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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-03
(45)【発行日】2025-04-11
(54)【発明の名称】紫外光を使用した除菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/20 20060101AFI20250404BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20250404BHJP
   A61L 2/10 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L9/00 C
A61L2/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021028486
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022129704
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】酒井 悟
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132032(JP,A)
【文献】特開2003-126227(JP,A)
【文献】特開2004-033270(JP,A)
【文献】特開2020-124281(JP,A)
【文献】特開2000-014761(JP,A)
【文献】特開2010-198824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-9/22
A61L 2/00-2/28
F21S 2/00
F21V 8/00
F24F 3/16,8/10
B60H 1/00-3/06
H10H 20/00,20/01,20/85-20/858
C02F 1/00-1/26,1/30-1/38
B01D 53/86-53/90,53/94-53/96
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を導入する導入口および空気を吐出する吐出口とを備えた空気通路の、前記導入口と前記吐出口との間の空気通路に取り付けられる除菌ユニットを備えた除菌装置であって、
前記除菌ユニットは、前記空気通路内を流れる空気の移動方向に沿って配置された板状の導光部材と、前記空気通路に固定するための取付部とを具備した紫外光照射ユニットを有し、
前記紫外光照射ユニットは、前記導光部材の端面の一つに対向して配置された複数の紫外線LEDと、前記複数の紫外線LEDを列状に並べて搭載するLED搭載基板と、前記導光部材の前記空気通路側と反対側の表面を覆う反射部材と、前記導光部材を固定する固定枠と、を有し、
前記導光部材は、前記空気通路と反対側に位置する第1表面と、前記空気通路側に位置する第2表面と、前記LED搭載基板に対向する第1端面と、前記第1端面の反対側に位置する第2端面を有し、
前記反射部材は、前記第1表面に密接する反射面を有し、前記第1表面の全面を覆う金属シートであり、
前記固定枠は、前記導光部材の前記第2端面の隅部を覆うとともに前記第2端面の中央部分が露出するようにした開口部を有し、前記第2表面の縁に沿って設けられた金属材料からなり、当該固定枠と前記反射部材とで前記導光部材を挟持し、
前記第2表面および前記第2端面が、前記紫外線LEDから出射し当該導光部材内を導光した光が出射する出射面とされ、
前記取付部は、前記出射面が、前記空気通路内に露出するように前記空気通路を形成するダクトの背面に固定可能に形成されており、
前記LED搭載基板が、前記空気通路の下流側に位置しており、
前記紫外線LEDから出射し前記導光部材に入射し前記出射面から出射する光は、前記第2端面を通って出射する紫外光が上流側に向かって紫外光を出射し、前記第2表面を通って出射する紫外光が前記空気通路の下流側から上流側に向かって斜め方向に出射する除菌装置。
【請求項2】
前記除菌ユニットは、前記紫外線LEDの発光波長の光によって励起される光触媒物質を具備し、
前記空気通路には、前記第2表面と対向する位置に前記光触媒物質を含む光触媒体を設けている請求項1に記載の除菌装置。
【請求項3】
前記複数のLEDには、UV-C領域の紫外線を出射するLEDを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の除菌装置。
【請求項4】
前記第1表面には、前記反射部材との間に境界部において凹凸形状とした散乱領域が複数設けられている請求項1から3の何れかに記載の除菌装置。
【請求項5】
前記LED搭載基板の前記導光部材側と反対側には、可視光発光ユニットを具備しており、
前記可視光発光ユニットは、単色もしくは複数色を発光可能な可視LED光源と、前記可視LED光源を点灯制御する可視LED点灯制御部とを有し、
前記可視LED点灯制御部は、前記紫外線LEDの点灯に同期して前記可視LED光源の点灯を開始する請求項1から4の何れかに記載の除菌装置。
【請求項6】
