(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-03
(45)【発行日】2025-04-11
(54)【発明の名称】冷却構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20250404BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2020207350
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】百留 摩耶
(72)【発明者】
【氏名】濱本 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】根本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孔明
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-171751(JP,A)
【文献】特開2009-152362(JP,A)
【文献】国際公開第99/016128(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を生じる発熱体が配置された基板と、
前記基板に対向して配置されており、前記発熱体が生じた熱を外部に放熱する放熱部と、
前記発熱体が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる複数の伝熱ブロックと、
前記発熱体が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる弾性を有する伝熱弾性体と、
を備え、
前記伝熱ブロックは、
それぞれが、直方体、立方体、菱形柱または円柱である柱状体として設けられ、前記基板に直交する方向に互いに積層されて、前記発熱体と前記放熱部との間に配置されており、
前記伝熱弾性体は、前記伝熱ブロックと前記放熱部との間に配置されている冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記伝熱弾性体は、前記伝熱ブロック同士の間、および、前記伝熱ブロックと前記基板との間のうち、一箇所以上に配置されている冷却構造。
【請求項3】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記伝熱ブロックは、前記放熱部に向かうに連れて断面積が大きくなるように配置されている冷却構造。
【請求項4】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記伝熱ブロックは、前記放熱部側と接触する接触面が、前記発熱体側と接触する接触面よりも、45度以上の外側に広がるように積層されている冷却構造。
【請求項5】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記基板に、熱を生じる複数の発熱体が配置されており、
積層された前記伝熱ブロックの一部が、複数の前記発熱体のそれぞれと熱的に接続されている冷却構造。
【請求項6】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記基板に、前記発熱体よりも高さが高い背高体が配置されており、
積層された前記伝熱ブロックの一部が、前記背高体の上方に位置する冷却構造。
【請求項7】
請求項1に記載の冷却構造であって、
前記伝熱ブロックは、アルミニウム合金で形成されている冷却構造。
【請求項8】
請求項
7に記載の冷却構造であって、
前記伝熱ブロックは、陽極酸化処理が施されている冷却構造。
【請求項9】
電子部品が配置された基板と、
前記基板に対向して配置されており、前記電子部品が生じた熱を外部に放熱する放熱部と、
前記電子部品が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる複数の伝熱ブロックと、
前記電子部品が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる弾性を有する伝熱弾性体と、を備え、
前記伝熱ブロックは、
