(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-02
(45)【発行日】2025-04-10
(54)【発明の名称】充電システムおよび充電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250403BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20250403BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20250403BHJP
B60L 53/60 20190101ALI20250403BHJP
B60L 58/24 20190101ALI20250403BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/04 L
H02J7/10 L
B60L53/60
B60L58/24
(21)【出願番号】P 2023501727
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006908
(87)【国際公開番号】W WO2022180699
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2024-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】河口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】澤浪 寿人
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-006461(JP,A)
【文献】特開2013-226012(JP,A)
【文献】特開2007-221885(JP,A)
【文献】特開2013-179751(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03278732(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
B60L 53/60
B60L 58/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電システムであって、
前記バッテリの充電の際の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度に基づいて、前記バッテリの充電の際における前記自動搬送車の電源制御を行う制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記バッテリの充電開始時に、前記温度が前記自動搬送車の動作温度範囲の下限に対応する所定温度以下であれば前記自動搬送車をシャットダウンせずに電源オンの状態で前記バッテリの充電を行い、前記温度が前記所定温度より高ければ前記自動搬送車をシャットダウンして電源オフの状態で前記バッテリの充電を行う
充電システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の充電システムであって、
前記制御部は、前記自動搬送車を電源オフの状態で前記バッテリの充電中に、前記温度が前記所定温度以下になれば前記自動搬送車を起動し、前記自動搬送車を電源オンの状態で前記バッテリの充電中に、前記温度が前記所定温度より高くなれば前記自動搬送車をシャットダウンする
充電システム。
【請求項3】
物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電システムであって、
前記バッテリの充電の際の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度が前記自動搬送車の動作温度範囲の下限以下にならないように前記自動搬送車の電源制御を行う制御部と、
を備える充電システム。
【請求項4】
物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電制御方法であって、
(a)前記バッテリの充電の際の温度を取得するステップと、
(b)前記ステップ(a)で取得された前記温度に基づいて、前記バッテリの充電の際における前記自動搬送車の電源制御を行うステップと、
を含
み、
前記ステップ(b)では、前記バッテリの充電開始時に、前記温度が前記自動搬送車の動作温度範囲の下限に対応する所定温度以下であれば前記自動搬送車をシャットダウンせずに電源オンの状態で前記バッテリの充電を行い、前記温度が前記所定温度より高ければ前記自動搬送車をシャットダウンして電源オフの状態で前記バッテリの充電を行う
