(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-03
(45)【発行日】2025-04-11
(54)【発明の名称】型締装置、射出成形機、および型締力調整方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20250404BHJP
B29C 45/66 20060101ALI20250404BHJP
B22D 17/26 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/66
B22D17/26 J
B22D17/26 Z
(21)【出願番号】P 2021139511
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】川北 聖人
(72)【発明者】
【氏名】森崎 基裕
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-197721(JP,A)
【文献】特開2017-109415(JP,A)
【文献】特開2013-006393(JP,A)
【文献】特開2006-015552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/66
B22D 17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金型が設けられる第1の型盤と、
第2の型盤と、
前記第1、第2の型盤の間に配置され第2の金型が設けられている第3の型盤と、
前記第1の型盤と前記第2の型盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記第2の型盤と前記第3の型盤の間に設けられ、クロスヘッドを有し、前記クロスヘッドを駆動することにより型開閉するように構成されているトグル機構と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、型締力調整を実施するとき、前記複数本のタイバーに螺合しているタイバーナットを型厚調整モータにより回転させて型厚を前記第1の金型と前記第2の金型の金型厚さよりも大きくする型厚増処理と、
前記第1、2の金型が離間した状態で前記クロスヘッドを金型がタッチすべきクロスヘッド位置である金型タッチ位置に駆動するクロスヘッド駆動処理と、
前記型厚調整モータを駆動して型厚を減じ前記第1の金型と前記第2の金型とを接するようにする型厚減処理と、を制御するようになっており、
前記型厚減処理において前記制御部が前記型厚調整モータを停止させるタイミングは、前記型厚調整モータの電流値
が既定時間の間、既定電流値を超えたことを検出したときとする、型締装置。
【請求項2】
前記第1の型盤は上可動盤、前記第2の型盤は下可動盤、そして前記第3の型盤は固定盤からなり、前記型締装置は竪型射出成形機用の型締装置である、請求項
1に記載の型締装置。
【請求項3】
トグル式型締装置と、
射出材料を射出する射出装置と、
制御部と、を備えた射出成形機であって、
前記トグル式型締装置は、第1の金型が設けられる第1の型盤と、
第2の型盤と、
前記第1、第2の型盤の間に配置され第2の金型が設けられている第3の型盤と、
前記第1の型盤と前記第2の型盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記第2の型盤と前記第3の型盤の間に設けられ、クロスヘッドを有し、前記クロスヘッドを駆動することにより型開閉するように構成されているトグル機構と、を備え、
前記制御部は、型締力調整を実施するとき、前記複数本のタイバーに螺合しているタイバーナットを型厚調整モータにより回転させて型厚を前記第1の金型と前記第2の金型の金型厚さよりも大きくする型厚増処理と、
前記第1、2の金型が離間した状態で前記クロスヘッドを金型がタッチすべきクロスヘッド位置である金型タッチ位置に駆動するクロスヘッド駆動処理と、
前記型厚調整モータを駆動して型厚を減じ前記第1の金型と前記第2の金型とを接するようにする型厚減処理と、を制御するようになっており、
前記型厚減処理において前記制御部が前記型厚調整モータを停止させるタイミングは、前記型厚調整モータの電流値
が既定時間の間、既定電流値を超えたことを検出したときとする、射出成形機。
【請求項4】
前記第1の型盤は上可動盤、前記第2の型盤は下可動盤、そして前記第3の型盤は固定盤からなり、前記射出成形機は竪型射出成形機である、請求項
3記載の射出成形機。
【請求項5】
第1の金型が設けられる第1の型盤と、
第2の型盤と、