前記第2表面および前記第2端面が前記ダクトより前記空気通路内に突出している請求項1から5の何れかに記載の除菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光を利用して表面に付着または気体中に浮遊しているウイルス、大腸菌、黄色ブドウ球菌やカビ等の微生物を殺菌もしくは除菌する除菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源により活性化させて光触媒反応を生じさせ、消臭・脱臭、殺菌・除菌効果を発揮して、悪臭除去や空気清浄、除菌、殺菌等を行う空気清浄機が知られている。従来、光源としては太陽光、水銀ランプやブラックライトなどの紫外線を発生する光源が用いられてきた。例えば特許文献1に記載の脱臭殺菌装置では、対向配置した電極間に高電圧(1~15KV)を印加して両電極間にコロナ放電を生じさせてコロナ放電光を発生させ、コロナ放電光を反射板にて光触媒体に照射する脱臭殺菌装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-293070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された脱臭殺菌装置では、コロナ放電光を利用するため、装置が大型化する。また、コロナ放電光を発生させる電極は、空気が通る送風通路内において、送風通路の上流側および下流側に対向させて設置される。従って、それぞれの電極は送風通路内を通る空気を遮るように突出し、且つ、当該通路と直交して配置することになる。そのため、空気の流れを阻害して流速を失速させる。また、限られたスペースに配置することが容易ではない。そうすると、例えば、自動車の室内空調装置など限られた狭いスペースに設置することは難しい。また、後付けで設置することも困難である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、送風通路内に簡単に設置可能な除菌装置を提供することを主たる目的とする。
また、本発明の別の観点によれば、紫外光の出射面の面積を広くして空気通路内の広い領域にわたって紫外光を照射する除菌装置を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、前記課題を達成するために、下記[1]から[4]の紫外光を使用した除菌装置を提供する。
【0007】
[1] 空気を導入する導入口および空気を吐出する吐出口とを備えた空気通路の、前記導入口と前記吐出口との間の空気通路に取り付けられる除菌ユニットを備えた除菌装置であって、
前記除菌ユニットは、前記空気通路内を流れる空気の移動方向に沿って配置された板状の導光部材と、前記空気通路に固定するための取付部とを具備した紫外光照射ユニットを有し、
前記紫外光照射ユニットは、前記導光部材の端面の一つに対向して配置された複数の紫外線LEDと、前記複数の紫外線LEDを列状に並べて搭載するLED搭載基板と、前記導光部材の前記空気通路側と反対側の表面を覆う反射部材と、前記導光部材を固定する固定枠と、を有し、
前記導光部材は、前記空気通路と反対側に位置する第1表面と、前記空気通路側に位置する第2表面と、前記LED搭載基板に対向する第1端面と、前記第1端面の反対側に位置する第2端面を有し、
前記反射部材は、前記第1表面に密接する反射面を有し、前記第1表面の全面を覆う金属シートであり、
前記固定枠は、前記導光部材の前記第2端面の隅部を覆うとともに前記第2端面の中央部分が露出するようにした開口部を有し、前記第2表面の縁に沿って設けられた金属材料からなり、当該固定枠と前記反射部材とで前記導光部材を挟持し、
前記第2表面および前記第2端面が、前記紫外線LEDから出射し当該導光部材内を導光した光が出射する出射面とされ、
前記取付部は、前記出射面が、前記空気通路内に露出するように前記空気通路を形成するダクトの背面に固定可能に形成されており、
前記LED搭載基板が、前記空気通路の下流側に位置しており、
前記紫外線LEDから出射し前記導光部材に入射し前記出射面から出射する光は、前記第2端面を通って出射する紫外光が上流側に向かって紫外光を出射し、前記第2表面を通って出射する紫外光が前記空気通路の下流側から上流側に向かって斜め方向に出射する除菌装置。
[2] 前記除菌ユニットは、前記紫外線LEDの発光波長の光によって励起される光触媒物質を具備し、
前記空気通路には、前記第2表面と対向する位置に前記光触媒物質を含む光触媒体を設けている上記[1]に記載の除菌装置。
[3] 前記複数のLEDには、UV-C領域の紫外線を出射するLEDを含むことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の除菌装置。
[4] 前記第1表面には、前記反射部材との間に境界部において凹凸形状とした散乱領域が複数設けられている上記[1]から[3]の何れかに記載の除菌装置。
[5] 前記LED搭載基板の前記導光部材側と反対側には、可視光発光ユニットを具備しており、
前記可視光発光ユニットは、単色もしくは複数色を発光可能な可視LED光源と、前記可視LED光源を点灯制御する可視LED点灯制御部とを有し、
前記可視LED点灯制御部は、前記紫外線LEDの点灯に同期して前記可視LED光源の点灯を開始する上記[1]から[4]の何れかに記載の除菌装置。
[6] 前記第2表面および前記第2端面が前記ダクトより前記空気通路内に突出し、前記取付け部が前記空気通路より外側に位置している上記[1]から[5]の何れかに記載の除菌装置。
【発明の効果】
【0008】
上記した[1]から[6]に記載した発明によれば、空気通路内を流れる空気の移動方向に沿って配置された板状の導光部材を具備した紫外光照射ユニットを備えているので、空気の流れに対して抵抗を生じにくい構成とすることができるので、空気通路内に簡単に設置可能な除菌装置を提供することができる。