充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、充電システムおよび充電制御方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を駆動するためのモータと、モータに電力を供給するバッテリとを備え、物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電ステーション(待機ステーション)を有するシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、冷凍設備などの低温環境で自動搬送車を走行させるものが例示されており、充電ステーションに充電用電極とヒーティング用電極とが設けられている。そして、自動搬送車が充電ステーションに停車すると、充電用電極とヒーティング用電極とがそれぞれ自動搬送車の電極と接触することで、バッテリの充電と自動搬送車の保温とを同時に行う。これにより、自動搬送車が低温となってバッテリを含む電子機器が動作不良となるのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシステムでは、充電中の自動搬送車を保温するために、充電ステーションにヒーティング用電極を設けると共に、ヒーティング用電極に対応する電極を各自動搬送車にそれぞれ設ける必要がある。即ち、保温するための専用の構成を設ける必要があるから、構成が複雑となるだけでなくコストアップを招いてしまう。
【0005】
本開示は、充電中の温度環境に応じた自動搬送車の保温を簡易な構成で適切に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の充電システムは、
物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電システムであって、
前記バッテリの充電の際の温度を取得する温度取得部と、
前記温度取得部で取得された前記温度に基づいて、前記バッテリの充電の際における前記自動搬送車の電源制御を行う制御部と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
本開示の充電システムでは、バッテリの充電の際の温度に基づいて、バッテリの充電の際における自動搬送車の電源制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】倉庫20とAMR50の制御に関する構成を示すブロック図。
【
図4】AMR充電制御の一例を示すフローチャート。
【
図5】温度変化対応処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】雰囲気温度TaとAMR50の電源状態との一例を示す説明図。
【
図7】変形例のAMR充電制御を示すフローチャート。
【
図8】変形例における雰囲気温度TaとAMR50の電源状態とを示す説明図。
【
図9】第2実施形態のAMR50Bの制御に関する構成を示すブロック図。
【
図10】第2実施形態の電力供給に関する構成を示すブロック図。
【
図11】メインバッテリ52Bの出力電流Iの時間推移の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
次に、本開示を実施するための第1実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、物品管理システム10の一例を示す説明図である。
図2は、倉庫20の一例を示す説明図である。
図3は、倉庫20とAMR50の制御に関する構成を示すブロック図である。物品管理システム10は、配送車60により配送されて倉庫20に収容されている物品や倉庫20から配送車60により所望の目的地へ配送される物品の管理などを行う。倉庫20内や配送車60との間の物品の搬送には、台車12やAMR(autonomous mobile robot)50などが用いられる。ここで、物品としては、例えば冷凍食品などの食品や生活日用品、各種産業品などが挙げられる。
図1では、物品は収容箱18に収容されているが、以下では収容箱18に収容されているか否かを特に区別することなく、単に物品という。また、物品の配送は、配送車60に限られず、列車や船舶、航空機などでもよい。
【0011】
台車12は、物品を積載する平板状の積載部13と、積載部13の下面側に配設された走行用車輪としてのキャスター14とを備える。台車12の積載部には、図示しない作業者やアームロボットなどにより、物品が移載される。台車12は、作業者により移動される他、AMR50により自動移動される。なお、台車12は、かご台車としてもよい。
【0012】
倉庫20は、複数の保管棚(保管庫)22と、倉庫管理装置30と、充電ステーション40とを備え、出入口21や台車12の待機エリア24が設けられている。台車12やAMR50により倉庫20内に搬送された物品は、図示しない作業者やアームロボットなどにより各保管棚22へ収容される。また、保管棚22に収容された物品は、作業者やアームロボットなどにより、台車12に移載されて配送車60に収容されたり、AMR50に移載されて他の保管棚22や待機エリア24に搬送される。待機エリア24では、保管棚22への収容待ちの物品を搭載した台車12や、配送車60への収容待ちの物品を搭載した台車12などが待機する。なお、倉庫20が、保管棚22に物品を自動で出し入れ可能な自動倉庫であってもよいし、例えば冷凍食品等を保管する冷凍倉庫であってもよい。
