ状構造のベシクルであり、複数層の同心片層からなるのが一般的であり、局所又は全身的な薬物送達のための脂質マトリクスの徐放性薬物ベクターとして機能することができる。多層リポソームの製造方法としては、一般に、逆相蒸発法、薄膜水和法、凍結乾燥法などが挙げられる。
【0005】
近年、リポソームはその徐放性薬物ベクターの特性から薬物開発に広く応用されている。しかし、リポソームが体内に送達された後に、初期段階で放出される薬物が不足しているため、リポソームの投与初期の治療効果は良くない。現在、リポソームの初期放出を改善した方法がいくつか存在している。WO2019046293には、ヒスチジンなど緩衝液系水と高被包の脂質構造(HELS)を用いてMLVを製造し、部分的に被包されたリポソーム組成物を得る持効放出麻酔剤組成物を送達するMLVの製造方法が開示されている。CN1893926Bには、最終製剤に薬物の遊離酸又は遊離塩基としての30~40%のフェンタニル及び被包部分に存在する余剰物(70~60%)を含むフェンタニル及び脂質を含む有機相を水相と混合してMLVを製造することが開示されている。CN104666248Aには、シプロフロキサシンを被包したリポソームと、被包しないシプロフロキサシン溶液とを混合することによって、即時放出モードと持効放出モードとの二重作用の吸入用シプロフロキサシン製剤を製造することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2019046293号
【文献】中国特許公告第1893926号
【文献】中国特許公開第104666248号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、リポソームの放出特性を改善する改良されたリポソーム薬物組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一方面によれば、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)薬物の遊離酸又は遊離塩基と、(3)薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート、好ましくは薬物の薬学的に許容される塩とを含む固体組成物を提供する。
【0009】
前記薬物の遊離酸又は遊離塩基は、薬物の塩形態などに相対するバルク形態で存在する薬物活性成分である。
【0010】
前記薬物の薬学的に許容される塩は、薬物の酸性塩又は塩基性塩であってもよい。いくつかの薬物の遊離酸は、例えば有機酸又は無機酸と酸性塩を形成することができる。適切な薬物の酸性塩は、薬物の酢酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルフォン酸塩、臭化水素酸塩、カンファースルホン酸塩、塩酸塩、クエン酸塩、エチレンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヨウ化水素酸塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ガラクチュロン酸塩、ドデシル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフトエ酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩などを含むが、それらに限らない。いくつかの薬物の遊離塩基は、例えば無機塩基、有機塩基、無機塩又は有機塩などと塩基性塩を形成することができる。適切な薬物の塩基性塩は、薬物のベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエタノールアミン塩、ジエチルアミン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、ピペラジン塩、カリウム塩、銀塩、ナトリウム塩、トロメタモール塩、亜鉛塩などを含むが、それらに限らない。
【0011】
本開示に記載の固体組成物は、例えば、粉末、顆粒、又は一緒に塊状化されたケーキ状又は塊状物であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、乾燥の固体組成物である。前記組成物を乾燥させる方法は、蒸発、凍結乾燥又は噴霧乾燥などを含むが、それらに限らない。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、水和された後に、リポソーム組成物、好ましくは多層リポソーム(MLV)を含むリポソーム組成物を形成することができる。いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物には、SUV又はLUVなどの他のリポソーム形態も存在することができる。いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、主として、MLVの形態で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を実質的に含まず、好ましくは前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を含まない。いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、リポソームを形成していない。
【0015】
前記水和操作は、一般に、固体組成物を水又は水溶液と混合することによって実現される。いくつかの実施形態では、前記水溶液は、等張溶液又は緩衝液を含むが、それらに限らない。前記等張溶液は、ヒト血液と実質的に同じ浸透圧を有する溶液であり、等張剤及び水から調製されることができる。前記等張剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ブドウ糖、キシリトール、ソルビトールを含む。前記緩衝液は、緩衝した溶液であり、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化を阻止する。一実施形態では、本開示の緩衝液のpH範囲は、約4.5ないし約8.5である。pHをこの範囲内に制御可能な緩衝液の例は、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、炭酸塩、PBS、HEPES又は他の有機酸緩衝液を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記水和操作は、固体組成物を水又は等張溶液と混合することによって実現される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記水和後に形成されたリポソーム組成物は、個体に投与した後、約3時間以内に薬物のピーク濃度(Cmax)、例えば約2時間以内に薬物のピーク濃度(Cmax)に達し、好ましくは約1.5時間以内に薬物のピーク濃度に達し、より好ましくは約1時間以内に薬物のピーク濃度に達し、最も好ましくは約45分以内に薬物のピーク濃度に達することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記水和後に形成されたリポソーム組成物は、個体において12時間以上の薬物の持効放出を提供し、好ましくは24時間以上の薬物の持効放出を提供し、より好ましくは48時間以上の薬物の持効放出を提供し、最も好ましくは72時間以上の薬物の持効放出を提供する。
【0019】
本開示に記載の脂質は、完全に中性又は負電荷付きのホスファチドを含むことができる。用語「ホスファチド」は、天然又は合成された少なくとも1つのリン基を含有する疎水性分子を意味する。例えば、ホスファチドは、リン含有基及び場合によりOH、COOH、オキソ、アミン又は置換又は未置換のアリール基置換の飽和又は未飽和のアルキルを含むことができる。ホスファチド類は、その非環式(acylic)鎖の長さと未飽和度の面で互いに異なる。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記ホスファチドは、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトールのうちの1つ又は複数を含む。用語「ホスファチジルコリン」は、ホスファチジルコリン及びその誘導体を意味する。本開示に使用するのに適したホスファチドとしては、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(PLPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、卵黄ホスファチジルコリン(EPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、l-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(MPPC)、l-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(PMPC)、l-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(PSPC)、l-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(SPPC)、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン(POPC)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルグリセロールリン酸グリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、1,2-ジオレイル-sn-グリセロール-3-ホスファチジルセリン(DOPS)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、1,2-ジオレイル-sn-グリセロール-3-ホスファチジン酸(DOPA)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、1,2-ジオレイル-sn-グリセロール-3-ホスファチジルイノシトール(DOPI)、ジミリストイル基ホスファチジルイノシトール(DMPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)のうちの1つ又は複数が挙げられる。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のホスファチドは、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)及びジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)のうちの1つ又は複数から選ばれる。
