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特許7660401太陽光発電出力推定装置、太陽光発電出力推定方法および太陽光発電出力推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-03
(45)【発行日】2025-04-11
(54)【発明の名称】太陽光発電出力推定装置、太陽光発電出力推定方法および太陽光発電出力推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20250404BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20250404BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/38 130
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021040605
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139991
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】森 俊治
(72)【発明者】
【氏名】安並 一浩
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201482(JP,A)
【文献】特開2017-028822(JP,A)
【文献】特開2016-139270(JP,A)
【文献】特開2014-179464(JP,A)
【文献】特開2020-013456(JP,A)
【文献】特開2020-191764(JP,A)
【文献】特開2018-011494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
H02J 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電設備から予め定められた距離内の日射強度を示す日射強度情報を用いて前記太陽光発電設備の発電出力を推定する発電出力推定部と、
前記日射強度情報と、前記太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、前記過積載判定係数を用いて、前記太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定する過積載推定部と、
を備えることを特徴とする太陽光発電出力推定装置。
【請求項2】
前記日射強度情報は、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力であり、前記太陽光発電設備は、前記第1太陽光発電設備から前記予め定められた距離内に設置された第2太陽光発電設備であり、推定対象の前記発電出力は前記第2太陽光発電設備の発電出力である第2太陽光発電出力であることを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項3】
前記第2太陽光発電設備が過積載でないと判定された場合に、前記第2太陽光発電出力の推定時点より前の少なくとも1つの第1期間における、前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記第2太陽光発電設備が設置された需要家の残余需要の時系列データとの共分散である第1共分散を算出する第1共分散算出部と、
前記第2太陽光発電設備が過積載でないと判定された場合に、前記第1期間における前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記第1期間から遅延時間だけずれた第2期間の前記第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散である第2共分散を算出する第2共分散算出部と、
を備え、
前記発電出力推定部は、前記第2太陽光発電設備が過積載でないと判定された場合に、前記第1共分散および前記第2共分散を用いて前記第1太陽光発電出力と前記第2太陽光発電出力との比である係数を算出し、前記係数を前記推定時点から遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力に乗じることで前記第2太陽光発電出力を推定することを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項4】
前記係数は、前記第1共分散を前記第2共分散で除して-1を乗じた値であることを特徴とする請求項3に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項5】
前記過積載判定係数は、前記第1期間における定められた長さの時間窓内の前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記残余需要の時系列データとの相関係数であり、
前記過積載推定部は、前記第1期間内の時刻ごとに、当該時刻を含む前記時間窓を順次移動させることで、前記時刻ごとに前記相関係数を算出し、前記相関係数が閾値を下回る時間帯があるか否かに基づいて前記太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定することを特徴とする請求項3または4に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項6】
前記過積載推定部は、前記相関係数が閾値を下回る時間帯の直前の時刻である第1時刻と、前記相関係数が閾値を上回る時間帯の直後の時刻である第2時刻を求め、
前記第1共分散算出部は、前記第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に、前記第1期間のうち前記第1時刻以前の時刻および前記第1期間のうち前記第2時刻以降の時刻の前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記残余需要の時系列データとを用いて、前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記残余需要の時系列データとの共分散である第3共分散を算出し、
前記第2共分散算出部は、前記第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に、前記第1期間のうち前記第1時刻以前の時刻および前記第1期間のうち前記第2時刻以降の時刻の前記第1太陽光発電出力の時系列データと当該第1太陽光発電出力の時系列データから前記遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力の時系列データとを用いて、前記遅延時間ずれた2つの前記第1太陽光発電出力の時系列データの自己共分散である第4共分散を算出し、
前記発電出力推定部は、前記第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に、前記第3共分散および前記第4共分散を用いて前記係数を算出し、
前記過積載推定部は、前記第1時刻から遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力に前記係数を乗じた値と、前記第2時刻から遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力に前記係数を乗じた値とのうち大きい方を前記第2太陽光発電設備の飽和値に設定し、
前記発電出力推定部は、時刻ごとに前記係数を前記推定時点から遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力に乗じた値と前記飽和値とのうち小さい方を前記第2太陽光発電出力の推定値とすることを特徴とする請求項5に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項7】
前記係数は、前記第3共分散を前記第4共分散で除して-1を乗じた値であることを特徴とする請求項6に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項8】
前記第1共分散算出部は、前記第2太陽光発電設備の前記飽和値が設定済である場合、前記第1期間を前記第2太陽光発電出力が飽和しない期間に設定し、前記第1期間のすべての時刻の前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記残余需要の時系列データとを用いて前記第1共分散を算出し、
第2共分散算出部は、前記第2太陽光発電設備の前記飽和値が設定済である場合、前記第2太陽光発電出力が飽和しない期間に設定された前記第1期間のすべての時刻の前記第1太陽光発電出力の時系列データと前記第1期間から前記遅延時間ずれた前記第2期間の前記第1太陽光発電出力の時系列データとを用いて前記第2共分散を算出し、
前記発電出力推定部は、前記第2太陽光発電設備の前記飽和値が設定済の場合、前記第1共分散および前記第2共分散を用いて前記係数を算出し、時刻ごとに前記係数を前記推定時点から遅延時間ずれた前記第1太陽光発電出力に乗じた値と前記飽和値とのうち小さい方を前記第2太陽光発電出力の推定値とすることを特徴とする請求項6または7に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項9】
前記太陽光発電設備の発電出力の推定結果、前記過積載推定部による判定結果および前記過積載判定係数のうち少なくとも1つを表示する表示部、
を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項10】
前記表示部は、選択された地域ごとに、過積載と判定された前記太陽光発電設備の数を表示することを特徴とする請求項9に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項11】
前記表示部は、過積載と判定された前記太陽光発電設備の位置と過積載と判定されていない前記太陽光発電設備の位置とを異なる図形により地図上に表示することを特徴とする請求項9または10に記載の太陽光発電出力推定装置。
【請求項12】
太陽光発電出力推定装置が、太陽光発電設備から予め定められた距離内の日射強度を示す日射強度情報を用いて前記太陽光発電設備の発電出力を推定し、
太陽光発電出力推定装置が、前記日射強度情報と、前記太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、前記過積載判定係数を用いて、前記太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定することを特徴とする太陽光発電出力推定方法。
【請求項13】
太陽光発電設備から予め定められた距離内の日射強度を示す日射強度情報を用いて前記太陽光発電設備の発電出力を推定するステップと、
前記日射強度情報と、前記太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、前記過積載判定係数を用いて、前記太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする太陽光発電出力推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光発電設備の発電出力を推定する太陽光発電出力推定装置、太陽光発電出力推定方法および太陽光発電出力推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギーの利用を拡大することの重要性が高まっており、太陽光発電設備などの分散型電源を設置し、送電系統または配電系統(以下、これらを電力系統という)に電力を供給する需要家が増えてきている。一方、電力系統を運用する電力会社などでは、一部の太陽光発電設備の発電出力は把握しているものの、多くの太陽光発電設備の発電出力は把握できていない。このため、各需要家が設置した太陽光発電設備の発電出力を推定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、上記の発電出力を把握できる太陽光発電設備は、全量買取制度の契約(以下、全量買取契約という)の対象となっている太陽光発電設備であり、発電出力を把握できない太陽光発電設備は、余剰電力買取制度の契約(以下、余剰買取契約という)の対象となっている太陽光発電設備である。これは、全量買取契約の対象となっている太陽光発電設備を保有する需要家には、太陽光発電設備の発電量を計測するスマートメータと、需要家内の負荷の消費電力量を計測するスマートメータが個別に設置されているのに対し、余剰買取契約の対象となっている太陽光発電設備を保有する需要家には、太陽光発電設備の発電量と負荷の消費電力量との合算値を計測するスマートメータしか設置されていないためである。
【0003】