前記第1、第2の型盤の間に配置され第2の金型が設けられている第3の型盤と、
前記第1の型盤と前記第2の型盤とを連結している複数本のタイバーと、
前記第2の型盤と前記第3の型盤の間に設けられ、クロスヘッドを有し、前記クロスヘッドを駆動することにより型開閉するように構成されているトグル機構と、
制御部と、を備え、
前記トグル機構のクロスヘッドを駆動すると型開閉するようになっており、
前記複数本のタイバーに螺合しているタイバーナットを型厚調整モータにより回転すると型厚が調整されるようになっている、トグル式型締装置において実施する型締力調整方法であって、
前記型締力調整方法は、前記型厚調整モータを駆動して型厚を前記第1の金型と前記第2の金型の金型厚さよりも大きくする型厚増処理と、
前記第1、2の金型が離間した状態で前記クロスヘッドを金型がタッチすべきクロスヘッド位置である金型タッチ位置に駆動するクロスヘッド駆動処理と、
前記型厚調整モータを駆動して型厚を減じ前記第1の金型と前記第2の金型とを接するようにする型厚減処理と、を備えており、
前記型厚減処理において前記制御部が前記型厚調整モータを停止させるタイミングは、前記型厚調整モータの電流値
が既定時間の間、既定電流値を超えたことを検出したときとする型締力調整方法。
【請求項6】
前記第1の型盤は上可動盤、前記第2の型盤は下可動盤、そして前記第3の型盤は固定盤からなり、竪型射出成形機において実施する、請求項
5に記載の型締力調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル機構を備えた型締装置、および射出成形機、ならびにトグル機構を備えた型締装置の型締力調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
竪型射出成形機において型締装置は、例えば特許文献1に記載されているように構成されている。すなわち型締装置は、フレームに固定されている固定盤と、この固定盤の上方に設けられている上可動盤と、下方に設けられている下可動盤とを備えている。上可動盤と下可動盤は複数本のタイバーで連結され、下可動盤と固定盤の間にトグル機構からなる型締機構が設けられている。多くの竪型射出成形機には固定盤の上にターンテーブルが設けられ、ターンテーブルは反転自在になっている。上可動盤と、ターンテーブルとにそれぞれ金型が設けられている。型締機構を駆動するとこれらの金型が型開閉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
竪型射出成形機において、複数本のタイバーと下可動盤は、タイバーナットを介して連結されている。すなわち複数本のタイバーにはそれぞれタイバーナットが螺合しており、タイバーナットは下可動盤に形成されている凹部に収納されている。複数個のタイバーナットにはスプロケットが設けられ、これらスプロケットにはチェーンが掛け回され、型厚調整モータによって回転するようになっている。つまり型厚調整モータを駆動すると複数個のタイバーナットが回転し、タイバー有効長さが変化する。すなわち、上可動盤と固定盤の距離である型厚が変化する。
【0005】
このような竪型射出成形機において実施する型締力調整方法は、横型の射出成形機における型締力調整方法と同様である。すなわち、最初に型厚調整モータを駆動して、型締装置に設けられている金型の厚さ、つまり金型厚さよりも、型厚を大きくする。次いで、トグル機構に設けられているクロスヘッドを駆動して、金型タッチ位置にする。金型タッチ位置とは、適切に型締力調整されている場合に、上可動盤と固定盤とに設けられている金型同士がタッチするクロスヘッド位置であり、その後クロスヘッドを駆動して型締完了位置にすると、必要な型締力が得られるようなクロスヘッド位置である。最後に、型厚を減じる方向に型厚調整モータを駆動する。そして金型同士が所定の押力で接触したら、型厚調整モータを停止する。型締力調整を完了する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
型締力調整方法において、型厚を減じる方向に型厚調整モータを駆動して金型同士を接触させるとき、必要な押力が発生する前に型厚調整モータを停止する場合があり、適切な型締力が得られないことがある。
【0007】
本開示において、適切に型締力調整が実施される型締装置、射出成形機、および型締力調整方法を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、第1、第2、第3の型盤と、トグル機構と、制御部とを備えた型締装置を対象とする。第1の型盤と第2の型盤は複数本のタイバーによって連結され、第3の型盤は第1、2の型盤の間に配置され、第2、第3の型盤の間にトグル機構が設けられている。第1、第3の型盤に金型が設けられ、トグル機構のクロスヘッドを駆動すると型開閉する。
