(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20250407BHJP
B65D 23/02 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D1/02 220
B65D23/02 Z
(21)【出願番号】P 2022013705
(22)【出願日】2022-01-31
【審査請求日】2024-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝典
(72)【発明者】
【氏名】本田 孝行
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-041989(JP,A)
【文献】特開2021-133972(JP,A)
【文献】特開2010-036943(JP,A)
【文献】特開2017-171368(JP,A)
【文献】米国特許第06112925(US,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0004106(KR,U)
【文献】独国特許出願公開第102010018890(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部、肩部、胴部及び底部を備えたボトル形状であるとともに、外層体と、前記外層体の内面に剥離可能に積層された減容変形自在の内層体と、前記口部に設けられて前記外層体と前記内層体との間に連なる外気導入口とを備えた積層剥離容器であって、
前記肩部に、
それぞれ径方向内側に向かって凹むとともに前記肩部の上端から下方に向けて延びる複数本の縦リブが、周方向に間隔を空けて並べて設けられ、
それぞれの前記縦リブの下端の位置が前記肩部の下端よりも上方であり、
それぞれ前記縦リブよりも上下方向寸法が小さい複数の凹部が、前記縦リブよりも下方且つ前記縦リブに対して周方向にずれて前記肩部に設けられている、ことを特徴とする積層剥離容器。
【請求項2】
前記凹部が、上下方向寸法と周方向寸法とが同一の円形形状である、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
前記凹部が、上下方向寸法が周方向寸法よりも大きい縦長形状である、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記肩部の隣り合う一対の前記縦リブの間に、それぞれ前記縦リブの上端よりも下方から前記縦リブの下端と同一の上下方向位置にまで延びる複数本の副縦リブが設けられ、
前記凹部が、複数本の前記副縦リブのうち隣接する前記副縦リブの周方向中央位置の下方に設けられている、請求項1~3の何れか1項に記載の積層剥離容器。
【請求項5】
前記肩部の隣り合う一対の前記縦リブの間に、それぞれ前記縦リブの上端よりも下方から前記縦リブの下端と同一の上下方向位置にまで延びる副縦リブが設けられ、
前記凹部が、前記縦リブと前記副縦リブとの周方向中央位置の下方に設けられている、請求項1~4の何れか1項に記載の積層剥離容器。
【請求項6】
前記胴部が、周状の段差部または周状のリブ部を介して前記肩部に連なるスクイズ領域を備えている、請求項1~5の何れか1項に記載の積層剥離容器。
【請求項7】
前記外層体と前記内層体とが、ポリエチレンテレフタレート製である、請求項1~6の何れか1項に記載の積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油等の食品調味料又は飲料等の食品や、化粧水等の化粧料、シャンプー、リンス又は液体石鹸等のトイレタリー等を内容物として収納する容器として、口部、肩部、胴部及び底部を備えたボトル形状であるとともに、外層体と、外層体の内面に剥離可能に積層された減容変形自在の内層体と、口部に設けられて外層体と内層体との間に連なる外気導入口とを備えた積層剥離容器が知られている。
【0003】
積層剥離容器は、内容物を外部に吐出させた後、外気導入口から外層体と内層体との間に外気を導入して内容物の吐出に合わせて内層体を減容変形させることができる。これにより、内容物が外気と置換されることなく吐出されるようにして、内層体に収納された内容物への外気の接触を抑制し、内容物の劣化や変質を抑制することができる。
【0004】
