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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】電気化学式水素昇圧システム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20250403BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20250403BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250403BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20250403BHJP
【FI】
C25B15/00 303
C25B1/02
C25B9/00 Z
C25B15/023
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023003444
(22)【出願日】2023-01-13
(65)【公開番号】P2024099862
(43)【公開日】2024-07-26
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】大門 鋭刀
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-119250(JP,A)
【文献】特開2020-090691(JP,A)
【文献】特開2020-158838(JP,A)
【文献】特開2022-153035(JP,A)
【文献】特開2022-153049(JP,A)
【文献】特開2022-143974(JP,A)
【文献】特開2012-067343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0255818(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 15/00
C25B 1/00
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む単位セルが備えられる水素昇圧スタックと、
前記水素昇圧スタックに水素ガスおよび液水を供給する供給装置と、
前記水素昇圧スタックに電流を供給する電源装置と、
前記供給装置および前記電源装置を制御する制御装置と、
を備える、電気化学式水素昇圧システムであって、
前記制御装置は、
前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを供給させるとともに、前記電源装置から前記水素昇圧スタックに前記電流を供給させて、前記水素昇圧スタックに昇圧動作を実施させる運転制御部と、
前記昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、前記液水を前記水素昇圧スタックに供給させ、各前記単位セルの前記電解質膜に一様に前記液水を含ませた後、前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給させ、前記電解質膜の含水量を調整する運転停止制御部と、
を備える、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記供給装置は、
水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路に設けられる水素供給弁と、
水源から前記供給経路に前記液水を導く給水経路に設けられる給水弁と、
を備え、
前記運転停止制御部は、前記運転停止指令から所定の給水期間が経過するまで前記給水弁を開弁して、前記液水の供給が停止されてから所定のガス供給期間が経過すると、前記水素供給弁を閉弁する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記供給装置は、
前記水素昇圧スタックから排出される高圧水素ガスを導く排出経路に設けられ、前記高圧水素ガス中の水分を分離する気液分離器と、
水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路に設けられる水素供給弁と、
前記気液分離器から前記供給経路に前記液水を導く水戻し経路に設けられる水戻し弁と、
前記気液分離器から前記供給経路に前記高圧水素ガスを導く水素戻し経路に設けられる水素戻し弁と、
を備え、
前記運転停止制御部は、前記水素供給弁を閉弁してから所定の給水期間が経過するまで前記水戻し弁を開弁し、前記液水の供給が停止されてから前記水素戻し弁を開弁し、所定のガス供給期間が経過すると、前記水素戻し弁を閉弁する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記供給装置は、
前記水素昇圧スタックから排出される高圧水素ガスを導く排出経路に設けられ、前記高圧水素ガス中の水分を分離する気液分離器と、
水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路に設けられる水素供給弁と、
前記気液分離器から前記供給経路に前記液水および前記高圧水素ガスを導く戻し経路に設けられる戻し弁と、
を備え、
前記運転停止制御部は、前記水素供給弁を閉弁してから前記戻し弁を開弁し、前記液水および前記高圧水素ガスを、この順序で、前記気液分離器から前記戻し経路に排出させる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記運転停止制御部は、前記気液分離器に貯留される前記液水の水位に基づいて前記気液分離器から排出される水量を演算し、前記水量に応じて、前記戻し弁を閉弁するタイミングを変更する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項6】
請求項4に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記排出経路における前記高圧水素ガスの圧力が所定の圧力閾値以下になると、前記運転停止制御部は、前記戻し弁を閉弁する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項7】
請求項4に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記気液分離器は、
前記水分を貯留する水槽部と、
前記水槽部の底壁から前記水槽部の内部空間に突出し、先端が前記内部空間と連通し、基端が前記戻し経路と連通する管部をさらに有する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記管部は、伸び縮み可能に形成され、
前記気液分離器は、前記管部を伸長または短縮させる管駆動部をさらに有し、
前記運転停止制御部は、前記管駆動部を制御して、前記管部の長さを調整する、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
前記運転停止制御部は、前記水素昇圧スタックへの前記電流の供給を停止させた後、或いは、前記水素昇圧スタックに供給される前記電流を減少させながら、前記液水を前記水素昇圧スタックに供給させる、電気化学式水素昇圧システム。
【請求項10】
請求項1に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、
水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路を流れる前記水素ガスを加湿する加湿器と、
前記水素昇圧スタックから排出される未反応の前記水素ガスを導く未反応ガス経路に設けられ、未反応の前記水素ガス中の水分を分離する第2気液分離器と、
前記第2気液分離器により分離された前記水分を前記加湿器に導く排水経路と、
を備える、電気化学式水素昇圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学式水素昇圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する電気化学式水素昇圧システムに関する研究開発が行われている。