【0010】
制御部によって実施する型締力調整は次のようになっている。まず、複数本のタイバーに螺合しているタイバーナットを型厚調整モータにより回転させて第1の型盤と第3の型盤の距離である型厚を金型の金型厚さよりも大きくする型厚増処理を実施する。次いで第1、2の金型が離間した状態で、クロスヘッドを金型がタッチすべきクロスヘッド位置である金型タッチ位置に駆動するクロスヘッド駆動処理を実施する。最後に型厚調整モータを駆動して型厚を減じ金型同士が接するようにする型厚減処理を実施する。制御部は型厚減処理において型厚調整モータを停止するが、本開示においてそのタイミングは厚調整モータの電流値が既定時間の間、既定電流値を超えたことを検出したときとする。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、確実に適切な型締力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る竪型射出成形機を示す正面図である。
【
図2A】本実施の形態に係る竪型射出成形機を構成している、下可動盤の一部とタイバーとタイバーナットとを示す正面断面図である。
【
図2B】本実施の形態に係る竪型射出成形機を構成している、下可動盤の一部とタイバーとタイバーナットとを示す正面断面図である。
【
図3】本実施の形態に係る型締力調整方法のフローチャートである。
【
図4A】本実施の形態に係る型締力調整方法を実施する場合における、型厚の変化と型厚調整モータの電流の変化とを示すグラフである。
【
図4B】従来の型締力調整方法を実施する場合における、型厚の変化と型厚調整モータの電流の変化とを示すグラフである。
【
図5A】従来の型締力調整方法を実施する場合における、型厚の変化を示すグラフである。
【
図5B】従来の型締力調整方法を実施する場合における、型厚の変化を示すグラフである。
【
図5C】従来の型締力調整方法を実施する場合における、型厚の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0014】
以下、本実施の形態を説明する。
<竪型射出成形機>
本実施の形態に係る竪型射出成形機1は、
図1に示されているように、型締装置2と、この型締装置2の上部に設けられている射出装置3と、これらを制御するコントローラつまり制御部4と、を備えている。
【0015】
<型締装置>
型締装置2は、第1、第2、第3の型盤を備えている。まず、筐体7に第3の型盤すなわち固定盤9が固定されている。この固定盤9の上方に設けられているのが第1の型盤つまり上可動盤10であり、固定盤9の下方に設けられているのが第2の型盤つまり下可動盤11である。第1、第2の型盤である上可動盤10と下可動盤11は、複数本のタイバー12、12、…で連結されている。本実施の形態においてタイバー12、12、…は3本からなる。これらタイバー12、12、…は、後で説明する型締力調整機構32によってその連結長さ、つまり有効長が調整できるようになっている。
【0016】
下可動盤11と固定盤9の間には型締機構であるトグル機構13が設けられている。トグル機構13にはトグル機構13を駆動するクロスヘッド15が設けられ、クロスヘッド15はボールねじ機構16によって駆動されるようになっている。下可動盤11にはその側方に型締モータ18が設けられている。型締モータ18には駆動プーリ20が、そしてボールねじ機構16には従動プーリ21がそれぞれ設けられ、これらはタイミングベルト22によって掛け回されている。したがって型締モータ18を回転するとクロスヘッドが駆動され、トグル機構13が屈伸する。すなわち上可動盤10と下可動盤11とが一体的に上下に駆動され、型締装置2が型開閉される。なお、上可動盤10と固定盤9の間には型盤落下防止機構23が設けられ、停電時等に上可動盤10が落下しないように保護されている。
【0017】
<ターンテーブル>
竪型射出成形機1の型締装置2において必須の部材ではないが、本実施の形態において固定盤9の上にはターンテーブル24が設けられている。ターンテーブル24は中央の1本のタイバー12を中心に反転的に回転するようになっている。筐体7内の固定盤9の下面にはターンテーブル回転モータ26と、ターンテーブル回転モータ26の回転をターンテーブル24に伝達する回転伝達機構27とが設けられている。したがって、ターンテーブル回転モータ26を回転するとターンテーブル24が回転する。