従来、このような積層剥離容器として、肩部において内層体が外層体に貼り付いて外気導入口から胴部に向けた気道が確保されなくなることを防止するために、肩部に、それぞれ径方向内側に向かって凹むとともに肩部の上端から下方に向けて延びる複数本の縦リブを設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の積層剥離容器では、縦リブの下端が肩部の下端(最大径部分)よりも上方に位置する構成となっているので、縦リブの下端と肩部の下端との間の部分において内層体が外層体に貼り付いて気道が生じ難くなる虞があるという問題点があった。
【0007】
一方、縦リブを肩部の最下端にまで延ばした形状とすると、容器の横剛性が低下し、搬送ラインにおいて容器に潰れが生じたり、スクイズした後の胴部の復元性が低下したりするという問題が生じる虞がある。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、横剛性を確保しつつ肩部における内層体の外層体への貼り付きを防止することが可能な積層剥離容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の積層剥離容器は、口部、肩部、胴部及び底部を備えたボトル形状であるとともに、外層体と、前記外層体の内面に剥離可能に積層された減容変形自在の内層体と、前記口部に設けられて前記外層体と前記内層体との間に連なる外気導入口とを備えた積層剥離容器であって、前記肩部に、それぞれ径方向内側に向かって凹むとともに前記肩部の上端から下方に向けて延びる複数本の縦リブが、周方向に間隔を空けて並べて設けられ、それぞれの前記縦リブの下端の位置が前記肩部の下端よりも上方であり、それぞれ前記縦リブよりも上下方向寸法が小さい複数の凹部が、前記縦リブよりも下方且つ前記縦リブに対して周方向にずれて前記肩部に設けられている、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記凹部が、上下方向寸法と周方向寸法とが同一の円形形状であるのが好ましい。
【0011】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記凹部が、上下方向寸法が周方向寸法よりも大きい縦長形状であるのが好ましい。
【0012】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記肩部の隣り合う一対の前記縦リブの間に、それぞれ前記縦リブの上端よりも下方から前記縦リブの下端と同一の上下方向位置にまで延びる複数本の副縦リブが設けられ、前記凹部が、複数本の前記副縦リブのうち隣接する前記副縦リブの周方向中央位置の下方に設けられているのが好ましい。
【0013】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記肩部の隣り合う一対の前記縦リブの間に、それぞれ前記縦リブの上端よりも下方から前記縦リブの下端と同一の上下方向位置にまで延びる副縦リブが設けられ、前記凹部が、前記縦リブと前記副縦リブとの周方向中央位置の下方に設けられているのが好ましい。
【0014】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記胴部が、周状の段差部または周状のリブ部を介して前記肩部に連なるスクイズ領域を備えているのが好ましい。
【0015】
本発明の積層剥離容器は、上記構成において、前記外層体と前記内層体とが、ポリエチレンテレフタレート製であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、横剛性を確保しつつ肩部における内層体の外層体への貼り付きを防止することが可能な積層剥離容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る積層剥離容器の正面図である。
【
図2】
図1に示す積層剥離容器の要部の拡大図である
【
図4】変形例に係る積層剥離容器の要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態である積層剥離容器1について詳細に例示説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲においては、上下方向は、