【0009】
また、紫外光照射ユニットは、板状の導光部材の端面に設けた紫外線LEDからの光を導光部材の前記空気通路側の表面および他の端面から出射する構成としたので、紫外線LEDから照射される紫外線の減衰を少なくして、広い面積から空気通路内を照射し、かつ、空気通路に沿った空気の流れる方向にも照射することができるので、空気通路内の広い領域にわたって紫外光を照射できる除菌装置を提供することができる。
また、上記[2]に記載の発明によれば、出射面と対向する位置に光触媒体を設けているので光分解による有機物の分解を促すことができ、空気中の浮遊物質に対する紫外光の照射による除菌効果とともに、光触媒作用による消臭効果も高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る除菌装置を取り付けた車両用の空調機を説明する模式的全体図である。
図2図2は、空調機のダクト先端部および吹き出し口(吐出口)を示す概略斜視図である。
図3図3は、除菌ユニットを説明するための概略断面図である。
図4図4は、第2端面側から見た紫外光照射ユニットの要部を示す概略斜視図である。
図5図5は、変形例の紫外光照射ユニットに用いる導光部材を説明する模式的斜視図である。
図6図6は、紫外光照射ユニットの要部を説明する断面図である。
図7図7は、第2実施形態における除菌ユニットを説明するための要部の概略断面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る除菌装置について好適な実施の形態を挙げて、図面を参照して説明する。
【0012】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態の除菌装置1を、図1図6を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る除菌装置1を取り付けた車両用の空調機100を説明する模式的全体図である。車両用の空調機100は、図1に斜線で示すように、例えば乗用車(車両)の室内または室外から空気を導入し、吹き出し口から乗用車の室内に空気を吐出する。空調機100内部において空気の温度を調整することによって、車両の室内の空気の温度等を調整する。図1の例では2第の空調機を設けている。運転席前方の空調機101は複数の吹き出し口を備えており、各吹き出し口が前方座席110近傍領域、フロントガラスおよび後部座席111に向けて空気を吐出する。車両後方の空調機102も複数の吹き出し口を備えており、各吹き出し口が車室中央上部および後部座席などに向けて温度等を調整した空気を吐出する。
【0013】
運転席前方の空調機101は、車両前方のフロントガラスの下側近傍に設けた外部の空気を取り入れる外気取り入れ口3aと、室内に設けた空気を取り入れる内気取り入れ口3bを備えており、前方座席110の下側を通るダクト(空気通路)103を通って吹き出し口105aから室内に温度等を調整した外気もしくは内気を吐出する。空調機101内には図示しない温度調整装置(エバポレーター、コンプレッサーなど)および空気を流通させるファンと、内気と外気の切り替えを行うダンパーを備える。ダクト103内部を流れる空気の流量および流速は吹き出し口に向かって空気を送出するファンによって制御される。車両後方の空調機102も運転席前方の空調機101と同様に図示しない温度調整装置、ファン、ダンパーと、空気取り入れ口とを備え、天井に沿って設けたダクト104を通して前方座席110と後部座席111との間に設けた吹き出し口105bから空気を流出可能に構成されている。
【0014】
(除菌ユニット)
図2は前方空調機101の前方座席下に設けられたダクト103の先端部分および吹き出し口105aを示す概略斜視図である。図3は除菌ユニット10を説明するための概略断面図であり、ダクトの延伸方向(空気の流れ方向)に沿った断面である。ダクト103,104のそれぞれの内部には、吹き出し口105a、105bよりも上流側、すなわち、空気取り入れ口側の位置に、除菌ユニット10を設けている。前方空調機101に設ける除菌ユニットと、後方空調機102に設ける除菌ユニットとは同一の除菌ユニット10を取り付ける。除菌ユニット10を他の空気吹き出し口の近傍に設けても良い。
【0015】
以後の説明では前方空調機101に設ける除菌ユニットについて詳述する。除菌ユニット10は、図2に示すように吹き出し口105a近くのダクト側壁103aに取付られている。ダクトの内側には空気が流れる空気通路2が形成されている。ダクト側壁103aの一部を切り欠いた部分に除菌ユニット10が固定されている。除菌ユニット10は、図2に示すように空気通路側が空気通路内を流れる空気と接するように空気通路2に沿って配置するように固定されている。除菌ユニット10は紫外光照射ユニット20を具備している。ダクト104内を流れる空気は、図示しないファンにより空気が取り入れ口側から吹き出し口側に向かって送出される。図3において矢印にて示した方向が上流側(取り入れ口側)から下流側(吹き出し口側)に流れる空気の移動方向Fである。なお、除菌ユニットを取り付けた部分の空気通路2を流れる空気を基準にしたときに、外気取り入れ口3aおよび内気取り入れ口3bが本願発明における除菌装置1の導入口に相当し、吹き出し口105aが吐出口4に相当する。
【0016】
(紫外光照射ユニット)
