(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-03
(45)【発行日】2025-04-11
(54)【発明の名称】アンテナ素子およびアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20250404BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20250404BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/06
(21)【出願番号】P 2023578600
(86)(22)【出願日】2023-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2023003240
(87)【国際公開番号】W WO2023149479
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2024-08-01
(31)【優先権主張番号】P 2022015910
(32)【優先日】2022-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 博道
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090838(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/193124(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/085552(WO,A2)
【文献】特開2018-074583(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090630(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/132143(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/045181(WO,A1)
【文献】特開2021-185719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の第1面上に配置されている第1導体、第2導体、第3導体、および第4導体と、
前記第1面から第1方向に離れた前記基体の内部に位置し、前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体および、前記第4導体を容量的に結合するように構成されている第1結合導体と、
前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第1導体と、前記第2導体とを容量的に結合するように構成されている第2結合導体と、
前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第2導体と、前記第3導体とを容量的に結合するように構成されている第3結合導体と、
前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第3導体と、前記第4導体とを容量的に結合するように構成されている第4結合導体と、
前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第4導体と、前記第1導体とを容量的に結合するように構成されている第5結合導体と、
前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体のいずれか1つ
に電磁気的に接続され
た第1給電導体と、
前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体のうち、前記第1給電導体とは異なる導体に電磁気的に接続された第2給電導体と、
を含む、アンテナ素子。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ素子であって、
前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体は、正方格子状に配置され、
前記第2結合導体は、前記第1方向に離れた位置で前記第1導体および前記第2導体に重なるように配置されており、
前記第3結合導体は、前記第1方向に離れた位置で前記第2導体および前記第3導体に
重なるように配置されており、
前記第4結合導体は、前記第1方向に離れた位置で前記第3導体および前記第4導体に重なるように配置されており、
前記第5結合導体は、前記第1方向に離れた位置で前記第4導体および前記第1導体に重なるように配置されている、アンテナ素子。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ素子であって、
前記第1給電導体および前記第2給電導体は、前記正方格子の対角線上に位置するように構成されている、アンテナ素子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ素子であって、
前記第1結合導体は、前記第1方向に離れた位置で前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体に重なるように配置されている、アンテナ素子。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ素子であって、
前記第1結合導体は、第6結合導体と、第7結合導体と、第8結合導体と、第9結合導体と、前記第6結合導体と、前記第8結合導体とを電磁気的に接続する第1接続部と、前記第7結合導体と、前記第9結合導体とを電磁気的に接続する第2接続部と、を含み、
前記第6結合導体は、前記第1方向に離れた位置で、少なくとも一部が前記第1導体に重なるように配置されており、
前記第7結合導体は、前記第1方向に離れた位置で、少なくとも一部が前記第2導体に重なるように配置されており、
前記第8結合導体は、前記第1方向に離れた位置で、少なくとも一部が前記第3導体に重なるように配置されており、
前記第9結合導体は、前記第1方向に離れた位置で、少なくとも一部が前記第4導体に重なるように配置されており、
前記第1接続部と、前記第2接続部とは、電磁気的に接続するように構成されている、アンテナ素子。
【請求項6】
一端が短絡された第1共振器、第2共振器、第3共振器、および第4共振器が周回状に備えられ、
前記第1共振器、前記第2共振器、前記第3共振器、および前記第4共振器を共通して容量結合する第1導体と、
