(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】修飾リポソームを使用する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/544 20060101AFI20250403BHJP
G01N 21/76 20060101ALI20250403BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20250403BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20250403BHJP
【FI】
G01N33/544 A
G01N21/76
G01N33/50
G01N33/53 D
G01N33/53 G
G01N33/53 M
G01N33/53 N
G01N33/53 U
G01N33/53 B
(21)【出願番号】P 2022552778
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021070104
(87)【国際公開番号】W WO2021178987
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミッシェル・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ハエイ・リー
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-096567(JP,A)
【文献】特表2008-538105(JP,A)
【文献】特表2008-535771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
A61K 39/00-51/12
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾リポソームであって、
(i)封入された親水性アクリジニウムエステル(AE)、および
(ii)該リポソームに封入された第1の薬剤
、およ
び
(iii)該リポソーム表面の第2の薬剤を含み、
第1の薬剤は核酸、疎水性薬物、および親水性薬物からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
疎水性薬物は、アンホテリシン、シリビン、ドセタキセル、シンバスタチン、ハロペリドールおよびアルベンダゾールからなる群より選択され、
親水性薬物は、塩酸ドキソルビシン、シトシンアラビノシド、エチニルシチジン、および5-フルオロ-デオキシウリジンからなる群より選択され、
第2の薬剤はポリペプチド、抗体、炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG)、ペグ化ポリペプチド、小分子、または薬物を含み、
リポソームの直径は30nm~100nmである、
前記修飾リポソーム。
【請求項2】
第2の薬剤はビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、またはフルオレセインである、請求項1に記載の修飾リポソーム。
【請求項3】
第2の薬剤はペグ化抗体またはペグ化ビオチンを含む、請求項1に記載の修飾リポソーム。
【請求項4】
薬物は疎水性薬物、またはリポソームの表面にコンジュゲートされた薬物である、請求項1に記載の修飾リポソーム。
【請求項5】
封入された親水性AE
は1×10
-8モル/L
~1×10
-6モル/Lの範囲の濃度を有する、請求項1に記載の修飾リポソーム。
【請求項6】
封入された親水性AE
は1000
~100,000,000,000個の
間の親水性A
E分子を含む、請求項1に記載の修飾リポソーム。
【請求項7】
目的の標的を標識する方法であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾リポソームに標的をコンジュゲートすることを含む、前記方法。
【請求項8】
生体試料において標的抗原の存在もしくは量を決定する、または標的抗原の生物学的活性を検出する方法であって、
a.培地中で、生体試料を、請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾リポソームと組み合わせる工程と;
b.修飾リポソームに結合された標的抗原によって生じたシグナルを検出または測定する工程とを含む、前記方法。
【請求項9】
生体試料中の標的抗原を検出する方法であって、
a.生体試料を請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾リポソームと接触させる工程であって、該修飾リポソームが標的抗原と特異的にコンジュゲートする、工程と;
b.コンジュゲートされた標的抗原によって生じたシグナルを撮像する工程と;
c.工程(b)で生じたシグナルを検出し、それによって標的抗原を検出する工程と
を含む、前記方法。
【請求項10】
撮像モダリティによって検出されたシグナルの強度を増大させるための方法であって、
a.標的を請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;
b.標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;
c.工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と
を含む、前記方法。
【請求項11】
イムノアッセイの感度を増大させるための方法であって、
a.標的を請求項1~6のいずれか1項に記載の修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;
b.標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;
c.工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中で、親水性アクリジニウムエステルを封入するリポソームの調製のため、および生体試料中の標的抗原を検出および標識するための、組成物ならびに方法が開示される。
【背景技術】
【0002】
イムノアッセイは、依然として、多くの分析物、特に複雑な、異成分からなる分子の分析のために、臨床検査室において一般的に好まれる方法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
