(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】電力変換ユニットおよび電力システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20250403BHJP
H02B 1/56 20060101ALI20250403BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02B1/56 A
H05K7/20 H
(21)【出願番号】P 2022036199
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃司
(72)【発明者】
【氏名】有松 公治
(72)【発明者】
【氏名】今野 純也
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020615(WO,A1)
【文献】特開2008-035635(JP,A)
【文献】実開昭54-048322(JP,U)
【文献】特開2020-129923(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096677(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0166729(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42 - 7/98
H02B 1/56
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換装置と、
前記電力変換装置が内部に搭載された筐体と、
を備え、
前記筐体は、他の筐体に隣接
される側面部を有し、
前記側面部は、前記筐体の内部の空気を前記他の筐体に流出させる流出口を有
し、
前記筐体は、
前記電力変換装置が内部に搭載された本体部と、
前記本体部の上方に位置して前記本体部に取り付けられた屋根と、
を有し、
前記側面部は、
前記本体部の側面を形成する第1側面部と、
前記屋根の側面を形成する第2側面部と、
を有し、
前記流出口は、前記第2側面部に形成されており、
前記屋根は、前記本体部の上方に位置する被覆部と、前記被覆部から前後方向に突出する突出部と、を有し、
前記本体部は、前記突出部の内部と連通する第1開口部を有し、
前記突出部は、下方に開口して外部と連通する第2開口部を有し、
前記筐体の内部の空気の一部は、前記第1開口部および前記第2開口部を介して外部に排気され、前記空気のその他の一部は、前記流出口から前記他の筐体に流出する電力変換ユニット。
【請求項2】
前記筐体は、外部の空気を内部に吸気する吸気口を有し、
前記流出口は、前記吸気口よりも上方に設けられている請求項1に記載の電力変換ユニット。
【請求項3】
請求項1
または2に記載された電力変換ユニットと、
前記電力変換ユニットに隣接する他のユニットと、を備え、
前記他のユニットは、前記電力変換ユニットの流出口に対応する位置に流入口を有している電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、一般的に電力変換ユニットおよび電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の内部に電力変換装置が搭載された電力変換ユニットが知られている。このような電力変換ユニットは、例えば屋外に設置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、変電所などでは、電力変換ユニットと、直流盤や入出盤などの他の機器が搭載された他のユニットと、を有する電力システムを備えることがある。このような電力システムは、電力変換ユニットと他のユニットとが隣接して配置された列盤構成となる場合がある。
【0005】
電力変換ユニットの筐体は、内部に搭載された電力変換装置を冷却するために、吸気口と排気口とを有している。列盤構成となっている場合には、吸気口と排気口とを筐体の正面側や背面側に設けなければならない。このような場合、吸気口や排気口を大きくしなければ、内部に搭載された機器を効率よく冷却することができないおそれがある。
【0006】
本実施形態は、上述する課題に鑑みなされたもので、電力変換装置を効率よく冷却できる電力変換ユニットおよび電力システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態は、電力変換装置と、前記電力変換装置が内部に搭載された筐体と、を備え、前記筐体は、他の筐体に隣接する側面部を有し、前記側面部は、前記筐体の内部の空気を前記他の筐体に流出させる流出口を有する電力変換ユニットである。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、電力変換装置を効率よく冷却できる電力変換ユニットおよび電力システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態による電力システムを示す正面図である。
【
図2】
図1中の電力変換ユニットを矢示A-A方向からみた側面図である。
【
図3】
図1中の電力変換ユニットと他のユニットとを矢示B-B方向からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態による電力システムを示す正面図である。
図2は、
図1中の電力変換ユニットを矢示A-A方向からみた側面図である。
図3は、
図1中の電力変換ユニットと他のユニットとを矢示B-B方向からみた断面図である。
【0011】
電力システム1は、例えば屋外に設置された変電所に設けられている。電力システム1は、例えば発電所から供給された電力を変換して鉄道などに供給する。電力システム1は、電力変換ユニット10と、他のユニット60と、を備えている。
【0012】
なお、本願明細書において、「上」、「下」、「右」および「左」という記載は、電力変換ユニット10の前で電力変換ユニット10を見た人を基準とした上、下、右および左をそれぞれいう。また、本願明細書においては、電力変換ユニット10から、電力変換ユニット10の前に居る人へ向かう方向を「前」方向とし、その逆方向を「後」方向とする。