【0003】
特許文献1の電気化学式水素昇圧システムは、水素を昇圧する電気化学式水素昇圧装置を含む。電気化学式水素昇圧装置は、水素昇圧スタック(水素昇圧部)と、電源装置(電源)とを備える。水素昇圧スタックは、電解質膜、アノード給電体、カソード給電体を含む単位セルを有する。電源装置は、水素昇圧スタックに電流を供給して、水素昇圧スタックに供給される水素ガスよりも高圧の高圧水素ガスを水素昇圧スタックに発生させる。
【0004】
特許文献1には、電解質膜の湿潤状態に関する情報に基づいて、未反応の水素ガスが排出される水素昇圧スタックの排出口を規制し、水蒸気を単位セルに滞留させて電解質膜を良好な湿潤状態とすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-94891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の上記技術を用いると、電解質膜に含水する水分の分布が概ね均一になるまでには大幅に時間が必要になるという課題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様は、電解質膜、アノード電極およびカソード電極を含む単位セルが備えられる水素昇圧スタックと、前記水素昇圧スタックに水素ガスおよび液水を供給する供給装置と、前記水素昇圧スタックに電流を供給する電源装置と、前記供給装置および前記電源装置を制御する制御装置と、を備える、電気化学式水素昇圧システムであって、前記制御装置は、前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを供給させるとともに、前記電源装置から前記水素昇圧スタックに前記電流を供給させて、前記水素昇圧スタックに昇圧動作を実施させる運転制御部と、前記昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、前記液水を前記水素昇圧スタックに供給させ、各前記単位セルの前記電解質膜に一様に前記液水を含ませた後、前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給させ、前記電解質膜の含水量を調整する運転停止制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタックを早期に始動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
図2図2は、第1実施形態による含水量調整処理の手順を示すフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
図4図4は、第2実施形態による含水量調整処理の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第3実施形態による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
図6図6は、気液分離器を示す概略図である。
図7図7Aは伸長状態の管部を示し、図7Bは短縮状態の管部を示す図である。
図8図8は、変形例7による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
図9図9は、変形例8による電気化学式水素昇圧システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、「上流」という用語は、流体が流れる方向(流方向)の上流を意味する。同様に、「下流」という用語は、流体が流れる方向(流方向)の下流を意味する。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。電気化学式水素昇圧システム10は、電気化学式水素昇圧装置12と、供給装置14と、高圧水素貯留装置16と、気液分離器18と、制御装置20とを備える。
【0013】
電気化学式水素昇圧装置12は、電気化学的に水素ガスを昇圧する装置である。電気化学式水素昇圧装置12は、水素昇圧スタック22と、電源装置24とを有する。
【0014】
水素昇圧スタック22は、導入ポートPT1と、排出ポートPT2と、高圧水素ポートPT3と、複数の単位セル26とを有する。導入ポートPT1は、水素ガスを導入するポートである。導入ポートPT1は、各単位セル26のアノード側に連通する。排出ポートPT2は、未反応の水素ガスを排出するポートである。排出ポートPT2は、各単位セル26のアノード側に連通する。高圧水素ポートPT3は、単位セル26において生成される高圧水素ガスを排出するポートである。高圧水素ポートPT3は、各単位セル26のカソード側に連通する。
【0015】
複数の単位セル26は、それぞれ同じ構成である。各単位セル26は、電解質膜27と、電解質膜27の一方の面に設けられたアノード電極28と、電解質膜27の他方の面に設けられたカソード電極29とを有する。
【0016】
電解質膜27は、例えば、固体高分子電解質膜(陽イオン交換膜)である。電解質膜27は、そのアノード側が繊維状の骨格を含む保護シートで補強されてもよい。また、電解質膜27は、フッ素系電解質の他、HC(炭化水素)系電解質を使用することができる。電解質膜27は、アノード電極28およびカソード電極29に挟持される。
【0017】
アノード電極28は、電解質膜27の一方の面に接合されるアノード触媒層と、アノード触媒層に積層されるアノード給電体とを含む。カソード電極29は、電解質膜27の他方の面に接合されるカソード触媒層と、カソード触媒層に積層されるカソード給電体とを含む。アノード給電体およびカソード給電体は、水素ガスが流通可能な構造に形成される。
【0018】
アノード電極28とカソード電極29と間に電流が供給されると、導入ポートPT1からアノード電極28に供給される水素ガスの一部は、触媒反応によりプロトン(Hイオン)に変換される。変換されたプロトンは、電解質膜27介してカソード電極29に輸送される。カソード電極29では、輸送されたプロトンを用いた電気化学反応により高圧水素ガスが発生する。高圧水素ガスは、高圧水素ポートPT3から流出する。アノード電極28で未反応の水素ガスは、排出ポートPT2から流出する。
【0019】
電源装置24は、水素昇圧スタック22に電流を供給する。水素昇圧スタック22に電流が供給されると、水素昇圧スタック22は、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスよりも高い圧力の高圧水素ガスを発生する。
【0020】
電源装置24は、各単位セル26のアノード電極28およびカソード電極29に電圧を印加して、当該単位セル26に電流を供給する。電源装置24は、制御装置20の制御に応じて、各単位セル26に供給される電流の大きさを調整可能に形成される。単位セル26に供給される電流が大きくなるほど、当該単位セル26において発生する高圧水素ガスの発生量が多くなる。
【0021】
供給装置14は、水素昇圧スタック22に水素ガスおよび液水を供給する装置である。供給装置14は、水素供給源30と、加湿器32と、水源34と、ポンプ36と、複数の流通経路と、複数の弁とを有する。複数の流通経路は、供給経路40と、導入経路42と、導出経路44と、給水経路46と、未反応ガス経路48とを含む。複数の弁は、減圧弁60、水素供給弁62と、流量調整弁64と、導入弁66と、導出弁68と、給水弁70、排出弁72とを含む。
【0022】
水素供給源30は、水素ガスを供給可能な装置である。水素供給源30は、水素ガスが貯留されたガスシリンダを複数集結したカードルであってもよい。水素供給源30は、供給経路40を介して水素昇圧スタック22に水素ガスを供給する。水素昇圧スタック22に供給される水素ガスは、水素昇圧スタック22の導入ポートPT1から各単位セル26のアノード側に流れる。
【0023】
供給経路40は、水素供給源30から水素昇圧スタック22に水素ガスを導く経路である。供給経路40の上流端は、水素供給源30に接続される。供給経路40の下流端は、水素昇圧スタック22の導入ポートPT1に接続される。供給経路40には、上流側から下流側に向かって、減圧弁60、水素供給弁62、流量調整弁64がこの順に設けられる。
【0024】