特許文献1には、電力系統に接続された負荷に電力を供給する太陽光発電設備の所定時点での発電出力である太陽光発電出力を推定する太陽光発電出力推定装置であって、所定時点以前の期間であって、太陽の南中高度が所定時点での当該南中高度から所定範囲内の期間における、所定地点での日射強度と電力系統の有効電力とを用いて、太陽光発電出力を推定する発電出力推定部を備えることを特徴とする、太陽光発電出力推定装置が開示されている。この太陽光発電出力推定装置は、変電所周辺に設置した日射計などで測定した日射強度と、変電所などに設置した計測器で測定した有効電力とを用いて、電力系統に連系した太陽光発電設備の発電出力を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-139270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力会社などが多くの太陽光発電設備の発電出力を把握できていない状況下において、太陽光発電設備が大量に導入された場合、電力系統の運用には様々な問題が生じる。電力会社などでは、自身が所管する変電所などで、太陽光発電設備の発電出力を加味した見かけ上の電力系統の負荷(以下、「見かけ上の負荷」という)の消費電力を計測器などで計測できているものの、電力系統に連系されているすべての太陽光発電設備の発電出力合計値が未知であるため、実際の負荷(以下、「実負荷」という)の消費電力を正確に把握することができない。このため、たとえば、電力流通設備の設備形成計画時には、過去の実負荷の実績値を踏まえ、将来の電力流通設備に流れる潮流を予測する必要があるが、太陽光発電出力が未知の場合には、実負荷も未知であるため、正確な潮流予測を行うことができず、適切な設備形成計画の立案が難しくなる。また、太陽光発電設備が大量に導入された場合、重回帰分析などを利用して予測を行っている実負荷の消費電力の予測誤差が大きくなるという需給制御上のリスクが増大したり、系統事故後の復旧操作に支障が生じるという系統制御上のリスクが増大したりする。
【0006】
このため、太陽光発電設備の発電出力を正確に推定する必要がある。一方、太陽光発電設備のなかには、過積載の太陽光発電設備と呼ばれるものがある。過積載の太陽光発電設備は、PCS(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)の定格容量が太陽光パネル容量よりも小さい太陽光発電設備である。特許文献1の太陽光発電出力推定装置によれば、日射強度を太陽光発電設備の発電出力に変換する係数を用いて発電出力を推定しているが、過積載の太陽光発電設備ではPCSの定格容量に達すると発電出力が飽和するため発電出力と日射強度との相関が低くなることがある。特許文献1に記載の太陽光発電出力推定装置では、過積載の太陽光発電設備を判別せずに過積載ではない太陽光発電設備と同様の手法で推定しているため、過積載の太陽光発電設備発電出力の推定精度が低下するという問題がある。このため、発電出力の推定対象の太陽光発電設備が過積載であるか否かを推定することが望まれる。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、発電出力の推定対象の太陽光発電設備が過積載であるか否かを推定することができる太陽光発電出力推定装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる太陽光発電出力推定装置は、太陽光発電設備から予め定められた距離内の日射強度を示す日射強度情報を用いて太陽光発電設備の発電出力を推定する発電出力推定部と、日射強度情報と、太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、過積載判定係数を用いて、太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定する過積載推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発電出力の推定対象の太陽光発電設備が過積載であるか否かを推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1にかかる太陽光発電出力推定システムの構成例を示す図
図2】実施の形態1の太陽光発電出力推定装置の機能構成例を示すブロック図
図3】実施の形態1の太陽光発電出力推定装置を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図
図4】実施の形態1の太陽光発電出力推定装置による第2太陽光発電出力の推定処理手順の一例を示すフローチャート
図5】実施の形態1の場所情報データにより示される各需要家の太陽光発電設備の地理的位置を模式的に示す図
図6】実施の形態1の発電出力の推定対象の太陽光発電設備と推定に使用する太陽光発電設備との対応を示す図
図7】実施の形態1の移動窓の一例を示す図
図8】実施の形態1の過積載判定係数の計算結果の一例を示す図
図9】実施の形態1の飽和値の推定結果の一例を示す図
図10】実施の形態1の過積載推定データの一例を示す図
図11】第1共分散算出部における第1共分散算出処理手順の一例を示すフローチャート
図12】実施の形態1の第2共分散算出部による第2共分散の算出処理手順の一例を示すフローチャート
図13】実施の形態1の発電出力推定部における処理手順の一例を示すフローチャート
図14】実施の形態1の表示部によって表示される第2太陽光発電出力の推定結果の一例を示す図
図15】実施の形態1の表示部によって表示される第2太陽光発電出力の推定結果の一例を示す図
図16】実施の形態1の過積載の太陽光発電設備の判定結果を表示する領域を選択するための画面の一例を示す図
図17】実施の形態1の過積載の太陽光発電設備の判定結果の表示画面の一例を示す図
図18】実施の形態1の過積載の太陽光発電設備の判定結果の拡大した表示画面の一例を示す図
図19】実施の形態1の過積載の太陽光発電設備の判定結果をテキストで表示した表示画面の一例を示す図
図20】実施の形態1における複数の需要家の太陽光発電設備を推定対象とする場合の係数αの一例を示す図
図21】実施の形態2の太陽光発電出力推定装置による第2太陽光発電出力の推定処理手順の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、実施の形態にかかる太陽光発電出力推定装置、太陽光発電出力推定方法および太陽光発電出力推定プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる太陽光発電出力推定システムの構成例を示す図である。本実施の形態の太陽光発電出力推定システム10は、太陽光発電出力推定装置100と、複数の需要家の下に設置された各種の設備とが、通信ネットワーク50を介して接続された構成である。図1において実線は電力の流れを表し、破線は情報の流れを表している。
【0013】
図1では、複数の需要家として需要家200-1、需要家200-2、需要家200-3、需要家200-4、・・・、需要家200-m、・・・、需要家200-nを図示している。需要家200-1~200-nのそれぞれには、負荷201および太陽光発電設備(図では、PV(PhotoVoltaic)と略す)202が接続されている。なお、図1に示した例では、nは6以上の整数であり、mは5以上n未満の整数であるが、n,mの値は、図1に示した例に限定されない。また、各需要家200-1~200-nの負荷201は、電力を消費する1つ以上の設備を示しており、一般には、負荷201を構成する具体的な設備は全需要家200-1~200-nで同一ではない。太陽光発電設備202についても、同様に、一般には、全需要家200-1~200-nで同一ではない。
【0014】
需要家200-1に設けられている太陽光発電設備202は、全量買取契約対象の太陽光発電設備である。需要家200-2~200-nに設けられている太陽光発電設備202は、余剰買取契約対象の太陽光発電設備である。
【0015】
太陽光発電設備202は、例えば、需要家200-1~200-nが有する建築物の屋根などに設置されている太陽光発電設備であり、小規模な太陽光発電設備のみならず、いわゆるメガソーラーなどの大規模太陽光発電所を含む。太陽光発電設備202は、電力系統20に連系されており、発電した電力を電力系統20に供給する。また、電力系統20には、図1に示すように、各需要家200-1~200-nの負荷201が接続されている。負荷201は電力系統20から電力供給を受け、電力を消費する。
【0016】
負荷201および太陽光発電設備202が設けられている需要家200-1~200-nは、電力系統20からの電力供給を受けるとともに太陽光発電設備202によって発電された電力を電力系統20に供給することになる。このため、電力系統20から見た各需要家200-1~200-nの見かけ上の消費電力は、負荷201の実際の消費電力と太陽光発電設備202による発電出力との両方に依存することになる。なお、負荷201による消費電力を太陽光発電設備202による発電出力が上回る場合には、電力系統20からみると当該需要家の発電出力が電力系統20に供給されることになるため、見かけ上の消費電力は負の値になる。以下では、電力系統20から見た、各需要家200-1~200-nの見かけ上の消費電力を、残余需要と呼ぶ。
【0017】
余剰買取契約を締結している需要家200-2~200-nには、スマートメータ(図では、SM(Smart Meter)と略す)205が設置されている。iを2からnまでの任意の整数とすると、需要家200-iのスマートメータ205は、時刻をtとするとき、需要家200-iの太陽光発電設備202の発電出力PPVi(t)と負荷201による消費電力PLi(t)とが合算された電力を計測する。すなわち、スマートメータ205が計測する電力は上述した残余需要であり、需要家200-2~200-nごとに、負荷201の消費電力から太陽光発電設備202の発電出力が差し引かれた量である。スマートメータ205が計測した残余需要の計測データは、通信網25と通信ネットワーク50を介して、太陽光発電出力推定装置100に送られる。
【0018】
例えば、需要家200-2では、スマートメータ205が、太陽光発電設備202の発電出力PPV2(t)と負荷201による消費電力PL2(t)との合算値を残余需要として計測および記録する。そして、スマートメータ205は、需要家200-2の残余需要の計測データを、通信網25と通信ネットワーク50とを介して、太陽光発電出力推定装置100に送信する。このようにして太陽光発電出力推定装置100は、余剰買取契約対象の太陽光発電設備202を保有する需要家200-2~200-nに設置されたスマートメータ205の計測値である残余需要の計測データを取得する。
【0019】
また、需要家200-3には、需要家200-3に設けられた太陽光発電設備202の発電出力PPV3(t)を計測する計測器206が設けられている。計測器206は、太陽光発電設備202を制御するPCS、HEMS(Home Energy Management System)などの装置の一部であってもよいし、個別に設けられた計測器であってもよい。計測器206は、計測した発電出力PPV3(t)の計測データを、通信網25と通信ネットワーク50を介して、太陽光発電出力推定装置100に送る。なお、ここでは、需要家200-3に計測器206が設けられる例を説明するが、需要家200-2~200-nのうち計測器206が設けられる需要家は0軒であってもよいし、また、複数であってもよい。
【0020】
全量買取契約を締結している需要家200-1には、スマートメータ203とスマートメータ204とが設置されている。スマートメータ203は、需要家200-1の負荷201の消費出力PL1(t)を計測および記録する。スマートメータ204は、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力PPV1(t)を計測および記録する。スマートメータ204が計測した需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力の計測データは、通信網25と通信ネットワーク50とを介して太陽光発電出力推定装置100に送られる。このようにして太陽光発電出力推定装置100は、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力PPV1(t)の計測データを取得する。スマートメータ203の計測データも、通信網25と通信ネットワーク50とを介して太陽光発電出力推定装置100に送られる。なお、スマートメータ203とスマートメータ204の少なくともどちらか一方の装置、あるいは、それらの装置の代わりに図示しない装置が、スマートメータ203の計測データとスマートメータ204の計測データとの合算である見かけ上の消費電力、つまり、残余需要を計測(あるいは、算出)し、計測(あるいは、算出)された残余需要を太陽光発電出力推定装置100に送信してもよい。
【0021】
以上のように、需要家200-1~200-nのうち、需要家200-1,200-3については、スマートメータ204または計測器206により太陽光発電設備202の発電出力の計測データを得ることができる。スマートメータ204も計測器の一部であると考えることができるため、需要家200-1および需要家200-3はいずれも、太陽光発電設備202の発電出力の計測データを取得できる需要家である。一方、需要家200-1~200-nのうち、スマートメータ204および計測器206のいずれも設けられていない需要家では、消費電力と合算された残余需要は計測されているものの、太陽光発電設備202の発電出力は直接計測されていないため正確に発電出力を求めることが困難である。本実施の形態では、太陽光発電出力推定装置100が、需要家200-1および需要家200-3のうち少なくとも一方を用いて、スマートメータ204および計測器206のいずれも設けられていない需要家の発電出力を正確に推定する方法について説明する。以下、発電出力の推定において基準として用いられる需要家200-1,200-3の太陽光発電設備を第1太陽光発電設備とも呼び、発電出力の推定対象となる太陽光発電設備を第2太陽光発電設備とも呼ぶ。また、第1太陽光発電設備が設けられる需要家(需要家200-1,200-3など)を第1需要家とも呼び、第2太陽光発電設備が設けられる需要家(需要家200-2など)を第2需要家とも呼ぶ。
【0022】
太陽光発電出力推定装置100は、第1太陽光発電設備の発電出力である第1太陽光発電出力を利用して、第2太陽光発電設備の予め定められた時点(以下、「推定時点」と称する)の太陽光発電出力である第2太陽光発電出力を推定する。推定時点には、現在の時点のみならず、過去または未来の時点が含まれる。太陽光発電出力推定装置100は、パーソナルコンピュータなどの汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されても良いし、専用のコンピュータシステムによって実現されても良い。太陽光発電出力推定装置100の詳細な構成については、後述する。なお、第1太陽光発電設備と第2太陽光発電設備との間の距離は、予め定められた値以下である。予め定められた値は、例えば数kmであるがこれに限定されない。