それぞれが、直方体、立方体、菱形柱または円柱である柱状体として設けられ、前記基板に直交する方向に互いに積層されて、前記電子部品と前記放熱部との間に配置されており、且つ、前記伝熱弾性体は、前記伝熱ブロックと前記放熱部との間に配置されている冷却構造を備えた電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に配置された電子部品等の発熱体を冷却する冷却構造、および、それを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの電子機器は、プリント配線板(Printed Wiring Board:PWB)に電子部品を実装した電子回路を備えている。集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器、コンデンサ等の電子部品は、リソグラフィで配線が形成されたPWB上に、半田付けされてプリント回路板(Printed Circuit Board:PCB)を形成している。ある種の電子部品は、動作に伴って発熱するため、放熱用の冷却構造と共に用いられている。
【0003】
冷却構造としては、ヒートシンク、ヒートパイプ等が多用されている。また、基板への放熱では冷却が不十分となるため、電子部品を収容する筐体を放熱に利用する方式も用いられている。一般に、電子部品が生じた熱を外部に放熱するヒートシンク、筐体等の放熱部は、集積回路等の発熱部品毎に、金属板、金属ブロック等の放熱部材を介して取り付けられている。
【0004】
近年、電子機器で処理される情報処理量が増大しており、電子部品が生じる発熱量も増加傾向にある。そのため、電子部品を効率的に冷却する冷却構造が求められている。電子部品と放熱部とを熱的に接続する放熱部材は、他の電子部品と干渉することが問題となるため、冷却構造の改良が検討されている。
【0005】
特許文献1には、発熱部品と、筐体と、放熱部材(放熱部)とを備える密閉型電子機器が記載されている。放熱部材は、発熱部品との接触面積よりも、筐体との接触面積の方が大きく形成されている。放熱部材の側部は、発熱部品から筐体にかけて漸次広げられてテーパ状に形成されたテーパ部とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、電子部品が生じた熱を外部に放熱する放熱部は、金属板、金属ブロック等の放熱部材を介して、発熱部品に取り付けられているが、直方体状の放熱部材は、発熱部品の周囲に配置された他の電子部品と干渉し易いという問題がある。他の電子部品と干渉するような場合、放熱部材のサイズを大きくすることができず、伝熱経路の断面積を拡大することができないため、十分な放熱を行うことが困難になっている。
【0008】
特許文献1に記載されているように、放熱部材をテーパ状に設けると、伝熱経路の断面積を確保しつつ、他の電子部品との干渉を避けることができる。しかし、放熱部材をテーパ状に設ける場合、加工コストが増大することが問題となる。特許文献1に記載されている銅は、切削加工等が容易ではないため、低コストの冷却構造を実現することが難しい。
【0009】
また、プリント回路基板上には、熱を生じる集積回路等だけではなく、高さが高い他の電子部品が実装されることもある。このような電子部品が熱を生じない場合には、放熱部材を接触させる必要はないが、放熱部材をテーパ状に設ける方法では、干渉を避けきれない虞がある。このような場合、回路配置が制約されたり、基板の大型化が必要になったりする。特に、消費電力が10Wを超える集積回路等の場合、回路基板の大部分を覆う伝熱部材が必要になるため、部品同士の干渉が大きな問題となる。
【0010】
また、プリント回路基板上には、冷却の対象となる発熱部品が、複数近接して配置されることもある。一般に、伝熱経路としては、鉛直上方に向けて外側に拡がる経路が好ましいといわれている。しかし、放熱部材をテーパ状に設ける方法では、このよう伝熱経路を発熱部品毎に確保することが困難である。
【0011】
そこで、本発明は、基板上に配置された発熱体を周囲との干渉を回避しつつ低コストで効率的に冷却することが可能であり、複数の発熱体の効率的な冷却にも対応することができる冷却構造、および、これを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、前記課題を解決するために本発明に係る冷却構造は、熱を生じる発熱体が配置された基板と、前記基板に対向して配置されており、前記発熱体が生じた熱を外部に放熱する放熱部と、前記発熱体が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる複数の伝熱ブロックと、前記発熱体が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる弾性を有する伝熱弾性体と、を備え、前記伝熱ブロックは、それぞれが、直方体、立方体、菱形柱または円柱である柱状体として設けられ、前記基板に直交する方向に互いに積層されて、前記発熱体と前記放熱部との間に配置されており、前記伝熱弾性体は、前記伝熱ブロックと前記放熱部との間に配置されている。