減圧弁60は、図1では1つであるが、2つ以上であってもよい。水素供給弁62は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。流量調整弁64は、制御装置20の制御に応じて、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0025】
加湿器32は、水素ガスを加湿する装置である。加湿器32は、密閉容器80を有する。加湿器32は、密閉容器80に貯留される液水を気化する。加湿器32は、導出経路44を介して供給経路40に水蒸気を供給する。
【0026】
導出経路44は、加湿器32から供給経路40に水蒸気を導く経路である。導出経路44の上流端は、密閉容器80の内部空間に配置される。導出経路44の下流端は、水素供給弁62と流量調整弁64との間の供給経路40に接続される。導出経路44には、導出弁68が設けられる。導出弁68は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0027】
加湿器32は、バブラー式加湿器であってもよい。図1は、加湿器32がバブラー式加湿器である場合の例を示している。この場合、加湿器32は、気泡発生器82を有する。本実施形態では、気泡発生器82は、密閉容器80内の液水中に配置される。気泡発生器82は、供給経路40から導入経路42を介して供給される水素ガスを気泡として液水中に放出する。この場合、水素ガスは、水蒸気を含有する。水蒸気を含有する水素ガスは、導出経路44を介して供給経路40に供給される。
【0028】
導入経路42は、供給経路40を流れる水素ガスの一部を、供給経路40から気泡発生器82に導く経路である。導入経路42の上流端は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも上流側の箇所に接続される。導入経路42の下流端は、気泡発生器82に接続される。導入経路42には、導入弁66が設けられる。導入弁66は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0029】
なお、密閉容器80に貯留される液水の温度を調整する温調装置84が備えられてもよい。温調装置84は、熱交換器86と、熱交換器86と密閉容器80とを循環する循環経路88と、循環経路88に設けられたポンプ90とを備える。温調装置84は、ポンプ90を駆動して、循環経路88を介して熱交換器86と密閉容器80との間で液水を循環させて、熱交換器86との熱交換により液水を設定温度に調整する。
【0030】
水源34は、液水を供給可能な装置である。水源34は、液水が貯留されたタンクであってもよい。水源34は、給水経路46を介して供給経路40に液水を供給する。
【0031】
給水経路46は、水源34から供給経路40に液水を導く経路である。給水経路46の上流端は、水源34に接続される。給水経路46の下流端は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも下流の箇所に接続される。
【0032】
ポンプ36は、水素昇圧スタック22から排出される未反応の水素ガスを密閉容器80に供給する装置である。ポンプ36は、未反応ガス経路48に設けられる。ポンプ36は、制御装置20の制御に応じて駆動される。ポンプ36は、駆動されると、上流側から下流側への流動力を水素ガスに付与する。
【0033】
未反応ガス経路48は、水素昇圧スタック22から排出される未反応の水素ガスを、水素昇圧スタック22から密閉容器80に導く経路である。未反応ガス経路48の上流端は、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2に接続される。未反応ガス経路48の下流端は、密閉容器80に接続される。未反応ガス経路48には排出弁72が設けられる。排出弁72は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0034】
未反応ガス経路48における排出弁72よりも上流側にはベント経路50が接続される。ベント経路50は、未反応ガス経路48を流れる水素ガスを大気空間に導く経路である。ベント経路50にはベント弁74が設けられる。ベント弁74は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。未反応ガス経路48に流出する水素ガスは、密閉容器80内に供給されるか、ベント経路50を介して排気される。
【0035】
高圧水素貯留装置16は、高圧水素ガスを貯留可能に形成される装置である。高圧水素貯留装置16は、高圧水素ガスが貯留されるガスシリンダを複数集結したカードルであってもよい。高圧水素貯留装置16は、水素昇圧スタック22から排出経路52を介して供給される高圧水素ガスを貯留する。
【0036】
排出経路52は、水素昇圧スタック22から排出される高圧水素ガスを導く経路である。排出経路52の上流端は、水素昇圧スタック22の高圧水素ポートPT3に接続される。排出経路52の下流端は、高圧水素貯留装置16に接続される。排出経路52には圧力制御弁76が設けられる。圧力制御弁76は、上流側の圧力が設定圧力になると、下流側に流体を流す弁である。設定圧力は、制御装置20により設定される。圧力制御弁76として、例えば、ソレノイド弁、背圧弁等が挙げられる。
【0037】
気液分離器18は、気体と液水の混相流からそれぞれの流体を分離する装置である。気液分離器18は、圧力制御弁76と水素昇圧スタック22との間の排出経路52に設けられる。気液分離器18は、水槽部92を有する。水槽部92には、ガス入力部94およびガス出口部96が形成される。ガス入力部94は、排出経路52の上流部52Aの下流端に接続される。ガス出口部96は、排出経路52の下流部52Bの上流端に接続される。
【0038】
気液分離器18は、ガス入力部94を介して水素昇圧スタック22から排出される高圧水素ガスを取り込む。気液分離器18は、水素昇圧スタック22から排出される高圧水素ガス中の水分(液水)を分離する。気液分離器18は、例えば、高圧水素ガスを冷却して、高圧水素ガスから水分を分離する。気液分離器18は、高圧水素ガスから分離した水分を水槽部92に貯留する。水分が分離された高圧水素ガスである乾燥高圧水素ガスは、ガス出口部96から排出経路52の下流部52Bを介して高圧水素貯留装置16に供給される。
【0039】
制御装置20は、電気化学式水素昇圧装置12および供給装置14を制御する装置である。制御装置20は、1以上のプロセッサと、記憶媒体とを含む。記憶媒体は、揮発性メモリと不揮発性メモリとによって構成され得る。プロセッサとしては、CPU、MCU等が挙げられる。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。
【0040】
制御装置20は、運転制御部100と、運転停止制御部102とを有する。プロセッサが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することによって、運転制御部100および運転停止制御部102が実現される。運転制御部100および運転停止制御部102の少なくとも1つは、ASIC、FPGA等の集積回路によって実現されてもよい。或いは、運転制御部100および運転停止制御部102の少なくとも1つは、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって実現されてもよい。
【0041】
運転制御部100は、運転指令を受けると、水素昇圧スタック22に昇圧動作を実施させる。すなわち、運転制御部100は、水素供給弁62を開弁して、水素供給源30から水素昇圧スタック22に水素ガスを供給させる。また、運転制御部100は、電源装置24を制御して、電源装置24から水素昇圧スタック22に電流を供給させる。この場合、水素昇圧スタック22では昇圧動作が実施される。昇圧動作が実施される場合、各単位セル26では、水素供給源30から供給される水素ガスに基づいて電気化学反応が実施される。これにより、高圧水素ガスが各単位セル26のカソード側で発生する。
【0042】
昇圧動作の実施中、運転制御部100は、ポンプ36を駆動し、排出弁72を開弁して、水素昇圧スタック22で未反応の水素ガスを密閉容器80に供給させる。また、運転制御部100は、任意のタイミングでベント弁74を開弁して、水素ガスを排気させる。
