IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッドの特許一覧

特許7660145固体酸触媒を使用するN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)の合成
<>
  • 特許-固体酸触媒を使用するN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)の合成 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】固体酸触媒を使用するN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)の合成
(51)【国際特許分類】
   C07C 231/02 20060101AFI20250403BHJP
   C07C 233/66 20060101ALI20250403BHJP
   B01J 21/16 20060101ALI20250403BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20250403BHJP
   B01J 31/10 20060101ALI20250403BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250403BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C233/66
B01J21/16 Z
B01J29/70 Z
B01J31/10 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022575417
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021036296
(87)【国際公開番号】W WO2021252420
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2024-06-07
(31)【優先権主張番号】63/037,834
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ ジェイムズ エイ
(72)【発明者】
【氏名】セングプタ スーラヴ クマール
(72)【発明者】
【氏名】スリセティ ヴェンカツワラ ラオ
【審査官】向井 佑
(56)【参考文献】
【文献】ロシア国特許第2283307(RU,C1)
【文献】ロシア国特許第2615760(RU,C1)
【文献】ロシア国特許第2348612(RU,C2)
【文献】ロシア国特許第2547262(RU,C2)
【文献】米国特許第6194616(US,B1)
【文献】Bashir Ahmad Dar et al.,Solvent-free, scalable and expeditious synthesis of benzanilides under microwave irradiation using clay doped with palladium nanoparticles as a recyclable and efficient catalyst,Green Chemistry Letters and Reviews,2015年,Vol.8 No.2,p.1-8
【文献】JIN Ningren et al.,Synthesis of high-purity 2-(4-aminophenyl)-1H-benzimidazol-5-amine,Chemical Industry and Engineering Progress,2009年,Vol.28,p.847-851, 863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
B01J
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む第1の混合物を形成する工程と、
b)前記有機溶媒に可溶性ではない固体酸触媒の存在下で前記第1の混合物を少なくとも90℃の温度で反応させて、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドと前記有機溶媒とを含む第2の混合物を形成する工程であって、前記固体酸触媒が酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、又はそれらの混合物である工程と、
c)前記第2の混合物を冷却して前記N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを固体として沈殿させる工程と、
d)前記第2の混合物から前記固体N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを取り出す工程とを含む、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する方法。
【請求項2】