イムノアッセイシグナルおよび感度の欠乏は、疾患を正確に診断および予後判定するための主な障害であり得る。当技術分野で、患者および医療提供者の両方に有益な迅速で信頼できる結果を提供する、改良されたイムノアッセイ標識方法に対し不変の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書中で、(i)封入された親水性アクリジニウムエステル(AE)、および(ii)該リポソームに封入された第1の薬剤および/または(iii)該リポソーム表面の第2の薬剤を含む、修飾リポソームが開示される。
【0005】
一部の実施形態では、第1の薬剤は、核酸、疎水性薬物、または親水性薬物を含む。
【0006】
一部の実施形態では、第2の薬剤はポリペプチド、抗体、炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG)、ペグ化ポリペプチド、小分子、または薬物を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドはビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、またはフルオレセインである。一部の実施形態では、ペグ化ポリペプチドはペグ化抗体またはペグ化ビオチンを含む。他の実施形態では、薬物は疎水性薬物、またはリポソームの表面にコンジュゲートされた薬物である。
【0007】
一部の実施形態によると、封入された親水性AEは少なくとも1×10-8モル/L~少なくとも1×10-6モル/Lの範囲の濃度を有する。他の実施形態では、封入された親水性AEは少なくとも1000~少なくとも100,000,000,000個の親水性AE分子を含む。
【0008】
さらなる実施形態では、リポソームの直径は約200nm~約1000nmである。一部の実施形態では、リポソームの直径は約30nm~約100nmである。
【0009】
本明細書中で、目的の標的を標識する方法もまた、開示される。該方法は、本明細書中で開示される修飾リポソームに標的をコンジュゲートすることを含む。
【0010】
一態様では、本明細書中で、標的抗原について生体試料をアッセイする方法が提供される。該方法は、(a)培地中で、生体試料を、本開示の修飾リポソームと組み合わせる工程と;修飾リポソームに結合された標的抗原について、培地を調べる工程とを含む。
【0011】
本明細書中で、生体試料中の標的抗原を検出する方法もまた、開示される。該方法は、(a)生体試料を、標的抗原と特異的にコンジュゲートしている開示される修飾リポソームと接触させる工程と;(b)コンジュゲートされた標的抗原によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出し、それによって標的抗原を検出する工程と、を含む。
【0012】
本明細書中で、撮像モダリティによって検出されたシグナルの強度を増大させるための方法が、さらに提供される。該方法は、(a)標的を、開示される修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;(b)標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と、を含む。
【0013】
イムノアッセイの感度を増大させるための方法もまた、提供される。該方法は、(a)標的を、開示される修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;(b)標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と、を含む。
【0014】
概要、ならびに以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読まれた場合、さらに理解される。開示されるデバイス、システム、および方法を説明する目的のために、図面中で、デバイス、システム、および方法の例示的な実施形態が示される;しかしながら、デバイス、システム、および方法は、開示される特定の実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】様々な材料を使用したリポソーム修飾の、種々の例を説明する構成図である。
【
図2】
図2A~
図2Cは、アクリジニウムエステル(AE)を閉じ込めたリポソームを説明する、一連の構成図である。
図2Aおよび
図2Bは、種々の濃度のAEを含有するリポソームを示す。リポソームの生化学的および生物物理学的性質は、
図2Cに示されるように修飾され得る。リポソームの表面は、
図2Cでは負電荷を帯びているが、
図2Aおよび
図2Bでは正味電荷は中性である。
【
図3】
図3A~
図3Bは、AEを含有するか、または封入するリポソーム(「AE封入リポソーム」)を、さらなる修飾で作製され得ることを説明する図である。
図3A:AE封入リポソームは、リポソーム表面で、ビオチン、フルオレセイン、および/またはタンパク質を含むがこれらに限定されない種々の官能基でさらに修飾される。
図3B:リポソーム膜の透過性および親水性は、リポソームの表面にポリエチレングリコール(PEG)を加えることによって促進される。
【
図4】AEを閉じ込めるAE封入リポソームの直径を、種々のサイズで生じ得ることを示す、一連の構成図である。30nm、50nm、および100nmの、AEを閉じ込めたリポソームを調製した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
開示される方法は、本開示の一部を形成する添付の図面に関連して挙げられる以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解され得る。開示される方法は、本明細書中に記載されるおよび/または示される特定の方法に限定されないこと、ならびに本明細書中で使用される専門用語が特定の実施形態を例のみによって説明する目的のためであって、特許請求される方法の限定を意図しないことが、理解されるであろう。
【0017】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で本明細書中に記載される、開示される方法のある特定の特徴もまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが、認識されるであろう。反対に、簡潔のために単一の実施形態の文脈で記載される、開示される方法の種々の特徴もまた、別々に、または任意の部分的組合せで提供され得る。
【0018】
定義
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の試験の実行で使用し得る本明細書中に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料が使用され得るが、好ましい材料および方法が本明細書中に記載される。本発明の記載および特許請求において、以下の専門用語が使用されることになる。
【0019】