【0022】
本開示は、他の中性脂質、陽イオン脂質及び/又は陰イオン脂質をさらに含むことができる。
【0023】
本開示に使用可能な他の中性脂質としては、例えば、ステロイド、例えばコレステロール及びその誘導体、レシチン、大豆レシチン、セファリン、スフィンゴミエリン、水素化大豆レシチンのうちの1つ又は複数が挙げられる。いくつかの実施形態では、総脂質混合物の量に対して、ステロイドのモルパーセントは90%を超えない。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記脂質は、少なくとも1つのホスファチド及びコレステロールを含む。総脂質混合物の量に対して、コレステロールのモルパーセントは、0.1%~90%であり、好ましくは10%~80%であり、より好ましくは20%~70%であってもよい。
【0025】
固体組成物の総モル数に基づき、前記脂質のモル含有量は、10%~99%であり、好ましくは20%~70%であってもよい。
【0026】
本開示に記載の「薬物」は、予防、診断、治療又は疾患治癒、痛み緩和、又は任意のヒト又は動物の任意の生理又は病理不調を管理又は改善するために使用可能な任意の化合物を意味する。薬物は、薬物の遊離酸又は遊離塩基形態、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート形態など、様々な形態で存在することができる。本開示に記載の薬物は、その全ての存在可能な形態を含む。薬物のタイプは、抗腫瘍薬、抗生物質、抗高血圧薬、血糖降下薬、抗高脂血剤、抗てんかん剤、抗うつ薬、制吐剤、抗ヒスタミン剤、抗振戦麻痺薬、抗精神病薬、抗不安剤、勃起機能障害用の薬物、片頭痛用の薬物、アルコール中毒治療用の薬物、止血剤、筋弛緩薬、非ステロイド系抗炎症剤、麻酔剤、鎮痛薬及びステロイド系抗炎症剤などを含むが、それらに限らない。
【0027】
抗生物質は、セフメタゾール、セファゾリン、セファロスポリン、セフォキシチン、セファアセトニトリル、セファロスポリンIII、セファロスポリンII、セファロスポリンc、セファロチン、セファマイシンa、セファマイシンb、セファマイシンc、セファロスポリウム、アンピシリン、アモキシシリン、ヘタシリン、カルフェシリン、カリンダシリン、カルベニシリン、ペニシリン、アジドシリン、ベンジルペニシリン、クロメトシリン、クロキサシリン、シクラシリン、メチシリン、ナフシリン、2-ペンテンペニシリン、ペニシリンn、ペニシリンo、ペニシリンs、ペニシリンv、クロロペニシリン、ジフルシリン、ジフェニルペニシリン、ヘプチルペニシリン及びメタムピシリンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0028】
抗てんかん剤は、4-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸、エチレンスルホン酸エステル、ガバペンチン及びアミノヘキセン酸など、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0029】
抗うつ薬は、アミトリプチリン、アモキサピン、ベンモキシン、ブトリプチリン、クロミプラミン、デシプラミン、ドスレピン、シネクアン、イミプラミン、ロフェプラミン、メジフォキサミン、ミアンセリン、マプロチリン、ミルタザピン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、トリミパラミン、ビロキサジン、シタロプラム、コチニン、デュロキセチン、フルオキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン、ニソキセチン、パロキセチン、レボキセチン、セルトラリン、チアネプチン、アセチルパーフェナジン(acetaphenazine)、ビネダリン、ブロファロミン、ベンゼンプロパノール、クロボキサミン、イプロニアジド、イソカルボキサジド、モクロベミド、フェニルヒドラジン(phenyhydrazine)、フェネルジン、セレギリン、シブトラミン、トラニルシプロミン、アデノシルメチオニン、アドラフィニル、アメセルギド、アミスルプリド、アンペロジド、ベナクチジン、ブプロピオン、カロキサゾン、ジェピロン、イダゾキサン、メトラリンドール、ミルナシプラン、ミルナシプラン、ネファゾドン、ノミフェンシン、リタンセリン、ロキシインドール、S-アデノシルメチオニン、トフェナシン、トラゾドン、トリプトファン、ベンラファキシン及びザロスピロンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0030】
制吐剤は、アリザプリド、アザセトロン、ベンズキナミド、ブロモプリド、ブクリジン、クロルプロマジン、シンナリジン、クレボプリド、サイクリジン、ジフェンヒドラミン、ジフェニドール、ドラセトロンメタンスルホン酸塩、ジピリダモル、グラニセトロン、スコポラミン、ロラゼパム、メトクロプラミド、イソニペコタミド、オンダンセトロン、ペルフェナジン、プロメタジン、プロクロルペラジン、スコポラミン、ホセチル、トリフロペラジン、トリフルプロマジン、トリメトベンザミド、トロピセトロン、ドンペリドン及びパロノセトロンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0031】
抗ヒスタミン剤は、アザタジン、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デクスメデトミジン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、ヒドロキシジン、セチリジン、フェキソフェナジン、ロラタジン及びプロメタジンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0032】
抗振戦麻痺薬は、アマンタジン、バクロフェン、ビペリデン、ベンズトロピン、オルフェナドリン、プロサイクリジン、トリヘキシフェニジル、レボドパ、カルビドパ、セレギリン、セレギリン、アポモルヒネ、ベンセラジド、ブロモクリプチン、ブジピン、カベルゴリン、ジヒドロエルゴクリプチン、エリプロジル、リバスチグミン、エルゴリン、ガランタミン、ラザベミド、リスリド、マジンドール、メマンチン、モフェジリン、ペルゴリド、プラミペキソール、プロペントフィリン、ラサギリン、レマセミド、テルグリド、エンタカポン及びトルカポンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0033】
抗精神病薬は、アセトフェナジン、アリザプリド、アリピプラゾール、アンペロジド、ベンペリドール、ベンズキナミド、ブロムペリドール、ブラメート、ブタペラジン、カルフェナジン、カルピプラミン、クロルプロマジン、クロルプロチキセン、クロカプラミン、クロマクラン、クロペンチキソール、クロスピラジン、クロチアピン、シアメマジン、ジピリダモル、フルペンチキソール、フルフェナジン、フルスピリレン、ハロペリドール、メソリダジン、メトフェナザート、ペンフルリドール、プロペリシアジン、ペルフェナジン、ピモジド、ピパムペロン、ピペラセタジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、リモキプライド、セルチンドル、スピペロン、スルピリド、チオリダジン、チオチキセン、トリフルペリドール、トリフルプロマジン、トリフロペラジン、ジプラシドン、ゾテピン、ズクロペンチキソール、アミスルプリド、ブタクラモール、クロザピン、メルペロン、オランザピン、クエチアピン及びリスペリドンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0034】
抗不安剤は、メクロクワロン、デクスメデトミジン、デクスメデトミジン、メトミダート、アジナゾラム、クロリダゼポキシド、クロベンゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、ロプラゾラム、ミダゾラム、ビベグロン、アプレピタント、アルサーオキシロン、アムフェニドン、アザシクロノール、ブロムラール、ブスピロン、カプトジアミン、バレルアミド、ジメチルビスアミド、カーブロマール、クロラールベタイン、エンシプラジン、フレシノキサン、イキサベピロン、レソピトロン、ラキソピン、メタクワロン、プロプラノロール、タンドスピロン、トラキサノクス、ゾピクロン及びゾルピデムなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0035】
勃起機能障害用の薬物は、タダラフィル、シルデナフィル、バルデナフィル、アポモルヒネ、アポモルヒネジアセテート、フェントラミン及びヨヒンビンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0036】
止血剤は、トロンビン、ビタミンK1、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、ルチン及びヘスペリジンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0037】
