(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】心電図解析装置および心電図解析方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20250407BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20250407BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20250407BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/11 200
A61B5/33
(21)【出願番号】P 2020014110
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-12-26
【審判番号】
【審判請求日】2024-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長澤 匡章
(72)【発明者】
【氏名】関川 和広
(72)【発明者】
【氏名】木村 圭
【合議体】
【審判長】宮澤 浩
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】南 宏輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0278659(US,A1)
【文献】登録実用新案第3159276(JP,U)
【文献】特開2016-47092(JP,A)
【文献】特表2013-530776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する心電図測定部と、
前記被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する動態測定部と、
前記心電図測定部によって測定された心電図と前記動態測定部によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する解析部と、を有
し、
前記解析部は、
測定された心電図から不整脈の発生を解析する不整脈解析部と、
測定された動態の種類を解析する動態解析部と、
不整脈解析部によって不整脈の発生が解析された場合に前記動態解析部が解析した動態の種類を前記不整脈の発生が解析された時点から過去に遡って評価し、前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する妥当性解析部と、
を有することを特徴とする心電図解析装置。
【請求項2】
前記妥当性解析部は、
前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準が設定されている判定基準設定部と、
前記判定基準を参照して前記不整脈が重篤な不整脈であることを判定する判定部と、
を有する請求項
1に記載の心電図解析装置。
【請求項3】
前記判定基準設定部は、
前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準として、前記解析された動態の種類に対応させた複数の段階の検出感度が設定されている、請求項
2に記載の心電図解析装置。
【請求項4】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が歩行または走行の場合には前記検出感度を低感度に、解析された動態の種類が転倒の場合には前記検出感度を高感度に、解析された動態の種類が歩行または走行および転倒以外の場合には前記検出感度を中感度に、それぞれ設定する、請求項
3に記載の心電図解析装置。
【請求項5】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が転倒の場合であり、前記検出感度が高感度に設定された後、解析された動態の種類が歩行または走行となった場合、前記検出感度を中感度に設定する、請求項
4に記載の心電図解析装置。
【請求項6】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が歩行の場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲を超える場合、検出感度を低感度に設定する、請求項
3に記載の心電図解析装置。
【請求項7】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が歩行の場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲以内であった場合、前記検出感度を前記低感度よりもさらに低い感度に設定する、請求項
6に記載の心電図解析装置。
【請求項8】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が歩行の場合かつ、検出感度が前記低感度において、歩行を停止した場合、検出感度を高感度に設定する、請求項
6に記載の心電図解析装置。
【請求項9】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類が歩行または走行および転倒以外の場合には前記検出感度を中感度に設定する、請求項
3に記載の心電図解析装置。
【請求項10】
前記判定基準設定部は、解析された動態の種類が転倒の場合には前記検出感度を高感度に設定する、請求項
3に記載の心電図解析装置。
【請求項11】
前記判定基準設定部は、
解析された動態の種類の運動強度が低いほど、前記検出感度をより高く設定する、請求項
3に記載の心電図解析装置。
【請求項12】
被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する心電図測定部と、
前記被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する動態測定部と、
前記心電図測定部によって測定された心電図と前記動態測定部によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する解析部と、を有し、
前記解析部は、
測定された心電図から不整脈の発生を解析する不整脈解析部と、
測定された動態の種類と運動強度とを経時的に解析する動態解析部と、
不整脈の発生が解析された場合に測定された動態の種類と運動強度とを過去に遡って解析し解析した動態の種類と運動強度とから、測定された不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する妥当性解析部と、
を有する
ことを特徴とする心電図解析装置。
【請求項13】
さらに、
前記解析部によって重篤な不整脈の発生が解析された場合にその旨を報知する報知部を有する、請求項1~
12のいずれかに記載の心電図解析装置。
【請求項14】
前記センサは、前記被検者に装着する電極と一体化して搭載させるか、または前記被検者に装着するテレメータと一体化して搭載させる、請求項1~