【0013】
倉庫管理装置30は、制御部32と、記憶部34と、通信部36とを備える。制御部32は、保管棚22における物品の収容や物品の払出、AMR50や台車12による物品の搬送などの管理を行う。記憶部34は、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルなどを記憶する。また、記憶部34は、各保管棚22に収容されている物品の情報や各AMR50の走行予定の情報なども記憶する。通信部36は、充電ステーション40やAMR50などの外部機器と有線または無線により通信可能となっている。
【0014】
充電ステーション40は、1または複数(例えば
図2では3つ)の充電エリア41が設けられており、充電エリア41内の所定位置にAMR50が停車すると、コネクタが接続されてAMR50を充電可能となる。なお、充電ステーション40が、AMR50を非接触で充電可能であってもよい。また、充電ステーション40は、制御部42と、温度センサ44と、通信部46とを備える。制御部42は、各充電エリア41におけるAMR50の充電制御や充電中のAMR50に対する指示などを行う。温度センサ44は、各充電エリア41の雰囲気温度Taを測定し、制御部42に出力する。通信部46は、倉庫管理装置30やAMR50などの外部機器と有線または無線により通信可能となっている。
【0015】
AMR50は、制御部51と、バッテリ52と、電源回路54と、駆動部55と、昇降部56と、検出センサ57と、記憶部58と、通信部59とを備え、周囲の障害物などを回避しながら任意の方向に自律走行して物品を自動搬送するものである。
【0016】
バッテリ52は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、所定電圧の電力を電源回路54に出力する。電源回路54は、バッテリ52からの電力を、駆動部55や昇降部56などの駆動系に必要な高電圧の電力として供給したり、駆動系以外の制御部51や通信部59などの制御系に必要な低電圧の電力として供給したりする。駆動部55は、車輪55aを回転駆動させるモータや操舵機構などを備え、AMR50を移動させる。なお、車輪55aがメカナムホイールとして構成されていてもよい。昇降部56は、AMR50の上面を構成する昇降板56aをシリンダなどで上下に昇降させる昇降装置として構成されている。AMR50は、台車12の下方に位置する状態で、昇降部56の駆動により昇降板56aを上昇させて積載部13を持ち上げることで台車12と接続されて、台車12を移動させることが可能となる。
【0017】
検出センサ57は、例えばレーザ光や音波などを周囲に照射して反射波を検出することにより、AMR50の周囲の物体の有無やその物体までの距離を検出する。制御部51は、AMR50全体を制御するものであり、電源回路54や駆動部55、昇降部56へ制御信号を出力したり、検出センサ57からの検出情報や駆動部55や昇降部56の駆動状態などを入力したりする。また、制御部51は、駆動部55の駆動状態などに基づいてAMR50の移動方向や移動速度、移動距離、現在位置などを把握する。制御部51は、検出センサ57からの検出情報に基づいて、周囲の物体を回避して走行するように駆動部55を制御したり、走行しながら倉庫20内のマップを作成したり、マップを更新したりする。記憶部58は、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する。また、記憶部58は、制御部51により作成されたマップなども記憶する。通信部59は、倉庫管理装置30や充電ステーション40などの外部機器と無線で情報のやりとりを行う。本実施形態では、AMR50を例示するが、物品を自動搬送する自動搬送車であればよく、予め定められた走路を移動するAGV(Automatic Guided Vehicle)などでもよい。
【0018】
配送車60は、1以上の台車12を積載して配送する車両である。配送車60は、図示しない生産拠点などで物品が搭載された台車12を積載し倉庫20へ配送したり、倉庫20で物品が搭載された台車12を積載し所定の目的地へ配送したりする。この配送車60は、
図1に示すように、荷室61と、テールゲート62と、テールリフト63と、制御部65と、通信部67とを備える。荷室61は、台車12を積載する空間である。テールゲート62は、車両後部に設けられ、電動アクチュエータや油圧アクチュエータなどの駆動によって荷室61の開放と閉鎖とを行う。テールリフト63は、テールゲート62の開放時に、搭乗面を水平状態とすることで台車12やAMR50などが搭乗可能となり、電動アクチュエータや油圧アクチュエータなどの駆動によって荷室61の床面と路面との間を上下に昇降する。制御部65は、通信部67を介した外部機器との通信により、テールゲート62やテールリフト63の作動を制御する。また、制御部65は、図示しない操作パネルを介して作業者(運転者)から受け付けた操作指示に基づいてテールリフト63などの作動を制御してもよい。通信部67は、倉庫管理装置30やAMR50などの外部機器と無線で情報のやりとりを行う。なお、制御部65が、専ら作業者の操作指示に基づいてテールリフト63などの作動を制御する構成の場合、通信部67を備えなくてもよい。また、配送車60が、冷凍食品等を配送する冷凍車として構成されていてもよい。