片頭痛用の薬物は、アルモトリプタン、コデイン、ジヒドロエルゴタミン、エルゴタミン、エレトリプタン、フロバトリプタン、イソメテプテナム、リドカイン、リスリド、メトクロプラミド、ナラトリプタン、オキシコドン、プロポキシフェン、リザトリプタン、スマトリプタン、トルフェナム酸、ゾルミトリプタン、アミトリプチリン、アテノロール、クロニジン、シプロヘプタジン、ジルチアゼム、シネクアン、フルオキセチン、リシノプリル、メチセルギド、メトプロロール、ナドロール、ノルトリプチリン、パロキセチン、ピゾチフェン、ピゾチフェン、プロプラノロール、プロトリプチリン、セルトラリン、チモロール及びベラパミルなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0038】
アルコール中毒治療用の薬物は、アカンプロサート、ナロキソン、ナルトレキソン及びジスルフィラムなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0039】
筋弛緩薬は、バクロフェン、シクロベンザプリン、オルフェナドリン、キニン、アトラクリウム、ロクロニウム臭化物、スキサメトニウム、臭化チオトロピウム、臭化ラパクロニウム、臭化ベクロニウム、パンクロニウム及びチザニジンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0040】
麻酔剤は、アンブカイン、アモラノン、アミロカイン、オキシブプロカイン、ベンゾカイン、ベトキシカイン、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタムベン、ブタムベンピクリン酸塩、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジフェニルヒドロキシルアミン、ダイクロニン、エクゴニジン、エクゴニン、クロロエタン、エチドカイン、β-オイカイン、ヘキシルカイン、クロロプロカイン、ヒドロキシプロカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブカイン、4‐アミノ安息香酸ブチル、ケトカイン、ロイシノカイン、レボキサドロール、メピバカイン、アミロカイン、アムブカイン、メタブテタミン、ミルテカイン、オクタカイン、オルトカイン、オクスエタザイン、パルエトキシカイン、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ラウロマクロゴール400、プラモカイン、プリロカイン、プロカイン、プリマカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、プセウドコカイン、ピロカイン、ロピバカイン、サリゲニン、テトラカイン、トリカイン、トリメカインなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0041】
鎮痛薬は、アルフェンタニル、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベンジルモルフィン、べジトラミド、ブプレノフィン、ブトルファノール、クロニタゼン、コデイン、サイクラゾシン、デソモルヒネ、デキストロモラミド、デキストロプロポキシフェン、デゾシン、ジアムプロミド、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルヒネ、ジメノキサドール、ジメフェプタノール、ジメチルチアムブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアムブテン、エチルモルヒネ、エトニタゼン、フェンタニル、ヘロイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ヒドロキシペチジン、イソメタドン、ケトベミドン、レバロルファン、レボルファノール、レボフェナシルモルファン、ロフェンタニル、ペチジン、メプタジノル、メタゾシン、メタドン、メトポン、モルヒネ、ミロフィン、ナルブフィン、ナロルフィン、ナルセイン、ニコモルヒネ、ノルレボルファノール、ノルメタドン、ノルモルヒネ、ノルピパノン、アヘン、オキシコドン、オキシモルフォン、パパベルタム、ペンタゾシン、フェナドキソン、フェナゾシン、フェノモルファン、フェノペリジン、ビミノジン、ピリトラミド、プロフェプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロピラム、プロピルフェニルエーテル、スフェンタニル、チリジン、トラマドールなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0042】
ステロイド系抗炎症剤は、アルクロメタソン、アムシノニド、ベタメタソン、ベタメタソン17-ペンタン酸塩、クルベタゾール、クロベタゾールプロピオネート、クロコルトロン、コルチゾン、デヒドロテストステロン、デスオキシコルチコステロン、デソナイド、デキサメタソン、デキサメタソン、デキサメタソン21-イソニコチン酸塩、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルメトロン、フルオシノニド、フルチカゾン、ハロシアニド、ウロベタゾール、水素化コルチゾン、水素化コルチゾン酢酸エステル、水素化コルチゾンシクロペンタンプロパン酸エステル、水素化コルチゾンヘミコハク酸エステル、水素化コルチゾン21-リジンエステル、水素化コルチゾンコハク酸エステル、イソフルプレドン、イソフラプレドン酢酸エステル、メチルプレドニソロン、メチルプレドニソロン酢酸エステル、メチルプレドニソロンコハク酸ナトリウム、メチルプレドニソロン、モメタゾン、プレドニカルベート、プレドニゾロン、プレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾロンヘミコハク酸エステル、プレドニゾロンリン酸ナトリウム、プレドニゾロンコハク酸ナトリウム、プレドニゾロンペンタン酸エステル-酢酸エステル、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0043】
非ステロイド系抗炎症剤は、サリチル酸誘導体(例えばサリチル酸、アセチルサリチル酸、サリチル酸メチルエステル、ジフルニサル、オルサラジン、サルサラート、スルファサラジンなど)、インドリル及びインデン酢酸(例えばインドメタシン、エトドラク、スリンダクなど)、フェナマート(例えばメクロフェナム酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸及びトルフェナム酸など)、ヘテロアリル基酢酸(例えばアセメタシン酸、アルクロフェナク酸、クリダナク酸、ジクロフェナク酸、フェンクロフェナク酸、フェンチアザク酸、フロフェナク酸、イブフェナク酸、イソキセパク酸、ケトロラック、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、ゾメピラクなど)、アリール基酢酸及びプロピオン酸誘導体(例えばアルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキサン酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドリルプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、チオキサプロフェンなど)、グルシン酸(例えばキシカム誘導体アンピロキシカム、シノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、サドキシカム及びテノキシカム、及びピラゾロン誘導体アミノピリン、アンチピリン、アパゾン、アナルギン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾンなど)、パラアミノフェノール誘導体(例えばアセトアミノフェンなど)、アルカノン(例えばナブメトンなど)、ニメスリド、プロキナゾンなど、及びその組み合わせを含むが、それらに限らない。
【0044】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、麻酔剤、止血剤、鎮痛薬又は非ステロイド系抗炎症剤であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、前記薬物は、ブピバカイン、ロピバカイン、ブトルファノール、デクスメデトミジン、トラネキサム酸などであってもよい。薬物の遊離酸又は遊離塩基は、ブピバカイン遊離塩基、ロピバカイン遊離塩基、ブトルファノール遊離塩基、デクスメデトミジン遊離塩基、トラネキサム酸などであってもよい。対応する薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート錯体は、ブピバカインの薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート(例えば塩酸ブピバカイン)、ロピバカインの薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート(例えば塩酸ロピバカイン)、ブトルファノールの薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート(例えば酒石酸ブトルファノール)、デクスメデトミジンの薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート(例えば塩酸デクスメデトミジン)、トラネキサム酸の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートなどであってもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示の適切な薬物は、logP値が約1.0(即ち、オクタノール/水の分配係数は10よりも大きい)よりも大きいものを含む。例えば、報道によれば、logP値が3.16であるロピバカイン、logP値が3.69であるブピバカイン、logP値が3.68であるブトルファノール、logP値が4.25であるフェンタニル、logP値が2.37であるオンダンセトロン、logP値が1.05であるスマトリプタンなどを含むことができる。