13のいずれかに記載の心電図解析装置。
【請求項15】
重篤な不整脈は、心停止、心静止、心室性頻拍、極度の頻脈、極度の徐脈の少なくとも1つである請求項1~
14のいずれかに記載の心電図解析装置。
【請求項16】
被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する段階と、
前記被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する段階と、
測定された心電図と測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する段階と、
を含
み、
前記解析する段階は、
測定された心電図から不整脈の発生を解析する段階と、
測定された動態の種類を解析する段階と、
不整脈の発生が解析された場合に解析された動態の種類を前記不整脈の発生が解析された時点から過去に遡って評価し、前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する段階と、
を含むことを特徴とする心電図解析方法。
【請求項17】
被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する段階と、
前記被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する段階と、
測定された心電図と測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する段階と、
を含み、
前記解析する段階は、
測定された心電図から不整脈の発生を解析する段階と、
測定された動態の種類と運動強度とを経時的に解析する段階と、
不整脈の発生が解析された場合に測定された動態の種類と運動強度とを過去に遡って解析し解析した動態の種類と運動強度とから、測定された不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する段階と、
を含むことを特徴とする心電図解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心電図解析装置および心電図解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の心電図解析装置は、患者から測定された心電図波形を、所定の不整脈判定基準に照らし合わせて解析し、不整脈を検出した場合にはアラーム等により医療従事者に通知する(特許文献1)。
【0003】
患者に心室細動または心停止といった重篤な不整脈が発生すると、心臓が血液を全身に送り出すことができなくなり重大な後遺症や死亡に繋がる恐れがある。このため、医療従事者は重篤な不整脈の発生に対して即座に対応する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、急性期を脱して一般病棟に入院中あるいはリハビリ中の患者は活動性が高いため、患者の体動によるアーチファクト(ノイズ)が心電図波形に混入しやすい。従来の心電図解析装置は、アーチファクトが混入した心電図波形を不整脈と誤判定し偽アラームを発生させることがある。
【0006】
このため、従来の心電図解析装置は、心電図波形に混入したアーチファクトを不整脈として誤解析しないような対策が施されている。この対策としては、アーチファクト除去フィルタやアーチファクト判定機能が例示できる。
【0007】
しかし、特に心電図の周波数成分に近いアーチファクトを精度よく分別するのは容易ではない。アーチファクトを取り除きすぎると、真の不整脈を誤って取り除いてしまい、不整脈を見逃す可能性が高くなる。
【0008】
一方、アーチファクトを適切に取り除くことができないと、ノイズを不整脈と判定してしまい、偽アラームを生じさせる。偽アラームの頻発は医療従事者のアラームに対する注意力を低下させ、反応を鈍らせる。その結果として真の重篤な不整脈が発生した患者への対応が遅れる可能性がある。
【0009】
そこで、本発明は、被検者の動態情報に応じて不整脈の発生の判定基準を変更することによって、不整脈の見逃しを防ぐ(検出感度を高める)と同時に誤検出を減らす(検出特異度を高める)という、相反する要求を満たすことができる心電図解析装置および心電図解析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の心電図解析装置は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する心電図測定部と、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する動態測定部と、心電図測定部によって測定された心電図と前記動態測定部によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する解析部と、を有し、解析部は、測定された心電図から不整脈の発生を解析する不整脈解析部と、測定された動態の種類を解析する動態解析部と、不整脈解析部によって不整脈の発生が解析された場合に前記動態解析部が解析した動態の種類を前記不整脈の発生が解析された時点から過去に遡って評価し、前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する妥当性解析部と、を有する。
また、本発明の他の心電図解析装置は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する心電図測定部と、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する動態測定部と、心電図測定部によって測定された心電図と前記動態測定部によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する解析部と、を有し、解析部は、測定された心電図から不整脈の発生を解析する不整脈解析部と、測定された動態の種類と運動強度とを経時的に解析する動態解析部と、不整脈の発生が解析された場合に測定された動態の種類と運動強度とを過去に遡って解析し解析した動態の種類と運動強度とから、測定された不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する妥当性解析部と、を有する。
【0011】
本発明の心電図解析方法は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する段階と、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する段階と、測定された心電図と測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する段階と、を含み、解析する段階は、測定された心電図から不整脈の発生を解析する段階と、測定された動態の種類を解析する段階と、不整脈の発生が解析された場合に解析された動態の種類を前記不整脈の発生が解析された時点から過去に遡って評価し、前記不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する段階と、を含む。