紫外光照射ユニット20は、図3に示すようにダクト104内を流れる空気の移動方向Fに沿って配置された板状の導光部材21を備える。紫外光照射ユニット20は、ダクト側壁103aの一部を切り欠いて設けた開口部に嵌合され、取付部27をネジ28を用いてダクト側壁103aに固定することで空気がダクト104から漏れないように固定されている。空気漏れを減ずるためには、紫外光照射ユニット20とダクト103aとの間にゴムパッキンや弾力性を有するエラストマー部材を介して固定することが好ましい。また、ネジ28を用いて固定するためにダクト側壁103aの一部の肉厚を厚く形成している。ネジによる固定に限るものではなく、接着剤により紫外光照射ユニット20の周囲をダクト側壁103aを切り欠いた開口部分に接着して固定して良い。
【0017】
導光部材21は、紫外線を透過する性質、特に殺菌線とも呼ばれている殺菌効果をもつ波長域の紫外線を透過する性質を有する材料を用いて板形状に形成されている。本実施形態では合成石英ガラスを用いている。合成石英ガラスはソーダガラスに比べると高価であるが、紫外線透過特性に優れるので導光部材として好適である。窓ガラスに多く使用されているソーダガラスは例えば厚みが4mmで殺菌線の透過率が約0%であるが、結晶石英は厚さ1mmで99%以上の透過率を示す。合成石英ガラスは180nmの紫外域の光に対しても透過性を示す。
【0018】
他の材料として樹脂材料を用いることが考えられる。しかしながら、例えばABS樹脂は紫外線照射によりポリブタジエンの架橋反応が起こって変質・硬化する。PPは非結晶領域の分子が切断され易いと考えられ紫外線照射により溝が生じる。PCは黄変が見られる。シリコン樹脂、アクリル樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂は300nmよりも長い波長域の光に対しては80%以上の高い透過率を示すものの、それよりも短波長のUV-B領域およびUC-C領域の波長の紫外線に対する透過率は低い。それゆえ使用する紫外線LEDの種類に応じて適切な材料を選択する。少なくとも石英ガラスを使用すればUV-A,UV-BおよびUV-C領域の紫外線を透過することができる。例えばアズワン株式会社が販売しているビオラモ紫外線透過型ディスポセル UVCシリーズの場合には紫外線領域から可視領域(220~800nm)の光に対して透過性を示す(https://axel.as-1.co.jp/asone/g/NCGK066351/?q=%E7%B4%AB%E5%A4%96%E7%B7%9A%E9%80%8F%E9%81%8E)ので、同じ材料を導光部材21として利用できる。
【0019】
なお、UV-AとはCIE(国際照明委員会)で波長によって分類されている波長315~400nmの紫外線。UV-Bは波長280~315nmの紫外線。UC-Cは波長100~280nmの紫外線である。また、殺菌線とは狭義には波長253.7nmの強い殺菌効果を持つ紫外線を意味するが、本願の説明においては、波長253.7nm以外の波長であっても殺菌効果を示す波長域の紫外線を殺菌線と定義する。例えば275nmの深紫外線LEDは大腸菌、インフルエンザウイルス、ノロウイルス等に対して殺菌、不活化の効果があると報告されており、265nmの深紫外線LEDによる不活化も報告されている。このような報告の波長域であるUV-C領域の紫外線も殺菌線に含むものとして説明する。
【0020】
導光部材21は、空気通路2側から見たときに矩形の面積の大きな表面が位置するように配置された板形状の直方体である。図3に示すように、直方体の4つの側面のうち一つの側面に対向するように複数の紫外線LED23が配置されている。この一つの側面が第1端面21aであり紫外線LED23から出射した光が入射する入射面となる。第1端面21aの反対側の端面が第2端面21bである。図4は第2端面側から見た紫外光照射ユニット20の要部を示す概略斜視図である。第2端面21bは第1端面21aから入射した紫外線LED23から出射した光の一部が出射する側面であり、出射面として機能する。
【0021】
導光部材21の空気通路2と反対側の表面、すなわち図3における紙面上側に位置する表面が第1表面21cである。第1表面21cの上側には、反射部材25が第1表面21cの全面および紫外線LED23を覆うように設けられている。第1表面21cの反対側、すなわち空気通路2側に位置する表面が第2表面21dである。第2表面21dも第1端面21aから入射した紫外線LED23から出射した光の一部が出射する出射面として機能する。
【0022】
(紫外光光源)
紫外光光源として、LED搭載基板24に実装した複数の紫外線LED23を用いる。紫外線LED23は、少なくとも殺菌線を出射するLED(発光ダイオード)素子をセラミックや金属からなる枠体の内部に設置し、外部にプリント基板に形成されたハンダランドなどと接合するための電極を備えた表面実装タイプのパッケージのLEDを含む。複数の紫外線LEDは、導光部材21の第1端面21aに沿って列状に並ぶようにLED搭載基板24の一方の表面上に搭載されている。紫外光照射ユニットを小型化および軽量化するためには、複数の紫外線LED23を一列に並べ、入射面となる第1端面21aの大きさを一列に並んだ紫外線LED23の大きさに合わせて薄い厚みとした導光部材21を用いることが好ましい。また、複数の紫外線LED23の中には、異なる波長の紫外光を発するLEDを含んでいても良い。本実施形態では、複数の紫外線LED23として、1種類のUV-Cの波長を出射する第1UV-LED23aを複数個一列に並べて用いる。