【0019】
以下は、こうして構成された物品管理システム10の動作、特に充電ステーション40におけるAMR50の充電制御の説明である。
図4は、AMR充電制御の一例を示すフローチャートであり、充電ステーション40の制御部42により実行される。AMR充電制御では、制御部42は、AMR50が充電ステーション40のいずれかの充電エリア41に充電可能に接続されるのを待つ(S100)。
【0020】
制御部42は、AMR50が充電エリア41に充電可能に接続されたと判定すると、AMR50の動作温度範囲の下限温度Tminを取得すると共に(S110)、温度センサ44から充電エリア41の雰囲気温度Taを取得する(S120)。動作温度範囲は、AMR50の各部の仕様に基づいて定まり、例えば下限温度Tminが0℃などに定められている。制御部42は、充電エリア41にAMR50が接続される度にAMR50との通信により動作温度範囲を取得すればよく、倉庫管理装置30との通信により取得してもよい。あるいは、制御部42は、倉庫20で用いられるAMR50の動作温度範囲を予め図示しない記憶部に記憶しておき、AMR50が接続された際にその動作温度範囲を読み出して取得してもよい。
【0021】
次に、制御部42は、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であるか否かを判定し(S130)、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であると判定すると、AMR50をシャットダウンせず電源オン状態で充電する(S140)。一方、制御部42は、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高いと判定すると、AMR50をシャットダウンして電源オフ状態で充電する(S150)。
【0022】
続いて、制御部42は、AMR50の充電が完了したか否かを判定する(S160)。制御部42は、S160では、例えばバッテリ52の電圧や蓄電割合が所定の満充電電圧や満充電割合に至った場合に充電が完了したと判定する。制御部42は、S160で充電が完了していないと判定すると、
図5に示す温度変化対応処理を実行して(S170)、再びS160に戻る。そして、制御部42は、S160で充電が完了したと判定すると、AMR50の充電を終了し充電エリア41からの退出をAMR50に指示して(S180)、AMR充電制御を終了する。
【0023】
図5は、温度変化対応処理の一例を示すフローチャートであり、
図6は、雰囲気温度TaとAMR50の電源状態との一例を示す説明図である。この処理では、制御部42は、温度センサ44から充電エリア41の雰囲気温度Taを取得し(S200)、AMR50が電源オフ状態であるか否かを判定する(S210)。制御部42は、AMR50が電源オフ状態であると判定すると、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であるか否かを判定し(S220)、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高いと判定すると、温度変化対応処理を終了する。一方、制御部42は、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であると判定すると、AMR50を起動して電源オン状態で充電するようにして(S230,
図6(1))、温度変化対応処理を終了する。
【0024】
また、制御部42は、S210でAMR50が電源オン状態であると判定すると、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高いか否かを判定し(S240)、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であると判定すると、温度変化対応処理を終了する。一方、制御部42は、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高いと判定すると、電源オン状態のAMR50をシャットダウンして電源オフ状態で充電するようにして(S250,
図6(2))、温度変化対応処理を終了する。なお、AMR50の電源状態が頻繁に切り替わるのを防止するため、S220とS240の判定用の温度を異なる温度としてもよい。例えば、S240では、下限温度Tminよりも若干高い判定用温度を用いてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態の構成要素と本開示の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の温度センサ44とAMR充電制御のS120の処理を実行する制御部42とが温度取得部に相当し、AMR充電制御(S120の処理を除く)を実行する制御部42が制御部に相当する。