a)において形成される有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む前記第1の混合物が前記固体酸触媒を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体酸触媒を含有する前記第1の混合物が、前記2,4-ジニトロアニリン、有機溶媒、及び固体酸触媒を予備混合することと、その後に4-ニトロベンゾイルクロリドを添加することによって形成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性粘土がモントモリロナイト粘土である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,4-ジニトロアニリン(2,4-DNA)及び4-ニトロベンゾイルクロリド(4-NBC)からN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)を製造する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術ロシア特許第2283307(C1)号明細書の説明には、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドからの5(6)-アミノ-2-(4’-アミノフェニル)ベンゾイミダゾールの合成方法が開示されている。N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する方法は、クロロベンゼン、パラキシレン、又はキシレン、トルエン若しくはエチルベンゼンの混合物から選択される溶媒媒体中で触媒として塩化第二鉄の存在下で2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとのアシル化反応を必要とし、それは、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドと同じである、2,4’,4-トリニトロベンズアニリドを形成すると言われている。反応は高温で行われ、それが本質的に終了すると、溶液は冷却され、溶媒媒体からのTNBAの沈殿を生じる。次に、TNBAを新鮮な溶媒媒体で洗浄し、その後に水で洗浄して所望のTNBAを生じた。ロシア特許第2394810(C2)号明細書及びロシア特許第2547262(C3)号明細書などの他の発行物には、塩化鉄触媒の存在下でTNBAを製造する同様な方法が開示されている。
【0003】
塩化第二鉄(鉄)触媒は、溶媒媒体に可溶性であるという点で問題があることがわかっており、これは、この方法によって製造される溶媒系と沈殿物TNBAとの両方が、更に取り除かれなければならない望ましくない不純物として触媒を含有することを意味する。具体的には、ロシア特許第2283307(C1)号明細書に開示されている方法など、触媒をTNBAから取り除く好ましい方法は、最初にTNBAを溶媒系から単離すること及び次いでTNBAを多量の水で更に洗浄して触媒を取り除くことである。更に、上記の先行技術の方法によって製造されるTNBAがその後に他の触媒反応において使用される場合、TNBA中に存在している任意の残留塩化第二鉄(鉄)は任意の下流触媒を壊し得、及び/又は最終生成物に色を与え得る。更に、上記の先行技術の方法において使用される塩化第二鉄触媒は、再循環及び再使用され得ず、その使用は相当な廃棄問題を意味し、製造プロセスの稼働コストを増加させる。
【0004】
必要とされるのは、有機溶媒系に可溶性である触媒の使用に伴なうあらゆる問題を回避すると共に溶媒系からTNBAを沈殿させるか又は追加の加工時に溶媒系に溶解したTNBAを使用するかどちらかのプロセス設計の融通性も可能にするプロセスである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
また、本発明は、アドバンストポリマーの製造において有用なモノマーであるN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)を製造する方法に関する。
【0006】
いくつかの実施形態において、本発明は、
a)有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む第1の混合物を形成する工程と、
b)有機溶媒に可溶性ではない固体酸触媒の存在下で第1の混合物を少なくとも90℃の温度で反応させて、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドと有機溶媒とを含む第2の混合物を形成する工程であって、固体酸触媒が酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、又はそれらの特定の混合物である工程と、
c)第2の混合物を冷却してN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを固体として沈殿させる工程と、