【0023】
次に、太陽光発電出力推定装置100の機能について説明する。太陽光発電出力推定装置100は、基準となる第1太陽光発電出力と推定対象の需要家の残余需要とを用いて、推定対象の需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第2太陽光発電出力を推定する。第1太陽光発電出力は、第1需要家に設けられる第1太陽光発電設備の発電出力であり、第2太陽光発電出力は、第2需要家に設けられる第2太陽光発電設備の発電出力である。なお、太陽光発電設備202の発電出力と負荷201の消費電力には、有効電力と無効電力とが存在する。しかし、一般的な太陽光発電設備、特に家庭用の太陽光発電設備は力率一定で運転されているため、有効電力を推定することで無効電力も容易に推定することが可能である。このため、以下に記載する、太陽光発電設備202の発電出力と負荷201の消費電力は、有効電力を指すものとする。
【0024】
ここで、太陽光発電出力推定装置100における太陽光発電設備202の発電出力の推定方法の概要について説明する。ここでは、発電出力の推定対象として需要家200-2の太陽光発電設備202を例に挙げて説明し、また推定において基準として用いられる太陽光発電出力として需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力を例にあげて説明する。すなわち、この例において、第1太陽光発電出力は需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力であり、推定対象の第2太陽光発電出力は、需要家200-2の太陽光発電設備202の発電出力である。なお、推定対象が、需要家200-4~200-nのそれぞれの太陽光発電設備202の発電出力である場合、すなわち第2太陽光発電出力が需要家200-4~200-nのそれぞれの太陽光発電設備202の発電出力である場合も、残余需要としてそれぞれの需要家に対応する値を用いることで、同様に太陽光発電設備202の発電出力を推定することができる。また、基準として用いられる太陽光発電出力である第1太陽光発電出力として、需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力の代わりに、需要家200-3の太陽光発電設備202の発電出力、すなわち計測器206により計測される発電出力を用いる場合も、同様に、第2太陽光発電出力を推定することができる。
【0025】
第2需要家である需要家200-2の残余需要をP(t)、需要家200-2の負荷201の消費電力をPL2(t)、第2太陽光発電出力である需要家200-2の太陽光発電設備202の発電出力をPPV2(t)とする。また、第1需要家である需要家200-1の太陽光発電設備202の発電出力、すなわち第1太陽光発電出力をPPV1(t)とする。このとき、以下の式(1)のように、P(t)に関する式が成り立ち、さらに、式(2)のように、PPV2(t)に関する式を仮定できる。
【0026】
【数1】
【0027】
【数2】
【0028】
ここで、αは第1太陽光発電出力を第2太陽光発電出力に変換する係数、τは遅延時間、すなわち、第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間、ε12(t)は時間的外乱である。
【0029】
そして、PL2(t)とε12(t)の変動が、それぞれ、PPV1(t)の変動と相関がないと仮定し、上記の式(1)、式(2)において、時間的な定常性が成立すると仮定すると、上記の式(1)と式(2)から、以下の式(3)が導かれる。
【0030】
【数3】
【0031】
ここで、Cov[]は2つの量の共分散を計算する演算子を意味しており、上記の式(3)におけるCov[PPV1(t),PPV1(t+τ+τ)]は、τ=-τのときに最大値をとる。このため、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との時系列データの共分散関数Cov[PPV1(t),P(t+τ)]が最小値(符号が「-」かつ絶対値が最大値)をとるときのタイムラグτに-1を乗じた値が、遅延時間τである。
【0032】
また、上記の式(3)にτ=0を代入すると、以下の式(4)が得られる。
【0033】
【数4】
【0034】
そして、上記の式(4)を以下の式(5)に変形することで、係数αの推定値を得ることができる。
【0035】
【数5】
【0036】
Cov[PPV1(t),P(t)]は、第1太陽光発電出力PPV1(t)と残余需要P(t)との共分散であり、この共分散を第1共分散と呼ぶ。Cov[PPV1(t),PPV1(t+τ)]は、遅延時間τずれた2つの第1太陽光発電出力であるPPV1(t)とPPV1(t+τ)との自己共分散であり、この自己共分散を第2共分散と呼ぶ。そして、αは、第1共分散Cov[PPV1(t),P(t)]を第2共分散Cov[PPV1(t),PPV1(t+τ)]で除して-1を乗じて得られる係数である。
【0037】
また、ε12(t+τ)は微小であり無視できると仮定すれば、上記の式(2)から、第2太陽光発電出力に関する近似式である以下の式(6)を得ることができる。
【0038】
【数6】
【0039】
本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、以上で述べた推定方法を用いて第2太陽光発電出力を推定する。すなわち、太陽光発電出力推定装置100は、上述した第1共分散、第2共分散を算出し、算出した第1共分散、第2共分散を用いて式(5)により、係数αの推定値を求める。係数αを求める処理は、第2太陽光発電出力の推定対象の時刻である推定時点より前に行われていればよい。ただし、推定時点が過去の場合は、推定時点の未来にあたる推定時点から現在までに行うことでもよい。上述したように、係数αの算出には、各計測データの時系列データを用いるため、ある程度の期間の計測データが必要である。この期間は、推定時点以前であって、かつ推定時点から時間的に離れすぎていない範囲で設定される。例えば、この期間は、第2太陽光発電出力を推定する推定時点から1,2週間程度遡った期間までの間の任意の期間である。そして、太陽光発電出力推定装置100は、係数αの推定値に、推定時点tから遅延時間τずれた時点における第1太陽光発電出力PPV1(t+τ)を乗じることで、第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定値を算出することができる。なお、第2太陽光発電出力PPV2(t)の推定値を算出する際には、遅延時間τを0であると仮定し、係数αの推定値に、推定時点における第1太陽光発電出力PPV1(t)を乗じることで推定を行ってもよい。
【0040】
上述した推定方法である第1の推定方法(以下、第1推定方法という)を用いることで、余剰買取契約対象の太陽光発電設備202の発電出力を高精度に推定することができる。一方、太陽光発電設備202のなかには、過積載の太陽光発電設備が含まれる場合がある。過積載の太陽光発電設備には、次のような課題がある。一般には、太陽光発電設備202の設置者は、太陽光発電設備202を連系させる際に、太陽光パネル容量、あるいは、PCSの定格容量のどちらか一方を、電力会社などの系統運用者へ申請すればよいことが多い。したがって、電力会社などの系統運用者は、各太陽光発電設備202が過積載であるか否かを管理することができない。過積載の太陽光発電設備202では、日射強度が強い(大きい)と太陽光発電出力がPCSの定格容量で飽和するため、太陽光発電出力が日射強度と比例関係とはならない。上述した推定方法では、太陽光発電出力が日射強度と比例関係となることを前提とし、式(2)を仮定しているため、過積載の太陽光発電設備202に関してそのまま上述した推定方法によって太陽光発電出力を推定すると、日射強度が強い場合に推定精度が低下する。
【0041】
本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100による推定結果は、例えば、当該推定結果を用いて実負荷を算出することで、電力流通設備の設備形成計画などのアセットマネジメントに利用することができる。このとき、太陽光発電出力が精度良く推定できないと、実負荷の推定精度も低下し、正確な潮流予測を行うことができず、適切な設備形成計画の立案が難しくなる。このため、まず、過積載の太陽光発電設備202を判別することが望まれ、さらには過積載の太陽光発電設備202の発電出力を精度良く推定することが望まれる。
【0042】
上述したように、過積載の太陽光発電設備202において飽和が生じている時間帯では、日射強度と当該太陽光発電設備202の発電出力との相関が低くなる。このため、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であれば、第1太陽光発電出力と第2太陽光発電出力との相関が低くなり、これにより第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との相関も低くなると想定される。本実施の形態では、これを利用して、太陽光発電出力推定装置100は、第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との相関を示す過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在する場合には、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判定する。過積載判定係数は、例えば、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との相関係数である。以下では、過積載判定係数が第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との相関係数である例を説明するが、過積載判定係数はこれに限定されず、例えば、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との共分散を、第1太陽光発電出力の自己共分散(つまり、分散)で除した値、あるいは、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との共分散そのものを用いてもよい。
【0043】
さらに、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判定すると、第2の推定方法(以下、第2推定方法という)によって第2需要家の太陽光発電設備202の発電出力を推定する。具体的には、太陽光発電出力推定装置100は、過積載判定係数が閾値以上となる時間帯における第1太陽光発電出力および第2需要家の残余需要を用いて上記式(5)により係数αを推定する。そして、太陽光発電出力推定装置100は、過積載判定係数が閾値以上となる時間帯における第1太陽光発電出力と係数αとを用いて第2需要家の太陽光発電設備202の飽和値を推定する。飽和値の算出方法については後述する。太陽光発電出力推定装置100は、推定時点の時刻ごとに、飽和値と上記式(6)により算出される値とのうち小さい方を、第2太陽光発電出力の推定値とする。本実施の形態では、このように、過積載であると判定された第2太陽光発電出力の飽和値を推定し、推定した飽和値と上記式(6)により算出する値とを用いて推定するので、過積載の第2需要家の太陽光発電設備202の発電出力を精度良く推定することができる。
【0044】
なお、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判別方法は、上述した太陽光発電出力推定方法で太陽光発電出力を推定する場合に限定されず、他の用途に適用することも可能である。例えば、日射強度の推定値を用いて太陽光発電出力を推定する場合にも、過積載の太陽光発電設備202を判別して、過積載の太陽光発電設備202と過積載ではない太陽光発電設備202とで推定手順を分けて推定した方が、推定精度が向上する。このため、別の方法で太陽光発電出力を推定する場合に、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判別方法を適用してもよい。また、系統運用者などが、地域ごとの過積載の太陽光発電設備202の数を把握したいといった要望、過積載の太陽光発電設備202の地理的分布を把握したいといった要望があることも考えられ、このような用途に本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判別方法が用いられてもよい。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、過積載の太陽光発電設備202を判別することができるため、地域ごとの過積載の太陽光発電設備202の数、過積載の太陽光発電設備202の地理的分布などを表示することができる。
【0045】
次に、太陽光発電出力推定装置100の機能構成例について説明する。図2は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の機能構成例を示すブロック図である。太陽光発電出力推定装置100は、太陽光発電設備202の推定時点の発電出力である第2太陽光発電出力を推定する装置である。図2に示すように、太陽光発電出力推定装置100は、データ取得部110と、第1共分散算出部120と、第2共分散算出部130と、発電出力推定部140と、過積載推定部150と、表示部160と、入力受付部170と、記憶部180とを備える。
【0046】