また、本発明の他の心電図解析方法は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する段階と、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する段階と、測定された心電図と測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する段階と、を含み、前記解析する段階は、測定された心電図から不整脈の発生を解析する段階と、測定された動態の種類と運動強度とを経時的に解析する段階と、不整脈の発生が解析された場合に測定された動態の種類と運動強度とを過去に遡って解析し解析した動態の種類と運動強度とから、測定された不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する段階と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の心電図解析装置および心電図解析方法によれば、心電図と動態とから重篤な不整脈の発生を解析するようにしたので、不整脈の見逃しを防ぐ(検出感度を高める)と同時に誤検出を減らす(検出特異度を高める)という、相反する要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1から5に共通する心電図解析装置のブロック図である。
【
図4】実施形態1から5に共通する心電図解析装置のメインフローチャート(心電図解析方法)である。
【
図5】
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである(実施形態1)。
【
図6】
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである(実施形態2)。
【
図7】
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである(実施形態3)。
【
図8】
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである(実施形態4)。
【
図9】
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである(実施形態5)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の心電図解析装置および心電図解析方法の実施形態を、図面を参照しながら、[実施形態1]から[実施形態5]に分けて説明する。
図1から
図3は、本発明の心電図解析装置の実施形態1から5に共通する装置構成の一例を示す。
図4から
図9は、本発明の心電図解析装置の実施形態1から5のそれぞれの動作の一例、および本発明の心電図解析方法の実施形態1から5のそれぞれの手順の一例を示す。なお、本発明の心電図解析装置および心電図解析方法の技術的思想は、以下に説明する実施形態1から5に記載されたものには限定されない。
【0015】
[実施形態1]
(心電図解析装置の構成)
図1は、実施形態1から5に共通する心電図解析装置のブロック図である。図示するように、心電図解析装置100は、心電図測定部110、動態測定部120、解析部150、および報知部160を有する。
【0016】
心電図測定部110は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する。被検者に装着する電極の数は2個以上であることが望ましい。電極は被検者の体表面に装着しても良いし、被検者の体内に埋め込んでも良い。測定する心電図の波形の本数は1本でも良いし複数本でも良い。
【0017】
動態測定部120は、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する。被検者に装着するセンサとしては、加速度センサ、ジャイロセンサを用いることが望ましい。センサは、被検者の身体に直接装着しても良いし、被験者が身に着けるバッグや衣類等のポケットに収納されるものでも良く、被検者の体内に埋め込んでも良い。また、被検者に装着する電極と一体化して搭載させても良いし、被検者に装着するテレメータと一体化して搭載させても良い。センサを電極と一体化、またはテレメータと一体化させることによって、センサが小型化できる。
【0018】
被検者に装着するセンサは、加速度センサ以外のセンサであっても、被検者が歩行中か(具体的には、被検者が安定した歩行中であるか、被検者が不安定な歩行中であるか)、被検者が歩行中でないか、被検者が不安定な歩行から立ち止まったか、被検者が不安定な歩行から座ったか、被検者が歩行から急にしゃがみ込んだか、被検者が転倒したか、などの被検者の動態、活動量および運動量を検出できるものであれば、どのようなセンサを用いても良い。また、被検者のこれらの動態、活動量および運動量を検出できるようにするために、加速度センサ以外の複数の種類のセンサを組み合わせて構成したセンサを被検者に装着するようにしても良い。
【0019】
解析部150は、心電図測定部110によって測定された心電図と動態測定部120によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する。ここで、重篤な不整脈は、心停止、心静止、心室性頻拍、極度の頻脈、極度の徐脈の少なくとも1つである。解析部150は、重篤な不整脈として、心停止、心静止、心室性頻拍、極度の頻脈、極度の徐脈のいずれかの発生を解析できる。解析部150は、重篤な不整脈の発生を、数ミリ秒から数秒の間隔で、または心電図から得られる心拍の検出時に解析する。なお、解析部150による不整脈の発生の解析は、心電図測定部110による心電図の測定と動態測定部120による動態の測定と並行して連続的に行われる。解析部150は、不整脈の発生の解析の結果、その不整脈が重篤な不整脈であると判定することが妥当であると判断したときには、アラーム信号を出力する。
【0020】
報知部160は、解析部150によって重篤な不整脈の発生が解析された場合に解析部150から出力されるアラーム信号を受けて、音や光を出力することによって、重篤な不整脈の発生を報知する。報知部160を設けることによって、被験者や被検者の周囲の人、被験者を監視する医療従事者等は重篤な不整脈の発生を容易に知ることができる。
【0021】
図2は、
図1の解析部のブロック図である。図示するように、解析部150は、不整脈解析部152、動態解析部154、および妥当性解析部140を有する。
【0022】
不整脈解析部152は、心電図測定部110(
図1参照)によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する。不整脈解析部152が解析する不整脈としては、心室細動または心停止を誘発させるものを対象とし、たとえば、心停止、心静止、心室性頻拍、極度の頻脈、極度の徐脈の少なくとも1つである。