【0043】
昇圧動作の実施中、運転制御部100は、高圧水素ガスの目標発生量に基づいて、流量調整弁64の開度を制御して、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0044】
昇圧動作の実施中、運転制御部100は、導入弁66および導出弁68を開弁して、水蒸気を水素ガスとともに供給経路40に導入させる。これにより、運転制御部100は、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスを加湿する。運転制御部100は、水素供給弁62の開度および導入弁66の開度の少なくとも一方を制御して、加湿器32を経由する水素ガスと、加湿器32を経由しない水素ガスとの流量比を調整してもよい。なお、昇圧動作の実施中、給水弁70は閉弁している。
【0045】
運転停止制御部102は、昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、電源装置24を制御して、水素昇圧スタック22への電流の供給を停止させる。また、運転停止制御部102は、水素供給弁62、導入弁66および導出弁68を閉弁して、水素昇圧スタック22への水素ガスの供給を停止させる。さらに、運転停止制御部102は、ポンプ36の駆動を停止し、排出弁72を閉弁して、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2(各単位セル26のアノード側)からの流体の排出を停止させる。
【0046】
なお、運転停止制御部102は、水素供給弁62を閉弁しなくてもよい。この場合、水素昇圧スタック22への水素ガスの供給が停止されない。ただし、導入弁66および導出弁68が閉弁されているため、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスは加湿されない。
【0047】
水素昇圧スタック22への電流の供給と、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2(各単位セル26のアノード側)からの流体の排出とが停止されると、運転停止制御部102は、含水量調整処理を実行する。含水量調整処理は、各単位セル26の含水量を調整する処理である。図2は、第1実施形態による含水量調整処理の手順を示すフローチャートである。
【0048】
ステップS1において、運転停止制御部102は、給水弁70を開弁した後、ステップS2に移行する。
【0049】
給水弁70が開弁すると、水源34から供給経路40に液水が供給される。供給経路40に供給された液水は、水素昇圧スタック22の導入ポートPT1から各単位セル26のアノード側に流れる。含水量調整処理の前に、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2(各単位セル26のアノード側)からの流体の排出が停止される。そのため、各単位セル26のアノード側に流れた液水は停滞する。したがって、各単位セル26の電解質膜27は、液水に浸される。
【0050】
ステップS2において、運転停止制御部102は、液水の供給が開始(給水弁70を開弁)されてから所定の給水期間が経過したか否かを判定する。給水期間は、所定量の液水を供給する期間として、管路の断面積等に基づいて設定される。所定の給水期間が経過していない場合、運転停止制御部102は、液水の供給量が未だ所定量に達していないと判定する。この場合、運転停止制御部102は、ステップS2に留まる。所定の給水期間が経過すると、運転停止制御部102は、液水の供給量が所定量に達したと判定する。この場合、運転停止制御部102は、ステップS3に移行する。
【0051】
ステップS3において、運転停止制御部102は、給水弁70を閉弁し、その後、ステップS4に移行する。給水弁70が閉弁すると、水素昇圧スタック22への液水の供給が停止される。
【0052】
ステップS4において、運転停止制御部102は、水素供給弁62を開弁した後、ステップS5に移行する。なお、含水量調整処理の開始前に、水素供給弁62が閉弁されない場合、運転停止制御部102は、水素供給弁62の開弁を維持したままステップS5に移行する。この場合、水素ガスを供給することで電解質膜27に含まれる液水を飛ばして除去することができる。
【0053】
水素供給弁62が開弁すると、供給経路40を介して、水素ガスが加湿器32により加湿されずに、水素昇圧スタック22に供給される。水素昇圧スタック22に供給される水素ガスは、導入ポートPT1から各単位セル26のアノード側に流れる。含水量調整処理の前に、水素昇圧スタック22への電流の供給が停止される。そのため、各単位セル26のカソード側で高圧水素ガスが発生せず、各単位セル26のカソード側を含む排出経路52のガス圧が減圧され始める。したがって、各単位セル26のアノード側に流れた水素ガスは、各単位セル26の電解質膜27を通って、各単位セル26のカソード側に流れる。このとき、液水に浸された各単位セル26の電解質膜27に滞留する水の一部は、水素ガスによって各単位セル26のカソード側に押し出される。各単位セル26のカソード側に押し出された水は、水素ガスとともに高圧水素ポートPT3から排出され、気液分離器18の水槽部92に貯留される。一方、排出経路52のガス圧が減圧するので、高圧水素ポートPT3から排出される水素ガスは、圧力制御弁76から下流に流れない。
【0054】
ステップS5において、運転停止制御部102は、液水の供給が停止されてから所定のガス供給期間が経過したか否かを判定する。ガス供給期間は、所定量の水素ガスを供給する期間として、管路の断面積等に基づいて設定される。所定のガス供給期間が経過していない場合、運転停止制御部102は、水素ガスの供給量が未だ所定量に達していないと判定する。この場合、運転停止制御部102は、ステップS5に留まる。所定のガス供給期間が経過すると、運転停止制御部102は、水素ガスの供給量が所定量に達したと判定する。この場合、運転停止制御部102は、ステップS6に移行する。
【0055】
ステップS6において、運転停止制御部102は、水素供給弁62を閉弁し、その後、含水量調整処理を終了する。
【0056】
以上のように本実施形態では、運転停止制御部102は、昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、液水を水素昇圧スタック22に供給させた後、水素ガスを水素昇圧スタック22に供給させる。
【0057】
したがって、水素昇圧スタック22における各単位セル26の電解質膜27に一様に水を含ませた後に、その電解質膜27の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。これにより、電解質膜27に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタック22を早期に始動することができる。
【0058】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。図3では、第1実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0059】
本実施形態では、水源34と、給水経路46と、給水弁70とが設けられていない。一方、本実施形態では、水戻し経路104と、水素戻し経路106と、水戻し弁108と、水素戻し弁110とが新たに設けられる。水戻し経路104、水素戻し経路106、水戻し弁108および水素戻し弁110は、供給装置14に含まれる。また、本実施形態では、気液分離器18が供給装置14に含まれ、気液分離器18の水槽部92が水源34として代用される。
【0060】
水戻し経路104は、気液分離器18から供給経路40に液水を導く経路である。水戻し経路104の上流端は、水槽部92に形成された水出口部112に接続される。水戻し経路104の下流端は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも下流の箇所に接続される。
【0061】