d)第2の混合物から固体N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを取り出す工程とを含む、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)を製造するための連続方法を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、有機溶媒中の2,4-ジニトロアニリン、4-ニトロベンゾイルクロリド、及び固体酸触媒の混合物からN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する方法に関し、ここで固体酸触媒は有機溶媒に可溶性ではない。これは、有機溶媒に可溶性である塩化鉄(FeCl3)などの触媒を利用する方法を超える改良がある;このような可溶性触媒が使用されるとき、それは最終反応生成物を汚染し得、反応媒体.から取り除くのが難しい。塩化鉄(FeCl3)などの可溶性触媒は、高価でなく且つルイス酸タイプのこのような均質な触媒反応はこの反応において有用であることが知られているので、従来より使用されている。
【0009】
所望の反応に適していると共に反応のために使用される有機溶媒中に不溶性である固体酸触媒には、酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、及びこれらの触媒の混合物が含まれる。ブレンステッドタイプ触媒を使用する不均質触媒反応がこの反応.に対して有効であることは発明者には驚きであった。
【0010】
有機溶媒中の2,4-ジニトロアニリン(2,4-DNA)、4-ニトロベンゾイルクロリド(4-NBC)、及び固体酸触媒の混合物からN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)を製造する方法は、回分法、半回分又は段階的方法、又は連続方法のどれかによって達成することができる。例えば、一切の攪拌を必要としない固定床又は充填床触媒反応器(本質的に、固定化触媒がその中に充填された容器)を利用する.連続方法において触媒の存在下で溶媒中の2,4-DNAと4-NBCとの混合物を反応させて、TNBAを形成することができる。代わりに、機械撹拌型オートクレーブ、連続撹拌槽型反応器(CSTR)又はスラリー気泡塔型反応器(SBCR)などのガス撹拌型反応器などの装置を使用して触媒の存在下で、回分、半回分、又は連続スラリー方法を使用して2,4-DNA及び4-NBCを溶媒中で反応させてTNBAを形成することができる。
【0011】
クレームされる反応は、溶媒中で、好ましくは不活性雰囲気下で行われる。適した有機溶媒は、60℃以上の温度で2,4-DNA、4-NBC、及び所望の生成物TNBAが可溶性である芳香族溶媒である。好ましくは、大気圧における溶媒の沸点は、100℃超、より好ましくは120℃超、最も好ましくは140℃超である。更に、溶媒を共沸により乾燥させることができることが好ましい。
【0012】
いくつかの実施形態において、適した有機溶媒には、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼン、又はそれらの混合物が含まれ、好ましい有機溶媒はクロロベンゼン及びo-ジクロロベンゼン、又はそれらの混合物である。いくつかの実施形態において、好ましい有機溶媒はクロロベンゼンである。
【0013】
反応の十分な収率のために、2,4-DNAは乾燥しているのがよい。これは、2,4-DNAが好ましくは重量基準で500ppm未満の水を含有し、より好ましくは重量基準で200ppm未満の水を含有することを意味する。同様に、4-NBCもまた乾燥しているのがよく、好ましくは重量基準で500ppm未満の水を含有し、より好ましくは重量基準で200ppm未満の水を含有する。
【0014】
更に、成分中の不純物は収率を低下させ得、得られた生成物混合物の純度に影響を与え得る。したがって、2,4-DNAと4-NBCの両方が少なくとも90%の純度、好ましくは95%の純度、より好ましくは99%超の純度を有することが望ましい。具体的には、4-NBCが有機不純物を実質的に含まず、0.5重量パーセント未満の4-ニトロ安息香酸(4-NBA)を含有することが好ましい。
【0015】
混合物は、有機溶媒に可溶性ではない固体酸触媒を更に含む。「有機溶媒に可溶性でない」とは、触媒を含有する反応混合物と触媒を含有していない同じ反応混合物の元素分析の間に差がないか、又はこのような任意の差が計測器の実験誤差内であることを意味する。具体的には、(1)有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリン、4-ニトロベンゾイルクロリド、及び固体酸触媒を含有する混合物及び(2)2,4-ジニトロアニリン、4-ニトロベンゾイルクロリド、及び有機溶媒だけを含有する混合物の元素分析の間に差はないか、又はこのような任意の差が計測器の実験誤差内である。
【0016】
触媒は、反応の遷移状態をより低い活性化エネルギーに変えて、反応速度を増加させる物質である。「固体酸触媒」とは、反応条件に耐えるために必要とされる熱安定性を有し且つ反応条件下で反応媒体に実質的に溶解されないそれらの表面上にプロトン又は配位不飽和カチオン中心を有する触媒を意味する。固体酸触媒は非担持であり得るか、又は少なくとも1つの触媒担体上に担持され得る。
【0017】
所望の反応に適していると共に反応のために使用される有機溶媒中に不溶性である固体酸触媒には、酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、及びこれらの触媒の混合物が含まれる。