データ取得部110は、通信網25と通信ネットワーク50とを介して、スマートメータ203~205および計測器206から計測データを受信し、受信した計測データを記憶部180に格納する。詳細には、スマートメータ204および計測器206から受け取った計測データは太陽光発電出力データ182として記憶部180に格納され、スマートメータ205から受け取った計測データは残余需要データ183として記憶部180に格納される。これらの計測データは、計測値ごとに時刻と対応づけられている。なお、記憶部180に格納されるこれらの計測データの各計測値の時間間隔は、例えば1秒、10秒、1分、30分、または1時間などであるが、特にこれらには限定されず、ユーザによって適切な数値が定められる。また、これらの計測データは、需要家200-1~200-nの識別情報または太陽光発電設備202の識別情報とともに格納される。また、データ取得部110は、需要家200-1のスマートメータ203の計測データとスマートメータ204の計測データとを受信した場合は、これらの計測データを用いて需要家200-1の残余需要を算出して残余需要データ183として記憶部180に格納する。
【0047】
なお、ここでは、太陽光発電出力推定装置100が、通信網25と通信ネットワーク50とを介してスマートメータ203~205および計測器206から計測データを取得する例を示すが、スマートメータ203~205の計測データは、いわゆる集約装置またはヘッドエンドシステムなどにより収集され、収集した装置から太陽光発電出力推定装置100へ送信されてもよい。すなわち、通信網25および通信ネットワーク50内に、計測データを収集する装置が存在し、当該装置から太陽光発電出力推定装置100が計測データを取得してもよい。また、太陽光発電出力推定装置100とスマートメータ203~205および計測器206との間の通信ルートは図1および図2に示した例に限定されず、太陽光発電出力推定装置100が計測器206を受信する通信ルートと、太陽光発電出力推定装置100がスマートメータ203~205の計測データを受信する通信ルートとは異なっていてもよい。また、太陽光発電出力推定装置100とスマートメータ203~205および計測器206との間の通信ネットワークは、通信網25と通信ネットワーク50とに分離されていなくてもよい。また、太陽光発電出力推定装置100は、複数の通信ルートでスマートメータ203~205の計測データを受信してもよい。
【0048】
記憶部180は、上述した太陽光発電出力データ182および残余需要データ183を格納するとともに、太陽光発電出力推定装置100において算出された各種のデータを算出データ185として記憶する。また、記憶部180には、例えば、ユーザにより入力受付部170を介して入力された場所情報データ181が格納される。なお、場所情報データ181は、入力受付部170を介して入力される代わりに他の装置から送信され、データ取得部110によって取得されて記憶部180に格納されてもよい。場所情報データ181は、太陽光発電設備202を保有する需要家200-1~200-nの住所または緯度経度などの場所情報のデータである。また、記憶部180は、過積載の太陽光発電設備202に関するデータである過積載推定データ184を記憶する。過積載推定データ184は、過積載であると判定された太陽光発電設備202の識別情報を含む。過積載推定データ184は、過積載であると判定された太陽光発電設備202の飽和値の推定値を含んでいてもよい。
【0049】
第1共分散算出部120は、記憶部180の場所情報データ181を参照して、発電出力の推定対象の需要家である第2需要家との距離が、予め定められた距離以内であって推定の際に基準となる太陽光発電設備202を有する第1需要家を選択する。第1需要家は、上述したように、全量買取契約の対象の太陽光発電設備202を有する需要家200-1、または計測器206により太陽光発電設備202の発電出力が計測されている需要家200-3である。第1共分散算出部120は、第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との共分散である第1共分散を算出し、算出した第1共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。発電出力の推定対象の需要家は、上述したように例えば需要家200-2であるが、需要家200-4~200-nであってもよい。需要家200-2,200-4~200-nのすべてを順次推定対象として、需要家200-2,200-4~200-nごとに推定が行われてもよいし、その合計値が必要な場合はその合計値を一括で推定することにしてもよい。
【0050】
具体的には、第1共分散算出部120は、少なくとも1つの第1期間における第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、第2需要家の残余需要を記憶部180の残余需要データ183から抽出して読み出す。第1期間は、推定時点から1,2週間程度遡った期間内の、例えば、6時間から10時間程度の期間であり、好ましくは8時間である。第1期間は、日出から日入までの期間内で選択される。また、第1期間は、日射強度が強く、かつ日射強度の変動が大きい期間であるのが好ましい。第1期間は1つであってもよいし、複数であってもよい。第1共分散算出部120は、過積載推定部150から通知される判定結果に応じて、第1期間のすべての時刻のデータを処理対象とするか、第1期間のうち一部の時刻のデータを処理対象とするかを決定する。過積載推定部150から通知される判定結果と一部の時刻とについては、後述する。
【0051】
第1共分散算出部120は、読み出した、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とのうち処理対象として決定された時刻のデータを用いて、第1期間における第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との共分散である第1共分散を算出して、記憶部180に算出データ185として格納する。さらに、第1共分散算出部120は、読み出し済の第1太陽光発電出力と、同じく読み出し済の第2需要家の残余需要とを用いて、第1期間における遅延時間τを算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。なお、遅延時間は算出せずに、0と近似することにしてもよい。
【0052】
第2共分散算出部130は、遅延時間τを記憶部180の算出データ185から抽出して読み出し、第1期間における第1太陽光発電出力と、第1期間より遅延時間τずれた第2期間における第1太陽光発電出力とを記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出す。第2共分散算出部130は、過積載推定部150から通知される判定結果に応じて、第1期間のすべての時刻のデータを処理対象とするか、第1期間のうち一部の時刻のデータを処理対象とするかを決定する。なお、このとき、処理対象として決定された時刻は、上述した第1共分散算出部120が第1共分散を算出した時刻と同一とする。そして、第2共分散算出部130は、読み出したデータのうち処理対象として決定された時刻のデータを用いて、遅延時間τずれた2つの第1太陽光発電出力の自己共分散である第2共分散を算出し、算出した第2共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。詳細には、第2共分散算出部130は、記憶部180の太陽光発電出力データ182から、第1期間の第1太陽光発電出力の時系列データと、第1期間より遅延時間τずれた第2期間の第1太陽光発電出力の時系列データとを読み出す。そして、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと第2期間の第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散である第2共分散を算出し、算出した第2共分散を記憶部180に算出データ185として格納する。なお、遅延時間τを0と近似する場合は、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データの分散を、第2共分散として算出する。
【0053】
発電出力推定部140は、過積載推定部150から通知される判定結果に応じて、第1推定方法または第2推定方法により、第2太陽光発電出力を推定する。具体的には、発電出力推定部140は、過積載推定部150から通知される判定結果が、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でないことを示している場合、第1推定方法によって第2太陽光発電出力を推定し、過積載推定部150から通知される判定結果が、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示している場合、第2推定方法によって第2太陽光発電出力を推定する。
【0054】
詳細には、第1推定方法により推定する場合、記憶部180に算出データ185として格納されている第1共分散および第2共分散を用いて第1太陽光発電出力を第2太陽光発電出力に変換する係数である(第1太陽光発電出力と第2太陽光発電出力との比ともいえる)係数αを算出(推定)し、係数αを推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力に乗じることで第2太陽光発電出力を推定する。また、第2推定方法により推定する場合、発電出力推定部140は、記憶部180に算出データ185として格納されている第1共分散および第2共分散を用いて第1太陽光発電出力と第2太陽光発電出力との比である係数αを算出(推定)し過積載判定係数が閾値以上となる時間帯の前後の時刻のそれぞれに関して、その時刻から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力に係数αを乗算した値を算出し、算出した値のうち大きい方を飽和値に設定する。そして、発電出力推定部140は、推定時点の時刻ごとに、飽和値と推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力に乗じた値とのうち小さい方を、第2太陽光発電出力の推定値とする。
【0055】
なお、係数αは1,2週間などの短期間では変化しにくいものの、遅延時間τは風向または風速の変化によって短期間で変化しやすい。従って、この第2太陽光発電出力を推定する際の遅延時間τは、気象データなどを考慮してリアルタイムで変更されたものが用いられるのが好ましい。また、0と近似してもよい。
【0056】
表示部160は、記憶部180に格納された各種データを表示する。入力受付部170は、ユーザからの入力を受け付ける。
【0057】
ここで、太陽光発電出力推定装置100のハードウェア構成について説明する。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、コンピュータシステム上で、太陽光発電出力推定装置100における処理が記述されたプログラムである太陽光発電出力推定プログラムが実行されることにより、コンピュータシステムが太陽光発電出力推定装置100として機能する。図3は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100を実現するコンピュータシステムの構成例を示す図である。図3に示すように、このコンピュータシステムは、制御部101と入力部102と記憶部103と表示部104と通信部105と出力部106とを備え、これらはシステムバス107を介して接続されている。
【0058】
図3において、制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであり、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100における処理が記述された太陽光発電出力推定プログラムを実行する。入力部102は、たとえばキーボード、マウスなどで構成され、コンピュータシステムの使用者が、各種情報の入力を行うために使用する。記憶部103は、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory)などの各種メモリおよびハードディスクなどのストレージデバイスを含み、上記制御部101が実行すべきプログラム、処理の過程で得られた必要なデータ、などを記憶する。また、記憶部103は、プログラムの一時的な記憶領域としても使用される。表示部104は、ディスプレイ、LCD(液晶表示パネル)などで構成され、コンピュータシステムの使用者に対して各種画面を表示する。通信部105は、通信処理を実施する受信機および送信機である。出力部106は、プリンタなどである。なお、図3は、一例であり、コンピュータシステムの構成は図3の例に限定されない。
【0059】
ここで、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムが実行可能な状態になるまでのコンピュータシステムの動作例について説明する。上述した構成をとるコンピュータシステムには、たとえば、図示しないCD(Compact Disc)-ROMドライブまたはDVD(Digital Versatile Disc)-ROMドライブにセットされたCD-ROMまたはDVD-ROMから、太陽光発電出力推定プログラムが記憶部103にインストールされる。そして、太陽光発電出力推定プログラムの実行時に、記憶部103から読み出された太陽光発電出力推定プログラムが記憶部103に格納される。この状態で、制御部101は、記憶部103に格納されたプログラムに従って、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100としての処理を実行する。
【0060】