本明細書中で使用される専門用語が、単に特定の実施形態を説明する目的のためであり、限定を意図されないこともまた、理解されるであろう。
【0020】
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって明らかに他に示されない限り、複数の指示物を含む。同様に、単語「または」は、文脈によって明らかに他に示されない限り、「および」を含むよう意図される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、用語「約」は、当業者に理解され、使用される文脈である程度変化することになる。本明細書中で使用される場合、例えば量、濃度、時間等の測定可能な値に言及する場合、用語「約」は、特定された値から±20%または±10%、より好ましくは±5%、さらにより好ましくは±1%、なおより好ましくは±0.1%の変化を、そのような変化が開示される方法を行うのに適切であるように、包含するよう意図される。
【0022】
用語、アクリジニウムエステルは、本明細書中で開示される場合、リポソーム内に封入され得、化学発光シグナルを生じ得る、任意のアクリジニウムエステルを指す。
【0023】
用語「分析物」は、本明細書中で使用される場合、広範な用語であり、通常の意味で使用され、限定されることなく、生物学的液体(例えば、血液、間質液、脳脊髄液、リンパ液または尿)中の物質または化学的成分等の試料中の検出可能な構成要素または目的の標的を指すことを含む。分析物としては、自然発生物質、人工物質、代謝産物および/または反応産物を挙げることができる。分析物の例としては、限定されないが、モノもしくはポリエピトープ、抗原性、もしくはハプテンであるリガンド、またはDNAもしくはRNA等の核酸が挙げられる。
【0024】
用語「固体支持体」、「支持構造」、および「基質」は、本明細書中で使用される場合、互換可能に使用され、剛性または半剛性の1つまたは複数の表面を有する材料または材料の群を指す。指示構造の形状またはサイズに限定はない。多くの実施形態では、固体支持体は、ビーズ(例えば、シリカビーズ、磁性ビーズ、常磁性ビーズ等)、樹脂、ゲル、ミクロスフィア、または他の幾何学的配置の形態をとる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「官能基」は、特徴的な化学反応の要因である、分子内の化学基をいう。例示的な官能基としては、限定されないが、第一級アミン、カルボキシル、カルボニル、アルデヒド、スルフヒドリル、水酸基およびエステル等の、酸素、窒素、リンまたは硫黄原子を含有するものが挙げられる。本明細書中で使用される場合、官能基は、別の基と反応して共有結合を形成し得る場合、その基と反応性がある。
【0026】
「リンカー」は、共有結合、またはイオン結合、ファンデルワールス結合もしくは水素結合によって2つの他の分子を連結する分子、例えば、5’末端で1つの相補配列にハイブリダイズし、3’末端で別の相補配列にハイブリダイズして、このように2つの非相補配列を連結する、核酸分子を指す。
【0027】
「架橋剤」は、2つの他の分子を共有結合的に連結するリンカーを指す。
【0028】
用語「リポソーム」は、本明細書中で使用される場合、少なくとも1つの脂質二重層を含む膜で構成された、人工的に形成された小胞または嚢を指す。該用語は、細胞、もしくは細胞を含む生体試料から単離された、自然発生の小胞または他の自然発生の膜状の物質を除外すると理解される。用語「小胞」および「リポソーム」は、少なくとも1つの脂質二重層の膜を含む人工的に形成された嚢を参照して本明細書中で使用される場合、同義であり得る。例えば、人工的に形成された大きな一枚膜リポソーム小胞、または「LUV」は、小胞と呼ばれるが、本特許出願の目的のためには、リポソームとも呼ばれる。
【0029】
ポリ(エチレングリコール)は、一般にPEGとして知られ、線状鎖を形成するエチレンオキシドのオリゴマーを指す。PEG分子は、線状であっても分枝状であってもよく、各分子は少なくとも2つ、一般には3以上のPEG分枝、または中心のコア基から発するアームを有する。
【0030】
用語「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子をいう。抗体は、典型的には、免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、細胞内抗体(「イントラボディ」)、Fv、FabおよびF(ab)2、ならびに単鎖抗体(scFv)、ラクダ抗体およびヒト化抗体を含む、様々な形態で存在し得る。本明細書中で考えられる場合、量子ドットおよび支持構造にコンジュゲートされた抗体は、分析物を定性的および定量的に分析できるように、特異的もしくは非特異的に分析物を認識および/または分析物に結合し得る。
【0031】
本明細書中で使用される場合、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」および「特徴づけられる」は、交換可能で、包括的で、無制限であり、さらなる引用されていない要素または方法工程を除外しない。用語「含む」の本明細書中の任意の引用は、特に組成物の構成要素の記載またはデバイスの要素の記載において、引用される構成要素または要素から本質的になる、および引用される構成要素または要素からなる、組成物および方法を包含するよう理解される。
【0032】
本明細書中で使用される場合、用語「からなる」は、特許請求の範囲の要素において特定されていない任意の要素、工程、または成分を除外する。
【0033】
「疾患」によっては、細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷または妨害する任意の状態または障害を意味する。
【0034】
「検出する」は、標的(例えば、検出される分析物)の存在、非存在または量を同定することを指す。
【0035】
「個体」、「患者」または「被験者」は、これらの用語が本明細書中で互換可能に使用される場合、鳥類、ヒトおよび他の霊長類、ならびにウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、およびイヌ等の商業的に関連のある哺乳動物を含む他の哺乳動物を含むがこれらに限定されない、任意の動物種の一員を含む。好ましくは、被験者はヒトである。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」および「処置する」は、治療効果および/または予防効果を含むがこれらに限定されない、有益な、または所望の結果を得るための、アプローチを指す。例えば、用語、処置は、疾患もしくは障害の発症の前または後に、薬剤を投与し、それによって疾患または障害の全ての兆候を予防または除去することを含む。別の例として、疾患の症状に有効である疾患の臨床兆候後の薬剤の投与は、疾患の「処置」を含む。