【0018】
本実施の形態において、上可動盤10には第1の金型29が1個設けられ、ターンテーブル24には第2の金型30、30が2個設けられている。ターンテーブル24が反転的に回転すると、これら2個の第2の金型30、30が相互に位置を替えるようになっている。なお、型締装置2がターンテーブル24を備えていない場合には、第2の金型30は1個だけ固定盤9に設けられることになる。
【0019】
<型締力調整機構>
型締力調整機構32について説明する。型締力調整機構32は、適切な型締力を得るようにするために型厚を調整する機構である。型厚は、トグル機構13を型閉状態にしたときの、第1、第2の金型29、30が設けられている型盤間の距離である。ターンテーブル24が設けられている場合には上可動盤10とターンテーブル24の距離であり、ターンテーブル24が存在しない場合には上可動盤10と固定盤9の距離である。
【0020】
型締力調整機構32は、タイバー12、12、…のそれぞれに設けられているタイバーナット33、33、…と、これらのタイバーナット33、33、…を回転する回転機構34とからなる。
図2Aには1本のタイバー12を含む型締装置2の一部が拡大して示されている。この図に示されているように、タイバー12には所定の範囲に雄ねじ35が形成され、タイバーナット33が螺合している。このようなタイバーナット33は下可動盤11に形成されている凹部37に入れられ、調整帯38によって押さえられている。タイバーナット33の鍔33aの上面と下可動盤11の間には隙間39が形成されており、タイバーナット33は滑らかに回転することができる。隙間39の大きさは、調整帯38と下可動盤11の間に適宜厚さの異なるシムを入れて調整することができるようになっている。
【0021】
型締力調整機構32の回転機構34は、
図1に示されているように、下可動盤11に設けられている型厚調整モータ41を備えている。型厚調整モータ41には駆動プーリ42が、タイバーナット33、33、…には従動プーリ44、44、…が設けられ、これらにチェーン45が掛け回されている。したがって型厚調整モータ41を回転すると、タイバーナット33、33、…が同期して回転し、タイバー12、12、…の有効長が変化する。つまり型厚を調整することができる。
【0022】
<型厚検出機構>
下可動盤11には、
図2Aに示されているように磁歪式直線変位センサ48が設けられている。1本のタイバー12の下端部と磁歪式直線変位センサ48とは連結金具49によって連結されている。型厚は、この磁歪式直線変位センサ48によって検出されるようになっている。ただし正確にいうと、磁歪式直線変位センサ48によって検出されるのは、下可動盤11に対して相対的に移動するタイバー12の下端部の位置である。
【0023】
<射出装置>
射出装置3は、型締装置2の上可動盤10の上に設けられている。射出装置3は、加熱シリンダ51と、加熱シリンダ51内に設けられている図示されていないスクリュと、スクリュを駆動する図示されていない駆動機構と、を備えている。加熱シリンダ51の先端に射出ノズル52が設けられ、射出ノズル52は第1の金型29にタッチしている。
【0024】
<制御部>
制御部4は、竪型射出成形機1の各装置を制御するようになっている。すなわち、型締装置2、射出装置3を制御するようになっている。当然に、型締モータ18や型厚調整モータ41の制御も制御部4によって実施されるようになっており、次に説明する本実施の形態に係る型締力調整方法は制御部4によって自動的に実施されるようになっている。制御部4には各装置を制御するために必要な色々な設定値が設けられているが、型締力調整方法を実施するために、2個の設定値が格納されている。すなわち、
図1に示されているように制御部4には、既定電流値と、既定時間とが予め設定されている。
【0025】
<型締力調整方法>
本実施の形態に係る型締力調整方法を説明する。型締力調整方法は、型締装置2に取り付ける金型29、30、30を交換する毎に実施する。
図1に示されているように、上可動盤10に第1の金型29が、そしてターンテーブル24に第2の金型30、30が取り付けられた状態から説明する。
【0026】
図3に示されているように、制御部4は最初に型厚増処理S1を実行する。型厚増処理S1は、型厚調整モータ41(
図1参照)を駆動して型厚を増加させる、あるいは型厚を大きくする処理である。第1の金型29と第2の金型30の合計の金型厚さより、型厚が大きくなるようにする。このとき第1の金型29と第2の金型30は接触していないので、
図2Aの符号61で示されているように、タイバー12、12、…には上可動盤10(