なお、上記の説明においては、CD-ROMまたはDVD-ROMを記録媒体として、太陽光発電出力推定装置100における処理を記述したプログラムを提供しているが、これに限らず、コンピュータシステムの構成、提供するプログラムの容量などに応じて、たとえば、通信部105を経由してインターネットなどの伝送媒体により提供されたプログラムを用いることとしてもよい。
【0061】
図2に示した第1共分散算出部120、第2共分散算出部130、発電出力推定部140および過積載推定部150は、図3に示した記憶部103に記憶された太陽光発電出力推定プログラムが図3に示した制御部101により実行されることにより実現される。図2に示した記憶部180は、図3に示した記憶部103の一部である。図2に示したデータ取得部110は、図3に示した通信部105および制御部101により実現される。図2に示した表示部160は、図3に示した表示部104により実現され、図2に示した入力受付部170は、図3に示した入力部102により実現される。太陽光発電出力推定装置100は複数のコンピュータシステムにより実現されてもよい。
【0062】
次に、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の動作の詳細について説明する。図4は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100による第2太陽光発電出力の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。以下、図4のフローに沿って、太陽光発電出力推定装置100が第2太陽光発電出力を推定する処理について説明する。まず、第1共分散算出部120は、第1太陽光発電設備を選択する(ステップS1)。
【0063】
具体的には、ステップS1では、第1共分散算出部120が、記憶部180の場所情報データ181を参照して、発電出力の推定対象の需要家である第2需要家との距離が、予め定められた距離以内であって推定の際に基準となる太陽光発電設備202を有する第1需要家の太陽光発電設備202を第1太陽光発電設備として選択する。なお、このステップS1は、発電出力推定部140により行われて、結果が第1共分散算出部120に通知されてもよい。
【0064】
図5は、本実施の形態の場所情報データ181により示される各需要家の太陽光発電設備202の地理的位置を模式的に示す図である。図5では、各需要家の太陽光発電設備202の地理的位置が当該需要家の地理的位置と一致すると仮定している。図5では、需要家200-i(i=1,2,…,8)の太陽光発電設備202を、PViとして示している。例えば、PV1は、需要家200-1の太陽光発電設備202であり、PV2は、需要家200-2の太陽光発電設備202である。実線の枠で示したPV1,PV3は、それぞれ需要家200-1,200-3の太陽光発電設備202であり、発電出力が計測されている。破線の枠で示したPV2などは、それぞれ需要家200-2など発電出力が計測されていない太陽光発電設備202である。
【0065】
図5の範囲301は、需要家200-1の太陽光発電設備202であるPV1を中心とした上記予め定められた距離を半径とする円であり、範囲301内の需要家の太陽光発電設備202の発電出力の推定に、PV1の発電出力を用いることができる。同様に、図5の範囲302は、需要家200-3の太陽光発電設備202であるPV3を中心とした上記予め定められた距離を半径とする円であり、範囲302内の需要家の太陽光発電設備202の発電出力の推定に、PV3の発電出力を用いることができる。したがって、例えば、需要家200-2の太陽光発電設備202であるPV2が発電出力の推定対象として設定されている場合、PV2は範囲301内でありかつ範囲302内であるため、PV1に対応する需要家200-1とPV3に対応する需要家200-3との両方が第1需要家の候補となる。このように、複数の第1需要家の候補が存在する場合には、推定対象のPV2に近い方の需要家である需要家200-2が第1需要家として選択される。あるいは、複数の第1需要家の候補の計測データを合算して使うことにしてもよく、その場合は、複数の需要家が第1需要家として選択される。
【0066】
図6は、本実施の形態の発電出力の推定対象の太陽光発電設備202と推定に使用する太陽光発電設備202との対応を示す図である。第1共分散算出部120は、発電出力の推定のたびに、ステップS1を行ってもよいが、図6に示すように、発電出力の推定対象の太陽光発電設備202ごとに、ステップS1で選択した太陽光発電設備202との対応を算出データ185に設備対応データとして保持しておき、設備対応データに記録されている太陽光発電設備202を推定対象とするときには、算出データ185の設備対応データを読み出すことでステップS1の処理を省略してもよい。この場合も、第1共分散算出部120は、例えば、一定時間以上経過した場合に、ステップS1を実施することで算出データ185に設備対応データを更新してもよい。
【0067】
図4の説明に戻る。ステップS1の後、第1共分散算出部120は、第1期間での第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要を取得する(ステップS2)。詳細には、第1共分散算出部120は、記憶部180に格納されている太陽光発電出力データ182内の第1需要家の太陽光発電設備202の発電出力である第1太陽光発電出力の時系列データを参照し、日射強度が強い期間を探索する。例えば、第1共分散算出部120は、第2太陽光発電出力を推定する日の前日のうち、第1太陽光発電出力が大きい6時間から10時間程度の期間を探索する。そして、第1共分散算出部120は、探索した期間を第1期間として設定する。なお、第1共分散算出部120は、上記の期間(例えば、第2太陽光発電出力を推定する日の前日)の中から、第1期間を探索するのではなく、上記の期間自体を探索してから、当該期間の中から第1期間を探索することにしてもよい。なお、上述したとおり、この第1太陽光発電出力が大きい6時間から10時間程度の期間の探索を行わずに任意の方法で第1期間を設定してもよい。第1共分散算出部120は、取得した第1期間での第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを保持するとともに、過積載推定部150へ出力する。
【0068】
次に、過積載推定部150は、移動窓内のN点の時刻の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを用いて過積載判定係数を計算する(ステップS3)。Nは2以上の整数であり、例えば3である。Nの値は、3に限定されず、ユーザにより設定可能である。次に、過積載推定部150は、第1期間のすべての時間帯の過積載判定係数の計算が終了したか否かを判断する(ステップS4)。第1期間のすべての時間帯の過積載判定係数の計算が終了していない場合(ステップS4 No)、過積載推定部150は、移動窓の位置を変更し(ステップS5)、ステップS3からの処理を繰り返す。
【0069】
図7は、本実施の形態の移動窓の一例を示す図である。図7では、横軸は時間を示し縦軸は有効電力を示している。図7に示した例では、データ401における丸で示した点は、第1太陽光発電出力PPV1(t)の時系列データを示し、データ402における三角形で示した点は、第2需要家の残余需要P(t)の時系列データを示している。図7に示した例では、第1太陽光発電出力PPV1(t)および第2需要家の残余需要P(t)は30分ごとのデータであり、時間窓である移動窓403内には、第1太陽光発電出力PPV1(t)および第2需要家の残余需要P(t)のそれぞれ3点のデータが含まれている。また、図7に示した例では、第1期間は、ある日の7時から16時半(正確には、16時半のデータは16時半から17時(ただし、17時は含まず)の平均値であるため、17時の直前)までである。過積載推定部150は、初回のステップS3では、移動窓403内の3点ずつのデータを用いて、過積載判定係数を計算する。上述したように、ここでは、過積載判定係数は、例えば、第1太陽光発電出力PPV1(t)と第2需要家の残余需要P(t)との相関係数である。2回目のステップS3では、移動窓404に示すように、移動窓の位置を1点分移動させて、移動窓404内の3点ずつのデータを用いて、過積載判定係数を計算する。
【0070】
このように、過積載推定部150は、第1期間内の時刻ごとに、当該時刻を含む時間窓を順次移動させることで、時刻ごとに過積載判定係数を算出する。過積載判定係数に対応する時刻は、例えば、対応する時間窓の中心の時刻である。
【0071】
図4の説明に戻る。第1期間のすべての時間帯の過積載判定係数の計算が終了した場合(ステップS4 Yes)、過積載推定部150は、過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在するか否かを判断する(ステップS6)。図7に示した例では、過積載推定部150は、移動窓の位置を1点ずつ移動させて過積載判定係数を計算することを繰り返し、移動窓405内の3点ずつのデータを用いた過積載判定係数の計算を終了すると、ステップS4でYesと判定する。過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在する場合(ステップS6 Yes)、第2推定方法により第2太陽光発電出力の推定が行われ、過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在しない場合(ステップS6 No)、第1推定方法により第2太陽光発電出力の推定が行われる。第1推定方法による第2太陽光発電出力の推定処理は、ステップS11~ステップS12の処理であり、第2推定方法による第2太陽光発電出力の推定処理は、ステップS7~ステップS10の処理である。このように、本実施の形態の過積載推定部150は、過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在する否かにより、第2太陽光発電設備が過積載か否かを判定する。そして、第2太陽光発電設備が過積載でないと判定された場合には、第1推定方法より第2太陽光発電出力の推定が行われ、第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合には、第2推定方法より第2太陽光発電出力の推定が行われる。
【0072】
図8は、本実施の形態の過積載判定係数の計算結果の一例を示す図である。図8に示した例では、過積載推定部150は、過積載判定係数として第1太陽光発電出力PPV1(t)と第2需要家の残余需要P(t)との相関係数を計算している。図8では、横軸は時間を示し縦軸は相関係数を示している。計算結果406における各ひし形の点は、図7に示した第1太陽光発電出力PPV1(t)と第2需要家の残余需要P(t)との相関係数を示している。図8に示した閾値407は、ステップS6で用いられる閾値であり、発電出力の推定対象の太陽光発電設備202が過積載であるか否かの判定に用いられる閾値である。ここでは、閾値を0.9に設定しているが、閾値は相関が高いことを示す値に設定さればよく0.9に限定されない。図8に示した例では、8時半から13時半までの期間で相関係数が閾値を下回っている。このように、相関係数が閾値を下回る場合、過積載推定部150は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判定して第2推定方法による第2太陽光発電出力の推定処理を開始する。なお、図4に示したステップS6では、相関係数がN回連続して閾値を下回った場合にYesと判定し、相関係数が連続して閾値を下回る回数がN回未満の場合にはステップS6でNoと判定するようにしてもよい。また、第1期間内に、相関係数が閾値を下回る回数が合計でN回以上の場合にはステップS6でYesと判定し、相関係数が閾値を下回る回数が合計でN回未満の場合にはステップS6でNoと判定するようにしてもよい。Nは1以上の整数であり、ユーザにより設定可能である。
【0073】
図4の説明に戻る。ステップS6でYesの場合、過積載推定部150は、過積載判定係数が閾値を最初に下回る直前の時刻tと閾値を最後に上回った直後の時刻tを記録する(ステップS7)。第1時刻である時刻tは、相関係数が閾値を下回る時間帯の直前の時刻であり、第2時刻である時刻tは、相関係数が閾値を下回る時間帯の直後の時刻である。過積載推定部150は、記憶部180の算出データ185に一時的に時刻tおよび時刻tを記録してもよいし、記憶部180の過積載推定データ184として、発電出力の推定対象の太陽光発電設備202の識別情報とともに時刻tおよび時刻tを記録してもよい。なお、前者の場合には、過積載推定部150は、記憶部180の過積載推定データ184に、発電出力の推定対象の第2需要家の太陽光発電設備202の識別情報を記憶部180の過積載推定データ184として記録する。過積載推定部150は、時刻tおよび時刻tを記録すると、第1共分散算出部120へ、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であるか否かの判定結果を通知する。詳細には、過積載推定部150は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示す判定結果を、第1共分散算出部120、第2共分散算出部130および発電出力推定部140へ通知する。
【0074】
なお、第1期間における日射強度がそれほど強くない場合には、ステップS6でNoと判断されても、実際には第2需要家の太陽光発電設備202が過積載の場合がある。例えば、冬季などでは第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であっても、第2太陽光発電出力が飽和しない場合も考えられる。このような場合には、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であっても第1推定方法によって第2太陽光発電出力を推定しても推定精度は低下しない。つまり、本実施の形態における過積載であるか否かの判定は、実際に過積載である否かの判定ではなく、過積載の太陽光発電設備202として扱って第2太陽光発電出力を推定するか否かの判定を示す。なお、第1期間として日射強度が十分に強い期間を選択すれば、第2需要家の太陽光発電設備202が実際に過積載であるか否かを判定することができる。