【0037】
治療効果によって、患者が根底にある障害に依然として悩まされている可能性があるにもかかわらず、患者において改善が観察されるような、根底にある、処置されている障害の根絶もしくは寛解、または根底にある障害に関連する生理的症状のうちの1つもしくはそれ以上の寛解を意味する。予防効果のために、特定の疾患を発症するリスクのある患者に、または疾患の生理的症状のうちの1つもしくはそれ以上を訴える患者に、この疾患の診断が為されていなかったとしても、組成物を投与し得る。
【0038】
本開示全体を通して、本発明の種々の態様は、範囲形式で表される。範囲形式の記載が単に便宜上、および簡潔のためであり、本発明の範囲に対する変更できない制限として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値、および適切な場合、範囲内の数値の部分的な整数を、特に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6等の範囲の記載は、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6等の部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を、特に開示していると考えられるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0039】
記載の態様に関する種々の用語は、本明細書および特許請求の範囲全体を通して使用される。そのような用語は、他に示されない限り、当該分野でのその通常の意味を与えられる。他の特に定義された用語は、本明細書中に提供される定義と一致した様式で解釈される。
【0040】
詳細な説明
本明細書中で、(i)封入された親水性アクリジニウムエステル(AE)、および(ii)該リポソームに封入された第1の薬剤および/または(iii)該リポソーム表面の第2の薬剤を含む、修飾リポソームが提供される。
【0041】
AEは、放射性同位体と比較して増大した感度の形態で優れたイムノアッセイ性能を提供する、安定な化合物である。AEの使用は、リガンドもしくは分析物(抗原等)を標識すること;リガンドもしくは分析物の特異的な結合パートナー(対応する抗体等)を標識すること;または核酸、および核酸を含む分子を標識すること等の様々な適用に有利であり得る。
【0042】
開示される修飾リポソームで使用されるAEの親水性は、リポソーム壁を通る漏出なしに、それらをリポソーム内の封入に適するようにする。親水性AEの詳細な説明は、当技術分野において開示の全体が参照によって本明細書に組み入れる米国特許第5,656,426(A)号等で見ることができる。
【0043】
一部の実施形態では、開示される修飾リポソームに封入される親水性AEの濃度は、少なくとも1.10-10モル/L~少なくとも1.10-9モル/L、少なくとも1.10-9モル/L~少なくとも1.10-8モル/L、少なくとも1.10-8モル/L~少なくとも1.10-7モル/L、少なくとも1.10-7モル/L~少なくとも1.10-6モル/L、少なくとも1.10-6モル/L~少なくとも1.10-5モル/L、少なくとも1.10-5モル/L~少なくとも1.10-4モル/L、少なくとも1.10-4モル/L~少なくとも1.10-3モル/L、少なくとも1.10-3モル/L~少なくとも1.10-2モル/L、および少なくとも1.10-2モル/L~少なくとも1.10-1モル/Lである。他の実施形態では、親水性AEは、少なくとも1.10-8モル/L~少なくとも1.10-6モル/Lの範囲の濃度を有する。
【0044】
一部の実施形態では、修飾リポソームは、少なくとも10~少なくとも100個の親水性AE分子、少なくとも100~少なくとも1000個の親水性AE分子、少なくとも1000~少なくとも10,000個の親水性AE分子、少なくとも10,000~少なくとも100,000個の親水性AE分子、少なくとも100,000~少なくとも1,000,000個の親水性AE分子、少なくとも1,000,000~少なくとも10,000,000個の親水性AE分子、少なくとも10,000,000~少なくとも100,000,000個の親水性AE分子、少なくとも100,000,000~少なくとも1,000,000,000個の親水性AE分子、少なくとも1,000,000,000~少なくとも10,000,000,000個の親水性AE分子、少なくとも10,000,000,000~少なくとも100,000,000,000個の親水性AE分子、および少なくとも100,000,000,000~少なくとも1,000,000,000,000個の親水性AE分子を含む。他の実施形態では、修飾リポソームは、少なくとも1000~少なくとも100,000,000,000個の親水性AE分子を含む。
【0045】
さらなる実施形態では、本明細書中で開示される修飾リポソームは、種々のサイズを含む。一部の実施形態では、リポソームの直径は、約20nm~約1000nmである。一部の実施形態では、リポソームの直径は、約20nm~約30nm;約30nm~約40nm;約40nm~約50nm;約50nm~約60nm;約60nm~約70nm;約70nm~約80nm;約80nm~約90nm;約90nm~約100nm;約100nm~約110nm;約110nm~約120nm;約120nm~約130nm;約130nm~約140nm;約140nm~約150nm;約150nm~約160nm;約160nm~約170nm;約170nm~約180nm;約180nm~約190nm;約190nm~約200nm;約200nm~約250nm;約250nm~約300nm;約350nm~約400nm;約400nm~約450nm;約450nm~約500nm;約500nm~約550nm;約550nm~約600nm;約600nm~約650nm;約650nm~約700nm;約700nm~約750nm;約750nm~約800nm;約800nm~約850nm;約850nm~約900nm;約900nm~約950nm;および約950nm~約1000nmである。他の実施形態では、リポソームの直径は、約20~約500nmである。さらに他の実施形態では、リポソームの直径は、約30nm~約100nmである。
【0046】
一部の実施形態では、開示される修飾リポソームに封入される第1の薬剤は、核酸、疎水性薬物、および親水性薬物であり得る。疎水性薬物の例としては、限定されないが、アンホテリシン、シリビン、ドセタキセル、シンバスタチン、ハロペリドールおよびアルベンダゾールが挙げられる。親水性薬物の例としては、限定されないが、塩酸ドキソルビシン、シトシンアラビノシド、エチニルシチジン、および5-フルオロ-デオキシウリジンが挙げられる。