【0047】
固体組成物の総モル数に基づき、前記薬物(薬物の遊離酸又は遊離塩基+薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート)のモル含有量は、1%~90%であり、好ましくは30%~90%であり、より好ましくは30%~80%であってもよい。
【0048】
前記薬物の遊離酸又は遊離塩基と薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートとの重量比は、実際に必要な治療効果に応じて調整することができる。いくつかの実施形態では、前記薬物の遊離酸又は遊離塩基と薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートとのモル比は、0.01:1~100:1であり、好ましくは1:9~9:1であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸ロピバカインとを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ブピバカイン遊離塩基と、(3)ブピバカインの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸ブピバカインとを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ブトルファノール遊離塩基と、(3)ブトルファノールの薬学的に許容される塩、好ましくは酒石酸ブトルファノールとを含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)デクスメデトミジン遊離塩基と、(3)デクスメデトミジンの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸デクスメデトミジンとを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)トラネキサム酸遊離酸又は遊離塩基と、(3)トラネキサム酸の薬学的に許容される塩とを含む。
【0054】
リポソームの粒径は、多層リポソームの常規粒径であってもよい。いくつかの実施形態では、前記リポソームの粒径d(0.1)は、0.5μmよりも大きく、例えば1μmよりも大きくあり得る。いくつかの実施形態では、前記リポソームの粒径d(0.5)は、1μmよりも大きく、例えば5μmよりも大きく、例えば10μmよりも大きくあり得る。いくつかの実施形態では、前記リポソームの粒径d(0.9)は、1μmよりも大きく、例えば10μmよりも大きく、例えば15μmよりも大きく、例えば20μmよりも大きくあり得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸ロピバカインとを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、水和された後に、多層リポソーム(MLV)を含むリポソーム組成物を形成することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記脂質は、少なくとも1つのホスファチジルコリン及びコレステロールを含む。前記ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジエルカホスファチジルコリン(DEPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)及びジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)のうちの1つ又は複数から選ばれる。前記ホスファチジルコリンとコレステロールとのモル比は、1000:1~1:9であり、好ましくは4:1~1:4であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、固体組成物の総モル数に基づき、前記ロピバカイン(遊離塩基+ロピバカインの薬学的に許容される塩)のモル含有量は、1%~90%であり、好ましくは30%~90%であり、より好ましくは30%~80%であってもよい。前記遊離塩基とロピバカインの薬学的に許容される塩とのモル比は、1:0.01~0.01:1であり、好ましくは9:1~1:9であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチジルコリン及びコレステロールを含む(1)脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸ロピバカインとを含み、そのうち、
前記ホスファチジルコリンとコレステロールとのモル比は、4:1~1:4であり、
前記遊離塩基とロピバカインの薬学的に許容される塩とのモル比は、9:1~1:9であり、
好ましくは前記固体組成物は、脂質ベシクル構造を実質的に含まない。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、水和された後に、リポソーム組成物、好ましくは多層リポソームを含むリポソーム組成物を形成することができる。いくつかの実施形態では、前記ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジルコイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DEPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)及びジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)から選ばれる。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ブトルファノール遊離塩基と、(3)ブトルファノールの薬学的に許容される塩、好ましくは酒石酸ブトルファノールとを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、水和された後に、多層リポソーム(MLV)を含むリポソーム組成物を形成することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、前記脂質は、少なくとも1つのホスファチジルコリン及びコレステロールを含む。前記ホスファチジルコリンは、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジエルカホスファチジルコリン(DEPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)及びジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)のうちの1つ又は複数、好ましくはジミリストイルホスファチジルコリンから選ばれる。前記ホスファチジルコリンとコレステロールとのモル比は、1000:1~1:9、好ましくは4:1~1:4であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、固体組成物の総モル数に基づき、前記ブトルファノール(遊離塩基+ブトルファノールの薬学的に許容される塩)のモル含有量は、1%~90%、好ましくは30%~90%であり、より好ましくは30%~80%であってもよい。前記遊離塩基とブトルファノールの薬学的に許容される塩とのモル比は、1:0.01~0.01:1であり、好ましくは9:1~1:9であってもよい。
【0065】
本開示は、脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート、液体媒体を混合するステップと、液体媒体を除去するステップとを含む本開示に記載の固体組成物の製造方法をさらに提供する。
【0066】
本開示は、脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、塩化剤、液体媒体を混合するステップと、液体媒体を除去するステップとを含む本開示に記載の固体組成物の製造方法をさらに提供する。
【0067】
いくつかの実施形態では、前記混合ステップでは、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートを加えることもできる。
【0068】
前記塩化剤は、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、無機塩及び有機塩のうちの1つ又は複数を含む。それは、薬物の遊離酸又は遊離塩基が形成すべきである薬学的に許容される塩に対応してもよい。
【0069】
適切な塩化剤は、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、臭化水素酸、カンファースルホン酸、酸、クエン酸、エチレンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸、ガラクチュロン酸、ドデシル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ナフトエ酸、ナフタレンスルホン酸、硝酸、ステアリン酸、オレイン酸、シュウ酸、パモ酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、コハク酸、硫酸、スルホサリチル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、水素酸化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、コリン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、水素酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、メタノールマグネシウム、メグルミン、ピペラジン、水素酸化カリウム、水素酸化ナトリウム、トロメタモール、塩化亜鉛、水素酸化亜鉛などを含むが、それらに限らない。