水素戻し経路106は、気液分離器18から供給経路40に高圧水素ガスを導く経路である。水素戻し経路106の上流端は、水槽部92に形成された水素出口部114に接続される。水素戻し経路106の下流端は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも下流の箇所に接続される。
【0062】
水戻し弁108は、水戻し経路104に設けられる。水戻し弁108は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。水素戻し弁110は、水素戻し経路106に設けられる。水素戻し弁110は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。
【0063】
水出口部112は、水槽部92から液水を流出させるポートである。水出口部112は、水槽部92の底壁に形成されてもよいし、水槽部92の側壁に形成されてもよい。水素出口部114は、水槽部92から高圧水素ガスを流出させるポートである。水素出口部114は、水槽部92の上壁に形成されてもよいし、水槽部92の側壁に形成されてもよい。図3では、水出口部112が水槽部92の底壁に形成され、水素出口部114が水槽部92の側壁に形成される場合の例が示されている。水出口部112が水槽部92の側壁に形成される場合、水出口部112は、ガス出口部96および水素出口部114よりも下方に形成される。
【0064】
図4は、第2実施形態による含水量調整処理の手順を示すフローチャートである。図4では、第1実施形態において説明したステップと同等のステップには同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0065】
本実施形態では、運転停止制御部102は、含水量調整処理の開始前に、水素供給弁62を閉弁する。これにより、含水量調整処理の開始前に水素供給弁62を閉弁しない場合に比べて、水素供給源30における水素ガスの消費量を軽減することができる。
【0066】
ステップS11において、運転停止制御部102は、水戻し弁108を開弁した後、ステップS2に移行する。
【0067】
水戻し弁108が開弁すると、気液分離器18の水槽部92に貯留される液水は、高圧水素ガスによって押されて、水戻し経路104を介して、供給経路40に流れる。供給経路40に流れた液水は、上述のように、水素昇圧スタック22の各単位セル26のアノード側に流れて、停滞する。したがって、各単位セル26の電解質膜27は、液水に浸される。
【0068】
ステップS13において、運転停止制御部102は、水戻し弁108を閉弁し、その後、ステップS14に移行する。水戻し弁108が閉弁すると、水素昇圧スタック22への液水の供給が停止される。
【0069】
ステップS14において、運転停止制御部102は、水素戻し弁110を開弁した後、ステップS5に移行する。
【0070】
水素戻し弁110が開弁すると、高圧の排出経路52と、排出経路52よりも低圧の供給経路40とが連通する。そのため、各単位セル26のカソード側を含む排出経路52のガス圧が減圧され始める。この減圧速度は、第1実施形態の場合に比べて速い。
【0071】
排出経路52と供給経路40とが連通すると、水槽部92の水素ガス(高圧水素ガス)が、排出経路52と供給経路40との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器18から水素戻し経路106を介して供給経路40に供給される。供給経路40に供給される水素ガスは、上述のように、水素昇圧スタック22の各単位セル26のアノード側から電解質膜27を介してカソード側に流れる。電解質膜27から単位セル26のカソード側に押し出された水は、上述のように、気液分離器18の水槽部92に貯留される。一方、各単位セル26のカソード側に流れる水素ガスは、上述のように、圧力制御弁76から下流に流れず、排出経路52に留まる。
【0072】
ステップS16において、運転停止制御部102は、水素戻し弁110を閉弁し、その後、含水量調整処理を終了する。
【0073】
以上のように本実施形態では、運転停止制御部102は、第1実施形態と同様に、昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、液水を水素昇圧スタック22に供給させた後、水素ガスを水素昇圧スタック22に供給させる。したがって、水素昇圧スタック22における各単位セル26の電解質膜27に一様に水を含ませた後に、その電解質膜27の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。これにより、電解質膜27に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。
【0074】
また、本実施形態では、水素昇圧スタック22に供給される液水は、気液分離器18の水槽部92に貯留される液水である。つまり、液水は、昇圧動作中に得られた高圧水素ガス中から分離された水分である。したがって、電気化学式水素昇圧システム10に水源34が設置されなくてもよい。その結果、電気化学式水素昇圧システム10における部品点数の増加を抑えながら、電解質膜27に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。これに加えて、液水を効率的に利用することができる。
【0075】
さらに、気液分離器18により水分が分離された乾燥状態の水素ガスを水素昇圧スタック22に供給するので、電解質膜27の含水量を迅速に調整し、かつ、水素ガスを効率的に利用することができる。
【0076】
さらに、液水は、高圧水素ガスによって気液分離器18から押し出されて、水素昇圧スタック22に供給される。一方、水素ガスは、排出経路52と供給経路40との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器18から水素昇圧スタック22に供給される。そのため、ポンプが設置されなくてよい。したがって、電気化学式水素昇圧システム10における部品点数の増加を抑えながら、電解質膜27に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。
【0077】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。図5では、第1実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0078】
本実施形態では、水源34と、給水経路46と、給水弁70とが設けられていない。一方、本実施形態では、戻し経路116と、戻し弁118と、圧力検出器120とが新たに設けられる。戻し経路116および戻し弁118は、供給装置14に含まれる。また、本実施形態では、気液分離器18が供給装置14に含まれ、気液分離器18の水槽部92が水源34として代用される。
【0079】
戻し経路116は、気液分離器18から供給経路40に液水および高圧水素ガス(乾燥高圧水素ガス)を導く経路である。戻し経路116の上流端は、水槽部92に形成された気液出口部122に接続される。戻し経路116の下流端は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも下流の箇所に接続される。戻し弁118は、戻し経路116に設けられる。戻し弁118は、制御装置20の制御に応じて開弁または閉弁する。圧力検出器120は、排出経路52のガス圧を検出する機器である。圧力検出器120は、検出結果を制御装置20に出力する。
【0080】
本実施形態では、運転停止制御部102は、含水量調整処理の開始前に、水素供給弁62を閉弁する。これにより、含水量調整処理の開始前に水素供給弁62を閉弁しない場合に比べて、水素供給源30における水素ガスの消費量を軽減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、運転停止制御部102は、含水量調整処理として、戻し弁118を開閉するだけである。すなわち、運転停止制御部102は、含水量調整処理を開始すると、戻し弁118を開弁する。
【0082】