図1に示すように、積層剥離容器1を正立姿勢とした状態における上下方向(軸線Oが延びる方向)を意味するものとし、径方向は、積層剥離容器1の軸線Oを通るとともに軸線Oに垂直な方向を意味するものとし、周方向は、軸線Oを中心とした周方向を意味するものとする。
【0020】
図1、
図2、
図3に示す積層剥離容器1は、例えば、醤油等の食品調味料又は飲料等の食品や、化粧水等の化粧料、シャンプー、リンス又は液体石鹸等のトイレタリー等の種々の内容物を収納する用途に用いることができるスクイズタイプのものであり、外層体2と内層体3とを有する二重構造となっている。
【0021】
外層体2は積層剥離容器1の外殻を構成するものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)製となっている。なお、外層体2は、単層構造に限らず、ポリエチレンテレフタレートを主材として構成されていれば、バリア性等を向上させるための複数層の構造を有するものとすることができる。
【0022】
内層体3もポリエチレンテレフタレート(PET)製となっている。内層体3は、外層体2よりも厚みが薄い袋状に形成されており、外層体2の内面に剥離可能に積層されている。外層体2の内面に対する内層体3の剥離は、接着状態からの剥離、相溶性のない樹脂積層物の場合における擬似接着状態からの剥離、密着状態からの離間、の何れであってもよい。また、当該剥離性を高めるために、外層体2の内面及び内層体3の外面の少なくとも一方に、シリコン等の剥離層を設けるようにしてもよい。内層体3の内部は収納空間Sとなっており、収納空間Sに内容物を収納することができる。内層体3は、内容物が収納空間Sから外部に注出されるのに伴って、外層体2の内面から剥離しつつ、その内容積を減少させるように減容変形自在である。なお、内層体3も、単層構造に限らず、ポリエチレンテレフタレートを主材として構成されていれば、バリア性等を向上させるための複数層の構造を有するものとすることができる。
【0023】
上記の通り、本実施の形態では、積層剥離容器1は、外層体2及び内層体3の何れもがポリエチレンテレフタレート製となっている。このようなポリエチレンテレフタレートとしては、例えばホモPET等が挙げられるが、IPA(イソフタル酸)変性PET又はCHDM変性PET等の他のPETを用いることができる。外層体2を構成するポリエチレンテレフタレートと、内層体3を構成するポリエチレンテレフタレートとは同じ構成とすることも異なる構成とすることもできる。
【0024】
外層体2及び内層体3をポリエチレンテレフタレート製としたことにより、積層剥離容器1を軽量で強度が高く、また透明度の高い容器とすることができる。
【0025】
なお、外層体2及び内層体3は、ポリエチレンテレフタレート製に限らず、例えばポリプロピレン(PP)製やポリエチレン(PE)製など、他の合成樹脂材料により形成されたものとすることもできる。
【0026】
積層剥離容器1は、ブロー成形品であり、口部4、肩部5、胴部6及び底部7を備えたボトル形状となっている。口部4は、ブロー成形において延伸されない非延伸部であり、肩部5、胴部6及び底部7は、それぞれブロー成形において延伸される延伸部である。
【0027】
ブロー成形品である積層剥離容器1は、例えば、ポリエチレンテレフタレートを射出成形して形成された外体と、外体とは別にポリエチレンテレフタレートを射出成形して形成された内体とを組み合わせた二重構造のプリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって形成することができる。この場合、外体は外層体2に対応し、内体は内層体3に対応する。
【0028】
なお、積層剥離容器1は、外層体2に対応する合成樹脂材料と内層体3に対応する合成樹脂材料とを積層した構成の積層プリフォームを二軸延伸ブロー成形することによって形成されたものとすることもできる。
【0029】
また、積層剥離容器1は、外層体2に対応する合成樹脂材料と内層体3に対応する合成樹脂材料とが積層された円筒状の積層パリソンを、分割式の金型を用いてブロー成形する押出ブロー成形(EBM:Extrusion Blow Molding)によって形成されたものとすることもできる。
【0030】
口部4は、軸線Oを中心とする略円筒状となっており、その外周面には注出キャップ等の部材を装着するための雄ねじ4aが一体に設けられている。また、口部4の雄ねじ4aよりも下方側にはネックリング8が一体に設けられている。