前記第1共振器、前記第2共振器、前記第3共振器、および前記第4共振器のうち、対向する共振器に、同一周波数の交流を入力する第1ポートおよび第2ポートがそれぞれ設けられ、
前記第1ポートおよび前記第2ポートから同一周波数の交流の位相差で、モードを制御するように構成されている、
アンテナ素子。
【請求項7】
請求項1から
3のいずれか1項に記載のアンテナ素子を複数含む、アレイアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ素子およびアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線で電力を伝達する技術が知られている。例えば、特許文献1には、Q値の高い共振コイルを用いて無線給電システムの伝送効率を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示のアンテナ素子は、基体の第1面上に配置されている第1導体、第2導体、第3導体、および第4導体と、前記第1面から第1方向に離れた前記基体の内部に位置し、前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体および、前記第4導体を容量的に結合するように構成されている第1結合導体と、前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第1導体と、前記第2導体とを容量的に結合するように構成されている第2結合導体と、前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第2導体と、前記第3導体とを容量的に結合するように構成されている第3結合導体と、前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第3導体と、前記第4導体とを容量的に結合するように構成されている第4結合導体と、前記第1結合導体と同一平面上に位置し、前記第4導体と、前記第1導体とを容量的に結合するように構成されている第5結合導体と、前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体のいずれか1つに電磁気的に接続された第1給電導体と、前記第1導体、前記第2導体、前記第3導体、および前記第4導体のうち、前記第1給電導体とは異なる導体に電磁気的に接続された第2給電導体と、を含む。
【0005】
本開示のアンテナ素子は、一端が短絡された第1共振器、第2共振器、第3共振器、および第4共振器が周回状に備えられ、前記第1共振器、前記第2共振器、前記第3共振器、および前記第4共振器を共通して容量結合する第1導体と、前記第1共振器、前記第2共振器、前記第3共振器、および前記第4共振器のうち、対向する共振器に、同一周波数の交流を入力する第1ポートおよび第2ポートがそれぞれ設けられ、前記第1ポートおよび前記第2ポートから同一周波数の交流の位相差で、モードを制御するように構成されている。
【0006】
本開示のアレイアンテナは、本開示のアンテナ素子を複数含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るアンテナの構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第1位相差である場合の放射パターンを示す図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第1位相差である場合の周波数特性を示す図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第2位相差である場合の放射パターンを示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第2位相差である場合の周波数特性を示す図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第3位相差である場合の放射パターンを示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第3位相差である場合の周波数特性を示す図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第4位相差である場合の放射パターンを示す図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第4位相差である場合の周波数特性を示す図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第5位相差である場合の放射パターンを示す図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第5位相差である場合の周波数特性を示す図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係るアンテナ素子の特性の変化を説明するための図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係るアンテナの構成例を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、第3実施形態に係るアレイアンテナの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0009】
以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。水平面内のX軸と平行な方向をX軸方向とし、X軸と直交する水平面内のY軸と平行な方向をY軸方向とし、水平面と直交するZ軸と平行な方向をZ軸方向とする。X軸及びY軸を含む平面を適宜、XY平面と称する。X軸及びZ軸を含む平面を適宜、XZ平面と称する。Y軸及びZ軸を含む平面を適宜、YZ平面と称する。XY平面は、水平面と平行である。XY平面とXZ平面とYZ平面とは直交する。
【0010】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係るアンテナ素子の構成例を説明する。
図1は、第1実施形態に係るアンテナ素子の構成例を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、アンテナ素子1は、基体10と、第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28と、第1結合導体30と、第2結合導体32と、第3結合導体34と、第4結合導体36と、第5結合導体38と、グラウンド導体40と、第1給電導体52と、第2給電導体54と、第1接続導体62と、第2接続導体64と、第3接続導体66と、第4接続導体68と、を含む。