【0013】
また、本発明に係る電子機器は、電子部品が配置された基板と、前記基板に対向して配置されており、前記電子部品が生じた熱を外部に放熱する放熱部と、前記電子部品が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる複数の伝熱ブロックと、前記電子部品が生じた熱を前記放熱部に向けて熱伝導させる弾性を有する伝熱弾性体と、を備え、前記伝熱ブロックは、それぞれが、直方体、立方体、菱形柱または円柱である柱状体として設けられ、前記基板に直交する方向に互いに積層されて、前記電子部品と前記放熱部との間に配置されており、且つ、前記伝熱弾性体は、前記伝熱ブロックと前記放熱部との間に配置されている冷却構造を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、基板上に配置された発熱体を周囲との干渉を回避しつつ低コストで効率的に冷却することが可能であり、複数の発熱体の効率的な冷却にも対応することができる冷却構造、および、これを用いた電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
【
図2】比較例に係る冷却構造を示すプリント回路板の断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る冷却構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る冷却構造、および、これを用いた電子機器について、図を参照しながら説明する。なお、以下の各図において、共通する構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る冷却構造は、基板1と、基板1を収容する筐体2と、基板1上に配置された電子部品3,4と、電子部品が生じた熱を筐体2に向けて熱伝導させる放熱部材5,6と、を備えている。
【0018】
図1に示す冷却構造において、電子部品3,4としては、作動時に冷却が必要な熱を生じ、冷却の対象となる発熱部品3と、冷却が必要な熱を実質的に生じず、冷却の対象とならない非冷却部品4と、が基板1上に配置されている。
【0019】
また、
図1に示す冷却構造において、放熱部材5,6としては、熱伝導率が高い材料で形成された単純形状の伝熱ブロック5と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材6と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されている。
【0020】
筐体2は、中空構造に設けられており、天井面が基板1に対向して配置されている。
図1に示す冷却構造において、筐体2は、発熱部品3が生じた熱を外部に放熱する放熱部として機能する。
【0021】
図1には、基板上に配置された発熱体を冷却する冷却構造の一例として、熱を生じる発熱部品3が配置されたプリント回路板を示している。
図1に示す冷却構造は、電子部品である発熱部品(発熱体)3が生じた熱を、放熱部材5,6を介して筐体2に伝達し、筐体2から外部に放熱する構造とされている。
【0022】
図1に示す冷却構造において、放熱部として機能する筐体2への伝熱経路は、伝熱ブロック5と伝熱材6によって形成されている。
図1に示す冷却構造は、単純形状に設けられた伝熱ブロック5が、発熱部品3に垂直な方向、すなわち、基板1に直交する方向に互いに積層されている点に、主要な特徴を有している。
【0023】
基板1は、配線が形成されたプリント配線板であり、表面に電子部品3,4が半田付けされている。プリント配線基板は、例えば、紙、ガラス等の絶縁性の材料に、エポキシ樹脂、ベークライト等の樹脂を含浸し、所定の配線をリソグラフィによりパターニングして得られる。
【0024】
筐体2は、基板1に加え、電子部品3,4や放熱部材5,6を収容している。
図1に示す冷却構造において、筐体2は、発熱部品3が生じた熱を外部に放熱する放熱部として機能するが、より効率的な放熱を行う観点からは、筐体2に対して他の放熱機構を熱的に接続することもできる。他の放熱機構としては、例えば、通気ファン、ヒートシンク構造等が挙げられる。
【0025】
発熱部品3は、作動時に冷却が必要な熱を生じる電子部品であり、放熱部材5,6を用いた冷却の対象となる。発熱部品3は、放熱部材5,6と相互に接触し、放熱部材5,6を介して筐体2と熱的に接続される。発熱部品3は、冷却が必要な熱を生じる限り、部品の種類、個数、大きさ、高さが、特に限定されるものではない。発熱部品3の具体例としては、LSI(Large Scale Integrated circuit)等の集積回路等が挙げられる。