【0031】
口部4は、その外周面に、雄ねじ4aに替えて、注出キャップ等の部材を打栓によってアンダーカット係合させる突起を設けた構成とすることもできる。また、口部4は、ネックリング8を備えない構成とすることもできる。
【0032】
口部4には外気導入口9が設けられている。本実施の形態では、2つの外気導入口9が、外層体2の口部4を構成する部分の軸線Oを挟んだ両側に、それぞれ当該外層体2を径方向に貫通する貫通孔として設けられている。外気導入口9は、外層体2と内層体3との間に連なっており、内層体3が外層体2から剥離するのに伴って、外層体2と内層体3との間に外気を導入することができる。
【0033】
肩部5は、上端から下方に向けて徐々に拡径する形状となっており、上端において口部4の下端に一体に連なっている。本実施の形態では、肩部5は、下端において最大径となるとともに径方向外側(容器外方)に向けて凸となるドーム状となっている。肩部5の軸線Oに垂直な断面形状は略円形となっている。
【0034】
胴部6は、全体として略円筒状となっており、上端において肩部5の下端に一体に連なっている。本実施の形態では、胴部6は、円筒状のスクイズ領域6aと、スクイズ領域6aの下端に一体に連なる補強領域6bとを有している。
【0035】
スクイズ領域6aは、胴部6の上下方向の肩部5の側の所定範囲に設けられており、その軸線Oに垂直な断面形状は円形となっている。積層剥離容器1は、スクイズ領域6aを径方向内側(容器内方)に向けてスクイズ(押圧)することで、収納空間Sに収納されている内容物を口部4から外部に押し出して吐出させることができる。
【0036】
本実施の形態では、スクイズ領域6aの上端の外径は肩部5の下端の外径よりも小さくなっており、スクイズ領域6aの上端と肩部5の下端との間は、軸線Oを中心とした周状の段差部11となっている。すなわち、スクイズ領域6aの上端は、周状の段差部11を介して肩部5の下端に連なっている。
【0037】
段差部11は、肩部5の側からスクイズ領域6aの側に向けて徐々に縮径するとともに径方向外側に向けて凸となる湾曲形状となっている。これにより、段差部11の剛性を高めて、スクイズ領域6aがスクイズされたときに、段差部11がスクイズ領域6aとともに変形することを抑制して、スクイズ領域6aの吐出操作性を高めることができる。
【0038】
段差部11は、それぞれ径方向内側に向けて凹む複数(図示する場合は12個)の窪み部12が、周方向に等間隔に並べて設けられた構成とすることもできる。段差部11に窪み部12を設けることで、内容物が吐出されて内層体3が外層体2に対して減容変形する際に、窪み部12を起点として内層体3に潰れが生じて、段差部11において内層体3が外層体2に対して容易に剥離することができる。
【0039】
なお、スクイズ領域6aの上端の外径と肩部5の下端の外径とを同一とし、スクイズ領域6aの上端と肩部5の下端との間に、周状の段差部11に替えて周状のリブ部を設けて、スクイズ領域6aの上端を、周状のリブ部を介して肩部5の下端に連なる構成とすることもできる。この場合、リブ部は、径方向内側に凹む溝状に形成されるのが好ましいが、径方向外側に突出する形状であってもよい。
【0040】
補強領域6bは、スクイズ領域6aよりも大径の略円筒状となっており、その外周面には周方向に延びる凹溝状の2本の環状リブ6cが設けられている。補強領域6bは、2本の環状リブ6cが設けられることにより、スクイズ領域6aよりも径方向に向けた剛性が高くなっている。
【0041】
底部7は、胴部6の補強領域6bの下端に一体に連なっており、胴部6の下端を閉塞している。
【0042】
肩部5には、それぞれ径方向内側(容器内方)に向かって凹むとともに肩部5の上端から下方に向けて延びる複数本の縦リブ20が設けられている。本実施の形態では、
図3に示すように、それぞれ上下方向に真っすぐに延びる12本の縦リブ20が、周方向に等間隔に並べて設けられている。それぞれの縦リブ20は、外層体2及び内層体3の両方が径方向内側に向かって凹む所謂凹リブとなっており、上下方向長さ及び溝幅が互いに等しくなっている。それぞれの縦リブ20の下端の位置は、互いに一致しており、肩部5の下端よりも上方である。
【0043】