【0023】
動態解析部154は、動態測定部120(
図1参照)によって測定された動態の種類を解析する。動態解析部154は、動態測定部120が出力した加速度データを解析し、被検者の歩行または走行などの様子や、活動量、運動量といった動態データから、動態の種類を解析する。動態の種類としては、たとえば、被検者が歩行中か(具体的には、被検者が安定した歩行中であるか、被検者が不安定な歩行中であるか)、被検者が歩行中でないか、被検者が不安定な歩行から立ち止まったか、被検者が不安定な歩行から座ったか、被検者が歩行から急にしゃがみ込んだか、被検者が転倒したか、などが例示できる。被検者が歩行しているか否かは、歩行の検出からたとえば1秒経過しても次の歩行が検出されないときには、歩行していないと判断し、歩行の検出から1秒以内に次の歩行が検出されたときには、歩行していると判断する。通常は、1歩あたり0.6秒だからである。このため、歩き方が極端にゆっくりであれば、歩行していないと判断されることになる。
【0024】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって不整脈の発生が解析された場合に、動態解析部154によって解析された動態の種類を勘案して、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析する。したがって、不整脈解析部152によって不整脈の発生があったと判断されても、妥当性解析部140がその不整脈が重篤な不整脈であると判定することが妥当ではないと解析したときには、アラーム信号は出力されない。一方、妥当性解析部140がその不整脈が重篤な不整脈であると判定することが妥当であると解析したときには、アラーム信号が出力される。
【0025】
図3は、
図2の妥当性解析部のブロック図である。図示するように、妥当性解析部140は、判定基準設定部142と判定部144とを有する。
【0026】
判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準が設定されている。
【0027】
具体的には、判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準として、動態解析部154(
図2参照)によって解析された動態の種類に対応させた複数の段階の検出感度が設定されている。動態の種類に対応させて複数の段階の検出感度を設けることによって、動態の種類に応じて、不整脈が重篤な不整脈であるとの判定を、適切に行えるようになる。
【0028】
実施形態1の場合、被検者の歩行または走行以外の動態に対して判定基準A(中感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行の動態に対して判定基準B(低感度)の検出感度が設定されている。検出感度が低感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であると判定され難くなる。被検者が歩行または走行できているときには重篤な不整脈が発生している可能性は低いと推測されるからである。一方、検出感度が中感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であるとの判定が、低感度であるときよりもされ易くなる。
【0029】
判定基準は、測定開始時には検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように定める。実施形態1の場合、判定基準Aは測定開始時からデフォルトとして用いられるので、検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように、最適な値に定められている。
【0030】
判定部144は、判定基準設定部142に設定されている判定基準を参照して不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
【0031】
実施形態1の場合、被検者の歩行または走行以外の動態に対して判定基準A(中感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行の動態に対して判定基準B(低感度)の検出感度が設定されている。判定部144は、判定基準Aと判定基準Bを参照して、不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
(心電図解析装置の動作)
図4は、実施形態1から5に共通する心電図解析装置のメインフローチャート(心電図解析方法)である。このフローチャートの処理は、数ミリ秒から数秒の間隔で、非常に高速で処理される。以下に、このフローチャートの処理を
図1を参照しながら説明する。
【0032】
心電図測定部110は、被検者に装着した電極の心電信号から心電図を測定する(S100)。同時に、動態測定部120は、被検者に装着したセンサの動態情報から動態を測定する(S200)。
【0033】
次に、解析部150は、心電図測定部110によって測定された心電図と動態測定部120によって測定された動態とから重篤な不整脈の発生を解析する。不整脈の発生が解析された場合には、測定された動態の種類を勘案して、不整脈検出の妥当性を解析する(S300)。
【0034】
解析部150は、不整脈の検出は妥当であるか否かを判断する(S400)。不整脈の検出は妥当であると判断した場合には(S400:YES)、報知部160によって不整脈の発生を被験者や被検者の周囲の人、被験者を監視する医療従事者等に報知する(S500)。一方、不整脈の検出は妥当ではないと判断した場合には(S400:NO)、S600のステップの処理に進む。
【0035】
解析部150は、不整脈検出のためのすべての処理が終了しているか否かを判断する(S600)。不整脈検出のためのすべての処理が終了していると判断した場合には(S600:YES)、処理を終了する。不整脈検出のためのすべての処理が終了していないと判断した場合には(S600:NO)、S100とS200のステップの処理に戻る。
【0036】
図5は、
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである。実施形態1では、不整脈検出の妥当性を次のような手順で判断する。以下に、このフローチャートの処理を
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0037】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、まずデフォルトの判定基準A(中感度)に設定する(S310)。次に、動態解析部154は、動態測定部120によって測定された動態を解析する(S311)。ここで解析される動態は、被検者が歩行または走行をしているか、歩行または走行以外の動作をしているかのいずれかである。
【0038】