【0012】
本実施形態では、アンテナ素子1は、四角柱形状に形成されているものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。アンテナ素子1は、四角柱以外の多角柱形状、円柱形状、および楕円柱形状などに形成されていてもよい。
【0013】
アンテナ素子1は、所定の共振周波数で放射可能に構成される。アンテナ素子1が所定の共振周波数で共振することにより、アンテナ素子1は、電磁波を放射する。アンテナ素子1は、アンテナ素子1の少なくとも1つの共振周波数帯のうちの少なくとも1つを動作周波数としうる。アンテナ素子1は、動作周波数の電磁波を放射しうる。動作周波数の波長は、アンテナ素子1の動作周波数における電磁波の波長である動作波長となりうる。一方で、アンテナ素子1は、信号入力の条件では、同じ動作周波数において非放射体である共振器として振る舞う。このような現象が発現するためには、2つの異なるモードが同じ周波数になるように調整し、その二つのモードを選択的に励振できるような信号条件が必要となる。
【0014】
アンテナ素子1は、Z軸の正方向からアンテナ素子1のXY平面に略平行な面に入射する所定周波数の電磁波に対して、後述のように、人工磁気壁特性(Artificial Magnetic Conductor Character)を示す。本開示において「人工磁気壁特性」は、動作周波数における入射波と反射波との位相差が0度となる面の特性を意味する。人工磁気壁特性を有する面では、動作周波数帯において、入射波と反射波の位相差が-90度~+90度となる。動作周波数帯は、人工磁気壁特性を示す共振周波数と動作周波数とを含む。
【0015】
基体10は、誘電体材料で構成されている基体である。
【0016】
第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、基体10の上面に配置されている。基体10の上面は、第1面とも呼ばれる。第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、XY平面方向に広がる導体である。第1導体22と、第2導体24、第3導体26と、第4導体28とは、例えば、正方形状の共振器として構成されている。第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、正方格子状に配置されている。第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、それぞれ、XY平面における面積が略等しく形成されている。
【0017】
第1導体22と、第2導体24との間には、所定の間隔の隙間が形成されている。第2導体24と、第3導体26との間には、所定の間隔の隙間が形成されている。第3導体26と、第4導体28との間には、所定の間隔の隙間が形成されている。第1導体22から第4導体28は、それぞれ、容量的に接続するように構成されている。
【0018】
第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、正方形状に形成されているものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、例えば、正方形以外の多角形、円形、または楕円形であってもよい。第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とは、それぞれ、XY平面における面積および形状の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0019】
第1結合導体30と、第2結合導体32と、第3結合導体34と、第4結合導体36と、第5結合導体38とは、基体10の上面からZ軸方向に離れた基体10の内部に位置し得る。Z軸方向は、第1方向とも呼ばれる。第1結合導体30と、第2結合導体32と、第3結合導体34と、第4結合導体36と、第5結合導体38とは、XY平面方向に広がる導体である。
【0020】
第1結合導体30は、例えば、正方形状に形成されている。第1結合導体30は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、第1導体22、第2導体24、第3導体26、および第4導体28と重なる位置に配置されている。第1結合導体30は、第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とを容量的に接続するように構成されている。第1結合導体30は、正方形状に形成されているものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。第1結合導体30は、例えば、正方形以外の多角形、円形、または楕円形であってもよい。
【0021】
第2結合導体32、第3結合導体34、第4結合導体36、および第5結合導体38は、例えば、長方形状に形成されている。第2結合導体32、第3結合導体34、第4結合導体36、および第5結合導体38は、それぞれ、略同一の大きさに形成されている。第2結合導体32、第3結合導体34、第4結合導体36、および第5結合導体38は、長方形状に形成されているものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。第2結合導体32、第3結合導体34、第4結合導体36、および第5結合導体38は、例えば、長方形以外の多角形、円形、または楕円形であってもよい。
【0022】
第2結合導体32は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、第1導体22、および第2導体24と重なる位置に配置されている。第2結合導体32は、第1導体22と、第2導体24とを容量的に接続するように構成されている。
【0023】
第3結合導体34は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、第2導体24、および第3導体26と重なる位置に配置されている。第3結合導体34は、第2導体24と、第3導体26とを容量的に接続するように構成されている。
【0024】
第4結合導体36は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、第3導体26、および第4導体28と重なる位置に配置されている。第4結合導体36は、第3導体26と、第4導体28とを容量的に接続するように構成されている。
【0025】