肩部5に複数本の縦リブ20を設けた構成とすることにより、口部4に設けられた外気導入口9から胴部6に向けて外層体2と内層体3との間に外気の気道が容易に形成されるようにして、内層体3を外層体2から剥離し易くすることができる。
【0044】
なお、段差部11に複数の窪み部12を設ける場合には、これらの窪み部12を、縦リブ20の下方に縦リブ20と周方向位置を一致させて設けるのが好ましい。これにより、縦リブ20から窪み部12に向けて外気の気道が形成され易くして、段差部11において内層体3を外層体2に対してさらに容易に剥離させることができる。
【0045】
また、肩部5には、隣り合う一対の縦リブ20の間に、それぞれ2本の副縦リブ21が設けられている。それぞれの副縦リブ21は、溝幅は縦リブ20と同一であるが上下方向寸法は縦リブ20よりも小さくなっており、縦リブ20の上端よりも下方から縦リブ20の下端と同一の上下方向位置にまで延びている。すなわち、肩部5の上端から下方に向けた所定範囲は、縦リブ20のみが設けられ、副縦リブ21は設けられていない。なお、隣り合う一対の縦リブ20の間に設けられる副縦リブ21の数は2本に限られず、例えば1本でもよく、3本以上であってもよい。
【0046】
このように、肩部5に複数本の縦リブ20に加えて副縦リブ21を設けた構成とすることにより、口部4に設けられた外気導入口9から胴部6に向けて外層体2と内層体3との間に外気の気道がさらに容易に形成されるようにして、内層体3を外層体2からさらに剥離し易くすることができる。
【0047】
また、肩部5に複数本の縦リブ20に加えて副縦リブ21を設けた構成とすることにより、縦リブ20と副縦リブ21とによって肩部5の下端側部分における内層体3の外層体2への貼り付きを効果的に防止することができるとともに、肩部5の上端側部分においては、複数の縦リブ20により内層体3の外層体2への貼り付きを防止しつつ、複数の縦リブ20のみが設けられることで、ブロー成形の際に当該部分の賦形性を確保して、外気の気道が形成されなくなることを防止することができる。
【0048】
上記の通り、本実施の形態の積層剥離容器1では、肩部5に設けられた複数本の縦リブ20の下端及び複数本の副縦リブ21の下端は、それぞれ肩部5の下端よりも上方に位置しているので、複数本の縦リブ20及び複数本の副縦リブ21を肩部5の下端にまで延ばした構成とした場合に比べて、肩部5の下端側部分の横剛性を高めることができる。これにより、搬送ラインにおいて積層剥離容器1に潰れが生じたり、スクイズした後の胴部6の復元性が低下したりすることを防止することができる。
【0049】
肩部5には、それぞれ縦リブ20よりも上下方向寸法が小さい複数の凹部23が、縦リブ20よりも下方且つ縦リブ20に対して周方向にずれて設けられている。本実施の形態では、上下方向寸法と周方向寸法とが同一の円形形状に形成された複数(図示する場合は12個)の凹部23が、それぞれ対応する2本の副縦リブ21の周方向中央位置の下方、すなわち2本の副縦リブ21の間(隙間)の下方に位置するように、周方向に等間隔に並べて設けられている。それぞれの凹部23は、外層体2及び内層体3の両方が径方向内側に向かって凹む形状である。なお、一対の縦リブ20の間に3本以上の副縦リブ21を設けた構成とした場合には、これらの3本以上の副縦リブ21のうち、何れかの隣接する副縦リブ21の周方向中央位置の下方または全ての隣接する副縦リブ21の周方向中央位置の下方に凹部23を設ければよい。また、一対の縦リブ20の間に1本の副縦リブ21のみを設けた構成とした場合には、縦リブ20と副縦リブ21との周方向中央位置の下方に凹部23を設ければよい。
【0050】
本実施の形態の積層剥離容器1では、縦リブ20よりも下方すなわち複数本の縦リブ20が設けられない肩部5の下端側部分に、縦リブ20に対して周方向にずれて複数の凹部23を設けるようにしたので、複数本の縦リブ20の下端及び複数本の副縦リブ21の下端が、それぞれ肩部5の下端よりも上方に位置する構成としても、複数の凹部23により、肩部5の縦リブ20の下端と肩部5の下端との間の部分(下端側部分)における内層体3の外層体2からの剥離性を高めて、当該部分において内層体3が外層体2に貼り付いて気道が生じ難くなることを防止することができる。
【0051】