【0013】
図1に示すように、この例では、電力変換ユニット10の左側に他のユニット60が隣接している。電力変換ユニット10と、他のユニット60とは、別個のユニットとなっている。電力変換ユニット10と、他のユニット60とは、現場でボルトなどにより一体化されている。
【0014】
図1に示すように、電力変換ユニット10は、電力変換装置20と、筐体30と、を備えている。電力変換装置20は、例えば直流電力および交流電力の変換や電力の制御をする。電力変換装置20は、筐体30の内部に搭載されている。
【0015】
筐体30は、本体部40と、屋根50と、を備えている。筐体30は、例えば屋外の地面Gに設置されている。本体部40は、地面Gに設置される底面部41と、底面部41から上方に向けて延び、前後方向で対向する前面部42および背面部43と、底面部41から上方に向けて延び、左右方向で対向する左側面部44および右側面部45と、を有している。
【0016】
底面部41の上面には、電力変換装置20が載置されている。前面部42は、底面部41の前端から上方に向けて延びている。背面部43は、底面部41の後端から上方に向けて延びている。左側面部44は、底面部41の左端から上方に向けて延びている。右側面部45は、底面部41の右端から上方に向けて延びている。
【0017】
本体部40は、内部40aの空気Fを排出するための第1開口部40bを有している。第1開口部40bは、本体部40の前後方向の少なくとも一方に設けられている。具体的には、第1開口部40bは、後述する屋根50の突出部50bの内部と連通している。第1開口部40bは、屋根50により覆われている。これにより、第1開口部40bから本体部40の内部40aに雨水などが浸入しないようになっている。
【0018】
この例では、本体部40は、例えば上方に開口する第1開口部40bを有するボックス状に形成されている。なお、本体部40の前面部42および背面部43が屋根50の内部まで延びており、その前面部および背面部に前後方向に貫通する第1開口部が形成されていてもよい。
【0019】
前面部42は、ドア42aを有している。作業者は、ドア42aを開閉することにより、電力変換装置20のメンテナンスなどを行うことができる。筐体30は、外部の空気F(外気)を内部40aに吸気する吸気口42bを有している。具体的には、吸気口42bは、前面部42に設けられている。
【0020】
カバー47は、吸気口42bに対応する位置で前面部42に設けられている。吸気口42bは、カバー47により覆われている。カバー47は、下方が開口している。カバー47は、雨水などが吸気口42bから本体部40の内部40aに浸入するのを抑制している。本体部40の内部40aに流入した空気Fは、電力変換装置20を冷却して、上方の第1開口部40bから排気される。
【0021】
図2、
図3に示すように、背面部43は、吸気口43aと、カバー48と、を有している。吸気口43aおよびカバー48は、前面部42の吸気口42bおよびカバー47と同様の構成となっている。なお、吸気口は、前面部42と背面部43との少なくとも一方に設けられていればよい。
【0022】
左側面部44は、他の筐体70の本体部80の右側面部82に隣接している。例えば、電力変換装置20から延びるケーブルや導体(いずれも図示せず)は、左側面部44に形成された貫通孔(図示せず)を介して他のユニット60の機器65に接続されている。
【0023】
屋根50は、本体部40の上方に位置して、本体部40に取り付けられている。屋根50は、例えば複数枚の板材が組み合わされて形成されている。屋根50は、天面部51と、天面部51から下方に向けて延び、前後方向で対向する正面部52および後面部53と、天面部51から下方に向けて延び、左右方向で対向する左側面部54および右側面部55と、を有している。屋根50は、下方が開口したボックス状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、天面部51は、前方から後方に向けて下方に傾斜している。これにより、屋根50は、天面部51に雨水などが溜まるのを抑制している。正面部52は、天面部51の前端から下方に向けて延びている。後面部53は、天面部51の後端から下方に向けて延びている。左側面部54は、天面部51の左端から下方に向けて延びている。右側面部55は、天面部51の右端から下方に向けて延びている。
【0025】
図2、
図3に示すように、屋根50は、本体部40の上方に位置する被覆部50aと、被覆部50aから前後方向に突出する突出部50bと、を有している。すなわち、正面部52は、本体部40の前面部42よりも前方に向けて寸法L1突出している。また、後面部53は、本体部40の背面部43よりも後方に向けて寸法L2突出している。換言すると、屋根50の前後方向の寸法は、本体部40の前後方向の寸法よりも長くなっている。なお、この例では、前後方向の両方に突出部50bを有しているが、少なくとも一方にのみ突出部50bを有していればよい。
【0026】
突出部50bは、下方に開口して外部と連通する第2開口部50b1を有している。これにより、筐体30は、本体部40の内部40aと外部とが、第1開口部40bと第2開口部50b1とにより連通されている。吸気口42b、43aから本体部40の内部40aに吸気された空気Fの一部は、電力変換装置20を冷却して、第1開口部40bおよび第2開口部50b1を介して、外部に排気される。すなわち、第1開口部40bと第2開口部50b1とは、電力変換ユニット10の排気口を構成している。
【0027】
左側面部54の外面は、本体部40の左側面部44の外面と上下方向で同一面上に位置している。左側面部54は、他の筐体70の屋根90の右側面部92に隣接している。他の筐体70に隣接する筐体30の側面部は、本体部40の側面を形成する第1側面部(左側面部44)と、屋根50の側面を形成する第2側面部(左側面部54)と、を有している。
【0028】
流出口58は、他の筐体70に隣接する側面部に形成されている。具体的には、流出口58は、屋根50の左側面部54(筐体30の第2側面部)に形成されている。