【0023】
(LED搭載基板)
LED搭載基板24は、アルミや銅板などと高熱伝導樹脂を貼り合わせた金属ベース基板を用いる。金属ベース基板を用いることでリジッド基板を用いる場合に比べて高放熱性とすることができ、紫外線LED23から発生する熱の放熱性を高めることができる。LED搭載基板24には複数の紫外線LED23を接続する配線およびコネクタが備えられており、図示しない紫外線LEDの点灯制御部からの信号に応じて複数の紫外線LED23の点灯状態が制御される。LED搭載基板24は導光部材21とともに反射部材25に固定する。これにより紫外線LED23の入射面(第1端面21a)に対する相対的な位置を精度よく位置決めすることができる。
【0024】
(反射部材)
反射部材25は、アルミニウム金属シートを折り曲げて形成されている。図3に示すように導光部材21の第1表面21cの全面を覆うとともに第1表面21cの第1端面21a側の縁から延伸した平板部25aと、平板部25aから直交するように屈曲しLED搭載基板24の背面に位置する遮光部25bが一体に形成されている。平板部25aの導光部材21側の表面は、研磨面もしくは高反射率の平滑な表面としたアルミニウム層を設けた反射面とされ、導光部材21の内部に入射した紫外線LED23からの光が第1表面21cから外部に出射したときに反射して第1表面21cに戻すように密接して配置する。アルミニウムは紫外域の波長の光に対して高い反射率を示すとともに軽量なので、特に車両用の空調装置に用いる場合には好適である。遮光部25bは導光部材21の第1端面21aよりも大きな面積とされ、LED搭載基板24の背面に位置する。遮光部25bは図3に示したように後述する可視発光ユニットの可視LED光源による発光と、紫外線LED23からの発光を区切る仕切りとしても機能する。
【0025】
また、平板部25aの遮光部25bと反対側の端部には突出部25cが設けられ、図3に示すように裏蓋27aから延びて延伸した領域とともに取付部27を構成する。取付部27はネジを用いてダクト104の外壁部分に固定されている。裏蓋27aは反射部材25の背面および後述する可視光発光ユニット30のプリント基板33の背面を覆う概略箱形状に形成されており除菌ユニット10を保護する。
【0026】
(固定枠)
導光部材21の第2表面21は、図3に示すように第2表面21縁に沿って固定枠29が設けられ、固定枠29と反射部材25とで導光部材21を挟持する。固定枠29もアルミニウム金属からなり、紫外線LED23から発生する紫外線による劣化が少なく反射率反射率も高いため、導光部材21を保持する材質として好適である。固定枠29の一部は第2端面21b側にも設ける。第2端面21b側に設ける固定枠29は、図4に示すように導光部材21の隅部を覆い第2端面21bの中央部分が露出するように開口部29aを設けている。複数の紫外線LED23は、第1端面21aに対向するように配置しているので紫外線LED23の光軸が第1端面21a、第2端面21bおよび開口部29aを通るように構成することが好ましい。これにより紫外線LED23から出射した光の一部はは開口部29aを通って空気通路2の内部を上流側に向かって照射することができる。
【0027】
開口部29aを通って空気通路2の内部を紫外光にて照射する構成とした場合には、図3に示したように開口部29aが空気通路2内を流れる空気の上流側に位置させ、下流側に複数の紫外線LED23が位置するように設置する。この配置とは反対に下流側に開口部29aが位置するように設置すると、上流側に設置する紫外線LED23からの光が開口部29aを通って下流側に照射されることになる。下流側に紫外光を照射すると吹き出し口105aから車内に漏れ易くなる。従って、複数の紫外線LED23の各光軸を通る照射光が下流側から上流側に向かうように設置して、車内に紫外光が漏れないようにするのが好ましい。
【0028】
次に、紫外線LED23が点灯した場合について説明する。
【0029】
紫外線LED23が殺菌線の波長の光を出射するLEDである場合、殺菌線の紫外光により大腸菌やノロウイルスなどを不活化したり殺菌することができ得る。コロナウイルスに対する不活化も報告されている。紫外線による殺菌効果はRNAに直接損傷を与えることにより菌、ウイルスの不活化を行うことにより得られていると言われている。紫外線LED23は図示しない紫外線LED点灯制御部によりその点灯状態が制御され、LED搭載基板24を介して紫外線LED23に駆動信号が供給される。紫外線LED23が点灯すると、導光部材21の第1端面(入射面)21aに向かって紫外光が照射される。第1端面(入射面)21aから導光部材21の中に導入した紫外光は、一部の光が導光部材21の中を直進して第2端面21bに向かい、別の一部は導光部材21の中を繰り返し反射しながら第2端面21bに向かう。
【0030】
第1端面(入射面)21aから導光部材21の中に入射して第2端面21bに向かって直進する光は、第2端面21b(出射側面)から直進して出射する。空気通路2の内部に向かって第2端面21bから出射した出射光UV1は、図3に矢印にて示したように上流側に向かって照射する。直進してきた光は反射や界面における損失が少ない。また、紫外線LEDから出射する光は光軸上もしくは光軸近傍の照度が最も高い。従って、高い強度の紫外光にて空気を照射することができる。
【0031】