図1参照)等の重量が作用して下方向に押し付けられる。一方、下可動盤11はトグル機構13(
図1参照)を介して固定盤9にぶら下がるように接続されているので、
図2Aの符号62で示されているように上方向に持ち上げられている。したがって、タイバーナット33、33、…は
図2Aに示されているように、調整帯38に押し付けられて、鍔33aの上面と下可動盤11の間に隙間39が形成されている。
【0027】
型厚増処理S1を実行するとき、型厚調整モータ41(
図1参照)を所定のトルクで駆動するので、
図4Aの符号71で示されているように型厚調整モータ41には所定の電流値がほぼ一定で流れる。そして磁歪式直線変位センサ48(
図2A参照)で検出される型厚は、
図4Aの符号72で示されているように、緩やかに増加する。型厚が所定の大きさに達したら、型厚増処理S1を完了する。
【0028】
次に、制御部4(
図1参照)はクロスヘッド駆動処理S2(
図3参照)を実施する。すなわち、型締モータ18を回転してクロスヘッド15を駆動し、クロスヘッド位置が金型タッチ位置になるようにする。金型タッチ位置は、適切に型締力調整がなされている場合に、第1の金型29と第2の金型30とが既定の押力でタッチするクロスヘッド位置であり、その後クロスヘッド15を駆動して型締完了位置にすると、必要な型締力が得られるようになっている。ただし、このクロスヘッド駆動処理S2において、型締力調整は完了していないので、第1の金型29と第2の金型30は離間した状態になる。
【0029】
クロスヘッド15を金型タッチ位置に駆動しても、第1の金型29と第2の金型30は離間しているので、
図2Aに示されているように、タイバーナット33、33、…は鍔33aの下面が調整帯38に押し付けられた状態になっている。クロスヘッド駆動処理S2においては、型厚調整モータ41(
図1参照)は駆動しないので、
図4Aの符号73で示されているように型厚調整モータ41に流れる電流はゼロであり、型厚は符号74で示されているように一定で変化しない。
【0030】
制御部4は、
図3に示されているように型厚減処理を開始する(S3)。すなわち型厚が減少する方向に型厚調整モータ41(
図1参照)を駆動する。型厚を減少させる場合、上可動盤10等を持ち上げる必要がないので、型厚調整モータ41に必要なトルクは比較的小さい。つまり型厚調整モータ41に供給する電流は型厚を増加させる場合に比して小さい。型厚調整モータ41を流れる電流は
図4Aにおいて符号75で示されているように、符号71で示されている電流値より小さくなる。磁歪式直線変位センサ48(
図2A参照)で検出される型厚は符号76で示されているように、緩やかに減少する。
【0031】
制御部4は、型厚減処理を開始S3したら、
図3に示されている処理S4によって型厚調整モータ41の電流を監視するが、この処理S4およびそれ以降の処理S5、S6については後で説明する。ここでは、型厚減処理を実施しているときの、型締装置2において生じる挙動を詳しく説明することとし、本実施の形態に係る型締力調整方法の説明を一旦中断する。
【0032】
型厚減処理における型締装置2の挙動は次のように推移する。型厚が減少するとき、最初は第1の金型29と第2の金型30が離間しているので、上可動盤10(
図1参照)と共にタイバー12、12、…は緩やかに下降する。このとき、タイバーナット33、33、…の鍔33aは、その下面が
図2Aに示されているように調整帯38に押し付けられた状態で維持されている。しかしながら、やがて第1の金型29(
図1参照)と第2の金型30は接触する。接触したタイミングが
図4Aにおいて、符号77で示されている。接触すると上可動盤10(
図1参照)は、第1の金型29と第2の金型30とターンテーブル24とを介して固定盤9に支持される。つまり下降が規制される。タイバー12は上可動盤10に連結されているので、タイバー12も下降が規制される。
【0033】
この状態で引き続き型厚調整モータ41を駆動してタイバーナット33、33、…(
図2A参照)を回転させると、タイバーナット33はタイバー12の雄ねじ35に沿って上昇する。つまり凹部37内でタイバーナット33が相対的に上方向に移動する。このとき磁歪式直線変位センサ48(
図2A参照)で検出される型厚は、
図4Aにおいて符号78で示されているように一定になっている。タイバー12の下端部は下可動盤11に対して相対的に移動しないからである。
【0034】
やがてタイバーナット33は、
図2Bで示されているように、凹部37の上面に接触する。つまり隙間39‘はタイバーナット33と調整帯38の間に形成される。このタイミングが
図4Aの符号79で示されている。
【0035】