【0026】
非冷却部品4は、冷却が必要な熱を実質的に生じない電子部品である。非冷却部品4は、放熱部材5,6を用いた冷却の対象とはならない非発熱体であるため、筐体2と熱的に接続されなくてもよい。非冷却部品4は、部品の種類、個数、大きさ、高さが、特に限定されるものではない。
【0027】
図1において、基板1上には、非冷却部品4として、発熱部品3よりも高さが高い背高部品(背高体)が、発熱部品3の周囲に配置されている。放熱部材5,6は、発熱部品3や筐体2と熱的に接続されるが、このような背高部品と干渉しないように配置する必要がある。背高部品の具体例としては、コンデンサ等が挙げられる。
【0028】
伝熱ブロック5は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、熱伝導率が高い材料によってブロック状に形成される。伝熱ブロック5は、発熱部品3と筐体2との間に複数配置される。複数の伝熱ブロック5は、発熱部品3の主面に垂直な方向、すなわち、基板1に直交する法線の方向に沿って、互いに積層される。
【0029】
伝熱材6は、発熱体である発熱部品3が生じた熱を放熱部に向けて熱伝導させるための部材であり、熱伝導率が高い材料を用いて薄層状に形成される。伝熱材6は、基板1と筐体2との間において、伝熱ブロック5同士の間や、伝熱ブロック5と基板1との間や、伝熱ブロック5と筐体2との間に配置される。
【0030】
伝熱材6としては、熱伝導率が高い材料がシート状に成形された伝熱シート、熱伝導率が高い材料がシリコーン等の潤滑油と混合された伝熱グリス、熱伝導率が高い材料がバインダ等と混合された伝熱ペースト等の熱伝導性の材料を用いることができる。伝熱材6は、各部材間において、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
図2は、比較例に係る冷却構造を示すプリント回路板の断面図である。
図2に示すように、従来の一般的な冷却構造(比較例)は、
図1に示す冷却構造と同様に、基板1と、筐体2と、電子部品3,4と、を備えている。しかし、従来の一般的な冷却構造は、
図1に示す冷却構造と比較して、放熱部材51,61の構成が異なっている。
【0032】
図2に示す冷却構造において、電子部品3,4としては、発熱部品3と、非冷却部品4と、が基板1上に配置されている。放熱部材51,61としては、熱伝導率が高い材料で形成された一つの伝熱ブロック51と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材61と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されている。
【0033】
図2に示す冷却構造では、発熱部品3と筐体2を熱的に接続する放熱部材として、直方体状に設けられた一つの伝熱ブロック51が用いられている。従来の一般的な冷却構造は、複数の伝熱ブロック51が互いに積層された構造とはなっていない。このような冷却構造では、
図2に矢印で示すように、基板1に直交する略一方向にしか、熱伝導による熱の拡散が進まない。
【0034】
図2に示す冷却構造では、伝熱経路の断面積が、一つの伝熱ブロック51の断面積で決まるため、或る熱流束の下で、大きい放熱量を実現することが難しい。特許文献1のように、一つの伝熱ブロック51をテーパ状に設けると、伝熱経路の断面積が筐体2の側に向かうに連れて大きくなるが、加工コストが増大するし、発熱部品3の周囲に背高部品が配置される場合に、背高部品と干渉する虞がある。
【0035】
これに対し、
図1に示す冷却構造によると、複数の伝熱ブロック5を積層する構造であるため、背高部品の高さで小さい伝熱ブロック5を用い、その上方で大きい伝熱ブロック5を用いた場合に、背高部品と干渉することなく、断面積が十分に拡張された伝熱経路が形成される。その結果、従来の一つの放熱部材を用いた場合とは異なり、積層された単純形状の伝熱ブロック5の一部が、背高部品の上方に位置する状態となる。このような構造によると、
図1に矢印で示すように、基板1に直交する方向だけでなく、基板1に平行な方向にも、熱伝導による熱の拡散が進む。そのため、背高部品との干渉を回避しつつ、伝熱経路の断面積を拡大して、効率的な放熱を行うことができる。
【0036】
なお、伝熱ブロック5は、冷却対象である一つの発熱部品3当たりにおいて、少なくとも基板1に直交する方向に積層される限り、その他の方向に積層されてもよい。例えば、上下に積層されている伝熱ブロック5に対して、基板1に平行な方向、例えば、前後、左右等(