【0026】
以上説明した充電ステーション40では、充電開始時に雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下であればAMR50をシャットダウンせずに充電する。AMR50をシャットダウンすると、充電終了時の雰囲気温度TaによってはAMR50が正常に起動できないおそれがある。特に、倉庫20が冷凍倉庫の場合、雰囲気温度Taが下限温度Tminを大きく下回ることがあり、正常に起動できないおそれが高くなる。本実施形態では、電源オン状態で充電することで、保温専用の構成を必要としない簡易な構成でAMR50を保温することができるから、充電終了後にAMR50を安定的に動作させることができる。一方、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高ければAMR50をシャットダウンしてバッテリ52を充電する。このため、正常に起動できないおそれがない場合には、充電中のAMR50の電力消費を適切に抑制することができる。
【0027】
また、電源オフ状態で充電中に、雰囲気温度Taが下限温度Tmin以下になればAMR50を起動し、電源オン状態で充電中に、雰囲気温度Taが下限温度Tminより高くなればAMR50をシャットダウンする。このため、充電中の雰囲気温度Taの変化に適切に対応することができる。
【0028】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0029】
上述した第1実施形態では、充電エリア41の雰囲気温度Taを取得し下限温度Tminと比較してAMR50の電源状態を切り替えたが、これに限られず、充電の際に取得された温度に基づいてAMR50の電源制御を行うものであればよい。例えば、雰囲気温度Taに限られず、AMR50に設けられた温度センサや、倉庫20内や倉庫20外に設けられた温度センサなどの検出温度を取得してもよいし、天気予報の予想気温などをネットワークを介した通信などにより取得してもよい。また、下限温度Tminに限られず、動作温度範囲の下限温度Tminに対応する所定温度と比較してもよい。例えば、下限温度Tminよりも若干高い温度を所定温度としてAMR50の保温を優先させてもよい。また、下限温度Tminよりも高い所定温度以下で電源オン状態とすれば、充電中に温度が下限温度Tmin以下とならないようにAMR50の電源制御を行うものとなる。
【0030】
第1実施形態では、電源オフ状態で充電中に下限温度Tmin以下となった場合にAMR50を電源オン状態としたが、これに限られるものではない。例えば、電源オフ状態で充電中に、所定の時間間隔毎即ち定期的にAMR50を起動して電源オン状態とし、一定時間経過後に再度電源オフ状態としてもよい。そのようにする場合、定期的にAMR50を起動して、雰囲気温度TaまたはAMR50に設けられた温度センサの温度が下限温度Tminより高いことを確認してから電源オフ状態としてもよい。こうすれば、下限温度Tmin以下にならないようにAMR50の電源制御を行うことができる。
【0031】
第1実施形態では、AMR50を電源オン状態または電源オフ状態としてバッテリ50を充電したが、これに限られず、他の状態でバッテリ50を充電してもよい。例えばAMR50の電源回路54を、制御系への低電圧の電力供給を維持しつつ駆動系への高電圧の電力供給を遮断する、いわゆるスリープ状態などの省電力状態に移行可能とし、以下のようにAMR50の充電制御を行う。
図7は、変形例のAMR充電制御を示すフローチャートである。変形例では、
図4と同じ処理には同じステップ番号を付して説明を省略する。
【0032】
このAMR充電制御では、制御部42は、雰囲気温度Taが第1温度T1以下であるか否か(S130b)、第1温度T1より高い第2温度T2以下であるか否か(S142)、をそれぞれ判定する。なお、例えば第1温度T1を下限温度Tminとすることができる。制御部42は、S130bで第1温度T1以下であると判定すると、S140でAMR50を電源オン状態で充電する。また、制御部42は、S130b,S142で第1温度T1より高く第2温度T2以下であると判定すると、AMR50をシャットダウンせずに省電力状態で充電する(S144)。また、制御部42は、S142で第2温度T2より高いと判定すると、S150でAMR50を電源オフ状態で充電する。S170の温度変化対応処理の詳細は省略するが、以下のようにAMR50の電源状態が切り替わる。
【0033】
図8は、変形例における雰囲気温度TaとAMR50の電源状態とを示す説明図である。電源オフ状態で充電中に雰囲気温度Taが第2温度T2以下になると、制御部42は、AMR50を起動してスタンバイ状態で充電する(
図8(1))。スタンバイ状態で充電中に雰囲気温度Taが第1温度T1以下になると、制御部42は、AMR50を電源オン状態で充電する(