次に、動態解析部154が歩行または走行を検出しているか否かを判断する(S312)。動態解析部154が歩行または走行を検出していれば(S312:YES)、妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、判定基準B(低感度)に設定する(S314)。一方、動態解析部154が歩行または走行を検出していなければ(S312:NO)、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、判定基準A(中感度)に設定する(S313)。
【0039】
不整脈解析部152は、心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する(S315)。次に、不整脈解析部152が心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈を検出したか否かを判断する(S316)。不整脈解析部152が不整脈を検出したら(S316:YES)、判定部144は、その不整脈の検出の妥当性を判定する(S317)。不整脈の検出の妥当性は、S314、S313のステップで設定した判定基準に基づいて判定する。一方、不整脈解析部152が不整脈を検出しなければ(S316:NO)、
図4のステップ400の処理に進む。
図5のフローチャートは、高速で処理されているので、被検者が歩行または走行している状態から歩行または走行していない状態に遷移した場合、またはその逆に遷移した場合に、判定基準はリアルタイムで変更される。
【0040】
以上のように、実施形態1では、被検者が歩行または走行しているときには、低感度で不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が歩行または走行していないときには、中感度で不整脈の検出の妥当性を判定する。このため、実施形態1では、歩行または走行していないときの方が歩行または走行しているときよりも不整脈のアラームが報知されやすくなる。
【0041】
このように、被検者の動態情報(歩行または走行しているか歩行または走行していないか)に応じて不整脈の発生の判定基準を変更しているので、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0042】
[実施形態2]
(心電図解析装置の構成)
実施形態2の心電図解析装置100は、判定基準設定部142(
図3参照)に設定されている判定基準が実施形態1の判定基準設定部142とは異なっているだけで、判定基準設定部142以外の構成は実施形態1の心電図解析装置100と同一である。
【0043】
実施形態2の判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準が次のように設定されている。判定基準として、被検者の転倒の動態に対して判定基準C(高感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行の動態に対して判定基準B(低感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行および転倒以外の動態に対して判定基準A(中感度)の検出感度が設定されている。
【0044】
検出感度がより低感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であると判定され難くなる。一方、検出感度がより高感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であるとの判定が、検出感度がより低感度であるときよりもされやすくなる。判定基準は、測定開始時には検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように定める。実施形態2の場合、判定基準Aは測定開始時からデフォルトとして用いられるので、検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように、最適な値に定められている。
【0045】
判定部144は、判定基準設定部142に設定されている判定基準を参照して不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
【0046】
実施形態2の場合、被検者の転倒の動態に対して判定基準C(高感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行および転倒以外の動態に対して判定基準A(中感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行または走行の動態に対して判定基準B(低感度)の検出感度が設定されているので、判定部144は、判定基準A、判定基準B、および判断基準Cを参照して、それぞれの動態に対して、不整脈が重篤な不整脈であることを、適切に判定できる。
【0047】
(心電図解析装置の動作)
図6は、
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである。実施形態2では、不整脈検出の妥当性を次のような手順で判断する。以下に、このフローチャートの処理を
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0048】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、まずデフォルトの判定基準A(中感度)に設定する(S321)。次に、動態解析部154は、動態測定部120によって測定された動態を解析する(S322)。ここで解析される動態は、被検者が転倒したか、被検者が歩行または走行をしているか、歩行または走行および転倒以外の動作をしているかのいずれかである。
【0049】
次に、動態解析部154が転倒を検出しているか否かを判断する(S323)。動態解析部154が転倒を検出していれば(S323:YES)、妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、判定基準C(高感度)に設定する(S324)。なお、動態解析部154が転倒を検出したときには、被験者や被検者の周囲の人、被験者を監視する医療従事者等に転倒した旨を通知した上で、判定基準C(高感度)に設定するようにしても良い。一方、動態解析部154が転倒を検出していなければ(S323:NO)、次に、動態解析部154が歩行または走行を検出しているか否かを判断する(S325)。
【0050】
動態解析部154が歩行または走行を検出していれば(S325:YES)、妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、判定基準B(低感度)に設定する(S327)。一方、動態解析部154が歩行または走行を検出していなければ(S325:NO)、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、判定基準A(中感度)に設定する(S326)。