第5結合導体38は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、第4導体28、および第1導体22と重なる位置に配置されている。第5結合導体38は、第4導体28と、第1導体22とを容量的に接続するように構成されている。
【0026】
グラウンド導体40は、基体10の下部に配置されている。グラウンド導体40は、Z軸方向において、第1導体22、第2導体24、第3導体26、および第4導体28と対向するように配置されている。
【0027】
第1給電導体52は、一端が第1導体22に電磁気的に接続し、他端が図示しない第1給電点に電磁気的に接続するように構成されている。第1給電導体52は、例えば、基体10に形成されたビアであり得る。
【0028】
第2給電導体54は、一端が第3導体26に電磁気的に接続し、他端が図示しない第2給電点に電磁気的に接続するように構成されている。第2給電導体54は、例えば、基体10に形成されたビアであり得る。
【0029】
第1給電導体52と、第2給電導体54とは、正方格子状に並べた第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とにおいて、第1導体22の頂点から第3導体26の頂点とを結ぶ対角線上に位置するように構成されている。
【0030】
第1導体22には、第1給電導体52から所定の第1入力信号が入力される。第3導体26には、第2給電導体54から所定の第2入力信号が入力される。第1入力信号と、第2入力信号とは、同一の周波数を有する。本実施形態では、第1入力信号の位相と、第2入力信号の位相との位相差を、任意に変更可能に構成されている。本実施形態は、第1入力信号と、第2入力信号との位相差を変更することにより、比較的高いQ値を持つ共振器として振る舞う共振器モードと、比較的低いQ値を持つアンテナとして振る舞うアンテナモードとを切り替え可能に構成されている。
【0031】
第1接続導体62は、一端が第1導体22に電磁気的に接続し、他端がグラウンド導体40に電磁気的に接続するように構成されている。第2接続導体64は、一端が第2導体24に電磁気的に接続し、他端がグラウンド導体40に電磁気的に接続するように構成されている。第3接続導体66は、一端が第3導体26に電磁気的に接続し、他端がグラウンド導体40に電磁気的に接続するように構成されている。第4接続導体68は、一端が第4導体28に電磁気的に接続され、他端がグラウンド導体40に電磁気的に接続されている。すなわち、第1接続導体62、第2接続導体64、第3接続導体66、および第4接続導体68は、第1導体22、第2導体24、第3導体26、および第4導体28を囲うように構成されている。
【0032】
本実施形態では、第1接続導体62、第2接続導体64、第3接続導体66、および第4接続導体68は、2つであるものして示しているが、本開示はこれに限定されない。第1接続導体62、第2接続導体64、第3接続導体66、および第4接続導体68は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0033】
[放射パターン]
次に、第1実施形態に係るアンテナ素子の電波の放射パターンについて説明する。第1実施形態では、アンテナ素子1は、第1導体22に入力される第1入力信号、第3導体26に入力される第2入力信号の位相差を制御することにより、電波の放射パターンを制御可能に構成されている。
【0034】
(第1位相差)
図2は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第1位相差である場合の放射パターンを示す図である。
図3は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第1位相差である場合の周波数特性を示す図である。第1実施形態において、第1位相差は、0度である。
【0035】
第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナのゲイン値の最大値は、例えば、-22[dBi(デシベル)]になり得る。すなわち、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1からは電波が放射されていない。この場合、アンテナ素子1は、共振器として振る舞う共振器モードになり得る。
図3に示す波形W1は、横軸が周波数[GHz(ギガヘルツ)]、縦軸が反射係数の利得[dB(デシベル)]を示す。波形W1に示すように、第1入力信号と第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1の共振周波数はf1[GHz]であり、反射係数はD1[dB]であり得る。
【0036】
(第2位相差)
図4は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第2位相差である場合の放射パターンを示す図である。
図5は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第2位相差である場合の周波数特性を示す図である。第1実施形態において、第2位相差は、45度である。
【0037】
第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナのゲイン値の最大値は、例えば、-9[dBi]になり得る。すなわち、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1からは電波が放射されている。この場合、アンテナ素子1は、アンテナとして振る舞うアンテナモードになり得る。
図5に示す波形W2は、横軸が周波数[GHz]、縦軸が反射係数の利得[dB]を示す。波形W2に示すように、第1入力信号と第2入力信号との位相差が45度の場合には、アンテナ素子1の共振周波数はf1[GHz]であり、反射係数はD2[dB]であり得る。すなわち、第1入力信号と第2入力信号との位相差が0度の場合と、45度の場合とで、共振周波数は変化しない。反射係数D2は、反射係数D1と比較して、低い側にシフトしている。
【0038】
(第3位相差)
図6は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第3位相差である場合の放射パターンを示す図である。
図7は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第3位相差である場合の周波数特性を示す図である。第1実施形態において、第3位相差は、90度である。
【0039】