【0047】
一部の実施形態では、修飾リポソームの第2の薬剤は、ポリペプチド、抗体もしくはその抗原結合断片、アプタマー、アフィボディ、アフィマー、炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG)、ペグ化ポリペプチド、小分子、または薬物を含む。一部の実施形態では、ポリペプチドは、ビオチン、アビジンもしくはアビジン誘導体(例えば、ニュートラアビジン)、ストレプトアビジン、またはフルオレセインである。一部の実施形態では、ペグ化ポリペプチドは、ペグ化抗体またはペグ化ビオチンを含む。一部の実施形態では、薬物は、疎水性薬物、またはリポソームの表面にコンジュゲートされた薬物である。
【0048】
第2の薬剤は、組換え、キメラ、遺伝子改変、または複合タンパク質であり得る。一部の実施形態では、第2の薬剤は、組換え抗体または抗体断片であり得る。第2の薬剤としては、エピトープ、抗原、または第2の薬剤を分子的もしくは免疫原的に標識、発現、もしくは精製するのに有用な他の修飾を挙げることができる。例えば、一部の実施形態では、第2の薬剤は、6-hisタグ(6-ヒスチジン)、Mycタグ、HAタグ、FLAGタグ、または同様のエピトープタグにコンジュゲートさせて、本明細書中に記載される組成物を含む反応混合物、および例えば生体試料からの、第2の薬剤の単離、分離、または抽出を容易にし得る。本明細書中に記載される修飾リポソームの第2の薬剤は、適切な界面活性剤または膜破壊機械力の使用によって、リポソームから抽出される。このように、第2の薬剤は、第2の薬剤に関連する干渉物質の量を決定するために、生化学アッセイが行われた後にリポソームから分離される。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書中に記載される修飾リポソームとしては、多重膜リポソーム小胞(MLV)、小さな一枚膜リポソーム小胞(SUV)、大きな一枚膜リポソーム小胞(LUV)、および巨大一枚膜リポソーム小胞(GUV)が挙げられる。一部の実施形態では、脂質二重層は、スフィンゴ脂質、グリセロリン脂質、ステロール、およびステロール誘導体を含み得る。使用されるスフィンゴ脂質としては、種々の長さの飽和、モノ不飽和、および/または多価不飽和アシル鎖を含有する、スフィンゴミエリンならびにセラミドを挙げることができる。種々の長さの飽和、モノ不飽和、および/または多価不飽和アシル鎖を含有する、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、カルジオリピン、ホスファチジルセリン(PS)を含む、種々の頭部基構造を有するリン脂質を使用し得る。使用されるステロールおよびステロール誘導体としては、コレステロール、ブラシカステロール、アロコレステロール、コレステロールメチルエーテル、カンペスタノール、カンペステロール、酢酸コレステリル、コプロスタノール、デスモステロール、デヒドロデスモステロール、ジヒドロコレステロール、ジヒドロラノステロール、エピコレステロール、ラソステロール、ラノステロール、シトスタノール、シトステロール、スチグマステロール、チモスタノール、およびチモステロールを挙げることができる。
【0050】
本開示のリポソームを形成するのに使用され得る脂質は、天然または合成のいずれかの、スフィンゴ脂質、グリセロリン脂質、ステロール、およびステロール誘導体を含み得る。使用され得るスフィンゴ脂質としては、種々の長さの飽和、モノ不飽和、および/または多価不飽和アシル鎖を含有する、スフィンゴミエリンならびにセラミドが挙げられる。使用され得る、種々の頭部基構造を有するリン脂質としては、種々の長さの飽和、モノ不飽和、および/または多価不飽和アシル鎖を含む、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、カルジオリピン、ホスファチジルセリン(PS)が挙げられる。使用され得るステロールおよびステロール誘導体としては、限定されないが、コレステロール、ブラシカステロール、アロコレステロール、コレステロールメチルエーテル、カンペスタノール、カンペステロール、酢酸コレステリル、コプロスタノール、デスモステロール、デヒドロデスモステロール、ジヒドロコレステロール、ジヒドロラノステロール、エピコレステロール、ラソステロール、ラノステロール、シトスタノール、シトステロール、スチグマステロール、チモスタノール、およびチモステロールが挙げられる。
【0051】
スフィンゴ脂質、グリセロリン脂質、ステロール、およびステロール誘導体の混合物を含む、脂質の混合物もまた、開示される修飾リポソームに使用され得る。ステロールおよびステロール誘導体は単独で使用されるべきではなく、すなわち、ステロールおよびステロール誘導体は、全脂質の約0%~約50%の範囲で、スフィンゴ脂質またはグリセロリン脂質含有リポソームを有する混合物に含まれるべきである。一部の実施形態では、スフィンゴ脂質は、ブタ脳スフィンゴミエリン、ニワトリ卵スフィンゴミエリン、およびウシ乳スフィンゴミエリンを含み得る。一部の実施形態では、グリセロリン脂質は、種々の長さの2つの飽和アシル鎖(例えば、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-ミオイノシトール)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホイノシトール、1’,3’-bis[1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ]-グリセロール、1’,3’-bis[1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ]-グリセロール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)を有する、ならびに種々の長さの1つの飽和アシル鎖および種々の長さの1つのモノ不飽和アシル鎖(例えば、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホイノシトール、1’,3’-bis[1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ]-グリセロール、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、1-ステアロイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)を有する、ならびに種々の長さの1つの飽和アシル鎖および種々の長さの1つの多価不飽和アシル鎖(例えば、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-ステアロイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1-ステアロイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1-ステアロイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)、1-パルミトイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン、1-ステアロイル-2-リノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン)を有する、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)、カルジオリピン、ホスファチジルセリン(PS)等の、種々の頭部基構造を有するリン脂質を含み得る。