戻し弁118が開弁すると、気液分離器18の水槽部92に貯留される液水は、高圧水素ガスによって押されて、戻し経路116を介して、供給経路40に流れる。供給経路40に流れた液水は、上述のように、水素昇圧スタック22の各単位セル26のアノード側に流れて、停滞する。したがって、各単位セル26の電解質膜27は、液水に浸される。
【0083】
水槽部92に貯留される液水がなくなると、高圧の排出経路52と、排出経路52よりも低圧の供給経路40とが連通する。そのため、各単位セル26のカソード側を含む排出経路52のガス圧が減圧され始める。この減圧速度は、第1実施形態の場合に比べて速い。
【0084】
排出経路52と供給経路40とが連通すると、水槽部92の水素ガス(高圧水素ガス)が、排出経路52と供給経路40との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器18から戻し経路116を介して供給経路40に供給される。供給経路40に供給される水素ガスは、上述のように、水素昇圧スタック22の各単位セル26のアノード側から電解質膜27を介してカソード側に流れる。電解質膜27から単位セル26のカソード側に押し出された水は、上述のように、気液分離器18の水槽部92に貯留される。一方、各単位セル26のカソード側に流れる水素ガスは、上述のように、圧力制御弁76から下流に流れない。
【0085】
運転停止制御部102は、戻し弁118を開弁してから所定の周期で、圧力検出器120により検出されるガス圧を、所定の圧力閾値と比較する。ガス圧が圧力閾値未満になると、運転停止制御部102は、戻し弁118を閉弁する。これにより、適量の水素ガスを水素昇圧スタック22に供給することができる。運転停止制御部102は、戻し弁118を閉弁すると、含水量調整処理を終了する。
【0086】
以上のように、本実施形態では、運転停止制御部102は、第1実施形態と同様に、昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、液水を水素昇圧スタック22に供給させた後、水素ガスを水素昇圧スタック22に供給させる。したがって、本実施形態では第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0087】
また、本実施形態では、第2実施形態と同様に、水素昇圧スタック22に供給される液水は、気液分離器18の水槽部92に貯留される液水である。また、第2実施形態と同様に、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスは、気液分離器18により水分が分離された乾燥状態の水素ガスである。さらに、第2実施形態と同様に、液水は、高圧水素ガスによって気液分離器18から押し出されて、水素昇圧スタック22に供給される。一方、水素ガスは、排出経路52と供給経路40との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器18から水素昇圧スタック22に供給される。したがって、本実施形態では第2実施形態と同様の効果も得られる。
【0088】
さらに、本実施形態では、運転停止制御部102は、含水量調整処理として、戻し弁118を開閉するだけである。したがって、制御装置20の処理負荷を軽減することができる。
【0089】
上記実施形態は、以下のように変形することができる。
【0090】
(変形例1)
図6は、気液分離器18を示す概略図である。第2実施形態または第3実施形態において、気液分離器18は、管部124を有してもよい。管部124は、水槽部92の底壁から水槽部92の内部空間に突出する。管部124の先端は、水槽部92の内部空間と連通する。管部124の基端は、戻し経路116と連通する。
【0091】
管部124が備えられることで、液水が流出し終わった時点における水槽部92のガス圧を設定することができる。つまり、液水が流出し終わった時点における水槽部92のガス圧は、管部124の長さで調整することができる。そのため、液水が流出し終わったタイミングで、排出経路52と供給経路40との間のガス圧の圧力差がなくなることを回避することができる。したがって、ガス圧の圧力差によって、確実に、気液分離器18から供給経路40に水素ガスを供給することができる。
【0092】
(変形例2)
図7Aは伸長状態の管部124を示し、図7Bは短縮状態の管部124を示す図である。第3実施形態において、気液分離器18は、管部124と、管駆動部126とを有してもよい。
【0093】
本変形例では、管部124は、テレスコピック構造に形成される。テレスコピック構造は、重なり合う2以上の筒が伸び縮み可能な構造である。2以上の筒の間には、液水の侵入を抑制するシール部材が設けられる。管駆動部126は、管部124を駆動する。例えば、管駆動部126は、モータの正転に応じて管部124の先端部分を押し込むことによって管部124を短縮させる。また、管駆動部126は、モータの逆転に応じて管部124の先端部分を引っ張ることによって管部124を伸長させる。
【0094】
本変形例では、運転停止制御部102は、管駆動部126を制御して管部124の長さを調整する。これにより、液水が流出し終わった時点における水槽部92のガス圧を、水槽部92の水位に応じて適切に設定することができる。
【0095】
例えば、運転停止制御部102は、水槽部92に設けられる水位検出器によって検出される水槽部92の水位に応じて、管部124の長さを調整する。この場合、例えば、運転停止制御部102は、水槽部92の水位が高くなるほど、管部124の長さを長くする。
【0096】
(変形例3)
第2実施形態または第3実施形態において、運転停止制御部102は、気液分離器18に貯留される液水の水位に基づいて気液分離器18から排出される水量を演算し、当該水量に応じて水戻し弁108または戻し弁118を閉弁するタイミングを変更してもよい。これにより、液水の供給量に応じたガス供給期間を自動的に設定することができる。
【0097】
(変形例4)
第2実施形態または第3実施形態において、運転停止制御部102は、含水量調整処理の開始時における水槽部92の水位が所定の上限値を超える場合に、運転停止制御部102は、水素供給弁62を開弁してもよい。これにより、水素昇圧スタック22に供給される水素ガスを補充することができる。その結果、水素昇圧スタック22に供給される液水が多量であっても、電解質膜27の含水量を適切にすることができる。
【0098】
(変形例5)
第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態において、運転停止制御部102は、含水量調整処理の前に、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2(各単位セル26のアノード側)からの流体の排出を停止させなくてもよい。この場合、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2からの流体の排出を停止させる場合に比べて、給水期間を長く設定すれば、電解質膜27に液水を十分に含ませることができる。本変形例では、運転停止制御部102は、含水量調整処理中、或いは、含水量調整処理後に、水素昇圧スタック22の排出ポートPT2からの流体の排出を停止させる。
【0099】
(変形例6)
第1実施形態、第2実施形態または第3実施形態において、運転停止制御部102は、昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、水素昇圧スタック22への電流を徐々に減少させながら、含水量調整処理を実行してもよい。
【0100】
(変形例7)
図8は、変形例7による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。図8では、第1実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0101】
本変形例では、水源34と、給水経路46と、給水弁70とが設けられていない。一方、本変形例では、給水経路128と、ポンプ130と、経路切替器132とが新たに設けられる。給水経路128、ポンプ130および経路切替器132は、供給装置14に含まれる。また、本変形例では、加湿器32の密閉容器80が水源34として代用される。
【0102】