【0075】
例えば、図8に示した例では、閾値407を下回る時間帯である飽和時間帯408は、発電出力の推定対象の第2需要家の太陽光発電設備202が飽和していると推定される時間帯である。図8に示した例では、ステップS7において、飽和時間帯408の直前の時刻tと直後の時刻tとが記録される。
【0076】
図4の説明に戻る。ステップS7の後、太陽光発電出力推定装置100は、t≦t、および、t≧tの時間帯の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを利用して、係数αを推定する(ステップS8)。詳細には、第1共分散算出部120は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示す判定結果の通知を受けると、記憶部180の算出データ185または過積載推定データ184に記録されている時刻tおよび時刻tを読み出し、t≦t、および、t≧tの時間帯の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要を利用して、第1共分散および遅延時間を算出し、記憶部180の算出データ185に記録する。第2共分散算出部130は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でないことを示す判定結果の通知を受けると、記憶部180の算出データ185から遅延時間を読み出し、記憶部180の太陽光発電出力データ182から第1期間と第1期間から遅延時間ずれた第2期間との第1太陽光発電出力を抽出して読み出す。そして、第2共分散算出部130は、太陽光発電出力データ182から読み出した第1太陽光発電出力のうち、t≦t、および、t≧tの時間帯に対応するデータを用いて第2共分散を算出し、記憶部180の算出データ185に記録する。そして、発電出力推定部140は、算出データ185から第1共分散および第2共分散を読み出し、読み出した第1共分散および第2共分散を用いて、上述した式(5)により係数αを推定し、係数αを過積載推定部150へ通知する。
【0077】
次に、過積載推定部150は、飽和値を設定する(ステップS9)。詳細には、過積載推定部150は、発電出力推定部140から通知された係数αとステップS2で取得した第1太陽光発電出力とステップS7で記録した時刻tおよび時刻tとを用いて、時刻tにおける第1太陽光発電出力に係数αを乗算した値であるα・PPV1(t)と、時刻tにおける第1太陽光発電出力に係数αを乗算した値であるα・PPV1(t)とを算出する。そして、以下の式(7)により第2太陽光発電出力の飽和値PPV2 maxを推定する。
【0078】
【数7】
【0079】
すなわち、過積載推定部150は、α・PPV1(t)とα・PPV1(t)とのうち大きい方の値を第2太陽光発電出力の飽和値の推定値とする。例えば、過積載推定部150は、上記推定値を飽和値として記憶部180の過積載推定データ184に記録することで、第2需要家の太陽光発電設備202の飽和値を設定する。なお、ここでは、過積載推定部150が飽和値を推定して設定するようにしたが、この処理は発電出力推定部140によって行われてもよい。
【0080】
図9は、本実施の形態の飽和値の推定結果の一例を示す図である。図9に示したデータ409における各丸は、各時刻におけるα・PPV1(t)を示す。すなわち、第1太陽光発電出力を用いて第1推定方法によって推定される第2太陽光発電出力に相当する。なお、係数αの算出にt≦t、および、t≧tの時間帯のデータを使用している点で第1推定方法とは異なっているが、t≦t、および、t≧tの時間帯に限れば、α・PPV1(t)は、第1推定方法によって推定された第2太陽光発電出力に相当する。図9に示すように、データ409に示したα・PPV1(t)は飽和時間帯408において飽和していると推定される。このため、本実施の形態では、飽和時間帯408の直前の時刻tにおけるデータ410と直後の時刻tにおけるデータ411とのうち大きい方の値を飽和値の推定値とする。図9に示した例では、時刻tにおけるデータ411の方が大きいため、時刻tにおけるデータ411の値であるα・PPV1(t)が飽和値PPV2 maxに設定される。
【0081】
図10は、本実施の形態の過積載推定データ184の一例を示す図である。図10に示した例では、過積載推定データ184は、過積載と判定された第2需要家の太陽光発電設備202(図10では、過積載PVと記載)の識別情報と、飽和値とを含む。上述したように、過積載推定データ184に時刻tおよび時刻tを含めてもよい。なお、飽和値は1つの太陽光発電設備202に一度決めれば短期間では変化しないが、時刻tおよび時刻tは、第1期間として選択する日によって変わる一時的なデータであるため、上述したように過積載推定データ184に含めずに算出データ185に一時的に記録してもよい。
【0082】
図4の説明に戻る。ステップS9の後、発電出力推定部140は、飽和値、係数αおよび第1太陽光発電出力を用いて第2需要家の発電出力を推定し(ステップS10)、第2太陽光発電出力の推定処理が終了する。具体的には、ステップS10では、発電出力推定部140は、推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、記憶部180の過積載推定データ184から飽和値を読み出す。発電出力推定部140は、読み出した推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力および飽和値と、ステップS8で推定した係数αとを用いて、以下の式(8)により、第2太陽光発電出力を推定する。すなわち、推定時点の時刻ごとに、α・PPV1(t+τ)と飽和値とのうち小さい方を第2太陽光発電出力の推定値とする。なお、遅延時間τは0と近似することにしてもよい。
【0083】
【数8】
【0084】
一方、過積載判定係数が閾値を下回る時刻が存在しない場合(ステップS6 No)、太陽光発電出力推定装置100はステップS11~ステップS12により第2太陽光発電出力を推定し、第2太陽光発電出力の推定処理が終了する。
【0085】
ステップS11では、太陽光発電出力推定装置100は、すべての時間帯の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを利用して係数αを推定する。詳細には、第1共分散算出部120は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でないことを示す判定結果の通知を受けると、ステップS2で取得した第1期間での第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要のうちすべての時間帯の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを利用して、第1共分散および遅延時間を算出し、記憶部180の算出データ185に記録する。第2共分散算出部130は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でないことを示す判定結果の通知を受けると、記憶部180の算出データ185から遅延時間を読み出し、記憶部180の太陽光発電出力データ182から第1期間と第1期間から遅延時間ずれた第2期間との第1太陽光発電出力を読み出して、読み出したデータを用いて第2共分散を算出し、記憶部180の算出データ185に記録する。そして、発電出力推定部140は、算出データ185から第1共分散および第2共分散を読み出し、読み出した第1共分散および第2共分散を用いて、上述した式(5)により係数αを推定する。
【0086】
ステップS12では、係数αおよび第1太陽光発電出力を用いて第2需要家の第2太陽光発電出力を推定する。詳細には、発電出力推定部140は、推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、読み出した第1太陽光発電出力とステップS11で推定した係数αとを用いて、上述した式(6)により第2需要家の第2太陽光発電出力を推定する。
【0087】
なお、図4に示した例では、第2太陽光発電出力の推定のたびに、係数αを推定しているが、係数αの推定処理(飽和値の設定も含む)と、係数αを用いた第2太陽光発電出力の推定処理との実施タイミングを個別に設定してもよい。例えば、係数αの推定処理であるステップS1~ステップS9の処理またはステップS1~ステップS11の処理は、1週間ごとに行い、第2太陽光発電出力の推定処理は、一日おきに行うなどであってもよい。また、第1太陽光発電出力のリアルタイムデータが得られる場合には、例えば、係数αの推定は前日までに過去のデータを用いて行っておき、リアルタイムで得られた第1太陽光発電出力を用いて第2太陽光発電出力の推定処理を行ってもよい。
【0088】
次に、第1共分散算出部120、第2共分散算出部130および発電出力推定部140の動作について説明する。図11は、第1共分散算出部120における第1共分散算出処理手順の一例を示すフローチャートである。図11に示すように、まず、第1共分散算出部120は、第1期間での第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを取得する(ステップS21)。具体的には、第1共分散算出部120は、記憶部180の太陽光発電出力データ182のうち第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データを読み出すことで、第1期間での第1太陽光発電出力を取得し、記憶部180の残余需要データ183のうち第1期間における第2需要家の残余需要の時系列データを読み出すことで、第1期間での第2需要家の残余需要を取得する。
【0089】
次に、第1共分散算出部120は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であるか否かを判断する(ステップS22)。具体的には、第1共分散算出部120は、過積載推定部150から通知された判定結果が、発電出力の推定対象の第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示している場合、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判断する。
【0090】
第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でない場合(ステップS22 No)、第1共分散算出部120は、後述するステップS24へ処理を進める。第2需要家の太陽光発電設備202が過積載である場合(ステップS22 Yes)、第1共分散算出部120は、t≦t、および、t≧tの時間帯のデータを抽出する(ステップS23)。詳細には、第1共分散算出部120は、ステップS21で取得した第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとからt≦t、および、t≧tの時間帯のデータを抽出する。
【0091】
次に、第1共分散算出部120は、第1共分散を算出する(ステップS24)。詳細には、第1共分散算出部120は、第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとの共分散を第1共分散として算出し、記憶部180の算出データ185に書き込む。ステップS24では、第1共分散算出部120は、ステップS23を経由している場合にはステップS23で抽出した第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとを用いて第1共分散を算出し、ステップS23を経由していない場合には、第1期間のすべての第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとを用いて第1共分散を算出する。このように、第1共分散算出部120は、第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に、第1期間のうち時刻t以前の時刻および第1期間のうち時刻t以降の時刻の第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとを用いて第1共分散を算出する。第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に算出される第1共分散を第3共分散とも呼ぶ。
【0092】
ステップS24の後、第1共分散算出部120は、遅延時間を取得し(ステップS25)、記憶部180に算出データ185として格納し、第1共分散の算出処理を、終了する。ステップS25では、第1共分散算出部120は、ステップS23を経由している場合にはステップS23で抽出した第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとを用いて遅延時間を算出し、ステップS23を経由していない場合には、第1期間のすべての第1太陽光発電出力の時系列データと第2需要家の残余需要の時系列データとを用いて遅延時間を算出する。
【0093】