一部の実施形態では、各脂肪酸アシル鎖は、約16~20個の範囲の多数の炭素原子を有する。他の実施形態では、各脂肪酸アシル鎖は、16、18、または20個の炭素原子を有する。一部の実施形態では、各脂肪酸アシル鎖あたりの二重結合の数は、0~2個の範囲である。スフィンゴ脂質またはグリセロリン脂質含有リポソームとの使用のためのステロールおよびステロール誘導体は、コレステロール、ジヒドロコレステロール、エピコレステロール、シトステロール、およびラソステロールを含み得る。スフィンゴ脂質およびグリセロリン脂質は、ステロールおよびステロール誘導体の存在下で、単独で、またはスフィンゴ脂質およびグリセロリン脂質の混合物としてのいずれかで使用され、本明細書中に記載される修飾リポソームを形成し得る。例えば、一部の実施形態では、リポソームは、100%ブタ脳スフィンゴミエリン、またはブタ脳スフィンゴミエリンおよびコレステロールの混合物を含み得る。一部の非限定的な例では、ステロールおよびステロール誘導体は、全脂質の約0%~約50%の範囲、最も好ましくは約30%であり得る。
【0052】
開示される修飾リポソームは、修飾リン脂質を含み得る。例えば、スフィンゴ脂質およびグリセロリン脂質は、小分子、ポリエチレングリコール(PEG)、蛍光分子、蛍光PEG、および/または臭素で修飾される。スフィンゴ脂質およびグリセロリン脂質、ステロール、ステロール誘導体、ならびに修飾された種類の脂質は、Sigma-Aldrich(St.Louis、MO);Invitrogen(Carlsbad、CA);Avanti Polar Lipids(Alabaster、AL);Fisher Scientific(Pittsburgh、PA);Steraloids(Newport、RI)等の種々の供給源から、商業的に容易に入手可能である。
【0053】
本明細書中で、目的の標的を標識する方法もまた、開示される。該方法は、標的を、本明細書中で開示される修飾リポソームにコンジュゲートすることを含む。
【0054】
一部の実施形態では、目的の標的は、抗原、ハプテン、DNAプローブ、RNAプローブ、または抗体であり得る。他の実施形態では、目的の標的は、生体試料中に存在し得る。一部の実施形態では、生体試料は、限定されないが、全血、血清、血漿、尿、唾液、精液、または脳脊髄液であり得る。
【0055】
一態様では、本明細書中で、標的抗原について生体試料をアッセイする方法が提供される。該方法は、(a)培地中で、生体試料を、本開示の修飾リポソームと組み合わせる工程と;修飾リポソームに結合された標的抗原について、培地を調べる工程と、を含む。
【0056】
一部の実施形態では、アッセイは、イムノアッセイ、臨床化学アッセイまたは他の医学的検査もしくは診断検査等の生化学的アッセイを含む。一部の実施形態では、アッセイは、サンドイッチアッセイまたはin situハイブリダイゼーションアッセイを含み得る。
【0057】
一部の実施形態では、開示される修飾リポソームは、生体試料の他に、生化学的アッセイのための試薬に加えられるか、または生化学的アッセイのための試薬とともにインキュベートされる。例えば、修飾リポソーム組成物は、生化学的アッセイの構成要素として提供されるバッファーとともにインキュベートされる。さらに、修飾リポソームは、生化学的アッセイのための反応混合物とともにインキュベートされ、この混合物は、アッセイのための1つまたはそれ以上の試薬、および生体試料を含む。一部の実施形態では、修飾リポソーム組成物は、懸濁液の形態で、生体試料、試薬、または生化学的アッセイのための反応混合物に加えられる。一部の実施形態では、修飾リポソーム組成物は、生体試料、試薬、もしくは反応混合物中で、または生化学的アッセイのための反応混合物に寄与する1つもしくはそれ以上の構成要素中で、「乾燥形態」から再構成される。
【0058】
本明細書中で、生体試料中の標的抗原を検出する方法もまた、提供される。該方法は、(a)生体試料を、標的抗原と特異的にコンジュゲートしている開示される修飾リポソームと接触させる工程と;(b)コンジュゲートされた標的抗原によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出し、それによって標的抗原を検出する工程と、を含む。
【0059】
本明細書中で、撮像モダリティによって検出されたシグナルの強度を増大させるための方法が、さらに提供される。該方法は、(a)標的を、開示される修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;(b)標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と、を含む。
【0060】
イムノアッセイの感度を増大させるための方法もまた、提供される。該方法は、(a)標的を、開示される修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;(b)標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;(c)工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と、を含む。
【0061】
一部の実施形態では、開示される修復リポソームは破裂させられ、封入された親水性AEによって生じたシグナルの量が測定される。
【0062】
一部の実施形態では、ペプチドおよび/または核酸が、開示される修飾リポソームを使用して検出される。例えば、DNAまたはRNAプローブが、ハプテンまたはビオチン化修飾ヌクレオチド等のリガンドでタグ付けされる。DNAまたはRNAプローブは、相補的DNAまたはRNAとハイブリダイズでき、固体支持体に固定される。固定されたプローブは、次いで、抗体等のリガンドに対する受容体、またはプローブがビオチン化されている場合はアビジンを含む、修飾リポソームと反応させられる。リポソームは破裂させられ、封入されたアクリジニウムエステルによって生じたシグナルの量が測定される。