【0018】
いくつかの実施形態において、好ましい固体酸触媒は天然酸性粘土鉱物である。天然酸性粘土鉱物には、カオリナイト、ベントナイト、アタパルジャイト、及びモントモリロナイトが含まれる。モントモリロナイトは好ましい酸性粘土である。
【0019】
適したイオン交換樹脂は、官能基を結合又は形成してイオン交換のための容量を有するように化学処理されている架橋コポリマー粒子(例えばビード)である。一実施形態において、イオン交換樹脂は、スチレン又は置換スチレンとジビニルベンゼンなどの架橋剤との架橋コポリマーを更に含む芳香族ポリマーを含む。更に、スルホン酸官能基を有するこのようなイオン交換樹脂は、特に活性且つ選択的であることがわかった。米国特許第2,366,007号明細書及び2,500,149号明細書には、このようなスルホン化スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーをベースとしたカチオン交換樹脂の調製が記載されている。
【0020】
適したスルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマーには、Nafion(登録商標)NR50などのものが含まれる。
【0021】
実施形態において、固体酸触媒は、担持酸触媒である。固体酸触媒の担体は、限定されないが、シリカ、アルミナ、チタニア、硫酸化チタニア、及びそれらの化合物並びにそれらの組合せなどの酸化物;硫酸バリウム;炭酸カルシウム;ジルコニア;炭素、特に酸洗浄炭素;並びにそれらの組合せなどの反応条件下で不活性である任意の固体物質であり得る。酸洗浄炭素は、硝酸、硫酸又は酢酸などの酸で洗浄して不純物を取り除いた炭素である。担体は粉末、粒体、ペレット等の形態であり得る。担持酸触媒は、噴霧、ソーキング又は物理的混合、その後の、乾燥、か焼、及び必要ならば、還元又は酸化などの方法による活性化など、任意の数の方法によって、酸触媒を担体上に堆積させることによって調製することができる。少なくとも1つの担体上の少なくとも1つの酸触媒の配合量は、少なくとも1つの酸触媒と少なくとも1つの担体との総合重量を基準として0.1~20重量パーセントの範囲である。特定の酸触媒は0.1~5%などの低い配合量でより良く機能するが、他の酸触媒は、10~20%などのより高い配合量で有用である可能性がいっそう高い。実施形態において、酸触媒は、高純度ベータゼオライト及びイオン交換樹脂などの担体を有さない100%酸触媒の非担持触媒である。
【0022】
担持及び非担持固体酸触媒の両方とも、限定されないが、0.01~150μmの粒度を有する粉末形態など、材料に典型的な任意の物理的形態であり得る。固定床反応器のために、触媒は一般的に、均一な0.5~10mmの大きさを有する、タブレット、押出物、球、及び/又は高機能粒子の形態である。
【0023】
N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する一般的な方法は、
a)有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む第1の混合物を形成する工程と、
b)有機溶媒に可溶性ではない固体酸触媒の存在下で第1の混合物を少なくとも90℃の温度で反応させて、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドと有機溶媒とを含む第2の混合物を形成する工程であって、固体酸触媒が酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、又はそれらの特定の混合物である工程と、
c)第2の混合物を冷却してN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを固体として沈殿させる工程と、
d)第2の混合物から固体N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを取り出す工程とを含む。
【0024】
連続方法において、混合のための撹拌型反応器及び成分を反応させるための固定床又は充填床触媒反応器などの別個の容器内で混合工程a)及び反応工程b)を行なうことが有利であり得る。しかしながら、工程a)及びb)は、考えられる限りでは連続方法又は回分、半回分、又は半連続方法のどれかで、必要ならば単一容器内で行なうことができる。例えば、工程a)及びb)の組合せは、有機溶媒中の2,4-DNA、4-NBC、及び固体酸触媒の第1の混合物を形成することとこの混合物を任意選択により攪拌しながら反応させて、TNBA、固体酸触媒、及び有機溶媒の他、任意の未反応の2,4-DNA及び4-NBCを含む第2の混合物を形成することとによって回分法で達成することができる。
【0025】
好ましくは工程a)及びb)の両方、又は組み合わせられた工程a)及びb)は、窒素雰囲気下などの不活性雰囲気中で行われる。好ましくは機械的撹拌等、又はスタティックミキサ、又は更に、充填塔若しくはスラリー反応器を通っての混合物のポンプ輸送において生じる乱流などの流体力学のどれかによって、或る種類の攪拌が工程a)及びb)において存在している。
【0026】