【0070】
利用可能な液体媒体は、水、有機溶媒、水/有機溶媒共溶媒系を含むが、それらに限らない。前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドなどを含むが、それらに限らない。好適な液体媒体は、水、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、水/エタノール、水/イソプロパノール、水/tert-ブタノールなどであってもよい。公知の技術、例えば蒸発、凍結乾燥又は噴霧乾燥、好ましくは凍結乾燥又は噴霧乾燥を用いて液体媒体を除去してもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、水/有機溶媒共溶媒における水と有機溶媒との体積比は、1000:1~1:1000、好ましくは9:1~1:1000であり、より好ましくは1:4~1:1000であってもよい。
【0072】
本開示は、本開示に記載の固体組成物を水和して得られるリポソーム組成物をさらに提供する。
【0073】
前記水和操作は、一般に、固体組成物を水又は水溶液と混合することによって実現される。いくつかの実施形態では、前記水溶液は、等張溶液又は緩衝液を含むが、それらに限らない。前記等張溶液は、ヒト血液と実質的に同じ浸透圧を有する溶液であり、等張剤及び水から調製されることができる。前記等張剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ブドウ糖、キシリトール、ソルビトールを含む。前記緩衝液は、緩衝した溶液であり、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化を阻止する。一実施形態では、本開示の緩衝液のpH範囲は、約4.5ないし約8.5である。pHをこの範囲内に制御可能な緩衝液の例は、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、炭酸塩、PBS、HEPES又は他の有機酸緩衝液を含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、水和された後に、リポソーム組成物、好ましくは多層リポソーム(MLV)を含むリポソーム組成物を形成することができる。いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物には、SUV又はLUVなどの他のリポソーム形態も存在することができる。いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、主として、MLVの形態で存在する。
【0075】
いくつかの実施形態では、前記水和操作は、固体組成物を水又は等張溶液と混合することによって実現される。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の固体組成物又は水和後の組成物は、他の活性物質をさらに含むことができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示のリポソーム組成物は、任意に、医薬適合性のベクターを含む。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示に記載のリポソーム組成物は、個体において12時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、24時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、36時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、48時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、60時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、72時間以上の薬物の持効放出を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、個体に投与した後、約3時間以内に薬物ピーク濃度、例えば約2時間以内に薬物ピーク濃度に達し、好ましくは約1.5時間以内に薬物ピーク濃度に達し、より好ましくは約1時間以内に薬物ピーク濃度に達し、最も好ましくは約45分以内に薬物ピーク濃度に達することができる。
【0080】
本明細書で使用されるように、用語「個体」は、哺乳動物とヒトを含み、好ましくは、個体はラットを含むことができる。本開示に記載のリポソーム組成物は、ヒトにおいても同様の効果が得られる。例えば、本開示に記載のリポソーム組成物は、ヒトにおいて12時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、24時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、36時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、48時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、60時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、72時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、84時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、96時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、108時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、120時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、132時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、144時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、156時間以上の薬物の持効放出を提供する。いくつかの実施形態では、168時間以上の薬物の持効放出を提供する。例えば、前記リポソーム組成物は、ヒトに投与した後、約4時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約3.5時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約3時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約2.5時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約2時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約1.5時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約1時間以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約45分以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約30分以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約15分以内に薬物ピーク濃度に達し、いくつかの実施形態では、約10分以内に薬物ピーク濃度に達することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物における薬物の総濃度は、約0.1mg/mLないし約300mg/mLであり、好ましくは約1mg/mLないし約50mg/mLであり、より好ましくは約2.5mg/mLないし約40mg/mLである。
【0082】
いくつかの実施形態では、未被包の薬物は、薬物組成物における薬物合計モル量の約1%ないし約80%である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物は、薬物組成物における薬物合計モル量の約5%ないし約70%である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物は、薬物組成物における薬物合計モル量の約10%ないし約60%である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物は、薬物組成物における薬物合計モル量の約20%ないし約50%である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:50ないし10:1である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:40ないし5:1である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:30ないし4:1である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:20ないし2:1である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:10ないし1:1である。いくつかの実施形態では、未被包の薬物と被包の薬物とのモル比率は、1:5ないし1:1である。
【0083】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、固体組成物を水和して得られる。前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ロピバカイン遊離塩基と、(3)ロピバカインの薬学的に許容される塩、好ましくは塩酸ロピバカインとを含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、前記水和操作で使用される水系媒体は、水又は等張溶液であり、前記等張溶液は、生理塩水又はブドウ糖溶液から選ばれる。