【0051】
不整脈解析部152は、心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する(S328)。次に、不整脈解析部152が心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈を検出したか否かを判断する(S329)。不整脈解析部152が不整脈を検出したら(S329:YES)、判定部144は、その不整脈の検出の妥当性を判定する(S330)。不整脈の検出の妥当性は、S324、S326、S327のステップで設定した判定基準に基づいて判定する。一方、不整脈解析部152が不整脈を検出しなければ(S329:NO)、
図4のステップ400の処理に進む。
【0052】
図6のフローチャートは、高速で処理されているので、被検者が転倒した場合、被検者が歩行または走行した場合、被検者が歩行または走行および転倒以外の動作をした場合には、その都度、これらのいずれかの動作が検出されたときに、判定基準はリアルタイムで変更される。
【0053】
したがって、判定基準設定部142は、解析された動態の種類が転倒の場合であり、検出感度が判定基準C(高感度)に設定された後、動態解析部154によって解析された動態の種類が歩行または走行となった場合、検出感度を判定基準A(低感度)に設定する。したがって、動態の変化に応じて、不整脈が重篤な不整脈であることを、適切に判定できる。
【0054】
以上のように、実施形態2では、被検者が転倒したときには、高感度で不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が転倒した後に歩行または走行しているときには、低感度で不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が歩行または走行および転倒以外のときには、中感度で不整脈の検出の妥当性を判定する。このため、実施形態2では、転倒したときが最も不整脈のアラームが報知されやすくなり、歩行または走行および転倒以外のときが次に、不整脈のアラームが報知されやすくなり、転倒した後に歩行または走行しているときが最も不整脈のアラームが報知され難くなる。
【0055】
このように、被検者の動態情報に応じて不整脈の発生の判定基準を変更しているので、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0056】
[実施形態3]
(心電図解析装置の構成)
実施形態3の心電図解析装置100は、判定基準設定部142(
図3参照)に設定されている判定基準が実施形態1の判定基準設定部142とは異なっているだけで、判定基準設定部142以外の構成は実施形態1の心電図解析装置100と同一である。
【0057】
実施形態3の判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準が次のように設定されている。判定基準として、被検者の動態が転倒を検出した後に対して判定基準5(最も高感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行の動態が、不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだというものに対して判定基準4の検出感度が設定され、被検者のデフォルトの判定基準として判定基準3が設定される。さらに、被検者の動態が不安定な歩行中であるというものに対して判定基準2の検出感度が設定され、被検者の動態が安定した歩行中であるというものに対して判定基準1(最も低感度)の検出感度が設定される。
【0058】
判定基準の段階が、判定基準5から判定基準1に向かって低下するにしたがって、検出感度は段階的に高感度から低感度に移行する。検出感度がより低感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であると判定され難くなる。一方、検出感度がより高感度であれば、検出された不整脈が重篤な不整脈であるとの判定が、検出感度がより低感度であるときよりもされ易くなる。
【0059】
判定基準は、測定開始時には検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように定める。実施形態3の場合、判定基準3は測定開始時からデフォルトの判定基準として用いられるので、検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように、最適な値に定められている。
【0060】
判定部144は、判定基準設定部142に設定されている判定基準を参照して不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
【0061】
実施形態3の場合、被検者の動態が転倒を検出した後に対して判定基準5(最も高感度)の検出感度が設定され、被検者の歩行の動態が、不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだというものに対して判定基準4の検出感度が設定され、被検者のデフォルトの判定基準として判定基準3が設定され、被検者の動態が不安定な歩行中であるというものに対して判定基準2の検出感度が設定され、被検者の動態が安定した歩行中であるというものに対して判定基準1(最も低感度)の検出感度が設定されているので、判定部144は、判定基準1から5を参照して、それぞれの動態に対して、不整脈が重篤な不整脈であることを、適切に判定できる。
【0062】
(心電図解析装置の動作)
図7は、
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである。実施形態3では、不整脈検出の妥当性を次のような手順で判断する。以下に、このフローチャートの処理を
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0063】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、まずデフォルトの判定基準3(通常のモニタリング:中感度)に設定する(S340)。次に、動態解析部154は、動態測定部120によって測定された動態を解析する(S341)。ここで解析される動態は、被検者が転倒した後か、被検者が不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだか、被検者が通常のモニタリング状態であるか、被検者が不安定な歩行中か、被検者が安定した歩行中か、のいずれかである。
【0064】
次に、妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、被検者が転倒した後か、被検者が不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだか、被検者が通常のモニタリング状態であるか、被検者が不安定な歩行中か、被検者が安定した歩行中かによって設定する(S342)。