図1における手前、奥、左右等)に、別の伝熱ブロック5を積層してもよい。
【0037】
複数の伝熱ブロック5は、
図1に示すように、発熱部品3から筐体2に向かうに連れて、伝熱ブロック5の断面積が大きくなるように積層されることが好ましい。また、部材同士の接触面積が、同様の関係となるように配置されることが好ましい。すなわち、伝熱ブロック5としては、断面積が発熱部品3の面積と同等であるものと、断面積が発熱部品3の面積よりも大きいものとを用いることができる。このとき、筐体2に近いほど伝熱ブロック5の断面積や部材同士の接触面積が大きくなるように積層することが好ましい。
【0038】
筐体2に近いほど伝熱ブロック5の断面積や部材同士の接触面積が大きくなる構造によると、発熱部品3側の伝熱ブロック5を小さくしたとしても、筐体2側に近づくに連れて、伝熱経路の断面積が常に大きくなる。そのため、背高部品との干渉を回避しつつ、効率的な放熱を行うことができる。筐体2側の領域は、空間ではなく、伝熱ブロック5で占められるため、固体熱伝導によって放熱量を確保することができる。
【0039】
伝熱ブロック5は、柱状体として設けられることが好ましい。なお、柱状体とは、上面と下面が互いに平行であり、且つ、上面と下面が相似した形状である立体を意味する。柱状体の具体例としては、直方体、立方体、菱形柱、円柱等が挙げられる。伝熱ブロック5は、柱状体のみで構成されることが好ましく、直方体または立方体のみで構成されることが特に好ましい。
【0040】
伝熱ブロック5を柱状体とすると、加工・製造が容易になるため、伝熱ブロック5を低コスト化することができる。柱状体は、単純形状であるため、押出材、鍛造材、鋳塊等を切り出した後、大きな二次加工を施すことなく、伝熱ブロック5として用いることができる。背高部品との干渉を回避するにあたり、切削等による複雑形状への二次加工を施す必要がないため、低コストで効率的な冷却構造を実現することができる。
【0041】
また、伝熱ブロック5を柱状体とすると、発熱部品3の上に積層するとき、部材同士が相互に接触し易くなる。そのため、放熱の効率が高い伝熱経路の形成が容易になる。また、伝熱ブロック5を柱状体とすると、伝熱ブロック5を大きくするだけで、伝熱経路の断面積が拡大されることになるため、放熱の効率が高い冷却構造を得ることができる。
【0042】
伝熱ブロック5は、アルミニウム、銅、銀等の熱伝導率が高い金属で形成されることが好ましく、アルミニウム合金で形成されることが特に好ましい。アルミニウム合金によると、高い熱伝導率に加え、高い機械的強度や加工性が得られる。そのため、構造が安定しており、低コストで効率的な冷却構造を実現することができる。
【0043】
伝熱ブロック5は、アルミニウム合金で形成される場合、陽極酸化処理が施されることが好ましい。一般に、熱伝導率、強度、耐食性等に優れる材料としては、銅が挙げられる。しかし、銅は、硫化水素等の硫黄成分の存在下や酸化環境下において腐食する虞がある。これに対し、陽極酸化処理によると、表面に陽極酸化皮膜を備えた耐食性に優れるアルミブロックが得られるため、銅と比較して、腐食に強い冷却構造が得られる。
【0044】
伝熱材6としては、弾性を有する伝熱弾性体を、少なくとも用いることが好ましい。伝熱弾性体は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間のうち、一箇所以上に配置すればよい。伝熱弾性体としては、常温において、伝熱ブロック5の重量で変形する程度の弾性を有する伝熱シート、伝熱ペースト等を用いることができる。
【0045】
伝熱弾性体を少なくとも一箇所に配置すると、伝熱ブロック5同士の間や、伝熱ブロック5と基板1との間や、伝熱ブロック5と筐体2との間に、寸法誤差、組み付け、衝撃・振動等に起因して、隙間が生じる可能性がある場合であっても、弾性変形によって隙間をなくすことができる。そのため、伝熱経路の確保には不利である複数の伝熱ブロック5を積層した構造であっても、効率的な放熱を行うことが可能になる。
【0046】
積層した伝熱ブロック5を固定する方法としては、適宜の方法を用いることができる。伝熱ブロック5は、伝熱ブロック5同士の間、伝熱ブロック5と基板1との間、および、伝熱ブロック5と筐体2との間において、例えば、スクリュ、ボルトとナットや、ブラケット、コーナーブレース、接着剤等を用いて、相互に接合することができる。これらの接合法によると、伝熱ブロック5自体に大きな二次加工を施す必要がないため、低コストで冷却構造を実現することができる。
【0047】
なお、