【0085】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物におけるロピバカインの総濃度は、約0.1mg/mLないし約80mg/mLであり、好ましくは約1mg/mLないし約40mg/mLであり、より好ましくは約2.5mg/mLないし約25mg/mLである。
【0086】
いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインは、薬物組成物におけるロピバカイン合計モル量の約1%ないし約90%である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインは、薬物組成物におけるロピバカイン合計モル量の約5%ないし約50%である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインは、薬物組成物におけるロピバカイン合計モル量の約10%ないし約40%である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインは、薬物組成物におけるロピバカイン合計モル量の約20%である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:99ないし10:1である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:40ないし4:1である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:30ないし4:1である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:20ないし2:1である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:10ないし1:1である。いくつかの実施形態では、未被包のロピバカインと被包のロピバカインとのモル比率は、1:5ないし1:1である。
【0087】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、個体に投与した後、約3時間以内にロピバカイン薬物ピーク濃度、例えば約2時間以内に薬物のロピバカイン薬物ピーク濃度、好ましくは約1.5時間以内にロピバカイン薬物ピーク濃度に達し、より好ましくは約1時間以内にロピバカイン薬物ピーク濃度に達し、最も好ましくは約45分以内にロピバカイン薬物ピーク濃度に達することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、前記リポソーム組成物は、12時間以上のロピバカインの持効放出を提供し、好ましくは48時間以上のロピバカインの持効放出を提供し、より好ましくは72時間以上のロピバカインの持効放出を提供し、最も好ましくは120時間以上のロピバカインの持効放出を提供することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、前記固体組成物は、少なくとも1つのホスファチドを含む(1)脂質と、(2)ブトルファノール遊離塩基と、(3)ブトルファノールの薬学的に許容される塩、好ましくは酒石酸ブトルファノールとを含む。
【0090】
本開示のリポソーム薬物組成物は、様々な方式で投与してもよく、局所投与、非経口投与などの投与を含むが、それらに限らない。前記組成物は、眼用剤形及び注射剤形を含んでもよく、医学診断製品を含んでもよい。
【0091】
本開示は、本開示に記載の固体組成物を製造するステップと、前記固体組成物を水和するステップとを含むリポソーム組成物の製造方法をさらに提供する。
【0092】
本開示は、固体組成物を製造するステップと、前記固体組成物を水和するステップとを含むリポソーム組成物の製造方法をさらに提供し、
そのうち、固体組成物を製造するステップは、(1)脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレート、液体媒体を混合するステップ及び液体媒体を除去するステップ、又は(2)脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、塩化剤、液体媒体を混合するステップ及び液体媒体を除去するステップを含むことができる。
【0093】
そのうち、前記脂質、薬物の遊離酸又は遊離塩基、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートは、前述したとおりである。
【0094】
いくつかの実施形態では、前記混合ステップでは、薬物の薬学的に許容される塩、錯合物又はキレートを加えることもできる。
【0095】
前記塩化剤は、無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基、無機塩及び有機塩のうちの1つ又は複数を含むことができる。それは、薬物の遊離酸又は遊離塩基が形成すべきである薬学的に許容される塩に対応してもよい。
【0096】
適切な塩化剤は、酢酸、安息香酸、ベンゼンスルフォン酸、臭化水素酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エチレンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸、ガラクチュロン酸、ドデシル硫酸、リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ナフトエ酸、ナフタレンスルホン酸、硝酸、ステアリン酸、オレイン酸、シュウ酸、パモ酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、コハク酸、硫酸、スルホサリチル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、水素酸化カルシウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、コリン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、水素酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、メタノールマグネシウム、メグルミン、ピペラジン、水素酸化カリウム、水素酸化ナトリウム、トロメタモール、塩化亜鉛、水素酸化亜鉛などを含むが、それらに限らない。
【0097】
利用可能な液体媒体は、水、有機溶媒、水/有機溶媒共溶媒系を含むが、それらに限らない。前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、アセトン、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシドなどを含むが、それらに限らない。好適な液体媒体は、水、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、水/エタノール、水/イソプロパノール、水/tert-ブタノールなどであってもよい。公知の技術、例えば蒸発、凍結乾燥又は噴霧乾燥、好ましくは凍結乾燥又は噴霧乾燥を用いて液体媒体を除去してもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、水/有機溶媒共溶媒における水と有機溶媒との体積比は、1000:1~1:1000、好ましくは9:1~1:1000であり、より好ましくは1:4~1:1000であってもよい。
【0099】
前記水和操作は、一般に、固体組成物を水又は水溶液と混合することによって実現される。いくつかの実施形態では、前記水溶液は、等張溶液又は緩衝液を含むが、それらに限らない。前記等張溶液は、ヒト血液と実質的に同じ浸透圧を有する溶液であり、等張剤及び水から調製されることができる。前記等張剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ブドウ糖、キシリトール、ソルビトールを含む。前記緩衝液は、緩衝した溶液であり、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化を阻止する。一実施形態では、本開示の緩衝液のpH範囲は、約4.5ないし約8.5である。pHをこの範囲内に制御可能な緩衝液の例は、酢酸塩(例えば酢酸ナトリウム)、コハク酸塩(例えば、コハク酸ナトリウム)、グルコン酸塩、ヒスチジン、クエン酸塩、炭酸塩、PBS、HEPES又は他の有機酸緩衝液を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、前記水和操作は、固体組成物を水又は等張溶液と混合することによって実現される。
【0101】
本開示のいくつかの実施形態は、本開示に記載のリポソーム組成物を個体に投与することを含む、疾患を治療、改善又は予防する方法に関する。いくつかの実施形態では、投与は、非経口投与である。いくつかの実施形態では、投与は、局所投与である。いくつかの実施形態では、投与は、非経口投与と局所投与である。いくつかの実施形態では、非経口投与は、静脈注射、皮下注射、組織注射、傷口浸潤又は傷口滴注入から選ばれる。
【0102】
本開示のリポソーム組成物の投与は、標準方法及び装置、例えば、ペン型、注射器システム、針及び注入器、皮下注射ポート送達システム、チューブなどを用いて達成することができる。
【0103】
用語「約」は、数量、サイズ、処方、パラメータ、及び他の量と特性が不正確であり、かつ正確である必要はないが、所望の近似値及び/又はより大きい値又はより小さい値であってもよく、それにより、公差、変換係数、四捨五入、測定誤差など、ならびに当業者に知られた他の因子を反映する。その意味は、±10%の変化、好ましくは±5%の変化を含むことができる。
【0104】