引き続き型厚調整モータ41(
図1参照)を駆動してタイバーナット33、33、…を回転させると、第1の金型29と第2の金型30の接触の押力が増加して、上可動盤10によって吊り下げられてタイバー12に上向きの力が作用する。つまりタイバー12には
図2Bにおいて符号63で示されている上向きの力が作用する。一方、下可動盤11にはトグル機構13(
図1参照)を介して固定盤9からの力を受けるので、
図2Bにおいて符号64で示されている力が作用する。これらの力が作用するのでタイバーナット33の回転に要するトルクは増加する。したがって、
図4Aの符号80で示されているように、型厚調整モータ41(
図1参照)の電流は増加する。磁歪式直線変位センサ48(
図2A参照)で検出される型厚は、
図4Aにおいて符号81で示されているようにわずかに減少する。タイバー12の下端部が下可動盤11に対して相対的にわずかに下方に移動するからである。
【0036】
型厚調整モータ41は既定のトルクが得られるように電流を制御しているので、第1の金型29と第2の金型30の接触の押力が所定の大きさになったらタイバーナット33、33、…の回転は停止する。このタイミングが
図4Aの符号82に示されている。型厚調整モータ41の電流は符号83で示されているようにその後一定で推移する。第1の金型29と第2の金型30は所望の押力で接触しているので、適切なタイミングで型厚調整モータ41を停止すればよい。型厚減処理を実施しているときの、型締装置2における挙動は以上のようになっている。以下、
図3に戻って、本実施の形態に係る型締力調整方法における、処理S4以降について説明を再開する。
【0037】
本実施の形態に係る型締力調整方法では、型厚減処理を開始S3したら、制御部4は周期的に型厚調整モータ41の電流を監視する。電流値の監視は実質的に型厚調整モータ41のトルクを監視しているのと同等である。
図3における処理S4でこの電流値が、制御部4(
図1参照)において設定されている既定電流値を超えているか否かをチェックする。もし超えていなければ、型厚減処理を継続する。そして次の周期において再び処理S4を実行する。
【0038】
もし処理S4において、型厚調整モータ41の電流値が既定電流値を超えていると判断したら、制御部4は処理S5を実行する。すなわち既定電流値を超えてからの経過時間が、制御部4(
図1参照)において設定されている既定時間を超えているか否かをチェックする。もし超えていなければ型厚減処理を継続し、処理S4に戻る。一方、もし既定時間を超えていれば処理S6に以降する。
図4Aのグラフでは、符号83で示されているように、既定時間85の間、電流値が既定電流値を超えていることが示されている。処理S6において型厚調整モータ41(
図1参照)を停止する。すなわち型厚減処理を完了する。型締力調整が完了する。型厚調整モータ41を停止したタイミングが
図4Aにおいて符号84で示されている。
【0039】
本実施の形態に係る型締力調整方法では、上で説明したように、型厚減処理において型厚調整モータ41の電流値を監視し、既定時間の間、既定電流値を超えているときに型厚減処理を完了するようにしている。このようにすると、確実にかつ適切に型締力が得られる。
【0040】
<従来の型締力調整方法>
ここで従来の型締力調整方法を説明する。従来の型締力調整方法でも、本実施の形態に係る型締力調整方法と同様に、
図3に示されている型厚増処理S1と、クロスヘッド駆動処理S2と、型厚減処理の開始S3については同様に実施する。しかしながら、型厚減処理の完了の判断すなわち型厚調整モータ41を停止する判断が、本実施の形態に係る型厚調整方法と相違している。具体的には、従来の型締力調整方法では、型厚減処理の完了を、型厚の変化の有無をチェックすることによって判断している。
図5A~
図5Cによって説明する。
【0041】
図5A~
図5Cには、型厚減処理を実施しているときにおいて、磁歪式直線変位センサ48で検出される型厚の変化が示されている。符号77は第1の金型29(
図1参照)と第2の金型30が接触したタイミング、符号79はタイバーナット33(
図2B参照)の鍔33aの上面が下可動盤11に接触したタイミング、そして符号82は第1の金型29と第2の金型30の接触が適切な押力に達したタイミングである。
【0042】
従来の型締力調整方法では、磁歪式直線変位センサ48(
図2A参照)で検出される型厚を監視するとき、
図5Aに示されているように、所定のサンプリング周期88で監視するようにしている。サンプリング周期88で監視するタイミングがt1、t2、…で示されている。タイミングt1~t4のそれぞれで検出するとき、型厚は変化している。しかしながらタイミングt4で検出するときとタイミングt5で検出するとき、型厚は変化していない。従来の型締力調整方法では、型厚の変化が例えば0.05mm以下のとき、型厚が変化していないと判断し、型厚調整モータ41(