図1において、筐体2は、密閉型とされているが、非密閉型とされてもよい。筐体2は、基板1に対向する部位が伝熱経路となる限り、適宜の形状や構造に設けることができる。筐体2を介する放熱は、放熱部材5,6による熱伝導の他に、熱放射、自然対流熱伝達、強制対流熱伝達等を伴ってもよい。
【0048】
また、
図1において、配線や電子部品3,4は、基板1の上面に設けられており、放熱部材5,6が、筐体2の天井部に向けて配置されているが、伝熱経路の方向は、特に限定されるものではない。配線や電子部品3,4は、基板1の下面に設けられ、放熱部材5,6が、筐体2の底部に向けて配置されてもよい。
【0049】
また、
図1において、配線や電子部品3,4は、基板1の片面に設けられているが、基板1の両面に設けられてもよい。配線や電子部品3,4が基板1の両面に設けられる場合、放熱部材5,6は、基板1の両側に配置してもよいし、両側への伝熱経路が確保された基板1の片側に配置してもよい。
【0050】
図3は、本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
図3に示すように、複数の伝熱ブロック5を積層した冷却構造は、複数の発熱部品3に対して形成することもできる。本実施形態に係る冷却構造は、
図1に示す冷却構造と同様に、基板1と、筐体2と、電子部品3,4と、放熱部材5,6と、を備えている。
【0051】
図3に示す冷却構造において、電子部品3,4としては、互いに高さが異なる複数の発熱部品3と、非冷却部品4と、が基板1上に配置されている。放熱部材5,6としては、熱伝導率が高い材料で形成された複数の伝熱ブロック5と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材6と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されている。
【0052】
図3に示すように、互いに積層される複数の伝熱ブロック5のうち、一部の伝熱ブロック5は、複数の発熱部品3のそれぞれと熱的に接続することができる。一つの伝熱ブロック5に熱的に接続する発熱部品3の個数は、2個以上であってもよい。また、一つの伝熱ブロック5に熱的に接続する発熱部品3の種類、大きさ、高さは、特に限定されるものではない。
【0053】
複数の伝熱ブロック5は、
図3に示すように、発熱部品3から筐体2に向かうに連れて、伝熱ブロック5の断面積の同じ高さにおける合計が大きくなるように積層されることが好ましい。また、部材同士の接触面積が、同様の関係となるように配置されることが好ましい。すなわち、伝熱ブロック5としては、断面積が発熱部品3の面積と同等であるものと、断面積が発熱部品3の面積の合計よりも大きいものとを用いることができる。このとき、筐体2に近いほど伝熱ブロック5の断面積や部材同士の接触面積が大きくなるように積層することが好ましい。
【0054】
図3に示す冷却構造によると、一つの伝熱ブロック5が、複数の発熱部品3に対する伝熱経路を形成するため、筐体2側の伝熱ブロック5が存在しない空間を減らして、固体熱伝導による伝熱経路の断面積を大きくすることができる。
図3においては、発熱部品3同士の間に、背高部品が配置されており、発熱部品3の高さが互いに異なっている。しかし、このような場合であっても、複数の伝熱ブロック5を積層する構造であるため、複雑形状のブロックを用いることなく、発熱部品3毎の伝熱経路を確保することができる。
【0055】
図4は、本発明の実施形態に係る冷却構造の一例を示すプリント回路板の断面図である。
図4に示すように、複数の伝熱ブロック5を積層した冷却構造は、3段以上の積層構造にすることもできる。本実施形態に係る冷却構造は、
図1に示す冷却構造と同様に、基板1と、筐体2と、電子部品3,4と、放熱部材5,6と、を備えている。
【0056】
図4に示す冷却構造において、電子部品3,4としては、発熱部品3と、互いに高さが異なる複数の背高部品(非冷却部品4)と、が基板1上に配置されている。放熱部材5,6としては、熱伝導率が高い材料で形成された複数の伝熱ブロック5と、熱伝導率が高い材料で形成された薄層状の伝熱材6と、が発熱部品3と筐体2との間に配置されている。
【0057】
図4に示す冷却構造において、基板1上には、発熱部品3の周囲に、発熱部品3よりも高さが高い複数の背高部品が配置されている。背高部品は、互いに高さが異なっており、発熱部品3から遠ざかるほど、高さが高くなっている。このような構造では、従来の一つの放熱部材を用いた場合に、複数の背高部品との干渉を個別に回避することができないため、加工コストをかけて放熱部材を複雑形状にしたり、伝熱経路の断面積の確保を犠牲にしたりしなければならない。