ステップS25では、詳細には、例えば、発電出力の推定対象である第2太陽光発電設備の設置地点と、第1太陽光発電設備の設置地点との間の遅延時間を算出し、記憶部180に算出データ185として格納する。この遅延時間は、上述したように第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との間を日射変動が伝播する時間である。第1共分散算出部120は、例えば、第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要との時系列データの共分散関数Cov[PPV1(t),P(t+τ)]が最小値(符号が「-」かつ絶対値が最大値)をとるときのタイムラグτに-1を乗じて遅延時間τを算出する。
【0094】
次に、第2共分散の算出処理について説明する。図12は、本実施の形態の第2共分散算出部130による第2共分散の算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0095】
第2共分散算出部130は、記憶部180に格納されている算出データ185内の遅延時間τを読み出すことで遅延時間τを取得する(ステップS31)。次に、第2共分散算出部130は、遅延時間τずれた2つの第1太陽光発電出力の時系列データを取得する(ステップS32)。つまり、第2共分散算出部130は、第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと、第1期間より遅延時間τずれた第2期間における第1太陽光発電出力の時系列データとを、記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出して取得する。遅延時間τが0の場合は、遅延時間τずれた2つの第1太陽光発電出力は同一となるため、第2共分散算出部130は、記憶部180の太陽光発電出力データ182から第1期間の第1太陽光発電出力を読み出せばよい。
【0096】
次に、第2共分散算出部130は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であるか否かを判断する(ステップS33)。具体的には、第2共分散算出部130は、過積載推定部150から通知された判定結果が、発電出力の推定対象の第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示している場合、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判断する。
【0097】
第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でない場合(ステップS33 No)、第2共分散算出部130は、後述するステップS35へ処理を進める。第2需要家の太陽光発電設備202が過積載である場合(ステップS33 Yes)、第2共分散算出部130は、t≦t、および、t≧tの時間帯のデータを抽出する(ステップS34)。詳細には、第2共分散算出部130は、ステップS32で取得した第1期間での第1太陽光発電出力の時系列データのうち、t≦t、および、t≧tの時間帯のデータを抽出し、ステップS32で取得した第2期間の第1太陽光発電出力の時系列データのうちt≦t+τs、および、t≧t+τの時間帯のデータを抽出する。
【0098】
次に、第2共分散算出部130は、第2共分散を算出し(ステップS35)、算出した第2共分散を算出データ185に書き込み、第2共分散の算出処理を終了する。詳細には、ステップS35では、第2共分散算出部130は、遅延時間τずれた2つの第1太陽光発電出力の時系列データの自己共分散である第2共分散を算出する。具体的には、第2共分散算出部130は、ステップS34を経由している場合には、抽出された2つの第1太陽光発電出力の時系列データの自己共分散を第2共分散として算出し、ステップS34を経由していない場合には、ステップS32で取得された第1期間における第1太陽光発電出力の時系列データと第2期間における第1太陽光発電出力の時系列データとの自己共分散を第2共分散として算出する。このように、第2共分散算出部130は、第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に、第1期間のうち時刻t以前の時刻および第1期間のうち時刻t以降の時刻の第1太陽光発電出力の時系列データと当該第1太陽光発電出力の時系列データから遅延時間ずれた第1太陽光発電出力の時系列データとを用いて第2共分散を算出する。第2太陽光発電設備が過積載であると判定された場合に算出される第2共分散を第4共分散とも呼ぶ。
【0099】
次に、発電出力推定部140における動作について説明する。図13は、本実施の形態の発電出力推定部140における処理手順の一例を示すフローチャートである。発電出力推定部140は、まず、第1共分散および第2共分散を用いて係数αを算出する(ステップS41)。詳細には、発電出力推定部140は、記憶部180の算出データ185から第1共分散および第2共分散を読み出し、読み出した第1共分散および第2共分散を用いて、上述した式(5)により係数αを算出する。
【0100】
次に、発電出力推定部140は、遅延時間を算出する(ステップS42)。詳細には、発電出力推定部140は、推定時点における第1太陽光発電設備の設置地点と第2太陽光発電設備の設置地点との遅延時間を算出する。発電出力推定部140は、記憶部180に算出データ185として格納されている遅延時間を推定時点における遅延時間として利用してもよいし、推定時点における気象データなどを反映して遅延時間を更新することにしてもよい。例えば、発電出力推定部140は、気象データに含まれる風向風速データから雲が通過する時間を算出し、その算出した値を用いて遅延時間を更新してもよいし、衛星画像等を用いて遅延時間を更新してもよいし、これら以外の方法により気象データを用いた更新を行ってもよい。また、遅延時間を0と近似することにしてもよい。
【0101】
次に、発電出力推定部140は、推定対象の時刻すなわち推定時点から遅延時間ずれた時刻の第1太陽光発電出力を取得する(ステップS43)。詳細には、発電出力推定部140は、記憶部180の太陽光発電出力データ182内の第1太陽光発電設備に対応するデータのうち推定時点から遅延時間ずれた時刻のデータを取得する。
【0102】
次に、発電出力推定部140は、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であるか否かを判断する(ステップS44)。具体的には、発電出力推定部140は、過積載推定部150から通知された判定結果が、発電出力の推定対象の第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であることを示している場合、第2需要家の太陽光発電設備202が過積載であると判断する。
【0103】
第2需要家の太陽光発電設備202が過積載である場合(ステップS44 Yes)、発電出力推定部140は、時刻ごとに推定時点から遅延時間ずれた時刻の第1太陽光発電出力に係数αを乗算した値と飽和値とのうち小さい方を推定対象の太陽光発電設備202の発電出力の推定値とすることで、推定対象の太陽光発電設備202の発電出力を推定し(ステップS45)、処理を終了する。ステップS45では、詳細には、発電出力推定部140は、記憶部180の過積載推定データ184から対応する飽和値を読み出し、読み出した飽和値と、ステップS43で取得した推定時点から遅延時間ずれた時刻の第1太陽光発電出力とステップS41で算出した係数αとを用いて、上述した式(8)により第2太陽光発電出力を推定する。
【0104】
第2需要家の太陽光発電設備202が過積載でない場合(ステップS44 No)、発電出力推定部140は、第1太陽光発電出力に係数αを乗算して、推定対象の太陽光発電設備202の発電出力を推定し(ステップS46)、処理を終了する。詳細には、発電出力推定部140は、ステップS43で取得した推定時点から遅延時間ずれた時刻の第1太陽光発電出力とステップS41で算出した係数αとを用いて、上述した式(6)により第2太陽光発電出力を推定する。
【0105】
以上のような処理により、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、過積載の太陽光発電設備202を判別することが可能となり、さらに、過積載の太陽光発電設備202の発電出力を精度良く推定することができる。
【0106】
次に、本実施の形態の表示部160によって表示される表示画面に例について説明する。本実施の形態の表示部160は、第2太陽光発電出力の推定結果、第2太陽光発電出力の推定に用いられたデータ、過積載の太陽光発電設備202に関する情報などを表示することができる。例えば、表示部160は、第2太陽光発電出力の推定結果、過積載推定部150による判定結果および過積載判定係数のうち少なくとも1つを表示する。
【0107】
図14は、本実施の形態の表示部160によって表示される第2太陽光発電出力の推定結果の一例を示す図である。図14では、表示部160によって表示される表示画面の一例として、過積載の太陽光発電設備202の第2太陽光発電出力の推定結果の表示画面を示している。図14では横軸は時間を表し、縦軸は有効電力を表している。図14に示した例では、飽和値が1.83kWであり、9時30分から13時までの間は第2太陽光発電出力の推定結果が飽和値となっている。図14に示すように、例えば、第2太陽光発電出力の推定結果は、需要家#2といった推定対象の需要家200の識別情報とともに表示される。
【0108】
図15は、本実施の形態の表示部160によって表示される第2太陽光発電出力の推定結果の一例を示す図である。図15では横軸は時間を表し、縦軸は有効電力または相関係数を表している。図15に示した例では、表示部160は、係数αの推定において入力データとして用いられた第1太陽光発電出力(基準太陽光発電出力)と第2需要家の残余需要(推定対象需要家の残余需要)が表示されるとともに、これらの相関係数が表示されている。また、図15に示した例では、推定対象の需要家200の識別情報と基準として用いられる需要家200の識別情報とが表示されている。
【0109】
また、表示部160は、図9に示したように、係数αの推定に用いられた第1太陽光発電出力に係数αを乗算した結果を、表示してもよく、このときに、図9に示したように、時刻tおよび時刻tにおける値が判別できるように丸で囲むなどにより、強調表示をしてもよい。強調表示の方法は、色を変えたりマークを変えたりといった方法でもよく、丸で囲む方法に限定されない。
【0110】
図16は、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判定結果を表示する領域を選択するための画面の一例を示す図である。表示部160は、過積載の太陽光発電設備202の判定結果を表示するために、例えば、図16に例示した選択画面を表示し、入力欄501~503を用いて、ユーザからの入力を受け付ける。入力欄501は、全域表示を行う場合に押下される選択ボタンであり、入力欄502は、都道府県を選択する際に利用されるプルダウンメニュー形式の入力欄である。入力欄503は、ユーザによって住所が入力される入力欄503である。ユーザにより、入力欄501が押下される、または入力欄502においてプルダウンメニュー形式で都道府県が選択される、または入力欄503に住所が入力されてエンターキーなどが押下されることによって、表示される地理的領域が選択される。なお、全域は、日本など国全体であってもよいし、系統運用者の管轄する領域の全域であってもよい。また、入力欄502においてプルダウンメニュー形式で都道府県が選択されると、その後に市区町村を選択するためのプルダウンメニュー形式の入力欄が表示され、県全域を表示するか市区町村単位で表示するかを選択できるようにしてもよい。なお、入力欄501~503の入力の受付は、入力受付部170が実施する。
【0111】
図17は、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判定結果の表示画面の一例を示す図である。図17に示した例では、地理的領域としてA県が選択された場合の表示画面の一例を示している。図17に示した例では、表示部160は、過積載以外の太陽光発電設備202(図17では、PV(過積載以外)と記載)の地理的位置に丸印で示し、過積載の太陽光発電設備202(図17では、過積載PVと記載)の地理的位置をひし形で示している。表示部160は、記憶部180の場所情報データ181および過積載推定データ184を用いることで、図17に例示したように、各太陽光発電設備202を、過積載とそれ以外とを区別して表示することができる。また、図17の領域504で示したように、ユーザから領域の選択を受け付けることで、表示部160は、領域504内を拡大表示するようにしてもよい。なお、領域504の選択の受付は、入力受付部170が実施する。
【0112】
図18は、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判定結果の拡大した表示画面の一例を示す図である。図18では、図17に示した領域の一部を拡大し、道路などを示す地図情報と判定結果とを重ね合わせて表示した画面を示している。このように、表示部160は、過積載と判定された太陽光発電設備202の位置と過積載と判定されていない太陽光発電設備202の位置とを異なる図形により地図上に表示することができる。また、図17および図18では、上部に表示されている領域の住所などを示す情報と、全PV数と過積載PV数とが示されている。全PV数は選択された領域内の太陽光発電設備202の全数であり、過積載PV数は選択された領域内の太陽光発電設備202のうち過積載と判定された太陽光発電設備202の数である。このように、表示部160は、選択された地域ごとに、過積載と判定された太陽光発電設備202の数を表示することができる。図17および図18に示したように、過積載の太陽光発電設備202の判定結果を表示することで、系統運用者はどの太陽光発電設備202が過積載であるかを把握したり、過積載の太陽光発電設備202の数がどの程度であるかを把握したりすることができる。
【0113】