また、導光部材21の中を繰り返し反射しながら第2端面21bに向かう光の一部は、第1表面21cで反射した後に第2表面(出射面)21dに向かって進み、第2表面(出射面)21dから空気通路2内を照射する。従って、空気通路2の内部を流れる空気を横断するように広い面積から照射することができる。導光部材21の内部を導光してきて第2表面21dに到達する光は、臨海角に満たない角度で到達した光は内面反射して外部に出射しない。臨界角を超えた角度で到達した光のみが外部に出射する。したがって導光部材21の外部に出射する光UV2は、臨界角を僅かに超えた角度で出射する光、すなわち、第2表面21dに対して数度の角度で入射面と反対側の方向に斜めに出射する光が主流となる。従って、出射光UV2は図3において破線矢印で示したように空気通路内を流れる空気の下流側から上流側に向かって斜め方向に出射する光であり、上流側から下流側に向かって紫外線を出射しないことになる。これにより、下流側の吹き出し口105aから室内に紫外線が漏れることを防止することができる。
【0032】
菌などの微生物を死滅させるために必要な紫外線照射量は波長により異なり、UV-AよりもUV-Bが効果的であり少ない照射量で良い。さらにUV-BよりもUV-Cが効果的である。従って、UV-Cの波長域の紫外線LED23を用いることで、より短い時間で死滅させることができる。本実施形態では、広い範囲を照射することができるので、空気通路2内の空気中を浮遊している微生物やウイルスを効率的に死滅させることができる。出射面である第2表面21dおよび第2端面21bの面積は、使用する紫外線LEDの紫外線照射量および照射時間に応じて調整すれば良い。
【0033】
次に、図3に示したLED搭載基板24の背面側に設けた可視光発光ユニット30について説明する。本実施形態においては除菌ユニット10は可視光発光ユニット30も具備している。
【0034】
(可視光発光ユニット)
可視光発光ユニット30は、紫外線LED23の点灯状態を知らしめる機能と、除菌装置1を光らせて意匠性を高める機能を担う部分である。可視光発光ユニット30は、プリント基板33の一方の表面側に設置した可視LED光源31と、他方の表面側に設けた点灯制御用電子部品32とを備える。図3に示すように、プリント基板33は反射部材の平板部25aの背面に固定され、可視LED光源31が空気通路2を横断する方向に向けて可視光を照射するように配置されている。可視LED光源31が設置されたLED搭載基板24の背面側の領域は、導光部材21側においては反射部材の遮光部25bにより光学的に区画され、導光部材側と反対側および可視LED光源31と対向する空気通路2側は、貫通孔35を設けた収納枠体34によって区画されている。このような配置とすることで、可視光発光ユニット30を空気通路の下流側、すなわち吹き出し口105aの近傍に設けることができ、かつ、吹き出し口105aを通して可視LED光源31が直接見えないようにすることができる。よって、車室内を照らす間接照明として機能することができ、照明品位を高めることができる
【0035】
収納枠体34は、反射部材25を折り曲げて一体に形成されている。収納枠体34と反射部材25は別体に形成し、組み付けて一体にしても良い。貫通孔35は可視LED光源31から照射した可視光をダクト104の内部に向けて複数個所から漏れ光として照明するために設けている。貫通孔35は可視LED光源31の光軸上とは異なる位置に複数個設けている。光軸上から離れた位置に複数個を設けることで、収納枠体34から複数箇所で光軸の直上の輝度の高い光は収納枠体34で反射した後に貫通孔34から出射することになるので、貫通孔35から出射する可視光の明るさを均質化することができ、均質化した光を漏れ光のように出射することができる。これにより、吹き出し口105aを観視したときに、ダクト内を広く光らせることができ、可視光により照明する演出を高めて意匠性を高めることができる。貫通孔35の数は図示した4個に限るものではなく、より多くの数でも良く、メッシュ材料からなる収納枠体34としても良い。
【0036】
可視LED光源31は、単色を発光するLEDでも良いが、複数色を発光することができるようにR,G,Bの3種類のLED素子を一つのパッケージ内に設け、個別に点灯できるようにしたマルチ発光の面実装タイプのLEDが好ましい。赤色(R)の発光色、緑色(G)の発光色、青色(B)の発光色の夫々を切り替えて発光したり、混色光を発光するようにすれば、吹き出し口を通して様々な色で照明することができ、より一層演出性を高めることができる。
【0037】
可視LED点灯制御部32は、可視LED光源31の点消灯を制御する。紫外光照射ユニット20の紫外線LED23は図示しない紫外線LED点灯制御部により点消灯が制御されている。可視LED点灯制御部32に機能ブロックとして紫外線LED点灯制御部を含む回路としても良い。
【0038】
紫外線は可視光ではないため、紫外線LED23が点灯した場合であっても、目視にて点灯状態を確認することができない。本実施形態では、紫外線LED23が点灯状態になったときには、同時に可視LED光源31が点灯するように可視LED点灯制御部32を制御する。具体的には紫外線LED点灯制御部から紫外線LED23に出力するON/OFF信号と同期した信号を可視LED点灯制御部32に入力する構成とし、紫外線LED23のON-OFFと可視LED光源31のON-OFFを完全に同期させている。これにより紫外線LED23の点灯を可視LED光源31の点灯により知らしめることができる。また、紫外線LED23から照射する紫外線を受光するセンサ素子を設け、そのセンサ素子からの出力信号に基づいて応じて紫外線LED23が正常にON/OFFしているか否かを判定し、正常と判定した場合には可視LED点灯制御部32により可視LED光源31を正常モード状態で点灯させ、異常と判定した場合には可視LED点灯制御部32が可視LED31を常時非点灯もしくは異常モード状態で故障に応じた点灯、例えば赤色の点滅として警報ランプと同様に警報状態であることを知らしめる点灯を行うようにしても良い。