給水経路128は、加湿器32から供給経路40に液水を導く経路である。給水経路128の上流端は、密閉容器80に接続される。給水経路128の下流端は、経路切替器132に接続される。
【0103】
ポンプ130は、密閉容器80に貯留される液水を水素昇圧スタック22に供給する装置である。ポンプ130は、給水経路128に設けられる。ポンプ130は、制御装置20の制御に応じて駆動される。ポンプ130は、駆動されると、上流側から下流側への流動力を水素ガスに付与する。
【0104】
経路切替器132は、供給経路40に給水経路128を接続するか、当該接続を切断するか切り替える機器である。経路切替器132は、制御装置20の制御に応じて接続を切り替える。経路切替器132は、例えば、三方弁である。経路切替器132は、供給経路40において導出経路44の下流端が接続される箇所よりも下流の箇所に設けられる。
【0105】
本変形例では、昇圧動作の実施中、運転制御部100は、経路切替器132を制御して、供給経路40に給水経路128を接続させない。この場合、水素昇圧スタック22には、水素供給源30から水素ガスが供給される。
【0106】
一方、運転停止制御部102は、含水量調整処理を開始(水素供給弁62を閉弁)してから所定の給水期間が経過するまで、ポンプ130を駆動するとともに供給経路40に給水経路128を接続させる。運転停止制御部102は、給水期間が経過すると、ポンプ130の駆動を停止させ、供給経路40に給水経路128を接続させないで、水素供給弁62を開弁する。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
なお、給水経路128、ポンプ130および経路切替器132は、第2実施形態または第3実施形態に適用されてもよい。例えば、含水量調整処理の開始時における水槽部92の水位が所定の水位閾値未満である場合に、運転停止制御部102は、ポンプ130を駆動するとともに供給経路40に給水経路128を接続させる。これにより、水槽部92に貯留される液水が少なくても、密閉容器80から液水を補充することができ、その結果、水素昇圧スタック22に適量の液水を供給することができる。
【0108】
(変形例8)
図9は、変形例8による電気化学式水素昇圧システム10を示す概略図である。図9では、第1実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は割愛する。
【0109】
本変形例では、第2気液分離器134と、排水経路136とが新たに備えられる。
【0110】
第2気液分離器134は、未反応ガス経路48に設けられる。第2気液分離器134は、水槽部92Aを有する。水槽部92Aには、ガス入力部94A、ガス出口部96Aおよび水出口部112Aが形成される。第2気液分離器134は、水素昇圧スタック22から排出される未反応の水素ガス中の水分を分離し、水槽部92Aに貯留する。排水経路136は、第2気液分離器134から加湿器32に液水を導く経路である。排水経路136の上流端は、水出口部112Aに接続される。排水経路136の下流端は、密閉容器80に接続される。
【0111】
本変形例では、水素昇圧スタック22から排出される未反応の水素ガス中の水分を加湿源として利用することができ、その結果、液水を効率的に利用することができる。
【0112】
(変形例9)
気泡発生器82、導入経路42および導入弁66は、電気化学式水素昇圧システム10から除外されてもよい。気泡発生器82、導入経路42および導入弁66を設けなくても、供給経路40を流れる水素ガスを加湿することができる。したがって、気泡発生器82、導入経路42および導入弁66を設けなくても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0113】
以上の記載から把握し得る発明および効果について以下に記載する。
【0114】
(1)本発明は、電解質膜(27)、アノード電極(28)およびカソード電極(29)を含む単位セル(26)が備えられる水素昇圧スタック(22)と、前記水素昇圧スタックに水素ガスおよび液水を供給する供給装置(14)と、前記水素昇圧スタックに電流を供給する電源装置(24)と、前記供給装置および前記電源装置を制御する制御装置(20)とを備える電気化学式水素昇圧システム(10)である。前記制御装置は、前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを供給させるとともに、前記電源装置から前記水素昇圧スタックに前記電流を供給させて、前記水素昇圧スタックに昇圧動作を実施させる運転制御部(100)と、前記昇圧動作の実施中に運転停止指令を受けると、前記液水を前記水素昇圧スタックに供給させた後、前記水素ガスを前記水素昇圧スタックに供給させる運転停止制御部(102)と、を備える。
【0115】
したがって、水素昇圧スタックにおける各単位セルの電解質膜に一様に水を含ませた後に、その電解質膜の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。これにより、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。その結果、水素昇圧スタックを早期に始動することができる。
【0116】
(2)本発明は、上記(1)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記供給装置は、水素供給源(30)から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路(40)に設けられる水素供給弁(62)と、水源(34)から前記供給経路に前記液水を導く給水経路(46)に設けられる給水弁(70)と、を備え、前記運転停止制御部は、前記運転停止指令から所定の給水期間が経過するまで前記給水弁を開弁して、前記液水の供給が停止されてから所定のガス供給期間が経過すると、前記水素供給弁を閉弁してもよい。
【0117】
これにより、昇圧動作中に用いられる供給経路を介して、液水および水素ガスを供給することができる。したがって、水素昇圧スタックの構造を変更せずに、水素昇圧スタックにおける各単位セルの電解質膜に一様に水を含ませた後に、その電解質膜の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。
【0118】
(3)本発明は、上記(1)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記供給装置は、前記水素昇圧スタックから排出される高圧水素ガスを導く排出経路(52)に設けられ、前記高圧水素ガス中の水分を分離する気液分離器(18)と、水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路に設けられる水素供給弁と、前記気液分離器から前記供給経路に前記液水を導く水戻し経路(104)に設けられる水戻し弁(108)と、前記気液分離器から前記供給経路に前記高圧水素ガスを導く水素戻し経路(106)に設けられる水素戻し弁(110)と、を備え、前記運転停止制御部は、前記水素供給弁を閉弁してから所定の給水期間が経過するまで前記水戻し弁を開弁し、前記液水の供給が停止されてから前記水素戻し弁を開弁し、所定のガス供給期間が経過すると、前記水素戻し弁を閉弁してもよい。
【0119】
これにより、昇圧動作中に用いられる供給経路を介して、液水および水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、水素昇圧スタックの構造を変更せずに、水素昇圧スタックにおける各単位セルの電解質膜に一様に水を含ませた後に、その電解質膜の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。
【0120】
また、昇圧動作中に得られた高圧水素ガス中から分離された水分を、水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、電気化学式水素昇圧システムに水源が設置されていなくてもよい。その結果、電気化学式水素昇圧システムにおける部品点数の増加を抑えながら、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。これに加えて、液水を効率的に利用することができる。