理想的には等モル量の2,4-DNA及び4-NBCが反応のために必要とされるが、一般的に過剰モル量の4-NBCを添加して共通の不純物を補償する。4-NBCは、特定の量の相当する酸PNBAでほとんど常に汚染されている。いくつかの好ましい実施形態において、4-NBC対2,4-DNAのモル比は、1.05~1.07である。更に、いくつかの好ましい実施形態において、第1の混合物は、溶媒1リットル当たり少なくとも50グラムの2,4-DNAを混合することによって形成され、いくつかの実施形態において溶媒1リットル当たり200グラム以上の2,4-DNAを混合することが更により好ましい。
【0027】
考えられる限りでは非担持触媒を使用して、工程a)及びb)が単一容器内で行われる場合、触媒は、第1の混合物中に存在している2,4-DNAの量の一般的に少なくとも5重量パーセントである量で第1の混合物中に存在している。好ましくは触媒は、第1の混合物中に存在している2,4-DNAの量の少なくとも20重量パーセントの量で、より好ましくは第1の混合物中に存在している2,4-DNAの量の少なくとも30重量パーセントの量で第1の混合物中に存在している。
【0028】
個々の反応体及び/又は第1の混合物中の水分を避けるために様々な積極的な措置を講じることができる。例えば、2,4-DNAのような個々の成分は、予備乾燥させることができる(例えば、真空下;小さな窒素ブリードを使用して真空炉内で85~100℃)。回分、半回分又は段階反応のようないくつかのプロセス異形において、窒素を分散させることと、同時に還流条件下で反応器内で混合物を加熱することによって非担持触媒と2,4-DNAとの組合せを溶媒中で一緒に乾燥させることができる。しかしながら、これらの混合物が還流条件下で加熱される場合、(4-NBC)の導入前に系を120℃以下に冷却することが望ましい。代わりに、2,4-DNA、4-NBC、及び有機溶媒の混合物を形成し、その後に、又は同時に、触媒反応の前に、加熱によって又は特定の他の公知の技術によって、混合物中の望ましくない量の水を取り除くことができる。次にその後この乾燥された混合物は、触媒反応が行われるために固体酸触媒と接触することができる。
【0029】
第1の混合物の触媒反応は、有機溶媒中に少なくともN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド(TNBA)を含む第2の混合物を形成する。少なくとも約90℃の温度で成分を反応させることが有利である。いくつかの実施形態において、少なくとも約100℃の温度で成分を反応させることが有利である。いくつかの実施形態において、反応温度は、約90℃~約135℃の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、反応温度は、約100℃~約135℃の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、反応温度は、約100℃~約125℃の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、温度は或るレベルから別のレベルに徐々に上昇され得、一定の時間の間保持され、最終温度が達せられるまでこのプロセスは数回継続され得、一定の時間の間保持される。例えば、回分反応において保持時間は、0.5~10時間、好ましくは0.5~7.5時間、より好ましくは0.5~5時間の範囲であり得る。好ましくは、反応から生成する副生成物塩酸ガスは反応をシールする不活性ガス(典型的に窒素ガス)を使用して反応から一掃される。特に回分反応において、保持時間の間撹拌が望ましく、反応が終了するか又は十分な量のTNBAが形成されるまで続けられる。反応の程度は、薄層クロマトグラフィー(TLC)又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して反応混合物からのごく一部のアリコートを分析することによって決定される、2,4-DNA、限界反応物質の消失によって決定され得る。
【0030】
非担持固体酸触媒が反応のために使用され且つ溶媒とともにTNBA生成物混合物の一部である場合、固体酸触媒は濾過によって、好ましくは高温濾過によって取り除くことができる。例えば、TNBAは、高温で溶媒クロロベンゼン中に非常に高い溶解性を有し、低温で非常に低い溶解性を有する。このため、高温で固体酸触媒を取り除いて所望のTNBAを少しでも除くことを避けることが有利である。次に、TNBAと溶媒との混合物を冷却して固体TNBAを晶出及び沈殿させることができ、次にTNBAを溶媒から分離することができる。典型的に、この分離は濾過.によって行われる。好ましくは、濾過は、Rosenmundフィルター、Nutscheフィルター、フィルタープレス又は回転ドラムフィルターを使用して行われる。最後に、固体TNBAを洗浄し、真空炉内で乾燥させる。具体的には、固体TNBAをメタノールなどのアルコールで洗浄するか或いは他の方法で処理して残留した有機溶媒を取り除くことができる。同様に、必要ならば、TNBAを水酸化ナトリウムなどの弱い塩基水溶液で洗浄して、塩酸などの反応の一切の酸性副生成物を取り除くことができる。
【実施例
【0031】
以下の実施例において使用されるとき、転化率のパーセント(%)及び収率のパーセントは
【数1】
として定義される。