【0039】
なお、本実施形態では、ダクト104の一つの側壁103aのみに除菌ユニット10を設けたが、他の側壁にも除菌ユニット10を設けても良い。空気通路2を流動する空気に対して、複数の方向から同時に紫外線を照射すれば、空気中の菌などの浮遊物に対して照射する紫外線量を増加することができ、より殺菌効果を高くすることができる。また、導光部材21を通した出射面として第2端面(出射側面)21bと第2表面21dの両方から出射するようにしたが、開口部29aを設けずに反射性を備えた内面とした固定枠29として第2端面(出射側面)21bから出射する紫外光を導光部材21内に戻す構成として、第2表面21dのみを出射面としても良い。
【0040】
本実施形態の除菌装置1は、上記したような導光部材を用いた紫外光照射ユニットとしたので、空気の流れに対して抵抗を生じにくい構成とすることができる。また、厚みの薄い小型化した紫外光照射ユニットを得ることができたので、空気通路を構成する壁面に後付けでも取り付けすることができる、簡単に設置可能な除菌装置を提供することができる。
【0041】
また、紫外光照射ユニットは、板状の導光部材の端面に設けた紫外線LEDからの光を導光部材の前記空気通路側の表面、又は空気通路側の表面および他の端面から出射する構成としたので、紫外線LEDから照射される紫外線の減衰を少なくして、広い面積から空気通路内を照射することができるので、空気通路内の広い領域にわたって紫外光を照射できる除菌装置を提供することができる。
【0042】
(変形例)
次に変形例について説明する。上記実施形態において導光部材21として板形状の合成石英ガラスを使用した。合成石英ガラスは紫外線に対しても高い透過率を示すが硬い無機材料のため、透明樹脂材料のように射出成型装置などの製造装置を用いて任意の形状を成形することが難しい。そこで、本変形例においては導光部材21の表面をエッチング加工することで微細な凹凸を形成している。図5は変形例の紫外光照射ユニットに用いる導光部材を説明する模式的斜視図、図6は紫外光照射ユニットの要部を説明する断面図である。図5および図6において微細な凹凸については誇張した寸法で示している。
【0043】
図5および図6に示すように、出射面の反対側に位置する第1表面21cの表面に散乱領域26が形成されている。散乱領域26は、反射部材25に対向している第1表面21cの表面との間に境界部に複数個所が散在して位置する。散乱領域26を作成するには、第1表面21cの表面に散乱領域26を設ける箇所以外の表面を覆うマスクを設け、マスクで覆われていない第1表面21cをエッチングすることで、微小の凹凸形状を作成する。エッチングは所定の薬品を用いたウエットエッチングでも所定のガスを用いたドライエッチングでも良い。サンドブラストなどの物理的な力を加えて凹凸を形成する方法は、合成石英ガラスを破損する恐れたがるため好ましくない。凹凸形状の大きさは散乱反射を生じる大きさならば、その大きさは限定しない。
【0044】
出射面の反対側に位置する第1表面21cに散乱領域26を設けることで、第2表面21dから出射する出射光UV3の方向を図6に示すように主に上流側に向かって出射する斜め方向の光以外の方向にも出射させることができる。すなわち紫外線による照射領域を広げることができる。なお、紫外線LED23からでる紫外線量は同一であるので、照射領域を広げることは単位面積当たりの紫外線照射量を減少することになる。従って、紫外線LED23からでる紫外線量が少ない場合には、散乱領域26を設けない方が好適である。ダクト内を流れる空気の流速が遅い場合であったり、空気通路の体積が小さい場合には、散乱領域26を設けて多くの空気に対して照射できるようにしたほうが良い。
【0045】
〔第2の実施の形態〕
次に変形例について説明する。図7は、第2の実施の形態における除菌ユニットを説明するための要部の概略断面である。なお、上記した第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を用いて説明し、ここでの説明を省略する。第2の実施の形態の除菌装置1では、除菌ユニット10に紫外光照射ユニット20から照射される紫外光が届く位置に光触媒体11を更に設けている点が、主に第1の実施形態と異なる点である。
【0046】
(除菌ユニット)
除菌ユニット10は、図2に示すように吹き出し口105aに向かって送出される空気が流れる空気通路2を形成するダクト側壁の一部を切り欠いた状態でダクト側壁103aに取付られている。紫外光照射ユニット20が空気通路側が空気通路内を流れる空気と接するように固定されている。ダクト103内の反対側の位置には、第2表面21dと対向するようにして光触媒体11を内壁に沿って設けている。図7において矢印にて示した方向が上流側(取り入れ口側)から下流側(吹き出し口側)に流れる空気の移動方向Fである。紫外光照射ユニット20と光触媒体11との間の空間を空気が流れる。
【0047】
(光触媒体)