図1参照)を停止する。つまり型締力調整を完了する。停止のタイミングが
図5Aにおいて符号89で示されている。
【0043】
図5Aで説明した例では、従来の型締力調整方法でも適切に型締力調整が行えている。しかしながら、サンプリング周期88のタイミングがずれると、第1の金型29(
図1参照)と第2の金型30との間に適切な押力が発生する前に、型厚調整モータ41を停止してしまうことがある。
図5Bにそのような例が示されている。タイミングt1、t2、t3のそれぞれにおいて検出される型厚は変化している。しかしながら、タイミングt3で検出される型厚とタイミングt4で検出される型厚は変化していない。従来の型締力調整方法ではタイミングt4において、型厚調整モータ41(
図1参照)を停止してしまう。すなわち適切な型締力は得られない。
【0044】
従来の型締力調整方法においては、サンプリング周期88のタイミングのずれが生じているときだけでなく、下可動盤11(
図2A参照)の凹部37とタイバーナット33の隙間39が大きいときも、この問題が発生する。隙間39が大きいとき、
図5Bのグラフにおいて符号77から符号79までの直線区間が長くなるからである。
【0045】
従来の型締力調整方法において、
図5Cに示されているようにサンプリング周期88‘を長くすれば上の問題は発生しない。すなわち、サンプリング周期88’が長いと、各タイミングt1、t2、…t4において検出される型厚は確実に変化するからである。タイミングt4とタイミングt5とにおいて、型厚の変化が無くなったことを検出して型厚調整モータ41(
図1参照)を停止すれば、第1の金型29と第2の金型30との間に適切な押力が発生していることが保証される。
【0046】
しかしながら、サンプリング周期88‘を長くすると、他の問題が生じる。サンプリング周期88‘を長くして、従来の型締力調整方法を実施したときの型厚の変化と、型厚調整モータ41(
図1参照)の電流の変化が
図4Bに示されている。サンプリング周期が長いと、符号83’で示されているように、電流値が高い状態が長く続くことになる。つまり、型厚調整モータ41に高い電流が流れる時間90が長くなる。つまり、型厚調整モータ41に負荷がかかるという問題がある。
【0047】
<本実施の形態の変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。本実施の形態に係る型締力調整方法では、型厚減処理において型厚調整モータ41(
図1参照)を停止するタイミングを決定するに際し、その電流を監視して、既定時間を超えて既定電流値を超えていることを条件にしている。しかしながら、既定電流値を一時的でも超えれば型厚調整モータ41を停止するようにしてもよい。あるいは、既定時間内の平均の電流値が既定電流値を超えていれば停止するようにしてもよい。いずれにしても、型厚調整モータ41の停止のタイミングは、型厚調整モータ41の電流値に基づいて決定するようにする。
【0048】
本実施の形態に係る型締力調整方法は、竪型射出成形機において実施するように説明した。しかしながら横型の射出成形機でも実施が可能である。横型の射出成形機においてもタイバーナットを回転して型厚を調整するようになっている。そして、型締力調整は、型厚を増加させる型厚増処理と、クロスヘッドを金型タッチ位置に駆動するクロスヘッド駆動処理と、その後に型厚を減少させる型厚減処理とによって実施するからである。なお、横型の射出成形機においてタイバーは一般的に4本設けられているが、タイバー本数に制約はない。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 竪型射出成形機 2 型締装置
3 射出装置 4 制御部
7 筐体 9 固定盤
10 上可動盤 11 下可動盤
12 タイバー 13 トグル機構
15 クロスヘッド 16 ボールねじ機構
18 型締モータ 20 駆動プーリ
21 従動プーリ 22 タイミングベルト
23 型盤落下防止機構 24 ターンテーブル
26 ターンテーブル回転モータ
27 回転伝達機構 29 第1の金型
30 第2の金型 32 型締力調整機構
33 タイバーナット 34 回転機構
35 雄ねじ 37 凹部
38 調整帯 39 隙間
41 型厚調整モータ 42 駆動プーリ
44 従動プーリ 45 チェーン
48 磁歪式直線変位センサ 49 連結金具
51 加熱シリンダ 52 射出ノズル