特に、本実施の形態のように、積層剥離容器1を、外層体2と内層体3とがポリエチレンテレフタレート製となるブロー成形品とした場合には、肩部5の下端側部分において内層体3が外層体2から剥離し難くなるが、本実施の形態のように、肩部5の下端側部分に、縦リブ20に対して周方向にずれて複数の凹部23を設けることで、このような積層剥離容器1においても、肩部5の下端側部分において内層体3を外層体2から剥離し易くすることができる。
【0052】
また、複数の凹部23は、縦リブ20に対して周方向にずれて配置されているので、複数本の縦リブ20及び複数本の副縦リブ21を肩部5の下端にまで延ばした構成とした場合に比べて、肩部5の下端側部分の横剛性を高めることができ、これにより、搬送ラインにおいて積層剥離容器1に潰れが生じたり、スクイズした後の胴部6の復元性が低下したりすることを防止することができる。
【0053】
図4に変形例として示すように、複数の凹部23は、上下方向寸法が周方向寸法よりも大きい縦長形状であってもよい。すなわち、複数の凹部23は、縦リブ20よりも上下方向寸法が短い縦リブとして構成されてもよい。この変形例においても、複数の凹部23は、外層体2及び内層体3の両方が径方向内側に向かって凹む所謂凹リブとなっており、上下方向寸法及び溝幅は互いに同一である。なお、
図4においては、便宜上、1つの凹部23にのみ符号を付してある。
【0054】
このように、複数の凹部23を、上下方向寸法が周方向寸法よりも大きい縦長形状とすることで、肩部5の下端側部分の上下方向のより広い範囲で内層体3を外層体2から剥離し易くして、当該部分において内層体3が外層体2に貼り付いて気道が生じ難くなることをさらに効果的に防止することができる。
【0055】
また、
図4に変形例として示すように、複数の凹部23は、2本の副縦リブ21の周方向中央位置の下方及び縦リブ20と副縦リブ21との周方向中央位置の下方のそれぞれに設けられた構成とすることもできる。すなわち、縦リブ20及び副縦リブ21の合計本数と同数の凹部23が、それぞれ縦リブ20及び副縦リブ21に対して周方向にずれて等間隔に並べて設けられた構成とすることもできる。
【0056】
このように、複数の凹部23を、2本の副縦リブ21の周方向中央位置の下方及び縦リブ20と副縦リブ21との周方向中央位置の下方のそれぞれに設けた構成とすることにより、肩部5の下端側部分の周方向のより広い範囲で内層体3を外層体2から剥離し易くして、当該部分において内層体3が外層体2に貼り付いて気道が生じ難くなることをさらに効果的に防止することができる。
【0057】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0058】
例えば、前記実施の形態では、複数の凹部23を、上下方向寸法と周方向寸法とが同一の円形形状ないし上下方向寸法が周方向寸法よりも大きい縦長形状としているが、これに限らず、縦リブ20よりも上下方向寸法が小さい形状であれば、その形状は種々変更可能である。
【0059】
また、複数の凹部23は、縦リブ20よりも下方且つ縦リブ20に対して周方向にずれて肩部5に設けられていれば、その個数及び配置は種々変更可能である。なお、複数の縦リブ20及び複数の凹部23は、それぞれ周方向に等間隔に配置されるのが好ましい。
【0060】
さらに、前記の実施の形態では、口部4、肩部5及び胴部6は、それぞれ軸線Oに垂直な断面が円形となる形状を有しているが、これに限らず、例えば、当該断面が多角形又は楕円形などの他の形状とすることもできる。
【0061】
さらに、前記の実施の形態では、外気導入口9を、外層体2の口部4を構成する部分に、当該部分を径方向に貫通する貫通孔として設けるようにしているが、これに限らず、外層体2と内層体3との間に外気を導入することができる構成であれば、肩部5、胴部6及び底部7の何れかの部分に設けるようにしてもよく、また、その形態も貫通孔に限らず、スリット状でも、外層体2と内層体3との境界に開口する隙間状のものであってもよい。
【0062】
さらに、副縦リブ21、窪み部12及び段差部11ないしリブ部は、設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 積層剥離容器
2 外層体
3 内層体
4 口部
4a 雄ねじ
5 肩部
6 胴部
6a スクイズ領域
6b 補強領域
6c 環状リブ
7 底部
8 ネックリング
9 外気導入口
11 段差部
12 窪み部
20 縦リブ
21 副縦リブ
23 凹部
O 軸線
S 収納空間