【0065】
具体的には、妥当性解析部140は、被検者が転倒した後の動態であれば、判定基準5(最も高感度)の検出感度に設定し、被検者の歩行の動態が、不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだという動態であれば、判定基準4の検出感度に設定し、被検者が不安定な歩行中であれば、判定基準2の検出感度に設定し、被検者が安定した歩行中であれば、判定基準1(最も低感度)の検出感度に設定し、被検者がこれら以外の動態であれば、判定基準3に設定する。
【0066】
不整脈解析部152は、心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する(S343)。次に、不整脈解析部152が心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈を検出したか否かを判断する(S344)。不整脈解析部152が不整脈を検出したら(S344:YES)、判定部144は、その不整脈の検出の妥当性を判定する(S345)。不整脈の検出の妥当性は、S342のステップで設定した判定基準に基づいて判定する。一方、不整脈解析部152が不整脈を検出しなければ(S344:NO)、
図4のステップ400の処理に進む。
【0067】
以上のように、実施形態3では、被検者が転倒した後では、最も高感度(判定基準5)で不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が不安定な歩行から立ち止まった、座った、または歩行から急にしゃがみ込んだ、いずれかのときには、少し検出感度を下げて(判定基準4)不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が安定した歩行中であれば、最も低感度(判定基準1)で不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者が不安定な歩行中であれば、少し感度を上げて(判定基準2)不整脈の検出の妥当性を判定し、被検者がこれら以外の動態であれば、デフォルトの感度(判定基準3)で不整脈の検出の妥当性を判定する。このため、実施形態3では、設定された検出感度の大きさが大きくなるほど、不整脈のアラームが報知されやすくなる。
【0068】
このように、被検者の5種類の動態情報に応じて不整脈の発生の判定基準を変更しているので、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0069】
[実施形態4]
(心電図解析装置の構成)
実施形態4の心電図解析装置100は、判定基準設定部142(
図3参照)に設定されている判定基準が実施形態1の判定基準設定部142とは異なっているだけで、判定基準設定部142以外の構成は実施形態1の心電図解析装置100と同一である。
【0070】
実施形態4の判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析するための判定基準が次のように設定されている。判定基準は被検者の動態の種類の運動強度が低いほど、検出感度をより高く設定する。このように判断基準を設定することによって、運動強度が高い場合の不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0071】
具体的には、動態解析部154によって解析された動態の種類が歩行の場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲を超える場合、検出感度を低感度に設定する。また、解析された動態の種類が歩行の場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲以内であった場合、検出感度を低感度よりもさらに低い感度に設定する。さらに、動態解析部154によって解析された動態の種類が歩行の場合かつ、検出感度が低感度において、歩行を停止した場合、検出感度を高感度に設定する。
【0072】
このように、動態の種類の運動強度が低いほど、検出感度をより高く設定し、逆に動態の種類の運動強度が高いほど、検出感度をより低く設定すると、運動強度の大小にかかわらずに、不整脈のアラームを適切に報知することができる。したがって、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0073】
判定基準は、測定開始時には検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように定める。実施形態4の場合、判定基準Aは測定開始時からデフォルトの判定基準として用いられるので、検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように、最適な値に定められている。
【0074】
判定部144は、判定基準設定部142に設定されている判定基準を参照して不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
(心電図解析装置の動作)
図8は、
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである。実施形態4では、不整脈検出の妥当性を次のような手順で判断する。以下に、このフローチャートの処理を
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0075】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、まずデフォルトの判定基準A(中感度)に設定する(S350)。次に、動態解析部154は、動態測定部120によって測定された動態を解析する(S351)。ここで解析される動態は、たとえば、被検者が歩行している場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲を超えているか、被検者が歩行している場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲以内であるか、被検者が歩行しており、かつ、検出感度が低感度において、歩行を停止したかなどである。
【0076】
次に、妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、被検者が歩行している場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲を超えているか、その歩行間隔が一定の範囲以内であるか、被検者が歩行していてかつ、検出感度が低感度において、歩行を停止したか、に応じて最適な値を設定する。具体的には、被検者が歩行している場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲を超える場合、検出感度を低感度に設定する。また、被検者が歩行している場合、所定の歩行距離において、歩行間隔が一定の範囲以内であった場合、検出感度を低感度よりもさらに低い感度に設定する。さらに、被検者が歩行している場合かつ、検出感度が低感度において、歩行を停止した場合、検出感度を高感度に設定する(S352)。