【0121】
さらに、気液分離器により水分が分離された乾燥状態の水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、電解質膜の含水量を迅速に調整し、かつ、水素ガスを効率的に利用することができる。
【0122】
さらに、液水は、高圧水素ガスによって気液分離器から押し出されて、水素昇圧スタックに供給される。一方、水素ガスは、排出経路と供給経路との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器から水素昇圧スタックに供給される。そのため、ポンプが設置されなくてよい。したがって、電気化学式水素昇圧システムにおける部品点数の増加を抑えながら、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。
【0123】
(4)本発明は、上記(1)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記供給装置は、前記水素昇圧スタックから排出される高圧水素ガスを導く排出経路に設けられ、前記高圧水素ガス中の水分を分離する気液分離器と、水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路に設けられる水素供給弁と、前記気液分離器から前記供給経路に前記液水および前記高圧水素ガスを導く戻し経路(116)に設けられる戻し弁(118)と、を備え、前記運転停止制御部は、前記水素供給弁を閉弁してから前記戻し弁を開弁し、前記液水および前記高圧水素ガスを、この順序で、前記気液分離器から前記戻し経路に排出させてもよい。
【0124】
これにより、昇圧動作中に用いられる供給経路を介して、液水および水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、水素昇圧スタックの構造を変更せずに、水素昇圧スタックにおける各単位セルの電解質膜に一様に水を含ませた後に、その電解質膜の含水量を水素ガスの供給により適切に調整することができる。
【0125】
また、昇圧動作中に得られた高圧水素ガス中から分離された水分を、水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、電気化学式水素昇圧システムに水源が設置されていなくてもよい。その結果、電気化学式水素昇圧システムにおける部品点数の増加を抑えながら、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。これに加えて、液水を効率的に利用することができる。
【0126】
さらに、気液分離器により水分が分離された乾燥状態の水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、電解質膜の含水量を迅速に調整し、かつ、水素ガスを効率的に利用することができる。
【0127】
さらに、液水は、高圧水素ガスによって気液分離器から押し出されて、水素昇圧スタックに供給される。一方、水素ガスは、排出経路と供給経路との間のガス圧の圧力差によって、気液分離器から水素昇圧スタックに供給される。そのため、ポンプが設置されなくてよい。したがって、電気化学式水素昇圧システムにおける部品点数の増加を抑えながら、電解質膜に含有する水分布を短時間で略均一化することができる。
【0128】
さらに、戻し弁を開弁するだけで、液水および水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。したがって、制御装置の処理負荷を軽減することができる。
【0129】
(5)本発明は、上記(4)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記運転停止制御部は、前記気液分離器に貯留される前記液水の水位に基づいて前記気液分離器から排出される水量を演算し、前記水量に応じて、前記戻し弁を閉弁するタイミングを変更してもよい。
【0130】
これにより、液水の供給量に応じたガス供給期間を自動的に設定することができる。
【0131】
(6)本発明は、上記(4)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記排出経路における前記高圧水素ガスの圧力が所定の圧力閾値以下になると、前記運転停止制御部は、前記戻し弁を閉弁してもよい。
【0132】
これにより、適量の水素ガスを水素昇圧スタックに供給することができる。
【0133】
(7)本発明は、上記(4)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記気液分離器は、前記水分を貯留する水槽部(92)と、前記水槽部の底壁から前記水槽部の内部空間に突出し、先端が前記内部空間と連通し、基端が前記戻し経路と連通する管部(124)をさらに有してもよい。
【0134】
これにより、液水が流出し終わった時点における水槽部のガス圧を、管部の長さで調整することができる。そのため、液水が流出し終わったタイミングで、排出経路と供給経路との間のガス圧の圧力差がなくなることを回避することができる。したがって、ガス圧の圧力差によって、確実に、気液分離器から供給経路に水素ガスを供給することができる。
【0135】
(8)本発明は、上記(7)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記管部は、伸び縮み可能に形成され、前記気液分離器は、前記管部を伸長または短縮させる管駆動部(126)をさらに有し、前記運転停止制御部は、前記管駆動部を制御して、前記管部の長さを調整してもよい。
【0136】
これにより、液水が流出し終わった時点における水槽部のガス圧を、水槽部の水位等に応じて自動的に設定することができる。
【0137】
(9)本発明は、上記(1)~(4)のいずれかに記載の電気化学式水素昇圧システムであって、前記運転停止制御部は、前記水素昇圧スタックへの前記電流の供給を停止させた後、或いは、前記水素昇圧スタックに供給される前記電流を減少させながら、前記液水を前記水素昇圧スタックに供給させてもよい。
【0138】
これにより、単位セルに滞留する水分の電解により生じる酸素ガスを低減することができる。したがって、水素昇圧スタックに供給される水素ガスと混合する酸素ガスの濃度を低減することができる。その結果、酸素ガスと水素ガスとの化学反応の発生を抑制することができる。
【0139】
(10)本発明は、上記(1)に記載の電気化学式水素昇圧システムであって、水素供給源から前記水素昇圧スタックに前記水素ガスを導く供給経路を流れる前記水素ガスを加湿する加湿器(32)と、前記水素昇圧スタックから排出される未反応の前記水素ガスを導く未反応ガス経路(48)に設けられ、未反応の前記水素ガス中の水分を分離する第2気液分離器(134)と、前記第2気液分離器により分離された前記水分を前記加湿器に導く排水経路(136)と、を備えてもよい。
【0140】
これにより、液水を効率よく利用することができる。
【0141】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0142】
10…電気化学式水素昇圧システム 12…電気化学式水素昇圧装置
14…供給装置 16…高圧水素貯留装置
18…気液分離器 20…制御装置
22…水素昇圧スタック 24…電源装置
26…単位セル 27…電解質膜
28…アノード電極 29…カソード電極
30…水素供給源 32…加湿器
34…水源 40…供給経路
52…排出経路 62…水素供給弁
70…給水弁 92…水槽部
100…運転制御部 102…運転停止制御部
104…水戻し経路 106…水素戻し経路
108…水戻し弁 110…水素戻し弁
124…管部 126…管駆動部
134…第2気液分離器 136…排水経路
図1
図2
図3
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図5
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図7
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図9