第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナのゲイン値の最大値は、例えば、-3.9[dBi]になり得る。すなわち、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1からは電波が放射されている。この場合、アンテナ素子1は、アンテナとして振る舞うアンテナモードになり得る。
図7に示す波形W3は、横軸が周波数[GHz]、縦軸が反射係数の利得[dB]を示す。波形W3に示すように、第1入力信号と第2入力信号との位相差が90度の場合には、アンテナ素子1の共振周波数はf1[GHz]であり、反射係数は図示しないD3[dB]であり得る。すなわち、第1入力信号と第2入力信号との位相差が0度の場合と、90度の場合とで、共振周波数は変化しない。反射係数D3は、反射係数D2と比較して、低い側にシフトしている。
【0040】
(第4位相差)
図8は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第4位相差である場合の放射パターンを示す図である。
図9は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第4位相差である場合の周波数特性を示す図である。第1実施形態において、第4位相差は、135度である。
【0041】
第1入力信号と、第2入力信号との位相差が135度の場合には、アンテナのゲイン値の最大値は、例えば、-1.7[dBi]になり得る。すなわち、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1からは電波が放射されている。この場合、アンテナ素子1は、アンテナとして振る舞うアンテナモードになり得る。
図9に示す波形W4は、横軸が周波数[GHz]、縦軸が反射係数の利得[dB]を示す。波形W4に示すように、第1入力信号と第2入力信号との位相差が135度の場合には、アンテナ素子1の共振周波数はf1[GHz]であり、反射係数はD4[dB]であり得る。すなわち、第1入力信号と第2入力信号との位相差が0度の場合と、135度の場合とで、共振周波数は変化しない。反射係数D4は、反射係数D3と比較して、高い側にシフトしている。
【0042】
(第5位相差)
図10は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第5位相差である場合の放射パターンを示す図である。
図11は、第1実施形態に係る第1入力信号と第2入力信号との位相差が第5位相差である場合の周波数特性を示す図である。第1実施形態において、第5位相差は、180度である。
【0043】
第1入力信号と、第2入力信号との位相差が180度の場合には、アンテナのゲイン値の最大値は、例えば、-1[dBi]になり得る。すなわち、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が0度の場合には、アンテナ素子1からは電波が放射されている。この場合、アンテナ素子1は、アンテナとして振る舞うアンテナモードになり得る。具体的には、第1入力信号と、第2入力信号との位相差が180度の場合には、アンテナ素子1は、直線偏波を放射する。
図11に示す波形W5は、横軸が周波数[GHz]、縦軸が反射係数の利得[dB]を示す。波形W5に示すように、第1入力信号と第2入力信号との位相差が0の場合には、アンテナ素子1の共振周波数はf1[GHz]であり、反射係数はD5[dB]であり得る。
【0044】
[特性の比較]
図12を用いて、第1実施形態に係るアンテナ素子の特性の変化を説明する。
図12は、第1実施形態に係るアンテナ素子の特性の変化を説明するための図である。
【0045】
図12に示すグラフG1、グラフG2、グラフG3は、横軸が対象物との距離[mm]、縦軸がKQ積を示す。グラフG1は、第1実施形態に係るアンテナ素子1において、第1入力信号と第2入力信号との位相差を最適化した場合の特性を示す。グラフG2は、第1実施形態に係るアンテナ素子1において、第1入力信号と第2入力信号との位相差を0度にした場合の特性を示す。グラフG3は、第1実施形態に係るアンテナ素子1において、第1入力信号と第2入力信号との位相差を180度にした場合の特性を示す。
【0046】
点P1は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が14度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P2は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が85度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P3は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が172度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P4は、第1入力信号と第2入力信号との差が135度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P5は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が121度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P6は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が180度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。点P7は、第1入力信号と第2入力信号との位相差が171度の場合のアンテナ素子1のKQ積を示す。
【0047】
グラフG1は、対象物との距離が近い場所では、グラフG2と比較的近いKQ積を示している。すなわち、アンテナ素子1は、対象物との距離が近い場所において、共振器として機能するように調整することができる。グラフG1は、対象物との距離が遠い場所では、グラフG3と比較的近いKQ積を示している。すなわち、アンテナ素子1は、対象物との距離が遠い場所において、アンテナとして機能するように調整することができる。
【0048】
また、グラフG1は、対象物との距離が近い場所から遠い場所にわたって、グラフG2およびグラフG3よりも比較的高いKQ積を示している。すなわち、アンテナ素子1は、対象物との距離によらず、比較的高いKQ積を実現することができる。
【0049】