光触媒体11は4本の固定脚13により固定されている。固定脚13は、紫外光照射ユニット20の固定枠29の夫々のコーナー部分、すなわちダクト104の側壁寄りに位置する四隅に設けられ、固定枠29からダクト104の反対側の内壁に向かって延びている。図7においては、固定脚13にて固定された光触媒体11がダクトの内壁に接している。光触媒体11は光触媒物質12を焼成し、または光触媒物質12を金属や陶器等の他の物質に担持させたものを用いることができる。光触媒物質12の結晶粒を内部に収容するメッシュケース内にて移動可能に収容したものを用いることができる。
【0048】
(光触媒物質)
光触媒物質12は、例えば酸化チタンを用いることができる。酸化チタン等の光触媒物質12に光が照射されるとラジカルが発生し、このラジカルが有機物を分解する。このような光分解を行う材料であれば酸化チタン以外の各種材料を用いることができる。酸化チタンにはルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型の3種類の結晶形があることが知られているが、アナターゼ型が主として使用される。例えば600℃で焼成したアナターゼ型の二酸化チタンを60メッシュのステンレスケース内に移動可能に収容して担持したものを使用することができる。
【0049】
本実施形態の除菌装置1は、上記したような光触媒体を紫外光が照射される場所に設けたので、光触媒作用により消臭することができ得る。すなわち、光分解による有機物の分解を促すことができ、空気中の浮遊物質に対する紫外光の照射による除菌効果とともに、光触媒作用による消臭効果も高めることができる。また、厚みの薄い小型化した紫外光照射ユニットと光触媒体とすることができたので、空気通路を構成する壁面に後付けでも取り付けすることができる、簡単に設置可能な除菌装置を提供することができる。なお、紫外光照射ユニット20で使用する複数の紫外線LEDとして、異なる波長の出射光を出射する2種類の紫外線LED23a,23bを並べたものを用いる。第1UV-LED23aは、UV-Cの波長域を出射するLED光源として主に空気中の菌などの殺菌について高い効率を示すようにする。第2UV-LED23bは、第1UV-LED23aとは異なる菌等に対して除菌効果を奏する波長域のものとしたり、光触媒物質を励起させるのに好適な波長のものを選択することが好ましい。例えばUV-Aの波長域を出射するLED光源を用いる。
【0050】
以上に、本発明の実施形態及びその変形例を説明したが、上記実施形態および変形例はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその趣旨から逸脱することなく他の様々な形で構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。例えば、第2の実施形態において光触媒体11を第2表面21dと対向するように設けたが、導光部材21の側面である第2端面21bと対向するように光触媒体11を設ける構成としても良い。第2端面21bと対向するように光触媒体11を設ける場合には、紫外光照射ユニット20と光触媒体11が同一面内に位置する除菌ユニットとすることができるので、ダクトの太さを考慮しなくても除菌ユニット10を様々な径のダクトに固定することができるようになり、より一層、容易に取り付けを行うことができる。ダクトの何れかの側面に同一面内に配置した紫外光照射ユニット20と光触媒体11を挿入できる大きさを切り欠くのみで、簡単に除菌ユニットを取り付けることができるので、簡単に後付けでも設置することが可能になる。また、小型なので、自動車用の空調装置に限らず、室内の空調装置、持ち運びのできる送風機など、空気通路を備えるものであれば各種の送風装置にも適用することができる。
【0051】
また、上記した実施形態及びその変形例では、空調装置のダクトに組み込んだ除菌装置を説明したが、紫外線を照射する対象は空気に限定するものではない。空気以外の気体、例えば酸素ガスの除菌にも適用することができる。また、ガス以外の流体、例えば液体であっても流体が流れるダクト(流体通路)の壁面に取り付ければ除菌効果を発揮できる。本願発明の除菌装置は、導光部材を用いる構成としたので、特に装置の奥行寸法をコンパクトにするとともに、後付けでも簡単に取り付けができる除菌装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
自動車内の空調装置、室内の空調装置、送風装置など、各種の空気通路を備えた場所や他の流体が流れる流体通路にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…除菌装置
2…空気通路
3…導入口(空気取り入れ口)
4…吐出口
10…除菌ユニット
11…光触媒体
12…光触媒物質
13…固定脚
20…紫外光照射ユニット
21…導光部材
21b…第2端面(出射側面)
21d…第2表面(出射面)
23…紫外線LED
24…LED搭載基板
25…反射部材
26…散乱領域
27…取付部
29…固定枠
30…可視光発光ユニット
31…可視LED光源
32…可視LED点灯制御部
33…プリント基板
34…収納枠体
100…空調機
103、104…ダクト(空気通路)
103a…ダクト側壁
105a,105b…吹き出し口
F…空気の移動方向
UV1…出射光
UV2…出射光
UV3…出射光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7