【0063】
本開示の他の態様は、当技術分野で公知の手段によって、目的の標的(例えば、ペプチドまたはポリペプチド)の存在もしくは量を決定するか、または目的の標的の生物学的活性を検出することを含む。これらの手段は、種々のサンドイッチ、競合、または他のアッセイ形式で標識分子を利用し得る、イムノアッセイデバイスおよび方法を含む。そのようなアッセイは、ペプチドもしくはポリペプチドの存在または非存在を示すシグナルを生じる。さらに、シグナル強度は、好ましくは、試料中に存在するポリペプチドの量と直接的または間接的に相関(例えば、反比例)し得る。さらなる適切な方法は、正確な分子量もしくはNMRスペクトル等のペプチドもしくはポリペプチドに特異的な物理的または化学的性質を測定することを含む。これらの方法は、例えばバイオセンサー、イムノアッセイに連結された光学デバイス、バイオチップ、質量分析計等の分析デバイス、NMR分析装置、またはクロマトグラフィーデバイスを含む。さらに、該方法としては、マイクロプレートELISAベースの方法、完全自動化またはロボットイムノアッセイ(例えば、ADVIA Centaur(登録商標)XPT、ADVIA Centaur(登録商標)XP、ADVIA Centaur(登録商標)CP、IMMULITE(登録商標)1000、IMMULITE(登録商標)2000 XPiおよびAtellica(登録商標)のようなSiemensのプラットフォーム)、酵素的コバルト結合アッセイ(CBA)、およびラテックス凝集アッセイが挙げられる。
【0064】
特異的ハイブリダイゼーションは、必要に応じて、高ストリンジェンシー条件または中ストリンジェンシー条件下で行われる。好ましい実施形態では、特異的ハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は、高ストリンジェンシーである。特異的ハイブリダイゼーションは、存在する場合、次いで、標準的な方法を使用して検出される。核酸プローブと試験試料中の遺伝子との間に特異的ハイブリダイゼーションが生じる場合、核酸プローブ中に存在する配列はまた、被験者のmRNAにも存在する。1つより多い核酸プローブもまた、使用される。
【0065】
実例となる実施形態
ここで、開示される技術の実例となる実施形態が提供される。これらの実施形態は、単なる実例であり、本開示または本明細書に添付された特許請求の範囲の範囲を限定しない。
実施形態1.修飾リポソームであって、(i)封入された親水性アクリジニウムエステル(AE)、および(ii)該リポソームに封入された第1の薬剤および/または(iii)該リポソーム表面の第2の薬剤を含む、修飾リポソーム。
実施形態2.第1の薬剤は:核酸、疎水性薬物、および親水性薬物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、実施形態1に記載の修飾リポソーム。
実施形態3.第2の薬剤はポリペプチド、抗体、炭水化物、ポリエチレングリコール(PEG)、ペグ化ポリペプチド、小分子、または薬物を含む、実施形態1に記載の修飾リポソーム。
実施形態4.ポリペプチドはビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、またはフルオレセインである、実施形態3に記載の修飾リポソーム。
実施形態5.ペグ化ポリペプチドはペグ化抗体またはペグ化ビオチンを含む、実施形態3に記載の修飾リポソーム。
実施形態6.薬物は疎水性薬物、またはリポソームの表面にコンジュゲートされた薬物である、実施形態3に記載の修飾リポソーム。
実施形態7.封入された親水性AEは少なくとも1×10-8モル/L~少なくとも1×10-6モル/Lの範囲の濃度を有する、実施形態1に記載の修飾リポソーム。
実施形態8.封入された親水性AEは少なくとも1000~少なくとも100,000,000,000個の親水性AE分子を含む、実施形態1に記載の修飾リポソーム。
実施形態9.リポソームの直径は約20nm~約1000nmである、実施形態1に記載の修飾リポソーム。
実施形態10.リポソームの直径は約30nm~約100nmである、実施形態9に記載の修飾リポソーム。
実施形態11.目的の標的を標識する方法であって、実施形態1~10のいずれか一つの実施形態に記載の修飾リポソームに標的をコンジュゲートすることを含む、方法。
実施形態12.標的抗原について生体試料をアッセイする方法であって、
a.培地中で、生体試料を、実施形態1~11のいずれか一つの実施形態に記載の修飾リポソームと組み合わせる工程と;
b.修飾リポソームに結合された標的抗原について、培地を調べる工程と
を含む、方法。
実施形態13.生体試料中の標的抗原を検出する方法であって、
c.生体試料を、標的抗原と特異的にコンジュゲートしている実施形態1~11のいずれか一つの実施形態に記載の修飾リポソームと接触させる工程と;
d.コンジュゲートされた標的抗原によって生じたシグナルを撮像する工程と;
e.工程(b)で生じたシグナルを検出し、それによって標的抗原を検出する工程と
を含む、方法。
実施形態14.撮像モダリティによって検出されたシグナルの強度を増大させるための方法であって、
f.標的を実施形態1~11のいずれか一つの実施形態に記載の修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;
g.標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;
h.工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と
を含む、方法。
実施形態15.イムノアッセイの感度を増大させるための方法であって、
i.標的を実施形態1~11のいずれか一つの実施形態に記載の修飾リポソームにコンジュゲートすることによって、標的を標識する工程と;
j.標識された標的によって生じたシグナルを撮像する工程と;
k.工程(b)で生じたシグナルを検出する工程と
を含む、方法。
【実施例】
【0066】
以下の実施例は、本明細書中に開示される実施形態の一部をさらに説明するために提供される。実施例は、開示される実施形態を、限定することではなく、説明することを意図される。
【0067】
材料および方法
試薬