【0058】
しかし、
図4に示す冷却構造によると、複数の伝熱ブロック5を積層する構造であるため、3段以上の積層構造にした場合に、複数の背高部品と干渉することなく、断面積が十分に拡張された伝熱経路が形成される。その結果、従来の一つの放熱部材を用いた場合とは異なり、積層された単純形状の伝熱ブロック5の一部が、複数の背高部品の上方に位置する状態となる。このような構造によると、種々の背高部品の個数と高さに対して、単純形状の伝熱ブロック5の個数や大きさで対応することができるため、背高部品との干渉の回避と、伝熱経路の断面積の確保を両立することができる。
【0059】
図4に示すように、伝熱ブロック5は、筐体2(放熱部)側の部材と接触する接触面が、発熱部品3側の部材と接触する接触面よりも、所定の角度(
図4に示すθ)以上の外側に広がるように積層されていることが好ましい。すなわち、上側に配置された伝熱ブロック5や伝熱材6の上面の外側端(側面の上辺)が、下側に配置された伝熱ブロック5や伝熱材6や発熱部品3の上面の外側端(側面の上辺)を起点として、発熱部品3の法線に対して外側に所定の角度(θ)以上に、外側に広がるように積層することが好ましい。
【0060】
角度(θ)は、好ましくは30度以上、より好ましくは35度以上、更に好ましくは40度以上、更に好ましくは45度以上、更に好ましくは50度以上、更に好ましくは55度以上、更に好ましくは60度以上である。このような角度であると、固体熱伝導による伝熱経路が熱拡散の方向に沿って拡大されるため、効率的な放熱を行うことができる。
【0061】
なお、このような角度(θ)の広がりは、少なくとも基板1に平行な一つの方向、例えば、前後、左右等(
図4における手前、奥、左右等)のいずれかで満たすことが好ましく、基板1に平行な全ての方向、すなわち、基板1の法線に対する全周の方向で満たすことがより好ましい。但し、熱伝導率が高いアルミニウム合金等を用いる場合は、均熱化による冷却効果が得られるため、このような構造に限定されるものではない。
【0062】
以上の実施形態に係る冷却構造によると、複数の伝熱ブロックを積層する構造であり、伝熱ブロックとして単純形状のブロックを用いるため、適宜の伝熱経路を形成する放熱部材を低コストに設けることができる。伝熱ブロックは、種々の大きさ、種々の高さ等に予め設けておき、発熱体や背高体の配置に応じて、適宜、組み替えることができる。また、発熱体や基板の状態に応じて、適宜、入れ替えることができる。よって、基板上に配置された発熱体を周囲との干渉を回避しつつ低コストで効率的に冷却することができる。基板上に、複数の発熱体が背高体を挟んで配置されていたり、複数の発熱体が互いに異なる高さであったりしても、複数の発熱体の効率的な冷却にも対応することができる。
【0063】
以上の実施形態に係る冷却構造は、集積回路等の発熱部品を備えるプリント回路板に用いて、複数の伝熱ブロックを積層した冷却構造を備えた電子機器を提供することができる。伝熱ブロックとして、アルミニウム合金で形成されたアルミブロックを用いる場合、特に、硫黄成分や酸化性物質が存在する雰囲気となる電子機器に有効である。
【0064】
電子機器の具体例としては、制御装置、電源装置、通信装置、表示装置、監視装置、計測装置等の産業用電子機器や、パーソナルコンピュータ、携帯パーソナルコンピュータ、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末、テレビ、ディスプレイ、レコーダ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、オーディオ機器、冷凍空調機、洗濯機、掃除機等が挙げられる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、或る実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えたり、或る実施形態の構成に他の構成を加えたりすることが可能である。また、或る実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、構成の削除、構成の置換をすることも可能である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0067】
複数の伝熱ブロックを積層した冷却構造(実施例1、比較例1、比較例2)について、熱流体解析により冷却性能を評価した。
【0068】
図5は、本発明の実施例1に係る冷却構造を示す図である。
図6は、比較例1に係る冷却構造を示す図である。