【0077】
不整脈解析部152は、心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する(S353)。次に、不整脈解析部152が心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈を検出したか否かを判断する(S354)。不整脈解析部152が不整脈を検出したら(S354:YES)、判定部144は、その不整脈の検出の妥当性を判定する(S355)。不整脈の検出の妥当性は、S352のステップで設定した判定基準に基づいて判定する。一方、不整脈解析部152が不整脈を検出しなければ(S354:NO)、
図4のステップ400の処理に進む。
【0078】
以上のように、実施形態4の場合、被検者の動態の種類の運動強度が低いほど、検出感度をより高く設定し、逆に被検者の動態の種類の運動強度が高いほど、検出感度をより低く設定しているので、判定部144は設定された検出感度に応じて、不整脈が重篤な不整脈であることを適切に判定できる。
【0079】
以上のように、実施形態4では、被検者の動態情報に応じて不整脈の発生の判定基準を変更しているので、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0080】
[実施形態5]
(心電図解析装置の構成)
実施形態5の心電図解析装置100は、判定基準設定部142(
図3参照)に設定されている判定基準が実施形態1の判定基準設定部142とは異なっている。また、動態解析部154(
図2参照)が、測定された動態の種類と運動強度とを経時的に解析している点で実施形態1の動態解析部154とは異なっている。さらに、妥当性解析部140が、不整脈の発生が解析された場合に測定された動態の種類と運動強度とを過去に遡って解析し解析した動態の種類と運動強度とから、測定された不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を解析している点で実施形態1の妥当性解析部140とは異なっている。これら以外の構成は実施形態1の心電図解析装置100と同一である。
【0081】
実施形態5の判定基準設定部142は、不整脈が重篤な不整脈であると判定することの妥当性を次のように判断する。たとえば、心室細動もしくは心停止の可能性が検出された時点から過去へ遡って歩行検出の有無や運動量を評価し、安定した歩行や運動が続くならばアラームを抑制する。そうでなければアラームを出力する。
【0082】
具体的には、X秒ごとに区切られた期間内で歩行有りがY回続いたか(たとえばX=L、Y=3)、ある程度以上の歩行速度や歩調(たとえば、速度3.2km/hr、歩調100step/min)がY秒続いたか(たとえばY=3)、最後の歩行検出からの経過時間がY秒以内であるか(たとえばY=1)、安定した運動(たとえば3.0メッツ)がY秒続いたか(例えばY=3)、などを判断することによって、アラームの妥当性を検証する。
【0083】
また、心室細動もしくは心停止の可能性が検出された時点から過去へ遡って歩行検出の有無や運動量を評価し、不安定な歩行(速度1.0-3.1km/hr)や弱い運動(1.0~2.9メッツ)が続くならばアラームを保留し、続くN(たとえば1)秒で安定した歩行もしくは運動が検出されなければ最終的にアラームを出力するようにしても良い。
【0084】
判定基準は、測定開始時には検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように定める。実施形態5の場合、判定基準Aは測定開始時からデフォルトの判定基準として用いられるので、検出感度と検出特異度とがバランス良くなるように、最適な値に定められている。
【0085】
判定部144は、判定基準設定部142に設定されている判定基準を参照して不整脈が重篤な不整脈であることを判定する。
【0086】
(心電図解析装置の動作)
図9は、
図4のメインフローチャートのS300(不整脈検出の妥当性を判断)の処理のサブルーチンフローチャートである。実施形態5では、不整脈検出の妥当性を次のような手順で判断する。以下に、このフローチャートの処理を
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0087】
妥当性解析部140は、不整脈解析部152によって検出された不整脈が、重篤な不整脈であることを判定するための基準を、まずデフォルトの判定基準A(中感度)に設定する(S360)。次に、動態解析部154は、動態測定部120によって測定された動態を解析する(S361)。
【0088】
ここで解析される動態は、心室細動もしくは心停止の可能性が検出された時点から過去へ遡った、歩行検出の有無や運動量である。具体的には、X秒ごとに区切られた期間内で歩行有りがY回続いたか、ある程度以上の歩行速度や歩調がY秒続いたか、最後の歩行検出からの経過時間がY秒以内であるか、安定した運動がY秒続いたか、不安定な歩行や弱い運動が続くか、続くN秒で安定した歩行もしくは運動が検出されたか、などである。
【0089】
不整脈解析部152は、心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈の発生を解析する(S362)。次に、不整脈解析部152が心電図測定部110によって測定された心電図から不整脈を検出したか否かを判断する(S363)。不整脈解析部152が不整脈を検出したら(S33:YES)、判定部144は、S361のステップで解析された動態を判定基準に照らしてその不整脈の検出の妥当性を判定する(S364)。一方、不整脈解析部152が不整脈を検出しなければ(S363:NO)、
図4のステップ400の処理に進む。
【0090】
以上のように、実施形態5では、心室細動もしくは心停止の可能性が検出された時点から過去へ遡って歩行検出の有無や運動量を評価し、安定した歩行や運動が続くならばアラームを抑制し、そうでなければアラームを出力するようにしているので、不整脈の見逃しを防ぐと同時に不整脈の誤検出を減らすことができる。
【0091】
以上、本発明の心電図解析装置および心電図解析方法について、実施形態1から実施形態5に分けて説明した。しかし、本発明の心電図解析装置および心電図解析方法の技術的範囲は、これらの実施形態で記載した範囲に拘束されない。技術的思想として本発明と同一の思想を有する発明は、本発明の技術的範囲に含まれることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0092】
100 心電図解析装置
110 心電図測定部
120 動態測定部
140 妥当性解析部
142 判定基準設定部
144 判定部
150 解析部
152 不整脈解析部
154 動態解析部
160 報知部