1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC);1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルコリン(POPC);1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC);1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(POPS);ブタ脳スフィンゴミエリン(SM);コレステロール(CHOL);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)-2000](PEG2000ビオチン-DSPE);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ビオチニル)(ビオチン-DPPE);1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ローダミン-DPPE);N-(フルオレセイン-5-チオカルバモイル-1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(フルオレセイン-DHPE);N-スルホ-プロピル-ジメチルアクリジニウムエステル-N-ヒドロキシスクシンイミド(NSP-DMAE)およびトリメチルシリルプロピオン酸DMAE(TSP-DMAE)。
【0068】
脂質は、-20℃で保管した。30、50、100、200、および400ナノメートルの細孔径を有する、種々のポリカーボネート膜フィルターを使用した。
【実施例1】
【0069】
アクリジニウムエステルを封入したリポソームの調製および精製
本明細書で、アクリジニウムエステル(AE)等の多数のシグナル発生分子(例えば、数億個)を封入する種々のサイズのリポソーム小胞(例えば、30~1000nm)が提供される。
【0070】
アクリジニウムエステルを封入する4mMの大きな一枚膜リポソーム小胞(LUV)を調製するために、脂質(SMもしくはDPPCもしくはPOPCもしくはDOPCまたはSM/POPC 1/1もしくはDPPC/POPC 1/2もしくはPOPC/POPS 3/1)を混合し、窒素下で乾燥し、その後少なくとも2時間高真空で乾燥させた。リポソーム中で使用されたコレステロールの量は、特定の実験に依存して、0~50モル%の間で変化させた。全ての脂質混合物は、リポソームの終濃度を追跡するために、0.025モル%のローダミンPEを含有していた。乾燥された脂質膜を、70℃でリン酸緩衝生理食塩水(PBS、137mM NaCl、pH7.4)を含有するNSP-DMAEまたはTSP-DMAEに分配し、次いで使用前に室温まで冷却した。
図2A~
図2Cに示されるように、AEの濃度を変化させることによって(
図2A~
図2B)、またはリポソームの生化学的および生物物理学的性質を変更することによって(例えば、負電荷を帯びたリポソーム、
図2C)のいずれかで、種々のアクリジニウムエステル(AE)封入リポソームを設計し得る。NSP-DMAEおよびTSP-DMAEの濃度は、0~15mg/mLの間で変化させた。脂質混合物を、10サイクルの凍結/解凍に供し、次いで一定の細孔径(例えば、30nm、50nm、100nm、200nm、および400nm)を有するポリカーボネートフィルターを通して押し出して、均一なリポソームサイズを得た(
図4)。NAP-5(Sephadex G-25)カラムを使用して、閉じ込められなかったNSP-DMAEまたはTSP-DMAEを除去した。NAP-5カラム精製の前および後の両方に、動的光散乱(DLS)測定を行った。得られたリポソームの粒度分布から、リポソームの平均経は、精製工程の後も依然として維持されていることが示された。
【実施例2】
【0071】
官能基を有するアクリジニウムエステルを封入するリポソームの調製および精製
目的は、AEを閉じ込めたリポソームが、リポソームの表面上の種々の官能基の存在下でも効率的に調製されるかどうかを定義すること、および官能基の付加が、得られたリポソームに影響を与えないことを確認することであった(
図3A~
図3B)。そのために、脂質を窒素下で乾燥させる前に、ビオチン-DPPE、PEG 2000ビオチン-DSPEまたはフルオレセイン-DHPEを、上述のようにコレステロールの有無にかかわらず、脂質混合物、すなわちSMもしくはDPPCもしくはPOPCもしくはDOPCまたはSM/POPC 1/1もしくはDPPC/POPC 1/2もしくはPOPC/POPS 3/1に加えた。リポソーム中で使用されたビオチン-DPPE、PEG 2000ビオチン-DSPEおよびフルオレセイン-DHPEの量は、0~20モル%の間で変化させた。リポソームの表面の透過性および親水性は、特に、ポリエチレングリコール(PEG)の付加によって促進された。得られたリポソームに対して行われた動的光散乱(DLS)解析から、官能基を有する、30nm、50nmおよび100nmの直径で、リポソームが効率的に形成されることが示された。ビオチン-DPPE、PEG 2000ビオチン-DSPEおよびフルオレセイン-DHPEの付加は、リポソームがアクリジニウムエステルを閉じ込める能力に影響を与えなかった。官能基含有リポソームの安定性を調べるために、リポソームのサイズは終始維持された。
【0072】
図3A~
図3Bに示されるように、開示されるAE封入リポソームは、さらなる修飾を含み得る。これらの修飾としては、限定されないが、リポソーム表面上のビオチン、フルオレセイン、および/またはタンパク質等の種々の官能基の付加が挙げられる(
図3A)。リポソーム膜の透過性および親水性は、リポソームの表面上にポリエチレングリコール(PEG)を加えることによって促進され得る(
図3B)。
【0073】
よって、ビオチン、フルオレセイン、およびタンパク質を含むがこれらに限定されない種々の官能基が、開示されるリポソーム小胞の表面に取り付けられ得る。これらの複合体は、限定されないが、ADVIA Centaur(登録商標)XPT、ADVIA Centaur(登録商標)XP、ADVIA Centaur(登録商標)CP、IMMULITE(登録商標)1000、IMMULITE(登録商標)2000 XPiおよびAtellica(登録商標)等のSiemensのプラットフォーム等の、イムノアッセイプラットフォームを使用して目的の標的を検出するのに有用である。本開示の、封入されたAE小胞は、イムノアッセイシグナルまたは相対発光量(RLU)を著しく促進し、出力結果の感度を最適化する。リポソーム表面修飾に依存して、官能化AEリポソームは、Lite試薬として、または信号増幅器として利用され得る。
【0074】
本明細書中で引用される各特許、特許出願、および刊行物のいずれの開示も、その全体が参照によって本明細書に組み入れる。
【0075】
当業者は、本発明の好ましい実施形態に多数の変化および改変を為し得ること、ならびに本発明の趣旨から逸脱することなくそのような変化および改変を為し得ることを認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨および範囲に入るような全てのそのような同等の変化に及ぶことが意図される。