TNBA、4-NBC、及び2,4-DNAの量は、HPLCクロマトグラムを使用する面積パーセント技術を使用して決定された。
【0032】
比較例E及び実施例1~4:
比較例A及び実施例1~4は、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)を製造するための回分法を説明する。窒素の小さな連続ブリード下で100℃の真空炉内で一晩乾燥された、15グラム(0.082モル)の2,4-ジニトロアニリン(2,4-DNA)、17.2グラム(0.092モル)の4-ニトロベンゾイルクロリド(4-NBC)、5.0グラムの触媒、及び200mlのクロロベンゼンを熱電対、機械的攪拌機、窒素入口、及び冷却器を取り付けた500mlの4首反応フラスコ内に入れた。反応混合物を120℃に加熱し、所望の反応時間の間撹拌した。以下の表に記載された運転時間の間反応が行われた後、それを一晩室温に冷却した。次いで、100mlのジメチルホルムアミドを反応器内に加え、80℃に加熱し、1時間の間撹拌した。0.2μフリットフィルターを使用して反応混合物を高温で濾過し、溶液をHPLCによって分析した。異なったタイプの固体酸触媒及び運転時間について2,4-DNAの転化率及びn-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)の収率を以下の表に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
これらの実施例における反応速度の計算は触媒がない場合の反応速度が最低であることを示し、相対的な反応速度は以下の通りである:触媒無し(7.8h-1)<CP-814Eベータゼオライト(8.3h-1)<Dowex(登録商標)Marathon(商標)CH+(10h-1)<Nafion(登録商標)NR50(10.7h-1)<モントモリロナイト粘土(16.6h-1)。
【0035】
実施例5
この実施例は、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)を製造するための段階的方法を説明する。30グラム(0.164モル)の2,4-ジニトロアニリン(2,4-DNA)及び200mlのクロロベンゼンを温度計、磁気スターバー、窒素入口及びDean-Starkトラップを取り付けた1000mlの4首反応フラスコ内に入れた。混合物を窒素雰囲気下で5分間撹拌した。混合物を加熱して還流し、7mlのクロロベンゼン凝縮物を採取して一切の残留水分を取り除くのを助けた。7mlのクロロベンゼン凝縮物を回収した後に10グラムの固体モントモリロナイト(K-10)触媒を添加した。
【0036】
溶液温度を120℃まで冷却し、粉末漏斗を使用して32.1グラム(0.168モル)の4-ニトロベンゾイルクロリド(4-NBC)を添加した。4-NBCの添加が終了すると、反応混合物を加熱して還流し、5時間の間撹拌した。一晩室温に冷却した後、淡褐色固体が溶液から沈殿した。固体を濾過によって採取した。採取された固体を200mlのメタノールを有するビーカー内で洗浄し、濾過し、0.1NのNaOHでpH7.0に調節された、500mlの水で洗浄した。固体を回収し、一晩100℃の真空炉内で乾燥させた。反応は、51.56グラムのN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)(2,4-DNAに基づいて94.7%の収率)を生じた。TNBA重量は、モントモリロナイトがこの手順で取り除かれないので、その重量について補正された。
【0037】
実施例6~8
窒素の小さな連続ブリード下で100℃の真空炉内で一晩乾燥された、15グラム(0.082モル)の2,4-ジニトロアニリン(2,4-DNA)、表2に記載された指定量の触媒、及び100mlの1,2-ジクロロベンゼンを、熱電対、機械的攪拌機、窒素入口を有する添加漏斗、及び冷却器を取り付けた500mLの4首反応フラスコ内に入れた。反応混合物を120℃に加熱し、添加漏斗から100mLの1,2-ジクロロベンゼン中に溶解された17.2グラム(0.092モル)の4-ニトロベンゾイルクロリド(4-NBC)を一定の撹拌下にて30分で連続的に添加した。反応混合物を120℃に維持し、所望の反応時間の間撹拌した。以下の表に記載された運転時間の間反応が行われた後、それを一晩室温に冷却した。次いで、100mlのジメチルホルムアミドを反応器内に加え、80℃に加熱し、1時間の間撹拌した。0.2μフリットフィルターを使用して反応混合物を高温で濾過し、溶液をHPLCによって分析した。異なったタイプの固体酸触媒、触媒の量、及び運転時間について2,4-DNAの転化率及びN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)の収率を以下の表に示した。
【0038】
【表2】
【0039】
比較例B
比較例Bは、溶媒に可溶性である、塩化鉄触媒の先行技術の使用を説明する。触媒としてFeCl3を使用して、実施例1~4の回分手順を使用した。具体的には、68mgのFeCl3触媒を添加し、反応は2.5時間の間行われた。2,4-DNA(限界反応物質)の99.6%転化率に対してTNBAの97.8%収率が得られたが、これは本発明の実施例に匹敵する。しかしながら、最終生成物からFeCl3触媒を取り除くために追加の工程が必要とされた。