上述のとおり、第1実施形態は、アンテナ素子1に入力される第1入力信号と第2入力信号との位相差を制御することで、対象物との距離が近い場所から遠い場所にわたって、比較的高いKQ積を実現することができる。これにより、第1実施形態は、対象物との距離が近い場所から遠い場所にわたって、高い伝送効率を得ることができる。
【0050】
[第2実施形態]
図13を用いて、第2実施形態に係るアンテナの構成例を説明する。
図13は、第2実施形態に係るアンテナの構成例を示す斜視図である。
【0051】
図13に示すように、アンテナ素子1Aは、第1結合導体30を備えておらず、第6結合導体72と、第7結合導体74と、第8結合導体76と、第9結合導体78と、第1接続部82と、第2接続部84と、を備える点で、
図1に示すアンテナ素子1とは異なる。
【0052】
第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、基体10の上面からZ軸方向に離れた基体10の内部に位置し得る。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、基体10の内部において、同一平面上に形成されている。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、例えば、正方形状に形成されている。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、それぞれ、略同一形状に形成されている。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、それぞれ、第1導体22、第2導体24、第3導体26、第4導体28よりも小さい。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、正方形状に形成されているものとして説明するが、本開示はこれに限定されない。第6結合導体72、第7結合導体74、第8結合導体76、および第9結合導体78は、例えば、正方形以外の多角形、円形または楕円形であってもよい。
【0053】
第6結合導体72は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、少なくとも一部が第1導体22に重なるように配置されている。
【0054】
第7結合導体74は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、少なくとも一部が第2導体24に重なるように配置されている。
【0055】
第8結合導体76は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、少なくとも一部が第3導体26に重なるように配置されている。
【0056】
第9結合導体78は、基体10の上面からZ軸方向に離れた位置で、少なくとも一部が第4導体28に重なるように配置されている。
【0057】
第1接続部82は、第6結合導体72と第8結合導体76とを電磁気的に接続するように構成されている。第1接続部82は、一端が第6結合導体72の第8結合導体76と対向する頂点に電磁気的に接続し、他端が第8結合導体76の第6結合導体72と対向する頂点に電磁気的に接続するように構成されている。
【0058】
第2接続部84は、第7結合導体74と第9結合導体78とを電磁気的に接続するように構成されている。第2接続部84は、一端が第7結合導体74の第9結合導体78と対向する頂点に電磁気的に接続し、他端が第9結合導体78の第7結合導体74と対向する頂点に電磁気的に接続するように構成されている。
【0059】
第1接続部82と、第2接続部84とは、電磁気的に接続するように構成されている。第1接続部82と、第2接続部84とは、第6結合導体72と第8結合導体76とを結ぶ直線と、第7結合導体74と第9結合導体78とを結ぶ直線との交点において、電磁気的に接続するように構成されている。
【0060】
第6結合導体72と、第7結合導体74と、第8結合導体76と、第9結合導体78と、第1接続部82と、第2接続部84とは、第1導体22と、第2導体24と、第3導体26と、第4導体28とを容量的に接続するように構成されている。
【0061】
アンテナ素子1Aを製造する際に、例えば、第1導体22から第4導体28と、第6結合導体72から第9結合導体78との相対位置にばらつきが生じることが想定される。第1導体22から第4導体28に対して、第6結合導体72から第9結合導体78の位置がずれてしまうと、容量結合の大きさが変化し、アンテナ素子1Aの特性に影響を与えることも想定される。ここで、第6結合導体72から第9結合導体78は、それぞれ、第1導体22から第4導体28に比べて小さい。そのため、アンテナ素子1Aを製造するに際に、第1導体22から第4導体28に対して、それぞれ、第6結合導体72から第9結合導体78が重ならない部分を小さくするように製造することは比較的容易である。すなわち、第2実施形態は、第1導体22から第4導体28と、第6結合導体72から第9結合導体78との容量結合の大きさのばらつきを小さくすることができるので、アンテナ素子1Aの特性のばらつきを低減することができる。
【0062】
上述のとおり、第2実施形態は、第1導体22から第4導体28を、第6結合導体72から第9結合導体78により容量的に結合することにより、アンテナ素子1Aの特性のばらつきを低減することができる。これにより、第2実施形態は、アンテナ素子1Aの特性を安定化させることができる。
【0063】
[第3実施形態]
次に、本開示の第3実施形態について説明する。
図14は、第3実施形態に係るアレイアンテナの構成例を示す図である。
【0064】
図14に示すように、アレイアンテナ100は、複数のアンテナ素子1を含む。複数のアンテナ素子1は、例えば、X軸およびY軸に沿って所定の間隔を空けて配置されている。複数のアンテナ素子1は、例えば、X軸およびY軸に沿って等間隔に配置されていてもよいし、非等間隔に配置されていてもよい。複数のアンテナ素子1は、XY平面において、斜め方向に沿って、等間隔または非等間隔に配置されていてもよい。
【0065】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
1,1A アンテナ素子(共振素子)
10 基体
22 第1導体
24 第2導体
26 第3導体
28 第4導体
30 第1結合導体
32 第2結合導体
34 第3結合導体
36 第4結合導体
38 第5結合導体
40 グラウンド導体
52 第1給電導体
54 第2給電導体
62 第1接続導体
64 第2接続導体
66 第3接続導体
68 第4接続導体
72 第6結合導体
74 第7結合導体
76 第8結合導体
78 第9結合導体
82 第1接続部
84 第2接続部
100 アレイアンテナ