本開示の固体組成物は、水和された後に、リポソーム組成物、例えば多層リポソームを形成することができる。製造されたリポソーム組成物における一部の薬物はリポソームに被包されており、一部の薬物は被包されていない。未被包の薬物に対する被包の薬物の割合は、リポソームを個体に投与した後に未被包の薬物が迅速に放出され、治療効果が得られ、被包の薬物が持続的に放出され、治療効果が維持されるように適切である。未被包の薬物に対する被包の薬物の割合は、リポソームの被包率を測定することにより決定することができる。
【0105】
各処方の「被包百分比」又は「被包率」は、組成物における薬物の合計モル量に対するリポソーム内に被包された全ての薬物形態のモル量の百分率を意味する。好ましくは被包率の範囲は、約1%~99%であり、より好ましくは約60%~85%である。従来の被包率の測定方法、例えばHPLC法により被包率を測定することができる。
【0106】
用語「脂質ベシクル構造を実質的に含まない」は、固体組成物における脂質が脂質ベシクル構造を形成していないこと、又は乾燥の脂質ベシクル(例えば、脂質ベシクルを凍結乾燥した後に形成された形態)を形成していないことを意味し、例えば、前記固体組成物の走査型電子顕微鏡図から脂質ベシクル構造又は乾燥の脂質ベシクルを実質的に観察できない。いくつかの実施形態では、固体組成物を形成する過程において、脂質ベシクル構造を形成する過程を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、固体組成物に含まれる脂質ベシクル構造は、約10%又は5%又は3%又は1%を超えない。
【0107】
用語「粒径分布」又は「PSD」は、当業者に知られた動的光散乱技術、例えば、Malvern MastersizerTM2000を用いて測定されたリポソーム組成物における粒径分布を意味する。本開示に記載の「d(0.1)」は、1つの検体の累積粒度分布パーセンテージが10%に達した時に対応する粒径を意味する。「d(0.5)」は、1つの検体の累積粒度分布パーセンテージが50%に達した時に対応する粒径を意味する。「d(0.9)」は、1つの検体の累積粒度分布パーセンテージが90%に達した時に対応する粒径を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0108】
図1】実施例1で製造されたロピバカインリポソームの凍結透過型電子顕微鏡図である。
図2】実施例1で製造されたロピバカイン製剤の血漿PKプロファイルである。
図3】実施例1で製造されたロピバカインリポソームのインビトロ放出曲線である。
図4】実施例5で製造されたブトルファノールリポソームのインビトロ放出曲線である。
図5】実施例5で製造されたブトルファノール製剤の血漿PKプロファイルである。
図6】実施例1で製造されたロピバカイン固体組成物の走査型電子顕微鏡図である。
図7】実施例1で製造されたロピバカインリポソームの凍結走査型電子顕微鏡図である。
図8】実施例1で製造されたロピバカインリポソームのモルモット皮下注射の投与部位疼痛閾値に対する影響である。
図9】実施例1で製造されたロピバカインリポソームのモルモット皮内注射の投与部位疼痛閾値に対する影響である。
図10】実施例1で製造されたロピバカインリポソームのラット足底手術後局部疼痛閾値に対する影響である。
【発明を実施するための形態】
【0109】
実施例1:ロピバカインリポソームの製造
【0110】
【表1】
【0111】
固体組成物の製造:DMPC5.10g、コレステロール1.50g、ロピバカイン遊離塩基2.40g、塩酸ロピバカイン0.68gを秤取し、100mLのtert-ブタノールに溶解し、50個の10mLバイアル瓶に分注し、各瓶2.0mLとした。検体を凍結乾燥機に置いて凍結乾燥し、ロピバカイン固体組成物を製造した。
【0112】
リポソームの製造:前ステップで凍結乾燥された生成物は、適量の生理塩水で再溶出し、均一に混合した。HPLCによりリポソームの含有量と被包率を測定したところ、含有量は17.989mg/mL(ロピバカイン遊離塩基に基づいて計算されたもの、以下同様)、被包率は79.34%であった。凍結透過型電子顕微鏡で特徴づけることによって、多層リポソームを含むことが分かった。リポソーム粒径測定結果から分かるように、D[4,3]15.959μm、d(0.1)3.325μm、d(0.5)12.964μm、d(0.9)31.674μmを得た。
【0113】
実施例2:ロピバカインリポソームのラット薬物動態学試験
【0114】
1.被験薬物
実施例1で製造されたロピバカインリポソーム、規格17.99mg/mL、
市販の塩酸ロピバカイン注射液、規格10mL:100mg(塩酸ロピバカインに基づいて計算されたもの)。
【0115】
2.試験動物
Sprague Dawleyラット(SPF級)、雄、年齢約6~8週、体重180~250g。提供元:上海西普爾-必凱実験動物有限公司。合格証書番号20180006003423、生産ライセンス番号SCXK(滬)2018-0006。
【0116】
3.試験手順
群分け及び試験設計は、具体的には次の表に示されるとおりである。
【0117】
【表2】
【0118】
検体採取時間と容量:
第1群:投与後6分、18分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、24時間。計12個の時点。
第2群:投与前と投与後30分、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間、168時間。計12個の時点。
投与後30分以内の各採血時点は、2分間の許容差が認められ、投与30分後から8時間までの各採血時点は、5分間の許容差が認められ、投与8時間後から48時間までの各採血時点は、10分間の許容差が認められ、投与48時間後から168時間までの各採血時点は、20分間の許容差が認められた。
【0119】
採取した血液検体をヘパリン抗凝固型採血管に置き、血漿(遠心力6800g、遠心6分間、2~8℃)を遠心分離した。血漿検体は、委託者に送る前に-80℃冷蔵庫内に保管した。血漿における薬物濃度をHPLC-MS/MSで測定した。試験結果は、図2及び次の表に示されるとおりである。
【0120】
【表3】
【0121】
ラットにロピバカインリポソームを皮下注射した後、ピーク到達時間(tmax)は0.6時間であり、市販の塩酸ロピバカイン注射液のピーク到達時間(tmax=1.15時間)と類似しており、ロピバカインリポソームが体内で迅速に効果を発揮し、その体内での発現時間が市販のロピバカイン注射液に近いことが説明された。ロピバカインリポソームの半減期(t1/2)は、市販のロピバカイン注射液の約18倍であり、ロピバカインリポソームが理想的な徐放効果を有することが証明された。ロピバカインリポソームの投与量は、市販の製剤の約6倍であったが、両者のピーク濃度(Cmax)が類似しており、ロピバカインリポソームの安全性が比較的良く、臨床一回投与量が市販の製剤の少なくとも6倍に達することができることが証明された。以上のようにして、ロピバカインリポソームのラットPKデータは、この種が迅速に効果を発揮しつつ、比較的長時間の徐放作用を維持することができ、かつ許容投与量が高く、患者のコンプライアンスの向上に有利であることが示唆された。
【0122】
実施例3:塩酸ロピバカインを初期に加えせずにリポソームの製造
【0123】
【表4】
【0124】
実施例1の方法に従って、塩酸ロピバカインを初期に加えせずにリポソームを製造した。リポソームの含有量と被包率をHPLCで測定し、含有量は18.558mg/mL、被包率は97.24%であった。
【0125】
実施例4:ロピバカインリポソームのインビトロ放出
【0126】
1.透析バッグの洗浄:
10gの炭酸水素ナトリウムと0.168gのEDTA?2Naを500mLの水に秤取し、均一に混合した。透析バッグを10cmの小片に切り、1Lのビーカーで、洗浄液で10分間煮沸した後、透析バッグを200mLの精製水で10回洗浄し、さらに500mLの精製水を加えて、10分間煮沸した。長時間使用しない透析バッグは、10%エタノールに保管することができ、使用前に、毎回200mLの精製水で10回洗浄した。
【0127】
2.放出媒体の調製:
2.3gのリン酸二水素カリウム、7.6gのリン酸水素二カリウム三水和物、5.6gの塩化ナトリウム、132mgの硫酸アンモニウムを1000mLの容量フラスコに秤取し、水を加えて定容し、均一に混合して放出媒体を得た。
【0128】
3.放出検体のロフティング及びサンプリング測定:
ピペットガンを用いて、1.0mLの測定対象リポソーム溶液を正確に秤取して10cmの透析バッグに加え、1mLの放出媒体を加え、透析バッグの両端をクリップでクランプした後、99mLの放出媒体を入れた150mLのトールビーカーに置いた。検体を37℃、10rpmのシェーカー上で温置し、それぞれ設定された時点で1mLサンプリングし、HPLCで検定した。
【0129】
試験結果は、図3及び次の表に示されるとおりである。
【0130】
【表5】
【0131】
実施例3のリポソームは、比較的高い被包率を有するため、その0~4時間以内のインビトロ放出がより遅く、4時間放出度が実施例1のリポソームの1時間での放出度に近似することが分かった。上記の結果が、被包率が高すぎると、薬物の開始段階での放出に影響し、局所鎮痛系薬剤の鎮痛効果の迅速発揮に不利であることを明らかにした。
【0132】
実施例5:ブトルファノールリポソームの製造
【0133】
【表6】
【0134】
実施例1及び実施例3の方法に従って、ブトルファノールリポソームを製造した。
【0135】
実施例6:ブトルファノールリポソームのインビトロ放出
実施例4の試験方法を用いて、ブトルファノールリポソームのインビトロ放出を測定した。試験結果は、図4及び次の表に示されるとおりである。
【0136】
【表7】
【0137】
0~4時間以内に、処方2のリポソームのインビトロ放出は比較的遅く、その4時間放出度が処方1のリポソームの0.5時間での放出度に近似した。被包率が高すぎると、薬物の開始段階での放出に影響し、ブトルファノールの鎮痛効果の迅速発揮に不利であることが証明された。
【0138】