図8(2))。一方、電源オン状態で充電中に雰囲気温度Taが第1温度T1より高くなると、制御部42は、AMR50をスタンバイ状態として充電する(
図8(3))。スタンバイ状態で充電中に雰囲気温度Taが第1温度T1より高くなると、制御部42は、AMR50を電源オフ状態で充電する(
図8(4))。なお、電源状態が頻繁に切り替わるのを防止するため、第1温度T1や第2温度T2にヒステリシスをもって電源状態を切り替えてもよい。
【0034】
この変形例では、AMR50を、電力供給を遮断する電源オフ状態と、低電圧の電力供給を維持しつつ高電圧の電力供給を遮断する省電力状態と、低電圧と高電圧のいずれの電力供給も可能な電源オン状態とに切り替え可能に構成し、雰囲気温度Taに応じて電源状態を切り替える。このため、バッテリ52を充電する際の温度に応じてより細かく電源状態を切り替えるから、電源状態を単にオンオフするものよりも、電力消費の抑制と保温との両立を図ることができる。
【0035】
変形例では、第1温度T1を動作範囲の下限温度Tminとしたが、これに限られず、第2温度T2を下限温度Tminとしてもよい。あるいは、下限温度Tminを間に挟むように、例えば第1温度T1と第2温度T2の中間(平均)の温度が下限温度Tminとなるように、第1温度T1と第2温度T2とを定めてもよい。あるいは、第1温度T1と第2温度T2をいずれも下限温度Tminより高い温度に定めることにより、充電中に温度が下限温度Tmin以下とならないようにAMR50の電源制御を行うことができる。
【0036】
第1実施形態では、充電中にAMR50の電源状態を切り替えたが、これに限られるものではない。例えば、充電開始時にAMR50を電源オン状態として充電すれば、充電中に電源オフしないものとしてもよい。一方で、充電開始時にAMR50を電源オフ状態として充電しても、充電中に電源オンすることがあってもよい。こうすれば、AMR50を適切に保温して充電終了後に安定的に動作させることができる。
【0037】
第1実施形態では、倉庫20の一例として冷凍倉庫を挙げたが、通常温度の物品を取り扱う倉庫であってもよい。そのような倉庫でも、冬期などの季節や寒冷地などの場所によっては低温環境となるから、本実施形態を適用する意義はある。また、AMR50は、倉庫20に限られず、工場や店舗などで用いられてもよいし、屋内に限られず屋外で用いられてもよい。
【0038】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
図9は、第2実施形態のAMR50Bの制御に関する構成を示すブロック図である。AMR50Bは、第1実施形態のバッテリ52に相当するメインバッテリ52Bと、メインバッテリ52Bよりも容量の小さなサブバッテリ53と、各バッテリ52B,53からの電力を駆動部55や昇降部56などの負荷に供給する電源回路54Bとを備える。AMR50Bは、これら以外は、第1実施形態のAMR50と同様に構成されている。
【0039】
図10は、第2実施形態の電力供給に関する構成を示すブロック図である。電源回路54Bは、電源制御を司る電源制御IC54aと、メインバッテリ52Bから負荷への電力供給を制御する制御スイッチ54bと、サブバッテリ53から負荷への電力供給を制御する制御スイッチ54cとを備える。また、電源回路54Bは、メインバッテリ52Bの出力電流Iを検出する電流センサ54dと、サブバッテリ53の出力電流を検出する電流センサ54eとを備える。各電流センサ54d,54eの検出値は、電源制御IC54aに入力される。
【0040】
図11は、メインバッテリ52Bの出力電流Iの時間推移の一例を示す説明図である。電源制御IC54aは、メインバッテリ52Bからの出力電流Iを監視し、出力電流Iが第1電流I1に達すると(時刻t1)、サブバッテリ53からの電力供給を開始する。第1電流I1は、メインバッテリ52Bの定格出力電流Imaxよりも小さな閾値に定められている。これにより、出力電流Iが定格出力電流Imaxとなる前に、サブバッテリ53を用いて負荷への電力供給を補うことができる。このため、出力電流Iが定格出力電流Imaxを超えるのを一時的なものとして、メインバッテリ52Bを保護することができる。また、電源制御IC54aは、出力電流Iが第2電流I2より下がると(時刻t2)、サブバッテリ53からの電力供給を終了して、メインバッテリ52Bからの電力供給のみに切り替える。このように第2実施形態では、メインバッテリ52Bとサブバッテリ53とを備え、通常はメインバッテリ52Bから電力供給を行い、通常よりも大きな電力が必要な場合にサブバッテリ53から電力供給を行う。
【0041】
ここで、負荷側から定格出力電流Imaxを超える電流要求があって一時的に大電流が必要になると、メインバッテリ52の過電流保護機能が作動する場合がある。本実施形態では、サブバッテリ53を用いて電力供給を補うから、メインバッテリ52を無闇に大型化することなく、過電流保護機能の作動によりメインバッテリ52が強制停止されるのを防止することができる。このため、強制停止後に作業者がAMR50を立ち上げ直す作業やそのための移動が必要になるのを防止することができる。