【0040】
典型的に、最終生成物から塩化鉄を取り除くために以下のものなどのプロセスが必要である。2,4DNAの完全な転化後に、TNBAウエットケークが母液から分離される。最初にウエットケークをメタノールで4回洗浄し(各洗浄においてウエットケークの約1.4×wt.)、その後に、0.25wt%のアンモニアを有する水酸化アンモニウム水洗浄液で1回洗浄し(ウエットケークの約2.5×wt.)、最後に脱イオン水洗浄液で2回洗浄した(各洗浄においてウエットケークの2×wt.)。
【0041】
実施例9
この実施例は、図1に示されるようなN-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミド)(TNBA)を製造するための1つの連続方法を説明する。このプロセスは、混合容器1と、固体酸触媒を含有する固定床触媒反応器2とを利用する。反応体2,4-DNA及び4-NBC並びに溶媒クロロベンゼンが、そこでそれらが混合される入口ポイント3経由で混合容器1に導入される。混合容器1は、入口ポイント8を通って導入され出口ポイント9を通って容器からパージされる窒素を使用して不活性化される。クロロベンゼン中の2,4-DNAと4-NBCの混合物はポンプ4経由で触媒反応器2に輸送される。触媒反応器に多点熱電対10を取り付けて触媒床の温度を維持及び制御する。固定床反応器内に有機溶媒中の生成された所望のTNBAが出口7経由でプロセスを出る。固定床反応器からの出口ストリームの一部は、ポンプ5経由でプロセスに再循環される。触媒反応器2は、入口ポイント6経由で窒素を供給される。これにより、窒素は再循環ライン経由で再循環ストリームに供給されるが、それは必要ならば触媒反応器に直接に供給され得る。
次に、本発明の態様を示す。
1. a)有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む第1の混合物を形成する工程と、
b)前記有機溶媒に可溶性ではない固体酸触媒の存在下で前記第1の混合物を少なくとも90℃の温度で反応させて、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドと前記有機溶媒とを含む第2の混合物を形成する工程であって、前記固体酸触媒が酸性粘土、イオン交換樹脂、ベータゼオライト、スルホン化テトラフルオロエチレン系フルオロポリマーコポリマー、又はそれらの混合物である工程と、
c)前記第2の混合物を冷却して前記N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを固体として沈殿させる工程と、
d)前記第2の混合物から前記固体N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを取り出す工程とを含む、N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドを製造する方法。
2. a)において形成される有機溶媒中に2,4-ジニトロアニリンと4-ニトロベンゾイルクロリドとを含む前記第1の混合物が前記固体酸触媒を含有する、上記1に記載の方法。
3. 前記固体酸触媒を含有する前記第1の混合物が、前記2,4-ジニトロアニリン、有機溶媒、及び固体酸触媒を予備混合することと、その後に4-ニトロベンゾイルクロリドを添加することによって形成される、上記2に記載の方法。
4. 前記固体酸触媒が連続固定床反応器の一部である、上記1に記載の方法。
5. 工程b)が前記第1の混合物を撹拌することを含む、上記2又は3に記載の方法。
6. 工程b)の後であるが工程c)の前に、前記固体酸触媒が前記第2の混合物から取り除かれる、上記2又は3に記載の方法。
7. 前記固体酸触媒が濾過によって取り除かれる、上記6に記載の方法。
8. 前記酸性粘土がモントモリロナイト粘土である、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
9. 前記イオン交換樹脂が、スルホン酸官能基を有するイオン交換樹脂である、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
10. 少なくとも工程b)が不活性雰囲気下で行われる、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
11. 工程a)の前に前記2,4-ジニトロアニリンが有機溶媒と組み合わせられ、水分が組合せから取り除かれる、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
12. 前記有機溶媒がクロロベンゼンである、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
13. 前記固体N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-ニトロベンズアミドが工程d)において濾過によって取り出される、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
14. 工程a)が約100℃~約135℃の温度で行われる、上記1~3のいずれか一項に記載の方法。
図1