実施例7:ブトルファノールリポソームのラット薬物動態学試験
【0139】
1.被験薬物
実施例5で製造されたブトルファノールリポソーム処方1、規格14.96mg/mL、
市販の酒石酸ブトルファノール注射液、規格2mL:4mg。
【0140】
2.試験動物と方法は、実施例2と同じである。
【0141】
3.試験結果:試験結果は、図5及び次の表に示されるとおりである。
【0142】
【表8】
【0143】
ラットに、それぞれ、ブトルファノールリポソームと酒石酸ブトルファノール注射液を皮下注射した後、ピーク到達時間(tmax)はいずれも0.5時間以内であり、ブトルファノールリポソームが体内で迅速に効果を発揮できることが説明された。ブトルファノールリポソームの半減期(t1/2)は、市販の酒石酸ブトルファノール注射液の約15倍であり、ブトルファノールリポソームが理想的な徐放効果を有することが証明された。ブトルファノールリポソームの投与量は、市販の製剤の約4倍であったが、ブトルファノールリポソームのピーク濃度(Cmax)は、市販の酒石酸ブトルファノール注射液のピーク濃度(Cmax)の半分よりも低く、ブトルファノールリポソームの安全性が比較的良く、臨床一回投与量が市販の製剤の少なくとも4倍及びそれ以上に達することができることが証明された。以上のようにして、ブトルファノールリポソームのラットPKデータは、この品種が迅速に効果を発揮しつつ、比較的長時間の徐放作用を維持することができ、かつ許容投与量が高く、患者のコンプライアンスの向上に有利であることが示唆された。
【0144】
実施例8:モルモットにロピバカインリポソームを皮下注射投与した鎮痛試験
【0145】
1.被験薬物
実施例1で製造されたロピバカインリポソーム、
市販の塩酸ロピバカイン注射液。
【0146】
2.試験方法
モルモットをロピバカインリポソーム低、中、高投与量群と塩酸ロピバカイン注射液群に分け、各群10匹、雌雄各半数であった。各群のモルモット左後脚上部に、それぞれ、投与量が0.4、0.885、1.9mg/匹(約1.3、2.9、6.3mg/kgに相当し、ロピバカイン遊離塩基に基づいて計算されたもの、以下同様)であるロピバカインリポソームと、投与量が0.885mg/匹(約2.9mg/kgに相当する)である塩酸ロピバカイン注射液とを皮下注射投与し、投与後0.5、1、2、4、6、8、10、24時間時点で、ニードリング法により投与部位の疼痛閾値を測定した。
【0147】
試験結果は、図8に示されるとおりである。投与後の初回検出点(0.5時間)の投与部位疼痛閾値は、投与前よりも有意に上昇した(P<0.001)。投与後1時間前後に、疼痛閾値ピークに達し、ピーク疼痛閾値の上昇百分率は、それぞれ875.70%、863.35%と964.28%であった。その後、疼痛閾値はゆっくり低下し、24時間時の疼痛閾値は依然として投与前の疼痛閾値よりも高く(P<0.05又はP<0.01)、薬効持続時間は約24時間であった。モルモットに塩酸ロピバカイン注射液0.885mg/匹を皮下注射し、投与後の疼痛閾値は投与前よりも有意に上昇し(P<0.001)、初回検出点(0.5時間)で疼痛閾値ピークに達し、ピーク疼痛閾値の上昇百分率は961.23%であった。疼痛閾値は投与後4時間から急速に低下し、投与後4時間、疼痛閾値はピーク疼痛閾値の約45%であり、24時間疼痛閾値は投与前の疼痛閾値と明らかな差がなく(P>0.05)、鎮痛薬効持続時間は約10時間であった。投与後4~10時間、塩酸ロピバカイン注射液群のモルモットの疼痛閾値は急速に低下し、0.885mg/匹投与量のロピバカインリポソーム群のモルモットの疼痛閾値の上昇百分率は塩酸ロピバカイン注射液0.885mg/匹群よりも有意に高かった(P<0.01又はP<0.001)。
【0148】
実施例9:モルモットにロピバカインリポソームを皮下注射投与した鎮痛試験
【0149】
1.被験薬物
実施例1で製造されたロピバカインリポソーム、
市販の塩酸ロピバカイン注射液。
【0150】
2.試験方法
実施例8で皮下注射投与した後のモルモットに7日間のウォッシュアウト期間を経て、皮内注射鎮痛試験を行い、各投与群動物(各群10匹、雌雄各半数)に、それぞれ、投与量が0.2、0.443、0.95mg/匹(約0.7、1.5、3.1mg/kgに相当する)であるロピバカインリポソームと、投与量が0.443mg/匹(約1.5mg/kgに相当する)である塩酸ロピバカイン注射液とを右後脚上部に皮内注射投与し、投与後0.5、1、2、4、6、8、10、24時間時点で、ニードリング法により投与部位の疼痛閾値を測定した。
【0151】
試験結果は、図9に示されるとおりである。投与後の初回検出点(0.5時間)の投与部位疼痛閾値は、投与前よりも有意に上昇した(P<0.001)。投与後1~2時間前後に、疼痛閾値ピークに達し、ピーク疼痛閾値の上昇百分率は、それぞれ1006.41%、922.63%と1266.74%であった。その後、疼痛閾値はゆっくり低下し、投与後10時間、投与量が0.2、0.443mg/匹であるロピバカインリポソーム群のモルモットの疼痛閾値は、依然として投与前よりも有意に高く(P<0.001)、投与量が0.95mg/匹であるロピバカインリポソーム群のモルモットの投与後24時間時の疼痛閾値は、依然として投与前よりも有意に高かった(P<0.001)。モルモットの0.2、0.443mg/匹投与量でロピバカインリポソームを皮内注射した鎮痛薬効持続時間は約10時間であり、0.95mg/匹投与量でロピバカインリポソームを皮内注射した薬効持続時間は約24時間であった。モルモットに塩酸ロピバカイン注射液0.443mg/匹を皮内注射し、投与後の初回検出点(0.5時間)で投与部位疼痛閾値は投与前よりも有意に上昇し(P<0.001)、投与後1時間前後に、疼痛閾値ピークに達し、ピーク疼痛閾値の上昇百分率は1100.20%であり、疼痛閾値は、投与後8時間から急速に低下し、ピーク疼痛閾値の約23%であった。10時間疼痛閾値は、投与前の疼痛閾値よりも有意に高いが、24時間疼痛閾値が投与前の疼痛閾値と明らかな差がなく、鎮痛薬効持続時間は約10時間であった。投与後6~10時間、ロピバカインリポソーム(0.443mg/匹)を皮内注射投与した群のモルモットの疼痛閾値の上昇百分率は、塩酸ロピバカイン注射液(0.443mg/匹)群よりも有意に高かった(P<0.01又はP<0.001)。投与後2~24時間、投与量が0.95mg/匹であるロピバカインリポソーム群のモルモットの疼痛閾値の上昇百分率は、ロピバカイン注射液0.443mg/匹群よりも有意に高かった(P<0.05、P<0.01又はP<0.001)。
【0152】
実施例10:ラット足底手術切開口鎮痛試験
【0153】
1.被験薬物
実施例1で製造されたロピバカインリポソーム、
市販の塩酸ロピバカイン注射液。
【0154】
2.試験方法
ラットを体重によってランダムに手術群、ロピバカインリポソーム低、中、高投与量群と塩酸ロピバカイン注射液群に分け、各群10匹、雌雄各半数であった。各群動物の右後足掌皮膚をメスで縦向切開し、切開口の長さは約0.5cm、深さは約0.2cm、その後、縫合した。術後翌日、各群動物に、それぞれ、ロピバカインリポソーム空白製剤、ロピバカインリポソーム(0.2、0.443、0.95mg/匹、約0.9、1.9、4.2mg/kgに相当する)及び塩酸ロピバカイン注射液0.443mg/匹(約1.9mg/kgに相当する)を足底注射投与した。投与後0.5、1、2、4、6、8、10、24時間時点で、ニードリング法により投与部位の疼痛閾値を測定した。
【0155】
結果は、図10に示されるとおりである。ラット足底手術後、足底疼痛閾値は明らかに低下し、疼痛閾値低下百分率は約60%前後であった。ラット足底注射投与後0.5~10時間以内に、低、中、高投与量のロピバカインリポソーム群(0.2、0.443と0.95mg/匹)のラット疼痛閾値は手術対照群よりも有意に高く(P<0.05、P<0.01又はP<~0.001)、かつ各時点は投与量依存性を呈した。ロピバカインリポソームの鎮痛薬効持続時間は約10時間であった。ラットに塩酸ロピバカイン注射液0.443mg/匹を足底注射し、投与後0.5~2時間以内に、疼痛閾値は手術対照群よりも有意に高く(P<0.01又はP<0.001)、鎮痛薬効持続時間は約2時間であった。0.443mg/匹投与量のロピバカインリポソームを足底注射投与した群のラットは、投与後6~8時間、疼痛閾値上昇百分率が塩酸ロピバカイン注射液0.443mg/匹投与群よりも有意に高かった(P<0.05又はP<0.01)。0.95mg/匹投与量のロピバカインリポソームを足底注射投与した群のラットは、1~10時間疼痛閾値百分率が塩酸ロピバカイン注射液0.443mg/匹群よりも有意に高かった(P<0.05、P<0.01又はP<0.001)。
【0156】
実施例11:ロピバカインリポソーム
【0157】
【表9】
【0158】
ホスファチド、コレステロール、ロピバカイン遊離塩基、塩酸ロピバカインを秤取し、100mLのtert-ブタノール-水混合溶媒で溶解し、20mLのバイアル瓶に分注し、各瓶5mLとした。検体を凍結乾燥機に置いて凍結乾燥した。凍結乾燥された後の生成物は、適量の生理塩水で再溶出し、均一に混合し、目標リポソームを得、活性物質含有量及び被包率を測定した。
【0159】
実施例12
実施例4の試験方法を用いて、ロピバカインリポソームL2-L4のインビトロ放出を測定した。試験結果は、次の表に示されるとおりである。
【0160】
【表10】
【0161】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、当業者であれば、これらは例示に過ぎず、本発明の原理と主旨から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変更又は修正を行うことができ、従って本発明の保護範囲は特許請求の範囲により限定されることを理解できる。
図1
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図8
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図10