なお、図17および図18に示した例では、地図上に判定結果を示したが、表示部160は、領域ごとの過積載PV数をテキストで表示してもよい。図19は、本実施の形態の過積載の太陽光発電設備202の判定結果をテキストで表示した表示画面の一例を示す図である。図19に示すように、領域ごとの全PV数および過積載PV数をテキストで表示してもよい。また、図示は省略するが、表示部160は、領域ごとの全PV数および過積載PV数をグラフ表示してもよい。
【0114】
なお、図14図19に示した表示画面は、一例であり、表示画面における各表示項目の表示位置、PV(過積載以外)および過積載PVを示すマークの形状、表示する項目、入力の受付方法などは、図14図19に示した例に限定されない。
【0115】
なお、以上では、1つの第2需要家の第2太陽光発電設備の発電出力を1つの第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定する例を説明した。過積載の第2太陽光発電設備については個別に発電出力を推定することになるが、過積載ではない複数の第2太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)を1つの第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定してもよい。また、過積載ではない複数の第2太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)または1つの第2太陽光発電設備の発電出力を、複数の第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力の総量(合算値)を用いて推定してもよい。例えば、柱上トランス単位などの配電区間単位、配電線単位、送電線単位などのように、複数の需要家の太陽光発電設備202の発電出力の総量を推定する必要がある場合、発電出力の計測が行われていない需要家の発電出力の総量を、同様に推定することができる。
【0116】
図20は、本実施の形態における複数の需要家200の太陽光発電設備202を推定対象とする場合の係数αの一例を示す図である。第2太陽光発電設備が複数の第2太陽光発電設備の発電出力を複数の第1需要家の第1太陽光発電設備の発電出力を用いて推定する場合、図20に示したように複数の太陽光発電設備の組み合わせごとに係数αが算出される。なお、このような場合には、遅延時間は、第1太陽光発電設備の設置地点の重心的位置と第2太陽光発電設備の設置地点の重心的位置との間を日射変動が伝播する時間となる。なお、遅延時間を0としてもよい。図20では、配電区間ごとに係数αを定めて配電区間ごとに発電出力を推定する例を示しているが、需要家200を統合する単位はこれに限定されない。
【0117】
また、上述したように、第1太陽光発電出力としては、全量買取契約の対象となっている太陽光発電設備202のスマートメータの計測値、PCSまたはHEMSによる計測値などの計測値を用いることができる。第1太陽光発電出力はこれに限定されず、計測データである第1太陽光発電出力を用いて第2太陽光発電出力を推定した後、推定された第2太陽光発電出力を第1太陽光発電出力として用いて、さらに別の太陽光発電設備の発電出力を推定してもよい。これを繰り返すことで、例えば、推定対象の太陽光発電設備202から予め定められた距離内に発電出力が計測されている太陽光発電設備202が存在しない場合であっても、推定対象の太陽光発電設備202の発電出力を推定することができる。すなわち、第1太陽光発電出力は、計測値であってもよいし推定値であってもよい。
【0118】
また、第1太陽光発電出力の代わりに日射強度の実測値または推定値を用いてもよい。この場合、日射強度の実測値または推定値は、第太陽光発電設備から予め定められた距離内のものである。すなわち、第1太陽光発電出力は、日射強度を示す日射強度情報の一例である。なお、衛星画像を利用した日射強度推定値を利用する場合、日射強度推定値は衛星画像の解像度に依存するX[km]×Y[km]のメッシュ単位で推定されることが多い。このため、衛星画像を利用した日射強度推定値を利用する場には、推定対象の第2太陽光発電設備が含まれるメッシュの日射強度推定値を利用する。
【0119】
以上で述べたように、本実施の形態では、発電出力推定部140は、日射強度を示す日射強度情報を用いて太陽光発電設備202の発電出力を推定し、過積載推定部150は、日射強度情報と、第2太陽光発電設備が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、過積載判定係数を用いて、太陽光発電設備が過積載であるか否かを判定する。また、本実施の形態の太陽光発電出力推定プログラムは、太陽光発電設備202から予め定められた距離内の日射強度を示す日射強度情報を用いて太陽光発電設備202の発電出力を推定するステップと、日射強度情報と太陽光発電設備202が設置された需要家のみかけ上の消費電力である残余需要との相関を示す過積載判定係数を算出し、過積載判定係数を用いて、太陽光発電設備202が過積載であるか否かを判定するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0120】
なお、全量買取契約対象の第1太陽光発電設備または計測器206により発電出力が計測されている第1太陽光発電設備が、過積載であることも考えられるが、これらについては、第1太陽光発電出力の計測値が飽和するか否かに基づいて過積載であるか否かを判定することができる。また、飽和値についても、計測値に基づいて推定することができる。過積載の太陽光発電設備202については、第1太陽光発電設備として用いないようにしてもよいし、飽和していない時間帯の第1太陽光発電出力だけを第2太陽光発電出力の推定に用いてもよい。
【0121】
また、太陽光発電出力推定装置100は、過去の複数日に関してそれぞれ推定した係数αの代表値(たとえば、中央値、平均値などの統計量)を算出し、代表値を用いてステップS9,S10,S12の処理を実施してもよい。代表値を用いることで、係数αの推定精度が向上し、これにより第2太陽光発電出力の推定精度が向上する。
【0122】
なお、冬季などでは、快晴日であっても日射強度があまり強くならない日があり、このような日では、過積載の第2太陽光発電設備であっても第2太陽光発電出力が飽和しない可能性がある。第2太陽光発電出力が飽和しない日は、過積載判定係数は閾値を下回らない。一方、係数αは、太陽光発電出力同士の比率であるため、一年を通して、大きくは変動しない。このことを利用し、過積載判定係数が閾値を下回らない日の第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを用いて係数αを推定して記憶しておき、記憶しておいた係数αと、日射強度の強い日における第1太陽光発電出力および第2需要家の残余需要とを用いて第2太陽光発電設備の飽和値を設定してもよい。すなわち、太陽光発電出力推定装置100は、日射強度の強い日における第1太陽光発電出力および第2需要家の残余需要を用いて図4に示した処理を実施する際に、ステップS8を実施せず、上記の記憶されている係数α(過積載判定係数が閾値未満とならない日のデータを用いて推定された係数α)を用いてステップS9,S10を実施するようにしてもよい。
【0123】
本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100は、以上の処理により、発電出力の推定対象の太陽光発電設備202が過積載であるか否かを推定することができ、さらに、過積載の太陽光発電設備202の発電出力を精度良く推定することができる。これにより、過積載の太陽光発電設備202を含む太陽光発電設備202の太陽光発電出力を高精度に推定することができる。
【0124】
実施の形態2.
次に、実施の形態2にかかる太陽光発電出力推定装置100について説明する。本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100の機能構成およびハードウェア構成は、実施の形態1の太陽光発電出力推定装置100と同様の構成である。ただし、第1共分散算出部120の動作が一部実施の形態1と異なる。実施の形態1と同様の機能を有する構成要素は実施の形態1と同一の符号を付して説明し、実施の形態1と重複する説明を省略する。以下、実施の形態1と異なる点を主に説明する。
【0125】
図21は、本実施の形態の太陽光発電出力推定装置100による第2太陽光発電出力の推定処理手順の一例を示すフローチャートである。太陽光発電出力推定装置100は、実施の形態1のステップS1と同様に、第1太陽光発電設備を選択する(ステップS51)。
【0126】
次に、太陽光発電出力推定装置100は、推定対象の太陽光発電設備の飽和値を設定済みであるか否かを判断する(ステップS52)。詳細には、第1共分散算出部120が、記憶部180の過積載推定データ184を参照して、推定対象の太陽光発電設備202の飽和値が過積載推定データ184に格納済みであるか否かを判断する。すなわち、第1共分散算出部120は、推定対象の太陽光発電設備202の飽和値を設定済みであるか否かを判断する。
【0127】
推定対象の太陽光発電設備202の飽和値を設定済みでない場合(ステップS52 No)、太陽光発電出力推定装置100は、過積載判定を含む推定処理を実施する(ステップS56)。過積載判定を含む推定処理は、実施の形態1の図4に示したステップS2~ステップS12の処理である。
【0128】
推定対象の太陽光発電設備202の飽和値を設定済みである場合(ステップS52 Yes)、第1共分散算出部120は、飽和が生じない第1期間を選択し、第1期間における第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要を取得する(ステップS53)。詳細には、第1共分散算出部120は、例えば、第1太陽光発電出力の最大値が第1閾値以上であり、第2閾値以下となる期間を第1期間として設定することで、第1期間を第2太陽光発電出力が飽和しない期間に設定する。なお、第2閾値は第1閾値より大きい。第1閾値は、雨天など日射強度が弱い日を第1期間から除外するように定められ、第2閾値は、例えば過去に算出された係数αの値に基づいて第2需要家の太陽光発電設備202の飽和値を超えないように決定される。または、日射強度の最大値が第3閾値以上であり第4閾値以下となる期間を第1期間として設定されてもよい。または、第1共分散算出部120は、実施の形態1と同様に第1期間を選択し、第1共分散算出部120および過積載推定部150により実施の形態1のステップS2~S6を実施し、ステップS6で過積載判定係数が閾値を下回る時刻があると判定された場合、第1期間を前回より日射強度の低い期間に設定しなおして、ステップS2~S6を実施する。そして、ステップS6で過積載判定係数が閾値を下回るまで第1の期間の変更とステップS2~S6を繰り返すことで、飽和が生じない第1期間を選択するようにしてもよい。または、過積載判定係数が閾値を下回る時刻のみを第1期間から除外することにしてもよい。
【0129】
ステップS53の後、実施の形態1のステップS11と同様に、ステップS54を実施する。すなわち、ステップS54では、第1期間のすべての時間帯のデータを用いて係数αの推定が行われる。そして、実施の形態1のステップS10と同様に、ステップS55を実施する。すなわち、発電出力推定部140は、推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力を記憶部180の太陽光発電出力データ182から抽出して読み出し、記憶部180の過積載推定データ184から飽和値を読み出す。そして、発電出力推定部140は、読み出した推定時点から遅延時間ずれた第1太陽光発電出力および飽和値と、ステップS54で推定した係数αとを用いて、推定時点の時刻ごとに、α・PPV1(t+τ)と飽和値とのうち小さい方を第2太陽光発電出力の推定値とする。なお、遅延時間τは0と近似することにしてもよい。
【0130】
このように、本実施の形態では、第1期間を、第2太陽光発電出力が飽和しない期間に設定することで、第1期間のすべての時間帯のデータを用いて係数αを推定する。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、発電出力の推定対象の太陽光発電設備202が過積載であるか否かを推定することができる。
【0131】
なお、過積載太陽光発電設備であることと、その飽和値とが需要家からの申請により電力会社によって管理されていることもある。この場合においても、飽和値の推定は必要ないものの、実施の形態1または実施の形態2で述べたように、過積載判定係数が閾値を下回らない時間帯または過積載判定係数が閾値を下回らない日を求めて、求めた時間帯のみまたは求めた日のみの第1太陽光発電出力と第2需要家の残余需要とを利用して係数αを推定することで第2太陽光発電出力の推定精度を向上させることができる。そして、その係数αを使って推定した第2太陽光発電出力と申請に基づく飽和値とを比較し、小さい方を、最終的な第2太陽光発電出力とすれば推定精度の向上を図ることができる。
【0132】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0133】
10 太陽光発電出力推定システム、100 太陽光発電出力推定装置、110 データ取得部、120 第1共分散算出部、130 第2共分散算出部、140 発電出力推定部、150 過積載推定部、160 表示部、170 入力受付部、180 記憶部、200-1~200-4,200-m,200-n 需要家、201 負荷、202 太陽光発電設備、203~205 スマートメータ、206 計測器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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