図2に示すように、流出口58は、前後方向に離間して2個形成されている。なお、流出口58は、1個でもよいし、3個以上でもよい。流出口58は、吸気口42b、43aよりも上方に設けられている。これにより、流出口58は、電力変換装置20の熱を吸収した空気Fを効率よく流出させることができる。
【0029】
図1に示すように、他のユニット60は、電力変換ユニット10に隣接している。他のユニット60は、機器65と、筐体70と、を備えている。機器65は、電力変換装置20よりも発熱量が小さいものであり、例えば直流盤、入出盤などとなっている。機器65は、筐体70の内部に搭載されている。
【0030】
筐体70と、電力変換ユニット10の筐体30と、は別個に独立して形成されている。筐体70は、本体部80と、屋根90と、を有している。本体部80は、電力変換ユニット10の本体部40と同様の構成となっているので、その説明を省略する。
【0031】
本体部80の右側面部82は、電力変換ユニット10の左側面部44に隣接している。また、屋根90の右側面部92は、電力変換ユニット10の左側面部54に隣接している。
図3に示すように、他のユニット60は、電力変換ユニット10の流出口58に対応する位置に流入口95を有している。具体的には、流入口95は、屋根90の右側面部92に左右方向に貫通している。この例では、流入口95は、流出口58に対応して2個形成されている。
【0032】
電力変換ユニット10と他のユニット60とが隣接して配設された場合には、電力変換ユニット10の本体部40の内部40aと、他のユニット60の本体部80の内部80aとが流出口58と流入口95とにより連通される。
【0033】
図3に示すように、本体部40の内部40aで電力変換装置20を冷やした空気Fの一部は、第1開口部40bおよび第2開口部50b1を介して外部に排気される。また、電力変換装置20は、機器65よりも発熱量が大きい。従って、空気Fのその他の一部は、流出口58および流入口95を介して他のユニット60の本体部80の内部80aに流出する。
【0034】
他のユニット60は、第1開口部97aおよび第2開口部97bを有している。第1開口部97aは、第1開口部40bと同様の構成となっている。また、第2開口部97bは、第2開口部50b1と同様の構成となっている。第1開口部97aと第2開口部97bとは、機器65を冷却した空気の排気口となっている。
【0035】
本体部80の内部80aに流出した一部の空気Fは、他のユニット60の第1開口部97aおよび第2開口部97bを介して外部に排気される。電力システム1は、機器65を冷却した空気と、電力変換装置20を冷却した空気Fと、を第1開口部97aおよび第2開口部97bから排気させる。すなわち、第1開口部97aおよび第2開口部97bは、機器65を冷却した空気および電力変換装置20を冷却した空気Fの排気口となっている。
【0036】
流出口58、流入口95、および第1、第2開口部97a、97bは、筐体30、70の上端側に設けられている。これにより、電力変換装置20で熱交換された空気Fは、他のユニット60の機器65に接触するのを可及的に少なくして、第1開口部97aおよび第2開口部97bから外部に排気させることができる。その結果、空気Fが機器65へ及ぼす影響を抑制することができる。
【0037】
ここで、例えば流出口58および流入口95を有していない場合には、屋根50の突出寸法L1、L2を大きくして第2開口部50b1を大きくしなければ電力変換装置20を効率よく冷却できないおそれがある。このような場合、見栄えをよくするために、電力変換ユニット10に並ぶ複数の他のユニットの外形形状を電力変換ユニット10に合わせると、電力システム1が全体として大型化するおそれがある。
【0038】
本実施形態によれば、電力変換装置20を冷却した空気Fを隣接する他のユニット60の第1開口部97aおよび第2開口部97bを介して排出させることができる。これにより、屋根50の前後方向の突出寸法L1、L2を可及的に小さくしても、電力変換装置20を効率よく冷却させることができる。また、電力システム1の小型化を図ることができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、電力変換ユニット10の屋根50の左側面部54に流出口58を形成し、他のユニット60の屋根90の右側面部92に流入口95を形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば電力変換ユニット10の本体部40の左側面部44に流出口を形成し、他のユニット60の本体部80の右側面部82に流出口を形成してもよい。
【0040】
また、電力変換ユニット10の右側に他のユニットが隣接する場合には、電力変換ユニット10の右側面部に流出口が形成され、他のユニットの左側面部に流入口が形成されていてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、他のユニット60の第1開口部97aと第2開口部97bとを電力変換ユニット10の第1開口部40bと第2開口部50b1と同様の構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明の態様はこれに限らず、例えば他のユニット60の排気口は、任意の構成となっていてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電力システム
10 電力変換ユニット
20 電力変換装置
30 筐体
40 本体部
40a 内部
40b 第1開口部
41 底面部
42 前面部
42a ドア
42b 吸気口
43 背面部
43a 吸気口
44 左側面部(第1側面部)
45 右側面部
47、48 カバー
50 屋根
50a 被覆部
50b 突出部
50b1 第2開口部
51 天面部
52 正面部
53 後面部
54 左側面部(第2側面部)
55 右側面部
58 流出口
60 他のユニット
65 機器
70 筐体
80 本体部
80a 内部
82 右側面部
90 屋根
92 右側面部
95 流入口
97a 第1開口部
97b 第2開口部
F 空気
G 地面