図7は、比較例2に係る冷却構造を示す図である。
図5、
図6および
図7に示す構造をそれぞれ計算体系として、有限体積法による熱流体解析を行い、冷却性能として発熱部品3の温度を評価した。
【0069】
図5には、複数の伝熱ブロック5が互いに積層されている実施例1に係る冷却構造を示す。
図6には、直方体状に設けられた一つの伝熱ブロック5が用いられており、複数の伝熱ブロック5が互いに積層されていない比較例1に係る冷却構造を示す。
図7には、実施例1と同様の形状に設けられた一つの伝熱ブロック5が用いられており、複数の伝熱ブロック5が互いに積層されていない比較例2に係る冷却構造を示す。
【0070】
図5に示す実施例1では、発熱部品3として、直方体状の2つの発熱体を設定した。各発熱体(3)の上には、伝熱ブロック5として、直方体状のブロックを個別に積層し、その上には、2つの発熱体(3)のそれぞれと熱的に接続されるように、直方体状の共通のブロック(5)を積層し、これを筐体2としての構造体と接触させた。発熱体(3)同士の間には、背高部品(非冷却部品4)として、下側のブロック(5)よりも高さが低く、発熱体よりも高さが高い直方体状の背高構造物を配置した。各部材間には、伝熱材6として、熱伝導シートを模擬したシート体を配置した。
【0071】
図5に示すように、背高構造物(4)の上面と上側のブロック(5)の下面との距離は、10mmとした。また、発熱体(3)と背高構造物(4)の側面との距離は、5mmとした。
【0072】
また、二つの発熱体(3)同士に挟まれた内側においては、発熱体(3)の側面と下側のブロック(5)の側面が面一となるように、発熱体(3)と下側のブロック(5)の左右の位置を一致させた。一方、外側においては、下側のブロック(5)や上側のブロック(5)の上面の外側端(外側の側面の上辺)が、発熱体(3)の表面の外側端(外側の側面の上辺)を起点として、発熱体(3)の法線に対して外側に45度広がった形状とした。
【0073】
図6に示す比較例1では、
図5に示す構造と同様に、発熱部品3として、直方体状の2つの発熱体を設定した。各発熱体(3)の上には、伝熱ブロック5として、直方体状の一つのブロック(5)を個別に積層し、これらを筐体2としての構造体と接触させた。発熱体(3)同士の間には、
図5に示す構造と同様の背高構造物(4)を配置した。各部材間には、伝熱材6として、熱伝導シートを模擬したシート体を配置した。
【0074】
図7に示す比較例2では、
図5に示す構造と同様に、発熱部品3として、直方体状の2つの発熱体を設定した。各発熱体(3)の上には、
図5に示す下側のブロック(5)と上側のブロック(5)を合わせた形状に設けた一つのブロック(5)を積層し、これらを筐体2としての構造体と接触させた。なお、このブロック(5)は、
図5に示すブロック(5)よりも、シート体(6)に相当する厚さだけ肉厚に設けた。発熱体(3)同士の間には、
図5に示す構造と同様の背高構造物(4)を配置した。各部材間には、伝熱材6として、熱伝導シートを模擬したシート体を配置した。
【0075】
実施例1、比較例1および比較例2の構造において、発熱部品3に相当する発熱体には、10Wの熱負荷を与えた。構造体(2)とブロック(5)の材質としては、Al-Mg-Si系アルミニウム合金であるA6063を設定した。シート体(6)としては、厚さ:1mm、熱伝導率:4.3W/m・Kを設定した。発熱体の周囲の初期温度は、25℃とした。
【0076】
表1に、実施例1、比較例1および比較例2の構造における熱流体解析の結果として、所定の放熱過程後の発熱体(3)の温度を示す。
【0077】
【0078】
表1に示すように、実施例1に係る発熱体(3)の温度は、比較例1に対して、3.8℃低くなった。複数の伝熱ブロック5を積層する構造が、背高部品との干渉の回避や、伝熱経路の断面積の拡大に有効であることが分かる。
【0079】
また、実施例1に係る発熱体(3)の温度は、比較例2に対して、0.5℃高くなった。この結果は、熱伝導シート等の伝熱材6による熱損失が全体としての冷却性能に大きく影響しないことを示している。
【0080】
これらの結果から、放熱部材を切削加工等によって複雑形状に設けなくとも、単純形状の伝熱ブロック5の組み合わせによって、低コストで効率的な冷却構造を実現することができるといえる。伝熱材6の熱伝導率が高ければ、熱損失が更に低減されるため、熱伝導率が4.3W/m・K以上の伝熱材6を用いることが好ましいといえる。
【符号の説明】
【0081】
1 基板
2 筐体
3 発熱部品(電子部品)
4 非発熱部品(電子部品)
5 伝熱ブロック(放熱部材)
6 伝熱材(放熱部材)