【0042】
第2実施形態では、電源制御IC54aが、出力電流Iを監視してサブバッテリ53から電力供給するか否かを切り替えたが、これに限られない。例えば電源制御IC54aは、制御部51からAMR50の走行や動作などの情報を取得し、取得した情報に基づいて必要な電流を事前に算出してサブバッテリ53から電力供給するか否かを切り替えてもよい。第2実施形態では、第1実施形態の
図4(
図7)のようにAMR50Bの充電制御を行うことができるが、これに限られず、そのような充電制御を行わなくてもよい。
【0043】
ここで、本開示の充電システムは、バッテリの充電の際の温度に応じて、充電時の自動搬送車の電力消費を抑制したり、充電終了後に自動搬送車を安定的に動作させることが可能となる。したがって、自動搬送車を保温するための専用の構成を必要としない簡易な構成で、充電中の温度環境に応じた自動搬送車の保温を適切に行うことができる。
【0044】
また、本開示の充電システムを以下のように構成してもよい。例えば、本開示の充電システムにおいて、前記制御部は、前記バッテリの充電開始時に、前記温度が前記自動搬送車の動作温度範囲の下限に対応する所定温度以下であれば前記自動搬送車をシャットダウンせずに電源オンの状態で前記バッテリの充電を行い、前記温度が前記所定温度より高ければ前記自動搬送車をシャットダウンして電源オフの状態で前記バッテリの充電を行うものとしてもよい。こうすれば、温度が所定温度以下であるために自動搬送車をシャットダウンすると充電終了時に正常に起動できないおそれがある場合、電源オンの状態でバッテリの充電を行って充電終了後に自動搬送車を安定的に動作させることができる。一方で、温度が所定温度より高く、起動できないおそれがない場合、電源オフの状態でバッテリの充電を行うことで充電時の自動搬送車の電力消費を適切に抑制することができる。
【0045】
本開示の充電システムにおいて、前記制御部は、前記自動搬送車を電源オフの状態で前記バッテリの充電中に、前記温度が前記所定温度以下になれば前記自動搬送車を起動し、前記自動搬送車を電源オンの状態で前記バッテリの充電中に、前記温度が前記所定温度より高くなれば前記自動搬送車をシャットダウンするものとしてもよい。こうすれば、充電中の温度変化に適切に対応して、充電時の自動搬送車の電力消費を抑制したり、充電終了後に自動搬送車を安定的に動作させることが可能となる。
【0046】
本開示の別の充電システムは、物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電システムであって、前記バッテリの充電の際の温度を取得する温度取得部と、前記温度取得部で取得された前記温度が前記自動搬送車の動作温度範囲の下限以下にならないように前記自動搬送車の電源制御を行う制御部と、を備えることを要旨とする。このため、上述した充電システムと同様に、充電終了後に自動搬送車を安定的に動作させることが可能となるから、自動搬送車を保温するための専用の構成を必要としない簡易な構成で自動搬送車の保温を適切に行うことができる。この別の充電システムにおいて、上述した充電システムのいずれかの機能を実現する構成を追加してもよい。
【0047】
本開示の充電制御方法は、
物品を自動搬送する自動搬送車のバッテリを充電する充電制御方法であって、
(a)前記バッテリの充電の際の温度を取得するステップと、
(b)前記ステップ(a)で取得された前記温度に基づいて、前記バッテリの充電時における前記自動搬送車の電源制御を行うステップと、
を含むことを要旨とする。
【0048】
本開示の充電制御方法では、上述した充電システムと同様に、自動搬送車を保温するための専用の構成を必要としない簡易な構成で、充電中の温度環境に応じた自動搬送車の保温を適切に行うことができる。この充電制御方法において、上述した充電システムのいずれかの機能を実現するステップを追加してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本開示は、自動搬送車のバッテリを充電する充電システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 物品管理システム、12 搬送台車、13 積載部、14 キャスター、18 収容箱、20 倉庫、22 保管棚、24 待機エリア、30 倉庫管理装置、32 制御部、34 記憶部、36 通信部、40 充電ステーション、41 充電エリア、42 制御部、44 温度センサ、46 通信部、50,50B AMR、51 制御部、52 バッテリ、52B メインバッテリ、53 サブバッテリ、54,54B 電源回路、54a 電源制御IC、54b,54c 制御スイッチ、54d,54e 電流センサ、55 駆動部、55a 車輪、56 昇降部、56a 昇降板、57 検出センサ、58 記憶部、59 通信部、60 配送車、61 荷室、62 テールゲート、63 テールリフト、65 制御部、67 通信部。